次に、本開示の実施の形態を図面を用いて説明する。図1は、本開示の一実施形態である印刷システム1の構成の概略の一例を示す構成図である。図2は、印刷装置10及び収納装置100の概略縦断面図である。図3は、印刷システム1の電気的な接続関係を示すブロック図である。図4は、スキージ固定部24,スキージ30,及びスキージ搬送治具110の斜視図である。印刷システム1は、粘性流体としてのはんだペースト(以下、単にはんだと称する)をスクリーンマスク55を用いて印刷対象(ここでは基板S)上に印刷処理する印刷装置10を備えている。また、印刷システム1は、印刷装置10で用いられる交換用のスキージ30を収納する収納装置100と、印刷装置10での処理に関する情報を管理する管理コンピュータ(PC)150とを備えている。なお、印刷システム1は、電子部品を基板S上に実装する図示しない実装装置などの他の対基板作業装置をさらに備えた実装システムとして構成されていてもよい。粘性流体としては、はんだのほか、例えば導電性ペースト、接着剤などが挙げられる。印刷装置10は、印刷処理に用いるスキージ30の自動交換が可能な装置として構成されている。また、スキージ30の交換処理は、図2,図4に示すスキージ搬送治具110を用いて行われる。本実施形態において、左右方向(X軸)、前後方向(Y軸)及び上下方向(Z軸)は、図1,2に示した通りとする。
印刷装置10は、図1,2に示すように、スキージ30を用いてスクリーンマスク55上のはんだをスクリーンマスク55に形成されたパターン孔58に押し込むことによりそのパターン孔58を介して下方の基板Sにはんだを塗布(印刷)する装置である。印刷装置10は、印刷制御部11(交換制御部の一例,図3)と、印刷処理部20と、供給部40と、マスク作業部50と、基板固定部60と、撮像部90と、読取部97と、を備えている。また、印刷装置10は、表示画面が表示され作業者による各種入力操作が可能な操作パネルとして構成された表示操作部98(図3)と、接続された他の機器と通信を行う図示しない通信部とを備えている。
印刷制御部11は、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、処理プログラムを記憶するROM、作業領域として用いられるRAM、各種データを記憶するHDDなどを備えている。印刷制御部11は印刷装置10全体を制御する。
印刷処理部20は、印刷装置10の上段に配設されており、スクリーンマスク55を用いて粘性流体を基板S上に印刷処理するユニットである。印刷処理部20は、図3に示すように、印刷ヘッド21と、印刷移動部22と、スキージ昇降部23と、スキージ固定部24と、スキージ30と、搬送ロッド38と、荷重センサ39とを備えている。印刷移動部22は、印刷ヘッド21を所定の印刷方向(ここでは前後方向)に移動するものであり、前後方向に形成されたガイドとガイドに沿って移動するスライダとスライダを駆動するモータとを備えている。スキージ昇降部23は、ピストンロッド23a(図2,図4)を有するエアシリンダとして構成され、ピストンロッド23aを昇降させることでスキージ固定部24及びスキージ30を昇降させる。印刷処理部20は、第1,第2スキージ30a,30bの2つのスキージ30を有しており、それに対応して2つのピストンロッド23aと2つのスキージ固定部24とを有している。荷重センサ39は、この2つのピストンロッド23aにそれぞれ配設されており、例えばロードセルとして構成されている。荷重センサ39は、印刷処理時にスクリーンマスク55を押圧する第1,第2スキージ30a,30bの各々の荷重を検出する。
2つのスキージ固定部24は、前後対称に配設されている点以外は同様の構成であるため、以下、前側のスキージ固定部24について図4を用いて説明する。なお、図4は、スキージ固定部24にスキージ30が取り付けられる前の状態を示しており、この図4ではスキージ30は後述するスキージ交換処理で用いられるスキージ搬送治具110に取り付けられている。
スキージ固定部24は、スキージ30(ここでは第1スキージ30a)を固定する固定状態とスキージ30を固定しない解除状態とを切り替えるように構成された機構である。図4に示すように、スキージ固定部24は、ピストンロッド23aの下端に接続されており、エアシリンダ25と、規制部材26と、を備えている。エアシリンダ25は、下方に突出するシリンダ軸25aを昇降させる機構である。シリンダ軸25aの下端にはフランジ25bが形成されており、フランジ25bの上面がスキージ30を下方から支持するように構成されている。規制部材26は、固定状態でスキージ30の突出部34と係合してスキージ30前後の移動を規制する部材である。規制部材26は、エアシリンダ25の左右両側にそれぞれ1つずつ配設されている。各々の規制部材26は、前方に突出する爪部27a,27bを有している。爪部27a,27bの下面には上方に向かって凹んだ凹部28a,28bがそれぞれ形成されている。スキージ固定部24では、エアシリンダ25がフランジ25bを上昇させた状態が固定状態であり、固定状態に比してエアシリンダ25がフランジ25bを下降させた状態が解除状態である。このフランジ25bの昇降により、スキージ固定部24は、固定状態ではフランジ25bの上面と規制部材26の下面との間でスキージ30の取付部材32を挟持する。また、スキージ固定部24は、解除状態では固定状態に比してフランジ25bと規制部材26とが相対的に上下に離間することで、スキージ30の固定を解除する。
図4に示すように、スキージ30は、パターン孔58(図2)よりも左右に長い長さに形成されたスキージブレード31と、スキージブレード31をスキージ固定部24に取り付けるための取付部材32と、を備えている。取付部材32は、位置決め部材33と、突出部34と、軸部材35と、フランジ部36とを備えている。位置決め部材33は、上面視でU字状に形成された部材であり、スキージ固定部24のシリンダ軸25aが前後に通過可能な開口部33aと、位置決め部材33の下面であり開口部33aに向かって(U字の内側に向かって)水平に突出する被把持面33bとを有している。スキージ固定部24のシリンダ軸25aが後方から前方に向かって位置決め部材33の開口部33a内に入っていくと、フランジ25bの上面が被把持面33bと上下に対向する。この被把持面33bと取付部材32の上面である被把持面32aとが、スキージ固定部24のシリンダ軸25aの上面と規制部材26の下面とに挟持されることで、スキージ30はスキージ固定部24に把持固定される。突出部34は、位置決め部材33の左右両側に1つずつ配設されており、いずれの突出部34もスキージ固定部24の凹部28a,28b内に嵌まり込んで規制部材26と係合するように構成されている。規制部材26と突出部34とが係合することで、スキージ固定部24に対するスキージ30の前後方向への移動が規制される。軸部材35は、位置決め部材33の左右両側に1つずつ配設されており、各々が突出部34の上面から上方に突出している。軸部材35の上端には、それぞれフランジ部36が形成されている。フランジ部36は、スキージ搬送治具110の係合部115と係合する部材である。
