JP6950169B2 - タイヤ用ゴム組成物及びタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、タイヤ用ゴム組成物、及び該ゴム組成物を用いたタイヤに関する。
ゴム組成物に充填剤としてセルロース繊維等のミクロフィブリル化植物繊維を配合することにより、ゴム組成物の物理的特性を向上できることが従来から知られている。しかしながら、ミクロフィブリル化植物繊維はゴム成分との相溶性が悪く、分散性が低いため、ゴム組成物に配合しても、充分な向上効果が得られない場合がある。
特許文献1では、セルロース繊維の表面を化学的に処理して疎水基を導入することにより、ゴム成分との相溶性を向上させる手法が提案されている。また、特許文献2、3では、アミノ基や硫黄原子を有するシランカップリング剤でパルプを化学処理することにより、ゴム成分との相溶性を向上させる手法が提案されている。しかしこれらの手法はいずれも化学反応プロセスを必要とすることから、より簡便な手法が求められている。
また、両親媒性を有するリン脂質のレシチンを特定のシランカップリング剤等と併用することで、ゴム中のシリカの分散性を向上させる方法が提案されていたり(例えば、特許文献4参照)、ゴムラテックスと、カーボンブラックを水に分散させたカーボンブラックスラリーとを混合し凝固させて得られる凝固物スラリーを固液分離、脱水してウェットマスターバッチを製造する際に、カーボンブラックを安定に分散させてカーボンブラックスラリーを調製するためにサポニン等の分散剤を添加してもよいことが開示されていたりするが(例えば、特許文献5参照)、セルロース繊維と併用したものは開示されていない。
また、従来、アラミド、セルロース等の短繊維や、シンジオタクチックポリブタジエン等の結晶性ポリマーでゴムを補強して硬度及びモジュラスを向上させ、例えば70℃での複素弾性率(E)を向上させて操縦安定性を改善する技術が知られている(例えば、特許文献6参照)。ただし、弾性率が向上した場合であっても、操縦安定性以外のタイヤに要求される他の性能も全て向上するとは限らない。
特許文献6には、耐摩耗性に優れるゴム組成物を提供することを目的として、ジエン系ゴム成分、澱粉およびセルロースからなるゴム組成物が提案され、セルロースとして特にバクテリアセルロースを用いることも提案されている。しかし特許文献6の技術は、ゴムとセルロースとの相容性が悪いことによって破断特性が悪く、ゴムとセルロースとの界面におけるエネルギーロスが大きいという問題を有する。
特許文献7には、低反発性と剛性(操縦安定性)を両立しうるゴム組成物として、天然植物繊維から調製された微粉末セルロース繊維をジエン系ゴムに配合したゴム組成物が開示されている。しかし特許文献7の技術は、その製法上、セルロース繊維の繊維長が短いため、セルロース繊維配合量に見合った剛性、補強性を得る面において改善の余地がある。
また、特許文献8では、有機物の発酵処理において生じる残滓の含水率を5〜90質量%とし、粒径を0.02〜600μmとし、そのような残滓を代替原料としてエラストマー成分に配合することにより、複雑な製造工程を用いることなく低コストで製造が可能で且つ環境に優しいエラストマー組成物を、代替原料を使用しないエラストマー組成物と比較して物性を大幅に低下させることなく提供することができ、そのようなエラストマー組成物を用いることで、製造時の環境負荷の低いタイヤを提供できる、とされている。
特開2009−84564号公報 特開2011−231204号公報 特開2011−231205号公報 特開2014−111689号公報 特開2015−110722号公報 特開2005−133025号公報 特開2005−75856号公報 国際公開第2010/050587号
本発明は、前記課題を解決し、石油資源の使用を極力抑えながら、ミクロフィブリル化植物繊維とゴム成分との相溶性を向上させ、操縦安定性及び低燃費性をバランス良く改善できるタイヤ用ゴム組成物、及び該ゴム組成物を用いて作製したタイヤを提供することを目的とする。
また、上述のように、セルロース等の有機物を配合したゴム組成物の開発が行われているが、ゴム中でのこれら配合物の分散性は未だ充分なものではなく、ゴム組成物の物性の面でも更なる改善の余地があった。
本発明はまた、前記課題を解決し、ミクロフィブリル化植物繊維がゴム中で凝集塊となるのを低減し、ゴム中でのミクロフィブリル化植物繊維の分散性をより高めることで、耐摩耗性、及び、補強性を改善できるタイヤ用ゴム組成物、並びに該ゴム組成物を用いて作製したタイヤを提供することを目的とする。
特許文献4の段落[0019]にも記載されているように、一般に、単にレシチンを配合した場合には、レシチンはシリカとポリマーのカップリング機能を有していないため、ポリマー等のゴム成分へのシリカ分散性が低下することが知られている。一方、本発明者は、鋭意検討の結果、レシチン等の乳化剤をミクロフィブリル化植物繊維と併用すると、ゴム成分へのミクロフィブリル化植物繊維の分散性が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、ゴム成分、ミクロフィブリル化植物繊維、及び乳化剤を含むタイヤ用ゴム組成物に関する。以降、この発明を本発明の第1の発明とし、第1の本発明とも称する。
前記ゴム成分は、天然ゴム、改質天然ゴム、合成ゴム、及び変性合成ゴムからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
前記ミクロフィブリル化植物繊維は、セルロースミクロフィブリルであることが好ましい。
前記ミクロフィブリル化植物繊維の平均繊維径は1〜100nmであることが好ましい。
前記ミクロフィブリル化植物繊維の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して1〜100質量部であることが好ましい。
前記乳化剤の含有量は、前記ミクロフィブリル化植物繊維の固形分100質量部に対して0.1〜500質量部であることが好ましい。
前記乳化剤は、天然由来であることが好ましく、レシチン及び/又はサポニンであることがより好ましい。
第1の本発明はまた、前記タイヤ用ゴム組成物を用いて作製したタイヤに関する。
本発明はまた、ゴム成分、及び、ミクロフィブリル化植物繊維を含み、前記ミクロフィブリル化植物繊維の平均繊維径が、1nm以上20nm未満であることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物に関する。以降、この発明を本発明の第2の発明とし、第2の本発明とも称する。
前記ミクロフィブリル化植物繊維は、セルロースミクロフィブリルであることが好ましい。
前記ミクロフィブリル化植物繊維の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して1〜30質量部であることが好ましい。
前記ミクロフィブリル化植物繊維は、セルロースミクロフィブリル中の一部の水酸基の水素原子が環状カルボン酸無水物のカルボキシル基含有基によって置換された構造を有することも好ましい。
第2の本発明はまた、前記タイヤ用ゴム組成物を用いて作製したタイヤに関する。
前記タイヤは、スタッドレスタイヤであることも好ましい。
第1の本発明によれば、ゴム成分、ミクロフィブリル化植物繊維、及び乳化剤を含むタイヤ用ゴム組成物であり、乳化剤を添加することでミクロフィブリル化植物繊維とゴム成分との相溶性を向上させることができるため、操縦安定性及び低燃費性の性能バランスを相乗的に改善したタイヤを提供できる。また、ミクロフィブリル化植物繊維は石油を原料としない材料であることから、石油資源の使用量を低減して、環境に配慮することができる。
第2の本発明によれば、ゴム成分、及び、ミクロフィブリル化植物繊維を含み、前記ミクロフィブリル化植物繊維の平均繊維径が1nm以上20nm未満であるタイヤ用ゴム組成物であるので、ミクロフィブリル化植物繊維がゴム中で凝集塊となるのが低減され、ゴム中でのミクロフィブリル化植物繊維の分散性がより高められることで、耐摩耗性、及び、補強性の改善したタイヤ用ゴム組成物、並びに該ゴム組成物を用いて作製される、耐摩耗性、及び、補強性の改善したタイヤを提供できる。また、ミクロフィブリル化植物繊維は石油を原料としない材料であることから、石油資源の使用量を低減して、環境に配慮することができる。
本明細書においては、第1の本発明と第2の本発明を合わせて本発明ともいう。まず、第1の本発明について説明し、続いて第2の本発明について説明する。
(第1の本発明)
第1の本発明のゴム組成物は、ゴム成分、ミクロフィブリル化植物繊維、及び乳化剤を含む。乳化剤を添加することで、ゴム成分とミクロフィブリル化植物繊維との相溶性が向上し、エネルギーロスの増大を抑制しながら、剛性及び破断伸びを両立できる。従って、上記ゴム組成物をタイヤに用いることで、良好な低燃費性を維持しながら、剛性と破断伸びとを両立でき、破壊特性、操縦安定性及び低燃費性の性能バランスを顕著かつ、相乗的に改善されたタイヤを提供できる。この効果は、乳化剤の乳化作用によるものと推察される。
また、ミクロフィブリル化植物繊維は、石油を原料としない材料(石油外資源)であるため、石油資源の使用量を低減することができる。
第1の本発明のゴム組成物の製造方法は、ゴム成分、ミクロフィブリル化植物繊維、及び乳化剤を混合する方法であれば特に限定されないが、例えば、ミクロフィブリル化植物繊維及び乳化剤を混合する工程(I)と、該工程(I)で得られた混合物にゴム成分を添加して更に混合する工程(II)とを含む製造方法が好適である。
(工程(I))
工程(I)では、ミクロフィブリル化植物繊維及び乳化剤を混合する。このように、予めミクロフィブリル化植物繊維及び乳化剤を混合することで、後述する工程(II)でゴム成分と工程(I)で得られた混合物とを混合した際、ゴム成分中にミクロフィブリル化植物繊維を充分に分散できる。ミクロフィブリル化植物繊維及び乳化剤を容易に混合できるという点から、工程(I)では、ミクロフィブリル化植物繊維及び乳化剤を水等の溶媒中で混合することが好ましい。
工程(I)で使用するミクロフィブリル化植物繊維としては、良好な補強性が得られるという点から、セルロースミクロフィブリルが好ましい。セルロースミクロフィブリルとしては、天然物由来のものであれば特に制限されず、例えば、果実、穀物、根菜などの資源バイオマス、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、及びこれらを原料として得られるパルプや紙、布、農作物残廃物、食品廃棄物や下水汚泥などの廃棄バイオマス、稲わら、麦わら、間伐材などの未使用バイオマスの他、ホヤ、酢酸菌等の生産するセルロースなどに由来するものが挙げられる。
ミクロフィブリル化植物繊維の製造方法としては特に限定されないが、例えば、上記セルロースミクロフィブリルの原料を水酸化ナトリウム等の薬品で化学処理した後、リファイナー、二軸混練機(二軸押出機)、二軸混練押出機、高圧ホモジナイザー、媒体撹拌ミル、石臼、グラインダー、振動ミル、サンドグラインダー等により機械的に磨砕ないし叩解する方法が挙げられる。この方法では、化学処理によって原料からリグニンが分離されるため、リグニンを実質的に含有しないミクロフィブリル化植物繊維が得られる。また、その他の方法として、上記セルロースミクロフィブリルの原料を超高圧処理する方法なども挙げられる。
ミクロフィブリル化植物繊維の平均繊維径は、ゴム補強効果と、弾性率、破断伸びのバランスが良好であるという観点から、好ましくは100nm以下、より好ましくは80nm以下、更に好ましくは50nm以下、特に好ましくは30nm以下である。ミクロフィブリル化植物繊維の平均繊維径の下限は特に限定されないが、工程(I)で水等の溶媒を用いた場合に、濾水性の悪化による作業性の悪化を抑制できる観点から、1nm以上が好ましく、2nm以上がより好ましく、4nm以上が更に好ましく、10nm以上が特に好ましい。
ミクロフィブリル化植物繊維の平均繊維長は、好ましくは5mm以下、より好ましくは1mm以下であり、また、好ましくは1μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは30μm以上、特に好ましくは50μm以上である。平均繊維長がこのような範囲であることにより、第1の本発明の効果がより好適に得られる。
