以下、本発明の実施の形態について、油圧ショベルを例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。なお、実施の形態では、後述する油圧ショベル1の走行方向を前,後方向とし、油圧ショベル1の走行方向と直交する方向を左,右方向として説明する。
図1ないし図7は本発明の第1の実施の形態を示している。図中、建設機械の代表例である油圧ショベル1は、前,後方向に自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、上部旋回体3の前側に設けられ掘削作業等を行う作業装置4とを含んで構成されている。下部走行体2と上部旋回体3とは、油圧ショベル1の車体を構成している。油圧ショベル1は、上部旋回体3が旋回動作を行ったときに、後述する中央ウエイト部12の後面12Aの旋回半径が小さくなるように設定された後方小旋回型の油圧ショベルとして構成されている。
上部旋回体3は、ベースとなる旋回フレーム5を有している。旋回フレーム5は、センタフレーム(図示せず)と、センタフレームの左,右両側に設けられた左,右のサイドフレーム5A(図1に左側のみ図示)とを有し、下部走行体2上に旋回可能に取付けられている。旋回フレーム5の前側には、作業装置4のフート部が俯仰動可能に取付けられている。左サイドフレーム5Aの後端5Bは、後述するキャブ6の後面6Bと前,後方向で一致する位置に配置されている(図2参照)。
旋回フレーム5の左前側には、キャブ6が設けられ、旋回フレーム5の右側には、燃料を貯える燃料タンク7と、油圧ショベル1に搭載された油圧アクチュエータ(図示せず)に供給される作動油を貯える作動油タンク8とが設けられている。旋回フレーム5の後側には、作業装置4との重量バランスをとる後述のカウンタウエイト11が設けられている。また、カウンタウエイト11よりも前側には、原動機、油圧ポンプ、冷却ファン(いずれも図示せず)、熱交換装置9(図7参照)等の搭載機器と、これら熱交換装置9等の搭載機器をカウンタウエイト11と共に覆う外装カバー10とが設けられている。
キャブ6は、作業装置4の左側に隣接して旋回フレーム5の左前側に設けられている。キャブ6は、油圧ショベル1を操作するためにオペレータが搭乗するものである。キャブ6は、前面6A、後面6B、左側面6C、右側面6D、および天面6Eによりボックス状に形成され、その内部には運転席、走行用レバー、および作業用操作レバー(いずれも図示せず)が設けられている。キャブ6の左側面6Cには、オペレータがキャブ6内に搭乗するためのドア6C1が設けられている。
外装カバー10は、カウンタウエイト11の前側に位置して上部旋回体3の旋回フレーム5に搭載されている。外装カバー10は、熱交換装置9等の搭載機器を上方から覆う上面カバー10Aと、上面カバー10Aに形成された点検用の開口部(図示せず)を開閉可能に覆う原動機カバー10Bと、搭載機器を左側方から覆う左側面カバー10Cと、搭載機器を右側方から覆う右側面カバー10Dとを含んで構成されている。左側面カバー10Cおよび右側面カバー10Dには、冷却ファンによって熱交換装置9に供給される冷却風が通過する通風口10Eが形成されている。
次に、第1の実施の形態に用いられるカウンタウエイト11について説明する。
カウンタウエイト11は、旋回フレーム5の後側に設けられ、作業装置4との重量バランスをとるものである。カウンタウエイト11は、中央ウエイト部12と、左張出し部13と、右張出し部16とを含んで構成されている。これら中央ウエイト部12、左張出し部13、右張出し部16からなるカウンタウエイト11は、鋳造によって一体形成され、その内部には後述の補強部材19が内蔵されている。
中央ウエイト部12は、カウンタウエイト11のベースとなるもので、上部旋回体3(車体)の左,右方向の中央部に配置されている。中央ウエイト部12の後面12Aは、上部旋回体3の旋回中心を中心とした円弧状(湾曲状)に形成されている。これにより、油圧ショベル1は、上部旋回体3が下部走行体2上で旋回したときに、カウンタウエイト11(中央ウエイト部12)の後面12Aの旋回半径(後端旋回半径)が小さくなるように設定された後方小旋回型の油圧ショベルとして構成されている。このため、油圧ショベル1は、上部旋回体3の旋回中心から中央ウエイト部12の後面12Aまでの距離が小さく設定されている。また、中央ウエイト部12の上面12Bは、平坦面として形成され、外装カバー10を構成する原動機カバー10Bの上面と同一平面を形成している。