図4には、印刷装置10がスキージ30の自動交換に用いるスキージ搬送治具110も併せて図示している。スキージ搬送治具110は、枠状のフレーム111と、スキージ30を取付可能なホルダ112と、フレーム111の右側面の後端付近に配置されたバーコード116とを備えている。スキージ搬送治具110は、前後対称な2つのホルダ112を備えている。各々のホルダ112は、フレーム111を左右に掛け渡すように配置された本体部分と、本体部分からフレーム111の前後方向内側に突出する支持部113とを備えている。支持部113は、各々のホルダ112について左右に並んで2つずつ配設されている。支持部113は、図4右上の拡大図に示すように、スキージ30の軸部材35が前後方向に通過可能な開口部114を有している。また、支持部113は、スキージ30のフランジ部36が係合してスキージ30を固定する係合部115を有している。係合部115は、支持部113の開口縁に形成された、フランジ部36の下面側の部分がはまる凹部である。スキージ30は、係合部115にフランジ部36がはまると、自重によりスキージ搬送治具110に対するXY方向への相対移動が規制される。また、スキージ30は、上方に移動されてフランジ部36が係合部115から外れた位置(取外位置とも称する)では、XY方向への移動規制が解除され、開口部114から取外可能になる。バーコード116は、スキージ搬送治具110に取り付けられているスキージ30を識別するための識別情報であり、例えば作業者によって予め取り付けられる。
搬送ロッド38は、図示しないモーターにより昇降可能に印刷ヘッド21に配設されている(図2)。この搬送ロッド38は、スキージ30よりも下方に突出した状態で印刷移動部22により前後に移動することで、搬送レール53上に載置されたスクリーンマスク55及び各搬送治具を前後に押して搬送する。これにより、搬送ロッド38は、収納装置100から印刷装置10へのスクリーンマスク55及び各搬送治具の搬出入が可能である。
供給部40は、供給ヘッド41と、はんだが収容されたカートリッジ49とを備えている。供給ヘッド41は、カートリッジ49に例えばエアによる圧力を供給して、カートリッジ49の下面の図示しないノズルからはんだを吐出させる。供給部40は印刷ヘッド21に取り付けられており印刷移動部22により前後に移動する。
マスク作業部50は、図2に示すように上下方向で印刷処理部20と基板固定部60との間に配設されており、スクリーンマスク55を固定保持するユニットである。マスク作業部50は、図3などに示すように、マスク固定部51と、位置調整部52と、搬送レール53と、を備えている。マスク固定部51は、スクリーンマスク55を位置決めして水平な姿勢で支持固定するものである。位置調整部52は、基板固定部60に固定された基板Sに対して適正な位置にスクリーンマスク55のパターン孔58が配置されるようマスク固定部51をXY方向に位置調整するものである。搬送レール53は、前後方向に伸びた左右1対のレールであり、搬送ロッド38に押されたスクリーンマスク55や各搬送治具が前後方向に沿って移動するようにこれらをガイドする。スクリーンマスク55は、所望の配線パターンなどのパターン孔58が形成されたマスク本体56と、マスク本体56を所定のテンションで保持する枠体57と、マスク本体56は、例えば金属の薄板である。スクリーンマスク55の下面には位置認識用の識別部(例えばマーク)が形成されている。スクリーンマスク55の右側面の後端付近には、スクリーンマスク55の識別情報を表す図示しないバーコードが配設されている。このバーコードは例えば作業者によって予め取り付けられる。
基板固定部60は、図2及び図3に示すように、マスク作業部50の下方に配設され、基板Sを搬入し、搬入した基板Sを位置決めして支持し、スクリーンマスク55に接触,離間させるユニットである。基板固定部60は、基板Sを左右方向に搬送する基板搬送コンベア61と、基板Sを下方から支持する基板支持部材70と、基板固定部60全体や基板支持部材70を昇降させる基板昇降部65とを備える。
撮像部90は、図2に示すように上下方向でマスク作業部50と基板固定部60との間に配設されており、画像を撮像する撮像処理を行うユニットである。この撮像部90は、図1,2に示すように、キャリッジ91と、撮像移動部92と、撮像部本体95と、を備えている。キャリッジ91は、撮像部本体95が配設されており、撮像移動部92によってXY方向に移動する。撮像移動部92は、X軸スライダ93とY軸スライダ94とを備えている。Y軸スライダ94は、X軸方向を長手方向とする板状部材であり、一対のガイドレール88bに沿って移動モータにより移動する。X軸スライダ93は、キャリッジ91に配設されており、Y軸スライダ94の下側でX軸方向に形成されたガイドに沿って移動モータにより移動する。撮像部本体95は、上方及び下方が撮像領域であり、照明部と光学系と撮像素子とを備えている。撮像部本体95は、例えばスクリーンマスク55の下面に形成された識別部と、基板支持部材70の識別部75とを撮像可能である。また、撮像部本体95は、基板固定部60に固定された基板Sの上面も撮像可能であり、基板Sへの印刷処理の印刷結果に関する印刷結果情報としての撮像画像を取得する。
読取部97は、収納装置100に収納された交換用のスキージ30に関する情報を読み取る装置であり、本実施形態ではバーコードリーダとして構成されている。読取部97は、図1に示すように印刷装置10内の右前方に配置され、左方向が読取方向である。読取部97は、スクリーンマスク55が搬出入される高さ(搬入高さ)と同じ高さに配置されており、スクリーンマスク55の右側面の前端付近に付されたバーコードを読み取り可能である。また、読取部97は、スキージ搬送治具110が同じ高さに搬送されれば、バーコード116を読み取ることができる。
収納装置100は、印刷装置10の前方に配設されており、交換用のスキージ30を収納し、印刷装置10との間でスキージ30の搬出入を行う装置である。収納装置100は、筐体101と、収納部102と、搬送コンベア104と、コンベア昇降部105と、収納制御部106を備えている。筐体101は略直方体状の箱体であり、内部に収納部102を有している。筐体101の下面にはキャスターなどの移動部が配設されており、例えば作業者が収納装置100を移動可能である。収納部102は、交換用のスキージ30及びスキージ搬送治具110を収納可能な箱体であり、内部に複数の搬送コンベア104が配設されている。収納部102は、スクリーンマスク55も収納可能に構成されている。搬送コンベア104は、上下方向に複数段配設されており、本実施形態では、図2に示すように上から順に第1〜第5搬送コンベア104a〜104eが配設されている。第1〜第5搬送コンベア104a〜104eの各々は、左右一対のベルトコンベアとして構成されており、載置された物体を前後方向に搬送する。なお、図1では図示の都合上、搬送コンベア104を4段のみ示している。収納部102は、この第1〜第5搬送コンベア104a〜104eの各々にスキージ30を少なくとも1つ載置可能に構成されている。収納部102は、第1〜第5搬送コンベア104a〜104eによって分けられる上下方向に複数段の収納領域103を有している。収納領域103は、第1搬送コンベア104aよりも上側の領域として第1収納領域103aを有しており、同様に第2〜第5搬送コンベア104b〜104eの各々よりも上側の領域として第2〜第5収納領域103b〜103eを有している。収納部102は前後が開口している。これにより、作業者が前方から収納部102にスキージ30を挿入したり、収納装置100が収納部102の後方を介してスキージ30を印刷装置10に搬出入したりすることができる。コンベア昇降部105は、収納部102を上下に昇降させる機構であり、例えば図示しないガイドとボールねじと駆動モータとを備えている。コンベア昇降部105が収納部102を昇降させることで、搬送コンベア104が昇降する。なお、スキージ搬送治具110及びスクリーンマスク55は、複数の搬送コンベア104のいずれにも載置可能となるように左右方向の幅が定められており、例えば左右方向の幅が略同一になっている。
