以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。図面にはXYZ直交座標系が示される。
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る蓄電モジュールを備える蓄電装置の一実施形態を示す概略断面図である。同図に示す蓄電装置10は、例えばフォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられる。蓄電装置10は、複数(本実施形態では3つ)の蓄電モジュール12を備えるが、単一の蓄電モジュール12を備えてもよい。蓄電モジュール12は例えばバイポーラ電池である。蓄電モジュール12は、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池であるが、電気二重層キャパシタであってもよい。以下の説明では、ニッケル水素二次電池を例示する。
複数の蓄電モジュール12は、例えば金属板等の導電板14を介して積層され得る。積層方向D1(Z方向)から見て、蓄電モジュール12及び導電板14は例えば矩形形状を有する。各蓄電モジュール12の詳細については後述する。導電板14は、蓄電モジュール12の積層方向D1において両端に位置する蓄電モジュール12の外側にもそれぞれ配置される。導電板14は、隣り合う蓄電モジュール12と電気的に接続される。これにより、複数の蓄電モジュール12が積層方向D1に直列に接続される。積層方向D1において、一端に位置する導電板14には正極端子24が接続されており、他端に位置する導電板14には負極端子26が接続されている。正極端子24は、接続される導電板14と一体であってもよい。負極端子26は、接続される導電板14と一体であってもよい。正極端子24及び負極端子26は、積層方向D1に交差する方向(X方向)に延在している。これらの正極端子24及び負極端子26により、蓄電装置10の充放電を実施できる。
導電板14は、蓄電モジュール12において発生した熱を放出するための放熱板としても機能し得る。導電板14の内部に設けられた複数の空隙14aを空気等の冷媒が通過することにより、蓄電モジュール12からの熱を効率的に外部に放出できる。各空隙14aは例えば積層方向D1に交差する方向(Y方向)に延在する。積層方向D1から見て、導電板14は、蓄電モジュール12よりも小さいが、蓄電モジュール12と同じかそれより大きくてもよい。
蓄電装置10は、交互に積層された蓄電モジュール12及び導電板14を積層方向D1に拘束する拘束部材16を備え得る。拘束部材16は、一対の拘束プレート16A,16Bと、拘束プレート16A,16B同士を連結する連結部材(ボルト18及びナット20)とを備える。各拘束プレート16A,16Bと導電板14との間には、例えば樹脂フィルム等の絶縁フィルム22が配置される。各拘束プレート16A,16Bは、例えば鉄等の金属によって構成されている。積層方向D1から見て、各拘束プレート16A,16B及び絶縁フィルム22は例えば矩形形状を有する。絶縁フィルム22は導電板14よりも大きくなっており、各拘束プレート16A,16Bは、蓄電モジュール12よりも大きくなっている。積層方向D1から見て、拘束プレート16Aの縁部には、ボルト18の軸部を挿通させる挿通孔H1が蓄電モジュール12よりも外側となる位置に設けられている。同様に、積層方向D1から見て、拘束プレート16Bの縁部には、ボルト18の軸部を挿通させる挿通孔H2が蓄電モジュール12よりも外側となる位置に設けられている。積層方向D1から見て各拘束プレート16A,16Bが矩形形状を有している場合、挿通孔H1及び挿通孔H2は、拘束プレート16A,16Bの角部に位置する。
一方の拘束プレート16Aは、負極端子26に接続された導電板14に絶縁フィルム22を介して突き当てられ、他方の拘束プレート16Bは、正極端子24に接続された導電板14に絶縁フィルム22を介して突き当てられている。ボルト18は、例えば一方の拘束プレート16A側から他方の拘束プレート16B側に向かって挿通孔H1に通され、他方の拘束プレート16Bから突出するボルト18の先端には、ナット20が螺合されている。これにより、絶縁フィルム22、導電板14及び蓄電モジュール12が挟持されてユニット化されると共に、積層方向D1に拘束荷重が付加される。
図2は、図1の蓄電装置を構成する蓄電モジュールを示す概略断面図である。同図に示す蓄電モジュール12は、複数のバイポーラ電極(電極)32が積層された積層体30を備える。バイポーラ電極32の積層方向D1から見て積層体30は例えば矩形形状を有する。隣り合うバイポーラ電極32間にはセパレータ40が配置され得る。バイポーラ電極32は、電極板34と、電極板34の一方面に設けられた正極36と、電極板34の他方面に設けられた負極38とを含む。積層体30において、一のバイポーラ電極32の正極36は、セパレータ40を挟んで積層方向D1に隣り合う一方のバイポーラ電極32の負極38と対向し、一のバイポーラ電極32の負極38は、セパレータ40を挟んで積層方向D1に隣り合う他方のバイポーラ電極32の正極36と対向している。積層方向D1において、積層体30の一端には、内側面に負極38が配置された電極板34(負極側終端電極)が配置され、積層体30の他端には、内側面に正極36が配置された電極板34(正極側終端電極)が配置される。負極側終端電極の負極38は、セパレータ40を介して最上層のバイポーラ電極32の正極36と対向している。正極側終端電極の正極36は、セパレータ40を介して最下層のバイポーラ電極32の負極38と対向している。これら終端電極の電極板34はそれぞれ隣り合う導電板14(図1参照)に接続される。
蓄電モジュール12は、積層方向D1に延在する積層体30の側面30aにおいて電極板34の縁部34aを保持する枠体50を備える。枠体50は、積層方向D1から見て積層体30の周囲に設けられている。すなわち、枠体50は、積層体30の側面30aを取り囲むように構成されている。枠体50は、各電極板34の縁部34aに設けられ、電極板34の端部34bから張り出す張出部分52bをそれぞれ有する複数の第1樹脂部52と、積層方向D1から見て第1樹脂部52の周囲に設けられる第2樹脂部54とを備え得る。
