JP4152084B2 - 角型アルカリ蓄電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はニッケル−水素蓄電池、ニッケル−カドミウム蓄電池などのアルカリ蓄電池に係り、特に、極板芯体に正極活物質が塗着された正極板と極板芯体に負極活物質が塗着された負極板がセパレータを介して交互に積層された極板群が角型金属製外装缶内に密閉して収容された角型アルカリ蓄電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、正極板と負極板をセパレータを介して渦巻状に巻回した渦巻状電極群を備えた円筒型アルカリ蓄電池に代わり、電池使用機器内での体積効率を高めるために角型アルカリ蓄電池が開発されるようになった。この種の角型アルカリ蓄電池においては、正極板と負極板をセパレータを介して交互に積層した極板群を角型の外装缶内に挿入し、正極板より延出する正極リードを正極端子に接続し、負極板より延出する負極リードを負極端子に接続した後、電解液を注入し、開孔部を封口体で封止して作製するようにしている。
【0003】
この種の角型アルカリ蓄電池は携帯電話、ノートブック型パーソナルコンピュータ等の携帯機器用電源としての需要が急速に拡大し、これに伴って、角型アルカリ蓄電池のさらなる高容量化、長寿命化が要求されるようになった。このため、この種の角型アルカリ蓄電池は、例えば、特開平10−312824号公報に示されるように、帯状の芯体を共通にしてその左右に2つの負極板を形成した後、その中央部(連結部)をU字状に折曲し、U字状に折曲された2つの負極板間にセパレータを介して正極板を挟持させた極板組の間にセパレータを介して正極板を積層して極板群とし、この極板群を電解液とともに角型外装缶内に挿入して製造するようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述した特開平10−312824号公報にて示された角型アルカリ蓄電池においては、極板群の最外側に配置される極板の極板芯体の外装缶に接触する側の活物質を除去するようにして、極板群の最外側に配置された極板芯体を露出させている。これにより、極板群を金属カバーで被覆しなくても活物質の脱落を生じることなく、角型外装缶内に挿入できるようにしている。この結果、金属カバーを用いない分だけ体積エネルギー密度を向上させることができるにもかかわらず、外装缶への挿入時に極板群の最外側に配置された極板からの活物質の脱落を防止できるようになる。
【0005】
しかしながら、極板群の最外側に配置される極板の外装缶に接触する側の活物質を除去するようにして、この部分の極板芯体を露出させるようにすると、この極板芯体が露出した部分の反対側に塗着された活物質層の結着強度が弱くなるため、充放電を繰り返すに伴って、この部分の活物質層が極板から脱落するという問題を生じた。これは、通常、金属板に多数の開孔を設けたパンチングメタルが極板芯体に使用されるが、このパンチングメタルに塗着された活物質層とパンチングメタルが直接結着するための結着力は弱いため、パンチングメタルの両側に塗着された活物質層同士が開孔を通して結着されることとなる。この結果、パンチングメタルの片側に塗着された活物質層が除去されると、パンチングメタルの他側に残存した活物質層の結着強度が弱くなるため、この部分の活物質層が極板から脱落することとなる。
【0006】
そこで、本発明は上記問題点を解消するためになされたものであって、極板群の最外側に配置される極板の極板芯体を露出させても、この部分の反対側に残存する活物質層の結着強度を維持できるようにして、活物質の脱落を抑制できる角型アルカリ蓄電池を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
上記目的を達成するため、本発明は、極板芯体に正極活物質が塗着された正極板と極板芯体に負極活物質が塗着された負極板がセパレータを介して交互に積層された極板群を角型金属製外装缶内に密閉して収容した角型アルカリ蓄電池であって、極板芯体は多数の開孔を備え、極板群の最外側に配置された極板芯体の外側は露出されていて、該最外側に配置された極板芯体の開孔面積率は最外側より内部に配置された極板芯体の開孔面積率よりも小さく、かつ、最外側に配置された極板芯体の開孔面積率は10%以上で40%以下となるように規定している。
【0008】
