JP2019527050A - 生物学的物質の凍結保存および安定化のための氷核形成調合物 - Google Patents

生物学的物質の凍結保存および安定化のための氷核形成調合物 Download PDF

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Abstract

本開示は、生物学的物質の凍結保存および安定化のための氷核形成調合物、ならびにその使用方法に関する。

Description

発明の詳細な説明
優先権の主張
本出願は、2016年6月29日に出願された米国仮出願第62/356,008号、および2017年3月14日に出願された米国仮出願第62/471,265号の利益を主張する。前述の内容は全て、参照により本明細書に組み込まれる。
連邦政府の資金提供を受けた研究または開発
本発明は、国立衛生研究所によって授与された助成金番号EB002503および国防総省によって授与された助成金番号H151−013−0141の下で政府の支援を受けてなされたものである。政府は本発明に一定の権利を有する。
技術分野
本開示は、生物学的物質の凍結保存および安定化のための氷核形成調合物、ならびにその使用方法に関する。
背景
水および水溶液は、外的な核がなければ、均一な氷核形成が起こるまで、融点よりはるかに低い過冷却液体状態を維持することになる。例えば、純水の均一な氷核形成は、冷却速度および試料体積に応じて、典型的には−35から−38℃の範囲で起こる。しかしながら、比較的より高い零下温度での氷核形成の開始は、広範なプロセス技術に対して多くの利点を提供する。例えば、食品および医薬品の凍結乾燥の際、抑制された過冷却を伴う制御された氷核形成は、一次乾燥時間を顕著に短縮し、食感および製品の均一性を改善し得る。単離されたラット肝細胞およびヒト卵母細胞の緩慢凍結保存において、細胞外空間における、より高い氷核形成温度は、有害な細胞内氷形成(IIF)の可能性も減少させる。よって、過冷却効果(すなわち、氷核形成温度と融点との間の差)を最小にし、比較的高い零下温度で氷核形成を開始させる方法を開発する必要がある。
概要
本開示は、生物学的物質の凍結保存および安定化のための氷核形成調合物、ならびにその使用方法に関する。
一態様では、本開示は、氷核形成剤を含有するハイドロゲル粒子であって、氷核形成剤が内部に封入されているハイドロゲル粒子を提供する。
一部の実施形態では、氷核形成剤はSNOMAXまたはヨウ化銀である。氷核形成剤はまた、タンパク質、炭水化物、またはリン脂質でもあり得る。ハイドロゲル粒子中の氷核形成剤の濃度は0.5mg/ml、1mg/ml、または2mg/mlを超え得る。
一部の実施形態では、ハイドロゲル粒子はアガロースハイドロゲル粒子、またはアルギネートハイドロゲル粒子である。
一部の実施形態では、ハイドロゲル粒子は4mm未満、3mm未満、または2mm未満の直径を有する。一部の実施形態では、ハイドロゲル粒子は15μl未満、または5μl未満の体積を有し得る。
一部の実施形態では、ハイドロゲル粒子は重水(例えば、DOまたはTO)をさらに含有する。
一部の実施形態では、ハイドロゲル粒子は、凍結保護物質(cryoprotectant)(例えば、DMSO、EG、PROH、3−OMG、またはグリセロール)をさらに含み得る。
一部の実施形態では、ハイドロゲル粒子は、試料の氷核形成温度を−8℃より高い、または−5℃より高い温度に上昇させることができる。一部の実施形態では、ハイドロゲル粒子は、複数の試料の氷核形成温度の範囲を縮小する。
一態様では、本開示はまた、ハイドロゲル粒子および氷核形成剤を含む組成物であって、氷核形成剤がハイドロゲル粒子の内部に封入されている、組成物も提供する。
一部の実施形態では、氷核形成剤はSNOMAXまたはヨウ化銀である。氷核形成剤はまた、タンパク質、炭水化物、またはリン脂質でもあり得る。ハイドロゲル粒子中の氷核形成剤の濃度は0.5mg/ml、1mg/ml、または2mg/mlを超え得る。
一部の実施形態では、ハイドロゲル粒子はアガロースハイドロゲル粒子、またはアルギネートハイドロゲル粒子である。
一部の実施形態では、ハイドロゲル粒子は4mm未満、3mm未満、または2mm未満の直径を有する。一部の実施形態では、ハイドロゲル粒子は15μl未満、または5μl未満の体積を有し得る。
一部の実施形態では、組成物は、凍結保護物質(例えば、DMSO、EG、PROH、3−OMG、またはグリセロール)をさらに含み得る。一部の実施形態では、組成物は重水(例えば、DOまたはTO)をさらに含む。一部の実施形態では、組成物は保存剤をさらに含み得る。
別の態様では、本開示はまた、重水(例えば、DOまたはTO)および氷核形成剤を含む組成物も提供する。一部の実施形態では、組成物中の重水の重量百分率は10%、50%、または75%を超え得る。一部の実施形態では、水分中の重水の百分率(v/v)は10%、50%、または75%を超える。
一部の実施形態では、氷核形成剤はSNOMAX、氷核細菌、ヨウ化銀、鉱物粒子、またはナノ粒子である。一部の実施形態では、氷核形成剤はタンパク質、炭水化物、またはリン脂質である。
一部の実施形態では、組成物は、凍結保護物質(例えば、DMSO、EG、PROH、3−OMG、またはグリセロール)をさらに含み得る。一部の実施形態では、凍結保護物質は非浸透性凍結保護物質である。一部の実施形態では、凍結保護物質はスクロース、トレハロース、スタキオース、ラフィノース、またはポリマー(例えば、PEG、PVA、HES)である。
一部の実施形態では、組成物は保存剤(preservative)をさらに含み得る。
一態様では、本開示はまた、生物学的試料を保存する方法を提供する。本方法は、生物学的試料を本明細書に記載の組成物と接触させる工程;および生物学的試料を組成物と共に凍結させる工程を含む。一部の実施形態では、本方法は生物学的試料を解凍する工程をさらに含む。生物学的試料は、細胞、組織試料、エキソソームまたは微小胞を含み得る。
一態様では、本開示は、器官を保存する方法に関する。本方法は、器官に本明細書に記載の組成物を灌流または接触させる工程;および器官を組成物の存在下で凍結させる工程を含む。一部の実施形態では、本方法は器官を解凍する工程をさらに含む。器官は肝臓、心臓、または腎臓であり得る。一部の実施形態では、本方法は虚血再灌流障害を最小限に抑える。
別の態様では、本開示はまた、凍結システムも提供する。本凍結システムは、表面および氷核形成剤を有し、ここで、氷核形成剤は表面上に固定化されている。一部の実施形態では、本凍結システムは、バッグ、プラスチックバイアル、ガラスバイアル、プラスチックストロー、プルドストロー、毛細管もしくはストロー、またはバイオリアクターを含む。
本開示はまた、表面および本明細書に記載のハイドロゲル粒子を有する凍結システムであって、ハイドロゲル粒子が表面上に固定化されている、凍結システムにも関する。一部の実施形態では、本凍結システムは、バッグ、プラスチックバイアル、ガラスバイアル、プラスチックストロー、プルドストロー、毛細管もしくはストロー、またはバイオリアクターを含む。
一態様では、本開示はまた、凍結システムも提供する。本凍結システムは、本明細書に記載のハイドロゲル粒子および/または本明細書に記載の組成物を含む。一部の実施形態では、本凍結システムは、バッグ、プラスチックバイアル、ガラスバイアル、プラスチックストロー、プルドストロー、毛細管もしくはストロー、またはバイオリアクターを含む。
別の態様では、本開示は、所望の氷核形成温度を有するハイドロゲル粒子組成物を製造する方法に関する。本方法は、
(1).所望の氷核形成温度を選択する工程;
(2).所定の曲線から、ハイドロゲル粒子組成物中の氷核形成剤の標的総質量を決定する工程であって、所定の曲線が、氷核形成温度と、複数の試料ハイドロゲル粒子組成物についての氷核形成剤の総質量とを相関させる、工程;
(3).標的総質量に基づき、ハイドロゲル粒子組成物のN、Vおよびclocalの値を決定する工程;ならびに
(4).決定されたN、Vおよびclocalの値を有するハイドロゲル粒子組成物を製造する工程
を含む。
一態様では、本開示はまた、所望の氷核形成温度を有する氷核形成剤を含む重水組成物を製造する方法にも関する。本方法は、
(1).所望の氷核形成温度を選択する工程;
(2).所定の曲線から、重水濃度を決定する工程であって、所定の曲線が、氷核形成温度と、各々が氷核形成剤を含む複数の試料重水組成物についての重水濃度とを相関させる、工程;
(3).決定された重水濃度を有し、氷核形成剤を含む重水組成物を製造する工程
を含む。
本開示は、無細胞分子(DNA、RNA、タンパク質など)、細胞由来小胞(例えばエキソソームおよび微小胞)、栄養素/医薬品、細胞、器官および生物体全体の投与のためのリポソームおよび他のビヒクルを含む、生物学的物質を含有する試料の保存/安定化を目的とする、DO、氷核形成剤、および/または他の保存剤の適用をさらに提供する。
一部の実施形態では、本開示は、溶液における氷のシーディングのために氷核形成剤および他の保存剤と共にDOを添加すること、ならびに/または生物学的物質の試料変動性を減らすために、氷核形成剤および他の保存剤と共にDOを添加して溶液において氷をシーディングすることに関する。
一部の実施形態では、氷核形成剤と共にDOを添加することは、細胞、器官、または他の生物学的物質の保存期間の長さを延ばすとともに、虚血再灌流障害および保存の結果としての他の有害な影響を最小限に抑えることができる。
一部の実施形態では、氷核形成剤は、SNOMAXおよび他の氷核細菌、ヨウ化銀、鉱物粒子、ナノ粒子、動物と植物の両方において天然に存在する氷核形成剤、タンパク質、炭水化物、および/またはリン脂質などで構成される氷核形成剤を含むがこれらに限定されない多くの既知の物質の1つから選択され得る。
一部の実施形態では、溶液は、DMSO、EG、PROH、3−OMG、グリセロールなどの浸透性凍結保護物質、ならびにスクロース、トレハロース、スタキオース、ラフィノース、ポリマー(例えば、PEG、PVA、HES)などのような非浸透性凍結保護物質を含むがこれらに限定されない、凍結保存の対象である溶質を含む。一部の実施形態では、溶液は、複数の凍結保護物質の混合物を含む。
一部の実施形態では、DO濃度は100%、75%、50%、25%、またはこの範囲内の他の任意の濃度であり得る。一部の実施形態では、DO濃度は10%を超える。
本開示はまた、凍結システムも提供する。本凍結システムは、バッグ、プラスチックバイアル、ガラスバイアル、プラスチックストロー、プルドストロー、毛細管もしくはストロー、バイオリアクター、または凍結保存される細胞を含有する他の物質であり得る。
一部の実施形態では、氷核形成剤は、溶液に添加されるか、または冷凍システムの表面上に固定化される。
一部の実施形態では、核形成剤は、ハイドロゲルの液滴中にカプセル化されている。
一部の実施形態では、生物学的試料は、懸濁細胞、組織工学細胞系由来の試料、培養細胞、細胞の共培養物、組織、組織片、および/または器官である。
特に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての技術的および科学的な用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。方法および材料は、本発明における使用のために本明細書に記載されている;当技術分野で公知の他の適切な方法および材料もまた使用され得る。材料、方法、および実施例は例示にすぎず、限定することを意図しない。本明細書において言及された全ての出版物、特許出願、特許、配列、データベースエントリ、および他の参考文献は、その全体が参照によって取り込まれる。矛盾がある場合は、定義を含め、本明細書が優先するものとする。
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および図面から、ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
