以下、本発明にかかる実施の一形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。また、本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
本実施形態にかかる巻線素子は、外部に引き出される端子部を備えるコイルと、前記コイルによって生じた磁束を通すとともに内外を連通する貫通孔を形成した、前記コイルを収納するコアと、前記貫通孔の形状に応じた外形形状である筒部と、前記筒部の外周から立設され径方向外側へ延びるフランジ部とを備える絶縁部材とを備えるものである。
このような巻線素子は、回路にリアクタンスを導入することを目的としたリアクトルに用いられ、あるいは、電磁誘導を利用することによって複数の巻線(コイル)間でエネルギーの伝達を行うトランス(変成器、変圧器)に用いられる。例えばリアクトルでは、前記コイルは、1個である。また例えば多相のリアクトルでは、前記コイルは、複数である。このような複数のコイルは、例えば、径方向に積層されることによって構成される。また例えば、複数のコイルは、軸方向に積層されることによって構成される。また例えば、複数のコイルは、絶縁テープと重ねられた長尺な帯状の導体部材を複数さらに重ねて巻回すことで形成される。また例えばトランスでは、前記コイルは、複数であり、例えば、上述のように構成される。
ここでは、主に、リアクトルを例示するが、多相のリアクトルやトランスも同様に構成することが可能である。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態における巻線素子の構成を示す図である。図1(A)は、斜視図であり、図1(B)は、上面図である。図2は、第1実施形態の巻線素子におけるコイルの構成を示す図である。図2(A)は、上面図であり、図2(B)は、図2(A)における断面は、軸芯Oを含む平面で切断した断面図であり、そして、図2(C)は、その一部拡大図である。図3は、第1実施形態の巻線素子におけるコア部材の構成を示す斜視図である。図4は、第1実施形態における巻線素子の製造方法を説明するための図である。
図1ないし図3において、第1実施形態の巻線素子DAは、一対の端子部5A(5A−1、5A−2)を持つ1個のコイル1Aと、コイル1Aに通電(給電)した場合にコイル1Aによって生じた磁束を通すコア2Aと、前記一対の端子部5A−1、5A−2のそれぞれを絶縁するための一対の端子部用絶縁部材6A(6A−1、6A−2)とを備えて構成され、例えばリアクトルとして機能するものである。
コイル1Aは、絶縁状態で長尺の導体部材を所定の回数だけ巻き回したものであり、通電することによって、磁場を発生するものである。コイル1Aは、例えば断面丸形(○形)や断面矩形(□形)等の絶縁被覆した長尺な導体部材を巻回することによって構成されてもよいが、本実施形態では、コイル1Aは、絶縁した帯状の導体部材を、該導体部材の幅方向がコイル1Aの軸AX方向に沿うように巻回することによって構成される。
コイル1Aは、導体部材11が絶縁被覆されることによって絶縁されてもよいが、本実施形態では、例えば、図2(C)に示すように、コイル用絶縁部材12によってコイル1Aの導体部材11は、絶縁される。このコイル用絶縁部材12は、導体部材11の一方側面全面を被覆する一方面被覆部12aと、一方面被覆部12aにおける幅方向の両端から延長され、導体部材11の幅方向の両端をそれぞれ被覆する一対の第1および第2端部被覆部12b−1、12b−2と、これら一対の第1および第2端部被覆部12b−1、12b−2のそれぞれから延長され、導体部材11における前記一方側面に対向する他方側面の一部を被覆する一対の第1および第2他方面被覆部12c−1、12c−2とを備えている。このような構成のコイル用絶縁部材12は、導体部材11における幅方向の両端部を、特に互いに隣接する層間での両端部を、好適に絶縁することができるとともに、コイル用絶縁部材12による大径化を抑制することができる。
なお、帯状とは、導体部材11の厚さ(径方向の長さ)tよりも幅(軸方向の長さ)Wの方が大きい場合をいい、すなわち、幅Wと厚さtとの間に、W>t(W/t>1)の関係が成り立つ。このように本実施形態のコイル1Aは、帯状の導体部材11を、該導体部材11の幅方向が該コイル1Aの軸方向に沿うように巻回することによって構成された、いわゆるフラットワイズ巻線構造である。
そして、導体部材11における長尺方向の両端のそれぞれには、外部の回路とコイル1A(導体部材11)とを電気的に接続するための一対の第1および第2端子部(引出配線、口出配線)5A−1、5A−2が設けられている。これら第1および第2端子部5A−1、5A−2は、導体線材を例えば溶接や半田付け等で導体部材11の両端部に取り付けることによって形成されてもよいが、このような形成方法の場合では、第1および第2端子部5A−1、5A−2に外力がかかったり加熱されたりした場合に第1および第2端子部5A−1、5A−2が導体部材11から剥離する虞があって信頼性に欠けるため、高信頼性の観点から例えば上述の特許文献1に開示の端子構造で形成されている。すなわち、これら第1および第2端子部5A−1、5A−2は、コイル1A(導体部材11)の端部を折り曲げることによって、コイル1Aの軸方向に直交する平面に交差する方向に引き出された部分である。これら第1および第2端子部5A−1、5A−2は、斜め方向に引き出されてもよいが、本実施形態では直交する方向(コイル1Aの軸方向)に引き出されている。そして、この第1および第2端子部5A−1、5A−2は、サイズを低減するとともに電気抵抗を低減する観点から、その軸方向に沿う折り曲げ線で折り曲げることによって多重構造とされる。例えば、第1および第2端子部5A−1、5A−2は、4層構造にされている。
