以下、本発明に係るアルカリ二次電池を、図面を参照して説明する。
本発明が適用される一実施形態のアルカリ二次電池として、図1に示すAAサイズの円筒形のニッケル水素二次電池(以下、電池という)1を例に説明する。
電池1は、上端が開口した有底円筒形状をなす外装缶2を備え、外装缶2は導電性を有し、その底壁は負極端子として機能する。外装缶2の中には、所定量のアルカリ電解液(図示せず)とともに電極群4が収容されている。
図1に示すように、外装缶2の開口3は封口体14によって閉塞されている。封口体14は、導電性を有する円板形状の蓋板16、この蓋板16の上に配設された弁体20及び正極端子22を含んでいる。蓋板16の外周部には、この蓋板16を囲むようにリング形状の絶縁ガスケット18が配置され、絶縁ガスケット18及び蓋板16は外装缶2の開口縁17をかしめ加工することにより外装缶2の開口縁17に固定されている。即ち、蓋板16及び絶縁ガスケット18は互いに協働して外装缶2の開口3を封止している。ここで、蓋板16は、中央に中央貫通孔19を有し、そして、蓋板16の外面上には、中央貫通孔19を閉塞するようにゴム製の弁体20が配置されている。更に、蓋板16の外面上には弁体20を覆うようにフランジ付きの円筒形状の正極端子22が電気的に接続されている。この正極端子22は弁体20を蓋板16に向けて押圧している。また、この正極端子22は、側面にガス抜き孔23を有している。
通常時、中央貫通孔19は弁体20によって気密に閉じられている。一方、外装缶2内にガスが発生し、その内圧が高まれば、弁体20は内圧によって圧縮され、中央貫通孔19が開かれる。その結果、外装缶2内から中央貫通孔19及び正極端子22のガス抜き孔23を介して外部にガスが放出される。つまり、中央貫通孔19、弁体20及び正極端子22のガス抜き孔23は電池1のための安全弁を形成している。
電極群4は、それぞれ帯状の正極6、負極8及びセパレータ10からなり、これらは正極6と負極8との間にセパレータ10が挟み込まれた状態で渦巻状に巻回されている。即ち、セパレータ10を介して正極6及び負極8が互いに重ね合わされている。このような電極群4は、全体としては円柱状をなしている。
この電極群4においては、一方の端面から正極6の端縁部が渦巻状に露出しており、他方の端面から負極8の端縁部が渦巻状に露出している。ここで、露出している正極6の端縁部を正極接続端縁部32とし、露出している負極8の端縁部を負極接続端縁部(図示せず)とする。これら露出している正極接続端縁部32及び負極接続端縁部には、後述する正極集電体28及び負極集電体(図示せず)がそれぞれ溶接される。
負極8は、帯状をなす導電性の負極芯体を有し、この負極芯体に負極合剤が保持されている。
負極芯体は、その厚さ方向に貫通する貫通孔(図示せず)が多数分布されている帯状の金属材からなる。このような負極芯体としては、例えば、パンチングメタルシートを用いることができる。
負極合剤は、負極芯体の貫通孔内に充填されるばかりでなく、負極芯体の両面上にも層状にして保持されている。
負極合剤は、水素吸蔵合金の粒子、導電材、結着剤等を含む。ここで、水素吸蔵合金は、負極活物質である水素を吸蔵及び放出可能な合金であり、ニッケル水素二次電池に一般的に用いられている水素吸蔵合金が好適に用いられる。上記した結着剤は水素吸蔵合金の粒子及び導電材を互いに結着させると同時に負極合剤を負極芯体に結着させる働きをなす。ここで、導電材及び結着剤としては、ニッケル水素二次電池に一般的に用いられているものが好適に用いられる。
負極8は、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、水素吸蔵合金粒子からなる水素吸蔵合金粉末、導電材、結着剤及び水を混練して負極合剤のペーストを調製する。得られた負極合剤のペーストは負極芯体に塗着され、乾燥させられる。乾燥後、水素吸蔵合金粒子等を含む負極合剤が付着した負極芯体はロール圧延及び裁断が施され、負極の中間製品が得られる。この負極の中間製品は、全体として長方形状をなしている。そして、この負極の中間製品における負極接続端縁部となるべき所定の端縁部については、負極合剤の除去が行われる。これにより、所定の端縁部は、負極芯体がむき出しの状態とされた負極接続端縁部となる。このようにして、負極接続端縁部を有する負極8が得られる。ここで、負極合剤の除去方法としては、特に限定はされないが、例えば、超音波振動を与えることにより除去することが好適に行われる。なお、負極接続端縁部以外の領域には、負極合剤が保持されたままの状態である。
次に、正極6について説明する。
正極6は、多孔質構造をなし多数の空孔を有する導電性の正極基材と、前記した空孔内及び正極基材の表面に保持された正極合剤とを含む。
正極基材としては、例えば、発泡ニッケル(ニッケルフォーム)を用いることができる。
正極合剤は、正極活物質粒子としての水酸化ニッケル粒子、導電材としてのコバルト化合物、結着剤等を含んでいる。上記した結着剤は、水酸化ニッケル粒子及び導電材を互いに結着させると同時に正極合剤を正極基材に結着させる働きをなす。ここで、結着剤としては、ニッケル水素二次電池に一般的に用いられているものが好適に用いられる。