枠体50の内壁を構成する第1樹脂部52は、各バイポーラ電極32の電極板34の一方面(ここでは正極36が形成される面)から縁部34aにおける電極板34の端面にわたって設けられている。積層方向D1から見て、各第1樹脂部52は、各バイポーラ電極32の電極板34の縁部34a全周にわたって設けられている。隣り合う第1樹脂部52同士は、各バイポーラ電極32の電極板34の他方面(ここでは負極38が形成される面)の外側に延在する面において当接している。その結果、第1樹脂部52には、各バイポーラ電極32の電極板34の縁部34aが埋没して保持されている。各バイポーラ電極32の電極板34の縁部34aと同様に、積層体30の両端に配置された電極板34の縁部34aも第1樹脂部52に埋没した状態で保持されている。具体的には、正極側終端電極については、正極側終端電極の外側面(導電板14に接続される面)にも、第1樹脂部52が設けられている。すなわち、正極側終端電極の縁部34aは、正極側終端電極の外側面に設けられた第1樹脂部52(図2において1番下に設けられた第1樹脂部52)と、正極側終端電極の一方面に設けられた第1樹脂部52とに埋没した状態で保持されている。積層方向D1に隣り合う電極板34,34間には、当該電極板34,34と第1樹脂部52とによって気密に仕切られた内部空間Vが形成されている。当該内部空間Vには、例えば水酸化カリウム水溶液等のアルカリ溶液からなる電解液(不図示)が収容されている。
上記のようにして各内部空間Vをシールする第1樹脂部52には、当該内部空間Vと連通した連通路52e(図6参照)が形成されている。連通路52eは、第1樹脂部52の一部(例えば、積層方向D1に交差する方向(X方向)に延在する直方体状の領域)が省略又は除去されることによって形成されている。各内部空間Vは、当該内部空間Vをシールする第1樹脂部52に形成された連通路52eを介して、後述する圧力調整弁60に接続されている。
枠体50の外壁を構成する第2樹脂部54は、積層方向D1を軸方向として延在する筒状部である。第2樹脂部54は、積層方向D1において積層体30の全長にわたって延在する。第2樹脂部54は、積層方向D1に延在する第1樹脂部52の外側面を覆っている。第2樹脂部54は、積層方向D1から見て内側において第1樹脂部52に溶着されている。
電極板34は、例えばニッケルからなる矩形の金属箔である。或いは、電極板34は、ニッケルめっき鋼板であってもよい。電極板34の縁部34aは、正極活物質及び負極活物質が塗工されない未塗工領域となっており、当該未塗工領域が枠体50の内壁を構成する第1樹脂部52に埋没して保持される領域となっている。正極36を構成する正極活物質としては、例えば水酸化ニッケルが挙げられる。負極38を構成する負極活物質としては、例えば水素吸蔵合金が挙げられる。電極板34の他方面における負極38の形成領域は、電極板34の一方面における正極36の形成領域に対して一回り大きくなっている。
セパレータ40は、例えばシート状に形成されている。セパレータ40を形成する材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン等からなる織布又は不織布等が例示される。また、セパレータ40は、フッ化ビニリデン樹脂化合物等で補強されたものであってもよい。なお、セパレータ40は、シート状に限られず、袋状のものを用いてもよい。
枠体50(第1樹脂部52及び第2樹脂部54)は、例えば絶縁性の樹脂を用いた射出成形によって矩形の筒状に形成されている。枠体50を構成する樹脂材料としては、例えばポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、又は変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)等が挙げられる。
図3は、図2の蓄電モジュール12を示す概略斜視図である。図4は、枠体50の開口50aに接続される圧力調整弁60の分解斜視図である。図3及び図4に示されるように、蓄電モジュール12の枠体50は、積層方向D1に延在する側面50sを有する。側面50sは積層方向D1から見て外側に位置する面である。よって、第2樹脂部54が枠体50の側面50sを有することになる。
積層方向D1から見て枠体50の一辺を形成する一の側面50s(ここでは、枠体50の長手方向(X方向)を向く一の側面50s)には、複数(ここでは4つ)の開口50a(開口50a1〜50a4)が設けられている。各開口50aは、各内部空間Vに電解液を注入するための注液口として機能すると共に、電解液が注入された後は、圧力調整弁60の接続口として機能する。
図4に示されるように、1つの開口50aは、第1樹脂部52に設けられた第1開口52aと、第2樹脂部54に設けられた第2開口54aとによって構成されている。各第1開口52aは、隣り合うバイポーラ電極32間の内部空間Vと連通している。各開口50aにおいて、第1樹脂部52には複数(ここでは6つ)の第1開口52aが設けられており、第2樹脂部54には、複数の第1開口52aを覆うように広がる単一の第2開口54aが設けられている。第1開口52aは、各第1樹脂部52に設けられてもよいし、隣り合う第1樹脂部52間に設けられてもよい。各第1開口52a及び第2開口54aの形状は例えば矩形である。
各開口50aが設けられる部分において、第2樹脂部54は、積層体30の最外層(最上層又は最下層)に位置する第1樹脂部52の張出部分52bの積層方向D1(Z方向)における外側面52c(図6参照)に設けられた上下一対の拡張部54bを有している。すなわち、拡張部54bは、第2樹脂部54の一部によって形成されている。各拡張部54bは、複数の第1樹脂部52の張出部分52bの端面により構成された第1側面52dと積層方向D1に連続する第2側面54cを有している。第1側面52dと第2側面54cとは、面一に連続している。
図5は、各開口50a1〜50a4を示す図(X方向から見た図)である。具体的には、図5は、各開口50a1〜50a4について、第1側面52dと、当該第1側面52dと積層方向D1に連続する一対の第2側面54cと、を示している。本実施形態では、蓄電モジュール12には、24個の内部空間Vが形成されており、1つの開口50aは、積層方向D1における高さ位置が4段ずつずれた6つの内部空間Vと連通している。各内部空間Vは、上述した連通路52eを介して、4つの開口50a1〜50a4のうちのいずれか1つと連通している。図5に示されるように、1つの開口50aには、6つの第1開口52aが、枠体50の短手方向(Y方向)に2列に分かれて配置されている。各列には、3つの第1開口52aが積層方向D1(Z方向)に沿って配置されている。第1開口52aは、第1樹脂部52に形成された連通路52eの端部(開口端)である。
例えば、各開口50aにおける第1開口52aの配置は、連通した内部空間Vのセットを1段ずつずらすように構成され得る。以下の説明では、便宜上、24個の内部空間Vを識別するために、積層体30の他端(図2の図示下側)から一端(図2の図示上側)へと向かう順に、内部空間V1〜V24と表記する。
図5の(A)に示されるように、開口50a1の第1列(図示左側の列。以下同じ。)には、内部空間V4,V12,V20と連通した第1開口52a4,52a12,52a20が設けられている。開口50a1の第2列(図示右側の列。以下同じ。)には、内部空間V8,V16,V24と連通した第1開口52a8,52a16,52a24が設けられている。
