JP6951008B1 - センサレスモータの回転子位置検出方法及びセンサレスモータ駆動方法 - Google Patents
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Abstract
Description
図11にインダクティブセンス方式の開放相電圧の実測例を示す。U−V通電パターンでPWM通電しながら1電気角分回転させたときの開放相電圧の変化を測定したもので2周期性の概サイン波が得られている。10%ずつPWMデューティ比を変えて測定し重ね書きしてある。また、参考として開放相の理論的な誘起電圧波形(1周期性のサイン波)が記載されており、回転時はこの誘起電圧波形が開放相電圧に重畳し回転数に比例して波高値は大きくなり支配的になる。
さらにインダクティブセンス方式の検出信号レベルは、上述のとおりPWMデューティ比に依存し実質的には概ね20%〜80%が使用可能領域であり、20%以下の低デューティ比においては信号レベルが小さくなり回転子位置検出が困難である。したがって、低速回転や低負荷運転あるいは高負荷運転に制約がある。
以上説明したように、ブラシレスDCモータのセンサレス駆動のオープンループ方式に関しては多くの課題があり、センシングパルス方式あるいはインダクティブセンス方式等にて改善が図られてきたがそれぞれの方式に課題がある。
これにより制御回路は、電源電圧変動や減磁に対し大きな耐量を持ち静止時から極低速回転領域において回転子位置を検出できる。センシングは瞬時に行われ始動遅れはほぼ無いといってよく、またセンシング電流が小さく従来の大電流センシングパルス方式に比べ騒音と振動を大幅に低減できる。
これにより、制御回路は、センシングパルスよりも大きな電流で磁気飽和量を検出して界磁極性を判別するので、回転子位置検出の精度が向上しさらに位置検出可能な回転数範囲を極低速回転領域から低速回転領域に拡張することができる。
これにより、減算位置信号にて相補区間を特定するだけで回転子位置を120°通電区間の1区間に特定することができ、極性判別のためのセンシングパルス印加あるいは演算処理を省略して騒音の低減あるいは回転子位置検出に要する時間短縮ができる。
これにより始動時及び低速回転時のフィールドオリエンテッドコントロール(FOC)を可能とし、始動時及び低速回転時に負荷変動や停動(ストール)や逆転が発生しても制御を失うことなく確実に回転することができる。
具体的には、回転子位置検出時間は従来方式より1/5程度に短縮され、位置検出可能な回転数範囲が拡張される。
センシング電流は従来方式より1/10程度に低減され騒音と振動が減る。
過電流が解消されることから電源や出力段の負担が減りあるいは小型モータのコイル焼損事故を防止することができる。
回転数・コイル電圧・コイル電流・コイル温度・磁束密度等の変動の影響を受けにくく安定している。
またセンシング工程と通電工程が独立しており励磁の自由度が高く通電方式や出力デューティ比は任意であり、出力0%から100%まで幅広い負荷領域に対応でき、電気角120°通電だけでなく電気角150°通電あるいは電気角180°通電(サイン波通電)など幅広い駆動方式に対応することができる。
上位コントローラ50(CONT)は回転指令(RUN)を制御回路51に送出する。制御回路51(MPU)は、論理回路52(LOGIC)、PWMコントローラ53(PWMC)、電流アンプ54(AMP)及びADコンバータ回路55(ADC)等を内蔵している。プリドライバ56(PRE)はPWMコントローラ53からゲート信号を入力し、出力回路57へゲート出力を送出する。出力回路57(INV)はプリドライバ56からゲート出力を入力し、モータへコイル出力UVWを送出する。コイル電流はシャント抵抗58(RS)を介してGND母線へ流れ、シャント抵抗58で検出されたコイル電流信号IMは電流アンプ54で増幅されADコンバータ回路55に入力される。コイル電圧は分圧回路61(DIV)で減衰され、コンディショニングされたコイル電圧信号uvwがADコンバータ回路55に入力される。
