JP6956400B2 - 磁性被覆コイル及びこれを用いたトランス - Google Patents
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また、コンバータに用いられる素子のうち、絶縁用トランスは他の素子と比較して体積が大きく、回路の大型化の要因となっている。トランスを小型化する方法として、プレーナトランスを用いる方法がある。プレーナトランスは平角線や、基板パターンを巻線とすることで、コイルの占積率を向上させることで小型化を実現している。しかしながら、プレーナトランスは巻線の断面形状が長方形であるため、表皮効果が丸線と比較して顕著に表れ、また、コイルの占積率の向上に伴って巻線間の距離が近くなるため、近接効果に起因する交流抵抗が増加するという問題がある。
磁性被覆コイルの例としては、前記平角線コイルが、エッジワイズコイルであり、前記平角線コイルの内周面と外周面の全面が、前記磁性被覆体により被覆され一体的に遮蔽されているもの、前記平角線コイルが、平角線のフラット巻きコイルであり、前記平角線コイルの両側面の全面が、前記磁性被覆体により被覆され一体的に遮蔽されているもの、前記平角線コイルが、平角線のスパイラル形コイルであり、前記平角線の幅方向の両側面が、全長にわたり前記磁性被覆体により被覆されているものが挙げられる。前記平角線コイルが、エッジワイズコイルおよびスパイラル形コイルの場合は、前記平角線コイルの平面部分はその両面が全面にわたり露出するようにしてもよい。
なお、平角線の幅方向の両側面に対応する両側面を、それぞれ全面にわたり、一体的に遮蔽するように磁性被覆体が被覆されている、という意味は、平角線の側面部分について、平角線そのものの側面と隣り合う平角線間の隙間部分を含めて、側面部分の全体を一体的に遮蔽するように磁性被覆体が被覆されているという意味である。
これらの磁性被覆コイルは空芯リアクトルあるいは鉄心リアクトルの構成部品として利用することができる。
また、平角線からなるフラット巻きコイルである、一次側コイルと二次側コイルとが、内周側と外周側とに同芯状に配置され、前記一次側コイルと二次側コイルの、前記平角線の幅方向の側面に対応する、それぞれの両側面の全面が、磁性被覆体により被覆され、かつ、前記一次側コイルと二次側コイルの磁性被覆体が連結されて、前記一次側コイルと二次側コイルが一体的に遮蔽されるとともに、前記一次側コイルと二次側コイルの平角線の平面部分は露出しており、さらに、前記一次側コイルと二次側コイルとを仕切る位置に、両端部がそれぞれ一次側コイルと二次側コイルの側面を被覆する前記磁性被覆体に連結する配置として磁性プレートが設けられていることを特徴とする。
これらの一次側コイルと二次側コイルとを備える磁性被覆コイルは、コア内に組み込むことによりトランスを構成することができる。
<第1の実施の形態>
図1は本発明に係る磁性被覆コイルの第1の実施の形態を示す。図1(a)は磁性被覆コイルの平面図、図1(b)はA-A’線断面図、図1(c)は斜視図である。平角線コイル10(平角線によって構成したコイル)は、断面形状が長方形の平角線を、コイルの軸線方向と平角線の平面とが垂直になるように巻回して構成したエッジワイズコイル(プレーナ形コイル)である。
平角線コイル10(エッジワイズコイル)は軸線方向に所定間隔をあけて平角線が複数段に配置されている。磁性被覆体12は積層方向で隣り合う側面と平角線間の空隙を遮蔽するように、平角線コイルの内周面と外周面の全面を被覆するように設けられる。
図1(b)では、複数段に積層されている平角線の各々の側面間を連結するように磁性被覆体12が設けられ、平角線コイル10の内周側面部分と外周側面部分がそれぞれ磁性被覆体12によって被覆されていることを示す。
図2は磁性被覆コイルの第2の実施の形態を示す。
本実施形態の磁性被覆コイルは、平角線を周方向に積層するように巻いて構成されている、いわゆるフラット巻きコイルである。本実施形態においても、平角線コイル11の側面を磁性被覆体12によって被覆する考え方は第1の実施の形態と同様である。
図2(a)は、平角線コイル11を構成する平角線の幅方向の側面部分(平坦部分)の全面が磁性被覆体12によって遮蔽されていることを示す。磁性被覆コイルの円筒状の内周面と外周面については、平角線コイル11の円筒状の表面が露出する(図2(c))。