正極6は、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、正極活物質粒子からなる正極活物質粉末、導電材、水及び結着剤を含む正極合剤スラリーを調製する。得られた正極合剤スラリーは、例えばニッケルフォームに充填され、乾燥させられる。乾燥後、水酸化ニッケル粒子等が充填されたニッケルフォームは、ロール圧延されてから所定形状に裁断され、正極の中間製品が得られる。この正極の中間製品は、全体として長方形状をなしている。そして、この正極の中間製品における正極接続端縁部32となるべき所定の端縁部については、正極合剤の除去が行われ、正極基材がむき出しの状態とされる。次いで、正極合剤が除去された端縁部は、正極の中間製品の厚さ方向に圧縮加工され正極接続端縁部32となる。このように圧縮加工されることにより、正極基材は、稠密な状態となるので、この正極接続端縁部32は溶接がし易い状態となる。このようにして、正極接続端縁部32を有する正極6が得られる。ここで、正極合剤の除去方法としては、特に限定はされないが、例えば、超音波振動を与えることにより除去することが好適に行われる。なお、正極接続端縁部32以外の領域には、正極合剤が充填されたままの状態である。
次に、セパレータ10としては、例えば、ポリアミド繊維製不織布に親水性官能基を付与したもの、あるいは、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン繊維製不織布に親水性官能基を付与したものを用いることができる。
以上のようにして製造された正極6及び負極8は、上記したセパレータ10を介在させた状態で、渦巻き状に巻回され、これにより電極群4が形成される。詳しくは、巻回の際、正極6及び負極8は、互いに、電極群4の軸線方向に沿う方向に僅かにずれた状態となるように配置されるとともに、これら正極6及び負極8の間には、所定サイズのセパレータ10が所定位置に配置され、この状態で巻回作業が行われる。その結果、円柱状の電極群4が得られる。得られた電極群4の態様としては、電極群4の一端側においては、正極6の正極接続端縁部32が、セパレータ10を介して隣り合っている負極8よりも突出した状態となっており、電極群4の他端側においては、負極8の負極接続端縁部が、セパレータ10を介して隣り合っている正極6よりも突出した状態となっている。
なお、電極群4は、上記した正極6、負極8及びセパレータ10が、所定の外径寸法を有する巻芯により巻回されて形成され、巻回作業後は、この巻芯が抜き取られるので、電極群4の中央には貫通孔9が形成されている。
以上のような電極群4においては、一端側に正極集電体28が接続され、他端側に負極集電体が接続される。
まず、負極集電体については、特に限定されるものではなく、例えば、従来から用いられている円板形状の金属板を用いることが好ましい。準備した負極集電体は、電極群4の他端側の負極接続端縁部に溶接される。
次に、正極集電体28について説明する。
正極集電体28は、導電性材料からなる板状体であり、平面視形状は特に限定されるものではなく、円板形状、多角形状等任意の形状のものを採用することができる。また、正極集電体28の大きさは、電極群4の外径寸法よりも小さく、且つ、電極群4の一端側から突出している正極6の正極接続端縁部32をカバーできる大きさに設定される。
本実施形態においては、図2に示すように、平面視形状が十角形状の板材が用いられる。詳しくは、正極集電体28は、全体として十角形状のNiめっき鋼製の薄板であり、中央に円形の中央貫通孔29と、この中央貫通孔29を囲むように放射状に延びる6個のスリット30とを含んでいる。スリット30は、打ち抜き加工で形成し、スリット30のエッジの部分に下方(電極群4側)へ延びる突起(バリ)を生じさせることが好ましい。
電池1においては、図1に示すように、正極集電体28と封口体14との間に集電リード34が介在し、この集電リード34が、電極群4の正極6に接続されている正極集電体28と、正極端子22を有する封口体14とを電気的に接続する。
集電リード34は、例えば、図3に示すように、封口体14と接続されるほぼ矩形状の頂壁部36と、頂壁部36の所定の側縁38、40から延びる一対の側壁部42、44と、側壁部42、44における頂壁部36とは反対側の端縁46、48から延び、正極集電体28と接続される脚部50、52とを有している。
頂壁部36は、中央に円形の貫通孔54が設けられている。この貫通孔54は、集電リード34が封口体14に接続された際に、蓋板16の中央貫通孔19と連通する。また、貫通孔54の周囲には、溶接部となる突起部56が4個設けられている。
側壁部42、44は、頂壁部36の両側縁38、40から延びており、図4に示すように、断面形状がほぼストレート形状をなしている。ここで、側壁部42、44における図4中の上下方向の長さ、つまり、頂壁部36から脚部50、52へ延びる方向への長さが、封口体14と正極集電体28との間の長さとほぼ同じに設定されている。これにより、通電経路を短縮でき、電池の内部抵抗の低減に貢献する。
脚部50、52は、側壁部42、44の端縁46、48から延び、頂壁部36と対向する位置に位置付けられている。また、脚部50、52は、図3に示すように、側壁部42、44の長手方向に沿う方向に延びる延出部50a、50b、52a、52bを有している。これら延出部50a、50b、52a、52bが頂壁部36と対向する位置から外側に延びていることにより、集電リード34が正極集電体28に接続された際に集電リード34の安定性を高める働きをする。これら延出部50a、50b、52a、52bには、正極集電体28の側に向かって突出した突起部58が設けられている(図4参照)。この突起部58も溶接部となる。
