JP6954053B2 - 捺染用インクジェットインク組成物、インクセット及び記録方法 - Google Patents
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Description
銅又はクロムを含む染料と、
常温で液体であって、標準沸点が190℃以上260℃以下である環状アミドを5質量%以上30質量%以下と、
を含み、記録媒体上でのCIELAB色空間で定義される色相角∠h°が260°以上310°以下の範囲となる。
前記染料が、550nm以上600nm以下の範囲に最大吸収波長を有する染料であってもよい。
前記染料が、C.I.リアクティブブルー13及びC.I.アシッドブルー193の一種以上であってもよい。
前記染料の含有量が、3質量%以上15質量%以下であってもよい。
前記捺染用インクジェットインク組成物のpHが、6以上10以下であってもよい。
前記捺染用インクジェットインク組成物中に、ベンゾトリアゾールを含まなくてもよい。
前記捺染用インクジェットインク組成物中に、標準沸点が180℃以上260℃以下であるアルキルポリオールを含み、
前記アルキルポリオールの含有量が、10質量%以上25質量%以下であってもよい。
アルカリ剤、酸及びヒドロトロピー剤の少なくとも一種を含有する前処理組成物を布帛に付与する前処理工程と、上述の捺染用インクジェットインク組成物を用いて前記布帛に印捺する印捺工程と、を含む。
本実施形態の捺染用インクジェットインク組成物(以下、捺染用インクジェットインク組成物、インク組成物等ともいう)は、後述する本実施形態の前処理組成物を布帛に付着させ、その後に当該捺染用インクジェットインク組成物をインクジェット法により布帛に付着させて使用される。まず、捺染用インクジェットインク組成物について説明する。
本実施形態の捺染用インクジェットインク組成物は、銅又はクロムを含む染料を含む。
本実施形態の捺染用インクジェットインク組成物に含まれる染料は、その構造中に銅(Cu)又はクロム(Cr)を含む。銅又はクロムを含む染料としては、染料分子の構造中に、銅原子又はクロム原子が1つ以上含まれる染料であり、例えば、銅錯体、銅錯塩、クロム錯体、クロム錯塩等の構造を分子中に含む化合物が挙げられる。そのような染料としては、例えば、フタロシアニン環骨格を有する染料、銅又はクロム原子に対して配位結合し得る官能基を有する染料、等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
C.I.アシッドブルー193:式(5)
本実施形態の捺染用インクジェットインク組成物に含まれる染料は、記録媒体上でのCIELAB色空間で定義される色相角∠h°が260°以上310°以下の範囲となる。
角」において、「4.2 明度,クロマ及び色相のそれぞれに関係する量」の式(11)によって計算される色相の相関量(JISZ8113の03087を合わせて参照)でもあり、「CIE1976L*a*b*」、及び、「CIELAB」は、互いに言い換えることができるとされている。
(2)捺染対象の布帛にインクを塗布する
(3)加熱、スチーム等により、十分に反応させる
(4)布帛を洗浄する
(5)分光測色を行う
そして、得られた測定結果から、色相角∠h°を算出して、捺染用インクジェットインク組成物の「記録媒体上での」CIELAB色空間で定義される色相角∠h°とする。ここで、記録媒体は、白色であることが好ましい。
部における色相角の変化をほとんど起こすことがなくさらに好適である。
C.I.リアクティブブルー15最大吸収波長:672nm
C.I.リアクティブブルー72最大吸収波長:668nm
C.I.アシッドブルー193最大吸収波長:577nm
C.I.ダイレクトブルー87最大吸収波長:666nm
本実施形態の捺染用インクジェットインク組成物は、常温(好ましくは25℃、より好ましくは23℃)で液体であって、標準沸点(1atmにおける)が190℃以上260℃以下である環状アミドを含む。係る環状アミドは、上述した染料を溶解させやすく、かつ、捺染用インクジェットインク組成物の固化や乾燥を抑制するという機能を備える。また、標準沸点が190℃以上260℃以下であることにより、環状アミドの揮発を十分に抑制し、これに伴い保湿性が高まる結果、捺染用インクジェットインク組成物の固化や乾燥を抑制する効果がより顕著に得られる。
本実施形態の捺染用インクジェットインク組成物は、上記成分の他に、以下の成分を含むことができる。
