従来、高レベル放射性廃棄物の地層処分では、緩衝材と呼ばれる吸水膨潤性を有するベントナイト系粘土材料で廃棄体周囲を取り囲み、周囲からの地圧を緩衝させるとともに、地下水の浸入を抑制し、廃棄体からの放射性物質の漏えいを抑止することが考えられている(例えば、非特許文献1を参照)。
横置き方式の高レベル放射性廃棄物処分施設では、例えば図9(1)に示すように、搬入用の連絡坑道1とそれから分岐して複数設けられる処分坑道2に廃棄体3を横置き配置するが、事前に、廃棄体3とその周囲を取り囲む粘土材料の緩衝材4と金属容器5で構成された緩衝材一体型廃棄体6を作成してから、それを坑内に搬入して定置する方法が考えられている。
この緩衝材一体型廃棄体の定置方法において、緩衝材一体型廃棄体を坑道内に搬送して正しい位置に定置するためには、緩衝材一体型廃棄体の大きさに対して十分なクリアランスを有する坑道断面が求められる。その結果、図9(2)に示すように、緩衝材一体型廃棄体6と坑道内壁2Aとの間にすき間空間7(以後、このすき間空間を「坑道内周すき間」という。)の発生は避けることができない。この「坑道内周すき間」は下記の理由から、吸水膨張性を有する遮水性の良いベントナイト系材料で埋め戻す必要がある(以後、この埋め戻し材を「坑道内周すき間埋め戻し材」という。)。
・坑道内に定置後に「坑道内周すき間」があると、円筒型の緩衝材一体型廃棄体が地震時に転がる動きを抑制できない。
・「坑道内周すき間」に空間が残っていると、支保工の劣化が生じた場合や地山のせりだし変形が発生した場合に偏圧が作用して廃棄体の健全性を損なうおそれがある。
・「坑道内周すき間」が地下水の通り道になりやすいため、将来、廃棄体から放射性物質が漏出してきた場合に容易に施設外に移動する経路になりやすい。
このため、坑道内周すき間埋め戻し材には、遮水性を有し、ある程度の弾力性を有し、吸水することで膨潤圧を生じる吸水膨張性を有する粘土が用いられる。
一方、上記の坑道内周すき間埋め戻し材や緩衝材一体型廃棄体に関する従来の技術としては、以下のようなものが知られている。
1)坑道内周すき間埋め戻し材の構築方法
坑道内周すき間の埋め戻し手段として、例えば特許文献1に示すようなベントナイト・ペレットの充填装置が知られている。
2)多段リング型の緩衝材一体型廃棄体
緩衝材一体型廃棄体の製作方法としては、例えば特許文献2に示すような方法が知られている。これは、複数もしくは単数の筒状形状の金属容器とその上部と下部に上蓋もしくは底板を有する筒状金属容器がすき間を有する状態で嵌め込み接合されている多段リング型の緩衝材一体型廃棄体を製造する方法である。この特許文献2には、円盤型あるいは中空円盤型の鋼殻リング枠を有する緩衝材を製作して、事前に緩衝材一体型廃棄体を組立てておき、その後、坑道延長方向に延在させた台座の上に定置する方法が示されている。
また、緩衝材一体型廃棄体の接合部の構造として、例えば特許文献3に示すような構造が知られている。これは、複数もしくは単数の筒状形状の金属容器とその上部と下部には上蓋もしくは底板を有する筒状金属容器がすき間を有する状態で嵌め込み接合されたものである。この接合部は金属容器相互の力学的結合を可能とする抜け止め構造を有している。この特許文献3には、複数もしくは単数の筒状形状の金属容器とその上部と下部に上蓋もしくは底板を有する筒状金属容器が水密性を有さないようにわずかなすき間を設けて嵌め込み接合されている接合部の詳細構造として、抜け止めリングを有する印籠接合構造が示されている。
3)処分坑道における吸水設備
処分坑道と連絡坑道の分岐交差部を始点として処分坑道に沿って給水用の水を送るための給水設備として、例えば特許文献4に示すような配管例が知られている。より具体的には、給水管を備えた坑道内台座に緩衝材一体型廃棄体を定置した後に、坑道内周すき間埋め戻し材を使って坑道を埋め戻してから、台座に配管された給水設備を使って水を供給するようになっている。
