以下、本発明の第1の実施形態に係る給水装置10を、図1乃至図11を用いて説明する。
図1は、給水装置10の構成を示す正面図である。図2は、給水装置10の構成を示す側面図である。図3は、給水装置10に用いられる流量検出器100、圧力検出器110、異常検出装置130、及びポンプ制御装置120の構成を示すブロック図である。
図4は、給水装置10に用いられるポンプ装置30の要部及び異常検出装置130の構成を示す断面図である。図5は、異常検出装置130の構成を示す断面図である。
図6は、異常検出装置130に用いられる記憶部150に記憶される初期データF及び閾値Tを示す説明図である。図7は、異常検出装置130の動作の一例を示す流れ図である。
図8は、異常検出装置130に用いられる検出器140の検出値をフーリエ変換して得られる所定周波数帯域2500〜3500(Hz)での周波数及び振幅スペクトルの関係を示すグラフである。図9は、異常検出装置130に用いられる検出器140の検出値をフーリエ変換して得られる所定周波数帯域3500〜6000(Hz)での周波数及び振幅スペクトルの関係を示すグラフである。図10は、異常検出装置130に用いられる検出器140の検出値をフーリエ変換して得られる所定周波数帯域6000〜8500(Hz)での周波数及び振幅スペクトルの関係を示すグラフである。図11は、異常検出装置130の通信部155から外部装置156に送信される情報を示す説明図である。
図1及び図2に示すように、給水装置10は、ベース20と、ベース20上に配置された複数のポンプ装置30と、複数のポンプ装置30の二次側にそれぞれ接続される複数の吐出管40と、各吐出管40に設けられる逆止弁50と、各吐出管40に設けられる開閉弁60と、複数の吐出管40を連結する連結管70と、連結管70に設けられる接続管80と、接続管80に設けられる蓄圧装置90と、各吐出管40に設けられる流量検出器100と、連結管70内の圧力を検出する圧力検出器110と、各ポンプ装置30の動作を制御するポンプ制御装置120と、を備える。
また、給水装置10は、図3に示すように、給水装置10に用いられる回転機械の軸受の異常を検出する異常検出装置130を備える。回転機械は、回転軸と、回転軸を支持する軸受と、を備える機械である。給水装置10に用いられる回転機械は、例えば、ポンプ装置30に用いられるモータ31及びポンプ32である。給水装置10は、ポンプ装置30により水源の水を圧送し、吐出管40及び連結管70を介して給水先に給水する。
ポンプ装置30は、モータ31と、ポンプ32と、モータ31及びポンプ32を接続する主軸33と、軸封装置34と、を備える。ポンプ装置30は、一次側が、受水槽等の水源に接続される。ポンプ装置30は、例えば、主軸33が重力方向に沿って延設され、モータ31がポンプ32の上部に配置された、所謂立型多段タービンポンプである。ポンプ装置30は、例えば3台設けられる。3台のポンプ装置30は、ベース20上に、例えば一方向に並んで配置される。
モータ31は、ポンプ制御装置120の後述する制御基板122に収納されたインバータに電気的に接続される。モータ31は、例えば、モータフレーム35と、固定子と、回転子と、回転軸36と、ポンプ32側の軸受37と、ポンプ32とは反対側の軸受と、を備える。
モータフレーム35は、例えば、内部に固定子及び回転子を収納するフレーム本体38と、フレーム本体38のポンプ32側に固定され、ポンプ32側の軸受37が固定され、ポンプ32の上部に固定されるモータブラケット39と、を備える。
フレーム本体38は、ポンプ32側が開口を有する筒状に構成される。
図4に示すように、モータブラケット39は、筒状に構成されるブラケット本体39aと、ブラケット本体39aの一端に設けられる底壁部39bと、を有する。
ブラケット本体39aは、例えば、円筒状に構成される。ブラケット本体39aの内周面は、例えば嵌め合いにより軸受37を固定可能に形成される。ブラケット本体39aは、例えばフランジ39cを有する。フランジ39cは、図1及び図2に示すように、例えばボルト等の固定部材39dにより,フレーム本体38に固定される。底壁部39bは、回転軸36の一部を配置する孔が形成される