コア2Aは、コイル1Aに通電した場合にコイル1Aに生じる磁場による磁束を通す部材であり、磁気的に(例えば透磁率が)等方性を有している。コア2Aは、例えば、図1および図3に示すように、第1および第2端子部5A−1、5A−2を挿通するための、内外を連通する第1および第2端子部用貫通孔3Ae−1、3Ae−2が一方のコア部材に設けられている点を除き同一の構成を有する第1および第2コア部材3A、4Aを備える。第1および第2コア部材3A、4Aは、それぞれ、例えば円板形状を有する円板部3Aa、4Aaの板面に、該円板部3Aa、4Aaと同径の外周面を有する円筒部3Ab、4Abが連続して成る。図1に示す例では、第1コア部材3Aの円板部3Aaに、第1および第2端子部5A−1、5A−2のコイル1Aからの引出方向に沿った方向(本実施形態では該円板部3Aaをコイル1Aの軸方向)で貫通するように第1および第2端子部用貫通孔3Ae−1、3Ae−2(図1参照、図3では不図示)が形成されている。コア2Aは、このような構成を有する第1および第2コア部材3A、4Aが互いに前記各円筒部3Ab、4Abの端面同士で重ね合わせられることによりコイル1Aを内部に収容するための空間を備えている。
そして、図1および図3に示す例では、コイル1Aをコア2A内に収容した場合にコア2Aにおけるコイル1Aの空芯部Sに面する箇所に、この空芯部Sに入り込む第1および第2突起部3Af、4Afが形成されている。より具体的には、コイル1Aをコア2A内に収容した場合に第1コア部材3Aの内側底面におけるコイル1Aの空芯部Sに面する箇所に、この空芯部Sに入り込む円錐台形状の第1突起部3Af(不図示)が形成されており、コイル1Aをコア2A内に収容した場合に第2コア部材4Aの内側底面におけるコイル1Aの空芯部Sに面する箇所に、この空芯部Sに入り込む円錐台形状の第2突起部4Afが形成されている。このような第1および第2突起部3Af、4Afを形成することにより、リアクトルDAのインダクタンスをさらに向上させることができる。また、各突起部3Af、4Af間におけるギャップ長を調整することにより、リアクトルDAのインダクタンス値を調整することができる。また、第1および第2突起部3Af、4Afは、インダクタンス特性を制御するために任意の形状とすることが可能であり、円錐台形状に限定されるものではなく、例えば、円柱状であってもよい。
第1および第2コア部材3A、4Aには、前記互いに重ね合わされる円筒部3Ab、4Abの各端面に、位置決めを行うための凸部3Ac、4Acが設けられ、この凸部3Ac、4Acに応じた凹部3Ad、4Adが設けられている。なお、このような凸部3Ac、4Acおよび凹部3Ad、4Adは、無くてもよい。例えば、図3に示すように、第1および第2コア部材3A、4Aにおける円筒部3Ab、4Abの各端面には、略円柱形状の第1および第2凸部3Ac−1、3Ac−2;4Ac−1、4Ac−2が180゜の間隔(互いに対向する位置)で設けられ、このような略円柱形状の第1および第2凸部3Ac−1、3Ac−2;4Ac−1、4Ac−2がはまり込むような略円柱形状の第1および第2凹部3Ad−1、3Ad−2;4Ad−1、4Ad−2が180゜の間隔(互いに対向する位置)で設けられている。そして、これら第1および第2凸部3Ac−1、3Ac−2;4Ac−1、4Ac−2ならびに第1および第2凹部3Ad−1、3Ad−2;4Ad−1、4Ad−2は、それぞれ、90゜間隔で設けられている。なお、図3に示す例では、第1および第2コア部材3A、4Aは、上記端子部用貫通孔3Ae(図3には不図示)を除き、互いに同形状であり、図3には、突起部3Af、4Afを備えた第1および第2コア部材3A、4Aの一方が示されている。このような位置決めの凸部3Ac、4Acを円筒部3Ab、4Abの各端面にさらに備えることによって第1および第2コア部材3A、4Aをより確実に突き合わせることができる。
第1および第2コア部材3A、4Aは、所定の磁気特性を有する。第1および第2コア部材3A、4Aは、低コスト化の観点から、同一材料であることが好ましい。ここで、第1および第2コア部材3A,4Aは、所望の磁気特性(比較的高い透磁率)の実現容易性および所望の形状の成形容易性の観点から、軟磁性体粉末を成形したものであることが好ましい。
この軟磁性粉末は、強磁性の金属粉末であり、より具体的には、例えば、純鉄粉、鉄基合金粉末(Fe−Al合金、Fe−Si合金、センダスト、パーマロイ等)およびアモルファス粉末、さらには、表面にリン酸系化成皮膜などの電気絶縁皮膜が形成された鉄粉等が挙げられる。これら軟磁性粉末は、例えば、アトマイズ法等によって製造することができる。また、一般に、透磁率が同一である場合に飽和磁束密度が大きいので、軟磁性粉末は、例えば上記純鉄粉、鉄基合金粉末およびアモルファス粉末等の金属材料であることが好ましい。このような第1および第2コア部材3A、4Aは、例えば、公知の常套手段を用いて軟磁性粉末を圧粉成形することによって形成することができる。
そして、巻線素子DAは、第1および第2コア部材3A、4Aを突き合わせることによって形成される内部空間に、その第1および第2端子部5−1、5A−2を第1および第2端子部用貫通孔3Ae−1、3Ae−2から外部に引き出してコイル1Aを収納することによって構成されるが、ここで、本実施形態では、第1および第2端子部5−1、5A−2は、第1および第2端子部用絶縁部材6A−1、6A−2を介して第1および第2端子部用貫通孔3Ae−1、3Ae−2から外部に引き出されている。
これら第1および第2端子部用絶縁部材6A−1、6A−2は、第1および第2端子部5A−1、5A−2と同数であって、それぞれ、第1および第2端子部用貫通孔3Ae−1、3Ae−2の形状に応じた外形形状である筒部(中空の柱状部材)6Aa−1、6Aa−2と、筒部6Aa−1、6Aa−2の外周から立設され径方向外側へ延びるフランジ部6Ab−1、6Ab−2とを備えている。本実施形態では、図1に示すように、第1および第2端子部用貫通孔3Ae−1、3Ae−2は、円柱状の孔であることから、筒部6Aa−1、6Aa−2は、円筒形状(中空の円柱形状)である。また、フランジ部6Ab−1、6Ab−2は、平面視にて、例えば円形形状等の任意の形状であってよいが、本実施形態では矩形形状である。