ここで、極板芯体の両側に活物質が塗着された極板の極板芯体においては、開孔面積率(活物質が塗着された極板芯体の全表面積に対する全開孔面積の割合)が大きいほど、電池内での発生ガスの透過性が向上するとともに、極板芯体の両側に配置された活物質同士の結着力も向上するため、極板芯体自体の強度が低下しない範囲で開孔面積率を大きくした方がよいということができる。
しかしながら、塗着された活物質層の片側が除去される極板芯体においては、開孔面積率が大きいほどガス透過性が向上する反面、活物質と極板芯体との結着力が低下して、充放電に伴って活物質が極板から脱落するようになる。また、塗着された活物質層の片側が除去される極板芯体においては、開孔面積率が小さいほど、活物質と極板芯体との結着力は大きくなる反面、ガス透過性が低下することとなる。
【0009】
このため、露出している極板芯体の開孔面積率は露出していない他の極板芯体の開孔面積率よりも小さくする必要があるとともに、その開孔面積率の上限値および下限値を最適にする必要がある。そこで、種々の実験を試みた結果、露出している極板芯体の開孔面積率が10%以上であれば、ガス透過性が低下することなく、電解液の減少に伴う電池容量の劣化を抑制できることが分かった。また、露出している極板芯体の開孔面積率が40%以下であれば、活物質と極板芯体との結着力が低下することなく、ガス透過性が向上することが分かった。
【0010】
これは、極板芯体の開孔面積率が10%未満であれば、活物質と極板芯体との結着力は大きくなるが、反面、電池内での発生ガスの透過性が低下して、充放電サイクル時に内圧上昇に伴って外装缶が膨張するとともに電解液が減少して、電池容量が劣化するようになるためである。一方、極板芯体の開孔面積率が40%を越えるようになると、活物質と極板芯体との結着力が低下して、充放電に伴って活物質が極板から脱落するようになるためである。
【0011】
この場合、極板群の最外側に配置された極板芯体の片側面の開孔周縁に突起が形成されおり、この突起が形成された片側面に活物質が塗着されているとともに、この突起が形成された面の反対側が露出されていると、塗着された活物質層内に突起が埋没するようになって、活物質層と極板芯体との結着強度が向上するようになる。このため、極板群の最外側に配置された極板芯体の片側面の活物質層を除去して極板芯体を露出させても、反対側に塗着された活物質層の脱落をさらに防止できるようになる。なお、極板群の最外側に配置された極板の極板芯体の活物質が塗着された面の開孔を除く表面に微少突起が形成されていると、この微少突起は塗着された活物質層に埋没されるようになるため、最外側に配置された極板の活物質層と極板芯体との結着強度がさらに向上する。
【0012】
また、極板群の最外側に配置された極板芯体の露出面が角型金属製外装缶の内側面に接触していると、極板群を金属カバーなどで被覆しなくても角型外装缶内に活物質の脱落を生じることなく容易に挿入することが可能となる。これにより、金属カバーを用いない分だけ体積エネルギー密度が向上するとともに、最外側に配置された極板から金属製外装缶への集電効率が向上するようになる。この場合、極板芯体をパンチングメタルで構成するようにすると、パンチングメタルは極めて容易に製造することができるので、この種の極板芯体を容易に製造することができるようになる。
【0013】
なお、極板群として、最外側に配置された極板芯体は無孔の連結部が一体的に形成されているとともに、この連結部が略U字状に折曲されており、この略U字状に折曲された空隙部にセパレータを介して他方の極板が挟持されているような構成を採用すると、この種の極板群を容易に構成することができるようになると共に、略U字状に折曲された連結部と金属外装缶の底部内面との接触が良好になって集電効率が向上する。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明をニッケル−水素蓄電池に適用した場合の一実施の形態を図1〜図4に基づいて説明する。なお、図1は負極板芯体を模式的に示す斜視図であり、図2は図1の負極板芯体に負極活物質を塗着した連結負極板のα部を切断して極板の強度試験を行う状態を模式的に示す斜視図である。また、図3は連結負極板と正極板をセパレータを間にして積層した極板群を模式的に示す断面図であり、図4は図3の極板群を角型外装缶内に収納した状態の要部を一部破断して模式的に示す斜視図である。
【0015】
1.連結負極芯体の作製
(1)実施例1〜4