以上にて、回転子位置検出に関するハードウェア構成例を説明した。なお制御回路51は当然ながら高速回転でのモータ駆動も行うが制御方法は任意の方式が許容され公知の制御手法を利用できるので説明を省略する。
(1)相補区間の検出方法
相補区間とは電気角120°通電における6通りの通電区間の180°位相差となる二つの区間の対のことであり、三対の相補区間1〜3がある。
三相BLDCモータのコイルに接続するコイルリードの二線間に数十kHzの矩形波パルスを印加すると、開放相(非通電相端子)には位相角θに応じてリラクタンスと磁気飽和と誘起電圧を反映したインダクタンス電圧VLが発生する。VLは模式的に下式で表すことができる。
奇数区間の通電パターンのセンシングパルスで正転時
VL1=K1・sin2θ+K2・sinθ+K3・sin(θ−90°) 式(1)
奇数区間の通電パターンのセンシングパルスで逆転時
VL2=K1・sin2θ+K2・sinθ+K3・sin(θ+90°) 式(2)
偶数区間の通電パターンのセンシングパルスで正転時
VL3=−(K1・sin2θ+K2・sinθ)+K3・sin(θ+90°) 式(3)
偶数区間の通電パターンのセンシングパルスで逆転時
VL4=−(K1・sin2θ+K2・sinθ)+K3・sin(θ−90°) 式(4)
但しK1=リラクタンス係数、K2=磁気飽和係数、K3=誘起電圧係数
リラクタンスはローター磁気抵抗を反映し2周期性の概サイン波であり、磁気飽和は界磁極性を反映し1周期性の概サイン波である。誘起電圧は回転数及び回転方向に依存する1周期性の概サイン波であり、静止時には発生せず逆転時は逆極性となる。
ここで注目する点は相補区間波形どうしがゼロクロス点で交差する交点である。図1Aでは150°と330°、図1Bでは30°と210°、図1Cでは90°と270°で発生する6個の交点である。これらの交点は界磁磁極と通電磁界の磁極が正対する位相角を反映しており、誘起電圧が重畳しても位相は変化しない安定交点である。安定交点の位相角は120°通電の区間切り替え点と一致し回転子位置検出に利用できる。安定交点を検出すれば誘起電圧に影響されないため静止時から回転時まで回転子位置を検出することができる。
安定交点を検出するためには相補区間どうしの信号を減算すればよい。
実際のモータの開放相電圧波形はステータ形状や着磁パターンなどで複雑に変化するが、減算波形を二値化することでそれらの影響を受けず、波形レベルは問題とならないことから電源電圧変動や温度変化による減磁などについての耐量も大きくすることができる。また、誘起電圧については相補区間の双方でほぼ同時刻に測定が行われることから、低速回転であれば誘起電圧による電圧差は無視でき位相には影響せず従って回転していても静止時と同様に回転子位置を検出できる。
以下、相補区間を構成する2区間から1区間に特定する特定方法1を述べる。
上述にて特定された相補区間を構成する2区間は磁気飽和量が最大及び最小の区間である。開放相電圧には小さいながらも磁気飽和成分が含まれており、すでに測定済みの開放相電圧から磁気飽和成分を抽出すればよい。そのために相補区間の開放相電圧値の中性点電位に対する振幅を加算する。
例えば波形信号A(実線)に着目すると、30°〜90°(区間1)では負、210°〜270°(区間4)では正となっており、波形信号A(実線)の符号により区間1と区間4を判別できることがわかる。以下同様に波形信号B(破線)の符号により区間2と区間5、波形信号C(細線)の符号により区間3と区間6も判別することができる。
ただし加算信号に誘起電圧が重畳すると最大±90°の位相シフトが発生する。そのためこの方法1は回転数に制約があり静止時及び極低速回転時に適用可能である。