図5の(B)に示されるように、開口50a2の第1列には、内部空間V3,V11,V19と連通した第1開口52a3,52a11,52a19が設けられている。開口50a2の第2列には、内部空間V7,V15,V23と連通した第1開口52a7,52a15,52a23が設けられている。
図5の(C)に示されるように、開口50a3の第1列には、内部空間V2,V10,V18と連通した第1開口52a2,52a10,52a18が設けられている。開口50a3の第2列には、内部空間V6,V14,V22と連通した第1開口52a6,52a14,52a22が設けられている。
図5の(D)に示されるように、開口50a4の第1列には、内部空間V1,V9,V17と連通した第1開口52a1,52a9,52a17が設けられている。開口50a4の第2列には、内部空間V5,V13,V21と連通した第1開口52a5,52a13,52a21が設けられている。
上記のような第1開口52aの配置(すなわち、第1開口52a1〜52a24と内部空間V1〜V24との対応付け)によれば、全ての内部空間Vが互いに異なる第1開口52aに連通した構成が実現される。
続いて、図4及び図6〜図9を参照して、枠体50の開口50aに接続される圧力調整弁60の構成について説明する。図6は、圧力調整弁60の構成を示す概略断面図である。図6は、内部空間V12に対応する連通路(第1開口52a12、第1連通孔74、及び第2連通孔84により形成される連通路)の断面を含む断面図である。図4及び図6に示されるように、圧力調整弁60は、ベース部材70と、ケース部材80と、複数(ここでは6つ)の弁体90と、カバー部材100とを有している。
ベース部材70は、略直方体状の外形を有しており、例えばポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、又は変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)等によって形成されている。ベース部材70は、開口50aに接続される。X方向から見て、ベース部材70の下面及び両側面が、第2開口54aによって位置決めされる。ベース部材70は、例えば、側面71(接合面)と第1側面52d及び第2側面54cとの接触部分の一部または全部が溶着されることにより、開口50aに対して固定される。側面71と第1側面52d及び第2側面54cとの溶着は、例えば熱板溶着、レーザ透過溶着、及び超音波溶着等により行われる。側面71の積層方向D1における幅は、第1側面52dの積層方向D1における幅よりも大きく、かつ、第1側面52d及び第2側面54cを合わせた側面の積層方向D1における幅以下となっている。
図7の(A)は、側面71を示す平面図であり、図7の(B)は、ベース部材70の側面72を示す平面図である。側面72は、開口50a側とは反対側の側面であり、ケース部材80に対向している。図6及び図7に示されるように、ベース部材70には、側面71から側面72にかけて貫通する複数(ここでは6つ)の第1連通孔73〜78が設けられている。第1連通孔73〜78は、第1開口52a4,52a12,52a20,52a24,52a16,52a8と連通した連通孔である。第1連通孔76〜78の構成は、第1連通孔73〜75の構成と同様である。具体的には、第1連通孔76〜78は、側面71,72の中心を通り側面71,72に直交する軸Aに対して、第1連通孔73〜75と点対称に構成されている。したがって、以下では、第1連通孔73〜75について説明し、第1連通孔76〜78の説明を省略する。
中段に位置する第1連通孔74は、X方向に沿って延びた直方体状に形成されている。
下段に位置する第1連通孔73は、X方向に沿って延びた直方体状の連通部73bと、X方向に沿ってケース部材80に向かうにつれて上下幅(Z方向の幅)が大きくなるテーパ状に形成されたテーパ部73cと、を有する。テーパ部73cは、X方向に沿ってケース部材80に向かうにつれて第1連通孔73,74間の間隔が小さくなるように設けられている。連通部73bは、第1連通孔73の開口50a側の開口端73aから第1連通孔73の途中位置までの区間を形成しており、テーパ部73cは、当該途中位置から第1連通孔73のケース部材80側の開口端73dまでの区間を形成している。なお、テーパ部73cは、第1連通孔73とケース部材80に設けられた第2連通孔83とを連通させるための位置調整の役割を果たしている。
上段に位置する第1連通孔75は、X方向に沿って延びた直方体状の連通部75bと、X方向に沿ってケース部材80に向かうにつれて上下幅(Z方向の幅)が大きくなるテーパ状に形成されたテーパ部75cと、を有する。テーパ部75cは、X方向に沿ってケース部材80に向かうにつれて第1連通孔74,75間の間隔が小さくなるように設けられている。連通部75bは、第1連通孔75の開口50a側の開口端75aから第1連通孔75の途中位置までの区間を形成しており、テーパ部75cは、当該途中位置から第1連通孔75のケース部材80側の開口端75dまでの区間を形成している。なお、テーパ部75cは、第1連通孔75とケース部材80に設けられた第2連通孔85とを連通させるための位置調整の役割を果たしている。
第1連通孔73〜75の開口端73a〜75aは、X方向から見て、第1開口52a4,52a12,52a20を含む大きさに形成されている。開口端73a〜75aの上下幅d1は、いずれも同一である。開口端73a〜75aは、第1側面52dに形成された第1開口52a4,52a12,52a20に対応する開口である。
開口50a1〜50a4における6つの第1開口52aの配置は、上述したように1段ずつずれている。このため、全ての開口50a1〜50a4に対して同一規格(共通形状)の圧力調整弁60を使用するためには、圧力調整弁60のベース部材70がどの開口50a1〜50a4に接続された場合にも、第1連通孔73〜78が、対応する第1開口52aと連通する必要がある。例えば、ベース部材70の第1連通孔73は、第1開口52a4に連通しているが、当該ベース部材70が開口50a2に接続された際には第1開口52a3に連通する必要があり、当該ベース部材70が開口50a3に接続された際には第1開口52a2に連通する必要があり、当該ベース部材70が開口50a4に接続された際には第1開口52a1に連通する必要がある。
そこで、本実施形態では、開口端73a〜75aの上下幅d1は、積層体30において繰り返される構造1つ分の幅(すなわち、上述した1段分のずれ幅)と開口50aの数との乗算値以上に設定されている。本実施形態では、積層体30において繰り返される構造1つ分の幅は、1つの電極板34と1つの内部空間Vとを合わせた部分の積層方向D1の幅d2(図2参照)である。すなわち、本実施形態では「d1≧d2×4」の関係が成立している。これにより、ベース部材70がどの開口50a1〜50a4に接続された場合にも、X方向から見て、各開口端73a〜75aの内側に、対応する第1開口52aが収まるようになっている。その結果、どの開口50a1〜50a4に対しても同一のベース部材70(すなわち、同一の圧力調整弁60)を使用することが可能となっている。これにより、必要となる部材の種類を減らすことができる。また、開口50a毎に異なる規格の圧力調整弁60を使用する必要がなくなるため、開口50aに対して適合しない規格の圧力調整弁60を接続してしまうといった誤組み付けの発生を防止することもできる。
