世界規模で様々なタイプの情報端末機器が人や物へ行き渡り、無線有線を問わず通信ネットワークは拡大を続けており、そこを流通するデータ量は莫大なものとなっている。このような中、情報通信システムにおける消費電力も莫大なものとなり、コアネットワーク、メトロ/LAN、アクセス系ネットワークなど、情報通信ネットワークの様々な階層において低消費電力化の検討が精力的になされている。情報通信システムの低消費電力化の1つのための1つのキー技術は、情報処理を電気信号レイヤではなく光信号レイヤで行う光ルーティング技術である。光ルーティング技術を使用して、光パッシブデバイスによってルーティングを行うことで、通信ノードにおける電気レイヤの処理を大幅に減らし通信ネットワーク全体の大幅な低消費電力化が進められると考えられている。
情報通信ネットワークの重要なインフラの要素の1つにデータセンタがある。データセンタは、インターネット用のサーバやデータ通信、固定・携帯・IP電話などの設備を設置し、運用することを目的とする建物の総称である。データセンタには多数の通信回線が引き込まれているとともに、建物の内部には膨大な数のサーバコンピュータなどが集約されており、データセンタ内部における消費電力を減らすことが非常に重要な課題となっている。とりわけ近年では、ユーザの増加だけでなく、アプリケーションサーバ、データストレージ、データベースサーバの機能分化、分散処理・並列処理の使用などのために複数のサーバ間での処理が増えて、データセンタ内におけるIPトラフィックが大幅に増加すると予測されている。データセンタ内で流通するトラフィック量はインターネットの全トラフィックの4倍程度になると見積もられている。また、データセンタにおけるトラフィックの多くはデータセンタ内に留まるトラフィックであって、2015年にはその量は4.8ゼタバイト(4.8×1021)にも達すると言われている。結果として、大規模データセンタの消費電力は100MW(10万kW)を超える状況に至っており、データセンタ内におけるトラフィックに起因する消費電力を下げることが焦眉の急となっている。
データセンタ内ではメールやウェブ検索などで生じる小容量であって発生頻度の高いMiceフローと、仮想機械の移動やデータストレージなどで生じる大容量且つ発生頻度の低いElephantフローが存在する。そこで低消費電力化に向けMiceフローは電気スイッチで処理し、トラフィックの大半を占めるElephantフローを光スイッチで処理するハイブリッドネットワークが提案されている。
図1は、データセンタにおけるトラフィック処理の概要を示す図である。データセンタ10内では、トップオブラック(TOR)と呼ばれる構成がとられている。非常に多くのサーバコンピュータやストレージなどがラック単位で構成され、複数のラック1−1、1−2、・・、1−nが配置されている。TOR構成では、各ラックの上部2−1、2−2、・・2−nにスイッチ(SW)を設置してラック間を接続し、ラック内にサーバを収容して、最小構成単位を1ラックとした自由度の高い設備管理が可能となる。データセンタ10は、サーバコンピュータやストレージの他に、図示していないコアレイヤの装置を含んでおり、コアレイヤと外部ネットワーク8の間は大容量の通信回線7で接続されている。
各ラック間のトラフィックのMiceフローについては、電気SW3を使ってラック間で経路5の切り替えを行い、一方でElephantフローについては、低消費電力化のために光SW4を使ってラック間で経路6の切り替えを行うようデータセンタ内のトラフィックを処理できる。近年の通信トラフィックの急激な増加とともに、データセンタ内のラックの数nは1000を越える状態となっており、1000個のラック間の経路を任意に設定・変更ができる光スイッチ装置が求められている。具体的には、1000×1000を越える大規模な回線交換光スイッチ装置へのニーズが大きい。
図2A〜図2Cは、光スイッチの機能および構成を説明する図である。図2Aは光スイッチの概念的な構成を示している。光スイッチ20は、左側に描かれたN個の入力ポートの1つへ入力された光信号を、右側に描かれたN個の出力ポートのうちのいずれか1つへ出力するよう動作する。光スイッチ20は、図1における複数(n個)のラックの内の1つのラックのTOR部から、他のいずれかのラックのTOR部への経路を任意に形成することができ、必要に応じて別の新しい経路に高速に切り替える。光スイッチのもっとも単純な構成は、図2Bに示したように、2次元のマトリックス状に配置された要素SW素子22で構成される空間マトリックスSWである。MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)を使用して3次元的に空間マトリックスSWを構成することもできる。しかしながら、要素SW素子で構成される空間マトリックスSWでは、図2Cに示したポート数Nと要素SW素子数の間の関係概念図のように、ポート数Nが増えるほど、N2に比例して必要な要素SW素子22の数が増えることが知られている。したがって、データセンタ内で相互接続するサーバラックの数が1000を越え、光スイッチ装置の入力ポートおよび出力ポート数Nがそれぞれ1000を越えるような状況では、要素SW素子の数が膨大なものとなり、回路規模およびコストの点で空間マトリックスSWは現実的でない。
複数のマトリックスSWを従属接続した多段化構成とすることによって、SW全体の要素SW素子数をある程度減らすことができる。しかしながらその効果は限定的で、図2Cに示したように、ポート数Nが増えると、N1.5に比例して必要な要素SW素子22の数が増える。光スイッチ装置のポート数Nが1000を越えるような場合、多段化をしても要素SW素子の数の増加は依然として大きな問題であり、さらに完全SWの条件を満たすためには構成上の制限も加わる。ポート数Nが増えたときの要素SW素子の数の増加が、図2Cの点線で示されたように、ほぼリニア(Nの一乗)に抑えられる空間光スイッチの構成として、波長ルーティングSWが知られている。
図3は、波長ルーティングSWの構成を概念的に示した図である。例示的な波長ルーティングSW30は、100入力を100出力に切り替える空間SWであって、入力ポート側に100個の波長可変光源(LD:レーザダイオード)31−1〜31−100と、出力ポート側に100個の出力ポート36−1〜36−100を持つ分波器35を備えている。100個の波長可変LDの各々は、λ1〜λ100の異なる波長のうちのいずれかに設定が可能であって、各LDの出力光は情報信号32−1〜32−100によって変調される。波長可変LD31−1〜31−100からの異なる波長の変調光は、カプラ33によって合波され、さらに必要に応じて光増幅器34によって増幅される。光増幅器34からの合波された変調光は、分波器35によってλ1〜λ100の波長に対応した100個の出力ポート36−1〜36−100のいずれかにそれぞれ分波される。分波器35としては、例えばアレイ導波路回折格子(AWG)を使用することができ、合波されたλ1〜λ100の最大100個の異なる波長を含む波長多重化光を波長毎に分波できる。
波長ルーティングの動作は以下のように説明される。例えば、1番目の入力ポートに対応する波長可変LD31−1の発振波長をλ100に設定する。この時、波長λ100の出力光は1番目の入力ポートに入力された情報信号32−1によって変調される。変調を受けた波長λ100の光信号は、分波器35によって、100番目の出力ポートに対応する出力ポート36−100に出力される。したがって、1番目の入力ポートに入力された情報信号は、100番目の出力ポートに接続されることになる。ここで波長可変LD31−1の発振波長をλ1に設定すれば、分波器35の1番目の出力ポートに対応する出力ポート36−1に出力される。同様に、波長可変LD31−1の発振波長をλ50に設定すれば、光分波器35の50番目の出力ポートに対応する出力ポート36−50に出力される。
上述のように、100個の波長可変LDの各々の発振波長を任意に設定することで、変調光信号を出力するポートを任意に選択することができる。100個の異なる情報信号を、100個の出力ポートの任意の位置に出力することが可能となり、100×100の波長ルーティングSWが実現される。波長ルーティングSWでは、原理の差異から空間マトリックスSWと要素SW素子の構成が全く異なるものの、回路のハードウェア規模は入力ポート・出力ポートの数Nに概ね比例して増加する。したがって、空間マトリックスSWと比べ、より小規模のハードウェアで低コストの光スイッチ装置を実現できると考えられている。