ミクロフィブリル化植物繊維の平均繊維径及び平均繊維長は、走査型電子顕微鏡写真の画像解析、透過型顕微鏡写真の画像解析、X線散乱データの解析、細孔電気抵抗法(コールター原理法)等によって測定できる。
工程(I)では、ミクロフィブリル化植物繊維の水分散液を使用することが好ましい。これにより、ミクロフィブリル化植物繊維と乳化剤とを短時間で均一に混合できる。ミクロフィブリル化植物繊維の水分散液中、ミクロフィブリル化植物繊維の含有量(固形分)は、好ましくは2〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%である。
次に、工程(I)で使用する乳化剤について説明する。
上記乳化剤としては、特に制限されないが、例えば、アニオン系乳化剤、カチオン系乳化剤、ノニオン系乳化剤、分散安定剤、ショ糖脂肪酸エステル、ポリソルベート、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン、レシチン誘導体(例えばリゾレシチン)、サポニン、サポニン誘導体、カゼイン、カゼイン誘導体などを挙げることができる。上記乳化剤としては、これらを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記アニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物、ジアルキルスルホコハク酸塩、ロジン酸カリウム、オレイン酸アンモニウム、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等の脂肪酸石鹸等が挙げられる。
上記カチオン系乳化剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルアミンアセテート、ポリオキシエチレンアルキルアミンの酢酸塩等が挙げられる。
上記ノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンソルビタンアルキレート、オキシエチレンオキシプロピレンブロック共重合体、ポリグリセリンエステル等が挙げられる。
上記分散安定剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウム、スチレン無水マレイン酸共重合体等の高分子系分散剤等が挙げられる。
上記ショ糖脂肪酸エステルの脂肪酸としては、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、エルカ酸、オレイン酸、リノレン酸等が挙げられる。
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、パーム硬化油モノグリセリド、オレイン酸モノグリセリド、ナタネ硬化油脂肪酸モノ・ジグリセリド、自己乳化型ステアリン酸モノ・ジグリセリド、オレイン酸モノ・ジグリセリド、カプリル酸モノグリセリド、ラウリン酸モノグリセリド、カプリン酸モノグリセリド、カプリル酸モノ・ジグリセリド、カプリル酸ジグリセリド、モノ・ジオレイン酸ジグリセリン、モノ・ジステアリン酸ジグリセリン、モノステアリン酸ジグリセリン、ペンタオレイン酸デカグリセリン、ペンタステアリン酸デカグリセリン、デカオレイン酸デカグリセリン、デカステアリン酸デカグリセリン、トリオレイン酸ペンタグリセリン、ヘキサステアリン酸ペンタグリセリン、モノラウリン酸デカグリセリン、モノラウリン酸デカグリセリン、モノミリスチン酸デカグリセリン、モノオレイン酸デカグリセリン、モノステアリン酸デカグリセリン、モノステアリン酸デカグリセリン製剤、ジステアリン酸デカグリセリン、モノラウリン酸ペンタグリセリン、モノミリスチン酸ペンタグリセリン、モノオレイン酸ペンタグリセリン、モノステアリン酸ペンタグリセリン、縮合リシノレイン酸テトラグリセリン、縮合リシノレイン酸ヘキサグリセリン、縮合リシノレイン酸ペンタグリセリン、50%アセチル化ステアリン酸モノグリセリド(酢酸MG)、乳酸モノステアリン酸グリセリン、クエン酸モノステアリン酸グリセリン、クエン酸モノオレイン酸グリセリン、コハク酸モノステアリン酸グリセリン、ジアセチル酒石酸モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸プロピレングリコール、酵素分解大豆レシチン製剤(レシチン含量33%)等が挙げられる。
その他、ラウリルジメチルアミンオキサイド等の両性イオン系乳化剤や、リン酸三カルシウム、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等の無機化合物なども挙げられる。
上記乳化剤としては中でも、レシチン、サポニン、カゼイン、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルなどの天然由来の乳化剤が好ましい。天然由来の乳化剤は石油を原料としない材料(石油外資源)であるため、乳化剤として天然由来のものを用いることにより、より石油資源の使用量を低減することができ、環境に配慮することができる。
より好ましくは、レシチン、サポニン、カゼイン、ポリグリセリン脂肪酸エステルであり、更に好ましくは、レシチン、サポニン、カゼインであり、特に好ましくは、レシチン、サポニンである。すなわち、上記乳化剤が、レシチン及び/又はサポニンであることもまた、第1の本発明の好適な実施形態の1つである。
第1の本発明において、レシチンとは、ホスファチジルコリンとも呼ばれ、各種のリン脂質を主成分とする脂質混合物を意味し、細胞膜等を構成する主要構成成分であり、大豆、卵黄などの自然界すべての動植物に多く含まれている。リン脂質としては、リン酸エステル構造を持つ脂質であれば特に限定されない。リン酸エステル構造とは、リン酸(O=P(OH))が有する3個の水素の一部又は全部が有機基で置換された構造をいう。動植物由来のレシチンであれば、特に限定されないが、第1の本発明の効果が良好に得られる点で、大豆由来のレシチンが好ましい。
上記レシチンとしては、その由来は特に限定されず、上記動植物から、公知の精製方法等で抽出することで得られる精製レシチン等が挙げられ、工業的には、卵黄や大豆から抽出する方法により大量生産されている。
上記精製レシチンは、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ジホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、及びこれらの誘導体などのグリセロールを基本骨格とするグリセロリン脂質や、スフィンゴミエリン及びこの誘導体などのスフィンゴシン塩基を基本骨格とするスフィンゴリン脂質、などのリン脂質を主成分とし、トリグリセリド、糖脂質、ステロール、トコフェロール及び炭水化物などの成分も含むものである。
上記レシチンの精製度合いは特に限定されず、上記動植物から抽出したそのままの形態である粗製レシチンであってもよいし、前記リン脂質以外の成分を除去した精製レシチンであってもよいが、第1の本発明の効果が良好に得られるという点で、前記リン脂質以外の成分を更に除去した、リン脂質含有量が90質量%以上の高度精製レシチン(高純度レシチン)が好ましく、94質量%以上がより好ましく、96質量%以上が更に好ましい。
なお、レシチンに含まれるリン脂質含有量は、該レシチンにおけるアセトン不溶分を測定することにより求めることができる。
また、上記精製レシチンの他に、油分等不純物を除去し、特定リン脂質含量を高めた分別レシチンや、酵素分解により一本鎖化したり、酵素部分分解処理により不純物を分解したりリン脂質濃度を変化させたりした酵素分解(リゾ)レシチンや水素添加処理を行った水素添加レシチンなどの改質レシチンも用いることができる。
上記レシチンの市販品としては、リポイド社製のホスフォリポン20、理研ビタミン(株)製のレシオンP、辻製油(株)製のSLP−ホワイト、ルーカスマイヤーコスメティックス社製のエマルメティック300などが挙げられる。
第1の本発明において、サポニンとは、サポゲニン及び糖から構成される配糖体の総称であり、該サポゲニンはステロイド又はトリテルペンであってよく、該糖はグルコース、ガラクトース、ペントース又はメチルペントースであってよい。
上記サポニンとしては、植物に広く分布するステロールグリコシドを含むものが挙げられ、例えば、ユッカ、セッケンボク、リュウゼツラン、タバコ、カンゾウ、大豆、チョウセンニンジン、アスパラガス、ジンコウなどの種々の植物の、果実、葉、種子、根などの種々の部分から、周知の方法により、産生、単離することができる。
上記サポニンとしては、例えば、トリテルペノイドサポニン、ステロイドサポニンなどが挙げられ、これらの中でも、トリテルペノイドサポニンが好ましい。
工程(I)では、第1の本発明のゴム組成物において後述する含有量となるように各成分を配合することが好ましい。これにより、ゴム補強効果、破断伸び及びエネルギーロスのバランスが良好となる。
工程(I)において各成分を混合する方法としては特に限定されず、例えば、プロペラ式攪拌装置、ホモジナイザー、ロータリー攪拌装置、電磁攪拌装置、手動による攪拌等の一般的な方法を用いることができる。
(工程(II))
工程(II)では、工程(I)で得られた混合物にゴム成分を添加して更に混合する。この工程で、ミクロフィブリル化植物繊維とゴム成分とが複合化される。
工程(II)で使用するゴム成分は、天然ゴム、改質天然ゴム、合成ゴム及び変性合成ゴムからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。上記ゴム成分としては、例えば、ジエン系ゴムが挙げられ、具体的には、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、クロロプレンゴム、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、クロロスルホン化ポリエチレンや、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素化天然ゴム、脱タンパク天然ゴム等の改質天然ゴムが挙げられる。また、ジエン系ゴム以外のゴム成分としては、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。これらのゴム成分は、単独で使用してもよく、2種類以上をブレンドして用いてもよく、また、縮合、変性されていてもよい。ブレンドする場合のブレンド比においても、各種用途に応じて適宜配合すればよい。なかでも、汎用性やコストの面で有利であること、及び、ミクロフィブリル化植物繊維と混合する際の作業性が良好であるという観点から、NR、BR、SBR、IR、IIR及びENRが好ましく、石油資源の使用量を低減し、環境に配慮することができるという観点から、石油外資源由来の材料であるNR及びENRがより好ましい。なかでも、NRを用いた場合に第1の本発明の効果がより好適に得られる。
また、ミクロフィブリル化植物繊維とゴム成分とを短時間で均一に混合できるという点から、上記ゴム成分は、ラテックスの状態で使用することが好ましい。ゴムラテックス中、ゴム成分の含有量(固形分)は、好ましくは30〜80質量%、より好ましくは40〜70質量%である。
また、上記合成ゴムに関し、将来の石油資源の枯渇を想定した場合、化石燃料由来のモノマーを使用しない、又は、再生可能な生物由来原料をモノマーとして使用して得られた合成ゴムを使用することもできる。このような生物由来原料から製造された合成ゴムとしては、例えば、ブタジエンゴムの場合、バイオエタノールに触媒を作用させてブタジエンを得、それを重合する等の方法により得ることができる。
工程(II)では、第1の本発明のゴム組成物において後述する含有量となるように各成分を配合することが好ましい。これにより、ゴム補強効果、破断伸び及びエネルギーロスのバランスが良好となり、また、各種材料の歩留りや作業性も良好となる。
工程(II)において各成分を混合する方法としては特に限定されず、工程(I)と同様の方法を用いることができる。工程(I)と同様に、工程(II)においても、各成分を水等の溶媒中で混合することが好ましい。
工程(I)、(II)により、ミクロフィブリル化植物繊維がゴムマトリクス中に均一に分散したマスターバッチを調製できる。なお、工程(II)で得られた混合物がスラリー状態である場合は、上記混合物を公知の方法で凝固、乾燥した後、バンバリーミキサー等で混練りするなどにより、マスターバッチを調製できる。
