以下、本発明に係る複合管の一例である実施形態について、図面を適宜参照しながら詳細に説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。なお、以下に説明する実施形態において重複する説明及び符号については、省略する場合がある。なお、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
本明細書において「工程」との語には、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その目的が達成されるものであれば、当該工程も本用語に含まれる。本明細書において、組成物中の各成分の量は、各成分に該当する物質が組成物中に複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。本明細書において、「主成分」とは、特に断りがない限り、混合物中における質量基準の含有量が最も多い成分をいう。
<複合管>
本発明に係る複合管は、管状の管体と、管状とされて管体の外周を覆う被覆層と、管体と被覆層との間に配置される多孔質樹脂層と、を有する。管体は、樹脂材料で構成される。被覆層は、樹脂材料で構成される。また、その形状は、径方向外側へ凸となる環状の山部と、径方向外側が凹となる環状の谷部とが、管体の軸方向に交互に形成されて蛇腹状とされ、管体の外周にガイドされつつ軸方向に短縮可能とされる。多孔質樹脂層は、谷部と管体との間に挟持されるよう配置される。
次いで、本発明の複合管を実施するための形態を、一例を挙げ図面に基づき説明する。図1に示される本実施形態に係る複合管10は、管体12、多孔質樹脂層14、及び被覆層20を備えている。
(管体)
管体12は、管状とされ、樹脂材料で構成される樹脂管である。樹脂材料における樹脂としては、例えば、ポリブテン、ポリエチレン、架橋ポリエチレン、及びポリプロピレン等のポリオレフィン、並びに塩化ビニル等が挙げられ、樹脂は1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。中でも、ポリブテンが好適に用いられ、ポリブテンを主成分として含むことが好ましく、例えば管体を構成する樹脂材料中において85質量%以上含むことがより好ましい。
また、管体を構成する樹脂材料には、他の添加剤を含有してもよい。
管体12の径(外径)としては、特に限定されるものではないが、例えば10mm以上100mm以下の範囲とすることができ、12mm以上35mm以下の範囲が好ましい。また、管体12の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば1.0mm以上5.0mm以下が挙げられ、1.4mm以上3.2mm以下が好ましい。
(被覆層)
被覆層20は、管状とされ、管体12、及び多孔質樹脂層14の外周を覆っている。多孔質樹脂層14は、管体12と被覆層20の間に配置されている。被覆層20は、樹脂材料で構成される。被覆層20を構成する樹脂材料における樹脂としては、ポリブテン、ポリエチレン、ポリプロピレン、及び架橋ポリエチレン等のポリオレフィン、並びに塩化ビニル等が挙げられ、樹脂は1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。中でも、低密度ポリエチレンが好適に用いられ、低密度ポリエチレンを主成分として含むことが好ましく、例えば被覆層を構成する樹脂材料中において80質量%以上含むことがより好ましく、90質量%以上含むことがさらに好ましい。
また、使用する樹脂のMFR(Melt Flaw Rate)は、0.25以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましく、0.35以上1.2以下であることがさらに好ましい。MFRを0.25以上にすることにより、多孔質樹脂層14の多孔質構造に被覆層20の樹脂が入り込みやすくなり、後述する多孔質樹脂層14と被覆層20の谷部24との接着度を高めることができる。また、MFRを1.2以下にすることにより、バリが発生しにくくなる。MFRが1.2より大きい場合は、被覆層20を形成するための金型のパーティング面に溶融樹脂が流れ込み易くなり、バリが発生しやすくなる。なお、被覆層を構成する樹脂材料には、他の添加剤を含有してもよい。
図2にも示されるように、被覆層20は、蛇腹状とされており、径方向外側へ凸となる環状の山部22と、径方向外側が凹となる環状の谷部24とが、管体12の軸方向Sに交互に連続して形成されている。山部22は、谷部24よりも径方向Rの外側に配置されている。図3に示されるように、被覆層20の蛇腹状の最も径方向外側の部分を外側壁22A、最も径方向内側の部分を内側壁24Aとすると、径方向における外側壁22Aと内側壁24Aの中間部Mを境界として、径方向外側を山部22とし、径方向内側を谷部24とする。