これらフランジ部6Ab−1、6Ab−2は、筒部6Aa−1、6Aa−2における軸方向のいずれの位置に形成されてもよいが、コア2Aに第1および第2端子部用絶縁部材6A−1、6A−2が組み付けられた場合にデットスペースを低減するために、筒部6Aa−1、6Aa−2における軸方向の一方端に形成されている。このような第1および第2端子部用絶縁部材6A−1、6A−2は、例えば、射出成型によって製作される。
これら第1および第2端子部用絶縁部材6A−1、6A−2は、それぞれ、第1および第2端子部用貫通孔3Ae−1、3Ae−2に、そのフランジ部6Ab−1、6Ab−2がコア2A内に収納されるように、筒部6Aa−1、6Aa−2が嵌め込まれている。そして、第1および第2端子部5A−1、5A−2は、それぞれ、第1および第2端子部用絶縁部材6A−1、6A−2の筒部6Aa−1、6Aa−2内を挿通し、コア2Aの外部に引き出されている。
このような巻線素子1Aは、例えば、次のように製造される。図4において、まず、導体部材11が、該導体部材11の幅よりも長い幅を持つ長尺な帯状のコイル用絶縁部材12と、その長尺方向の両端部分を所定の長さだけ残して、重ねられ、これによって一方面被覆部12aが形成される(図4(A))。続いて、コイル用絶縁部材12における幅方向の両側部12d−1、12d−2を折り返すことによってコイル用絶縁部材12における幅方向の両端および他方面における幅方向の両側部が前記絶縁部材における幅方向の両側部で被覆され、これによって一対の第1および第2端部被覆部12b−1、12b−2ならびに一対の第1および第2他方面被覆部12c−1、12c−2が形成される(図4(B))。図4に示す例では、このように1枚の長尺な帯状のコイル用絶縁部材12から、一方面被覆部12a、一対の第1および第2端部被覆部12b−1、12b−2ならびに一対の第1および第2他方面被覆部12c−1、12c−2が形成されている。導体部材11には、例えば、銅等の金属(合金を含む)が用いられ、コイル用絶縁部材12には、例えば、PEN(ポリエチレンナフタレート)やPPS(ポリフェニレンサルファイド)等の耐熱性を有した樹脂が用いられる。
次に、導体部材11における長尺方向の一方端部が、導体部材11でコイル1Aを形成した場合におけるコイル1Aの軸方向に直交する平面に交差する方向に、例えば直交する方向(コイル1Aの軸方向)に、折り曲げられ、これによって一方の端子部5A(例えば、第1端子部5A−1)が形成される。次に、コイル用絶縁部材12によって被覆された導体部材11が、中心(軸芯)から所定の径だけ離間した位置から所定回数だけ巻き回され、空芯コイルが製作される(図4(C))。
次に、導体部材11の他方端部が、コイル1Aの軸方向に直交する平面に交差する方向に、例えば直交する方向(コイル1Aの軸方向)に、折り曲げられ、これによって他方の端子部5A(例えば、第2端子部5A−2)が形成される。
次に、第1および第2端子部用絶縁部材6A−1、6A−2の筒部6Aa−1、6Aa−2が、それぞれ、第1および第2端子部用貫通孔3Ae−1、3Ae−2に、そのフランジ部6Ab−1、6Ab−2の一方表面が第1コア部材3Aの内面に当接するように、嵌め込まれる。そして、第1および第2端子部5A−1、5A−2が、それぞれ、第1および第2端子部用絶縁部材6A−1、6A−2の筒部6Aa−1、6Aa−2内に挿通されて、第1コア部材3Aの外部に引き出され、コイル1Aが、例えば、第1および第2コア部材3A、4Aの各内面によって形成された空間内に収容され(図4(D))、これによってリアクトルDAが構成される(図4(E))。
このような各工程によって、第1実施形態における巻線素子DAが製造される。
以上、説明したように、このような構成の巻線素子DAは、主にコア2Aの第1および第2端子部用連通孔3Ae−1、3Ae−2の各内周面に対し、筒部6Aa−1、6Aa−2によって第1および第2端子部5A−1、5A−2の絶縁をより確実に図ることができるとともに、主にコア2Aの第1および第2端子部用連通孔3Ae−1、3Ae−2の各内周面に対し、フランジ部6Ab−1、6Ab−2によって第1および第2端子部5A−1、5A−2の根本付近の絶縁をより確実に図ることができる。そして、第1および第2端子部用絶縁部材6A−1、6A−2は、コア2A全体を覆うのではなく、連通孔の周囲だけを覆うので、比較的小さな部品となる。このため、仮に射出成型で製造される場合であっても、肉厚をより薄くすることが可能となる。したがって、このような構成の巻線素子DAは、より小型化を図ることができる。
また、本実施形態の巻線素子DAでは、フランジ部6Ab−1、6Ab−2が筒部6Aa−1、6Aa−2における軸方向の一方端部に形成されるので、フランジ部6Ab−1、6Ab−2の面がコイル1Aに最も近接することとなる。フランジ部6Ab−1、6Ab−2が軸方向における一方端部から他方端部の間に形成される場合では、コイル1Aとフランジ部6Abとの間にデットスペースが生じるが、このような構成の巻線素子DAは、前記デットスペースが生じない。このため、このような構成の巻線素子DAは、筒部6Aaおよびフランジ部6Abを持つ端子部用絶縁部材6Aを用いた巻線素子DAの中で最も小型化を図ることができる。
また、本実施形態の巻線素子DAは、ポット型であってフラットワイズ型であるので、コイル1Aに給電した場合に生じる磁束がコイル1Aの軸方向に略沿うことになる。このため、このような構成の巻線素子DAは、エッジワイズ型に較べて、いわゆる渦電流を低減することができ、効率の向上を図ることができる。
