JP6329468B2 - 線維芽細胞のガラス化凍結保存方法 - Google Patents

線維芽細胞のガラス化凍結保存方法 Download PDF

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Description

本発明は、線維芽細胞のガラス化凍結保存方法に関する。
生物の細胞又は組織の優れた保存技術は、様々な産業分野で求められている。一般に、生体内から採取された細胞又は組織は、たとえ培養液の中であっても、次第に活性が失われていくことから、生体外での細胞又は組織の長期間の培養は好ましくない。そのため、生体活性を失わせずに長期間保存するための技術が重要である。優れた保存技術によって、採取された細胞又は組織をより正確に分析することが可能となり、より高い生体活性を保ったまま細胞又は組織を移植に用いることで、移植後の生着率の向上が望める。さらには、生体外で培養した培養皮膚、生体外で構築したいわゆる細胞シートのような移植のための人工の組織を、順次生産して保存しておき、必要なときに使用することも可能となり、研究・医療の面だけではなく、産業面においても大きなメリットが期待できる。
細胞の保存方法として、例えば緩慢凍結法が知られている。この方法では、まず、例えばリン酸緩衝生理食塩水等の生理的溶液に耐凍剤を含有させることで得られた保存液に、細胞又は組織を浸漬する。該耐凍剤としては、グリセロール、エチレングリコール等の化合物が用いられる。該保存液に、細胞又は組織を浸漬後、比較的遅い冷却速度(例えば0.3〜0.5℃/minの速度)で、−30〜−35℃まで冷却することにより、細胞内外又は組織内外の溶液が十分に冷却され、粘性が高くなる。このような状態で、該保存液中の細胞又は組織をさらに液体窒素の温度(−196℃)まで冷却すると、細胞内又は組織内とその周囲の微少溶液がいずれも非結晶のまま固体となるガラス化が起こる。ガラス化により、細胞内外又は組織内外が固化すると、実質的に分子の動きがなくなるので、ガラス化された細胞又は組織を液体窒素中に保存することで、半永久的に保存できると考えられる。
しかしながら、前記緩慢凍結法では、比較的遅い冷却速度で冷却する必要があるために、凍結保存のための操作に時間を要する。また、温度制御をするための装置又は治具を必要とする問題がある。加えて、前記緩慢凍結法では、細胞外又は組織外の保存液中に氷晶が形成されるので、細胞又は組織が該氷晶により物理的に損害を受けるおそれがある。
上記した緩慢凍結法での問題点を解決するための方法として、ガラス化凍結保存法が提案されている。ガラス化凍結保存法とは、グリセロール、エチレングリコール、DMSO(ジメチルスルホキシド)などの耐凍剤を多量に含む水溶液の凝固点降下により、氷点下でも氷晶ができにくくなる原理を用いたものである。この水溶液を急速に液体窒素中で冷却させると氷晶を生じさせないまま固体化させることができる。このように固体化することをガラス化凍結という。また、耐凍剤を多量に含む水溶液をガラス化液という。
前記ガラス化法の具体的な操作としては、ガラス化液に細胞を浸漬させ、その後、液体窒素の温度(−196℃)で冷却する。ガラス化法は、このような簡便かつ迅速な工程であるために、凍結保存のための操作に長い時間を必要としない他、温度制御をするための装置又は治具を必要としないという利点がある。
ガラス化凍結保存法を用いると、細胞内外のいずれにも氷晶が生じないために凍結時及び融解時の細胞への物理的障害(凍害)を回避することができるが、ガラス化液に含まれる高濃度の耐凍剤には化学的毒性がある。
前記したガラス化凍結保存法の化学的毒性のために、ガラス化凍結保存法の適用は、一般的には、緩慢凍結法では凍結融解後の生存率・細胞活性の点で満足できない細胞に限られる。具体的な細胞種としては、胚、卵子、精子、ES細胞、iPS細胞等に限られるのが現状である。
胚や卵子のガラス化凍結保存法は、ストロー法やクライオトップ法などの方法で行われるが、いずれの方法においても、前記緩慢凍結法と比較して、極少量のガラス化液と共に胚や卵子を凍結することで、胚や卵子の凍結速度を向上させ、細胞がガラス化液に暴露される時間、つまりは凍結までの時間を短縮し、ガラス化液の化学的毒性を回避する手法がとられている。これらの方法は、一般に数個程度(多くても20個以内)の細胞の凍結保存に適用される方法である。
