JP6956963B2 - 光触媒および水素生成用光触媒電極 - Google Patents

光触媒および水素生成用光触媒電極 Download PDF

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Description

本発明は、可視光を用いて水から水素の生成が可能な光触媒およびそれを用いた水素生成用光触媒電極に関する。
太陽エネルギーを利用する光エネルギー変換システムの実用化は、地球温暖化の抑制や、枯渇しつつある化石資源への依存からの脱却を目指す観点から、近年その重要性が増している。なかでも、太陽エネルギーを用いて水を分解し水素を製造する技術は、現行の石油精製技術や、アンモニア、メタノールの原料供給技術としてのみならず、燃料電池をベースとした将来の水素エネルギー社会における水素供給技術として、有望視されている。
また、光エネルギーを用いて水から水素を製造する技術は、光エネルギーを化学エネルギーに変換する技術と目されているが、実用化されて久しい太陽光発電は生成する電気エネルギーの貯蔵が容易でないために蓄電技術の進展が望まれている一方で、水素をはじめとする化学エネルギーは、エネルギーの貯蔵、輸送や、単位当りのエネルギー量において優位なエネルギーになると期待されている。
水分解にて水素と酸素とを生成(発生)する光触媒には、水素生成用と酸素生成用の大きく分けて2種に大別される。なかでも、金属硫化物は、長波長の光に応答する材料が多く、水素生成用光触媒としての提案が数多くある。
金属硫化物系の光触媒の提案としては、例えば、特許文献1では、水素発生に有効な光触媒として、組成式Zn1−2x(CuGa)Inで表される複合金属硫化物に関する報告がある。また、特許文献2では、水素発生に有効な光触媒として、CuInSのCuまたはInの一部をAgまたはGaで置換した硫化物固溶体からなる光触媒に関する報告がなされている。また、特許文献3では、水素発生に有効な光触媒として、組成式(CuAg)In2xZn2(1−2x)で表される可視光活性硫化物固溶体に関する報告がある。
非特許文献1では、同じく、水素発生に有効な光触媒として、組成式Cu0.8Ga0.8−xInZn0.4で表される金属硫化物光触媒が報告されている。
特開2009−066529号公報 特開2006−167652号公報 特開2005−199222号公報
日本化学会第92年会(2012年)1G1−43「Cu0.8Ga0.8−xInxZn0.4S2の混合硫化物光触媒によるソーラー水素製造」
可視光を利用して水を分解して水素を生成しうる光触媒として、種々の金属硫化物が提案されているが、特に、銅を含む硫化物である黄銅鉱(カルコパイライト)は、太陽電池として利用されているCIGSe(Cu−In−Ga−Se)をはじめとして光応答材料として有用であるものが多い。しかしながら、可視光照射下で水分解に用いられる、それら硫化物材料の有する光触媒特性(水素生成活性)や光電気化学特性は、まだ、十分とは言えない。
本発明は、かかる現状に鑑み、可視光を用いて水から水素の生成が可能な光触媒であって、優れた水素生成活性を有し、それを用いた水素生成用光触媒電極の光電気化学特性を向上することができる光触媒、および、水素生成用光触媒電極を提供することを目的とする。
本発明者らは、カルコパイライト型の結晶構造を有するカルコゲナイド系複合金属化合物において、Cuと、Sと、GaおよびInの少なくとも一方と、Li、Na、K、Csなどのアルカリ金属とを必須成分として含有し、必要に応じてZnおよびSeの少なくとも一方を含有し、かつ、アルカリ金属を特定量含有させることにより、この複合金属化合物からなる光触媒および該光触媒を用いた光触媒電極が、可視光を用いて水から水素を生成する光触媒および水素生成用光触媒電極として高性能(優れた水素生成活性および光電気化学特性)を発揮することを見出した。具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
[1]カルコパイライト型の結晶構造を有する複合金属化合物からなり、可視光を用いて水から水素の生成が可能な光触媒であって、前記複合金属化合物が、Cuと、Sと、GaおよびInの少なくとも一方と、アルカリ金属とを必須成分として含有し、必要に応じてZnおよびSeの少なくとも一方を含有し、かつ、前記複合金属化合物中の全金属原子に対して前記アルカリ金属を0.001〜5モル%含有する、光触媒。
[2]前記複合金属化合物が、Cuと、Sと、GaおよびInの少なくとも一方と、アルカリ金属と、Znとを含有する、[1]に記載の光触媒。
[3]上記[1]又は[2]に記載の光触媒を有する、水素生成用光触媒電極。
本発明によれば、Cuと、Sと、GaおよびInの少なくとも一方と、アルカリ金属とを必須成分として含有し、必要に応じてZnおよびSeの少なくとも一方を含有し、かつ、アルカリ金属を全金属原子に対して0.001〜5モル%含有するカルコパイライト型の結晶構造を有する複合金属化合物からなる光触媒とすることにより、水素生成活性に優れた光触媒およびそれを用いた光電気化学特性に優れた水素生成用光触媒電極を提供することができる。
CGIZS光触媒のXRD測定結果 CGIZS光触媒の光電気化学特性評価結果 CGIZS光触媒のXRD測定結果 CGIZS光触媒の光電気化学特性評価結果 CGIZS光触媒のXRD測定結果 CGIZS光触媒の光電気化学特性評価結果 CGIZS光触媒のXRD測定結果 CGIZS光触媒の光電気化学特性評価結果 CGIZS光触媒のXRD測定結果
以下、具体的に、発明を実施するための形態を示す。1.光触媒の組成と結晶構造、2.光触媒の製造方法、3.助触媒および表面修飾、4.光触媒電極の製造方法、5.光水分解による水素生成方法および光触媒電極の光電気化学特性の評価、について順に記述する。
1.光触媒の組成と結晶構造
本発明の光触媒を構成する複合金属化合物は、カルコパイライト型の結晶構造を有する。
カルコパイライト(Chalcopyrite)とは金色の鉱物である黄銅鉱CuFeSの英名である。この物質は、ZnSに代表される閃亜鉛鉱(ZB)構造を2段重ねにしてZnをCuとFeの2元素で秩序正しく置き換えた正方晶の結晶構造をとる反強磁性の半導体である。構成元素は全て他の元素の四面体で取り囲まれており、原子同士は強い共有結合で結びついている。
カルコパイライト構造は、基本的にABCの組成を示し、構成する元素別に大きく分けて、I−III−VI族型とII−IV−V族型の2種がある。I−III−VI族型では、主な構成元素として、I族がCuまたはAg、III族がAl、Ga、In、VI族がS、Se、Teであり、一方、II−IV−V族型では、II族がZnまたはCd、IV族がSi、GeまたはSn、V族がPまたはAsである。
カルコパイライト構造を有する太陽電池材料として実用化されているCIGSe(Cu,In,Ga,Seからなるカルコゲナイド)はI−III−VI族型構造を有するが、CIGSeは太陽光の利用に適した可視光吸収特性を有する材料としてよく知られている。
本発明の光触媒を構成する複合金属化合物は、上記I−III−VI族型のカルコパイライト構造において、I族がCu、III族がGaまたはIn、VI族がSに相当し、カルコパイライト型の結晶構造を有するものである。
そして、本発明の光触媒を構成するカルコパイライト型の結晶構造を有する複合金属化合物(以下、「本発明における複合金属化合物」とも記載する。)は、Cuと、Sと、GaおよびInの少なくとも一方と、アルカリ金属とを必須成分として含有し、必要に応じてZnおよびSeの少なくとも一方を含有し、かつ、複合金属化合物中の全金属原子に対してアルカリ金属を0.001〜5モル%含有することを特徴とする。なお、本発明における複合金属化合物は、Cuと、Sと、GaおよびInの少なくとも一方と、アルカリ金属と、Znとを含有することが好ましい。また、本発明における複合金属化合物は、Cu、S、Ga、In、Zn及びアルカリ金属以外の金属成分を含有していてもよい。
このような本発明における複合金属化合物は、そのまま光触媒として、あるいは、光触媒電極に組み込むことで、可視光照射下に、水を分解して水素を高い活性で生成する機能を有している。すなわち、本発明における複合金属化合物からなる光触媒は、可視光を用いて水から水素を生成する光触媒として、水素生成活性に優れる。また、このような光触媒を用いて製造された光触媒電極、例えば、光触媒が積層された集電導電体層を有する光触媒電極は、光電気化学特性が向上されたものとなる。