ここで、突起部56及び突起部58は、例えば、プレス加工により形成される。なお、図3における参照符号60は、脚部50、52に突起部58を設ける際に突起部58の裏側に生じた凹部を示す。
この集電リード34は、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、金属製の薄板を加工することにより、図5に示すような、平面視形状がほぼH形の薄板からなる集電リードの中間製品62を準備する。なお、この薄板は、従来の正極リボンに比べて十分厚い。この中間製品62において、両側部に位置付けられた長尺部分が、脚部50、52となる脚部予定領域70、72である。脚部予定領域70、72の内側に連なる領域は、側壁部42、44となる側壁部予定領域74、76である。そして、側壁部予定領域74と側壁部予定領域76との間に挟まれた領域が、頂壁部36となる頂壁部予定領域78である。
更にこの中間製品62には、打ち抜き加工により、頂壁部予定領域78の中央に貫通孔54が穿設される。
次いで、貫通孔54の周囲の所定位置及び脚部予定領域70、72の両端部の所定位置に、プレス加工により、突起部56、58を設ける。
その後、仮想線80、82、84、86の部分を折り曲げることにより、図3に示すような集電リード34を形成する。
次に、電池1の組み立ての手順について説明する。
上記のような電極群4を準備する。そして、電極群4の他端側に負極集電体を接続した後、当該電極群4を外装缶の中に収容する。そして、外装缶の底壁に負極集電体を抵抗スポット溶接する。
次いで、外装缶2内にアルカリ電解液を所定量注入する。外装缶2内に注入されたアルカリ電解液は、電極群4に保持され、その大部分はセパレータ10に保持される。このアルカリ電解液は、正極6と負極8との間での充放電の際の電気化学反応(充放電反応)を進行させる。このアルカリ電解液としては、KOH、NaOH及びLiOHのうちの少なくとも一種を溶質として含むアルカリ電解液を用いることが好ましい。
次いで、電極群4の一端側に正極集電体28を載置し、更に、正極集電体28の上に集電リード34を載置する。この状態で、外装缶2の上端開口部に絶縁ガスケット18を介して封口体14を配置する。このとき、集電リード34と封口体14とは接触している。
その後、電池1の正極端子22と負極端子との間に加圧しながら電流を流し、抵抗スポット溶接を行う。これにより、正極6の正極接続端縁部32と正極集電体28とが溶接され、正極集電体28と集電リード34の脚部50、52とが溶接され、集電リード34の頂壁部36と封口体14の蓋板16とが溶接される。
その後、外装缶2の開口縁17をかしめ加工することにより、外装缶2の開口3を封止する。
ここで、上記したような正極集電体28においては、スリット30のエッジの部分の突起(バリ)が正極6の正極接続端縁部32に当接するように配置される。そして、抵抗スポット溶接が行われるとき、当該突起(バリ)の部分に溶接電流が集中し、突起(バリ)の部分の一部が溶融して溶接部となり、正極集電体28と正極6の正極接続端縁部32とが接続される。また、集電リード34の脚部50、52においては、突起部58が正極集電体28と当接するように配置される。そして、抵抗スポット溶接が行われるとき、突起部58の部分に溶接電流が集中し、突起部58の一部が溶融して集電リード34の脚部50、52と正極集電体28とが接続される。更に、集電リード34の頂壁部36においては、突起部56が封口体14の蓋板16と当接するように配置される。そして、抵抗スポット溶接が行われるとき、突起部56の部分に溶接電流が集中し、突起部56の一部が溶融して集電リード34の頂壁部36と蓋板16とが接続される。
以上のようにして、正極6と正極端子22とが、正極集電体28、集電リード34及び蓋板16を介して電気的に接続され、電池1が形成される。
ここで、集電リード34と正極集電体28との間、及び、正極集電体28と電極群4の正極接続端縁部32との間での主な通電経路(電流が流れる経路)について説明する。
まず、正極集電体28については簡略化して全体的に円形状のモデルを想定するとともに、電極群4の正極接続端縁部32についても簡略化して同心円状のモデルを想定する。
モデル化された正極集電体28を図7に示した。なお、図7において、正極集電体28は、概略的に半分だけの形状が示されている。正極集電体28は、全体としての形状が円形状であり、中央に中央貫通孔29が設けられており、そして、この中央貫通孔29を中心として放射状に延びる6個のスリット30が設けられている。これらのスリット30は、正極集電体28の外周縁まで延びている。そして、正極集電体28を図7中の矢印C方向に見た側面図である図8に示すように、各スリット30の長手方向のエッジ66には、図8中の下方(電極群4の方向)へ突出した突起(バリ)31が設けられている。この正極集電体28をスリット型とする。
図7においては、集電リード34の突起部58が溶接される箇所(以下、リード溶接部68)が、正極集電体28のどの位置に位置付けられるかが概略的に示されている。
この図7では、主な通電経路が、太い矢印で表されている。図7に示すように、主な通電経路は、リード溶接部68から最も近いスリット30のエッジ66に電流が流れるような態様となる。
次に、モデル化された正極接続端縁部32を図9に示した。なお、図9において、正極接続端縁部32は、概略的に半分だけの形状が示されている。図9から明らかなように、正極接続端縁部32は、同心円状に配設されている。