さらに、図7の(A)に示されるように、複数の開口端73a〜78aは、側面71の中心を通り側面71に直交する軸Aに対して、点対称に配置されている。この構成によれば、軸Aに対して互いに反転関係にあるベース部材70の2つの状態(姿勢)のいずれにおいても、開口50aに対する複数の開口端の位置関係が同一となる。このため、上記2つの状態のいずれにおいても、ベース部材70を開口50aに正常に接続することができる。具体的には、ベース部材70を、図7の(A)に示される状態から軸Aを回転軸として反転(180度回転)させても、当該ベース部材70を開口50a1に接続することができる。例えば、第1開口52a4と連通していた第1連通孔73は、上記反転後の状態においては、第1開口52a24に連通することになる。その結果、開口50aへのベース部材70の接続を容易に行うことが可能となる。また、開口50aに対して誤った向きでベース部材70を接続してしまうといった誤組み付けの発生を防止することもできる。
図7の(B)に示されるように、ベース部材70の側面72には、ベース部材70とケース部材80との接続方向D2(すなわちX方向)から見て複数の第1連通孔73〜78の各々を仕切るように接続方向D2に沿って延びた第1接合用突起部72A,72Bが設けられている。
第1接合用突起部72Aは、矩形状の各開口端73d〜75dのY方向に沿って延びた縁部に立設された4つの壁部72A1と、各開口端73d〜75dのZ方向に沿って延びた縁部に立設された2つの壁部72A2と、を有する。同様に、第1接合用突起部72Bは、矩形状の各開口端76d〜78dのY方向に沿って延びた縁部に立設された4つの壁部72B1と、各開口端76d〜78dのZ方向に沿って延びた縁部に立設された2つの壁部72B2と、を有する。
ケース部材80は、略直方体状の外形を有する箱状部材であり、例えばポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、又は変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)等によって形成されている。ケース部材80は、箱の底面に相当する側面81においてベース部材70の側面72に接合される。図8は、ケース部材80の側面81を示す分解斜視図である。図9の(A)は、側面81を示す平面図であり、図9の(B)は、ケース部材80をカバー部材100側から見た平面図である。
図8及び図9に示されるように、ケース部材80には、側面81から内側面82(側面81を形成する側板の内側面)にかけて貫通する複数(ここでは6つ)の第2連通孔83〜88が設けられている。第2連通孔83〜88は、円柱状に形成されている。各第2連通孔83〜88は、対応する第1連通孔73〜78を介して、それぞれ1つの内部空間Vと連通している。
図8及び図9の(A)に示されるように、ケース部材80の側面81には、接続方向D2(X方向)から見て複数の第2連通孔83〜88の各々を仕切るように接続方向D2に沿って延びた第2接合用突起部81A,81Bが設けられている。
第2接合用突起部81A,81Bは、第1接合用突起部72A,72Bに対応する形状を有しており、接続方向D2から見て第1接合用突起部72A,72Bと重なるように設けられている。すなわち、第2接合用突起部81Aは、4つの壁部72A1に対応する4つの壁部81A1と、2つの壁部72A2に対応する2つの壁部81A2と、を有する。同様に、第2接合用突起部81Bは、4つの壁部72B1に対応する4つの壁部81B1と、2つの壁部72B2に対応する2つの壁部81B2と、を有する。
ベース部材70とケース部材80とは、例えば、第1接合用突起部72A,72Bの端部と第2接合用突起部81A,81Bの端部とを熱板溶着することにより、互いに接合されている。これにより、ベース部材70の側面72とケース部材80の側面81とは、接続方向D2から見て複数の第1連通孔73〜78と複数の第2連通孔83〜88とにより形成される複数の連通路の各々を仕切るように接続方向D2に沿って延びた仕切壁Wを介して接続されている。仕切壁Wは、第1接合用突起部72A,72Bと第2接合用突起部81A,81Bとが熱板溶着されることにより、側面72と側面81とを接続するように形成された壁部である。
図7の(B)及び図9の(A)に示されるように、ベース部材70の側面72に設けられた複数の開口端73d〜78d、及びケース部材80の側面81に設けられた複数の開口端83a〜88aはいずれも、軸Aに対して、点対称に配置されている。また、第1接合用突起部72A,72B及び第2接合用突起部81A,81Bも、軸Aに対して、点対称に配置されている。
上記構成によれば、軸Aに対して互いに反転関係にあるベース部材70(又はケース部材80)の2つの状態(姿勢)のいずれにおいても、複数の開口端73d〜78dに対する複数の開口端83a〜88aの位置関係が同一となる。また、第1接合用突起部72A,72Bと第2接合用突起部81A,81Bとは、ベース部材70に対してケース部材80を軸A周りに反転させても、接続方向D2から見て互いに重なる。このため、上記2つの状態のいずれにおいても、ベース部材70にケース部材80を正常に接合することが可能となる。具体的には、ベース部材70に対してケース部材80を上下反転(軸A周りに180度回転)させても、ケース部材80をベース部材70に正常に接合することができる。その結果、ベース部材70へのケース部材80の接合を容易に行うことが可能となる。また、ベース部材70に対して誤った向きでケース部材80を接合してしまうといった誤組み付けの発生を防止することもできる。
図4及び図9の(B)に示されるように、ケース部材80の内側には、第2連通孔83〜88の内側の開口端83b〜88bの各々を包囲すると共に各開口端83b〜88bを塞ぐための弁体90を収容する筒状部89が設けられている。弁体90は、例えばゴム等の弾性部材によって円柱状に形成されている。弁体90は、筒状部89に収容された状態において、接続方向D2に沿って延びている。筒状部89は、弁体90の形状に合わせて略円筒状に形成されている。なお、本実施形態では、複数の開口端83b〜88bの各々に対応する複数の筒状部89は互いに連結している(一部を他の筒状部89と共有している)が、互いに分離していてもよい。
各筒状部89に収容された弁体90は、各開口端83b〜88bを塞ぐように配置されている。具体的には、各開口端83b〜88bは、弁体90側に盛り上がった盛り上がり形状をなしている。このような盛り上がり形状を有する各開口端83b〜88bに弁体90が押し当てられることにより、各開口端83b〜88bは塞がれている。
