JP6951150B2 - 再生ポリスチレン樹脂組成物の製造方法 - Google Patents
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Description
[1]使用済みのポリスチレン樹脂組成物を得る第1工程と、
前記第1工程にて得られた使用済みのポリスチレン樹脂組成物中の臭素系難燃剤およびアンチモン化合物の含有量を測定し、前記使用済みのポリスチレン樹脂組成物中の臭素系難燃剤およびアンチモン化合物の含有量に基づき、前記使用済みのポリスチレン樹脂組成物に対して添加すべき臭素系難燃剤およびアンチモン化合物の量を規定する第2工程と、
前記使用済みのポリスチレン樹脂組成物を含む組成物であって、前記第2工程で規定された量に基づき、前記組成物中の臭素系難燃剤の含有量が、前記使用済みのポリスチレン樹脂組成物100重量部に対して24〜31重量部の範囲となり、前記組成物中のアンチモン化合物の含有量と、前記組成物中の臭素系難燃剤の含有量との比(アンチモン化合物/臭素系難燃剤)が、重量比で5/100〜15/100の範囲となるよう調整された組成物を得る第3工程と、
前記第3工程にて得られた前記組成物を成形し、再生ポリスチレン樹脂組成物を得る第4工程とを含む、再生ポリスチレン樹脂組成物の製造方法。
本発明に係る再生ポリスチレン樹脂組成物の製造方法は、下記の工程:
使用済みのポリスチレン樹脂組成物を得る第1工程;
第1工程にて得られた使用済みのポリスチレン樹脂組成物中の臭素系難燃剤およびアンチモン化合物の含有量を測定し、使用済みのポリスチレン樹脂組成物中の臭素系難燃剤およびアンチモン化合物の含有量に基づき、使用済みのポリスチレン樹脂組成物に対して添加すべき臭素系難燃剤およびアンチモン化合物の量を規定する第2工程;
使用済みのポリスチレン樹脂組成物を含む組成物であって、第2工程で規定された量に基づき、組成物中の臭素系難燃剤の含有量が、使用済みのポリスチレン樹脂組成物100重量部に対して24〜31重量部の範囲となり、組成物中のアンチモン化合物の含有量と、組成物中の臭素系難燃剤の含有量との比(アンチモン化合物/臭素系難燃剤)が、重量比で5/100〜15/100の範囲となるよう調整された組成物を得る第3工程;および、
第3工程にて得られた組成物を成形し、再生ポリスチレン樹脂組成物を得る第4工程;
を含む。以下、図1を参照しながら各工程について説明する。
図1を参照して、本工程(S1)は例えば使用済みのエアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機など家電製品や使用済みのOA機器などから使用済みのポリスチレン樹脂組成物を得る工程である。特に限定するものではないが、使用済みの薄型テレビや複写機から回収される使用済みのポリスチレン樹脂組成物が好適に用いられる。なお、その回収方法は、手解体、機械選別など従来公知の方法を適宜採用することができる。
使用済みのポリスチレン樹脂組成物は、ポリスチレン樹脂を主成分(重量比で最も重い成分)とする組成物である。使用済みのポリスチレン樹脂組成物としては、例えば使用済みのエアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機など家電製品や使用済みのOA機器などから回収される、ポリスチレン樹脂組成物を用いることができる。特に限定するものではないが、使用済みの薄型テレビや複写機から回収される筐体や機構部品が好適に用いられる。なお、その回収方法は、手解体、機械選別など従来公知の方法を適宜採用することができる。
使用済みのポリスチレン樹脂組成物に含有されるポリスチレン樹脂(以下、単に「ポリスチレン樹脂」とも記載する)は、下記一般式(1)で表される構成単位を有し、ゴム成分を含むことが好ましい。