カウンタウエイト11の左張出し部13は、中央ウエイト部12の左,右方向の左端部12Cから前側に張出して設けられている。左張出し部13は、中央ウエイト部12の左端部12Cの上端側から上部旋回体3の前方方向に延びる左上梁部14と、中央ウエイト部12の左端部12Cの下端側から前方方向に延びる左下梁部15とにより構成されている。図2に示すように、後述する左上梁部14の先端14Eはキャブ6の後面6Bまで延在し、後述する左下梁部15の先端15Eは左サイドフレーム5Aの後端5Bまで延在している。これにより、カウンタウエイト11には、中央ウエイト部12の左端部12Cと、左張出し部13の左上梁部14と、左下梁部15とによって囲まれた左開口部11Aが形成され、この左開口部11Aは、左側面カバー10Cによって開,閉される構成となっている。
左上梁部14は、四角形の断面形状を有する四角柱状に形成され、中央ウエイト部12の左端部12Cの上端側からキャブ6の左後角部(左側面6Cと後面6Bとが交わる角部)に向けて延びている。左上梁部14は、上部旋回体3の旋回中心を中心として円弧状に湾曲しつつ中央ウエイト部12の左端部12Cから前方に延びる湾曲部14Aと、湾曲部14Aの先端からキャブ6の左後角部に向けて直線的に延びる直線部14Bとを有している。
湾曲部14Aのうち中央ウエイト部12の左端部12Cと交わる基端側の角部は、中央ウエイト部12に近づくほど上,下方向の幅寸法が大きくなる広幅角部14Cとなっている。この広幅角部14Cは、中央ウエイト部12に対して片持ち支持された左上梁部14の質量を支えている。また、湾曲部14Aの外側面14Dは、中央ウエイト部12の後面12Aに滑らかに連続する円弧面を形成している。一方、直線部14Bの先端14Eは自由端となり、キャブ6の後面6Bと僅かな隙間をもって対面している。また、直線部14Bの内側面14Fには、後述する2個の上インサートナット19Dのねじ穴が開口している。
左下梁部15は、三角形の断面形状を有する三角柱状に形成され、中央ウエイト部12の左端部12Cの下端側から左サイドフレーム5Aの後端5Bに向けて延びている。左下梁部15は、上部旋回体3の旋回中心を中心として中央ウエイト部12の左端部12Cから円弧状に湾曲しつつ前方に延びる湾曲部15Aと、湾曲部15Aの先端から左サイドフレーム5Aの後端5Bに向けて直線的に延びる直線部15Bとを有している。
湾曲部15Aのうち中央ウエイト部12の左端部12Cと交わる基端側の角部は、中央ウエイト部12に近づくほど上,下方向の幅寸法が大きくなる広幅角部15Cとなっている。この広幅角部15Cは、中央ウエイト部12に対して片持ち支持された左下梁部15を支えている。また、湾曲部15Aの外側面15Dは、中央ウエイト部12の後面12Aに滑らかに連続する円弧面を形成している。一方、直線部15Bの先端15Eは自由端となり、左サイドフレーム5Aの後端5Bと僅かな隙間をもって対面している。直線部15Bの上面15Fには、後述する2個の下インサートナット19Eのねじ穴が開口している。
カウンタウエイト11の右張出し部16は、中央ウエイト部12の左,右方向の右端部12Dから前側に張出して設けられている。右張出し部16は、中央ウエイト部12の右端部12Dの上端側から上部旋回体3の前方方向に延びる右上梁部17と、中央ウエイト部12の右端部12Dの下端側から前方方向に延びる右下梁部18とにより構成されている。右上梁部17の先端は、例えば作動油タンク8の後面まで延在し、右下梁部18の先端は右サイドフレームの後端(図示せず)まで延在している。これにより、カウンタウエイト11には、中央ウエイト部12の右端部12Dと、右張出し部16の右上梁部17と、右下梁部18とによって囲まれた右開口部11Bが形成され、この右開口部11Bは、右側面カバー10Dによって開,閉される構成となっている。
