JP6340619B2 - 過熱水蒸気処理炭素繊維の製造方法 - Google Patents

過熱水蒸気処理炭素繊維の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6340619B2
JP6340619B2 JP2014010822A JP2014010822A JP6340619B2 JP 6340619 B2 JP6340619 B2 JP 6340619B2 JP 2014010822 A JP2014010822 A JP 2014010822A JP 2014010822 A JP2014010822 A JP 2014010822A JP 6340619 B2 JP6340619 B2 JP 6340619B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
carbon fiber
superheated steam
atmosphere
resin
temperature
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2014010822A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2014159663A (ja
Inventor
匡史 和田
匡史 和田
和彦 河合
和彦 河合
一美 林
一美 林
北岡 諭
諭 北岡
博仁 平
博仁 平
智幸 鈴木
智幸 鈴木
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
AICHI SCIENCE & TECHNOLOGY FOUNDATION
Japan Fine Ceramics Center
Original Assignee
AICHI SCIENCE & TECHNOLOGY FOUNDATION
Japan Fine Ceramics Center
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by AICHI SCIENCE & TECHNOLOGY FOUNDATION, Japan Fine Ceramics Center filed Critical AICHI SCIENCE & TECHNOLOGY FOUNDATION
Priority to JP2014010822A priority Critical patent/JP6340619B2/ja
Publication of JP2014159663A publication Critical patent/JP2014159663A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6340619B2 publication Critical patent/JP6340619B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Reinforced Plastic Materials (AREA)
  • Chemical Or Physical Treatment Of Fibers (AREA)

