JP2019033707A - ガラス化凍結保存液およびガラス化凍結保存方法 - Google Patents

ガラス化凍結保存液およびガラス化凍結保存方法 Download PDF

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Abstract

【課題】多数の細胞又は組織を凍結保存する細胞又は組織の凍結保存において、高い生存率が達成される細胞又は組織のガラス化凍結保存液を提供する。【解決手段】セルロースナノファイバーを含有することを特徴とするガラス化凍結保存液。【選択図】なし

Description

本発明は、細胞又は組織の凍結保存に用いられるガラス化凍結保存液および該保存液を用いたガラス化凍結保存方法に関する。
生物の細胞又は組織の優れた保存技術は、様々な産業分野で求められている。一般に、生体内から採取された細胞又は組織は、たとえ培養液の中であっても、次第に活性が失われていくことから、生体外での細胞又は組織の長期間の培養は好ましくない。そのため、生体活性を失わせずに長期間保存するための技術が重要である。優れた保存技術によって、採取された細胞又は組織をより正確に分析することが可能となり、より高い生体活性を保ったまま細胞又は組織を移植に用いることで、移植後の生着率の向上が望める。さらに、優れた保存技術は、生体外で培養した培養皮膚、生体外で構築したいわゆる細胞シートのような移植のための人工の組織を、順次生産して保存しておき、必要なときに使用することも可能となり、研究・医療の面だけではなく、産業面においても大きなメリットが期待できる。
細胞又は組織の保存方法として、例えば緩慢凍結法が知られている。この方法では、まず、例えばリン酸緩衝生理食塩水等の生理的溶液に耐凍剤を含有させることで得られた凍結保存液に、細胞又は組織を浸漬する。該耐凍剤としては、グリセロール、エチレングリコール等の化合物が用いられる。該保存液に、細胞又は組織を浸漬後、比較的遅い冷却速度(例えば0.3〜0.5℃/minの速度)で、−30〜−35℃まで冷却することにより、細胞内外又は組織内外の溶液が十分に冷却され、該保存液の粘性が高くなる。このような状態で、該保存液中の細胞又は組織をさらに液体窒素の温度(−196℃)まで冷却すると、細胞内又は組織内とその周囲の微少溶液がいずれも非結晶のまま固体となるガラス化が起こる。ガラス化により、細胞内外又は組織内外が固化すると、実質的に分子の動きがなくなるので、ガラス化された細胞又は組織を液体窒素中に保存することで、半永久的に保存できると考えられる。
しかしながら、緩慢凍結法では、比較的遅い冷却速度で冷却する必要があるために、凍結保存のための操作に時間を要するという問題がある。また、冷却速度を制御するための装置又は治具を必要とする問題がある。加えて、緩慢凍結法では、細胞外又は組織外の保存液中に氷晶が形成されるので、細胞又は組織が該氷晶により物理的に損害を受けるおそれがある。
上記した緩慢凍結法での問題点を解決するための方法として、ガラス化凍結保存法が提案されている。ガラス化凍結保存法とは、グリセロール、エチレングリコール、DMSO(ジメチルスルホキシド)などの耐凍剤を多量に含む水溶液の凝固点降下により、氷点下でも氷晶ができにくくなる原理を用いたものである。この水溶液を急速に液体窒素中で冷却させると氷晶を生じさせないまま固体化させることができる。このように固体化することをガラス化凍結という。また、耐凍剤を多量に含む水溶液をガラス化凍結保存液という。
前記ガラス化凍結保存法の具体的な操作としては、ガラス化凍結保存液に細胞を浸漬させ、その後、液体窒素の温度(−196℃)で冷却する。ガラス化凍結保存法は、このような簡便かつ迅速な工程であるために、凍結保存のための操作に長い時間を必要としない他、温度制御をするための装置又は治具を必要としないという利点がある。