光通信では、伝搬損失の少なさからCバンド(幅は約4400GHz)が広く使用されており、関連する装置、部品が広く利用可能となっている。このCバンドにおいて1つの通信チャネルの帯域幅を50GHzとし、Cバンドをやや越えた帯域も使用すれば、概ね100個の通信チャネル程度(100波)を利用できる。1つの通信チャネルの帯域幅を半分の25GHzとすれば、Cバンドに200チャネル(200波)を構成することもできるが、情報信号の帯域も半分になってしまう。関連部品の波長制御の精度も問題になるため、波長ルーティングSWのポート数を100以上に増やすのは簡単ではない。そこで波長ルーティングSWをより大規模化するための構成として、波長ルーティング部分を並列化する構成が提案されている。
図4は、並列化した波長ルーティング部を持つ従来技術の波長ルーティングSWの構成を示す図である。図4の波長ルーティングSW40は、図3の最も単純な波長ルーティングSWの構成と比べると、後段でK個の波長ルーティング部48−1〜48−Kに並列化されている。入力ポート側で、N個のグループに分けられたKN個の波長可変LD41からの変調光は、N個の分配選択(DC:Delivery and Coupling)スイッチによって、選択および合流されて、K個の波長ルーティング部48−1〜48−Kに供給される。波長ルーティング部48−1〜48−Kを並列化することで、入力ポート側の波長可変LD41における設定波長の数を増やさないで、光スイッチ装置の多ポート化が実現できる。尚、DCスイッチはマルチキャストスイッチとも呼ばれており、入力ポートおよび出力ポート数の異なる様々なものがM×Nポートの汎用品として入手可能である。
図5は、従来技術の波長ルーティングSWで使用されるDCスイッチの構成例を示した図である。DCスイッチ50は、最小構成の一例であって、3つの波長可変LDからの3波(λ1、λ2、λ3)をそれぞれ選択および合流するよう構成されており、3個の1×3のスイッチ51−1〜51−3および3個の3×1光合波器52−1〜52−3から構成される。図5では、DCスイッチ50の3つの入力ポートへの3つの波長λ1、λ2、λ3を、すべて1番目の出力ポート53に出力した設定例を示している。DCスイッチ50によって、3つの波長をそれぞれ任意の出力ポートに出力可能となる。尚、図5のDCスイッチを逆の信号方向で使用すれば、多重化光(λ1、λ2、λ3)を分配していずれかの波長の光のみを選択して出力するように動作する。そのような動作の場合も含めて、分配選択(DC)スイッチと呼ぶ。このように光信号の方向が図5に示したのとは逆方向であるDCスイッチの使用法は、後述する本開示の実施例で示される。
図4では、1番目の波長可変LDのグループの内の1つの波長が、DCスイッチ42−1によって、K個の波長ルーティング部48−1〜48−Kの内の1つを選択して接続されるよう設定が可能であって、出力側のKN個の出力ポートの内の任意のポートへ至る経路を構成できる。発明者らは、データセンタにおけるトラフィックの増大に対応できる、より大規模な波長ルーティングSWを実現すべく図3および図4に示した構成に基づいて、波長ルーティングSWの具体的な構成例を提案している(非特許文献1)。
図6は、発明者らが提案した従来技術の大規模波長ルーティングSWの構成を示す図である。図6に示した波長ルーティングSW60は、図4の全体構成に図5のDCスイッチの構成を含めてより具体的に示したものであって、N個のグループに分けた波長可変LDおよびM個の並列化した波長ルーティング部63−1〜63−Mから成る。詳細な構成・動作の説明は省略するが、8×8のDCスイッチ、エルビウム添加ファイバ増幅器(EDFA:Erbium-doped fiber amplifier)、非サイクリックAWGを使用して、良好な伝送信号特性を持つ800×800の大規模な波長ルーティングSWの実現例が図6に示されている。
本開示の波長ルーティングスイッチ(以下SW)は、安価な固定波長光源および可変フィルタを利用することによって、より安価で大規模な光スイッチ装置を実現する。従来技術の波長ルーティングSWでは、入力ポート側にある光源の波長を可変として、ルーティングする情報に対して設定する(関連付ける)波長を選択し、後段の分波器の波長ルーティング機能を利用して最終目的の出力ポートに至る経路が構成されていた。一方、本開示の波長ルーティングSWでは、入力ポート側にある光源の波長をポート毎に固定として、非常に安価な光源を利用するとともに、各光源からの異なる波長の変調光を合波し、多重化光を生成し、必要に応じて増幅を行い、1つの多重化光を各出力ポートに向けて分岐または分波する。最後段の目的出力ポートでは、可変フィルタの波長選択機能を利用して、出力すべき波長の光信号のみを選択することで、対応する波長の入力ポートから目的出力ポートまでの経路が構成されるように動作する。
以下の説明では、用語「波長ルーティングスイッチ」は、「光スイッチ装置」とも呼ばれ、これらの用語は交換可能に使用されて、同じものを意味するものとする。また、本明細書における以下の開示では、用語「分波」および「合波」は波長に関して使用されるため、簡単のため、波長分波器、波長合波器、波長合分波器を、それぞれ単に分波器、合波器、合分波器とも呼ぶ。
本開示の1つの側面によれば、最大M個(Mは2以上の自然数)の異なる波長の光を合波して、多重化光を出力するN個の合波器と、前記N個の合波器の各々からの前記多重化光を、MN/Kが自然数となるK個の分岐光に分岐するN個の光分岐と、前記N個の光分岐の各々の前記分岐光の中から、前記N個の合波器の内の1つの合波器に対応する分岐光を選択するK個のN×(MN/K)分配選択(DC)スイッチであって、各々が、前記N個の光分岐からの出力が接続されたN個の1×(MN/K)光分岐と、前記N個の1×(MN/K)光分岐の各々の出力ポートと接続された(MN/K)個のN×1光スイッチとから構成されたDCスイッチと、前記(MN/K)個のN×1光スイッチの各々によって選択された前記1つの合波器において合波された、最大M個の異なる波長の光から、任意の1つの波長の光を選択するMN個の可変フィルタとを備えた光スイッチ装置が提供される。
本開示の別の側面によれば、最大M個(Mは2以上の自然数)の異なる波長の光を合波して、多重化光を出力するN個の合波器と、前記N個の合波器の各々からの前記多重化光を、MN/K≦Yとなる最少の自然数Y個の分岐光に分岐するN個の光分岐と、前記N個の光分岐の各々の前記分岐光の中から、前記N個の合波器の内の1つの合波器に対応する分岐光を選択するY個のN×K分配選択(DC)スイッチであって、各々が、前記N個の光分岐からの出力が接続されたN個の1×K光分岐と、前記N個の1×K光分岐の各々の出力ポートと接続されたK個のN×1光スイッチとから構成されたDCスイッチと、前記K個のN×1光スイッチの各々によって選択された、前記1つの合波器において合波された最大M個の異なる波長の光から、任意の1つの波長の光を選択するMN個の可変フィルタとを備えた光スイッチ装置が提供される。
好ましくは、上述の光スイッチ装置では、各々が、前記最大M個の異なる波長の光の内の1つの波長の光を発生し、電気信号によって前記光を変調する手段を有し、前記1つの波長の変調光を出力する、最大M個の複数の光源をさらに備え、前記最大M個の複数の光源および前記N個の合波器の対応する1つが、波長群発生器を構成し、前記MN個の可変フィルタによって、任意の1つの波長の変調光が選択されることができる。
また、前記N個の光分岐または前記DCスイッチにおける前記光分岐の少なくともいずれかは、光分岐および波長選択スイッチを組み合わせて構成されることもできる。さらに、前記K個のN×(MN/K)DCスイッチは、M個のN×N DCスイッチとすることができる。
上述の光スイッチ装置では、前記N個の光分岐の各々の前段または後段の少なくとも一方に1つ以上の光増幅器をさらに備えることもできる。また、前記合波器は、複数のアレイ導波路回折格子(AWG)と、前記複数のAWGからの多重化光をさらに合流する光合流器、インタリーバまたは波長選択スイッチのいずれかとから構成されても良い。
本開示のさらに別の側面によれば、最大M(Mは2以上の自然数)個の異なる波長の光を合波して多重化光を出力するM入力L出力のN個の合波器であって、前記最大M個の異なる波長の光の各々は、L(M>Lの自然数)種類の波長からなる異なる波長グループの中から選択された1つの波長の光であり、MN/Lは自然数であって、前記N個の合波器の各々のL個の出力ポートの内の対応するN個の出力ポートが接続され、前記対応するN個の出力ポートから前記多重化光が入力されるL個のN入力波長分岐/選択部であって、各々が、前記波長分岐/選択部の前記N入力にそれぞれ接続され、前記N個の合波器の各々からの前記多重化光をMN/L個の分岐光に分岐するN個の光分岐、および前記N個の光分岐の各々の前記分岐光の中から、前記N個の合波器の内の1つの合波器に対応する分岐光を選択するMN/L個のN×1光スイッチを含むN入力波長分岐/選択部と、前記MN/L個のN×1光スイッチによって選択された前記1つの合波器において合波された、異なる波長の光から、任意の1つの波長の光を選択するMN/L個の可変フィルタとをさらに備えた光スイッチ装置が提供される。