Description

本発明は、樹脂との優れた接着性を与える過熱水蒸気処理炭素繊維の製造方法に関する。
近年、熱可塑性樹脂、硬化樹脂等の樹脂マトリックス中に、繊維状の充填材を分散させてなる繊維強化プラスチックが広く用いられている。特に、炭素繊維は、軽量であり、引張強さ、弾性係数等の機械的特性、酸やアルカリに対する耐食性、耐熱性、導電性等に優れることから、航空機、宇宙機、船舶、車両、鉄道車両、発電設備、その他各種工業用部材、電気・電子機器、家電製品、スポーツ用品、レジャー用品、玩具等における補強用原料等として好適とされ、炭素繊維強化樹脂(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastic)等の需要が拡大している。
炭素繊維は、各種の製造方法により製造されるが、表面が未処理の炭素繊維は、樹脂との濡れ性、親和性又は接着性が不十分であることが多い。その結果、例えば、炭素繊維を補強材として用いた場合に、十分な機械的特性が得られない等、炭素繊維の好ましい性能が複合材料に反映されないことがあった。そこで、例えば、複合材料を構成する樹脂マトリックスから炭素繊維の引き抜けを抑制し、機械的特性を改良する等の所期の目的を達成するため、炭素繊維に表面処理を施すことが必須とされており、特に、樹脂との接着性の観点から、その最表面に含酸素官能基を形成する方法が求められてきた。
炭素繊維の表面処理方法としては、気相酸化法、液相酸化法、エッチング法等が知られている(例えば、特許文献1〜5等参照)。また、集束性、耐擦過性等を併せて改良するため、更にサイジング剤の塗布等が行うことがある(例えば、特許文献6〜8等参照)。
特開平6−257068号公報 特開2000−154460号公報 特開2002−20968号公報 特開2009−79344号公報 特開2012−102439号公報 特開2008−274520号公報 特開2010−285710号公報 特開2012−144831号公報
本発明は、樹脂との優れた接着性を有する過熱水蒸気処理炭素繊維(以下、「改質炭素繊維」ともいう。)の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、表面が未処理の炭素繊維素材に比べて、引張強さが過度に低下することなく、上記炭素繊維素材とほぼ同等の引張強さを有する改質炭素繊維の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、過熱水蒸気を含む雰囲気において、表面が未処理の炭素繊維素材を表面処理することにより、樹脂との接着性(密着性)に優れた炭素繊維(改質炭素繊維)が得られたことを見出した。
本発明は、以下に示される。
1.炭素繊維素材を、過熱水蒸気及び二酸化炭素を含む雰囲気に接触させることを特徴とする、過熱水蒸気処理炭素繊維の製造方法。
2.上記雰囲気に含まれる上記二酸化炭素の割合が、上記過熱水蒸気及び上記二酸化炭素の合計量に対して0.1〜10体積%である上記項1に記載の過熱水蒸気処理炭素繊維の製造方法。
3.上記雰囲気の温度が400℃〜800℃である上記項1又は2に記載の過熱水蒸気処理炭素繊維の製造方法。
4.炭素繊維素材を、過熱水蒸気及び窒素からなる雰囲気に接触させることを特徴とする、過熱水蒸気処理炭素繊維の製造方法。
5.上記雰囲気に含まれる上記窒素の割合が、上記過熱水蒸気及び上記窒素の合計量に対して0.1〜10体積%である上記項4に記載の過熱水蒸気処理炭素繊維の製造方法。
6.上記雰囲気の温度が400℃〜800℃である上記項4又は5に記載の過熱水蒸気処理炭素繊維の製造方法。
本発明において、炭素繊維と樹脂との接着性(密着性)は、界面剪断強度により評価される。
本発明により得られた過熱水蒸気処理炭素繊維(改質炭素繊維)は、処理前の炭素繊維素材に比べて、引張強さが過度に低下することなく、特に、樹脂との接着性(密着性)に優れる。本発明により得られた過熱水蒸気処理炭素繊維は、炭素繊維強化樹脂(CFRP)等の、樹脂中に炭素繊維又は炭素繊維束を分散させてなる複合材料の製造に好適である。
また、本発明の製造方法によれば、サイジング剤等を用いた場合に形成される塗膜層等といった被覆層に依存することなく、樹脂との密着性に優れた改質炭素繊維を得ることができる。従って、改質炭素繊維の製造を、効率よく、且つ、使用する装置、原料等の面において、低コストで行うことができる。
炭素繊維素材を処理する際の雰囲気、過熱水蒸気と、窒素又は二酸化炭素のガスとを含み、上記ガスの含有量が、過熱水蒸気及びガスの合計量に対して0.1〜10体積%である場合には、改質炭素繊維と樹脂との間で特に優れた接着性を得ることができる。
〔実施例〕における[D]フラグメンテーション試験で用いた試験片を示す概略図である。 〔実施例〕における過熱水蒸気処理炭素繊維の製造に用いた炭素繊維束を得るためのデサイジング装置を示す概略断面図である。 実施例で用いた過熱水蒸気処理炭素繊維の製造装置の一例を示す概略図である。 図3の製造装置に配設された発熱体を示し、(a)は斜視図、(b)は上方から見た図である。 参考例1〜4及び実施例1〜12で得られた改質炭素繊維、並びに、比較例1及び参考例で用いた炭素繊維素材の引張強さを示すグラフである。 硬化性エポキシ樹脂組成物(R1)を用いた参考例1〜4、実施例1〜412、比較例1及び参考例の[D]フラグメンテーション試験(界面剪断強度)の結果を示すグラフである。 参考例3、実施例3(又は)及び11で得られた改質炭素繊維、並びに、比較例1(又は2)で用いた炭素繊維素材の表面に形成されている官能基の定量結果を示すグラフである。 硬化性エポキシ樹脂組成物(R2)を用いた実施例及び比較例2の[D]フラグメンテーション試験(界面剪断強度)の結果を示すグラフである。 参考例3、実施例3(又は)、13及び14で得られた改質炭素繊維(窒素の含有割合を変化させてなる処理物)、並びに、比較例1(又は2)及び参考例で用いた炭素繊維素材の引張強さを示すグラフである。
本発明の製造方法が適用可能な炭素繊維素材は、単繊維及び繊維束のいずれでもよい。また、炭素繊維素材の具体例は、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、リグニン−ポバール系炭素繊維等であり、サイジング剤を用いて表面処理されている市販の炭素繊維製品を、有機溶剤処理、高分子分解処理等に供して得られた炭素繊維や、廃材から回収された炭素繊維を用いることもできる。
炭素繊維素材が炭素繊維の繊維束の場合、例えば、直径(繊維径)4〜8μmの単繊維が、1,000〜80,000本程度集合したものとすることができる。本発明では、繊維径及び単繊維数に限定されず、いかなる繊維径及び単繊維数のものでも処理することが可能である。また、炭素繊維素材の長さも、特に限定されず、メートルオーダー、キロメートルオーダー等とすることができ、このように長い炭素繊維素材を用いて、本発明の過熱水蒸気処理炭素繊維を連続的に製造する態様とすることもできる。
本発明により得られた過熱水蒸気処理炭素繊維は、(1)過熱水蒸気及び二酸化炭素を含む雰囲気、又は、(2)過熱水蒸気及び窒素からなる雰囲気において、表面処理されてなる。そして、この雰囲気における温度を、通常、100℃より高く、下限温度を、好ましくは150℃、より好ましくは400℃、更に好ましくは500℃、特に好ましくは600℃とする(但し、上限温度は800℃である)ことにより、本発明の効果を効率よく得ることができる。
過熱水蒸気以外の他の気体としての二酸化炭素及び窒素は、炭素と反応せず、上記のような高い温度において、変質、又は、相互に反応しない。樹脂と、改質炭素繊維との高い接着性が得られることから、窒素又は二酸化炭素が併用される
上記雰囲気が、過熱水蒸気と他の気体とからなる場合、本発明の効果を得るための過熱水蒸気の割合は、過熱水蒸気及び他の気体の合計量に対して、好ましくは80体積%以上、より好ましくは85体積%以上、更に好ましくは90体積%以上である。上限は、通常、99.9体積%である。