鉄にニッケルメッキを施した金属板(例えば、厚みが0.05〜0.06mmのもの)を図1(a)に示すように、無孔部のα部と開孔部のβ部およびγ部が形成され、かつ、多数の所定径の円孔11aが所定の配列となるようにプレス成形して、パンチングメタルを作製した後、このパンチングメタルを所定寸法(例えば、幅が15mmで長さが80mm)になるように切断して連結負極芯体11を作製した。なお、連結負極芯体11において、無孔部のα部は後に極板群とされた際に2つの負極板10,10間を連結するための連結部となるものであり、開孔部のβ部は正極板20と対向し、開孔部のγ部は極板群の最外側に配置されて外装缶の内側面に接触する部分となる。
【0016】
ここで、開孔部のβ部の開孔面積率(β部の全表面積に対するβ部に形成された全円孔11aの全表面積の割合)を50%とし、開孔部のγ部の開孔面積率(γ部の全表面積に対するγ部に成形された全円孔11aの全表面積の割合)を40%となるように形成した連結負極板芯体11を実施例1の負極芯体aとした。また、β部の開孔面積率を50%とし、γ部の開孔面積率を30%となるように成形した連結負極板芯体11を実施例2の負極芯体bとした。また、β部の開孔面積率を50%とし、γ部の開孔面積率を20%となるように成形した連結負極板芯体11を実施例3の負極芯体cとした。さらに、β部の開孔面積率を50%とし、γ部の開孔面積率を10%となるように成形した連結負極板芯体11を実施例4の負極芯体dとした。
【0017】
(2)実施例5
鉄にニッケルメッキを施した金属板(例えば、厚みが0.05〜0.06mmのもの)を図1(b)に示すように、無孔部のα部と開孔部のβ部およびγ部が形成され、かつ、多数の所定径の円孔11aが所定の配列となるようにプレス成形して、パンチングメタルを作製した後、このパンチングメタルを所定寸法(例えば、幅が15mmで長さが80mm)に切断して連結負極板芯体11を作製した。なお、この場合、円孔11aの周縁部に突起11bが形成されるように予め所定径よりも小径の円孔11aをプレス成形により形成した後、この小径の円孔11aの周縁部を押し広げることにより、円孔11aの周縁部に突起11bを形成するとともに、開孔部のβ部の開孔面積率が50%で、開孔部のγ部の開孔面積率が40%となるように成形して、実施例5の負極芯体eとした。
【0018】
(3)比較例1
鉄にニッケルメッキを施した金属板(例えば、厚みが0.05〜0.06mmのもの)を図1(c)に示すように、無孔部のα部と開孔部のβ部および無孔部のγ部が形成されるように、多数の所定径の円孔11aが所定の配列となるようにプレス成形して、パンチングメタルを作製した後、このパンチングメタルを所定寸法(例えば、幅が15mmで長さが80mm)に切断して連結負極板芯体11を作製した。この場合、開孔部のβ部の開孔面積率が50%となるようにプレス成形して、比較例1の負極芯体xとした。
【0019】
(4)比較例2
鉄にニッケルメッキを施した金属板(例えば、厚みが0.05〜0.06mmのもの)を図1(d)に示すように、無孔部のα部と開孔部のβ部およびγ部が形成されるように、多数の所定径の円孔11aが所定の配列となるようにプレス成形して、パンチングメタルを作製した後、このパンチングメタルを所定寸法(例えば、幅が15mmで長さが80mm)に切断して連結負極板芯体11を作製した。この場合、開孔部のβ部の開孔面積率および開孔部のγ部の開孔面積率が共に50%となるようにプレス成形して、比較例2の負極芯体yとした。
【0020】
2.連結負極板の作製
水素吸蔵合金粉末に結着剤としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉末を水素吸蔵合金粉末に対して5質量%加えて混練して、負極活物質ペースト12を作製した。ついで、上述のように作製した連結負極板芯体11(a,b,c,d,e,x,y)のそれぞれの両面にこの負極活物質ペースト12を塗着し、乾燥させた後、α部に塗着された両面の負極活物質ペースト12およびγ部に塗着された片側の負極活物質ペースト12を除去して、連結負極板10を作製した。なお、芯体eを用いた連結負極板10を作製する場合には、γ部に塗着された片側の負極活物質ペースト12を除去するに際して、突起11bが形成されていない面の負極活物質ペースト12を除去するようにした。
【0021】
3.極板群の最外側に配置される負極板の強度測定
