次に、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態である実装システム10の構成の概略の一例を示す構成図である。図2は、印刷装置20の印刷処理,マスク交換処理,及び支持部材交換処理を実行する構成であるマスク作業部26、第1基板固定部30、第2基板固定部40,処理部50及び収納部60の説明図である。図3は、印刷装置20の印刷処理等を実行する構成であるマスク作業部26、第1基板固定部30、第2基板固定部40及び処理部50の斜視図である。図4は、印刷装置20の電気的な接続関係を示すブロック図である。図5は、基板支持部材70及び搬送治具80の斜視図である。実装システム10は、粘性流体としてのはんだペーストを基板S上に印刷処理する印刷装置20と、電子部品を基板S上に実装する複数の図示しない実装装置と、印刷装置20や実装装置での処理に関する情報を管理する管理コンピュータ(PC)90とを備えている。粘性流体としては、はんだペーストのほか、例えば導電性ペースト、接着剤などが挙げられる。印刷装置20は、搬送された基板Sを固定する基板固定部を2つ有するデュアルレーンの印刷装置に構成されている。また、印刷装置20は、印刷対象を異なる種類の基板Sに変更する段取り替えを行う際に、印刷処理に用いるスクリーンマスクMの自動交換や、基板Sを支持固定する基板支持部材70の搬送治具80を用いた自動交換が可能な装置として構成されている。本実施形態において、左右方向(X軸)、前後方向(Y軸)及び上下方向(Z軸)は、図1~3に示した通りとする。
印刷装置20は、図1~4に示すように、スキージ25を用いてスクリーンマスクM上のはんだをスクリーンマスクMに形成されたパターン孔11,12に押し込むことによりそのパターン孔を介して下方の基板Sにはんだペーストを塗布(印刷)する装置である。印刷装置20は、制御部21と、印刷処理部22と、マスク作業部26と、第1基板固定部30と、第2基板固定部40と、処理部50と、収納部60とを備えている。また、印刷装置20は、表示画面が表示され作業者による各種入力操作が可能な操作パネルと、LANに接続された機器と通信を行う通信部とを備えている。
制御部21は、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、処理プログラムを記憶するROM、作業領域として用いられるRAM、各種データを記憶するHDDなどを備えている。
印刷処理部22は、印刷装置20の上段に配設されており、スクリーンマスクMを用いて粘性流体を基板S上に印刷処理するユニットである。印刷処理部22は、図4に示すように、印刷ヘッド23と、ヘッド移動部24と、スキージ25と、搬送ロッド25aとを備えている。印刷装置20は、スクリーンマスクM上へはんだペーストを加圧供給する印刷ヘッド23を備えている。ヘッド移動部24は、印刷ヘッド23を所定の印刷方向(前後方向)に移動するものであり、前後方向に形成されたガイドとガイドに沿って移動するスライダとスライダを駆動するモータとを備えている。ヘッド移動部24には、印刷ヘッド23を上下動させる機構も配設されている。スキージ25は、上下動可能に印刷ヘッド23に配設されている。このスキージ25は、所定方向(図1のX方向)に長い板状の部材であり、パターン孔11,12よりも長い長さに形成されている。搬送ロッド25aは、図示しないモーターにより昇降可能に印刷ヘッド23に配設されている。この搬送ロッド25aは、スキージ25よりも下方に突出した状態でヘッド移動部24により前後に移動することで、スクリーンマスクMや搬送治具80を前後に押して搬送する。
マスク作業部26は、印刷処理部22と、第1基板固定部30及び第2基板固定部40との間に配設されており、スクリーンマスクMを固定保持するユニットである。スクリーンマスクMは、所望の配線パターンが形成された、例えば金属の薄板であり、枠体(マスク固定部27)に所定のテンションで固定されている。スクリーンマスクMには、印刷処理の第1,第2レーン(第1,第2基板固定部30,40)の基板Sにそれぞれ配線パターンを形成するパターン孔11,12が形成されている。スクリーンマスクMの下面には位置認識用の識別部(例えばマーク)が形成されている。マスク作業部26は、マスク固定部27と、位置調整部28(図4参照)と、搬送レール29(図4参照)とを備えている。マスク固定部27は、枠体にはめ込まれた状態のスクリーンマスクMを位置決めして水平な姿勢で支持固定するものである。位置調整部28は、第1基板固定部30又は第2基板固定部40に固定された基板Sに対して適正な位置にパターン孔11,12が配置されるようマスク固定部27をXY方向に位置調整するものである。搬送レール29は、前後方向に伸びた左右1対のレールであり、搬送ロッド25aに押されたスクリーンマスクMや搬送治具80が前後方向に沿って移動するようにこれらをガイドする。