図9においては、正極集電体28のスリット30と、電極群4の正極接続端縁部32との位置関係が概略的に示されている。図9において、参照符号64で示す領域は、正極集電体28のスリット30が位置付けられるスリット領域である。この図9に示すように、スリット領域64におけるエッジ66に相当する部分67と、正極接続端縁部32とは、電極群4の径方向内側から外側にかけて、比較的多くの箇所で交差している。スリット30のエッジ66には突起(バリ)31が形成されており、この突起(バリ)31と正極接続端縁部32とが接触している部分は、溶接部となる。このため、突起(バリ)31を含むスリット30を有する正極集電体28、すなわち、スリット型の正極集電体28は、正極接続端縁部32の多くの箇所で溶接部を形成する。図9において、主な通電経路は太い矢印で表されている。図9に示すように、正極集電体28から正極接続端縁部32への通電経路は、スリット30及び正極接続端縁部32における多数の交差している部分から延びている。つまり、正極集電体28と正極接続端縁部32とは、比較的多くの箇所で接触しているので、正極6に入出力される電流は、比較的広い範囲で流れ、しかもその流れは、比較的均等となる。
このように、電流が比較的広い範囲で比較的均等に流れると電気抵抗値は低くなる。その結果、電池においては、内部抵抗値が低く抑えられ、優れた高率充放電特性を発揮する。
ここで、比較のため、例えば、図10に示すような多孔型の正極集電体88を用いた場合の主な通電経路についても説明する。この多孔型の正極集電体88は、スリット30の代わりに円形の貫通孔92を多数分散させた状態で含んでおり、各貫通孔92は、その周縁に沿って突起(バリ)が形成されている。
図10は、図7に対応する平面図であって、リード溶接部68が、多孔型の正極集電体88のどの位置に位置付けられるかを概略的に示した平面図である。図10において、主な通電経路は、太い矢印で表されている。この図10に示すように、主な通電経路は、リード溶接部68から最も近い貫通孔92の部分に電流が流れるような態様となる。
次に、図11は、図9に対応する平面図であって、多孔型の正極集電体88の貫通孔92と、電極群4の正極接続端縁部32との位置関係を概略的に示した平面図である。図11において、参照符号94で示す領域は、貫通孔92が位置付けられる貫通孔領域である。ここで、貫通孔92の周縁に形成された突起(バリ)と正極接続端縁部32とが接触している部分は、溶接部となる。図11に示すように、貫通孔領域94のうちの数個は、電極群4の外周部側に位置する正極接続端縁部32上に位置付けられ、また、貫通孔領域94のうちの別の数個は、電極群4の内周部側に位置する正極接続端縁部32上に位置付けられている。図11において、主な通電経路は太い矢印で表されている。図11に示すように、正極集電体88から正極接続端縁部32への通電経路は、貫通孔92の周縁と正極接続端縁部32とが交差する部分から延びている。多孔型の正極集電体88の場合、一つの貫通孔領域94が正極接続端縁部32と交差する箇所の数は、スリット型の正極集電体28における一つのスリット領域64が正極接続端縁部32と交差する箇所の数と比べて少ない。つまり、正極集電体88と正極接続端縁部32とが接触する箇所は比較的少ない。このため、正極6に入出力される電流は、比較的狭い範囲で流れ、しかもその流れは、比較的偏っている。
このように、電流が比較的狭い範囲で偏って流れると電気抵抗値は高くなる。その結果、多孔型の正極集電体88を採用した電池においては、上記したスリット型の正極集電体28を採用した場合に比べ、内部抵抗値を低く抑えることができない。
以上より、スリット型の正極集電体28を用いると、多孔型の正極集電体88に比べて電池の内部抵抗値を低く抑えられ、電池の高率充放電特性を向上させることができるので、好ましい。
上記したような抵抗スポット溶接の際及びかしめ加工の際、電池1には、その軸線に沿う方向に圧縮応力が加えられる。それにともない、電極群4、正極集電体28、集電リード34等の電池1を構成する部品にも圧縮応力が加えられる。ここで、集電リード34は、頂壁部36と脚部50、52とが近づく方向(図4の矢印A方向及ぶ矢印B方向)に圧縮応力を受けると、図1に示すように、側壁部42、44が側方に湾曲し、頂壁部36と脚部50、52とが近づく方向に変形する。このように集電リード34が変形し易いと、正極集電体28の変形を抑え、電極群4を圧迫することを抑制することができる。その結果、内部短絡の発生を抑制することができる。
本発明においては、正極集電体28よりも集電リード34を変形し易くするために、集電リード34の変形抵抗Aは、正極集電体28の変形抵抗Bよりも小さく設定する。つまり、A<Bの関係を満たすようにする。このように、集電リード34と正極集電体28とにおいて、変形抵抗のバランスをとることにより、上記したような、かしめ加工及び抵抗スポット溶接の過程で、集電リード34と正極集電体28に圧縮応力が加えられても、集電リード34の方が優先的に変形し、正極集電体28が必要以上に電極群4を圧迫しないようにする。これにより短絡の発生を抑制することができる。
ここで、変形抵抗とは、変形する際の抵抗力、つまり変形させるのに必要な力の度合いをいう。変形抵抗は、材質が同じであれば、例えば、材料の厚さに依存し、厚さが厚いほど変形抵抗は高くなる。また、変形抵抗は、材質が異なれば、その材料の特性、例えば、材料の硬度等に依存し、硬度が高い材料ほど変形抵抗が高くなる。
好ましくは、集電リード34を構成する材料の厚さに比べ、正極集電体28を構成する材料の厚さを厚くする。
