JP6177954B2 - カフェインが低減された茶葉の香味改善方法 - Google Patents

カフェインが低減された茶葉の香味改善方法 Download PDF

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Description

本発明は超臨界二酸化炭素で処理された茶葉の香味を改善する方法、特に超臨界二酸化炭素抽出によりカフェインを低減処理させた際に生じる異味異臭を除去し、良好な香味を与える方法に関し、カフェインが十分に低減されながらも良好な香味を有する茶葉およびその製造方法に関する。
緑茶、紅茶、烏龍茶などの茶類に含まれるカフェインは覚醒作用、利尿作用等の生理効果を示す一方、過剰摂取すると悪心、不眠、心悸亢進等の有害作用を引き起こす原因にもなるとされている。そのため、茶葉からカフェインを除去する方法が従来から検討されてきた。カフェインを除去する方法としては、荒茶の製造時に生葉を熱水に浸漬してカフェインを溶脱させる方法(特許文献1)、超臨界二酸化炭素により抽出除去する方法(特許文献2)などが提案されている。
特開平7-135902 特開平1−289448
茶からカフェインを除去する方法に関しては、上記のようないくつかの方法が開示されている。しかしながら、これらの方法は少なくとも次のような欠点を有する。例えば、特許文献1の生葉を熱水に浸漬させてカフェインを溶脱させる方法では、カフェインと共に渋みの構成成分であるカテキンや旨みの構成成分であるアミノ酸などの有用成分の損失が起こる上に、カフェインの除去効率も十分ではなかった。一方、超臨界二酸化炭素によりカフェインを抽出除去する方法では、前記有用成分の損失が少なく、カフェインの選択除去という点においては非常に優れた手段であるといえる。しかしながら、この方法では、カフェインと共に揮発性の香気成分が損失してしまう問題があった。
茶の飲用に際しては、茶葉が本来有する渋み、旨み、香りの3要素がバランス良く一体となって形成された香味が好ましいとされる。そのため、前記した3要素にかかわる成分の損失は、十分にカフェインが低減されていたとしても、嗜好性を低下させる原因となってしまう。このような理由により、カフェインが十分に低減されながらも、本来の香味を楽しむことができる茶葉を提供する手段が強く望まれてきた。したがって、本発明は、カフェインを十分に低減しながらも、茶本来の香味を有する嗜好性の高い茶葉およびその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、カフェインの除去効果に優れる超臨界二酸化炭素抽出により低カフェイン化された茶葉の嗜好性を低下させる原因について検討したところ、超臨界二酸化炭素抽出により低カフェイン化された茶葉には、処理前の茶葉に比較して香気成分が失われているばかりでなく、生臭みや金属様の臭気(金気臭)および不自然な酸味といった特徴的な異味異臭が存在していることを認め、これらが複合的に嗜好性を低下させる原因になっていると考えた。そこで、超臨界二酸化炭素で処理した茶葉に存在する前記異味異臭を除去する手段を鋭意検討した。その結果、茶葉に対して一定条件以上の火入れ処理を行うことで、特徴的な異味異臭を除去することができたばかりか、茶が本来有する香気も許容レベルにまで復元され、嗜好性が高められた茶葉となることを見出し、本発明の完成に至った。
すなわち、本発明の茶葉は、原料茶葉を超臨界二酸化炭素抽出によってカフェインを低減した後に、火入れ処理を行うことを特徴とする製造方法で得られるものである。また、本発明の方法は、超臨界二酸化炭素を用いてカフェインを低減させた茶葉に特有の異味異臭を火入れ処理によって除去することを特徴とするものである。本発明の方法は、従来の超臨界二酸化炭素を利用した低カフェイン茶の製造方法と比較して、低カフェイン化処理と火入れ処理の順序が異なっている。具体的には、従来の低カフェイン茶の製造方法では火入れを行った後の茶葉または乾燥程度の火入れを行った茶葉を超臨界二酸化炭素でカフェインを抽出除去して最終品としていたのに対し、本発明の製造方法では超臨界二酸化炭素による抽出処理の後に火入れ処理する。この順序が本発明の効果である異味異臭の除去作用に重要な意味を持っている。また、一般的な茶葉製造方法とは低カフェイン化処理の有無の点で異なっている。