ところで、緩衝材一体型廃棄体を坑道内に定置した後、坑道内周すき間を埋め戻す際に、坑道内周すき間埋め戻し材が上記の機能(遮水性、弾力性、膨潤圧)を発揮した場合であっても、緩衝材一体型廃棄体内部の緩衝材が不飽和のままであると、図9(3)に示すように、将来において緩衝材一体型廃棄体6外側の金属容器5に局部的に腐食孔8が生じたときに、緩衝材4に局部的に膨潤圧が発生して、緩衝材一体型廃棄体6の中心部に存在する廃棄体3が偏った位置に変位したり、曲げ変形を受けて力学的安定性を損なうことが懸念される。
このような問題に対し、本発明者は、緩衝材一体型廃棄体内部の緩衝材を早期に人工的に吸水膨潤させておくことが上記の懸念を解決する上で効果的であると考えて、以下の本発明に至った。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、緩衝材一体型廃棄体の内部の緩衝材を確実に吸水膨潤させることのできる緩衝材への注水方法および緩衝材一体型廃棄体を提供することを目的とする。
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る緩衝材への注水方法は、放射性廃棄物を含有する廃棄体と、この廃棄体の周囲に設けられた吸水膨潤性を有する粘土材料からなる緩衝材と、この廃棄体と緩衝材とを一体的に格納する格納容器とにより構成された緩衝材一体型廃棄体を処分坑道に定置する際に緩衝材に注水する緩衝材への注水方法であって、緩衝材一体型廃棄体を処分坑道に定置する前に、緩衝材一体型廃棄体を水槽に浸漬して、緩衝材一体型廃棄体の格納容器の内側の緩衝材に吸水させることを特徴とする。
また、本発明に係る他の緩衝材への注水方法は、上述した発明において、緩衝材一体型廃棄体を圧力容器である水槽に浸漬して、この水槽内の圧力水を緩衝材一体型廃棄体の格納容器の内側の緩衝材に吸水させることを特徴とする。
また、本発明に係る他の緩衝材への注水方法は、上述した発明において、格納容器が、複数の金属製の筒状体を接合部を介して接合してなる有蓋有底の筒状容器、または、単一の金属製の筒状体の両端面に蓋板と底板を接合部を介して接合してなる有蓋有底の筒状容器であり、接合部が、格納容器の外部と緩衝材との間で通水を許容するすき間を有しており、接合部の周囲に、注水口を有するリング状の水密性の止水枠を装着した後、注水口から圧力水を注入して緩衝材一体型廃棄体の格納容器の内側の緩衝材に吸水させることを特徴とする。
また、本発明に係る他の緩衝材への注水方法は、放射性廃棄物を含有する廃棄体と、この廃棄体の周囲に設けられた吸水膨潤性を有する粘土材料からなる緩衝材と、この廃棄体と緩衝材とを一体的に格納する格納容器とにより構成された緩衝材一体型廃棄体を処分坑道に定置する際に緩衝材に注水する緩衝材への注水方法であって、処分坑道の底部には、緩衝材一体型廃棄体を定置するための台座が処分坑道の延在方向に設けられており、この台座には、定置される緩衝材一体型廃棄体の格納容器に設けられた注水口に対して接続可能な接続口を有する給水管が設けられており、緩衝材一体型廃棄体を台座の上に定置する際に、給水管の接続口に格納容器の注水口を接続させた状態で定置し、その後、給水管から圧力水を接続口に注入することにより、注水口から圧力水を注入して緩衝材一体型廃棄体の格納容器の内側の緩衝材に吸水させることを特徴とする。
また、本発明に係る緩衝材一体型廃棄体は、上述した緩衝材への注水方法に用いられる緩衝材一体型廃棄体であって、格納容器が、複数の金属製の筒状体を接合部を介して接合してなる有蓋有底の筒状容器、または、単一の金属製の筒状体の両端面に蓋板と底板を接合部を介して接合してなる有蓋有底の筒状容器であり、接合部が、格納容器の外部と緩衝材との間で通水を許容するすき間を有することを特徴とする。
また、本発明に係る他の緩衝材一体型廃棄体は、上述した発明において、接合部のすき間への注入口を有する水密性のリング状の止水枠を接合部の周囲に装着可能であることを特徴とする。
