JP5525280B2 - 細胞をガラス化保存する方法および細胞のガラス化保存用容器 - Google Patents
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Description
この実施の形態において使用する好適な細胞のガラス化保存容器は、厚さ30〜300μmの樹脂製の平板であって、上下開口面が円形である貫通孔が1個以上形成されているものである。貫通孔が2個以上存在する場合、それら貫通孔は、同じ容量であっても、異なる容量であっても良い。当該ガラス化保存容器の板厚は、好ましくは50〜200μm、より好ましくは80〜150μmである。板厚を100μmとし、当該ガラス化保存容器に円筒形の貫通孔を形成する場合、貫通孔の直径を40〜400μmの範囲に設計すると、ガラス化保存容器の容積を、好適な大きさである0.5〜50nLの範囲とすることができる。貫通孔は、レーザー加工、機械工具を用いた加工、ウオータージェット加工等の種々の加工法により形成し得るが、微細な孔を最も容易に形成できるレーザー加工を用いるのが好ましい。レーザー加工には、ガスレーザー、固体レーザー、半導体レーザー等の公知のレーザーを用いることができるが、その中でもより加工に適した炭酸ガスレーザー(ガスレーザーの一種)、エキシマレーザー(ガスレーザーの一種)、YAGレーザー(固体レーザーの一種)を好適に使用できる。
ガラス化保存する細胞は、適宜当業者周知の方法によりに調整することができる。たとえば、目的の細胞が卵子又は胚(卵核胞(GV)、前核期胚(PN)、2細胞期胚、4細胞期胚、8〜16細胞期胚、BL(胚盤胞))の場合、Quinnらの方法(Quin et al,Journal of Reproduction and Fertility,66,161−168,1982)に準じて行うことができる。GVは、卵巣より直接採取し、PN、2細胞期胚、4細胞期胚、8〜16細胞期胚、及び、BLは、HCG注射後14、36、48、60及び84時間後にそれぞれ卵管又は子宮を培養液で灌流して採取することにより調整することができる。
細胞のガラス化保存は、細胞をガラス化保存液に馴化させた後、所望のガラス化保存液中にて保存することができる。例えば、基本培養液を0.5−1mL中に、細胞を移動させ、室温で5分間放置して馴化させ、その後、当該細胞をガラス化保存液0.5−1mL中に移動させ、室温で3−15分間放置して平衡化させてガラス化保存用細胞を調整することができる。ガラス化保存用容器の各大きさの穴にガラス化保存液をガラスピペットにて正確に注入し、速やかにガラス化保存用容器を直接液体窒素中に投入し、ガラス化保存を行うことができる。また、本発明のガラス化保存液は細胞への毒性が低いため、ガラス化保存液に細胞を馴化させた後、凍結液への投入までの時間を通常のガラス化保存法より長くすることができる。また、馴化の工程をより短時間で行ってもよい。
厚み100μmのプラスチック板(クライオトップ、北里サプライ)にレーザー光を照射し、直径が150μm(容積1.8nL)、200μm(容積3.1nL)、及び、250μm(容積4.9nL)の貫通孔を形成した。
細胞保護剤の濃度を現在使用されている30%から15%まで低下させることが可能な保存液の量を確認するため、保護剤を15%含有する保存液を使用した場合の保存液の量と細胞の生存率との関係を調べた。
(1)マウス卵子と胚の採取
マウス卵子と胚(卵核胞(GV)、前核期胚(PN)、2細胞期胚、4細胞期胚、8〜16細胞期胚、BL(胚盤胞))は、Quinnらの方法(Quin et al,Journal of Reproduction and Fertility,66,161−168,1982)に準じて行った。GVは、卵巣より直接採取し、PN、2細胞期胚、4細胞期胚、8〜16細胞期胚、及び、BLは、HCG注射後14、36、48、60及び84時間後にそれぞれ卵管又は子宮を培養液で灌流して採取した。
