JP2023506132A - 大きな組織サンプルの無氷ガラス化およびナノ加温 - Google Patents

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Abstract

大容量の細胞材料は、前記細胞材料を少なくとも1つのmNPを含有する凍結保護剤製剤/媒体/溶液と組み合わせ、次に、前記細胞材料をナノ加温を含むガラス化保存プロトコルに供することによって保存され得る。この保存方法は、軟骨組織および大血管に特に効果的であり、例えば、前記細胞材料を、少なくとも0.5mg/mLのFe mNPを含有する高濃度凍結保護剤製剤に曝露すること、前記細胞材料を、前記細胞材料への氷による損傷が生じない保存プロトコルに供すること、およびナノ加温された凍結保存細胞材料を得ること(ここで、前記ナノ加温された組織の代謝活性は、再加温されてから2日以内にコントロール値に完全に回復する)を含む。

Description

関連出願の相互参照
本非仮出願は、2019年11月7日に出願された米国仮出願第62/931,943号の利益を主張する。
本開示は、細胞、組織および臓器の保存の分野に関するものであり、特に本発明は、保存後の細胞の生存率および組織機能を高めるために、ナノ加温が有効量のmNP(例えば、2mg/mLのFe mNP)と組み合わせて適用される、細胞材料の無氷ガラス化保存の方法に関する。
サンプル、細胞または組織を保存するために、通常、凍結保護剤溶液を使用して、冷却または解凍/加温プロセス中の凍結による損傷を防ぐ。凍結保存が有用であるためには、保存されたサンプルは、保存後、その完全性および/または生存率を妥当なレベルに維持する必要がある。したがって、サンプルを保存するプロセスは、細胞および/または組織構造の損傷または破壊を回避および/または制限する必要がある。
ガラス化(すなわち、結晶相ではなく「ガラス質(glassy)」での凍結保存)は、組織バンキングおよび再生医療を可能にする重要なアプローチであり、さまざまな生物医学的用途のために細胞、組織および臓器を保存および輸送する能力を提供する。ガラス化による無氷凍結保存では、水と相互作用しかつ水と置換することで水分子が氷を形成するのを防止する凍結保護剤として知られる高濃度の化学物質の存在によって、氷の形成が防止される。
近年、組織または臓器をガラス化することにおいて進歩があったが、大容量の組織または臓器をうまく再加温するためにはさまざまな課題がある。第一に、加温中の結晶化を可能にする条件を回避するために、急速な加熱速度が必要である。例えば、使用される凍結保護剤の材料/成分によっては、氷の形成を回避するために、サンプルを臨界加温速度よりも速く加熱する必要がある。第二に、破壊または亀裂を引き起こす熱応力を生成し得る大きな熱勾配を回避するために、体積全体で均一な加熱速度が望ましい。最近、VS55に懸濁させたシリカ被覆酸化鉄ナノ粒子が、ヒト皮膚線維芽細胞、ブタ動脈、およびブタ大動脈心臓弁尖組織をガラス化および再加温するために首尾よく使用された。ナノ加温(nanowarming)として知られるプロセスで磁気ヒステリシスによってナノ粒子を加熱するために80mlまでの体積が均一な交番磁場(AMF)中に置かれた。Manuchehrabadi et al., Improved tissue cryopreservation using inductive heating of magnetic nanoparticles, Sci. Transl. Med., 2017年を参照されたい。このアプローチは、細胞および組織サンプルの生存率および機能を維持するためにうまく使用されているが、特に高濃度の凍結保護剤の存在下で保存された材料の細胞生存率については、改善の余地がある。
本明細書に記載のナノ加温手順を使用するとともに、VS83などの高濃度の凍結保護剤を有する無氷ガラス化製剤に、2mg/mLのFe mNPなどの有効量のmNPを補充すると、保存後の細胞生存率が高まり、組織機能が改善することが明らかになった。
したがって、本出願は、2mg/mLのFe mNPなどの有効量の磁性ナノ粒子(mNP)および任意に二糖類(例えば、トレハロースおよび/またはスクロース)などの糖が無氷ガラス化凍結保護剤製剤に添加される、大容量の細胞材料(例えば、大血管(例えば、肺動脈)、または軟骨を含む)を処理するための新規な方法論および新規な製剤を提供する。有効量のそのような成分の補充は、冷却中および再加温中、特に本明細書に記載のナノ加温条件が適用される場合に、氷形成のリスクを低減する。
ナノ加温が50mLの系においてブタ関節軟骨の軟骨細胞生存率をどのように維持するかに関して得られたデータの説明図である(図1(A)および1(B))。図1(A)は、alamarBlueアッセイによって測定された、コントロール(成長培地中のフレッシュな組織)に対して正規化されたブタ関節軟骨の生存率を示している(VS55ではN=2;VS70およびVS83ではN=4);それぞれのサンプルについて(右端のサンプル(VS83+Fe)から始まる:4日目=右端から1番目の棒/列、3日目=右端から2番目の棒/列、2日目=右端から3番目の棒/列、1日目=右端から4番目の棒/列、および0日目=右端から5番目の棒/列。図1(B)は、生/死染色アッセイ(Sigma)を使用した、ブタ関節軟骨全体の生および死軟骨細胞分布の説明図である(緑/薄い灰色:生細胞;赤/濃い灰色:死細胞(VS83ではN=4;フレッシュな組織ではN=2))。 軟骨のトリパンブルー排除結果に関して得られたデータの説明図である(データは平均±1標準偏差として示され、有意差は認められなかった)。 軟骨のGAG結果に関して得られたデータの説明図である(GAG量はナノ加温された軟骨において保存されていた(N=4))。 軟骨の低張力透過性の結果に関して得られたデータの説明図である(対流およびナノ加温された軟骨の両方が透過性の低下を示した)。 軟骨の凝集弾性率(aggregate modulus)結果に関して得られたデータの説明図である(対流(左)、ナノ加温(中央)、およびフレッシュ(右));ナノ加温された軟骨はフレッシュな軟骨に類似しているように見える(N=3)。 軟骨の透水係数(hydraulic permeability)結果に関して得られたデータの説明図である(対流(左)、ナノ加温(中央)、フレッシュ(右))。 対流加温を使用したガラス化戦略に関して得られたデータの説明図である。 ナノ加温による短期および長期保管後の生存率評価に関して得られたデータの説明図である。 保管および37℃の浴中でのナノ加温または対流のいずれかを使用した加温後のフレッシュな動脈および無氷ガラス化された動脈の破裂圧力(図9(A)、mmHg)および線形弾性率(図9(A)、PSI)に関して得られたデータの説明図である(結果は5~8本の個別の肺動脈の平均±1標準誤差(mean±1se)であり、フレッシュな未処理コントロールと比較した両側T検定による統計的に有意な増加が
Figure 2023506132000002
で示されている;他の有意差は認められなかった)。
軟組織の変形に典型的な応力-ひずみ曲線をもたらす、半径方向のひずみに対してプロットされた圧力データ(psi)の説明図である(典型的な曲線が示されている);線形領域は、線形弾性率(mmHg)を得るための最適なラインフィットを生成するために使用され、破裂前に記録された最大圧力は、破裂圧力(PSI)を推定するために使用された。
発明の詳細な説明
用語および定義
以下の説明では、本開示の理解を提供するために多くの詳細が示される。しかしながら、本開示の方法はこれらの詳細なしで実施され得、記載された実施形態からの多数の変形または修正が可能であり得ることが当技術分野の当業者によって理解され得る。
最初に、そのような実際の実施形態の開発において、システムに関連した制約およびビジネスに関連した制約への準拠など、実装ごとに異なる開発者の特定の目標を達成するために、多数の実装特異的な決定を下し得ることに留意されたい。さらに、そのような開発努力は複雑で時間がかかる可能性があるが、それにもかかわらず、本開示の利益を享受する当業者にとっては日常的な作業であることが理解されよう。さらに、本明細書で使用/開示されている組成物はまた、引用したもの以外のいくつかの成分を含むことができる。要約およびこの詳細な説明では、各数値は、用語「約」によって修飾されたものとしていったん読み(既に明示的にそのように修飾されていない限り)、その後、文脈上別段の指示がない限り、そのように修正されていないものとして再度読む必要がある。
本明細書で使用される場合、量に関連して使用される用語「約」は、述べられた値を含み、文脈によって指示される意味を有する。例えば、それは、少なくとも特定の量の測定に関連する誤差の程度を含む。範囲の文脈で使用される場合、修飾語句「約」は、2つのエンドポイントの絶対値によって定義される範囲を開示すると見なされるべきである。例えば、「約2~約4」の範囲は、「2~4」の範囲も開示する。
本明細書で他に明示的に述べられていない限り、温度(℃)に関する修飾語「約」は、記載された温度または温度範囲、および記載された温度または温度範囲±1~4%(記載された温度または温度範囲のエンドポイントの)を指す。細胞生存率および細胞保持率(%)に関して、本明細書中に別段の記載がない限り、細胞生存率および細胞保持率(%)に関する修飾語「約」は、記載された値または数値範囲、および記載された値または数値範囲±1~3%を指す。例えば、百万分の一(ppm)または十億分の一(ppb)のいずれかの単位を含む表現内容に関して、本明細書で特に明記しない限り、細胞生存率および細胞保持率(%)に関する修飾語「約」は、記載された値または数値範囲、および記載された値または数値範囲±1~3%を指す。単位μg/mLを含む表現内容に関して、本明細書中に別段の定めがない限り、μg/mLでの値に関する修飾語「約」は、記載された値または数値範囲、および記載された値または数値範囲±1~4%を指す。モル濃度(M)に関して、本明細書で他に明示的に述べられていない限り、モル濃度(M)に関する修飾語「約」は、記載された値または数値範囲、および記載された値または数値範囲±1~2%を指す。冷却速度(℃/分)に関して、本明細書中に別段の記載がない限り、冷却速度(℃/分)に関する修飾語「約」は、記載された値または数値範囲、および記載された値または数値範囲±1~3%を指す。
また、要約書およびこの詳細な説明では、エンドポイントを含む範囲内のすべてのポイントが記載されているとみなされるため、有用である、適切であるなどとして列挙または記載されている範囲は、少なくともその範囲内の任意の考えられる部分範囲に対するサポートを含むことを意図していることが理解されるべきである。例えば、「1~10の範囲」は、約1~約10の間の連続体に沿った各可能な数を示すものとして読まれるべきである。さらに、例えば、+/-1~4%は、1~4の間の連続体に沿って各可能な数を示すものとして読まれるべきである。さらに、本実施例における1つ以上のデータポイントは、互いに組み合わせられてもよく、または明細書におけるデータポイントの1つと組み合わせられて範囲を作成してもよく、したがってこの範囲内の各可能な値または数を含む。したがって、(1)範囲内の多数の特定のデータポイントが明示的に識別されていても、(2)範囲内のいくつかの特定のデータポイントを参照したとしても、または(3)範囲内のデータポイントが明確に識別されていないときでも、(i)範囲内の任意の考えられるデータポイントが特定されたと見なされるべきであることを本発明者らは認識し理解していること、および(ii)本発明者らは、範囲全体、各範囲内の考えられる部分範囲、および範囲内の考えられる各ポイントについての知識を有していたことが理解されるべきである。さらに、本明細書に例示的に開示された本出願の主題は、本明細書に具体的に開示されていない任意の要素がなくても適切に実施することができる。