特に、上記雰囲気が窒素を含む場合、雰囲気の温度を好ましくは650℃以上とすることにより、樹脂と、改質炭素繊維との間により高い接着性を得ることができる。
過熱水蒸気は、各種加熱装置を用いた飽和水蒸気又は水の加熱、各種高温燃焼ガスを用いた飽和水蒸気又は水の加熱、飽和水蒸気又は水への赤外線照射等の方法により得られたものを用いることができる。
炭素繊維素材への表面処理は、上記雰囲気(1)又は(2)が設定された密閉系で行ってよいし、気体の流路を備える装置を用い、炭素繊維素材を、流路の途中に配置し、上記雰囲気(1)又は(2)を形成する高温気体を流路の1端側から導入し、高温気体と炭素繊維素材とを接触させる方法であってもよい。後者の方法の場合、炭素繊維素材の表面処理の際の雰囲気を常に一定とすることができ、本発明の効果をより確実に得ることができる。尚、この場合の高温気体の流速は、特に限定されない。上記のように、長い炭素繊維素材を用いる場合には、この炭素繊維素材を、上記雰囲気が設定された室に連続的に供給することにより、過熱水蒸気処理炭素繊維を連続的に製造することができる。
炭素繊維素材の表面処理時間は、用いる装置、処理に供される炭素繊維素材の量、雰囲気(1)又は(2)の温度等により、適宜、選択されるが、好ましくは1分以上、より好ましくは1〜120分、更に好ましくは1〜20分である。
炭素繊維素材の表面処理(加熱処理)を行うことにより、過熱水蒸気処理炭素繊維を得ることができる。尚、表面処理の際に、400℃以上の過熱水蒸気を用いた場合には、加熱処理の後、400℃以下となるまでにおいて、過熱水蒸気処理炭素繊維を、表面処理に用いた雰囲気又は不活性ガス雰囲気に保持しておくことが好ましい。
本発明によれば、単繊維又は繊維束からなる炭素繊維素材を、雰囲気(1)又は(2)において、表面処理することにより、比表面積が、好ましくは0.3〜1.5g/m、より好ましくは0.3〜1.0g/mの範囲にある改質炭素繊維を得ることができる。尚、この比表面積は、BET法(Kr吸着)により測定することができる。
また、本発明者らは、改質炭素繊維の表面には、カルボキシル基、ラクトン基、ラクトール基、水酸基(フェノール性水酸基)等の酸性官能基、及び、クロメン基、ケトン基(カルボニル基)、ピロン基、アクリジン基等の塩基性官能基の両方が形成されていると推定している。これらの官能基の量は、例えば、Boehm法等により測定することができる。
本発明の改質炭素繊維は、樹脂との密着性に優れる。この改質炭素繊維は炭素繊維強化樹脂の製造に用いることができ、この改質炭素繊維との組合せにおいて用いられる樹脂は、熱可塑性樹脂及び硬化樹脂のいずれも好適である。
熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン、スチレン・アクリロニトリル共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体、(メタ)アクリル酸エステル・スチレン共重合体、ABS樹脂等のスチレン系樹脂;ゴム強化熱可塑性樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、環状オレフィン共重合体、塩素化ポリエチレン等のオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル、エチレン・塩化ビニル重合体、ポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニル系樹脂;ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等の(メタ)アクリル酸エステルの1種以上を用いた(共)重合体等のアクリル系樹脂;ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,12等のポリアミド系樹脂(PA);ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリアセタール樹脂(POM);ポリカーボネート樹脂(PC);ポリアリレート樹脂;ポリフェニレンエーテル;ポリフェニレンサルファイド;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂;液晶ポリマー;ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等のイミド系樹脂;ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン等のケトン系樹脂;ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等のスルホン系樹脂;ウレタン系樹脂;ポリ酢酸ビニル;ポリエチレンオキシド;ポリビニルアルコール;ポリビニルエーテル;ポリビニルブチラール;フェノキシ樹脂;生分解性プラスチック等が挙げられる。
また、硬化樹脂としては、アクリル系樹脂(エポキシ基を有するアクリル系重合体を含む)、エポキシ樹脂、フェノール系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン系樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド・トリアジン樹脂、フラン樹脂、キシレン樹脂、グアナミン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂等を含有する、熱硬化性樹脂組成物、光硬化性樹脂組成物、室温硬化性樹脂組成物等により形成された硬化樹脂とすることができる。
炭素繊維強化樹脂が硬化樹脂を含む場合には、熱硬化性樹脂組成物が好ましく用いられる。
本発明により得られた過熱水蒸気処理炭素繊維によれば、樹脂に包埋して測定された界面剪断強度を、表面が未処理の炭素繊維素材を樹脂に包埋して測定された界面剪断強度に比べて、好ましくは1.1〜3.5倍、より好ましくは2.0〜3.5倍とすることができる。この界面剪断強度は、後述する〔実施例〕に記載する方法より得られたものである。
本発明により得られた過熱水蒸気処理炭素繊維は、上記樹脂や、必要に応じて用いられる各種添加剤等と組み合わされて、炭素繊維強化樹脂(CFRP)の製造に好ましく用いられる。このとき、過熱水蒸気処理炭素繊維は、短繊維若しくは長繊維の形態、又は、織布若しくは不織布の形態で用いることができる。成形品を製造する場合には、例えば、射出成形法(射出圧縮成形、ガスアシスト射出成形、インサート成形等)、ブロー成形法、回転成形法、押出成形法、プレス成形法、トランスファー成形法(RTM成形、RIM成形、SCRIMP成形等)、フィラメントワインディング成形法、オートクレーブ成形法、ハンドレイアップ成形法、ピンワインディング法、インフュージョン法、スプレーアップ法、連続プレス法、プリプレグの形態で行うシートワインディング法等を適用することができる。
尚、炭素繊維強化樹脂(CFRP)に含まれる過熱水蒸気処理炭素繊維の割合は、樹脂100質量部に対して、好ましくは5〜500質量部、より好ましくは10〜200質量部である。
炭素繊維強化樹脂の用途としては、航空機、宇宙機、船舶、車両、鉄道車両、発電設備、その他各種工業用部材、建築用部材、電気・電子機器、家電製品、スポーツ用品、レジャー用品、玩具等が挙げられる。
以下に、実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明は、かかる実施例に限定されるものではない。
1.測定方法
本発明に係る評価項目である引張強さ及び界面剪断強度の測定方法を示す。
[A]引張試験による引張強さの測定
下記要領で、各種の炭素繊維の引張強さσを得た。
炭素繊維の単繊維の最大引張荷重を、JIS R7606に準拠した方法で、インストロン社製「万能材料試験機5582」を用いて測定した。測定条件を以下に示す。