なお、図2(b)では、平角線コイル11の側面を被覆する磁性被覆体12の端部12aが平角線の側面の縁部上に僅かに屈曲して延出している。磁性被覆体12の端部の形態については、磁性被覆体12の端部を平角線の縁部から僅かに延出させるようにしてもよいし、平角線の側面上で止めて延出させないようにしても良い。
図3は磁性被覆コイルの第3の実施の形態を示す。
図3に示す磁性被覆コイルは、スパイラル形の平角線コイル13、すなわち平角線の平面とコイルの平面とを同一平面として、平角線を巻いて形成したものである。
本実施形態においては、図3(b)に示すように、平角線コイル13を構成する平角線の幅方向の両側面に磁性被覆体12を設ける。磁性被覆体12は平角線コイル13を構成する平角線の全長にわたって平角線の両側面を被覆する。
本実施形態においても、平角線の両側面を被覆する磁性被覆体12はその端部を平角線の縁部から平角線の表面上に僅かに延出させてもよいし、平角線の側面部分のみを磁性被覆体12によって被覆してもよい。磁性被覆体12の端部を平角線の表面上に延出させた場合と、延出させない場合で、表皮効果及び近接効果を抑制する作用は顕著には変わらない。
図4は磁性被覆コイルの第4の実施の形態を示す。本実施形態の磁性被覆コイルはプレーナトランスに使用する磁性被覆コイルとして構成した例である。
図4(b)に示すように、本実施形態の磁性被覆コイルは、一次側コイル20と二次側コイル21とを軸線を共通にして積み重ねた形態に形成されたものである。一次側コイル20と二次側コイル21の構成は第1の実施の形態として説明した磁性被覆コイルと同様である。すなわち、一次側コイル20と二次側コイル21は、平角線コイル10の内周面と外周面の全面が磁性被覆体12によって遮蔽されるように設けられている。
また、他の特徴点は、図4(b)に示すように、一次側コイル20と二次側コイル21との間にこれらを仕切る配置に磁性プレート14を設けた点である。
本実施形態の磁性被覆コイルは一次側コイル20と二次側コイル21とを積み重ねたプレーナ形に形成されたもので、効率的にトランスを小型化することができるとともに、磁性被覆体12と磁性プレート14とを備えることから、高周波領域におけるトランスの抵抗値を効果的に低減させることができ、優れた特性を備えるトランスの構成部品として有効に利用することができる。
図5は磁性被覆コイルの第5の実施の形態を示す。
本実施形態の磁性被覆コイルも第4の実施の形態と同様に、トランスに組み込んで使用するためのものである。
本実施形態の磁性被覆コイルは、1次側コイル20と二次側コイル21として、第2の実施の形態で説明した、平角線をフラット巻きにしたコイルとして構成したものである。また、一次側コイル20と二次側コイル21を同芯状に配置して、軸線を共通にしている。本実施形態では、一次側コイル20を外側に配置し、二次側コイル21を内側に配置しているが、一次側コイル20と二次側コイル21の配置を逆の配置にすることもできる。
また、一次側コイル20と二次側コイル21とを仕切る位置に、コイルの周方向の全周にわたって、磁性プレート15を配置する。磁性プレート15は一次側コイル20と二次側コイル21の両側面部分を被覆する磁性被覆体12と端部が連結するように設ける。
本発明に係る磁性被覆コイルは、上述した各実施の形態において説明したように、平角線の幅方向の両側面に対応する平角線コイルの側面の全面に、一体的に磁性被覆体を設け、平角線コイルの側面部分を磁性被覆体によって遮蔽した構成となるものである。
以下では、まず、プレーナ(エッジワイズ)形の平角線コイルに磁性被覆体を設けた磁性被覆コイルについて、抵抗−周波数特性を解析ソフトを用いて解析した結果について説明し、次に磁性被覆コイルを用いたプレーナ形トランスの特性について説明する。
平角線は幅 5 mm、厚さ0.1 mm、線間距離0.05 mmとした。コイルの巻数は8回とし、8枚の平角線を直列に接続したものとした。コイルは、図6で、z軸を中心としてzr平面をθ方向に1回転させた軸対称モデルである。