使用済みのポリスチレン樹脂組成物は、難燃剤を含んでいてもよい。難燃剤としては、例えば、ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、テトラブロモビスフェノールA(TBBA)・ビス(ジブロモプロピルエーテル)、2,4,6−トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジン、エチレンビステトラブロモフタルイミド、臭素化エポキシオリゴマーなどの臭素系難燃剤、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ビスフェノールAビスホスフェート、1,3−フェニレンビスジキシレニルフォスフェートなどのリン系難燃剤、シリコーン系難燃剤、硫黄系難燃剤、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムなどの水酸化物系難燃剤などが挙げられる。良好な難燃性を備える再生ポリスチレン樹脂組成物を得る観点から、臭素系難燃剤を含む使用済みのポリスチレン樹脂組成物を用いることが好ましく、ビス(ペンタブロモフェニル)エタンを含む使用済みのポリスチレン樹脂組成物を用いることがより好ましい。
図1を参照して、本工程(S2)は、第1工程(S1)にて得られた使用済みのポリスチレン樹脂組成物中に含有されている臭素系難燃剤およびアンチモン化合物の含有量を測定し、使用済みのポリスチレン樹脂組成物中の臭素系難燃剤およびアンチモン化合物の含有量に基づき、使用済みのポリスチレン樹脂組成物に対して添加すべき臭素系難燃剤およびアンチモン化合物の量を規定する工程である。以下、使用済みのポリスチレン樹脂組成物中の臭素系難燃剤およびアンチモン化合物の含有量を測定する工程を、単に「測定工程1」とも記載し、使用済みのポリスチレン樹脂組成物に対して添加すべき臭素系難燃剤およびアンチモン化合物の量を規定する工程を、単に「添加量規定工程」とも記載する。
測定工程1を実施する方法は特に限定されず、例えば、蛍光X線法、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)、あるいはICP法(高周波誘導結合プラズマ、Inductively Coupled Plasma)等の公知の測定方法を用いることができる。これらの測定法の中でも、測定時間が短く、かつ前処理および薬液が不要であることから、蛍光X線法を用いることが好ましい。
使用済みのポリスチレン樹脂組成物中に含有されている臭素系難燃剤およびアンチモン化合物の含有量を蛍光X線法により測定する場合は、公知の方法を用いることができる。例えば、臭素系難燃剤量およびアンチモン化合物量が既知のポリスチレン樹脂組成物(標準試料)を用いて検量線を予め作製する。その後、使用済みのポリスチレン樹脂組成物を蛍光X線法により測定する。測定により得られた蛍光X線強度(ピーク強度)と、前述の検量線とから、使用済みのポリスチレン樹脂組成物に含有されている臭素系難燃剤およびアンチモン化合物の含有量を定量することができる。なお、測定に供する試料は、照射面の形状が平滑で平坦であり、均質で所定の厚さを持ち、測定面がX線照射面より大きくなるように調製することが好ましい。粉末状に粉砕した試料の場合は、測定に適した平坦な面が得られるように加圧成形し、平板状の試料とすることが好ましい。
臭素系難燃剤を含む使用済みのポリスチレン樹脂組成物を用いた場合、本実施の形態によって製造された再生ポリスチレン樹脂組成物において、良好な難燃性が得られる。臭素系難燃剤は、例えばビス(ペンタブロモフェニル)エタン、TBBA・ビス(ジブロモプロピルエーテル)、2,4,6−トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジン、エチレンビステトラブロモフタルイミド、臭素化エポキシオリゴマー、末端封止タイプ臭素化エポキシオリゴマー等であってもよい。これらの中でも、臭素含有率が高く、スチレン系樹脂への混ざりや分散性が良好であるビス(ペンタブロモフェニル)エタンを含んでいることが好ましい。なお、使用済みのポリスチレン樹脂組成物は、臭素系難燃剤を含まないものであってもよい。
アンチモン化合物を含む使用済みのポリスチレン樹脂組成物を用いた場合、本実施の形態によって製造された再生ポリスチレン樹脂組成物において、良好な難燃性が得られる。アンチモン化合物は、例えば三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム等であってもよい。これらの中でも、臭素系難燃剤との相乗効果の観点から、三酸化アンチモンを含んでいることが好ましい。なお、使用済みのポリスチレン樹脂組成物は、アンチモン化合物を含まないものであってもよい。