右上梁部17は、四角形の断面形状を有する四角柱状に形成され、中央ウエイト部12の右端部12Dの上端側から作動油タンク8の後面に向けて延びている。右上梁部17は、上部旋回体3の旋回中心を中心として円弧状に湾曲しつつ中央ウエイト部12の右端部12Dから前方に延びる湾曲部17Aと、湾曲部17Aの先端から作動油タンク8の後面に向けて直線的に延びる直線部17Bとを有している。
湾曲部17Aのうち中央ウエイト部12の右端部12Dと交わる基端側の角部は、中央ウエイト部12に近づくほど上,下方向の幅寸法が大きくなる広幅角部(図示せず)となっている。また、湾曲部17Aの外側面17Cは、中央ウエイト部12の後面12Aに滑らかに連続する円弧面を形成している。直線部17Bの先端17Dは自由端となり、作動油タンク8の後面と僅かな隙間をもって対面している。
右下梁部18は、三角形の断面形状を有する三角柱状に形成され、中央ウエイト部12の右端部12Dの下端側から右サイドフレームの後端(図示せず)に向けて延びている。右下梁部18は、上部旋回体3の旋回中心を中心として中央ウエイト部12の右端部12Dから円弧状に湾曲しつつ前方に延びる湾曲部18Aと、湾曲部18Aの先端から右サイドフレームの後端に向けて直線的に延びる直線部18Bとを有している。
湾曲部18Aのうち中央ウエイト部12の右端部12Dと交わる基端側の角部は、中央ウエイト部12に近づくほど上,下方向の幅寸法が大きくなる広幅角部18Cとなっている。また、湾曲部18Aの外側面18Dは、中央ウエイト部12の後面12Aに滑らかに連続する円弧面を形成している。直線部18Bの先端18Eは自由端となり、例えば右サイドフレームの後端と僅かな隙間をもって対面している。
次に、カウンタウエイト11に内蔵された補強部材19について、図4ないし図6を参照して説明する。
補強部材19は、カウンタウエイト11を構成する中央ウエイト部12および左張出し部13に内蔵されている。補強部材19は、中央ウエイト部12および左張出し部13内に一体に鋳込まれることにより、左張出し部13の左上梁部14および左下梁部15の芯金として機能し、左上梁部14および左下梁部15の中央ウエイト部12に対する取付強度を高めるものである。
補強部材19は、例えば円形の断面形状を有する円柱状の棒状体をU字状に折曲げることにより形成されている。即ち、補強部材19は、左張出し部13の左上梁部14内を前,後方向に延びる上補強部19Aと、中央ウエイト部12内に位置し、上補強部19Aの後端から下方に向けて延びる縦補強部19Bと、左張出し部13の左下梁部15内に位置し、縦補強部19Bの下端から前方に延びる下補強部19Cとを有している。なお、補強部材は、円形の断面形状を有する棒状体に限らず、多角形の断面形状を有する角柱状の棒状体を用いてもよい。
2個の上インサートナット19Dは、補強部材19の上補強部19Aに設けられている。上インサートナット19Dは、中心部にねじ穴が形成された円筒体からなり、上補強部19Aに溶接等の手段を用いて固着されている。補強部材19がカウンタウエイト11内に鋳込まれた状態で、上インサートナット19Dのねじ穴は、左上梁部14を構成する直線部14Bの内側面14Fに開口している。上インサートナット19Dには、後述するサポート部材20の縦板20Aが取付けられる。
2個の下インサートナット19Eは、補強部材19の下補強部19Cに設けられている。下インサートナット19Eは、中心部にねじ穴が形成された円筒体からなり、下補強部19Cに溶接等の手段を用いて固着されている。補強部材19がカウンタウエイト11内に鋳込まれた状態で、下インサートナット19Eのねじ穴は、左下梁部15を構成する直線部15Bの上面15Fに開口している。下インサートナット19Eには、サポート部材20の下板20Bが取付けられる。
上インサートナット19Dおよび下インサートナット19Eを有する補強部材19は、カウンタウエイト11を鋳造する鋳型(図示せず)のうち、中央ウエイト部12および左張出し部13に対応する空間内に鋳型の表面から浮かせた状態で配置される。このとき、上,下のインサートナット19D,19Eに螺着したボルト(図示せず)を鋳型に固定することにより、中央ウエイト部12および左張出し部13に対応する鋳型の空間内に補強部材19を浮かせた状態で保持することができる。この状態で、鋳型内に溶融金属(湯)を充填することにより、中央ウエイト部12および左張出し部13に補強部材19が鋳込まれたカウンタウエイト11を鋳造成形することができる。