ES細胞やiPS細胞等に代表される動物細胞のガラス化凍結保存は、耐凍剤を含むガラス化液中に動物細胞を分散し、凍結バイアルに充填し、凍結バイアルを液体窒素に浸漬させ、凍結する方法が行われている。一般に、ガラス化凍結保存法を用いた場合、動物細胞の凍結融解後の生存率は50%以下であり、依然として低い。しかしながら、前記緩慢凍結法を用いた場合には、生存率が数%であることから、前記したES細胞やiPS細胞等の動物細胞の保存にあたっては、化学的毒性が高いにもかかわらずガラス化凍結保存法が使用されている。このような背景のもとに、より生存率の高い凍結保存方法の開発が望まれている。また、凍結バイアルを用いた凍結保存方法は、一般に1×10個以上の動物細胞の凍結保存に用いられ、凍結バイアル中の保存液に対し、1〜1×10個/μlの細胞密度で保存される。
特許文献1には、約30容量%のエチレングリコールと1Mのスクロースを含有するガラス化液または約40容量%エチレングリコールと1Mのスクロースを含有するガラス化液を用いて哺乳動物の胚または卵子を保存する方法が記載されている。また、ガラス化液に暴露する前に約15容量%のエチレングリコール溶液または約10容量%のグリセロール溶液に5〜10分間平衡処理する方法が記載されている。
特許文献2では、ヒトの不妊治療分野で使用されている前記クライオトップ法という方法で、卵付着保持用ストリップとして短冊状の可撓性かつ無色透明なフィルムを使用した卵凍結保存用具を使用して、該フィルム上に極少量のガラス化液と共に卵子又は胚を顕微鏡下で付着させ、凍結保存する方法が提案されている。
特許文献3では、多能性幹細胞を凍結保存するための媒体として、ジメチルスルホキシド、プロピレングリコール、アセトアミド、保存が企図される前記多能性幹細胞に応じた培地を含む媒体が提案されている。
特許文献4では、10〜20個の分散された哺乳動物前胞状卵胞をコラーゲンゲル内に包埋し、凍結保護剤溶液を浸漬させた後、凍結保存する方法が提案されている。
特開2000−189155号公報 特開2006−271395号公報 特許第4705473号公報 特開2001−226201号公報
特許文献1で提案されている方法は、ストローの内径が制限されるために、通常、1×10個以上の細胞を凍結保存するような動物細胞の凍結保存には適さない。また、特許文献1では、ガラス化液の液量を胚または卵子1個あたり0.5μl以下とすることで凍結が迅速となり、生存率が高く維持されることが記載されている。特許文献1で提案されている方法を用いて、単純に1×10個以上の多数の動物細胞を一度に凍結保存すると、使用するガラス化液の液量が多くなるために迅速な凍結速度が得られずに、ガラス化液の毒性が強く発現し、満足な生存率は得られない。
特許文献2で提案されている方法は、幅0.5〜2.0mm程度の樹脂フィルム上に極少量のガラス化液と共に胚を凍結する方法であり、特許文献1の場合と同様に、多数の動物細胞を凍結保存するような動物細胞の凍結保存には適さない。
特許文献3で提案されている媒体を動物細胞のガラス化凍結保存法に用いて凍結保存しても、凍結融解後の細胞の生存率は不十分であった。
特許文献4で提案されている方法は、細胞の回収率は90%程度と高いものの、生存率が20%程度と極端に低く、十分満足できるものではなかった。
本発明は、多数の線維芽細胞を凍結保存する線維芽細胞の凍結保存において、高い生存率と回収率が達成される線維芽細胞のガラス化凍結保存方法を提供することを主な課題とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下の方法によって、上記課題を解決できることを見出した。
ガラス化液中で1×10個以上の単離した線維芽細胞を1〜1×10個/μlの細胞濃度で凍結保存するガラス化凍結保存方法であって、該線維芽細胞のコロニー又はシングルセルを、エチレングリコールを2〜12容量%含有する前処理液中に浸漬させて該細胞を分散し、その後前処理剤を除去し、次いで前処理液の耐凍剤濃度を超える濃度の耐凍剤を含有するガラス化液に浸漬させ、細胞を分散した後に、ガラス化凍結することを特徴とする、線維芽細胞のガラス化凍結保存方法。