固定子及び回転子は、フレーム本体38内に収容される。
回転軸36は、回転子に固定される。回転軸36は、主軸33に連結される。
図4に示すように、軸受37は、転がり軸受けである。軸受37は、外輪37aと、内輪37bと、玉等の複数の転動体37cと、を備える。
外輪37aは、例えば嵌め合いによりモータブラケット39の内周面に固定される。また、外輪37aは、例えば、押え板37dにより、モータブラケット39に固定される。具体的には、外輪37aは、押え板37dが回転軸36の軸方向に当接することで、回転軸36の軸方向に固定される。押え板37dは、ボルト等の固定部材37eにより、モータブラケット39に固定される。外輪37aの内周面には、転動体37cが移動する軌道面が構成される。
内輪37bは、内側に回転軸36を挿通し、回転軸36に固定される。内輪37bの外周面には、転動体37cが移動する軌道面が構成される。複数の転動体37cは、外輪37aの軌道面及び内輪37bの軌道面間に設置され、外輪37a及び内輪37bに保持される。
図1及び図2に示すように、ポンプ32は、例えば、下端側に吸込口32a及び吐出口32bを有する。ポンプ32は、吸込口32aが受水槽等の水源に流体的に接続され、吐出口32bが吐出管40に接続される。
ポンプ32は、例えば、吸込口32a及び吐出口32bを構成するケーシング32cと、ケーシング32c上に複数配置される中間ケーシングと、中間ケーシング上に配置されるケーシングカバー32dと、複数の中間ケーシング内に配置され、主軸33に固定される複数のインペラと、ケーシングカバー32dに設けられ、複数の中間ケーシングを覆う管ケーシング32eと、を備える。
ケーシングカバー32dは、ポンプ32の上面を覆うとともに、例えば、ボルト等の固定部材32fを介してモータ31のモータブラケット39が固定される。具体的には、ケーシングカバー32dは、その上部に、モータブラケット39が載置される。固定部材32fは、例えば、ケーシングカバー32dの上部とモータ31の下部を固定する。
管ケーシング32eは、ケーシング32c及びケーシングカバー間に設けられ、内周面と複数のポンプケーシングの外周面との間に、ケーシングカバー32dからケーシング32cの吐出口32bへの流路を構成する。
主軸33は、例えば、軸継手33a等を介してモータ31の回転軸36に連結される。
軸封装置34は、ケーシングカバー32d及び主軸33の間を軸封する。軸封装置34は、例えば、メカニカルシールである。
図2に示すように、吐出管40は、一端が各ポンプ32の吐出口32bに、他端が連結管70に、それぞれ接続される。吐出管40は、例えば、少なくとも一部が重力方向に沿って延設される。
逆止弁50は、ポンプ32の二次側であって、且つ、連結管70の一次側に、例えば、各吐出管40にそれぞれ設けられる。逆止弁50は、吐出管40内でポンプ32へ向かう水の逆流を防止する。
開閉弁60は、例えば、吐出管40と連結管70との接続部に隣接する位置に設けられる。開閉弁60は、吐出管40から連結管70に連続する流路を開放または閉止する。
図1及び図2に示すように、連結管70は、複数の吐出管40の他端を連結する。また、連結管70は、給水先に連通する配管が接続される。連結管70は、各吐出管40を通過した水を合流させ、接続された配管に連通する二次側への流路を形成する。
図1に示すように、蓄圧装置90は、接続管80に例えば複数設けられる。蓄圧装置90は、接続管80を介して連結管70に流体的に連続する。
流量検出器100は、各ポンプ32の二次側の流量を検出可能に、例えば各吐出管40にそれぞれ設けられる。流量検出器100は、ポンプ装置30の駆動を停止する停止流量を検出可能に構成される。流量検出器100は、例えば、流量に応じた信号を出力する、羽根車式の流量検出器である。流量検出器100は、信号線等を介して制御基板122に電気的に接続される。流量検出器100は、信号を制御基板122に送信する。
圧力検出器110は、連結管70内の圧力を検出可能に構成される。圧力検出器110は、信号線等を介して制御基板122に電気的に接続される。圧力検出器110は、検出した圧力を信号に変換し、信号を制御基板122に送信する。
