JP6948636B2 - ほうじ茶の製造方法及び該製造方法で得られるほうじ茶 - Google Patents
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Description
ほうじ茶は、下級茶等の緑茶を褐色になるまで強火で焙煎したもので、芳ばしい香りが特徴である。ほうじ茶の原料は、晩い時期に摘んだ茶、茶樹の整枝のために刈り取った葉や茎、荒茶の製造工程や煎茶の仕上げ工程で選別されて出てくる茎や大形の葉等であるが、近年では良質な原料を使った高品質なほうじ茶も存在する。ほうじ茶は芳ばしい香りが口の中をすっきりさせるので食後に喜ばれ、刺激が少なく子供や高齢者にも好まれている。
日本茶といえば煎茶や玉露、抹茶が有名であり、ほうじ茶はどちらかと言うと目立たない存在である。この理由には、下級茶を原料とするほうじ茶が多く、低品質なイメージがあることなどが挙げられる。一方、ほうじ茶は和食を引き立てる魅力的なものであり、焙煎が作り出すほうじ茶の香りは心地よく、嗜好性のある香りを持つ飲み物として非常に興味深い食品である(非特許文献1)。
ほうじ茶は緑茶を強火で焙煎して製造されることから、焙煎により緑茶に含まれるアミノ酸と糖が反応し(メイラード反応)、2-エチル-3,6-ジメチルピラジンや2-エチル-3,5-ジメチルピラジンなどの焙煎の香りを有する香り成分が多量に生成する。さらに、渋味成分であるエピガロカテキンガレートなどのカテキン類は焙煎により減少する。焙煎による茶の成分変化により、ほうじ茶は芳ばしい香りを持ち、渋味が少なくすっきりしており、ほうじ茶は緑茶とは全く異なる品質、特性の持つお茶となっている(非特許文献1、非特許文献2)。
非特許文献1では、ほうじ茶は緑茶を褐色になるまで強火で焙煎したもので、芳ばしい香りが特徴であるものとしており、その焙煎方法は直火式の焙煎機、遠赤外線式の焙煎機、砂炒式の焙煎機、焙烙を用いた方法があると報告されている(非特許文献1)。
特許文献1は、「水分含有率が1〜10質量%の範囲にある乾燥茶葉を、内壁表面の温度が150〜250℃の範囲の温度を維持するように加熱された加熱容器に投入し、該容器内に150〜250℃の範囲の温度に加熱された水蒸気含有気体を吹き込みながら、上記茶葉を3〜15分間加熱することを特徴とするチャフロサイドAの含有量が増加した飲料用茶葉の製造方法」を開示している(特許文献1)。
しかし、非特許文献1には、過熱水蒸気を使用したほうじ茶の製造方法は報告されておらず、特許文献1は、緑茶を原料とする過熱水蒸気を使用したほうじ茶の製造方法を開示又は示唆していない。
1.乾燥茶を過熱水蒸気に接触させる焙煎工程を特徴とするほうじ茶の製造方法。
2.前記過熱水蒸気の温度は170℃〜230℃である前項1に記載のほうじ茶の製造方法。
3.前記接触時間は50秒〜300秒である前項1又は2に記載のほうじ茶の製造方法。
4.乾燥茶を170℃〜230℃である過熱水蒸気で50秒〜300秒で接触させる焙煎工程により得られることを特徴とするほうじ茶。
5.乾燥茶を過熱水蒸気に接触させることを特徴とするほうじ茶の焙煎方法。
6.前記過熱水蒸気の温度は170℃〜230℃である前項5に記載のほうじ茶の焙煎方法。
7.前記接触時間は50秒〜300秒である前項5又は6に記載のほうじ茶の焙煎方法。
本発明のほうじ茶は、本発明のほうじ茶の製造方法で得られたほうじ茶だけでなく、該製造方法以外の方法で得られかつ本発明のほうじ茶の特性を有するほうじ茶を意味する。本発明のほうじ茶は、従来の製造方法(特に、焙煎工程において直火式焙煎又は遠赤外線式焙煎を採用)で得られたほうじ茶と比較して、ほうじ茶の外観が向上しておりさらに香り及び/若しくは香味が向上している、又は、ほうじ茶の外観を維持しながら香り及び/若しくは香味が向上している(参照:下記実施例)。