図1のA:架橋剤として塩化カルシウムを用いたイオノトロピックゲル化法による、アルギネートビーズの調製。図1のB:1℃/分の冷却勾配に付された0.5mlの水性試料の凍結温度測定。図1のC:0.5mlの10%グリセロール溶液単独(黒色)および、10個のアルギネートビーズ(18ゲージ針により調製)を含有し、15mg/mlのSNOMAXをカプセル化した0.5mlの10%グリセロール(灰色)の温度プロファイル。図1のD:18ゲージ針で調製し、それぞれ0.1mg/ml(左)および15mg/ml(右)のSNOMAXをカプセル化した2つのアルギネートビーズ(グリッドは12.7mm×12.7mmの寸法を有する)。図1のE:凍結前のSNOMAX不含アルギネートビーズ。図1のF:凍結融解後のSNOMAX不含アルギネートビーズ。 異なる局所濃度のSNOMAX(0.1または2.5mg/ml)を含有するアルギネートビーズの存在下でのWFI水(注射用水)の凍結温度(T)。ビーズは30ゲージ針によって生成した。 異なる局所濃度のSNOMAX(0.1、2.5、または15mg/ml)を含有するアルギネートビーズの存在下でのWFI水の凍結温度(T)。ビーズは18ゲージ針によって生成した。 図3のA:異なる局所濃度のSNOMAX(0.1、2.5、または15mg/ml)を含有するアルギネートビーズの存在下での10%グリセロール水溶液の凍結温度(T)。ビーズは30ゲージ針によって生成した。図3のB:異なる局所濃度のSNOMAX(0.1、2.5、または15mg/ml)を含有するアルギネートビーズの存在下での10%グリセロール水溶液の凍結温度(T)。ビーズは18ゲージ針によって生成した。 0.5mlのWFI水中に存在するSNOMAXの総質量(m)の関数としてプロットされた凍結温度(T)プロファイル。濃黒色のデータポイントは、0.005〜100mg/mlのSNOMAX懸濁液の凍結温度に対応している。全てのデータポイントに最もよくフィットする曲線は、実線で示されるT=0.6478・log10m−3.052(R=0.9019)である。 0.5mlの10%グリセロール水溶液中に存在するSNOMAXの総質量(m)の関数としてプロットされた凍結温度(T)プロファイル。濃黒色のデータポイントは、10%グリセロール中に調製された0.005〜50mg/mlのSNOMAX懸濁液の凍結温度を表している。実線T=1.093・log10(m)−5.771は、全てのデータポイントに最もよくフィットするものである(R=0.9571)。 図6は、SNOMAXが懸濁液中またはアルギネートビーズ中にある2つの試料を並べて示した画像である。 条件1は0.1g/LのSNOMAXを含有する純粋な重水であり、条件2は0.1g/LのSNOMAXを含有する純粋な水であり、条件3は純粋な重水であり、条件4は純粋な水である、ナノ液滴技術を用いた氷核形成温度の確率分布。 条件1は0.1g/LのSNOMAXを含有する100%の重水(DO)であり、条件4は純水(O)である、バルク試料(2mL)における氷核形成温度の確率分布。 全細胞に対して標準化された短期間の凍結保存(約2時間)後の、全細胞(コンフルエンスのパーセント)に対して標準化されたカスパーゼ陽性初代肝細胞(すなわち死細胞)の数。 −80℃で10日間貯蔵された保存オンコソームから抽出されたRNAの収量。全ての実験条件は、0日目の収量に対して標準化されており、RNA収量の相対的変化が貯蔵時間の関数として示されている。 氷核形成剤は、凍結後の保存生存能力を高める。新鮮な初代ラット肝細胞に300mM 3OMGを投入して2時間置き、氷核剤(「SN」と表示)の存在下または非存在下のいずれかで、高サブゼロ凍結融解プロトコールに付した。解凍後、肝細胞は二重ゲル構成でプレーティングし、その生存能力をカスパーゼ3/7(死染色)を使用して5日間追跡した。 図12のA:アガロースハイドロゲル粒子中にカプセル化されたINPの明視野像。図12のB:ヘキスト染色した、ハイドロゲル粒子内に含有されるINP。図12のC:クライオステージを使用して画像化した、凍結されたカプセル化INP。図12のD:生体適合性INPは、より予測可能な氷核形成温度を達成し得る。 分割ヒト肝グラフトのバックテーブル分離および機械潅流の概観。 肝葉の血行動態(灌流中30分ごとにモニターし、記録)。 図14はPseudomonas syringaeのInaZの配列を示している。
詳細な説明
氷核形成の制御は、食品および製薬の科学ならびに低温生物学に関連する多くのプロセス技術において根本的に重要である。機械的摂動および電磁場は、制御された様式で氷核形成を誘導することが知られている。これらの氷核形成方法は、手動操作の場合の一貫性および標準化の欠如、多数の試料についての煩雑な工程、ならびに電場および/または磁場の必要性などといった多くの不利益を被る。
氷核形成剤(INA)粒子表面の微視的構造は、氷の結晶構造に似ていることから、INAは、不均一に氷核形成を誘導すると一般に示唆されている。INAの主な利点の一つは、それらの自己氷シーディング能力、すなわち手動または機器による割込みなしに、それらの固有の温度で不均一に氷形成を開始することである。しかし、生物系におけるINAの使用は、それらの生体適合性、分解性、毒性、回復および使いやすさについての懸念をもたらす可能性がある。したがって、潜在的な毒性および汚染を回避するために、外来の氷核と生物成分との間の直接的な接触を最小限に抑えることが望ましい。加えて、使用されたINA粒子の回収は、下流の処理も容易にし得る。ハイドロゲルカプセル化は、これらの目的を実現するための有望な経路を提供し得る。
本開示は、例えば、マイクロリットルサイズのアルギネートビーズにカプセル化されたモデル氷核形成剤を提供する。本開示は、氷核形成温度に影響を与える因子、例えばビーズのサイズおよび数、ならびにINA粒子の局所濃度を調べることによって、水中およびグリセロール水溶液中で氷核形成を惹起する細菌ハイドロゲルビーズの性能を評価している。一定体積の水性試料において、INA粒子の総質量(m)は、細菌ハイドロゲルビーズの氷核形成性能力を決定する支配的なパラメーターであることがわかる。凍結温度は、log10mとの強い正の線形相関を有する。本知見は、氷核形成を制御するための効果的で予測可能なアプローチを提供し、それは、多くの氷補助プロセス技術の結果と標準化を改善し得る。
本開示はまた、凍結乾燥したP.syringaeとの重水(例えば、DOまたはTO)および軽水(HO)混合物のピコリットルサイズの液滴の氷核形成動力学も系統的に調査した。結果は、100%のDOで調製した1mg/mlのP.Syringae懸濁液の凍結温度の中央値が−4.6℃と高くなることを示した。界面特異的な和周波発生(SFG)分光法および分子動力学シミュレーションは、水−細菌界面で形成される水素結合が、隣接した水のネットワークに構造秩序を課し、氷核形成を促進することを明らかにした。本開示は、DOおよびHO混合物の凍結特性に対する、エチレングリコール、プロピレングリコールおよびトレハロースなどの一般的に使用されている凍結保護物質の効果をさらに調査した。結果は、100%DO中に1mg/mlのP.syringaeの凍結乾燥調製物を含有する懸濁液の凍結温度の中央値は、純粋なHOの−37.4℃と比較して、−4.6℃と高くなることを示している。DO濃度が25%(v/v)増加するごとに、1mg/mlのSNOMAXを含有するDO+HO混合物の氷核形成の動力学的プロファイルは約1度シフトし、これから、DOとHOの理想的な混合による挙動が示唆される。さらに、いくつかの凍結保護物質は、凍結現象を抑制することがわかる。これらの水溶液の均一および不均一凍結温度はどちらも、水の活性に依存し、溶質の性質には非依存的である。これらの知見は、DOに関係する氷核形成についての基本的な知識を豊かにし得るものであり、DOと氷核形成剤の組合せが、有望な自己氷核形成調合物となり得ることを示唆している。自己核形成の意味するところは、様々な凍結保存プロトコールに付される生物学的試料の生存能力を顕著に改善するであろう緩慢凍結を行うための、より高い、正確に制御された「氷シーディング」温度を含む。
本開示における結果はまた、平衡凍結融解プロトコールに付された初代ラット肝細胞の生存に対する、より高い核形成温度の効果も示している。データは、氷核形成温度のみを変えることで、肝細胞の完全な死に対して100%の生存率をもたらし得ることを示している。氷核形成は成功のために非常に重要であるため、以下の特徴を有する生体適合性の氷核形成剤、組成物、および/または調合物を開発することが望ましい:(1)容易に灌流され得る、(2)細胞膜を通過せず、それによって細胞内の氷形成の可能性を最小化する、(3)より大きなマイクロキャピラリーと、より小さなマイクロキャピラリーとにおける氷形成を較正するために特定のサイズに調整され得る、および(4)移植前に容易かつ完全に除去され得る。
氷核形成温度
温度が液体の標準凝固点まで下げられると、液体は、周囲に結晶構造が形成し得る種結晶または核の存在下で結晶化し、固体を生成する。そのような核を欠く場合、液相が結晶の均質核形成が起こる温度まで、ずっと維持され得る。水は通常、273.15K(0℃)で凍結するが、標準圧力で、約224.8K(−48.3℃)における結晶の均質核形成まで「過冷却」され得る。過冷却のプロセスは通常、水が純粋で、核形成部位がないことを必要とし、これは、逆浸透または化学脱塩のようなプロセスによって達成され得る。核形成部位が存在するか、または水が実質的に純粋ではない場合、水は通常−48.3℃よりも高い温度で凍結することになる。氷核形成が起こると、氷核形成部位周辺の結晶化が急速に広まり、水が凍結することになる。したがって、本明細書で使用されるとき、用語「氷核形成温度」は、臨界的サイズの最初の安定した氷胚が形成される温度を指す。
制御されていない氷核形成は細胞内構造を破壊すると一般に考えられている。氷核形成が平衡凝固点(すなわち、氷の結晶化と伝播を促進する最高温度、融点としても知られる)にできるだけ近いところで起こる場合に、低温損傷または低温傷害を最小限に抑えられ得る。これは、様々な証拠から裏付けられている。例えば、凍結耐性の多様な種における研究は、氷核形成剤(INA)が凍結に対する生存において重要な役割を果たすことを示している。血液中および腸/皮膚中のINAは、複数の核形成部位で細胞外水分の凍結の制御を誘導する。血リンパが徐々に凍結する際、それには細胞外液の浸透圧の増加が伴い、水が細胞内環境から引き出されるため、細胞の脱水が生じる。細胞内の液がもはや過冷却されず、細胞内環境における氷核形成が防止されるため、これはさらなる保護を提供する。
凍結保存時の損傷の最小化は、氷核形成が平衡凝固点にできるだけ近いところで起こるとき、および氷の伝播がより大きな試料体積にわたって、より均一であるときに達成され得る。多くの研究は、治療用細胞の凍結保存における核形成制御の利点を示している。例えば、胚性幹細胞は、より高温での氷核形成誘導を伴うゆっくりとした、制御された冷却速度から利益を受け、22%未満から90%超まで改善した生存率がもたらされることが示されている[28]。より高い核形成温度を達成するための1つの一般的な方法は、冷たい金属表面を試料と直接接触させることによって「コールドポイント」を作り出すことである。しかしながら、比較的大きな試料(>1mL)では冷却が均一ではないため、このアプローチは小さな体積にのみ適している。さらに、この方法は、核形成速度の変動性が高いという問題を引き起こし、多数の試料を保存する研究室にとっては実用的でない。本開示は、氷核形成温度を上昇させるための様々な組成物および調合物(例えば、ハイドロゲル粒子、ハイドロゲル粒子組成物および重水組成物)を提供する。
氷核形成剤(INA)