ポンプ制御装置120は、ボックス121と、ボックス121内に収容される記憶部123と、ボックス121内に収容される制御部の一例である制御基板122と、を備える。
記憶部123は、停止流量、駆動圧力、及びモータ31を駆動する為のプログラムが記憶される。
制御基板122は、流量検出器100と、圧力検出器110とが、電気的に接続される。制御基板122は、流量検出器100及び圧力検出器110の検出結果に基づいて、ポンプ装置30を制御する。制御基板122は、例えば、圧力検出器110により駆動圧力を検出すると、記憶部123に記憶されたプログラムに従ってモータ31を駆動し、流量検出器100により停止流量を検出すると、モータ31の駆動を停止する。制御基板122は、例えば、複数のポンプ装置30を交互運転制御する。交互運転制御は、複数のポンプ装置30が1台ずつ順番で駆動される制御である。
また、制御基板122は、異常検出装置130の後述する制御部160に、複数のポンプ装置30のうち、運転しているポンプ装置30を示す情報、及び運転しているポンプ装置30のモータ31の回転速度を、送信する。運転しているポンプ装置30を示す情報について説明する。複数のポンプ装置30のそれぞれは、例えば、番号が付されている。本実施形態では、一例として3台のポンプ装置30が用いられており、1つのポンプ装置30は一号機、他の1つのポンプ装置30は二号機、残りの1つのポンプ装置30は三号機に設定される。本実施形態では、運転しているポンプ装置30を示す情報は、運転しているポンプ装置30に設定された号機である。
また、制御基板122は、複数のポンプ30装置のそれぞれの、起動回数、積算運転時間を記憶部123に記憶する。また、制御基板122は、制御部160に、複数のポンプ装置30のうち、運転しているポンプ装置30の起動回数、及び積算運転時間を送信する。
図3に示すように、異常検出装置130は、給水装置10に用いられる回転機械の軸受の振動、もしくは給水装置10に用いられる回転機械の軸受の音圧を検出可能に構成される検出器140と、軸受37の異常の判断に用いるための、あらかじめ定められた所定周波数帯域や閾値を記憶する記憶部150と、通信部155と、検出器140の検出結果より演算される運転データC及び初期データFの比較に基づいて軸受37の異常の判断を行う制御部160と、を備える。異常検出装置130は、例えば、回転機械の一例であるポンプ装置30が備えるモータ31の軸受37の異常を検出する。
軸受37は、異常が生じると、正常な状態に比較して大きく振動する。軸受37の異常は、例えば、外輪37aの軌道面、内輪37bの軌道面、及び転動体37cの少なくとも1つに傷が生じることや、複数の転動体37cの間に塵埃等の異物が浸入することにより発生する。
軸受37は、外輪37aの軌道面、内輪37bの軌道面、及び転動体37cの少なくとも1つに傷が生じることにより、回転軸36の軸方向に直交する方向に、正常な状態に比較して大きく振動する。軸受37は、複数の転動体37cの間に塵埃等の異物が浸入することにより、回転軸36の軸方向に平行な方向に、正常な状態に比較して大きく振動する。軸受37の振動は、軸受37が固定されるモータブラケット39に伝わり、モータブラケット39を振動させる。
なお、軸受37の振動は、直接的にまたは間接的に検出可能である。軸受37の振動を直接的に検出するとは、軸受37の例えば外輪37aの振動を検出することである。軸受37の振動を間接的に検出するとは、軸受37の振動が伝播して振動する部材例えばモータブラケット39の振動を検出することである。
軸受37の音圧を検出することは、軸受37の振動により生じる空気の振動を直接的または間接的に検出することである。軸受37の振動により生じる空気の振動を間接的に検出するとは、軸受37の振動により生じる他の部材の振動により生じる空気の振動を検出することである。
本実施形態では、検出器140は、軸受37の振動が伝播するモータブラケット39の振動による空気の振動を検出することで、軸受37の振動による空気の振動を間接的に検出する構成を、一例として用いる。
図4及び図5に示すように、検出器140は、マイクロフォン141と、基板143と、マイクロフォン141及び基板143を収容するケース142と、ケース142に設けられる密閉カバー148と、を備える。検出器140は、検出値を例えばアナログ信号で出力する。
