ブロードバンド通信サービスの普及により、光通信ネットワークの大容量化要求がますます高まっている。このような中で、多数の光波長信号を一括に伝送する光波長多重(Wavelength Division Multiplexing:WDM)伝送が、ネットワークの伝送容量を飛躍的に増大させる技術として注目されている。一方、シリコン等の基板上に形成した石英系ガラス導波路によって構成された平面光波回路(Planar Lightwave Circuit:PLC)は、多様な光デバイスの基盤技術として盛んに研究開発が行われている。このようなPLC技術を利用したアレイ導波路回折格子(Arrayed-Waveguide Grating:AWG)は、複数の波長を持つ波長チャンネル光を含む波長分割多重光を各波長チャンネル光へ分波し、または、複数の波長チャンネル光を波長分割多重光へ合波する機能を持つ。AWGは、WDM伝送における波長合分波回路として重要な役割を果たしている。
特に、近年の光通信ネットワークにおいては、WDM伝送の波長チャンネル数が増大している。そこで、WDM光を複数の波長チャンネル光のグループ(光波長群)に分波し、または光波長群を波長分割多重光へ合波する光波長群合分波回路を用いて、波長群単位で光信号を取り扱うWDM伝送の適用も始まっている。このような光波長群合分波回路を実現する手段の一つとして、2つのAWGを組み合わせて一体とした回路構成が提案されている。このAWGによる光波長群合分波回路は、複数の独立な光波長群合分波回路の機能を一体とした回路によって実現できる。他の構成と比べて、相対的に小型に回路を構成できるという点で優れている。
特許文献1には、2つのAWGを組合せて一体とした構成による光波長群合分波回路について詳しく記載されている。特許文献1に記載された実施例11は、1つの光波長群に含まれる全ての波長チャンネルが隣接し、さらに回路を構成する2つのAWG間を接続する経路に交差が無い光波長群合分波回路を開示している。上述の特徴を持つため、この実施例11に開示された構成は、光波長群合分波器としての取扱いおよびその設計・製造が容易であることなどから、最も好適な構成例の1つである。
国際公開 WO2007/123157号パンフレット
S.Kakehashi et al., IEEE Photonics Technology Letters, VOL.19, pp1197-1199(2007)
図7は、特許文献1に開示された光波長群合分波回路の構成を示す概念図である。この光波長群合分波回路700は、2つのAWG、前段AWG701および後段AWG702から構成されている。2つのAWG701、702はそれぞれ複数の入力ポートおよび複数の出力ポートを持っている。2つのAWG701、702間は、複数の光接続路群703により接続されている。前段AWG701へは、M本の入力光ファイバ704−1〜704−M(Fin 1〜Fin M)が接続され、後段AWG702からはM本の出力光ファイバ群705−1〜705−Mが接続されている。1つの出力光ファイバ群は、N本の出力光ファイバから構成されており、光波長群合分波器の全体ではM×N本の出力光ファイバ(Fout 1_1〜Fout 1_N、Fout 2_1〜Fout 2_N、…、Fout M_1〜Fout M_N)を備えている。次に、本光波長群合分波回路の動作について説明する。
図8は、特許文献1に開示された光波長群合分波回路の光ファイバが接続される各ポート間で合分波される光波長群の関係を示した図である。各入力光ファイバFin m(m=1、2、…、M)に入力されたN×L個の波長チャンネル(波長:λ1〜λNL)を含む波長分割多重光は、本回路により、各出力光ファイバ群内のN本の出力光ファイバの各々に対応したN群の光波長群に分波される。より具体的には、例えば、第1番目の出力光ファイバ群Fout m_1に対してはλ1〜λLの波長チャンネルからなる光波長群に、第2番目の出力光ファイバ群Fout m_2に対してはλL-1〜λ2Lの波長チャンネルからなる光波長群に、・・・、第M番目の出力光ファイバ群Fout m_Nに対してはλ(N-1)L-1〜λLNの波長チャンネルからなる光波長群に、それぞれ分波される。このように、本光波長群合分波回路は、M個の独立して動作する光波長群合分波回路の機能を、2つのAWGを組み合わせて一体とした構成によって実現している。ここで、M、N、Lはそれぞれ2以上の整数である。