後述する第3工程(S3)において調整される使用済みのポリスチレン樹脂組成物を含む組成物(以下、単に「組成物」とも記載する)において、臭素系難燃剤の含有量は、使用済みのポリスチレン樹脂組成物100重量部に対して24〜31重量部の範囲である。上記測定工程1において測定された使用済みのポリスチレン樹脂組成物中における臭素系難燃剤の含有量に基づき、後述する第3工程(S3)において添加すべき臭素系難燃剤の量が規定される。臭素系難燃剤の含有量を上記範囲にすることにより、良好な難燃性を有する再生ポリスチレン樹脂組成物を得ることができる。なお、上記測定工程1の測定結果に基づき、後述する第3工程(S3)において添加すべき臭素系難燃剤の量を0と規定してもよい。組成物中の臭素系難燃剤の含有量が、使用済みのポリスチレン樹脂組成物100重量部に対して24重量部未満の場合、本実施の形態によって製造された再生ポリスチレン樹脂組成物が十分な難燃性を有さない傾向にある。組成物中の臭素系難燃剤の含有量が、使用済みのポリスチレン樹脂組成物100重量部に対して31重量部よりも大きい場合、本実施の形態によって製造された再生ポリスチレン樹脂組成物の物性(IZOD衝撃強度)が低下する傾向にある。
図1を参照して、本工程(S3)は、第2工程で規定された量に基づき、使用済みのポリスチレン樹脂組成物を含む組成物中の臭素系難燃剤の含有量が、使用済みのポリスチレン樹脂組成物100重量部に対して24〜31重量部の範囲となり、組成物中のアンチモン化合物の含有量と、組成物中の臭素系難燃剤の含有量との比(アンチモン化合物/臭素系難燃剤)が、重量比で5/100〜15/100の範囲となるよう調整する工程である。
本工程(S3)において添加される臭素系難燃剤としては、例えばビス(ペンタブロモフェニル)エタン、TBBA・ビス(ジブロモプロピルエーテル)、2,4,6−トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジン、エチレンビステトラブロモフタルイミド、臭素化エポキシオリゴマー、末端封止タイプ臭素化エポキシオリゴマー等が好ましい。これらの中でも、臭素含有率が高く、スチレン系樹脂への混ざりや分散性が良好であるビス(ペンタブロモフェニル)エタンを添加することがより好ましい。
本工程(S3)において添加されるアンチモン化合物としては、例えば三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム等が好ましい。これらの中でも、臭素系難燃剤との相乗効果の観点から、三酸化アンチモンを添加することがより好ましい。
本工程(S3)においてスチレン系熱可塑性エラストマーを添加することにより、本実施の形態に係る再生ポリスチレン樹脂組成物において、衝撃強度の向上が期待される。スチレン系熱可塑性エラストマーは、例えばブタジエン、ブタジエンブチレン、スチレンブタジエン、アクリロニトリルブタジエン、イソプレン、エチレンブチレンおよびエチレンプロピレンから選ばれる少なくとも1種類の成分と、スチレンとのブロック共重合体であってもよい。また、ブロック共重合体の水素添加誘導体を用いてもよい。
本工程(S3)においてポリフルオロオレフィンを添加することにより、本実施の形態に係る再生ポリスチレン樹脂組成物において、燃焼時のドリップ現象(軟化による滴下現象)が抑制される。ポリフルオロオレフィンは、例えばポリジフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−オレフィン(エチレン、プロピレンなど)系モノマー共重合体であってもよい。これらの中でもフィブリル形成能を有するものが好ましく、ポリテトラフルオロエチレンが特に好ましい。これらは単独または混合して使用することができる。