マイクロフォン141は、空気の振動を検出可能に構成される。本実施形態では、マイクロフォン141は、一例としてチップとして構成されており、基板143に実装される。マイクロフォン141は、外郭を構成するケース141aの内部に振動板141b等を有している。このケース141aには振動板141bに空気の振動を伝播する為の孔141cが形成される。孔141cは、所謂検出孔である。マイクロフォン141は、この孔141cが基板143側に向く姿勢で、基板143に実装される。マイクロフォン141は、振動板141bの振動により、空気の振動を検出する。マイクロフォン141は、検出結果に応じた信号を出力する。
基板143は、例えば、電源ノイズ対策の為のコンデンサや、マイクロフォン141の検出結果を増幅する増幅回路が設けられる。基板143は、信号線143bが接続される。また、基板143は、マイクロフォン141の検出結果に応じた信号を、信号線143bを介して出力する。
また、基板143のマイクロフォン141と対向する部位には、孔143aが形成される。孔143aは、基板143を貫通する。孔143aは、マイクロフォン141の孔141cを介して振動板141bと対向する。マイクロフォン141の孔141c及び振動板141bは、例えば、孔143aの軸線上に配置される。孔143aは、例えば、基板143のマイクロフォン141が実装される主面と反対側の主面からマイクロフォン141が実施される主面に向かって縮径する孔に形成される。孔143aのマイクロフォン141側の一端の内径は、例えば、マイクロフォン141のケースの、振動板141bに対向する孔141cと同径または略同径に形成される。
ケース142は、例えば取付金具144により、モータブラケット39の外周面に接触する位置に固定される。
ケース142は、内部に、マイクロフォン141及び基板143を収容する収容スペースSを有する。ケース142は、例えば、ケース本体146と、ケースカバー147と、を備える。
ケース本体146は、ケースカバー147との間に収容スペースSを構成する。ケース本体146は、例えば一面が開口する矩形の箱状に形成される。ケース本体146の内面には、例えば、リブ146aが形成される。リブ146aは、ケースカバー147との間に基板143を狭持することで、基板143をケース142に固定する。
ケースカバー147は、ケース本体146の開口端面に設けられる。ケースカバー147は、ケース本体146との間を密閉する。ケースカバー147は、例えば、ねじ等の固定部材147aにより、ケースカバー147に固定される。ケースカバー147には、密閉カバー148の一部を配置する孔147bが形成される。孔147bは、ケースカバー147を貫通しており、収容スペースSに連通する。また、孔147bは、その軸方向で、基板143の孔143aと並ぶ。
密閉カバー148は、ケースカバー147に設けられる。密閉カバー148は、モータブラケット39の外周面等の接触対象に密着可能な弾性体から形成される。密閉カバー148は、例えばゴムから形成される。
密閉カバー148は、例えば、一部がケースカバー147の孔147bに配置される筒状の本体148aと、本体148aの孔147bからケース142外に出る部分に設けられるフランジ部148bと、を有する。
本体148aは、孔147bの内面との間を密閉する。本体148aの基板143側の端面は、基板143の、マイクロフォン141が実装される一方の主面に対して他方の主面に当接する。本体148aは、例えば、円筒状に構成される。本体148aの内径は、基板143側に向かって漸次縮径する。
本体148aは、基板143の孔143aと同軸に配置される。本体148aの基板143側の一端の内径は、孔143aの密閉カバー148側の内径と同径または略同径に形成される。このように、本体148aの孔148d、及び基板143の孔143aは、互いに連続する。
フランジ部148bは、例えば環状に構成される。フランジ部148bは、ケースカバー147との間を密閉する。