ロードセル:10N
ゲージ長さ:20mm
クロスヘッドスピード:0.1mm/分
温度:室温25℃
測定された最大引張荷重(N)と、炭素繊維の単繊維断面積(mm)とを用い、下記式(5)により、引張強さσ(GPa)を算出した。
σ=F/A (5)
〔σは、引張強さであり、Fは、最大引張荷重であり、Aは、単繊維断面積である。〕
尚、単繊維の断面積は、走査型電子顕微鏡を用いて計測した繊維直径より算出した円の面積を用いた。
[B]比表面積の測定
Quantachrome社製Autosorb−1を用いて、BET法により比表面積を測定した。尚、吸着ガスとしてクリプトンガスを用いた。
[C]炭素繊維の表面官能基の定量
Boehm法に基づき、NaOH、NaCO、NaHCO、HCl等の水溶液を用いて、塩基性官能基及び酸性官能基(カルボキシル基、ラクトン基、ラクトール基、フェノール性水酸基)の定量を行った。
[D]フラグメンテーション試験による界面剪断強度の測定
下記要領で、炭素繊維と樹脂との接着性(密着性)の評価を行った。
炭素繊維−樹脂間の界面剪断強度(接着強度)の評価に際し、2種の硬化性エポキシ樹脂組成物(R1)及び(R2)を調製した。そして、各硬化性エポキシ樹脂組成物を用いて、図1に示す単繊維埋込試験片(全長50mm、幅2mm)1を作製し、引張試験(Single−fiber fragmentation test)に供した。
(1)硬化性エポキシ樹脂組成物の調製
参考例1〜実施例1〜4、912、比較例1及び参考例にて用いる硬化性エポキシ樹脂組成物(R1)>
容器内で、三菱化学社製ビスフェノールA型エポキシ液状樹脂「jER828」及び三菱化学社製テトラエチレンテトラミンを、質量比100:11で混合し(25℃)、硬化性エポキシ樹脂組成物(R1)を得た。次いで、この組成物が収容された容器を、25℃に設定された真空装置内に静置して、減圧雰囲気で10分放置、その後、大気雰囲気とする一連の操作を、更に2回行い、硬化性エポキシ樹脂組成物(R1)の脱泡を行った。
<実施例及び比較例2にて用いる硬化性エポキシ樹脂組成物(R2)>
容器内で、三菱化学社製ビスフェノールF型エポキシ液状樹脂「jER806」、東京化成工業社製4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、及び、東京化成工業社製2−エチル−4−メチルイミダゾールを、質量比100:107.6:1で混合し(50℃)、その後、放冷して、硬化性エポキシ樹脂組成物(R2)を得た。
(2)単繊維埋込試験片の作製
参考例1〜実施例1〜4、912、比較例1及び参考例にて用いる単繊維埋込試験片>
図1の試験片の形状のキャビティを有するフッ素樹脂製の型を用いた。この型におけるキャビティの長手方向の中心に位置するように、且つ、たるみがないように、単繊維を固定した。次いで、硬化性エポキシ樹脂組成物(R1)を型内に注入し、型閉した。その後、この型を乾燥機内に静置し、25℃で24時間、50℃で60分間、続いて、100℃で80分間の熱処理を行い、硬化させた。そして、型から半透明の硬化物を取り出し、その表面を研磨して平滑表面の単繊維埋込試験片1を得た。この単繊維埋込試験片1は、単繊維2が、エポキシ硬化樹脂からなる樹脂部3に包埋されたものである。
<実施例及び比較例2にて用いる単繊維埋込試験片>
図1の試験片の形状のキャビティを有するフッ素樹脂製の型を用いた。この型におけるキャビティの長手方向の中心に位置するように、且つ、たるみがないように、単繊維を固定した。次いで、硬化性エポキシ樹脂組成物(R2)を型内に注入した。その後、この組成物が収容された型を、25℃に設定された真空装置内に静置し、減圧雰囲気で10分放置することにより、組成物の脱泡を行った。そして、型を、型閉した状態で乾燥機内に静置し、80℃で60分間、120℃で60分間、続いて、150℃で180分間の熱処理を行い、硬化させた。そして、型から半透明の硬化物を取り出し、その表面を研磨して平滑表面の単繊維埋込試験片1を得た。この単繊維埋込試験片1は、単繊維2が、エポキシ硬化樹脂からなる樹脂部3に包埋されたものである。
(3)引張試験(Single−fiber fragmentation test)
引張試験は、小型引張試験機を用いて行った。尚、引張試験における単繊維埋込試験片中の炭素繊維の挙動を観察するために光学顕微鏡を併用した。図1に示す試験片を、引張速度0.1mm/分の条件で引っ張り、ひずみが1.0%増すたびに繊維破断数を計測した。尚、ひずみの測定は、試験片の表面における、炭素繊維の観察の妨げにならない位置に共和電業社製ひずみゲージ「KFG−1−120−C1−11N30C2」を貼り付けて行った。
炭素繊維の破断が飽和したところで引張試験を終了した。そして、試験片のゲージ長さを繊維破断数で除して、平均破断長さを算出し、この値を用い、下記式(6)により、界面剪断強度τを算出した。
Figure 0006340619
〔Kは定数であり、ここでは0.75を用いた。dfは炭素繊維の直径(μm)であり、
Figure 0006340619
は、平均破断長さであり、
Figure 0006340619
は、下記式により表される、平均破断長さに相当する強度である。
Figure 0006340619
(但し、σは、[A]引張試験により得られた引張強さσfのワイブル分布から求めた尺度母数(累積破壊確率が63.2%となる強度、単位:GPa)であり、mは、上記ワイブル分布から求めたワイブル形状母数である、lは、ワイブル母数推定時に使用されたゲージ長さ(mm)であり、Γは、ガンマ関数である。)〕
2.サイジング剤により表面処理された炭素繊維製品からのデサイジング
過熱水蒸気処理炭素繊維の製造に用いられる炭素繊維素材は、ポリアクリロニトリル系炭素繊維がサイジング剤により集束された炭素繊維束の市販品である、東レ社製高性能炭素繊維「トレカT700SC−12000」(商品名、以下、「市販品」という。)の表面被覆樹脂部を、以下の方法により除去したものである。
はじめに、市販品を、25℃のアセトン中に24時間浸漬した後、アセトン、エタノール及び水、の順に、25℃で10分間ずつ、超音波洗浄を行い、大気雰囲気中、120℃で乾燥した。
次いで、図2に示すデサイジング処理装置4を用いて、洗浄した炭素繊維41における表面被覆樹脂部の残渣の熱分解を、酸素含有率が低減されたアルゴン雰囲気にて行い、実質的に炭素原子からなる炭素繊維の束を、熱分解前の炭素繊維の形状を維持した状態で回収した。
具体的には、上記のようにして洗浄した炭素繊維41を、熱処理炉45内に配設されたアルミナ製炉心管47の中に設置した状態で、アルゴン供給部42から酸素ポンプ43を介して、酸素含有率が低減されたアルゴンを炉心管47内に連続的に供給し、昇温速度5℃/分にて500℃まで加熱し、500℃で1時間熱処理を行った。尚、炭素繊維41を、熱処理炉45内に配設していないときの、500℃における炉心管47内の酸素分圧は10−31atmであり、また、炭素繊維41の熱分解を行っているときの、炉心管47から排出された気体に含まれる酸素分圧(センサー温度:736℃)は約10−22atmであった。
3.過熱水蒸気処理炭素繊維の製造装置
過熱水蒸気処理炭素繊維の製造に用いた装置は、図3に示される。この製造装置6は、表面処理に供される炭素繊維素材(炭素繊維束)5を内部に配置する炭素繊維処理部(以下、「炭素繊維処理ユニット」という。)7、及び、飽和水蒸気を含む気体を、電磁誘導加熱された発熱体86により加熱して、過熱水蒸気を含む高温気体を製造する高温気体製造部(以下、「気体加熱ユニット」という。)8を、取り外し可能として上下に配し、更に、いずれも図示していないが、高周波交流電源、水蒸気製造用ボイラー、送気ポンプ、水蒸気を気体加熱ユニット8内に供給するために、水蒸気製造用ボイラーと気体加熱ユニット8における気体導入部82とを連結する配管、並びに、窒素を気体加熱ユニット8内に供給するために、窒素供給部と気体加熱ユニット8における気体導入部82とを連結する配管、を備える。