本発明のほうじ茶としては、特に限定されないが、例えば棒茶(茎茶)を含む。
市販されるほうじ茶(乾燥粉末)の製造方法は、一般的には、原料の合組工程、焙煎工程、及び篩い工程を含む。本発明のほうじ茶の製造方法では、焙煎工程以外は、自体公知の方法・工程を利用・採用することができる。
本発明のほうじ茶の製造方法で使用する原料は、従来のほうじ茶で使用されている原料を使用することができる。例えば、晩い時期に摘んだ茶、茶樹の整枝のために刈り取った葉や茎、荒茶の製造工程や前茶の仕上げ工程で選別されて出てくる茎や大型の葉等の下級茶や煎茶、玉露、茎茶(かりがね)等の市販されている緑茶、不発酵茶などを利用できる。
さらに、原料は、乾燥茶(荒茶)が好ましい。原料の形態は、特に限定されず、例えば、粉末であってもよい。
本発明において、「茶」とは、特に言及がない限り、茶葉茎(茶の葉及び/又は茎)を意味する。例えば、「乾燥茶」とは、乾燥茶葉茎(乾燥茶葉及び/又は乾燥茎茶)を意味する。
なお、乾燥茶の水分含有量は、0.5〜20質量%{(加熱前質量−加熱後質量)/加熱前質量×100}が好ましいが特に限定されない。
また、粉末乾燥茶は、例えば、乾燥茶を小片にして石臼等で挽いて粉にして製造できる。
本発明のほうじ茶の製造方法の焙煎工程では、過熱水蒸気接触処理を行う。なお、過熱水蒸気とは、100℃以上に加熱した水蒸気の気体を意味する。
過熱水蒸気接触処理では、過熱水蒸気を茶(ほうじ茶用)に接触させることを意味する。接触方法は、本発明の効果を得ることができれば、特に限定されない。例えば、吹き込み等を例示することができる。
吹き込みの一例として、粉末乾燥茶を、内部温度(内壁表面温度)が170℃〜230℃の範囲に維持された容器(例えば、自体公知の過熱水蒸気オーブンレンジ)に投入して、過熱水蒸気を該容器内に吹き込む。
過熱水蒸気の接触時間は、50秒〜300秒、好ましくは60秒〜250秒、より好ましくは60秒〜200秒である。
本発明のほうじ茶の製造方法で得られたほうじ茶の外観は、従来のほうじ茶の製造方法で得られたほうじ茶の外観と比較して、向上する若しくは同等以上であること、すなわち焦げにくいこと(焦げを防止できること)を下記実施例1での褐色化抑制評価により確認している。
なお、本実施例で使用した色差の測定条件及び測定装置は、以下の通りである。
試料台にOキャップを置き、外光を遮断し、ゼロ合わせを行った後、試料台に標準白板を置き、標準合わせを行う。φ30丸セルに試料を入れ、試料台に置き、色差測定を行う。
色差の測定条件:液体の透過測定を行う
試料の種類:液体
光路長:10mm
標準:標準白板
色差の測定装置:測色色差計SE-6000(日本電色工業株式会社製)
本発明のほうじ茶の製造方法で得られたほうじ茶のかさ比重は、従来のほうじ茶の製造方法で得られたほうじ茶のかさ比重と比較して、同等以下であること、すなわち膨化が促進していることを下記実施例2での膨化評価で確認している。
なお、膨化の促進したほうじ茶は香りがよく、膨化の促進していないほうじ茶は味が良いことが知られている(参照:非特許文献1)。すなわち、本発明のほうじ茶の製造方法で得られたほうじ茶は、膨化の促進した香りの良い(香りが向上している)ほうじ茶である。「香り」とは、飲食物に鼻を近づけた時に感じるオルソネーザル(たち香)である。「香りが向上」とは、人による官能評価で感じることで、総合的な評価である。
本発明のほうじ茶の製造方法で得られたほうじ茶の香味に関する品質は、従来のほうじ茶の製造方法で得られたほうじ茶の香味と比較して、優れていること(高いこと、向上していること)を下記実施例3の官能評価で確認している。「香味」とは、飲食物を口の中に入れた時に口の中から鼻を通って抜け出た時に感じるレトロネーザル(もどり香、口中香)と、舌で感じる味とが混ざり一体となったものである。