また、本発明に係る他の緩衝材一体型廃棄体は、上述した発明において、止水枠が、接合部の機械的接合を兼ねるものであることを特徴とする。
また、本発明に係る他の緩衝材一体型廃棄体は、上述した発明において、止水枠が、接合部の周囲に装着されていることを特徴とする。
また、本発明に係る他の緩衝材一体型廃棄体は、上述した本発明に係る緩衝材への注水方法に用いられる緩衝材一体型廃棄体、または、上述した本発明に係る他の緩衝材一体型廃棄体であって、格納容器と緩衝材との間に透水性の面材が設けられていることを特徴とする。
本発明に係る緩衝材への注水方法によれば、放射性廃棄物を含有する廃棄体と、この廃棄体の周囲に設けられた吸水膨潤性を有する粘土材料からなる緩衝材と、この廃棄体と緩衝材とを一体的に格納する格納容器とにより構成された緩衝材一体型廃棄体を処分坑道に定置する際に緩衝材に注水する緩衝材への注水方法であって、緩衝材一体型廃棄体を処分坑道に定置する前に、緩衝材一体型廃棄体を水槽に浸漬して、緩衝材一体型廃棄体の格納容器の内側の緩衝材に吸水させるので、緩衝材を確実に吸水膨潤させることができるという効果を奏する。また、このように緩衝材を早期に人工的に吸水膨潤させておくと、格納容器の内側には吸水膨潤した緩衝材が密着するようになるので、その後、格納容器に腐食孔が生じた場合に水の浸入を抑止することができる。さらに、吸水膨潤した緩衝材内部には均質に膨潤圧が存在しているので力学的に安定し、格納容器に局部的に腐食孔が生じたときに、緩衝材一体型廃棄体の中心部に存在する廃棄体が偏った位置に変位したり、曲げ変形を受けて力学的安定性を損なうことは起きない。
また、本発明に係る他の緩衝材への注水方法によれば、緩衝材一体型廃棄体を圧力容器である水槽に浸漬して、この水槽内の圧力水を緩衝材一体型廃棄体の格納容器の内側の緩衝材に吸水させるので、大気圧下の通常の水槽に浸漬する場合に比べて、より短期間で緩衝材を吸水膨潤させることができるという効果を奏する。
また、本発明に係る他の緩衝材への注水方法によれば、格納容器が、複数の金属製の筒状体を接合部を介して接合してなる有蓋有底の筒状容器、または、単一の金属製の筒状体の両端面に蓋板と底板を接合部を介して接合してなる有蓋有底の筒状容器であり、接合部が、格納容器の外部と緩衝材との間で通水を許容するすき間を有しており、接合部の周囲に、注水口を有するリング状の水密性の止水枠を装着した後、注水口から圧力水を注入して緩衝材一体型廃棄体の格納容器の内側の緩衝材に吸水させるので、止水枠の注水口を通じて容易に緩衝材を吸水膨潤させることができるという効果を奏する。
また、本発明に係る他の緩衝材への注水方法によれば、放射性廃棄物を含有する廃棄体と、この廃棄体の周囲に設けられた吸水膨潤性を有する粘土材料からなる緩衝材と、この廃棄体と緩衝材とを一体的に格納する格納容器とにより構成された緩衝材一体型廃棄体を処分坑道に定置する際に緩衝材に注水する緩衝材への注水方法であって、処分坑道の底部には、緩衝材一体型廃棄体を定置するための台座が処分坑道の延在方向に設けられており、この台座には、定置される緩衝材一体型廃棄体の格納容器に設けられた注水口に対して接続可能な接続口を有する給水管が設けられており、緩衝材一体型廃棄体を台座の上に定置する際に、給水管の接続口に格納容器の注水口を接続させた状態で定置し、その後、給水管から圧力水を接続口に注入することにより、注水口から圧力水を注入して緩衝材一体型廃棄体の格納容器の内側の緩衝材に吸水させるので、台座に定置した際に緩衝材を吸水膨潤させることができるという効果を奏する。