本明細書で使用されるとき、用語「氷核形成剤(ice nucleating agent)」または「氷核剤(ice nucleator)」は、氷の形成を促進し、それらが水性系に添加されると、より高い温度で氷核形成を開始することができる粒子または表面を指す。氷核形成剤の目的は氷の形成を促進することであるので、氷核形成剤はランダムなまたは環境的な混入物、例えば粉塵または煤を含まない。氷核形成剤を水に添加すると、結果として氷核形成温度が上昇する。氷核形成剤が核形成を達成する正確な方法はよく理解されていないが、一般に、氷核形成剤は、水分子を氷に似た様式で組織化し、比較的高い温度で核形成するのに十分なだけ大きな水分子凝集体を作り出すと考えられている。氷核形成剤は効果的に氷形成を促進することができる。一部の実施形態では、十分な量の氷核形成剤は、氷核形成温度を少なくとも1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃、10℃、11℃、12℃、13℃、14℃、15℃、16℃、17℃、18℃、19℃、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、または38℃上昇させることができる。一部の実施形態では、十分な量の氷核形成剤は、氷核形成温度を−10℃、−9℃、−8℃、−7℃、−6℃、−5℃、−4℃、−3℃、−2℃、または−1℃より高い温度に上昇させることができる。一部の実施形態では、十分な量とは、0.5ml、1ml、または1.5mlの純水中で試験される0.001mg、0.005mg、0.01mg、0.05mg、0.1mg、0.5mg、1mg、5mg、または10mgを指す。よって、一部の実施形態では、本明細書に記載の0.01または0.1mgの氷核形成剤は、0.5mlの純水の氷核形成温度を−6℃または−5℃より高い温度に上昇させることができる(例えば、図4を参照)。
氷核形成剤は、有機または無機であり得る。例えば、氷核形成剤は、微粒子(マイクロ粒子、ナノ粒子、鉱物粒子など)、またはヨウ化銀、酸化銀、またはアルミナ結晶などの無機物質であり得る。氷核形成剤はまた、炭水化物、リン脂質、タンパク質、アルコール、アミノ酸(例えば、アスパラギン酸)、またはリポタンパク質のような有機化合物でもあり得る。一部の実施形態では、氷核形成剤は長鎖脂肪族アルコールである。氷核形成剤は微生物、例えばウイルス、細菌(例えば、氷核形成細菌)、または真菌でもあり得る。一般的に使用されるいくつかの氷核形成剤は、ヨウ化銀、IceStart(商標)(Asymptote、英国ケンブリッジ)およびSNOMAX(登録商標)(SNOMAX LLC、コロラド州エングルウッド)を含む。
IceStart(商標)は、水溶液の冷却中に氷核形成剤として機能する生体適合性物質である。それは、生物学的に不活性な鉱物粒子で構成される氷核形成剤である。
SNOMAX(登録商標)は、細菌Pseudomonas syringae由来のタンパク質に基づく「雪誘導剤」である。これらのタンパク質は、結晶化プロセスを改善するための追加の核種として働く。Pseudomonas syringae(登録商標)タンパク質は、SNOMAXを製造するために微生物から抽出される。発酵後、液体からタンパク質が分離され、スラリーを形成するために特別なフィルターを用いて処理される。このスラリーは次いで凍結され、凍結乾燥される。残っている生菌は、その過程で殺される。このように、SNOMAX(登録商標)は、Pseudomonas syringaeから抽出された氷核形成タンパク質の凍結乾燥形態である。
Pseudomonas syringaeは、グラム陰性の桿菌である。それは、かなり高い温度(−4から−2℃)で水を凍結させる氷核形成活性(INA)タンパク質を生成する。氷核形成活性タンパク質とは、グラム陰性菌が比較的高温で氷の核形成を促進することを可能にするタンパク質のファミリーを指す。これらのタンパク質は通常、外膜表面に局在している。Pseudomonas syringaeの氷核形成活性タンパク質は、氷核形成活性タンパク質InaZ(UniProt P06620−1;配列番号1)として知られている。タンパク質の一次構造は、配列を支配する反復性の高いドメインを含む(配列番号2)。
AGYGSTxTagxxssli AGYGSTxTagxxsxlt AGYGSTxTaqxxsxlt(配列番号2)
ここで、配列番号2中のxは任意のアミノ酸を表す。ドメインは、それ自体が16残基の3つのブロックを含み、そのうちの最初の8残基が同一である、48残基の反復を多数含んでいる。反復ドメインは、種晶中の水分子を整列させる役割を担っている可能性が考えられている。(Wolber PK、Green RL(1990).“Detection of bacteria by transduction of ice nucleation genes”. Trends Biotechnol.8巻(10号):276〜279;Gurian−Sherman D、Lindow SE(1993).“Bacterial ice nucleation: significance and molecular basis”.FASEB J.7巻(14号):1338〜1343を参照)。Pseudomonas syringaeとPseudomonas syringaeの株は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,489,521号に記載されている。
例えば、Pseudomonas fluorescens、Pseudomonas coronafaciens、Pseudomonas pisi、Erwinia species、Erwinia ananas、Erwinia herbicola、Escherichia coli、Xanthomonas、氷核形成真菌および/または氷核形成原生動物など、他の微生物、またはこれらの微生物由来のタンパク質もまた、氷核形成剤として使用され得る。これらの氷核形成剤は、例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられるWO/2011/026020に記載されている。
ハイドロゲル粒子
本明細書で使用されるとき、用語「ハイドロゲル粒子」は、ハイドロゲルでできた粒子を指す。ハイドロゲルは、親水性の高い天然または合成のポリマーネットワークである。本開示は、氷核形成剤を含有するハイドロゲル粒子を提供する。氷核形成剤は、ハイドロゲル粒子内に封入されるか、カプセル化されるか、または埋め込まれる。ハイドロゲル粒子は、様々な形状、例えば球、ビーズを有することができ、同様な形状およびサイズを有することができる。ハイドロゲル粒子は、いくつかの利点を有する。第1に、氷核形成剤(例えば凍結乾燥させたP.syringae)がハイドロゲルビーズ中にカプセル化されると、INAと生物系との間の相互作用が最小化される。よって、ハイドロゲル粒子は毒性作用を有する可能性が低い。第2に、粒子は生物系から容易に除去されることも可能である。
本開示に記載のハイドロゲル粒子は、当技術分野において公知の任意の方法によって製造され得る。例えば、一部の実施形態では、氷核形成剤(例えばSNOMAX)は、水およびハイドロゲル溶液(例えばアルギネート溶液)と混合され得る。混合物中の氷核形成剤の濃度は、氷核形成剤の局所濃度である(これはハイドロゲル粒子内の氷核形成剤の濃度でもある)。混合物は次いでシリンジに入れられ、次いで硬化槽(例えば、1%(w/v)CaClの硬化槽)に滴下される。次いで液滴は、硬化槽中でゲル化され、精製水(例えば注射用水(WFI))でさらに洗浄される。ハイドロゲル粒子はまた、フローフォーカシングマイクロフルイディクス装置によっても製造され得る。例えば、氷核形成剤およびハイドロゲル溶液(例えば、約3%のアガロース)を含有する溶液は、フローフォーカシングマイクロフルイディクス装置を通過して、ハイドロゲル液滴またはハイドロゲルバブル(粒子)を生じさせることができる。同様に、溶液中の氷核形成剤の濃度は、ハイドロゲル粒子内の氷核形成剤の濃度となる。
よって、ハイドロゲル粒子内の氷核形成剤の濃度(局所濃度Clocal)は、容易に調整され得る。氷核形成剤の濃度は、0.01mg/mlから30mg/ml、0.1mg/mlから20mg/ml、0.5mg/mlから15mg/ml、または1mg/mlから5mg/mlの範囲であり得る。一部の実施形態では、氷核形成剤の濃度は、0.01mg/ml、0.1mg/ml、0.5mg/ml、1mg/ml、2mg/ml、3mg/ml、4mg/ml、5mg/ml、または10mg/mlよりも上である。一部の実施形態では、氷核剤の濃度は、30mg/ml、20mg/ml、10mg/ml、5mg/ml、4mg/ml、3mg/ml、2mg/ml、1mg/ml、または0.5mg/ml未満である。
ハイドロゲル粒子はまた、様々なサイズを有することもできる。例えば、ハイドロゲル粒子は、マイクロリットルサイズの粒子またはナノ粒子であり得る。本明細書で使用されるとき、用語「ナノ粒子」は、1から100ナノメートルのサイズの粒子を指す。一部の実施形態では、ハイドロゲル粒子は、10mm未満、9mm未満、8mm未満、7mm未満、6mm未満、5mm未満、4mm未満、3mm未満、2mm未満、1mm未満、または0.5mm未満の直径を有することができる。一部の実施形態では、ハイドロゲル粒子は、10mm超、9mm超、8mm超、7mm超、6mm超、5mm超、4mm超、3mm超、2mm超、1mm超、または0.5mm超の直径を有することができる。本明細書で使用されるとき、用語「直径」は、球上の円の最長の弦を指す;粒子が球形でない場合、直径は粒子のある点と粒子の別の点とを結ぶ直線の最大の長さを指す。
ハイドロゲル粒子はまた、様々な体積を有することもできる。一部の実施形態では、ハイドロゲル粒子は、100μl未満、50μl未満、30μl未満、20μl未満、15μl未満、10μl未満、5μl未満、4μl未満、3μl未満、2μl未満、または1μl未満の体積を有し得る。ハイドロゲル粒子はまた、50μl超、30μl超、20μl超、15μl超、10μl超、5μl超、4μl超、3μl超、2μl超、または1μl超の体積も有し得る。
ハイドロゲル粒子中のハイドロゲルは、天然または合成のポリマー化合物由来のゲル形成剤によって生成され得る。天然ポリマー化合物由来のゲル形成剤は、例えば、寒天、アガロース、アルギン酸(アルギネート)、ゼラチン、アラビアゴム、マルメロ種子粘液物質、トラガカントゴム、グアーガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、グルコマンナン、ペクチン、ガラクタン、プルラン、キサンタンガム、カゼイン、カゼインカリウム塩、カゼインナトリウム塩、コンドロイチン硫酸ナトリウム、デンプン系半合成ポリマー化合物(例えば、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン、メチルヒドロキシメチルデンプンなど)およびデキストリンを含む。これらのゲル形成剤は、単独またはそれらの2種以上の混合物で使用され得る。一部の実施形態では、ハイドロゲル粒子はアガロースハイドロゲル粒子またはアルギネートハイドロゲル粒子である。これらのゲル形成剤の一部は、米国特許第8222193号に記載されており、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。ハイドロゲル群中のゲル形成剤の濃度は、通常、0.5%〜10%(w/w重量百分率)の範囲、例えば、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、または10%である。
ハイドロゲル粒子は、水を含有し得る。一部の実施形態では、ハイドロゲル粒子は重水(例えば、DOまたはTO)を含有し得る。何らかの他の化合物もまた、ハイドロゲル粒子中に封入され得る。例えば、一部の実施形態では、ハイドロゲル粒子は、本明細書に記載の凍結保護物質(例えば、DMSO、EG、PROH、3−OMG、またはグリセロール)を含有し得る。
本開示に示されているように、本明細書に記載のハイドロゲル粒子は、氷核形成温度を上昇させることができる。一部の実施形態では、本明細書に記載のハイドロゲル粒子は、氷核形成温度を−10℃、−9℃、−8℃、−7℃、−6℃、−5℃、−4℃、−3℃、−2℃、または−1℃より高い温度に上昇させることができる。