収納制御部106は、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、処理プログラムを記憶するROM、作業領域として用いられるRAM、各種データを記憶するHDDなどを備えている。収納制御部106は、収納装置100全体を制御する。
次に、こうして構成された印刷システム1の動作について説明する。特に、印刷装置10が必要に応じてスキージ30を自動交換しながら実行する印刷処理と、印刷処理と並行して収納装置100に収納されたスキージ30の識別情報を読み取る読取処理とについて説明する。図5は、印刷処理ルーチンの一例を示す説明図である。図6は、印刷処理と読取処理とを並行して行う様子を示す説明図である。
まず、作業者が収納装置100に対して行う作業について説明する。作業者は、印刷装置10が例えば後述する図5のステップS100〜S130の印刷処理を行っている間に、スキージ30の交換が必要になる場合に備えて、予め収納装置100に交換用のスキージ30を取り付けたスキージ搬送治具110を収納しておく。また、作業者は、使用中のスキージ30を印刷装置10から搬出するために必要になる空き状態のスキージ搬送治具110を、少なくとも1つ収納装置100に収納しておく。さらに、作業者は、複数の収納領域103のうち少なくとも1つを、使用中のスクリーンマスク55の印刷装置10からの搬出用に空けておく。図2では、第1収納領域103aが空いた状態になっており、第2収納領域103bには空き状態のスキージ搬送治具110が収納されている。また、第3収納領域103cには使用中のスキージ30と同じ種類(例えば同じアタック角度)のスキージ30を取り付けたスキージ搬送治具110が収納されているものとする。第4,第5収納領域103d,103eには、使用中のスキージ30とは異なる2種類のアタック角度のスキージ30を取り付けたスキージ搬送治具110が収納されているものとする。作業者は、スキージ30の交換が必要になった時ではなく、印刷装置10が印刷処理を行っている間に、交換用のスキージ30を予め収納装置100に収納しておけばよい。そのため、作業者は、作業負担が少ない時間帯に交換用のスキージ30を用意する作業を行うことができる。
なお、作業者は、スキージ搬送治具110に取り付けられたスキージ30の識別情報を表すバーコード116を、予めそのスキージ搬送治具110に付しておく。例えば、作業者は、スキージ搬送治具110に取り付けられているスキージ30の種別(ここではアタック角度)を表す情報が、そのスキージ搬送治具110のバーコード116に含まれるようにしておく。なお、バーコード116には、スキージ搬送治具110の状態を表す情報も含まれていてもよい。例えば、バーコード116には、スキージ搬送治具110の2つのホルダ112の各々が空きであるか否かを表す情報が含まれていてもよい。こうすることで、印刷制御部11は、スキージ搬送治具110のバーコード116を読取部97に読み取らせることで、スキージ搬送治具110のホルダ112が空きであるか否かや、スキージ搬送治具110に取り付けられたスキージ30の種別を識別することができる。
次に、読取処理について説明する。読取処理を行うための読取処理ルーチンは、印刷制御部11のHDDに記憶され、例えば所定時間の経過毎、又は作業者から読取処理の実行指示を入力したあとに、実行される。読取処理ルーチンを開始すると、印刷制御部11は、収納装置100の収納制御部106に対して、収納部102に収納されたスキージ搬送治具110を読取部97が読取可能な位置に順次移動させるように指令を出力する。この指令を受けた収納制御部106は、まず、コンベア昇降部105の昇降を必要に応じて行って搬送コンベア104に載置されたスキージ搬送治具110と読取部97との高さを同じにする。次に、収納制御部106は、搬送コンベア104によりスキージ搬送治具110を後方に搬送してバーコード116を読取部97が読取可能な位置まで移動させる。そして、収納制御部106は、スキージ搬送治具110を前方に搬送して元の位置に戻す。この間に、印刷制御部11は読取部97にバーコード116を読み取らせて、取得した情報をHDDに記憶する。収納制御部106は、第1搬送コンベア104a〜第5搬送コンベア104eについて順次同様の処理を行う。図6は、収納装置100が第2収納領域103bに収納されたスキージ搬送治具110を読取部97が読み取り可能な位置まで搬送した状態を示している。この読取処理により、印刷制御部11は、収納装置100の収納領域103の各々にいずれの種類のスキージ30が収納されているかの情報、空き状態のスキージ搬送治具110が複数の収納領域103のいずれに収納されているかの情報など、後述するスキージ交換処理で必要な情報を取得して記憶する。また、印刷制御部11は、例えば搬送コンベア104による搬送を行っても読取部97が情報を読み取らない状態が所定時間継続したことを検出することによって、スキージ搬送治具110が収納されていない空き状態の収納領域103(図6では第1収納領域103a)を特定することもできる。なお、図6に示すように、読取部97は印刷装置10の前側に配設されている。そのため、前方の収納装置100からスキージ搬送治具110が読取部97の読取位置まで搬送されても、後述する印刷処理における印刷処理部20,供給部40,マスク作業部50,基板固定部60,撮像部90の動作に支障がない。したがって、印刷制御部11は印刷処理と並行して読取処理を行うことができる。これにより、印刷処理を停止することなく印刷制御部11は収納装置100に収納されたスキージ30及びスキージ搬送治具110の情報を取得することができる。
なお、読取処理時の収納装置100側の動作に関して、予め収納制御部106の記憶部に読取処理時の動作ルーチンが記憶されており印刷制御部11は動作ルーチンの開始指令を出力するだけであってもよい。あるいは、印刷制御部11がコンベア昇降部105及び搬送コンベア104の個別の動作指令を収納制御部106に順次出力してもよい。