図9Aおよび図9Bは、特許文献1に開示された光波長群合分波回路のさらに具体的な接続構成例を説明する図である。M=4、N=5、L=8の場合を示している。各AWGのポート番号表示および各光ファイバ上を伝送される光信号の波長表示を見やすく示すために、図9Aおよび図9Bに分割して表示している。本構成例においては、前段AWG701および後段AWG702として、それぞれ、ポート数が71入力×71出力の規模のAWGを使用している。
図9Aおよび図9Bにおいて、前段AWG701は入力導波路p1〜p71および出力導波路q1〜q71を持つ。同様に、後段AWG702は、入力導波路r1〜r71および出力導波路s1〜s71を持つ。AWG701、702は、使用する入力導波路または出力導波路を1つずらしたときには、1つ隣の波長チャンネルが透過するよう設計されている。入力ファイバ704−1〜704−M(Fin)および前段AWG701の各入力導波路の接続関係、前段AWG701の出力導波路および後段AWG702の入力導波路を結ぶ各光接続路群703の接続関係、ならびに後段AWG702の出力導波路および出力ファイバ群705−1〜705−Mの接続関係は、ぞれぞれ図9Aおよび図9Bに示した通りである。
図9Aおよび図9Bの構成により、たとえば入力光ファイバ704−1(Fin 1)から入力された波長分割多重信号光(波長チャンネル:λ1 A〜λ40 A)は、前段AWG701において各波長チャンネルに分波され、ポートq28〜q67に出力される。これらの出力光信号は、光接続路群703を経由して、後段AWG702のポートr28〜r67へそれぞれ入力される。後段AWG702において、光波長群ごとに波長チャンネルが合波され、第1番目の出力光ファイバ群705−1の出力光ファイバFout 1_1には波長群λ1 A〜λ8 A、出力光ファイバFout 1_2には波長群λ9 A〜λ16 A、出力光ファイバFout 1_3には波長群λ17 A〜λ24 A、出力光ファイバFout 1_4には波長群λ25 A〜λ32 A、ならびに出力光ファイバFout 1_5には波長群λ33 A〜λ40 Aが、波長群ごとに出力される。
図10は、図9Aおよび図9Bに示した構成の光波長群合分波回路における入力ポートおよび出力ポート間の透過スペクトルを示した図である。具体的には、(a)、(b)、(c)、(d)および(e)には、第m(m=1、2、3、4)番目の入力光ファイバ704−m(Fin m)から第m番目の出力光ファイバ群705−mの各出力光ファイバFout m_1〜Fout m_5への透過スペクトルがそれぞれ示されている。ここで、波長群内の各波長チャンネルの間隔は100GHz(0.8nm)であり、前段AWG701および後段AWG702はともにガウス関数型の透過スペクトルを持つ。図10の(a)、(b)、(c)、(d)および(e)より、入力光ファイバから本光波長群合分波回路に入力された40波長チャンネル(λ1〜λ40)を含む波長分割多重光は、隣接する8つの波長チャンネルを含む波長群(λ1〜λ8、λ9〜λ16、λ17〜λ24、λ25〜λ32、λ33〜λ40)ごとに、対応する5つの出力ポートへ分波されていることが分かる。
しかしながら、上述の2つのAWGを組み合わせて一体とした構成による光波長群合分波回路においては、前段AWG701の透過中心波長および後段AWG702の透過中心波長が、所望の定められた各波長チャンネルのグリッド波長からずれるという問題があった。以下。この問題について詳述する。
図11は、光波長群合分波回路を構成するAWGの一般的な構成を示す平面図である。AWG701およびAWG702は、それぞれ、入力導波路群1101、第1のスラブ導波路1102、アレイ導波路1103、第2のスラブ導波路1104、出力導波路群1105がこの順に接続された構成を持つ。入力導波路群1101は、図8Aおよび図8Bにおける入力導波路p1〜p71、r1〜r71に、出力導波路群1105は、図8Aおよび図8Bにおける出力導波路q1〜q71、s1〜s71にそれぞれ対応している。
図12は、AWGにおける入出力導波路とスラブ導波路との接続部の構成を示す図である。図12の(a)は入力導波路群1101と第1のスラブ導波路1102との接続部を、(b)は第2のスラブ導波路1104と出力導波路群1105との接続部をそれぞれ拡大した平面図である。各接続部は、入力側が直線テーパ導波路1201によって、出力側が直線テーパ導波路1202によってそれぞれ接続されている。尚、図12においては、簡単のため3本の入力導波路および3本の出力導波路を示しており、スラブ導波路との接続面において多数の導波路が接続されていることに留意されたい。