そうでないと明示的に述べられていない限り、「または」は、包括的な「または」を指し、排他的な「または」を指すのではない。例えば、条件AまたはBは、以下のいずれかによって満たされる:Aは真(すなわち存在する)でBは偽(すなわち存在しない)、Aは偽(すなわち存在しない)、Bは真(すなわち存在する)、およびAとBの両方が真(すなわち存在する)である。
さらに、本明細書の実施形態の要素および構成要素を説明するために、「1つの(a)」または「1つの(an)」の使用が採用される。これは単に便宜上および本開示による概念の一般的な意味を与えるために行われる。この説明は、1つまたは少なくとも1つを含むように読まれるべきであり、特に明記しない限り、単数形は複数形も含む。
本明細書で使用される用語および表現は説明を目的としたものであり、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。「含む(including)」、「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、または「含む(involving)」などの文言、およびそれらの変形は、広義であり、その後に列挙されている主題、等価物、および列挙されていない追加の主題を包含することを意図している。
また、本明細書で使用される場合、「一の実施形態(one embodiment)」または「一実施形態(an embodiment)」への言及は、その実施形態に関連して説明された特定の要素、特徴、構造、または特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。本明細書のさまざまな箇所における「一実施形態では」という句の出現は、必ずしも同じ実施形態を指すとは限らない。
本明細書で使用される場合、用語「室温」は、標準圧力で約18℃~約25℃の温度を指す。さまざまな例において、室温は、約18℃、約19℃、約20℃、約21℃、約22℃、約23℃、約24℃、または約25℃であり得る。
本明細書で使用される場合、「細胞材料」または「細胞サンプル」は、材料が天然または人工であるかどうかにかかわらず、細胞成分を含む生きている生物学的材料を指し、天然または人工であるかどうかにかかわらず、細胞、組織および臓器を含む。そのような用語はまた、細胞、組織および臓器のような、凍結保存されるべきあらゆる種類の生体材料を意味する。いくつかの実施形態では、細胞、組織および臓器は哺乳動物臓器(ヒト臓器など)、哺乳動物細胞(ヒト細胞など)および哺乳動物組織(ヒト組織など)であり得る。
本明細書で使用される場合、用語「臓器」は、例えば、肝臓、肺、腎臓、腸、心臓、膵臓、精巣、胎盤、胸腺、副腎などの大血管(例えば、肺動脈)、動脈、静脈、リンパ節、骨または骨格筋を含む任意の臓器を指す。本明細書で使用される場合、用語「組織(単数)」または「組織(複数)」は、任意の種類の細胞型を含む任意の組織型(例えば、上記の臓器のうちの1つから)およびそれらの組み合わせを含み、例えば、卵巣組織、精巣組織、臍帯組織、胎盤組織、結合組織、心臓組織、筋肉、軟骨および骨由来の組織、内分泌組織、皮膚および神経組織が挙げられる。用語「組織(単数)」または「組織(複数)」はまた、脂肪組織または歯髄組織を含み得る。いくつかの実施形態では、組織または臓器は、例えば、ヒト肝臓、ヒト肺、ヒト腎臓、ヒト腸、ヒト心臓、ヒト膵臓、ヒト精巣、ヒト胎盤、ヒト胸腺、ヒト副腎、ヒト動脈、ヒト静脈、ヒト神経、ヒト皮膚、ヒトリンパ節、ヒト骨、またはヒト骨格筋のような、ヒトから得られたものである。
本明細書で使用される場合、用語「細胞」は、例えば体細胞(組織または臓器内のすべての種類の細胞を含む)、線維芽細胞、ケラチノサイト、肝細胞、心筋細胞、軟骨細胞、平滑筋細胞、幹細胞、前駆細胞、卵母細胞、生殖細胞などの任意の種類の細胞を含む。そのような細胞は、組織または臓器の形態であり得る。いくつかの実施形態では、細胞は、上記のヒト組織またはヒト臓器などの哺乳動物の組織または臓器に由来する。
本明細書で使用される場合、「保存プロトコル」は、生きている生物学的材料を含む細胞に有効期間を付与するためのプロセスを指す。保存プロトコルは、ガラス化による凍結保存および/または凍結乾燥もしくは乾燥(desiccation)による無水生物保存(anhydrobiotic preservation)を含み得る。
本明細書で使用される場合、用語「ガラス化」は、氷結晶の形成なしまたは実質的な氷結晶の形成なしのいずれかでの固化を指す。いくつかの実施形態では、ガラス化および/またはガラス状凍結保存(全体として-最初の冷却から再加温の完了まで)が氷結晶の形成なしに達成され得るように、保存されるサンプル(例えば、組織または細胞材料など)はガラス化され得る。いくつかの実施形態では、ガラス化および/またはガラス状凍結保存が、保存されるサンプル(例えば、組織または細胞材料など)の固化が実質的な氷結晶の形成なしに起こり得る場合に達成され得るように、保存されるサンプル(例えば、組織または細胞材料など)はガラス化されてもよい(すなわち、ガラス化および/またはガラス状凍結保存(全体として-最初の冷却から再加温の完了まで)は、組織への損傷を引き起こす量より少ない、少量の、または制限された量の氷の存在下でさえも達成され得る。
本明細書で使用される場合、保存されるべきサンプル(例えば、臓器、組織または細胞材料など)は、ガラス転移温度(Tg)に達するとガラス化される。ガラス化のプロセスは、氷の核形成および成長が阻害されるように温度が低下するにつれて、凍結保護剤溶液の粘度が著しく上昇することを含む。一般に、溶液が凍結せずに過冷却する可能性がある最低温度は、均一核形成温度Tであり、この温度では氷結晶が核形成および成長し、結晶性固体が溶液から形成される。ガラス化溶液はガラス転移温度Tを有し、この温度で溶質はガラス化するか、または非結晶性固体になる。
本明細書で使用される場合、「ガラス転移温度」は、プロセスが行われている条件下での溶液または製剤のガラス転移温度を指す。一般に、本開示の方法論は、生理学的圧力で実施される。しかしながら、保存されるサンプル(例えば、組織または細胞材料など)がそれによって著しく損傷されない限り、より高い圧力を使用することができる。
本明細書で使用される場合、「生理学的圧力」は、組織が正常な機能中に受ける圧力を指す。したがって、「生理学的圧力」という用語は、通常の大気条件、ならびに血管新生組織などのさまざまな組織が拡張期および収縮期の条件下で受けるより高い圧力を含む。
本明細書で使用される場合、用語「凍結保護剤」は、凍結保護剤なしの冷却効果と比較して、組織が零度以下の温度に冷却されたときに組織/臓器の内部および周囲での氷結晶の形成を最小限に抑え、加温後に組織/臓器に実質的に損傷を与えない化学物質を意味する。
本明細書で使用される場合、用語「糖」は任意の糖を指し得る。いくつかの実施形態では、糖は多糖類である。本明細書で使用される場合、用語「多糖」は、2つ以上の単糖単位を含有する糖を指す。すなわち、多糖類という用語は、二糖類および三糖類などのオリゴ糖を含むが、単糖類を含まない。糖はまた、少なくとも1つの糖が多糖類である場合のように、糖の混合物でもあり得る。いくつかの実施形態では、糖は、二糖類および三糖類からなる群から選択される少なくとも1つのメンバーである。いくつかの実施形態では、糖は二糖類であり、例えば二糖類がトレハロースおよびスクロースからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーである。いくつかの実施形態では、糖はラフィノースなどの三糖類である。糖は、トレハロースおよび/またはスクロースおよび/またはラフィノースおよび/または他の二糖類もしくは三糖類の組み合わせでもあり得る。いくつかの実施形態では、糖はトレハロースを含む。
本明細書で使用される場合、凍結保存材料に関連する用語「凍結保存後に機能的(機能する)」は、凍結保存後の臓器または組織などの凍結保存材料が凍結保存後に許容されるおよび/または意図された機能を保持することを意味する。いくつかの実施形態では、凍結保存後の細胞材料は、そのすべての意図した機能を保持している。いくつかの実施形態では、本開示の方法によって保存された細胞凍結保存材料は、意図された機能の少なくとも50%、例えば意図された機能の少なくとも60%、例えば意図された機能の少なくとも70%、例えば意図された機能の少なくとも80%、例えば意図された機能の少なくとも90%、例えば意図された機能の少なくとも95%、例えば意図された機能の100%、を保持する。例えば、細胞の生存率を保存すると同時に、組織/臓器の生理学的機能、例えば心臓のためのポンピング機能、および/または組織(例えば移植されるべきもの)が周囲の組織と一体化する能力を維持/保存することも重要であり得る。
本明細書で使用される場合、用語「無菌」は、生きている細菌、微生物、および増殖することができる他の生物を含まないことを意味する。
本明細書で使用される場合、用語「凍結保護剤を実質的に含まない」は、0.01w/w%未満の量の凍結保護剤を意味する。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、実質的にDMSOを含まない(すなわち、DMSOは0.01w/w%未満の量である)細胞材料などの、凍結保護剤を実質的に含まない媒体/溶液および/または細胞材料を使用および/または達成することができる。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、スクロースおよび/またはトレハロースなどの、糖以外の凍結保護剤を実質的に含まない媒体/溶液および/または細胞材料を使用および/または達成することができる。
本明細書で使用される場合、用語「mNP」は、磁場(m)場に置かれることによって熱を発生するように誘導され得るナノ粒子を意味し、いくつかの実施形態では、mNPの集合(以下、mNPの集合は、単に「mNP」と称される)は、ナノメートルスケールのFe粒子からなる。いくつかの実施形態では、mNPは、例えば交番磁気周波数または回転磁気周波数を含む、ラジオ周波数によって励起可能(すなわち、RF感受性ナノ粒子)であり得る。mNPは、例えば鉄などの1つまたは以上の元素、および磁場に置かれたときに熱を発生する原子を含有する化合物を含むナノ粒子であり得る。
実施形態
本開示は、VS83などの高濃度CPA製剤で保存された凍結保存組織サンプル(例えば、大血管(肺動脈など)または軟骨を含む)の再加温および均一加熱を含む方法論および組成物について記載する。これにより、凍結保存サンプルの熱応力が低くなり(例えば、亀裂が回避される)、失透がほとんどまたはまったくなくなり(例えば、結晶が回避される)ため、細胞の生存率、凝集弾性率(aggregate modulus)および透水係数(hydraulic permeability)が向上する。