また、磁性被覆体の厚さtcを、tc = 0.1mm、0.2mm、0.3 mmの条件とし、磁性被覆体の複素比透磁率μ’=10、μ’’= 0とした。電流はI = 1Amaxとし、周波数は1 Hz〜1 MHzの範囲で100 kHzごとに抵抗を解析した。
図7から、磁性被覆体を設けていない平角線コイルと比較して、磁性被覆体を設けることで平角線コイルの抵抗が確実に低減されることが分かる。周波数1 MHzにおける磁性被覆体を設けていない平角線コイルの抵抗値は108.9mΩであるのに対して、磁性被覆体を設けたものでは、抵抗値が88mΩであり、抵抗値が19.2%低減した。
なお、図7では磁性被覆体の端部をL字形に曲げずに、単にコイルの側面部分のみを磁性被覆体で被覆した磁性被覆コイルについて解析した結果をあわせて示した(With magnetic side plate)。磁性被覆体の厚さは0.1mmである。この場合も、磁性被覆体を設けない場合と比較して抵抗値を低減させる効果が明確に認められた。
周波数1 MHzで抵抗値が磁性被覆体の厚さに依存しなくなった理由は、1 MHzでは表皮効果の作用によって平角線の両端部に近い領域で電流密度が高くなるという電流の偏りの作用が低周波側における場合と比較して強くなる、すなわち電流密度が高くなる領域が平角線の幅方向の端部に寄せられて面積が狭くなり、磁性被覆体を設けることで表皮効果を抑制する作用よりも近接効果を抑制する作用がより強く表れるようになったためである。
この解析モデルでは、磁性被覆体を磁性被覆体の端部をL字形に屈曲して平角線の平面上に磁性被覆体の端部を延出した形態としている(図6)。したがって、磁性被覆体の厚さが厚くなれば、平角線の平面上に延出する磁性被覆体の延出長さが長くなる。平角線の平面を被覆する範囲が広くなれば、表皮効果をより抑制するように作用する筈であるが、磁性被覆体の厚さを変えても抵抗値が変わらないということは、表皮効果を抑制する作用よりも近接効果を抑制する作用が主体となって作用していることを意味する。
プレーナ形の磁性被覆コイルをトランスに組み込んだときの特性を解析するため、LLC共振形コンバータ回路に用いるトランスの例について、解析ソフトを用いて解析した。
図8はLLC共振形コンバータの回路構造の例である。LLC共振形コンバータはトランスの漏れインダクタンスと共振用キャパシタを共振させることによりソフトスイッチングを可能とする。トランスの結合係数は0.7〜0.9程度であり、漏れインダクタンスを生じさせるため、トランスの一次側コイルと二次側コイルを分割して巻く形式とすることが多い。また、コアギャップを設けることで漏れ磁束を生じさせる。そのため、漏れ磁束が巻線に鎖交したときに渦電流が生じるため、近接効果に起因する交流抵抗が増加するという問題がある。
一次側コイルと二次側コイルの間は0.35mmのギャップを設けた。コアの中心脚にギャップを設け、コアのギャップ長を2 mmした。
磁性被覆体の複素比透磁率をμ’= 10、μ’’= 0とし、一次側コイルに周波数1 MHz、I = 1 Amaxの電流を流し、二次側コイルを開放あるいは短絡したときの抵抗、インダクタンス、トランスの結合係数を解析した。二次側を短絡したときの抵抗は駆動状態の磁束分布を模擬するために行ったものである。
なお、磁性被覆体は端部をL字形に曲げ、平角線の縁部から平角線の表面にわずかに延出させるようにした。
磁性被覆体を設けていない一次側コイルと二次側コイルを備えるトランスと比較して、磁性被覆体を設けたコイルを備えるトランスでは抵抗値が最大で7.4 %低減した。これは磁性被覆線コイルと同様に、磁性被覆体を設けたことにより、平角線の端部に鎖交する磁束が減少したためである。
図12に磁性被覆体で一次側コイルと二次側コイルを被覆したときのプレーナトランスの磁束密度、磁束線分布(二次側短絡、tc= 0.1 mm、I = 1 Amax、 f = 1 MHz)を示す。図12から、一次側コイルと二次側コイルの中間位置で磁束が集中することが分かる。一次側コイルと二次側コイルの側面を遮蔽するように磁性被覆体を設けたことで、内周と外周の磁性被覆体間をつなぐように磁束が流れる。この磁性被覆体間の磁束が平角線を通過することによって渦電流が生じ、抵抗が増加したものと考えられる。
磁性プレートの厚さをtgとし、tg = 0.1mm、0.2mm、0.3 mmの条件で解析を行った。