AWGは、その動作原理上、入力された光信号の波長に応じて、光信号を分光軸方向の異なる位置に分波・合波するよう動作する。例えば、各スラブ導波路との接続面における入力導波路群1101および出力導波路群1105の配置間隔をそれぞれd1およびd2とする。d1およびd2が一定値であって、入力導波路群1101および出力導波路群1105が等間隔に配置されている場合、各導波路間で各チャンネルの光信号の透過スペクトルの中心波長は等間隔となる。すなわち、各透過スペクトルの中心波長が、等波長間隔に配置された透過特性を示す。
一方、ITUにより規定されているWDM伝送における波長チャンネルの(ITUグリッド)は、周波数軸上において等周波数間隔で規定されている。したがって、1つの波長群が入力される単一の入力導波路のみを持つAWG波長合分波回路においては、実際に信号処理される光信号の透過スペクトル中心波長が、等周波数間隔配置のITUグリッド上の中心周波数に対応する波長と一致するように、出力導波路群1105の配置間隔d2を非等間隔に設計していた。すなわち、等周波数間隔で与えられる光周波数群に対応する非等間隔な波長群に比例させて、出力導波路群1105の配置間隔d2を非等間隔に変化させていた。
しかしながら、光波長群合分波器のように、複数の光波長群の多重光が入力される複数の入力導波路を使用するAWGの場合には、配置間隔d1、d2をともに等間隔とせざるを得なかった。これは、特定の1つの入力導波路に対して、等周波数間隔のITUグリッド間隔に合うように、出力導波路群の配置間隔d2を最適に設定しても、他の入力導波路が使用されるときには、その設定された配置間隔はITUグリッド間隔に適合する最適な間隔から、ずれてしまうためである。
結局、任意の入力導波路からの異なる波長の光信号群に対して、等周波数間隔に各チャンネルが配置されたITUグリッドに概ね一致する透過スペクトルの配置を実現するためには、入力導波路群の配置間隔d1および出力導波路群の配置間隔d2をともに等間隔に設定する以外に、適正な方法はなかった。
図13は、出力導波路を等間隔配置したAWGの透過スペクトルの等周波数間隔に対応するグリッドからの誤差を示した図である。1550nm帯において100GHzの等周波数間隔グリッド上に配置された40チャンネルについて、各チャンネルの中心周波数fGridを波長へ換算した場合の中心波長λGridを求め、0.796nmの等波長間隔グリッドにより規定される透過中心波長λCとの誤差量であるδλ(=λGrid―λC)を示した。図13より分かるように、40チャンネルの範囲で、最大で±0.08nmの誤差が生じている。この誤差は、グリッド間隔(0.796nm)のおおよそ10%にも相当する。
先に述べた図7に示した光波長群合分波回路においても、図9に示したよううに、AWGの複数の入力導波路および複数の出力導波路を使用され、スラブ導波路との接続面において等間隔に配置されるので、AWGの透過スペクトルは等波長間隔に位置することになる。図13に示したように、ITUグリッドに基づいて決定される中心波長から誤差を持った波長軸上の位置に、現実の透過中心が生じてしまう。このような誤差の程度を表す評価基準であるオングリッド損失および1dBクリアバンド幅について、次に説明する。
図14は、AWGの1つのチャンネルの透過中心波長付近の透過スペクトル先端部におけるオングリッド損失およびXdBクリアバンド幅を説明する図である。出力導波路がスラブ導波路との接続面上で等間隔に配置されているので、実際のスペクトル1500の中心波長λCは、等波長間隔のグリッド上の中心波長λGridからδλだけずれている。オングリッド損失1501は、各波長チャンネルのグリッド波長λGridにおける損失値(dB)である。クリアバンド幅1502は、グリッド波長λGridを中心として、スペクトル1500のピークを基準とした所定の相対損失値XdBを満たすために最大取り得るバンド幅である。すなわち、実際の透過スペクトルのピーク損失値からの相対損失が最大XdBとなる点をA点そして、このA点の波長λXdBとλGridとの波長差分の2倍をXdBクリアバンド幅(nm)とする。これら2つの評価基準値は、AWGによる合分波される1つの通信チャンネルを通過する光信号の、品質劣化の程度に関わる重要なパラメータである。