さらに、類似の試料の氷核形成温度は、異なり得る。時として、氷核形成の確率論的性質により、同じ試料でも異なる氷核形成温度をもつことがある。よって、氷核形成温度には、例えば、−8℃〜−4℃といった範囲がある(例えば、図2Aを参照)。本明細書で使用されるとき、用語「範囲」は、最高氷核形成温度と最低氷核形成温度の間の差を指す。例えば、−8℃〜−4℃の範囲は4℃である。本明細書に記載のハイドロゲル粒子は、複数の試料の氷核形成温度の範囲を縮小し得る。例えば、氷核形成温度の範囲は、5℃、4℃、3℃、2℃、または1℃に縮小され得る。よって、本明細書に記載のハイドロゲル粒子は、より予測可能な様式で氷の形成を開始させ得る。
ハイドロゲル粒子中の氷核形成剤は、10%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、または0.1%未満の漏出率を有し得る。漏出率は、ハイドロゲルマトリクスの外側で観察される氷核形成剤(例えば、ハイドロゲル粒子)の量を、ハイドロゲルマトリクス中に最初にカプセル化される氷核形成剤の総量で割ったものとして定義される。氷核形成剤の量は、当技術分野において公知の様々な手法によって決定され得る。例えば、氷核形成剤は蛍光標識されることができ、その量は蛍光強度によって決定され得る。
ハイドロゲル粒子組成物
本開示はまた、ハイドロゲル粒子を含む組成物も提供する。一部の実施形態では、組成物はまた、水(例えば、HO、DOまたはTO)も含む。
組成物はまた、例えば、上記のようなハイドロゲル粒子内に、または組成物中に別々に、本明細書に記載の1、2または3つ以上の凍結保護物質を含み得る。
本開示に示されているように、ハイドロゲル粒子(例えば、SNOMAX含有ハイドロゲルビーズ)の氷核形成性能が、サイズ、ハイドロゲル粒子の数、局所的な氷核形成剤濃度Clocal(すなわち、ハイドロゲルマトリクス内の氷核形成剤の濃度)、およびグリセロールの添加などの様々な因子を調節することによって特徴付けられた。局所的な氷核形成剤の総質量は、一定体積(例えば、0.1ml、0.5ml、1ml、5ml、10ml、または100ml)の水性試料の氷核形成温度を決定するパラメーターであると決定されている。よって、本開示は、様々な質量の氷核形成剤を含む組成物を提供する。組成物中の氷核形成剤(例えば、SNOMAX)の総質量は、以下の式によって決定され得る:
m=N・V・clocal
式中、mは氷核形成剤の総質量であり、Nは組成物中のハイドロゲル粒子の数であり、Vはハイドロゲル粒子の体積または平均体積であり、clocalはハイドロゲル粒子の局所濃度である。よって、一部の実施形態では、組成物中の氷核形成剤(例えば、SNOMAX)の総質量は、0.001、0.01、0.1、1、10、100、1000、10、10、または10mgを超える。一部の実施形態では、組成物中の氷核形成剤(例えば、SNOMAX)の総質量は、0.001、0.01、0.1、1、10、100、1000、10、10、または10mg未満である。
一部の実施形態では、組成物は、凍結保護物質、および/または保存剤、例えば抗生物質も含み得る。
重水組成物
重水は、一般的な水素−1(H)同位体が、通常よりも多い量の重水素同位体(DまたはH)またはトリチウム同位体(TまたはH)で置換された水の一形態である。よって、本明細書で使用されるとき、重水はDOまたはTOを指す。重水の毒性は、単純な生物から複雑な生物まで様々である:藻類および細菌は、100%のDO中で増殖するように適応でき、実際、重水素化分子の供給源の役割を果たすが、20%を超える濃度は、通常の体温で動物および動物細胞に対して毒性を及ぼし得る。細胞レベルでは、DOは細胞周期を遅くし、概日リズムを長くすること、および巨大分子の熱安定性を増大させるが、(おそらくシャペロン機能の阻害の結果として)熱ストレスに対する細胞応答を減少させる可能性があることが示されている。さらに、DOは、生体分子(例えば、タンパク質および核酸)に対するその保護効果の結果としてワクチン接種の安定性を改善することが示されており、それは薬物代謝に影響することから、医薬における用途を有している。
上記の重水の多くの広範な用途の中で、DOはHOよりも強力な氷核剤となる。よって、一態様では、本開示は、重水(例えば、DOまたはTO)と氷核形成剤とを含む組成物を提供する。一部の実施形態では、重水はDOである。
組成物中の重水含有量は変動し得る。一部の実施形態では、重水の重量百分率は、5%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%を超え得る。一部の実施形態では、重水の重量百分率は、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%未満であり得る。
組成物はまた、HOも含み得る。一部の実施形態では、組成物中の全ての水のうちの重水(DOまたはTO)の体積百分率(v/v)は、5%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%を超え得る。一部の実施形態では、体積百分率は、10%、20%、25%、5%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%未満であり得る。一部の実施形態では、体積百分率は100%であり、これは、組成物中の全ての水が重水(例えば、DOまたはTO)であることを意味する。
組成物は、1、2または3以上の氷核形成剤(例えば、SNOMAXまたはヨウ化銀)を含み得る。氷核形成剤の濃度は、氷核形成温度に影響を与えることになる。一部の実施形態では、濃度は、0.001g/L、0.01g/L、0.05g/L、0.1g/L、0.2g/L、0.3g/L、0.4g/L、0.5g/L、0.6g/L、0.7g/L、0.8g/L、0.9g/L、1g/L、5g/L、または10g/Lを超え得る。一部の実施形態では、濃度は、0.001g/L、0.01g/L、0.05g/L、0.1g/L、0.2g/L、0.3g/L、0.4g/L、0.5g/L、0.6g/L、0.7g/L、0.8g/L、0.9g/L、1g/L、5g/L、または10g/L未満であり得る。一部の実施形態では、濃度は、範囲、例えば、0.1g/L〜0.5g/Lを有し得る。
本開示に示されるように、重水組成物は、氷核形成温度を上昇させ得る。一部の実施形態では、重水組成物は、氷核形成温度を−10℃、−9℃、−8℃、−7℃、−6℃、−5℃、−4℃、−3℃、−2℃、または−1℃より高い温度に上昇させることができる。本明細書に記載の重水組成物はまた、氷核形成温度の範囲も縮小し得る。例えば、氷核形成温度の範囲は、5℃、4℃、3℃、2℃、または1℃に縮小され得る。
一部の実施形態では、組成物はハイドロゲル粒子、凍結保護物質、および/または保存剤も含み得る。
凍結保護物質
本明細書に記載の組成物(例えば、様々なハイドロゲル粒子組成物および様々な重水組成物)はまた、1、2、または3以上の凍結保護物質も含み得る。本明細書中で使用される場合、用語「凍結保護物質剤」は、凍結中の細胞への損傷を予防または軽減する物質を指す。本開示において記載されている組成物には、様々な凍結保護物質が含められ得る。これらの凍結保護物質は、例えば、糖、ポリプロピレングリコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、デキストラン、グリセロール、ソルビトール、プロピレングリコール、エチレングリコール、ピリジン、2−3ブタンジオール、ヒドロキシエチルデンプン、ポリビニルピロリドン(PVP)、プロリン(または他のタンパク質安定剤)、ヒト血清アルブミンおよびそれらの組合せを含む。糖はまた、例えば以下、スクロース、トレハロース、ラフィノース、スタキオース、フルクトース、およびデキストランのうちのいずれかでもあり得る。例示的な糖およびそのような糖の濃度範囲は、参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第6,673,607号および第7,094,601号に記載されている。
凍結保護物質は、膜透過性または非透過性のいずれでもあり得る。透過性の凍結保護物質は、例えば、DMSO、エチレングリコール(EG)、PROH(プロピレングリコール、プロパン−1,2−ジオール、または1,2−プロパンジオール)、グリセロールなどのアルコール、および3−O−メチル−グルコース(3−OMG)などの糖誘導体を含む。非透過性の凍結保護物質は、例えば、フルクトース、トレハロース、スクロース、ソルビトール、またはラフィノースなどの糖類、ヒドロキシエチルデンプン(HES)またはポリビニルピロリドン(PVP)などのポリマー、L−プロリンなどのアミノ酸、およびヒト血清アルブミンなどの生物学的高分子、ならびにそれらの任意の組合せを含む。一部の実施形態では、凍結保護物質はスクロース、トレハロース、スタキオース、ラフィノース、またはポリマー(例えば、PEG、PVA、HES)である。一部の実施形態では、組成物は、ウィスコンシン大学(UW)溶液、3−OMG、トレハロース、N−アセチル−L−システイン、および/または硫化水素を含む。
凍結保護物質は、様々な濃度(w/v)、例えば、1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%または50%を有し得る。本明細書で使用されるとき、「重量/体積(w/v)濃度」または「重量/体積(w/v)百分率」は、最終体積100mLの溶液に溶解した溶質の(グラムでの)重量を指す。例えば、濃度1%(w/v)は、最終体積100mLの溶液に溶解した1gの溶質を有する溶液を指す。一部の実施形態では、濃度(w/v)は、1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%または50%を超え得る。一部の実施形態では、濃度(w/v)は、1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%または50%未満であり得る。例えば、凍結保護物質(例えば、DMSO、EG、PROH、グリセロール、プロピレングリコール、ピリジン、2−3ブタンジオール、またはヒト血清アルブミン)の濃度(w/v)は、1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、または40%であり得る。一部の実施形態では、凍結保護物質の濃度(w/v)は40%未満である。
溶質の濃度はまた、重量百分率(w/w)として表されることもできる。濃度1%(w/w)は、100gの最終溶液(溶質と溶媒の両方を含む)に1gの溶質を溶解させた溶液を指す。一部の実施形態では、凍結保護物質の濃度(w/w)は、1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%または50%を超え得る。一部の実施形態では、濃度(w/w)は、1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%または50%未満であり得る。例えば、凍結保護物質(例えば、PVP)の濃度(w/w)は、5%未満、例えば、1%、2%、3%、4%、または5%であり得る。
溶液中の溶質の量は、モル濃度で表されることもできる。モル濃度に一般的に使用される単位は、1リットル当たりのモル数として定義されるモル濃度(M)である。一部の実施形態では、凍結保護物質の濃度は、50mM、100mM、200mM、300mM、400mM、500mM、600mM、700mM、800mM、900mM、1M、2M、3M、または4Mを超え得る。一部の実施形態では、凍結保護物質の濃度は、50mM、100mM、200mM、300mM、400mM、500mM、600mM、700mM、800mM、900mM、1M、2M、3M、または4M未満であり得る。例えば、凍結保護物質(例えば、スクロース、ソルビトール、フルクトース、トレハロース、ラフィノース、ヒドロキシエチルデンプン、3−OMG)の濃度は、1M以下、例えば100mM、200mM、300mM、400mM、500mM、600mM、700mM、800mM、900mM、または1Mであり得る。凍結保護物質(例えば、プロリン)の濃度は、300mM以下、例えば、100mM、200mM、または300mMであり得る。