また、本工程(第3工程)においては、前述した成分のほかに、本実施の形態に係る効果を損なわない範囲で、必要に応じて従来公知の添加剤を含有することができる。この場合、添加剤としては、酸化防止剤(フェノール系、リン系、イオウ系など)、上述の臭素系難燃剤以外の難燃剤(リン系、硫黄系、無機金属系など)、紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系など)、充填材(ガラス繊維、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなど)、滑剤、可塑剤、安定剤、離型剤、帯電防止剤、着色料(顔料、染料など)、金属不活性化剤、中和剤、分散剤等の1種または2種以上が挙げられる。
図1を参照して、本工程は第3工程(S3)にて得られた組成物を成形し、再生ポリスチレン樹脂組成物を得る工程である。第4工程(S4)は、例えば単軸押出成形機、多軸押出成形機等の公知の方法を用いることにより、第3工程(S3)により得られた組成物を溶融混練し、溶融混練された組成物を得た後、溶融混練された組成物を押出成形等することにより実施することができる。本工程(S4)における溶融混練や押出成形は、160℃以上220℃以下で行われることが好ましい。溶融混練時等の温度を160℃以上とすることで、組成物全体が十分に溶融し、混練性が向上し、再生ポリスチレン樹脂組成物を成形しやすくなる。また、溶融混練時等の温度を220℃以下とすることで、臭素系難燃剤の熱分解を抑制しつつ、得られる再生ポリスチレン樹脂組成物の熱劣化を抑制することができる。本工程(S4)における溶融混練時等の温度は、組成物に含まれる臭素系難燃剤の熱分解温度に応じて適宜変化させてもよい。
本発明に係る再生ポリスチレン樹脂組成物の製造方法は、第1の実施形態に係る製造方法に加えて、下記の工程:
再生ポリスチレン樹脂組成物中の臭素系難燃剤の含有量が、使用済みのポリスチレン樹脂組成物100重量部に対して24〜31重量部の範囲であることを確認する工程と、再生ポリスチレン樹脂組成物中のアンチモン化合物の含有量と、再生ポリスチレン樹脂組成物中の臭素系難燃剤の含有量との比(アンチモン化合物/臭素系難燃剤)が、重量比で5/100〜15/100の範囲であることを確認する工程とを備える第5工程;を更に含んでもよい。以下、図2を参照しながら第5工程について説明する。以下、再生ポリスチレン樹脂組成物中の臭素系難燃剤およびアンチモン化合物の含有量を測定する工程を、単に「測定工程2」とも記載する。
上記第1工程〜第4工程において、何らかの人為的ミスが発生する可能性がある。例えば、第3工程において得られる組成物中の臭素系難燃剤やアンチモン化合物は、第4工程(S4)において熱分解する可能性がある。そのため、再生ポリスチレン樹脂組成物中に含まれる臭素系難燃剤およびアンチモン化合物の含有量が、上記第3工程(S3)において調整される組成物中に含まれる臭素系難燃剤およびアンチモン化合物の含有量と異なる可能性がある。そのため、第4工程(S4)において得られた再生ポリスチレン樹脂組成物中の臭素系難燃剤の含有量が、使用済みのポリスチレン樹脂組成物100重量部に対して24〜31重量部の範囲であることを確認する工程と、再生ポリスチレン樹脂組成物中のアンチモン化合物の含有量と、再生ポリスチレン樹脂組成物中の臭素系難燃剤の含有量との比(アンチモン化合物/臭素系難燃剤)が、重量比で5/100〜15/100の範囲であることを確認する工程とを備える、第5工程(S5)をさらに含むことが好ましい。
測定工程2を実施する方法は特に限定されず、公知の測定方法を用いることができる。例えば、蛍光X線法、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)、あるいはICP法(高周波誘導結合プラズマ、Inductively Coupled Plasma)により測定することができる。これらの測定法の中でも、測定時間が短く、かつ前処理および薬液が不要であることから、蛍光X線法を用いることが好ましい。