好ましくは、上述の光スイッチ装置では、各々が、前記最大M個の異なる波長の光の内の1つの波長の光を発生し、電気信号によって前記光を変調する手段を有し、前記1つの波長の変調光を出力する最大M個の複数の光源をさらに備え、前記最大M個の複数の光源と、対応する1つの前記合波器とが波長群発生器を構成することができる。
また、上述の光スイッチ装置では、前記合波器は、サイクリック合波器であって、前記MN/L個の可変フィルタは、前記N個の合波器の全体でM個の異なる波長から任意の1つの波長の変調光を選択するか、または、非サイクリック合波器であって、前記MN/L個の可変フィルタは、前記N個の合波器の全体で(M+L−1)個の異なる波長から任意の1つの波長の変調光を選択するよう構成されていることができる。
また、前記波長グループの中の前記L種類の異なる波長は、連続して設定されたM個の波長の内の1つである開始波長と、前記開始波長に隣接する(L−1)個の波長から成ることができる。さらに上述の光スイッチ装置では、前記N個の合波器の各々に接続された複数の光源のMN個の変調する手段が光回線交換スイッチの入力ポートに対応し、前記可変フィルタのMN個の出力が前記光回線交換スイッチの出力ポートに対応し、波長ルーティングスイッチとして機能することができる。
本開示では、従来技術よりも低コストで大規模な光回線交換方式の光スイッチ装置が提示される。本開示の光スイッチ装置では固定波長の光源が利用可能となるので、従来技術と比べて光源の構成が簡単なもので済み、回路規模およびコストを大幅に減らすことができる。また、非常に狭い範囲で波長可変機能を利用する波長可変光源および可変フィルタを組み合わることで、波長ルーティングSW内の経路損失を減らし、波長ルーティングSWの構成をより簡略化する構成も提示される。
本開示の光スイッチ装置の詳細な構成および動作を説明する前に、使用される基本的な要素デバイスの構成および動作を簡単に説明する。ほとんどの要素デバイスは、図4〜図6で示した従来技術の波長ルーティングSW(光スイッチ装置)で使用されるものと共通している。
図7A〜図7Bは、アレイ導波路格子(AWG)の構成および動作を説明する図である。AWGは、本開示の波長ルーティングSWで、合波器または分波器に好適なデバイスとして使用される。図7Aは、1×N構成のAWGの構成を示し、一例として1個の入力ポート72および14個の出力ポートを持つものを示している。AWG70の入力ポート72に波長可変LD71が接続され、λ1〜λ14の内のいずれかの波長に設定されるとき、出力ポート73では、入力ポートの光信号の波長に応じた位置(1〜14番目)のポートに出力される。図7Bに示したように、入力ポート72に、波長軸上でλ1〜λ14の異なる波長の光信号(波長群)が多重化された多重化光が入力されれば、出力ポート73の各々において個々の波長に分波される。
図8A〜図8Bは、非周回性AWGの構成および動作を説明する図である。図8Aは、16×16の構成の非周回性AWG80の分波動作を示している。非周回性AWG80は16個の入力ポートを持っており、光信号が入力される入力ポートを1つだけずらすと、同じ波長の光信号が出力される出力ポートの位置が1つずつずれる。例えば、1番目の入力ポートにλ1〜λ16の多重化光が入力され、出力ポートの各々にλ1〜λ16の波長群81が出力されるとき、2番目の入力ポートにλ2〜λ17の多重化光が入力されると、出力ポートの各々にはλ2〜λ17の波長群82が出力される。2番目の入力ポートにλ1を入力してもAWG内で散乱して消失し、出力ポートには現れない。
図8Bは、入出力を入れ替え光信号の方向を逆にして合波器として動作させた場合を示している。合波時では、1つの入力ポートへの波長を1つだけずらすと、出力ポートの位置が1つだけずれることがわかる。また、入力波長を変化させることで、光信号の出力ポートの位置が変わることは、換言すれば、どの出力ポートに信号光を出力するかは入力ポートへ入力される光信号の波長によって選択され、入力光の波長による出力ポートの選択機能があることに留意されたい。この性質は、後述する実施例6において利用される。合分波をする具体的な波長は、AWGの設計パラメータを適宜決定することで自由に設定できる。例えば、ITU−Tグリッド上の波長に適合するように各ポートの波長を設定できる。
図9A〜図9Bは、周回性AWGの構成および動作を説明する図である。図9Aは、8×8の構成の周回性AWG90の分波動作を示している。周回性AWG90はそのFSR(Free Spectral Range)を、波長間隔(周波数間隔)ΔのN倍となるように設定することで、同一の出力ポートに、FSRの繰返し間隔で、周期的に波長が出力される。図9Aの例では、波長間隔Δ(例えば50GHz)の8倍に周回性AWGのFSR(400GHz)を設定すれば、それぞれ8個の入力ポート、出力ポートを持つ周回性AWGの1つの出力ポートに、8を周期とする波長が繰り返し現れる。図9Aに示した分波器においては、1番目の入力ポートにλ1〜λ16が入力されれば、符号91で示したように1番目の出力ポートにλ1、λ9、2番目の出力ポートにλ2、λ10、・・、8番目の出力ポートにλ8、λ16がそれぞれ出力される。図8Aに示した非周回性AWGと同様に、入力ポートを1つだけずらすと、符号92で示した波長番号のように同一の波長が現れる出力ポートの位置が1つずつずれる。
図9Bは、入出力を入れ替えて光信号の方向を逆にして合波器として動作させた場合を示している。同一の出力ポートにポート数の繰返し周期で周期的に波長(番号)が現れる周回性AWGの特徴とともに、非周回性AWGと同様に合波器として動作する。また、入力光の波長による出力ポートの選択機能があることも同様である。
他の要素デバイスとしては、図5で説明をしたスイッチおよびカプラで構成されるDCスイッチも使用される。本開示の波長ルーティングSWで使用される要素デバイスは、上述のもの以外に様々なものを採用可能であって、後述の実施例毎に他の様々なタイプのデバイスの利用形態が示される。以下図面と合わせて、本開示の波長ルーティングSWの構成および動作を様々な実施例とともに説明する。
以下の説明では、本開示の波長ルーティングSW(光スイッチ装置)として、入力ポートの数が光源の数MNに対応し、出力ポートの数もMNであるものを例示的に示している。しかしながら、入力ポートへのすべての情報信号(電気信号)を、それぞれ任意の目的出力ポートに切り替えることができる限り、入力ポートおよび出力ポートの数が必ずしも同じである必要はない。具体的には、入力ポートの数が出力ポートの数より少ない構成であっても、波長ルーティングSWとして同等に機能する。したがって、以下のいずれの実施例でも、入力ポートの数と出力ポートの数が同じものだけに限定されないことに留意されたい。
図10は、本開示の波長ルーティングの最も基本的な構成を示す図である。波長ルーティングSW(光スイッチ装置)100は、大まかに言ってN個の波長群発生器101−1〜101〜N、分岐/選択部107およびMN個の可変フィルタ(TF:Tunable Filter)106−1〜106−MNから構成される。N個の波長群発生器の各々は、例えば波長群発生器101−1に着目すると、異なるM個のλ1〜λMのうちのいずれか1つの波長に固定されたM個の固定波長レーザ群102−1を持っている。M個の異なる波長の光は、それぞれ図示されていない情報信号によって変調され、M個の変調光は合波器103−1によって合波されて、多重化光として波長群発生器101−1から出力される。波長ルーティングSW100全体では、M個の固定波長LDがN組(101−1〜101−N)あるので、MN個の固定波長LDからの各出力光によって別箇の情報信号が運ばれる。従来技術の波長ルーティングSW同様に、情報信号を入力可能なMN個の光源がMN個の入力ポートに対応する。ここで留意すべきは、本開示の波長ルーティングSWでは、光源(LD)で設定される出力光の波長が固定されていることであり、従来技術において波長可変LDを使用していたのと大きく相違している。