第1基板固定部30は、マスク作業部26の下方に配設され、基板Sを搬入し、搬入した基板Sを位置決めして支持し、所定の配線パターンが形成されたスクリーンマスクMに接触,離間させるユニットである。第1基板固定部30は、印刷処理の第1レーンを構成する。第1基板固定部30は、基板搬送コンベア31と、基板ガイド32と、基板ガイド移動部33(図4参照)と、支持台昇降部35と、固定部昇降部36と、支持台37と、Y軸押圧部38と、Z軸クランプ部39と、を備えている。基板搬送コンベア31は、図2に示すように、1対のサイドフレーム30bの各々に設けられたコンベヤベルトと、コンベヤベルトを周回駆動させるベルト周回装置とを備えている。なお、印刷装置20は、図示は省略したが、基板搬送コンベア31の基板搬送経路の上流側及び下流側(図1の左右側)にもそれぞれ搬入コンベアと搬出コンベアとが内設されている。基板ガイド32は、1対のサイドフレーム30bの各々の上面に設けられた板状部材である。基板ガイド移動部33は、1対のサイドフレーム30bを前後方向に移動させて互いに接近・離間させる機構である。これにより、基板ガイド32も前後方向に移動し、基板Sの上面と基板ガイド32の上面とが面一の状態で基板Sを挟み固定する。支持台昇降部35は、第1基板固定部30の本体30aに対して支持台37を昇降する機構であり、支持台37を上下方向に導きこれを支持する支柱と、支柱を上下動させる駆動モータとを備える。支持台37は、基板支持部材70を配置可能な部材である。基板支持部材70は、基板Sに応じて交換される。
基板支持部材70は、支持台37上に配置され、図示しない減圧装置に配管で接続されて、負圧により基板Sを下面側から支持しつつ吸着固定する部材である。基板支持部材70は、図5に示すように、本体部70aと、本体部70aの左右から突出するように配設された円柱状の一対の突起部71,71と、突起部71よりも前方に配設された一対の突起部72,72と、本体部70aの上面に開口する複数の吸引口73と、傾斜した上面を有し本体部70aの後方に突出している被クランプ部74と、を備えている。また、本体部70aの上面には、位置認識用の識別部75(例えばマーク)と、基板支持部材70の種別認識用のバーコード76とが形成されている。
固定部昇降部36は、装置本体に対して第1基板固定部30の全体を昇降する機構であり、第1基板固定部30の本体を上下方向に導きこれを支持する支柱と、支柱を上下動させる駆動モータとを備える。Y軸押圧部38(図2参照)は、基板支持部材70の位置決めに用いられる機構であり、支持台37に配設されている。Y軸押圧部38は、前後方向に移動可能であり基板支持部材70を後方に押圧して移動させるブロック状の本体と、本体を前後に移動させる図示しないシリンダーなどの駆動機構とを備えている。また、Y軸押圧部38は基板支持部材70への負圧の供給機構も兼ねており、本体の後方には、図示しない減圧装置に配管で接続された吸引口が配設されている。Y軸押圧部38の本体が基板支持部材70に押圧されることで、減圧装置から吸引口73までの経路が接続され、負圧が吸引口73に供給される。Z軸クランプ部39は、基板支持部材70の固定に用いられる機構であり、後方のサイドフレーム30bに配設されている。Z軸クランプ部39は、上下方向に移動可能なブロック状の本体と、本体を上下に移動させるシリンダーなどの駆動機構とを備えている。下方に移動したZ軸クランプ部39の本体は、支持台37と共に基板支持部材70の被クランプ部74を挟持して基板支持部材70を固定する。また、Z軸クランプ部39の前方には上下左右方向に沿った支持板39aが配設されている。基板ガイド移動部33によりサイドフレーム30bが前後に移動すると、Z軸クランプ部39及び支持板39aも前後に移動し、これにより基板支持部材70の前後方向の固定位置が変更できるようになっている。
第2基板固定部40は、第1基板固定部30に併設され、第1基板固定部30と同様に基板Sを搬送固定するユニットである。第2基板固定部40は、印刷処理の第2レーンを構成する。この第2基板固定部40は、本体40a、サイドフレーム40bを有し、基板搬送コンベア41、基板ガイド42、基板ガイド移動部43、支持台昇降部45、固定部昇降部46、支持台47、Y軸押圧部48及びZ軸クランプ部49を備えている。また、支持台47には基板支持部材70を配置可能である。この第2基板固定部40は、基本構成が第1基板固定部30と同様であるものとしてその説明を割愛する。印刷装置20は、第1基板固定部30と第2基板固定部40との2つの基板搬送装置と、1つのマスク作業部26とを備えた構成となっている。