乾らの方法(乾ら、日本受精着床学会誌、25、23−26、2008)に従い、基本培養液(基本成分は以下の通り:塩化ナトリウム、リン酸二水素カリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム七水和物、19種のアミノ酸、炭酸水素ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物、ゲンタマイシン硫酸塩、ポリビニルアルコール、アラニル−L−グルタミン、エネルギー源としてD−グルコースDL−乳酸ナトリウム等の乳酸塩、ピルビン酸ナトリウム等のピルビン酸塩)に12mMのHEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)及び8mMナトリウムHEPESを含有培地)を作製した。当該基本培養液にエチレングリコールを終濃度が7.5%となるように加え、更にジメチルスルホキシド(DMSO)を終濃度が7.5%となるように加えた。更に、ショ糖、ポリビニルアルコール、フィコール及びヒアルロナンをそれぞれ終濃度が0.5M、0.1%、1%、0.05%となるように加え、ガラス化保存液(保護剤濃度15%)とした。
4ウェルIVFディッシュ(ヌンク社、176740または144444)の1番目のウェルに基本培養液を0.5−1mL入れその中に、上記にて採取したマウス2細胞期胚をガラスピペットにて移動させ、室温で5分間放置して馴化させた。その後、4ウエルディッシュ(ヌンク社、144444)の2番目のウェルに上記により作成したガラス化保存液(保護剤濃度15%)0.5−1mL入れ、その中にマウス2細胞期胚をガラスピペットにて移動させ、室温で3−15分間放置して平衡化させた。実施例1で作製したガラス化保存用容器の各大きさの穴にガラス化保存液(保護剤濃度15%)をガラスピペットにて正確に注入し、容積1.8nL、3.1nL、及び、4.9nLの保存液を調整した。容積10nL、25nL、50nL、100nL、250nL、500nL、1000nLの保存液も同様にガラスピペットにて注入することでそれぞれ所望の体積を調整した。平衡化が終了したマウス2細胞期胚は細胞をガラスピペットで取り出し、顕微鏡下で保存容器の中の保存液中に1個ずつ移動させた。マウス2細胞期胚を加えたのち、速やかにガラス化保存用容器を直接液体窒素中に投入し、ガラス化保存を行った。
あらかじめ4ウェルIVFディッシュ(ヌンク社、176740または144444)の1番目のウェルに融解液1(ショ糖0.7−1.0M、ポリビニルアルコール0.1%、ヒアルロナン0.05%含有基本培養液)を0.5−1mLそして2番目のウェルには融解液2(ショ糖0.35−0.5M、ポリビニルアルコール0.1%、ヒアルロナン0.05%含有基本培養液)を0.5−1mL、そして3及び4番目のウェルには融解液3(ポリビニルアルコール0.1%、ヒアルロナン0.05%のみを含有する基本培養液)を0.5−1mL準備した。融解方法は液体窒素中にて1−10日間保存後、ガラス化保存したマウス2細胞期胚を、保存容器ごと上記の1番目の融解液1の入ったウェルに直接浸漬し、1分後にガラスピペットにて2番目の融解液2のウェルに移動させ3分間平衡させた。その後3分間隔で3番目と4番目の融解液3のウェルに移し変えることにより浸透圧ショックを与える事無く段階的に凍結保護剤の除去を行った。融解操作を終えたマウス2細胞期胚は回収し、BM培地(乾ら、日本受精着床学会誌、25、23−26、2008)中で培養を継続し、細胞の生存を確認した。細胞の生存確認は、12あるいは24時間毎に倒立顕微鏡にて形態観察を行い必要に応じ写真撮影し、その形態学的分類により生存性を評価した。
結果を表1に示す。表に示されるとおり、細胞保護剤を15%に低減させた場合、ガラス化保存液の体積を50nL以下とすることによって細胞の生存率が高くなることが示された。
以上の実施例からも、保存液の体積が少ない場合には、保護剤の濃度が低くても生存率が高いことが示されたことから、ガラス化保存液の体積を5nL以下とした場合に、細胞保護剤の濃度が細胞生存率に与える影響を調べた。
マウス卵子と胚(卵核胞(GV)、前核期胚(PN)、2細胞期胚、4細胞期胚、8〜16細胞期胚、BL(胚盤胞))は、Quinnらの方法(Quin et al,Journal of Reproduction and Fertility,66,161−168,1982)に準じて行った。GVは、卵巣より直接採取し、PN、2細胞期胚、4細胞期胚、8〜16細胞期胚、及び、BLは、HCG注射後14、36、48、60及び84時間後にそれぞれ卵管又は子宮を培養液で灌流して採取した。