次に、印刷処理について説明する。図5の印刷処理ルーチンは、印刷制御部11のHDDに記憶され、印刷制御部11が作業者から表示操作部98を介して印刷処理の実行指示を入力したあと、又は印刷制御部11が管理PC150から印刷処理の実行指令を入力したあとに、実行される。印刷処理ルーチンを開始すると、印刷制御部11は、まず、ステップS100〜S130の印刷処理を行う。印刷処理では、印刷制御部11は、図6に示すように基板Sを基板固定部60により固定して上昇させることでスクリーンマスク55に当接させる基板搬送固定処理を行う(ステップS100)。このとき、印刷制御部11は、必要に応じてマスク作業部50によりスクリーンマスク55の位置を調整して、パターン孔58と基板Sとの位置合わせを行う。基板搬送固定処理を行うと、印刷制御部11は、はんだ供給処理を行う(ステップS110)。具体的には、印刷制御部11は、スクリーンマスク55上に供給ヘッド41を移動させ、カートリッジ49からスクリーンマスク55上にはんだを吐出させる。はんだ供給処理を行うと、印刷制御部11は、スキージ移動処理を行う(ステップS120)。具体的には、印刷制御部11は、印刷ヘッド21を移動させると共にスキージ30(図6では第1スキージ30a)を下降させてスキージ30をスクリーンマスク55の上面に当接させ、スキージ30を前後方向に移動させてはんだを基板S上に印刷する。印刷制御部11は、スクリーンマスク55上で第1スキージ30aを後方に移動させる処理と第2スキージ30bを前方に移動させる処理との少なくとも一方を行う。このとき、印刷制御部11は、荷重センサ39が検出したスキージ30の荷重を取得してHDDに記憶する。なお、印刷制御部11は、取得した荷重が第1,第2スキージ30a,30bのいずれの値であるかの情報も併せて記憶する。スキージ移動処理を行うと、印刷制御部11は、撮像部90により基板S上を撮像して印刷結果としての撮像画像を取得する印刷結果取得処理を行って(ステップS130)、印刷処理を終了する。図7は、印刷結果取得処理を行う様子を示す説明図である。図7に示すように、印刷制御部11は、基板台昇降部65により基板Sを下降させ、基板Sの上方に撮像部90を移動させ、撮像部本体95により基板Sの上面を撮像して撮像画像を取得する。本実施形態では、周知の三次元演算を用いて基板Sに印刷されたはんだの三次元計測が可能な撮像画像を取得するものとした。例えば、撮像部90は、撮像部本体95の照明部により基板Sの斜め上方から所定の光成分パターンを照射して、撮像画像を取得する。
印刷処理を行うと、印刷制御部11は、スキージ30が摩耗してスキージ30の交換が必要であるとみなせる交換タイミングであるか否かを判定する(ステップS140)。印刷制御部11は、ステップS120のスキージ移動処理で荷重センサ39から取得したスキージ30の荷重に基づいて、この判定を行う。例えば、取得したスキージ30の荷重が所定の閾値よりも小さかった場合には、そのスキージ30が摩耗しており交換タイミングであると判定する。なお、印刷制御部11は、スキージ移動処理で記憶した情報に基づいて、第1スキージ30a,30bのいずれが交換タイミングであるかも併せて判定する。
ステップS140で交換タイミングであると判定すると、印刷制御部11は、交換タイミングと判定されたスキージ30の自動交換を行うスキージ交換処理を行う(ステップS150)。ステップS150では、使用中のスキージ30と同種のスキージ30、ここでは同じアタック角度のスキージ30に交換する。なお、印刷制御部11は、上述した読取処理で取得した情報を適宜参照しながらスキージ交換処理を行う。
ステップS150のスキージ交換処理では、印刷制御部11は、使用中のスクリーンマスク55を搬出するマスク搬出処理と、使用中のスキージ30を搬出するスキージ搬出処理と、交換用のスキージ30を搬入するスキージ搬入処理と、搬出したスクリーンマスク55を搬入するマスク搬入処理と、をこの順で行う。なお、本実施形態では、搬送レール53を用いてスキージ搬送治具110を搬送する。そのため、スキージ交換処理を行う場合には、まずマスク搬出処理を行ってスクリーンマスク55を搬送レール53上から退避させておき、スキージの交換が終了した後に、マスク搬入処理を行ってスクリーンマスク55を元の位置に戻す。以下、第1,第2スキージ30a,30bを共に交換する場合を例として、スキージ交換処理について説明する。
図8は、マスク搬出処理の様子を示す説明図である。マスク搬出処理を開始すると、印刷制御部11は、まず、スクリーンマスク55を搬出するための高さ(搬出高さ)に、空いている搬送コンベア104(ここでは第1搬送コンベア104a)が位置するようにコンベア昇降部105を動作させる。スクリーンマスク55の搬出高さは、第1搬送コンベア104aと搬送レール53とが同じ高さになるような位置である。次に、印刷制御部11は、搬送ロッド38を下方に突出させると共に印刷移動部22を制御して、スクリーンマスク55を搬送レール53に沿って前方に搬送する(図8)。そして、印刷制御部11は、搬送ロッド38によってスクリーンマスク55を第1搬送コンベア104aまで搬送させてスクリーンマスク55を搬出する。また、印刷制御部11は、第1搬送コンベア104aによりスクリーンマスク55をさらに前方に搬送させて、収納部102にスクリーンマスク55を収納させる。これにより、搬送レール53上からスクリーンマスク55が除去されて、スキージ搬送治具110を搬送レール53上で搬送しやすくなる。なお、図8では、搬送ロッド38はスクリーンマスク55の端部(ここでは後端)を外側から押すことでこれを搬送しているが、これに限らず例えば枠体57の内側を押すことでスクリーンマスク55を搬送してもよい。同様に、後述するスキージ搬送治具110の搬送においても、搬送ロッド38はスキージ搬送治具110の端部を外部から押してもよいし、フレーム111の内側を押してもよいし、スキージ搬送治具110に取り付けられたスキージ30を押してもよい。
図9は、スキージ搬出処理の様子を示す説明図である。スキージ搬出処理では、印刷制御部11は、まず、空きのホルダ112を有するスキージ搬送治具110を載置している搬送コンベア104(ここでは第2搬送コンベア104b)と搬送レール53とが同じ高さ(搬出高さ)になるようにコンベア昇降部105を動作させる。そして、第2搬送コンベア104bと搬送ロッド38とを制御してスキージ搬送治具110を印刷装置10内に搬入する(図9A)。次に、印刷制御部11は、印刷移動部22及びスキージ昇降部23を制御してスキージ固定部24に取り付けられた第1スキージ30aを前方に移動させ、スキージ搬送治具110の前側の空きのホルダ112に第1スキージ30aを取り付ける(図9B)。同様に、印刷制御部11は、第2スキージ30bを後方に移動させ、スキージ搬送治具110の後ろ側の空きのホルダ112に第2スキージ30bを取り付ける(図9C)。そして、印刷制御部11は、スキージ30が取り付けられたスキージ搬送治具110を搬送ロッド38によって第2搬送コンベア104bまで搬送させて、スキージ搬送治具110を搬出する(図9D)。また、印刷制御部11は、第2搬送コンベア104bによりスキージ搬送治具110をさらに前方に搬送させて、収納部102にスキージ搬送治具110を収納させる。
スキージ搬入処理では、印刷制御部11は、上述したスキージ搬出処理と逆の手順で、スキージ30を搬入する。すなわち、印刷制御部11は、まず、交換用のスキージ30が取り付けられたスキージ搬送治具110を載置する第3搬送コンベア104cと搬送レール53とが同じ高さ(搬入高さ)になるようにコンベア昇降部105を動作させる。次に、印刷制御部11は、第3搬送コンベア104c及び搬送ロッド38によりスキージ搬送治具110を搬入する。続いて、印刷制御部11は、印刷移動部22及びスキージ昇降部23を制御して前側のスキージ固定部24を前方に移動させ、スキージ搬送治具110の前側のホルダ112に取り付けられたスキージ30を前側のスキージ固定部24に取り付ける。同様に、印刷制御部11は、後側のスキージ固定部24を後方に移動させ、スキージ搬送治具110の後側のホルダ112に取り付けられたスキージ30を後側のスキージ固定部24に取り付ける。その後、印刷制御部11は、スキージ30が取り外されたスキージ搬送治具110を搬送ロッド38により搬出し、第3搬送コンベア104cによりスキージ搬送治具110を収納部102に収納させる。