本発明のほうじ茶の製造方法で得られたほうじ茶は、従来のほうじ茶の製造方法で得られたほうじ茶と比較して、焙煎ムラが無い(少ない)こと及び香り成分が多いことを下記実施例4及び実施例5で確認している。
直火式焙煎は、焙煎ムラは無い(少ない)が、香り成分が少ない。遠赤外線式焙煎は、焙煎ムラは有るが、香り成分が多い。すなわち、従来の焙煎方法では、焙煎ムラが無い(少ない)こと及び香り成分が多いことの両立ができなかった。
一方、本発明に係る過熱水蒸気式焙煎は、焙煎ムラが無く(少なく)、かつ、香り成分が多い。「焙煎ムラが無い(少ない)」とは、一部の焦げ付きを防止できることである。「香り成分が多い」とは、「香りが向上」の要因の一つである。焙煎ムラが無い(少ない)こと及び香り成分が多いことを両立すると「香りが向上」に繋がるため、両立が重要である。
過熱水蒸気式焙煎は、直火式焙煎よりもピラジン類の量が多く、遠赤外線式焙煎よりもピラジン類の量が多い若しくは遠赤外線式焙煎と同程度にピラジン類の量が多い。ピラジン類はほうじ茶に含まれる主要な香り成分である(非引用文献2)。よって、過熱水蒸気式焙煎は、直火式焙煎よりも香り成分が多く、遠赤外線式焙煎よりも香り成分が多い若しくは遠赤外線式焙煎と同程度に香り成分が多い。
以上より、遠赤外線式焙煎及び直火式焙煎では、焙煎ムラが無い(少ない)こと及び香り成分が多いことの両立ができないが、過熱水蒸気式焙煎は、焙煎ムラが無く(少なく)、かつ、香り成分が多い。
以下の試料及び方法により、過熱水蒸気式焙煎、遠赤外線式焙煎及び直火式焙煎におけるほうじ茶の褐色化抑制を評価した。
○試料
2015年に鹿児島県で生産された「やぶきた」の1番茶(茎茶)を用いた。
○方法
1.焙煎
以下の3通りの方式で上記試料を焙煎した。
(1)過熱水蒸気式焙煎
過熱水蒸気オーブン(DC QutoQF-5200C、直本工業(株))を用いて、試料を焙煎した。水蒸気量は4.1 kg/hに設定した。過熱水蒸気温度は、庫内温度と共に180、200、220℃とし、焙煎時間は60、120、180、240秒とした。8 gの試料をアルミプレートに広げ、これをオーブンに入れて前述の条件で焙煎した。同一焙煎条件での操作を3回行い、得られた試料を混合し、以後の実験に用いた。
(2)遠赤外線式焙煎
遠赤外線式焙煎機(KY-13-1、アベ製作所(株))を用いて、試料を焙煎した。振動数は110回/min、傾きは6℃に設定した。焙煎温度は200、220℃とした。焙煎機に試料10gを投入すると、試料は振動式の階段を落下しながら焙煎され、その後排出された。排出時間12.5〜17.5秒、17.5〜22.5秒、22.5〜27.5秒、27.5〜32.5、32.5〜37.5秒の試料を収集した。12.5〜17.5秒の間で取り出した試料の焙煎時間を15秒とし、他の焙煎時間もこれに従い、20、25、30、35秒とした。同一焙煎条件での操作を200℃では10回、220℃では15回行い、得られた試料を混合し、以後の実験に用いた。
(3)直火式焙煎
直火式小型焙煎機(煎っ太郎、(株)富士珈機)を用いて、試料を焙煎した。焙煎温度(流量)は160、180℃(18、24、32.5 mL/min)とし、焙煎時間は、160℃では3、5、7、9分、180℃では2、3、5、7分とした。焙煎機の温度は放射温度計(HORIBA INFRARED THERMOMETER)で確認した。50gの試料を焙煎機に投入し、前述の条件で焙煎した。同一焙煎条件での操作を3回行い、得られた試料を混合し、以後の実験に用いた。
2.抽出
上記の3通りの方法で焙煎した試料2 g又は未焙煎(焙煎時間0秒)の試料2 gを急須に入れ、熱湯100 mLを加えた後、30秒間静止したものを茶こしでこして浸出液を作製した。
3.色差分析