本体148a及びフランジ部148bのモータブラケット39側の端面148cは、軸受37または軸受37の振動を受けて振動する部材に密着される面に構成される。本実施形態では、端面148cは、一例として、モータブラケット39の外周面に密着する面に構成される。端面148cは、例えば、モータブラケット39の外周面に押し付けられることでモータブラケット39の外周面に倣って変形してモータブラケット39の外周面に密着する。端面148cは、例えば、モータブラケット39の外周面など、接触対象にならう曲面に形成されてもよい。
このように、本実施形態では、孔148d及び孔143aにより、密閉カバー148のモータブラケット39の外周面に密着する端面148cから、ケース142内まで延びる孔が構成される。
このように構成される検出器140は、密閉カバー148の端面148cがモータブラケット39の外周面に密着する位置に設置された状態で、モータブラケット39の外周面からマイクロフォン141の振動板141bまでの距離が、マイクロフォン141の最高応答周波数の半波長以下となる長さとなるよう、構成される。
このように構成される検出器140は、例えば、モータブラケット39に、取付金具144により固定される。モータブラケット39は、検出器140が固定されるポンプ32側の軸受37側の一例である。
取付金具144は、図5に示すように、モータ31側に固定されることで、検出器140を、孔148d,143aの軸方向が回転軸36に直交する方向に平行となる姿勢で、密閉カバー148の端面148cをモータブラケット39の外周面に密着させる。
取付金具144は、図4に示すように、例えば、ポンプ32のケーシングカバー32dをモータ31に固定する固定部材32fにより、ケーシングカバー32dに固定される。ケーシングカバー32dは、モータ31側の一例である。モータ31側は、モータ31に限定されず、モータ31の周囲の構成も含む。
取付金具144は、例えば、側面視でL字形状に構成される。具体的には、取付金具144は、第1部分144aと、第2部分144bと、を有する。
第1部分144aは、固定部材32fが挿通される孔144cが形成される。第2部分144bは、検出器140が固定される。検出器140は、図5に示すように、例えば、ねじ等の固定部材144dにより、第2部分144bに固定される。
記憶部150は、例えば、制御部160と同じ基板に搭載され、ボックス121内に収容される。制御部160と同じ基板とは、例えば、制御部160が搭載される基板である。
記憶部150は、予め定めた所定周波数帯域や閾値に加えて、軸受37の異常の有無の判断に用いられる値であり、検出器140の検出値をフーリエ変換して得られた振幅スペクトルに基づく初期データF及び運転データCを記憶可能に構成される。また、記憶部150は、軸受37の異常を判断する為の情報や値を記憶可能に構成される。
また、記憶部150は、給水装置10の複数のポンプ装置30のそれぞれに対応する複数のデータテーブルを有する。本実施形態では、記憶部150は、3台のポンプ装置30の1台に対応する第1のデータテーブル、他の1台のポンプ装置30に対応する第2のデータテーブル、残りの1台のポンプ装置30に対応するデータテーブルを有する。
検出器140の検出結果に基づいて記憶される初期データF及び運転データCは、検出器140の検出値をフーリエ変換して得られる所定周波数帯域の振幅スペクトルに基づいて得られる。
初期データF及び運転データCは、例えば、検出器140の検出値をフーリエ変換することで得られる所定周波数帯域の振幅スペクトルの最大ピーク値である。初期データF及び運転データCは、制御部160により算出されて、制御部160により記憶部150に記憶される。そしてこの初期データF及び運転データCは、検出器140が設けられるポンプ装置30に応じて、第1のデータテーブル、第2のデータテーブル、第3のデータテーブルにひもづけられる。
ここでいう、初期データFとは、給水装置10が設置現場に設置された後、モータ31が、モータ31の最低回転速度から最高回転速度までを複数の回転速度範囲に分けたうちの所定の回転速度範囲で初期に駆動されたときの、検出器140の検出値をフーリエ変換することで得られる所定周波数帯域の振幅スペクトルの最大ピーク値である。ここで言う初期の駆動とは、例えば、給水装置10が設置現場に設置された後の初回の駆動、または、給水装置10が設置された後の初回を含む所定の複数回の駆動である。ここで言う、所定の複数回は、例えば2回や3回であり、任意に決定できる。