また、本発明に係る緩衝材一体型廃棄体によれば、上述した緩衝材への注水方法に用いられる緩衝材一体型廃棄体であって、格納容器が、複数の金属製の筒状体を接合部を介して接合してなる有蓋有底の筒状容器、または、単一の金属製の筒状体の両端面に蓋板と底板を接合部を介して接合してなる有蓋有底の筒状容器であり、接合部が、格納容器の外部と緩衝材との間で通水を許容するすき間を有するので、格納容器の外部からの注水により内側の緩衝材を容易に吸水膨潤させることができるという効果を奏する。
また、本発明に係る他の緩衝材一体型廃棄体によれば、接合部のすき間への注入口を有する水密性のリング状の止水枠を接合部の周囲に装着可能であるので、装着した止水枠の注水口を通じて容易に緩衝材を吸水膨潤させることができるという効果を奏する。
また、本発明に係る他の緩衝材一体型廃棄体によれば、止水枠が、接合部の機械的接合を兼ねるものであるので、効率的な構造を提供することができるという効果を奏する。
また、本発明に係る他の緩衝材一体型廃棄体によれば、止水枠が、接合部の周囲に装着されているので、注水のために一時的に装着した後、脱着する手間をなくすことができるという効果を奏する。
また、本発明に係る他の緩衝材一体型廃棄体によれば、上述した本発明に係る緩衝材への注水方法に用いられる緩衝材一体型廃棄体、または、上述した本発明に係る他の緩衝材一体型廃棄体であって、格納容器と緩衝材との間に透水性の面材が設けられているので、格納容器から内側に浸入した水を透水性の面材を介して速やかに緩衝材と格納容器の境界面に広げることができ、緩衝材をより早く吸水膨潤させることができるという効果を奏する。
以下に、本発明に係る緩衝材への注水方法および緩衝材一体型廃棄体の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1について説明する。
本実施の形態1は、緩衝材一体型廃棄体の格納容器の接合部の各々の周囲をリング状に押さえる止水枠を一時的に装着可能な構造の例である。
図1(1)、(2)に示すように、緩衝材一体型廃棄体10は、放射性廃棄物を含有する円柱状の廃棄体12と、この廃棄体12の周囲を同軸状に取り囲む吸水膨潤性のベントナイト系粘土材料からなる緩衝材14と、この廃棄体12と緩衝材14とを一体的に格納する格納容器16とにより構成される。図1(1)の注水口36は後述のように単数あるいは複数設けてもよいし、継手18が通水を許容するすき間を有している場合には設けなくてもよい。
格納容器16は、複数の鋼製(金属製)の円筒状体16Aを継手18(接合部)を介して接合してなる有蓋有底の円筒状容器である。両端の円筒状体16Aの端面には蓋板と底板が接合されている。なお、格納容器16は、上記の構成に限るものではなく、単一の金属製の円筒状体の両端面に蓋板と底板を継手を介して接合してなる有蓋有底の円筒状容器、茶筒型の蓋付きの格納容器などを用いることができる。また、こうした格納容器16を備える緩衝材一体型廃棄体10としては、例えば上記の特許文献2や特許文献3に記載の方法で製作された緩衝材一体型廃棄体を利用することができる。
継手18は、格納容器16の外部と緩衝材14との間で通水を許容するすき間を有しており、水密性を有しない。より具体的には、この継手18は、図1(2)に示すように、一方の円筒状体16Aの端部に形成された内嵌部20と、他方の円筒状体16Aの端部に形成された外嵌部22と、抜け止めリング24とからなる。外嵌部22は内周側に段差26を有し、内嵌部20は外周側にフランジ28を有している。内嵌部20の外周面には周方向に外溝30が形成され、この外溝30に対向する外嵌部22の内周面には周方向に内溝32が形成されている。抜け止めリング24は、内溝32と外溝30の両方に嵌合配置され、外嵌部22と内嵌部20は、この抜け止めリング24を介して互いに嵌合される。この継手18では、内嵌部20と外嵌部22と抜け止めリング24の間にすき間34が形成されており、すき間34を通じて格納容器16の内外間で通水が許容される。
この構成では、抜け止めリング24による力学的な結合(機械的接合)機能を有するものの、円筒状体16A相互の継手18にはすき間34があるので、格納容器16の外部の水は容易に緩衝材一体型廃棄体10の内部に浸入できる。