N個の波長群発生器の各々からのN個の多重化光は、分岐/選択部107によって分岐および選択され、目的の出力ポートにおいて選択されることになる情報信号を含む、MN個の分岐および選択された多重化光が出力される。より具体的には、分岐/選択部107は、1つの波長群発生器からの波長群の多重化光をMN個に分岐する、N個の光分岐(前段)104−1〜104−Nと、N個の波長群発生器からの多重化光の内の1つを選択するMN個のN×1光スイッチ(後段)105−1〜105−MNとから構成される。N個の光分岐(前段)104−1〜104−Nは、それぞれ、対応する1つの波長群発生器からの多重化光をMN個に分岐できれば良いが、後述するように、目的とする出力ポートに選択的に分岐ができる限り波長選択性を持つものであっても良い。MN個のN×1光スイッチ(後段)105−1〜105−MNは、N個の波長群発生器の内の1つを選択する機能を持ち、MN個の入力ポートの内で、ルーティングを行う入力ポートを含む1つの波長群発生器からの多重化光(λ1〜λM)を選択するよう動作する。
分岐/選択部107のMN個のN×1光スイッチ105−1〜105−MNの出力は、それぞれ可変フィルタ(TF)106−1〜106−MNに接続される。TFは、複数の波長を含む多重化光の中から任意の1つの波長の光信号を選択できるフィルタである。MN個のTFが、波長ルーティングSW100のMN個の出力ポートに対応する。MN個のTFの1つは、MN個の固定波長LDの内の任意の1つのLDに対応する情報信号を含む変調された光信号を選択することによって、そのLDに対応する入力ポートからそのTFに対応する出力ポートへの経路が設定されることになる。先にも述べたように、N個の波長群発生器の中の固定波長LDの数は、最大M個であって、すべてのまたは一部の波長群発生器で固定波長LDがM個より少なくても構わない。波長群発生器毎に光源の数が異なっていても良い。したがって、MN個の可変フィルタ(TF)は、MN個のN×1光スイッチによって選択された1つの合波器において合波された、最大M個の異なる波長の光から、任意の1つの波長の光を選択するように動作する。
具体的な波長ルーティング動作の一例を挙げれば、以下の通りである。例えば、1番目の波長群発生器101−1のM番目の固定波長LDは、λMの固定波長を持ち、この固定波長LDが情報信号Mで変調されたとする。変調されたλMの光信号は、合波器103−1で他の波長の光信号と合波され、λMの光信号を含む多重化光が101−1から出力される。多重化光は光分岐104−1によってMN個に分岐され、MN番目のN×1光スイッチ105−MNにも接続されている。MN番目のN×1光スイッチ105−MNは、N個の光分岐104−1〜104−Nからの各多重化光が入力されているが、そのうちの光分岐104−1からの分岐された多重化光を選択する。光スイッチ105−MNによって選択された多重化光は、上述の情報信号Mで変調されたλMの光信号を含んでいる。この選択された多重化光から、さらにMN番目のTFによってλMの光信号のみが選択される。したがって、情報信号Mで変調された光信号を、MN番目の出力ポートから得ることができる。最終的に、M番目の入力ポートからMN番目の出力ポートまでの経路が構成されたことになり、MN×MNの光スイッチにおいて、M番目の入力ポートからMN番目の出力ポートへ波長ルーティングがされたことになる。
従来技術の波長ルーティングSWでは、入力ポート側の各光源の光の波長を可変とすることによって任意の出力ポートを選択できるようにして、入力ポートおよび出力ポート間に任意の経路を設定していた。これに対して本開示の波長ルーティングSWは、入力ポート側の各光源の光の波長を固定とする一方で、出力ポート側の最終段にTFを配置して、TFの波長選択機能を利用して入力ポートおよび出力ポート間に任意の経路を設定している。したがって、波長ルーティングにおけるルーティング経路の設定能力およびその選択の任意性を、光源での光の設定波長に対してではなく、最終段のTFの選択波長に持たせている点で、従来技術との大きな構成上の差異がある。
上述のように、本開示の波長ルーティングSWは、波長群発生器において情報信号を運ぶ信号光を固定波長の光源(LD)によって生成する点に、従来技術との大きな差異がある。図4および図6に示した従来技術の波長ルーティングSWにおいて、広い波長範囲で安定動作させるために複雑な制御機構を必要とし、回路規模がより大きくより高価な波長可変光源を採用していたのと対照的である。波長可変LDは、最新技術のものであっても、光源自体に加えて波長可変機能を実現するために付随する制御回路が必須である。光スイッチの大規模化にあたって、光源の波長範囲をCバンドからさらにLバンドなどの他のバンドに広げようとしても、異なるバンドに渡って安定動作できる波長可変LDは未だ実現されていない。また、波長間隔を狭めて波長数を増やし光スイッチ装置のポート数を増やそうとしても、波長精度に対する要件が厳しくなる。一方で固定波長の光源では、付随する制御機構が簡単であり安価な汎用品も容易に入手可能であって、波長可変光源に比べて非常に低コストである。
本開示では出力ポートの数分のTFが必要となるが、TFは様々なタイプのものが利用可能であり、例えば、AWGとスイッチを組み合せたフィルタ、AO(Acousto-Optic:音響光学)効果を用いたフィルタ、シリコンフォトニクスによるリング共振器型フィルタ、シリコンフォトニクスによるマッハツェンダ干渉計型フィルタなどがある。特に、シリコンフォトニクスによる共振器型フィルタは小低化および低価格化の点で本開示のTFに好適である。TFの波長選択機能は、波長可変LDにおける波長可変機能と比べてより低価格で実現可能であって、汎用が高くより低コストで入手可能な部品を利用できる可能性があり、TFは大規模な波長ルーティングSWを提供するのにより好適である。
波長群発生器における合波器103−1〜103−Nとしては、例えばアレイ導波路回折格子(AWG)が利用可能であるが、他のバルク状の回折格子または光合波器(カップラ)等も利用できる。光分岐104−1〜104−Nとしては、最も簡単な構成のものとして概ね均等に光を分岐する1×MN光カプラを利用可能である。また、波長選択機能を持つ波長選択スイッチ(WSS:Wavelength Selective Switch)も利用できる。WSSは、入力に波長多重光を入力すると、任意の出力ポートに任意の波長の任意の組み合わせで出力できるデバイスである。単純な光分岐では、分岐数をnとするとき10log(n)で損失(dB)が発生するため、例えば分岐数が100になると損失は20dBにまで増大する。一方で、1入力L出力(1×L)のWSSは、同じ分岐数の光カプラよりも損失を少なく構成できる(例えば分岐数が20で7dB程度)。
本開示の波長ルーティングSWにおいて光分岐104−1〜104−Nは、N個の波長群発生器の内の1つの波長群発生器からの多重化光を出力ポート数(MN個)のTFへ分岐すれば良い。しかしながら、最終段の目的TFにおいて選択をしない波長の光信号はそもそも分岐してその目的のTFに供給する必要がない。したがって、WSSの波長選択性を利用する必要はないが、光分岐の代わりにWSSの波長選択機能を利用して、より低損失で、選択された入力ポートを含む波長群発生器から目的TFへ必要な経路を選択することができる。
WSSとしては、3D MEMSによる波長選択スイッチや、分波器、1×Nスイッチおよび分波器を組み合わせた波長選択スイッチ(WSS)を利用できる。また、光分岐104−1〜104−Nは、光カプラまたはWSSだけでなく、光カプラおよびWSSを組み合わせて実現することもできる。さらに、分岐数が多い場合には多段構成の光カプラ、多段構成のWSS、光カプラおよびWSSの従属接続、WSSおよび光カプラの従属接続など、様々な変形形態が利用可能である。詳細は、実施例7で説明する。
図10に示した本開示の実施例1の波長ルーティングSWによれば、低コストの固定波長光源、光カプラ、光スイッチおよびTFを利用して、従来技術と全く同様の光スイッチ装置を実現できる。低コストで光スイッチ装置を実現できる。その結果、 コストの高騰を抑制しつつ大規模な光スイッチ装置を実現できる。固定波長光源などの要素部品は従来技術と比べてより小型で安価なものが利用可能であり、しかも、1000×1000を超える大規模な光スイッチ装置も実現可能である。例えば、300×300の光スイッチ装置は、固定波長光源の数M=100、波長群発生器の数N=3として実現できる。さらに、1000×1000の光スイッチ装置は、固定波長光源の数M=100、波長群発生器の数N=10として実現できる。MおよびNの選択は、様々な組み合わせや変形が可能であって、上述の例の数値に何ら限定されない。本開示の光スイッチ装置(波長ルーティングSW)は、データセンタ等での利用にも好適であって、データセンタにおける消費電力の大幅な低減にも寄与することができる。
上述の実施例1では、分岐/選択部における光分岐104−1〜104−Nによって、波長群発生器からの多重化光を一度に出力ポートの数(MN)に分岐する構成であった。しかしながら、光カプラなどの光分岐では、分岐数nとともに、10×log(n)に従って損失(dB)が生じる。したがって、光スイッチ装置の光信号経路のいずれかの場所に光増幅器を入れて、レベルダイヤの調整が必要となる。光分岐を多段化することによっても全体の損失は変わらないが、レベルダイヤの調整のための光増幅器の配置がより柔軟に可能となる。以下、光分岐を多段化構成とした本開示の実施例を示す。