凍結保護物質は、本明細書に記載の組成物(例えば、ハイドロゲル粒子組成物および重水組成物)に単一の物質として、または1つ以上の物質の組合せとして添加され得る。例えば、2Mのエチレングリコールまたは1,2−プロパンジオール(PROH)に0.5〜2Mの糖を追加して相乗効果を生み出すことができる。例えば、エチレングリコールと糖との組合せ、またはPROHと糖との組合せが使用され得る。一例では、2MのPROHおよび0.5Mのトレハロースが組成物に添加される。他の例では、0.3Mのスクロースと1.5MのPROHが使用される。非浸透性の凍結保護物質は細胞内に入らないため、浸透性および非浸透性の凍結保護物質の組合せは、より低い凍結保護物質の細胞内濃度を可能にする。例えば、上記の2MのPROHと0.5Mのトレハロースにおいては、トレハロースが哺乳動物細胞の細胞膜に対して透過性でないため、凍結保護物質の細胞内濃度は2Mとなるであろう。
ナノ粒子およびマイクロ粒子
本明細書に記載の組成物は、ナノ粒子もしくはマイクロ粒子または両方をさらに含み得る。ナノ粒子またはマイクロ粒子の添加は、組成物の熱伝導率を高めると考えられる。
そのようなナノ粒子またはマイクロ粒子の例は、金、銀、チタン、パラジウム、白金などの炭素もしくは貴金属を有する粒子、またはそれらに類似の粒子を含む。そのようなナノ粒子および/またはマイクロ粒子の例は、炭素または貴金属、例えば、金、銀、チタン、パラジウム、白金、および銅を含み得るが、これらに限定はされない。本開示の一態様では、ナノ粒子は、組成物の総重量に基づいて、最大99%、50%、25%、20%、10%、5%またはそれ未満の量で本明細書に記載の組成物中に存在する。本開示の別の態様では、マイクロ粒子は、組成物の総重量に基づいて、最大99%、99%、50%、25%、20%、10%、5%までの量で本明細書に記載の組成物中に存在する。組成物中のナノ粒子のごく一部(<1%体積)の存在が、組成物の熱伝導率を200%超まで増加させることができることが示されている(Choiら、Applied Physics Letter 79巻:2252〜2254、2001;Eastmanら、Applied Physics Letter 78巻:718〜720、2001)。
生物学的試料、器官、または生物の保存
本開示は、生物学的試料を保存する方法を提供する。本方法は、生物学的試料を本明細書に記載の組成物または調合物(例えば、ハイドロゲル粒子組成物、重水組成物)と接触させる工程;および生物学的試料を組成物または調合物と共に凍結させる工程を含む。生物学的試料は、細胞、組織試料、オンコソーム、エキソソーム、微小胞またはリポソームであり得る。生物学的試料はまた、核酸(例えば、DNA、RNA、mRNA、マイクロRNAなど)、タンパク質、および/または脂質を含み得る。よって、一部の実施形態では、本明細書に記載の組成物または調合物は、凍結融解後の核酸の収量を向上させることができる。
本開示はまた、器官を保存する方法も提供する。本方法は、器官を本明細書に記載の組成物または調合物に灌流、接触、または浸漬させる工程;および組成物もしくは調合物と共に器官を凍結させる工程を含む。器官の灌流方法は、当技術分野において公知である。例えば、灌流は、器官上に注ぐことによって、または器官の動脈もしくは静脈を通して流すことによって実施され得る。一部の実施形態では、灌流装置が使用され得る。器官はまた、組成物または調合物中に浸漬され得る。器官は、哺乳動物の任意の器官、例えば、心臓、肺、腎臓、および肝臓などであり得る。さらに、器官の静的な冷蔵中には、ATP枯渇、カルシウム過負荷、活性酸素種の生成、細胞骨格破壊、および細胞アシドーシス(これらは全て、保存後の虚血−再灌流障害によって強められる)を含む、多くの有害なプロセスが短い保存時間に寄与し得る。DOは、細胞質のカルシウムを阻害し、微小管安定性を改善し、膜およびタンパク質を安定化させることが示されており[39]、したがって、本明細書に記載の組成物および調合物は虚血−再灌流障害も最小限に抑えることができる。
本開示はまた、生物を保存する方法も提供する。本方法は、生物を本明細書に記載の組成物または調合物に接触または浸漬させる工程;および組成物もしくは調合物と共に器官を凍結させる工程を含む。生物は、ウイルス、細菌、真菌、無脊椎動物(例えば、昆虫)、魚類、または爬虫類であり得る。
生物学的試料、器官、または生物は、氷核形成温度で凍結され得る。一部の実施形態では、氷核形成温度は、−10℃、−9℃、−8℃、−7℃、−6℃、−5℃、−4℃、−3℃、−2℃、または−1℃より高い。本方法は、生物学的試料、器官、または生物を解凍する工程をさらに含み得る。加えて、本明細書に記載の方法は、再生医療、細胞療法、および薬物スクリーニングのための幹細胞の低速凍結低温保存などの、多くの氷補助プロセス技術の結果および標準化を改善するためにさらに使用され得る。
生物学的試料は、哺乳動物細胞を含み得る。本明細書に記載の方法は、任意の種類および任意の種の哺乳動物細胞の凍結保存に使用され得る。例えば、本方法は、生殖補助技術において、または化学療法もしくは放射線療法を受けている患者において、卵母細胞または精子を凍結保存するために使用され得る。本方法はまた、胚性幹細胞などの幹細胞、または次いで幹細胞に基づく治療、細胞移植、組織工学、および再生医療の基礎として使用され得る他の細胞の凍結保存にも使用され得る。本方法はまた、種の保存のための生殖補助技術における将来の使用のために、希少動物または絶滅する危険性がある動物由来の卵母細胞または精子を凍結保存するためにも使用され得る。本方法は、動物飼育の目的(例えば、動物の繁殖および飼育)で、例えば、ウシ、ブタ、およびヒツジなどの動物由来の胚性幹細胞、生殖母細胞、卵母細胞、または精子の凍結保存のためにさらに使用され得る。
本開示の組成物および方法を使用して凍結保存され得る細胞型は、例えば、上皮細胞、心筋細胞、神経細胞、表皮細胞、ケラチノサイト、造血細胞、メラニン細胞、軟骨細胞、B細胞、T細胞、赤血球、マクロファージ、単球、線維芽細胞、または筋細胞などの分化した細胞;および胚性幹細胞、間葉系幹細胞、または成体幹細胞などの未分化細胞を含む。本開示の方法を使用して凍結保存され得る別の細胞型は、生殖母細胞、卵母細胞、精子、接合子、および胚を含む。他の細胞は、膀胱、脳、食道、卵管、心臓、腸、胆嚢、腎臓、肝臓、肺、卵巣、膵臓、前立腺、脊髄、脾臓、胃、精巣、胸腺、甲状腺、気管、尿管、尿道、または子宮由来の細胞を含む。
細胞は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物、例えば、Cercopithecoidea科、Hominoidea上科、Canis科、Feliscatus、Cricetidae spp.、Equus spp.(例えば、Equus caballus、Equus assinns)、Equidae科、Bos taurus、Bos indicus、Bovidae科、Camelidae科、Bubalus bubalis、Capra aegagrus hircus、Cervidae科、Cervinae科、Ovis aries、Ovis canadensis、Capra hircus、Sus scrofa domestica、Mesocricetus spp.、Mustela vison、Cavia porcellus、Meriones unguiculatus、Chinchilla laniger、Rattus norvegicus、Rattus spp.、Mus musculus、Leporidae科、Oryctolagus cuniculus、Kobus spp.、Gallus spp.、Meleagria gallopavo、Anatidae spp.、Mustela putorius、Columba domestica、Columba livia、Numida meleagris、Ornithorhynchus anatinus、Pavo cristatus、Bison spp.、Struthio spp.、Lama glama、Rhea spp.、Dromiceius spp.、Lama pacos、Rangifer tarandus、Bos grunniens、Camelus bactrianus、Camelus dromedarius、および絶滅のおそれのある任意の絶滅危惧種(例えば、米国魚類野生生物局(USFWS)の絶滅危惧種システム(TESS)によって特定された種)由来であり得る。
細胞は、当技術分野において公知の技術および本明細書中に記載の技術を使用して、凍結保存のために調製される。一般に、哺乳動物細胞は、当技術分野で公知の技術を使用して得られ、その細胞型に適した培地中で維持される。
凍結保存された生物学的試料の生存能力
所望される場合、本開示の凍結保存された生物学的試料は、当技術分野で公知の方法または本明細書中に記載の方法を使用して温められ得る。例えば、生物学的試料は20〜37℃、例えば室温で、場合により振盪しながら、場合により糖または他の凍結保護物質を補充して、1×PBS溶液中に投入され得る。温めた後、生物学的試料(例えば、細胞)は一般に洗浄され、適切な培地に懸濁され、研究または臨床応用における使用のための必要性に応じて処理される。例えば、胚性幹(ES)細胞は、当技術分野で公知の技術を使用してプレーティングされ、継代され得る。卵母細胞は一般に、油中に浸漬した培地の液滴中で培養される。凍結保存の前後に、細胞を培養するために使用される厳密な条件および培地は、当業者には明らかであろう。
加温後の生物学的試料(例えば、細胞)の生存能力と機能を決定するためには、種々の試験が当技術分野で公知であり、これらの試験は生物学的試料の種類に依存する。例えば、細胞ベースの治療に使用されるES細胞にとって、多能性の維持は非常に重要である。ES細胞の多能性は、例えば、Oct4−GFP発現、アルカリホスファターゼ発現の上昇、およびSSEA−1表面糖タンパク質の発現を含む、当技術分野で公知の方法を使用して試験され得る。細胞が効率的に付着する能力は、多くの細胞の生存能力および有用性に関する別のアッセイ法となる。付着アッセイは、当技術分野において公知であり、本明細書に記載されている。増殖アッセイもまた、付着細胞が凍結保存後に予想通りに増殖し得るかどうかを決定するために使用され得る。付着および増殖効率は、凍結保存を受けていない対照細胞と比較され得る。接合体の凍結保存については、凍結保存プロセス中に細胞損傷があったかどうかを決定するために、凍結保存後に分裂速度が測定され、対照群と比較され得る。卵母細胞の生存能力は、凍結保存後の細胞の形態学的特徴を調べることによって決定され得る。形態学的に、生存可能な卵母細胞は、無傷の透明帯および原形質膜ならびに屈折率の高い細胞質を呈し、一方、生存不能な卵母細胞は、光学顕微鏡下で可視化すると変性して見える。卵母細胞の生存能力および機能についての究極的な判定基準は、インビトロおよびインビボで健康な精子によって受精され、その後、卵割、胚盤胞、および/または孵化または胎児の発生を生じる能力である。
生物学的試料の生存能力、機能、および有用性を試験するためのアッセイはまた、本明細書に記載の凍結保存方法のためのパラメーターを試験するためにも使用され得る。例えば、組成物の変動(例えば、異なる凍結保護物質または凍結保護物質濃度)は、細胞に対して容易に試験されることができ、生体試料の生存能力、機能、および有用性に対するそれらの効果は、任意の本明細書に記載の方法または当技術分野で公知の方法を使用して試験され得る。
凍結システム