再生ポリスチレン樹脂組成物中に含有されている臭素系難燃剤およびアンチモン化合物の含有量を蛍光X線法により測定する場合は、公知の方法を用いることができる。例えば、臭素系難燃剤量およびアンチモン化合物量が既知のポリスチレン樹脂組成物(標準試料)を用いて検量線を予め作製する。その後、再生ポリスチレン樹脂組成物中を蛍光X線法により測定する。測定により得られた蛍光X線強度(ピーク強度)と、前述の検量線とから、再生ポリスチレン樹脂組成物中に含有されている臭素系難燃剤およびアンチモン化合物の含有量を定量することができる。
(1)再生ポリスチレン樹脂組成物を含む筐体または機構部品を有する製品
本実施の形態1または2に係る製造方法にて製造された再生ポリスチレン樹脂組成物の用途として、当該再生ポリスチレン樹脂組成物を含む筐体または機構部品を製造し、係る筐体または機構部品を製品に組み込むことにより、本実施の形態1または2に係る製造方法にて製造された再生ポリスチレン樹脂組成物を含む筐体または機構部品を有する製品とすることが挙げられる。製品としては特に制限は無いが、例えば、エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機など家電製品やOA機器などが挙げられる。本実施の形態1または2に係る製造方法にて製造された再生ポリスチレン樹脂組成物は、後述する実施例で示すように、良好な衝撃強度および難燃性を有する。したがって、本実施の形態1または2に係る製造方法にて製造された再生ポリスチレン樹脂組成物を含む筐体または機構部品を有する製品を、衝撃強度および難燃性に優れたものとすることができる。
本実施の形態1または2に係る製造方法にて製造された再生ポリスチレン樹脂組成物の別の用途として、当該再生ポリスチレン樹脂組成物を主成分とする、筐体または機構部品形成用樹脂材料が挙げられる。上述の通り、本実施の形態1または2に係る製造方法にて製造された再生ポリスチレン樹脂組成物は、良好な衝撃強度および難燃性を有する。したがって、本実施の形態1または2に係る製造方法にて製造された再生ポリスチレン樹脂組成物を主成分とする筐体または機構部品形成用樹脂材料を、衝撃強度および難燃性に優れたものとすることができる。なお、主成分とは、筐体または機構部品形成用樹脂材料中に最も多く含まれる成分であり、主成分の筐体または機構部品形成用樹脂材料全体に対する比率は、好ましくは50重量%以上であり、より好ましくは80重量%以上である。
本実施の形態1または2に係る製造方法にて製造された再生ポリスチレン樹脂組成物の更なる別の用途として、当該再生ポリスチレン樹脂組成物を筐体または機構部品形成用樹脂材料として使用する方法が挙げられる。上述の通り、本実施の形態1または2に係る製造方法にて製造された再生ポリスチレン樹脂組成物は、良好な衝撃強度および難燃性を有することができる。したがって、本実施の形態1または2に係る製造方法にて製造された再生ポリスチレン樹脂組成物を筐体または機構部品形成用樹脂材料として使用する方法は、優れた剛性、衝撃強度、成形性および難燃性を筐体または機構部品に付与することができる。
(A)は、複数メーカーの使用済み薄型テレビ20台から手解体により回収した、ゴム成分、臭素系難燃剤、およびアンチモン化合物を含む、使用済みのポリスチレン樹脂組成物である。
(B)は、(A)に含有されている臭素系難燃剤である。今回用いたサンプルでは、ビス(ペンタブロモフェニル)エタンが検出された。
(C)は、(A)に含有されているアンチモン化合物である。今回用いたサンプルでは、三酸化アンチモンが検出された。
(B’)は、ビス(ペンタブロモフェニル)エタンである〔商品名:「SAYTEX8010」(アルベマール日本(株)より入手)〕。
(C’)は、三酸化アンチモンである〔商品名:「PATOX−M」(日本精鉱(株)より入手)〕。
(D)は、スチレン含有量が43重量%であるスチレン/ブタジエン系熱可塑性エラストマーである〔商品名:「TR2003」(JSR(株)より入手)〕。
(E)は、ポリテトラフルオロエチレンである〔商品名:「ポリフロンFA500H」(ダイキン工業(株)より入手)〕。
未使用のポリスチレン樹脂としては、難燃ハイインパクトポリエスチレン(HIPS)樹脂を用いた〔商品名:「NBW160」(東洋スチレン(株)より入手)〕。
(1)第1工程(S1)