本発明における複合金属化合物は、各金属成分の含有量によってバンド構造が変化する。該複合金属化合物の価電子帯はCuの3dとSの3pの各軌道がバンド形成に寄与し、該複合金属化合物の伝導帯はGaの4s4p、Inの5s5pおよびZnの4s4pの各軌道がバンド形成に寄与するとされる。Gaの4s4pおよびZnの4s4pに対して、Inの5s5pの位置は貴側に位置するため、該複合金属化合物の伝導帯の位置は、Ga、In、Znの3者の組成の変化に応じて変化する。
水分解による水素生成を可能とする光触媒は、伝導帯下端の電位が0VRHEより卑側になる必要があり、本発明における複合金属化合物はいずれもそれを満たすと考えられる。
ここで、本発明者らは、鋭意検討したところ、CGIS(Cuと、In及びGaの少なくとも一方と、Sとを含むカルコゲナイド)光触媒が、固相法により合成されるものに比して、塩化リチウムと塩化カリウムからなる共晶溶融塩を用いるフラックス法により製造されるものの方が光触媒特性において高い活性が発現することが判明した。そしてその理由を探るためさらに検討したところ、光触媒中に含まれるアルカリ金属成分量に差異があることを突き止め本発明に至った。すなわち、アルカリ金属が存在しない固相法による合成時にアルカリ金属を積極的に添加して合成した際に光触媒の活性が向上すること、および、塩化リチウムと塩化カリウムからなる共晶溶融塩を用いるフラックス法により合成された触媒中にリチウムがいずれも残存していることを見出した。
なお、カルコパイライト型の結晶構造を有する太陽電池材料として知られるCIGSe(Cu,In,Ga,Seからなるカルコゲナイド)においては、アルカリ添加による効果が知られている。CIGSe太陽電池では、ソーダ石灰ガラスを基板として用いることにより、NaイオンがCIGSe光吸収層に拡散することで、Naを含んだCIGSe太陽電池において、その開放電圧の増大とそれに伴う変換効率の向上など性能面で優れた効果がある。CIGSe太陽電池におけるこうしたNaイオンの効果については、キャリア濃度の向上などの物性面の特性向上が要因と考えられているが、なぜそのような特性向上が発現するかについては諸説あり、理論的な裏付けは十分でない。本発明の光触媒およびそれを用いた光触媒電極においても、光吸収により励起電子とホールとに電荷分離する初期過程は、上記の太陽電池と同じ機構が想定されるため、類似のアルカリ添加による効果が期待されるものと思われるが、これまでそうした報告がなされた文献等は見当たらない。
本発明における複合金属化合物が含有するアルカリ金属の量は、複合金属化合物中の全金属原子に対して、アルカリ金属が0.001〜5モル%、好ましくは、0.01〜2.5モル%である。なお、本明細書において、複合金属化合物中の金属原子とは、アルカリ金属及びアルカリ金属以外の金属原子であり、SeやSは金属原子ではない。複合金属化合物中の全金属原子に対するアルカリ金属の含有量(モル%)は、モル基準で、アルカリ金属の合計/(アルカリ金属及びアルカリ金属以外の金属原子の合計)×100で求められる。また、本発明における複合金属化合物が含有するアルカリ金属の量は、重量基準で、1ppm〜5000ppmが望ましく、5ppm〜2000ppmがより望ましい。
本発明における複合金属化合物が含有するアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムなどが好適に用いられ、リチウム、ナトリウム、カリウムがより好ましく、リチウムがさらに好ましい。
これらアルカリ金属がどのような状態で当該複合金属化合物に含まれているかについては詳細は十分に分かっていない。フラックス法にて製造される複合金属化合物については、その製造過程において、フラックス処理後に残存するハロゲン化アルカリを除去するために水洗工程を通常数回実施するが、水洗を5回以上繰り返してもアルカリが残存していることから、アルカリ金属はイオンの状態で結晶格子内に取り込まれている可能性があると考えられる。実際、リチウムを含む複合金属化合物のXRD測定により、結晶の格子定数が小さくなっており、他のCu、Ga、In、Zn金属よりイオン半径の小さなリチウムが結晶格子に取り込まれている可能性が確認されている。
また、本発明における複合金属化合物は、例えば、カルコパイライト型の結晶構造を有し下記式(1)で表される複合金属化合物である。なお、本発明における複合金属化合物が下記式(1)で表される複合金属化合物の場合は、複合金属化合物中の全金属原子に対するアルカリ金属の含有量(モル%)は、f/(f+a+b+c+d)×100で求められる。
CuGaInZn2−e・・・(1)
(上記式中、a、b、c、d、e、fは下記条件を満たし、XはSeを示し、Yはアルカリ金属を示す。
0<a≦2、0<(b+c)≦1.67、0≦d<2、0≦e<2、0<f<0.1。)
本発明における複合金属化合物が含有する成分の含有量比は、カルコパイライト型の結晶構造を有すれば特に限定されないが、式(1)において、好ましくは、0.2≦a≦1.2、0.0≦b≦1.0、0.0≦c≦1.0、0.0≦d≦1.5、0.0≦e≦1.0、0.0001≦f≦0.100、より好ましくは、0.4≦a≦1.0、0.0≦b≦0.8、0.0≦c≦0.8、0.0≦d≦1.2、0.0≦e≦0.5、0.0001≦f≦0.050である。また、上述の通り、アルカリ金属の含有量(モル%)、すなわち、f/(f+a+b+c+d)×100は、好ましくは、0.001〜5.0、より好ましくは、0.01〜2.5である。
2.光触媒の製造方法
本発明の光触媒の製造方法は特に限定はされない。上記の通り、光触媒を構成する複合金属化合物の元素成分および組成、カルコパイライト型の結晶構造が満たされれば、その製造方法は限定されるものではない。
本発明においては、固相法、フラックス法、固相法、MBE(分子線エピタキシー法)などの物理製膜法を用いることができる。特にフラックス法やMBE製膜が好適に用いられる。
固相法においては、原料として、硫化第一銅(CuS)、硫化ガリウム(Ga)、硫化インジウム(In)、硫化亜鉛(ZnS)等の金属硫化物、あるいは、セレン化第一銅(CuSe)、セレン化ガリウム(GaSe)、セレン化インジウム(InSe)、セレン化亜鉛(ZnSe)等の金属セレン化物を用いることができる。また、アルカリ金属源としては、硫化物やセレン化物、例えば、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム等の硫化アルカリ金属塩や、セレン化リチウムやセレン化ナトリウムなどのセレン化アルカリ金属塩などを用いることができる。これらは通常は固体であり、粉末状にてよく混合して用いられる。
固相法における製造条件としては、原料の混合物を、真空または減圧下、あるいは、常圧下に、窒素やアルゴンなどの不活性ガスの共存下に、600℃以上、好ましくは700℃以上、より好ましくは800℃以上に数時間から数十時間熱処理を行うことにより製造される。熱処理後は室温に戻ってから粉砕等の処置を行うことで、光触媒あるいは光触媒電極製造に供することができる。
フラックス法においては、原料として、硫化第一銅(CuS)、硫化ガリウム(Ga)、硫化インジウム(In)、硫化亜鉛(ZnS)等の金属硫化物、あるいは、セレン化第一銅(CuSe)、セレン化ガリウム(GaSe)、セレン化インジウム(InSe)、セレン化亜鉛(ZnSe)等の金属セレン化物を用いることができる。これらは通常は固体であり、粉末状にてよく混合して用いられる。
フラックス法において用いられるフラックス剤は、特に限定されない。例えば、金属塩化物、例えば、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化セシウムなどのアルカリ金属塩化物、塩化カルシウム、塩化ストロンチウム、塩化バリウムなどのアルカリ土類金属塩化物が好適に用いられる。なかでも、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化セシウムがより好ましく、これら塩化物を2種以上混合することが特に好ましい。これらの混合物は低い融点を示すので、フラックス剤として好ましく用いられる。
例えば、塩化リチウム(融点605℃)と塩化カリウム(融点770℃)の混合物は、59.5:40.5のモル比で融点352℃の共晶溶融塩を形成する。また、塩化ナトリウム(融点801℃)と塩化セシウム(融点645℃)の混合物も35:65のモル比で融点486℃の共晶溶融塩となる。