また、本実施形態の巻線素子DAは、第1および第2端子部5A−1、5A−2がコイル1Aと一体であるので、外力や加熱等のストレスに対し耐性を高めることができる。このため、このような構成の巻線素子DAは、その信頼性を高めることができる。
そして、このような本実施形態における巻線素子DAは、リアクトルとして、例えば、電鉄車両、電気自動車、ハイブリッド自動車、無停電電源、太陽光発電等の産業用インバータ用、あるいは、エアコン、冷蔵庫、洗濯機等の大出力家電用インバータ用として好適に利用することができる。
次に、別の実施形態について説明する。
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態における巻線素子の構成を示す図である。図5(A)は、斜視図であり、図5(B)は、上面図である。
第1実施形態の巻線素子DAでは、第1および第2端子部用貫通孔3Ae−1、3Ae−2は、円柱状の孔であったが、第2実施形態の巻線素子DBでは、図5に示すように、第1および第2端子部用貫通孔3Be−1、3Be−2は、角柱状の孔である。このため、第2実施形態の巻線素子DBは、これら第1および第2端子部用貫通孔3Be−1、3Be−2の形状と、第1および第2端子部用絶縁部材6B−1、6B−2における筒部6Ba−1、6Ba−2の外形形状とを除き、第1実施形態の巻線素子DAと同様である。すなわち、第2実施形態の巻線素子DBにおけるコイル1B、コア2Bの第2コア部材4B、ならびに、第1および第2端子部5B−1、5B−2は、それぞれ、第1実施形態の巻線素子DAにおけるコイル1A、コア2Aの第2コア部材4A、ならびに、第1および第2端子部5A−1、5A−2と同様であるので、それらの説明を省略する。また、コア2Bの第1コア部材3Bは、上述のように、第1および第2端子部用貫通孔3Be−1、3Be−2が角柱状の孔である点を除き、第1実施形態の巻線素子DAにおけるコア2Aの第1コア部材3Aと同様であるので、その説明を省略する。
第2実施形態の第1および第2端子部用絶縁部材6B−1、6B−2は、第1および第2端子部5B−1、5B−2と同数であって、それぞれ、第1および第2端子部用貫通孔3Be−1、3Be−2の形状に応じた外形形状である筒部(中空の柱状部材)6Ba−1、6Ba−2と、筒部6Ba−1、6Ba−2の外周から立設され径方向外側へ延びるフランジ部6Bb−1、6Bb−2とを備えている。本実施形態では、図5に示すように、第1および第2端子部用貫通孔3Be−1、3Be−2は、角柱状の孔であることから、筒部6Ba−1、6Ba−2は、断面矩形の筒形状(中空の角柱形状)である。また、フランジ部6Bb−1、6Bb−2は、平面視にて、任意の形状であってよいが、本実施形態では矩形形状である。そして、これらフランジ部6Bb−1、6Bb−2は、本実施形態では、第1実施形態と同様に、筒部6Ba−1、6Ba−2における軸方向の一方端に形成されている。
これら第1および第2端子部用絶縁部材6B−1、6B−2は、それぞれ、第1および第2端子部用貫通孔3Be−1、3Be−2に、そのフランジ部6Bb−1、6Bb−2がコア2B内に収納されるように、筒部6Ba−1、6Ba−2が嵌め込まれている。そして、第1および第2端子部5B−1、5B−2は、それぞれ、第1および第2端子部用絶縁部材6B−1、6B−2の筒部6Ba−1、6Ba−2内を挿通し、コア2Bの外部に引き出されている。
このような構成の第2実施形態における巻線素子DBは、第1実施形態における巻線素子DAと同様の作用効果を奏する。
次に、別の実施形態について説明する。
(第3実施形態)
図6は、第3実施形態における巻線素子の構成を示す斜視図である。第1実施形態の巻線素子DAでは、第1および第2端子部用貫通孔3Ae−1、3Ae−2は、第1コア部材3Aの円板部3Aaに形成されたが、第3実施形態の巻線素子DCでは、図6に示すように、第1端子部用貫通孔3Ce−1が第1コア部材3Aの円板部3Aaに形成され、第2端子部用貫通孔2Ceがコア2Aの周面に形成される。
このような第3実施形態の巻線素子DCにおけるコイル1Cは、一対の第1および第2端子部5C−1、5C−2のうちのいずれか一方、例えば第2端子部5C−2が第1実施形態の巻線素子DAにおけるコイル1Aと異なる点を除き、第1実施形態の巻線素子DAと同様である。すなわち、第3実施形態の巻線素子DCにおけるコイル1Cは、コイル用絶縁部材12で絶縁された帯状の長尺な導体部材11を、該導体部材11の幅方向がコイル1Cの軸AX方向に沿うように所定の回数だけ巻回することによって構成される。そして、第1端子部5C−1として、導体部材11における長尺方向の一方端が、コイル1Cの軸方向に直交する平面に交差する方向に折り曲げられて引き出され、その他方端は、そのまま、第2端子部5C−2として引き出される。
第3実施形態の巻線素子DCにおけるコア2Cは、第2端子部用貫通孔2Ceの点を除き、第1実施形態の巻線素子DAにおけるコア2Aと同様である。すなわち、第3実施形態の巻線素子DCにおけるコア2Cは、第1および第2コア部材3C、4Cを備えている。第3実施形態の巻線素子DCにおける第1コア部材3Cは、第1実施形態の第1コア部材3Aにおける円板部3Aaおよび円筒部3Abと同様な円板部3Caおよび円筒部3Cbを備えている。そして、第3実施形態の巻線素子DCにおける第1コア部材3Cは、円板部3Caに、第1端子部5C−1のコイル1Cからの引出方向に沿った方向(本実施形態では該円板部3Caをコイル1Cの軸方向)で貫通するように円柱状の第1端子部用貫通孔3Ce−1が形成され、円筒部3Cbの周面に、内外を連通(貫通)するように角柱状の第1切欠部3Ce−2が形成されている。また、第3実施形態の巻線素子DCにおける第2コア部材4Cは、第1実施形態の第2コア部材4Aにおける円板部4Aaおよび円筒部4Abと同様な円板部4Caおよび円筒部4Cbを備えている。そして、第3実施形態の巻線素子DCにおける第2コア部材4Cは、円筒部4Cbの周面に、内外を連通(貫通)するように角柱状の第2切欠部4Ceが形成されている。これら第1および第2コア部材3C、4Cによってコア2Cを形成する場合に、これら第1切欠部3Ce−2と第2切欠部4Ceとが一致するように、これら第1および第2コア部材3C、4Cの円筒部3Cb、4Cbは、その端面同士で重ね合わせられる。これによって、これら第1および第2切欠部3Ce−2、4Ceが第2端子部用貫通孔2Ceとされる。