本実施形態の捺染用インクジェットインク組成物は、標準沸点が180℃以上260℃以下であるアルキルポリオールを含んでもよい。係るアルキルポリオールを含むことにより、捺染用インクジェットインク組成物の保湿性をさらに高め、インクジェット法による吐出安定性を優れたものとしつつ、長期放置時による記録ヘッドからの水分蒸発を効果的に抑制することができる。また、これにより、ノズルの目詰まりを生じやすい種の染料を用いた場合でも、放置回復性や連続吐出安定性を良好に維持することができる。
プロパンジオール[214℃]、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール[210℃]、3−メチル−1,3−ブタンジオール[203℃]、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール[244℃]、3−メチル−1,5−ペンタンジオール[250℃]、2−メチルペンタン−2,4−ジオール[197℃]、ジエチレングリコール[245℃]、ジプロピレングリコール[232℃]等が挙げられる。なお、括弧内の数値は標準沸点を表す。これらのアルキルポリオールは、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
本実施形態に係る捺染用インクジェットインク組成物は、界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤は、捺染用インクジェットインク組成物の表面張力を低下させ記録媒体との濡れ性(布帛等への浸透性)を調整、向上させるために用いることができる。界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも使用することができ、さらにこれらは併用してもよい。また、界面活性剤の中でも、アセチレングリコール系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤を好ましく用いることができる。
キサンの市販品としては、例えば、BYK−306、BYK−307、BYK−333、BYK−341、BYK−345、BYK−346、BYK−348(以上商品名、BYK社製)、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6020、X−22−4515、KF−6011、KF−6012、KF−6015、KF−6017(以上商品名、信越化学工業社製)が挙げられる。
本実施形態のインク組成物は、pHを調整する目的で、pH調整剤を添加することができる。pH調整剤としては、特に限定されないが、酸、塩基、弱酸、弱塩基の適宜の組み合わせが挙げられる。そのような組み合わせに用いる酸、塩基の例としては、無機酸として、硫酸、塩酸、硝酸等、無機塩基として水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニア等が挙げられ、有機塩基として、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン(THAM)等が挙げられ、有機酸として、アジピン酸、クエン酸、コハク酸、乳酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(BES)、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、モルホリノエタンスルホン酸(MES)、カルバモイルメチルイミノビス酢酸(ADA)、ピペラジン−1,4−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES)、N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸(ACES)、コラミン塩酸、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸(TES)、アセトアミドグリシン、トリシン、グリシンアミド、ビシン等のグッドバッファー、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液等を用いてもよい。さらに、これらのうち、pH調整剤の一部又は全部として、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等の第三級アミン、及び、アジピン酸、クエン酸、コハク酸、乳酸等のカルボキシル基含有有機酸、が含まれることが、pH緩衝効果をより安定に得ることができるため好ましい。