本開示は、生体材料/サンプル/臓器/組織を保存するための方法に関する(用語「材料」、「サンプル」、「臓器」および「組織」は互換的に用いられ、細胞成分を含有する任意の生きている生物学的材料を包含する)。いくつかの実施形態では、保存されている生体材料/サンプル/臓器/組織は、「大容量の細胞材料」または「大容量のサンプル」または「大容量の細胞サンプル」という句で使用されるように、「大容量」のものであり得る。これは、細胞成分を含有する生きている生物学的材料を指し、材料が天然のものであるか人工のものであるかにかかわらず、細胞性の材料、組織および臓器を含み、天然のものであるか人工のものであるかにかかわらず、細胞成分を含有するそのような生きている生物学的材料(例えば、大血管(例えば、肺動脈)、または軟骨を含む)は、約4mL超の体積、例えば約5mL超の体積、または約10mL超の体積、または約15mL超の体積、または約30mL超の体積、または約50mL超の体積、または約70mL超の体積、または、約4mL~約200mLの範囲の体積、例えば約4mL~約50mLの範囲の体積、または約4mL~約30mLの範囲の体積、または約5mL~約100mLの範囲の体積、例えば約5mL~約50mLの範囲の体積、または約5mL~約30mLの範囲の体積、または約6mL~約100mLの範囲の体積、または約6mL~約50mLの範囲の体積、または約6mL~約25mLの範囲の体積、または約10mL~約100mLの範囲の体積、または約10mL~約50mLの範囲の体積、または約10mL~約25mLの範囲の体積、または約10mL~約20mLの範囲の体積を有する。そのような用語はまた、細胞材料、組織および臓器(例えば、大血管(例えば、肺動脈)、または軟骨を含む)のような、凍結保存されるべきそのような体積を有するあらゆる種類の生体材料も含む。いくつかの実施形態では、そのような体積を有する組織および臓器は哺乳動物臓器(ヒト臓器など)、哺乳動物細胞および哺乳動物組織(ヒト組織など)であり得る。
本明細書に記載の凍結保存方法は、保存されたガラス化サンプルを加温するのを補助するために、Feナノ粒子を含む凍結保護剤溶液を使用する。保存されるサンプルは、ガラス状(非結晶性またはアモルファス)状態に急速に冷却する前に、VS83などの凍結保護剤製剤に浸漬または灌流され得る。実施形態では、外部ラジオ周波数場をナノ粒子(Fe mNPなど)との制御された相互作用のために適用して、バイオマテリアル全体に分散したナノ粒子部位で熱を発生させることができる。この分散した部位における熱の発生は、凍結保存されたサンプルの迅速かつ均一な解凍をもたらす。磁性ナノ粒子と組み合わせたラジオ周波数場の使用により、制御された加熱速度を、約-135℃から約-30℃への加温中などの約0.5℃/秒から約20.0℃/秒の範囲、または約-135℃から約-30℃までの加温中などの約0.6℃/秒から約10.0℃/秒の範囲、または約-135℃から約-30℃までの加温中などの約0.8℃/秒から約5.0℃/秒の範囲、または約-135℃から約-30℃までの加温中などの約1.0℃/秒から約2.5℃/秒の範囲にすることができる。これらの加温速度は、過熱、氷の形成、および軟骨細胞の生存率の低下を回避する。
実施形態では、本開示は、ラジオ周波数(例えば234kHz)励起Feナノ粒子を使用することにより、VS83などの高濃度CPA製剤で保存されているガラス化サンプルを均一に加熱するための新規アプローチに関する。この技術は、従来の境界加熱よりも均一に加熱速度を適切に制御することができる。本開示のナノ粒子を含む高濃度の凍結保護剤で灌流またはインキュベートされたサンプルのラジオ周波数解凍は、失透およびその後の氷形成のリスクを低減する。既存の方法には、低濃度の凍結保護溶液でのナノ粒子(磁性ナノ粒子など)の使用が含まれるが、毒性(高い凍結保護剤濃度での)およびより大きな寸法のサンプル全体での加熱の均一性に関するさまざまな課題により、既存の方法の適用は制限されている。
いくつかの実施形態では、本開示のmNPは、より大きなシステムに拡張可能な印加磁場の範囲下で2つの異なる凍結保護剤溶液(溶液の少なくとも1つはVS83である)で加熱するためのナノ粒子(例えば、超常磁性ナノ粒子および強磁性ナノ粒子)の組み合わせを含み得る。
凍結保存は、バイオマテリアルが制御速度の凍結手順を経ることを必要とし、当該凍結手順は、懸濁液中の細胞、単層中の細胞、または組織もしくは臓器内の細胞に損傷を与え、破壊する可能性がある。細胞レベルでは、この損傷は脱水および/または細胞内の氷形成を伴う可能性がある。これらの因子は、冷却速度に相反して依存する:遅い冷却は脱水につながる可能性があり、速い冷却は細胞内の氷形成を引き起こす可能性がある。極端に言えば、これらの因子は両方とも懸濁液中の細胞生存率を低下させることが知られているが、高モル濃度のVS83のような高モル濃度の凍結保護剤を添加することによる本開示の方法論では、驚くべきことに最高の軟骨細胞生存率と代謝活性が観察された(すなわち、VS55およびVS70に対して)。
例えば、本開示の方法において、ナノ加温された組織(すなわち、保存されている細胞材料)の代謝活性は、再加温されてから(例えば、保管/ガラス化された後)24時間以内、再加温されてから36時間以内、または再加温されてから48時間以内、または再加温されてから96時間以内にコントロール値に完全に回復され得る。コントロール値は、保存されている特定の組織用の適切な成長培地中の新鮮な組織(すなわち、高濃度凍結保護剤製剤に曝露された細胞材料と同一の組織タイプである)で評価/設定される。その後、回復された代謝活性は、本開示の方法によって保存された凍結保存細胞材料が、例えば研究または治療用途(例えば、移植)を含むその意図された用途に供されるまで(例えば、数時間、数日間、または少なくとも3日間の期間、または少なくとも5日間の期間、または少なくとも7日間の期間)維持され得れる。
ガラス化は、十分に高い濃度の凍結保護剤をロードすること、および氷の核形成(T)を最小限に抑えるか回避しながら、ガラス転移温度(T)未満に達するように十分に急速に冷却することに依存する。ガラス転移温度未満になると、凍結保存されているサンプルは安定であり、保管することができる。解凍するには、結晶を成長させずに失透温度(T)を通過させるという、逆の同様の課題に直面する。失透温度と液相線温度(TとT)を通過する際に氷の成長を回避することは、凍結保護剤濃度および/または解凍速度の両方を上げることによって達成することができる。本開示の方法論は、高濃度の凍結保護剤で達成されたガラス化状態から凍結保存されたサンプルをうまく解凍する方法を改善する。
この点に関して、本開示は、励起mNPの使用によるガラス化サンプルの保存および加温のための新規アプローチを記載している。周知の凍結保護剤(VS83)における本開示のナノ粒子の添加は、その冷却/加温挙動にごくわずかな影響しか及ぼさない。「VS83」は、組織マトリックスのガラス化に成功した、最適化された凍結保護剤カクテルである。VS83溶液は、Brockbank et al., Vitrification of heart valve tissues. Methods Mol Biol 2015年;1257:399-421頁に記載されているように、1×ユーロコリンズ液中の4.65mol/Lのジメチルスルホキシド、4.65mol/Lのホルムアミドおよび3.31mol/Lのプロピレングリコールから構成される。
本明細書に記載の研究は、水性懸濁液中の直径10nmのナノ粒子から構成される、フェロテックから市販されているEMG308を用いて実施された。ストック溶液をVS83凍結保護剤溶液で希釈して、2mg/ml Fe mNPの濃度とした。凍結保護剤-mNP混合物は、mNP水溶液の量を考慮し、最終混合物が12.6M VS83(ユーロコリンズ中、4.65MのDMSO、4.65Mのホルムアミドおよび3.31Mの1,2-プロパンジオール)となるように調合された。
VS83溶液は、-118.69Cの示差走査熱量測定(DSC)によるガラス転移を有する(Brockbank, K.G.M., Wright, G.J., Yao, H., Greene, E.D., Chen, Z.Z., Schenke-Layland, K.(2011年)Allogeneic heart valve preservation-Allogeneic Heart Valve Storage Above the Glass Transition at -80°C. The Annals of Thoracic Surgery, 91:1829-1835頁)。純粋なVS83は臨界冷却速度も臨界加温速度も有さず、その中に氷は形成されない。ただし、一部の組織(特に大きな組織)は十分に凍結保護剤が浸透していない可能性があるため、急速な冷却速度および加温速度が必要である。
実施形態では、保存されたサンプルは、ナノ粒子の十分に均一な分布を含むであろう。あるいは、いくつかの実施形態では、ナノ粒子分布は完全に均一ではない場合がある。VS83などの高濃度凍結保護剤製剤で凍結保存された凍結保存サンプルを再加温するためのナノ粒子の使用は、より均一な加熱速度をもたらすことができ、その結果、凍結保存サンプルに対する失透および/または他の有害な影響を低減することができる。さらに、凍結保存サンプルを再加温するための開示されたナノ粒子の使用は、より高いモル濃度の凍結保護剤を用いたより大きなシステムの凍結保存を容易にする。
実施形態では、本開示は、組織/細胞材料を含む凍結保存サンプルを当該組織/細胞材料への損傷を最小限に抑えながら解凍するのに有効な凍結保護剤/製剤(例えば高濃度、VS83など)およびナノ粒子(mNPなど)を含む凍結保護組成物を記載する。凍結保護剤/製剤は、バイオマテリアルの凍結保存に適した任意の材料を含み得る。例示的な適切な凍結保護剤には、例えば、アルコール、糖、ポリマー、および氷ブロッキング分子の組み合わせが含まれ、当該氷ブロッキング分子は、水の相図を変化させてガラスをより容易に(および/またはより高温で)形成させる一方で、冷却または解凍中に氷の核形成および成長の可能性を低減する。ほとんどの場合、凍結保護剤は単独ではなく、カクテルで使用される。
本開示の方法は、細胞材料(例えば、大血管(肺動脈など)または軟骨など)を、2mg/mLのFe mNPのような有効量のmNPを含む凍結保護剤溶液と接触させることを含む。いくつかの実施形態では、これは、二糖類(例えば、トレハロースおよび/またはスクロース)などの少なくとも1つの糖とともに、そのような凍結保護剤製剤/溶液中で大容量の細胞材料(例えば、大血管(肺動脈など)または軟骨など)をインキュベートすることを含み得る。実施形態では、二糖類(例えば、トレハロースおよび/またはスクロース)などの少なくとも1つの糖は、冷却および再加温中に大容量の細胞材料(例えば、大血管(肺動脈など)または軟骨など)の細胞の生存をより助長する環境を提供するのに有効な量で凍結保護剤製剤/溶液中に存在し得る。
いくつかの実施形態では、本開示の方法によって保存された細胞凍結保存材料(例えば、大血管(肺動脈など)または軟骨など)は、意図された機能の少なくとも50%、例えば意図された機能の少なくとも60%、例えば意図された機能の少なくとも70%、例えば意図された機能の少なくとも80%、例えば意図された機能の少なくとも90%、例えば意図された機能の少なくとも95%、例えば意図された機能の100%、を保持する。例えば、組織や臓器における細胞の生存率を保存すると同時に、細胞/組織/臓器の生理学的機能、例えば心臓のためのポンピング機能、および/または組織/細胞(例えば、移植されるもの)が周囲の組織/細胞と一体化する能力を維持/保存することも重要であり得る。
実施形態では、溶液、例えば、細胞、組織および臓器の保管によく適したVS83のような既知の溶液は、保存プロトコルの間、大容量の細胞材料の細胞の生存をより助長する環境を提供するのに有効な任意の有効量のmNPを含み得る。
いくつかの実施形態では、本開示の方法において、他の凍結保護剤と組み合わせてmNPを含有する媒体(用語「媒体」および「溶液」は互換的に用いられる)は、凍結保存組成物を調製するために、組織および臓器などの細胞材料と組み合わされ得る。媒体(水性媒体であってもよい)は、これらの目的のために、凍結保護剤と組み合わせた任意の適切な濃度のmNPを含むことができる。