図15は、入力導波路群および出力導波路群を等間隔に配置した光波長群合分波回路のオングリッド損失および1dBクリアバンド幅(X=1)を示した図である。図7に示した構成の光波長群合分波回路に対して計算したものである。図15のオングリッド損失値は、前段AWG701および後段AWG702の透過スペクトルの中心波長誤差δλがともにゼロである場合を基準として規格化した値である。1dBクリアバンド幅は、前段AWGおよび後段AWGともに3dBバンド幅が0.60nmのガウス関数の透過スペクトル形状を持つAWGを用いた場合の値である。このとき1dBバンド幅は0.35nmである。図15より、AWGの透過中心波長の誤差δλによって、最大0.65dBのオングリッド損失が生じ、1dBクリアバンド幅は、最悪で0.05nm以下まで狭くなり帯域特性が劣化することが分かる。
上述のように、オングリッド損失の増大やクリアバンド幅の狭窄化は、光波長群合分波回路を用いた伝送システムの設計に制約を与える。オングリッド損失の増大は伝送可能距離を短縮し、クリアバンド幅の狭窄化は光信号の最大変調速度を低下させる。本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来よりもオングリッド損失特性またはクリアバンド幅特性に優れた光波長群合分波回路を提供することにある。
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、複数の入力導波路および複数の出力導波路を有する前段アレイ導波路回折格子と、複数の入力導波路および複数の出力導波路を有する後段アレイ導波路回折格子と、前記前段アレイ導波路回折格子および前記後段アレイ導波路回折格子間を接続する複数の光接続路と、M(Mは2以上整数)本の入力ポートと、M×N(Nは2以上整数)本の出力ポートとを備え、前記M本の入力ポートの1つから入力された中心周波数が等周波数間隔で配置されたN×L(Lは2以上整数)個の波長チャンネルを含むM系統の波長分割多重光を、隣接するL波長チャンネルを含むN群の光波長群に分波し、前記M本の入力ポートの1つに対応する互いに異なるN本の前記出力ポートに出力する光波長群合分波回路であって、前記N群の光波長群の各光波長群に対して、前記N群の1つの光波長群に含まれる各波長チャンネルに対する所定のグリッド波長値および前記前段アレイ導波路回折格子の前記波長チャンネルに対応する前記出力導波路の1つにおける透過スペクトルの中心波長値から求められるL個の波長誤差値群の中央値と、前記N群の前記1つの光波長群に含まれる各波長チャンネルに対する所定のグリッド波長値および前記後段アレイ導波路回折格子の前記波長チャンネルに対応する前記出力導波路の1つにおける対応する透過スペクトルの中心波長値から求められるのL個の波長誤差値群の中央値とが、絶対値が等しく符号が逆となるように、前記後段アレイ導波路回折格子の前記N本の出力ポートに対応する前記複数の出力導波路を非等間隔に配置したことを特徴とする光波長群合分波回路である。
この構成により、前段アレイ導波路回折格子における、各波長チャンネルに対する透過スペクトルの中心波長誤差が、後段アレイ導波路回折格子の各波長チャンネルに対する透過中心波長誤差によって最大限に相殺されるため、特に光波長群合分波回路のクリアバンド特性を大幅に改善することができる。
請求項2に記載の発明は、複数の入力導波路および複数の出力導波路を有する前段アレイ導波路回折格子と、複数の入力導波路および複数の出力導波路を有する後段アレイ導波路回折格子と、前記前段アレイ導波路回折格子および前記後段アレイ導波路回折格子間を接続する複数の光接続路と、M(Mは2以上整数)本の入力ポートと、M×N(Nは2以上整数)本の出力ポートとを備え、前記M本の入力ポートの1つから入力された中心周波数が等周波数間隔で配置されたN×L(Lは2以上整数)個の波長チャンネルを含むM系統の波長分割多重光を、隣接するL波長チャンネルを含むN群の光波長群に分波し、前記M本の入力ポートの1つに対応する互いに異なるN本の前記出力ポートに出力する光波長群合分波回路であって、前記N群の光波長群の各光波長群に対して、前記N群の1つの光波長群に含まれる各波長チャンネルに対する所定のグリッド波長値および前記後段アレイ導波路回折格子の前記波長チャンネルに対応する前記出力導波路の1つにおける透過スペクトルの中心波長値から求められるL個の波長誤差値群の中央値が、ゼロになるように、前記後段アレイ導波路回折格子の前記N本の出力ポートに対応する前記複数の出力導波路を非等間隔に配置したことを特徴とする光波長群合分波回路である。