第3実施形態の第1端子部用絶縁部材6C−1は、第1実施形態の第1端子部用絶縁部材6A−1と同形であり、その説明を省略する。第3実施形態の第2端子部用絶縁部材6C−2は、第2端子部用貫通孔2Ceの形状に応じた外形形状である筒部(中空の柱状部材)6Ca−2と、筒部6Ca−2の外周から立設され径方向外側へ延びるフランジ部6Cb−2とを備えている。本実施形態では、図6に示すように、第2端子部用貫通孔2Ceは、角柱状の孔であることから、筒部6Ca−2は、断面矩形の筒形状(中空の角柱形状)である。また、フランジ部6Cb−2は、平面視にて、任意の形状であってよいが、本実施形態では矩形形状である。そして、これらフランジ部6Cb−2は、本実施形態では、第1実施形態と同様に、筒部6Ca−2における軸方向の一方端に形成されている。
これら第1および第2端子部用絶縁部材6C−1、6C−2は、それぞれ、第1端子部用貫通孔3Ce−1および第2端子部用貫通孔2Ceに、そのフランジ部6Cb−1、6Cb−2がコア2C内に収納されるように、筒部6Ca−1、6Ca−2が嵌め込まれている。そして、第1および第2端子部5C−1、5C−2は、それぞれ、第1および第2端子部用絶縁部材6C−1、6C−2の筒部6Ca−1、6Ca−2内を挿通し、コア2Cの外部に引き出されている。
このような構成の第3実施形態における巻線素子DCは、第1実施形態における巻線素子DAと同様の作用効果を奏する。
次に、別の実施形態について説明する。
(第4実施形態)
図7は、第4実施形態における巻線素子の構成を示す斜視図である。第3実施形態の巻線素子DCでは、第1端子部用貫通孔3Ce−1は、円柱状の孔であったが、第4実施形態の巻線素子DDでは、図7に示すように、第1端子部用貫通孔3De−1は、第2実施形態の第1端子部用貫通孔3Be−1と同様な角柱状の孔である。このため、第4実施形態の巻線素子DDは、この第1端子部用貫通孔3De−1の形状と、第1端子部用絶縁部材6D−1における筒部6Da−1の外形形状とを除き、第3実施形態の巻線素子DCと同様である。すなわち、第4実施形態の巻線素子DDにおけるコイル1D、コア2Dの第2コア部材4D、第1および第2端子部5D−1、5D−2、ならびに、第2端子部用絶縁部材6D−2は、それぞれ、第3実施形態の巻線素子DCにおけるコイル1C、コア2Cの第2コア部材4C、第1および第2端子部5C−1、5C−2、ならびに、第2端子部用絶縁部材6C−2と同様であるので、それらの説明を省略する。また、コア2Dの第1コア部材3Dは、上述のように、第1端子部用貫通孔3De−1が角柱状の孔である点を除き、第3実施形態の巻線素子DCにおけるコア2Cの第1コア部材3Cと同様であるので、その説明を省略する。
第4実施形態の第1端子部用絶縁部材6D−1は、第1端子部用貫通孔3De−1の形状に応じた外形形状である筒部(中空の柱状部材)6Da−1と、筒部6Da−1の外周から立設され径方向外側へ延びるフランジ部6Db−1とを備えている。本実施形態では、図7に示すように、第1端子部用貫通孔3De−1は、角柱状の孔であることから、筒部6Da−1は、断面矩形の筒形状(中空の角柱形状)である。また、フランジ部6Db−1は、平面視にて、任意の形状であってよいが、本実施形態では矩形形状である。そして、これらフランジ部6Db−1は、本実施形態では、第1実施形態と同様に、筒部6Da−1における軸方向の一方端に形成されている。このように第4実施形態の第1端子部用絶縁部材6D−1は、第2実施形態の第1端子部用絶縁部材6B−1と同形である。
これら第1および第2端子部用絶縁部材6D−1、6D−2は、それぞれ、第1および第2端子部用貫通孔3De−1、2Deに、そのフランジ部6Db−1、6Db−2がコア2B内に収納されるように、筒部6Da−1、6Da−2が嵌め込まれている。そして、第1および第2端子部5D−1、5D−2は、それぞれ、第1および第2端子部用絶縁部材6D−1、6D−2の筒部6Da−1、6Da−2内を挿通し、コア2Dの外部に引き出されている。
このような構成の第4実施形態における巻線素子DDは、第1実施形態における巻線素子DAと同様の作用効果を奏する。
次に、別の実施形態について説明する。
(第5実施形態)
図8は、第5実施形態における巻線素子の構成を示す斜視図である。図9は、第5実施形態の巻線素子におけるダブルパンケーキ型コイルの製造方法を説明するための図である。
第1実施形態の巻線素子DAでは、コイル1Aは、シングルパンケーキ型コイルであったが、第5実施形態の巻線素子DEでは、図8および図9に示すように、ダブルパンケーキ型コイルである。
このような第5実施形態の巻線素子DEにおけるコイル1Eは、絶縁された長尺な導体部材11を、該導体部材11の幅方向がコイル1Eの軸AX方向に沿うように所定の回数だけ巻回することによって構成される上層サブコイルと、前記上層サブコイルと接続されるとともに前記上層サブコイルと軸AX方向に積層され、絶縁された長尺な導体部材11を、該導体部材11の幅方向がコイル1Eの軸AX方向に沿うように所定の回数だけ巻回することによって構成される下層サブコイルとを備えたコイルである。そして、第1および第2端子部5E−1、5E−2として、導体部材11における長尺方向の両端が、そのまま、引き出される。