ついで、上述のように作製した連結負極板10のγ部のみを切断して試料負極板10aとし、この試料負極板10aの付着強度を測定した。なお、この強度測定においては、図2に示すように、これらの各試料負極板10a(なお、この試料負極板10aは負極芯体11の片面に負極活物質層12が形成されている)の負極活物質層12の表面を切削した後、切削面をウエスで軽く擦って表面の切削くずを除去した後、これらの各負極活物質層12の表面に対して約30度の角度にカッター(図示せず)を保持した後、カッターの刃先に250g程度の荷重が掛かるようにして、負極活物質層12を切るように切溝x,yを引いた。なお、各切溝x,yの間隔は1mm間隔とし、各切溝x,yをそれぞれ10本ずつ互いに直角に交差するように引いた。
【0022】
ついで、各切溝x,yを10本ずつ互いに直角に交差するように引くことにより、碁盤目状に100個の升目を形成した。ついで、碁盤目状に100個の升目が形成された各試料負極板10aをそれぞれ10枚ずつ用いて、試料負極板10aが垂直になるようにして、高さが約100mmの位置まで持ち上げた後、各試料負極板10aをそれぞれ自由落下させた。この落下試験を3回繰り返して行った後、各試料負極板10aに形成された升目の脱落個数を数えて、その平均値を求めると下記の表1に示すような結果となった。
【0023】
【表1】
Figure 0004152084
【0024】
上記表1の結果から明らかなように、γ部の開孔面積率が50%の試料負極板yの平均脱落数が20個であるのに比較して、これよりもγ部の開孔面積率を減少させるに従って平均脱落数が、8個、7個、5個、4個、3個および1個と極めて低下していることが分かる。これは、γ部の開孔面積率が減少するに伴って、活物質層12と極板芯体11との結着力が向上して、活物質層12の脱落が抑制されたためと考えられる。このことから、γ部、即ち、極板群の最外側に配置されて負極芯体が露出される極板芯体11の開孔面積率は40%以下にするのが好ましいということができる。
また、γ部の開孔面積率を40%とした試料負極板aと試料負極板eの平均脱落数を比較すると、試料負極板eの平均脱落数が減少していることが分かる。これは、試料負極板eにあってはγ部の片側には突起10bが形成されているため、この部分に塗着された活物質層12が突起10bに食い込むように負極芯体11に固着されているためである。
【0025】
4.正極板の作製
発泡ニッケル等よりなる三次元的に連続する空間を有する金属多孔体21に水酸化ニッケルを主成分とする活物質スラリーを充填し、乾燥した後、所定の厚みになるように圧延してニッケル正極板20を作製した。そして、このニッケル正極板20の上端部に充填された活物質の一部を除去して剥離部を形成した後、この剥離部に集電リード板21aを溶接して固着した。なお、水酸化ニッケルを主成分とする活物質スラリーとしては、例えば、共沈成分として亜鉛を2.5質量%とコバルトを1質量%を含有する水酸化ニッケル粉末10質量部と、酸化亜鉛粉末を3質量部とを混合した混合粉末に、ヒドロキシプロピルセルロースの0.2質量%水溶液を加えて撹拌、混合したものを使用した。
【0026】
5.極板群の作製
まず、所定の厚みで長尺のポリプロピレン製不織布を2つ折りにして両端部を固着して袋状に成形したセパレータ30を用意し、このセパレータ30内に上述のように作製したニッケル正極板20を収納した。ついで、上述のように作製した各連結負極板10の中央部(負極芯体11のα部:連結部)をそれぞれU字状に折曲した後、このU字状に折曲した連結負極板10,10間に、ニッケル正極板20が収納されたセパレータ30をそれぞれ挟持させて極板組とした。この極板組をそれぞれ2組づつ用意し、これらの2組の極板組間にニッケル正極板20が収納されたセパレータ30をそれぞれ挟持させて積層して、各極板群a1,b1,c1,d1,e1,x1,y1をそれぞれ作製した。
【0027】
ここで、負極芯体a(γ部の開孔面積率が40%のもの)を用いた極板群を極板群a1とし、負極芯体b(γ部の開孔面積率が30%のもの)を用いた極板群を極板群b1とし、負極芯体c(γ部の開孔面積率が20%のもの)を用いた極板群を極板群c1とし、負極芯体d(γ部の開孔面積率が10%のもの)を用いた極板群を極板群d1とし、負極芯体e(γ部の開孔面積率が40%で円孔周縁に突起11bを形成したもの)を用いた極板群を極板群e1とし、負極芯体x(γ部に円孔がないのもの)を用いた極板群を極板群x1とし、負極芯体y(γ部の開孔面積率が50%のもの)を用いた極板群を極板群y1とした。
【0028】
6.角型ニッケル−水素蓄電池の作製
上述のように作製した各極板群a1,b1,c1,d1,e1,x1,y1をそれぞれ有底四角柱状(角型)の金属外装缶40内に挿入し、各極板群a1,b1,c1,d1,e1,x1,y1の両端部の連結負極板10の負極芯体11が露出した面を金属外装缶40の内側面に緊密に接触させるとともに、負極芯体11の連結部αが金属外装缶40の内底面に緊密に接触させた。ついで、各極板群a1,b1,c1,d1,e1,x1,y1のニッケル正極板20の上部に延出した集電リード板21aを封口板41の正極端子42の下面に溶接した。