気体加熱ユニット8において、発熱体86は、La0.8Sr0.2MnO3+δからなる円板型焼結体(直径24mm、厚さ10mm)により構成される。
この円板型焼結体を5個単位で用い、図4に示すように、焼結体の中心を結んだときに正五角形を描くように、隣り合う焼結体の外周側面を線接触させつつ配置してこれを1段とし、アルミナ製のヒータスペーサを介して、上方に36度ずつずらして段積した。これにより、積み上げられた焼結体に包囲されて上下に通気可能な構造を備える複合型の発熱体86を得た。そして、この発熱体86を、支持台(図示せず)の上に設置した状態で、チタン酸アルミニウム(AlTiO)からなる円筒状の外装体(内径69mm)84の内部に、その内壁に接触しないように、配置した。また、この外装体84の外側であって、発熱体86を包囲するように且つ外装体84の外壁に接触しないように、螺旋状の励磁コイル88を配設した。
炭素繊維処理ユニット7は、チタン酸アルミニウム(AlTiO)からなる円筒状の外装体(内径69mm)72の内壁に、チタン酸アルミニウムからなる炭素繊維配置部74を形成し、直線状の炭素繊維素材(炭素繊維束)5が、外装体72の直径を描くように、炭素繊維素材(炭素繊維束)5を配置した。発熱体86により生成した過熱水蒸気を含む高温気体は、送気ポンプの作用により、気体加熱ユニット8から一定速度で上昇して炭素繊維処理ユニット7内に供給され、炭素繊維素材(炭素繊維束)5に接触する。炭素繊維素材(炭素繊維束)5の表面処理は、炭素繊維処理ユニット7内に配置された熱電対77(炭素繊維の処理温度確認用の熱電対)により、高温気体(過熱水蒸気を含む雰囲気)が所定の温度であることを確認したところで開始される。
尚、表面処理に供される炭素繊維素材(炭素繊維束)5の処理温度を一定に保持しやすくするために、1面側から他面側に通気性を有する、最小孔径が黒崎播磨社製多孔質アルミナフォーム「ファインポーラスセラミックスFSA−07」からなる円板状部材(厚さ4mm)76,78が、炭素繊維素材(炭素繊維束)5の下方側及び上方側に、それぞれ、配されて、炭素繊維素材(炭素繊維束)5が、炭素繊維処理ユニット7における外装体72の内壁と、多孔質部材76,78とで包囲されたような処理室が形成されている。
4.炭素繊維素材の表面処理(過熱水蒸気処理炭素繊維の製造)
製造装置6は、上記のように、炭素繊維処理ユニット7と、気体加熱ユニット8とを、取り外し可能とすることができるので、以下の実験においては、炭素繊維処理ユニット7における準備と、気体加熱ユニット8における準備とを別々に行った。
まず、高周波交流電源から、励磁コイル88に周波数50kHzの電圧を供給して、発熱体86を発熱させた。そして、水蒸気製造用ボイラーにより得られた飽和水蒸気等を含む気体を、5kg/時間の速度で、気体導入部82から気体加熱ユニット8内に供給して発熱体86の利用により、400℃の過熱水蒸気を含む雰囲気の生成を確認した。その後、内部の炭素繊維配置部74に炭素繊維素材(炭素繊維束)5を設置した炭素繊維処理ユニット7を、気体加熱ユニット8の上部に組み付けた。
以下の実験において、参考例1〜4では、過熱水蒸気雰囲気を用い、実施例では、窒素を含む過熱水蒸気雰囲気を用い、実施例12では、二酸化炭素を含む過熱水蒸気雰囲気を用いた。尚、実施例及びで得られた改質炭素繊維は同一のものであり、実施例及びで得られた改質炭素繊維、実施例及びで得られた改質炭素繊維、並びに、実施例及びで得られた改質炭素繊維、についても、互いに同一のものである。また、比較例1及び2では、改質炭素繊維に代えて、上記の「2.サイジング剤により表面処理された炭素繊維製品からのデサイジング」において得られた、デサイジングされた炭素繊維素材5をそのまま用いた。
参考例1
上記のように製造された、400℃の過熱水蒸気を、気体加熱ユニット8内の発熱体86により昇温速度20℃/分にて更に加熱し、上記速度で連続的に炭素繊維処理ユニット7に供給した。その後、熱電対77により500℃であることを確認したところで、この温度における炭素繊維素材(デサイジングされた炭素繊維束)5の表面処理を開始するとともに、気体加熱ユニット8における過熱水蒸気の更なる加熱を中断した。500℃における表面処理を5分間行った後、放冷した。次いで、熱電対77により400℃であることを確認し、炭素繊維処理ユニット7を気体加熱ユニット8から取り外し、改質炭素繊維束を得た。
その後、1本の改質炭素繊維について、上記の[A]引張試験(試験数:20)、及び[D]硬化性エポキシ樹脂組成物(R1)を用いたフラグメンテーション試験(試験数:3)の評価を行った。引張強さ及び界面剪断強度について得られた結果を、それぞれ、図5及び図6に示す。尚、図5及び図6において示されたプロットは、複数試料の測定値における平均値を反映するものであり、プロットの上下に明示したエラーバーは、測定値の正規分布の標準偏差σの値を反映するものである。
参考例2
炭素繊維素材(炭素繊維束)5の処理に用いた過熱水蒸気の温度を500℃に代えて600℃とした以外は、参考例1と同様にして、炭素繊維素材(炭素繊維束)5の表面処理を行って改質炭素繊維束を得た。次いで、[A]及び[D]の評価を行った。その結果を図5及び図6に示す。
参考例3
炭素繊維素材(炭素繊維束)5の処理に用いた過熱水蒸気の温度を500℃に代えて700℃とした以外は、参考例1と同様にして、炭素繊維素材(炭素繊維束)5の表面処理を行って改質炭素繊維束を得た。次いで、[A]、[B]比表面積測定、[C]酸性官能基及び塩基性官能基の定量並びに[D]の評価を行った。その結果を、表1、図5、図6及び図7に示す。
参考例4
炭素繊維素材(炭素繊維束)5の処理に用いた過熱水蒸気の温度を500℃に代えて800℃とした以外は、参考例1と同様にして、炭素繊維素材(炭素繊維束)5の表面処理を行って改質炭素繊維束を得た。次いで、[A]及び[D]の評価を行った。その結果を図5及び図6に示す。
実施例及び
気体加熱ユニット8に供給する気体を、飽和水蒸気及び窒素とし、窒素の導入量を5リットル/分(炭素繊維素材(炭素繊維束)5を処理する過熱水蒸気雰囲気の全体に対する窒素の体積割合は約4体積%)とした以外は、参考例1と同様にして、炭素繊維素材(炭素繊維束)5の表面処理(雰囲気温度500℃)を行って改質炭素繊維束を得た。次いで、[A]及び[D](硬化性エポキシ樹脂組成物(R1)又は(R2)を使用)の評価を行った。実施例について、引張強さ及び界面剪断強度の結果を、それぞれ、図5及び図6に示し、実施例の界面剪断強度を図8に示す。
実施例及び
炭素繊維素材(炭素繊維束)5に接触する過熱水蒸気雰囲気の温度(雰囲気温度)を500℃に代えて600℃とした以外は、実施例又はと同様にして、炭素繊維素材(炭素繊維束)5の表面処理を行って改質炭素繊維束を得た。次いで、[A]及び[D]の評価を行った。実施例について、引張強さ及び界面剪断強度の結果を、それぞれ、図5及び図6に示し、実施例の界面剪断強度を図8に示す。
実施例及び
炭素繊維素材(炭素繊維束)5に接触する過熱水蒸気雰囲気の温度(雰囲気温度)を500℃に代えて700℃とした以外は、実施例又はと同様にして、炭素繊維素材(炭素繊維束)5の表面処理を行って改質炭素繊維束を得た。次いで、[A]、[B]、[C]及び[D]の評価を行った。実施例について、比表面積、引張強さ、界面剪断強度及び官能基量の結果を、それぞれ、表1、図5、図6及び図7に示し、実施例の界面剪断強度を図8に示す。
実施例及び
炭素繊維素材(炭素繊維束)5に接触する過熱水蒸気雰囲気の温度(雰囲気温度)を500℃に代えて800℃とした以外は、実施例又はと同様にして、炭素繊維素材(炭素繊維束)5の表面処理を行って改質炭素繊維束を得た。次いで、[A]及び[D]の評価を行った。実施例について、引張強さ及び界面剪断強度の結果を、それぞれ、図5及び図6に示し、実施例の界面剪断強度を図8に示す。
実施例