筒状部89の内径は、弁体90の直径よりも大きくされている。また、筒状部89の内側面には、弁体90の側面90aに当接し、弁体90を筒状部89に対して固定するための複数の突起部89aが形成されている。各突起部89aは、X方向に沿って延びている。また、複数(ここでは6つ)の突起部89aは、X方向から見て等間隔(筒状部89の中心軸周りに60度間隔)に設けられている。弁体90の側面90aが6つの突起部89aに支持されることにより、弁体90の側面90aと筒状部89の内側面との間に、突起部89aの大きさに応じた隙間Gが設けられている(図6参照)。
カバー部材100は、ケース部材80の開口80aを塞ぐように、ケース部材80の端部80bに接合される板状部材である。ケース部材80とカバー部材100とは、複数の弁体90が収容される収容空間Sが形成されるように、互いに接続されている。カバー部材100は、複数の弁体90を各開口端83b〜88bに押し当てるように、接続方向D2に沿って複数の弁体90をケース部材80に対して押圧する押圧部材としても機能する。カバー部材100は、例えばポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、又は変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)等によって形成されている。カバー部材100をケース部材80の端部80bに接合する方法は特に限定されないが、例えばレーザ溶着、熱板溶着、及びボルト等の締結部材を用いた締結等を用い得る。例えば、レーザ溶着を用いる場合には、カバー部材100をレーザ透過性樹脂で形成すると共にケース部材80をレーザ吸収性樹脂で形成し、レーザをカバー部材100側から照射することにより、ケース部材80におけるカバー部材100との境界部分を溶融させて接合することができる。
カバー部材100によってケース部材80に対して押圧された状態の弁体90の圧縮率は、例えば第2連通孔83〜88内の圧力(すなわち、第2連通孔83〜88に連通された各内部空間V内の圧力)が予め定められた設定値以上となった場合に、弁体90による開口端83b〜88bの閉塞が解除されるように予め調整されている。
続いて、内部空間Vの圧力調整の仕組みについて説明する。ここでは、図6に示される開口端84bに着目し、対応する内部空間V12の圧力調整の仕組みについて説明を行う。第2連通孔84は、第1連通孔74及び第1開口52a12を介して、対応する内部空間V12と連通している。このため、弁体90の開口端83bを塞ぐ部分には、内部空間V12と同等の圧力がかかることになる。上述の通り、弁体90による開口端84bの閉塞の解除は、対応する内部空間V12内の圧力が予め定められた設定値以上となった場合に行われるように、弁体90の圧縮率が規定されている。このため、対応する内部空間V12内の圧力が設定値未満である場合には、図6に示されるように、開口端84bが弁体90によって塞がれた閉弁状態が維持される。
一方、内部空間V12内の圧力が上昇して設定値以上となった場合には、弁体90の一部(具体的には、開口端84bを塞ぐ部分及びその周辺部分)が開口端84bから離間するように変形し、開口端84bの閉塞が解除された開弁状態となる。その結果、閉塞が解除された開口端84bから内部空間V12内のガスが放出される。その後、内部空間V12内の圧力が設定値未満となった場合には、弁体90が元の状態に戻ることにより、当該開口端84bが再び閉弁状態(図6に示される状態)となる。以上の開閉動作により、圧力調整弁60は、内部空間V12内の圧力を適切に調整することができる。他の開口端83b,85b〜88bに対応する内部空間Vの圧力調整の仕組みも、上述した仕組みと同様である。
上述した通り、弁体90は、筒状部89の内側面と弁体90との間に隙間Gが設けられるようにして、筒状部89に対して固定されている。これにより、内部空間V(ここでは一例として内部空間V12)内の圧力上昇に応じて、第2連通孔84の開口端84bを塞ぐ弁体90が開口端84bから離れた際に、内部空間V12内のガスを弁体90と筒状部89との間の隙間Gに適切に逃すことができる。
また、筒状部89のカバー部材100側の端面89bは、カバー部材100から離間している。これにより、上述した開弁状態において弁体90と筒状部89との間の隙間Gに逃げたガスを、さらに筒状部89の端面89bとカバー部材100との間の収容空間Sに適切に逃すことができる。
また、カバー部材100において接続方向D2から見て複数の弁体90と重ならない位置に、収容空間Sと外部空間とを連通した排気口100a(図4の例では2つの排気口100a)が設けられている。これにより、第1連通孔73〜78及び第2連通孔83〜88を介して内部空間Vから放出されたガスを、収容空間Sに溜めることなく、排気口100aを介して外部空間に適切に排出することができる。特に、カバー部材100に排気口100aが設けられていることにより、収容空間S内のガス(比較的高温のガス)を蓄電モジュール12本体からなるべく遠ざける方向(接続方向D2に沿った方向)に排出することができる。これにより、圧力調整弁60から排出されるガスが蓄電モジュール12に悪影響を与えることを効果的に抑制することができる。
以下、図1に示される蓄電装置10の製造方法(蓄電モジュール12の製造方法を含む)の一例を説明する。
(準備工程)
まず、積層体30と、積層体30を構成する各電極板34の縁部34aに設けられ、電極板34の端部34bから張り出す張出部分52bをそれぞれ有する複数の第1樹脂部52と、を準備する。例えば、セパレータ40を介してバイポーラ電極32を積層して積層体30を得る。本実施形態では、準備工程前に、各バイポーラ電極32の電極板34の縁部34aに第1樹脂部52が例えば射出成形等により形成されている。準備工程により、図2に示される構成のうち第2樹脂部54を除いた構成が得られる。
(第2樹脂部形成工程)
次に、型枠内に樹脂材料を流通させる射出成形によって、第2樹脂部54を形成する。その結果、図2及び図3に示されるように、第1樹脂部52及び第2樹脂部54を有する枠体50が形成される。第2樹脂部形成工程においては、第2樹脂部54の一部が、上述したような拡張部54bとして形成される。
(圧力調整弁接合工程)
次に、ベース部材70を積層体30の側面に接合する。上述した通り、例えば、ベース部材70の側面71と第1側面52d及び第2側面54cとの接触部分の一部または全部を溶着する。具体的には、第1側面52dに形成された第1開口52aがベース部材70の側面71に設けられた開口端73a〜78aと接続するように、ベース部材70の側面71を第1側面52d及び第2側面54cに接合する。側面71と第1側面52d及び第2側面54cとの溶着は、例えば熱板溶着、レーザ透過溶着、及び超音波溶着等により行われる。これにより、開口50aに対してベース部材70が固定される。