処理部50は、基板S上に形成された位置認識用の識別部(例えばマークや切り欠き、凹凸、文字など)などを撮像する撮像処理を実行するユニットである。この処理部50は、キャリッジ51と、処理部移動部52と、位置情報取得部55と、を備えている。また、処理部50は、基板搬送コンベア31,41により右方向に搬送された基板Sを左右方向の所定位置で停止させるための基板ストッパー56を備えている。キャリッジ51は、位置情報取得部55と基板ストッパー56とが配設されており、処理部移動部52によってXY方向に移動する。処理部移動部52は、X軸スライダ53とY軸スライダ54とを備えている。Y軸スライダ54は、X軸方向を長手方向とする板状部材であり、装置のY軸方向(前後方向)に形成された支持レール58に沿って移動モータにより移動する。X軸スライダ53は、キャリッジ51が配設されており、Y軸スライダ54上でX軸方向に形成されたガイドに沿って移動モータにより移動する。この処理部50は、第1レーンである第1基板固定部30の領域(第1領域ともいう)と、第2レーンである第2基板固定部40の領域(第2領域ともいう)と、これらから外れた退避領域(図1~3参照)とのいずれかに移動する。位置情報取得部55は、基板Sに形成された識別部と、スクリーンマスクMの下面に形成された識別部と、基板支持部材70の識別部75とを撮像可能であり、撮像によりこれらの位置情報を取得するユニットである。位置情報取得部55は、その下面側と、その上面側とが撮像領域である。基板ストッパー56は、例えば棒状の部材であり、図示しないモーターにより昇降可能にキャリッジ51に配設されている。この基板ストッパー56は、第1,第2基板固定部30,40の上方で支持レール58よりも下方に突出した状態となることにより、基板搬送コンベア31,41により基板支持部材70の上方に搬送された基板Sに当接して、基板Sを停止させる。
収納部60は、印刷装置20本体の後方に配設されており、スクリーンマスクMや基板支持部材70の自動交換の際に交換対象(搬入対象及び搬出対象)の部材を収納する機構である。収納部60は、前方が開口した収納箱と、収容箱を昇降させるコンベア昇降部62と、を備えている。収容箱内には、載置された物体を前後方向に搬送する一対の搬送コンベア61が上下に複数段(本実施形態では4段)配設されている。4段の搬送コンベア61のうち3つには、マスク作業部26への搬入対象のスクリーンマスクMと、第1,第2基板固定部30,40への搬入対象の基板支持部材70が取り付けられた搬送治具80と、第1,第2基板固定部30,40からの搬出対象の基板支持部材70を取り付けるための搬送治具80と、が予め作業者によって収納されている。また、残り1段の搬送コンベア61は、マスク作業部26からの搬出対象のスクリーンマスクMを収納できるように空けられている。この収納部60は、コンベア昇降部62によっていずれかの搬送コンベア61の上面が搬送レール29の上面と同じ高さになるようにし、その状態で搬送コンベア61を動作させることで、搬送コンベア61上に載置された部材をマスク作業部26内に搬入したり、マスク作業部26から部材を搬出したりする。
搬送治具80は、搬送コンベア61や搬送ロッド25aを用いて基板支持部材70を搬送可能にするための部材である。搬送治具80は、図5に示すように、枠体85の内側に第1~第4突起保持部81~84が後方から前方に向かってこの順で配設されている。第1~第4突起保持部81~84は、それぞれ左右方向に1対ずつ配設されており、枠体85の下方に伸びる腕部の先端に配設されている。搬送治具80は、図2に示すように、第1,第2突起保持部81,82により基板支持部材70を1つ取り付け可能であり、第3,第4突起保持部83,84により基板支持部材70を1つ取り付け可能である。第1~第4突起保持部81~84の上面には基板支持部材70の突起部71や突起部72の外径よりもわずかに大きい凹部が形成されている。この凹部に突起部71,72が載置されることで、搬送治具80は基板支持部材70の前後方向の位置を固定しつつ搬送可能である。なお、基板支持部材70は、支持する基板Sの種別に応じて複数種が存在するが、いずれも突起部71,72の外径は同じとした。また、第2突起保持部82,第4突起保持部84は前後方向の位置を調整することができ、これにより大きさ(突起部71,突起部72間の距離)の異なる複数種の基板支持部材70を取り付け可能である。搬送治具80は、スクリーンマスクMのマスク固定部27と左右方向の幅が略同一になっている。これにより、搬送治具80はスクリーンマスクMと同じ搬送レール29に沿って搬送可能である。また、搬送治具80とスクリーンマスクMとで同じ収納部60を用いることができるため、搬送治具80とスクリーンマスクMとの前後方向の長さが近い方が好ましい。なお、搬送治具80には枠体85や突出保持部の大きさなどが異なる複数種類が存在していてもよく、枠体85の上面には搬送治具80の種別認識用のバーコード86が取り付けられている。