このようなダブルパンケーキ構造のコイル1Eは、例えば、次の各工程によって製造することができる。まず、所定の厚さを有するとともにコイル用絶縁部材12で絶縁された帯状の長尺な導体部材11が用意される。続いて、図9(A)に示すように、この絶縁された導体部材11がその両端からそれぞれ巻回され、その中間部分が例えば塑性成形によって帯状の導体部材11を含む平面内において長尺方向と直交する方向(幅方向)に所定角度だけ曲げられる。続いて、図9(B)に示すように、この曲げた部分が円柱状の中心巻枠CFの外周面に当接され、この絶縁された導体部材11が、この当接点を起点に、所定の巻き数となるように、中心巻枠CFの外周面に巻き付けられ、中心巻枠CFを巻枠としてDP巻き(ダブルパンケーキ巻き)される。続いて、絶縁された導体部材11が中心巻枠CFに巻き付け終わると、図9(C)に示すように、中心巻枠CFが抜き取られて、コイル1Eが形成される。そして、導体部材11の巻き残しが第1および第2端子部5E−1、5E−2となる。このような手順によって、ダブルパンケーキ構造のコイル1Eが作製される。
このような構成のコイル1Eは、ダブルパンケーキ型であるので、図8および図9(C)に示すように、第1および第2端子部5E−1、5E−2の取り出し位置を1箇所に揃えることができる。
第5実施形態の巻線素子DEでは、上述のように、コイル1Eがダブルパンケーキ型であるので、第1および第2端子部5E−1、5E−2の取り出し位置が1箇所になることから、第5実施形態の巻線素子DEにおけるコア2Eは、端子部用貫通孔2Eeが1つである点を除き、第1実施形態の巻線素子DAにおけるコア2Aと同様である。すなわち、第5実施形態の巻線素子DEにおけるコア2Eは、第1および第2コア部材3E、4Eを備えている。第5実施形態の巻線素子DEにおける第1コア部材3Eは、第1実施形態の第1コア部材3Aにおける円板部3Aaおよび円筒部3Abと同様な円板部3Eaおよび円筒部3Ebを備えている。そして、第5実施形態の巻線素子DEにおける第1コア部材3Eは、円筒部3Ebの周面に、内外を連通(貫通)するように角柱状の第1切欠部3Eeが形成されている。また、第5実施形態の巻線素子DEにおける第2コア部材4Eは、第1実施形態の第2コア部材4Aにおける円板部4Aaおよび円筒部4Abと同様な円板部4Eaおよび円筒部4Ebを備えている。そして、第5実施形態の巻線素子DEにおける第2コア部材4Eは、円筒部4Ebの周面に、内外を連通(貫通)するように角柱状の第2切欠部4Eeが形成されている。これら第1および第2コア部材3E、4Eによってコア2Eを形成する場合に、これら第1切欠部3Eeと第2切欠部4Eeとが一致するように、これら第1および第2コア部材3E、4Eの円筒部3Eb、4Ebは、その端面同士で重ね合わせられる。これによって、これら第1および第2切欠部3Ee、4Eeが端子部用貫通孔2Eeとされる。
第5実施形態の端子部用絶縁部材6Eは、端子部用貫通孔2Eeの形状に応じた外形形状である筒部(中空の柱状部材)6Eaと、筒部6Eaの外周から立設され径方向外側へ延びるフランジ部6Ebとを備えている。本実施形態では、図8に示すように、端子部用貫通孔2Eeは、角柱状の孔であることから、筒部6Eaは、断面矩形の筒形状(中空の角柱形状)である。また、フランジ部6Ebは、平面視にて、任意の形状であってよいが、本実施形態では矩形形状である。そして、これらフランジ部6Ebは、本実施形態では、第1実施形態と同様に、筒部6Eaにおける軸方向の一方端に形成されている。
この端子部用絶縁部材6Eは、端子部用貫通孔2Eeに、そのフランジ部6Ebがコア2E内に収納されるように、筒部6Eaが嵌め込まれている。そして、第1および第2端子部5E−1、5E−2は、ともに端子部用絶縁部材6Eの筒部6Ea内を挿通し、コア2Eの外部に引き出されている。
このような構成の第5実施形態における巻線素子DEは、第1実施形態における巻線素子DAと同様の作用効果を奏する。
次に、別の実施形態について説明する。
(第6実施形態)
第6実施形態にかかる巻線素子は、外部に引き出される端子部を備えるコイルと、前記コイルによって生じた磁束を通すとともに内外を連通する貫通孔を形成した、前記コイルを収納するコアとを備える巻線素子であって、前記貫通孔を含む前記コアの内表面に形成された絶縁膜をさらに備えるものである。上述の第1ないし第5実施形態と同様に、このような巻線素子は、リアクトルに用いられ、あるいは、トランスに用いられるが、ここでは、主に、リアクトルの場合について例示する。なお、多相のリアクトルやトランスも同様に構成することが可能である。
図10は、第6実施形態における巻線素子の構成を示す断面図である。第1ないし第5実施形態の巻線素子DA;DB;DC;DD;DEでは、端子部5A;5B;5C;5D;5Eを絶縁するために、端子部用貫通孔3Ae;3Be;3Ce−1、2Ce;3De−1、2De;2Eeに端子部用絶縁部材6A;6B;6C;6D;6Eが装着されたが、第6実施形態の第1および第2態様の巻線素子DF;DGでは、図10に示すように、コア2F、2Gの内表面に絶縁膜(絶縁皮膜)7が形成される。
このため、第6実施形態の第1および第2態様の巻線素子DF;DGは、外部に引き出される一対の第1および第2端子部5F−1、5F−2;5G−1、5G−2を備えるコイル1F;1Gと、コイル1F;1Gによって生じた磁束を通すとともに内外を連通する第1および第2端子部用貫通孔3Fe−1、3Fe−2;3Ge−1、3Ge−2を形成した、コイル1F;1Gを収納するコア2F;2Gとを備えて構成されている。これら第6実施形態の第1および第2態様の巻線素子DF;DGにおけるコイル1F;1Gおよびコア2F;2Gは、それぞれ、第1実施形態の巻線素子DAにおけるコイル1Aおよびコア2Aと同様であるので、その説明を省略する。