(電解液注入工程)
次に、ベース部材70に設けられた複数の第1連通孔73〜78を介して、複数の内部空間V(本実施形態では、当該ベース部材70が接続された開口50aに連通した6つの内部空間V)の各々に電解液を注入する。第1連通孔73〜78毎に液量を管理しながら注液を行うことにより、内部空間V毎の液量を管理することができる。また、電解液の注入前に、蓄電モジュール12内の各内部空間Vが確実にシールされていることを検査するために、複数の第1連通孔73〜78を介して、各内部空間Vに対する真空引き(空気を抜き取る作業)が実施されてもよい。これにより、電解液の注液の前に、各内部空間Vの気密性を検査することができる。なお、ベース部材70を介した電解液の注入は、専用の治具等を用いて行われてもよい。
(サブモジュール準備工程)
次に、ケース部材80と、複数の弁体90と、カバー部材100とからなるユニットである圧力調整弁サブモジュールSM(図8参照)を準備する。圧力調整弁サブモジュールSMは、ケース部材80の内側に設けられた各筒状部89に弁体90を収容した後に、カバー部材100をケース部材80に組み付けることにより形成される。
(検査工程)
次に、準備工程で準備された圧力調整弁サブモジュールSMを検査する。これにより、圧力調整弁60としての機能が正常に発揮されるか否かを事前に確認できる。具体的には、ケース部材80に設けられた各第2連通孔83〜88の開口端83a〜88aから各第2連通孔83〜88内に空気を送り込むことにより、圧力調整弁サブモジュールSMの動作を検査する。より具体的には、圧力調整弁サブモジュールSMに含まれる複数の弁体90の開弁圧が正常であるか否かが検査される。各開口端83a〜88aから各第2連通孔83〜88内に空気を送り込む操作は、例えば専用の治具等を用いて行われてもよい。検査工程では、弁体90による開口端83b〜88bの閉塞が解除されるときの圧力値が第2連通孔83〜88毎に確認される。そして、当該圧力値と予め設定された圧力値とが比較される。例えば当該圧力値と予め設定された圧力値との誤差が許容誤差以下であれば、弁体90の開弁圧は正常であると判定される。一方、上記誤差が許容誤差よりも大きい場合には、弁体90の開弁圧は異常であると判定される。上記検査により、全ての第2連通孔83〜88に対して弁体90の開弁圧が正常であると判定された場合には、検査された圧力調整弁サブモジュールSMは正常と判定される。一方、少なくとも一つの第2連通孔83〜88に対して弁体90の開弁圧が異常であると判定された場合には、検査された圧力調整弁サブモジュールSMは異常と判定される。
(サブモジュール接合工程)
次に、複数の第1連通孔73〜78と複数の第2連通孔83〜88とが互いに連通するように、ベース部材70と検査工程において正常と判定された検査済みの圧力調整弁サブモジュールSMのケース部材80とを接合する。上述した通り、当該接合は、ベース部材70の側面72に設けられた第1接合用突起部72A,72Bとケース部材80の側面81に設けられた第2接合用突起部81A,81Bとの熱板溶着により行われる。
その後、図1に示されるように、導電板14を介して複数の蓄電モジュール12を積層する。積層方向D1の両端に位置する導電板14にはそれぞれ正極端子24及び負極端子26が予め接続されている。その後、積層方向D1の両端に、絶縁フィルム22を介して一対の拘束プレート16A,16Bをそれぞれ配置する。その後、ボルト18の軸部を拘束プレート16Aの挿通孔H1に挿入し、拘束プレート16Bの挿通孔H2に挿入する。その後、拘束プレート16Bから突出したボルト18の先端に、ナット20を螺合する。このようにして図1に示される蓄電装置10が製造される。
なお、積層方向D1から見た蓄電モジュール12の縁部(拡張部54bが設けられる部分)の厚みは、蓄電モジュール12の中央部の厚み(すなわち、最上層の電極板34の上面と最下層の電極板34の下面との間の距離)よりも大きくなっている。すなわち、蓄電モジュール12の縁部は、蓄電モジュール12において導電板14が当接される面(最上層の電極板34の上面又は最下層の電極板34の下面。以下、単に「当接面」という)よりも積層方向D1に突出している。ここで、蓄電モジュール12の縁部のうち、積層方向D1において当接面から最も離れた部分と当接面との距離(飛び出し量)は、導電板14の積層方向D1における幅d3(図1参照)よりも小さくなるように設定されている。すなわち、拡張部54bの厚み(積層方向D1における高さ)は、このような制約を充足するように設定されている。この場合、積層方向D1に隣り合う蓄電モジュール12間において、蓄電モジュール12に対して圧力調整弁60が取り付けられる側が逆になるように、複数の蓄電モジュール12を積層方向D1に配置することにより、隣り合う蓄電モジュール12の縁部同士の干渉を回避し、図1に示されるような構成の蓄電装置10を得ることができる。より好ましくは、上記飛び出し量は、幅d3の2分の1よりも小さくなるように設定される。すなわち、拡張部54bの厚みは、このような制約を充足するように設定される。この場合、積層方向D1に隣り合う蓄電モジュール12間において、蓄電モジュール12に対して圧力調整弁60が取り付けられる側が同一となるようにしても、隣り合う蓄電モジュール12の縁部同士は互いに干渉せず、図1に示されるような構成の蓄電装置10を得ることができる。この場合、蓄電装置10において圧力調整弁60が設けられる側を共通化できる。具体的には、X方向における一方側にのみ圧力調整弁60を配置することができる。その結果、蓄電装置10において圧力調整弁60が設けられる側を共通化できない場合と比較して、蓄電装置10のX方向における幅寸法を小さくすることができ、蓄電装置10のコンパクト化を図ることができる。
以上説明した蓄電モジュール12は、電極板34、電極板34の一方面に設けられた正極36、及び電極板34の他方面に設けられた負極38をそれぞれ含む複数のバイポーラ電極32が積層されてなる積層体30と、各電極板34の縁部34aに設けられ、電極板34の端部34bから張り出す張出部分52bをそれぞれ有する複数の第1樹脂部52と、積層体30の最外層に位置する第1樹脂部52の張出部分52bの積層方向D1における外側面52cに設けられ、複数の第1樹脂部52の張出部分52bの端面により構成された第1側面52dと積層方向D1に連続する第2側面54cを有する拡張部54bと、第1側面52d及び第2側面54cに接合される側面71を有する圧力調整弁60と、を備えている。第1樹脂部52には、積層方向D1に隣り合うバイポーラ電極32間の内部空間Vと連通した連通路52eが形成されている。第1側面52dには、連通路52eの端部である第1開口52aが形成されている。圧力調整弁60の側面71には、第1側面52dに形成された第1開口52aに対応する開口端73a〜78aが設けられている。