図11は、本開示の波長ルーティングSWの実施例2の構成を示す図である。波長ルーティングSW(光スイッチ装置)200は、N個の波長群発生器201−1〜201〜N、分岐/選択部209およびMN個の可変フィルタ(TF:Tunable Filter)206−1〜206−MNから構成される。本実施例では、分岐/選択部209を除いた波長群発生器201−1〜201−NおよびTFの構成は実施例1と全く同一であり、入力ポートおよび出力ポートの構成も同一である。以下では、分岐/選択部209における実施例1の構成との相違点に絞って説明する。
実施例2の分岐/選択部209は、1つの波長群発生器からの波長の多重化光をK個に分岐する、N個の1×K光分岐204−1〜204−Nと、N個の波長群発生器201−1〜201−Nからの多重化光の内の1つを選択するK個のN×(MN/K)DCスイッチ(後段)205−1〜205−Kとから構成される。DCスイッチ205−1〜205−Kは、それぞれ図5に示した3×3構成のDCスイッチと同様のものであるが、光信号の方向は従来技術におけるDCスイッチの使用時とは逆方向になることに留意されたい。実施例2の場合、DCスイッチ205−1〜205−Kの各々は、N個の1×(MN/K)光分岐207および(MN/K)個のN×1構成の光スイッチ208から構成される。
上述のように分岐/選択部209は、例えば波長群発生器201−1の出力に注目すれば、第1段目の1×K光分岐204−1と、これに従属接続される第2段目のK個の1×(MN/K)光分岐207とを含んでいる。したがって、波長群発生器201−1からの多重化光出力は従属接続された2段構成の光分岐によってMN個の経路に分岐されており、本実施例の分岐/選択部209は、実施例1の分岐/選択部107の構成と実質的に全く同じであることが理解されるだろう。
実施例1と同様に、N個の光分岐204−1〜204−NおよびDCスイッチ内のN個の1×(MN/K)光分岐207は、いずれも、1つの多重化光を目的とする出力ポートのTFへ分岐ができる限り波長選択性を持つものであっても良い。すなわち、光分岐の最も簡単な構成のものとして概ね均等に光を分岐する1×Kまたは1×(MN/K)の光カプラを、または、波長選択機能を持つ波長選択スイッチ(WSS)を利用できる。さらに、光分岐および波長選択スイッチの組み合わせも利用可能であり、光分岐と波長選択スイッチの前後の順序も問わない。
図11に示した本実施例の波長ルーティングSWでは、光分岐または波長選択スイッチ(204−1〜204−N)が多重化光をK個(MN/Kが自然数となるK)に分岐し、光スイッチ装置の入力ポートおよび出力ポートの数がいずれもMN個であって、出力側に未使用ポートが無い構成を示している。しかしながら、本開示の光スイッチ装置が図11のような入出力ポートに余り(未使用ポート)が無い構成だけに限られないことは言うまでもない。未使用ポートの存在も許容する、本実施例のより一般的な構成例は、実施例8として後述する。
本実施例では、分岐/選択部209における多段化した光分岐として、第1段目の光分岐と、第2段目の光分岐を含むDCスイッチとで構成されるものを示したが、これは様々な入力ポート数および出力ポート数の組合せのDCスイッチが汎用品として流通し入手容易であるためで、DCスイッチを利用することに限定されるわけでない。実施例2の構成は、分岐/選択部209における光分岐を多段化しているところに特徴があり、各要素をどのような具体的なデバイスで実現するかは何ら上述の例に限定されないことに留意されたい。
図12は、本開示の波長ルーティングSWの実施例3の構成を示す図である。波長ルーティングSW(光スイッチ装置)300は、N個の波長群発生器301−1〜301−N、分岐/選択部308およびMN個の可変フィルタ(TF)306−1〜306−MNから構成される。本実施例の波長ルーティングSWは実施例1の構成と概ね同一であり、入力ポートおよび出力ポートの構成も同一である。本実施例では、波長群発生器の各々と対応する分岐/選択部との間に、光増幅器307−1〜307−Nをさらに備えている。前述のように、分岐/選択部308では、各波長群発生器から多重化光を出力ポート数MNだけ分岐するため、分岐数に応じて経路の損失が生じる。さらに、光スイッチや合波器などにおける過剰損失も考慮する必要がある。光スイッチ装置において経路切換えをした後でも、出力光信号について一定の光電力レベルを維持することが必要なので、光スイッチ装置内においてレベルダイヤの低下を補償する光増幅器を挿入するのが好ましい。
光増幅器を挿入する箇所は、高価な光増幅器の数をできるだけ減らすために、多くの光信号が多重化されている部分に限られる。本開示の波長ルーティングSWでは、本実施例のように波長群発生器301−1〜301−Nの出力段にそれぞれ挿入することができる。本開示の波長ルーティングSWでは、光SWの規模である入出力ポートの数MNは、1つの波長群発生器内に含まれる波長の種類の数Mおよび波長群発生器(波長群)の数Nによって決定される。したがって、本開示の光スイッチ装置は、波長の種類数Mと波長群数Nとを組み合わせて、使用するデバイスのその時々の制限条件などに応じて光スイッチ装置の構成を選択できる設計の柔軟性にも特徴がある。
例えば、広帯域の光増幅器は一般に高価であるため、波長の種類数Mを抑えて、比較的狭い帯域の増幅器を使用して波長群の数Nを多めに構成することができる。逆により広い帯域の光増幅器が安価に入手可能となれば、波長の種類数Mを増やして、波長群数Nを抑えた構成とすることもできる。また波長数Mが同じとき、光源の波長間隔を狭く選べば、狭い波長帯域の光増幅器を使用すれば良いので低コスト化が可能となる。光源の波長間隔は、固定波長光源の安定度や、TFの精度などによっても決定できる。またTFの動作可能な波長範囲が十分広いものであれば、波長群発生器で発生させるM個の波長が、波長群発生器間で一部だけ重複していたり、全く異なっていたりしても良い。
図13は、本開示の波長ルーティングSWの実施例4の構成を示す図である。波長ルーティングSW(光スイッチ装置)400は、N個の波長群発生器401−1〜401−N、分岐/選択部411およびMN個の可変フィルタ(TF)406−1〜406−MNから構成される。本実施例の波長ルーティングSWは実施例2と概ね同一の構成であり、入力ポートおよび出力ポートの構成も同一である。
本実施例では、波長群発生器の各々と対応する分岐/選択部との間に光増幅器409−1〜409−Mを、または、光分岐404−1〜404−Nの各々と対応するDCスイッチ405−1〜405−Kとの間に光増幅器410−1〜410−Kをさらに備えている。図13に示した例では光分岐404−1〜404−Nの前段と後段の両方に光増幅器がそれぞれ挿入されているが、前段か後段のいずれか一方であっても良い。本実施例の波長ルーティングSWの構成によれば、光増幅器を挿入できるステージが2箇所となるため、光増幅器の配置方法やゲイン配分について、より設計の柔軟性が得られる。ポート数が増えて経路の損失が増加し、経路中の1箇所に光増幅器を挿入するだけでは十分なゲインが得られないとき、本実施例の構成が必須となる。また、高ゲインまたは高光出力の光増幅器は高価であるため、より低ゲインの光増幅器を2段使用する構成とすることもできる。また、N個の波長群発生器の間で、光増幅器の配置構成を異なるものとしても良い。したがって、本実施例によれば、その時々の光増幅器の性能やコストを考慮して、最適の構成を選択することが可能となる。
上述の実施例1〜4の各波長ルーティングSWでは、分岐/選択部の構成における様々なバリエーションを示したが、本実施例では波長群発生器における合波器のバリエーションを提示する。先にも述べたように、波長群発生器の合波器としては、小型で損失が比較的少ないAWGを利用するのが好ましい。しかしながら、光スイッチ装置のポート数を増やそうとすると、1つの波長群発生器当たりの波長数Mを増やしたり、波長間隔を狭くしたりする必要があり、AWGの設計・作製が難しくなってくる。本実施例では、これらの問題を軽減する、複数のAWGを使用した波長群発生器の具体構成例を示す。
図14A〜図14Cは、本開示の実施例5の波長ルーティングSWであって、波長群発生器においてAWGを利用した合波器の構成例を示す図である。図14Aは、本開示の波長ルーティングSWにおける波長群発生器500の基本構成を示す。合波器501は、それぞれ異なる波長(λ1〜λM)を発生するM個の光源503からの各変調光を合波して、多重化光を出力する。したがって、合波器として、M×1のAWGを利用できる。しかしながら、例えば、50GHz間隔で100入力ポートを持つAWGや、25GHz間隔で100〜200入力ポートを持つAWGを実現しようとしても、中心波長の精度や透過損失の絶対値・ばらつきなどの特性要件を全チャネルで満たす設計は難しい。