本開示はまた、凍結システムも提供する。本凍結システムは、生物学的試料、器官、または生物のための容器を含み得る。容器は、例えば、バッグ、プラスチックバイアル、ガラスバイアル、プラスチックストロー、プルドストロー、毛細管もしくはストロー、および/またはバイオリアクターを含み得る。冷凍システムはまた、冷却システムも含み得る。凍結システムは、本明細書に記載の組成物または調合物をさらに含み得る。一部の実施形態では、本開示に記載の氷核形成剤またはハイドロゲル粒子は、冷凍システムの表面上に固定化され得る。
特定の氷核形成温度のための組成物または調合物の設計
ハイドロゲル粒子の氷核形成性能が、本開示において特徴付けられている。一定体積の水性試料において、粒子中のINAの総質量が、氷核形成温度を左右する普遍的パラメーターとして同定された。これらの知見は、ハイドロゲル粒子のサイズおよび数、ならびに局所的なINA濃度を調整することによって、氷核形成温度を6度またはそれ以上の範囲内で調整するための指針を提供する。
図4に示されるように、凍結温度(氷核形成温度)が、0.5mlの水中に存在する氷核形成剤の総質量の関数としてプロットされる(m=N・V・clocal、log10スケール)。氷核形成剤の懸濁液の凍結温度もまた測定される。図4に示される全てのデータポイントが同じ傾向を共有している。ピアソンの相関は、Tとlog10mとの間に、明確な正の線形関係があることを示唆している。全てのデータポイントに最もよくフィットする曲線は、以下のものである。
=0.6478・log10m−3.052(R=0.9019)
これは、氷核形成温度の全質量が、INA粒子の存在形態にかかわらず、懸濁液中あるいは限局的な空間中のいずれでも、0.5mlの水中での氷核形成の発生を決定づけるパラメーターであることを実証している。
図5において、10%グリセロール水溶液の凍結温度が、log10スケールでmの関数としてプロットされている。全てのデータポイントに最もよくフィットする曲線は、以下のものである。
=1.093・log10(m)−5.771(R=0.9571)
データは、溶質の添加が、支配的パラメーターとしてのINA粒子の総質量の役割を変えないことを示している。したがって、N、V、およびclocalの組合せを調整することによって、INA粒子の総質量を増やして、氷核形成温度を上げることができる。
さらに、DOの濃度が、氷核形成温度に対して予測可能な影響を与える。例えば、DO濃度が25%(v/v)増加するごとに、1mg/mlのSNOMAXを含むDO+HO混合物の氷核形成の動力学的プロファイルは約1度シフトする。
したがって、本開示は、所望の氷核形成温度を有する組成物および調合物を設計する方法を提供する。一態様では、本方法は、所望の氷核形成温度を選択する工程、氷核形成温度と氷核形成剤の総質量とを相関させる所定の曲線に基づいて、N、V、およびclocalの最適値を決定する工程、決定されたN、V、およびclocalの値を有するハイドロゲル粒子組成物を製造する工程を含む。所定の曲線は、図4および図5に示されるような曲線であり得る。さらに、当業者は、本開示に記載の方法によって、氷核形成温度と氷核形成剤の総質量とを相関させる曲線を容易に決定することができる。
別の態様では、本方法は、所望の氷核形成温度を選択すること、氷核形成温度とDO濃度とを相関させる所定の曲線に基づいてDO濃度の最適値を決定すること、決定されたDO濃度を有する重水組成物を生成することを含む。当業者はまた、本開示に記載の方法によって、氷核形成温度とDO濃度とを相関させる曲線を容易に決定することができる。
本発明は、以下の実施例においてさらに記載されるが、それらは特許請求の範囲に記載された発明の範囲を限定するものではない。
実施例1.SNOMAX含有アルギネートビーズ
以下の材料および方法を、実施例2〜5においても使用した。
ある特定の量のアルギン酸ナトリウム塩(Sigma−Aldrich、ミズーリ州セントルイス)を細胞培養用水(Gibco WFI for Cell Culture、サーモフィッシャーサイエンティフィック、マサチューセッツ州ウォルサム)に溶解して、4%(w/v)アルギネートストック溶液を調製した。WFI水中に調製したSNOMAX(SNOMAX International、コロラド州イングルウッド)懸濁液(0.2〜30mg/ml)を等量のアルギネートストック溶液と混合し、0.1〜15mg/mlのSNOMAXおよび2%(w/v)アルギネートの最終局所濃度を得た。
SNOMAX含有アルギネート溶液を3mlシリンジ(BD Biosciences、カリフォルニア州サンノゼ)に充填し、これを次いで、GenieTouchシリンジポンプ(Kent Scientific Corporation、コネチカット州トリントン)に垂直に取り付けた。次いで、図1のAに示されているように、シリンジポンプに100μl/分の一定流速を適用して、SNOMAX含有アルギネート溶液を1%(w/v)CaCl硬化槽中に滴下した。それぞれ0.159および0.838mmの内径を有する30ゲージおよび18ゲージのフラットニードル(SAI Infusion Technologies、イリノイ州リバティビル)を使用した。アルギネートビーズを、CaCl槽中で30分間、頻繁な撹拌によりゲル化した後、WFI水で3回洗浄して、ビーズ表面の過剰のCaClおよびSNOMAX粒子を除去した。調製されたハイドロゲルビーズを、2mlの低温貯蔵バイアル(Corning Glass Works、ニューヨーク州コーニング)に収容された0.5mlのWFI水中に添加した。10%グリセロールでできた試料の場合、アルギネートビーズを低温貯蔵バイアルに収容された0.5mlの新鮮な10%グリセロール溶液中に添加する前に、10%グリセロールのストック溶液中、室温で20時間、HulaMixerサンプルミキサー(Life Technologies、カリフォルニア州カールスバッド)上でインキュベートした。グリセロールの拡散は、20時間後に1〜5%(w/v)のアルギネートビーズにわたって平衡に達したことが以前に示されている[5]。
図1のBに示されているように、各水性試料は、所与の局所SNOMAX濃度および所与の大きさの1、5または10個のビーズを含有していた。低温貯蔵バイアルを1℃/分の冷却勾配を課したKryo 560−16速度調節フリーザー(Planer、英国ミドルセックス)に凍結まで入れた。各試料の温度は、低温貯蔵バイアルキャップの穿孔を通して試料に挿入されたType−K熱電対(Digi−Sense、Cole Parmer Instrument Co.、イリノイ州シカゴ)によって測定した。温度は、データロガー(RDXL6SD、Omega Engineering,Inc.、コネチカット州スタンフォード)によって毎秒記録した。この研究では、熱電対の接合部は、直径2.5mmの滑らかなステンレス鋼のシース中に囲まれている点に留意すべきである。予備的な研究は、露出された熱電対接合部が液体に浸されると、気泡が接合部に吸着し、氷核形成部位として働き、制御不能な自発的凍結を引き起こす可能性があることを見出していた[11]。水性試料中で氷が核形成すると、温度は融点に戻り、次いで、液相線に従うことになる。図1のCに見られるように、温度プロファイルに急激な上昇が見られるときに、氷核形成温度または凍結温度(T)が同定され得る。各実験条件について、合計8〜16回の測定を反復して行った。
実施例2.SNOMAX含有アルギネートビーズの形態
この実施例では、一連のアルギネートビーズを調製した。図1のDは、18ゲージ針によって調製され、それぞれ0.1mg/mlおよび15mg/mlの局所SNOMAX濃度を有する2つの例を示している。予想されたとおり、より高いSNOMAX粒子のClocalは、ハイドロゲルビーズの透明性の低下に寄与した。表1は、異なるSNOMAXの局所濃度を有し、30ゲージまたは18ゲージの針で生成された、アルギネートビーズのサイズをまとめたものである。同じClocalでは、18ゲージ針によって生成されたビーズは、体積に関して、30ゲージ針によって生成されたビーズの約3.5倍の大きさであった。同じサイズの針を使用した場合、SNOMAXの局所濃度が高いほど、ビーズ体積は小さくなる。これは主に、中実粒子の局所濃度がより高い場合、重力が、針の先端での表面張力に打ち勝つために、より小さな体積が必要とされるためである。調製された細菌ハイドロゲルビーズのサイズは、使用されたINA粒子の容易な除去を可能にし、これは、下流の処理に有益であり得る。
ハイドロゲル構造に対する凍結の影響を説明するために、図1のEおよび図1のFでは、SNOMAX不含ビーズの形態を凍結融解の前後で比較した。凍結融解したアルギネートビーズ(図1のF)は、まだインタクトであるが、しわのある表面を有することが明らかであり、これは、凍結乾燥または風乾プロセスにより処理されたものと非常に類似している[12,14]。このしわ形成現象は、氷形成または蒸発中の水分の損失によるポリマーネットワークの部分的崩壊に起因することが示唆されている[12,14]。
実施例3.SNOMAX含有アルギネートビーズにより促進される水中での氷核形成
図2は、異なるClocal(すなわち、0.1、2.5または15mg/ml)のSNOMAX含有アルギネートビーズの存在下におけるWFI水の凍結温度を示している。氷核形成の確率論的性質を考慮して、全ての反復実験のデータポイントが示され、凍結温度の中央値

と四分位範囲が表示されている。一般に、凍結温度は、調査された以下の3つのパラメーターに正の関係を示す:ビーズの数(N)、ビーズの体積(V)、および局所SNOMAX濃度(clocal)。図2Aに見ることができるように、30ゲージ針で調製され、0.1mg/mlのSNOMAXを含有する単一のビーズの存在は、−5.6℃における氷核形成を誘導したが、凍結温度の中央値は、同じサイズとclocalのビーズをさらに4つ追加すると−4.5℃に上昇した。Vの効果については、30ゲージ針で調製された2.5mg/mlのSNOMAXを含む5つのビーズは、−4.0℃の凍結温度の中央値を導いた。しかし、ビーズが18ゲージ針によって生成され、それゆえ30ゲージ針の対応物の3倍以上の大きさである場合、

は−3.4℃に上昇した。図2Bに見られるように、18ゲージ針によって生成され、0.1mg/mlのSNOMAXを含有する10個のビーズの存在は、−3.7℃の凍結温度の中央値を導いた。SNOMAXの局所濃度が15mg/mlに増えた場合、凍結温度の中央値は−3.3℃になった。表2は、0.5mlのWFI水単独の凍結温度の中央値は−8.0℃であるのに対し、18ゲージ針で調製された10個のSNOMAX不含アルギネートビーズを含む0.5mlのWFI水の

は−7.2℃であることを示している。図2A〜図2Bに示されているほぼ全てのデータポイントは、−7℃より高いことから、SNOMAX粒子は、ハイドロゲルマトリクス内に閉じ込められていても、氷核形成温度を高めるのに大きな役割を果たした。
実施例4.SNOMAX含有アルギネートビーズにより促進される10%グリセロールにおける氷核形成
SNOMAX含有アルギネートビーズによって促進される10%グリセロール水溶液における凍結現象も調査した。グリセロールは、その束一性、強い水素結合能力、および低温での高い粘性のために、最も一般的に使用されている凍結保護物質の1つである[4]。図3のA〜図3のBに見られるように、異なるclocalおよび異なるサイズのアルギネートビーズの存在下における10%グリセロールの凍結温度は、図2A〜2Bに見られるものと同様の傾向を示す。溶質グリセロールの添加は、凍結温度とN、V、またはclocalとの間の正の関係を変えなかった。図3のAは、30ゲージ針で調製された0.1mg/mlのSNOMAXを含有する単一のビーズの存在が−10.0℃での氷核形成を導いた一方、同じVおよびclocalのさらに9個のビーズの追加により、凍結温度の中央値は−8.7℃に上昇したことを示している。2.5mg/mlのSNOMAXを含有し、30ゲージ針で調製された5つのビーズは、−7.0℃の凍結温度中央値に寄与したことも示されている。ビーズが18ゲージ針で調製された場合、