山部22は、軸方向Sに延びる外側壁22Aと、外側壁22Aの両端から径方向Rに沿って延びる側壁22Bを有している。外側壁22Aと側壁22Bの間には、外屈曲部22Cが形成されている。谷部24は、軸方向Sに延びる内側壁24Aと、内側壁24Aの両端から径方向Rに延びる側壁24Bを有している。内側壁24Aと側壁24Bの間には、内屈曲部24Cが形成されている。
被覆層20の山部22の径方向内側には、径方向内側に凹の山空間23が形成されている。なお、山空間23には、後述する多孔質樹脂層14の凸部14Bが挿入されていることが好ましい。
また、特に限定されるものではないが、山部22の軸方向Sの長さL1は、谷部24の軸方向Sの長さL2よりも長く設定されていることが好ましい。長さL1は、後述する短縮変形時の外側壁22Aの変形しやすさを確保するため、長さL2の1.2倍以上であることが好ましい。
また、長さL2は、0.8mm以上であることが好ましい。これは、長さL2が0.8mm未満では、被覆層20を製造する金型の谷部の幅が小さすぎて、被覆層20の製造時において、被覆層20を構成する樹脂を押し出した後に、金型で当該樹脂に凹凸をつける時に、当該樹脂の金型の谷部に対応する部分が細く壊れやすくなり、被覆層20の成形が難しくなるからである。一方、長さL1は、長さL2の5倍以下であることが好ましい。これは、長さL1を長さL2の5倍以下にすることにより、複合管10の可撓性を保つことができるからである。また、長さL1が長すぎると、複合管10を敷設する際に、地面との接触面積が大きくなって施工しにくくなるためでもある。
なお、図3に示されるように、長さL1は、被覆層20における中間部Mと交差する部分において、被覆層20の径方向Rの外側から見た表面における軸方向S外側間の距離(被覆層20の径方向Rの外側に凸となる部分の軸方向S一方側の表面と軸方向S他方側の表面との距離)である。また、長さL2は、被覆層20における中間部Mと交差する部分において、被覆層20の径方向Rの内側から見た表面における軸方向S外側間の距離(被覆層20の径方向Rの内側に凸となる部分の軸方向S一方側の表面と軸方向S他方側の表面との距離)である。
被覆層20の厚さは、被覆層20を短縮させるために、最も薄い部分で0.1mm以上、最も厚い部分で0.4mm以下であることが好ましい。外側壁22Aの厚さH1は、内側壁24Aの厚さH2よりも薄くなっている。厚さH1は、後述する短縮変形時の外側壁22Aの変形しやすさを確保するため、厚さH2の0.9倍以下であることが好ましい。
山部22と谷部24の外表面での半径差ΔRは、被覆層20の厚さの平均の800%以下であることが好ましい。半径差ΔRが大きければ、山部22の軸方向Sに沿った部分が変形しなくても、短縮のときに谷部24が径方向外側へ膨出したり、隣り合う山部22同士が近づかないで歪んだ変形状態となったりしにくい。半径差ΔRが、被覆層20の厚さの平均の800%以下となる場合に、上記の変形状態となることを抑制するために、山部22の軸方向Sの長さを谷部24の軸方向の長さよりも長くすることが、効果的である。なお、600%以下である場合に、より効果的である。
被覆層20の径(最外部の外径)としては、特に限定されるものではないが、例えば13mm以上130mm以下の範囲とすることができる。
(多孔質樹脂層)
多孔質樹脂層14は、本発明における中間層の一例であり、樹脂材料で構成され多孔質構造を有する層である。多孔質樹脂層14を構成する樹脂材料における樹脂としては、例えば、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びエチレンプロピレンジエンゴム、並びにこれらの樹脂の混合物が挙げられるが、その中でもポリウレタンが好ましい。多孔質樹脂層14は、ポリウレタンを主成分として含む層(すなわち、多孔質ウレタン層)であることが好ましい。例えば、多孔質樹脂層の構成成分中においてポリウレタンを80質量%以上含むことが好ましく、90質量%以上含むことがより好ましい。なお、多孔質樹脂層には、他の添加剤を含有してもよい。
多孔質樹脂層14における孔の存在比率(例えば発泡体の場合であれば発泡率)は、JIS K6400−1(2012年)の付属書1に記載の方法により測定することができ、25個/25mm以上であることが好ましく、45個/25mm以下がより好ましい。
また、多孔質樹脂層14は、発泡体であることが好ましい。