フラックス法において用いられる金属塩化物としては、塩化リチウムと塩化カリウムとの組合せが特に好ましい。塩化リチウムと塩化カリウムとの混合組成としては、その融点を低下させる点で、塩化リチウムと塩化カリウムとのモル比が40:60〜80:20であることが好ましく、50:50〜70:30であることがより好ましく、その融点が最低となる点で、59.5:40.5であることが特に好ましい。本実施態様では、金属塩化物として、塩化リチウムと塩化カリウムのモル比59.5:40.5付近の混合物が好適に用いられる。
用いるフラックス剤、すなわち、上記金属塩化物の量は、特に限定されないが、原料の金属硫化物あるいは金属セレン化物の混合物の量に対して、モル比で1以上、約20以下が好ましく、通常は5以上、約10倍以下が好適である。かかる範囲内であると、上述の一般式で表される複合金属化合物ないし光触媒の製造方法における熱処理を低温化しやすく、また、上述の一般式の成分範囲を容易に達成することができる。
本実施態様における熱処理、すなわち、フラックス時の温度としては、400℃以上、800℃以下が好ましく、450℃以上、750℃以下がより好ましい。
熱処理の時間としては、0.5時間以上、50時間以下が好ましく、1時間以上、30時間以下がより好ましく、2時間以上、20時間以下がさらに好ましい。
熱処理における昇温速度としては、0.5℃/分以上、20℃/分以下が好ましく、1℃/分以上、15℃/分以下がより好ましい。
本実施態様における熱処理における降温速度としては、0.5℃/分以上、20℃/分以下が好ましく、1℃/分以上、15℃/分以下がより好ましい。特に、降温については、結晶成長への影響が大きいことから、一定速度で降温するだけでなく、途中で一定温度において保持する、途中で降温速度を変更するなどの工夫が有効な場合がある。具体的には、1℃/分以上、15℃/分以下の降温速度において降温した後、300℃以上、600℃以下における一定温度において30分以上、300分以下の時間保持し、次いで1℃/分以上、15℃/分以下の降温速度において室温付近まで降温する方法などが挙げられる。
本実施態様における熱処理は、大気中で行うことができ、通常、0.1×10Pa以上、2000×10Pa以下、例えば1×10Pa以上、1000×10Pa以下の圧力において行うことができる。かかる熱処理は、例えば、開放系の反応容器内において行うことができる。従って、本実施態様における熱処理は、真空下に熱処理する必要がなく、また、原料とする金属硫化物や金属セレン化物およびフラックス剤とする金属塩化物を石英製ガラス管、石英アンプル管などの閉鎖系の反応容器内において熱処理する必要がないが、本実施態様における熱処理ないしフラックス時における雰囲気は特に限定されず、大気下、または不活性ガス雰囲気下、さらには、通常、減圧下ないし真空下のいずれの雰囲気も適用可能であり、密閉系あるいは開放系のいずれの反応容器内における熱処理を行ってもよい。本実施態様における熱処理ないしフラックス時における雰囲気としては、装置内、不活性ガス雰囲気下、または真空下が好ましく、真空下がより好ましい。
上記熱処理(フラックス)を行った後は、水により洗浄することにより、触媒中に過剰に残ったフラックス剤を除去することが好ましい。金属硫化物や金属セレン化物および本発明の光触媒は水に不溶であり、金属塩化物は水に可溶であるので、水洗浄により効果的にフラックス剤である金属塩化物を除去することができる。
洗浄に用いる水の量、洗浄回数、洗浄時間などは、特に限定されず、洗浄水に塩素が検出されなくなるまでというのが通常の指標となる。水による洗浄方法としては、例えば、1回の洗浄あたり固形物の2〜20倍の体積の水を用いて、洗浄回数は通常3回以上、洗浄時間は5分以上/回で行うことが挙げられる。通常、かかる範囲内であれば、洗浄回数は6回以下、洗浄時間は60分以下/回で行うことができる。
洗浄後は、通常、乾燥させる。乾燥方法は、特に限定されないが、熱負荷をあまりかけずに水分を除去することが望ましい。室温〜50℃くらいで、常圧または減圧下に乾燥させることが好ましい。
上記製造方法により得られる本発明の光触媒を構成する複合金属化合物において、含まれるアルカリ金属の量は、水洗工程には依存せず、フラックス剤の種類、原料の金属硫化物あるいは金属セレン化物の混合物の量に対する量の関係、フラックス時の温度や時間など、また必要に応じて使用する硫化アルカリ金属塩やセレン化アルカリ金属塩の量などに依存する。上述の製造方法に従えば、所望量のアルカリ金属を含有する複合金属化合物を得ることができる。
MBE製膜は、真空条件下に、基板上に触媒成分を蒸着することで結晶成長させて製造する方法である。原料としては、Cu、Ga、In、Znなどの金属および硫黄やセレンを用いることができる。各原料は、特定のセルにおいて蒸発速度を規定することで基板への蒸着量を制御することで組成などを制御する。アルカリ金属は、蒸気圧を有する化合物、例えば、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウムなどを用いて導入することができる。
また、こうして製造された複合金属化合物について、後からアルカリ金属を添加することで含有させることもできる。例えば、粉末状で得られた複合金属化合物に、例えば、硫化リチウムや硫化ナトリウムなどのアルカリ金属化合物を混合する方法である。粉末状態で混合してもよいし、アルカリ金属を気体状態にして固体粉末状の複合金属化合物に混合する方法などでもよい。
さらに、後述の工程により光触媒電極化した後に、アルカリ金属を導入することもできる。
3.助触媒および表面修飾
本発明の光触媒である複合金属化合物は、光励起された電子を用いて水を還元して水素を生成するが、助触媒はその活性点として機能する。その際に、光励起された電子が助触媒の表面において水分子に電子を与えることで水素分子が生成すると考えられる。
従って、光水分解に供される光触媒が光水分解活性を効果的に発揮するためには、光触媒表面に水素生成を促進する助触媒を担持して用いることが好ましい。また、光励起された電子が効率よく電荷分離して触媒表面に担持された助触媒に移動するために、または、光触媒自体が水との接触によって経時劣化が起ることを緩和するなどのために、光触媒の表面を修飾することが性能向上や安定性付与に望ましい。
本発明における助触媒としては、白金、ルテニウム、イリジウム、パラジウム、金などの貴金属が好ましく用いられる。助触媒は、2種以上を用いてもよいが、通常、1種のみを用いることでも十分に助触媒の機能を発揮することができる。それら助触媒の担持の形態は、特に限定されないが、触媒表面に粒子として担持された状態が好ましい。助触媒は平均直径が0.1〜10nmのナノサイズの微粒子であることが好ましい。
助触媒の担持方法としては、特に限定されず、例えば、含浸、光電着、電気泳動、スパッタなどの一般的な方法などが挙げられる。担持量も特に限定されるものでなく、光触媒の0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜3質量%がより好ましい。
含浸法では、貴金属のハロゲン化物やアンミン錯体等の水や有機溶媒に溶解する化合物を用いて、光触媒上に含浸した後、水素等の還元剤を用いて金属状に還元する。用いた水や溶媒は熱的にまたは減圧下の操作によって除去する。
また、スパッタ法では、通常、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)等の貴金属の板に、真空下にグロー放電させた不活性ガスを衝突させて、飛び出してくる金属を光触媒の表面に付着させる。光触媒は、通常、電極状に加工された状態でスパッタ法に供せられる。
また、蒸着法には、物理蒸着と化学蒸着の2種がある。物理蒸着においては、通常、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)等の貴金属を熱することによって蒸発させ、光触媒の表面に凝結・固化させる。光触媒は、通常、電極状に加工された状態で蒸着法に供せられる。化学蒸着においては、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)等の貴金属を含む、揮発性の化合物を気化させて、光触媒上に堆積させた後、適切な還元剤を用いて還元する。