は−6.4℃に上昇した。図3のBは、0.1mg/mlのSNOMAXをそれぞれ含有する10個のビーズの添加が、−7.5℃の凍結温度中央値を生じたことを示している。しかし、ビーズが15mg/mlのSNOMAXを含有した場合、凍結温度中央値は−6.1℃に上昇した。表3にまとめられているように、SNOMAXもハイドロゲルビーズも含有しない0.5mlの10%グリセロールの凍結温度の中央値は−11.8℃である。18ゲージ針で調製した10個のSNOMAX不含アルギネートビーズを有する0.5mlの10%グリセロールの

は−11.1℃である。図3のA〜図3のBに示されている全てのデータポイントは−11℃より高い。したがって、水系の凍結温度を有意に高めたものは、SNOMAX粒子である。
実施例5.氷核形成性能のパラメーター
SNOMAX含有ハイドロゲルビーズを含有する水性試料の氷核形成に影響を与えうる複数の因子がある。異なるN、Vおよびclocalの組合せを用いて、同じ凍結温度を得ることができる。したがって、凍結温度を決定する唯一の原因となる普遍的なパラメーターを提供することは、非常に有益であろう。この実施例において、一定体積の水性試料に含有されるSNOMAX粒子の総質量が、そのようなパラメーターであると決定された。
図4には、凍結温度が0.5mlのWFI水中に存在するSNOMAXの総質量の関数としてプロットした(m=N・V・clocal、log10スケール)。WFI水中に調製された0.005〜100mg/mlの範囲の遊離SNOMAX粒子の懸濁液の凍結温度(図4)もまた、測定した。図4に示されている全てのデータポイントが同じ傾向を共有していることは明らかである。Tとlog10mの間のピアソンの相関は0.9497の係数(r)を与え、これは、Tとlog10mの間の明確な正の線形関係を示唆している。全てのデータポイントに最もよくフィットする曲線は、以下のものである。
=0.6478・log10m−3.052(R=0.9019)
これは、SNOMAXの全質量が、INA粒子の存在形態にかかわらず、懸濁液中あるいは限局的な空間中のいずれでも、0.5mlのWFI水中での氷核形成の発生を決定づけるパラメーターであることを実証している。図5には、10%グリセロール水溶液中に調製したSNOMAX懸濁液(0.005〜50mg/ml)の凍結温度(図5中の濃黒のデータポイント)と共に、凍結温度がlog10スケールでmの関数として図3に示した。全てのデータポイントが、0.9783のピアソンの相関係数で、非常によく同じ傾向に従い、これは、Tとlog10mの間の強い正の線形関係を示唆している。全てのデータポイントに最もよくフィットする曲線は、以下のものである。
=1.093・log10(m)−5.771(R=0.9571)
データは、溶質の添加が、支配的パラメーターとしてのINA粒子の総質量の役割を変えなかったことを示している。したがって、N、Vおよびclocalの組合せを調整することによって、INA粒子の総質量を増やして、氷核形成温度を高めることができる。
これまでに調査した実験条件は、0.5mlの同一の試料体積(Vsample)を使用した。凍結温度に対する試料体積の影響を調べるために、表4は、どちらも2.5mg/mlのSNOMAXをカプセル化した5個のアルギネートビーズを含有する(すなわち、同じ総質量を有する)、0.5mlと1.5mlの試料の凍結温度を比較している。0.5mlの試料は、1.5mlの試料よりもわずかに高い凍結温度の中央値を有しているものの、WFI中の5つのビーズ(30ゲージ)の条件のみを除き、0.5ml群と1.5ml群との間の凍結温度(T)に統計的な差がないことを対応のないt検定で明らかにした(p=0.0433)。後者の場合、WFIとより少ないSNOMAXとの組合せは、10%グリセロールまたはWFI中のより多くのSNOMAXのいずれよりも、より広い範囲のデータポイントに寄与することから、差をより正確に評価するためには、より多くの反復実験が必要なのかもしれない。よって、SNOMAXの総質量が、氷核形成温度を規定する原因のほとんどを占める。
実施例6.重水による氷核形成
重水および氷核形成剤を含む自己核形成および保存調合物が、凍結保存の分野における幅広い用途と共に開発された。自己核形成調合物は、主に以下を達成する:(1)比較的高い温度における氷核形成の開始、(2)所与の試料内でのより均一な氷の伝播、(3)異なる細胞調製物間の、より少ないばらつき、(4)手作業でのシード形成の必要性を排除する、ならびに(5)長期保存のために生物学的分子(例えば、DNA、RNA、タンパク質、代謝産物)、エキソソーム(細胞由来小胞)、細胞、器官、および生物を安定化させる一連の生物学的効果を奏する。液滴技術を使用して、水対DOの核形成温度を測定した:核形成温度の中央値は、純粋な水中の−37.4℃から、純粋なDOでは−32.1℃へと上昇する。しかしながら、重水と氷核形成剤を組み合わせると、核形成温度は−4.6℃にまで到達することができ(図7)、これら2つを相乗的に使用することの価値を実証している。強力な氷核形成細菌Pseudomonas syringae(SNOMAXとして知られる市販の調製物)をフィージビリティの実証のために選択した。
氷核形成温度は体積に直接関係するため、氷核形成温度は、試料体積の関数としても分析した。この系では、氷核形成が100%の重水と0.1g/LのSNOMAXとを含む2mLの試料体積において、−0.8℃という早期に生じる(図8)。結果は、哺乳動物初代肝細胞の凍結保存に対する自己核形成調合物のポジティブな効果を実証し、それにより、解凍後の生存能力が、自己核形成調合物を含まない条件の143倍にまで向上した(図9)。図9において使用されたカクテル調合物を以下に列挙する。
カクテル1 − ウィスコンシン大学溶液(UW)+3OMG
カクテル2 − UW+3OMG+トレハロース
カクテル3 − UW+3OMG+トレハロース+N−アセチル−L−システイン
カクテル4 − UW+3OMG+トレハロース+硫化水素
カクテル5 − UW+3OMG+重水およびSNOMAX
カクテル6 − UW+3OMG+トレハロース+重水およびSNOMAX
カクテル7 − UW+3OMG+トレハロース+N−アセチル−L−システイン+重水およびSNOMAX
カクテル8 − UW+3OMG+トレハロース+硫化水素+重水およびSNOMAX
カクテル1と5、2と6、3と7、および4と8は対の実験であり、1から4は自己核形成調合物を含有せず、5から8は自己核形成調合物を含有している。
さらに、図10は、診断および研究の目的のために、この調合物が癌細胞由来の小胞(すなわちオンコソーム)からのRNA収量を改善し得ることを示している。
実施例7.アガロースハイドロゲル粒子
氷核を形成する能力を有する生体適合剤をハイドロゲルマイクロビーズ中にカプセル化することができる。INPのカプセル化は、毒性の問題を克服するための手段として働くのではなく、氷の伝播に対する制御を高めるための手段として提案された。SNOMAXが関係する図11に明示されているように、選択されたINPは、平衡凍結の際、多様な細胞型に対して毒性作用を及ぼさなかった。
ハイドロゲルマイクロビーズ中の氷核形成粒子のカプセル化は、従来的なフローフォーカシングマイクロフルイディクス装置上で行った。油相はNovec 7500であり、水相はSNOMAX、IceStart、または他の氷核剤を含む懸濁INPを含むか、または含まない約3%のアガロース溶液であった。回収されたハイドロゲルビーズは、コア−シェル構造を有していた。氷核形成粒子はハイドロゲルコア中に留置され、純粋なハイドロゲルシェルの層により封鎖されていた。図12のA〜図12のDに示されているように、氷核形成剤(SNOMAX)は、アガロースハイドロゲル粒子中にカプセル化されており、これらのハイドロゲル粒子は、氷核形成温度の変動性を減少させた。ハイドロゲルビーズの境界を観察することによって(図12のA)、INPの分布を比較することによって(SNOMAXについてHoechst 33342で染色)(図12のB)、およびカプセル化されたINPの凍結挙動を分析することによって(図12のCはハイドロゲル中の凍結されたINPを示している)、コア−シェル構造の品質を調べた。さらに、予備的なデータは、カプセル化されたINPの存在下では、より予測可能に氷が形成し得ることを示している(図12のD)。
実施例8.血管空間内で制御された均一な氷の伝播を誘導するためのカプセル化氷核形成剤の設計
様々なINPのカプセル化
この研究の延長として、IceStart(商標)およびヨウ化銀などの様々なINPのカプセル化も試験する。ハイドロゲル内への閉じ込めを特徴付けるために、氷核剤を蛍光標識し、外部の蛍光に対する内部の蛍光を定量する。目的は、多様な氷核形成粒子をカプセル化し、1%未満の漏れでハイドロゲル内に80%の閉じ込めを達成することである。
氷核形成温度、効力、および凍結生存率における改善の特徴付け
氷核形成温度を評価するために、ハイドロゲルビーズ内に含有されるINPを、約500μlの水溶液に懸濁する。クライオバイアル中に入れられた試料を、速度調節フリーザーで様々な冷却勾配にかける。INP含有ハイドロゲルビーズによって促進される氷核形成温度は、試料中に浸漬した熱電対によって決定する。氷核形成能を定量するために、速度調節フリーザー中で1℃/分の冷却速度に曝した試料を、試料が全て凍結するまで1℃ごとに調べる。凍結していない試料の数を、温度の関数として数える。全ての場合において、カプセル化されていない対応する氷核剤を、カプセル化による効力の喪失を確かめるために使用する。この詳細な特徴付けに続いて、INP含有ハイドロゲルビーズを、ラットとヒトの両方の初代肝細胞の凍結保存に使用する。初代細胞は、二重ゲル構成でプレーティングするが、これは、この構成が、肝細胞機能の長期的な発現を維持する、生理学的に関連する組織構造に相当するためである。さらに、この設計された構築物においては、コラーゲンゲルが、生体内での状況と同様に、凍結保存溶液から実質を分離しており、支持組織バリアによって肝細胞がINP含有ハイドロゲルビーズから分離されている。INP含有ハイドロゲルビーズを、初代肝細胞用の既存の凍結保存調合物に添加する。解凍後の生存能力および長期的な機能を、INPの存在下および非存在下の条件について決定する。カプセル化された氷核形成粒子は、遊離氷核剤の2〜3℃以内の氷核形成温度と効力を達成し得る。さらに、氷核剤なしの場合と比較して、カプセル化された氷核形成粒子の存在下においては、二重構成でプレーティングされた肝細胞の細胞生存能力における30%の増加が予想される。
ハイドロゲル中のカプセル化氷核剤のサイズの調整
INP含有ハイドロゲルビーズのサイズを調整できることは、様々な凍結容器全体および器官内の複雑な脈管構造ネットワーク全体にわたる氷核剤の均一な分布を促進できることから有利である。均一な氷核形成は、器官の特定の領域が過冷却されないことを確実にし、不安定な状態が突然崩壊することがないため、これは重大な意味をもつ。これを達成するために、様々なマイクロチャネルサイズを有する装置が提供されている。各マイクロチャネルは、生理学的に関連する大きさの脈管構造空間を反映している。さらに、マイクロ流体モデルは、研究者がINP分布を評価し、氷の伝播が脈管構造空間に限定されることを確実にすることを可能にするために、実質成分も組み込んでいる。
既存のチップ上のハート(heart−on−a−chip)装置の肝臓版が使用され得る。この装置は、薬物毒性をモデル化するために脈管構造および実質成分を組み込んでいる。氷の伝播は、脈管構造の大きさ、氷核形成温度、およびINP含有ビーズの大きさの関数として評価する。図12のBと同様な染色プロトコールを使用して、マイクロ流体脈管構造ネットワーク全体にわたるINPの分布を視覚化し、定量化する。
ラットおよびヒトの肝臓全体におけるスケールアップ検証と最適化
