JP6959721B2 - 炭素繊維の熱処理方法 - Google Patents

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本発明は、熱処理時の雰囲気中に残存する炭素繊維に関する。また、本発明は、酸化劣化を抑え、炭素繊維を高温で熱処理する方法に関する。
近年、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂等の樹脂マトリックス中に、繊維状の充填材を分散させてなる繊維強化プラスチックが広く用いられている。特に、炭素繊維は、糸状の軽量体であり、引張強さ、弾性係数等の機械的特性、酸やアルカリに対する耐食性、耐熱性、導電性等に優れることから、航空機、宇宙機、船舶、車両、鉄道車両、発電設備、その他各種工業用部材、電気・電子機器、家電製品、スポーツ用品、レジャー用品、玩具等における補強用原料等として好適とされ、炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastic)等に対する需要が拡大している。
CFRPは軽量・高強度のため様々な分野で応用が広がり、最近では量産自動車への適用も本格化しつつあるため益々の普及が予想されている。その一方で、現状は炭素繊維製造時のエネルギー消費量が大きく、高コストであることが課題である。また、今後のCFRPの需要拡大を受けて、生産工程で生じる端材や使用後の廃棄物が急激に増大することも懸念される。したがって、これらの課題を同時に解決しうる、高効率かつ低コストで炭素繊維の回収が可能なCFRPのリサイクル技術の確立が望まれている。
リサイクル回収技術では、回収した炭素繊維が幅広い用途で再利用可能とするために、回収した繊維の長さが長いことが好ましく、バージン繊維に対し大きく強度劣化しないことが最低限求められる。
特許文献1には、800℃以上の過熱水蒸気にて処理し、CFRPの樹脂成分を20〜32質量%残存させる炭素繊維の回収方法が開示されている。
特許文献2には、100℃以上700℃以下の水蒸気を供給しつつ樹脂を乾留し、一部を固定炭素に転換して炭素繊維の表面に付着させる乾留工程と、連続式炉により前記固定炭素が付着した炭素繊維を加熱し、固定炭素の一部を除去して再生炭素繊維を得る加熱除去工程を備える再生炭層繊維の製造方法が開示されている。
一般に、炭素繊維は、大気中で500℃程度以上の温度に晒されると、表面酸化による強度低下が発生することが知られている。そのため、繊維の強度低下を抑えてCFRPから炭素繊維を回収するには、特許文献1または2のように、樹脂除去を完成させず表面に残渣が残った状態とするか、あるいは特許文献2のように酸化がほとんど進まない低温で長時間処理するか、などの方法を選択していた。
特開2011−122032号公報 特開2013−64219号公報
上記特許文献のいずれの方法も、炭素繊維のリサイクル回収の観点から、回収繊維の再利用には何らかの追加処理が必要となり、リサイクル処理費用として高コストとなるため望ましい処理方法ではなかった。しかし、これらの方法が選択された理由は、炭素繊維の表面が酸素等の酸化性ガス雰囲気に晒されたとき、炭素繊維の表面酸化がどの様に進行し強度低下を引き起こしているかについて詳細なメカニズムが知られておらず繊維回収処理における適切な制御ができないためと推察される。
本発明の目的は、残存酸素による酸化劣化に耐性のある表面形態を有する炭素繊維を提供することである。また、本発明の他の目的は、酸化劣化を抑え、炭素繊維を高温で熱処理する方法を提供することである。
本発明者らは、炭素繊維表面の酸化メカニズムに関する有益な知見を得るため、炭素表面形態の評価および酸素分圧制御した酸素曝露実験と引張強度評価を繰り返し、本発明を完成するに至った。
具体的には、これまでの引張強度試験後の炭素繊維断面をSEM観察し、破壊起点は炭素繊維に含まれる内部欠陥ではなく、ほとんどすべて繊維表面のき裂から起きていることを確認している。繊維表面のき裂は炭素繊維の表面形態と密接に関係すると考えられるが、表面形態の影響に関して調べられた先行技術はなかった。そこで、この炭素繊維の表面形態に着目し、酸化劣化が起きる際に炭素繊維の表面形態が引張強度に及ぼす影響を表面形態の異なる炭素繊維を使用し詳細に評価を重ねた。更に、酸化劣化に及ぼす酸素分圧の影響を厳密に調べるため、独自に開発した過熱水蒸気生成装置を用い、処理室内を過熱水蒸気で満たし酸素分圧を4×10−6atm以下となるベース雰囲気を形成した。その後、マスフローコントローラーで厳密に流量を制御された酸素を導入し、所定の酸素分圧を実現している。