この構成により、後段アレイ導波路回折格子における、各波長チャンネルに対する透過スペクトルの中心波長誤差が、最小限に抑制されるため、特に、光波長群合分波回路のオングリッド損失特性を大幅に改善することができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の光波長群合分波回路であって、前記前段アレイ導波路格子の前記出力導波路は、等間隔に配置されていることを特徴とする。後段アレイ導波路回折格子の出力導波路のみを非等間隔に設定すれば良いので、AWGレイアウト設計が簡単と成る。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の光波長群合分波回路であって、前記波長誤差値群の中央値は、L個の波長誤差値群のうちの最大値および最小値の算術平均値であることを特徴とする。
以上説明したように、本発明により、オングリッド損失を減らしまたはクリアバンド帯域幅を拡大し帯域特性に優れた光波長群合分波回路を実現することができる。
図7に示したような2つのAWGを組合せて一体とした構成による光波長群合分波回路の前段AWGにおいては、使用される入力導波路のそれぞれに対して全ての波長チャンネル光が入力される。これに対し、後段AWGの実際に光波長群の合分波に使用される出力導波路からは、特定の光波長群に含まれる波長チャンネル光のみが出力されることに着眼した。後段AWGの各出力導波路においては、実際に出力されない波長チャンネルに対する透過中心波長に、大きな波長誤差があっても実用上問題はない。したがって後段AWGにおいては、出力される特定の光波長群に含まれる波長チャンネルに対する透過中心波長の誤差が最も小さくなるように、出力導波路の配置位置を最適化することができる。さらに、前段AWGにおける各波長チャンネルに対する透過中心波長の誤差を相殺するように、後段AWGにおいて出力導波路の配置位置を最適化することもできる。
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る光波長群合分波回路の基本的な構成と動作ならびに光波長群合分波特性は、図7および図8で説明した従来技術のものと同様である。以下、図8および図9も参照しながら概要を説明する。本発明の光波長群合分波回路に特有の入力導波路群および出力導波路群の構成については、後述する。
本実施形態の光波長群合分波回路は、図7に示した構成の光波長群合分波回路において、M=4、N=5、L=8とした場合に相当する。その詳細な接続構成は、図9に示した構成と同様である。すなわち、4つ(M=4)の入力ポート704−1〜704−4(Fin 1〜Fin 4)には、それぞれ40波長チャンネル(L×N=8×5=40)の光信号を含む4系統の独立な波長分割多重光が入力される。各系統の波長多重光は、それぞれ8波長チャンネル(L=8)を含む5つの光波長群(N=5)に分波される。光波長群合分波回路の全体では、合計20個(=M×N=4×5)の出力ポート705−1〜705−4(Fout 1_1〜Fout 1_5、Fout 2_1〜Fout 2_5、Fout 3_1〜Fout 3_5、Fout 4_1〜Fout 4_5)に分波する機能を持つ。光信号の方向を逆に考えれば、20個の出力ポート705−1〜705−5から入力された各系統の各光波長群を、4つの入力ポート704−1〜704−4に合波し出力する機能を有する。
本実施形態の光波長群合分波回路における前段AWG701および後段AWG702の構成は、図11に示した構成とほぼ同様である。1550nm帯において100GHz間隔に配置された40波長チャンネルを合分波するように設計されている。前段AWG701の入力導波路群および出力導波路群ならびに後段AWG702の入力導波路群は、従来技術の構成と同様に、それぞれ各スラブ導波路との接続面上で等間隔に配置されている。しかしながら、本実施形態では、後段AWG702の出力スラブ導波路群との接続面上において、出力導波路群の配置位置が本発明特有の条件により最適化され、非等間隔に配置されている点に特徴がある。以下、出力導波路群の配置位置を決定する手順を説明する。