ここで、スキージ固定部24からホルダ112へのスキージ30の引き渡しと、ホルダ112からスキージ固定部24への交換用のスキージ30の受け取りとについて詳細に説明する。説明の便宜上、スキージ30の受け取りについて先に説明する。図10は、スキージ30をスキージ固定部24に装着する動作の説明図である。なお、図10は前側のスキージ固定部24がスキージ30を受け取る様子を示している。また、図10の左列は位置決め部材33及びエアシリンダ25の上下前後方向に沿った概略断面図であり、図10の中央列は規制部材26及び軸部材35の上下前後方向に沿った概略断面図であり、図10の右列はスキージ固定部24及びスキージ30の右上前方から見た斜視図である。スキージ30を受け取る際には、印刷制御部11は、まず、スキージ固定部24を下降させ、スキージ固定部24を解除状態にし、受け取り対象のスキージ30の後方から、スキージ固定部24を前方に移動させる(図10A)。これにより、シリンダ軸25aがスキージ30の開口部33aに挿入されていく。このとき、スキージ30の軸部材35は規制部材26の爪部27a,27bの間に挿入されていく。そして、シリンダ軸25aが位置決め部材33と当接してシリンダ軸25aの前方への移動が位置決め部材33によって規制される位置で、両者の前後方向の位置決めがなされる(図10B)。この位置がスキージ30の受取位置である。なお、本実施形態では、受取位置は、位置決め部材33のうち開口部33aに面する後面(開口部33aの行き止まり部分)とシリンダ軸25aの前面とが当接する位置とした。ただし、受取り位置は、フランジ25bと位置決め部材33とが当接してフランジ25bの前方への移動が位置決め部材33によって規制される位置としてもよい。また、スキージ固定部24が受取位置に位置するとき、規制部材26の凹部28aはスキージ30の突出部34の真上に位置する(図10B)。続いて、印刷制御部11は、エアシリンダ25を制御してスキージ固定部24を解除状態から固定状態に切り替える(図10C)。これにより、フランジ25bが固定状態での位置まで上昇して位置決め部材33の被把持面33bを押し上げる。これによりフランジ部36が押し上げられてフランジ部36とホルダ112の係合部115との係合が解除され、スキージ30が取外位置に移動する。また、これによりスキージ30の突出部34は、上昇してスキージ固定部24の凹部28a,28b内に嵌まり込んで規制部材26と係合する。規制部材26と突出部34とが係合することで、スキージ固定部24に対するスキージ30の前後方向への移動が規制される。また、固定状態では、位置決め部材33の下面である被把持面33bと取付部材32の上面である被把持面32aとが、スキージ固定部24のシリンダ軸25aの上面と規制部材26の下面とに挟持されることで、スキージ30はスキージ固定部24に把持固定される。そして、印刷制御部11は、印刷移動部22を制御してスキージ固定部24を後方に移動させる。これにより、スキージ30のフランジ部36が開口部114を通過して、ホルダ112からスキージ30が完全に取り外される(図10D)。なお、スキージ搬送治具110の後側のホルダ112からスキージ固定部24に交換用の第2スキージ30bを受け取る場合は、印刷制御部11は上記の動作と前後対称な動作を行えばよい。
スキージ固定部24からホルダ112へのスキージ30の引き渡しは、上記の受け取りと逆の手順で行うことができる。第1スキージ30aをスキージ搬送治具110の前側のホルダ112に引き渡す場合には、印刷制御部11は、まず、前側のスキージ固定部24を下降させ、ホルダ112の後方から、スキージ固定部24を前方に向けて移動させる。これにより、空きのホルダ112の係合部115の真上にフランジ部36を位置させる。この位置がスキージ30の引渡位置である。次に、印刷制御部11は、スキージ固定部24を固定状態から解除状態に切り替える。これにより、係合部115とフランジ部36とが係合してスキージ30が取付位置に位置し、ホルダ112にスキージ30が取り付けられる。また、規制部材26と突出部34との係合が解除される。そして、印刷制御部11は、スキージ固定部24を後方に移動させる。なお、スキージ搬送治具110の後側のホルダ112に第2スキージ30bを引き渡す場合は、印刷制御部11は上記の動作と前後対称な動作を行えばよい。
次に、マスク搬入処理について説明する。印刷制御部11は、上記のマスク搬出処理と逆の手順でマスク搬入処理を行うことができる。マスク搬入処理では、印刷制御部11は、まず、マスク搬出処理で搬出したスクリーンマスク55を搬入するための高さ(搬入高さ)に、搬送コンベア104(ここでは第1搬送コンベア104a)が位置するようにコンベア昇降部105を動作させる。スクリーンマスク55の搬入高さは、スクリーンマスク55の搬出高さと同じである。次に、印刷制御部11は、第1搬送コンベア104a及び搬送ロッド38によりスクリーンマスク55を後方に搬送させて、スクリーンマスク55を搬入する。以上のマスク搬出処理、スキージ搬出処理、スキージ搬入処理、及びマスク搬入処理を行うと、印刷制御部11はステップS150のスキージ交換処理を終了する。
ステップS150のあと、又はステップS140でスキージ30の交換タイミングでない場合には、印刷制御部11は、使用中のスキージ30のアタック角度が不適切か否かを判定する(ステップS160)。具体的には、印刷制御部11は、まず、ステップS130の印刷結果取得処理で取得した撮像画像に基づいて、三次元計測を行って、基板S上に印刷されたはんだの立体的な状態を測定する。三次元計測には、例えば位相シフト法などを用いることができる。そして、印刷制御部11は、測定されたはんだの三次元形状と、予めHDDに記憶されている印刷結果が良好とみなせるはんだの三次元形状のパターンとを比較して印刷結果の良否を検査し、不良であればアタック角度が不適切と判定する。なお、アタック角度が不適切か否かだけでなく、アタック角度が適切な角度よりも大きいか小さいかについても判定してもよい。例えば、はんだの高さが、スキージ動作方向の上流側が低く、下流側が突起した所定のパターンの形状となっている場合には、印刷結果が不良でありスキージ30のアタック角度が大きいと判定してもよい。なお、印刷制御部11は、アタック角度が不適切であると判定した場合には、第1,第2スキージ30a,30bのうち直前のスキージ移動処理で使用した1以上のスキージを交換対象に設定する。