また、表面修飾としては、まず、上述の複合金属化合物に対し、n型半導体となる物質を積層または担持することが好ましい。p型半導体である上述の複合金属化合物の表面にn型半導体を積層または担持することでpn接合が形成され、それによって励起電子がp型半導体からn型半導体へ、さらに助触媒へと励起電子が効果的に運ばれる。その際に、励起電子と空孔との再結合を抑制することも同時に期待されるので、効率よい電荷分離が実現できると考えられる。
本実施態様で好適に用いられる上記n型半導体としては、CdS、ZnS、Inなどの金属硫化物が挙げられ、CdS、ZnSがより好適に用いられる。かかるn型半導体ないし金属硫化物としては、2種以上を用いてもよいが、通常、1種のみを用いることでも十分に機能を発揮することができる。これらn型半導体金属硫化物の担持の形態としては、特に限定されないが、複合金属化合物の表面に、膜として積層または粒子として担持された状態が好ましく、積層の場合の層の膜厚は通常0.1〜1nmであり、担持の場合の粒子の大きさは平均直径が1〜50nmの微粒子であることが好ましい。
n型半導体金属硫化物の担持の方法は、特に限定されるものでなく、例えば、含浸法、化学溶液析出法(CBD法、Chemical Bath Deposition)、光電着、電気泳動、スパッタなどが好適に用いられる。特に化学溶液析出法がより好ましい。
化学溶液析出法でCdSを担持する場合について説明する。Cd源には、硫酸カドミウムや酢酸カドミウムなどのCd塩、硫黄源にはチオ尿素、中和剤としてアンモニア水が好適に用いられる。具体的には、Cd塩とチオ尿素とアンモニア水とを含む水溶液に、本発明の光触媒電極を、40〜80℃に加温した状態で浸漬する。電極表面にCdSが析出するので、所定時間浸漬した後、取り出して水で洗浄する。
また、安定性付与のための表面処理として、TiOやAZOなどの酸化物を電極表面に膜として積層することが好ましい。
4.光触媒電極の製造方法
本発明の光触媒は、光水分解反応用(水素生成用)の光触媒として好適に利用することができる。その場合、光水分解反応に供される光触媒の形態としては、特に限定されず、例えば、水中に光触媒を分散させる形態、光触媒を成形体として当該成形体を水中に設置する形態、基材上に光触媒を含む層を設けて積層体とし当該積層体を水中に設置する形態、集電体上に光触媒を固定化して光水分解反応用の光触媒電極とし対極とともに水中に設置する形態等が挙げられる。
これらのうち、光水分解反応用の光触媒電極は、例えば、公知の方法により作製可能である。例えば、ドロップキャスト法、粒子転写法、MBE等の物理的成膜法、ロールプレス法、電気泳動法などの一般的な方法が好適に用いられる。
粒子転写法(Chem.Sci.、2013,4、1120−1124)は、好ましい方法であり、高性能な光触媒電極を容易に作製可能である。すなわち、ガラス等の第1の基材上に光触媒を載せて、光触媒層と第1の基材層との積層体を得る。得られた積層体の複合光触媒層表面に蒸着等によって集電体となる導電層(集電導電体)を設ける。ここで、光触媒層の導電層側表層にある光触媒が導電層に固定化される。その後、導電層表面に第2の基材を接着し、第1の基材層から導電層および光触媒層を剥がす。光触媒の一部は導電層の表面に固定化されているので、導電層とともに剥がされ、結果として、光触媒層と導電層と第2の基材層とを有する光水分解反応用電極を得ることができる。
また、光触媒が分散されたスラリーを集電体の表面に塗布して乾燥させることで、光水分解反応用電極を得てもよいし、光触媒と集電体とを加圧成形等して一体化することで光水分解反応用電極を得てもよい。また、光触媒が分散されたスラリー中に集電体を浸漬し、電圧を印可して光触媒を電気泳動により集電体上に集積してもよい。
尚、集電体には、Auやカーボン、または、ITOやFTOといった透明導電性フィルムやガラスが好適に用いられる。Auやカーボンの集電体の作製方法は、特に限定されるものでないが、蒸着やスパッタなどの物理的手段により積層担持することが好適である。
5.光水分解による水素生成方法および光触媒電極の光電気化学特性の評価
本発明の光触媒や、光触媒電極を、水若しくは電解質水溶液に浸漬し、当該光触媒または光触媒電極に光を照射して光水分解を行うことで、水素を製造することができる。
例えば、上述のように導電体で構成される集電体(集電導電体)上に光触媒を固定化して水素生成用の光触媒電極を得て、電極間を電線などの導電性材料で接続した後、液体状または気体状の水を供給しながら光を照射し、水分解反応を進行させる。必要に応じて電極間に電位差を設けることで、水分解反応を促進することができる。
一方、絶縁基材上に複合光触媒を固定化した固定化物に、または、複合光触媒を加圧成形等した成形体に、水を供給しながら光を照射して水分解反応を進行させてもよい。または、複合光触媒を水または電解質水溶液に分散させて、ここに光を照射して水分解反応を進行させてもよい。この場合、必要に応じて撹拌することで、反応を促進することができる。本明細書において、複合光触媒とは、助触媒担持や表面修飾を施した光触媒を意味する。
水素の製造時の反応条件としては特に限定されないが、例えば、反応温度、反応圧力などを選択することができる。反応温度としては、例えば、0℃以上、200℃以下とし、反応圧力としては、例えば、2MPa(G)以下とする。
照射光は、光触媒の種類にもよるが、波長350nm以上1000nm以下の波長を有する可視光を好適に利用することができる。照射光の光源としては太陽のほか、キセノンランプ、メタルハライドランプ等の太陽光近似光ないし疑似太陽光を照射可能なランプ、水銀ランプ、LED等が挙げられる。
また、本発明の光触媒を用いた光触媒電極は、カソード電流密度が大きい優れた光電気化学特性を有することができる。具体的には、例えば、下記条件下に作成する光触媒電極に対し下記条件下に疑似太陽光を照射する場合に、操作電位0.0VvsRHEにおいて、絶対値が0.8mA/cm以上、さらには絶対値が1.0mA/cm以上、絶対値が1.5mA/cm以上や、絶対値が3.0mA/cm以上のカソード電流密度にすることができる。また、例えば、下記条件下に作成する光触媒電極に対し下記条件下に疑似太陽光を照射する場合に、操作電位0.6VvsRHEにおいて、絶対値が0.6mA/cm以上、さらには絶対値が1.0mA/cm以上、絶対値が1.5mA/cm以上や、絶対値が2.0mA/cm以上のカソード電流密度にすることができる。該カソード電流密度の上限値は特に限定されないが、例えば、絶対値が30mA/cm以下とすることができる。
光電気化学特性の評価については、作動電極として上述の光触媒電極、参照電極(Ag/AgCl、東洋測器(株);TRE−10)、対電極(Ptワイヤー)の3電極を用いる形式にて、光源に、ソーラーシミュレーター(AM1.5G(100mW/cm))を用いて、電解液中にて、アルゴン雰囲気下にポテンショスタット(北斗電工、HSV−110またはHZ−7000)を用いて測定する。通常、サイクリックボルタンメトリー (cyclic voltammetry, CV)と呼ばれる電極電位を直線的に掃引し応答電流(光電流密度)を測定する一般的な手法を用いた。なお、水素生成用の電極の評価においては、光電流密度の絶対値が大きいことが高い性能を意味し、同時に、光電流密度が立ち上がる電位がより貴側であることも高い性能と言える。
以下、実施例に基づいて本発明の複合金属化合物からなる光触媒および光触媒電極について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
[光触媒合成]
CuS((株)高純度化学研究所製、純度99.0%)を0.6366g、Ga((株)高純度化学研究所製、純度99.99%)を0.5655g、In((株)高純度化学研究所製、純度99.99%)を0.6517g、ZnS((株)高純度化学研究所製、純度99.999%)を0.3897g、そして、Li源としてLiSを0.0084gを秤量して、乳鉢にて混合後、片端が封じられた石英製ガラスチューブに入れた。この石英製ガラスチューブのもう一方の端を真空下に保ちながらバーナーにて熱して封じた。この真空下に封じられた密閉チューブを電気炉に入れて800℃10hr(時間)熱処理を行った。室温に放冷してから内容物(以下「CGIZS光触媒」とも記載する。)を取り出した。この内容物をICP分析したところ、その成分として、Li、Cu、Ga、In、Zn、Sの重量%は、各々順に、0.109、21.9、14.9、20.5、12.0、30.5%であり、組成比は、各々順に、0.0331、0.72、0.45、0.38、0.39、2.00(すなわち式(1)において、f=0.0331、a=0.72、b=0.45、c=0.38、d=0.39、e=0)であり、また、全金属原子に対するLiの割合は、1.68モル%であった。