所定の回転速度範囲は、1つまたは複数であってもよい。初期データF及び運転データCは、回転速度範囲ごとに記憶される。
例えば、初期の駆動が1回すなわち初回の駆動に設定される場合は、モータ31の最低回転速度から最高回転速度までを複数の回転速度範囲に分けたうちの所定の回転速度範囲での初回の駆動時の検出器140の検出値に基づく所定の周波数帯域の振幅スペクトルの最大ピーク値が初期データFとして記憶部150に記憶される。
初期の駆動として複数回の駆動が設定されている場合は、初期データFは、例えば、所定の回転速度範囲での初期に設定された複数回のそれぞれの駆動時での最大ピーク値を比較して得られた最も大きな値である。具体的に説明すると、初期の駆動が複数回例えば初回を含む3回である場合は、モータ31の最低回転速度から最高回転速度までを複数の回転速度範囲に分けたうちの所定の回転速度範囲での初回の駆動時の検出器140の検出値に基づく所定周波数帯域の振幅スペクトルの最大ピーク値、所定の回転速度範囲での2回目の駆動時の検出器140の検出値に基づく所定周波数帯域の振幅スペクトルの最大ピーク値、及び所定の回転速度範囲での3回目の駆動時の検出器140の検出値に基づく所定周波数帯域の振幅スペクトルの最大ピーク値を算出し、これら、初回の最大ピーク値、2回目の最大ピーク値、及び3回目の最大ピーク値のうちの最も大きな値が、初期データFとして記憶部150に記憶される。
運転データCとは、モータ31の最低回転速度から最高回転速度までを複数の回転速度範囲に分けたうちの所定の回転速度範囲でのモータ31の初期の駆動以降の駆動、すなわち所定の回転速度範囲での初期と設定された回数以降のモータ31の駆動時の検出器140の検出値に基づく所定周波数帯域の振幅スペクトルの最大ピーク値であり、記憶部150に更新される。
例えば、初期の駆動として3回の駆動が設定されている場合は、モータ31の最低回転速度から最高回転速度までを複数の回転速度範囲に分けたうちの所定の回転速度範囲でのモータ31の4回目の駆動時の検出器140の検出値に基づく所定周波数帯域での振幅スペクトルの最大ピーク値が運転データCとして記憶される。そして、その後、モータ31の所定回転速度範囲での5回目の駆動時の検出器140の検出値に基づく所定周波数帯域での振幅スペクトルの最大ピーク値が、運転データCとして記憶部150に更新される。
なお、ここで言う所定周波数帯域について説明する。所定周波数帯域は、軸受37の異常を検出するに適した周波数帯域である。図8乃至図10に示すように、軸受37に異常が生じると、検出器140の検出値をフーリエ変換することで得られる振幅スペクトルが、特定の周波数で、軸受37が正常であるときに比較して大きくなる傾向にある。軸受37の異常を検出するに適した周波数帯域とは、上述のように、軸受37に異常が生じることで振幅スペクトルが大きくなる周波数を含む周波数帯域である。所定の周波数帯域は、単数または複数が設定される。なお、所定の周波数帯域の幅は、任意に設定できる。
単数すなわち1つの周波数帯域が所定周波数帯域として設定される場合、所定周波数帯域は、本実施形態では、例えば、2500〜3500(Hz)である。
複数の所定周波数帯域を設定する場合の一例を説明する。人間の可聴周波数帯域は概ね50〜20kHzとされており、50〜2500Hzの帯域は、人間の会話に使われる帯域のため、人間にとってさほど不愉快な周波数ではない。この為、複数の所定周波数帯域を設定する場合の一例としては、人間にとって不愉快となる周波数帯域を複数の周波数帯域に分け、これら複数の周波数帯域をそれぞれ所定周波数帯域として設定する。具体例としては、2500〜10kHzを複数の周波数帯域に分割して、それぞれの周波数帯域を所定周波数帯域として設定する。なお、これら複数の周波数帯域のそれぞれでは、軸受37に異常が生じることで、いずれかの周波数帯域においても、検出器140の検出をフーリエ変換することで得られる振幅スペクトルが大きくなる周波数を含む。