図1に記載のフローに従い、使用済みのポリスチレン樹脂組成物(A)を得た。具体的には、上記使用済み薄型テレビから手作業にて、使用済みのポリスチレン樹脂組成物(A)を回収した。
<検量線の作成>
まず、ポリスチレン樹脂〔商品名:「576H」(BASFジャパン(株)より入手)〕100重量部に対して、ビス(ペンタブロモフェニル)エタン(B’)および、三酸化アンチモン(C’)を、以下の表1に示す重量部添加し、その後平板状に成形し、サンプル1〜サンプル3を作製した。
第2工程(S2)で規定された量に基づき、破砕された(A)100重量部に対して(B’)を2重量部添加した。その他の成分として、(A)100重量部に対して(D)を1重量部添加し、(A)100重量部に対して(E)を0.05重量部添加し、組成物を得た。
上記第3工程で得られた組成物を、スクリュー径25mm、スクリュー有効長L/D=26の二軸溶融混練押出機(テクノベル製)を用いて、設定温度200℃で加熱溶融混練し、溶融混練された組成物を得た。次いで、溶融混練された組成物をストランド状に押出成形し、ペレタイザーを用いてカットし、ペレット状の再生ポリスチレン樹脂組成物を得た。押出条件は、吐出量12kg/h、スクリュー回転数150rpm、フィーダー回転数70rpmとした。熱風除湿乾燥機(松井製作所製)を用いて80℃、3時間の条件で上記のペレット状の再生ポリスチレン樹脂組成物の乾燥を行った。
上記第4工程(S4)にて得られたペレット状の再生ポリスチレン樹脂組成物に対して、10トン縦型射出成型機(日精樹脂工業製)もしくは80トン横型射出成型機(日精樹脂工業製)を用いることにより、設定温度220℃、金型温度60℃、冷却時間30秒の射出成形条件で、後述するASTM準拠の物性測定用試験片およびUL94規格準拠の難燃性測定用試験片をそれぞれ作製した。
(A)100重量部中の(B)、(C)の含有量および第3工程(S3)において添加した(B’)、(C’)の添加量が下記表2に示されるものであることを除いては、実施例1と同様に再生ポリスチレン樹脂組成物を製造し、該再生ポリスチレン樹脂組成物から後述するASTM準拠の物性測定用試験片およびUL94規格準拠の難燃性測定用試験片をそれぞれ作製した。
第4工程の後に、第5工程を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、再生ポリスチレン樹脂組成物および測定用試験片を作製した。具体的には、得られた再生ポリスチレン樹脂組成物中のビス(ペンタブロモフェニル)エタンおよび三酸化アンチモンの含有量を蛍光X線分析装置〔商品名:「XGT−5200WR」(堀場製作所製)〕にて、測定時間100秒、測定径1.2mm、X線管電圧50kV、X線管電流1.00mAの条件において測定し、再生ポリスチレン樹脂組成物中のビス(ペンタブロモフェニル)エタンの含有量が、使用済みのポリスチレン樹脂組成物100重量部に対して24〜31重量部の範囲にあるかを確認し、かつ、再生ポリスチレン樹脂組成物中の三酸化アンチモンの含有量と、再生ポリスチレン樹脂組成物中のビス(ペンタブロモフェニル)エタンの含有量との比(三酸化アンチモン/ビス(ペンタブロモフェニル)エタン)が、重量比で5/100〜15/100の範囲にあるかを確認した。
(A)100重量部中の(B)、(C)の含有量および第3工程(S3)において添加した(B’)、(C’)の添加量が下記表2に示されるものであることを除いては、実施例1と同様に再生ポリスチレン樹脂組成物を製造し、該再生ポリスチレン樹脂組成物から後述するASTM準拠の物性測定用試験片およびUL94規格準拠の難燃性測定用試験片をそれぞれ作製した。
(B’)の添加量を、(A)100重量部に対して2.0重量部とするところを、人為的ミスにより0重量部とし、(C’)の添加量を、(A)100重量部に対して0重量部とするところを、人為的ミスにより2.0重量部としたことと、第4工程の後に、第5工程を行ったことを除いては、実施例1と同様に再生ポリスチレン樹脂組成物を製造し、該再生ポリスチレン樹脂組成物から後述するASTM準拠の物性測定用試験片およびUL94規格準拠の難燃性測定用試験片をそれぞれ作製した。