ステップS160でアタック角度が不適切であると判定すると、印刷制御部11は、交換対象に設定したスキージ30の自動交換を行うスキージ交換処理を行う(ステップS170)。ステップ170は、使用中のスキージ30と異なるアタック角度のスキージ30に交換する点以外は、ステップS150のスキージ交換処理と同様に行う。なお、印刷制御部11は、交換対象のスキージ30のアタック角度が適切な角度よりも大きいか小さいかの判定結果と、読取処理で取得した情報とに基づいて、収納装置100に収納されているいずれのスキージ30に交換するかを判定してもよい。例えば、印刷制御部11は、アタック角度が適切な角度よりも大きいと判定した場合には、読取処理で取得した情報に基づいて、使用中のスキージ30よりもアタック角度の小さいスキージ30を収納している収納領域103を特定して、そのスキージ30と使用中のスキージ30との自動交換を行ってもよい。
ステップS170のあと、又はステップS160でスキージ30のアタック角度が不適切でない場合には、印刷制御部11は、生産が完了したかを判定し(ステップS180)、完了していないときにはステップS100以降の処理を実行する。すなわち、印刷制御部11は、必要に応じてスキージ30を交換しながら、印刷処理を繰り返し行う。ステップS180で生産が完了したときには、印刷制御部11は印刷処理ルーチンを終了する。
ここで、本実施形態の印刷装置10の主要な要素と本開示の印刷装置との対応関係について説明する。本実施形態のスキージ固定部24が本開示の印刷装置の「スキージ固定部」に相当し、印刷移動部22及びスキージ昇降部23が「スキージ移動部」に相当する。また、位置決め部材33が「位置決め部材」に相当し、規制部材26が「規制部材」に相当し、フランジ25bが「第1挟持部材」に相当し、規制部材26が「第2挟持部材」に相当し、印刷移動部22,搬送ロッド38,及び搬送レール53が「搬送部」に相当し、印刷制御部11が「交換制御部」に相当し、荷重センサ39及び印刷制御部11が「検出部」に相当する。
以上詳述した本実施形態の印刷装置10は、スキージ移動部(ここでは印刷移動部22及びスキージ昇降部23)が固定状態のスキージ固定部24を移動させることでスキージ30を移動させて印刷処理を行う。そして、スキージ30を交換する際には、スキージ固定部24が固定状態と解除状態とを切り替える。そのため、例えばスキージ30を交換する際にスキージ30を取り外すためのネジの付け外しの作業を作業者が行う必要がない。したがって、この印刷装置10はスキージ30の交換に関する作業者の作業を低減することができる。
また、印刷装置10において、印刷移動部22及びスキージ昇降部23は、交換用のスキージ30の受取位置までスキージ固定部24を移動させるように構成され、スキージ30は、受取位置まで移動したスキージ固定部24のシリンダ軸25aと当接してスキージ固定部24とスキージ30との位置決めを行う位置決め部材33を有している。これにより、スキージ固定部24が受取位置に向かって移動していくと、受取位置でスキージ固定部24と交換用のスキージ30の位置決め部材33とが当接して位置決めされる。したがって、印刷装置10では、スキージ固定部24がスキージ30を固定する際の両者の位置ずれが抑制される。
さらに、印刷装置10において、スキージ固定部24は、固定状態でスキージ30の突出部34と係合してスキージ固定部24に対するスキージ30の前後への移動を規制する規制部材26を有している。したがって、印刷装置10は、固定状態でのスキージ30とスキージ固定部24との位置ずれを規制部材26によって抑制できる。しかも、位置決め部材33による位置決めが行われた状態で規制部材26がスキージ30の突出部34と係合する。そのため、規制部材26とスキージ30の突出部34との位置ずれが抑制されて、両者がより確実に係合する。
さらにまた、スキージ固定部24は、固定状態ではスキージ30を挟持して固定し解除状態では固定状態に比して相対的に上下に離間するフランジ25b及び規制部材26を有している。したがって、印刷装置10は、フランジ25b及び規制部材26の上下方向の接近と離間を切り替えるという比較的簡易な構成で、固定状態と解除状態とを切り替えることができる。
そしてまた、印刷移動部22及びスキージ昇降部23は、交換用のスキージ30が取り付けられたスキージ搬送治具110のホルダ112からのスキージ30の受取位置までスキージ固定部30を移動させるように構成されている。そして、フランジ25bは、スキージ固定部24が受取位置にある状態で解除状態での位置から固定状態での位置に移動(ここでは上昇)すると、その移動に伴ってホルダ112から取外可能である取外位置に交換用のスキージ30を移動させる。これにより、スキージ固定部24は、解除状態から固定状態への切り替えによって、スキージ30を固定するだけでなくスキージ30の取外位置への移動も行うことができる。したがって、例えば印刷装置10がスキージ30の取外位置への移動とスキージ30の固定とを別々に行う場合と比較して、スキージ30の交換を効率よく行うことができる。
そしてまた、印刷装置10は、交換用のスキージ30が取り付けられたスキージ搬送治具110を搬送する搬送部としての印刷移動部22,搬送ロッド38,及び搬送レール53と、スキージ交換処理を実行する印刷制御部11と、を備えている。そして、印刷制御部11は、スキージ交換処理において、印刷移動部22,スキージ昇降部23,搬送ロッド38,及び搬送レール53を制御して、スキージ搬送治具110を搬入しスキージ固定部24に固定されたスキージ30をスキージ搬送治具110への引渡位置まで移動させ、スキージ固定部24を解除状態に切り替えてスキージ30をスキージ搬送治具110に取り付け、取り付け後のスキージ搬送治具110を搬出するスキージ搬出処理を行う。また、印刷制御部11は、スキージ交換処理において、印刷移動部22,スキージ昇降部23,搬送ロッド38,及び搬送レール53を制御して、交換用のスキージ30が取り付けられたスキージ搬送治具110を搬入しスキージ固定部24をスキージ搬送治具110からのスキージ30の受取位置まで移動させ、スキージ30をスキージ搬送治具110から取り外しスキージ固定部24を固定状態に切り替えてスキージ30をスキージ固定部24に固定し、取り外し後のスキージ搬送治具110を搬出するスキージ搬入処理を行う。したがって、印刷装置10はスキージ30の自動交換を行うことができるため、スキージ30の交換に関する作業者の作業をより低減することができる。
そしてまた、上述した搬送部(ここでは印刷移動部22,搬送ロッド38,及び搬送レール53)及びスキージ移動部(ここでは印刷移動部22及びスキージ昇降部23)は、少なくとも一部(印刷移動部22)が共通の機構である。したがって、印刷装置10が搬送部とスキージ移動部とを全く別の機構として備える場合と比較して、印刷装置10の部品点数を減らすことができる。
そしてまた、印刷装置10は、スキージ30が摩耗してスキージ30の交換が必要であるとみなせる交換タイミングを検出する荷重センサ39及び印刷制御部11を備えている。そして、印刷制御部11は、交換タイミングを検出した場合には、スキージ交換処理を実行する。したがって、印刷装置10は、スキージ30が摩耗して交換が必要な場合にスキージ30を自動的に交換することができる。