図1は、本実施形態の光波長群合分波回路の前段AWGおよび後段AWGの透過スペクトルの等周波数間隔グリッドに対応する波長からの誤差を示した図である。図1の(a)は前段AWGの誤差を示し、(b)は後段AWGの誤差を示す。いずれも、1550nm帯において100GHzの等周波数間隔グリッド上に配置された40チャンネルについて、各チャンネルの中心周波数fGridを波長に換算した場合の中心波長λGridを求め、このλGridを波長誤差の基準としている。従来技術のプロットは、0.796nmの等波長間隔グリッドにより規定される透過中心波長λCとの誤差量δλ(=λGrid―λC)を示した。
図2は、本実施形態の光波長群合分波回路の後段AWGにおける第2のスラブ導波路201と出力導波路群の接続部を拡大した図である。第2のスラブ導波路201および出力導波路202〜206は、それぞれ直線テーパ導波路207を介して接続されている。5本の出力導波路202〜206は、光波長群合分波回路の1つの入力ポートFin m(m=1、2、3、4)に対する出力ポートFout m_5〜Fout m_1に接続される。図9の具体的構成を参照すれば、出力導波路202〜206はm=1の時にはs19〜s23に、m=2の時にはs28〜s32に、m=3の時にはs37〜s41に、m=4の時にはs46〜s50に対応する。図2中の出力導波路202〜206に対応して記載された5本の破線は、従来技術により出力導波路群を等間隔に配置した場合の、各配置位置を示している。本実施形態においては、各出力導波路は、等間隔に配置された従来技術の場合の位置から矢印で示した方向へ所定の距離だけずらして配置されていることに留意されたい。次に、この配置位置の決定方法について説明する。
図1の(a)において、例えば、光波長群λ1〜λ8に対応する波長チャンネルグループG1に対する前段AWG701の透過スペクトルの中心波長誤差値は、最大値でβ、最小値でγである。最大値および最少値は、誤差値の正および負の極性も含めた大小関係に基づいている。従って、図1の(a)のグラフ上のプロット点で、誤差値について最上部にあるプロット点の誤差値が最大値となり、最下部にあるプロット点の誤差値が最小値となる。最小値および最大値の中央値はαとなる。ここで、中央値とは、最大値および最小値の算術平均を表す。
この波長チャンネルグループG1に対する後段AWG702の中心波長誤差の中央値は、従来技術においては出力導波路群が等間隔に配置されていたため、前段AWGと同様にαであった。本発明の光波長群合分波回路においては、後段AWG702の出力導波路206の位置を出力導波路群を等間隔に配置した場合の位置からずらすことにより、中心波長誤差値の最大値をβ’、最小値をγ’、中央値をα’とすることができる。本実施形態においては、中央値α’および中央値αの絶対値が等しく逆符号となるように、すなわちα’=−αとなるように、出力導波路206の配置位置を図2で示した矢印方向に所定の距離だけずらしている。他の光波長群λ9〜λ16、λ17〜λ24、λ25〜λ32、λ33〜λ40に対応する波長チャンネルグループG2、G3、G4、G5ついても、同様に、中央値がα’=−αの条件を満たすよう、出力導波路202〜205の配置位置を図2で示した矢印方向に所定の距離だけそれぞれずらしている。
上述のように、本発明の光波長群合分波回路においては、合分波される全波長群(N×L波長チャンネル)のうちのより細分化された波長群(L波長チャンネル)に対し、各チャンネルが等周波数間隔に配置されたグリッド波長との波長誤差に着目する。ここで、後段AWGのスラブ導波路との接続面上における対応する出力導波路の接続位置を、細分化された波長群に対応する波長誤差値群の中央値が、出力導波路群が等間隔に配置された場合の対応する波長誤差値群の中央値と絶対値が等しく逆極性の値となるように、設定することを特徴としている。
上述の実施形態では、前段AWGの出力導波路群は、等間隔に配置されているものといしたが、これに限定されない。すなわち、1つの波長群に対して、前段AWGにおいて発生する波長誤差値の中央値と、後段AWGの波長誤差値の中央値とが等しく逆極性となるように、波長群ごとに後段AWGの出力導波路の位置を最適化すれば良いことに留意されたい。