第1の本発明のゴム組成物は、上記マスターバッチを用いて公知の方法で製造される。例えば、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロール等で上記マスターバッチと他の成分を混練りし、その後加硫する方法等により製造できる。他の配合剤としては、例えば、補強剤(カーボンブラック、シリカ等)、シランカップリング剤、加硫剤、ステアリン酸、加硫促進剤、加硫促進助剤、オイル、硬化レジン、ワックス、老化防止剤等が挙げられる。
第1の本発明のゴム組成物において、NRの含有量は、ゴム成分100質量%中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは100質量%である。上記範囲内であれば、第1の本発明の効果が好適に得られる。
第1の本発明のゴム組成物において、ミクロフィブリル化植物繊維の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは100質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは25質量部以下、特に好ましくは20質量部以下である。上記範囲内であれば、ミクロフィブリル化植物繊維を良好に分散させ、破壊特性、操縦安定性及び低燃費性をバランス良く改善できる。
第1の本発明のゴム組成物において、乳化剤の含有量は、ミクロフィブリル化植物繊維の固形分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上、より更に好ましくは10質量部以上、特に好ましくは30質量部以上であり、また、好ましくは500質量部以下、より好ましくは400質量部以下、更に好ましくは300質量部以下、特に好ましくは250質量部以下である。上記範囲内であれば、ミクロフィブリル化植物繊維を良好に分散させ、破壊特性、操縦安定性及び低燃費性の性能バランスを顕著に改善できる。
ゴム組成物100質量%中の石油外資源の含有量は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは97質量%以上である。第1の本発明によれば、上述の成分を使用しているため、石油外資源の含有量を高くした場合であっても、破壊特性、操縦安定性及び低燃費性がバランス良く得られる。
なお、石油外資源の含有量は、ゴム組成物を燃焼させた排気ガス中の二酸化炭素の炭素同位体14Cの存在量を計測し、石油外資源由来材料と石油資源由来材料の14Cの差異を比較する等の方法により判別可能である。
第1の本発明のゴム組成物は、タイヤ部材に使用することができる。このように、第1の本発明のタイヤ用ゴム組成物を用いて作製したタイヤもまた、第1の本発明の1つである。該タイヤとしては、空気入りタイヤ、スタッドレスタイヤ(冬用タイヤ)、ランフラットタイヤ等が挙げられる。
第1の本発明のタイヤは、上記ゴム組成物を用いて公知の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤの各部材の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形することにより未加硫タイヤを形成した後、加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造できる。
第1の本発明のタイヤが、空気入りタイヤである場合、第1の本発明のゴム組成物を適用できる部材としては、サイドウォール、ベーストレッド、ビードエイペックス、クリンチエイペックス、インナーライナー、アンダートレッド、ブレーカートッピング、プライトッピング、トレッド等が挙げられ、なかでも、トレッド、サイドウォールに好適に使用できる。
第1の本発明のタイヤが空気入りタイヤである場合、乗用車、トラック・バス等に好適に使用できる。
次に、第1の本発明のタイヤがスタッドレスタイヤである場合について説明する。
第1の本発明のゴム組成物は、ゴム成分、ミクロフィブリル化植物繊維、及び乳化剤を含むものであり、乳化剤を添加することで、ゴム成分とミクロフィブリル化植物繊維との相溶性が向上し、エネルギーロスの増大を抑制しながら、良好な剛性が得られる。従って、第1の本発明のゴム組成物をスタッドレスタイヤの各部材に適用すると、氷上性能、操縦安定性及び低燃費性の性能バランスを顕著かつ、相乗的に改善されたスタッドレスタイヤを提供できる。この効果は、乳化剤の乳化作用によるものと推察される。
第1の本発明のゴム組成物をスタッドレスタイヤの各部材に適用する場合、用いられるゴム成分としては、上述したものと同様のものを用いることができるが、なかでも、優れた低温特性(氷上性能)を付与できる観点から、天然ゴム(NR)とブタジエンゴム(BR)とを含むことが好ましい。
ゴム成分100質量%中の天然ゴムの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは40質量%以上である。また、該含有量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下、特に好ましくは60質量%以下である。天然ゴムの含有量がこのような範囲であれば、氷上性能、操縦安定性及び低燃費性をバランス良く改善できる。
ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、必要な雪氷上性能を発揮させる観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは40質量%以上である。また、該含有量は、加工性の観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。
第1の本発明のゴム組成物をスタッドレスタイヤの各部材に適用する場合、用いられるミクロフィブリル化植物繊維としては、上述したものと同様のものが挙げられる。
第1の本発明のゴム組成物をスタッドレスタイヤの各部材に適用する場合、ミクロフィブリル化植物繊維の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは100質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは25質量部以下、特に好ましくは20質量部以下である。上記範囲内であれば、ミクロフィブリル化植物繊維を良好に分散させ、氷上性能、操縦安定性及び低燃費性をバランス良く改善できる。
第1の本発明のゴム組成物をスタッドレスタイヤの各部材に適用する場合、乳化剤の含有量は、ミクロフィブリル化植物繊維の固形分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上、より更に好ましくは10質量部以上、特に好ましくは30質量部以上であり、また、好ましくは500質量部以下、より好ましくは400質量部以下、更に好ましくは300質量部以下、特に好ましくは250質量部以下である。上記範囲内であれば、ミクロフィブリル化植物繊維を良好に分散させ、氷上性能、操縦安定性及び低燃費性の性能バランスを顕著に改善できる。
第1の本発明のゴム組成物をスタッドレスタイヤの各部材に適用する場合、第1の本発明のゴム組成物は、可塑剤としてオイルを含むことが好ましい。これにより、硬度を適切な低さに調整し良好な雪氷上性能を得ることができる。オイルとしては特に限定されないが、例えば、プロセスオイル、植物油脂、又はその混合物を用いることができる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生湯、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油などが挙げられる。なかでも、パラフィン系プロセスオイルが好適に用いられる。
オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは100質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは30質量部以下である。また、該含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上である。上記範囲内であれば、氷上性能をより改善することができる。
第1の本発明のゴム組成物をスタッドレスタイヤの各部材に適用する場合、ゴム組成物100質量%中の石油外資源の含有量は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは97質量%以上である。第1の本発明によれば、上述の成分を使用しているため、石油外資源の含有量を高くした場合であっても、氷上性能、操縦安定性及び低燃費性がバランス良く得られる。
第1の本発明のゴム組成物は、キャップトレッド、ベーストレッド、アンダートレッド、クリンチエイペックス、ビードエイペックス、サイドウォール、ブレーカー、エッジバンド、フルバンド、ブレーカークッションゴム、カーカスコード被覆用ゴム等のスタッドレスタイヤの各部材に使用でき、特にトレッドに好適に使用できる。
第1の本発明のゴム組成物を用いて作製した部材を有するスタッドレスタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階で各部材(トレッドなど)の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧して、第1の本発明のスタッドレスタイヤを製造することができる。
第1の本発明のゴム組成物を用いて作製した部材を有するスタッドレスタイヤは、乗用車、トラック・バス(重荷重車)等に好適に使用できる。
(第2の本発明)
第2の本発明のゴム組成物は、ゴム成分、及び、平均繊維径が1nm以上20nm未満のミクロフィブリル化植物繊維を含む。ゴム組成物に配合するミクロフィブリル化植物繊維として、平均繊維径1nm以上20nm未満、と解繊度合いが大きく平均繊維径の小さいものを用いることで、ミクロフィブリル化植物繊維がゴム中で凝集塊となるのが低減され、ゴム中でのミクロフィブリル化植物繊維の分散性がより高められることを本発明者らは初めて見出した。よって、ゴム組成物に平均繊維径が1nm以上20nm未満のミクロフィブリル化植物繊維を配合することで、ゴム中でのミクロフィブリル化植物繊維の分散性がより高められ、その結果、耐摩耗性、及び、補強性を改善することができる。従って、上記ゴム組成物をタイヤに用いることで、耐摩耗性、及び、補強性の改善したタイヤを提供できる。
また、ミクロフィブリル化植物繊維は、石油を原料としない材料(石油外資源)であるため、石油資源の使用量を低減することができる。
<ゴム成分>
第2の本発明において用いられるゴム成分としては、ゴム工業において用いられる一般的なゴムを使用することができるが、例えば、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素化天然ゴム、脱タンパク天然ゴムなどの改質天然ゴム、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンゴム、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、イソプレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、アクリロニトリルスチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレン等のジエン系ゴムを用いることが好ましい。また、上記ゴム成分としては上記ジエン系ゴム以外の他のゴム成分を含んでいてもよく、該他のゴム成分としては、例えば、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)、ブチルゴム(IIR)などのブチル系ゴム、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。
これらのゴム成分は、単独で使用してもよく、2種類以上をブレンドして用いてもよく、また、縮合、変性されていてもよい。ブレンドする場合のブレンド比においても、各種用途に応じて適宜配合すればよい。