そしてまた、搬送部(ここでは印刷移動部22,搬送ロッド38,及び搬送レール53)は、スキージ固定部24に固定されたスキージ30とはアタック角度の異なる1種類以上のスキージ30を収納する収納装置100との間で、収納されたスキージ30のうち少なくとも1つが取り付けられたスキージ搬送治具110の搬出入を行うように構成されている。そして、印刷制御部11は、印刷処理の印刷結果に関する印刷結果情報を撮像部90から入力し、印刷結果情報に基づいてスキージ固定部24に固定されたスキージ30のアタック角度が不適切と判定した場合に、スキージ交換処理を実行してスキージ30を異なるアタック角度のスキージ30に交換する。したがって、印刷装置10は、アタック角度の不適切なスキージ10を自動的に交換することができる。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
例えば、上述した実施形態では、スキージ固定部24は固定状態ではフランジ25bの上面と規制部材26の下面との間でスキージ30の取付部材32を挟持したが、これに限られない。例えば、フランジ25bの上面と、その真上のエアシリンダ25本体の下面とで、取付部材32を挟持してもよい。また、上述した実施形態では、スキージ固定部24はスキージ30を上下から挟持したが、これに限らず例えば前後から挟持してもよい。また、スキージ固定部24は挟持以外の態様でスキージ30を固定してもよい。
上述した実施形態では、印刷制御部11は、印刷処理部20が備える荷重センサ39が検出した荷重に基づいてスキージ30の交換タイミングを検出したが、これに限られない。例えば、印刷制御部11は、基板固定部60が備える荷重センサが検出した荷重に基づいて交換タイミングを検出してもよい。あるいは、印刷制御部11は、ステップS130で取得した基板Sの印刷結果情報に基づいて、スキージ30が摩耗して交換が必要であるとみなせる交換タイミングであるか否かを判定してもよい。また、交換タイミングは、スキージ30が摩耗して交換が必要であるとみなせるタイミングであればよく、スキージ30が実際に摩耗しているか否かを問わなくてもよい。例えば、印刷制御部11は、スキージ30をスキージ固定部24に取り付けてからの印刷装置10の稼働時間が所定の閾値を超えたときに、スキージ30が摩耗して交換が必要であるとみなしてそのスキージ30を交換してもよい。あるいは、印刷制御部11は、印刷処理を行った回数が所定の閾値を超えたときにスキージ30を交換してもよい。
上述した実施形態では、印刷制御部11は、印刷装置10が備える撮像部90が取得した印刷結果情報を入力したが、これに限られない。例えば、印刷制御部11は、印刷システム1において印刷装置10よりも基板Sの流れの下流に位置する別の印刷結果取得装置から、印刷結果情報を入力してもよい。あるいは、印刷制御部11は、管理PC150から印刷結果情報を入力してもよい。また、上述した実施形態では、印刷結果情報は撮像画像であり、印刷制御部11が入力した印刷結果情報に基づいてアタック角度が不適切か否かを判定したが、これに限られない。例えば、撮像部90又は印刷装置10の下流の印刷結果取得装置(例えば検査装置)がアタック角度の適否を判定してもよい。この場合、印刷制御部11は、印刷結果情報としてアタック角度が不適切か否かの情報を入力すればよい。
上述した実施形態では、スキージ30を交換するタイミングとして、スキージ30が摩耗して交換が必要であるとみなせる場合と、印刷結果に基づいてスキージ30のアタック角度が不適切な場合とを例示したが、これに限られない。例えば、印刷制御部11は、印刷対象を異なる種類の基板Sに変更するための段取り替えを行う際に、スキージ交換処理を行ってもよい。
上述した実施形態では、印刷制御部11は読取処理を印刷処理中に行ったが、これに限られない。例えば、印刷制御部11は、図5のステップ150,S170のスキージ交換処理の少なくとも一方を実行する際にまず読取処理を行ってもよい。あるいは、印刷制御部11は、読取処理を行わない代わりに、収納部102に収納されたスキージ30及びスキージ搬送治具110に関する情報を管理PC150から入力したり、作業者から表示操作部98を介して入力したりしてもよい。また、いずれの収納領域103に空き状態のスキージ搬送治具110を収納しておくかの規則が予め定められていたり、いずれの収納領域103にいずれの種類の交換用のスキージ30を収納しておくかの規則が予め定められていたりしてもよい。この場合、印刷制御部11は予めその規則を記憶しておき、作業者はその規則に従って収納領域103にスキージ30及びスキージ搬送治具110を収納すれば、印刷制御部11が読取処理を行わなくてもよい。
上述した実施形態では、印刷装置10が読取部97を備えていたが、これに限らず例えば収納装置100が読取部97を備えていてもよい。この場合、印刷制御部11の代わりに収納制御部106が上述した読取処理を行って、取得した情報を印刷制御部11に出力してもよい。この場合も、印刷制御部11による印刷処理を停止することなく収納制御部106が読取処理を行うことができる。
上述した実施形態では、スキージ搬送治具110にバーコード116が付されていたが、これに限らずスキージ30にバーコードが付されていてもよい。また、上述した実施形態ではバーコード116がスキージ搬送治具110に付されていたが、バーコードに限らず2次元コードなどが付されていてもよい。
上述した実施形態では、印刷制御部11はスキージ交換処理においてスキージ搬出処理を行う前にマスク搬出処理を行ったが、これに限られない。例えば、スクリーンマスク55を退避させなくともスクリーンマスク55よりも前方の領域でスキージ搬送治具110とスキージ固定部24とがスキージ30の受け渡しを行うことができる場合には、印刷制御部11はスキージ搬出処理の前にマスク搬出処理を行う必要はない。
上述した実施形態では特に説明しなかったが、印刷制御部11は、ステップS150及びステップS170のスキージ交換処理の開始時に、読取処理で取得した情報に基づいて、必要な交換用のスキージ30が収納装置100に収納されているか否かを判定してもよい。そして、印刷制御部11は、必要な交換用のスキージ30が収納されていないと判定したときには、表示操作部98と管理PC150との少なくとも一方にその旨を示すエラー情報を出力して、作業者にスキージ30が不足していることを報知してもよい。
上述した実施形態では、収納装置100は収納制御部106を備えており、印刷制御部11は収納制御部106に指令を出力することで間接的に収納装置100を制御したが、これに限らず収納制御部106を省略してもよい。この場合、例えば印刷制御部11が通信により搬送コンベア104及びコンベア昇降部105を直接制御すればよい。
上述した実施形態では、収納装置100は移動部を備え作業者により移動可能としたが、これに限らず移動部を備えなくてもよい。また、収納装置100は、移動部を駆動する駆動機構を有する自走可能なAGV(Automatic Guided vehicle:無人搬送車)として構成されていてもよい。この場合、収納装置100が交換用のスキージ30及びスキージ搬送治具110が保管された場所に移動して、交換用のスキージ30及びスキージ搬送治具110を収納部102に自動で収納してもよい。