[粉末X線回折(XRD)によるキャラクタリゼーション]
上記実施例1において得られた試料(CGIZS光触媒)について、粉末X線回折(XRD)を用いて結晶構造解析を行った。結果を図1に示す。図1のXRD測定結果において、カルコパイライト型の結晶構造の硫化物が得られていることが確認された。
[CGIZS光触媒電極の作製、粒子転写法]
実施例1において得られたCGIZS光触媒 30mgを1mLの2−プロパノールに懸濁させ、この懸濁液200μLをガラス基板上に滴下し、次いで乾燥することを3回繰り返してガラス基板上に光触媒層を形成した。次に、該光触媒層上に、集電導電体層となるAuを蒸着により2μm程度の膜厚で積層した。蒸着装置には、真空蒸着装置(アルバック機工(株)製、VPC−260F)を用いた。その後、両面テープを用いて集電導電体層の上から別のガラス基板を接着して、最初に付けたガラス基材を除去し、純水中で超音波洗浄した。最後に、エポキシ樹脂を用いて光触媒層以外の部分を封止し、さらにIn導線を集電導電体層に接着することで、光触媒層(CGIZS)/集電導電体層(Au)/ガラス基板からなるCGIZS光触媒電極を得た。
[CdS表面修飾とPt助触媒担持]
50mLの水を70℃に加温して、同温度にて撹拌下に、硫酸カドミウム0.28g、28%アンモニア水0.4mL、チオ尿素1.4gを順次加えた後、上記で得られた各CGIZS光触媒電極を5分間浸漬した。取り出した光触媒電極を純水で洗浄した後、室温で一晩乾燥することでCdSで表面修飾されたCGIZS光触媒電極を得た。次に、助触媒となるPtをマルチ成膜装置を用いて1nm程度の厚さ相当の量を担持した。こうして、電極構成としてPt/CdS/光触媒層(CGIZS)/集電導電体層(Au)/ガラス基板からなる光触媒電極を得た。
[電気化学特性評価]
上記[CdS表面修飾とPt助触媒担持]で得られた光触媒電極を用いて、以下の測定条件によって、光電気化学特性を調べた。結果を図2及び表1に示す。
・光源 ソーラーシミュレーター AM1.5G(100mW/cm
・電解液 0.5M NaSO、0.25M NaHPO、0.25M NaHPO pH 6.3
・参照電極 Ag/AgCl、対電極 Ptワイヤ
・アルゴン雰囲気
Figure 0006956963
<実施例2>
[光触媒合成]
LiSを0.0001gとした以外は実施例1と同様の操作でLiを含有するCGIZS光触媒を得た。得られたCGIZS光触媒をICP分析したところ、その成分として、Li、Cu、Ga、In、Zn、Sの重量%は、各々順に、0.001、22.7、15.2、21.0、11.7、29.6%であり、組成比は、各々順に、0.0002、0.77、0.47、0.40、0.38、2.00であった。また、全金属原子に対するLiの割合は、0.01モル%であった。
[XRDによるキャラクタリゼーション]
実施例1と同様にして、実施例2で得られたCGIZS光触媒のXRD測定を行なった。結果を図1に示す。図1のXRD測定結果において、カルコパイライト型の結晶構造の硫化物が得られていることが確認された。
[CGIZS光触媒電極の作製、粒子転写法]および[CdS表面修飾とPt助触媒担持]
実施例1と同様にして、[CGIZS光触媒電極の作製、粒子転写法]および[CdS表面修飾とPt助触媒担持]を行った。
[電気化学特性評価]
[CdS表面修飾とPt助触媒担持]で得られた光触媒電極を用いて、実施例1と同様にして、光電気化学特性を調べた。結果を図2に示す。
<実施例3>
[光触媒合成]
LiSを0.0008gとした以外は実施例1と同様の操作でLiを含有するCGIZS光触媒を得た。得られたCGIZS光触媒をICP分析したところ、その成分として、Li、Cu、Ga、In、Zn、Sの重量%は、各々順に、0.007、21.8、15.5、21.7、11.7、29.3%であり、組成比は、各々順に、0.0023、0.75、0.49、0.41、0.39、2.00であった。また、全金属原子に対するLiの割合は、0.11モル%であった。
[XRDによるキャラクタリゼーション]
実施例1と同様にして、実施例3で得られたCGIZS光触媒のXRD測定を行なった。結果を図1に示す。図1のXRD測定結果において、カルコパイライト型の結晶構造の硫化物が得られていることが確認された。
[CGIZS光触媒電極の作製、粒子転写法]および[CdS表面修飾とPt助触媒担持]
実施例1と同様にして、[CGIZS光触媒電極の作製、粒子転写法]および[CdS表面修飾とPt助触媒担持]を行った。
[電気化学特性評価]
[CdS表面修飾とPt助触媒担持]で得られた光触媒電極を用いて、実施例1と同様にして、光電気化学特性を調べた。結果を図2に示す。
<実施例4>
[光触媒合成]
LiSを0.0126gとした以外は実施例1と同様の操作によりCGIZS光触媒を得た。得られたCGIZS光触媒をICP分析したところ、その成分として、Li、Cu、Ga、In、Zn、Sの重量%は、各々順に、0.156、23.0、14.6、20.8、11.7、29.7%であり、組成比は、各々順に、0.0486、0.78、0.45、0.39、0.39、2.00であった。また、全金属原子に対するLiの割合は、2.36モル%であった。
[XRDによるキャラクタリゼーション]
実施例1と同様にして、実施例4で得られたCGIZS光触媒のXRD測定を行なった。結果を図1に示す。図1のXRD測定結果において、カルコパイライト型の結晶構造の硫化物が得られていることが確認された。
[CGIZS光触媒電極の作製、粒子転写法]および[CdS表面修飾とPt助触媒担持]
実施例1と同様にして、[CGIZS光触媒電極の作製、粒子転写法]および[CdS表面修飾とPt助触媒担持]を行った。
[電気化学特性評価]
[CdS表面修飾とPt助触媒担持]で得られた光触媒電極を用いて、実施例1と同様にして、光電気化学特性を調べた。結果を図2に示す。
<実施例5>
[光触媒合成]
LiSを0.0185gとした以外は実施例1と同様の操作によりCGIZS光触媒を得た。得られたCGIZS光触媒をICP分析したところ、その成分として、Li、Cu、Ga、In、Zn、Sの重量%は、各々順に、0.226、23.3、15.2、20.7、11.5、29.0%であり、組成比は、各々順に、0.0721、0.81、0.48、0.40、0.39、2.00であった。また、全金属原子に対するLiの割合は、3.35モル%であった。
[XRDによるキャラクタリゼーション]
実施例1と同様にして、実施例5で得られたCGIZS光触媒のXRD測定を行なった。結果を図1に示す。図1のXRD測定結果において、カルコパイライト型の結晶構造の硫化物が得られていることが確認された。
[CGIZS光触媒電極の作製、粒子転写法]および[CdS表面修飾とPt助触媒担持]
実施例1と同様にして、[CGIZS光触媒電極の作製、粒子転写法]および[CdS表面修飾とPt助触媒担持]を行った。
[電気化学特性評価]
[CdS表面修飾とPt助触媒担持]で得られた光触媒電極を用いて、実施例1と同様にして、光電気化学特性を調べた。結果を図2に示す。
<比較例1>
[光触媒合成]
原料としてLiSを用いないこと以外は実施例1と同様の操作でLiを含有しないCGIZS光触媒を得た。得られたCGIZS光触媒をICP分析したところ、その成分として、Cu、Ga、In、Zn、Sの重量%は、各々順に、22.6、15.1、20.9、11.7、29.6%であり、組成比は、各々順に、0.77、0.47、0.40、0.39、2.00であった。また、全金属原子に対するLiの割合は、0.00モル%であった。
[XRDによるキャラクタリゼーション]
実施例1と同様にして、比較例1で得られたCGIZS光触媒のXRD測定を行なった。結果を図1に示す。図1のXRD測定結果において、カルコパイライト型の結晶構造の硫化物が得られていることが確認された。
[CGIZS光触媒電極の作製、粒子転写法]および[CdS表面修飾とPt助触媒担持]
実施例1と同様にして、[CGIZS光触媒電極の作製、粒子転写法]および[CdS表面修飾とPt助触媒担持]を行った。
[電気化学特性評価]
[CdS表面修飾とPt助触媒担持]で得られた光触媒電極を用いて、実施例1と同様にして、光電気化学特性を調べた。結果を図2に示す。
<実施例6>
[光触媒合成]