ガラス化凍結保存法を用いた細胞又は組織の凍結保存については、様々な方法で、様々な種類の細胞又は組織を用いた例が示されている。例えば、特許文献1では、動物又はヒトの生殖細胞又は体細胞へのガラス化保存法の適用が、凍結保存及び融解後の生存率の点で、極めて有用であることが示されている。
ガラス化凍結保存法は、主にヒトの生殖細胞を用いて発展してきた技術であるが、最近では、iPS細胞やES細胞への応用も広く検討されている。また、非特許文献1では、ショウジョウバエの胚の保存にガラス化保存法が有効であったことが示されている。さらに、特許文献2では、植物培養細胞や組織の保存において、ガラス化保存法が有効であることが示されている。このように、ガラス化保存法は広く様々な種の細胞及び組織の保存に有用であることが知られている。
ガラス化凍結保存法を用いると、細胞内外のいずれにも氷晶が生じないために凍結時及び融解時の細胞への物理的障害(凍害)を回避することができるが、ガラス化凍結保存液に含まれる高濃度の耐凍剤には化学的毒性がある。この化学的毒性を回避するために、特許文献3で開示されるようなヒトの不妊治療分野で使用されているいわゆるクライオトップ法という方法のように、卵と共に載置するガラス化凍結保存液の量を少なくし、耐凍剤の細胞に対する化学的毒性を低減した状態で、ガラス化することで、細胞を優れた生存性で保存できることが知られている。
しかしながら、上記の方法は、ガラス化凍結保存液を少なくできるような、一般に数個程度(多くても20個以内)の細胞の凍結保存に適用される方法であり、多数の細胞の保存には不向きである。
例えば、ES細胞やiPS細胞等に代表される動物細胞のガラス化凍結保存は、耐凍剤を含むガラス化凍結保存液中に動物細胞を分散し、凍結バイアルに充填し、凍結バイアルを液体窒素に浸漬させ、凍結する方法が行われている。凍結バイアルを用いた凍結保存方法では、一般に1×10個以上の動物細胞の凍結保存に用いられ、凍結バイアル中の保存液に対し、1〜1×10個/μlの細胞密度で保存される。このようなケースにおいて、ガラス化凍結保存法を用いた場合、動物細胞の凍結融解後の生存率は50%以下であり、依然として低い。しかしながら、前記緩慢凍結法を用いた場合には、生存率が高々数%であることから、当該動物細胞に対しては、化学的毒性が高いにもかかわらずガラス化凍結保存法が使用されているのが現状である。
一方、特許文献4、特許文献5では、ヒドロゲル中にセルロースナノファイバー又はセルロースナノフィブリルを含有させることで、3D細胞培養の効果を高め、良好な細胞増殖を維持することができる細胞培養方法が提案されている。
特許文献6では、多数の多能性幹細胞を凍結保存するための媒体として、ジメチルスルホキシド、プロピレングリコールおよびアセトアミドを含有し、さらに、保存が企図される前記多能性幹細胞に応じた培地を含む媒体が提案されている。
特許文献7では、10〜20個の分散された哺乳動物前胞状卵胞をコラーゲンゲル内に包埋し、凍結保護剤溶液を浸漬させた後、凍結保存する方法が提案されている。
特開2000−197481号公報 特開2008−5846号公報 特開2006−271395号公報 特表2013−541956号公報 特表2015−530104号公報 国際公開第2005/045007号パンフレット 特開2001−226201号公報
Steponkus et al.,Nature 345:170−172(1990)
特許文献6で提案されている媒体を動物細胞のガラス化凍結保存法に用いて凍結保存しても、凍結融解後の細胞の生存率は十分満足できるものではなかった。
特許文献7で提案されている方法は、細胞の回収率は90%程度と高いものの、生存率が20%程度と極端に低く、やはり満足できるものではなかった。
本発明は、多数の細胞又は組織を凍結保存する際に、細胞又は組織の高い生存率が達成されるガラス化凍結保存液およびガラス化凍結保存方法を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下の手段によって、上記課題を解決できることを見出した。