いくつかの実施形態では、高濃度のVS83のような高濃度の凍結保護剤と組み合わせた少なくとも1種のmNPが、哺乳動物臓器、哺乳動物細胞および哺乳動物組織(その後移植され得るものを含む)のような臓器、細胞および組織からなる群から選択される生きている細胞材料/サンプルの生存率(凍結保存後)の改善につながるような量で本開示の方法において使用される。「細胞生存率の改善」または「生存率の改善」という句は、例えば、80%以上など、少なくとも60%の細胞生存率(%)を指す。改善された細胞生存率(%)は、50%以上、60%以上、70%以上、73%以上、75%以上、77%以上、80%以上、83%以上、85%以上、87%以上、90%以上、93%以上、95%以上、97%以上、98%以上、または99%以上であり得る。
実施形態では、mNPを含む製剤/溶液/媒体は、任意の所望の期間、例えば、mNPの所望の用量(有効量など)が細胞または組織上/内に存在するまで、保存すべきサンプルと接触させて、改善された生存率をもたらす(凍結保存後)、および/またはナノ加温時の組織損傷を防止/保護することができる。
いくつかの実施形態では、凍結保存される細胞はまた、例えば少なくとも塩基性塩溶液、エネルギー源(例えばグルコース)、および冷却された温度で中性のpHを維持することができる緩衝液からなる凍結適合性pH緩衝液と接触していてもよい。よく知られたそのような材料には、例えば、ダルベッコの改良イーグル培地(DMEM)が含まれる。この材料はまた、凍結保存組成物の一部として含まれてもよい。例えば、Campbell et al., “Cryopreservation of Adherent Smooth Muscle and Endothelial Cells with Disaccharides,” In: Katkov I.(編) Current Frontiers in Cryopreservation. Croatia: In Tech(2012年);およびCampbell et al., “Development of Pancreas Storage Solutions: Initial Screening of Cytoprotective Supplements for β-cell Survival and Metabolic Status after Hypothermic Storage,” Biopreservation and Biobanking 11(1):12-18頁(2013年)を参照されたい。
いくつかの実施形態では、凍結保護剤化合物(合計で、糖および任意の他の凍結保護剤を含む)は、凍結保存組成物中に、例えば、約8.5M~約15M、約9.0~約13M、約10~約13M、約10.5~約12.8M、約11.5~約12.8M、約12.2~約12.75M、または約12.50~約12.75Mの量で存在し得る。いくつかの実施形態では、凍結保護剤化合物(合計で、糖および任意の他の凍結保護剤を含む)は、凍結保存組成物中に、約12.6M、または約12.4M、または約12.2M、または約12.0M、または約12.8M、または約13.0Mの量で存在し得る。
いくつかの実施形態では、保存される細胞材料は、さらなる凍結保護剤(例えば、VS83を超える)および/または本開示の方法のmNP含有溶液/媒体/製剤/組成物と接触させることができる。
適切なさらなる凍結保護剤としては、例えば、アセトアミド、アガロース、アルギン酸塩、アラニン、アルブミン、酢酸アンモニウム、不凍タンパク質、ブタンジオール(2,3-ブタンジオールなど)、コンドロイチン硫酸、クロロホルム、コリン、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジオン、シクロヘキサントリオール、デキストラン、ジエチレングリコール、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド(n-ジメチルホルムアミドなど)、ジメチルスルホキシド、エリトリトール、エタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ホルムアミド、グルコース、グリセロール、グリセロリン酸塩、グリセリルモノアセテート、グリシン、糖タンパク質、ヒドロキシエチルデンプン、イノシトール、ラクトース、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、マルトース、マンニトール、マンノース、メタノール、メトキシプロパンジオール、メチルアセトアミド、メチルホルムアミド、メチル尿素、メチルグルコース、メチルグリセロール、フェノール、プルロニックポリオール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、プロリン、プロパンジオール(1,2-プロパンジオールおよび1,3-プロパンジオールなど)、ピリジンN-オキシド、ラフィノース、リボース、セリン、臭化ナトリウム、塩化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、硝酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、ソルビトール、トリエチレングリコール、酢酸トリメチルアミン、尿素、バリン、およびキシロースが挙げられる。本開示において使用され得る他の凍結保護剤は、Fahyらの米国特許第6,395,467号、Wowkらの米国特許第6,274,303号、Khirabadiらの米国特許第6,194,137号、Fahyらの米国特許第6,187,529号、Fahyらの米国特許第5,962,214号、Calacoらの米国特許第5,955,448号、Merymanらの米国特許第5,629,145号、および/またはKhirabadiらの米国特許出願第09/691,197号に対応するWO02/32225A2に記載されている。
凍結保存組成物はまた、細胞、組織および臓器の保存によく適した溶液を含み得る(またはそれに基づく)。溶液は、周知のpH緩衝液を含み得る。いくつかの実施形態では、溶液は、例えば、デキストロース、一塩基性および二塩基性リン酸カリウム、重炭酸ナトリウム、ならびに塩化カリウムからなるEuroCollins溶液であり得、これはTaylor et al., “Comparison of Unisol with Euro-Collins Solution as a Vehicle Solution for Cryoprotectants,” Transplantation Proceedings 33:677-679頁(2001年)に記載されている。あるいは、凍結保護剤溶液は、Unisolなどの代替溶液に配合することもできる。
なおさらに、本開示の方法において使用するための凍結保存組成物はまた、不凍糖脂質(AFGL)、不凍タンパク質/ペプチド(AFP)、「熱ヒステリシス」タンパク質(THP)、または氷の再結晶阻害剤(IRI)を含み得る。そのような材料は、例えば、組成物の約0.001~約1mg/mL、約0.05~約0.5mg/mL、または約0.1~約0.75mg/mLの量で凍結保存組成物中に存在し得る。
いくつかの実施形態では、二糖類(例えばトレハロースおよび/またはスクロース)などの少なくとも1つの糖は、例えばDMSOなどの凍結保護剤の代替物として、または、その濃度を、例えば、凍結保護剤が凍結保存手順の間に凍結保存材料/サンプルの機能をできるだけ保存することに関して同じまたはより良好な保護効果を達成する非毒性濃度(問題の組織に応じて)に低下させるための、かかる他の凍結保護剤のサプリメントとして作用し得る。例えば、いくつかの実施形態では、二糖類(例えば、トレハロースおよび/またはスクロース)などの少なくとも1つの糖は、多くの生物系のガラス化の成功を実証した最適化凍結保護剤カクテルである「VS83」として知られる溶液において、例えば、DMSOなどの凍結保護剤の代替物として作用し得る。この点に関して、二糖類(例えば、トレハロースおよび/またはスクロース)などの少なくとも1つの糖は、VS83溶液中の凍結保護剤の代替物として作用してその濃度を低下させるか、または、凍結保護剤が凍結保存手順の間に凍結保存材料/サンプルの機能をできるだけ保存することについて同じまたはより良好な保護効果を達成するVS83中の他の凍結保護剤のサプリメントとして作用し得る。
さらに、本開示の方法において使用するための凍結保存組成物はまた、意図された機能および/または作用メカニズムを達成するために、適切な濃度で1つ以上の追加のサプリメントおよび/または添加剤を含み得る。いくつかの実施形態では、抗酸化剤の有効濃度範囲は、約0.5μM~約1000μM、例えば、約5μM~約500μM、または50μM~約200μMの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、アポトーシス阻害剤の有効濃度範囲は、約0.1μM~約100μM、例えば、約1μM~約50μM、または5μM~約20μMの範囲であり得る。
いくつかの実施形態では、本開示の凍結保存組成物に添加され得るおよび/または本開示の方法論において使用され得る例示的なサプリメントおよび/または添加剤は、以下の表Iに列挙されるものうちの1つ以上を含む。
Figure 2023506132000003
いくつかの実施形態では、トロロックスおよび/またはα-トコフェロールの有効濃度範囲は、約0.5μM~約10mM、例えば、約5μM~約500μM、または約50μM~約200μMの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、アセチルシステインの有効濃度範囲は、約0.1μM~約50mM、例えば、約1mM~約40mM、または約10mM~約30mMの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、スーパーオキシドジスムターゼの有効濃度範囲は、約1mg/mL~約400mg/mL、例えば、約10mg/mL~約300mg/mL、または約100mg/mL~約250mg/mLの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、GSH-MEEの有効濃度範囲は、約500μM~約20mM、例えば、約1000μM~約12mM、または約2mM~約10mMの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、グルタチオンの有効濃度範囲は、約100μM~約11mM、例えば、約500μM~約6mM、または約2mM~約4mMの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、Q-VD-OPhの有効濃度範囲は、約0.5μM~約50μM、例えば、約5μM~約40μM、または約20μM~約30μMの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、Z-VAD-FMKの有効濃度範囲は、約1μM~約100μM、例えば、約5μM~約80μM、または約40μM~約60μMの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、イバクチン(Ivachtin)の有効濃度範囲は、約0.5nM~約50nM、例えば、約5nM~約40nM、または約20nM~約25nMの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、ピフィスリン-αの有効濃度範囲は、約0.1mM~約60mM、例えば約1mM~約40mM、または約10mM~約30mMの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、Bax阻害剤P5の有効濃度範囲は、約0.5μM~約0.5mM、例えば、約5μM~約400μM、または約50μM~約200μMの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、3-OMGの有効濃度範囲は、約0.1mM~約400mM、例えば、約10mM~約300mM、または約50mM~約200mMの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、硫化水素の有効濃度範囲は、約0.1ppm~約60ppm、例えば、約1ppm~約40ppm、または約10ppm~約30ppmの範囲であり得る。