LiSの代わりに、Na源としてNaSを0.0028gを用いた以外は実施例1と同様の操作によりCGIZS光触媒を得た。得られたCGIZS光触媒ICP分析したところ、その成分として、Na、Cu、Ga、In、Zn、Sの重量%は、各々順に、0.072、21.7、15.2、21.3、11.9、29.8であり、組成比は、各々順に、0.0067、0.73、0.47、0.40、0.39、2.0%であった。また、全金属原子に対するNaの割合は、0.34モル%であった。
[XRDによるキャラクタリゼーション]
実施例1と同様にして、実施例6で得られたCGIZS光触媒のXRD測定を行なった。結果を図3に示す。図3のXRD測定結果において、カルコパイライト型の結晶構造の硫化物が得られていることが確認された。
[CGIZS光触媒電極の作製、粒子転写法]および[CdS表面修飾とPt助触媒担持]
実施例1と同様にして、[CGIZS光触媒電極の作製、粒子転写法]および[CdS表面修飾とPt助触媒担持]を行った。
[電気化学特性評価]
[CdS表面修飾とPt助触媒担持]で得られた光触媒電極を用いて、実施例1と同様にして、光電気化学特性を調べた。結果を図4に示す。
<実施例7>
[光触媒合成]
LiSの代わりに、K源としてKSを0.0010gを用いた以外は実施例1と同様の操作によりCGIZS光触媒を得た。得られたCGIZS光触媒をICP分析したところ、Kは、検出限界のため測定不可であった。仕込んだK分がすべてCGIZS触媒に組み込まれたとした理論重量%は、0.03%、全金属原子に対するKの割合の理論値は、0.04モル%と見積もられた。
[XRDによるキャラクタリゼーション]
実施例1と同様にして、実施例7で得られたCGIZS光触媒のXRD測定を行なった。結果を図3に示す。図3のXRD測定結果において、カルコパイライト型の結晶構造の硫化物が得られていることが確認された。
[CGIZS光触媒電極の作製、粒子転写法]および[CdS表面修飾とPt助触媒担持]
実施例1と同様にして、[CGIZS光触媒電極の作製、粒子転写法]および[CdS表面修飾とPt助触媒担持]を行った。
[電気化学特性評価]
[CdS表面修飾とPt助触媒担持]で得られた光触媒電極を用いて、実施例1と同様にして、光電気化学特性を調べた。結果を図4に示す。
<実施例8>
[光触媒合成]
CuS((株)高純度化学研究所製、純度99.0%)を0.6366g、Ga((株)高純度化学研究所製、純度99.99%)を0.5655g、In((株)高純度化学研究所製、純度99.99%)を0.6517g、ZnS((株)高純度化学研究所製、純度99.999%)を0.3897g、そして、フラックス剤として、塩化リチウム(LiCl、関東化学(株)製、純度99.9%)2.29gと塩化カリウム(KCl、関東化学(株)製、純度99.5%)2.68gを秤量して、乳鉢にて混合後、片端が封じられた石英製ガラスチューブに入れた。この石英製ガラスチューブのもう一方の端を真空下に保ちながらバーナーにて熱して封じた。この真空下に封じられた密閉チューブを電気炉に入れて550℃15hr熱処理を行った。室温に放冷してから内容物(CGIZS光触媒)を取り出した。この内容物を100ccの水を用いて洗浄する操作を3回実施した。その後、ろ過したものを40℃で15時間乾燥させた。得られたCGIZS触媒を、ICP分析したところ、その成分として、Li、Cu、Ga、In、Zn、Sの重量%は、各々順に、0.031、22.7、15.2、21.0、11.1、30.0%であり、組成比は、各々順に、0.0094、0.76、0.47、0.39、0.36、2.00であった。また、全金属原子に対するLiの割合は、0.47モル%であった。
[XRDによるキャラクタリゼーション]
実施例1と同様にして、実施例8で得られた光触媒のXRD測定を行なった。結果を図5に示す。図5のXRD測定結果において、カルコパイライト型の結晶構造の硫化物が得られていることが確認された。
[CGIZS光触媒電極の作製、粒子転写法]および[CdS表面修飾とPt助触媒担持]
実施例1と同様にして、[CGIZS光触媒電極の作製、粒子転写法]および[CdS表面修飾とPt助触媒担持]を行った。
[電気化学特性評価]
[CdS表面修飾とPt助触媒担持]で得られた光触媒電極を用いて、実施例1と同様にして、光電気化学特性を調べた。結果を図6に示す。
<実施例9>
[光触媒合成]
熱処理条件を650℃15hr(時間)とした以外は実施例8と同様の操作によりCGIZS光触媒を得た。得られたCGIZS光触媒を、ICP分析したところ、その成分として、Li、Cu、Ga、In、Zn、Sの重量%は、各々順に、0.049、22.6、15.0、21.2、11.0、30.2%であり、組成比は、各々順に、0.0151、0.75、0.45、0.39、0.36、2.00であった。また、全金属原子に対するLiの割合は、0.77モル%であった。
[XRDによるキャラクタリゼーション]
実施例1と同様にして、実施例9で得られたCGIZS光触媒のXRD測定を行った。結果を図5に示す。図5のXRD測定結果において、カルコパイライト型の結晶構造の硫化物が得られていることが確認された。
[CGIZS光触媒電極の作製、粒子転写法]および[CdS表面修飾とPt助触媒担持]
実施例1と同様にして、[CGIZS光触媒電極の作製、粒子転写法]および[CdS表面修飾とPt助触媒担持]を行った。
[電気化学特性評価]
[CdS表面修飾とPt助触媒担持]で得られた光触媒電極を用いて、実施例1と同様にして、光電気化学特性を調べた。結果を図6に示す。
<実施例10>
[光触媒合成]
熱処理条件を750℃3hrとした以外は実施例8と同様の操作によりCGIZS光触媒を得た。得られたCGIZS光触媒を、ICP分析したところ、その成分として、Li、Cu、Ga、In、Zn、Sの重量%は、各々順に、0.042、23.0、16.4、20.6、11.3、28.7%であり、組成比は、各々順に、0.0134、0.81、0.53、0.40、0.39、2.00であった。また、全金属原子に対するLiの割合は、0.63モル%であった。
[XRDによるキャラクタリゼーション]
実施例1と同様にして、実施例10で得られたCGIZS光触媒のXRD測定を行なった。結果を図5に示す。図5のXRD測定結果において、カルコパイライト型の結晶構造の硫化物が得られていることが確認された。
[CGIZS光触媒電極の作製、粒子転写法]および[CdS表面修飾とPt助触媒担持]
実施例1と同様にして、[CGIZS光触媒電極の作製、粒子転写法]および[CdS表面修飾とPt助触媒担持]を行った。
[電気化学特性評価]
[CdS表面修飾とPt助触媒担持]で得られた光触媒電極を用いて、実施例1と同様にして、光電気化学特性を調べた。結果を図6に示す。
<実施例11>
[光触媒合成]
Gaを0.6127gとした以外は実施例8と同様の操作によりCGIZS光触媒を得た。得られたCGIZS光触媒を、ICP分析したところ、その成分として、Li、Cu、Ga、In、Zn、Sの重量%は、各々順に、0.025、21.5、16.4、20.4、11.2、30.5%であり、組成比は、各々順に、0.0075、0.71、0.49、0.37、0.36、2.00であった。また、全金属原子に対するLiの割合は、0.39モル%であった。
[XRDによるキャラクタリゼーション]
実施例1と同様にして、実施例11で得られた光触媒のXRD測定を行なった。結果を図5に示す。図5のXRD測定結果において、カルコパイライト型の結晶構造の硫化物が得られていることが確認された。
[CGIZS光触媒電極の作製、粒子転写法]および[CdS表面修飾とPt助触媒担持]
実施例1と同様にして、[CGIZS光触媒電極の作製、粒子転写法]および[CdS表面修飾とPt助触媒担持]を行った。
[電気化学特性評価]
[CdS表面修飾とPt助触媒担持]で得られた光触媒電極を用いて、実施例1と同様にして、光電気化学特性を調べた。結果を図6に示す。
<実施例12>
[光触媒合成]
Gaを0.6127gとし、熱処理条件を650℃25hrとした以外は実施例8と同様の操作によりCGIZS光触媒を得た。得られたCGIZS光触媒を、ICP分析したところ、その成分として、Li、Cu、Ga、In、Zn、Sの重量%は、各々順に、0.087、22.9、16.1、19.8、10.8、30.3%であり、組成比は、各々順に、0.0266、0.76、0.49、0.37、0.35、2.00であった。また、全金属原子に対するLiの割合は、1.33モル%であった。
[XRDによるキャラクタリゼーション]