図3は、本実施形態の光波長群合分波回路におけるオングリッド損失および1dBクリアバンド幅を、従来技術と比較しながら示した図である。(a)はオングリッド損失を、(b)は1dBクリアバンド帯域幅を示す。(a)および(b)のいずれも、等間隔に出力導波路群を配置した従来技術の場合の値と併せて示してる。図15に示したのと同様に、オングリッド損失値は、前段AWGおよび後段AWGの透過中心波長誤差δλがともにゼロである場合の値を基準として規格化した値である。1dBクリアバンド幅は、前段AWGおよび後段AWGともに3dBバンド幅0.60nmのガウス関数波形のAWGを用いた場合の値である。
図3から分かるように、本実施形態におけるオングリッド損失は最大で0.6dBであり、両端のチャンネルにおける損失が大幅に減っている。1dBクリアバンド幅についても、最小値で0.11nmであり、ほぼ全チャンネルにおいて従来技術の構成による帯域幅よりも拡大されており、帯域特性が改善されている。
[第2の実施の形態]
上述の第1の実施形態では、対象とする波長群に対応する出力導波路の位置を、波長誤差値の中央値が、前段AWGの中央値と絶対値が等しく逆極性の値となるように設定していたが、第2の実施形態では、異なる条件で出力導波路の位置を設定する。
本発明の第2の実施形態に係る光波長群合分波回路の基本的な構成と動作ならびに光波長群分波特性は、図7および図8で説明した従来技術のものと同様である。本発明の光波長群合分波回路に特有の入力導波路群および出力導波路群の構成については、後述する。
本実施形態の光波長群合分波回路は、図7に示した構成の光波長群合分波回路において、M=4、N=5、L=8とした場合に相当する。その詳細な接続構成は、図9に示した構成と同様である。すなわち、4つ(M=4)の入力ポート704−1〜704−4(Fin 1〜Fin 4)には、それぞれ40波長チャンネル(L×N=8×5=40)の光信号を含む4系統の独立な波長分割多重光が入力される。各系統の波長多重光は、それぞれ8波長チャンネル(L=8)を含む5つの光波長群(N=5)に分波される。光波長群合分波回路の全体では、合計20個(M×N=4×5=20)の出力ポート705−1〜705−5(Fout 1_1〜Fout 1_5、Fout 2_1〜Fout 2_5、Fout 3_1〜Fout 3_5、Fout 4_1〜Fout 4_5)に分波する機能を持つ。光信号の方向を逆に考えれば、20個の出力ポート705−1〜705−5から入力された各系統の各光波長群を、4つの入力ポート704−1〜704−4に合波し出力する機能を有する。
本実施形態の光波長群合分波回路における前段AWG701および後段AWG702の構成は、図11に示した構成とほぼ同様であり、詳細の説明は省略する。第1の実施形態と同様に本実施形態でも、後段AWG702の出力スラブ導波路群との接続面上において、出力導波路群の配置位置が本発明特有の方法により最適化され、非等間隔に配置されている点に特徴がある。以下、出力導波路群の配置位置を決定するもう一つの手順を説明する。
図4は、第2の実施形態の光波長群合分波回路の後段AWGにおける、等周波数間隔グリッドに対応する波長からの透過スペクトルの中心波長誤差を示した図である。従来技術により出力導波路群を等間隔に配置した場合の波長誤差および本実施形態により配置した場合の波長誤差を、比較して示している。いずれも、1550nm帯において100GHzの等周波数間隔グリッド上に配置された40チャンネルについて、各チャンネルの中心周波数fGridを波長に換算した中心波長λGridを求め、このλGridを波長誤差の基準としている。従来技術のプロットは、0.796nmの等波長間隔グリッドにより規定される透過中心波長λCとの誤差量δλ(=λGrid―λC)を示した。
図5は、本実施形態の光波長群合分波回路の後段AWGにおける第2のスラブ導波路501と出力導波路群との接続部を拡大した図である。第2のスラブ導波路501および出力導波路502〜506は、それぞれ直線テーパ導波路507を介して接続されている。5本の出力導波路502〜506は、光波長群合分波回路の1つの入力ポートFin m(m=1、2、3、4)に対する出力ポートFout m_5〜Fout m_1に接続される。図9の具体的構成を参照すれば、出力導波路502〜506はm=1の時にはs19〜s23に、m=2の時にはs28〜s32に、m=3の時にはs37〜s41に、m=4の時にはs46〜s50に対応する。図5中の出力導波路502〜506に対応して記載された5本の破線は、従来技術により出力導波路群を等間隔に配置した場合の、配置位置をそれぞれ示している。本実施形態においては、等間隔に配置された従来技術の場合の位置から矢印で示した方向へ所定の距離だけずらして配置されていることに留意されたい。