上記の実施の形態において、図1(3)に示すように、抜け止めリング24に通じる内溝32に注水口36を単数あるいは複数設けて、この注水口36からすき間34を通じて内部に注水可能な構成としてもよい。このようにすることで、より容易に緩衝材一体型廃棄体10の内部に水を浸入させることができる。
また、上記の実施の形態において、継手18の周囲に、注水口を有するリング状の水密性の止水枠を装着した後、この止水枠の注水口から圧力水を注入して格納容器16の内側の緩衝材14に吸水させてもよい。なお、継手18に一時的に装着可能なリング状の止水枠の実施の形態については、後述する図5(2)に示してある。
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について説明する。
本実施の形態2は、緩衝材一体型廃棄体10の格納容器16の接合部の各々の周囲に、円筒状体16Aどうしを力学的に結合(機械的接合)する水密性の止水枠を装着した構造の例である。
緩衝材一体型廃棄体10は、上記の実施の形態1と同様、廃棄体12と緩衝材14と格納容器16とにより構成される。格納容器16は、図2(1)に示すように、複数の鋼製の円筒状体16Aを継手38(接合部)を介して接合してなる有蓋有底の円筒状容器である。
継手38は、格納容器16の外部と緩衝材14との間で通水を許容するすき間を有しており、水密性を有しない。より具体的には、この継手38は、各円筒状体16Aの端部に半径方向外側に突設したフランジ40と、双方のフランジ40、40を断面U字状に挟み込む態様でその外側に外嵌して円筒状体16A相互を力学的に結合(機械的接合)するリング状の止水枠42と、フランジ40と止水枠42との間に密着配置した止水パッキン44とからなる。フランジ40どうしは若干のすき間46を隔てて対向配置される。
止水枠42および止水パッキン44は、図2(1)、(2)に示すように、その内側の水圧を維持できる水密性と、単数あるいは複数の注水口48を有しており、この注水口48からフランジ40間のすき間46を通じて内部に注水可能となっている。このため、格納容器16の外部の水は容易に緩衝材一体型廃棄体10の内部に浸入できる。
なお、上記の実施の形態2において、止水パッキン44を省略して、水槽に緩衝材一体型廃棄体10を浸漬する後述の注水方法に適用してもよい。
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3について説明する。
本実施の形態3は、緩衝材一体型廃棄体10を水槽に浸漬して緩衝材に注水する方法の例である。
図3(1)、(2)に示すように、緩衝材一体型廃棄体10を処分坑道に定置する前に、水が入った水槽50に緩衝材一体型廃棄体10をクレーン等で入れて水中に浸漬させる。緩衝材一体型廃棄体10としては、上記の特許文献3に記載の構造でもよいし、上記の実施の形態1(図1を参照)、実施の形態2(図2を参照)に示した構造でもよい。
例えば、緩衝材一体型廃棄体10を水深10m相当の水圧が作用する状態に沈めて一定期間そのままにしておくと、水は緩衝材一体型廃棄体10の格納容器16の接合部(例えば、上記の継手18、38等)のすき間(例えば、上記のすき間34、46等)から浸入するので、内部の緩衝材14は次第に吸水膨潤することになる。
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4について説明する。
本実施の形態4は、緩衝材一体型廃棄体10を圧力水槽に浸漬して緩衝材に注水する方法の例である。
図4(1)、(2)に示すように、緩衝材一体型廃棄体10を処分坑道に定置する前に、圧力水槽52に緩衝材一体型廃棄体10をクレーン等で入れて圧力水が作用する水中に浸漬させる。緩衝材一体型廃棄体10としては、上記の特許文献3に記載の構造でもよいし、上記の実施の形態1(図1を参照)、実施の形態2(図2を参照)に示した構造でもよい。