このように、鋳造成形されたカウンタウエイト11は、中央ウエイト部12の左端部12Cから前方に張出す左張出し部13に、補強部材19が内蔵されている。これにより、中央ウエイト部12に対して片持ち支持された左張出し部13の左上梁部14および左下梁部15を、補強部材19によって支えることができ、左上梁部14および左下梁部15の中央ウエイト部12に対する取付強度が高められている。従って、鋳造成形されたカウンタウエイト11の内部応力を除去するため、カウンタウエイト11を鋳型から取出して放置している間に、左張出し部13を構成する左上梁部14および左下梁部15の先端側が垂下がりや歪みを生じるのを抑えることができる構成となっている。
他の部材としてのサポート部材20は、カウンタウエイト11の左張出し部13に取付けられている。即ち、サポート部材20は、カウンタウエイト11に内蔵された補強部材19の上インサートナット19Dと下インサートナット19Eとに取付けられ、左張出し部13の左上梁部14と左下梁部15との間を上,下方向に延びて配置されている。図6に示すように、サポート部材20は、上,下方向に延びる縦板20Aと、縦板20Aの下端に固定され前,後方向に延びる下板20Bとにより構成されている。縦板20Aの上端には1個のボルト挿通孔20Cが形成され、下板20Bには前,後方向に離間して2個のボルト挿通孔20Dが形成されている。
縦板20Aのボルト挿通孔20Cに挿通されたボルト21は、左上梁部14を構成する直線部14Bの内側面14Fに開口した上インサートナット19Dのねじ穴に螺着される。下板20Bの各ボルト挿通孔20Dに挿通されたボルト22は、左下梁部15を構成する直線部15Bの上面15Fに開口した下インサートナット19Eのねじ穴にそれぞれ螺着される。これにより、サポート部材20は、カウンタウエイト11に内蔵された補強部材19の上,下のインサートナット19D,19Eに取付けられ、左上梁部14と左下梁部15との間を上,下方向に延びた状態で固定されている。
サポート部材20の縦板20Aには、上,下方向に離間して2個の蝶番20Eが取付けられている。これら2個の蝶番20Eには、外装カバー10を構成する左側面カバー10Cが取付けられている。これにより、左側面カバー10Cは、カウンタウエイト11の左開口部11Aを開,閉可能に覆っている。
本実施形態による油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、次に油圧ショベル1の動作について説明する。
オペレータは、キャブ6に搭乗して運転席に座る。この状態で原動機を始動して走行用レバーを操作することにより、下部走行体2を駆動して油圧ショベル1を前進または後退させることができる。また、オペレータが作業用操作レバーを操作することにより、上部旋回体3を旋回させつつ作業装置4を用いて土砂の掘削作業等を行うことができる。
ここで、後方小旋回型の油圧ショベル1は、上部旋回体3の旋回中心からカウンタウエイト11の中央ウエイト部12の後面12Aまでの距離が小さく設定されている。このため、カウンタウエイト11は、左,右方向の中央部に位置する中央ウエイト部12と、中央ウエイト部12の左端部12Cから前方に張出す左張出し部13と、中央ウエイト部12の右端部12Dから前方に張出す右張出し部16とを鋳造成形することにより、必要な重量を確保している。
ここで、中央ウエイト部に対して張出し部が片持ち支持されたカウンタウエイトを鋳造成形した場合には、内部応力を除去するために鋳型から取出したカウンタウエイトを放置している間に、張出し部の先端側が垂下がりや歪みを生じてしまう虞がある。
これに対し、本実施の形態によるカウンタウエイト11は、中央ウエイト部12の左端部12Cから前方に張出す左張出し部13に、補強部材19が内蔵されている。これにより、中央ウエイト部12に対して片持ち支持された左張出し部13の左上梁部14および左下梁部15を、補強部材19によって支えることができ、左上梁部14および左下梁部15の中央ウエイト部12に対する取付強度を高めることができる。