本発明の製造方法によれば、カフェインを十分に低減しながらも、茶本来の香味を有する茶葉を提供することが可能である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の製造方法における茶葉原料としてはチャノキ(学名:Camellia sinensis)の葉や茎などの摘採物を原料として製造された茶葉であり、荒茶と呼ばれる一次加工品だけでなく、仕上茶と呼ばれる二次加工品も利用することができる。また、茶葉の種類としては例えば、緑茶や花茶等の不発酵茶、烏龍茶等の半発酵茶、紅茶等の完全発酵茶、プアール茶などの後発酵茶などの荒茶や仕上茶を挙げることができ、いずれも一般的に流通している茶葉を本発明の製造方法に使用可能である。
本発明の製造方法では、茶葉原料を超臨界二酸化炭素で抽出処理し、カフェインを低減させた後に火入れ処理することを特徴とする。超臨界二酸化炭素の処理に関しては、公知の方法で行えば良く、例えば、特許文献1などに記載された条件に従えば、好適に茶葉からカフェインを低減させることができる。また、このような茶葉は当業者であれば市場から入手することもできるし、専門メーカーに委託加工して入手することも可能である。
超臨界二酸化炭素でカフェインを低減させる具体的な処理方法を説明する。まず、乾燥茶葉原料を抽出容器に仕込み、そこへ温度および圧力を調整して超臨界状態とした二酸化炭素を導入する。この際、抽出補助剤として水および低級アルコールを添加する。使用する低級アルコールとしては安全性の点でエタノールが好ましい。また、水は二酸化炭素に添加する以外に、抽出原料に予め添加して原料茶葉を湿らせた状態にしておいても良い。抽出容器を通過した超臨界状態の二酸化炭素は温度調整した後に分離装置に送られ、カフェインを含む抽出物と二酸化炭素に分離する。分離された抽出物を排出し、二酸化炭素は再び温度調節により液化させて再利用しながら循環させ、所望のカフェイン含量となるまで連続処理を行う。最終的に、抽出容器から抽出残渣を回収することにより、カフェインが低減化された茶葉を得ることができる。この方法によれば、一般的な茶葉中に乾燥重量ベースで2〜3%程度含有されるカフェインを、0.001〜0.5%程度に低減することができる。これに対し、茶生葉を熱水に浸漬させてカフェインを溶脱させる方法で処理した茶葉のカフェイン含量が0.5〜0.7%程度に留まるため、超臨界二酸化炭素処理法はカフェイン除去に対して非常に有効な手段である。なお、超臨界温度以下の液状二酸化炭素でカフェインを低減化させた茶葉も本発明では同義に扱う。
本発明の製造方法では、前記の操作で得られる低カフェイン茶葉に対して火入れ処理を行う。火入れ処理に利用できる装置には、熱風式火入れ機や回転ドラム式火入れ機の他、マイクロ波照射装置や遠赤外線放射装置をベルトコンベア上や前記の熱風式火入れ機や回転式ドラム式火入れ機内に併設したものがあり、これらはいずれも本発明の製造方法に利用することができる。
熱風式火入れ機としては、回分式の棚式乾燥機や連続式の自動乾燥機のような乾燥機が流用され、これらいずれも乾燥室内に熱風を供給して茶葉を火入れ処理することができる。自動乾燥機では熱風が送られる乾燥室内に茶葉を乗せた移送帯を移動させて火入れ処理するものである。本装置では所望する火入れ程度に合わせた温度や時間を設定することで連続的に処理することができる。
回転式ドラム火入れ機は円筒形のドラム内に茶葉を投入し、下部外側から加熱しながらドラムを回転させ、火入れ処理を行う。回転式ドラム火入れ機にも回分式と連続式があり、回分式では茶葉の投入単位毎に処理を行う。連続式では傾斜した長いドラム内にスパイラルな構造を持たせ、一方の投入口から茶葉を投入し、ドラムを回転させると徐々に茶葉が進行し、他方の取り出し口から茶葉が排出される仕組みになっており、熱量やドラムの回転数等を調節することにより、所望する火入れ程度の茶葉を得ることができる。