実施例1と同様にして、実施例12で得られたCGIZS光触媒のXRD測定を行なった。結果を図5に示す。図5のXRD測定結果において、カルコパイライト型の結晶構造の硫化物が得られていることが確認された。
[CGIZS光触媒電極の作製、粒子転写法]および[CdS表面修飾とPt助触媒担持]
実施例1と同様にして、[CGIZS光触媒電極の作製、粒子転写法]および[CdS表面修飾とPt助触媒担持]を行った。
[電気化学特性評価]
[CdS表面修飾とPt助触媒担持]で得られた光触媒電極を用いて、実施例1と同様にして、光電気化学特性を調べた。結果を図6に示す。
<実施例13>
[光触媒合成]
Inを0.7821g、ZnSを0.4677gとした以外は実施例8と同様の操作によりCGIZS光触媒を得た。得られたCGIZS光触媒を、ICP分析したころ、その成分として、Li、Cu、Ga、In、Zn、Sの重量%は、各々順に、0.020、18.4、13.8、22.8、13.9、31.0%であり、組成比は、各々順に、0.0058、0.60、0.41、0.41、0.44、2.00であった。また、全金属原子に対するLiの割合は、0.31モル%であった。
[XRDによるキャラクタリゼーション]
実施例1と同様にして、実施例13で得られたCGIZS光触媒のXRD測定を行なった。結果を図5に示す。図5のXRD測定結果において、カルコパイライト型の結晶構造の硫化物が得られていることが確認された。
[CGIZS光触媒電極の作製、粒子転写法]および[CdS表面修飾とPt助触媒担持]
実施例1と同様にして、[CGIZS光触媒電極の作製、粒子転写法]および[CdS表面修飾とPt助触媒担持]を行った。
[電気化学特性評価]
[CdS表面修飾とPt助触媒担持]で得られた光触媒電極を用いて、実施例1と同様にして、光電気化学特性を調べた。結果を図6に示す。
<実施例14>
[光触媒合成]
CuS((株)高純度化学研究所製、純度99.0%)を0.8038g、Ga((株)高純度化学研究所製、純度99.99%)を0.7070g、In((株)高純度化学研究所製、純度99.99%)を0.8147g、そして、フラックス剤として、塩化リチウム(LiCl、関東化学(株)製、純度99.9%)2.54gと塩化カリウム(KCl、関東化学(株)製、純度99.5%)2.98gを秤量して、乳鉢にて混合後、片端が封じられた石英製ガラスチューブに入れた。この石英製ガラスチューブのもう一方の端を真空下に保ちながらバーナーにて熱して封じた。この真空下に封じられた密閉チューブを電気炉に入れて650℃15hr熱処理を行った。室温に放冷してから内容物(CGIS光触媒)を取り出した。この内容物を100ccの水を用いて洗浄する操作を3回実施した。その後、ろ過したものを40℃で15時間乾燥させた。得られたCGIZS触媒を、ICP分析したところ、その成分として、Li、Cu、Ga、In、Zn、Sの重量%は、各々順に、0.0805、25.6、18.9、25.2、0.00、30.1%であり、組成比は、各々順に、0.0247、0.86、0.58、0.47、0.00、2.00であった。また、全金属原子に対するLiの割合は、1.28モル%であった。
[XRDによるキャラクタリゼーション]
実施例1と同様にして、実施例14で得られたCGIZS光触媒のXRD測定を行なった。結果を図7に示す。図7のXRD測定結果において、カルコパイライト型の結晶構造の硫化物が得られていることが確認された。
[CGIZS光触媒電極の作製、粒子転写法]および[CdS表面修飾とPt助触媒担持]
実施例1と同様にして、[CGIZS光触媒電極の作製、粒子転写法]および[CdS表面修飾とPt助触媒担持]を行った。
[電気化学特性評価]
[CdS表面修飾とPt助触媒担持]で得られた光触媒電極を用いて、実施例1と同様にして、光電気化学特性を調べた。結果を図8に示す。
<実施例15>
CuSe((株)高純度化学研究所製、純度99.9%)を0.8250g、Ga((株)高純度化学研究所製、純度99.99%)を0.5656g、In((株)高純度化学研究所製、純度99.99%)を0.6517g、ZnS((株)高純度化学研究所製、純度99.999%)を0.3897g、そして、フラックス剤として、塩化リチウム(LiCl、関東化学(株)製、純度99.9%)2.54gと塩化カリウム(KCl、関東化学(株)製、純度99.5%)2.98gを秤量して、乳鉢にて混合後、片端が封じられた石英製ガラスチューブに入れた。この石英製ガラスチューブのもう一方の端を真空下に保ちながらバーナーにて熱して封じた。この真空下に封じられた密閉チューブを電気炉に入れて650℃15hr熱処理を行った。室温に放冷してから内容物(CGIZS光触媒)を取り出した。この内容物を100ccの水を用いて洗浄する操作を3回実施した。その後、ろ過したものを40℃で15時間乾燥させた。得られたCGIZS触媒を、ICP分析したところ、その成分として、Li、Cu、Ga、In、Zn、S、Seの重量%は、各々順に、0.0616、21.3、13.9、19.3、10.3、22.6、12.5%であり、組成比は、各々順に、0.0207、0.78、0.46、0.39、0.37、1.64、0.36であった。また、全金属原子に対するLiの割合は、1.02モル%であった。
[XRDによるキャラクタリゼーション]
実施例1と同様にして、実施例15で得られたCGIZS光触媒のXRD測定を行なった。結果を図7に示す。図7のXRD測定結果において、カルコパイライト型の結晶構造の硫化物が得られていることが確認された。
[CGIZS光触媒電極の作製、粒子転写法]および[CdS表面修飾とPt助触媒担持]
実施例1と同様にして、[CGIZS光触媒電極の作製、粒子転写法]および[CdS表面修飾とPt助触媒担持]を行った。
[電気化学特性評価]
[CdS表面修飾とPt助触媒担持]で得られた光触媒電極を用いて、実施例1と同様にして、光電気化学特性を調べた。結果を図8に示す。
<実施例16>
ZnSの代わりにZnSe(SIGMA−ALDRICH製99.99%)0.5775gを用いた以外は実施例15と同様の操作によりCGIZS光触媒を得た。得られた光触媒についてICP分析したところ、その成分として、Li、Cu、Ga、In、Zn、S、Seの重量%は、各々順に、0.0287、20.0、12.6、17.9、9.9、15.6、24.1%であり、組成比は、各々順に、0.0106、0.80、0.46、0.40、0.39、1.24、0.76であった。また、全金属原子に対するLiの割合は、0.51モル%であった。
[XRDによるキャラクタリゼーション]
実施例1と同様にして、実施例16で得られたCGIZS光触媒のXRD測定を行なった。結果を図8に示す。図8のXRD測定結果において、カルコパイライト型の結晶構造の硫化物が得られていることが確認された。
[CGIZS光触媒電極の作製、粒子転写法]および[CdS表面修飾とPt助触媒担持]
実施例1と同様にして、[CGIZS光触媒電極の作製、粒子転写法]および[CdS表面修飾とPt助触媒担持]を行った。
[電気化学特性評価]
[CdS表面修飾とPt助触媒担持]で得られた光触媒電極を用いて、実施例1と同様にして、光電気化学特性を調べた。結果を図8に示す。
<実施例17>
[光触媒合成]
光触媒をフラックス法で合成した。原料にはCuS((株)高純度化学研究所製、純度99.0%)を1.019g(6.40mmol)、Ga((株)高純度化学研究所製、純度99.99%)を0.905g(3.84mmol)、In((株)高純度化学研究所製、純度99.99%)を1.251g(3.84mmol)、ZnS((株)高純度化学研究所製、純度99.999%)を0.748g(7.68mmol)用いた。この原料仕込みは、Cu、Ga、In、Zn、Sの組成比が、モル基準で、各々順に、0.68、0.41、0.41、0.41、2.0に相当する。原料の混合はメノー乳鉢を用いて、Nグローブボックス中で行った。フラックス剤にはLiCl(関東化学(株)製、純度99.0%)4.070g(48mmol)およびKCl(関東化学(株)製、純度99.5%)4.771g(32mmol)を用いた。フラックス剤の混合は、原料の金属硫化物の混合と同様に行った。これらの混合物を、原料、フラックス剤の順番で石英製シース管に入れ、縦型管状炉において大気中、650℃、3時間の熱処理を行った。熱処理において、昇温速度は10℃/分である。熱処理の降温は、5℃/分の降温速度で行った。熱処理後の試料は、純水で十分に洗浄してフラックス成分を除去してから、吸引濾過にて分離回収した。その後、大気中、室温で一晩乾燥させた。得られた乾燥物(光触媒)をICP分析したところ、Liの含有量は0.037重量%であり、全金属原子に対するLiの割合は、0.57モル%であった。