また、炭素繊維の引張強度評価は「未処理」に対し、酸素を含む過熱水蒸気処理を比較し、相対的に酸化劣化が進行する条件を見出している。
本発明は、以下に示される。
1.表面に凸部を有し、断面画像を用いて、下記式(1)により求められる形状係数が1.05以上であることを特徴とする炭素繊維。
Figure 0006959721
(式中、Lは周囲長であり、Aは断面積である。)
2.炭素繊維を含む素材を、酸素分圧が1×10−5atm以下である雰囲気において、500℃以上の温度で熱処理する工程を備えることを特徴とする、表面酸化劣化を抑制する炭素繊維の熱処理方法。
3.上記雰囲気が過熱水蒸気を含む上記項2に記載の表面酸化劣化を抑制する炭素繊維の熱処理方法。
4.上記熱処理工程の前に、飽和水蒸気を連続的に150℃以上に加熱して過熱水蒸気を生成し体積膨張させ、上記雰囲気を形成する工程を備える上記項2又は3に記載の表面酸化劣化を抑制する炭素繊維の熱処理方法。
5.表面に凸部を有し、断面画像を用いて、下記式(2)により求められる形状係数が1.05以上である炭素繊維を含む素材を、酸素分圧が3×10−4atm以下である雰囲気において、500℃以上の温度で熱処理する工程を備えることを特徴とする、表面酸化劣化を抑制する炭素繊維の熱処理方法。
Figure 0006959721
(式中、Lは周囲長であり、Aは断面積である。)
6.上記雰囲気が過熱水蒸気を含む上記項5に記載の表面酸化劣化を抑制する炭素繊維の熱処理方法。
7.上記熱処理工程の前に、飽和水蒸気を連続的に150℃以上に加熱して過熱水蒸気を生成し体積膨張させ、上記雰囲気を形成する工程を備える上記項5又は6に記載の表面酸化劣化を抑制する炭素繊維の熱処理方法。
本発明の炭素繊維は、酸化劣化耐性に優れる。
本発明の熱処理方法により、炭素繊維の表面酸化劣化を抑制することができる。
また、本発明の熱処理方法において、熱処理工程の前に、飽和水蒸気を連続的に150℃以上に加熱して過熱水蒸気を生成し体積膨張させ、特定の酸素分圧雰囲気を形成する工程を備える場合には、酸素分圧が4×10−6atm以下である雰囲気を短時間で設定することができるので、炭素繊維の種類に応じて、酸素を供給して、所定の酸素分圧を有する雰囲気とし、この中で炭素繊維の表面酸化劣化を抑制しつつ効率よく熱処理することができる。
本発明の炭素繊維、および、本発明の方法により熱処理された炭素繊維によれば、これらを単独で又は束状として、CFRP等の、樹脂中に炭素繊維又は炭素繊維束を分散させてなる複合材料の製造原料として好適である。
本発明の炭素繊維の断面を示す概略図である。 炭素繊維の熱処理装置の一例を示す概略図である。 実験例1において用いた炭素繊維Aの表面を示す画像である。 実験例1において用いた炭素繊維Aの断面を示す画像である。 実験例2において用いた炭素繊維Bの表面を示す画像である。 実験例2において用いた炭素繊維Bの断面を示す画像である。 実験例1において用いた炭素繊維Aおよびその熱処理炭素繊維の引張強さを示すグラフである。 実験例2において用いた炭素繊維Bおよびその熱処理炭素繊維の引張強さを示すグラフである。
1.炭素繊維
本発明の炭素繊維は、図1に示されるように、表面に凸部12を有する炭素繊維10である。本発明の炭素繊維は、通常、断面形状が円又は楕円の単繊維である。そして、電子顕微鏡等により得られた断面画像を用いて、下記式(1)により求められる形状係数は、酸化劣化耐性の観点から、1.05以上であり、好ましくは1.10以上、より好ましくは1.20以上、更に好ましくは1.25以上、特に好ましくは1.30以上である。尚、上限は、特に限定されないが、通常、1.50である。
Figure 0006959721
(式中、Lは周囲長であり、Aは断面積である。)
尚、上記式(1)による形状係数は、炭素繊維10の断面の周囲長Lおよび断面積Aにより求めることができ、本発明においては、サンプル数20以上の平均値とする。
図1は、炭素繊維10の断面の一例であり、炭素繊維10の表面全体に凸部12を有するものを示しているが、これに限定されず、部分的に、真円又は楕円の一部である円弧を有するものであってもよい。
本発明の炭素繊維10が有する凸部12は、炭素繊維10の長さ方向の表面において点状でも線状でもよい。また、炭素繊維10の長さ方向に凸部12が連続する線となっている場合、直線および曲線のいずれでもよい。直線の場合、長さ方向に平行であってよいし、螺旋状であってもよい。これらの場合、複数の線状であることが好ましい。