図4〜図6に示されるように、蓄電モジュール12では、積層体30の最外層の第1樹脂部52の張出部分52bの外側面52cに拡張部54bが設けられることにより、複数の第1樹脂部52の張出部分52bの端面により構成された第1側面52dが、拡張部54bの第2側面54cによって、積層方向D1に拡張されている。これにより、内部空間V(特に積層体30の最外層の内部空間V1,V24)の気密性を確保しつつ、当該内部空間Vと圧力調整弁60とを連通させることができる。補足すると、内部空間Vの気密性を確保しながら圧力調整弁60を接合するためには、第1側面52dに形成された第1開口52aの周囲の領域と圧力調整弁60の側面71とを気密に接合する必要がある。しかし、積層体30の最外層の内部空間V1,V24と連通した第1側面52dの第1開口52a1,52a24は、第1側面52dの積層方向D1における端部に近い位置に形成されるため(図5参照)、当該第1開口52a1,52a24と第1側面52dの積層方向D1における端部との間の幅は非常に小さい。このため、当該第1開口52a1,52a24と第1側面52dの積層方向D1における端部との間において、圧力調整弁60に接合するための領域(すなわち、側面71との間を気密に接合するための肉厚)を確保することが困難である。一方、蓄電モジュール12によれば、第1側面52dが拡張部54bの第2側面54cによって積層方向D1に拡張されることにより、積層体30の最外層の内部空間V1,V24と連通した第1側面52dの第1開口52a1,52a24の周囲の領域(すなわち、側面71と接合される領域)を確保することができる。
また、蓄電モジュール12は、積層方向D1から見て第1樹脂部52の周囲に形成された第2樹脂部54を備えており、拡張部54bは、第2樹脂部54の一部によって形成されている。この場合、第2樹脂部54の一部が拡張部54bとして利用されるため、第2樹脂部54とは別の部材を拡張部54bとして設ける必要がない。これにより、部品点数の削減及び製造工程の簡素化を図ることができる。
また、本実施形態の蓄電モジュール12の製造方法は、上述した準備工程、第2樹脂部形成工程、及び圧力調整弁接合工程を含む。この製造方法によれば、射出成形によって第2樹脂部54を形成する際に、当該第2樹脂部54の一部として拡張部54bを形成することができる。これにより、2樹脂部形成工程とは別に拡張部54bを形成するための工程を実施する必要がないため、製造工程の簡素化を図ることができる。
[第2実施形態]
図10及び図11を参照して、第2実施形態に係る蓄電モジュール12Aについて説明する。図10は、蓄電モジュール12Aの要部(圧力調整弁60が接続される部分)を示す斜視図である。図11は、蓄電モジュール12の要部を示す断面図(図6と同様の断面を含む断面図)である。図10及び図11に示されるように、蓄電モジュール12Aは、拡張部110が第2樹脂部54Aとは異なる部材によって形成されている点において、蓄電モジュール12と主に相違している。なお、本実施形態では一例として、複数の第1樹脂部52の張出部分52bの端面のうち、ベース部材70の側面71に接続される第1側面52dを構成する端面は、他の端面よりも積層方向D1から見て外側に突出している(図12参照)。ただし、ベース部材70の側面71に接続される第1側面52dを構成する端面は、第1実施形態と同様に、他の端面と面一に連続していてもよい。
拡張部110は、例えば、矩形板状に形成された部材である。拡張部110は、例えば第1樹脂部52及び第2樹脂部54Aと同様の樹脂材料によって形成されている。拡張部110は、第1実施形態における拡張部54bと同様に、積層体30の最外層に位置する第1樹脂部52の張出部分52bの積層方向D1における外側面52cに設けられている。拡張部110は、複数の第1樹脂部52の張出部分52bの端面により構成された第1側面52dと積層方向D1に連続する第2側面110aを有している。
以下、蓄電モジュール12Aの製造方法の一例について説明する。
(準備工程)
まず、第1実施形態と同様に、積層体30及び複数の第1樹脂部52を準備する。
(第2樹脂部形成工程)
次に、型枠内に樹脂材料を流通させる射出成形によって、第2樹脂部54Aを形成する。第2樹脂部形成工程においては、拡張部110が設けられる予定の外側面52cは、型枠によって押さえ込まれる。すなわち、射出成形において、拡張部110が設けられる予定の部分には、樹脂材料は入り込まない。これにより、図12に示されるように、積層体30の最外層に位置する第1樹脂部52の張出部分52bの外側面52cのうち、拡張部110が設けられる予定の部分を避けるようにして、第2樹脂部54Aが形成される。
(拡張部形成工程)
次に、積層体30の最外層に位置する第1樹脂部52の張出部分52bの積層方向D1における外側面52cに、拡張部110を形成する。例えば、拡張部110は、拡張部110のうち当該外側面52cに対向する面と当該外側面52cとが溶着されることにより、当該外側面52cに取り付けられる。これにより、図13に示されるように、第1側面52dの積層方向D1における両端部において、拡張部110の第2側面110aが、第1側面52dと面一になるように形成される。
(圧力調整弁接合工程)
次に、第1実施形態と同様に、ベース部材70を積層体30の側面に接合する。具体的には、第1側面52dに形成された第1開口52aがベース部材70の側面71に設けられた開口端73a〜78aと接続するように、ベース部材70の側面71を第1側面52d及び第2側面110aに接合する。側面71と第1側面52d及び第2側面110aとの溶着は、例えば熱板溶着、レーザ透過溶着、及び超音波溶着等により行われる。これにより、開口50aに対してベース部材70が固定される。
その後、第1実施形態と同様に、上述した電解液注入工程、サブモジュール準備工程、検査工程、及びサブモジュール接合工程が実施される。そして、導電板14を介して複数の蓄電モジュール12Aを積層することにより、図1に示される蓄電装置10と同様の積層構成を有する蓄電装置が製造される。
以上説明した蓄電モジュール12Aは、積層方向D1から見て第1樹脂部52の周囲に形成された第2樹脂部54Aを備えており、拡張部110は、第2樹脂部54Aとは異なる部材によって形成されている。この場合、拡張部110を第2樹脂部54Aとは異なる部材として設けることができるため、拡張部110の設計自由度を向上させることができる。例えば、拡張部110の形状を、射出成形では形成することが困難な形状とすることが可能となる。
また、上述した蓄電モジュール12Aの製造方法においても、積層体30の最外層の第1樹脂部52の張出部分52bの外側面52cに拡張部110が設けられる。これにより、第1実施形態の蓄電モジュール12と同様に、内部空間V(特に積層体30の最外層の内部空間V1,V24)の気密性を確保しつつ、当該内部空間Vと圧力調整弁60とを連通させることができる蓄電モジュール12Aを得ることができる。