[XRDによるキャラクタリゼーション]
実施例1と同様にして、実施例17で得られたCGIZS光触媒のXRD測定を行なった。結果を図9に示す。図9のXRD測定結果において、カルコパイライト型の結晶構造の硫化物が得られていることが確認された。
[助触媒担持]
実施例17で得られたCGIZS光触媒に対して、助触媒としてRu 2重量%を光電着法により担持した。具体的には、RuCl 0.40mmolとメタノール20mLとを含む水溶液200mLに上記触媒粉末0.2gを室温にて撹拌下に懸濁させた状態で300Wのキセノンランプによる光照射を3時間行った。その後、濾過して水洗浄を行い、一晩室温にて乾燥させた。
[CGIZS光触媒の水素生成活性評価(懸濁系)]
上記によりRu助触媒を担持させた、実施例17で得られたCGIZS光触媒について、水を分解して水素を生成する光触媒活性を、疑似太陽光照射下における亜硫酸カリウムおよび硫化ナトリウムを含む水溶液からの水素生成反応で評価した。評価には閉鎖循環型反応装置に接続した上方照射型反応セルを用いた。触媒粉末0.2gを、0.50mol/LのKSO、および、0.10mol/LのNaSを含む水溶液200mlに懸濁させ、マグネチックスターラーで評価中は撹拌した。反応条件としては、反応温度20℃、反応圧5kPaである。Pyrex(登録商標)ガラス製の窓の上から、ソーラーシミュレーター(AM1.5G)を用いて、疑似太陽光を照射した。照射強度は100mW/cmであった。発生した水素は、オンラインのガスクロマトグラフ(島津製作所製;GC−8A、MS−5A、TCD、Arキャリアー)で定量した。結果を表2に示す。
Figure 0006956963
<実施例18>
Inを用いない以外は実施例17と同様にして、Cu、Ga、In、Zn、Sの組成比が、モル基準で、それぞれ順に、0.71、0.43、0.00、0.42、2.0に相当する光触媒を得た。ICP分析の結果、Liの含有量は0.048重量%であり、全金属原子に対するLiの割合は0.74モル%であった。
[XRDによるキャラクタリゼーション]
実施例1と同様にして、実施例18で得られたCGIZS光触媒のXRD測定を行なった。結果を図9に示す。図9のXRD測定結果において、カルコパイライト型の結晶構造の硫化物が得られていることが確認された。
[助触媒担持]及び[CGIZS光触媒の水素生成活性評価(懸濁系)]
実施例17と同様にして、[助触媒担持]および[CGIZS光触媒の水素生成活性評価(懸濁系)]を行って、水素生成活性を評価した。結果を表2に示す。
<実施例19>
Gaを用いない以外は実施例17と同様にして、Cu、Ga、In、Zn、Sの組成比が、モル基準で、それぞれ順に、0.71、0.00、0.42、0.42、2.0に相当する光触媒を得た。ICP分析の結果、Liの含有量は0.039重量%であり、全金属原子に対するLiの割合は0.67モル%であった。
[XRDによるキャラクタリゼーション]
実施例1と同様にして、実施例19で得られたCGIZS光触媒のXRD測定を行なった。結果を図9に示す。図9のXRD測定結果において、カルコパイライト型の結晶構造の硫化物が得られていることが確認された。
[助触媒担持]及び[CGIZS光触媒の水素生成活性評価(懸濁系)]
実施例17と同様にして、[助触媒担持]および[CGIZS光触媒の水素生成活性評価(懸濁系)]を行って、水素生成活性を評価した。結果を表2に示す。
<比較例2>
光触媒を固相法で合成した。具体的には、原料の金属硫化物には、実施例17と同じものを同じ仕込み量で用い、これらの混合物を石英製ガラス管に入れ、0.5Paの真空下に封管した後、電気炉で800℃、10時間の熱処理を行った。放冷後、室温になった状態で開封して粉末を取り出して、Cu、Ga、In、Zn、Sの組成比が、モル基準で、各々順に、0.68、0.41、0.41、0.41、2.0に相当する光触媒を得た。
[XRDによるキャラクタリゼーション]
実施例1と同様にして、比較例2で得られたCGIZS光触媒のXRD測定を行なった。結果を図9に示す。図9のXRD測定結果において、カルコパイライト型の結晶構造の硫化物が得られていることが確認された。
[助触媒担持]及び[CGIZS光触媒の水素生成活性評価(懸濁系)]
実施例17と同様にして、[助触媒担持]および[CGIZS光触媒の水素生成活性評価(懸濁系)]を行って、水素生成活性を評価した。結果を表2に示す。
<比較例3>
Inを用いない以外は比較例2と同様にして、Cu、Ga、In、Zn、Sの組成比が、モル基準で、各々順に、0.71、0.43、0.00、0.42、2.0に相当する光触媒を得た。
[XRDによるキャラクタリゼーション]
実施例1と同様にして、比較例3で得られたCGIZS光触媒のXRD測定を行なった。結果を図9に示す。図9のXRD測定結果において、カルコパイライト型の結晶構造の硫化物が得られていることが確認された。
[助触媒担持]及び[CGIZS光触媒の水素生成活性評価(懸濁系)]
実施例17と同様にして、[助触媒担持]および[CGIZS光触媒の水素生成活性評価(懸濁系)]を行って、水素生成活性を評価した。結果を表2に示す。
<比較例4>
Gaを用いない以外は比較例2と同様にして、Cu、Ga、In、Zn、Sの組成比が、0.71、0.00、0.42、0.42、2.0に相当する光触媒を得た。
[XRDによるキャラクタリゼーション]
実施例1と同様にして、比較例4で得られたCGIZS光触媒のXRD測定を行なった。結果を図9に示す。図9のXRD測定結果において、カルコパイライト型の結晶構造の硫化物が得られていることが確認された。
[助触媒担持]及び[CGIZS光触媒の水素生成活性評価(懸濁系)]
実施例17と同様にして、[助触媒担持]および[CGIZS光触媒の水素生成活性評価(懸濁系)]を行って、水素生成活性を評価した。結果を表2に示す。
図2及び表1から明らかなように、実施例1〜5において固相法で得られたLiを複合金属化合物中の全金属原子に対して0.001〜5モル%含有する各光触媒を用いて作製された光触媒電極は、比較例1においてLiを含有しない光触媒を用いて作製された光触媒電極に比して、いずれも高いカソード電流を与えた。これはLiの添加効果によるものと考えられる。
また、図4及び表1においては、NaあるいはKを複合金属化合物中の全金属原子に対して0.001〜5モル%含有する光触媒を用いて作製された光触媒電極が、比較例1においてアルカリを含有しない光触媒を用いて作製された光触媒電極に比して、いずれも高いカソード電流を与えた。いずれもアルカリの添加効果によるものと考えられる。
さらに、図6及び表1においては、フラックス法により合成された各触媒が複合金属化合物中の全金属原子に対して0.001〜5モル%のLiを含有すること、および、各触媒を用いて作製された光触媒電極がいずれも高いカソード電流を与えることが示されている。いずれもLiの添加効果によるものと考えられる。
そして、図8及び表1から明らかなように、本発明における複合酸化物の範囲内で元素の種類を変更した実施例14〜16においても、いずれも高いカソード電流を与えた。
また、表2に示すように、本発明における複合金属化合物を用いた実施例17〜19は、それぞれ、アルカリ金属を含まない以外は同様の比較例2〜4と比べて、水素発生量が多く、優れた水素生成活性を有していた。同様に、実施例17と同様の組成である実施例1〜13や14〜16も、優れた水素生成活性を有していると言える。

Claims (3)

  1. カルコパイライト型の結晶構造を有する複合金属化合物からなり、可視光を用いて水から水素の生成が可能な光触媒であって、
    前記複合金属化合物が、Cuと、Sと、GaおよびInの少なくとも一方と、アルカリ金属とを必須成分として含有し、必要に応じてZnおよびSeの少なくとも一方を含有し、かつ、前記複合金属化合物中の全金属原子に対して前記アルカリ金属を0.001〜5モル%含有する、光触媒。
  2. 前記複合金属化合物が、Cuと、Sと、GaおよびInの少なくとも一方と、アルカリ金属と、Znとを含有する、請求項1に記載の光触媒。
  3. 請求項1又は2に記載の光触媒を有する、水素生成用光触媒電極。
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