本発明により、1×10個以上の多数の線維芽細胞を凍結保存する際、細胞の高い生存率と高い回収率が達成される線維芽細胞のガラス化凍結保存方法を提供することができる。また、本発明のガラス化凍結保存方法は、特別な装置・器具を必要とせず、従来の哺乳動物細胞の培養に用いられる装置・器具を用いて簡便に行うことができる。さらに、本発明のガラス化凍結保存方法を用いると、従来の緩慢凍結法よりもより短時間で細胞の凍結保存操作を行うことができる。
図1は、本発明のガラス化凍結保存方法の操作スキームを示した図である。
本発明のガラス化凍結保存方法は、線維芽細胞のコロニー又はシングルセルの凍結保存に用いることができる本明細書中において、コロニーとは数個又はそれ以上の細胞からなる細胞集団をさし、シングルセルとは、1個の細胞をさす。コロニー又はシングルセルの形態で、複数の種類の細胞を単一の保存液中に含んでいても良い。また、複数の種類の細胞からなるクラスター状の細胞塊の形態で複数の種類の細胞を単一の保存液中に含んでいても良い。また、細胞以外に細胞外マトリックスのような非細胞性の物質を含むものであっても良い。
本明細書におけるガラス化凍結とは、比較的遅い冷却速度(例えば0.3〜0.5℃/minの速度)で凍結するいわゆる緩慢凍結法とは異なり、極低温の冷媒(例えば液体窒素)を用いて速い冷却速度で、氷晶形成を抑制しながら凍結させる方法をさす。ガラス化凍結における冷却速度は、例えば、チノー社製シース型熱電対(先端外径0.3mm)を用いて測定される0℃から−150℃までの冷却速度が200℃/min以上である。
本発明のガラス化凍結保存方法は、通常の緩慢凍結法を用いて凍結保存されるような、例えば、1つの凍結バイアル当たり1×10個以上の線維芽細胞、より好ましくは1×10〜1×10個の線維芽細胞の凍結保存に用いることができる。また、凍結保存される際の細胞密度は、通常の緩慢凍結法と同様に、凍結バイアル中の保存液(ガラス化液)に対して、1〜1×10個/μlである。細胞密度がこの範囲よりも小さい場合、主に遠心分離、フィルタリング等の工程での細胞のロスが多くなり、凍結保存・融解後に、満足できる細胞数(回収率)が得られない。一方で、細胞密度がこの範囲よりも大きい場合、ガラス化液中への細胞の分散が困難であったり、細胞中へのガラス化液の浸透が不十分となり、満足できる生存率と回収率が得られない。
本発明のガラス化凍結保存方法は、図1のスキームに示すように、酵素処理等により単離した線維芽細胞のコロニー又はシングルセルに前処理液を添加し、細胞を分散し、その後前処理液を除去する前処理工程と、次いで前処理済みの細胞にガラス化液を添加し、細胞を分散し、その後ガラス化液を含んだ容器(例えば凍結バイアル)を冷媒を用いて急速に温度降下させ、ガラス化凍結させるガラス化処理工程を含む。
本発明のガラス化凍結保存方法における前処理工程で用いられる前処理液は、エチレングリコールを2〜12容量%含有することを特徴とする。より好ましいエチレングルコールの含有量は、5.5〜12容量%である。本発明に用いられる前処理液は、耐凍剤として、エチレングリコールを単独で用いても良いし、その他の耐凍剤を併用しても良い。この場合、エチレングリコールに対する他の耐凍剤の割合は30%以下であることが好ましい。併用できる耐凍剤としては、ジメチルスルホキシド、グリセリン、プロピレングリコール、プロパンジオール等が挙げられる。また、国際公開第2009/157209号パンフレットに記載されるような非細胞浸透性のポリリジンからなる耐凍剤についても好ましく用いることができる。
本発明の前処理液に含有されるその他組成として、糖類を0.2〜1M程度含有しても良い。前処理液が含有しても良い糖類としては、スクロース、トレハロース、グルコース、ラフィノース、ラクトース、マルトース、マンノース、ガラクトース、フルクトースが挙げられる。前処理液が糖類を含有する場合、1種類を含有しても良いし、2種類以上の糖類が含有されていても良い。