乾らの方法(乾ら、日本受精着床学会誌、25、23−26、2008)に従い、基本培養液(基本成分は以下の通り:塩化ナトリウム、リン酸二水素カリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム七水和物、19種のアミノ酸、炭酸水素ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物、ゲンタマイシン硫酸塩、ポリビニルアルコール、アラニル−L−グルタミン、エネルギー源としてD−グルコースDL−乳酸ナトリウム等の乳酸塩、ピルビン酸ナトリウム等のピルビン酸塩)(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)含有培地)を作製した。当該基本培養液にエチレングリコール及びジメチルスルホキシド(DMSO)を、それぞれ、終濃度が15%となるように加え、保護剤濃度が30%のガラス化保存液を作製した。同様に、エチレングリコール及びジメチルスルホキシド(DMSO)を、それぞれ、終濃度が7.5%、6%、4.5%、又は、3%となるように加え、保護剤濃度が15%、12%、9%又は6%のガラス化保存液を作製した。更に、全てのガラス化保存液に、ショ糖、ポリビニルアルコール、フィコール及びヒアルロナンをそれぞれ終濃度が0.5M、0.1%、1%となるように加え、ガラス化保存液(保護剤濃度30%、15%、12%、9%、6%)とした。
上記実施例1の方法に準じて、ガラス化保存及び生存率の確認を行った。
結果を表2に示す。表に示されるとおり、5nL以下のガラス化保存液中にて保存した場合、細胞保護剤を12%まで低下させても90%以上の高い生存率が維持され、また、細胞保護剤を6%まで低下させても70%の生存率を維持できることが示された。
上記実験結果から、ガラス化保存液の量を5mL以下に低減させることにより、細胞保護剤を15%以下でも十分な生存率が得られることが見出された。よって、次に、細胞保護剤の濃度が低下したことによるガラス化保存前の保存液への細胞の平衡化に要する時間について検討を行った。
マウス卵子と胚(卵核胞(GV)、前核期胚(PN)、2細胞期胚、4細胞期胚、8〜16細胞期胚、BL(胚盤胞))は、Quinnらの方法(Quinn et al,Journal of Reproduction and Fertility,66,161−168,1982)に準じて行った。GVは、卵巣より直接採取し、PN、2細胞期胚、4細胞期胚、8〜16細胞期胚、及び、BLは、HCG注射後14、36、48、60及び84時間後にそれぞれ卵管又は子宮を培養液で灌流して採取した。
ガラス化保存液は、上記実施例2記載の方法と同様にして行った。
上記実施例1の方法に準じて、ガラス化保存及び生存率の確認を行った。
結果を表3に示す。表に示されるとおり、細胞保護剤を15%に低減させた場合、平衡化の時間が1分でも高い生存率が維持された。このことから、細胞保護剤を15%にすれば、平衡化の時間をほとんど要さないことが示された。
試験的に本低毒性・完全無血清ガラス化保存システム(凍結保護剤濃度15%)を用い、インフォームドコンセントの得られたヒト廃棄(発育停止)卵子をガラス化保存し、その生存性を評価した。
体外受精治療後に廃棄が決定した発育停止卵子を所有者の患者よりインフォームドコンセントを得た後、試験に供した。
ガラス化保存液の作成及びガラス化保存は、上記実施例2記載の方法と同様にして行った。
あらかじめ4ウェルIVFディッシュ(ヌンク社、176740または144444)の1番目のウエルに融解液1(ショ糖0.7−1.0M、ポリビニルアルコール0.1%、ヒアルロナン0.05%含有基本培養液)を0.5−1mLそして2番目のウエルには融解液2(ショ糖0.35−0.5M、ポリビニルアルコール0.1%、ヒアルロナン0.05%含有基本培養液)を0.5−1mL、そして3及び4番目のウエルには融解液3(ポリビニルアルコール0.1%、ヒアルロナン0.05%のみを含有する基本培養液)を0.5−1mL準備した。融解方法は液体窒素中にて1−10日間保存後、ガラス化保存したマウス2細胞期胚を、保存容器ごと上記の1番目の融解液1の入ったウェルに直接浸漬し、1分後にガラスピペットにて2番目の融解液2のウェルに移動させ3分間平衡させた。その後3分間隔で3番目と4番目の融解液3のウェルに移し変えることにより浸透圧ショックを与える事無く段階的に凍結保護剤の除去を行った。融解操作を終えた卵子は回収し、BM培地(乾ら、日本受精着床学会誌、25、23−26、2008)中で培養を継続し、形態評価によりその生存を確認した。