次に、印刷装置20がスクリーンマスクMや基板支持部材70の自動交換を実行しつつ基板Sに印刷処理を実行する処理について説明する。図6は、制御部21のCPUが実行する印刷処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。図7~9は、スクリーンマスクM及び基板支持部材70の交換処理の様子を示す説明図である。図10は、基板Sの搬送、吸着、及び印刷処理の説明図である。
印刷処理ルーチンは、制御部21のHDDに記憶され、作業者が印刷装置20に印刷処理を指示したあと実行される。印刷処理ルーチンを実行すると、制御部21のCPUは、まず、マスク作業部26に存在するスクリーンマスクMや第1,第2基板固定部30,40に存在する基板支持部材70の交換処理、すなわち段取り替えが必要か否かを判定する(ステップS100)。制御部21は、例えば管理PC90から取得した印刷処理に関する情報に基づいて、印刷処理に必要なスクリーンマスクMや基板支持部材70が前回と今回とで異なるか否かによって、段取り替えが必要か否かを判定する。なお、段取り替えが必要な場合、図2に示したように収納部60には、搬入対象のスクリーンマスクMと、搬入対象の基板支持部材70が取り付けられた搬送治具80と、搬出対象の基板支持部材70を取り付けるための搬送治具80と、が予め作業者によって収納されているものとする。なお、作業者は、必要に応じてバーコード76やバーコード86をバーコードリーダーで読み取って正しい部材が収納部60に収納されているかの照合を行う。また、作業者は、搬出対象の基板支持部材70を取り付けるための搬送治具80については、予め第2突起保持部82及び第4突起保持部84の前後方向の位置を調整しておく。
ステップS100で段取り替えが必要な場合には、制御部21は、搬出対象のスクリーンマスクMのマスク作業部26から搬出するマスク搬出処理を行う(ステップS110)。制御部21は、搬送ロッド25aを移動させて、図7(a)に示すようにマスク作業部26に存在する搬出対象のスクリーンマスクMを搬送レール29に対して摺動させつつ後方に搬送する。また、コンベア昇降部62及び搬送コンベア61を制御して、空いている搬送コンベア61に搬出対象のスクリーンマスクMを載置する。なお、基板支持部材70の交換処理を行うためにはマスク作業部26内のスクリーンマスクMを一度搬出する必要があるため、制御部21は、スクリーンマスクMが交換対象ではない場合でもスクリーンマスクMの搬出処理を行う。
続いて、制御部21は、搬出対象の基板支持部材70を第1,第2基板固定部30,40から搬出する支持部材搬出処理を行う(ステップS120)。制御部21は、まず、コンベア昇降部62及び搬送コンベア61を制御して空の搬送治具80を搬送レール29上に搬入し、さらに搬送ロッド25aを前方に移動させて第1,第2基板固定部30,40の上方まで搬送治具80を搬送する(図7(b))。このとき、制御部21は、第1~第4突起保持部81~84が基板支持部材70の突起部71,72の直上から前後方向(例えば後方)にずれて位置するようにする。続いて、制御部21は、支持台37,47上の基板支持部材70の固定を解除する。具体的には、制御部21は、Y軸押圧部38,48を前方に移動させ、Z軸クランプ部39,49を上方に移動させると共に、基板ガイド移動部33,43により一対のサイドフレーム30b,40bを前後に離間させる(図7(c))。次に、制御部21は、支持台昇降部35,45及び固定部昇降部36,46により支持台37,47上の基板支持部材70をそれぞれ上昇させる(図8(a))。これにより、基板支持部材70の突起部71,72が第1~第4突起保持部81~84よりも上方まで上昇する。続いて、制御部21は、搬送ロッド25aにより搬送治具80を前方に移動させて、支持台37上の基板支持部材70の突起部71,72の真下に第1,第2突起保持部81,82が位置し、支持台47上の基板支持部材70の突起部71,72の真下に第3,第4突起保持部83,84が位置するようにする(図8(b))。そして、制御部21は、支持台37,47を下降させる。これにより、2つの基板支持部材70は突起部71,72が第1~第4突起保持部81~84上に保持されて、搬送治具80に取り付けられた状態になる(図8(c))。その後、制御部21は、固定部昇降部36,46により第1,第2基板固定部30,40全体を下降させて、搬出対象の2つの基板支持部材70が取り付けられた搬送治具80を搬送ロッド25aにより後方に移動させる(図9)。そして、制御部21は、基板支持部材70が取り付けられた搬送治具80をそのまま空いている搬送コンベア61に載置する。以上のように、制御部21は、搬送治具80の前後の搬送と支持台37,47の昇降とを組み合わせて、基板支持部材70の支持部材搬出処理を行う。