複数の周波数帯域の一例としては、2500〜3500(Hz)の周波数帯域と、3500〜6000(Hz)周波数帯域と、6000〜8500(Hz)周波数帯域である。本実施形態では、所定周波数帯域として、2500〜3500(Hz)の周波数帯域、3500〜6000(Hz)の周波数帯域、及び6000〜8500(Hz)の周波数帯域が用いられる。
また、モータ31の最低回転速度から最高回転速度までを複数の回転速度範囲に分ける一例について説明する。本実施形態では、モータ31の最低回転速度は、例えば64(Hz)であり、最高回転速度は、75(Hz)である。本実施形態では、複数の回転速度範囲として、一例として図6に示すように、回転速度範囲64〜66(Hz)と、回転速度範囲66〜68(Hz)と、回転速度範囲68〜70(Hz)と、回転速度範囲70〜72(Hz)と、回転速度範囲72〜74(Hz)と、回転速度範囲74〜75(Hz)と、が設定される。
また、本実施形態では、図6に示すモータ31の最低回転速度から最高回転速度までの複数の回転速度範囲のうちの所定回転速度範囲として、これら複数の回転速度範囲が設定される。すなわち、所定回転速度範囲として、回転速度範囲64〜66(Hz)と、回転速度範囲66〜68(Hz)と、回転速度範囲68〜70(Hz)と、回転速度範囲70〜72(Hz)と、回転速度範囲72〜74(Hz)と、回転速度範囲74〜75(Hz)と、が設定される。
記憶部150に記憶される、軸受37の異常を判断する為に用いられる情報や値は、例えば、軸受37の異常を検出するに適した所定周波数帯域と、軸受37の異常の検出に用いられる閾値Tと、検出器140により軸受37の情報を検出する時間と、である。
軸受37の異常を検出するに適した周波数帯域は、検出器140が設けられるポンプ装置30に応じたデータテーブルにひもづけられる。軸受37の異常を検出するに適した周波数帯域は、一例として、2500〜3500(Hz)の周波数帯域と、3500〜6000(Hz)の周波数帯域と、6000〜8500(Hz)の周波数帯域と、である。
閾値Tは、軸受37の異常の判断に用いられる。ここで言う、軸受37の異常の状態は、例えば、注意レベルの状態であるプレアラーム状態と、ポンプ装置30の駆動の停止を要するアラーム状態と、を含む。プレアラーム状態は、軸受37の交換を要しない程度の異常の状態である。閾値Tは、初期データFに対する運転データCの比率と比較される値である。閾値Tは、プレアラーム状態を判断する為のプレアラーム用閾値T1と、アラーム状態を判断する為のアラーム用閾値T2と、を含む。
閾値Tは、例えば、所定周波数帯域と、モータ31の回転速度範囲に応じて設定される。
例えば、所定周波数帯域として2500〜3500(Hz)に設定された所定周波数帯域に対しては、例えば、図6に示すように、モータ31の回転速度範囲64〜66(Hz)には、プレアラーム用閾値T1は2が設定され、アラーム用閾値T2は4が設定される。モータ31の回転速度範囲66〜68(Hz)には、プレアラーム用閾値T1は2が設定され、アラーム用閾値T2は4が設定される。モータ31の回転速度範囲68〜70(Hz)には、プレアラーム用閾値T1は2が設定され、アラーム用閾値T2は4が設定される。モータ31の回転速度範囲70〜72(Hz)には、プレアラーム用閾値T1は2が設定され、アラーム用閾値T2は4が設定される。モータ31の回転速度範囲72〜74(Hz)には、プレアラーム用閾値T1は3が設定され、アラーム用閾値T2は6が設定される。モータ31の回転速度範囲74〜75(Hz)には、プレアラーム用閾値T1は3が設定され、アラーム用閾値T2は6が設定される。
複数の所定周波数帯域が設定される場合は、閾値Tは、複数の所定周波数帯域ごとに、図6に示すようにモータ31の回転速度範囲のそれぞれに設定される。すなわち、3500〜6000(Hz)に設定された所定周波数帯域では、図6のように、3500〜6000(Hz)に適したプレアラーム用閾値T1及びアラーム用閾値T2が、モータ31の回転速度範囲に応じて設定される。6000〜8500(Hz)に設定された所定周波数帯域では、図6のように、6000〜8500(Hz)に適したプレアラーム用閾値T1及びアラーム用閾値T2が、モータ31の回転速度範囲に応じて設定される。