上記ゴム成分としては、なかでも、汎用性やコストの面で有利であること、及び、ミクロフィブリル化植物繊維と混合する際の作業性が良好であるという観点から、NR、BR、SBR、IR、IIR及びENRが好ましく、石油資源の使用量を低減し、環境に配慮することができるという観点から、石油外資源由来の材料であるNR及びENRがより好ましい。なかでも、NRを用いた場合に第2の本発明の効果がより好適に得られる。また、ゴム成分としてNRとBRとを併用した場合にも第2の本発明の効果がより好適に得られ、好ましい。
また、上記ジエン系ゴムに関し、将来の石油資源の枯渇を想定した場合、化石燃料由来のモノマーを使用しない、又は、再生可能な生物由来原料をモノマーとして使用して得られたジエン系ゴムを使用することもできる。このような生物由来原料から製造されたジエン系ゴムとしては、例えば、ブタジエンゴムの場合、バイオエタノールに触媒を作用させてブタジエンを得て、それを重合する等の方法により得ることができる。
上記天然ゴム(NR)としては特に限定されず、例えば、SIR20、RSS#3、TSR20等、ゴム工業において一般的なものを使用できる。
上記ブタジエンゴム(BR)としては特に限定されず、タイヤ工業において一般的なものを使用できるが、例えば、日本ゼオン(株)製のBR1220、宇部興産(株)製のBR130B、BR150B等の高シス含有量のブタジエンゴム、日本ゼオン(株)製のBR1250H等の変性ブタジエンゴム、宇部興産(株)製のVCR412、VCR617等のシンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するブタジエンゴム、ランクセス(株)製のBUNA−CB25等の希土類元素系触媒を用いて合成されるブタジエンゴム等を使用できる。これらBRは、1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
BRのシス含量は、70質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、97質量%以上が更に好ましい。
なお、本明細書において、BRのシス含量(シス1,4結合含有率)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
上記ゴム成分中の各ゴムの含有量は特に制限されず、適宜設定することができるが、上記ゴム成分100質量%中の天然ゴムの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。また、該含有量の上限は特に限定されず、100質量%であっても構わない。
また、上記ゴム成分として天然ゴムとブタジエンゴムを併用する場合のブタジエンゴムの含有量としては、例えば、ゴム成分100質量%中、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上が更に好ましい。一方、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下が更に好ましい。
<ミクロフィブリル化植物繊維>
第2の本発明において用いられるミクロフィブリル化植物繊維としては、より良好な補強性が得られるという点から、セルロースミクロフィブリルが好ましい。セルロースミクロフィブリルとしては、天然物由来のものであれば特に制限されず、例えば、果実、穀物、根菜などの資源バイオマス、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、及びこれらを原料として得られるパルプや紙、布、農作物残廃物、食品廃棄物や下水汚泥などの廃棄バイオマス、稲わら、麦わら、間伐材などの未使用バイオマスの他、ホヤ、酢酸菌等の生産するセルロースなどに由来するものが挙げられる。
なお、本明細書において、セルロースミクロフィブリルとは、セルロース分子が束になって集合してミクロフィブリルを形成しているセルロース繊維を意味している。
上記ミクロフィブリル化植物繊維の平均繊維径は、1nm以上20nm未満である。ゴム中でミクロフィブリル化植物繊維が凝集塊となるのがより低減され、ゴム中でのミクロフィブリル化植物繊維の分散性がより高められることで、ゴム成分と複合化した際に高い強度や弾性率を得ることができ、第2の本発明の効果をより顕著に奏することができる、という点から、当該平均繊維径としては、18nm以下が好ましく、15nm以下がより好ましく、10nm以下が更に好ましく、8nm以下が特に好ましい。また、配合後のゴム組成物の強度の観点から、2nm以上であることが好ましく、3nm以上であることがより好ましく、4nm以上であることが更に好ましい。
上記ミクロフィブリル化植物繊維の平均繊維長は、好ましくは5mm以下、より好ましくは1mm以下であり、また、好ましくは1μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは30μm以上、特に好ましくは50μm以上である。平均繊維長がこのような範囲であることにより、第2の本発明の効果がより好適に得られる。
ミクロフィブリル化植物繊維の平均繊維径及び平均繊維長は、走査型原子間力顕微鏡写真の画像解析、走査型電子顕微鏡写真の画像解析、透過型顕微鏡写真の画像解析、X線散乱データの解析、細孔電気抵抗法(コールター原理法)等によって測定できる。
上記ミクロフィブリル化植物繊維の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは100質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは30質量部以下、より更に好ましくは25質量部以下、特に好ましくは20質量部以下である。上記範囲内とすることで、ゴム中でのミクロフィブリル化植物繊維の分散性がより高められ、第2の本発明の効果がより好適に得られる。
上記ミクロフィブリル化植物繊維は、その平均繊維径が1nm以上20nm未満、と解繊度合いが大きく平均繊維径の小さいものあれば、その製造方法は特に制限されないが、例えば、上記セルロースミクロフィブリルの原料を酵素で処理する方法が好適な方法として挙げられる。この方法では、酵素処理によって原料の繊維が分解、解繊されるため、従来の酵素処理を行わない方法に比べて、繊維の解繊度合いを大きくすることができる。このように、上記ミクロフィブリル化植物繊維が、上記セルロースミクロフィブリルの原料を酵素で処理して得られるものであることもまた、第2の本発明の好適な実施形態の1つである。
上記セルロースミクロフィブリルの原料を酵素で処理する方法としては、上記セルロースミクロフィブリルの原料と酵素とを含む溶液を適宜震とうしながら当該原料に酵素を作用させる、といった通常行われる酵素処理の方法を採用することができるが、上記セルロースミクロフィブリルの原料を酵素で処理する方法において用いられる酵素としては、セルロースミクロフィブリルの原料に作用し、分解、解繊等を行うことができる酵素を用いることができ、例えば、セルロースに作用、分解するエンドグルカナーゼ等のセルラーゼ、ヘミセルロースに作用、分解するキシラナーゼなどが挙げられる。なかでも、セルラーゼを用いることが好ましい。その他、セルラーゼとキシラナーゼを併用することも好ましい形態の1つである。
上記酵素処理の反応条件としては、酵素の種類、特性等に応じて、酵素処理反応が充分進行するよう適宜設定すればよい。反応温度としては、20〜95℃の範囲とすることが概ね好ましいが、酵素の種類により好ましい反応温度は異なり、例えば、酵素としてセルラーゼを用いる場合には、40〜55℃の範囲内とすることが好ましい。また、反応時間としては、酵素処理反応の進行度合いと生産性のバランスの観点から、例えば、30分以上が好ましく、1時間以上がより好ましく、1.5時間以上が更に好ましい。他方、24時間以下が好ましく、12時間以下がより好ましく、5時間以下が更に好ましい。
上記酵素処理反応は、塩酸などでpHを変化させたり、温度を変化させたり、といった通常行われる方法で酵素を失活させることで、反応を止めることができ、反応を完了させることができる。
なお、上記酵素処理反応としては、上述した上記セルロースミクロフィブリルの原料と酵素とを含む溶液を適宜震とうしながら当該原料に酵素を作用させる、といった通常行われる酵素処理の方法の他、上記セルロースミクロフィブリルの原料と当該酵素を内包する微生物とを含む溶液を適宜震とうして当該原料に酵素を作用させて行うこともできる。該微生物としては、セルロースミクロフィブリルの原料に作用し、分解、解繊等を行うことができる酵素を有している限り、その種類等は特に限定されない。
上記ミクロフィブリル化植物繊維を、上述した上記セルロースミクロフィブリルの原料を酵素で処理する方法により製造する場合、当該酵素処理反応の前又は後(好ましくは、後)に機械処理を行うことが好ましい。これにより、繊維の解繊度合いを更に大きくすることができ、所定の平均繊維径の小さいミクロフィブリル化植物繊維を得ることができる。
上記機械処理の方法としては、特に限定されないが、例えば、上記セルロースミクロフィブリルの原料を酵素で処理する方法により製造されたミクロフィブリル化植物繊維(酵素処理反応の前に機械処理を行う場合には、上記セルロースミクロフィブリルの原料)を必要に応じて水酸化ナトリウム等のアルカリで化学処理した後、リファイナー、二軸混練機(二軸押出機)、二軸混練押出機、高圧ホモジナイザー、媒体撹拌ミル、石臼、グラインダー、振動ミル、サンドグラインダー等により機械的に磨砕ないし叩解する方法が挙げられる。また、その他の方法として、超高圧処理する方法なども挙げられる。
なお、上記ミクロフィブリル化植物繊維としては、上記製造方法により得られたものに更に、酸化処理や種々の化学変性処理等を施したものや、上記セルロースミクロフィブリルの原料となり得る天然物(例えば、果実、穀物、根菜などの資源バイオマス、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、及びこれらを原料として得られるパルプや紙、布、農作物残廃物、食品廃棄物や下水汚泥などの廃棄バイオマス、稲わら、麦わら、間伐材などの未使用バイオマスの他、ホヤ、酢酸菌等の生産するセルロースなど)をセルロース原料として、酸化処理や種々の化学変性処理などを施し、その後に上記酵素処理を(更には機械処理を)行ったものも用いることができ、例えば、セルロースミクロフィブリル中の一部の水酸基の水素原子が環状カルボン酸無水物のカルボキシル基含有基によって置換された構造を有するミクロフィブリル化植物繊維を用いることも第2の本発明の好適な実施形態の1つである。
上記ミクロフィブリル化植物繊維としては、ゴム中でのミクロフィブリル化植物繊維の分散性の観点から、セルロースミクロフィブリル中の一部の水酸基の水素原子が環状カルボン酸無水物のカルボキシル基含有基によって置換された構造を有するものも好適に使用できる。
なお、本明細書において、セルロースミクロフィブリル中の一部の水酸基の水素原子が環状カルボン酸無水物のカルボキシル基含有基によって置換された構造とは、セルロースミクロフィブリルと環状カルボン酸無水物とが反応して、セルロースミクロフィブリル中の一部の水酸基の水素原子が環状カルボン酸無水物に由来する置換基に置換された構造を表す。
また、上記ミクロフィブリル化植物繊維として、セルロースミクロフィブリル中の一部の水酸基の水素原子が環状カルボン酸無水物のカルボキシル基含有基によって置換された構造を有するものを使用できるが、該ミクロフィブリル化植物繊維は、セルロースミクロフィブリル中の少なくとも一部の水酸基の水素原子が環状カルボン酸無水物のカルボキシル基含有基によって置換されていれば、その他の置換基を有していてもよいし、また、セルロースミクロフィブリル中の全ての水酸基の水素原子が環状カルボン酸無水物のカルボキシル基含有基によって置換された構造を有するものも含まれる。
上記環状カルボン酸無水物としては、後ほど詳述する。
上記環状カルボン酸無水物のカルボキシル基含有基としては、例えば、下記式(1);
Figure 0006950169
(上記式(1)中、Rは、置換基を有していてもよい直鎖状の炭素数1〜5の炭化水素基を表す。*は、結合手を表す。)で表される基が好適な形態として挙げられる。
上記式(1)中、Rは、置換基を有していてもよい直鎖状の炭素数1〜5(好ましくは1〜3、より好ましくは1〜2)の炭化水素基を表すが、該炭化水素基としては、具体的には、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基、n−ペンチレン基のアルキレン基;ビニレン基、プロペニレン基などのアルケニレン基;などが挙げられる。