上述した実施形態において、印刷装置10は、スキージ固定部24が固定状態にあるか否かと解除状態にあるか否かとの少なくとも一方を検出する状態検出部を備えていてもよい。この場合、印刷制御部11は、例えば固定状態に切り替わるようスキージ固定部24を制御した際に、この状態検出部の検出結果に基づいて、スキージ固定部24が正しく固定状態に切り替わったか否かを検知してもよい。こうすることで、印刷制御部11は、例えばホルダ112からのスキージ30の受取異常を検出することができる。同様に、印刷制御部11は、スキージ固定部24が正しく解除状態に切り替わったか否かを検知することで、ホルダ112へのスキージ30の引渡異常を検出することができる。状態検出部は、例えば、スキージ固定部24のエアシリンダ25のシリンダ軸25aの位置を検出するオートスイッチとしてもよい。
上述した実施形態では、印刷制御部11がスキージ30の自動交換を行ったが、これに限らず作業者がスキージ30の交換を行ってもよい。この場合でも、スキージ固定部24が固定状態と解除状態とを切り替えることでスキージ30の取り付けや取り外しが行われるため、例えば作業者がスキージを取り付けるネジの付け外しなどの手作業が不要になる。そのため、作業者の作業を低減することはできる。なお、作業者がスキージ30の交換を行う場合、印刷装置10は作業者がスキージ固定部24に固定状態と解除状態との切り替えを指示するための操作部を備えていてもよい。操作部は、例えば表示操作部98が有するボタンであってもよいし、スキージ固定部24に配設されたボタンであってもよい。
上述した実施形態では、スキージ30はいずれもオープンスキージとしたが、これに限らず密閉スキージであってもよい。また、スキージ固定部24はオープンスキージと密閉スキージとのいずれも取り付け可能であってもよい。また、スキージ固定部24は、スキージ以外の機能を有するヘッドも選択的に装着可能であってもよい。このようなヘッドとしては、例えば、粘性流体を基板S上に吐出するディスペンスヘッド、及び基板Sを撮像して検査を行う検査ヘッドなどが挙げられる。
本開示の印刷装置は、以下のように構成してもよい。
本開示の印刷装置において、前記スキージ移動部は、交換用の前記スキージの受取位置まで前記スキージ固定部を移動させるように構成され、前記スキージは、前記受取位置まで移動した前記スキージ固定部と当接して該スキージ固定部と該スキージとの位置決めを行う位置決め部材を有していてもよい。こうすれば、スキージ固定部が受取位置に向かって移動していくと、受取位置でスキージ固定部と交換用のスキージの位置決め部材とが当接して位置決めされる。そのため、この印刷装置では、スキージ固定部がスキージを固定する際の両者の位置ずれが抑制される。
本開示の印刷装置において、前記スキージ固定部は、前記固定状態で前記スキージと係合して該スキージ固定部に対する該スキージの少なくとも一方向への移動を規制する規制部材を有していてもよい。こうすれば、この印刷装置は、固定状態でのスキージとスキージ固定部との位置ずれを規制部材によって抑制できる。なお、この場合において、スキージが上述した位置決め部材を有している場合には、位置決め部材による位置決めが行われた状態で規制部材がスキージと係合する。そのため、規制部材とスキージの被係合部との位置ずれが抑制されて、両者がより確実に係合する。
本開示の印刷装置において、前記スキージ固定部は、前記固定状態では前記スキージを挟持して固定し前記解除状態では該固定状態に比して相対的に離間する第1挟持部材及び第2挟持部材を有していてもよい。こうすれば、この印刷装置は、第1挟持部材及び第2挟持部材の接近と離間を切り替えるという比較的簡易な構成で、固定状態と解除状態とを切り替えることができる。
この場合において、前記スキージ移動部は、交換用の前記スキージが取り付けられたホルダからの該スキージの受取位置まで前記スキージ固定部を移動させるように構成され、前記第1挟持部材は、前記スキージ固定部が前記受取位置にある状態で前記解除状態での位置から前記固定状態での位置に移動すると、該移動に伴って前記ホルダから取外可能である取外位置に交換用の前記スキージを移動させてもよい。こうすれば、スキージ固定部は、解除状態から固定状態への切り替えによって、スキージを固定するだけでなくスキージの取外位置への移動も行うことができる。そのため、例えば印刷装置がスキージの取外位置への移動とスキージの固定とを別々に行う場合と比較して、スキージの交換を効率よく行うことができる。
この場合において、前記スキージは、軸部材と該軸部材に形成されたフランジ部とを有しており、前記ホルダは、前記軸部材が通過可能な開口を有する支持部と、該支持部に形成され前記フランジ部が係合して前記スキージを固定する係合部とを有し、前記第1挟持部材は、前記スキージ固定部が前記受取位置にある状態で前記解除状態での位置から前記固定状態での位置に移動すると、該移動に伴って交換用の前記スキージを押し上げることで、前記フランジ部と前記係合部との係合を解除して該スキージを前記取外位置に移動させると共に第2挟持部材との間で該スキージを挟持して固定してもよい。
本開示の印刷装置は、交換用の前記スキージが取り付けられた搬送治具を搬送する搬送部と、スキージ交換処理を実行する交換制御部と、を備え、前記交換制御部は、前記スキージ交換処理において、前記スキージ移動部及び前記搬送部を制御して、前記搬送治具を搬入し前記スキージ固定部に固定されたスキージを該搬送治具への引渡位置まで移動させ、前記スキージ固定部を前記解除状態に切り替えて該スキージを該搬送治具に取り付け、該取り付け後の搬送治具を搬出するスキージ搬出処理と、前記スキージ移動部及び前記搬送部を制御して、交換用の前記スキージが取り付けられた搬送治具を搬入し前記スキージ固定部を該搬送治具からの該スキージの受取位置まで移動させ、該スキージを該搬送治具から取り外し前記スキージ固定部を前記固定状態に切り替えて該スキージを該スキージ固定部に固定し、該取り外し後の搬送治具を搬出するスキージ搬入処理と、を行ってもよい。こうすれば、この印刷装置はスキージの自動交換を行うことができるため、スキージの交換に関する作業者の作業をより低減することができる。
この場合において、前記搬送部及び前記スキージ移動部は、少なくとも一部が共通の機構であってもよい。こうすれば、印刷装置が搬送部とスキージ移動部とを全く別の機構として備える場合と比較して、印刷装置の部品点数を減らすことができる。
交換制御部がスキージ交換処理を実行する態様の本開示の印刷装置において、印刷装置は、前記スキージが摩耗して該スキージの交換が必要であるとみなせる交換タイミングを検出する検出部、を備え、前記交換制御部は、前記検出部が前記交換タイミングを検出した場合には、前記スキージ交換処理を実行してもよい。こうすれば、この印刷装置は、スキージが摩耗して交換が必要な場合にスキージを自動的に交換することができる。
交換制御部がスキージ交換処理を実行する態様の本開示の印刷装置において、前記搬送部は、前記スキージ固定部に固定されたスキージとはアタック角度の異なる1種類以上の前記スキージを収納する収納装置との間で、該収納されたスキージのうち少なくとも1つが取り付けられた搬送治具の搬出入を行うように構成され、前記交換制御部は、前記印刷処理の印刷結果に関する印刷結果情報を入力し、該印刷結果情報に基づいて前記スキージ固定部に固定されたスキージのアタック角度が不適切と判定した場合に、前記スキージ交換処理を実行して該スキージを異なるアタック角度のスキージに交換してもよい。こうすれば、この印刷装置は、アタック角度の不適切なスキージを自動的に交換することができる。