圧力水は緩衝材一体型廃棄体10の格納容器16の接合部(例えば、上記の継手18、38等)のすき間(例えば、上記のすき間34、46等)から浸入するので、内部の緩衝材14は次第に吸水膨潤することになる。例えば、緩衝材一体型廃棄体10への作用水圧を1MPa(水深100m相当)にするならば、上記の実施の形態3の大気圧下の通常の水槽50に浸漬する場合に比べて、内部の緩衝材14をより早く吸水膨潤させることができる。
ここで、図4(2)に示すように、圧力水槽52に緩衝材一体型廃棄体10を配置して水槽52を密閉した後、水槽52内の空気を負圧吸引してから注入口54を通じて水槽52内に高圧水を注入してもよい。このようにすれば、緩衝材一体型廃棄体10の内部の残存空気を排除できるので、より確実に緩衝材14を吸水膨潤させることができる。
(実施の形態5)
次に、本発明の実施の形態5について説明する。
本実施の形態5は、一時的に装着した止水枠42の各々の注水口48から圧力水を注水して、内部の緩衝材14を吸水膨潤させる方法の例である。
緩衝材一体型廃棄体10は、上記の実施の形態1、2と同様、廃棄体12と緩衝材14と格納容器16とにより構成される。図5(1)に示すように、格納容器16は、複数の鋼製の円筒状体16Aを継手18(接合部)を介して接合してなる有蓋有底の円筒状容器である。
継手18は、格納容器16の外部と緩衝材14との間で通水を許容するすき間34を有しており、水密性を有しない。より具体的には、この継手18は、上記の実施の形態1と同様の構造であり、図5(2)に示すように、内嵌部20と、外嵌部22と、抜け止めリング24とからなる。
この継手18の周囲に、図5(1)、(2)に示すように、注水のためにリング状の止水枠42および止水パッキン44を一時的に装着する。止水枠42および止水パッキン44は、上記の実施の形態2と同様の構造のものである。止水枠42は内嵌部20と外嵌部22の外側に止水パッキン44を介して外嵌される。このため、内嵌部20と外嵌部22は、抜け止めリング24と止水枠42により力学的に結合(機械的接合)する。
止水枠42、止水パッキン44、抜け止めリング24に通じる内溝32には、単数あるいは複数の注水口56が設けられており、この注水口56から内嵌部20と外嵌部22の間のすき間34を通じて内部に注水可能となっている。このため、格納容器16の外部の水は容易に緩衝材一体型廃棄体10の内部に浸入できる。したがって、継手18の周囲に止水枠42を一時的に装着した後、この止水枠42の各々の注水口56から圧力水を注水することにより、内部の緩衝材14を容易に吸水膨潤させることができる。
(実施の形態6)
次に、本発明の実施の形態6について説明する。
本実施の形態6は、格納容器16の接合部に継手を兼ねた止水枠を常設するとともに、この止水枠の各々の注水口から圧力水を注水して、内部の緩衝材14を吸水膨潤させる方法の例である。
緩衝材一体型廃棄体10は、上記の実施の形態1、2と同様、廃棄体12と緩衝材14と格納容器16とにより構成される。図5(1)に示すように、格納容器16は、複数の鋼製の円筒状体16Aを継手38(接合部)を介して接合してなる有蓋有底の円筒状容器である。
継手38は、格納容器16の外部と緩衝材14との間で通水を許容するすき間を有しており、水密性を有しない。より具体的には、この継手38は、上記の実施の形態2と同様の構造であり、図6に示すように、各円筒状体16Aの端部に突設したフランジ40と、双方のフランジ40に外嵌して円筒状体16A相互を力学的に結合(機械的接合)するリング状の止水枠42と、止水パッキン44とからなる。フランジ40どうしは若干のすき間46を隔てて対向配置される。