本開示の方法において使用され得る細胞材料中の細胞は、任意の適切な細胞組成物であり得る。いくつかの実施形態では、細胞は、皮膚細胞、ケラチノサイト、骨格筋細胞、心筋細胞、肺細胞、腸間膜細胞、脂肪細胞、幹細胞、肝細胞、上皮細胞、クッパー細胞、線維芽細胞、ニューロン、心臓筋細胞、筋細胞、軟骨細胞、膵腺房細胞、ランゲルハンス島、骨細胞、筋芽細胞、サテライト細胞、内皮細胞、脂肪細胞、前脂肪細胞、胆管上皮細胞、および前駆細胞、またはこれらの細胞タイプのいずれかの組み合わせであり得る。
いくつかの実施形態では、本開示の方法で使用される細胞/組織(例えば、大血管(肺動脈など)、または軟骨など)は、任意の適切な動物種、例えばヒト、イヌ科動物(例えばイヌ)、ネコ科動物(例えばネコ)、ウマ科動物(例えばウマ)、ブタ、ヒツジ、ヤギ、またはウシ哺乳動物などの哺乳動物由来であり得る。
凍結保存溶液を調製するために使用される製剤/組成物は、様々な方法で、mNPと組み合わせることができる。いくつかの実施形態では、細胞材料(例えば、大血管(肺動脈など)、または軟骨など)は、mNPを含有する水溶液などの水性液体媒体と組み合わせることができる。例えば、任意に穏やかに撹拌しながら、段階的な組み合わせを実施することができる。
凍結保存組成物(および保存される細胞材料に関連するmNP)が調製されると、無氷ガラス化凍結保存のための冷却は、任意の方法で実施することができ、そして上記のものに任意の追加の材料を使用することができる。細胞材料を保存するためのプロトコルは、以下の特許および刊行物に記載されている:Fahyらの米国特許第6,395,467号、Wowkらの米国特許第6,274,303号、Khirabadiらの米国特許第6,194,137号、Fahyらの米国特許第6,187,529号、Tonerらの米国特許第6,127,177号、Fahyらの米国特許第5,962,214号、Calacoらの米国特許第5,955,448号、Beattieらの米国特許第5,827,741号、Goodrichらの米国特許第5,648,206号、Merymanらの米国特許第5,629,145号、Rudolphらの米国特許第5,242,792号、およびKhirabadiらの米国特許出願第09/691,197号に対応するWO02/32225A2に記載されている。
保存プロトコルの凍結保存部分は、典型的には、細胞/組織(例えば、大血管(肺動脈など)、または軟骨など)を水の凝固点より十分に低い温度、例えば約-80℃以下、より典型的には約-130℃以下に冷却することを含む。当業者に既知の任意の凍結保存方法を使用することができる。例えば、凍結保存のための冷却プロトコルは、凍結保存温度が約-20℃より低く(すなわち、より低温)、例えば約-80℃以下(すなわち、より低温)、または約-135℃以下(すなわち、より低温)であり得る任意の適切な種類であり得る。いくつかの実施形態にでは、凍結保存温度は、約-20℃から約-196℃、または約-120~約-196℃、または約-130℃~約-196℃、または約-140℃~約-190℃、または約-150℃~約-190℃、または約-150℃~約-180℃、または約-30~約-175℃、または約-80℃~約-160℃、または約-85℃~約-150℃、または約-95℃~約-135℃、または約-80℃~約-180℃、または約-90℃~約-196℃、または約-100℃~約-196℃の範囲であり得る。
いくつかの実施形態では、保存プロトコルは、温度制御開始点(+4から-30℃)から-80℃または上記開示された冷却温度のいずれかまでの連続制御速度冷却を含み、冷却速度は凍結保存される細胞/組織の特性に依存し得る。例えば、凍結保存のための冷却プロトコルは、毎分約-0.1℃を超える、または毎分約-4.0℃を超える、または毎分約-6.0℃を超える、または毎分約-8.0℃を超える、または毎分約-10.0℃を超える、または毎分約-14.0℃を超える、または毎分約-25.0℃を超える、または毎分50℃を超える速度などの任意の適切な速度(および/または平均冷却速度、例えばサンプルの初期温度から凍結保存温度まで)であり得る。例えば、連続速度冷却(または他の種類の冷却)の場合などの冷却速度(および/または平均冷却速度)は、例えば、毎分約-0.1℃~約-10℃または毎分約-1℃~約-2℃であり得る。冷却速度は、毎分約-0.1~約-9℃、毎分約-0.1~約-8℃、毎分約-0.1~約-7℃、毎分約-0.1~約-6℃、毎分約-0.1~約-5℃、毎分約-0.1~約-4℃、毎分約-0.1~約-3℃、毎分約-0.1~約-2℃、毎分約0.1~約-1℃、毎分約0.1~約-0.5℃、毎分約-1~約-2℃、毎分約-1~約-3℃、毎分約-1~約-4℃、毎分約-1~約-5℃、毎分約-1~約-6℃、毎分約-1~約-7℃、毎分約-1~約-8℃、毎分約-1~約-9℃、毎分約-1~約-10℃、毎分約-2~約-3℃、毎分約-2~約-5℃、毎分約-2~約-7℃、毎分約-2~約-8℃、毎分約-2~約-20℃、毎分約-4~約-10℃、毎分約-4℃~約-8℃、毎分約-4~約-6℃、毎分約-6~約-10℃、毎分約-6~約-9℃、毎分約-6~約-8℃、毎分約-6~約-7℃、毎分約-7~約-10℃、毎分約-7~約-9℃、毎分約-7~約-8℃、毎分約-8~約-9℃、毎分約-9~約-10℃、毎分約-7~約-30℃、毎分約-10~約-25℃、毎分約-15~約-25℃、毎分約-20~約-25℃、または毎分約-20~約-30℃であり得る。保存プロトコルはまた、いくつかの実施形態では冷却速度と無関係であり得る。
保存されるサンプル(例えば、細胞材料および/または組織)がこの連続冷却によって約-40℃~-80℃以下に冷却されると、それらは、凍結保存温度(典型的には凍結溶液のガラス転移温度より低い)にさらに冷却するために液体窒素または液体窒素の気相に移されてもよい。凍結保存温度にさらに冷却する前に、保存されるサンプル(例えば、細胞材料および/または組織)を約-40℃~約-75℃、約-45℃~約-70℃、約-50℃~約-60℃、約-55℃~約-60℃、約-70℃~約-80℃、約-75℃~約-80℃、約-40℃~約-45℃、約-40℃~約-50℃、約-40℃~約-60℃、約-50℃~約-70℃、または約-50℃~約-80℃に冷却してもよい。あるいは、サンプルを-120℃まで冷却してから、所望の凍結保存温度までさらに冷却してもよい。ただし、氷の形成は起こらないので、結果は冷却速度と無関係であることが予想される。細胞生存率の保持に対する制限因子は、摂氏0度に近い温度での凍結保護剤曝露の期間であり、温度が低いほど、生存率の低下が予想されない保管温度に達するまで細胞毒性作用のリスクが少なくなる。
mNPおよび/または糖(トレハロースおよび/またはスクロースなど)を補充した凍結保護剤製剤では、ナノ加温および/またはガラス転移温度を超える温度への曝露中に氷の核形成の傾向が低下する。したがって、これらの製剤中の細胞材料は、数分または数時間、-80℃などの温度への短期間の曝露に耐えるであろう。正確な期間は、凍結保護剤mNPに依存する。各温度で許容される期間は、その温度で使用される凍結保護剤製剤の相対的細胞毒性に依存するであろう。さらに、これらの凍結保護剤製剤は、液体窒素からコラーゲンの変性温度範囲(約60℃)未満の生理学的温度までの範囲の温度で、細胞生存率が望まれない組織(例えば、心臓弁、皮膚、腱および末梢神経移植片)の保存に使用できると予想される。
いくつかの実施形態では、本開示の方法は段階的な冷却プロセスを含むことができ、ここで組織の温度は、ガラス-120℃と-20℃との間の第1の温度で凍結保護剤を含有する溶液中において第1の温度まで下げられ、その後、第1の溶液のガラス転移温度と-20℃の間の温度で凍結保護剤を含有する同じ溶液中において第2の温度までさらに下げられ、このプロセスは、所望の温度が達成されるまで、第3、第4、第5、第6、第7などの溶液で繰り返されてもよい。mNPは、冷却開始直前に最初のステップで保存されているサンプル/材料中に導入/分散させる必要がある。
実施形態では、第1の溶液(例えば、mNPを含む凍結保護剤製剤)のガラス転移温度は、任意の所望のレベル、例えば、約-100℃~約-140℃、例えば約-110℃~約-130℃、または-115℃~約-130℃の範囲内などに設定することができる。
初期溶液に浸した後、保存するサンプル(細胞材料または組織など)を、凍結保護剤およびmNPを含む溶液に浸してもよい。最終的な凍結保護剤およびmNPの濃度は、段階的な冷却プロセスで達成することができる。細胞材料への凍結保護剤溶液の添加は、凍結保護剤が4ステップ以上添加される段階的なプロセスであるが、代わりに連続的な勾配を使用してもよい。最後の凍結保護剤ステップは、零度以下の温度、アルコール浴中-25~-1℃で実施され得る。さらに、mNPは最後の凍結保護剤添加ステップで添加される。
実施形態では、保存されるサンプル(細胞材料または組織など)は、保存プロトコル(例えば、冷却プロトコル、保管、および加温プロトコル)の間、氷のない状態および/または氷による損傷のない状態のままであり得る。例えば、冷却プロセスの完了後、保存されるサンプル(細胞材料または組織など)は、少なくとも3日の期間、または少なくとも5日の期間、または少なくとも7日の期間、または少なくとも8日の期間、数か月または数年のような長期間の保管ステップ/段階の間、氷のない状態および/または氷による損傷のない状態のままであり得る。
いくつかの実施形態では、冷却プロセスの開始時に、保存されるべきサンプル(細胞材料または組織など)は、保存プロトコル全体の間(すなわち、冷却プロトコル、保管、および加温プロトコルの間)、氷のない状態および/または氷による損傷のない状態のままであり得、ここで、保存プロトコル全体(例えば、冷却プロトコル、保管ステップ/段階、および加温プロトコル)が少なくとも3日から最大約3ヶ月の範囲の期間、または少なくとも5日から約2ヶ月までの範囲内の期間、または少なくとも7日から約1ヶ月までの範囲内の期間、または少なくとも8日から約21日までの範囲内の期間、または少なくとも8日から約14日までの範囲内の期間を有する。
ナノ粒子(mNP)は、限定されるものではないが、交番磁気周波数または回転磁気周波数を含む、ラジオ周波数によって励起可能な任意のmNP(すなわち、RF感受性ナノ粒子)であり得、以下に記載されるとおりである。ナノ粒子は、例えば鉄などの1つ以上の元素、および磁場に置かれたときに熱を発生する原子を含有する化合物を含むことができる。