また、好ましくは、集電リード34を構成する材料の硬度に比べ、正極集電体28を構成する材料の硬度を大きくする。
また、好ましくは、集電リード34を構成する材料として純Niを用い、正極集電体28を構成する材料として、炭素の含有量が0.01質量%以上、0.1質量%以下の鋼板にNiめっきを施したNiめっき鋼を用いる。なお、純Niとは、純度99.5%以上の高純度ニッケルを指す。
また、好ましくは、集電リード34を構成する材料として、炭素の含有量が0.001質量%以上、0.005質量%以下の極低炭素鋼を用い、正極集電体28を構成する材料として、炭素の含有量が0.01質量%以上、0.1質量%以下の鋼板にNiめっきを施したNiめっき鋼を用いる。
ここで、近年、各種機器の小型化が進んでおり、小型の機器についても高率での放電が要求されている。このような状況にともない、小型の機器に使用される、AA形(R6形、単3形に相当)やAAA形(R03形、単4形に相当)といった小形の電池についてもより高率での放電が要求されている。
しかしながら、これら小形の電池においては、D形(R20形、単1形に相当)やC形(R14形、単2形に相当)の大型の電池の場合に比べ、集電リードを小形化しなければならない。集電リードの小形化にともない、集電リードの可撓性が低下することから、電池の軸線方向に圧縮応力が加えられる際に、集電リードが十分に変形せず、集電体にダイレクトに応力が伝わる。そうすると、正極集電体が変形し、電極群を圧迫して短絡がより発生し易くなっている。また、小形の電池では、電極群の巻回数が少ないため、電極群自体の軸線方向の強度も低くなっている。このため、優れた高率放電特性を得るために単純に小形化した集電リードを用いた小形の電池では、大形の電池に比べ、正極集電体の変形にともなう短絡が発生し易くなっている。
このような状況に対し、本発明は、正極集電体と集電リードとの間の変形抵抗のバランスをとることにより集電リードを優先的に変形させ、正極集電体の変形を抑制し、それにより電極群への圧迫を回避することができるので、特に、高率放電特性に優れる小形の電池、具体的には、直径19mm以下の電池、より好ましくは、直径18mm以下の電池の短絡の発生を抑えることに有効である。
ここで、集電リード34が圧縮応力を受けた際に、より変形し易くなるように、側壁部42、44に変形を促進する変形促進部を含ませることが好ましい。側壁部42、44に変形促進部を含ませる態様としては、例えば、側壁部42、44に湾曲形状部を設ける、あるいは、側壁部42、44自体を湾曲形状に加工する態様が挙げられる。予め側壁部42、44が湾曲していれば、圧縮応力を受けた際、側壁部42、44は側方に膨らみ、集電リード34は、圧縮方向に潰され易くなる。このような態様とするために、集電リード34の中間製品62の折り曲げの工程において、側壁部予定領域74、76を湾曲するように曲げ加工することが好ましい。
なお、変形促進部の形状としては、上記したような湾曲形状に限定されるものではなく、屈曲形状等、変形を促進できる他の形状を採用しても構わない。
また、上記した電池1の組み立て手順において、電極郡4を外装缶2に収容してから正極集電体28を溶接したが、この態様に限定されるものではなく、あらかじめ電極郡4に正極集電体28を溶接しておいても構わない。
[実施例]
実施例1
一般的なニッケル水素二次電池に用いられる正極6、負極8及びセパレータ10を準備した。これら正極6、負極8及びセパレータ10はそれぞれ帯状をなしている。準備した正極6及び負極8の間にセパレータ10を介在させた状態で、渦巻き状に巻回し、AAサイズ用の電極群4を形成した。巻回の際、正極6及び負極8を、互いに、電極群4の軸線方向に沿う方向に僅かにずれた状態となるように配置するとともに、これら正極6及び負極8の間の所定位置にセパレータ10を配置し、この状態で巻回作業を行い、円柱状の電極群4を得た。得られた電極群4は、電極群4の一端側において正極6の正極接続端縁部32が、セパレータ10を介して隣り合っている負極8よりも突出した状態となっており、電極群4の他端側において負極8の負極接続端縁部が、セパレータ10を介して隣り合っている正極6よりも突出した状態となっている。
次に、円板形状をなし、Niめっき鋼の薄板からなるAAサイズ用の負極集電体を準備した。この負極集電体は、電極群4の負極接続端縁部に溶接した。
次に、図2に示すような、全体として十角形状をなし、中央に円形の中央貫通孔29と、この中央貫通孔29を囲むように放射状に延びる6個のスリット30とを含んでいるAAサイズ用の正極集電体28を準備した。この正極集電体28は、炭素の含有量が0.04質量%の鋼の薄板にNiめっきが施されたNiめっき鋼板からなる。この正極集電体28の厚さは0.30mmである。この厚さの値を集電体の厚さとして表1に示した。
次に、炭素の含有量が0.04質量%の鋼の薄板にNiめっきが施されたNiめっき鋼板を準備した。このNiめっき鋼板の厚さは0.25mmである。そして、このNiめっき鋼板を打ち抜き加工することにより、図5に示すような、ほぼH形の集電リードの中間製品62を製造した。この中間製品62の中央に貫通孔54を穿設するとともに、所定位置に、プレス加工により突起部56、58を形成した。そして、仮想線80、82、84、86の部分を折り曲げることにより、図3に示すような集電リード34を形成した。なお、この集電リード34の製造に用いたNiめっき鋼板の厚さの値を集電リードの厚さとして表1に示した。