図4を再び参照すれば、図4に示した従来技術の波長誤差のプロット群は、図1の(a)に示した前段AWGの出力導波路群を等間隔に配置した場合の波長誤差または図1の(b)の後段AWGの出力導波路群を等間隔に配置した場合の波長誤差と同一である。したがって、図1の(a)で示したように、図4における光波長群λ1〜λ8に対応する波長チャンネルグループG1に対する後段AWG702の透過波長誤差値は、最大値でβ、最小値でγである。図1において説明したのと同様に、最大値および最少値は、誤差値の正および負の極性も含めた大小関係に基づいている。従って、図4のグラフ上のプロット点で、誤差値について最上部にあるプロット点の誤差値が最大値となり、最下部にあるプロット点の誤差値が最小値となる。図4には記載していないが、最小値γおよび最大値βの中央値はαである。図1で説明したのと同様に、中央値とは、最大値および最小値の算術平均を表す。
本実施形態の光波長群合分波回路によれば、後段AWG702の出力導波路506の位置を出力導波群が等間隔配置された場合の位置からずらすことにより、波長誤差値は最大値をβ’、最小値をγ’、中央値をα’とすることができる。本実施形態においては、中央値α’=0となるように、出力導波路506の配置位置を図5で示した矢印方向へ所定の距離だけずらしている。他の光波長群λ9〜λ16、λ17〜λ24、λ25〜λ32、λ33〜λ40に対応する波長チャンネルグループG2、G3、G4、G5ついても、同様に、α’=0となるよう、出力導波路505〜502の配置位置を図5で示した矢印方向へ所定の距離だけそれぞれずらしている。
上述のように、本実施形態の光波長群合分波回路においては、合分波される全波長群(N×L波長チャンネル)のうちのより細分化された波長群(L波長チャンネル)毎に、後段AWGのスラブ導波路との接続面上における対応する出力導波路の接続位置を、各チャンネルが等周波数間隔に配置されたグリッド波長との波長誤差に着目し、細分化された波長群に対応する波長誤差値群の中央値が0となるように、設定することを特徴としている。
図6は、本実施形態の光波長群合分波回路における、オングリッド損失および1dBクリアバンド幅を、従来技術と比較しながら示した図である。図6の(a)はオングリッド損失を、(b)は1dBクリアバンド帯域幅を示す。(a)および(b)のいずれも、出力導波路群を等間隔に配置した従来技術の場合の値を併せて示してる。図15に示したのと同様に、オングリッド損失値は、前段AWGおよび後段AWGの透過スペクトルの中心波長誤差δλがともにゼロである場合の値を基準として、規格化した値である。1dBクリアバンド幅は、前段AWGおよび後段AWGともに、3dBバンド幅が0.60nmのガウス関数波形のAWGを用いた場合の値である。
図6から分かるように、本実施形態におけるオングリッド損失は最大で0.43dBであり、特に中央部のチャンネルにおける損失は大幅に減っている。1dBクリアバンド幅についても、最小値で0.07nmであり、ほぼ全チャンネルにおいて従来技術の構成よりも帯域幅が拡大されており、帯域特性が改善されている。
以上各実施形態について詳細に述べたように、本発明による出力導波路群の構成により、オングリッド損失特性を減らしまたはクリアバンド幅を拡大して帯域特性に優れた、光波長群合分波回路を実現することができる。
上述の各実施形態では、入力ポート数Mを4について示したが、本発明はこの値に限定されるものではなく、1以上の任意の整数の場合の構成についても本発明の効果を得ることができる。
また、取り扱う光波長群の数Nが5および各光波長群に含まれる波長チャンネル数Lが8の場合について示したが、本発明はこれらの値に限定されるものではなく、NおよびLいずれも2以上の任意の整数の構成についても、本発明の効果を得ることができるのは言うまでも無い。また、上述の各実施形態では、AWGの透過スペクトルの中心波長を、1550nm帯で、100GHzの等周波数間隔に配置された40チャンネルのグリッドに適応させた例を示したが、本発明はこれらのパラメータ値群に限定されるものではない。