分光色差計(SE6000、 日本電色工業(株))を用いて、浸出液の分光透過率を測定した。データ解析にはL*a*b*表色系を利用した。
結果を図1に示す。過熱水蒸気式焙煎、遠赤外線式焙煎及び直火式焙煎を比較した結果、過熱水蒸気式焙煎では、焙煎時間120秒以降、焙煎時間が増加しても褐色の指標であるb*値が一定であるのに対し、遠赤外線式焙煎及び直火式焙煎では、焙煎時間が増加するほどb*値が増加した(褐色化が進行した)。
以上より、過熱水蒸気式焙煎は、遠赤外線式焙煎及び直火式焙煎よりも焙煎による茶の褐色化を抑制した(焦げを防止した)。
以下の試料及び方法により、過熱水蒸気式焙煎、遠赤外線式焙煎及び直火式焙煎における茶の膨化を評価した。
○試料
2015年に鹿児島県で生産された「やぶきた」の1番茶(茎茶)を用いた。
○方法
1.焙煎
焙煎温度及び焙煎時間を、過熱水蒸気式焙煎:220℃、遠赤外線式焙煎:200℃、直火式焙煎:160℃とした以外は、上記の実施例1と同様の方法(過熱水蒸気式焙煎、遠赤外線式焙煎及び直火式焙煎)で焙煎した。
2.かさ密度測定
秤量瓶(平型、50×30 mm)に上記の3通りの方法で焙煎した試料又は未焙煎(焙煎時間0秒)の試料を入れて重量を測り、試料重量と秤量瓶の体積から、かさ密度を計算した。
結果を図2に示す。なお、膨化するほど、かさ比重(g/ml)が小さくなる。すなわち、過熱水蒸気式焙煎、遠赤外線式焙煎及び直火式焙煎を比較した結果、過熱水蒸気式焙煎において、かさ比重が小さいことを確認した。
以上より、過熱水蒸気式焙煎は、遠赤外線式焙煎及び直火式焙煎よりも膨化を促進した。膨化したほうじ茶は香りが良いことが知られている。よって、過熱水蒸気式焙煎は、遠赤外線式焙煎及び直火式焙煎よりも香りが良い(香りが向上している)。
以下の試料及び方法により、過熱水蒸気式焙煎、遠赤外線式焙煎及び直火式焙煎におけるほうじ茶の官能評価によるほうじ茶の香味を評価した。
○試料
2015年に鹿児島県で生産された「やぶきた」の1番茶(茎茶)を用いた。
○方法
1.焙煎
焙煎温度及び焙煎時間を、過熱水蒸気式焙煎:200℃及び120秒、遠赤外線式焙煎:200℃及び25秒、直火式焙煎:180℃及び300秒とした以外は、上記の実施例1と同様の方法(過熱水蒸気式焙煎、遠赤外線式焙煎及び直火式焙煎)で焙煎した。
2.抽出
上記の実施例1と同様に、浸出液を作製した。
3.官能評価
ほうじ茶の香味に関する品質を、パネラー10名(19〜21才男女)により、最低点を1点、最高点を11点としてパネラーが自分で評価基準を設定するランクレーティング法で評価した。
より詳しくは、パネラー10名が、上記の過熱水蒸気式焙煎、遠赤外線式焙煎及び直火式焙煎で焙煎した試料である浸出液の香味をパネラー各人が評価した。10名のパネラーの評価の平均値をグラフ化した。
結果を図3に示す。
過熱水蒸気式焙煎、遠赤外線式焙煎及び直火式焙煎を比較した結果、過熱水蒸気式焙煎において、官能評価得点が最も高く、すなわち香味に関する品質が一番良かった。
以上より、過熱水蒸気式焙煎は、遠赤外線式焙煎及び直火式焙煎よりも香味が優れている。
以下の試料及び方法により、過熱水蒸気式焙煎、遠赤外線式焙煎及び直火式焙煎におけるほうじ茶の焙煎ムラを比較した。
○試料
2015年に鹿児島県で生産された「やぶきた」の1番茶(茎茶)を用いた。
○方法
1.焙煎
焙煎温度及び焙煎時間を、過熱水蒸気式焙煎:220℃、60秒、遠赤外線式焙煎:200℃、30秒直火式焙煎:160℃、300秒とした以外は、上記の実施例1と同様の方法(過熱水蒸気式焙煎、遠赤外線式焙煎及び直火式焙煎)で焙煎した。
2.焙煎ムラの比較
ほうじ茶の焙煎ムラを、パネラー13名(27〜57才男女)により、最低点を1点、最高点を5点として評価した。