多孔質樹脂層の密度は、12kg/m3以上22kg/m3以下であることが好ましい。複合管では、内部の管体の端部に継手などを接続するときに、被覆層の端部を短縮させてずらし、管体端部を露出させることが求められる。しかし、被覆層をずらすときに多孔質樹脂層が追従せず、管体の外表面に置き去りになって、管体が十分に露出できないことがある。一方、多孔質樹脂層の密度が22kg/m3以下であることにより、多孔質樹脂層が適度な柔軟性を有し、被覆層の端部を短縮変形させて管体の端部を露出させる際に、多孔質樹脂層が被覆層の動作に対して良好に追従し、管体の外表面への置き去りが抑制される。その結果、管体の端部の露出を容易に行うことができる。
一方、多孔質樹脂層は、密度が12kg/m3以上であることで適度な強度を有し、複合管10の製造時等の加工時における多孔質樹脂層の破れ及び破損の発生が抑制される。多孔質樹脂層の密度は、管体の外表面へ置き去りの抑制及び加工時における破れ、破損の抑制の観点から、14kg/m3以上20kg/m3以下の範囲がより好ましく、16kg/m3以上18kg/m3以下がさらに好ましい。
ここで、多孔質樹脂層の密度は、JIS−K7222(2005年)に規定の方法により測定することができる。なお、測定環境は温度23℃、相対湿度45%の環境とする。
多孔質樹脂層の密度を上記の範囲に制御する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば多孔質樹脂層における孔の存在比率(例えば発泡体である場合であれば発泡率)を調整する方法、樹脂の分子構造を調整する(つまり樹脂の原料となるモノマーの分子構造や、それらの架橋構造を調整する)方法等が挙げられる。
多孔質樹脂層14は、管体12と被覆層20との間に配置されている。多孔質樹脂層14は、被覆層20の谷部24の内側壁24Aと管体12との間に挟持されている。なお、この挟持されている箇所では、さらに内側壁24Aと管体12とで圧縮されて圧縮挟持部14Aが形成されていることが好ましい。
多孔質樹脂層14は、図12(A)に示すように、帯状の多孔質樹脂シート14Sを用いて形成される。多孔質樹脂層14は、管体12の外周長と略等しい長さの幅を有するように帯状に形成された多孔質樹脂シート14Sを、図12(B)に示すように管体12の周囲に巻き付け、後述するように被覆層20となる樹脂組成物をその外周に供給して成形することにより構成される。
多孔質樹脂シート14Sを管体12の周囲に巻き付ける際には、多孔質樹脂シート14Sの幅方向(図12(A)、(B)に示す矢印W方向)の両側の端面14SAと端面14SBとを対向させて巻き付ける。この際、端面14SAと端面14SBとの突き付け位置(突き付け面14L)が、管体12を径方向から見て管体12の軸方向に沿う略直線状となるように巻き付ける。なお、突き付け面14Lは、端面14SAと端面14SBとが互いに接触している場合はその接触面を指す。但し、端面14SAと端面14SBとは必ずしも接触していなくてもよい。端面14SAと端面14SBとが互いに離間している場合、突き付け面14Lは、端面14SAと端面14SBとの中心を通る面を指す。
多孔質樹脂層14の厚さは、自然状態(圧縮や引っ張りなどの力が作用していない、温度23℃、相対湿度45%の状態)で、管体12の外周と内側壁24Aの径方向内側面との差以上となっており、さらに前記差よりも厚くなっていることが好ましい。
圧縮挟持部14Aでは、圧縮により、多孔質樹脂層14は、自然状態の厚さより薄くなっている。多孔質樹脂層14の隣り合う圧縮挟持部14A同士の間には、凸部14Bが形成されている。凸部14Bは、圧縮挟持部14Aよりも大径とされ、山空間23内へ突出されている。多孔質樹脂層14が内側壁24Aと管体12とで圧縮されている場合、圧縮挟持部14Aと凸部14Bとが軸方向Sに交互に連続して形成され、多孔質樹脂層14の外周面が波状となっている。
なお、多孔質樹脂層14の自然状態での厚さは、内側壁24Aと管体12とで圧縮された圧縮挟持部14Aの形成のし易さの観点から、1mm以上20mm以下の範囲が好ましく、2mm以上15mm以下がより好ましく、2.5mm以上10mm以下がさらに好ましい。なお、多孔質樹脂層14の自然状態での厚さは、複合管10から多孔質樹脂層14を取り出して、任意の箇所3箇所を測定して得られた値の平均値とする。
また、管体12の外周と内側壁24Aの径方向内側面との差は、例えば0.3mm以上5mm以下の範囲が好ましく、0.5mm以上3mm以下がより好ましく、1mm以上2mm以下がさらに好ましい。