図14Bは、1つのAWGのポート数を減らす構成例1を示す。構成例1では、波長群発生器510は、M個の固定波長光源513と、2つのAWG511−1、511−2、波長合流器512から構成される。本構成例では、M個の固定波長光源513を2つのグループに分けて、それぞれのグループの波長サブ群に対応したチャネル構成のAWGを利用する。1つのAWGあたりの入力ポート数を減らすことができるのでAWGの設計条件が緩和される。2つのAWG511−1、511−2からの多重化光は、波長合流器512で合流され、1つの多重化光として次段の分岐/選択部へ供給される。波長合流器512としては、光カプラ、WSS、MZ干渉計、AWGなどの様々な形態のものを利用できる。
図14Bでは、M個の光源(波長)を2つのグループに分けた最も簡単な例を示したが、3以上のグループに分けても良い。また、1つのグループ当たりの波長数は同じであっても異なっていても良い。
図14Cは、1つのAWGのポート数を減らし、波長間隔を広げる構成例2を示す。構成例2では、波長群発生器520は、M個の固定波長光源523と、2つのAWG521−1、521−2、インタリーバ522から構成される。本構成例では、M個の固定波長光源523を2つのグループに分けて、それぞれのグループの波長サブ群に対応したチャネル構成のAWGを利用する。本構成例では、一方の光源のグループは、波長番号λ1〜λMの内の奇数番目の波長の光源で構成される。他方の光源のグループは、波長番号λ1〜λMの内の偶数番目の波長の光源で構成される。このように、連続したM個の波長λ1〜λMの合波が2つのAWG521−1、521−2で交互に行われるように各AWGを構成することで、1つのAWG当たりのポート数を減らし、かつ、合波する波長間隔を2倍(例えば、50GHz―>100GHz)とすることができる。AWGの設計条件が、ポート数、波長間隔の両面で緩和される。2つのAWG521−1、521−2からの多重化光は、インタリーバ522で合流され、1つの多重化光として次段の分岐/選択部へ供給される。インタリーバ522としては、光カプラ、WSS、MZ干渉計、AWGなど様々な形態のものを利用できる。
図14Cでは、M個の光源(波長)を偶数番号および奇数番号の2つの波長グループに分けた例を示したが、3以上のグループに分けても良い。例えば3グループの場合では、各グループの波長番号は、波長番号を3で割った剰余(0、1、2)で分ければ良い。nグループの場合では、各グループの波長番号は、波長番号をnで割った剰余(0、1、・・n−1)で分ければ良い。
上述の本実施例の各構成例によって、1つの波長群発生器あたりの光源数(波長数M)を100以上に拡大することがより簡単となり、1000×1000を超える大規模な光スイッチ装置も実現可能である。
本開示の波長ルーティングSWの上述の各実施例では、波長群発生器における各光源は固定波長のものを利用している。従来技術のような波長可変光源に比べて非常に安価な光源を採用できるため、データセンタでの利用にも適した低コストの光スイッチ装置を実現している。しかしながら、光源において限定的に狭い範囲で波長可変な光源を使用すれば、AWGの合波機能および入力波長に応じた出力ポートの選択機能をさらに利用できる。これによって光スイッチ装置の経路損失を減らすこと可能となり、光増幅器の数を減らしたり、必要なゲインを下げたりするなど、光増幅器の所要要件を緩和することができる。
図15は、本開示の波長ルーティングSWの実施例6の構成を示す図である。本実施例の波長ルーティングSW(光スイッチ装置)600は、N個の波長群発生器601−1〜601−Nと、L個の波長ルーティング部607−1〜607−Lからなる。波長ルーティング部の各々は、実施例1における分岐/選択部および可変フィルタ(TF)を合わせた構成と同一である。すなわち、本実施例では、分割された実施例1の分岐/選択部および可変フィルタ(TF)がL個並列に構成されている。1つの波長群発生器からL組の異なる多重化光が出力され、L個の波長ルーティング部の各々に供給されている。
波長群発生器601−1〜601−Nの構成も、他の実施例と概ね同様であるが以下の点で異なっている。本実施例では、1つの波長群発生器におけるM個の光源は、λ1〜λMの内の開始波長(λ1〜λM)に加えて、開始波長を含めて連続したL個に限定された範囲内で波長可変な光源を使用する。具体的には、波長群発生器601−1においては、M個の光源の内の1番目の光源については、λ1を開始波長として、さらにλ2、・・λLの範囲で、光源の発振波長を可変できる。同様に、2番目の光源については、λ2を開始波長としてさらにλ3、・・λL+1の範囲で、3番目の光源については、λ3を開始波長としてさらにλ4、・・λL+2の範囲で光源の発振波長を可変できる。したがって、M番目の光源では、λMを開始波長として、さらにλM+1、・・λL+M-1の範囲で光源の発振波長を可変できる。すなわち、1つの光源に1つの波長グループが対応し、1つの波長グループにおいてL種類の波長を含んでいる。これに限定されないが、異なる光源には、異なる波長グループを割り当てることができる。
より具体的には、1つの波長群発生器の最大の光源数をM=100とすると、従来技術ではそれぞれの光源が100種類の異なる波長を出力する波長可変機能を必要としていた。これに対して、本実施例においてL=10すると、開始波長を含めて隣接する10種類の波長を出力する波長可変機能を備えていれば十分であって、波長の可変範囲は従来技術の1/10で済む。広い範囲で安定に光源波長を可変する性能を実現することは、波長可変光源のコストおよび設計の困難度に直結しており、波長の可変範囲が1/10程度であれば、レーザ光源の波長制御機構を大幅に簡略化することができる。先にも述べたように本実施例においても、N個の波長群発生器の中の波長可変LDの数は最大M個であって、すべてのまたは一部の波長群発生器で波長可変LDがM個よりも少なくても構わない。また、波長群発生器毎に光源の数が異なっていても良い。
本実施例の波長ルーティングSWでは、限定的な狭い波長範囲で、波長可変光源を利用する。これと同時に、波長群発生器601−1の合波器としてAWG603−1のL個の出力ポートを利用し、光源からAWGの1つの入力ポートへ入力される光の波長を狭い範囲(例えばL=10)で可変することで、その光源からの変調光を出力するAWG出力ポート1〜Lを選択することができる。図8Bに示した非周回性AWGの合波動作例を再び参照すれば、各光源の開始波長は波長群83に対応しており、出力ポート1に合波され出力される。これに対して、開始波長から波長番号を1つ変更したときの状態が波長群84に対応し、出力ポート2で合波され出力されることが理解されよう。このようにAWGの合波機能および入力波長に応じた出力ポートの選択機能よって、対象とする光源からの変調光を含む多重化光の出力先を前述のL個の波長ルーティング部607−1〜607−Lの内のいずれか1つに選択できる。
上述のAWGの波長合波機能および入力波長に応じた出力ポートの選択機能は、非周回性AWGおよび周回性AWGに共通しており、本実施例の構成では、非周回性AWGおよび周回性AWGのいずれも使用することができる。非周回性AWGにおいて例えばM=100、L=10とした場合、1つの波長群発生器全体ではλ1〜λ110の範囲の波長を出力する必要がある。しかし、個々の波長可変光源について見れば、各々の光源での波長可変範囲は非常に狭いので(L=10で、10種類の波長で良い)、波長可変光源としての複雑さやコストのハードルはむしろ従来技術よりも本実施例の構成の方が緩い。従来技術ではすべての光源においてλ1〜λ100の全波長範囲で波長可変する能力が必要とされたのと比べると、本実施例のように狭い波長範囲に限定された波長可変光源を実現するほうがむしろ簡単である。周回性AWGを利用して、光源の数M、周回性AWGのポート数、すなわち1つの光源で可変する波長数Lを適切に設定すれば、1つの波長群発生器全体でも、実質的に他の実施例と同じ数の開始波長λ1〜λ100にできる。
図16は、実施例6において非周回性(非サイクリック)AWGを使用する場合の各光源における使用波長を模式的に示した図である。1つの波長群発生器内の光源(LD)の数がMで、簡単のため、L=3の場合を示しており、各LDにおける使用波長の番号を矩形内に表記している。1番目のLDでは、波長番号1、2、3が使用され、2番目のLDでは、波長番号2、3、4が使用される、以下同様にして、M番目のLDでは、波長番号M、M+1、M+2が使用される。矩形内の最初の波長が開始波長に対応する。