(1)セルロースナノファイバーを含有することを特徴とするガラス化凍結保存液。
(2)上記(1)に記載のガラス化凍結保存液中と1×10個以上の細胞数からなる細胞又は組織を容器中に投入し、前記した細胞又は組織を0℃から−150℃までの冷却速度が−200℃/min以上の冷却速度で凍結することを特徴とするガラス化凍結保存方法。
本発明により、高い生存率が達成されるガラス化凍結保存液およびガラス化凍結保存方法を提供することができる。
本発明のガラス化凍結液およびガラス化凍結保存方法は、細胞又は組織を凍結保存する際に用いることができる。本明細書中で細胞とは、1個の細胞または複数の細胞からなる生物の細胞集団を含むものである。複数の細胞からなる細胞集団とは単一の種類の細胞から構成されるコロニー状あるいはクラスター状の細胞集団でも良いし、複数の種類の細胞から構成されるコロニー状あるいはクラスター状の細胞集団でも良い。また、組織とは、単一の種類の細胞から構成される組織でも良いし、複数の種類の細胞から構成される組織でも良く、細胞以外に細胞外マトリックスのような非細胞性の物質を含むものでも良い。凍結保存される該細胞としては、例えば、動物の培養細胞や植物の培養細胞を挙げることができる。動物の培養細胞としては、ヒト細胞又はヒト以外の動物の細胞であって、例えば、初代培養細胞、継代培養細胞、及び細胞株細胞等が挙げられる。また、細胞種としては、ES細胞、iPS細胞、線維芽細胞、肝ガン細胞等のがん細胞、上皮細胞、血管内皮細胞、リンパ管内皮細胞、神経細胞、組織幹細胞、胚性幹細胞、及び免疫細胞等の接着性細胞が挙げられる。
本明細書におけるガラス化凍結とは、比較的遅い冷却速度(例えば0.3〜0.5℃/minの速度)で凍結する所謂緩慢凍結法とは異なり、極低温の冷媒(例えば液体窒素)を用いて速い冷却速度で、氷晶形成を抑制しながら細胞又は組織を凍結させる方法をさす。ガラス化凍結における冷却速度は、例えば、チノー社製シース型熱電対(先端外径0.3mm)を用いて測定される0℃から−150℃までの冷却速度が200℃/min以上である。
本発明のガラス化凍結保存液を用いたガラス化凍結保存方法においては、通常の緩慢凍結法を用いて凍結保存されるような、例えば、1つの凍結バイアル当たり1×10個以上の細胞数からなる細胞又は組織、より好ましくは1×10〜1×10個の細胞数からなる細胞又は組織の凍結保存に用いることができる。また、凍結保存される際の細胞密度は、通常の緩慢凍結法と同様に、凍結バイアル中の保存液(ガラス化凍結保存液)に対して、1〜1×10個/μlであることが好ましい。細胞密度がこの範囲よりも小さい場合、主に遠心分離、フィルタリング等の工程での細胞のロスが多くなり、凍結保存・融解後に、満足できる細胞数(回収率)が得られない場合がある。一方で、細胞密度がこの範囲よりも大きい場合、ガラス化凍結保存液中への細胞の分散が困難であったり、細胞中へのガラス化凍結保存液の浸透が不十分となり、満足できる生存率が得られない場合がある。
本発明のガラス化凍結保存液を用いた凍結保存方法としては、例えば、酵素処理等により単離した細胞のコロニー又はシングルセルにガラス化凍結保存液を添加し、細胞を分散した後に、ガラス化凍結保存液を含んだ容器(例えば凍結バイアル)を冷媒を用いて急速に温度降下させ、ガラス化凍結させることができる。また、細胞のコロニー又はシングルセルにガラス化凍結保存液を添加する工程の前に、該ガラス化凍結保存液よりも低濃度の耐凍剤を含む処理液中に分散させるような、所謂平衡化処理を行い、該平衡化処理の後にガラス化凍結保存液中に分散させて、凍結させることもできる。
本発明のガラス化凍結保存液は、セルロースナノファイバーを含有する。