火入れを行う際の条件は、原料茶葉の水分含量や目的とする焙煎度によるため、一概には言えないが、本発明の製造方法においては異味異臭を除去するために、緑茶葉の場合は、少なくとも品温すなわち茶葉温度が130℃に達する条件が必要である。130℃未満では特有の異臭である生臭みと金気臭、および異味である酸味の除去効果が不十分となる。また、200℃を超える温度では茶葉が炭化する懼れがある。そのため、本発明における火入れ条件としては、茶葉温度が、130℃〜190℃に達した時点で火入れ処理を終了するのが好ましい。火入れの終了温度はこの範囲内において所望の香味が得られるように調整すれば良いが、異味異臭の除去と香味バランスの観点においては、140℃〜180℃が好ましく、150℃〜170℃がさらに好ましい。例えば、回転ドラム式火入れ機の場合には、火力を一定条件に設定し、茶葉の温度が130℃〜190℃程度になるまで1分〜30分程度処理すればよい。さらに、製造効率や火入れ効果を考慮すると、2分〜20分が好ましく、5分〜15分処理するのが好ましい。なお、火入れの程度を調整する手段としてはドラムの回転速度、加熱温度、茶葉の供給速度などを調整することにより、処理時間と到達温度が設定可能である。
紅茶、烏龍茶等の発酵茶葉の場合でも、緑茶葉同様、超臨界二酸化炭素で処理した際には異味異臭を発生するが、緑茶葉の場合とは異なり、薬臭さやエグ味が発生する。これらの異味異臭は、緑茶同様火入れによって除去することができる。火入れの温度は、茶葉温度が少なくとも100℃を超える温度に達した時点で火入れ処理を終了すればよく、110℃〜130℃が好ましく、115℃〜120℃がより好ましい。処理時間は、緑茶葉と同様2分〜20分が好ましく、5分〜15分処理するのが好ましい。
本発明の茶葉の製造方法では必要に応じて、茶葉の選別を行っても良い。茶葉の選別は形状(サイズ)を整えることを目的の一つとし、粗大な茶葉や茎、粉などを分離して品質を向上させる。選別には、篩機、風力選別機、色彩選別機、静電選別機などを利用した公知の手段を利用すればよい。篩機には往復運動型の平行篩機、回転運動型の廻し篩機、網目面に対して垂直に振動する振動篩機などがあり、目的に応じて選択または組み合わせて利用する。本発明の製造方法では、火入れ操作の前にこれらを利用して形状を整えると、火入れの強度を一定にすることができるため、異味異臭の除去により一層有効となる。また、必要に応じて切断機を組み合わせて茶葉の形状をコントロールしても良い。
本発明の製造方法によって得られる茶葉のカフェイン含量は乾燥重量ベースで0.001〜0.5%である。0.001%以下にまでカフェインを低減するような処理条件では、他の香味成分の損失を招くため好ましくない。また、0.5%以上ではカフェイン低減という本来の目的を達することができない。カフェイン含量は0.001〜0.2が好ましく、0.005〜0.1%がさらに好ましい。茶葉中のカフェイン含量は、超臨界二酸化炭素処理工程における処理条件を適宜調節して調整することができる。本発明における茶葉中カフェイン含量とはHPLC法で定量した値を採用する。詳細な条件は、本明細書の実施例の項に記載する。また、本発明の製造方法によって得られる茶葉の茶ポリフェノール含量は乾燥重量ベースでカフェイン含量に対して、好ましくは10〜25000倍、より好ましくは25〜4000倍、さらに好ましくは50〜1000倍である。茶ポリフェノールの分析条件は「五訂 日本食品標準成分分析マニュアルの解説」(日本食品分析センター編、中央法規、2001年7月)に記載の酒石酸鉄吸光光度法を採用する。詳細な条件は、本明細書の実施例の項に記載する。