本実施形態に係る捺染用インクジェットインク組成物は、水を含んでもよい。水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、及び蒸留水等の純水、並びに超純水のような、イオン性不純物を極力除去したものが挙げられる。また、紫外線照射又は過酸化水素の添加等によって滅菌した水を用いると、捺染用インクジェットインク組成物を長期保存する場合に細菌類や真菌類の発生を抑制することができる。
くは50質量%以上である。なお捺染用インクジェットインク組成物中の水というときには、例えば、原料として用いる樹脂粒子分散液、添加する水を含むものとする。水の含有量が30質量%以上であることにより、捺染用インクジェットインク組成物を比較的低粘度とすることができる。また、水の含有量の上限は、捺染用インクジェットインク組成物の総量に対して、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは85質量%以下であり、さらに好ましくは80質量%以下である。
本実施形態の捺染用インクジェットインク組成物は、標準沸点が190℃未満又は260℃超の環状アミド、含窒素複素環式化合物や、水溶性有機溶剤を含んでもよい。標準沸点が190℃未満又は260℃超の環状アミドとしては例えば、ε−カプロラクタム[136℃]等のラクタム類が挙げられ、水溶性有機溶剤としては、γ−ブチロラクトン[204℃]等のラクトン類、ベタイン化合物等が挙げられる。さらに、グリコールエーテルを含んでもよく、これにより組成物の濡れ性や浸透速度を制御できる場合がある。ため、画像の発色性を向上できる場合がある。
捺染用インクジェットインク組成物の保湿剤として、あるいは、染料の染着性を向上させる染着助剤として、尿素類を使用してもよい。尿素類の具体例としては、尿素、エチレン尿素、テトラメチル尿素、チオ尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。尿素類を含有する場合には、その含有量は、インク組成物の全質量に対して、1質量%以上10質量%以下とすることができる。
捺染用インクジェットインク組成物の固化、乾燥を抑制する目的で、糖類を使用してもよい。糖類の具体例としては、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール(ソルビット)、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、及びマルトトリオース等が挙げられる。
捺染用インクジェットインク組成物中の不要なイオンを除去する目的で、キレート化剤
を使用してもよい。キレート化剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸及びそれらの塩類(エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム塩、又は、エチレンジアミンのニトリロトリ酢酸塩、ヘキサメタリン酸塩、ピロリン酸塩、若しくはメタリン酸塩等)等が挙げられる。
捺染用インクジェットインク組成物は、防腐剤、防かび剤を使用してもよい。防腐剤、防かび剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンゾイソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン(ゼネカ社のプロキセルCRL、プロキセルBDN、プロキセルGXL、プロキセルXL.2、プロキセルTN、プロキセルLV)、4−クロロ−3−メチルフェノール(バイエル社のプリベントールCMK等)などが挙げられる。
さらに上記以外の成分として、例えば、防錆剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤、溶解助剤など、インクジェット用のインク組成物において通常用いることができる添加剤を含有してもよい。
ル骨格を有する化合物としては、1,2,3−ベンゾトリアゾール(互変異性体を含む)、カルボキシベンゾトリアゾール(任意のベンゼン環部位にカルボキシル基が1個以上結合したもの)、1,2,3−ベンゾトリアゾールの塩(対イオンとして、ナトリウム、カリウム、リチウム等)、及び、ヒドロキシベンゾトリアゾール(水和物を含む)等が挙げられる。なお、これらの化合物の市販品としては、例えば、城北化学工業株式会社製、商品名:BT−120、CBT−1、JCL−400等が挙げられ、その他にも試薬として市販されているものが挙げられる。