セルロースナノファイバーとはセルロース系原料を解繊することによって得られる幅20nm以下、長さが1〜5μmの高アスペクト比を有するセルロースのシングルミクロフィブリルである。セルロースナノファイバーを得るための微細化材料としては、セルロースを破砕し一定の粒径分布を有したセルロース粉末を用いることができる。該微細化材料としては、日本製紙ケミカル社製のKCフロック(登録商標)、旭化成ケミカルズ社製のセオラス(登録商標)、FMC社製のアビセル(登録商標)等が挙げられる。該微細化材料から、セルロースナノファイバーを製造する方法としては、例えば、(株)スギノマシン製高圧粉砕装置(スターバーストシステム)を用いて湿式粉砕する方法や、TEMPO酸化を利用して化学的に解繊する方法が知られている。これらの方法により、製造されたセルロースナノファイバーとしては、スギノマシン社製のBiNFi−sセルロース(登録商標)、日本製紙製のcellenpia(登録商標)、第一工業製薬社製のレオクリスタ(登録商標)等が挙げられ、これらを購入して使用することができる。
本発明のガラス化凍結保存液は、セルロースナノファイバーが分散された状態で含有することが好ましい。本発明において、分散された状態とは、水溶性セルロース材料とは異なり、セルロースが水に溶解することなく、繊維が分散された状態でガラス化凍結保存液中に含有されることを意味している。
本発明のガラス化凍結保存液が含有するセルロースナノファイバーの含有量は、0.001〜0.5質量%であることが好ましい。含有量が0.001質量%を下回る場合には、良好な生存性が得られない場合がある。一方、含有量が0.5質量%を上回る場合には、ガラス化凍結保存液自体の粘性が高すぎるために、ピペット操作などのハンドリングに支障が生じる場合がある。より好ましくは、0.005〜0.035質量%である。
本発明のガラス化凍結保存液は、有機溶媒系耐凍剤を含有することが好ましい。該有機溶媒系耐凍剤としては、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、グリセロール、プロピレングリコール、プロパンジオール等の有機溶媒系耐凍剤を好適に用いることができる。該有機溶媒系耐凍剤は単独で用いても良いし、二種類以上を併用して用いても良い。本発明のガラス化凍結保存液中の該有機溶媒系耐凍剤の濃度は、25〜50容量%であることが好ましい。より好ましくは30〜45容量%である。
本発明のガラス化凍結保存液は、浸透圧調整及びガラス化性能(耐凍性能)付与の観点から、糖類を含有することができる。該糖類としては、スクロース、トレハロース、グルコース、ラフィノース、ラクトース、マルトース、マンノース、ガラクトース、フルクトースを好適に用いることができる。該糖類は単独で用いても良いし、二種類以上を併用して用いても良い。本発明のガラス化凍結保存液中の該糖類の濃度は、0.2〜1Mであることが好ましく、より好ましくは、0.3〜0.7Mである。
本発明のガラス化凍結保存液は、高分子化合物を含有することができる。該高分子化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、フィコール(スクロースとエピクロロヒドリンの共重合体)、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アルブミン等の高分子化合物、または、ヒアルロン酸、ジェランガム、キサンタンガム、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム等のアルギン酸誘導体およびその塩、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体およびその塩等の増粘性多糖類等の高分子化合物を含有することができる。
本発明のガラス化凍結保存液は、その他、血清のような生物由来材料を含有することができる。血清は、その構成成分が未だ完全に解明されていないものの、凍結時の細胞保護効果を目的として、広く用いられている。