多孔質樹脂層14を管体12と被覆層20の間から抜き出した自然状態における軸方向Sの長さは、被覆層20の軸方向Sの長さの90%以上100%以下であることが好ましい。これは、多孔質樹脂層14が管体12と被覆層20の間において伸張状態で保持されていると、被覆層20を短縮変形させる際に、多孔質樹脂層14と被覆層20との相対移動が生じやすくなり、多孔質樹脂層14が短縮されずに管体12の外周端部を露出できないことが生じうるからである。多孔質樹脂層14と被覆層20との相対移動を抑制するため、自然状態における多孔質樹脂層14の軸方向Sの長さは、被覆層20の軸方向の長さの90%以上100%以下とすることが好ましい。
複合管10を作製する方法としては、例えば、以下の方法が考えられる。具体的には、まず、多孔質樹脂層14を構成する多孔質樹脂シート14Sを、管体12の外周上に巻き付ける。そしてその状態で、さらに被覆層20形成用の樹脂組成物の溶融物を塗布し、この溶融物の外周面に対して、半円弧状の内面を有しかつこの内面が蛇腹の形状を有する二対の金型を二方向から接近させて接触させ、固化させることで蛇腹状の被覆層20を形成する。
なお、図1〜図3に示す複合管10における多孔質樹脂層14は単層であるが、これに限られず、多孔質樹脂層14が多層であってもよい。多孔質樹脂層14が多層である複合管としては、例えば、図4に示す複合管100(多孔質樹脂層14が2層である複合管)が挙げられる。
図4に示す複合管100は、管体12と、第1の多孔質樹脂層141と、第2の多孔質樹脂層142と、被覆層20と、がこの順に積層されている。
多孔質樹脂層14の内周面は、管体12の外周に全面的に接触しつつ、管体12の外周を覆っていることが好ましい。なお、ここでの「全面的に接触」とは、全ての部分がぴったりと密着している必要はなく、実質的に全面が接触していることを意味する。
(製造方法)
次に、本実施形態の複合管10の製造方法について説明する。複合管10の製造方法は、例えば、管体12の外周に、多孔質樹脂シート14Sの両端面を対向させて巻き付け、多孔質樹脂層14を形成する。その後、多孔質樹脂層14の外周に被覆層20を形成する。
複合管10の製造には、例えば、図9に示す製造装置30を用いることができる。製造装置30は、押出機32、ダイ34、波付け金型36、冷却槽38、及び引取装置39を有している。複合管10の製造工程は、図9の右側が上流側となっており、右側から左側へ向かって管体12が移動しつつ製造される。以下、この移動方向を製造方向Yとする。ダイ34、波付け金型36、冷却槽38、引取装置39は、製造方向Yに対してこの順に配置されており、押出機32は、ダイ34の上方に配置されている。
ダイ34の上流には、不図示であるが、管体12、及び、多孔質樹脂層14を構成する多孔質樹脂シート14Sがロール状に巻き取られたシート状部材15Sが配置されている。引取装置39により製造方向Yに引っ張られることによって、管体12及びロール状の多孔質樹脂シート14Sは、連続的に引き出される。連続的に引き出された管体12の外周面には、ダイ34の手前で、図12(B)に示すように、多孔質樹脂シート14Sが、端面14SAと端面14SBとを対向させるようにして、全周にわたって巻きつけられる。なお、多孔質樹脂シート14Sは、引張力を作用させないために、ダイ34の手前では、弛みをもった状態とされ、ダイ34へ挿入される。なお、図12(B)においてダイ34及び波付け金型36は図示が省略されているが、多孔質樹脂シート14Sの端面14SAと端面14SBとは、ダイ34及び波付け金型36へ挿入される時点では互いに接触しておらず、管体12の周方向において互いに離間している。
図9に示すように、管体12の外周に巻き付けられた多孔質樹脂シート14Sの外周には、ダイ34から溶融された樹脂材(被覆層20形成用の樹脂組成物の溶融物)が円筒状に押し出されて塗布され、樹脂材20Aが形成される。ここで使用する樹脂を、MFR0.25以上の低密度ポリエチレン(LDPE)とすることにより、樹脂材が多孔質樹脂シートの孔(気泡)に入り込みやすくなり、多孔質樹脂シート14Sと樹脂材20Aとの接着性が向上する。
管体12、多孔質樹脂シート14S、及び樹脂材20Aで構成される管状押出体21が形成された後、ダイ34の下流側に配置された波付け金型36で波付け工程(蛇腹状に形成する工程)が行われる。波付け金型36は例えば一対の金型であり、いずれの金型も半円弧状の内面を有し、この内周には被覆層20の山部22に対応する部分に環状のキャビティ36Aが形成され、谷部24に対応する部分に環状の内側突起36Bが形成されており、蛇腹の形状を有している。各キャビティ36Aには、一端がキャビティ36Aと連通し波付け金型36を貫通した吸引孔36Cが形成されている。キャビティ36A内は、吸引孔36Cを介して、波付け金型36の外側から吸気が行われる。