より詳しくは、パネラー13名が、上記の過熱水蒸気式焙煎、遠赤外線式焙煎及び直火式焙煎で焙煎した試料である浸出液の焙煎ムラの度合いをパネラー各人が下記評価基準にて評価した。13名のパネラーの評価の平均値をグラフ化した。
5点:ムラがとてもある
4点:ムラあり
3点:どちらともいえない
2点:ムラややあり
1点:ムラなし
結果を図4に示す。
過熱水蒸気式焙煎及び直火式焙煎は、焙煎ムラが少なかった。遠赤外線式焙煎及び直火式焙煎は、焙煎ムラが多かった。よって、過熱水蒸気式焙煎は、遠赤外線式焙煎及び直火式焙煎よりも焙煎ムラが少なかった。
以下の試料及び方法により、過熱水蒸気式焙煎、遠赤外線式焙煎及び直火式焙煎におけるほうじ茶のピラジン類の量を比較した。
○試料
2015年に鹿児島県で生産された「やぶきた」の1番茶(茎茶)を用いた。
○方法
1.焙煎
焙煎温度及び焙煎時間を、過熱水蒸気式焙煎:220℃(30、60、120、180秒)、遠赤外線式焙煎:200℃、直火式焙煎:160℃(3、5、7、9分)とした以外は、上記の実施例1と同様の方法(過熱水蒸気式焙煎、遠赤外線式焙煎及び直火式焙煎)で焙煎した。
2.抽出
上記の実施例1と同様に、浸出液を作製した。
3.ピラジン類の量の比較
抽出液10mlに塩化ナトリウム3g、100 ppmシクロヘキサノール100 μL、PDMS被覆攪拌子(Twister、ゲステル(株))1個を加えて、1時間攪拌した。PDMS被覆攪拌子に吸着した香り成分を、加熱脱着システム(TDU、ゲステル(株))−ガスクロマトグラフ質量分析計(Agilent 7890A、アジレントテクノロジー(株))で分析した(カラム:DB-WAX 60 m×0.25 mm、0.25 μm、オーブン:40℃(10分間)、5℃(10分間)、230℃(12分間)の順序で処理した。シクロヘキサノールのピーク強度で規格化したピラジン類のピーク強度により、各試料のピラジン類の量を比較した。
結果を図5に示す。
過熱水蒸気式焙煎は、直火式焙煎よりもピラジン類の量が多く、遠赤外線式焙煎と同程度にピラジン類の量が多かった。ピラジンは揮発性の香り成分である。よって、過熱水蒸気式焙煎は、直火式焙煎よりも香り成分が多く、遠赤外線式焙煎と同程度に香り成分が多かった。
以上より、遠赤外線式焙煎及び直火式焙煎では、焙煎ムラが少ないこと及び香り成分が多いことの両立ができなかったが、過熱水蒸気式焙煎は、焙煎ムラが少なく、かつ、香り成分が多かった。
上記実施例より、本発明のほうじ茶の製造方法で得られたほうじ茶は、従来の製造方法(特に、焙煎工程において直火式焙煎又は遠赤外線式焙煎を採用)で得られたほうじ茶と比較して、以下の少なくとも1以上、2以上、3以上、4以上又は全ての特徴(効果)を有する。
(1)焦げを防止できる(外観が向上している、又は、外観を維持している)。焦げを防止することで、外観に優れたほうじ茶を製造することができる。
(2)香りが向上している(より膨化している)。
(3)香味が向上している。
(4)焙煎ムラが少ない。
(5)香り成分が多い。
Claims (3)
- 主成分である乾燥茎茶を170℃〜230℃である過熱水蒸気で50秒〜300秒接触させる焙煎工程を特徴とする、外観を維持又は向上させながら並びに香り及び香味を向上させたほうじ茶の製造方法。
- 主成分である乾燥茎茶を170℃〜230℃ である過熱水蒸気で50秒〜300秒で接触させる焙煎工程により得られることを特徴とする外観を維持又は向上させながら並びに香り及び香味を向上させたほうじ茶。
- 主成分である乾燥茎茶を170℃〜230℃ である過熱水蒸気で50秒〜300秒接触させる焙煎工程を特徴とする、外観を維持又は向上させながら並びに香り及び香味を向上させたほうじ茶の焙煎方法。
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