結果を表4に示す。表に示されるとおり、細胞保護剤の濃度を15%に低減させても91.7%(11/12)の生存が確認されヒト卵子への適用が可能であることが示された。
緩慢凍結保存法、従来のガラス化保存法、及び、低容量ガラス化保存法を用いた場合の、各種細胞における生存率の違いを測定した。
(1−1)ヒト子宮内膜細胞
ヒト子宮内膜細胞は、Mizunoら(12th International Academy of Human Reproduction,Venice,Italy,502−505(2005))の方法に従い調整し、培養液はMEMα(Gibco、12571−063)+5%臍帯血清にて調整しプラスティックフラスコ(IWAKI、Tissue Culture Flask、3113−025)に播種し培養した。2−3日の培養によりコンフレントに達した細胞はトリプシン溶液(Sigma、T3924)にて剥離し1−8×106cells/mlの濃度に調整しガラス化保存に用いた。
(1−2)ヒト卵管上皮細胞
ヒト卵管上皮細胞は、Mizunoら(12th International Academy of Human Reproduction,Venice,Italy,502−505(2005))の方法に従い調整し、培養液はMEMα(Gibco、12571−063)+5%臍帯血清にて調整しプラスティックフラスコ(IWAKI、Tissue Culture Flask、3113−025)に播種し培養した。2−3日の培養によりコンフレントに達した細胞はトリプシン溶液(Sigma、T3924)にて剥離し1−8×106cells/mlの濃度に調整しガラス化保存に用いた。
(1−3)ヒト羊膜細胞
ヒト羊膜細胞は、Mizunoら(12th International Academy of Human Reproduction,Venice,Italy,502−505(2005))の方法に従い調整し、培養液はMEMα(Gibco、12571−063)+5%臍帯血清にて調整しプラスティックフラスコ(IWAKI、Tissue Culture Flask、3113−025)に播種し培養した。2−3日の培養によりコンフレントに達した細胞はトリプシン溶液(Sigma、T3924)にて剥離し1−8×106cells/mlの濃度に調整しガラス化保存に用いた。
(1−4)正常ヒト皮膚繊維芽細胞
正常ヒト皮膚繊維芽細胞は、市販の細胞株NHDF−Ad(タカラ株式会社、CC−2511)を使用した。培養液はMEMα(Gibco、12571−063)+5%臍帯血清にて調整しプラスティックフラスコ(IWAKI、Tissue Culture Flask、3113−025)に播種し培養した。2−3日の培養によりコンフレントに達した細胞はトリプシン溶液(Sigma、T3924)にて剥離し1−8×106cells/mlの濃度に調整しガラス化保存に用いた。
(1−5)バッファローラット肝臓由来細胞
バッファローラット肝臓由来細胞は、市販の細胞株(buffalo rat liver cells、BRL3A)を使用した。培養液はMEMα(Gibco、12571−063)+5%臍帯血清にて調整しプラスティックフラスコ(IWAKI、Tissue Culture Flask、3113−025)に播種し培養した。2−3日の培養によりコンフレントに達した細胞はトリプシン(Sigma、T3924)にて剥離し1−8×106cells/mlの濃度に調整しガラス化保存に用いた。
(1−6)マウス卵巣細胞
マウス卵巣細胞は、 6−10週令のICR系メスマウス(日本クレア)より採取した卵巣組織を0.1mm四方に細片化した組織片を使用した。
(1−7)ヒト精子
ヒト精子は、精液検査後にインフォームドコンセントの得られた廃棄扱い精子を用い試験を行った。