本発明の前処理液は、ポリエチレングリコール、フィコール(スクロースとエピクロロヒドリンの共重合体)、デキストラン、ヒドロキシエチルスターチ、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、パーコール(ポリビニルピロリドンでコートされた直径15〜30nmのケイ酸コロイド粒子)、アルブミン等の高分子化合物を含有することができる。
本発明のガラス化凍結保存方法における前処理工程において、細胞を前処理液に浸漬させる時間としては、1〜30分が好ましい。
本発明のガラス化凍結保存方法におけるガラス化処理工程で用いられるガラス化液は、前処理液の耐凍剤濃度を超える濃度の耐凍剤を含有することを特徴とする。本発明のガラス化凍結保存方法に用いられるガラス化液が含有する耐凍剤は、ジメチルスルホキシド、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロパンジオール等を用いることができる。また、国際公開第2009/157209号パンフレットに記載されるような非細胞浸透性のポリリジンからなる耐凍剤についても好ましく用いることができる。好ましい耐凍剤は、エチレングリコールである。本発明のガラス化凍結保存方法におけるガラス化処理工程で用いられるガラス化液は、含有される耐凍剤の総濃度が前処理液が含有するエチレングリコールの濃度を超えることを特徴としている。より好ましくは、ガラス化処理工程で用いられるガラス化液が含有する耐凍剤の総濃度が、前処理液が含有するエチレングリコールの濃度の2倍以上である。ガラス化液に用いられる耐凍剤は1種類を含有しても良いし、2種類以上を含有しても良い。
本発明のガラス化凍結保存方法に用いられるガラス化液に含有されるその他組成として、培養液又は生理食塩水に、糖類を0.2〜1M程度含有しても良い。ガラス化液に含有しても良い糖類としては、スクロース、トレハロース、グルコース、ラフィノース、ラクトース、マルトース、マンノース、ガラクトース、フルクトースが挙げられる。ガラス化液に糖類を含有する場合、1種類を含有しても良いし、2種類以上の糖類が含有されていても良い。
本発明のガラス化凍結保存方法に用いられるガラス化液は、ポリエチレングリコール、フィコール(スクロースとエピクロロヒドリンの共重合体)、デキストラン、ヒドロキシエチルスターチ、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、パーコール(ポリビニルピロリドンでコートされた直径15〜30nmのケイ酸コロイド粒子)、アルブミン等の高分子化合物を含有することができる。
本発明のガラス化凍結保存方法におけるガラス化処理工程において、細胞をガラス化液に浸漬させる時間(細胞をガラス化液と接触させてから、冷却溶媒で冷却を開始するまでの時間)は、用いるガラス化液の組成によるものの、多くの場合ガラス化液の化学的毒性を避けるという観点で、1分以内が好ましい。より好ましくは45秒以内である。
前処理工程において、前処理液に細胞を浸漬させ、次いでガラス化処理工程を行う際には、遠心分離、フィルタリングなどの手法によって、前処理液と細胞を分離し、次いでガラス化液に浸漬させることが好ましい。より簡便に細胞を分離できるという観点から、遠心分離を用いることが好ましい。
本発明のガラス化凍結保存方法は、ガラス化処理工程においてガラス化液に細胞を浸漬させた後、極低温の冷却溶媒を用いて細胞をガラス化凍結させる。速やかな冷却速度で凍結させることで、氷晶の形成が少ない状態で細胞が凍結保存されることが期待される。
凍結保存された細胞は、細胞のガラス化状態が維持される極低温環境下で保存することで半永久的に保存することができる。ガラス化状態が維持される温度は、ガラス化液の組成によって異なるが、多くの場合−150℃以下が好ましい。このような温度が維持される環境としては、液体窒素保存容器中、気相窒素保存容器中が好ましい。
以上、本発明のガラス化凍結保存方法における凍結作業について説明してきた。次に、解凍作業について説明する。
本発明のガラス化凍結保存方法における解凍作業は、クライオトップ法などの一般的なガラス化法における操作方法と同様の方法を用いることができる。操作の一例としては、凍結されたガラス化液と細胞に、温調された融解液を直接接触させることで、ガラス化液と細胞を融解させるとともにガラス化液を希釈する。このような操作により、再氷晶形成やガラス化液の毒性を緩和することができる。