気体加熱ユニット8に供給する気体を、飽和水蒸気及び二酸化炭素とし、二酸化炭素の導入量を5リットル/分(炭素繊維素材(炭素繊維束)5を処理する過熱水蒸気雰囲気の全体に対する二酸化炭素の体積割合は約4体積%)とした以外は、参考例1と同様にして、炭素繊維素材(炭素繊維束)5の表面処理(雰囲気温度500℃)を行って改質炭素繊維束を得た。次いで、[A]及び[D]の評価を行った。その結果を図5及び図6に示す。
実施例10
炭素繊維素材(炭素繊維束)5に接触する過熱水蒸気雰囲気の温度(雰囲気温度)を500℃に代えて600℃とした以外は、実施例と同様にして、炭素繊維素材(炭素繊維束)5の表面処理を行って改質炭素繊維束を得た。次いで、[A]及び[D]の評価を行った。その結果を図5及び図6に示す。
実施例11
炭素繊維素材(炭素繊維束)5に接触する過熱水蒸気雰囲気の温度(雰囲気温度)を500℃に代えて700℃とした以外は、実施例と同様にして、炭素繊維素材(炭素繊維束)5の表面処理を行って改質炭素繊維束を得た。次いで、[A]、[B]、[C]及び[D]の評価を行った。その結果を表1、図5及び図6に示す。
実施例12
炭素繊維素材(炭素繊維束)5に接触する過熱水蒸気雰囲気の温度(雰囲気温度)を500℃に代えて800℃とした以外は、実施例と同様にして、炭素繊維素材(炭素繊維束)5の表面処理を行って改質炭素繊維束を得た。次いで、[A]及び[D]の評価を行った。その結果を図5及び図6に示す。
比較例1及び2
デサイジングされた炭素繊維素材5の表面処理(過熱水蒸気を用いた処理)を行わずに、[A]、[B]、[C]及び[D](硬化性エポキシ樹脂組成物(R1)又は(R2)を使用)の評価を行った。尚、[A]引張試験の試験数は50とし、それ以外は、参考例1と同様とした。比較例1について、比表面積、引張強さ、界面剪断強度及び官能基量の結果を、それぞれ、表1、図5、図6及び図7に示し、比較例2について、界面剪断強度の結果を図8に示す。
参考例
上記市販品(デサイジング処理及び過熱水蒸気処理がされていない)を用いて、[A]及び[D]の評価を行った。尚、[A]引張試験の試験数は50とし、それ以外は、参考例1と同様とした。その結果を図5及び図6に示す。
上記のように、界面剪断強度τは、式(6)により算出されるが、その際に用いた、尺度母数σ及びワイブル形状母数mの各値を表1に掲載する。
Figure 0006340619
図5から明らかなように、参考例1〜4及び実施例1〜12では、炭素繊維素材の処理温度(雰囲気の温度)が高くなるにつれて、改質炭素繊維の引張強さは徐々に低下する傾向にあるが、比較例1として示した未処理の炭素繊維素材、又は、参考例として示した市販品の引張強さとほぼ同等である。一方、硬化性エポキシ樹脂組成物(R1)を用いた結果(界面剪断強度)を示す図6から明らかなように、参考例1(平均値33.8MPa)は、比較例1(平均値24.0MPa)より約10MPa高い界面剪断強度が得られ、炭素繊維素材の処理温度(雰囲気の温度)を600℃以上とした参考例2〜4では、界面剪断強度の平均値が43.8〜45.5MPaであり、処理温度を600℃以上と高くしても、界面剪断強度は右肩上がりに向上しなかった。そして、過熱水蒸気及び窒素を組み合わせた場合、処理温度を700℃としたところ(実施例)で、界面剪断強度が劇的に向上し(平均値58.8MPa)、処理温度を800℃としたところ(実施例)で、界面剪断強度の平均値67.2MPaが得られた。更に、過熱水蒸気及び二酸化炭素を組み合わせた場合、処理温度が700℃あたりのところ(実施例11)で、界面剪断強度の最大値(平均値47.4MPa)が得られた。
表1及び図7によれば、過熱水蒸気を含む雰囲気において、炭素繊維素材(デサイジングした炭素繊維)の表面処理を行うと、未処理の炭素繊維素材に比べて、比表面積が増大し、酸性官能基の量も増加したことが分かる。そして、過熱水蒸気及び窒素からなる雰囲気で処理した場合には、塩基性官能基の量の増加が顕著であり、従来、樹脂との接着性が、含酸素含有基に大きく依存するといわれてきたが、図6の結果と合わせると、表面に塩基性官能基を更に有する炭素繊維は、樹脂との接着性において有用であることが分かる。一方、過熱水蒸気及び二酸化炭素からなる雰囲気で処理した場合には、酸性官能基の増加率は、窒素を用いた場合に比べて小さいものの、酸性官能基であるカルボキシル基の生成率は2倍以上であり、図6の結果と合わせると、表面にカルボキシル基を有する炭素繊維もまた、樹脂との接着性において有用であることが分かる。
また、硬化性エポキシ樹脂組成物(R2)を用いた結果(界面剪断強度)を示す図8から明らかなように、実施例(平均値31.5MPa)及び実施例(平均値32.5MPa)は、比較例2(平均値30.3MPa)に比べて、わずかながらも優れており、炭素繊維素材の処理温度を、それぞれ、700℃及び800℃とした実施例及びでは、界面剪断強度の平均値がそれぞれ、44.2MPa及び40.1MPaであり、更に優れていた。
上記の各実験では、サイジング剤により表面改質されたポリアクリロニトリル系炭素繊維における表面改質層を除去した後、得られた炭素繊維素材に対して、本発明の方法を適用したものであるが、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、リグニン−ポバール系炭素繊維等であって、製造されたばかりの炭素繊維(表面が未処理の炭素繊維素材)に対して、本発明の方法を適用しても、同様の効果を得ることができる。
実施例13
気体加熱ユニット8に供給する気体を、飽和水蒸気及び窒素とし、窒素の導入量を1.25リットル/分(炭素繊維素材(炭素繊維束)5を処理する過熱水蒸気雰囲気の全体に対する窒素の体積割合は約1体積%)とした以外は、参考例3と同様にして、炭素繊維素材(炭素繊維束)5の表面処理(雰囲気温度700℃)を行って改質炭素繊維束を得た。次いで、1本の改質炭素繊維について、[A]の評価を行った。その結果を図9に示す。
実施例14
気体加熱ユニット8に供給する気体を、飽和水蒸気及び窒素とし、窒素の導入量を2.5リットル/分(炭素繊維素材(炭素繊維束)5を処理する過熱水蒸気雰囲気の全体に対する窒素の体積割合は約2体積%)とした以外は、参考例3と同様にして、炭素繊維素材(炭素繊維束)5の表面処理(雰囲気温度700℃)を行って改質炭素繊維束を得た。次いで、1本の改質炭素繊維について、[A]の評価を行った。その結果を図9に示す。
図9から、炭素繊維素材を、過熱水蒸気及び窒素からなる雰囲気で表面処理を行うと、過熱水蒸気のみの雰囲気で行う場合に比べて、引張強さの低下が小さいことが分かる。
本発明によれば、樹脂との接着性に優れた過熱水蒸気処理炭素繊維を効率よく得られることから、従来、同じ目的のためにサイジング剤等により表面処理層を形成する方法に比べて、使用する装置、原料等の面において、低コストで、効率よく製造を行うことができる。製造条件を最適化することにより、得られた過熱水蒸気処理炭素繊維と樹脂との密着性を、サイジング剤を用いて表面処理された炭素繊維と同等又はそれ以上とすることができ、更に、引張強さにおいても同等程度とすることができるので、高価な炭素繊維素材を用いて、近年、広い分野で有用な炭素繊維強化樹脂(CFRP)を製造する場合に、本発明の過熱水蒸気処理炭素繊維は、特に有用である。
1:単繊維埋込試験片
2:炭素繊維(単繊維)
3:樹脂部
4:デサイジング処理装置
41:洗浄した炭素繊維市販品
42:アルゴン供給部
43:酸素ポンプ
45:熱処理炉
47:炉心管
49:酸素センサー
5:炭素繊維素材(単繊維又は繊維束)
6:過熱水蒸気処理炭素繊維の製造装置
7:炭素繊維処理部(炭素繊維処理ユニット)
72:外装部(外装体)
74:炭素繊維配置部(炭素繊維保持部)
76:多孔質部材
77:炭素繊維の処理温度確認用の熱電対
78:多孔質部材
8:高温気体製造部(気体加熱ユニット)
82:気体導入部
84:外装部(外装体)
86:発熱部(発熱体)
88:励磁コイル