次に、負極集電体が溶接された電極群4を有底円筒形状の外装缶2の中に収容した。そして、外装缶2の底壁の内面と負極集電体とを溶接した。
次に、電極群4の上端部に圧力センサを配設し、電極群4に加えられる圧縮応力を測定できるようにした。なお、この圧力センサの信号線は、外装缶2の所定位置に開けられた孔より外部に導出し、圧縮応力の測定器に接続した。そして、圧力センサの上に正極集電体28を載置し、更に、正極集電体28の上に集電リード34を載置した。この状態で、外装缶2の上端開口部に絶縁ガスケット18を介して封口体14を配置し、電極群4に加えられる圧縮応力を測定する応力測定用の電池の中間製品を製造した。そして、この応力測定用の電池の中間製品を抵抗スポット溶接機にセットし、溶接電流は流さずに、溶接時と同じ圧力を応力測定用電池の軸線方向に加えた。その後、外装缶2の開口縁17をかしめ加工して外装缶2の開口3を封止し電池1を製造した。
上記した抵抗スポット溶接機での加圧作業及びかしめ加工を通して、電極群4に加えられる圧縮応力を測定した。そして、その測定値のうち最大の値を、電極群への最大応力として表1に示した。
また、正極集電体28及び集電リード34については、抵抗測定用の試料を別途製造した。詳しくは、図6に示すように、正極集電体28の上に集電リード34を載置し、抵抗スポット溶接を行い、正極集電体28及び集電リード34を一体化させた集電部品90を製造した。この集電部品90について、正極集電体28と、集電リード34との間の抵抗値を測定した。その抵抗値を、集電部品の抵抗値として表1に示した。
比較例1
集電リードの代わりに、厚さが0.01mmのNi箔からなる従来の正極リボンを準備し、この正極リボンを正極集電体に溶接して集電部品としたこと、正極集電体の厚さを0.25mmとしたことを除いては、実施例1と同様にして応力測定用の電池の中間製品を製造した。そして、実施例1と同様に、集電部品の抵抗値及び電極群への最大応力を測定した。
比較例2
正極集電体の厚さを0.25mmとしたこと、集電リードの厚さを0.30mmとしたことを除いては、実施例1と同様にして応力測定用の電池の中間製品及び集電部品を製造した。そして、実施例1と同様に、集電部品の抵抗値及び電極群への最大応力を測定した。
比較例3
集電リードの厚さを0.30mmとしたことを除いては、実施例1と同様にして応力測定用の電池の中間製品及び集電部品を製造した。そして、実施例1と同様に、集電部品の抵抗値及び電極群への最大応力を測定した。
実施例2
正極集電体のNiめっき鋼板の厚さを0.40mmとしたこと、集電リードのNiめっき鋼板の厚さを0.30mmとしたことを除いては、実施例1と同様にして応力測定用の電池の中間製品及び集電部品を製造した。そして、実施例1と同様に、集電部品の抵抗値及び電極群への最大応力を測定した。集電体の厚さ、集電リードの厚さ、集電体の材料、集電リードの材料、集電部品の抵抗値及び電極群への最大応力を表2に示した。
実施例3
正極集電体の厚さを0.40mmとしたこと、集電リードの材料として、炭素の含有量が0.04質量%の鋼の薄板にNiめっきが施されたNiめっき鋼板の代わりに、炭素の含有量が0.001質量%の極低炭素鋼の薄板にNiめっきが施されたNiめっき極低炭素鋼板を準備したこと、及び、このNiめっき極低炭素鋼板の厚さを0.30mmとしたことを除いては、実施例1と同様にして応力測定用の電池の中間製品及び集電部品を製造した。そして、実施例1と同様に、集電部品の抵抗値及び電極群への最大応力を測定した。集電体の厚さ、集電リードの厚さ、集電体の材料、集電リードの材料、集電部品の抵抗値及び電極群への最大応力を表2に示した。
実施例4
正極集電体の厚さを0.40mmとしたこと、集電リードの材料として、Niめっき鋼板の代わりに、純Niの薄板を準備したこと、及び、この純Niの薄板の厚さを0.30mmとしたことを除いては、実施例1と同様にして応力測定用の電池の中間製品及び集電部品を製造した。そして、実施例1と同様に、集電部品の抵抗値及び電極群への最大応力を測定した。集電体の厚さ、集電リードの厚さ、集電体の材料、集電リードの材料、集電部品の抵抗値及び電極群への最大応力を表2に示した。
ここで、集電部品の抵抗値が0.5mΩを越える場合、電池全体としての内部抵抗は高くなり、得られる電池の高率放電特性は、従来と同等となると考えられる。このような電池については、従来品であるとして表1の判定の欄には−印を記載した。
集電部品の抵抗値が0.5mΩ以下であれば、電池全体としての内部抵抗も低く抑えられ、得られる電池の高率放電特性は優れたものとなる。また、集電部品の抵抗値が0.25mΩ以下であれば、得られる電池の高率放電特性は更に優れたものとなる。
一方、電極群への最大応力が30.0kgf/mm2を超えると、正極集電体の変形が大きくなり、電極群への圧迫の度合いが高くなる。その結果、正極や負極の折れ曲がりによる内部短絡の発生が多くなると考えられる。電極群への最大応力が30.0kgf/mm2以下であれば、正極集電体の変形による電極群への圧迫の度合いも許容できる範囲内となり正極や負極の折れ曲がりによる内部短絡の発生も抑制されると考えられる。また、電極群への最大応力が20.0kgf/mm2以下であれば、正極集電体の変形が抑えられるので好ましく、電極群への最大応力が15.0kgf/mm2以下であれば、正極集電体の変形がより抑えられるのでより好ましい。