従って、鋳造成形されたカウンタウエイト11の内部応力を除去するため、カウンタウエイト11を鋳型から取出して放置している間に、左張出し部13を構成する左上梁部14および左下梁部15の先端側が垂下がりや歪みを生じるのを抑制することができる。この結果、中央ウエイト部12に対する左張出し部13の取付位置を、補強部材19によって一定に保つことができ、カウンタウエイト11の信頼性を高めることができる。また、カウンタウエイト11の外観美を高めることができる。
しかも、補強部材19には上インサートナット19D、下インサートナット19Eが設けられ、上インサートナット19Dのねじ穴は、左張出し部13を構成する左上梁部14の内側面14Fに開口し、下インサートナット19Eのねじ穴は、左張出し部13を構成する左下梁部15の上面15Fに開口している。これにより、これら上,下のインサートナット19D,19Eに対し、ボルト21,22を用いてサポート部材20を取付けることができる。この結果、サポート部材20を用いてカウンタウエイト11の左張出し部13に左側面カバー10Cを取付けることができ、中央ウエイト部12の左端部12Cと、左張出し部13の左上梁部14と、左下梁部15とによって囲まれた左開口部11Aを、左側面カバー10Cによって開,閉可能に覆うことができる。
この場合、左張出し部13を構成する左上梁部14および左下梁部15は、中央ウエイト部12に片持ち支持されているが、中央ウエイト部12に対する左上梁部14および左下梁部15の取付強度は、内蔵された補強部材19によって補強されている。これにより、左上梁部14を支えるために左上梁部14の基端側に形成された広幅角部14Cの上,下方向の幅寸法を低減できる。同様に、左下梁部15の質量を支えるために左下梁部15の基端側に形成された広幅角部15Cの上,下方向の幅寸法を低減できる。従って、中央ウエイト部12の左端部12Cと、左上梁部14と、左下梁部15とによって囲まれた左開口部11Aの開口面積を大きく確保することができる。この結果、左開口部11Aを通じて熱交換装置9等に対するメンテナンス作業を行うときに、作業空間を大きく確保することにより、メンテナンスの作業性を高めることができる。
かくして、本実施の形態による油圧ショベル1は、カウンタウエイト11が、左,右方向の中央部に位置する中央ウエイト部12と、中央ウエイト部12から前方に向けて張出し先端側が自由端となった左張出し部13および右張出し部16とを有し、左張出し部13には補強部材19が内蔵して設けられ、補強部材19には、左張出し部13にサポート部材20を取付けるための上インサートナット19Dおよび下インサートナット19Eが設けられている。
これにより、中央ウエイト部12に対して片持ち支持の状態で取付けられた左張出し部13の取付強度を、補強部材19によって高めることができる。従って、鋳造成形されたカウンタウエイト11の内部応力を除去するため、カウンタウエイト11を鋳型から取出して放置している間に、左張出し部13の先端側が垂下がりや歪みを生じるのを抑制することができる。この結果、中央ウエイト部12に対する左張出し部13の取付位置を一定に保つことができ、カウンタウエイト11の信頼性を高めることができる。また、カウンタウエイト11の外観美を高めることができる。
また、カウンタウエイト11に内蔵された補強部材19には、上インサートナット19D、下インサートナット19Eが設けられているので、これら上,下のインサートナット19D,19Eに対し、ボルト21,22を用いてサポート部材20を取付けることができる。この結果、サポート部材20を用いてカウンタウエイト11の左張出し部13に左側面カバー10Cを取付けることができる。
さらに、本実施の形態では、カウンタウエイト11の左張出し部13は、中央ウエイト部12の左端部12Cの上端側から前方に向けて延びる左上梁部14と、中央ウエイト部12の左端部12Cの下端側から前方に向けて延びる左下梁部15とからなり、補強部材19は、左上梁部14内を前,後方向に延びる上補強部19Aと、中央ウエイト部12内に位置して上補強部19Aの後端から下方に向けて延びる縦補強部19Bと、左下梁部15内に位置して縦補強部19Bの下端から前方に延びる下補強部19Cとからなっている。これにより、左上梁部14は上補強部19Aによって補強することができ、左下梁部15は下補強部19Cによって補強することができる。