Claims (6)

  1. 炭素繊維素材を、過熱水蒸気及び二酸化炭素を含む雰囲気に接触させることを特徴とする、過熱水蒸気処理炭素繊維の製造方法。
  2. 前記雰囲気に含まれる前記二酸化炭素の割合が、前記過熱水蒸気及び前記二酸化炭素の合計量に対して0.1〜10体積%である請求項1に記載の過熱水蒸気処理炭素繊維の製造方法。
  3. 前記雰囲気の温度が400℃〜800℃である請求項1又は2に記載の過熱水蒸気処理炭素繊維の製造方法。
  4. 炭素繊維素材を、過熱水蒸気及び窒素からなる雰囲気に接触させることを特徴とする、過熱水蒸気処理炭素繊維の製造方法。
  5. 前記雰囲気に含まれる前記窒素の割合が、前記過熱水蒸気及び前記窒素の合計量に対して0.1〜10体積%である請求項4に記載の過熱水蒸気処理炭素繊維の製造方法。
  6. 前記雰囲気の温度が400℃〜800℃である請求項4又は5に記載の過熱水蒸気処理炭素繊維の製造方法。
JP2014010822A 2013-01-25 2014-01-23 過熱水蒸気処理炭素繊維の製造方法 Active JP6340619B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014010822A JP6340619B2 (ja) 2013-01-25 2014-01-23 過熱水蒸気処理炭素繊維の製造方法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013011908 2013-01-25
JP2013011908 2013-01-25
JP2014010822A JP6340619B2 (ja) 2013-01-25 2014-01-23 過熱水蒸気処理炭素繊維の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2014159663A JP2014159663A (ja) 2014-09-04
JP6340619B2 true JP6340619B2 (ja) 2018-06-13