中でも、上記Rとしては、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、又は、ビニレン基が好ましく、エチレン基、又は、ビニレン基がより好ましい。
上記Rの有していてもよい置換基としては、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1〜30(好ましくは1〜25、より好ましくは1〜20、更に好ましくは10〜20、特に好ましくは15〜20)の炭化水素基が挙げられ、該炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などのアルキル基;ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、デセニル基、ドデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基などのアルケニル基;などが挙げられる。
中でも、上記Rの有していてもよい置換基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、ビニル基、プロペニル基、ドデセニル基、ヘキサデセニル基、又は、オクタデセニル基が好ましく、メチル基、ビニル基、ヘキサデセニル基、又は、オクタデセニル基がより好ましく、ヘキサデセニル基、又は、オクタデセニル基が更に好ましい。
なお、上記Rが上記置換基を有する場合、上記Rの有する置換可能な水素原子のうち、1つが上記置換基で置換されていてもよいし、2つ以上が上記置換基で置換されていてもよく、2つ以上が置換されている場合には、それぞれの置換基は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
上記セルロースミクロフィブリル中の一部の水酸基の水素原子が環状カルボン酸無水物のカルボキシル基含有基によって置換された構造を有するミクロフィブリル化植物繊維は、上記製造方法によって得られたミクロフィブリル化植物繊維を環状カルボン酸無水物(変性化剤)によって変性したり、上記セルロースミクロフィブリルの原料となり得る天然物(例えば、果実、穀物、根菜などの資源バイオマス、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、及びこれらを原料として得られるパルプや紙、布、農作物残廃物、食品廃棄物や下水汚泥などの廃棄バイオマス、稲わら、麦わら、間伐材などの未使用バイオマスの他、ホヤ、酢酸菌等の生産するセルロースなど)をセルロース原料として、環状カルボン酸無水物(変性化剤)によって変性し、その後に上記酵素処理を(更には機械処理を)行ったりすることにより得られる。
上記環状カルボン酸無水物(変性化剤)の具体例としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸などの炭素数4〜10(好ましくは4〜6)の環状カルボン酸無水物;及び当該環状カルボン酸無水物に上記式(1)中のRが有していてもよい置換基に相当する置換基が結合した化合物;などが挙げられる。これらの中でも、ゴム中でのミクロフィブリル化植物繊維の分散性の観点から、無水コハク酸、無水マレイン酸、ヘキサデセニルコハク酸無水物、ヘキサデセニルマレイン酸無水物、オクタデセニルコハク酸無水物、オクタデセニルマレイン酸無水物が好適に用いられる。より好ましくはヘキサデセニルコハク酸無水物、ヘキサデセニルマレイン酸無水物、オクタデセニルコハク酸無水物、オクタデセニルマレイン酸無水物、更に好ましくはヘキサデセニルコハク酸無水物、オクタデセニルコハク酸無水物である。
これら変性化剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記変性化剤と、上記ミクロフィブリル化植物繊維又は上記セルロース原料とを反応させてエステル化(変性反応)することにより、上記ミクロフィブリル化植物繊維又は上記セルロース原料を構成するセルロースの一部の水酸基の水素原子が、変性化剤(環状カルボン酸無水物)に由来する置換基(カルボキシル基含有基)に置換される。
なお、上記変性化剤と、上記ミクロフィブリル化植物繊維又は上記セルロース原料との反応が阻害されないよう、予め上記ミクロフィブリル化植物繊維又は上記セルロース原料に含まれる水をトルエンやN−メチルピロリドンなどの溶媒で置換しておくことが好ましい。
上記変性化剤と、上記ミクロフィブリル化植物繊維又は上記セルロース原料とのエステル化反応を行う方法としては、特に限定されず、エステル化反応を行う方法として通常行われる方法を採用することができるが、例えば、次のいずれかの方法で行うことができる。得られたセルロースミクロフィブリル中の一部の水酸基の水素原子が環状カルボン酸無水物のカルボキシル基含有基によって置換された構造を有するミクロフィブリル化植物繊維は、通常、水等による洗浄、ろ過、乾燥等により溶媒や触媒などを除去してタイヤ用ゴム組成物に配合するミクロフィブリル化植物繊維として使用できる。
(I)予め溶媒置換された上記ミクロフィブリル化植物繊維又は上記セルロース原料を分散させた分散液中に、変性化剤(環状カルボン酸無水物)や必要に応じて炭酸カリウム等のエステル化触媒を逐次あるいは一括で添加し、反応させる。
(II)変性化剤(環状カルボン酸無水物)、上記ミクロフィブリル化植物繊維又は上記セルロース原料、更に必要に応じて炭酸カリウム等のエステル化触媒を混合し、反応させる。
上記変性化剤の、上記ミクロフィブリル化植物繊維又は上記セルロース原料に対する付加率は、付加効率とゴム中でのミクロフィブリル化植物繊維の分散性とのバランスの観点から、5〜150質量%が好ましく、10〜100質量%がより好ましい。
なお、上記変性化剤の、上記ミクロフィブリル化植物繊維又は上記セルロース原料に対する付加率は、後述する実施例において行われる算出方法により算出することができる。
<その他の配合剤>
第2の本発明のゴム組成物には、上記した成分以外に、従来ゴム工業で使用される他の配合剤、例えば、補強剤(カーボンブラック、シリカ等)、シランカップリング剤、加硫剤、ステアリン酸、加硫促進剤、加硫促進助剤、オイル、硬化レジン、ワックス、老化防止剤等が挙げられる。
<ゴム組成物の製造方法>
第2の本発明のゴム組成物は、ゴム成分と、上記ミクロフィブリル化植物繊維と、その他の必要な配合剤とを、例えば、ゴム用混練機等を用いて従来公知の方法で混合し、従来公知の方法で加硫することにより製造することができ、ゴム成分と、上記ミクロフィブリル化植物繊維とを混合する工程を含むゴム組成物の製造方法もまた第2の本発明の1つであるが、例えば、上記ミクロフィブリル化植物繊維とゴム成分とを予め混合した後、その他の必要な配合剤を混合して製造することが好ましい。なお、上記ミクロフィブリル化植物繊維とゴム成分とを予め混合した後、その他の必要な配合剤を混合する際、更にゴム成分を混合してもよい。
すなわち、上記ミクロフィブリル化植物繊維とゴム成分とを予め混合する工程(i)を含むゴム組成物の製造方法もまた、第2の本発明の1つである。
上記工程(i)では、上記ミクロフィブリル化植物繊維とゴム成分を混合する。このように、予め上記ミクロフィブリル化植物繊維とゴム成分を混合することで、ゴム組成物中に上記ミクロフィブリル化植物繊維をより均一に分散できる。上記ミクロフィブリル化植物繊維とゴム成分を容易に混合できるという点から、該工程では、上記ミクロフィブリル化植物繊維とゴム成分を水等の溶媒中で混合することが好ましい。なお、当該混合する方法としては、特に限定されず、例えば、プロペラ式撹拌装置、ホモジナイザー、ロータリー撹拌装置、電磁撹拌装置、手動による撹拌等の一般的な方法を用いることができる。
上記工程(i)では、上記ミクロフィブリル化植物繊維の溶媒分散液(特に好ましくは水分散液)を使用することが好ましい。これにより、上記ミクロフィブリル化植物繊維とゴム成分とを短時間で均一に混合できる。上記ミクロフィブリル化植物繊維の分散液(100質量%)中、上記ミクロフィブリル化植物繊維の含有量(固形分)は、好ましくは2〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%である。
上記ミクロフィブリル化植物繊維の分散液は、公知の方法で製造でき、その製造方法は特に限定されず、例えば、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミルなどを用いて、上記ミクロフィブリル化植物繊維を水等の溶媒に分散させることで調製できる。
また、上記工程(i)では、ゴム成分としてゴムラテックスを使用することが好ましい。これにより、上記ミクロフィブリル化植物繊維とゴム成分とを短時間でより均一に混合できる。
上記ゴムラテックスとしては、上述したゴム成分のラテックスなどが挙げられるが、具体的には、例えば、天然ゴムラテックス、合成ジエン系ゴムラテックス(ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、イソプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、エチレン酢酸ビニルゴム、クロロプレンゴム、ビニルピリジンゴム、ブチルゴムなどのラテックス)などのジエン系ゴムラテックスが好適に使用できる。このように、上記ゴムラテックスが、ジエン系ゴムラテックスであることもまた、第2の本発明の好適な実施形態の1つである。これらゴムラテックスとしては、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、第2の本発明の効果がより好適に得られるという点から、天然ゴムラテックス、SBRラテックス、BRラテックス、イソプレンゴムラテックスがより好ましく、天然ゴムラテックスが特に好ましい。
天然ゴムラテックスはヘベア樹等の天然ゴムの樹木の樹液として採取され、ゴム成分のほか水、タンパク質、脂質、無機塩類等を含み、ゴム中のゲル分は種々の不純物の複合的な存在に基づくものと考えられている。第2の本発明では、天然ゴムラテックスとして、ヘベア樹をタッピングして出てくる生ラテックス(フィールドラテックス)、遠心分離法やクリーミング法によって濃縮した濃縮ラテックス(精製ラテックス、常法によりアンモニアを添加したハイアンモニアラテックス、亜鉛華とTMTDとアンモニアによって安定化させたLATZラテックス等)等を使用できる。
上記ゴムラテックスのpHは、好ましくは8.5以上、より好ましくは9.5以上である。また、好ましくは12以下、より好ましくは11以下である。上記ゴムラテックスのpHをこのような範囲とすることで、ゴムラテックスの劣化を抑え、安定した状態で保つことができる。
上記ゴムラテックスは、従来公知の製法で調製でき、各種市販品も使用できる。なお、ゴムラテックスとしては、ゴム固形分が30〜80質量%のものを使用することが好ましい。より好ましくは40〜70質量%である。
上記工程(i)では、第2の本発明のゴム組成物において前述の含有量となるように各成分を配合することが好ましい。これにより、第2の本発明の効果が充分に得られる。また、各種材料の歩留まりや作業性も良好となる。
上記工程(i)により、上記ミクロフィブリル化植物繊維がゴムマトリックス中に均一に分散したマスターバッチを調製できる。なお、上記工程(i)で得られた混合物がスラリー状態である場合は、上記混合物を公知の方法で凝固、乾燥した後、バンバリーミキサー等で混練りすることにより、マスターバッチを調製できる。また、上記工程(i)においてゴム成分としてゴムラテックスを用いた場合は、ゴムラテックスと上記ミクロフィブリル化植物繊維との混合物をホモジナイザー等で撹拌し分散液とした後、公知の方法で凝固、乾燥することで、マスターバッチを調製できる。このマスターバッチをその他の配合剤と混練することにより、第2の本発明におけるゴム組成物を得ることができる。
なお、該マスターバッチは、第2の本発明の効果を阻害しない範囲で、ゴム成分、上記ミクロフィブリル化植物繊維以外の他の成分を含んでもよい。
第2の本発明のゴム組成物は、タイヤ部材に使用することができる。このように、第2の本発明のタイヤ用ゴム組成物を用いて作製したタイヤもまた、第2の本発明の1つである。該タイヤとしては、空気入りタイヤ、スタッドレスタイヤ(冬用タイヤ)、ランフラットタイヤ等が挙げられる。