【0029】
なお、正極端子42の周囲には絶縁体43が配設されていて、封口板41と正極端子42とは電気的に絶縁されている。ついで、これらの各金属外装缶40内にそれぞれ30質量%の水酸化カリウム(KOH)水溶液よりなる電解液を注液した後、各金属外装缶40と封口板41との接合部にレーザー光を照射して、この接合部を気密に封止した。これにより、B1サイズ(幅17.0mm、高さ48.0mm、厚み6.1mm)で、公称容量が880mAhの角型ニッケル−水素蓄電池A,B,C,D,E,X,Yをそれぞれ作製した。
【0030】
ここで、負極芯体a(γ部の開孔面積率が40%のもの)を用いた極板群a1を備えた角型ニッケル−水素蓄電池を電池Aとし、負極芯体b(γ部の開孔面積率が30%のもの)を用いた極板群b1を備えた角型ニッケル−水素蓄電池を電池Bとし、負極芯体c(γ部の開孔面積率が20%のもの)を用いた極板群c1を備えた角型ニッケル−水素蓄電池を電池Cとし、負極芯体d(γ部の開孔面積率が10%のもの)を用いた極板群d1を備えた角型ニッケル−水素蓄電池を電池Dとし、負極芯体e(γ部の開孔面積率が40%で円孔周縁に突起11bを形成したもの)を用いた極板群e1を備えた角型ニッケル−水素蓄電池を電池Eとし、負極芯体x(γ部に円孔がないのもの)を用いた極板群x1を備えた角型ニッケル−水素蓄電池を電池Xとし、負極芯体y(γ部の開孔面積率が50%のもの)を用いた極板群y1を備えた角型ニッケル−水素蓄電池を電池Yとした。
【0031】
7.サイクル特性試験
上述のように作製した各電池A,B,C,D,E,X,Yを1It(880mA)の充電々流で充電を行い、ピーク電圧を越えた後、電池電圧が10mV低下した時点で充電を停止(−ΔV方式)させ、1時間充電を休止した後、1It(880mA)の放電々流で電池電圧が1.0Vになるまで放電させて、1時間放電を休止させるという充放電サイクルを1サイクルとする充放電サイクルを繰り返して行って、1サイクル後の放電容量と500サイクル後の放電容量との比率を放電容量比(容量比)として求めると、下記の表2に示すような結果となった。
【0032】
【表2】
Figure 0004152084
【0033】
上記表2の結果から明らかなように、芯体露出部(γ部)が無孔の負極芯体11を用いた電池Xと比較して、芯体露出部(γ部)に円孔11aを開孔させた負極芯体11を用いた電池A,B,C,D,E,Yの容量比が大きく、かつ芯体露出部(γ部)の開孔面積率を大きくするほど容量比が大きくなることが分かる。これは、電池Xにおいては、芯体露出部(γ部)が無孔であるため、電池内で発生したガスの透過性が他の電池A,B,C,D,E,Yよりも低下して、充放電サイクルが進行するに伴って電池の内部圧力が上昇し、この内部圧力の上昇に伴って電解液が電池外部に放出されて容量比が低下したと考えられる。
【0034】
一方、電池Y,E,A,B,C,Dの順で芯体露出部(γ部)の負極芯体11の開孔面積率を小さくすると、開孔面積率が小さくなるに伴って電池内で発生したガスの透過性が低下して、容量比も低下するが、電池Dのように芯体露出部(γ部)の負極芯体11の開孔面積率が10%であれば容量比もそれほど低下しないため、芯体露出部(γ部)の負極芯体11の開孔面積率は10%以上に規定すれば良いということができる。
そして、以上の表1と表2の結果を総合すると、芯体露出部(γ部)の負極芯体11の開孔面積率は10%以上で40%以下に規定すれば、負極板の結着強度が向上して活物質の脱落を抑制できるようになるとともに、電池内で発生したガスの透過性が良好で容量比が向上したアルカリ蓄電池を得ることが可能になるということができる。
【0035】
以上に述べたように、本発明においては、極板群の最外側に配置された負極板の負極芯体は露出されているとともに、この露出している負極芯体の開孔面積率は露出していない他の負極芯体の開孔面積率よりも小さく、かつ露出している負極芯体の開孔面積率は10%以上で40%以下となるように規定している。このため、極板群の最外側に配置された負極板の結着強度が向上して活物質の脱落を抑制できるようになるとともに、電池内で発生したガスの透過性が良好で容量比が向上し、かつ体積エネルギー密度が大きい角型アルカリ蓄電池を得ることができるようになる。
【0036】