また、この蓄電モジュール12Aの製造方法によれば、射出成形時において、拡張部110が設けられる予定の第1樹脂部52の張出部分52bの外側面52cが、型枠によって押さえ込まれる。すなわち、複数の第1樹脂部52の張出部分52bを積層方向D1に適切に押さえた状態で射出成形を行うことができる。これにより、射出成形時における張出部分52bの捲れ上がりを抑制し、射出成形後の第1側面52dの形状を精度良く形成することができる。その結果、第1側面52d及び第2側面110aにより構成される面とベース部材70の側面71との間の接合ずれを防止することができる。
[第3実施形態]
図14及び図15を参照して、第3実施形態に係る蓄電モジュール12Bについて説明する。図14は、蓄電モジュール12Bの要部(圧力調整弁60が接続される部分)を示す斜視図である。図15は、蓄電モジュール12Bの要部を示す断面図(図6と同様の断面を含む断面図)である。図14及び図15に示されるように、蓄電モジュール12Bは、拡張部120の積層方向D1における外側面120bの少なくとも一部が第2樹脂部54Bに覆われている点において、蓄電モジュール12Aと主に相違している。
拡張部120は、例えば、矩形板状に形成された部材である。本実施形態では、第2実施形態と同様に、複数の第1樹脂部52の張出部分52bの端面のうち、ベース部材70の側面71に接続される第1側面52dを構成する端面は、他の端面よりも積層方向D1から見て外側に突出している。拡張部120は、このように突出した部分に対応する突出部を有している。拡張部120は、例えば第1樹脂部52及び第2樹脂部54Bと同様の樹脂材料によって形成されている。拡張部120は、第1実施形態における拡張部54bと同様に、積層体30の最外層に位置する第1樹脂部52の張出部分52bの積層方向D1における外側面52cに設けられている。拡張部120は、複数の第1樹脂部52の張出部分52bの端面により構成された第1側面52dと積層方向D1に連続する第2側面120aを有している。本実施形態では、上述した突出部の端面が第2側面120aとして機能する。
第2樹脂部54Bは、積層方向D1から見て外側に開口するように形成された凹部54dを有している。この凹部54dの縁部によって、拡張部120の外側面120bの周縁部のうち第2側面120a側の縁部の一部を除いた部分が覆われている。一方、凹部54dによって形成された開口によって、拡張部120の外側面120bの中央部分及び第2側面120a側の縁部が露出している、このように露出した外側面120bの部分は、第2樹脂部54Bを射出成形によって形成する際に、型枠によって押さえ込まれた部分である。
以下、蓄電モジュール12Bの製造方法の一例について説明する。蓄電モジュール12Bの製造方法は、拡張部形成工程を第2樹脂部形成工程よりも前に実施する点において、蓄電モジュール12Aの製造方法と主に相違する。
(準備工程)
まず、第1実施形態と同様に、積層体30及び複数の第1樹脂部52を準備する。
(拡張部形成工程)
次に、積層体30の最外層に位置する第1樹脂部52の張出部分52bの積層方向D1における外側面52cに、拡張部120を形成する。例えば、拡張部120は、拡張部120のうち当該外側面52cに対向する面と当該外側面52cとが溶着されることにより、当該外側面52cに取り付けられる。これにより、図16に示されるように、第1側面52dの積層方向D1における両端部において、拡張部120の第2側面120aが、第1側面52dと面一になるように形成される。
(第2樹脂部形成工程)
次に、型枠内に樹脂材料を流通させる射出成形によって、第2樹脂部54Bを形成する。第2樹脂部形成工程においては、拡張部120の外側面120bの少なくとも一部(本実施形態では、外側面120bの周縁部のうち第2側面120a側の縁部の一部を除いた部分)が第2樹脂部54Bに覆われるように、第2樹脂部54Bが形成される。なお、上述したように、射出成形時において、拡張部120の外側面120bの中央部分及び第2側面120a側の縁部は、型枠によって押さえ込まれる。これにより、凹部54d(図14参照)が形成される。
(圧力調整弁接合工程)
次に、第1実施形態と同様に、ベース部材70を積層体30の側面に接合する。具体的には、第1側面52dに形成された第1開口52aがベース部材70の側面71に設けられた開口端73a〜78aと接続するように、ベース部材70の側面71を第1側面52d及び第2側面120aに接合する。側面71と第1側面52d及び第2側面120aとの溶着は、例えば熱板溶着、レーザ透過溶着、及び超音波溶着等により行われる。これにより、開口50aに対してベース部材70が固定される。
その後、第1実施形態と同様に、上述した電解液注入工程、サブモジュール準備工程、検査工程、及びサブモジュール接合工程が実施される。そして、導電板14を介して複数の蓄電モジュール12Bを積層することにより、図1に示される蓄電装置10と同様の積層構成を有する蓄電装置が製造される。
以上説明した蓄電モジュール12Bでは、拡張部120の積層方向D1における外側面120bの少なくとも一部は、第2樹脂部54Bに覆われている。この場合、拡張部120の外側面120bの少なくとも一部を覆う第2樹脂部54Bによって、積層体30の最外層の第1樹脂部52に対して拡張部120をより強固に固定することができる。その結果、拡張部120が最外層の第1樹脂部52の外側面52cから剥がれ落ちることを抑制することができる。
また、上述した蓄電モジュール12Bの製造方法においても、積層体30の最外層の第1樹脂部52の張出部分52bの外側面52cに拡張部120が設けられる。これにより、第1実施形態の蓄電モジュール12と同様に、内部空間V(特に積層体30の最外層の内部空間V1,V24)の気密性を確保しつつ、当該内部空間Vと圧力調整弁60とを連通させることができる蓄電モジュール12Bを得ることができる。
また、この蓄電モジュール12Bの製造方法によれば、拡張部120を設けた後に射出成形によって第2樹脂部54Bを形成することにより、拡張部120の一部を第2樹脂部54Bで覆うことができる。これにより、積層体30の最外層の第1樹脂部52に対して拡張部120をより強固に固定することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明されたが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、圧力調整弁60において、第1測定用突起部72C及び第2測定用突起部81Cは省略されてもよい。また、本実施形態では、1つの弁体90が1つの開口端(開口端83b〜88bのいずれか)を塞ぐ構成とされているが、例えば板状の弁体を用いて、1つの弁体が複数の開口端を塞ぐ構成(すなわち、複数の開口端に対して1つの弁体が共通的に用いられる構成)が採用されてもよい。また、1つの蓄電装置において、複数種類の蓄電モジュール(例えば、蓄電モジュール12,12A,12B)が混在していてもよい。