以下、相補区間を構成する2区間から1区間に特定する特定方法2を説明する。特定方法2は、前述した特定方法1の回転数範囲を拡張するもので、低速回転域でも初期位置を検出可能である。この方法は相補区間が特定された後に、相補区間を構成する2区間の通電パターンでやや電流量の多いセンシングパルスを三相コイルに印加して磁気飽和量を増加させ、より確実に磁気飽和を検出するものである。
制御回路51(MPU)は上述の相補区間を検出するときのセンシングパルスよりパルス時間を数倍に大きくした極性検出用のセンシングパルスを三相コイルに印加し、センシングパルスの終了直前の電流値を測定する。あるいは所定電流に到達するまでの通電時間を測定する。これらの測定を、相補区間を構成する2区間について行い、双方の電流値あるいは通電時間を比較して1区間に特定する。
間をおいて三相コイルに印加する。
図4Aは、所定時間のセンシングパルスを三相コイルに印加しコイル電流を測定する方法で、IM1、IM2はコイル電流、TS1は通電時間である。磁気飽和量に応じて電流立ち上がりカーブが異なりIM1とIM2は異なるので、ADコンバータでセンシングパルス終了直前のコイル電流を測定し双方を比較すれば相補区間を構成する2区間から1区間に特定できる。
なおコイル電流IMが小さい場合の近似値は下式で求められる。
IM=VM・TS1/L 式(5)
但しVM=コイル電圧、L=磁気飽和時のコイルインダクタンス
以下、相補区間を構成する2区間から1区間に特定する特定方法3を説明する。特定方法3は、初期位置検出ではなく始動時あるいは低速回転時に繰り返し位置検出する場合に適用するものである。すでに前回の相補区間番号が判っているから、今回の相補区間番号と比較すれば前回と同じ区間に位置しているかあるいは1区間正転したか逆転したか判別できる。それに基づいて今回の区間番号を決定すれば連続回転することができる。但し、相補区間番号を使うことから1区間以内の変化しか対応できない。従って前回の回転子位置検出から今回の回転子位置検出までに1区間以上回転しないことが条件となる。
この特定方法3によれば、極性センシングパルスが不要となり静音化できる。相補区間さえ特定すれば区間まで特定できるため制御ソフトも簡略化される。
以上述べた各種の回転子位置検出方式はいずれも1ms程度の短時間で位置検出できることから、低速回転時に瞬時出力を遮断して位置検出することが可能である。そして検出された回転子位置に基づいて所定時間の励磁を行えば位置閉ループ制御を実現できる。即ち低速回転領域をフィールドオリエンテッドコントロール化できる。
センシング工程は出力を遮断して行われる。まず誘起電圧から速度を検出し、所定速度以上の高速回転なら本案から離脱して高速処理プログラムに移行する。低速回転なら上述した位置検出方式により回転子位置を特定する。
次に通電工程が実行され、通電工程では前記センシング工程で特定された位置に応じて励磁パターンが選択され任意の出力デューティ比で所定時間だけ通電する。
低速回転時は上記のセンシング工程と通電工程を繰り返す。
この低速領域オンオフ制御方式は、上限回転数と加速度耐量に制限はあるものの、回転子位置に応じて励磁されることから停動(ストール)や逆転にも対応でき、またセンシングと通電を完全に切り離すことができ出力デューティ比などの制約がなくソフトスタートやトルク制御などが容易で高い実用性を実現できる。またノイズや誤動作が発生しても1周期で正常に回復でき確実に動作する堅牢性に優れている。ただし出力をオンオフするため低周波振動や騒音が発生するため、振動や騒音の要求の厳しい用途には不向きである。
また、論理回路52は、6個の開放相電圧値の平均を求め中性点電圧とする(STEP9)。特定した相補区間を構成する2区間の開放相電圧値の中性点からの振幅を加算する(STEP10)。加算値の符号にて前記2区間から1区間に特定する(STEP11)。
以上の手順で回転子位置を電気角120°通電の1区間に特定することができる。
Claims (4)
- 永久磁石界磁を有する回転子と三相コイルを有する固定子を備えるブラシレスDCモータをセンサレス駆動するためのセンサレスモータの回転子位置検出方法であって、