図14で、抵抗値が最も小さくなったのは、tc = 0.2 mm、tg = 0.3 mmのときであり、そのときの抵抗値は215 mΩである。磁性被覆体と磁性プレートを使用しないトランスの抵抗値は272 mΩであり、磁性被覆体と磁性プレートを使用したことにより抵抗値が21%低減した。
磁性被覆体と磁性プレートを設けたことにより、図12に示した磁性プレートを装着していない場合と比較して、平角線を通過する磁束が減少し、近接効果を抑制する作用が機能していることがわかる。
図15中に示した値は、抵抗値が最も小さくなる場合(tc = 0.1 mm、tg = 0.3 mm)について求めたものであり、抵抗値が195mΩとなり磁性被覆体の端部を平角線上に延出させた場合と比較してわずかに大きくなった。
また、これらの解析結果は、プレーナトランスの交流抵抗を低減させる方法として、巻線の周囲の磁束が集中する部位に磁性体を配置することにより、近接効果に起因する交流抵抗を低減することができることを示唆する。
12 磁性被覆体
12a 磁性被覆体の端部
14、15 磁性プレート
20 1次側コイル
21 2次側コイル
Claims (9)
- 平角線をコイル状に巻回した平角線コイルの、前記平角線の幅方向の両側面に対応する両側面に、それぞれ全面にわたり、一体的に遮蔽するように磁性被覆体が被覆され、かつ前記平角線コイルの平面部分はその両面が全面にわたり露出していることを特徴とする磁性被覆コイル。
- 前記平角線コイルが、エッジワイズコイルであり、
前記平角線コイルの内周面と外周面の全面が、前記磁性被覆体により被覆され一体的に遮蔽されていることを特徴とする請求項1記載の磁性被覆コイル。 - 平角線をコイル状に巻回した平角線コイルの、前記平角線の幅方向の両側面に対応する両側面に、それぞれ全面にわたり、一体的に遮蔽するように磁性被覆体が被覆され、かつ前記平角線コイルの平面部分は露出している磁性被覆コイルであって、
前記平角線コイルが、平角線のフラット巻きコイルであり、
前記平角線コイルの両側面の全面が、前記磁性被覆体により被覆され一体的に遮蔽されていることを特徴とする磁性被覆コイル。 - 前記平角線コイルが、平角線のスパイラル形コイルであり、
前記平角線の幅方向の両側面が、全長にわたり前記磁性被覆体により被覆されていることを特徴とする請求項1記載の磁性被覆コイル。 - 平角線からなるエッジワイズコイルである、一次側コイルと二次側コイルとが、軸線方向に積み重ねて配置され、
前記一次側コイルと二次側コイルの、前記平角線の幅方向の側面に対応する、それぞれの内周面と外周面の全面が、磁性被覆体により被覆され、かつ、前記一次側コイルと二次側コイルの磁性被覆体が連結されて、前記一次側コイルと二次側コイルが一体的に遮蔽されるとともに、
前記一次側コイルと二次側コイルの平角線の平面部分は露出しており、さらに、
前記一次側コイルと二次側コイルとを仕切る位置に、両端部がそれぞれ前記内周側の磁性被覆体と外周側の磁性被覆体に連結する配置として、磁性プレートが設けられていることを特徴とする磁性被覆コイル。 - 平角線からなるフラット巻きコイルである、一次側コイルと二次側コイルとが、内周側と外周側とに同芯状に配置され、
前記一次側コイルと二次側コイルの、前記平角線の幅方向の側面に対応する、それぞれの両側面の全面が、磁性被覆体により被覆され、かつ、前記一次側コイルと二次側コイルの磁性被覆体が連結されて、前記一次側コイルと二次側コイルが一体的に遮蔽されるとともに、
前記一次側コイルと二次側コイルの平角線の平面部分は露出しており、さらに、
前記一次側コイルと二次側コイルとを仕切る位置に、両端部がそれぞれ一次側コイルと二次側コイルの側面を被覆する前記磁性被覆体に連結する配置として磁性プレートが設けられていることを特徴とする磁性被覆コイル。 - 前記磁性被覆体は、その幅方向の端部が、前記平角線の縁部上に延出していることを特徴とする請求項3、5および6のいずれか一項記載の磁性被覆コイル。
- 請求項1〜4のいずれか一項記載の磁性被覆コイルが組み込まれた鉄心リアクトル。
- 請求項5〜7のいずれか一項記載の磁性被覆コイルがコア内に組み込まれたトランス。
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