Family

ID=51611523

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014010822A Active JP6340619B2 (ja) 2013-01-25 2014-01-23 過熱水蒸気処理炭素繊維の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6340619B2 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6432396B2 (ja) * 2014-03-06 2018-12-05 東レ株式会社 炭素繊維
JP6596790B2 (ja) * 2015-10-27 2019-10-30 一般財団法人ファインセラミックスセンター 改質炭素繊維及びその製造方法
JP6864444B2 (ja) * 2016-08-26 2021-04-28 ダート コンテイナー コーポレーション ポリマーフィルムのような材料の連続的な浸透方法及びシステム
KR102108657B1 (ko) * 2018-12-06 2020-05-26 재단법인 한국탄소융합기술원 과열증기 표면처리를 이용한 고강도 탄소섬유 및 이의 제조방법

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH01124680A (ja) * 1987-11-04 1989-05-17 Asahi Chem Ind Co Ltd 酸性官能基含有炭素質繊維及びその製造方法
JP2001162175A (ja) * 1999-12-06 2001-06-19 Mitsubishi Heavy Ind Ltd 窒素酸化物除去用触媒の製造方法およびその製造装置
JP2014101605A (ja) * 2012-11-21 2014-06-05 Toho Tenax Co Ltd 炭素繊維の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2014159663A (ja) 2014-09-04

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6340619B2 (ja) 過熱水蒸気処理炭素繊維の製造方法
KR102461416B1 (ko) 표면 처리 탄소 섬유, 표면 처리 탄소 섬유 스트랜드 및 이들의 제조 방법
Memon et al. Fabrication and mechanical properties of jute spun yarn/PLA unidirection composite by compression molding
Ochi Tensile properties of bamboo fiber reinforced biodegradable plastics
Sharba et al. Effects of processing method, moisture content, and resin system on physical and mechanical properties of woven kenaf plant fiber composites
Jusoh et al. Effect of stacking sequence on the tensile and flexural properties of glass fibre epoxy composites hybridized with basalt, flax or jute fibres
Allred et al. CO2 plasma modification of high-modulus carbon fibers and their adhesion to epoxy resins
Zhao et al. Enhanced mechanical property of continuous carbon fiber/polyamide thermoplastic composites by combinational treatments of carbon fiber fabric
Amuthakkannan et al. Free vibration and dynamic mechanical properties of basalt fiber reinforced polymer composites
JP6596790B2 (ja) 改質炭素繊維及びその製造方法
Gnanavelbabu et al. Mechanical strengthening effect by various forms and orientation of glass fibre reinforced isopthalic polyester polymer composite
Sorrentino et al. Thermoplastic composites based on poly (ethylene 2, 6‐naphthalate) and basalt woven fabrics: Static and dynamic mechanical properties
Korkees Moisture absorption behavior and diffusion characteristics of continuous carbon fiber reinforced epoxy composites: a review
JP2015137444A (ja) 炭素繊維束の表面処理方法、炭素繊維束の製造方法、及び炭素繊維。
Saensuriwong et al. Laboratory study of polypropylene-based honeycomb core for sandwich composites
RU2459996C2 (ru) Способ изготовления комбинированного изделия для транспортировки и/или хранения жидких и газообразных сред
JP6959721B2 (ja) 炭素繊維の熱処理方法
JP6429614B2 (ja) 繊維強化硬化樹脂の製造方法
JP2002255664A (ja) C/c複合材及びその製造方法
Kausar Design and study of epoxy composites based on polycaprolactone and nanodiamond functionalized carbon fibers
JP2016141913A (ja) 繊維束の製造方法
Tanaka et al. The effect of molding pressure on the mechanical properties of CFRTP using paper-type intermediate material
Hou et al. Fabrication, Mechanical and Dielectric Characterization of 3D Orthogonal Woven Basalt Reinforced Thermoplastic Polyimide Composites
KR102457686B1 (ko) 섬유형 변형율 센서의 제조방법 및 이에 의하여 제조된 내크리프성이 강화된 섬유형 변형율 센서
Nasser et al. Adsorbed Aramid Nanofiber Interphase for Enhanced Aramid Fiber Reinforced Composites

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20140528

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20170106

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20170726

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170801

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20170908

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20171110

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20180410

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20180420

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20180420

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6340619

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250