本発明のガラス化凍結保存液を用いたガラス化処理工程において、細胞又は組織をガラス化凍結保存液に浸漬させる時間(細胞をガラス化凍結保存液と接触させてから、冷却溶媒で冷却を開始するまでの時間)は、用いるガラス化凍結保存液の組成によるものの、多くの場合、ガラス化凍結保存液の化学的毒性を避けるという観点で、1分以内が好ましい。より好ましくは30秒以内である。
本発明のガラス化凍結保存液を用いたガラス化凍結保存方法は、ガラス化処理工程においてガラス化凍結保存液に細胞又は組織を浸漬させた後、極低温の冷却溶媒を用いて細胞をガラス化凍結させる。速やかな冷却速度で凍結させることで、氷晶の形成が少ない状態で細胞が凍結保存されることが期待される。冷却溶媒としては、液体窒素を用いることが好ましい。
凍結保存された細胞は、細胞のガラス化状態が維持される極低温環境下で保存することで半永久的に保存することができる。ガラス化状態が維持される温度は、ガラス化凍結保存液の組成によって異なるが、多くの場合−150℃以下が好ましい。このような温度が維持される環境としては、液体窒素保存容器中、気相窒素保存容器中が好ましい。
以上、本発明のガラス化凍結保存方法における凍結作業について説明してきた。次に、融解作業について説明する。
本発明のガラス化凍結保存方法にて凍結保存された細胞又は組織の融解作業は、iPS細胞等のガラス化凍結保存方法として、一般に知られている方法によって行うことができる。例えば、操作の一例としては、凍結されたガラス化凍結保存液と細胞又は組織に、37℃に温調された融解液を直接接触させることで、ガラス化凍結保存液と細胞を融解させるとともにガラス化凍結保存液を希釈する。このような操作により、素早く融解することにより、再氷晶形成やガラス化凍結保存液の毒性を緩和することができる。
以下に本発明を実施例によりさらに詳細に示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
Earle塩、L−グルタミン、2.2g/Lの重炭酸ナトリウムを含む市販のMedium199培地(Life Technologies社)を基礎液として、有機溶媒系耐凍剤として、エチレングリコールを40容量%とグリセロールを0.5容量%、糖類として、スクロースを0.5M、セルロースナノファイバーである第一工業製薬社製のレオクリスタI−2SX(2質量%セルロースナノファイバー水分散体)をセルロースナノファイバーの固形分として0.01質量%含有する実施例1のガラス化凍結保存液を作製した。
(実施例2)
セルロースナノファイバーの含有量を0.01質量%にかえて、0.02質量%とした以外は実施例1と同様にして、実施例2のガラス化凍結保存液を作製した。
(実施例3)
セルロースナノファイバーの含有量を0.01質量%にかえて、0.05質量%とした以外は実施例1と同様にして、実施例3のガラス化凍結保存液を作製した。
(実施例4)
セルロースナノファイバーの含有量を0.01質量%にかえて、0.1質量%とした以外は実施例1と同様にして、実施例4のガラス化凍結保存液を作製した。
(実施例5)
セルロースナノファイバーの含有量を0.01質量%にかえて、0.2質量%とした以外は実施例1と同様にして、実施例5のガラス化凍結保存液を作製した。
(実施例6)
有機溶媒系耐凍剤を、エチレングリコール20容量%とジメチルスルホキシド20容量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例6のガラス化凍結保存液を作製した。
(実施例7)
高分子化合物であるウシ血清由来のアルブミンを3質量%添加した以外は、実施例1と同様にして、実施例7のガラス化凍結保存液を作製した。
(比較例1)
セルロースナノファイバーであるレオクリスタI−2SXを添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例1のガラス化凍結保存液を作製した。
<細胞の準備>