本発明の製造方法によって得られる茶葉は、本発明の課題とした金気臭が低減されている以外に、火入れ処理によって生じる「火入れ香」が従来の低カフェイン茶葉(超臨界二酸化炭素処理されたもの)に比較して格別に多い一方で、緑茶の評価において、マイナス評価の対象となる「青臭」や「油臭」が低減されているという特徴を有する。本発明における(A)火入れ香成分とは、2,5-ジメチルピラジン(2,5-dimethyl pyrazine),2,6-ジメチルピラジン(2,6-dimethyl pyrazine),エチルピラジン(ethyl pyrazine),2,3-ジメチルピラジン(2,3-dimethyl pyrazine),トリメチルピラジン(trimethyl pyrazine),2-エチル-3,5-ジメチルピラジン(2-ethyl-3,5-dimethyl pyrazine),フルフラール(furfral)および2-エチル-3,6-ジメチルピラジン(2-ethyl-3,6-dimethyl pyrazine)、(B)青臭成分とは、n-ヘキサナール(n-hexanal),(z)-4-ヘプテナール((z)-4-heptenal),青葉アルコール((Z)-3-hexen-1-ol),(E.Z)-3,5-オクタジエン -2-オン((E.Z)-3,5-octadien-2-one)および(E,E)-3,5-オクタジエン-2-オン((E,E)-3,5-octadien-2-one)、(C)油臭成分とは、1-ペンテン-3-オール(1-penten-3-ol),(E)-2-オクテナール((E)-2-octenal),(E,Z)-2,4-ヘプタジエナール((E,Z)-2,4-heptadienal)および(E,E)-2,4-ヘプタジエナール((E,E)-2,4-heptadienal)を表し、茶葉をガスクロマトグラフ質量分析法(GC/MS分析法)にて分析し、各々の香気成分のピークエリアを(A)〜(C)のグループ毎に合計した結果として評価する。本発明の製造方法で得られる茶葉では(B)青臭成分に対する(A)火入れ香成分の比である [(A)/(B)]が3.0以上であり、かつ(C)油臭成分に対する(A)火入れ香成分の比である[(A)/(C)]が1.5以上である。これらの比は香味の観点において大きいほど好ましく、好ましくは[(A)/(B)]が5.0以上、[(A)/(C)]が2以上、より好ましくは[(A)/(B)]が7.0以上、[(A)/(C)]が3.0以上であるのが良い。本発明における茶葉中の前記香気成分のピークエリアとは、固相マイクロ抽出法(Solid Phase Micro Extraction:SPME)を用いたガスクロマトグラフ質量分析法(GC/MS分析法)で得られる値を採用する。詳細な条件は本明細書の実施例の項に記載する。
本発明の製造方法によって得られる茶葉は様々な用途に利用することができる。例えば、各種容器に茶葉を包装して製品とできるほか、ティーバック等の形態としても利用が可能である。また、インスタント茶や容器詰め茶飲料の原料として利用することもできる。さらに、粉末状に粉砕することによって、微粉末状にしてもよい。さらに、果皮やハーブなどの茶以外の植物原料をブレンドしても良いし、香料を用いて香りを付与した形態としても良い。ただし、本発明の製造方法で得られる茶葉の利用用途はこれらに限定されるものではない。
以下に本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
<試験例1>
緑茶葉(静岡県産秋冬番、荒茶)を原料に用いて、本発明の実施評価を行った。
比較例1の茶葉は原料に対して何も処理を行わないものとした。比較例2および3の茶葉は原料を小型ドラム型火入れ機により火入れ処理を行った。ドラムの表面温度を230℃に設定して加熱を開始後、ドラム温度が100℃に達した時点で茶葉600gを投入し、品温(茶葉温度)が160℃に到達した時点で取り出したもの(処理時間7分43秒)を比較例2とした。同様の条件で操作し、ドラム温度が180℃に到達した時点で取り出したもの(処理時間11分00秒)を比較例3とした。比較例4〜6の茶葉は比較例1〜3の茶葉をそれぞれ超臨界二酸化炭素抽出によりカフェインの低減化処理を行った。実施例1および2の茶葉は、超臨界二酸化炭素によって低カフェイン化処理された比較例4の茶葉に対して小型ドラム型火入れ機によって火入れ処理を行ったもので、比較例2と同条件で火入れ処理を行ったものを実施例1、比較例3と同条件で火入れ処理したものを実施例2とした。