本明細書で使用される場合、粒子は、1マイクロメートル(μm)以下の最大直径を有する場合にmNPと見なすことができるが、1マイクロメートルを超える特性寸法を有する構造(凝集体など)の一部として組み込まれる場合もある。本明細書でいう寸法は、ナノ粒子の寸法を指し、より大きな構造の寸法のことではない。したがって、ナノ粒子の最大直径は、例えば、800ナノメートル(nm)以下、700nm以下、600nm以下、500nm以下、450nm以下、400nm以下、350nm以下、300nm以下、250nm以下、200nm以下、150nm以下、100nm以下、90nm以下、80nm以下、70nm以下、60nm以下、50nm以下、40nm以下、30nm以下、25nm以下、20nm以下、15nm以下、10nm以下、または1nm以下であり得る。粒子は、少なくとも1nm、例えば、少なくとも2nm、少なくとも3nm、少なくとも4nm、少なくとも5nm、少なくとも6nm、少なくとも7nm、少なくとも8nm、少なくとも9nm、少なくとも10nm、少なくとも25nm、少なくとも50nm、少なくとも100nm、少なくとも250nm、または少なくとも500nmの最小直径を有する場合にmNPと見なすことができる。いくつかの実施形態では、mNPのサイズは、上記の任意の最大直径と当該最大直径よりも小さい上記の任意の最小直径とによって規定されるエンドポイントを有する範囲を含み得る。
いくつかの実施形態では、mNPは超常磁性ナノ粒子を含み得る。他の実施形態では、mNPは、強磁性ナノ粒子を含み得る。mNPは、例えば球形、立方体、ピラミッド型などの、任意の適切な形状を有し得る。いくつかの実施形態では、mNPは、任意の2つ以上のタイプのナノ粒子の組み合わせを含むことができる。いくつかの実施形態では、mNPは凝集することができる。そのような実施形態では、mNPは互いに相互作用することができる。これらの実施形態のいくつかでは、所望に応じて、特定の用途における加熱速度を向上または減少させるために、mNPの凝集を調整することができる。
mNPは、VS83などの凍結保護製剤中に、ガラス化組織1ミリリットル当たり最少で少なくとも0.5mg、例えば、少なくとも1.0mg/ml、少なくとも1.5mg/ml、少なくとも3.0mg/ml、少なくとも4.0mg/ml、少なくとも5.0mg/ml、少なくとも6.0mg/ml、少なくとも7.0mg/ml、少なくとも8.0mg/ml、少なくとも9.0mg/ml、少なくとも10mg/ml、少なくとも11mg/ml、少なくとも12mg/ml、少なくとも13mg/ml、少なくとも14mg/ml、少なくとも15mg/ml、少なくとも20mg/ml、少なくとも25mg/ml、または少なくとも50mg/mlの、熱を発生するために磁気励起され得る原子を提供するに十分な量で存在し得る。いくつかの実施形態では、mNPは、VS83などの凍結保護製剤中に、最大で100mg/ml以下、75mg/ml以下、50mg/ml以下、25mg/ml以下、20mg/ml以下、15mg/ml以下、10mg/ml以下、9mg/ml以下、5mg/ml以下、3mg/ml以下、2.5mg/ml以下、2mg/ml以下、0.2mg/mLを提供するのに十分な量で存在し得る。いくつかの実施形態では、凍結保護組成物中の磁性ナノ粒子の量は、上記の任意の最小量と最大量よりも小さい上記の任意の最大量とによって規定されるエンドポイントを有する範囲として特徴付けら得る。
凍結保護組成物およびmNPは、組織/細胞材料を含む凍結保存されたサンプルを、組織/細胞材料への損傷を最小限に抑えて解凍するための方法で使用することができる。加温プロトコルの変数(アンペア(Amps)、kHz、時間など)は、加温される組織(およびそのサイズ)、選択された加温速度、mNPのアイデンティティ、およびmNP濃度/分布について有効であるように適切に設定され得る。
例えば、いくつかの実施形態では、誘導加熱システムの設定は、10~800アンペア(Amps)/10~1000kHz/20~300秒間の範囲で設定され得るか、または100~700アンペア(Amps)/50~700kHz/40~200秒間の範囲で設定され得るか、または300~600アンペア(Amps)/150~300kHz/50~120秒間の範囲で設定され得るか、または450~550アンペア(Amps)/150~300kHz/60~100秒間の範囲で設定され得るか、または475~525アンペア(Amps)/200~250kHz/70~90秒間の範囲で設定され得るか、または300~600アンペア(Amps)/150~300kHz/50~120秒間の範囲で設定され得るか、または約500アンペア(Amps)、約234kHzで約80秒間に設定され得る。
いくつかの実施形態では、ラジオ周波数場は、約210kHz~約250Hzの範囲であり得る。別の特定の例では、ラジオ周波数場は、230kHz~約240kHzの範囲、例えば、約234kHzであり得る。
いくつかの実施形態では、電磁エネルギーは、ラジオ周波数場、交番磁場、または回転磁場を含むことができる。そのような実施形態では、電磁エネルギーは、1MHz以下、例えば、750Hz以下、500Hz以下、375Hz以下、300Hz以下、250Hz以下、225Hz以下、200Hz以下、175Hz以下、150Hz以下、125Hz以下、100Hz以下、75Hz以下、または50Hz以下の最小周波数を示すことができる。いくつかの実施形態では、ラジオ周波数場は、少なくとも1Hz、例えば、少なくとも5Hz、少なくとも10Hz、少なくとも25Hz、少なくとも50Hz、少なくとも75Hz、少なくとも100Hz、少なくとも125Hz、少なくとも150Hz、少なくとも175Hz、少なくとも200Hz、少なくとも225Hz、または少なくとも250Hzの最大周波数を示すことができる。いくつかの実施形態では、ラジオ周波数場は、上記の任意の最小周波数と当該最小周波数よりも大きい上記の任意の最大周波数とをエンドポイントとして有する周波数の範囲として特徴付けられ、時間に依存する場合がある。いくつかの実施形態では、例えば、ラジオ周波数場は、約175Hz~約375Hzの範囲であり得る。別の特定の例では、ラジオ周波数場は、100Hz~約500Hzの範囲であり得る。
いくつかの実施形態では、加温プロトコル(例えば、mNPを含む)は、例えば、-135℃未満から-30℃までなどの加温プロトコル(例えば、mNPを含む)の少なくとも一部の間、または加温プロトコル(例えば、mNPを含む)全体の間、10~800アンペア(Amps)の印加、100~700アンペア(Amps)の印加、300~600アンペア(Amps)の印加、または450~550アンペア(Amps)の印加、または475~525アンペア(Amps)の印加、または300~600アンペア(Amps)の印加、約500アンペア(Amps)の印加を含み得る。
いくつかの実施形態では、加温プロトコル(例えば、mNPを含む)は、少なくとも1アンペア/分(Amp/min)、例えば、少なくとも5アンペア/分(Amp/min)、少なくとも10kA/m、少なくとも20kA/m、少なくとも30kA/m、少なくとも50kA/m、少なくとも75kA/m、または少なくとも100kA/mの印加を含み得る。いくつかの実施形態では、ラジオ周波数場は、200kA/m以下、例えば、150kA/m以下、100kA/m以下、80kA/m以下、50kA/m以下、または25kA/m以下の最大強度を有し得る。いくつかの実施形態では、ラジオ周波数場の強度は、上記の任意の最小強度と当該最小強度よりも大きい上記の任意の最大強度とをエンドポイントとして有する範囲として特徴付けられ、時間に依存する場合がある。いくつかの実施形態では、ラジオ周波数場は、約10kA/m~約100kA/mの強度を有し得る。1つの特定の実施形態では、ラジオ周波数場は、24kA/mの強度を有し得る。
いくつかの実施形態では、いくつかの実施形態では、ラジオ周波数場は、少なくとも1kA/m、例えば、少なくとも5kA/m、少なくとも10kA/m、少なくとも20kA/m、少なくとも30kA/m、少なくとも50kA/m、少なくとも75kA/m、または少なくとも100kA/mの最小強度を有し得る。いくつかの実施形態では、ラジオ周波数場は、200kA/m以下、例えば、150kA/m以下、100kA/m以下、80kA/m以下、50kA/m以下、または25kA/m以下の最大強度を有し得る。いくつかの実施形態では、ラジオ周波数場の強度は、上記の任意の最小強度と当該最小強度よりも大きい上記の任意の最大強度とをエンドポイントとして有する範囲として特徴付けられ、時間に依存する場合がある。いくつかの実施形態では、ラジオ周波数場は、約10kA/m~約100kA/mの強度を有し得る。1つの特定の実施形態では、ラジオ周波数場は、24kA/mの強度を有し得る。
いくつかの実施形態では、上記のラジオ周波数場および/または加温手順(例えば、mNPを含む)は、少なくとも20秒、例えば、少なくとも30秒、少なくとも50秒、少なくとも70秒、少なくとも90秒、少なくとも110秒、または少なくとも150秒の最小時間の間、適用/実施され得る。いくつかの実施形態では、ラジオ周波数場は、40秒以下、例えば、60秒以下、85秒以下、105秒以下、115秒以下、または180秒以下の最大強度を有し得る。いくつかの実施形態では、ラジオ周波数場の強度は、上記の任意の最小強度と当該最小強度よりも大きい上記の任意の最大強度とをエンドポイントとして有する範囲として特徴付けられ、時間に依存する場合がある。
いくつかの実施形態では、サンプルは、-135℃未満から約-30℃までの加温中に、少なくとも0.5℃/秒、例えば、少なくとも1℃/秒、少なくとも5℃/秒、または少なくとも20℃/秒の最小速度で加温され得る。いくつかの実施形態では、バイオマテリアルは、-135℃未満から約-30℃までの加温中に、0.5℃/秒以下、例えば、1℃/秒以下、5℃/秒以下、または20℃/秒以下の最大速度で加温され得る。いくつかの実施形態では、バイオマテリアルは、上記の任意の最小速度と当該最小速度よりも大きい上記の任意の最大速度とによって規定されるエンドポイント有する範囲内の速度で加温され得る。いくつかの実施形態では、バイオマテリアルは、約1℃/秒の速度で加温され得る。他の特定の実施形態では、バイオマテリアルは、約0.5℃/秒または約20℃/秒の速度で加温され得る。
いくつかの実施形態では、従来の加熱方法はまた、例えばナノ加温を組み合わせて、サンプルを加温するために使用され得る。そのような従来の加熱方法には、限定されるものではないが、対流およびマイクロ波加熱が含まれる。本開示の方法論に先立って、外側境界から加熱する対流加熱を含む従来の方法論は、小さいガラス化サンプルには有効であるが、凍結保護剤の細胞毒性ならびに冷却および加温中の氷形成のために大きいサンプル(例えば、5mLより大きい体積を有する)には無効である。
いくつかの実施形態では、サンプルを再加温するために使用され得る低ラジオ周波数および誘導加熱方法論は、例えば米国特許出公開第2016/0015025号に記載されているものなど、生体適合性磁気ナノ粒子に関して記載されているものである。
実施形態では、本開示の方法によって保存された凍結保存細胞材料は、例えば研究または治療用途を含む任意の適切な用途に使用され得る。例えば、治療的使用に関して、凍結保存細胞材料は、大動脈心疾患、変性関節疾患、変性骨疾患、結腸または腸の疾患、変性性骨髄症、慢性腎不全の疾患、心臓病、椎間板疾患、角膜疾患、脊髄外傷、および指、四肢、顔などの外傷により失われたパーツの置換などの疾患または状態を治療または予防するためにヒトまたは動物の患者に投与され得る。
凍結保存細胞材料は、任意の適切な方法で患者に投与することができる。いくつかの実施形態では、凍結保存細胞材料は、患者に局所的に送達され得る(例えば、火傷、創傷、または皮膚疾患の治療において)。いくつかの実施形態では、凍結保存細胞材料は、患者内の局所移植部位に送達され得る。これらのいずれかまたはこれらの投与様式の任意の組み合わせを患者の治療に使用することができる。