本実施形態の捺染用インクジェットインク組成物は、pHが5.8以上10.5以下、好ましくは6.0以上10.0以下、より好ましくは6.0以上9.5以下、さらに好ましくは7.0以上8.5以下であることが好ましい。捺染用インクジェットインク組成物のpHがこの範囲であれば、インク組成物中における染料の保存安定性が向上し、得られる画像の発色性や色相の変化を生じにくいので、所定のデザインの色を良好に再現することができる。
本実施形態に係るインク組成物は、上記した各成分を、任意な順序で混合し、必要に応じて濾過等をして不純物を除去することにより得られる。各成分の混合方法としては、メカニカルスターラー、マグネチックスターラー等の撹拌装置を備えた容器に順次材料を添加して撹拌混合する方法が好適に用いられる。
本実施形態の捺染用インクジェットインク組成物によれば、色相角∠h°が260°以上310°以下の範囲の色を、複数色の混色によることなく、捺染物において発色性良く表現でき、かつ、経時的な色相変化(耐光性)を抑制することができる。すなわち、銅又はクロムを含む染料を含むこと、及び、かかる染料を標準沸点が190℃以上260℃以下である環状アミドを5質量%以上30質量%以下で含むことにより、十分な量で溶解させることができること、により、捺染物において良好な発色性を得ることができる。そして、色相角∠h°が260°以上310°以下の範囲の色を複数色の混色によることなく表現でき、経時的な色相変化(耐光性)を抑制することができる。
上述の本実施形態の捺染用インクジェットインク組成物は、他の任意の色の染料を含む捺染用インクジェットインク組成物、及び、後述する前処理組成物と、任意の組成物数、任意の色数で組み合わせたインクセットを構成することができる。
的な色相変化(耐光性)を抑制することができる。すなわち、少なくとも銅又はクロムを含む染料を含むことにより、捺染物において良好な発色性を得ることができる。そして、C.I.リアクティブブルー13及びC.I.アシッドブルー193から選択される一種以上を用いる場合には、複数色の混色によることなく、色相角∠h°が260°以上310°以下の範囲の色を表現できるため、経時的な色相変化(耐光性)を顕著に抑制することができる。
本実施形態に係る記録方法は、上述した捺染用インクジェットインク組成物を布帛に印捺する工程(以下、「印捺工程」ともいう。)を含む。以下、本実施形態に係る記録方法に含む工程及び含み得る工程について、工程毎に説明する。
本実施形態の捺染用インクジェットインク組成物は、記録媒体に付着させて使用される。記録媒体としては、特に限定されないが、各種の布帛が挙げられる。布帛を構成する素材としては、特に限定されず、例えば、綿、麻、羊毛、絹等の天然繊維、ポリプロピレン、ポリエステル、アセテート、トリアセテート、ポリアミド、ポリウレタン等の合成繊維、ポリ乳酸等の生分解性繊維などが挙げられ、これらの混紡繊維であってもよい。布帛としては、上記に挙げた繊維を、織物、編物、不織布等いずれの形態にしたものでもよい。
本実施形態で使用する布帛は、これらのうち綿、麻等のセルロースを含む繊維で形成されたものがより好ましい。このような布帛を用いることで、捺染用インクジェットインク組成物のよりすぐれた染着性を得ることができる。
本実施形態に係る記録方法は、布帛にアルカリ剤、酸及びヒドロトロピー剤の少なくとも一種を含有する前処理組成物を付与する前処理工程を備えていてもよい。これにより染料の染着性が一層向上する。
前処理組成物は、アルカリ剤、酸及びヒドロトロピー剤の少なくとも一方を含有する。これらの成分の前処理組成物中の含有量は、布帛の種類などに応じて適宜設定することができ、特に制限されるものではない。
H調整剤、界面活性剤、粘度調整剤、酸化防止剤、防黴剤等、捺染における前処理組成物に通常用いられる成分を含有してもよい。また、上述の捺染用インクジェットインク組成物とは異なり、防錆剤(ベンゾトリアゾール骨格を有するものを含む)を含有してもよい。
本実施形態に係る記録方法は、上述した捺染用インクジェットインク組成物を布帛に印捺する印捺工程を含む。具体的には、インクジェット記録方式により吐出されたインク滴を布帛に付着させて、布帛に画像を形成する。インクジェット記録方式としては、いずれの方式でもよく、荷電偏向方式、コンティニュアス方式、オンデマンド方式(ピエゾ式、バブルジェット(登録商標)式)などが挙げられる。これらのインクジェット記録方式の中でも、ピエゾ式のインクジェット記録装置を用いる方式が特に好ましい。