上記の操作によって得られた比較例1〜6および実施例1〜2の茶葉の茶ポリフェノール含量およびカフェイン含量を以下の条件で測定し、その結果を表1に示した。
<茶ポリフェノールおよびカフェイン測定用試料液の調製方法>
フードプロセッサーで粉砕した茶葉を約150mgずつ秤量し、100mLメスフラスコに移した後、80%メタノール(v/v)を40mL加え、30分間超音波抽出を行った。次いで、1M塩酸0.4mLを加えて超純水で仮定容し、室温に戻るまで静置後、超純水で100mLに定容した。その抽出液を親水性PTFEフィルター(アドバンテック(株)製,DISMIC−13HP;0.45μm)でろ過し、ろ液の2mL以降を測定用試料液とした。
<茶ポリフェノールの測定方法>
茶ポリフェノールの定量は「五訂 日本食品標準成分分析マニュアルの解説」(日本食品分析センター編、中央法規、2001年7月)の252〜254ページに記載の酒石酸鉄吸光光度法に従って行った。なお、定量用標準物質には没食子酸エチル(東京化成工業(株)製)を用い、調製溶液には1M塩酸を0.4%添加した32%メタノール(v/v)を用いた。また、本発明において茶ポリフェノールは茶に含まれるポリフェノールのことであり、タンニンや茶タンニン等の用語と同義に扱う。
<カフェインの分析条件>
カフェインの定量はHPLC分析法により次の条件で行った。
・標準物質:カフェイン(関東化学(株)製)
・装置:Alliance HPLCシステム(ウォーターズ社製)
・カラム:Poroshell 120 EC‐C18(4.6×100mm,粒子径2.7μm、アジレント社製)
・カラム温度:40℃
・移動相:A液0.05%リン酸水/アセトニトリル=1000/25(体積比)、B液メタノール
・グラジエントプログラム:0〜1分(B液0%)、1〜11分(B液0〜33%)、11〜11.25分(B液33〜95%)、11.25〜13.25分(B95%)、13.25〜13.5分(B液95〜0%)、13.5〜15.5分(B液0%)
・流速:1.5mL/min
・検出:UV275nm
また、上記操作によって得られた比較例1〜6および実施例1〜2の茶葉の浸出液について専門のパネラー4名で香味評価を行った。浸出液は茶葉3グラムに熱湯150mlを注いで3分間抽出させ、茶殻を取り除くことにより調製した。評価項目は異臭として生臭みと金気臭の有無と強度、異味として酸味の有無と強度、火入れ処理によって得られる焙煎香、全体的な香味評価およびカフェインの含量を含めた総合的な評価を行った。それら結果を表1に示した。表中のデカフェ処理とは、超臨界二酸化炭素抽出による低カフェイン化処理のことである。
さらに、上記操作によって得られた比較例1〜6および実施例1〜2の茶葉について、以下に示す条件にて香気成分の評価を行った。それら結果は表2に示した。
《香気成分の分析方法》
フードプロセッサーで粉砕した茶葉200mgおよび塩化ナトリウム3gを20mLバイアルに入れ、水10mL(内部標準物質としてシクロヘプタノール(東京化成工業(株)製)を終濃度で500ppbとなるように添加)を加えた。このサンプル液について固相マイクロ抽出法(Solid Phase Micro Extraction:SPME)を用いたGC/MS分析に供した。評価は各香気成分のピークエリアと内部標準物質のピークエリアの比によって求めた。
<SPME-GC/MS条件>
GC:TRACE GC ULTRA(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)