第一の態様において、本開示は、生きている大容量の細胞材料を保存する方法であって、前記細胞材料を、mNPを含有する凍結保護剤製剤/溶液/媒体に曝露すること、前記細胞材料を、前記細胞材料への氷による損傷が生じない保存プロトコルに供すること、および凍結保存された細胞材料を得ることを含む、方法に関する。第二の態様において、前記第一の態様の方法は、凍結保護剤溶液中の前記細胞材料は4mL超の体積を有する、方法であり得る。第三の態様において、上記の態様のいずれかの方法は、前記凍結保護剤溶液中の細胞材料の体積が10mL超である、方法であり得る。第四の態様において、上記の態様のいずれかの方法は、前記細胞材料は、前記細胞材料を前記保存プロトコルに供すると、少なくとも7日間無氷(ice-free)である、方法であり得る。第五の態様において、上記の態様のいずれかの方法は、前記保存プロトコルは、前記保存プロトコルまたは保管中に氷による損傷が生じないように、冷却および加温中の氷の成長を制限するガラス化戦略を含む、方法であり得る。
さらなる態様において、本開示はまた、保存プロトコル中に、生きている大容量の細胞材料を、mNPを含有する凍結保護剤製剤、および任意にさらなる凍結保護剤に曝露することによって得られる凍結保存細胞材料に関する;ここで、前記保存プロトコル後の前記細胞材料の細胞生存率(%)は少なくとも50%であり、凍結保護剤溶液中の前記細胞材料は4mL超の体積を有し、そのような凍結保存細胞材料は、例えば上記の態様のいずれかの方法によって得ることができ、そして患者に投与され得る。
上記は、以下の実施例を参照することによってさらに説明されるが、これらは例示の目的で提示されており、本開示の範囲を限定することを意図しない。
軟骨実験
以下の無氷凍結保存製剤の補充実験では、mNPをさまざまなガラス化製剤(VS55、VS70、およびVS83)に2mg/mL Fe mNPの量で添加して、50mLの系におけるブタ関節軟骨の軟骨細胞生存率を維持する効果を評価した。図1に示した結果は、驚くべきことに、最高の83%のCPA製剤(VS83)でガラス化され、2mg/mLのFe mNPで再加温された関節軟骨グループで、最高の軟骨細胞生存率および代謝活性が観察されたことを示している。
ナノ加温のための誘導加熱システムの設定は、-135℃未満から-30℃の温度に加温するために、500アンペア(Amps)、234kHz、80秒間であった。より長い時間とより高い設定は、過熱と軟骨細胞の生存率の損失をもたらした。
上記のデータに関して、代謝活性を予備スクリーニングアッセイとして使用した(図1A)。ナノ加温された組織コントロールと大きな骨軟骨サンプルから採取した加温後の関節軟骨サンプルを、生理的条件で平衡化するために、2mlのDMEM培養培地+10%FBSで1時間インキュベートした後、標準的な細胞培養条件で20%のalamarBlueを3時間添加した。この測定は、組織内の再加温された細胞の代謝挙動を特徴付けるために、再加温後4日間毎日実施された。これらの結果は、最高の83%のCPA製剤(VS83)でガラス化され、2mg/mLのFe mNPで再加温された関節軟骨グループで、最高の軟骨細胞生存率および代謝活性が観察されたことを示している。さらに、2日後、ナノ加温された組織の代謝活性は、コントロール値まで完全に回復した(図1A参照)。
図1Bに示されているデータに関しては、ブタ関節軟骨全体の軟骨細胞分布を評価するために、切断および染色後に、フレッシュグループ、対流加温グループおよびナノ加温グループの生/死評価を行った。再加温直後に、2光子蛍光顕微鏡を使用して画像をキャプチャした。結果(図1B)は、ナノ加温グループ(VS83+Fe(2mg/mLのFe mNP))の場合、ほとんどの細胞(70~80%)が、フレッシュな軟骨組織(90~100%)と同様に、表層ゾーンと深層ゾーンの両方で生存していることを示した。対照的に、対流加温グループでは、細胞の30~40%しか生存していない。
図2に示したデータについては、コラゲナーゼ消化後にトリパンブルー排除を行った。
図2に示した結果は、生細胞が、フレッシュなコントロール軟骨、ならびに対流加温された軟骨サンプルおよびナノ加温された軟骨サンプルの両方から取得できることを示している(N=4、図2)。2つの加温方法の間にトリパンブルー排除の有意差はなかったが、対流(2.58±0.53×10個の軟骨細胞)とナノ加温の間には統計的に有意な細胞収量の差があり(p<0.05、t検定)、ナノ加温された軟骨から回収された死細胞と生細胞の両方の合計細胞数が2倍になった(5.97±0.86×10個の軟骨細胞)。対流加温された骨軟骨移植片における細胞損失は、再加温中の細胞に損傷を与える氷の核形成によるものであると考えられる。トリパンブルー法では、ナノ加温グループは、フレッシュの生存率の値の87.6%±3.4%を示した。
バイオマテリアル試験:グリコサミングリカン(GAG)測定は、対流加温と比較してナノ加温後の統計的に有意な保存を示し(p<0.01)、フレッシュな軟骨と比較して差はなかった(図3)。透過性は、導電率法を使用して測定された。組織は、低張条件および等張条件下で試験された(N=3の実験でn=7~14サンプル)。低張試験を使用しても有意差は観察されなかった(図4)。統計的に有意な(p<0.05)より遅い導電率が等張条件下で観察された(図示せず)が、これはおそらく使用したCPAによる組織の脱水が原因である。データの標準偏差が広いため、グループ間で固定エネルギーチャージに差はなかった。
凝集弾性率(aggregate modulus)と透水係数(hydraulic permeability)も測定し、その結果を図5と図6に示す。
ナノ加温サンプルの凝集弾性率(aggregate modulus)の結果はフレッシュの値に類似しているが、両方のガラス化グループの透水係数(hydraulic permeability)の結果は、図5の導電率の測定と一致してより低い透過性を示唆しており(図6)、ここでも、軟骨がガラス化後に完全に再水和されていないことが示唆された。
上記のデータは、VS83 CPA製剤中のmNP(2mg/mLのFe mNPなど)を使用したナノ加温が、3つの方法を用いた対流加温と比較して生存率の改善をもたらしたことを反映している(例えば、図1および2を参照)。alamarBlue法は破壊的ではないため、組織培養での回復を4日間追跡した。VS83 CPA製剤に曝露された組織は、組織培養の2日目にフレッシュ値(100%)を達成した(図1A)。バイオマテリアル試験は、導電率および透水係数の測定により透過性の低下を示した。GAG量と凝集弾性率(aggregate modulus)は、いずれもフレッシュな軟骨の値と同様であった(図3および5)。
方法
ブタ関節軟骨の調達:サンプルは、IACUCが承認した他の研究に採用された動物、または死後に食品加工工場から入手した。組織を解剖し、すすぎ、抗生物質を含有する氷冷組織培養培地を含む無菌カップに一晩入れ、その後、in vitro試験のために振り分けた。
ガラス化方法(VS55サンプルに関して説明される(VS70とVS83は同様の方法でガラス化された):前述の方法を使用して、4℃のユーロコリンズ液中の3.10MのDMSO、3.10Mのホルムアミド、および2.21MのプロピレングリコールからなるVS55を組織に徐々に浸透させた。予冷した希釈ガラス化溶液(4℃)を、氷上で、濃度を上げながら5回の連続した15分のステップで添加する。2mg/mLのFemNPを分散させた最後の凍結保護剤濃度を、予冷した-10℃または4℃の全強度ガラス化溶液のいずれかに最後の6回目の添加ステップで添加し、プラスチックチューブに入れて、-10℃の浴中で15分間または氷上で4℃に保持した。次に、サンプルを2つのステップで冷却した;まず、-135℃の予冷した2-メチルブタン浴に入れて-100℃に急冷し、次に気相窒素保管に移して-135℃未満にゆっくりと冷却した。最後に、試験前にサンプルを気相窒素中-130℃未満で少なくとも24時間保管した。
加温:加温は、対流加温またはナノ加温のいずれかによって行われた。対流加温は、-100℃までの遅い加温と、その後の、融解するまでのできるだけ速い加温とを含む2段階のプロセスである。遅い加温速度は、サンプルを-135℃の冷凍庫の上部に持っていくことで生成され、制御加温速度は、プラスチック容器を室温で30%DMSO/HOの混合液に入れることによって生成される。再加温後、組織を低温に保ち、残留凍結保護剤の存在による細胞毒性を最小限に抑えるために、ガラス化溶液を氷上で段階的に除去した。
肺動脈実験
肺動脈に対する二糖類±mNPを含む凍結保護剤(CPA)製剤の試験:二糖類は、本開示のガラス化製剤の重要なサプリメントである。0.6Mスクロースを用いた3つの製剤と、0.3Mスクロースと0.3Mトレハロースの組み合わせを用いた1つの製剤の、計4つの製剤が評価された(図7)。具体的には、図7において、製剤は以下のように調製された:A)DP6+0.6Mスクロースでロードし、DP7+0.6Mスクロースでガラス化する;B)DP7+0.6Mスクロースでロードし、DP7+0.6Mスクロースでガラス化する;C)DP7+0.6Mスクロースでロードし、DP8+0.6Mスクロースでガラス化する;D)DP7+0.3Mスクロース+0.3Mトレハロースでロードし、VS55+0.3Mスクロース+0.3Mトレハロースでガラス化する。グループDはグループAと比較して有意に異なり(p<0.05、T検定)、グループBおよびCとの比較では有意な(NS)差はなかった。統計的に有意ではなかったが、最良の結果は、スクロースおよびトレハロースを添加したVS55を用いて得られた(図7)。
零度以下の温度(細胞毒性のリスクを最小限に抑えるために零度以下)でのCPA溶液への長時間の曝露を試験した。最後の凍結保護剤のローディングステップは、初期の実験±Feおよびナノ加温において0℃と-10℃で比較された。結果は決定的なものではなかった。そこで、すべての実験で-10℃を使用し、動脈内の細胞に対する細胞毒性のリスクを最小限に抑えるために、安全側に保守的に判断した。
非常に高濃度のCPAへの曝露と、それに続くより毒性の低い濃度のCPAの存在下での保存も試験された。結果:VS83およびVS70(83および70%凍結保護剤)は、ローディングとそれに続くVS55+0.3Mスクロース+0.3Mトレハロースによるガラス化について評価された。高い凍結保護剤ローディング濃度でのガラス化は、33%未満(<33%)の組織生存率をもたらした(結果は示さず)。したがって、この戦略は中止された。ホルムアミドを含まない低濃度ローディング製剤を使用する代替戦略が評価された。ローディングは、最後のローディングステップで二糖類を含む段階的な方法で行われた。次に、ローディング溶液を4つのガラス化製剤のうちの1つに置換し、動脈をガラス化した(図7)。グループD(DP7+0.3Mスクロース+0.3Mトレハロースでロードし、VS55+0.3Mスクロース+0.3Mトレハロースでガラス化する)が最も高い平均生存率の値を有していた。
グループD(最後のローディングステップでDP7+0.3Mスクロース+0.3Mトレハロース、その後、VS55+0.3Mスクロース+0.3Mトレハロースでガラス化)は、物理的および生物学的材料特性評価法を用いて、0~6か月保管後のさらなる安定性試験のために選択された。