第2の本発明のタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤの各部材の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形することにより未加硫タイヤを形成した後、加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造できる。
第2の本発明のタイヤが空気入りタイヤである場合、第2の本発明のゴム組成物を適用できる部材としては、サイドウォール、ベーストレッド、ビードエイペックス、クリンチエイペックス、インナーライナー、アンダートレッド、ブレーカートッピング、プライトッピング、トレッド等が挙げられ、なかでも、トレッド、サイドウォールに好適に使用できる。
第2の本発明のタイヤが空気入りタイヤである場合、乗用車、トラック・バス等に好適に使用できる。
次に、第2の本発明のタイヤがスタッドレスタイヤである場合について説明する。
第2の本発明のゴム組成物は、ゴム成分、及び、平均繊維径が1nm以上20nm未満のミクロフィブリル化植物繊維を含む。ゴム組成物に配合するミクロフィブリル化植物繊維として、平均繊維径1nm以上20nm未満、と解繊度合いが大きく平均繊維径の小さいものを用いることで、ミクロフィブリル化植物繊維がゴム中で凝集塊となるのが低減され、ゴム中でのミクロフィブリル化植物繊維の分散性がより高められる。よって、ゴム組成物に平均繊維径が1nm以上20nm未満のミクロフィブリル化植物繊維を配合することで、ゴム中でのミクロフィブリル化植物繊維の分散性がより高められ、その結果、耐摩耗性、及び、補強性を改善することができる。従って、第2の本発明のゴム組成物をスタッドレスタイヤの各部材に適用すると、低燃費性を維持しながら、ウェットグリップ性能、氷上性能、耐摩耗性、及び、補強性の改善されたスタッドレスタイヤを提供できる。
第2の本発明のゴム組成物をスタッドレスタイヤの各部材に適用する場合、用いられるゴム成分としては、上述したものと同様のものを用いることができるが、なかでも、優れた低温特性(氷上性能)を付与できる観点から、天然ゴム(NR)とブタジエンゴム(BR)とを含むことが好ましい。
ゴム成分100質量%中の天然ゴムの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは40質量%以上である。また、該含有量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下、特に好ましくは60質量%以下である。天然ゴムの含有量がこのような範囲であることにより、低燃費性を維持しながら、氷上性能、耐摩耗性をより改善することができる。
ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、必要な氷上性能を発揮させる観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは40質量%以上である。また、該含有量は、加工性の観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。
第2の本発明のゴム組成物をスタッドレスタイヤの各部材に適用する場合、用いられるミクロフィブリル化植物繊維としては、上述したものと同様のものが挙げられる。
第2の本発明のゴム組成物をスタッドレスタイヤの各部材に適用する場合、上記ミクロフィブリル化植物繊維の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは100質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは25質量部以下、特に好ましくは20質量部以下である。上記範囲内であれば、上記ミクロフィブリル化植物繊維を良好に分散させ、低燃費性を維持しながら、氷上性能、ウェットグリップ性能をより改善することができる。
第2の本発明のゴム組成物をスタッドレスタイヤの各部材に適用する場合、第2の本発明のゴム組成物は、可塑剤としてオイルを含むことが好ましい。これにより、硬度を適切な低さに調整し良好な氷上性能を得ることができる。オイルとしては特に限定されないが、例えば、プロセスオイル、植物油脂、又はその混合物を用いることができる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生湯、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油などが挙げられる。なかでも、パラフィン系プロセスオイルが好適に用いられる。
オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは100質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは30質量部以下である。該含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上である。上記範囲内であれば、氷上性能をより改善することができる。
第2の本発明のゴム組成物は、キャップトレッド、ベーストレッド、アンダートレッド、クリンチエイペックス、ビードエイペックス、サイドウォール、ブレーカー、エッジバンド、フルバンド、ブレーカークッションゴム、カーカスコード被覆用ゴム等のスタッドレスタイヤの各部材に使用でき、特にトレッドに好適に使用できる。
第2の本発明のゴム組成物を用いて作製した部材を有するスタッドレスタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階で各部材(トレッドなど)の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧して、第2の本発明のスタッドレスタイヤを製造することができる。
第2の本発明のゴム組成物を用いて作製した部材を有するスタッドレスタイヤは、乗用車、トラック・バス(重荷重車)等に好適に使用できる。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
以降の実施例、比較例及び参考例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
天然ゴムラテックス:HYTEX HA(Golden Hope Plantations(ゴールデン・ホープ・プランテーションズ)社製の天然ゴムラテックス、固形分:60質量%、平均粒径:1μm)
ミクロフィブリル化植物繊維:ダイセル化学工業(株)製のセリッシュKY−100G(平均繊維長:0.5mm、平均繊維径:0.02μm、固形分:10質量%)
レシチン:辻製油(株)製のSLP−ホワイト(大豆由来の高純度レシチン、リン脂質(アセトン不溶物)含有量:96〜98質量%)
サポニン:米山薬品工業(株)製のサポニン
マスターバッチ1−1〜1−10:下記製造例で調製
BR:宇部興産(株)製のUBEPOL BR150B
オイル:出光興産(株)製のミネラルオイルPW−380(パラフィン系プロセスオイル)
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のN220
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−フェニル−N'−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸つばき
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーDM(ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド)
<製造例1−1〜1−3:マスターバッチ1−1〜1−3の調製>
表1−1の配合に従い、高速ホモジナイザー(IKA社製のバッチ式ホモジナイザーT65Dウルトラタラックス(Ultraturrax T25))を用いて、24,000rpmの条件でミクロフィブリル化植物繊維及びレシチンを水中で1時間撹拌分散させ、ついで天然ゴムラテックスを添加し、更に30分撹拌分散させた。得られた混合液を5質量%ギ酸水溶液で凝固し、水洗後、40℃の加熱オーブン中で乾燥させることでマスターバッチ1−1〜1−3を得た。
<製造例1−4〜1−6:マスターバッチ1−4〜1−6の調製>
表1−1の配合に従い、高速ホモジナイザー(IKA社製のバッチ式ホモジナイザーT65Dウルトラタラックス(Ultraturrax T25))を用いて、24,000rpmの条件でミクロフィブリル化植物繊維及びサポニンを水中で1時間撹拌分散させ、ついで天然ゴムラテックスを添加し、更に30分撹拌分散させた。得られた混合液を5質量%ギ酸水溶液で凝固し、水洗後、40℃の加熱オーブン中で乾燥させることでマスターバッチ1−4〜1−6を得た。
<製造例1−7:マスターバッチ1−7の調製>
レシチンを配合しなかった点以外はマスターバッチ1−1と同様の方法でマスターバッチ1−7を得た。
<製造例1−8:マスターバッチ1−8の調製>
天然ゴムラテックスをそのまま5質量%ギ酸水溶液で凝固し、水洗後、40℃の加熱オーブン中で乾燥させることでマスターバッチ1−8を得た。
<製造例1−9:マスターバッチ1−9の調製>
ミクロフィブリル化植物繊維を配合しなかった点以外はマスターバッチ1−2と同様の方法でマスターバッチ1−9を得た。
<製造例1−10:マスターバッチ1−10の調製>
ミクロフィブリル化植物繊維を配合しなかった点以外はマスターバッチ1−5と同様の方法でマスターバッチ1−10を得た。
Figure 0006950169
<加硫ゴム組成物の調製>
表1−2及び1−3の配合に従い、135℃に加熟した250ccインターナルミキサーを用いて、88rpmの条件で加硫促進剤及び硫黄以外の薬品と各種マスターバッチとを3分間混練りした後、混練りしたゴムを排出して、60℃、24rpmの条件で6インチオープンロールにより加硫促進剤と硫黄を添加、5分間混練し、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を150℃でプレス加熱することで、加硫ゴム組成物を得た。
<実施例、比較例及び参考例>
上記の方法で作製した加硫ゴム組成物を用い、以下に示す評価を行った。なお、表1−2及び1−3に示す特性データ中の各指数については、参考例1−1を基準配合とし、下記記載の計算式で算出した。表1−2において、石油外資源の含有量とは、ゴム組成物100質量%中の石油外資源の含有量(質量%)である。
(引張試験)
JIS K6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に準じて3号ダンベルを用いて引張試験を実施し、100%引張応力、300%引張応力、引張強度、破断伸び、破壊エネルギーを測定した。下記の計算式、
100%引張応力指数=(各配合の100%引張応力)/(基準配合の100%引張応力)×100
300%引張応力指数=(各配合の300%引張応力)/(基準配合の300%引張応力)×100
引張強度指数=(各配合の破断応力)/(基準配合の破断応力)×100
破断伸び指数=(各配合の破断伸び)/(基準配合の破断伸び)×100
破壊エネルギー指数=(各配合の破壊エネルギー)/(基準配合の破壊エネルギー)×100
により100%引張応力指数、300%引張応力指数、引張強度指数、破断伸び指数、破壊エネルギー指数を算出した。指数が大きい程、加硫ゴム組成物が良好に補強されており、ゴムの機械強度が大きく、破壊特性に優れることを示す。
(操縦安定性指数及び転がり抵抗指数)
前述の方法で調製された加硫ゴム組成物の2mmゴムスラブシートから測定用試験片を切り出し、粘弾性スペクトロメータVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度70℃、初期歪10%、動歪2%、周波数10Hzの条件下で、各測定用試験片のE*(複素弾性率)及びtanδ(損失正接)を測定した。下記の計算式、
操縦安定性指数=(各配合のE*)/(基準配合のE*)×100
転がり抵抗指数=(各配合のtanδ)/(基準配合のtanδ)×100