INP含有ハイドロゲルビーズが器官全体に灌流して脈管構造内にもっぱら留まる能力を試験する。器官全体にINP含有ハイドロゲルビーズを分配できる灌流システムを使用する。初期の実験はラットの全肝から始まる。ヒトの肝臓には、分割肝モデルが使用され得る(図13A〜13B)。図13Aでは、右および左の門脈を分岐部のちょうど上で分離し、分割した。移植片を、肝臓の中心面で切断し、肝臓を解剖学的右葉および左葉に分けた。小さな貫通血管と胆管枝は、必要に応じて、縫合結紮するか、またはクリップ留めした。セグメント5および8へのMHV分枝を分割し、右葉の妨害されないドレナージを確実にするために結んだままにした。左門脈、左肝動脈および左胆管を分割し、カニューレ挿入した。大静脈は、右葉移植片と共に保存し、これは、右葉移植片の最大のアウトフローを可能にした。右側の肺門構造にもカニューレ挿入した。各肝葉を秤量し、灌流装置に接続する前に1Lの乳酸リンゲル液で洗い流した。図13Bでは、さらなる生化学的分析のために、灌流液試料を30分ごとに回収した。両方の肝葉は、門脈および肝動脈抵抗によって示されるように、安定した血行動態を有し、それらは互いに匹敵していた(全ての比較についてp>0.1)。肝組織生検を回収し、ATP測定のために1時間ごとに瞬間凍結した。各肝葉における平均総肝臓ATP濃度は、互いに匹敵していた。PV(門脈)、HA(肝動脈)、BD(胆管)。
設計されたINPが、平衡凝固点のできるだけ近くで、予測可能に凍結を開始する能力を評価する。ラットの肝臓全体または分割されたヒトの肝臓を、カプセル化されたINPと共に、またはINPを伴わずに灌流し得る。氷核形成温度を測定するために、熱電対を試料中に浸し得る。INPの分布を評価するために、蛍光マーカーをビーズ内に同時カプセル化し得る。肝臓または肝葉ごとに約9カ所の異なる部位からの生検が得られ、実質内へのINPの浸透、中心部と門脈部との間の分布などを同定するために組織学的検査を行う。結果はImageJで定量化する。
氷核形成の画像化は簡単ではないため、実質内の細胞の生存能力および細胞膜の完全性を測定し、対照組織(新鮮な組織および凍結保存した組織)と比較する。凍結融解プロトコールに従い、肝臓をSNMPに付し、均一に灌流されたINPがある場合とない場合の氷核形成を比較するために、針生検を採取する。これらの針生検は、ATPおよび他のエネルギー補因子(ADP、AMP、NAD/NADH、NADP/NAPDH)についても評価する。目的は、カプセル化された氷核形成粒子を均一に分布させること、および凍結融解後の臓器全体の生存能力における、対応する増加を観察することである。
この実施例は、凍結生存性を改善するために脈管構造全体にわたって均一に氷核形成する方法を提供するとともに、細胞内における氷形成の可能性を最小化する手段としても役立つ。INP含有ハイドロゲルビーズは、器官全体に容易に灌流され、保存後に完全に除去され得る。予想される結果は、カプセル化されたINPが、高い零下温度での凍結保存後(3日超)に、初代肝細胞および内皮細胞の生存能力(全細胞の90%超の細胞生存率)に対して顕著な改善を提供し得るというものである。
いくつかの種類のナノ粒子は、凍結保護物質溶液の核形成を改善することにおける、それらの有効性について既に試験されている。広範なナノ粒子もまた試験する。ナノ粒子は、短いペプチド配列をナノ粒子の表面につなぐことによって、ナノ粒子の氷核形成活性を改善し得ると予想される。
他の実施形態
本発明をその詳細な説明と併せて説明してきたが、前述の説明は、例示を意図したものであり、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定しないと理解されるべきものである。他の態様、利点、および改変は以下の特許請求の範囲内にある。
参考文献

Claims (64)

  1. 氷核形成剤を含むハイドロゲル粒子であって、前記氷核形成剤は前記ハイドロゲル粒子の内部に封入されているハイドロゲル粒子。
  2. 前記氷核形成剤はSNOMAXである、請求項1に記載のハイドロゲル粒子。
  3. 前記氷核形成剤はヨウ化銀である、請求項1に記載のハイドロゲル粒子。
  4. 前記氷核形成剤はタンパク質、炭水化物、またはリン脂質である、請求項1に記載のハイドロゲル粒子。
  5. 前記ハイドロゲル粒子中の前記氷核形成剤の濃度は0.5mg/ml、1mg/ml、または2mg/mlを超える、請求項1に記載のハイドロゲル粒子。
  6. アガロースハイドロゲル粒子である、請求項1に記載のハイドロゲル粒子。
  7. アルギネートハイドロゲル粒子である、請求項1に記載のハイドロゲル粒子。
  8. 4mm未満の直径を有する、請求項1に記載のハイドロゲル粒子。
  9. 3mm未満の直径を有する、請求項1に記載のハイドロゲル粒子。
  10. 2mm未満の直径を有する、請求項1に記載のハイドロゲル粒子。
  11. 15μl未満の体積を有する、請求項1に記載のハイドロゲル粒子。
  12. 5μl未満の体積を有する、請求項1に記載のハイドロゲル粒子。
  13. 重水をさらに含む、請求項1に記載のハイドロゲル粒子。
  14. Oをさらに含む、請求項1に記載のハイドロゲル粒子。
  15. 凍結保護物質をさらに含む、請求項1に記載のハイドロゲル粒子。
  16. 前記凍結保護物質はDMSO、EG、PROH、3−OMG、またはグリセロールである、請求項15に記載のハイドロゲル粒子。
  17. 前記ハイドロゲル粒子は、試料の氷核形成温度を−8℃より高い温度に上昇させることができる、請求項1に記載のハイドロゲル粒子。
  18. 前記ハイドロゲル粒子は、試料の氷核形成温度を−5℃より高い温度に上昇させることができる、請求項1に記載のハイドロゲル粒子。
  19. 前記ハイドロゲル粒子は、複数の試料の氷核形成温度の範囲を縮小する、請求項1に記載のハイドロゲル粒子。
  20. ハイドロゲル粒子および氷核形成剤を含む組成物であって、前記氷核形成剤は前記ハイドロゲル粒子の内部に封入されている、組成物。
  21. 前記氷核形成剤はSNOMAXである、請求項20に記載の組成物。
  22. 前記氷核形成剤はヨウ化銀である、請求項20に記載の組成物。
  23. 前記氷核形成剤はタンパク質、炭水化物、またはリン脂質である、請求項20に記載の組成物。
  24. 前記ハイドロゲル粒子中の前記氷核形成剤の濃度は0.5mg/ml、1mg/ml、または2mg/mlを超える、請求項20に記載の組成物。
  25. 前記ハイドロゲル粒子はアガロースハイドロゲル粒子である、請求項20に記載の組成物。
  26. 前記ハイドロゲル粒子はアルギネートハイドロゲル粒子である、請求項20に記載の組成物。
  27. 前記ハイドロゲル粒子は4mm未満の直径を有する、請求項20に記載の組成物。
  28. 前記ハイドロゲル粒子は3mm未満の直径を有する、請求項20に記載の組成物。
  29. 前記ハイドロゲル粒子は2mm未満の直径を有する、請求項20に記載の組成物。
  30. 前記ハイドロゲル粒子は15μl未満の体積を有する、請求項20に記載の組成物。
  31. 前記ハイドロゲル粒子は5μl未満の体積を有する、請求項20に記載の組成物。
  32. 凍結保護物質をさらに含む、請求項20に記載の組成物。
  33. 前記凍結保護物質はDMSO、EG、PROH、3−OMG、またはグリセロールである、請求項32に記載の組成物。
  34. 重水をさらに含む、請求項20に記載の組成物。
  35. Oをさらに含む、請求項20に記載の組成物。
  36. 保存剤をさらに含む、請求項20に記載の組成物。
  37. 重水および氷核形成剤を含む組成物。
  38. 前記重水はDOである、請求項37に記載の組成物。
  39. 前記組成物中の重水の重量百分率は10%、50%、または75%を超える、請求項37に記載の組成物。
  40. 水分中の重水の百分率(v/v)は10%、50%、または75%を超える、請求項37に記載の組成物。
  41. 前記氷核形成剤はSNOMAX、氷核細菌、ヨウ化銀、鉱物粒子、またはナノ粒子である、請求項37に記載の組成物。
  42. 前記氷核形成剤はタンパク質、炭水化物、またはリン脂質である、請求項37に記載の組成物。
  43. 凍結保護物質をさらに含む、請求項37に記載の組成物。
  44. 前記凍結保護物質はDMSO、EG、PROH、3−OMG、またはグリセロールである、請求項43に記載の組成物。
  45. 前記凍結保護物質は非浸透性凍結保護物質である、請求項43記載の組成物。
  46. 前記凍結保護物質はスクロース、トレハロース、スタキオース、ラフィノース、またはポリマー(例えば、PEG、PVA、HES)である、請求項43記載の組成物。
  47. 保存剤をさらに含む、請求項37に記載の組成物。
  48. 生物学的試料を保存する方法であって、
    前記生物学的試料を請求項20〜47のいずれかに記載の組成物と接触させる工程;および
    前記生物学的試料を前記組成物と共に凍結させる工程
    を含む方法。
  49. 前記生物学的試料を解凍する工程をさらに含む、請求項48に記載の方法。
  50. 前記生物学的試料は細胞を含む、請求項48に記載の方法。
  51. 前記生物学的試料は組織試料を含む、請求項48に記載の方法。
  52. 前記生物学的試料はエキソソームまたは微小胞を含む、請求項48に記載の方法。
  53. 器官を保存する方法であって、
    前記器官に請求項20〜47のいずれかに記載の組成物を灌流または接触させる工程;および
    前記器官を前記組成物の存在下で凍結する工程
    を含む方法。
  54. 前記器官を解凍する工程をさらに含む、請求項53に記載の方法。
  55. 前記器官は肝臓、心臓、または腎臓である、請求項53に記載の方法。
  56. 虚血再灌流障害を最小限に抑える、請求項53に記載の方法。
  57. 表面および氷核形成剤を含む凍結システムであって、前記氷核形成剤は前記表面上に固定化されている、凍結システム。
  58. 前記凍結システムは、バッグ、プラスチックバイアル、ガラスバイアル、プラスチックストロー、プルドストロー、毛細管もしくはストロー、またはバイオリアクターを含む、請求項57に記載の凍結システム。
  59. 表面および請求項1〜19のいずれかに記載のハイドロゲル粒子を含む凍結システムであって、前記ハイドロゲル粒子は前記表面上に固定化されている、凍結システム。
  60. 前記凍結システムは、バッグ、プラスチックバイアル、ガラスバイアル、プラスチックストロー、プルドストロー、毛細管もしくはストロー、またはバイオリアクターを含む、請求項59に記載の凍結システム。
  61. 請求項1〜19のいずれかに記載のハイドロゲル粒子または請求項20〜47のいずれかに記載の組成物を含む凍結システム。
  62. 前記凍結システムは、バッグ、プラスチックバイアル、ガラスバイアル、プラスチックストロー、プルドストロー、毛細管もしくはストロー、またはバイオリアクターを含む、請求項61に記載の凍結システム。
  63. 所望の氷核形成温度を有するハイドロゲル粒子組成物を製造する方法であって、
    (5).所望の氷核形成温度を選択する工程;
    (6).所定の曲線から、ハイドロゲル粒子組成物中の氷核形成剤の標的総質量を決定する工程であって、前記所定の曲線が、氷核形成温度と、複数の試料ハイドロゲル粒子組成物についての氷核形成剤の総質量とを相関させる、工程;
    (7).前記標的総質量に基づき、前記ハイドロゲル粒子組成物のN、Vおよびclocalの値を決定する工程;ならびに
    (8).決定された前記N、前記Vおよび前記clocalの値を有するハイドロゲル粒子組成物を製造する工程
    を含む方法。
  64. 所望の氷核形成温度を有する、氷核形成剤を含む重水組成物を製造する方法であって、
    (4).所望の氷核形成温度を選択する工程;
    (5).所定の曲線から、重水濃度を決定する工程であって、前記所定の曲線が、氷核形成温度と、各々が前記氷核形成剤を含む複数の試料重水組成物についての重水濃度とを相関させる、工程;
    (6).決定された前記重水濃度を有し、前記氷核形成剤を含む重水組成物を製造する工程
    を含む方法。
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