止水枠42および止水パッキン44は、その内側の水圧を維持できる水密性と、単数あるいは複数の注水口48を有しており、この注水口48からフランジ40間のすき間46を通じて内部に注水可能となっている。このため、格納容器16の外部の水は容易に緩衝材一体型廃棄体10の内部に浸入できる。したがって、止水枠42の各々の注水口48から圧力水を注水することにより、内部の緩衝材14を容易に吸水膨潤させることができる。
なお、止水枠42は円筒状体16A相互を力学的に結合する役割も担っているので、緩衝材一体型廃棄体10は止水枠42を装着したまま処分坑道に定置されることになる。
(実施の形態7)
次に、本発明の実施の形態7について説明する。
本実施の形態7は、台座の給水管の接続口に格納容器16の注水口を接続させた状態で定置し、その後、給水管から圧力水を接続口に注入して、内部の緩衝材14を吸水膨潤させる方法の例である。
図7に示すように、処分坑道2の底部に定置用の台座58が設けられている。この台座58は処分坑道2の延在方向に延びており、台座58の内部には給水管60が設けられている。この給水管60は、処分坑道2の図示しない端部から連設されており、端部の注水口から供給される圧力水を導水可能となっている。給水管60には枝管62が所定の間隔で設けられており、枝管62の端部は台座58の上面に設置された水密性の接続口64に連通している。この接続口64は、台座58の上に定置される緩衝材一体型廃棄体10の格納容器16の注水口(例えば、上記の注水口36、48、56など)に接続可能となっている。
この構成において、格納容器16の注水口36等が接続口64にドッキングするように緩衝材一体型廃棄体10を台座58の上に定置すると、格納容器16の注水口36等と給水管60とが導水可能な状態になる。その後、給水管60に圧力水を注水すると、圧力水は枝管62から接続口64、格納容器16の注水口36等、すき間(例えば、上記のすき間34、46等)を通って緩衝材一体型廃棄体10の内部に注水される。このようにすることで、内部の緩衝材14を吸水膨潤させることができる。あるいは、注水口36は格納容器16の底部ではなく側部に位置させて、給水管60から分岐させた注水管あるいは注水ホースをこれに連結させることによって、注水してもよい。
給水管60への注水時期は、処分坑道2の台座58に緩衝材一体型廃棄体10を定置した直後でもよいし、緩衝材一体型廃棄体10と坑道内壁2Aとの間に、坑道内周すき間埋め戻し材66を構築した後でもよい。なお、図7は後者の場合を示している。また、台座58に設ける給水管60の構造としては、例えば上記の特許文献4に記載の技術を適用してもよい。
(実施の形態8)
次に、本発明の実施の形態8について説明する。
本実施の形態8は、格納容器16と緩衝材14との間に透水性の面材を設けた例である。
図8に示すように、緩衝材一体型廃棄体10の格納容器16と緩衝材14の境界には透水性の面材68が設置されている。この緩衝材一体型廃棄体10に上記の実施の形態1〜7を適用して格納容器16の外側から内側に向けて注水すると、格納容器16から内側に浸入した水は透水性の面材68を介して速やかに緩衝材14と格納容器16の境界面に広がるので、より早く緩衝材14を吸水膨潤させることができる。
なお、水が浸入して吸水膨潤した領域は膨張して透水性の面材68の間隙を埋めてシールするので、短時間で水密性を発揮するようになる。このため、透水性の面材68が放射能汚染水の漏出経路となることはない。
以上説明したように、本発明に係る緩衝材への注水方法によれば、放射性廃棄物を含有する廃棄体と、この廃棄体の周囲に設けられた吸水膨潤性を有する粘土材料からなる緩衝材と、この廃棄体と緩衝材とを一体的に格納する格納容器とにより構成された緩衝材一体型廃棄体を処分坑道に定置する際に緩衝材に注水する緩衝材への注水方法であって、緩衝材一体型廃棄体を処分坑道に定置する前に、緩衝材一体型廃棄体を水槽に浸漬して、緩衝材一体型廃棄体の格納容器の内側の緩衝材に吸水させるので、緩衝材を確実に吸水膨潤させることができる。また、このように緩衝材を早期に人工的に吸水膨潤させておくと、格納容器の内側には吸水膨潤した緩衝材が密着するようになるので、その後、格納容器に腐食孔が生じた場合に水の浸入を抑止することができる。さらに、吸水膨潤した緩衝材内部には均質に膨潤圧が存在しているので力学的に安定し、格納容器に局部的に腐食孔が生じたときに、緩衝材一体型廃棄体の中心部に存在する廃棄体が偏った位置に変位したり、曲げ変形を受けて力学的安定性を損なうことは起きない。