ステップS120の支持部材搬出処理のあと、制御部21は、搬入対象の基板支持部材70を第1,第2基板固定部30,40に搬入する支持部材搬入処理を行う(ステップS130)。この処理は、上述した支持部材搬出処理と逆の手順で行うことができる。すなわち、制御部21は、まず、搬入対象の基板支持部材70が2つ取り付けられた搬送治具80を前方に搬送し(図9)、基板支持部材70を支持台37,47の上方まで搬送し(図8(c))、支持台37,47を上昇させて突起部71,72を第1~第4突起保持部81~84から浮き上がらせる(図8(b))。続いて、制御部21は、搬送治具80を後方に移動させてから(図8(a))、支持台37,47を下降させる(図7(c))。次に、制御部21は、搬送治具80を後方に移動させて搬出すると共に、支持台37,47上で基板支持部材70を位置決めして固定する(図7(b))。具体的には、まず、制御部21は、基板ガイド移動部33,43により一対のサイドフレーム30b,40bを前後に接近させて、支持板39a,49aを所定位置まで移動させる。支持板39a,49aを移動させる前後方向の位置は、印刷対象の基板Sの種類や基板支持部材70の種類などに応じて予め定められており、例えば管理PC90から取得する。続いて、制御部21は、Y軸押圧部38,48を後方に移動させて、支持台37,47上の基板支持部材70をそれぞれ支持板39a,49aに当接するまで後方に移動させる。このように、支持板39a,49aとY軸押圧部38,48とを前後に移動させることで、搬送治具80から取り外した基板支持部材70の位置が前後にずれていたとしても、基板支持部材70を適切な位置に位置決めすることができる。基板支持部材70をそれぞれ支持板39a,49aに当接させると、制御部21は、Z軸クランプ部39,49を下方に移動させて被クランプ部74を押圧させ、支持台37,47上の基板支持部材70の位置を固定する。以上のように、制御部21は、搬送治具80の前後の搬送と支持台37,47の昇降とを組み合わせて、基板支持部材70の支持部材搬入処理を行う。また、制御部21は、基板支持部材70の前後方向の位置決めを行う。
ステップS130の支持部材搬出処理のあと、制御部21は、搬入対象のスクリーンマスクMをマスク作業部26に搬入するマスク搬入処理を行う(ステップS140)。制御部21は、マスク搬出処理とは逆の手順でこの処理を行う。すなわち、制御部21はまずコンベア昇降部62及び搬送コンベア61を制御して搬入対象のスクリーンマスクMを搬送レール29上まで搬送し、搬送ロッド25aによりスクリーンマスクMを前方に移動させてマスク作業部26に搬入する。なお、スクリーンマスクMが交換対象でない場合には、マスク搬出処理で搬出したスクリーンマスクMを搬入する。
ステップS110~S140の処理を行ってスクリーンマスクM及び基板支持部材70の交換処理が終了すると、制御部21は、搬入した基板支持部材70の左右方向の位置情報を取得し(ステップS150)、取得した位置情報に基づいて基板Sの停止位置の補正値を決定する(ステップS160)。制御部21は、図10(a)に示すようにキャリッジ51を支持台37の上方に移動させ、基板支持部材70の上面の識別部75を位置情報取得部55に撮像させる。そして、制御部21は、位置情報取得部55から取得した画像における識別部75の位置に基づいて、支持台37上での基板支持部材70の左右方向(基板Sの搬送方向)の位置ずれを求め、基板Sの搬送時の停止位置の補正値を導出してRAMなどに記憶する。ここで、支持台37上で基板支持部材70が基板Sの搬送方向にずれていると、基板Sの停止位置によっては基板Sの吸着固定に不具合が生じる場合がある。制御部21は、基板支持部材70の位置が左右方向にずれていた場合には、その分だけ基板Sの停止位置も補正して、基板支持部材70と基板Sとの位置関係が変わらないようにするのである。制御部21は、支持台47上の基板支持部材70についても、同様に位置情報の取得及び補正値の導出を行う。
ステップS160の後、又はステップS100で段取り替えが不要な場合には、制御部21は、基板搬送コンベア31を駆動して第1基板固定部30(第1レーン)へ基板Sを搬送させ、基板Sを基板支持部材70に吸着させる(ステップS170)。第1基板固定部30へ基板Sを搬送させる際には、制御部21は、キャリッジ51を前後左右に移動させると共に基板ストッパー56を下降させ、右方に搬送されてきた基板Sを基板支持部材70上の所定の停止位置で停止させる(図10(b))。このとき、ステップS160で導出した補正値があるときには、補正値を加味した位置に基板ストッパー56を移動させる。また、制御部21は、支持台37を上昇させて、停止した基板Sの下面に基板支持部材70の上面を当接させ、減圧装置からの負圧により基板Sを吸着固定する。