(2−1)ガラス化保存液(保護剤濃度30%、15%、12%、9%、6%)
ガラス化保存液(保護剤濃度30%、15%、12%、9%、6%)は、上記実施例3と同様にして行った。
(2−2)緩慢凍結保存用保存液は、定法に従い凍結保護剤として10%DMSO(ジメチルスルフォキシド、Sigma,D2438)を添加したPBS(燐酸緩衝液、Gibco、14190)+20%臍帯血清を用いた。
(3−1)ガラス化保存の手順
上記実施例1の方法に準じて、ガラス化保存を行った。
(3−2)緩慢凍結保存は、定法に従い10%DMSO(ジメチルスルフォキシド、Sigma,D2438)を添加したPBS(燐酸緩衝液、Gibco、P14190)+20%臍帯血清を用いた。それぞれの細胞はクライオチューブ(Nalgen、Vryogenic Vial、5000−1020)に50−300マイクロリットルの凍結保存液とともに充填し、液体窒素表面から約2cmの高さで30分間保持緩慢に冷却し、30分後に液体窒素に浸漬し保存を行った。
上記実施例1の方法に準じて、生存率の確認を行った。
結果を表5〜表12に示す。表5は、ヒト子宮内膜細胞、表6は、ヒト卵管上皮細胞、表7は、ヒト羊膜細胞、表8は、正常ヒト皮膚繊維芽細胞、表9は、バッファローラット肝臓由来細胞、表10は、マウス卵巣細胞、表11は、マウス精巣細胞、表12は、ヒト精子の結果を示す。
表に示されるとおり、様々な種類の細胞において、低容量ガラス化保存方法が従来の方法と同等又はそれ以上の生存率を維持することが示された。特に、細胞保護剤の濃度を15%とした場合には、ほとんどの細胞で従来の方法を上回る生存率が得られた。また、特に、卵巣組織や精子の生殖系細胞においては、いずれの細胞保護剤の濃度を使用した場合にも従来の方法を上回る生存率が得られており、低容量ガラス化保存法が特に生殖系細胞に有効であることが示された。
発育ステージの異なるマウス卵子の生存率を確認するため、未成熟卵子、前核期卵子、2細胞期、4細胞期、8−16細胞期、胚盤胞期の細胞を利用して、低容量ガラス化保存後の生存率を調べた。
マウス卵子と胚(卵核胞(GV)、前核期胚(PN)、2細胞期胚、4細胞期胚、8〜16細胞期胚、BL(胚盤胞))は、Quinnらの方法(Quinn et al,Journal of Reproduction and Fertility,66,161−168,1982)に準じて行った。GVは、卵巣より直接採取し、PN、2細胞期胚、4細胞期胚、8〜16細胞期胚、及び、BLは、HCG注射後14、36、48、60及び84時間後にそれぞれ卵管又は子宮を培養液で灌流して採取した。
上記実施例1の方法に準じて、ガラス化保存及び生存率の確認を行った。
結果を表13及び表14に示す。表13に示されるとおり、各発育ステージにおいて、凍結保護剤(CPA)濃度を低下させても高い生存率が維持できることが示された。また表14に示されるとおり凍結保護剤(CPA)濃度を低下させても高い発生率が維持できることが示された。
低容量ガラス化保存がスラッシュ窒素を利用しても行うことができるかを確認するため、スラッシュ窒素を利用した低容量ガラス化保存の生存率と正常な紡錘体形成を調べた。
マウス卵子と胚(卵核胞(GV)、前核期胚(PN)、2細胞期胚、4細胞期胚、8〜16細胞期胚、BL(胚盤胞))は、Quinnらの方法(Quinn et al,Journal of Reproduction and Fertility,66,161−168,1982)に準じて行った。GVは、卵巣より直接採取し、PN、2細胞期胚、4細胞期胚、8〜16細胞期胚、及び、BLは、HCG注射後14、36、48、60及び84時間後にそれぞれ卵管又は子宮を培養液で灌流して採取した。
ガラス化保存液(保護剤濃度15%、12%)は、上記実施例2及び実施例3記載の方法と同様の方法にて作製した。また、コントロールとして使用するため、ガラス化保存液(30%)を上記実施例3記載の方法と同様の方法にて作製した。
(3)ガラス化保存並びに融解方法及び生存率の確認
上記実施例1の方法に準じて、ガラス化保存及び生存率の確認を行った。
(4)紡錘体形成の確認
それぞれの細胞について、正常な紡錘体を形成しているか否か紡錘体を確認するための観察装置(MTG社)により確認した。