により操縦安定性指数、転がり抵抗指数を算出した。操縦安定性指数が大きい程、空気入りタイヤとして用いた場合に良好な操縦安定性を与え、転がり抵抗指数が小さい程、空気入りタイヤとして用いた場合に良好な転がり抵抗特性(低燃費性)を与えることを示す。
Figure 0006950169
Figure 0006950169
表1−2より、ゴム成分、ミクロフィブリル化植物繊維、及び乳化剤を含む実施例では、良好な低燃費性を維持しながら、破断伸びを維持又は改善し、引張応力、引張強度、破壊エネルギー、操縦安定性を顕著に改善して、破壊特性、操縦安定性及び低燃費性の性能バランスを顕著に改善できた。
更に、表1−3より、ミクロフィブリル化植物繊維を含有し、乳化剤を含有しない場合(比較例1−1)、及び、レシチンを含有し、ミクロフィブリル化植物繊維を含有しない場合(比較例1−2)に比べて、ミクロフィブリル化植物繊維及びレシチンを含有する場合(実施例1−2)には、引張応力、引張強度、破断伸び、破壊エネルギー、操縦安定性、及び転がり抵抗を相乗的に顕著に改善でき、破壊特性、操縦安定性及び低燃費性の性能バランスを顕著かつ、相乗的に改善できた。
また同様に、ミクロフィブリル化植物繊維を含有し、乳化剤を含有しない場合(比較例1−1)、及び、サポニンを含有し、ミクロフィブリル化植物繊維を含有しない場合(比較例1−3)に比べて、ミクロフィブリル化植物繊維及びサポニンを含有する場合(実施例1−5)には、引張応力、引張強度、破断伸び、破壊エネルギー、操縦安定性、及び転がり抵抗を相乗的に顕著に改善でき、破壊特性、操縦安定性及び低燃費性の性能バランスを顕著かつ、相乗的に改善できた。
<加硫ゴム組成物の調製>
表1−4の配合に従い、135℃に加熟した250ccインターナルミキサーを用いて、88rpmの条件で加硫促進剤及び硫黄以外の薬品と各種マスターバッチとを3分間混練りした後、混練りしたゴムを排出して、60℃、24rpmの条件で6インチオープンロールにより加硫促進剤と硫黄を添加、5分間混練し、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を150℃でプレス加熱することで、加硫ゴム組成物を得た。
<実施例、比較例及び参考例>
上記の方法で作製した加硫ゴム組成物を用い、以下に示す評価を行った。なお、表1−4に示す特性データ中の各指数については、参考例1−11を基準配合とし、下記記載の計算式で算出した。
(操縦安定性指数及び転がり抵抗指数)
前述の方法で調製された加硫ゴム組成物の2mmゴムスラブシートから測定用試験片を切り出し、粘弾性スペクトロメータVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度70℃、初期歪10%、動歪2%、周波数10Hzの条件下で、各測定用試験片のE*(複素弾性率)及びtanδ(損失正接)を測定した。下記の計算式、
操縦安定性指数=(各配合のE*)/(基準配合のE*)×100
転がり抵抗指数=(各配合のtanδ)/(基準配合のtanδ)×100
により操縦安定性指数、転がり抵抗指数を算出した。操縦安定性指数が大きい程、スタッドレスタイヤとして用いた場合に良好な操縦安定性を与え、転がり抵抗指数が小さい程、スタッドレスタイヤとして用いた場合に良好な転がり抵抗特性(低燃費性)を与えることを示す。
(氷上性能)
−5℃に温度制御された恒温室内に設置された−2℃の氷面上に、前記加硫ゴム試験片を2kg/cmで押しつけ、20km/時間で滑らせるときの摩擦係数(氷上摩擦係数)を測定し、参考例1−11の氷上摩擦性能指数を100とし、下記計算式により、各配合の氷上摩擦係数を指数表示した。氷上摩擦性能指数が大きいほど、氷上摩擦性能が高く、スタッドレスタイヤとして用いた場合に氷上性能に優れることを示す。
(氷上摩擦性能指数)=(各配合の氷上摩擦係数)/(参考例1−11の氷上摩擦係数)×100
Figure 0006950169
表1−4より、ゴム成分、ミクロフィブリル化植物繊維、及び乳化剤を含む実施例では、参考例1−11と比較して、氷上性能、操縦安定性及び低燃費性の性能バランスを顕著に改善できた。更に、ミクロフィブリル化植物繊維を含有し、乳化剤を含有しない場合(比較例1−11)、及び、レシチンを含有し、ミクロフィブリル化植物繊維を含有しない場合(比較例1−12)に比べて、ミクロフィブリル化植物繊維及びレシチンを含有する場合(実施例1−12)には、氷上性能、操縦安定性、及び転がり抵抗を相乗的に改善でき、氷上性能、操縦安定性及び低燃費性の性能バランスを相乗的に改善できた。また同様に、ミクロフィブリル化植物繊維を含有し、乳化剤を含有しない場合(比較例1−11)、及び、サポニンを含有し、ミクロフィブリル化植物繊維を含有しない場合(比較例1−13)に比べて、ミクロフィブリル化植物繊維及びサポニンを含有する場合(実施例1−14)には、氷上性能、操縦安定性、及び転がり抵抗を相乗的に改善でき、氷上性能、操縦安定性及び低燃費性の性能バランスを相乗的に改善できた。
<調製例2−1:ミクロフィブリル化植物繊維2−1の調製>
水を含んだ針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP、日本製紙(株)製)250.00g(固形分:50.00g)を入れた容積2000mLの容器に、セルラーゼ(Cellic Ctec2、ノボザイム社製、0.5mL)を添加し、50℃、震とう速度100rpmにて3時間、反応を行った。
酵素反応終了後の溶液を固形分濃度2.0質量%に調製し、その後、バッチ内の塩酸濃度が0.6%になるように塩酸を添加し、75℃で3時間撹拌した。得られた混合物を水でpHがおよそ7.0になるまで水で洗浄を繰り返した後、固形分濃度が30質量%になるように脱水処理した。ついで得られた含水パルプを400rpm、0℃の操業条件の二軸混練押出機で処理することで、ミクロフィブリル化植物繊維2−1を調製した。下記方法にて平均繊維径、平均繊維長を算出したところ、平均繊維径は4.7nm、平均繊維長は83.5μmであった。
(平均繊維径、平均繊維長の算出)
ミクロフィブリル化植物繊維2−1の0.001質量%水分散液を調製した。この希釈分散液をマイカ製試料台に薄く延ばし、50℃で加熱乾燥させて観察用試料を作成した。原子間力顕微鏡(AFM、株式会社日立ハイテクサイエンス製、製品名「走査型プローブ顕微鏡 SPI3800N」)にて試料を観察し、形状像の断面高さを計測することにより、平均繊維径、平均繊維長を算出した。
<製造例2−1〜2−2:マスターバッチ2−1〜2−2の調製>
表2−1の配合に従い、高速ホモジナイザー(IKA社製のバッチ式ホモジナイザーT65Dウルトラタラックス(Ultraturrax T25))を用いて、24,000rpmの条件でミクロフィブリル化植物繊維2−1を水中で1時間撹拌分散させ、ついで天然ゴムラテックス(HYTEX HA(Golden Hope Plantations(ゴールデン・ホープ・プランテーションズ)社製の天然ゴムラテックス、固形分:60質量%、平均粒径:1μm))を添加し、更に30分撹拌分散させた。得られた混合液を5質量%ギ酸水溶液で凝固し、水洗後、40℃の加熱オーブン中で乾燥させることでマスターバッチ2−1〜2−2を得た。
<製造例2−3:マスターバッチ2−3の調製>
天然ゴムラテックスをそのまま5質量%ギ酸水溶液で凝固し、水洗後、40℃の加熱オーブン中で乾燥させることでマスターバッチ2−3を得た。
Figure 0006950169
<実施例2−1〜2−2、比較例2−1>
以下、実施例2−1〜2−2、比較例2−1で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
マスターバッチ2−1〜2−3:上記製造例2−1〜2−3で調製
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸つばき
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーDM(ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド)
<加硫ゴム組成物の調製>
表2−2の配合に従い、135℃に加熟した250ccインターナルミキサーを用いて、88rpmの条件で加硫促進剤及び硫黄以外の薬品と各種マスターバッチとを3分間混練りした後、混練りしたゴムを排出して、60℃、24rpmの条件で6インチオープンロールにより加硫促進剤と硫黄を添加、5分間混練し、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を150℃でプレス加熱することで、加硫ゴム組成物を得た。
<評価>
上記の方法で作製した加硫ゴム組成物を用い、以下に示す評価を行った。結果を表2−2に示す。
(引張試験)
JIS K6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に準じて、加硫ゴム組成物からなる3号ダンベル型試験片を用いて引張試験を実施し、加硫ゴム組成物の破断時伸び(引張伸び;EB〔%〕)及び破断時の引張強度(引張破断強度;TB〔MPa〕)を測定した。得られた値より、以下の式で破壊強度を求め、比較例2−1を100としたときの指数で表示した(破壊強度指数)。指数が大きいほど、破壊強度に優れることを示す。
破壊強度=EB×TB/2
(摩耗試験)
ランボーン型摩耗試験機を用いて、室温、負荷荷重1.0kgf、スリップ率30%の条件で摩耗量を測定した。得られた摩耗量の逆数を、比較例2−1を100としたときの指数で表示した(耐摩耗性指数)。指数が大きいほど、耐摩耗性に優れることを示す。
Figure 0006950169
表2−2より、ゴム成分、及び、平均繊維径が1nm以上20nm未満であるミクロフィブリル化植物繊維を含む実施例では、耐摩耗性、及び、破壊強度(補強性)を顕著に改善できた。
<調製例2−11:ミクロフィブリル化植物繊維2−11の調製>
水を含んだ針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP、日本製紙(株)製)250.00g(固形分:50.00g)を入れた容積2000mLの容器に、セルラーゼ(Cellic Ctec2、ノボザイム社製、0.5mL)を添加し、50℃、震とう速度100rpmにて3時間、反応を行った。
酵素反応終了後の溶液を固形分濃度2.0質量%に調製し、その後、バッチ内の塩酸濃度が0.6%になるように塩酸を添加し、75℃で3時間撹拌した。得られた混合物を水でpHがおよそ7.0になるまで水で洗浄を繰り返した後、固形分濃度が30質量%になるように脱水処理した。ついで得られた含水パルプを400rpm、0℃の操業条件の二軸混練押出機で処理することで、未変性ミクロフィブリル化植物繊維を調製した。
得られた未変性ミクロフィブリル化植物繊維200.00gと、N−メチルピロリドン200.00gとを容積2000mLの容器に仕込み、水分を留去して溶媒置換繊維を得た。系内を70℃とし、ヘキサデセニルコハク酸無水物を39.70gと、炭酸カリウム(エステル化触媒)を8.50g投入して2時間反応させた。反応物をエタノール、酢酸、水で順次洗浄し、エタノールで溶媒置換した後に乾燥させて、ミクロフィブリル化植物繊維2−11(セルロースミクロフィブリル中の一部の水酸基の水素原子が環状カルボン酸無水物のカルボキシル基含有基によって置換された構造を有する)を調製した。ヘキサデセニルコハク酸無水物の付加率を評価するサンプルの洗浄溶剤にはエタノールを用いた。ミクロフィブリル化植物繊維2−11における、未変性ミクロフィブリル化植物繊維に対するヘキサデセニルコハク酸無水物の付加率を下記方法により測定したところ、60.6質量%であった。また、下記方法にてミクロフィブリル化植物繊維2−11の平均繊維径、平均繊維長を算出したところ、平均繊維径は5.1nm、平均繊維長は98.7μmであった。
(ヘキサデセニルコハク酸無水物の未変性ミクロフィブリル化植物繊維に対する付加率の測定)
付加率は下記式(I)の通り、ミクロフィブリル化植物繊維の変性前後の質量変化から算出した。付加率を評価するサンプルは十分な量の溶剤で洗浄した上で測定に供した。
Wp=(W−Ws)×100/Ws・・・(I)
Wp:ヘキサデセニルコハク酸無水物の未変性ミクロフィブリル化植物繊維に対する付加率(質量%)
W:変性後のミクロフィブリル化植物繊維(ミクロフィブリル化植物繊維2−11)の乾燥質量(g)