本実施形態に係る記録方法は、上記のインク組成物が印捺された布帛を熱処理する熱処理工程を含んでもよい。熱処理工程を行うことにより、染料が繊維に良好に染着する。熱処理工程は従来公知の方法を用いることができ、例えば、HT法(高温スチーミング法)、HP法(高圧スチーミング法)、サーモゾル法等が挙げられる。
本実施形態に係る記録方法は、捺染物を洗浄する洗浄工程を含んでもよい。洗浄工程は、上記の熱処理工程の後に行うことが好ましく、繊維に染着していない染料を効果的に除去することができる。洗浄工程は、例えば水を用いて行うことができ、必要に応じてソーピング処理を行ってもよい。
本実施形態に係る記録方法は、上述の前処理工程の後、上述の印捺工程の前に、布帛に付与された前処理組成物を乾燥する前処理組成物の乾燥工程を含んでいてもよい。前処理組成物の乾燥は、自然乾燥で行ってもよいが、乾燥速度の向上という観点から、加熱を伴
う乾燥であることが好ましい。前処理組成物の乾燥工程において加熱を伴う場合に、その加熱方法は特に限定されるものではないが、例えば、ヒートプレス法、常圧スチーム法、高圧スチーム法、及びサーモフィックス法が挙げられる。また、加熱の熱源としては、以下に限定されないが、例えば赤外線(ランプ)が挙げられる。
本実施形態の記録方法によれば、印捺工程で上述の捺染用インクジェットインク組成物を用いることにより、色相角∠h°が260°以上310°以下の範囲の色を、複数色の混色によることなく、捺染物において発色性良く表現でき、かつ、経時的な色相変化(耐光性)を抑制でき、吐出信頼性(目詰まり放置回復性や連続吐出安定性)を良好にすることができる。
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1の組成になるように各成分を容器に入れて、マグネチックスターラーで2時間混合及び攪拌した後、孔径5μmのメンブランフィルターで濾過することで、実施例及び比較例に係るインク組成物を得た。なお、表1中の数値は、質量%を示し、イオン交換水はインク組成物の全質量が100質量%となるように添加した。
・C.I.リアクティブブルー15 最大吸収波長:672nm
・C.I.リアクティブブルー72 最大吸収波長:668nm
・C.I.リアクティブブルー49 最大吸収波長:586nm
・C.I.リアクティブレッド31 最大吸収波長:546nm
・C.I.アシッドブルー193 最大吸収波長:577nm
・C.I.ダイレクトブルー87 最大吸収波長:666nm
・C.I.アシッドブルー112 最大吸収波長:633nm
・C.I.アシッドレッド289 最大吸収波長:527nm
・BES(N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸:試薬)
・オルフィンPD−002W(商品名、日信化学工業社製、アセチレングリコール系界面活性剤)
・プロキセルXL2(商品名、アーチ・ケミカルズ社製)
なお、染料の名称中に「リアクティブ」とあるものは反応染料、「アシッド」又は「ダイレクト」とあるものは酸性染料に分類した。
表2に示すようなインクセットを構成した。インクセットは、インク1、インク2、インク3及びインク4の4種類のインクからなるセットとした。インク1〜4は、それぞれ、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックのインクに相当する。そして、実施例20及び実施例21のインクセットを、それぞれ、上記実施例1及び実施例17の捺染用インクジェットインク組成物と色材濃度のみが異なる(5質量%)インクをインク1としたインクセットとした。また、比較例7のインクセットを、上記比較例1の捺染用インクジェットインク組成物と色材濃度のみが異なる(5質量%)インクをインク1としたインクセットとした。また、比較例8のインクセットを、上記比較例6の捺染用インクジェットインク組成物の色材種を1種(C.I.アシッドブルー112)とし、色材濃度が異なる(5質量%)インクをインク1としたインクセットとした。インクセットの各例のインク2〜4は、上記実施例1の捺染用インクジェットインク組成物と色材種(表2記載)及び濃度が異なる(5質量%)インクとした。