図8に示すように、上記の製剤を用いたナノ加温(グループA)と、より迅速な凍結保護剤のローディングを促進するために凍結保護剤曝露前に糖を使用して動脈を予備脱水した同じプロトコルの修正版(図8、グループB)を試験した。どちらの戦略も90%を超える(>90%)生存率に達しなかった(それぞれ76%および72%の生存率)。再加温後の補充手順をVS55+0.3Mスクロースおよび0.3Mトレハロースならびに2.5mg/mLのFeナノ粒子によるナノ加温と組み合わせた代替の再加温後戦略も試験した。ナノ加温された動脈は、抗酸化剤、α-トコフェロール(ビタミンE)、およびQ-VD-OPH(QVD)の存在下、生理学的条件下でインキュベートされた。この戦略により、短い時点とより長い3か月の時点の両方で、生存率が90%超(>90%)に増加した(図8)。対流加温を伴う長期保管(フレッシュコントロールの平均68.5%)は、ナノ加温を伴う3か月でのグループDよりも有意に低かった(ANOVAおよびT検定によるp<0.0001、図示せず)。
バイオマテリアル試験は肺動脈で行われ、生存率が90%未満(<90%)に保たれていることが確認された時点で、再加温が開始された(図9)。主な目的は、(動脈の)破裂圧力が変化するかどうかを決定することであった。フレッシュな動脈および無氷ガラス化された動脈の破裂圧力(A、mmHg)および線形弾性率(B、PSI)は、保管および37℃の浴中でのナノ加温または対流を使用した加温の後に評価された。結果は5~8本の個別の肺動脈の平均±1標準誤差(mean±1se)であり、フレッシュな未処理コントロールと比較した両側T検定による統計的に有意な増加が
Figure 2023506132000004

で示されている。他の有意差は認められなかった。
6ヶ月の保管にわたって、フレッシュな未処理コントロール動脈と比較して、弾性率または破裂圧力のいずれにも有意な減少(P<0.05)がないことが決定された。図9に見られるように、場合によっては(統計的に有意、P<0.05(両側T検定))、ガラス化された凍結保存動脈は、フレッシュな未処理コントロールよりも高い破裂圧力を有していた。
方法
組織の調達:ボナフイド(Bonafide)過剰組織血管は、地元のUSDA検査済み食肉加工工場のブタから入手した。動脈を部分的に解剖し、すすぎ、無菌の氷冷調達溶液(ハンクス平衡塩類溶液)に入れ、さらにin vitroまたはin vivo研究のために実験室に運んだ。実験室で受け取った肺動脈をさらに解剖し、ダルベッコの改良イーグル培地(DMEM)および抗生物質を含む無菌カップに入れた。ボナフイド過剰組織は、微生物汚染のリスクが高いため、移植研究では使用されない。
ガラス化方法:組織に、4℃のユーロコリンズ液中の3.10M DMSO、3.10M ホルムアミド、および2.21M 1,2-プロパンジオール±≦0.6M 二糖類からなるVS55、またはDP7±≦0.6M二糖類を作製するための等モル濃度(3.5M)のDMSOおよび1,2-プロパンジオールのいずれかを徐々に浸透させた。DP7戦略による最初のローディングステップでは、二糖類なし、次にDP7+0.3Mスクロース+0.3Mトレハロース、最後にVS55+0.3Mスクロース+0.3Mトレハロースによるガラス化であった。二糖類は、スクロース、トレハロースのいずれか単独または組み合わせたものであり得る。予冷した希釈ガラス化溶液(4℃)を、氷上で、濃度を上げながら5回の連続した15分のステップで添加した。磁性ナノ粒子(2.5mg/mL Fe、Ferrotec社から供給されたEMG-308)を、予冷した-10℃の全強度ガラス化溶液に最後の6回目の添加ステップで添加し、50mLのプラスチックチューブに入れて、-10℃の浴中で15分間保持した。次に、サンプルを2つのステップで冷却した。まず、-135℃の予冷した2-メチルブタン浴に入れて-100℃に急冷し、次に気相窒素に移して-135℃未満にゆっくりと冷却し、試験前に-135℃未満で少なくとも24時間保管した。いくつかの実施形態では、ナノ粒子の有効濃度範囲は、約0.5~約10mg/mL Fe、例えば、約1.5~約5mg/mL Fe、または2.0~約3mg/mL Feの範囲であり得る。
再加温方法:ガラス化された血管は、-135℃以下(≦-135℃)でのさまざまな保管時間の後に、対流またはナノ加温のいずれかを使用して再加温された。対流加温は、-100℃までの遅い加温と、その後の、融解するまでのできるだけ速い加温とを含む2段階のプロセスである。遅い加温速度は、サンプルを-135℃の冷凍庫の上部に持っていくことで生成され、より速い加温速度は、プラスチックのサンプル容器を室温で30%DMSO/HOの混合液に入れることによって生成される。ナノ加温は、サンプルをラジオ周波数コイルに挿入し、誘導により加熱することによって行われた。上記の試験は6.0kWの誘導端子を使用したが、他の適切な誘導端子を使用することもできる。再加温後、mNPをサンプルチューブから除去し、凍結保護剤を段階的に除去した。再灌流障害が細胞生存率/機能の喪失をもたらす場合は、抗酸化剤および/または抗アポトーシス剤サプリメントを用いた、再加温後のインキュベーションステップを導入することもできる。
再加温後の回復は、抗酸化剤およびアポトーシス阻害剤、100μMのα-トコフェロール(ビタミンE)および10μMのQ-VD-OPH(QVD)の存在下での生理学的条件下におけるインキュベーションによって実施された。いくつかの実施形態では、抗酸化剤の有効濃度範囲は、約0.5μM~約1000μM、例えば、約5μM~約500μM、または50μM~約200μMの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、アポトーシス阻害剤の有効濃度範囲は、約0.1μM~約100μM、例えば、約1μM~約50μM、または5μM~約20μMの範囲であり得る。
本開示の製剤に添加され得る、および/または本開示の方法論において使用され得る追加の例示的なサプリメントおよび/または添加剤は、表I(上記)に記載されている。
生存率評価:肺動脈の代謝活性はalamarBlue(商標)レサズリンアッセイを用いて評価した。組織サンプルはDMEM+10%FBS培養培地で1時間インキュベートして平衡化した後、標準的な細胞培養条件下で20%alamarBlueを3時間添加した。後の研究では、DMEMに100μMのα-トコフェロール(ビタミンE)と10μMのQ-VD-OPH(QVD)が補充され、90%を超える(>90%)組織細胞生存率が得られた。AlamarBlueは、代謝活動の検出に基づく無毒の蛍光指示薬である。蛍光は、544nmの励起波長と590nmの発光波長でアリコートにおいて測定された。
バイオマテリアル試験:圧力データ(psi)を半径方向のひずみに対してプロットしたところ、軟組織の変形に典型的な応力-ひずみ曲線が得られた(典型的な曲線、図10)。線形領域は、線形弾性率(mmHg)を得るための最適なラインフィットを生成するために使用された。破裂前に記録された最大圧力は、破裂圧力(PSI)を推定するために使用された。
本明細書では、特定の手段、材料、および実施形態を参照して前述の説明を記載してきたが、本明細書に開示された特定事項に限定されることを意図するものではない;むしろ、それは、添付の特許請求の範囲の範囲内にあるものなど、すべての機能的に同等の構造、方法および使用に及ぶ。さらに、ほんのいくつかの例示的な実施形態のみが上記に詳細に説明されているが、当業者は、例示的な実施形態において、「大きな組織サンプルの無氷ガラス化およびナノ加温(ICE-FREE VITRIFICATION AND NANOWARMING OF LARGE TISSUE SAMPLES)」の開示から実質的に逸脱することなく、多くの修正が可能であることを容易に理解するであろう。したがって、そのようなすべての修正は、以下の特許請求の範囲に定義されている本開示の範囲内に含まれることが意図されている。特許請求の範囲において、ミーンズプラスファンクション節(means-plus-function clauses)は、列挙された機能を実行するものとして本明細書に記載された構造および構造上の均等物だけでなく均等な構造もカバーすることを意図している。したがって、釘とねじは木の部品を一緒に固定するために円筒形の面を使用するという点で構造的に同等ではないかもしれないが、ねじは螺旋形の面を使用し、木製の部品を固定する環境では、釘とネジが同等の構造になり得る。

Claims (15)

  1. 生きている大容量の細胞材料を保存する方法であって、
    前記細胞材料を、少なくとも0.5mg/mLのFe mNPを含有する高濃度凍結保護剤製剤に曝露すること、
    前記細胞材料を、前記細胞材料への氷による損傷が生じない保存プロトコルに供すること、および
    ナノ加温された凍結保存細胞材料を得ること(ここで、前記ナノ加温された組織の代謝活性は、再加温されてから2日以内にコントロール値に完全に回復する)
    を含む、方法。
  2. 前記細胞材料は10mL超の体積を有する、請求項1に記載の方法。
  3. 前記保存プロトコルは、前記保存プロトコル中に氷による損傷が生じないように、冷却および加温中の氷の成長を制限するガラス化戦略を含む、請求項1に記載の方法。
  4. 前記高濃度凍結保護剤製剤はVS83である、請求項1に記載の方法。
  5. 前記細胞材料を保存プロトコルに供することは、
    前記細胞材料への氷による損傷を回避するのに有効な凍結保護剤濃度を有する最終凍結保護剤製剤を達成するための、前記凍結保護剤製剤への段階的な凍結保護剤の添加
    を含む、請求項1に記載の方法。
  6. 前記細胞材料は、ヒト臓器およびヒト組織からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  7. 前記細胞材料は軟骨である、請求項1に記載の方法。
  8. 前記保存プロトコルの完了後の前記細胞材料の細胞生存率(%)は、少なくとも70%である、請求項1に記載の方法。
  9. 前記高濃度凍結保護剤製剤は、11M以上の凍結保護剤モル濃度を有する、請求項1に記載の方法。
  10. 前記高濃度凍結保護剤製剤中の前記Fe mNPの総濃度は、1mg/mL~5mg/mLの範囲である、請求項1に記載の方法。
  11. 前記凍結保存細胞材料は、ガラス化された前記細胞材料を、前記Fe mNPを励起して前記ガラス化された細胞材料を解凍するのに十分な強度の電磁エネルギーにさらすことにより、前記保存プロトコル中にナノ加温される、請求項1に記載の方法。
  12. 前記電磁エネルギーは、ラジオ周波数場、交番磁場、または回転磁場を含む、請求項12に記載の方法。
  13. 前記ラジオ周波数場、交番磁場、または回転磁場は、200kHz~250kHzの周波数を含む、請求項13に記載の方法。
  14. 生きている大容量の軟骨組織を保存する方法であって、
    前記軟骨組織を、少なくとも0.5mg/mLのFe mNPを含有する高濃度凍結保護剤製剤に曝露すること、
    前記軟骨組織を、前記軟骨組織への氷による損傷が生じない保存プロトコルに供すること、および
    ナノ加温された凍結保存軟骨組織を得ること(ここで、前記ナノ加温された軟骨組織の代謝活性は、再加温されてから2日以内にコントロール値に完全に回復し、前記コントロール値は、成長培地中の凍結保存されなかったフレッシュな軟骨組織で評価される)
    を含む、方法。
  15. 前記高濃度凍結保護剤製剤中の前記Fe mNPの総濃度は1mg/mL~3mg/mLの範囲であり、前記ナノ加温された軟骨組織は誘導加熱システムによってナノ加温され、ここでナノ加温の設定は、前記凍結保存軟骨組織を-135℃未満から-30℃まで加温するために、500アンペア(Amps)、234kHz、80秒間である、請求項14に記載の方法。
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