Ws:変性前の未変性ミクロフィブリル化植物繊維の乾燥質量(g)
(平均繊維径、平均繊維長の算出)
ミクロフィブリル化植物繊維2−11の0.001質量%水分散液を調製した。この希釈分散液をマイカ製試料台に薄く延ばし、50℃で加熱乾燥させて観察用試料を作成した。原子間力顕微鏡(AFM、株式会社日立ハイテクサイエンス製、製品名「走査型プローブ顕微鏡 SPI3800N」)にて試料を観察し、形状像の断面高さを計測することにより、平均繊維径、平均繊維長を算出した。
<製造例2−11〜2−12:マスターバッチ2−11〜2−12の調製>
表2−3の配合に従い、高速ホモジナイザー(IKA社製のバッチ式ホモジナイザーT65Dウルトラタラックス(Ultraturrax T25))を用いて、24,000rpmの条件でミクロフィブリル化植物繊維2−11を水中で1時間撹拌分散させ、ついで天然ゴムラテックス(HYTEX HA(Golden Hope Plantations(ゴールデン・ホープ・プランテーションズ)社製の天然ゴムラテックス、固形分:60質量%、平均粒径:1μm))を添加し、更に30分撹拌分散させた。得られた混合液を5質量%ギ酸水溶液で凝固し、水洗後、40℃の加熱オーブン中で乾燥させることでマスターバッチ2−11〜2−12を得た。
<製造例2−13:マスターバッチ2−13の調製>
天然ゴムラテックスをそのまま5質量%ギ酸水溶液で凝固し、水洗後、40℃の加熱オーブン中で乾燥させることでマスターバッチ2−13を得た。
Figure 0006950169
<実施例2−11〜2−12、比較例2−11>
以下、実施例2−11〜2−12、比較例2−11で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
マスターバッチ2−11〜2−13:上記製造例2−11〜2−13で調製
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−フェニル−N'−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸つばき
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーDM(ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド)
<加硫ゴム組成物の調製>
表2−4の配合に従い、135℃に加熟した250ccインターナルミキサーを用いて、88rpmの条件で加硫促進剤及び硫黄以外の薬品と各種マスターバッチとを3分間混練りした後、混練りしたゴムを排出して、60℃、24rpmの条件で6インチオープンロールにより加硫促進剤と硫黄を添加、5分間混練し、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を150℃でプレス加熱することで、加硫ゴム組成物を得た。
<評価>
上記の方法で作製した加硫ゴム組成物を用い、以下に示す評価を行った。結果を表2−4に示す。
(引張試験)
JIS K6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に準じて、加硫ゴム組成物からなる3号ダンベル型試験片を用いて引張試験を実施し、加硫ゴム組成物の破断時伸び(引張伸び;EB〔%〕)及び破断時の引張強度(引張破断強度;TB〔MPa〕)を測定した。得られた値より、以下の式で破壊強度を求め、比較例2−11を100としたときの指数で表示した(破壊強度指数)。指数が大きいほど、破壊強度に優れることを示す。
破壊強度=EB×TB/2
(摩耗試験)
ランボーン型摩耗試験機を用いて、室温、負荷荷重1.0kgf、スリップ率30%の条件で摩耗量を測定した。得られた摩耗量の逆数を、比較例2−11を100としたときの指数で表示した(耐摩耗性指数)。指数が大きいほど、耐摩耗性に優れることを示す。
Figure 0006950169
表2−4より、ゴム成分、及び、平均繊維径が1nm以上20nm未満であり、セルロースミクロフィブリル中の一部の水酸基の水素原子が環状カルボン酸無水物のカルボキシル基含有基によって置換された構造を有するミクロフィブリル化植物繊維を含む実施例では、耐摩耗性、及び、破壊強度(補強性)を顕著に改善できた。
<実施例2−21〜2−22、比較例2−21>
以下、実施例2−21〜2−22、比較例2−21で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
マスターバッチ2−1〜2−3:上記製造例2−1〜2−3で調製
BR:宇部興産(株)製のUBEPOL BR150B
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−フェニル−N'−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸つばき
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーDM(ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド)
<加硫ゴム組成物の調製>
表2−5の配合に従い、135℃に加熟した250ccインターナルミキサーを用いて、88rpmの条件で加硫促進剤及び硫黄以外の薬品と各種マスターバッチとを3分間混練りした後、混練りしたゴムを排出して、60℃、24rpmの条件で6インチオープンロールにより加硫促進剤と硫黄を添加、5分間混練し、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を150℃でプレス加熱することで、加硫ゴム組成物を得た。
また、得られた未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し加硫して、試験用タイヤ(サイズ:195/65R15、乗用車用スタッドレスタイヤ)を製造した。
<評価>
上記の方法で作製した加硫ゴム組成物、試験用タイヤを用い、以下に示す評価を行った。結果を表2−5に示す。
(引張試験)
JIS K6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に準じて、加硫ゴム組成物からなる3号ダンベル型試験片を用いて引張試験を実施し、加硫ゴム組成物の破断時伸び(引張伸び;EB〔%〕)及び破断時の引張強度(引張破断強度;TB〔MPa〕)を測定した。得られた値より、以下の式で破壊強度を求め、比較例2−21を100としたときの指数で表示した(破壊強度指数)。指数が大きいほど、スタッドレスタイヤとして用いた場合に破壊強度に優れることを示す。
破壊強度=EB×TB/2
(摩耗試験)
ランボーン型摩耗試験機を用いて、室温、負荷荷重1.0kgf、スリップ率30%の条件で摩耗量を測定した。得られた摩耗量の逆数を、比較例2−21を100としたときの指数で表示した(耐摩耗性指数)。指数が大きいほど、スタッドレスタイヤとして用いた場合に耐摩耗性に優れることを示す。
(ウェットグリップ性能)
(株)上島製作所製フラットベルト式摩擦試験機(FR5010型)を用いてウェットグリップ性能を評価した。上記加硫ゴム組成物からなる幅20mm、直径100mmの円筒形のゴム試験片をサンプルとして用い、速度20km/時間、荷重4kgf、路面温度20℃の条件で、路面に対するサンプルのスリップ率を0〜70%まで変化させ、その際に検出される摩擦係数の最大値を読み取った。比較例2−21を100として、下記計算式により測定結果を指数表示した。指数が大きいほど、スタッドレスタイヤとして用いた場合にウェットグリップ性能に優れることを示す。
(ウェットグリップ性能指数)=(各配合の摩擦係数の最大値)/(比較例2−21の摩擦係数の最大値)×100
(氷上性能〔氷上グリップ性能〕)
試験用タイヤを用いて、下記の条件で氷上で実車性能を評価した。試験用タイヤを国産2000ccのFR車に装着した。試験場所は住友ゴム工業株式会社の北海道旭川テストコース(氷上)で行い、氷上気温は−1〜−6℃であった。
制動性能(氷上制動停止距離):時速30km/hでロックブレーキを踏み停止させるまでに要した氷上の停止距離を測定した。比較例2−21を100として、下記計算式により測定結果を指数表示した。指数が大きいほど、スタッドレスタイヤとして用いた場合に氷上での制動性能(氷上性能)が良好であることを示す。
(氷上性能指数)=(比較例2−21の停止距離)/(各配合の停止距離)×100
(粘弾性試験)
粘弾性スペクトロメータVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度70℃、周波数10Hz、初期歪み10%及び動歪み2%の条件下で、加硫ゴム組成物の損失正接(tanδ)を測定した。比較例2−21を100として、下記計算式により測定結果を指数表示した。指数が大きいほど、スタッドレスタイヤとして用いた場合に転がり抵抗性に優れ、低発熱性(低燃費性)に優れることを示す。
(転がり抵抗指数)=(比較例2−21のtanδ)/(各配合のtanδ)×100
Figure 0006950169
表2−5より、ゴム成分、及び、平均繊維径が1nm以上20nm未満であるミクロフィブリル化植物繊維を含む実施例では、低燃費性を維持しながら、ウェットグリップ性能、氷上性能、耐摩耗性、及び、破壊強度(補強性)を顕著に改善できた。

Claims (11)

  1. ゴム成分、ミクロフィブリル化植物繊維、及び天然由来の乳化剤を含み、
    前記ミクロフィブリル化植物繊維の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、5〜100質量部であり、
    前記乳化剤の含有量が、前記ミクロフィブリル化植物繊維の固形分100質量部に対して、30〜500質量部であるタイヤ用ゴム組成物。
  2. 前記ゴム成分が、天然ゴム、改質天然ゴム、合成ゴム、及び変性合成ゴムからなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
  3. 前記ミクロフィブリル化植物繊維が、セルロースミクロフィブリルである請求項1又は2記載のタイヤ用ゴム組成物。
  4. 前記ミクロフィブリル化植物繊維の平均繊維径が1〜100nmである請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
  5. 前記乳化剤が、レシチン及び/又はサポニンである請求項1〜のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物を用いて作製したタイヤ。
  7. ゴム成分、及び、ミクロフィブリル化植物繊維を含み、
    前記ミクロフィブリル化植物繊維の平均繊維径が、1nm以上18nm以下である
    ことを特徴とするタイヤ用ゴム組成物(但し、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリカーボネート系、脂肪族系、飽和炭化水素系、アクリル系もしくは植物由来系の重合体または共重合体であり、且つ、水酸基、シラン官能基、イソシアネート基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、カルボキシ基、酸無水物基およびエポキシ基からなる群から選択される少なくとも1つ以上の反応性官能基を有する架橋性成分を含むゴム組成物を除く)を用いて作製したスタッドレスタイヤ。
  8. 前記ミクロフィブリル化植物繊維が、セルロースミクロフィブリルである請求項記載のスタッドレスタイヤ。
  9. 前記ミクロフィブリル化植物繊維の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して1〜30質量部である請求項又は記載のスタッドレスタイヤ。
  10. 前記ミクロフィブリル化植物繊維が、セルロースミクロフィブリル中の一部の水酸基の水素原子が環状カルボン酸無水物のカルボキシル基含有基によって置換された構造を有する請求項のいずれかに記載のスタッドレスタイヤ。
  11. 前記ミクロフィブリル化植物繊維の平均繊維径が、1nm以上8nm以下である請求項7〜10のいずれかに記載のスタッドレスタイヤ。
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