続いて、制御部21は、位置情報取得部55により基板S及びスクリーンマスクMの識別部の撮像処理を行い(ステップS180)、得られた画像に基づいて基板SとスクリーンマスクMのパターン孔11とが適正な位置になるよう位置調整を行う(ステップS190)。そして、制御部21は、第1基板固定部30での印刷を開始する(ステップS200、図10(c))。制御部21は、第1基板固定部30を上昇させて基板Sの上面とスクリーンマスクMの下面に当接させる。そして、第1レーン側のスクリーンマスクM上に印刷ヘッド23を移動し、印刷ヘッド23からはんだペーストを加圧吐出させ、スキージ25を前後に移動させてはんだペーストを基板S上に印刷する。
第1基板固定部30での印刷処理の後、制御部21は、生産処理が完了したか否かを、次に印刷すべき基板Sがあるか否かに基づいて判定する(ステップS210)。生産処理が完了していないときには、第2基板固定部40を用いて基板Sの搬送やスクリーンマスクMの位置調整、印刷処理などを行う(ステップS220~250)。この処理は、上述した第1基板固定部30での処理(ステップS170~200)と同様であるため、具体的な説明を省略する。ステップS250の後、制御部21は、生産が完了したか否かを判定し(ステップS260)、完了していないときにはステップS100移行の処理を実行する。すなわち、必要に応じて段取り替えを行いながら、第1,第2基板固定部30,40に固定した基板Sへの印刷処理を順次実行する。ステップS210又はS260で生産処理が完了したときには、制御部21は本ルーチンを終了する。
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の搬送ロッド25aが本発明の支持部材搬送部に相当し、制御部21が交換制御部に相当する。また、第1,第2基板固定部30,40が基板固定部に相当し、Y軸押圧部38,48,基板ガイド移動部33,43,及び支持板39a,49aが位置決め部に相当し、基板搬送コンベア31,41が基板搬送部に相当し、位置情報取得部55が位置情報取得部に相当し、制御部21及び基板ストッパー56が補正部に相当し、支持台37,47が支持台に相当し、支持台昇降部35,45及び固定部昇降部36,46が支持部材昇降部に相当し、搬送治具80が搬送治具に相当する。
以上詳述した実施形態の印刷装置20は、スクリーンマスクM及び基板支持部材70を搬出入する支持部材搬送部(搬送ロッド25a)を備えている。そして、この印刷装置20では、この搬送ロッド25aを用いて、基板支持部材70の搬出及び搬入を含む支持部材交換処理(ステップS120,S130)を実行可能であり、基板支持部材70の自動交換を行うことができる。また、この印刷装置20は、搬送ロッド25aを用いて、スクリーンマスクMの搬出及び搬入を行うマスク交換処理(ステップS110,S140)を行うこともできる。すなわち、同じ搬送ロッド25aを用いて基板支持部材70の自動交換とスクリーンマスクMの自動交換とを共に行うことができる。したがって、例えば印刷装置20がスクリーンマスク交換用の搬送部と基板支持部材交換用の搬送部とを別々に備える場合と比較して、装置構成をコンパクトにすることができる。
また、印刷装置20は、基板支持部材70を配置可能であり、印刷処理を行う際に配置された基板支持部材70により基板Sを固定する第1,第2基板固定部30,40と、第1,第2基板固定部30,40に配置された基板支持部材70を移動させて基板支持部材の水平方向の位置決めを行う位置決め部(Y軸押圧部38,48,基板ガイド移動部33,43,及び支持板39a,49a)と、を備えている。そして、制御部21は、支持部材搬入処理において、搬送ロッド25aを制御して搬入対象の基板支持部材70を第1,第2基板固定部30,40まで搬送し、Y軸押圧部38,48,基板ガイド移動部33,43,及び支持板39a,49aを制御して搬送された基板支持部材70の前後方向の位置決めを行う。したがって、支持部材搬入処理で搬入された基板支持部材70の第1,第2基板固定部30,40内での前後方向の位置ずれを抑制できる。
さらに、印刷装置20は、第1,第2基板固定部30,40と、基板Sを所定の基板搬送方向(左右方向)に搬送する基板搬送コンベア31,41と、第1,第2基板固定部30,40に配置された基板支持部材70の基板搬送方向の位置に関する位置情報を取得する位置情報取得部55と、を備えている。そして、印刷装置20は、取得された位置情報に基づいて、基板搬送コンベア31,41が基板Sを搬送する際の基板支持部材70上の停止位置を補正する補正部(制御部21及び基板ストッパー56)を備えている。これにより、支持部材搬入処理で第1,第2基板固定部30,40に搬入された基板支持部材70の位置が基板搬送方向にずれていた場合でも、位置情報に基づいて基板Sの停止位置を補正できる。したがって、基板支持部材70による基板Sの固定に不具合が生じるのを抑制できる。