次に、図8および図9は本発明の第2の実施の形態を示し、第2の実施の形態の特徴は、補強部材が上補強部と縦補強部とにより構成されていることにある。なお、第2の実施の形態では、第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略する。
図中、カウンタウエイト11の左張出し部13を構成する左下梁部15の直線部15Bには、前,後方向に離間して2個のナット部材23が内蔵されている。これら2個のナット部材23は、中心部にねじ穴が形成された円筒体からなり、後述する補強部材24とは別部材として形成されている。各ナット部材23は、補強部材24とは別に左下梁部15の直線部15Bに鋳込まれ、各ナット部材23のねじ穴は、直線部15Bの上面15Fに開口している。
補強部材24は、カウンタウエイト11の中央ウエイト部12および左張出し部13の左上梁部14に内蔵されている。補強部材24は、中央ウエイト部12および左張出し部13の左上梁部14内に一体に鋳込まれることにより、左上梁部14の芯金として機能し、中央ウエイト部12に対する左上梁部14の取付強度を高めている。
補強部材24は、例えば円柱状の棒状体をL字状に折曲げることにより形成されている。即ち、補強部材24は、左張出し部13の左上梁部14内を前,後方向に延びる上補強部24Aと、中央ウエイト部12内に位置し、上補強部24Aの後端から下方に向けて延びる縦補強部24Bとにより構成されている。
2個のインサートナット24Cは、補強部材24の上補強部24Aに設けられている。インサートナット24Cは、中心部にねじ穴が形成された円筒体からなり、上補強部24Aに溶接等の手段を用いて固着されている。補強部材24がカウンタウエイト11内に鋳込まれた状態で、インサートナット24Cのねじ穴は、左上梁部14を構成する直線部14Bの内側面14Fに開口している。
サポート部材20の縦板20Aに形成されたボルト挿通孔20Cには、ボルト21が挿通され、このボルト21は、左上梁部14(直線部14B)の内側面14Fに開口したインサートナット24Cのねじ穴に螺着される。一方、サポート部材20の下板20Bに形成されたボルト挿通孔20Dには、ボルト22が挿通され、このボルト22は、左下梁部15(直線部15B)の上面15Fに開口したナット部材23のねじ穴に螺着される。これにより、サポート部材20は、左上梁部14と左下梁部15との間を上,下方向に延びた状態で左張出し部13に固定されている。
第2の実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、中央ウエイト部12に対する左上梁部14の取付強度を、補強部材24によって高めることができる。従って、左張出し部13を構成する左上梁部14および左下梁部15のうち、中央ウエイト部12に対して垂下がりや歪みを生じ易い左上梁部14を、補強部材24によって支持することができる。この結果、中央ウエイト部12に対する左下梁部15の取付位置を一定に保つことができ、カウンタウエイト11の信頼性を高めることができる。
次に、図10および図11は本発明の第3の実施の形態を示し、第3の実施の形態の特徴は、補強部材が、上補強部と、下補強部と、外側補強部とにより構成されていることにある。なお、第3の実施の形態では、第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略する。
図中、補強部材25は、カウンタウエイト11を構成する左張出し部13に内蔵されている。補強部材25は、左張出し部13を構成する左上梁部14および左下梁部15に鋳込まれることにより、これら左上梁部14および左下梁部15の芯金として機能し、左上梁部14および左下梁部15の中央ウエイト部12に対する取付強度を高める。
補強部材25は、円柱状の棒状体をU字状に折曲げることにより形成され、左上梁部14内を前,後方向に延びる上補強部25Aと、左下梁部15内を前,後方向に延びる下補強部25Bと、上補強部25Aの前端と下補強部25Bの前端との間を連結して上,下方向に延びる外側補強部25Cとを有している。補強部材25の外側補強部25Cは、左上梁部14の先端14E側と左下梁部15の先端15E側との間でカウンタウエイト11の外部に配置されている。