電気角120°通電における6通りの通電区間の180°位相差となる二つの区間の対を相補区間とし、
上位コントローラからのセンシング指令を受けて三相コイルに対するセンシングパルス信号を発生し、三相コイルから検出された回転子位置信号が入力されると回転子位置を判定する制御回路と、
前記制御回路からのセンシングパルス信号が入力されると電力増幅して三相コイルにセンシングパルスを出力する三相ブリッジ構成の出力回路と、を備え、
前記制御回路は、前記上位コントローラからセンシング指令を受信すると、電気角120°通電の6通りの通電パターンのセンシングパルス信号を生成して前記出力回路を介して三相コイルにセンシングパルスを印加し、相補区間を構成する2区間のセンシングパルス終了直前の開放相電圧を測定して回転子位置信号として記憶するステップと、
記憶した相補区間を構成する2区間の開放相電圧値どうしを減算し、減算結果の符号を減算位置情報とし、残る2対の相補区間についても同様のセンシングパルス印加及び開放相電圧測定及び演算処理を行って都合3ビットの減算位置情報を生成するステップと、
前記3ビットの減算位置情報を論理演算することで回転子位置を3対の相補区間のいずれか一つに特定するステップと、
特定された相補区間を構成する2区間の開放相電圧値の中性点電位に対する振幅を加算して磁気飽和成分を抽出し、加算結果の符号により相補区間を構成する2区間から一つの区間を選択し、最終的に回転子位置を電気角120°通電区間の一つに特定するステップと、を含むことを特徴とするセンサレスモータの回転子位置検出方法。 - 前記制御回路は、センシングパルスを所定時間印加してセンシングパルス終了時のコイル電流を測定するか、あるいは所定電流のセンシングパルスを印加し所定電流値に到達する時間を測定する極性検出を行なうステップを更に含み、
相補区間が特定された後、制御回路は特定された相補区間を構成する一方の区間の通電パターンにてセンシングパルス信号を発生し出力回路を介して第一のセンシングパルスを三相コイルに印加し、第一のセンシングパルス時間に相当する休止時間をおいて前記相補区間を構成する他方の区間の通電パターンにてセンシングパルス信号を発生し出力回路を介して第二のセンシングパルスを三相コイルに印加し、双方のセンシングパルスのそれぞれについて、前記制御回路は所定時間通電後の電流値あるいは所定電流までの到達時間を検出して双方の電流値あるいは到達時間の大小比較を行い、それに基づいて相補区間を構成する2区間のいずれか一方を選択し、回転子位置を120°通電の1区間に特定する請求項1記載のセンサレスモータの回転子位置検出方法。 - 回転子位置検出を繰り返し実施する際に、前回位置検出と今回位置検出の間に1区間以上回転しないことを条件として、前回の位置検出により得られた前回相補区間番号が与えられる場合、今回相補区間番号が前回相補区間番号と同じ時は今回区間番号を前回区間番号と同じとし、今回相補区間番号が前回相補区間番号より1区間進んだ時は今回区間番号を一つ進め、今回相補区間番号が前回相補区間番号より1区間戻った時は今回区間番号を一つ戻す、ことで回転子位置を電気角120°通電の1区間に特定する請求項1又は請求項2記載のセンサレスモータの回転子位置検出方法。
- 三相コイルへの通電を遮断して誘起電圧から回転子の回転速度を検出し、
所定速度以上の高速回転時は任意の高速回転処理へ移行し、所定速度未満の低速回転時は前記請求項1〜3のいずれかに記載のセンサレスモータの回転子位置検出方法により回転子位置を特定する処理を行うセンシング工程と、
前記センシング工程にて特定された回転子位置に基づいて励磁パターンを決定し任意のPWMデューティ比で所定時間通電する通電工程を備え、
所定速度未満の低速回転時は上記のセンシング工程と通電工程を交互に繰り返す、ことを特徴とするセンサレスモータの駆動方法。
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