図17は、実施例6において周回性(サイクリック)AWGを使用する場合の各光源における使用波長を模式的に示した図である。図16と同様に、波長群発生器内の光源数がMで、L=3の場合を示しており、各LDにおける使用波長の番号を矩形内に表記している。非サイクリックAWGとの相違点は、開始波長がM番目に近づいたときに、使用波長範囲は周回的に隣接する波長を含む点である。すなわち、M−1番目のLDでは波長番号M−1、M、1が使用され、M番目のLDでは波長番号M、1、2が使用される。M番目の波長と1番目の波長は物理的には離れているが、周回性AWGにおいては周回的には隣接する関係にある。周回性AWGを用いることで、波長群発生器内で使用する波長の総数はM個のままで済む。
波長ルーティング部607−1〜607−Lの各々は、実施例1の分岐/選択部および可変フィルタ(TF)の構成と同一である。より具体的には、波長ルーティング部607−1の波長分岐/選択部は、N個の波長群発生器601−1〜601−Nの各々のL個の出力ポートの内の対応するN個の出力ポートが接続され、これらの対応するN個の出力ポートから多重化光が入力されるN個の入力を持つ。波長ルーティング部607−1の波長分岐/選択部は、これらN個の入力にそれぞれ接続されたN個の波長群発生器の各々からの多重化光をMN/L個に分岐するN個の光分岐または波長選択スイッチ604−1、および、N個の光分岐または波長選択スイッチの各々の前記分岐光の中から、前記N個の波長群発生器の内の1つの波長群発生器に対応する分岐光を選択するMN/L個のN×1光スイッチ605−1を含む。
ここでは簡単のため、MN/Lの値は自然数であるものとする。したがって、図15では光スイッチ装置としての入力ポートおよび出力ポートの数がいずれもMN個であって、波長ルーティング部607−1〜607−Lの出力ポートに未使用ポートが無い構成を示している。MN/Lの値が非自然数であって光スイッチ装置として未使用の出力ポートがあることを許容し、本実施例をより一般化した構成は、後述の実施例9で説明する。
図15に示した本実施例の波長ルーティングSWでは、1つの波長群発生器内で2つの光源の設定波長が同じであっても、光源が接続されるAWGの入力ポートが異なれば、各光源からの変調光を含む合波された多重化光の出力ポートも異なり、L個の波長ルーティング部607−1〜607−Lの内の異なるものが選択される。したがって、1つの波長群発生器内の個々の光源において、開始波長から連続したL個の波長範囲内の任意の波長を選択することで、AWGのL個の出力ポートのいずれかが選択され、さらに対応するMN個の出力ポートが選択される。換言すると、本実施例の非常に優れた点は、他の実施例における分岐/選択部の光分岐機能の一部を、波長群発生器のAWGの出力ポート選択機能によって兼ねているところにある。
光分岐として使用される光カプラでは、2分岐で3dB、4分岐で6dB、・・10分岐で10dBのように、分岐数に対応して損失が増えてゆく。これに対し、本実施例で出力ポート選択機能を実行するAWGの入出力ポート間の損失は3〜5dB程度で、出力ポート選択機能を利用することで、光スイッチ装置全体で各経路の損失を減らすことができる。光カプラと比較した損失の減少量はAWGの出力ポート数が多いほど大きくなる。これによって、光増幅器の数を減らしたり、光増幅器のゲイン、最大光出力レベル等の性能条件を緩和したりすることが可能となり、光スイッチ装置の小型化、低コスト化をさらに進めることができる。
本実施例の構成にこれまでの実施例の特徴と組み合わせることができるのは言うまでも無い。例えば、本実施例の構成に実施例2の光分岐を多段化した構成を組み合わせることができる。また、実施例3および実施例4のように光増幅器を組み合わせることもできる。さらに実施例5のように波長群発生器内で複数のAWGを利用することも可能である。
図18A〜図18Cは、本開示の実施例7の波長ルーティングSWにおける光分岐または波長選択スイッチの構成を説明する図である。上述の実施例1〜6における光分岐または波長選択スイッチの別の構成例を示す図である。図18Aは、上述の各実施例で示したように、波長群発生器からの多重化光を分岐する光分岐または波長選択スイッチ(104−1〜104−N、204−1〜204−N、304−1〜304−N、404−1〜404−N)を光分岐で構成した場合を示す。光分岐として例えば光カプラ801を利用することができ、例示的に12分岐構成の光カプラを示している。
図18Bは、同じ12の分岐を実現するために、3分岐の光カプラ801と、1×4構成のWSS802−1〜802−3とを組み合わせて、縦続接続した構成例を示す。1×4構成のWSSは、多重化光を4つの出力の内の任意のポートに任意の波長の組み合わせで出力できる。したがって、WSSは単純な分岐機能ではなく波長選択性を持っており、本開示の各実施例における最終段の波長選択フィルタ(TF)の機能を持っていることになる。既に述べたように、波長ルーティングSWでは、所望の出力ポートに対応する最終段の目的TFで選択をしない波長の光信号は、そもそも分岐してその目的のTFへ供給する必要がない。したがって、最終段にTFを備えている限りWSSの波長選択性を利用する必要はないが、光分岐およびWSSを組み合わせてWSSの波長選択性を利用して、選択された入力ポートを含む波長群発生器から目的TFまでの経路を、より低損失に構成することができる。
光分岐または波長選択スイッチとして図18Bの構成を実施例1、実施例3に適用すれば、最終段のTFの波長選択機能をWSSで代替できるため、TFを省略することができる。ただし、一般にWSSは光カプラに比べて高価であり、実現可能な出力ポートの数も最大で20程度であって、1×20の構成に制限されている。目的とする光スイッチ装置の規模が1000×1000などのように非常に大きい場合には、WSSの数が増える図18Bの構成は適さない。既に述べたように、光カプラでは例えば20分岐では13dBの損失が生じるが、1×20WSSでは、7dB程度の損失で済む。したがって、光スイッチ装置全体の経路の損失を減らすために、光分岐とWSSを組み合わせることが有効である。
図18Cは、図18Aの光カプラ801と同じ12の分岐を実現するために、1×4構成のWSS803と、4つの3分岐光カプラ804−1〜804−4とを組み合わせて、縦続接続した構成例を示す。図18Cの構成は、図18Bにおいて縦続接続の順序を前後に入れ替えたものであり、図18Aの構成のように光カプラ801単体を使用する場合と比べて、同じ12分岐をより低損失で実現できる。また、図18Bの構成と比べて、高価なWSSの数を減らすことができる。図18Cの構成のように後段側に光カプラ804−1〜804−4を置いた場合は、最終段のTFを省略することはできないが、図18Bの構成と同様に、光分岐とWSSを組み合わせて、光スイッチ装置全体の経路の損失を減らすことができる。
上述の図18Bおよび図18Cのように光分岐とWSSを組み合わせた構成は、実施例2、実施例4におけるDCスイッチの中の光分岐または波長選択スイッチ207、407に対しても適用できることは言うまでもない。本実施例のように、光分岐とWSSを組み合わせることで、光スイッチ装置の経路損失をより少なくして光増幅器の構成や仕様を簡略化することも可能となる。
図19は、本開示の実施例8の波長ルーティングSWであって、図11に示した実施例2の波長ルーティングSWの構成をより一般化した波長ルーティングSWの構成例を示す図である。図11の実施例2の構成では、光分岐または波長選択スイッチ204−1〜204−Nの分岐数KがMN/Kが自然数となるものに限定されていた。MN/Kが非自然数では、DCスイッチが実現でないためである。この制限によって、図11の実施例2の構成では、各DCスイッチ205−1〜205−Kの出力ポートに未使用の余りポートが無く、出力ポートの利用に無駄がなかった。図19の本実施例の構成では、分岐/選択部256において、光分岐または波長選択スイッチ251−1〜251−Nにおける多重化光の分岐数Yが、MN/K≦Yを満たす最小の自然数Yである点で実施例2と相違している。より具体的には、Y個の分配選択(DC)スイッチ252−1〜252−Yを備え、各々のDCスイッチは、N個の波長群発生器201−1〜201−Nの中から1つの波長群発生器からの多重化光を選択するN個の1×K光分岐または波長選択スイッチ253と、N個の光分岐または波長選択スイッチ253からの出力と接続されたK個のN×1光スイッチ254からなる。