・C.I.リアクティブイエロー2 最大吸収波長:404nm
・C.I.リアクティブブラック39 最大吸収波長:610nm
・C.I.アシッドイエロー79 最大吸収波長:402nm
・C.I.アシッドブラック172 最大吸収波長:573nm
(1)反応染料を用いる場合の前処理液調製方法
ポリオキシエチレンジイソプロピルエーテル(オキシエチレン=30モル)を5質量部、エーテル化カルボキシメチルセルロースを5質量部、尿素(ヒドロトロピー剤)100質量部、m−ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム10質量部をよく混合した後、イオン交換水1000質量部に少量ずつ添加しながら60℃下で30分撹拌する。その後、炭酸ナトリウム(アルカリ剤)30質量部を撹拌されている溶液にさらに加えて10分撹拌し、この溶液を孔径10μmのメンブレンフィルターでろ過することにより、前処理組成物を得た。
m−ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウムを添加しないことと、アルカリ剤である炭酸ナトリウムの代わりに、硫酸アンモニウムを用いたこと以外は、上記、反応染料用前処理液の調製と同様にして、酸性染料用の前処理液を調製した。
4.4.1.捺染物の色相角評価
上記実施例1〜19の捺染用インクジェットインク組成物、及び、比較例1〜6の捺染用インクジェットインク組成物について、捺染物の色相角∠h°を以下の通り評価した。
A:色相角∠h°が280°以上300°以下であった
B:色相角∠h°が260°以上280°未満又は300°超310°以下であった
C:色相角∠h°が260°未満310°超であった
上記実施例1〜19の捺染用インクジェットインク組成物、及び、比較例1〜6の捺染用インクジェットインク組成物の耐光性評価を以下のように行った。
上記「4.4.1.捺染物の色相角評価」で得られた評価サンプルを用いて、ISO 105 B02に従って実施し、以下の基準に従って結果を評価した。評価結果を表3に示す。なお、この評価は、変退色を調べ,堅ろう度を判定するものであり、色相角を直接測定するものではないが、少なくとも変色を判定することができる。
A:耐光性が5級以上
B:耐光性が4級以上5級未満
C:耐光性が3級以上4級未満
D:耐光性が3級未満
E:捺染物の色相角h°が260°以上310°以下の範囲に入らないため、評価対象外
印捺を1440dpi×720dpiの解像度で布帛(反応染料使用時:綿100%、酸性染料使用時:シルク)に実施した以外は、上記「4.4.1.捺染物の色相角評価」と同様の方法で、評価サンプルを得た。発色性の評価は、測色器(商品名「Spectrolino、X−RITE社製)で画像のOD値(発色濃度:シアン成分のOD値とマゼンタ成分のOD値との和)を測定することで行い、測定されたOD値に基づいて画像の発色性を評価した。評価基準を以下に示す。評価結果を表3に示す。
A:OD値が2.6以上
B:OD値が2.4以上2.6未満
C:OD値が2.2以上2.4未満
D:OD値が2.2未満
インクジェットプリンターPX−G930(セイコーエプソン株式会社製)のカートリッジに上記の捺染用インクジェットインク組成物を充填した。充填後、ノズルチェックパターンを印刷して充填不良・ノズル目詰まりの無いことを確認してから、ヘッドをホームポジションに戻した状態(すなわち、ヘッドノズル面にヘッドキャップをした状態)にして、35℃/40%RHの環境下で一週間放置した。放置後、ノズルチェックパターンを印刷してノズルの吐出状況を観察することで、インク組成物のインクジェットヘッドの目詰まり放置回復性を評価した。その評価基準を以下に示す。評価結果を表3に示す。
B:クリーニング動作が2回〜5回の範囲内で、全ノズルからインク組成物が正常吐出された
C:クリーニング動作が6回〜10回の範囲内で、全ノズルからインク組成物が正常吐出された
D:全ノズルからインク組成物が正常吐出されるまでにクリーニング動作が11回以上必要であったか、又は、クリーニング動作を11回以上行っても正常吐出されないノズルがあった
インクジェットプリンターPX−G930(セイコーエプソン株式会社製)のカートリッジに上記の捺染用インクジェットインク組成物を充填後、A4普通紙に1000枚の連続ベタ印字を行い、クリーニング動作を行わずに、連続で印刷できる枚数の平均値を求め、以下の試験方法及び基準により評価した。評価結果を表3に示す。