以下に本発明を実施例によりさらに詳細に示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<細胞の準備>
ウシ血清を10容量%添加したL−Glutamineを含有するDulbecco’s Modified Eagle’s Medium(DMEM)中で培養されたマウス胚性線維芽細胞(初代培養後、2〜3回継代操作を行った継代培養細胞)をプラスチックシャーレ上からトリプシン処理によって回収した。回収された細胞の生存率をトリパンブルー染色によって測定したところ、95%以上であった。なお、回収された細胞は、シングルセルとコロニーが混在する状態であった。
<凍結操作>
(実施例1)
回収した上記マウス胚性線維芽細胞5×10個を下記前処理液中に1×10個/mlの細胞濃度で分散させた。この分散状態を室温環境下で3分間維持した。
<前処理液の組成>
エチレングリコール 10容量%
グリセリン 0.5容量%
DMEMを加えて総量が100容量%となるように調整した。
次いで、320×gの遠心力で5分間遠心分離し、前記したマウス胚性線維芽細胞を沈降させ前処理液と分離した。上清の前処理液を除いた後、下記ガラス化液200μlを加え、沈降させた該線維芽細胞の全量を分散させた(ガラス化液中での細胞濃度は2.5×10個/μl)。その後、該線維芽細胞とガラス化液の全量を容量が1.5mlの凍結バイアル中に添加した。さらに、凍結バイアルを液体窒素に浸漬し、凍結操作を行った。細胞とガラス化液を接触させてから、凍結バイアルを液体窒素に浸漬させるまでの時間は30秒であった。
<ガラス化液の組成>
エチレングリコール 30容量%
グリセリン 0.5容量%
スクロース 500mM
DMEMを加えて総量が100容量%となるように調整した。
(実施例2)
実施例1のガラス化凍結保存方法において、前処理液のエチレングリコール濃度を7容量%とした以外は、実施例1と同様にして、実施例2の凍結操作を行った。
(実施例3)
実施例1のガラス化凍結保存方法において、前処理液のエチレングリコール濃度を4容量%とした以外は、実施例1と同様にして、実施例3の凍結操作を行った。
(実施例4)
実施例1のガラス化凍結保存方法において、前処理時の前処理液中で細胞の分散状態を維持する時間を30分とした以外は、実施例1と同様にして実施例4の凍結操作を行った。
(実施例5)
実施例1のガラス化凍結保存方法において、ガラス化液のエチレングリコール濃度を20容量%とした以外は、実施例1と同様にして、実施例5の凍結操作を行った。
(実施例6)
実施例1のガラス化凍結保存方法において、ガラス化液の組成のうちエチレングリコール30容量%にかえて、ジメチルスルホキシド30容量%とした以外は、実施例1と同様にして、実施例6の凍結操作を行った。
(比較例1)
実施例1のガラス化凍結保存方法において、前処理液のエチレングリコール濃度を0容量%とした以外は、実施例1と同様にして、比較例1の凍結操作を行った。
(比較例2)
実施例1のガラス化凍結保存方法において、前処理液のエチレングリコール濃度を14容量%とした以外は、実施例1と同様にして、比較例2の凍結操作を行った。
(比較例3)
実施例1のガラス化凍結保存方法において、前処理液の組成について、エチレングリコールにかえて、プロピレングリコールを用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例3の凍結操作を行った。
(比較例4)
実施例1のガラス化凍結保存方法において、前処理液の組成について、エチレングリコールにかえて、トリプロピレングリコールを用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例4の凍結操作を行った。
(比較例5)
実施例1のガラス化凍結保存方法において、前処理工程を行った後に、ガラス化液として、前処理液をそのままガラス化液として用いて凍結保存することで比較例5の凍結操作を行った。
(比較例6)