ダイ34の下流側において、波付け金型36は、樹脂材20Aに対して左右二方向から接近させて一対の金型の内面を樹脂材20Aに接触させる。そして、波付け金型36は、内側突起36Bにより樹脂材20Aを圧縮しつつ、管状押出体21の外周を覆って樹脂材20Aを成形し、管体12及び多孔質樹脂シート14Sと共に管状押出体21を製造方向Yへ移動させる。このとき、波付け金型36のキャビティ36Aにより形成されたキャビティ内部は、図示省略の吸引装置により吸引孔36Cを通して吸引されて負圧とされる。これにより、樹脂材20Aは径方向Rの外側へ向かって変形してキャビティ36Aにより成形され、樹脂材20Aから山部22と谷部24とが軸方向Sに沿って交互に配列された蛇腹状の被覆層20が成形される。
ここで、多孔質樹脂シート14Sの凸部14Bは、キャビティ36Aにおいて樹脂材20Aが径方向Rの外側へ変形する際に山空間23(図9に示される部分拡大図を参照)へ深く入り込み、山空間23内に係止される。多孔質樹脂シート14Sの圧縮挟持部14Aは、被覆層20の谷部24の内側壁24Aに接着され、かつ、内側壁24Aと管体12との間において圧縮挟持される。
また、図13(A)に示すように、波付け工程における波付け金型36の型締め前の状態では、多孔質樹脂シート14Sの両端面(端面14SAと端面14SB)が管体12の周方向において互いに離間している。多孔質樹脂シート14Sは図12(A)に示す帯状の形状に戻ろうとするため、端面14SA及び端面14SBには、互いに離れる力が作用する。これにより樹脂材20Aは多孔質樹脂シート14Sから張力を受けた状態で型締めされる。
多孔質樹脂シート14Sの端面14SAと端面14SBとの間に形成された離間空間(対向位置V)は、管体12の周方向において、波付け金型36のパーティング面36Dと異なる位置に配置される。なお、「パーティング面36Dと異なる位置」とは、一対の波付け金型36のパーティング面36Dに挟まれる空間と、管体12の周方向において重ならない位置を指す。
このとき、対向位置Vは、パーティング面36Dと最も離れた位置に配置することが好ましい。すなわち、キャビティ36Aの最深部(断面視で半円状とされたキャビティ36Aにおいて、接線がパーティング面36Dと平行である部分)に対応する位置に対向位置Vを配置することが好ましい。
なお、図13(A)においては、管体12の外周面と多孔質樹脂シート14Sの内周面とが接触しているように描かれているが、波付け金型36を型締めする前の状態においては、管体12の外周面と多孔質樹脂シート14Sの内周面との間には隙間が形成されている。これにより端面14SAと端面14SBが接触せずに、端面14SAと端面14SBとの間に離間空間が形成されている。
そして図13(B)に示すように、波付け金型36を型締めしてパーティング面36Dを接触させる。このとき、管体12の外周面と多孔質樹脂シート14Sの内周面との間の隙間(不図示)が縮小し、端面14SAと端面14SBとが突付けられ、突付け面14Lが形成される。
本実施形態においては、端面14SAと端面14SBとの対向位置Vが、パーティング面36Dと異なる位置に配置されているため、突付け面14Lは、波付け金型36のパーティング面36Dと異なる位置に配置される。
型締め前における多孔質樹脂シート14Sの端面14SAと端面14SBとの対向位置Vを、パーティング面36Dと最も離れた位置に配置した場合は、管体12の軸方向において、突付け面14Lの少なくとも一部が、管体12の周方向においてパーティング面36Dから最も離れた位置に配置される。
波付け金型36を型締めした際に形成される蛇腹状の被覆層20の外周面には、パーティング面36Dに対応する位置に、パーティングラインPL(図1参照)が形成される。パーティングラインPLは、金型の精度、樹脂の流動性、研磨等の後工程の有無等により視認できる場合と視認できない場合があるが、本発明におけるパーティングラインは、視認できるものとできないものの双方を指す。
波付け金型36で波付け工程が行われた後、被覆層20は、冷却槽38で冷却される。このようにして、複合管10が製造される。
(作用・効果)
上記で説明した複合管10及び複合管10の製造方法による作用及び効果について説明する。上記実施形態に係る複合管10では、図1に示すように、管体12と被覆層20との間に、帯状の多孔質樹脂シート14Sの幅方向における両端面(端面14SA、端面14SB)を突付けた状態で管状に形成された、多孔質樹脂層14が配置されている。そして、被覆層20のパーティングラインPLと、多孔質樹脂シート14Sの突付け位置(突き付け面14L)とが、管体12の周方向において異なる位置に配置されている。