MS:TSQ QUANTUM XLS(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)
SPMEファイバー:50/30μm Divinylbenzene/Carboxen/Polydimethylsiloxane Stableflex
抽出:60℃、30分
カラム:SUPELCO WAX10(0.25mmI.D.×60m×0.25μm、シグマアルドリッチ社製)
オーブンプログラム:40℃で2分間保持した後、160℃まで3℃/分で昇温し、その後280℃まで10℃/分で昇温
キャリアーガス:ヘリウム(100kPa、一定圧力)
インジェクター:スプリットレス、240℃
イオン化:電子イオン化
イオン化電圧:70eV
表1の結果に示されている通り、カフェイン低減化処理をしていない比較例1〜3に対し、カフェイン低減化処理を施した比較例4〜6および実施例1〜2は、茶ポリフェノール含量は維持しながらも、凡そ98%程度のカフェインが除去されていることが確認された。このうち、比較例4〜6については、超臨界二酸化炭素抽出を行った茶葉に特有の生臭みと金気臭といった異臭や酸味が強く感じられたほか、緑茶らしい香りや事前に施した火入れ処理による焙煎香も極端に減少しており、嗜好性の低いものであった。一方で、カフェイン低減処理を行った後に火入れ処理を施した実施例1および2については、比較例4〜6で感じられたような異味異臭は全く感じられず、火入れ処理によって付与される焙煎香も心地よく感じられた。さらに、実施例1および2は原料として用いた秋冬番茶に特有の青臭みなども除去され、香味バランスに優れた非常に嗜好性の高い茶葉となっていることが確認された。
表2の香気成分分析結果に示されたとおり、火入れ処理の後にカフェイン低減処理を行った比較例5および6の茶葉では(A)火入れ香成分が殆ど検出されなかったのに対し、本発明の実施例1および2の茶葉では低カフェイン処理を行わずに火入れ処理した比較例2および3の茶葉と同レベルで(A)火入れ香成分の存在が認められた。また、緑茶の香味評価においてマイナス因子である(B)青臭成分と(C)油臭成分については、本発明の実施例1および2の茶葉は比較例1から6の茶葉に対して顕著に低減されていることが確認された。また、(B)青臭成分または(C)油臭に対する(A)火入れ香成分の比である[(A)/(B)]および [(A)/(C)]には、香味の改善効果が顕著に現れており、実施例1および2の茶葉は比較例2および3の茶葉に比較しても、優れた香味バランスになっていることが確認できた。また、これら香気成分の分析値は、前記した本発明茶葉の官能評価結果を支持するものであり、本発明の茶葉が優れた香味バランスと高い嗜好性を有することが確認された。
<試験例2>
次いで、カフェイン低減化処理した茶葉に対する火入れ温度についての検討を行った。原料として試験例1で調製した比較例4の茶葉、すなわち超臨界二酸化炭素によって低カフェイン化処理された茶葉に対して小型ドラム型火入れ機によって各温度にて火入れ処理を行い、その影響を評価した。火入れ処理はドラムの表面温度を230℃に設定し、品温(茶葉温度)が表3の「火入れ温度」に示した温度に到達した時点で取り出すことにより、各火入れ温度の茶葉(比較例7〜8、実施例4〜8)を調製した。カフェインの定量、香味評価および総合評価は試験例1と同様に行い、その結果を表3に示した。
表3の結果に示されている通り、超臨界二酸化炭素でカフェイン低減化処理した茶葉(比較例4の茶葉)に特有の異味異臭を除去する効果は火入れの温度に依存することが確認された。130℃未満の火入れ温度では異味異臭の低減効果が僅かに認められるものの、香味としては許容できるものではなく、130℃以上の処理では効果的に異味異臭の低減ないし除去効果が認められたことから、本発明における火入れ温度としては130℃以上とするのが好ましいと考えられた。
<試験例3>
紅茶葉(ケニア産紅茶葉)を原料に用いて、カフェイン低減化処理した茶葉に対する火入れ温度について実施評価を行った。