2個の上インサートナット25Dは、補強部材25の上補強部25Aに設けられている。上インサートナット25Dは、中心部にねじ穴が形成された円筒体からなり、補強部材25がカウンタウエイト11内に鋳込まれた状態で、上インサートナット25Dのねじ穴は、左上梁部14(直線部14B)の内側面14Fに開口している。一方、2個の下インサートナット25Eは、補強部材25の下補強部25Bに設けられている。下インサートナット25Eは、中心部にねじ穴が形成された円筒体からなり、補強部材25がカウンタウエイト11内に鋳込まれた状態で、下インサートナット25Eのねじ穴は、左下梁部15(直線部15B)の上面15Fに開口している。
サポート部材20(縦板20A)のボルト挿通孔20Cに挿通されたボルト21は、左上梁部14(直線部14B)の内側面14Fに開口した上インサートナット25Dのねじ穴に螺着される。一方、サポート部材20(下板20B)のボルト挿通孔20Dに挿通されたボルト22は、左下梁部15(直線部15B)の上面15Fに開口した下インサートナット25Eのねじ穴に螺着される。これにより、サポート部材20は、左上梁部14と左下梁部15との間を上,下方向に延びた状態で左張出し部13に固定されている。
第3の実施の形態による油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、中央ウエイト部12に対して片持ち支持された左張出し部13の左上梁部14および左下梁部15を、補強部材25によって支えることができ、左上梁部14および左下梁部15の中央ウエイト部12に対する取付強度を高めることができる。この結果、左張出し部13を構成する左上梁部14および左下梁部15の先端側が垂下がりや歪みを生じるのを抑制することができ、カウンタウエイト11の信頼性を高めることができる。
また、カウンタウエイト11に内蔵された補強部材25に設けられた上,下のインサートナット25D,25Eに対し、ボルト21,22を用いてサポート部材20を取付けることができるので、サポート部材20を用いてカウンタウエイト11の左張出し部13に左側面カバー10Cを取付けることができる。
なお、第3の実施の形態では、カウンタウエイト11に内蔵された補強部材25の上,下のインサートナット25D,25Eにサポート部材20を取付け、このサポート部材20に蝶番20Eを介して左側面カバー10Cを取付けた場合を例示している。
しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば図12および図13に示す変形例のように、左上梁部14の先端14E側と左下梁部15の先端15E側との間でカウンタウエイト11の外部に配置された補強部材25の外側補強部25Cに、2個の蝶番26Aが設けられた他のサポート部材26を取付け、これら2個の蝶番26Aに左側面カバー10Cを取付ける構成としてもよい。この場合には、補強部材25の上,下のインサートナット25D,25Eに取付けられるサポート部材20を、左側面カバー10C以外の部材を取付けるために利用することができる。
また、第1の実施の形態では、カウンタウエイト11の左張出し部13に補強部材19を内蔵した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、カウンタウエイト11の右張出し部16にも補強部材を内蔵する構成としてもよい。このことは、第2,第3の実施の形態についても同様である。
また、第1の実施の形態では、補強部材19に設けられた上,下のインサートナット19D,19Eに、他の部材としてのサポート部材20を取付けた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば油圧ショベル1の現在位置を確認するためのGPSアンテナ等を取付ける構成としてもよい。このことは、第2,第3の実施の形態についても同様である。
さらに、実施の形態では、クローラ式の下部走行体2を備えた油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、ホイール式の下部走行体を備えた油圧ショベルに適用してもよい。