すなわち、図13(A)、(B)に示すように、波付け金型36を用いて多孔質樹脂層14の外周に被覆層20を形成する際、波付け金型36のパーティング面36Dに対して、多孔質樹脂シート14Sが、幅方向の両端面(端面14SA、端面14SB)の対向位置Vをずらした状態で配置される。そして型締めに伴い、図13(B)に示すように、端面14SA、端面14SBが、波付け金型36のパーティング面36Dと異なる位置で突付けられ、突き付け面14Lが形成される。
型締めの際、図14に示すように、互いに対向する端面14SA、端面14SBは、互いに近づく方向へ移動して突き付けられる。このため、多孔質樹脂シート14Sの外周を覆う樹脂材20Aには、端面14SA、端面14SB付近で弛み部20Tが形成される。
このとき、多孔質樹脂シート14Sの端面14SA、端面14SBは、波付け金型36のパーティング面36D(図13(A)参照)と異なる位置で突付けられる。このため、弛み部20Tは波付け金型36のキャビティ36Aによって押圧されて消失する。また、波付け金型36のパーティング面36Dに対応する位置には多孔質樹脂シート14Sの端面14SA、端面14SBが配置されないので、弛み部20Tは形成され難い。これにより、パーティング面に挟まれる弛み部20Tが発生し難い。したがって、被覆層20にはバリが発生しにくい。
また、本実施形態における複合管10では、図13(B)に示すように、管体12の軸方向(図13(B)の紙面前後方向)において、多孔質樹脂シート14Sにおける突付け面14Lの少なくとも一部が、管体12の周方向においてパーティング面36Dから最も離れた位置に配置されている。
波付け金型36を型締めした際に、樹脂材20A及び多孔質樹脂シート14Sが金型36から外力を受けて、部分的に管体12の周方向に移動する場合がある。このような場合、突付け面14Lは、部分的に他の部分と周方向にずれて配置される。突付け面14Lの少なくとも一部が、管体12の周方向においてパーティング面36Dから最も離れた位置に配置されていることにより、突付け面14Lが部分的にずれて配置されても、当該部分がパーティング面36Dと同じ位置に配置されることが抑制される。これにより、バリの発生抑制効果が高められる。
なお、図15(A)には、比較例に係る複合管の型締め前の状態が示されている。比較例に係る複合管では、波付け金型36のパーティング面36Dに対して、多孔質樹脂シート14Sが、幅方向の両端面(端面14SA、端面14SB)の対向位置Vが一致した状態で配置される。換言すると、管体12の周方向において、一対の波付け金型36において互いに対向するパーティング面36Dの隙間(対向位置V2)と、端面14SAと端面14SBとの隙間(対向位置V)とが重なっている。このため、図15(B)に示すように、端面14SA、端面14SB付近の樹脂材20Aに発生する弛み部20Tが、パーティング面36Dによって挟まれる。これにより、比較例に係る複合管の被覆層には、バリが発生する可能性がある。
本実施形態に係る複合管10と継手とを接続する際には、図2に示す状態の被覆層20に対し、被覆層20を軸方向Sに短縮させて管体12を露出させる方向の力を作用させる。これにより、図5に示されるように、一端部の被覆層20は、管体12が露出される方向へ移動する。
なお、山部22の外側壁22Aと谷部24の内側壁24Aにおいて、軸方向Sの長さL1はL2よりも長く、厚さH1はH2よりも薄いことが好ましい。これにより、外側壁22Aは内側壁24Aよりも変形しやすく、図6に示されるように、径方向外側へ膨出するように変形する。続いて、図7に示されるように、隣り合う山部22同士が近づくように、山部22の外屈曲部22Cと谷部24の内屈曲部24Cが変形する。このようにして、図5に示されるように、一端部の被覆層20は、管体12が露出される方向へより移動し易くなる。このように、被覆層20を短縮させる際に、外側壁22Aが膨出するように変形するため、被覆層20の屈曲角度や厚さに多少のバラツキがあっても、谷部24が径方向外側へ膨出したり、隣り合う山部22同士が近づかないで歪んだ変形状態となったりすることを抑制できる。これにより、短縮させた被覆層20の外観の低下を抑制することができる。
多孔質樹脂層14は内側壁24Aと管体12とで圧縮されていることが好ましく、圧縮挟持部14Aが被覆層20に密着され、凸部14Bが隣り合う谷部24の側壁24Bの間に係合し、被覆層20と共により短縮し易くなる。これにより、図8に示すように、管体12の端部を露出させることができる。