A:平均連続印刷枚数が、80枚以上
B:平均連続印刷枚数が、40枚以上80枚未満
C:平均連続印刷枚数が、20枚以上40枚未満
D:平均連続印刷枚数が、20枚未満
インクジェットプリンターPX−G930(セイコーエプソン株式会社製)のカートリッジに上記のインク組成物を充填し40℃で3ヶ月間プリンターを放置後、プリンターからヘッドを取りはずし、ノズル先端を目視で観察することにより異物の有無を確認し、結果を表3に記載した。
表2に記載された実施例20、21及び比較例7、8のインクセットの耐光性を以下のように評価した。各インクセットを用いて、得られる印捺画像の色相角∠h°が260°以上310°以下になるように、1440dpi×720dpiの解像度でインクの打ち込み量を制御して画像を印捺した以外は、上記、捺染用インクジェットインク組成物の耐光性評価と同様の評価方法で評価を実施した。なお、印捺は綿100%の布帛、ビスコース、シルク、PAエラストマー、及び、ウールの各布帛に対して実施した。
表3に各例の捺染用インクジェットインク組成物の評価結果を示す。各実施例の結果をみると、いずれも、銅又はクロムを含み、記録媒体上でのCIELAB色空間で定義される色相角∠h°が260°以上310°以下の範囲である染料と、常温で液体であって、標準沸点が190℃以上260℃以下である環状アミドを5質量%以上30質量%以下と、を含むことにより、色相角∠h°が260°以上310°以下の範囲の色を、複数色の混色によることなく、捺染物において発色性良く表現でき、かつ、経時的な色相変化(耐光性)を抑制することができることが判明した。
また、比較例4をみると、2−ピロリドンの添加量が30質量%を超えると、発色性が低下することがわかった。これは、布帛に対するインクの浸透性が高まることに起因すると考えられる。また、比較例4では、目詰まり放置回復性・吐出安定性が著しく低下しており、インク流路の部材からの不純物がインク中に溶解し、異物として析出したためと考えられる。さらに、比較例5では色相角が満足されず、比較例6では染料が銅又はクロムを含まないため、耐光性が劣っていた。
考えられる。また、沸点の高いアルキルポリオールを用いた実施例15をみると、目詰まり放置回復性及び/又は連続吐出安定性が低下する傾向が見られ、これについても増粘が一因であると考えられる。
Claims (8)
- 銅又はクロムを含む染料と、
常温で液体であって、標準沸点が190℃以上260℃以下である環状アミドを5質量%以上30質量%以下と、
を含み、
前記染料が、550nm以上600nm以下の範囲に最大吸収波長を有する染料であり、
記録媒体上でのCIELAB色空間で定義される色相角∠h°が260°以上310°以下の範囲となる、捺染用インクジェットインク組成物。 - 請求項1において、
前記染料が、C.I.リアクティブブルー13及びC.I.アシッドブルー193の一種以上である、捺染用インクジェットインク組成物。 - 請求項1又は請求項2において、
前記染料の含有量が、3質量%以上15質量%以下である、捺染用インクジェットインク組成物。 - 請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、
前記捺染用インクジェットインク組成物のpHが、6以上10以下である、捺染用インクジェットインク組成物。 - 請求項1ないし請求項4のいずれか一項において、
前記捺染用インクジェットインク組成物中に、ベンゾトリアゾールを含まない、捺染用インクジェットインク組成物。 - 請求項1ないし請求項5のいずれか一項において、
前記捺染用インクジェットインク組成物中に、標準沸点が180℃以上260℃以下であるアルキルポリオールを含み、
前記アルキルポリオールの含有量が、10質量%以上25質量%以下である、捺染用インクジェットインク組成物。 - 請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の捺染用インクジェットインク組成物を含む、インクセット。
- アルカリ剤、酸及びヒドロトロピー剤の少なくとも一種を含有する前処理組成物を布帛に付与する前処理工程と、請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の捺染用インクジェットインク組成物を用いて前記布帛に印捺する印捺工程と、を含む、記録方法。
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