よって、集電部品の抵抗値が0.5mΩ以下であるが、電極群への最大応力が30.0kgf/mm2を超える電池については、高率放電特性には優れるものの正極集電体の変形が起こり易いと考えられるので不良の判定をした。この不良の判定の電池については、表1の判定の欄に×印を記載した。
集電部品の抵抗値が0.5mΩ以下であり、且つ、電極群への最大応力が30.0kgf/mm2以下の電池については、優れた高率放電特性を得つつ、正極集電体の変形もある程度抑えられるとして、良の判定をした。この良の判定の電池については、表1の判定の欄に△印を記載した。
集電部品の抵抗値が0.5mΩ以下であり、且つ、電極群への最大応力が20.0kgf/mm2以下の電池については、優れた高率放電特性を得つつ、正極集電体の変形が抑えられるとして、優良の判定をした。この優良の判定の電池については、表1の判定の欄に○印を記載した。
集電部品の抵抗値が0.25mΩ以下で、且つ、電極群への最大応力が15.0kgf/mm2以下である電池については、優れた高率放電特性を得ることができるとともに、正極集電体の変形がより抑えられ、電池の内部短絡の発生をより抑制することができるので、最良の判定をした。この最良の判定の電池については、表1の判定の欄に◎印を記載した。
[解析]
実施例3の電池と同じ構成の電池に関して、そこに含まれる正極集電体を図7に示すようなスリット型の正極集電体にモデル化するとともに、そこに含まれる電極群の正極接続端縁部を図9に示すような同心円状にモデル化し、当該電池の正極端子に一定の電圧を印加した場合の電位分布の解析及び電気抵抗値の解析を行った。
ここで、解析に際し、スリット型の正極集電体の各部の寸法は以下のように設定した。
正極集電体28の直径Dは15.00mm、中央貫通孔29の直径dは3.00mm、スリット30の長さLは3.75mm、スリット30の幅Wは1.20mmとした(図7参照)。また、正極集電体28の厚さT1は0.40mm、突起(バリ)の長さ(正極集電体の下面からの突出長さ)Pは0.35mm、突起(バリ)の厚さT2は0.20mmとした(図8参照)。
電位分布の解析においては、電位の降下の度合いの可視化を行った。スリット型の正極集電体28について得られた電位分布の解析結果を図12に示した。また、スリット型の正極集電体28と組み合わされた正極接続端縁部32について得られた電位分布の解析結果を図13に示した。図12、13においては、灰色の濃淡により電位の降下の度合いを表しており、灰色が濃いほど電位降下の度合いは大きく、灰色が薄いほど電位降下の度合いは小さい。つまり、灰色が濃く電位降下が大きいほど抵抗値が大きくなることを示している。なお、電位降下の度合いの表し方については、後述する図14、15の結果についても同様である。
電気抵抗値の解析においては、正極集電体28の部分の電気抵抗値を求めた。その結果、スリット型の正極集電体28の電気抵抗値は、0.0313mΩであった。また、スリット型の正極集電体28及び正極接続端縁部32を組み合わせた部分の電気抵抗値は、0.0884mΩであった。
また、正極集電体をスリット型の正極集電体28から図10に示す多孔型の正極集電体88に変更した態様についても、上記と同様に電位分布の解析及び電気抵抗値の解析を行った。多孔型の正極集電体88について得られた電位分布の解析結果を図14に示した。また、多孔型の正極集電体88と組み合わされた正極接続端縁部32について得られた電位分布の解析結果を図15に示した。
ここで、多孔型の正極集電体88の各部の寸法は、正極集電体88の直径Dは15.00mm、中央貫通孔29の直径dは3.00mm、貫通孔92の直径dtは1.50mmとした(図10参照)。また、正極集電体88の厚さT1は0.40mm、突起(バリ)の長さ(正極集電体の下面からの突出長さ)Pは0.35mm、突起(バリ)の厚さT2は0.20mmとした。
電気抵抗値の結果としては、多孔型の正極集電体88の電気抵抗値は、0.0293mΩであった。また、多孔型の正極集電体88及び正極接続端縁部32を組み合わせた部分の電気抵抗値は、0.1164mΩであった。
[考察]
(1)従来の正極リボンを用いている比較例1は集電部品の抵抗値が0.95mΩとなっており、集電リードを用いている実施例1、2、3、4、比較例2、3に比べ高い値となっている。つまり、従来の正極リボンに比べ、集電リードを用いた方が高率放電特性に優れていることがわかる。これは、正極リボンが、薄く長尺であることから比抵抗が高くなっているのに比べ、集電リードは、通電経路が短縮されていることから比抵抗が低くなっているためと考えられる。
(2)比較例2、3のように、集電体の厚さが集電リードの厚さよりも薄い場合、又は、集電体の厚さと集電リードの厚さとが同じ場合、電極群への最大応力が30.0kgf/mm2を超える高い値となっている。このように、集電体の厚さが集電リードの厚さと同等以下であると、集電体の変形抵抗は、集電リードの変形抵抗よりも小さくなり、圧縮応力が加えられた場合、集電リードよりも集電体の方が変形し易くなる。このため、集電体が変形して電極群に比較的大きな応力がかかってしまう。その結果、内部短絡が起こり易くなると考えられる。
(3)これに対し、集電リードの厚さに比べ、集電体の厚さが厚い実施例1、2、3、4においては、電極群への最大応力が、比較例2、3に比べ低い値となっている。このように、集電体の厚さが集電リードの厚さよりも厚いと、集電リードの変形抵抗は、集電体の変形抵抗よりも小さくなり、圧縮応力が加えられた場合、集電体よりも集電リードの方が変形し易くなる。このため、集電リードが優先的に変形し、集電体の変形は抑えられるので、電極群にかかる応力は比較的小さくなる。その結果、内部短絡は起こり難くなると考えられる。