なお、本実施形態では、外側壁22Aの厚さH1を内側壁24Aの厚さH2よりも薄くしたが、厚さH1は厚さH2と同じであってもよい。
また、本実施形態では、外側壁22Aを軸方向Sに沿った略直線状としたが、径方向外側へ膨出する弧状としてもよい。さらに、内側壁24Aについて、径方向内側へ膨出する弧状としてもよい。
また、本実施形態では、多孔質樹脂層14が内側壁24Aと管体12とで圧縮されていることが好ましい。これにより、圧縮挟持部14Aが被覆層20に密着され、凸部14Bが隣り合う谷部24の側壁24Bの間に係合する。したがって、多孔質樹脂層14は被覆層20の動きにより追従しやすくなり、多孔質樹脂層14が管体12の外周に置き去りになることが抑制され、容易に被覆層20と共に短縮させることができる。
また、本実施形態では、多孔質樹脂層14は、管体12の外周面と全面的に接触している。したがって、管体12と多孔質樹脂層14及び被覆層20とを相対移動させて管体12の端部を露出させた後、管体12の外周と多孔質樹脂層14の内周との間の摩擦力により、多孔質樹脂層14及び被覆層20を、短縮された位置に容易に保持することができる。
また、本実施形態では、多孔質樹脂層14の圧縮挟持部14Aが被覆層20に密着され、凸部14Bが隣り合う谷部24の側壁24Bの間に係合している。したがって、多孔質樹脂層14は被覆層20の動きに追従しやすくなり、多孔質樹脂層14が管体12の外周に置き去りになることが抑制され、容易に被覆層20と共に短縮させることができる。
(低摩擦樹脂層)
なお、上記実施形態における複合管10は、管体12、多孔質樹脂層14及び被覆層20を備えており、管体12が多孔質樹脂層14に直接覆われているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば図11に示すように、管体12と多孔質樹脂層14との間に、低摩擦樹脂層13を介在させてもよい。
低摩擦樹脂層13は、樹脂材料で構成され、内周面におけるすべり抵抗値が多孔質樹脂層14の内周面におけるすべり抵抗値よりも小さい層である。低摩擦樹脂層13としては、例えば、シート状の樹脂シート層が挙げられる。低摩擦樹脂層13を構成する樹脂材料における樹脂としては、例えば、ポリエステル、ナイロン、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等)等が挙げられる。
低摩擦樹脂層13を構成する樹脂材料は、樹脂を主成分として含むものであれば、他の添加剤を含有してもよい。
低摩擦樹脂層13の形態としては、例えば、不織布(例えば、メルトブロー、スパンボンド等)、編物(例えば、ラッセル、トリコット、ミラニーズ等)、織物(例えば、平織、綾織、模紗織、絽織、絡み織等)、フィルム等が挙げられる。
低摩擦樹脂層13は、これらの中でも、ポリエステル不織布(すなわち、ポリエステルを主成分として含む不織布)、ポリエステルトリコット(すなわち、ポリエステルを主成分として含むトリコット編物)、ナイロン不織布(すなわち、ナイロンを主成分として含む不織布)、ナイロントリコット(すなわち、ナイロンを主成分として含む編物)、ポリエチレンフィルム(すなわち、ポリエチレンを主成分として含むフィルム)等が好ましく、ポリエステル不織布及びナイロントリコットがより好ましい。
また、低摩擦樹脂層13が不織布である場合、不織布の目付量としては、例えば10g/m2以上500g/m2以下が挙げられ、12g/m2以上200g/m2以下が好ましく、15g/m2以上25g/m2以下がより好ましい。
低摩擦樹脂層13の内周面におけるすべり抵抗値(単位:N)は、多孔質樹脂層14の内周面におけるすべり抵抗値よりも小さければ特に限定されないが、例えば、10以上24以下が挙げられ、12以上23以下が好ましい。
また、低摩擦樹脂層13の内周面におけるすべり抵抗値(単位:N)は、例えば、多孔質樹脂層14の内周面におけるすべり抵抗値(単位:N)の0.36倍以上0.90倍以下が挙げられ、0.44倍以上0.85倍以下が好ましい。
低摩擦樹脂層13の内周面は、管体12の外周に全面的に接触しつつ、管体12の外周を覆っていることが好ましい。なお、ここでの「全面的に接触」とは、全ての部分がぴったりと密着している必要はなく、実質的に全面が接触していることを意味する。したがって、例えば多孔質樹脂層14及び低摩擦樹脂層13が、多孔質樹脂層14を構成するシート状の第1のシート(以下「多孔質樹脂シート」ともいう)と、低摩擦樹脂層13を構成するシート状の第2のシート(以下「低摩擦樹脂シート」ともいう)と、の積層体を巻き付けて形成されている場合、その継ぎ目部分が一部離間していたり、管体12と被覆層20との間でシワになった部分が一部離間していたりする場合を含んでいる。