本発明の炭素繊維は、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、リグニン−ポバール系炭素繊維等とすることができ、これらの製造後のものだけでなく、高温ガス等を用いて表面処理された炭素繊維や、デサイジングされた炭素繊維、CFRP廃材から回収された炭素繊維であってもよい。
上記炭素繊維の直径(繊維径)は、好ましくは4〜20μmである。
2.炭素繊維の熱処理方法
本発明の炭素繊維の熱処理方法は、炭素繊維を含む素材を、特定の雰囲気において、500℃以上の温度で熱処理する工程を備える。そして、第1熱処理方法では、上記雰囲気における酸素分圧を1×10−5atm以下とする。また、第2熱処理方法では、特定の炭素繊維を含む素材に対して熱処理を行い、上記雰囲気における酸素分圧を3×10−4atm以下とする。本発明の熱処理方法は、必要に応じて、この熱処理工程の前後に、他の工程を備えることができる。
上記炭素繊維を含む素材は、単繊維および繊維束のいずれでもよい。また、炭素繊維の具体例は、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、リグニン−ポバール系炭素繊維等であり、これらの製造後のものだけでなく、サイジング剤等を用いて表面処理されている市販の炭素繊維製品を、有機溶剤処理、高分子分解処理等のデサイジング処理に供して得られた炭素繊維や、廃材から回収された炭素繊維を用いることもできる。尚、単繊維の断面形状は、通常、円又は楕円であるが、炭素繊維は、表面に凸部を有するものおよび表面が滑らかなもののいずれでもよい。
上記炭素繊維を含む素材が繊維束の場合、例えば、直径(繊維径)4〜8μmの単繊維が、1,000〜80,000本程度集合したものとすることができる。本発明では、繊維径および単繊維数に限定されず、いかなる繊維径および単繊維数のものでも、特定の条件で熱処理されたものとすることができる。また、炭素繊維を含む素材の長さも、特に限定されず、メートルオーダー、キロメートルオーダー等とすることができ、このように長い炭素繊維を含む素材の熱処理物とすることもできる。従って、本発明により得られる熱処理炭素繊維は、メートルオーダー、キロメートルオーダー等の長さとすることができる。
第1熱処理方法における熱処理工程は、酸素分圧が1×10−5atm以下である雰囲気において、炭素繊維を含む素材を500℃以上の温度で熱処理する工程である。炭素繊維は、表面に凸部を有するものおよび表面が滑らかなもののいずれでもよく、特に限定されない。上記雰囲気としては、過熱水蒸気、不活性ガス等とすることができる。本発明においては、過熱水蒸気が好ましい。また、酸素分圧は、炭素繊維の劣化抑制の観点から、好ましくは8×10−6atm以下である。尚、酸素分圧が1×10−5atmを超えると、分圧増加に伴い炭素繊維の劣化抑制効果が小さくなる。
また、炭素繊維を含む素材の熱処理温度は、500℃以上であり、好ましくは500℃〜800℃、より好ましくは500℃〜700℃である。この温度は、終始一定であってよいし、昇温および降温を組み合わせてもよい。尚、熱処理温度が高すぎると、過熱水蒸気による酸化反応が顕著となり、本発明の効果が得られない場合がある。
また、第2熱処理方法における熱処理工程は、酸素分圧が3×10−4atm以下である雰囲気において、上記本発明の炭素繊維、即ち、表面に凸部を有し、断面画像を用いて、下記式(2)により求められる形状係数が、1.05以上、より好ましくは1.20以上、更に好ましくは1.25以上、特に好ましくは1.30以上(但し、上限は、通常、1.50)の炭素繊維を500℃以上の温度で熱処理する工程である。上記雰囲気としては、過熱水蒸気、不活性ガス等とすることができる。本発明においては、過熱水蒸気が好ましい。また、酸素分圧は、炭素繊維の劣化抑制の観点から、好ましくは1×10−4atm以下である。尚、酸素分圧が3×10−4atmを超えると、分圧増加に伴い炭素繊維の劣化抑制効果が小さくなる。
Figure 0006959721
(式中、Lは周囲長であり、Aは断面積である。)
また、炭素繊維を含む素材の熱処理温度は、500℃以上であり、好ましくは500℃〜800℃、より好ましくは500℃〜700℃である。この温度は、終始一定であってよいし、昇温および降温を組み合わせてもよい。尚、熱処理温度が高すぎると、過熱水蒸気による酸化反応が顕著となり、本発明の効果が得られない場合がある。