実施例1のガラス化凍結保存方法において、前処理工程を行わずにガラス化処理工程のみによって凍結保存した以外は、実施例1と同様にして、比較例6の凍結操作を行った。
(比較例7)
リプロセル社のES/iPS細胞用凍結保存液をガラス化液として用いて、比較例6と同様に、前処理工程を行わずにガラス化処理工程のみによって凍結保存することで、比較例7の凍結操作を行った。
<融解操作>
実施例1〜6と比較例1〜7のガラス化凍結保存方法によって凍結操作を行った細胞を液体窒素中で数日間保存した後に、以下の操作によりそれぞれ融解操作を行った。液体窒素中から凍結したマウス胚性線維芽細胞を含む凍結バイアルをとりだし、37℃に温調した培養液(ウシ血清を10%添加したL−Glutamineを含有するDMEM)1mlを凍結バイアル中に直接添加し、マイクロピペットでピペッティングした。ガラス化液が完全に融解した後に、凍結バイアル中の細胞分散液を37℃に温調した上記培養液9ml中に添加した。次いで、320×gで5分間遠心分離し、該線維芽細胞を沈降させ、上清の培養液を除いた。さらに、新たな上記培養液を添加し、該線維芽細胞を分散させた。
<凍結融解後の生存率と回収率の測定>
上記操作により得たマウス胚性線維芽細胞分散液の一部をとり、トリパンブルー染色により、血球計算盤上で該線維芽細胞の生存率を測定した。生存率は、全細胞数(上記操作により得た細胞分散液の細胞総数)に対する生細胞数の割合である。生存率の評価は、生存率80%以上を○、70%以上80%未満を△、70%未満を×とした。さらに、血球計算盤上で該線維芽細胞の細胞数をカウントすることで、上記操作により得た該線維芽細胞分散液中の細胞数を算出し、凍結操作に用いた該線維芽細胞数(5×10個)に対する回収率を算出した。回収率の評価は、回収率80%以上を○、60%以上80%未満を△、60%未満を×とした。これらの結果を表1に示す。
<凍結速度の測定>
実施例1の凍結保存方法における凍結操作の際に、凍結バイアル中の温度降下の様子をチノー社製シース型熱電対(先端外径0.3mm)を用いて測定した。0℃から−150℃までの冷却速度は、500℃/minであった。
<凍結融解後の細胞の形態の観察>
実施例1〜6と比較例1〜7のガラス化凍結保存方法によって凍結操作を行ったマウス胚性線維芽細胞を融解操作の後に、10mlの上記培養液を含むプラスチックシャーレ(100mmディッシュ)上で24時間培養後に細胞の形態を確認した。実施例1〜6のガラス化凍結保存方法によって凍結された細胞は、浮遊細胞が少なく、シャーレ上に細胞が接着する様子が観察された。一方で、比較例1〜7のガラス化凍結保存方法によって凍結された細胞は、浮遊細胞が多く、シャーレ上に接着した細胞が少なかった。
以上の結果から、本発明のガラス化凍結保存方法を用いると、多数の線維芽細胞を高い生存率と回収率で凍結保存することができる。また、本発明のガラス化凍結保存方法における凍結操作は、特別な装置・器具を必要とせずに、いずれの場合も1時間以内に操作を終えることができた。従来の緩慢凍結法では、凍結操作の終了までに、プログラムフリーザーを用いて、半日から1日程度を要することから、本発明のガラス化凍結保存方法を用いるとより短時間で細胞の凍結保存操作を行うことができる。
本発明は、コロニー又はシングルセルの状態で分散させることが可能な線維芽細胞であって、初代培養細胞、継代培養細胞、及び細胞株細胞等の凍結保存に用いることができる。そのため、化粧品、医薬、製薬等のバイオテクノロジー分野において有用である。

Claims (1)

  1. ガラス化液中で1×10個以上の単離した線維芽細胞を1〜1×10個/μlの細胞濃度で凍結保存するガラス化凍結保存方法であって、該線維芽細胞のコロニー又はシングルセルを、エチレングリコールを2〜12容量%含有する前処理液中に浸漬させて該細胞を分散し、その後前処理剤を除去し、次いで前処理液の耐凍剤濃度を超える濃度の耐凍剤を含有するガラス化液に浸漬させ、細胞を分散した後に、ガラス化凍結することを特徴とする、線維芽細胞のガラス化凍結保存方法。
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