低摩擦樹脂層13の厚さは、被覆層への追従性の観点から、0.05mm以上7mm以下の範囲が好ましく、0.08mm以上5mm以下がより好ましく、0.1mm以上3mm以下がさらに好ましい。なお、低摩擦樹脂層13の厚さは、複合管10から低摩擦樹脂層13を取り出して、任意の箇所3箇所を測定して得られた値の平均値とする。
低摩擦樹脂層13を備えた複合管10は、管体12と多孔質樹脂層14との間に低摩擦樹脂層13が配置されていることで、被覆層20の端部を短縮変形させて管体12の端部を露出させた後に被覆層20を戻す際に多孔質樹脂層14が巻き込まれることが抑制される。具体的には以下の通りである。
管体、多孔質樹脂層、及び蛇腹状の被覆層を有する複合管では、内部の管体の端部に継手などを接続するときに、被覆層の端部を短縮させてずらして管体端部を露出させ、また管体の端部を継手などに接続した後に短縮させた被覆層を伸長して元に戻し、再び管体を被覆することが求められる。
図11に示すように、管体12と多孔質樹脂層14との間に低摩擦樹脂層13が配置された複合管10では、低摩擦樹脂層13の内周面におけるすべり抵抗値の方が小さく滑りやすい。そのため、被覆層20の端部を短縮変形させて管体12の端部を露出させた後に再び被覆層を元に戻す際に、多孔質樹脂層14及び低摩擦樹脂層13が被覆層20の軸方向への伸長の動作に対して良好に追従し、露出された管体12の端部を再び低摩擦樹脂層13、多孔質樹脂層14、及び被覆層20によって良好に覆うことができる。
ここで、上記「すべり抵抗値」は、具体的には以下のようにして測定する。低摩擦樹脂層の内周面におけるすべり抵抗値を測定する場合は、まず、管体の外周側に被覆層を配し、管体と被覆層の間に、多孔質樹脂層とすべり抵抗値を測定する対象の低摩擦樹脂層とを、低摩擦樹脂層が管体に接するように挿入して長さ200mmの複合管を形成する。そしてフォースゲージ(イマダ製普及型デジタルフォースゲージDS2)の先端部に複合管の一方の端部を接続し、複合管の他方の端部における被覆層を50mmずらした時の力(単位:N)を測定する。
また、多孔質樹脂層の内周面におけるすべり抵抗値を測定する場合は、管体の外周側に被覆層を配し、管体と被覆層の間に、すべり抵抗値を測定する対象の多孔質樹脂層を、多孔質樹脂層が管体に接するように挿入して長さ200mmの複合管を形成する。そして、低摩擦樹脂層のすべり抵抗値の測定と同様にして、多孔質樹脂層のすべり抵抗値を測定する。
なお、低摩擦樹脂層13を設ける場合、多孔質樹脂層14の自然状態での厚さは、低摩擦樹脂層13の厚さよりも厚いことが好ましい。多孔質樹脂層14は、複合管10における熱保護の役割を有することが好ましく、厚いほど前記熱保護性が向上する。一方、低摩擦樹脂層13が厚すぎると、多孔質樹脂層14及び低摩擦樹脂層13における被覆層20への追従性が低下する。そのため、多孔質樹脂層14を相対的に厚くし、低摩擦樹脂層13を相対的に薄くすることで、前記熱保護性と被覆層20への追従性との両方が向上する。
さらに、熱保護性及び被覆層への追従性の観点から、多孔質樹脂層14の自然状態での厚さは、低摩擦樹脂層13の厚さの10倍以上200倍以下が好ましく、20倍以上150倍以下がより好ましく、25倍以上100倍以下がさらに好ましい。
また、多孔質樹脂層14の内周面は、低摩擦樹脂層13の外周面と接着されていることが好ましい。多孔質樹脂層14と低摩擦樹脂層13とが接着されていることにより、多孔質樹脂層14及び低摩擦樹脂層13における被覆層への追従性がより向上する。
多孔質樹脂層14と低摩擦樹脂層13とを接着する方法としては、接着剤を両層の間に塗布して接着する方法のほか、フレームラミネート法により接着する方法が挙げられ、この中でもフレームラミネート法が好ましい。つまり、多孔質樹脂層14と低摩擦樹脂層13とがフレームラミネート接着体であることが好ましい。
フレームラミネート法は、例えば、多孔質樹脂層14中に含まれる可溶性物質を火炎により熱溶融させて染み出させ、この染み出した溶融物により低摩擦樹脂層13と接着する方法である。そして、フレームラミネート法によって多孔質樹脂層14と低摩擦樹脂層13とが接着された積層体(以下「フレラミ接着体」ともいう)は、接着剤を両層の間に塗布して多孔質樹脂層14と低摩擦樹脂層13とが接着された積層体(以下「接着剤による接着体」ともいう)と異なり、多孔質樹脂層14と低摩擦樹脂層13との間の両層を接着している層を薄層化できる。そのため、フレラミ接着体を有する複合管10は、多孔質樹脂層14及び低摩擦樹脂層13における被覆層への追従性がより向上することに加え、複合管10の製造過程においてバリが発生しにくい。