上記第1熱処理方法および第2熱処理方法における熱処理工程で用いる過熱水蒸気は、各種加熱装置を用いた飽和水蒸気又は水の加熱、各種高温燃焼ガスを用いた飽和水蒸気又は水の加熱、飽和水蒸気又は水への赤外線照射等の方法により得られたものとすることができる。
上記炭素繊維を含む素材の熱処理は、上記の各雰囲気が設定された密閉系で行ってよいし、気体の流路を備える装置を用い、炭素繊維を含む素材を、流路の途中に配置し、上記雰囲気を形成する高温気体を流路の1端側から導入し、高温気体と炭素繊維を含む素材とを接触させる方法であってもよい。後者の方法の場合、炭素繊維を含む素材を熱処理する際の雰囲気を常に一定とすることができ、本発明の効果をより確実に得ることができる。尚、この場合の高温気体の流速は、特に限定されない。長さのある炭素繊維を含む素材を用いる場合には、この炭素繊維を含む素材を、上記雰囲気が設定された空間に連続的に供給することにより、熱処理炭素繊維を連続的に得ることができる。
炭素繊維を含む素材の処理時間は、用いる装置、熱処理に供される炭素繊維を含む素材の量、雰囲気の温度等により、適宜、選択されるが、好ましくは1分以上、より好ましくは1〜180分、更に好ましくは5〜60分である。
本発明の熱処理方法は、酸素分圧が比較的低い特定の雰囲気において熱処理工程を行うものであり、特に、第1熱処理方法において、所定の空間にこのような雰囲気を効率よく形成するために、上記熱処理工程の前に、飽和水蒸気を連続的に150℃以上に加熱して体積膨張させる工程(以下、「過熱水蒸気製造工程」という)を備えることが好ましい。従来、酸素分圧が比較的低い雰囲気を形成するために、窒素ガス等の不活性ガスを供給し、置換前の不要な空気等を追い出す方法が知られているが、この方法は、不活性ガスの使用量が膨大となるだけでなく、上記特定の雰囲気が短時間で形成されないという問題があった。これに対して、上記過熱水蒸気製造工程によれば、飽和水蒸気の加熱によって、体積膨張が瞬時に発生するため、空間内の気体を一気に追い出し、低酸素分圧を有する雰囲気を効率よく形成することができる。
上記過熱水蒸気製造工程における飽和水蒸気の供給速度は、特に限定されないが、所望の雰囲気を安定的に形成できることから、例えば、密閉された熱処理用容器の内容積が200L以下の場合、好ましくは1〜20kg/時、より好ましくは3〜10kg/時である。
また、飽和水蒸気の加熱温度は、150℃以上であり、好ましくは200℃〜800℃である。
上記熱処理工程の直前には、酸素分圧を確認し、所定の酸素分圧であれば、このまま、炭素繊維を含む素材の熱処理を行ってよいし、酸素を供給して酸素分圧を調整してから、熱処理を行ってもよい。
上記第1熱処理方法および第2熱処理方法における各熱処理工程の後、冷却することにより、熱処理炭素繊維を得ることができる。冷却方法は、特に限定されないが、150℃以下となるまでにおいて、熱処理工程の雰囲気を保持することが好ましい。これにより、炭素繊維の劣化が抑制された熱処理炭素繊維を確実に得ることができる。
本発明の炭素繊維、および、本発明の熱処理方法により得られた熱処理炭素繊維は、CFRPの製造に用いることができる。これらの炭素繊維との組合せにおいて用いられる樹脂は、熱可塑性樹脂および硬化性樹脂のいずれでもよい。
熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン、スチレン・アクリロニトリル共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体、(メタ)アクリル酸エステル・スチレン共重合体、ABS樹脂等のスチレン系樹脂;ゴム強化熱可塑性樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、環状オレフィン共重合体、塩素化ポリエチレン等のオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル、エチレン・塩化ビニル重合体、ポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニル系樹脂;ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等の(メタ)アクリル酸エステルの1種以上を用いた(共)重合体等のアクリル系樹脂;ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,12等のポリアミド系樹脂(PA);ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリアセタール樹脂(POM);ポリカーボネート樹脂(PC);ポリアリレート樹脂;ポリフェニレンエーテル;ポリフェニレンサルファイド;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂;液晶ポリマー;ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等のイミド系樹脂;ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン等のケトン系樹脂;ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等のスルホン系樹脂;ウレタン系樹脂;ポリ酢酸ビニル;ポリエチレンオキシド;ポリビニルアルコール;ポリビニルエーテル;ポリビニルブチラール;フェノキシ樹脂;生分解性プラスチック等が挙げられる。
また、硬化性樹脂としては、アクリル系樹脂(エポキシ基を有するアクリル系重合体を含む)、エポキシ樹脂、フェノール系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン系樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド・トリアジン樹脂、フラン樹脂、キシレン樹脂、グアナミン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂等が挙げられる。そして、硬化性樹脂を含有する、熱硬化性樹脂組成物、光硬化性樹脂組成物、室温硬化性樹脂組成物等によりCFRPを形成することができる。
CFRPを製造する場合、炭素繊維および熱処理炭素繊維は、短繊維若しくは長繊維の形態、又は、織布若しくは不織布の形態で用いることができる。成形品を製造する場合には、例えば、射出成形法(射出圧縮成形、ガスアシスト射出成形、インサート成形等)、ブロー成形法、回転成形法、押出成形法、プレス成形法、トランスファー成形法(RTM成形、RIM成形、SCRIMP成形等)、フィラメントワインディング成形法、オートクレーブ成形法、ハンドレイアップ成形法、ピンワインディング法、インフュージョン法、スプレーアップ法、連続プレス法、プリプレグの形態で行うシートワインディング法等を適用することができる。
CFRPの用途としては、航空機、宇宙機、船舶、車両、鉄道車両、発電設備、その他各種工業用部材、建築用部材、電気・電子機器、家電製品、スポーツ用品、レジャー用品、玩具等が挙げられる。
以下に、例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。
1.炭素繊維の形状係数
炭素繊維を樹脂埋めした後、イオンミリング装置を用いて、断面ミリングを行うことにより断面観察用サンプルを作製した。その後、走査型電子顕微鏡により撮影した画像より、炭素繊維の断面積および周囲長を測定し、上記式(1)により形状係数を求めた。測定数は20である。
2.引張強さの測定方法
炭素繊維の単繊維の引張強さとして、JIS R7606に準拠する最大引張荷重を、インストロン社製「万能材料試験機5582」を用いて測定した。測定数は20である。
3.炭素繊維の熱処理装置
炭素繊維の熱処理装置は、図2に示される。この装置は、蒸気ボイラーを用いて、一旦、水を100℃超の飽和水蒸気に変換した後,それを誘導加熱方式で発熱するペレット型ヒーターを積層搭載したセラミックス管内に通すことで過熱水蒸気を生成させ、生成した過熱水蒸気を処理室に導入して、炭素繊維の熱処理を行う装置である。尚、処理室には、所定の温度(700℃)で安定的に熱処理するため、アシストヒーターを設置した。また、ペレット型ヒーターの手前で系外のマスフローコントローラーからセラミックス管内に酸素を導入することにより、処理室内の酸素分圧を制御するようにした。
4.炭素繊維の熱処理
炭素繊維として、下記の2種を用いた。いずれも、単繊維であり、炭素繊維を熱処理する際には、25℃のアセトン中、24時間浸漬した後、大気雰囲気中、120℃で乾燥したものを用いた。
(1)炭素繊維A