そして、第6実施形態の第1態様の巻線素子DFでは、コア2Fの内面上に絶縁膜7が形成されている。この絶縁膜7の形成方法は、特に限定されないが、塗装法の適用が好ましく、中でも皮膜欠陥低減や膜厚均質性向上、エッジ部の膜厚確保、塗装効率の向上、VOC(Volatile Organic Compounds)削減などの観点から電着塗装法の適用が好ましい。このような電着塗装法は、例えば、特開昭51−114602号公報、特開平1−255697号公報等に開示されている。この公報に開示の電着絶縁法は、大略、被電着体を一方電極とした一対の電極を電着液に浸漬し、前記一対の電極に直流電圧を印加することによって、前記被電着体に電着絶縁層を形成する方法である。この方法によれば、前記一対の電極に直流電圧を印加すると、電着液中の荷電絶縁粒子が電気泳動して前記被電着体上に析出し、これによって、前記被電着体に電着絶縁層が形成される。電着液には、例えばアクリル樹脂等のカルボキシル基(COO−)を持つ樹脂やアミノアクリル樹脂等のアミノ基(NH+)を持つ樹脂等を含む水溶液が用いられる。また、第1および第2コア部材3F、4F;3G、4Gの内表面に絶縁膜を電着法によって形成する場合に、前記公報に開示されているように、補助電極が用いられてもよく、また、電着液を循環させる循環ポンプやノズルが用いられてもよい。
なお、前記電着塗装法で形成される絶縁膜7の材質は、特に限定されないが、上記で例示したアクリル樹脂やアミノアクリル樹脂の他に、エポキシ樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂ならびにその各種変性体や共重合体を好ましく使用することができる。また、電着塗装法では、被電着物は、電着槽から引き上げられ後に、加熱される。これによって絶縁膜7が完成する。
また、第6実施形態の第2態様の巻線素子DGでは、コア2Gの内表面上に形成される絶縁膜7は、公知の常套手段である、絶縁材料溶液中に前記コアを浸漬する成膜法によって形成される。このような成膜法は、例えば、特開昭52−21006号公報等に開示されている。この公報に開示の成膜法は、大略、有機樹脂塗膜形成物質の水性組成物により被塗物を被覆する方法であって、当該組成物中に乳化または分散された有機樹脂塗膜形成物質を主成分とし、有機樹脂塗膜形成に有効なイオンを供給し得る酸、および、前記酸の作用を助ける助剤としての酸化剤を含む酸性の水性組成物に、前記被塗物を浸漬した後に、前記被塗物を前記水性組成物から取り出すことによって、前記被塗物に有機樹脂膜を形成する方法である。前記有機樹脂塗膜形成物質(水溶性樹脂物質)には、例えばポリアクリル酸等が用いられる。また、前記被塗物は、金属が好ましく、前記イオンは、被塗物金属から前記酸によって生成されることが好ましい。
このような構成の第6実施形態の第1および第2態様の巻線素子DF;DGでは、第1および第2端子部用貫通孔3Fe−1、3Fe−2;3Ge−1、3Ge−2を含むコア2F;2Gの内表面に絶縁膜7が存在するので、第1および第2端子部5F−1、5F−2;5G−1、5G−2を絶縁するための絶縁部材を別途必要としない。このため、このような構成の巻線素子DF;DGは、巻線素子全体のサイズを維持しつつ、端子部5F;5Gの根本付近における絶縁をより確実に図ることができる。
また、第1態様の巻線素子DFでは、絶縁膜7は、塗装法によって、好適には電着塗装法によって成膜されるので、より緻密な絶縁膜7が形成される。このため、このような構成の第1態様の巻線素子DFは、端子部5Fの根本付近における絶縁をより確実に図ることができる。
また、第2態様の巻線素子DGでは、絶縁膜7は、絶縁材料溶液中にコア2Gを浸漬することによって成膜されるので、より緻密な絶縁膜が形成される。このため、このような構成の第2態様の巻線素子DGは、端子部5Gの根本付近における絶縁をより確実に図ることができる。
次に、別の実施形態について説明する。
(第7実施形態)
図11は、第7実施形態における巻線素子の構成を示す斜視図である。図12は、第7実施形態の第1態様の巻線素子におけるコイルの構成を示す断面図である。図13は、第7実施形態の第2態様の巻線素子におけるコイルの構成を示す断面図である。図12および図13は、軸AXから径方向端部までの巻線素子DH;DIの一部断面図である。
第1ないし第6実施形態における巻線素子DA〜DGは、主にリアクトル用として説明したが、第7実施形態における第1および第2態様の巻線素子DH;DIは、主にトランス用として、あるいは、多相リアクトル用として用いられる。このため、第7実施形態の第1および第2態様の巻線素子DH;DIにおけるコイル1H;1Iが複数、図11ないし図13に示す例では、2個である点を除き、第1ないし第6実施形態における巻線素子DA〜DGと同様である。
より具体的には、第7実施形態の第1態様の巻線素子DHは、一対の端子部5Ha(5Ha−1、5Ha−2)を持つ1個の第1コイル1H−1および一対の端子部5Hb(5Hb−1、5Hb−2)を持つ1個の第2コイル1H−2と、コイル1H−1、1H−2に通電(給電)した場合にコイル1H−1、1H−2によって生じた磁束を通すコア2Hと、前記2組、一対の端子部5Ha−1、5Ha−2;5Hb−1、5Hb−2のそれぞれを絶縁するための1組の端子部用絶縁部材6H(6H−1、6H−2)とを備えて構成される。これら第7実施形態の第1態様の巻線素子DHにおけるコア2Hおよび端子部用絶縁部材6Hは、図5に示す、第2実施形態の巻線素子DBにおけるコア2Bおよび端子部用絶縁部材6Bと同様であるので、その説明を省略する。
第1および第2コイル1H−1、1H−2は、それぞれ、第1および第2実施形態のコイル1A、1Bと同様に、コイル用絶縁部材12で絶縁された帯状の長尺な導体部材11を所定の回数だけ巻き回したものである。第1および第2コイル1H−1、1H−2は、図12に示すように、軸AX方向に積層されており、第1および第2コイル1H−1、1H−2間には、コイル間用絶縁部材8Hが介在されている。第1および第2コイル1H−1、1H−2は、このコイル間用絶縁部材8Hによって絶縁される。