(4)実施例2においては、集電体を構成する材料をNiめっき鋼からなる薄板とし、集電リードを構成する材料も同じNiめっき鋼からなる薄板としている。このため、集電リードと集電体とにおいて、材料に関する変形抵抗は同じである。
(5)実施例3においては、集電体を構成する材料をNiめっき鋼からなる薄板とし、集電リードを構成する材料を極低炭素鋼の薄板にNiめっきを施したNiめっき極低炭素鋼としている。Niめっき極低炭素鋼は、Niめっき鋼に比べ硬度が低い。このため、集電リードの材料に関する変形抵抗は、集電体の材料に関する変形抵抗よりも小さくなり、圧縮応力が加えられた場合、集電体よりも集電リードの方が変形し易くなる。このため、集電リードが優先的に変形し、集電体の変形は抑えられるので、電極群にかかる応力は、比較的小さくなる。このことは、集電リードの材料と集電体の材料とを同じにしている実施例2における電極群への最大応力の値よりも、実施例3における電極群の最大応力の値が小さいことからも明らかである。よって、実施例3は、実施例2に比べ、内部短絡が起こり難くなると考えられる。
(6)実施例4においては、集電体を構成する材料をNiめっき鋼からなる薄板とし、集電リードを構成する材料を純Niの薄板としている。純Niは、Niめっき鋼に比べ硬度が低い。このため、集電リードの材料に関する変形抵抗は、集電体の材料に関する変形抵抗よりも小さくなり、圧縮応力が加えられた場合、集電体よりも集電リードの方が変形し易くなる。このため、集電リードが優先的に変形し、集電体の変形は抑えられるので、電極群にかかる応力は、比較的小さくなる。このことは、集電リードの材料と集電体の材料とを同じにしている実施例2における電極群への最大応力の値よりも、実施例4における電極群の最大応力の値が小さいことからも明らかである。よって、実施例4は、実施例2に比べ、内部短絡が、更に起こり難くなると考えられる。
(7)以上のように、集電リードの厚さを集電体の厚さよりも薄くしたり、集電リードの材料の硬度を集電体の材料の硬度よりも低くしたりすることにより集電リードの変形抵抗を集電体の変形抵抗よりも小さくするというように、集電リードの変形抵抗と集電体の変形抵抗とのバランスをとることで、優れた高率放電特性を維持しつつ内部短絡の発生の抑制を図ることができる。
(8)スリット型の正極集電体28の電位分布の解析結果を示した図12より、リード溶接部68とスリット30との間における灰色の変化の度合いがスリット毎にほぼ均等であることがわかる。このことから、スリット型の正極集電体28では、電位降下量がスリット毎にほぼ均等であり、流れる電流や電気抵抗値の大きさがほぼ均等であると言える。また、スリット型の正極集電体28と組み合わされた正極接続端縁部32について得られた電位分布の解析結果を示した図13より、正極接続端縁部32において、多くの周回において電流が流れており、更に一つの周回の中でも電流がほぼ均等に流れていることがわかる。このことから、スリット型の正極集電体28を用いた場合、電気抵抗値を低減できると言える。
(9)多孔型の正極集電体88の電位分布の解析結果を示した図14より、リード溶接部68と貫通孔92との間における灰色の変化の度合いが貫通孔毎にまちまちであることがわかる。このことから、多孔型の正極集電体88では、電位降下量が貫通孔毎に均等ではなく、流れる電流や電気抵抗値の大きさが不均一であると言える。また、多孔型の正極集電体88と組み合わされた正極接続端縁部32について得られた電位分布の解析結果を示した図15より、正極接続端縁部32において、貫通孔92が存在する周回のみにしか電流が流れておらず、また一つの周回の中でも電流が均等には流れていないことがわかる。このことから、多孔型の正極集電体88を用いた場合、スリット型の正極集電体28を用いた場合に比べ電気抵抗値を低減できる効果は小さくなると言える。
(10)スリット型の正極集電体28の電気抵抗値は0.0313mΩであり、多孔型の正極集電体88の電気抵抗値は0.0293mΩであり、正極集電体の部分における電気抵抗値は、スリット型と多孔型とでほぼ同じ値となっていた。一方、正極集電体及び正極接続端縁部を組み合わせた部分の電気抵抗値は、多孔型の場合、0.1164mΩであったのに対し、スリット型の場合、0.0884mΩであり、スリット型の方が電気抵抗値は低い。このことから、正極集電体だけでは、スリット型と多孔型とで、電気抵抗値に大差はないが、正極集電体と正極接続端縁部とを組み合わせた場合に、スリット型の正極集電体28を用いた方が、多孔型の正極集電体88を用いるよりも電気抵抗値を24%低減でき、電気抵抗値の低減効果に有利であることがわかる。スリット型の正極集電体28は、正極接続端縁部32と多くの箇所で接することができるので、電流を比較的広い範囲で比較的均等に流すことができる。その結果、電気抵抗値を低減することができ、電池の高率充放電特性の向上に寄与する。スリット型の正極集電体28においては、スリットの長さをなるべく長くし、より多くの箇所で正極接続端縁部32と接触できるようにすると、電気抵抗値をより低減させることができると考えられる。
なお、本発明は上記した一実施形態及び実施例に限定されることはなく、種々の変形が可能であって、例えば、電池の種類は、ニッケル水素二次電池に限定されず、ニッケル−カドミウム二次電池等であってもよい。