比較例9〜12および実施例9〜11の紅茶葉はそれぞれ超臨界二酸化炭素抽出によりカフェインの低減化処理を行った。次いで小型ドラム型火入れ機によって各温度にて火入れ処理を行い、その影響を評価した。火入れ処理はドラムの表面温度を230℃に設定し、品温(茶葉温度)が表4の「火入れ温度」に示した温度に到達した時点で取り出すことにより、各火入れ温度の茶葉(比較例9〜12、実施例9〜11)を調製した。カフェインの定量、香味評価および総合評価は試験例1と同様に行い、その結果を表4に示した。
表4の結果に示されている通り、紅茶葉でも緑茶同様、超臨界二酸化炭素でカフェイン低減化処理した茶葉に特有の異味異臭を除去する効果は、火入れの温度に依存することが確認された。すなわち、110℃以上130℃以下の火入れ処理によって効果的に薬臭さ、エグ味が低減され、特に120℃では僅かな焙煎香を伴う良好な香味であると評価された。
本発明の方法により製造された茶葉は、カフェインを十分に低減しながらも、超臨界二酸化炭素で処理した茶葉に特有の異味異臭が除去され、良好な香味を有するため、様々な飲食品に幅広く利用できる。

Claims (4)

  1. 荒茶または仕上茶を超臨界二酸化炭素で抽出処理した茶葉に対し、火入れ処理を行うことを特徴とする低カフェイン茶葉の製造方法において、火入れ処理の茶葉温度を、緑茶葉の場合には130℃以上190℃以下、紅茶葉の場合には115℃以上130℃以下とすることを特徴とする低カフェイン茶葉の製造方法。
  2. 荒茶または仕上茶を超臨界二酸化炭素で抽出処理した茶葉に対して、緑茶葉の場合には130℃以上190℃以下、紅茶葉の場合には115℃以上130℃以下で火入れ処理を行うことを特徴とする、異味異臭の除去方法。
  3. カフェインの含有量が0.5%以下であり、次の各香気成分グループ(A)、(B)および(C):
    (A)火入れ香成分(2,5-ジメチルピラジン,2,6-ジメチルピラジン,エチルピラジン,2,3-ジメチルピラジン,トリメチルピラジン,2-エチル-3,5-ジメチルピラジン,フルフラールおよび2-エチル-3,6-ジメチルピラジン)、
    (B)青臭成分(n-ヘキサナール,(z)-4-ヘプテナール,青葉アルコール,(E.Z)-3,5-オクタジエン -2-オンおよび(E,E)-3,5-オクタジエン-2-オン)、
    (C)油臭成分(1-ペンテン-3-オール,(E)-2-オクテナール,(E,Z)-2,4-ヘプタジエナールおよび(E,E)-2,4-ヘプタジエナール)、について、
    ガスクロマトグラフ質量分析法(GC/MS分析法)にて分析した際の各グループ内ピークエリア合計の比が、[(A)/(B)]が3.0以上かつ[(A)/(C)]が1.5以上である請求項1に記載の低カフェイン茶葉の製造方法。
  4. カフェインの含有量が0.5%以下であり、次の各香気成分グループ(A)、(B)および(C):
    (A)火入れ香成分(2,5-ジメチルピラジン,2,6-ジメチルピラジン,エチルピラジン,2,3-ジメチルピラジン,トリメチルピラジン,2-エチル-3,5-ジメチルピラジン,フルフラールおよび2-エチル-3,6-ジメチルピラジン)、
    (B)青臭成分(n-ヘキサナール,(z)-4-ヘプテナール,青葉アルコール,(E.Z)-3,5-オクタジエン -2-オンおよび(E,E)-3,5-オクタジエン-2-オン)、
    (C)油臭成分(1-ペンテン-3-オール,(E)-2-オクテナール,(E,Z)-2,4-ヘプタジエナールおよび(E,E)-2,4-ヘプタジエナール)、について、
    ガスクロマトグラフ質量分析法(GC/MS分析法)にて分析した際の各グループ内ピークエリア合計の比が、[(A)/(B)]が3.0以上かつ[(A)/(C)]が1.5以上である茶葉。
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