巻線素子DHがトランスとして用いられる場合には、第1コイル1H−1は、例えば1次コイルとして用いられ、第2コイル1H−2は、例えば2次コイルとして用いられる。また、巻線素子DHが多相リアクトルとして用いられる場合には、第1コイル1H−1は、例えば1つ目の相用のコイルとして用いられ、第2コイル1H−2は、例えば2つ目の相用のコイルとして用いられる。
このように第1および第2コイル1H−1、1H−2は、コイル間用絶縁部材8Hを挟んで軸AX方向に積層されるので、巻線素子DHの大径化を抑制することができる。
また、第7実施形態の第2態様の巻線素子DIは、より具体的には、一対の端子部5Ia(5Ia−1、5Ia−2)を持つ1個の第1コイル1I−1および一対の端子部5Ib(5Ib−1、5Ib−2)を持つ1個の第2コイル1I−2と、コイル1I−1、1I−2に通電(給電)した場合にコイル1I−1、1I−2によって生じた磁束を通すコア2Iと、前記2組、一対の端子部5Ia−1、5Ia−2;5Ib−1、5Ib−2のそれぞれを絶縁するための1組の端子部用絶縁部材6I(6I−1、6I−2)とを備えて構成される。これら第7実施形態の第2態様の巻線素子DIにおけるコア2Iおよび端子部用絶縁部材6Iは、図5に示す、第2実施形態の巻線素子DBにおけるコア2Bおよび端子部用絶縁部材6Bと同様であるので、その説明を省略する。
第1および第2コイル1I−1、1I−2は、それぞれ、第1および第2実施形態のコイル1A、1Bと同様に、コイル用絶縁部材12で絶縁された帯状の長尺な導体部材11を所定の回数だけ巻き回したものである。第1および第2コイル1I−1、1I−2は、図13に示すように、径方向に積層されており、第1および第2コイル1I−1、1I−2間には、コイル間用絶縁部材8Iが介在されている。第1および第2コイル1I−1、1I−2は、このコイル間用絶縁部材8Iによって絶縁される。
巻線素子DIがトランスとして用いられる場合には、第1コイル1I−1は、例えば1次コイルとして用いられ、第2コイル1I−2は、例えば2次コイルとして用いられる。また、巻線素子DIが多相リアクトルとして用いられる場合には、第1コイル1I−1は、例えば1つ目の相用のコイルとして用いられ、第2コイル1I−2は、例えば2つ目の相用のコイルとして用いられる。
このように第1および第2コイル1I−1、1I−2は、コイル間用絶縁部材8Iを挟んで径方向に積層されるので、巻線素子DIの肉厚化を抑制することができる。
このような構成の第7実施形態における第1および第2態様の巻線素子DH;DIは、第1実施形態における巻線素子DAと同様の作用効果を奏する。
また、第7実施形態における第1および第2態様の巻線素子DH;DIは、端子部用絶縁部材6H;6Iに代え、第6実施形態における第1および第2態様の巻線素子DF;DGと同様な、コア2H;2Iの内表面上に形成される絶縁膜7を備えてもよい。
次に、実際に作製した巻線素子の実施例およびその比較例について説明する。
(実施例および比較例)
第1ないし第4実施例ならびに第1比較例の各巻線素子におけるコイル1およびコア2は、同一の規格で製作された。第2比較例の巻線素子におけるコイル1は、これらと同一規格で製作され、コア2は、これらと同一の材料および製法であるが、このコイル1全体を包み込む後述の絶縁部材のために、やや大型で作製された。より具体的には、コイル1は、幅20mmで厚さ0.3mmである純銅を30ターン巻回すことによって製作されたフラットワイズ型である。コア2は、上述したように、軸AX方向で2分割された同寸法の第1および第2コア部材3、4を突き合わせることによって製作された。
実施例1の巻線素子は、上述した図5に示す第2実施形態の構成であり、端子部用絶縁部材6Bの各厚さ(筒部6Baの厚さおよびフランジ部6Bbの厚さ)は、0.5mmであり、当該巻線素子の全高は、40mmである。
実施例2の巻線素子は、上述した図7に示す第4実施形態の構成であり、端子部用絶縁部材6Dの各厚さは、0.5mmであり、当該巻線素子の全高は、40mmである。
実施例3の巻線素子は、上述した図10に示す第6実施形態の第1態様の構成であり、絶縁膜7は、電着塗装法によって膜厚0.02mmで成膜され、当該巻線素子の全高は、40mmである。
実施例4の巻線素子は、上述した図10に示す第6実施形態の第2態様の構成であり、絶縁膜7は、絶縁材料溶液中に前記コアを浸漬することによって膜厚0.02mmで成膜され、当該巻線素子の全高は、40mmである。
比較例1の巻線素子は、上述した図5に示す第2実施形態のコイル1Bおよびコア2Bを備えて構成されたが、端子部用絶縁部材6Bを備えず、端子部5の絶縁処置は、実施しなかった。
比較例2の巻線素子は、上述した図5に示す第2実施形態のコイル1Bおよびコア2Bを備えて構成されたが、端子部用絶縁部材6Bを備えず、端子部5の絶縁処置として、コイル1B全体を包み込む絶縁部材が製作され、この絶縁部材でコイル1B全体を包み込むことで実施した。この絶縁部材の厚さは、射出成形するために1.5mmであり、このため、当該巻線素子の全高は、42.5mmである。
このような実施例1ないし実施例4ならびに比較例1および比較例2の各巻線素子に対し、60Hzの交流で絶縁耐圧試験を行った。その結果は、次の通りである。
実施例1;絶縁破壊電圧4.5kV
実施例2;絶縁破壊電圧4.3kV
実施例3;絶縁破壊電圧3.2kV
実施例4;絶縁破壊電圧3.3kV
比較例1;絶縁破壊電圧0.5kV
比較例2;絶縁破壊電圧4.6kV
このように実施例1ないし実施例4の各巻線素子は、リアクトルとして充分な絶縁耐圧を有しているが、比較例1の巻線素子における絶縁耐圧は、リアクトルとして不充分であった。
また、比較例2の巻線素子は、リアクトルとして充分な絶縁耐圧を有しているが、実施例1ないし実施例4に対し、その全高が約6%高く、比較例2の巻線素子は、実施例1ないし実施例4より大型である。
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。