結果を表15に示す。表に示されるとおり、低容量ガラス化保存法は、スラッシュ窒素を使用した場合にも、細胞保護剤濃度が低いにも拘らず従来法と同程度の生存率を維持できることが示された。また、低容量ガラス化保存法とスラッシュ窒素を組み合わせることによって、高い正常紡錘体率が達成できることが示された。このことから、低容量ガラス化保存法は、スラッシュ窒素を利用することにより、これまでに達成できなかった正常な紡錘体形成を可能とすることから、正常な紡錘体形成がその後の正常な分化に不可欠である未分化細胞、特には生殖系細胞や受精卵に利用可能であると考えられる。
低容量ガラス化保存した卵が胚移植後も正常に生育するか否かを確認するため、ガラス化保存した細胞をレシピエントに移植し、産仔への発育を観察した。
ガラス化保存胚は、ガラス化保存液(細胞保護剤30%、15%、12%)を使用し、実施例2及び実施例3に記載の方法に準じて保存(容積は4.9nL)したものを使用した。
(2)移植
ガラス化保存胚を、実施例2に記載の方法に準じて融解し、継続培養した。ガラス化保存液(細胞保護剤15%)を使用した細胞のうち、胚盤胞まで発育した細胞30個を3匹のレシピエントに移植した。同様にして、ガラス化保存液(細胞保護剤12%)を使用した細胞のうち、胚盤胞まで発育した細胞28個を3匹のレシピエントに移植した。コントロールとして、ガラス化保存液(細胞保護剤30%)を使用した細胞のうち、胚盤胞まで発育した細胞40個を3匹のレシピエントに移植した。
ガラス化保存液(細胞保護剤15%)を使用した30個の細胞から、20匹の正常な胎仔が得られ、66%の胚について胎仔まで発育させることができた。ガラス化保存液(細胞保護剤12%)を使用した28個の胚から、20匹の正常な胎仔が得られ、71%の胚について胎仔まで発育させることができた。一方で、ガラス化保存液(細胞保護剤30%)を使用した40個の細胞からは、21匹の正常な胎仔が得られ、53%の胚について胎仔まで発育させることができた。よって、低容量ガラス化保存で細胞保護剤の濃度を低下させることにより、保存した卵の発育の確率を高めることができることが示された。
Claims (8)
- 細胞をガラス化保存する方法であって、50nL以下の容量の無血清の保存液に該細胞を保持する工程、当該細胞を冷凍剤存在下にて保存する工程を備える方法。
- 保存液が、15%以下の濃度の凍結保護剤を含有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
- 細胞が、精子、卵母細胞、子宮内膜細胞、卵管上皮細胞、羊膜細胞、未受精卵細胞、受精卵細胞、胚細胞、胚性幹細胞(ES細胞)、造血幹細胞、間葉系幹細胞、神経幹細胞、がん幹細胞、又は、人工多能性幹細胞(iPS細胞)であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の方法。
- 細胞をガラス化保存する方法であって、50nL以下の容積の穴を備える細胞のガラス化保存用容器に無血清の保存液を保持させる工程、当該保存液中に該細胞を加える工程、当該細胞を冷凍剤存在下にて保存する工程を備える方法。
- 細胞が、精子、卵母細胞、子宮内膜細胞、卵管上皮細胞、羊膜細胞、未受精卵細胞、受精卵細胞、胚細胞、胚性幹細胞(ES細胞)、造血幹細胞、間葉系幹細胞、神経幹細胞、がん幹細胞、又は、人工多能性幹細胞(iPS細胞)であり、かつ、保存液が、15%以下の濃度の凍結保護剤を含有することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
- 細胞が生殖細胞以外の哺乳類細胞であり、かつ、保存液が、15%以下の濃度の凍結保護剤を含有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
- 細胞が、内膜細胞、上皮細胞、繊維芽細胞、肝臓細胞であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
- 50nL以下の容積の穴を備える細胞のガラス化保存用容器。
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