図3に示される表面および図4に示される断面を有し、上記式(1)による形状係数(平均値)が1.34(実測値は1.254〜1.420)であるポリアクリロニトリル系炭素繊維を用いた。この炭素繊維Aは、本発明の炭素繊維である。
(2)炭素繊維B
図5に示される表面および図6に示される断面を有し、上記式(1)による形状係数が1.00であるポリアクリロニトリル系炭素繊維を用いた。
実験例1
炭素繊維Aを用い、熱処理装置の処理室内に載せ置き、飽和水蒸気をセラミックス管内で加熱して、800℃の過熱水蒸気を生成させた。その後、この過熱水蒸気を連続的に処理室に導入して、温度が700℃、酸素分圧が4×10−6atm程度となるベース雰囲気を形成した。その後、マスフローコントローラーで厳密に流量を制御された酸素を導入し、酸素分圧を、それぞれ、4×10−6atm、8×10−6atm、4×10−5atm、4×10−4atmおよび4×10−3atmとして炭素繊維の熱処理を行った。700℃における加熱処理を20分間行った後、アシストヒーターを制御して10℃/分の降温速度で200℃まで冷却し、更に、アシストヒーターの電源をオフとして放冷し、炭素繊維(以下、「熱処理炭素繊維」という)を回収した。
その後、熱処理炭素繊維の最大引張荷重を上記の方法により測定し、以下の平均値Sを得た。
酸素分圧4×10−6atmで熱処理したときのS=5.25GPa
酸素分圧8×10−6atmで熱処理したときのS=4.87GPa
酸素分圧4×10−5atmで熱処理したときのS=4.82GPa
酸素分圧4×10−4atmで熱処理したときのS=4.49GPa
酸素分圧4×10−3atmで熱処理したときのS=3.31GPa
熱処理を行う前の炭素繊維AのS=4.95GPa
上記の結果を図7に示す。この図7において示されたプロットは、測定数20の平均値を反映するものであり、プロットの上下に明示したエラーバーは、測定値の正規分布の標準偏差σの値を反映するものである。
図7から明らかなように、酸素分圧が3×10−4atm以下である雰囲気において炭素繊維を熱処理することにより、引張強さの低下、即ち、酸化劣化を抑制することができた。
実験例2
炭素繊維Aに代えて、炭素繊維Bを用いた以外は、実験例1と同じ処理を行い、熱処理炭素繊維を得た。
その後、熱処理炭素繊維の最大引張荷重を上記の方法により測定し、以下の平均値Sを得た。
酸素分圧4×10−6atmで熱処理したときのS=4.59GPa
酸素分圧8×10−6atmで熱処理したときのS=5.19GPa
酸素分圧4×10−5atmで熱処理したときのS=4.63GPa
酸素分圧4×10−4atmで熱処理したときのS=3.94GPa
酸素分圧4×10−3atmで熱処理したときのS=3.32GPa
熱処理を行う前の炭素繊維BのS=4.98GPa
上記の結果を図8に示す。図8から明らかなように、酸素分圧が1×10−5atm以下である雰囲気において炭素繊維を熱処理することにより、引張強さの低下、即ち、酸化劣化を抑制することができた。
本発明の炭素繊維、および、本発明の熱処理方法により得られた熱処理炭素繊維は、引張特性に優れることから、CFRP等の、樹脂中に炭素繊維又は炭素繊維束を分散させてなる複合材料の製造原料として好適である。
また、CFRPへの利用又は再利用に好適な炭素繊維は、その断面形状により、特定の熱処理条件、即ち、特定の酸素分圧を選択し、過熱水蒸気による処理を行うことにより、酸化劣化の低下が抑制された熱処理炭素繊維を得ることができる。
10:炭素繊維、12:凸部

Claims (3)

  1. 表面に凸部を有し、断面画像を用いて、下記式(2)により求められる形状係数が1.05以上である炭素繊維を含む素材を、酸素ガスを導入して、酸素分圧を8×10−6atm〜3×10−4atmとした過熱水蒸気雰囲気において、500℃以上の温度で熱処理する工程を備えることを特徴とする、表面酸化劣化を抑制する炭素繊維の熱処理方法。
    Figure 0006959721
    (式中、Lは周囲長であり、Aは断面積である。)
  2. 前記酸素分圧が×10−6atm〜1×10−4atmである請求項1に記載の表面酸化劣化を抑制する炭素繊維の熱処理方法。
  3. 前記熱処理工程の前に、飽和水蒸気を連続的に150℃以上に加熱して過熱水蒸気を生成し体積膨張させ、次いで、酸素ガスを導入して前記雰囲気を形成する工程を備える請求項1又は2に記載の表面酸化劣化を抑制する炭素繊維の熱処理方法。
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