ウシ血清を10容量%添加したL−Glutamineを含有するEagle’s Minimum Essential Medium(EMEM)中で培養されたヒト肝ガン由来細胞セイルラインHepG2細胞をプラスチックシャーレ上からトリプシン処理によって回収し、2×10個/mlの細胞濃度で細胞分散体を調製した。回収された細胞の生存率をトリパンブルー染色によって測定したところ、95%以上であった。なお、回収された細胞は、単一の細胞(1個の細胞)と複数の細胞からなるクラスター状の細胞集団が混在する状態であった。
<凍結操作>
回収した上記HepG2細胞分散体25μl(5×10個)を凍結バイアルに入れた。さらに、実施例1〜7または比較例1のガラス化凍結保存液をそれぞれ200μl、ピペッティングにより混合した。凍結バイアルのフタを閉め、凍結バイアルを液体窒素中に浸漬することで、凍結操作を行った。なお、ガラス化凍結保存液を添加してから液体窒素に浸漬するまでの時間は25秒であった。凍結バイアルは、融解操作を行うまで、液体窒素中で保存した。
<凍結速度の測定>
実施例1〜7または比較例1のガラス化凍結保存液を用いた凍結操作の際に、凍結バイアル中の温度降下の様子をチノー社製シース型熱電対(先端外径0.3mm)を用いて測定した。0℃から−150℃までの冷却速度は、いずれも−200℃/min以上であった。
<融解操作>
実施例1〜7または比較例1のガラス化凍結保存液によって凍結操作を行った細胞を以下の操作によりそれぞれ融解操作を行った。液体窒素中から凍結したHepG2細胞を含む凍結バイアルをとりだし、37℃に温調した培養液(ウシ血清を10容量%添加したEMEM)1mlをマイクロピペットでピペッティングすることで凍結バイアル中に直接添加した。ガラス化凍結保存液が完全に融解した後に、凍結バイアル中の細胞分散液を37℃に温調した上記培養液9ml中に添加した。次いで、遠心加速度320×gで5分間遠心分離し、HepG2細胞を沈降させ、上清の培養液を除いた。さらに、新たな上記培養液を添加し、該HepG2細胞を分散させた。
<凍結融解後の生存性の評価>
上記操作により得たHepG2細胞分散液の一部をとり、トリパンブルー染色により、血球計算盤上でHepG2細胞の生存率を測定した。生存率は、全細胞数(上記操作により得た細胞分散液の細胞総数)に対する生細胞数の割合である。生存率の評価は、生存率80%以上を○、60%以上80%未満を△、60%未満を×とした。これらの結果を「細胞の生存性」として表1に示す。
Figure 2019033707
<凍結融解後の細胞の形態の観察>
実施例1〜7と比較例1において、凍結操作を行ったHepG2細胞を融解操作の後に、10mlの上記培養液を含むプラスチックシャーレ(100mmディッシュ)上で24時間培養後に細胞の形態を確認した。実施例1〜7のガラス化凍結保存方法によって凍結された細胞は、浮遊細胞が少なく、シャーレ上に細胞が接着する様子が観察された。一方で、比較例1のガラス化凍結保存方法によって凍結された細胞は、浮遊細胞が多く、シャーレ上に接着した細胞が少なかった。
以上の結果から、本発明のガラス化凍結保存液およびガラス化凍結保存方法によれば、多数の細胞または組織を高い生存率と回収率で凍結保存することができる。
本発明は、多数の細胞又は組織を凍結保存する細胞又は組織の凍結保存において、初代培養細胞、継代培養細胞、及び細胞株細胞等の細胞又は組織の凍結保存に用いることができる。そのため、化粧品、医薬、製薬等のバイオテクノロジー分野において有用である。

Claims (2)

  1. セルロースナノファイバーを含有することを特徴とするガラス化凍結保存液。
  2. 前記請求項1に記載のガラス化凍結保存液と1×10個以上の細胞数からなる細胞又は組織を容器中に投入し、前記した細胞又は組織を0℃から−150℃までの冷却速度が−200℃/min以上の冷却速度で凍結することを特徴とするガラス化凍結保存方法。
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