さらにまた、印刷装置20は、基板支持部材70を配置可能な支持台37,47を有し、印刷処理を行う際に配置された基板支持部材70により基板Sを固定する第1,第2基板固定部30,40と、支持台37,47を昇降させることで支持台37,47に配置された基板支持部材70を昇降させる支持台昇降部35,45及び固定部昇降部36,46と、を備えている。そして、搬送ロッド25aは、基板支持部材70を取り付け可能な搬送治具80を搬出入し、制御部21は、支持部材搬出処理において、搬送ロッド25a及び支持台昇降部35,45,固定部昇降部36,46を制御して、搬送治具80を搬送して第1,第2基板固定部30,40の上方まで搬送し、支持台37,38に配置された搬出対象の基板支持部材70を上昇させて搬送治具80に取り付け、取り付け後の搬送治具80を搬出する処理を行う。また、制御部21は、支持部材搬入処理において、搬送ロッド25a及び支持台昇降部35,45,固定部昇降部36,46を制御して、搬入対象の基板支持部材70が取り付けられた搬送治具80を第1,第2基板固定部30,40の上方まで搬送し、支持台37,47を上昇させて搬入対象の基板支持部材70を搬送治具80から取り外して支持台37,47上に配置し、取り外し後の搬送治具80を搬出する処理を行う。こうすれば、例えば基板支持部材70の形状や大きさが搬送ロッド25aによる搬送に適さない場合でも、搬送治具80を用いて基板支持部材70を搬送することで支持部材交換処理を行うことができる。本実施形態の印刷装置20では、搬送ロッド25aがスクリーンマスクMと基板支持部材70とを共に搬送するが、スクリーンマスクMよりも基板支持部材70は左右方向の幅が小さいため、搬送レール29上を摺動させて基板支持部材70を直接搬送ロッド25aにより搬送することはできない。このようにスクリーンマスクMと基板支持部材70との形状や大きさが異なる場合に、搬送治具80を用いる意義が高い。
そしてまた、印刷装置20は、基板固定部として第1基板固定部30と第2基板固定部40とを有しており、支持部材昇降部として支持台37を昇降させる第1支持部材昇降部(支持台昇降部35及び固定部昇降部36)と、支持台47を昇降させる第2支持部材昇降部(支持台昇降部45及び固定部昇降部46)と、を有している。また、搬送ロッド25aは、基板支持部材70を複数取り付け可能な搬送治具80を搬出入する。そして、制御部21は、支持部材搬出処理において、搬送ロッド25a及び支持台昇降部35,45,固定部昇降部36,46を制御して、搬送治具80を搬入し、支持台37,47に配置された搬出対象の基板支持部材70の各々を上昇させて搬送治具80に取り付け、取り付け後の搬送治具80を搬出する処理を行う。また、制御部21は、支持部材搬入処理において、搬送ロッド25a及び支持台昇降部35,45,固定部昇降部36,46を制御して、支持台37,支持台47にそれぞれ配置する搬入対象の基板支持部材70が取り付けられた搬送治具80を搬入し、支持台37,47を上昇させて搬入対象の基板支持部材70の各々を搬送治具80から取り外して支持台37,47上にそれぞれ配置し、取り外し後の搬送治具80を搬出する処理を行う。これにより、制御部21は、支持台37に配置される基板支持部材70の交換と支持台47に配置される基板支持部材70の交換とを並行して行う。こうすることで、1回の搬送治具80の搬出入で支持台37,47に配置された搬出対象の基板支持部材70を共に搬出でき、1回の搬送治具80の搬出入で支持台37,47に配置する搬入対象の基板支持部材70を共に搬入できるため、支持部材交換処理に要する時間を短縮できる。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
例えば、上述した実施形態では、制御部21は、2つの基板支持部材70を取り付け可能な搬送治具80を用いて、支持台37に配置される基板支持部材70の交換と支持台47に配置される基板支持部材70の交換とを並行して行ったが、これに限られない。例えば、支持台37,47上のいずれか一方の基板支持部材70のみを交換してもよい。また、この場合、制御部21は、支持部材搬入処理と支持部材搬出処理とを並行して行ってもよい。図11は、支持部材搬入処理と支持部材搬出処理とを並行して行う様子を示す説明図である。ここでは、第2基板固定部40の基板支持部材70を交換する場合について説明する。制御部21は、まず、搬入対象の基板支持部材70が取り付けられた搬送治具80を第2基板固定部40の上方まで搬送する(図11(a))。続いて、制御部21は、支持台47に配置された搬出対象の基板支持部材70を上昇させて搬送治具80に取り付ける(図11(b)。次に、制御部21は、取り付け後の搬送治具80をさらに前方に搬送して支持台47の上方に搬入対象の基板支持部材70を搬送し、支持台47を上昇させて搬入対象の基板支持部材70を搬送治具80から取り外して支持台47上に配置する(図11(c)。そして、制御部21は、取り外し後の搬送治具80(搬出対象の基板支持部材70が取り付けられた搬送治具80)を後方に搬出する。こうすれば、1回の搬送治具80の搬出入で基板支持部材70の搬出と搬入とを行うことができる。したがって、支持部材交換処理に要する時間を短縮できる。