なお、上述した実施形態においては、極板群の最外側に配置された負極板10の負極芯体11の活物質が塗着された面には凹凸加工を施さないものを用いる例について説明したが、極板群の最外側に配置された負極板の負極芯体にサンドブラスト加工あるいはローレット加工等の凹凸加工を施すようにして、極板群の最外側に配置された負極板の活物質が塗着された面の開孔を除く表面に微少突起を設けるようにすると、この微少突起は塗着された活物質層に埋没されるようになるため、極板群の最外側に配置された極板の活物質層と極板芯体との結着強度がさらに向上させることが可能となる。
【0037】
また、上述した実施形態においては、連結負極芯体11のγ部の開孔面積率をβ部の開孔面積率よりも低下させるに際して、γ部の円孔11aの数を減少させる例について説明したが、γ部の円孔11aの数を減少させる以外に、γ部の円孔11aの孔径を小さくするようにしてもよい。また、開孔としては円孔以外の他の形状、例えば、四角形状、楕円形状、三角形状などの各種の形状の開孔を採用するようにしてもよい。さらに、上述した実施形態においては、本発明をニッケル−水素蓄電池に適用する例について説明したが、ニッケル−水素蓄電池に限らず、ニッケル−カドミウム蓄電池などの他のアルカリ蓄電池に本発明を適用しても同様な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 負極板芯体を模式的に示す斜視図である。
【図2】 図1の負極板芯体に負極活物質を塗着した連結負極板のα部を切断して極板の強度試験を行う状態を模式的に示す斜視図である。
【図3】 連結負極板と正極板をセパレータを間にして積層した極板群を模式的に示す断面図である。
【図4】 図3の極板群を角型外装缶内に収納した状態の要部を一部破断して模式的に示す斜視図である。
【符号の説明】
10…連結負極板、10a…試料負極板、11…負極芯体、11a…円孔、11b…突起、α…無孔部(連結部)、β,γ…開孔部、12…活物質層、20…ニッケル正極板、21…金属多孔体、21a…集電リード板、30…セパレータ、40…角型金属外装缶、41…封口板、42…正極端子、43…絶縁体

Claims (7)

  1. 極板芯体に正極活物質が塗着された正極板と極板芯体に負極活物質が塗着された負極板がセパレータを介して交互に積層された極板群を角型金属製外装缶内に密閉して収容した角型アルカリ蓄電池であって、
    前記極板芯体は多数の開孔を備え、
    前記極板群の最外側に配置された極板芯体の外側は露出されていて、該最外側に配置された極板芯体の開孔面積率は最外側より内部に配置された極板芯体の開孔面積率よりも小さく、
    かつ、前記最外側に配置された極板芯体の開孔面積率は10%以上で40%以下であることを特徴とする角型アルカリ蓄電池。
  2. 前記極板群の最外側に配置された極板芯体の開孔周縁には突起が形成されており、かつ該突起が形成された面には活物質が塗着されているとともに該突起が形成された面の反対側は露出されていることを特徴とする請求項1に記載の角型アルカリ蓄電池。
  3. 前記極板群の最外側に配置された極板芯体の前記活物質が塗着された面の前記開孔を除く表面に微少突起が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の角型アルカリ蓄電池。
  4. 前記極板群の最外側に配置された極板芯体の前記露出面は前記角型金属製外装缶の内側面に接触していることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の角型アルカリ蓄電池。
  5. 前記極板芯体はパンチングメタルであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の角型アルカリ蓄電池。
  6. 前記極板群の最外側に配置された極板芯体は無孔の連結部が一体的に形成されているとともに、
    前記連結部が略U字状に折曲されており、該略U字状に折曲されて形成された空隙部にセパレータを介して他方の極板が挟持されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の角型アルカリ蓄電池。
  7. 前記極板群の最外側に配置された極板芯体は負極用芯体であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の角型アルカリ蓄電池。
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