未使用のポリスチレン樹脂100重量部を用意し、後述するASTM準拠の物性測定用試験片、UL94規格準拠の難燃性測定用試験片をそれぞれ作製した。
第4工程(S4)において、再生ポリスチレン樹脂組成物成形時の樹脂温度を誤って200℃ではなく250℃としたことと、第4工程(S4)の後に第5工程(S5)を行ったことを除いては、実施例1と同様に再生ポリスチレン樹脂組成物を製造し、該再生ポリスチレン樹脂組成物から後述するASTM準拠の物性測定用試験片およびUL94規格準拠の難燃性測定用試験片をそれぞれ作製した。
実施例1〜5、比較例1〜5および参考例1〜2として作製した各試験片を用いて、以下の評価を行った。
ASTM準拠の物性測定用試験片を作製し、JIS K7110に準じてノッチ付きIZOD衝撃強度を測定した。
UL94規格準拠の長さ127mm×幅13mm×厚み1.5mmの垂直燃焼試験片を作製し、UL94規格に準じて垂直燃焼試験を行い、燃焼性区分を判定した。
Claims (6)
- 使用済みのポリスチレン樹脂組成物を得る第1工程と、
前記第1工程にて得られた使用済みのポリスチレン樹脂組成物中の臭素系難燃剤およびアンチモン化合物の含有量を測定し、前記使用済みのポリスチレン樹脂組成物中の臭素系難燃剤およびアンチモン化合物の含有量に基づき、前記使用済みのポリスチレン樹脂組成物に対して添加すべき臭素系難燃剤およびアンチモン化合物の量を規定する第2工程と、
前記使用済みのポリスチレン樹脂組成物を含む組成物であって、前記第2工程で規定された量に基づき、前記使用済みのポリスチレン樹脂組成物を含む組成物中の臭素系難燃剤の含有量が、前記使用済みのポリスチレン樹脂組成物100重量部に対して24〜31重量部の範囲となり、前記使用済みのポリスチレン樹脂組成物を含む組成物中のアンチモン化合物の含有量と、前記使用済みのポリスチレン樹脂組成物を含む組成物中の臭素系難燃剤の含有量との比(アンチモン化合物/臭素系難燃剤)が、重量比で5/100〜15/100の範囲となるよう調整された前記使用済みのポリスチレン樹脂組成物を含む組成物を得る第3工程と、
前記第3工程にて得られた前記使用済みのポリスチレン樹脂組成物を含む組成物を成形し、再生ポリスチレン樹脂組成物を得る第4工程とを含む、再生ポリスチレン樹脂組成物の製造方法。 - 前記第3工程は、前記使用済みのポリスチレン樹脂組成物に、前記第2工程にて規定された量の、臭素系難燃剤およびアンチモン化合物の少なくとも1つを添加して、前記使用済みのポリスチレン樹脂組成物を含む組成物を得る工程を含む、請求項1に記載の再生ポリスチレン樹脂組成物の製造方法。
- 前記第2工程において、前記使用済みのポリスチレン樹脂組成物中の臭素系難燃剤およびアンチモン化合物の含有量は、蛍光X線法により測定される、請求項1または請求項2に記載の再生ポリスチレン樹脂組成物の製造方法。
- 前記再生ポリスチレン樹脂組成物中の臭素系難燃剤の含有量が、前記使用済みのポリスチレン樹脂組成物100重量部に対して24〜31重量部の範囲であることを確認する工程と、前記再生ポリスチレン樹脂組成物中のアンチモン化合物の含有量と、前記再生ポリスチレン樹脂組成物中の臭素系難燃剤の含有量との比(アンチモン化合物/臭素系難燃剤)が、重量比で5/100〜15/100の範囲であることを確認する工程とを備える第5工程を更に含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の再生ポリスチレン樹脂組成物の製造方法。
- 前記第5工程において、前記再生ポリスチレン樹脂組成物中の臭素系難燃剤およびアンチモン化合物の含有量は、蛍光X線法により測定される、請求項4に記載の再生ポリスチレン樹脂組成物の製造方法。
- 前記再生ポリスチレン樹脂組成物は、JIS K7110に定めるIZOD衝撃強度が5.2kJ/m2以上、かつ、UL94規格の燃焼性区分がV−0以上である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の再生ポリスチレン樹脂組成物の製造方法。
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