上述した実施形態では、印刷装置20は、搬送ロッド25aを用いてスクリーンマスクMと基板支持部材70とを共に搬出入可能であったが、これに限られない。基板支持部材70の搬出入を行う支持部材搬送部を備えていれば、少なくとも基板支持部材交換処理を行うことはできる。また、この場合でも、第1,第2基板固定部30,40に配置された基板支持部材70を移動させて基板支持部材の水平方向の位置決めを行うことで、基板支持部材70の第1,第2基板固定部30,40内での前後方向の位置ずれを抑制する効果が得られる。なお、上述した実施形態では基板支持部材70の交換を行う印刷装置20として説明したが、基板支持部材交換処理を行うものであれば、印刷装置に限られない。本発明は、基板支持部材上に固定された基板に対して対基板作業を行う対基板作業装置について、適用可能である。印刷装置以外の対基板作業装置としては、例えば、基板上への部品の実装処理を行う実装装置が挙げられる。また、上述した実施形態では、印刷装置20は、支持部材搬送部として搬送ロッド25aを備えていたが、基板支持部材70の搬出入を行うことができれば、どのような支持部材搬送部を備えていてもよい。例えば、支持部材搬送部は、コンベヤベルトとコンベヤベルトを周回駆動させるベルト周回装置とを備えた支持部材搬送コンベアであってもよい。
上述した実施形態では、搬送治具80を用いて基板支持部材70を搬送したが、例えば搬送レール29と搬送ロッド25aとを用いて基板支持部材70を搬送可能であれば、搬送治具80を用いなくてもよい。
上述した実施形態では、Y軸押圧部38,基板ガイド移動部33,及び支持板39aを用いて基板支持部材70の前後方向の位置決めを行うものとしたが、水平方向の位置決めを行うものであればこれに限られない。例えば、前後方向の位置決めに加えて又は代えて、左右方向の位置決めもおこなってもよい。
上述した実施形態では、基板支持部材70の突起部71,72は円柱状としたが、搬送治具80への取り付け及び取り外しができればこれに限られない。例えば、突起部は四角柱形状としてもよいし、板状としてもよいし、2本の円柱を隣接させた1つの部材としてもよい。また、突起部の数も、左右に2本ずつとしたが、これに限らず左右の各々に1本や3本以上の突起部があってもよい。
上述した実施形態では、第1~第4突起保持部81~84は凹部により突起部71,72を保持したが、搬送治具80への取り付け及び取り外しができればこれに限られない。例えば、搬送治具80が枠体85の内側に突出する一対の板状部材を備えているものとし、この板状部材の上面に突起部71,72を載置することで搬送治具80への基板支持部材70の取り付けを行ってもよい。また、搬送治具80から基板支持部材70を取り外す際には、基板支持部材70の上昇と搬送治具80の搬送とを組み合わせたが、これに限られない。例えば、搬送治具80が、下方に押下可能なボタンと、ボタンの上下に伴って軸回転し上下方向の運動を左右方向の運動に変換するレバーと、レバーの回転に伴って左右方向に移動する板状部材と、を備えた板状部材移動機構を備えていてもよい。この場合、前後一対の板状部材移動機構の板状部材に基板支持部材70を載置して搬送し、例えば搬送ロッド25aなどで一対の板状部材移動機構のボタンを押下して一対の板状部材を左右に離間させ、これにより搬送治具80から基板支持部材70を取り外してもよい。このような機構を採用すれば、搬送治具80から基板支持部材70を取り外す際に搬送治具80を前後に搬送する動作は必要ない。
上述した実施形態では、印刷装置20は収納部60を備えるものとしたが、印刷装置20が収納部60を備えなくてもよい。また、印刷装置20は、第1,第2基板固定部30,40を有するデュアルレーンの印刷装置としたが、これに限られない。例えば、印刷装置20は、基板固定部を1つ有するシングルレーンの印刷装置としてもよい。
上述した実施形態では、基板支持部材70は、負圧により基板Sを下面側から支持しつつ吸着固定する部材としたが、基板を固定する部材であればよい。例えば、基板支持部材は、基板支持部材は上面に立設された複数の突起部(バックアップピン)を備えており、基板支持部材がこの突起部により基板Sを下方から支持及び固定してもよい。