また本実施例では、Y個のDCスイッチ252−1〜252−Yの合計の出力ポート数はKY個となり、光スイッチ装置として波長ルーティングのために必要なMN個、すなわち可変フィルタ(TF)に必要な数MN個よりも多い。したがって、例えば図19のように最後のY番目のDCスイッチ252−Yで、(YK−MN)個の出力ポートはTFが不要となり、未使用ポート255となる。ここで、未使用ポートの位置をY番目のDCスイッチ252−Y内だけに集中させる必要はなく、Y個のDCスイッチ252−1〜252−Yの出力ポートの内の任意の位置とすれば良い。本実施例では、光分岐または波長選択スイッチ251−1〜251−Nの分岐数Yの選択について、MNの値との関係で制限が緩和される代わりに余りポートが生じる点のみで、実施例2と相違している。したがって本実施例は、この分岐数Yの制限が無い分、実施例2の波長ルーティングSWの構成をより一般化したものとなっている。
ここで、より具体的な数値例を挙げると以下の通りとなる。波長群発生器の数をN=2、波長群発生器の中の光源の数をM=100として、Kを6とする。この時、100×2/6=33.33となるので、MN/K≦Yを満たす最小のYは、34となる。分岐/選択部として、2個の1×34構成の光分岐(または波長選択スイッチ)、および、34個の2×6構成のDCスイッチを備えれば良い。各々のDCスイッチは、2個の1×6構成の光分岐(または波長選択スイッチ)と、6個の2×1構成光スイッチを含んでいる。各々のDCスイッチは6つの出力ポートを持っているので、34個のDCスイッチ全体には、YK個すなわち34×6=204個の出力ポートがある。しかし、波長ルーティングSWとしての所要出力ポートはMN個すなわち100×2=200個あれば十分なので、34個のDCスイッチの全出力ポート204個の内、4個の出力ポートが未使用となる。未使用ポートの場所は、34番目のDCスイッチの中の4つとすれば良いが、1カ所に集中させてまとめる必要性はなく、34個のDCスイッチの出力ポートの内の任意の4カ所であれば良い。
図15で説明をした実施例6の波長ルーティングSWでは、波長群発生器内のAWGの出力ポートの数Lを、MN/Lが自然数となるものに限定していた。MN/Lが非自然数では、波長ルーティング部内の光分岐または波長選択スイッチが実現できないためである。この制限によって実施例6では、各波長ルーティング部607−1〜607−Lの出力ポートにも余った未使用出力ポートが無く、光スイッチ装置全体で見たときに出力ポートの利用に無駄がなかった。しかしながら、実施例2と実施例8との間の関係と同様に、光スイッチ装置で未使用出力ポートがあることを許容すれば、MN/Lの値が非自然数の場合も含めて、実施例6の構成をより一般化することができる。実施例6を一般化した本実施例の構成は、L個の波長ルーティング部607−1〜607−Lの内の一部にTFが接続されないものがあるか、または、L個の波長ルーティング部607−1〜607−Lの構成のすべてが同一ではない点だけで実施例6と相違しており、基本的な構成は図15と同じである。
本実施例では、MN/Lの値が自然数でない場合に、新たにMN/L≦K を満たす最小の自然数のKが導入される。波長ルーティング部内の分岐/選択部において、光分岐または波長選択スイッチ604−1〜604−Lの構成、並びに、光スイッチ605−1〜605−Lの数が、それぞれ、MN/Lの代わりにKによって表される。したがって、波長ルーティング部内の各要素間の接続関係は実施例6の場合と変わりがない。ただし未使用ポートの分の分岐経路は不要なので、一部の波長ルーティング部の分岐経路の数を減らすことができる。したがって、L個の波長ルーティング部の構成がすべて同一である必要はない。未使用ポートを含む波長ルーティング部では、未使用ポートを含まない他の波長ルーティング部よりも分岐経路を減らして、未使用ポートの数に応じた構成の簡略化が可能となる。
図20は、MN/Lの値が自然数である実施例6と、MN/Lの値が非自然数である本実施例の光スイッチ装置構成パラメータを比較した表である。M、N、Lの値の異なる組み合わせについて、具体的な構成例(例1〜例6)も記載されている。本実施例において波長ルーティング部607−1〜607−Lの構成をすべて同一とすれば、実施例2および実施例8の対比からも容易に理解できるように、波長ルーティング部607−1〜607−Lの出力ポートの総数はKL個となって、光スイッチ装置の最大ポート数MN個よりも多くなる。具体例を挙げれば、図20の例6においては、MN=82×8=656、KL=94×7=658となって、波長ルーティング部全体で2ポートの未使用ポートが生じる。したがって、例えばL番目の波長ルーティング部607−Lだけを、光分岐または波長選択スイッチ604−Lの分岐数を減らした構成とすることができる。
しかしながら、1つの波長ルーティング装置内で構成の異なる波長ルーティング部を作製することは、モジュール化構成が利用されていることや製造工程などを考慮しても、かえって管理上の煩雑さが増す。このため、すべての波長ルーティング部607−1〜607−Lの構成を同一とするのがより合理的である。図20の表は、本実施例で図15に示したようにすべての波長ルーティング部の構成が同一であり、未使用出力ポートがある前提で具体的な構成例を示したものである。波長ルーティング部607−1〜607−Lの出力ポートの総数はKL個となるが、最終段のTFは、光スイッチ装置として必要なMN個だけ備えていれば良いのは当然である。また本実施例の光スイッチ装置において、未使用出力ポートの位置をL番目の波長ルーティング部607−L内とする必要はなく、L個の波長ルーティング部の出力ポートの内の任意の位置とすれば良い。
したがって、未使用出力ポートが非常に多い場合でも、図20の表に例示した波長ルーティング部の構成のものが少なくとも1つ含まれていれば、本実施例の構成に含まれる。しかしながら、未使用出力ポートが多数あるようなM、N、Lの構成は無駄が多く、そもそも不適切なパラメータを選択した設計であって、できるだけ未使用出力ポートが少ない構成とするのが合理的であるのは当然である。
本開示の光スイッチ装置は、実施例8の変形形態として、最大M(Mは2以上の自然数)個の異なる波長の光を合波して多重化光を出力するM入力L出力のN個の合波器(603−1〜603−N)であって、前記最大M個の異なる波長の光の各々は、L(M>Lの自然数)種類の波長からなる異なる波長グループの中から選択された1つの波長の光である、合波器を備え、MN/L≦K を満たす最小の自然数をKとするとき、前記N個の合波器の各々のL個の出力ポートの内の対応するN個の出力ポートが接続され、前記対応するN個の出力ポートから前記多重化光が入力されるL個のN入力波長分岐/選択部であって、そのうちの少なくとも1つの波長分岐/選択部が、前記N入力にそれぞれ接続された前記N個の合波器の各々からの前記多重化光をK個に分岐するN個の光分岐、および、前記N個の光分岐の各々の前記分岐光の中から、前記N個の合波器の内の1つの合波器に対応する分岐光を選択するK個のN×1光スイッチを含むN入力波長分岐/選択部と、前記K個のN×1光スイッチによって選択された前記1つの合波器において合波された、異なる波長の光から、任意の1つの波長の光を選択するMN/L個の可変フィルタ(606−1〜606−L)とを備えた光スイッチ装置として実施できる。また、上述の光スイッチ装置において、各々が、前記最大M個の異なる波長の光の内の1つの波長の光を発生し、電気信号によって前記光を変調する手段を有し、前記1つの波長の変調光を出力する最大M個の複数の光源をさらに備え、前記最大M個の複数の光源と、対応する1つの前記合波器とが波長群発生器を構成することもできる。
これまで述べたすべての実施例では、光スイッチ装置の経路を構成する構成要素だけを示しているが、波長ルーティングSWには各図には示されない各要素の制御部が含まれている。例えば、波長群発生器の各光源の波長を設定したり、可変フィルタの同調波長を設定したり、波長選択スイッチの選択波長を設定するために、光スイッチ装置の経路切り替えに合わせて、制御部が各要素を制御する。制御部の構成には何ら限定が無く、1つの制御部ですべての波長ルーティングSWの全体動作を制御しても良いし、分散した制御部によって制御しても良い。各制御部には、CPUやメモリなどが含まれるがその構成にも限定は無い。
以上詳細に述べたように、本開示の波長ルーティングSWは、固定波長の光源および可変フィルタを用いることによって、従来技術と比べて非常に低コストの光源を採用することが可能となる。また限定された狭い波長範囲の波長可変光源およびAWGの入力波長による出力ポート選択機能を組み合わせて、固定波長光源に準じた安価な光源を利用しながら、波長ルーティングSWの経路の損失を抑えることができる。また、本開示の光スイッチ装置(波長ルーティングSW)は、データセンタ等での利用にも好適であって、データセンタにおける消費電力の大幅な低減にも寄与することができる。