また、本発明に係る他の緩衝材への注水方法によれば、緩衝材一体型廃棄体を圧力容器である水槽に浸漬して、この水槽内の圧力水を緩衝材一体型廃棄体の格納容器の内側の緩衝材に吸水させるので、大気圧下の通常の水槽に浸漬する場合に比べて、より短期間で緩衝材を吸水膨潤させることができる。
また、本発明に係る他の緩衝材への注水方法によれば、格納容器が、複数の金属製の筒状体を接合部を介して接合してなる有蓋有底の筒状容器、または、単一の金属製の筒状体の両端面に蓋板と底板を接合部を介して接合してなる有蓋有底の筒状容器であり、接合部が、格納容器の外部と緩衝材との間で通水を許容するすき間を有しており、接合部の周囲に、注水口を有するリング状の水密性の止水枠を装着した後、注水口から圧力水を注入して緩衝材一体型廃棄体の格納容器の内側の緩衝材に吸水させるので、止水枠の注水口を通じて容易に緩衝材を吸水膨潤させることができる。
また、本発明に係る他の緩衝材への注水方法によれば、放射性廃棄物を含有する廃棄体と、この廃棄体の周囲に設けられた吸水膨潤性を有する粘土材料からなる緩衝材と、この廃棄体と緩衝材とを一体的に格納する格納容器とにより構成された緩衝材一体型廃棄体を処分坑道に定置する際に緩衝材に注水する緩衝材への注水方法であって、処分坑道の底部には、緩衝材一体型廃棄体を定置するための台座が処分坑道の延在方向に設けられており、この台座には、定置される緩衝材一体型廃棄体の格納容器に設けられた注水口に対して接続可能な接続口を有する給水管が設けられており、緩衝材一体型廃棄体を台座の上に定置する際に、給水管の接続口に格納容器の注水口を接続させた状態で定置し、その後、給水管から圧力水を接続口に注入することにより、注水口から圧力水を注入して緩衝材一体型廃棄体の格納容器の内側の緩衝材に吸水させるので、台座に定置した際に緩衝材を吸水膨潤させることができる。
また、本発明に係る緩衝材一体型廃棄体によれば、上述した緩衝材への注水方法に用いられる緩衝材一体型廃棄体であって、格納容器が、複数の金属製の筒状体を接合部を介して接合してなる有蓋有底の筒状容器、または、単一の金属製の筒状体の両端面に蓋板と底板を接合部を介して接合してなる有蓋有底の筒状容器であり、接合部が、格納容器の外部と緩衝材との間で通水を許容するすき間を有するので、格納容器の外部からの注水により内側の緩衝材を容易に吸水膨潤させることができる。
また、本発明に係る他の緩衝材一体型廃棄体によれば、接合部のすき間への注入口を有する水密性のリング状の止水枠を接合部の周囲に装着可能であるので、装着した止水枠の注水口を通じて容易に緩衝材を吸水膨潤させることができる。
また、本発明に係る他の緩衝材一体型廃棄体によれば、止水枠が、接合部の機械的接合を兼ねるものであるので、効率的な構造を提供することができる。
また、本発明に係る他の緩衝材一体型廃棄体によれば、止水枠が、接合部の周囲に装着されているので、注水のために一時的に装着した後、脱着する手間をなくすことができる。
また、本発明に係る他の緩衝材一体型廃棄体によれば、上述した本発明に係る緩衝材への注水方法に用いられる緩衝材一体型廃棄体、または、上述した本発明に係る他の緩衝材一体型廃棄体であって、格納容器と緩衝材との間に透水性の面材が設けられているので、格納容器から内側に浸入した水を透水性の面材を介して速やかに緩衝材と格納容器の境界面に広げることができ、緩衝材をより早く吸水膨潤させることができる。