検出器140により軸受37の情報を検出する時間の値は、例えば、3秒間である。すなわち、検出器140は、モータ31が所定の回転速度範囲で駆動すると、3秒間、軸受37の振動を検出する。
なお、このように構成される記憶部150は、例えば、ポンプ装置30のポンプ制御装置120が備える記憶部と共通の構成であってもよい。
通信部155は、ポンプ装置30のポンプ制御装置120と通信可能に構成される。また、通信部155は、外部装置156と通信可能に構成される。ここで、外部装置156は、ポンプ装置30以外の装置である。外部装置156は、例えば、給水装置10を管理する給水装置管理サーバである。
制御部160は、例えばボックス121内に収容される。制御部160は、信号線143bを介して、マイクロフォン141の検出値が送信される。また、制御部160は、制御基板122から通信部155を介して、駆動しているポンプ装置30に関する情報を受信する。駆動しているポンプ装置30に関する情報は、駆動しているポンプ装置30を示す号機ナンバー、及び駆動しているポンプ装置30のモータ31の回転速度である。
また、制御部160は、制御基板122から、通信部155を介して、運転しているポンプ装置30の起動回数、及び運転しているポンプ装置30の積算運転時間を受信する。
制御部160は、制御基板122から受信した、運転しているポンプ装置30の号機ナンバー、モータ31の回転速度、起動回数、及び積算運転時間を、ポンプ装置30のデータテーブルに紐づけて、記憶部150に記憶する。
また、制御部160は、検出器140の検出値から初期データF及び運転データCを算出する。
具体的には、制御部160は、通信部155を介してポンプ制御装置120から送信される運転しているポンプ装置30の号機ナンバー及び運転しているポンプ装置30のモータ31の回転速度に基づいて、所定の回転速度範囲でのモータ31の初期の駆動時に検出器140により実施される3秒間の検出値をAD変換した後に、フーリエ変換して得られる所定周波数帯域の振幅スペクトルの最大ピーク値に基づいて初期データFを求める。そして、求めた初期データFを記憶部150に記憶する。
また、制御部160は、所定の回転速度範囲でのモータ31の初期以降の駆動時において、検出器140により実施される例えば3秒間の検出値をAD変換した後に、フーリエ変換して得られる所定周波数帯域の振幅スペクトルの最大ピーク値に基づいて運転データCを求める。そして、求めた運転データCを記憶部150に記憶する、または、記憶部150に更新する。
初期データFについて説明すると、制御部160は、本実施形態では、モータ31の最低回転速度64(Hz)から最高回転速度75(Hz)までの回転速度範囲を6分割したそれぞれの回転速度範囲での初期データFを求めて、記憶部150に記憶する。
具体的には、図6に示すように、モータ31の64〜66(Hz)の回転速度範囲と、66〜68(Hz)の回転速度範囲と、68〜70(Hz)の回転速度範囲と、70〜72(Hz)の回転速度範囲と、72〜74(Hz)の回転速度範囲と、74〜75(Hz)の回転速度範囲と、のそれぞれに対して所定周波数帯域である、2500〜3500(Hz)、3500〜6000(Hz)、6000〜8500(Hz)のそれぞれの初期データFを求めて記憶部150に記憶する。
図6には、各運転速度範囲の2500〜3000(Hz)での初期データFが示されている。また、図8には、初期データFを算出する為に用いられた、例えば、モータ31の回転速度範囲64〜66(Hz)での初期の駆動時の検出器140の検出結果をフーリエ変換して得られる所定周波数帯域2500〜3500(Hz)の振幅スペクトルが示されている。図9には、初期データFを算出する為に用いられた、例えば、モータ31の回転速度範囲64〜66(Hz)での初期の駆動時の検出器140の検出結果をフーリエ変換して得られる所定周波数帯域3500〜6000(Hz)の振幅スペクトルが示されている。図10には、初期データFを算出する為に用いられた、例えば、モータ31の回転速度範囲64〜66(Hz)での初期の駆動時の検出器140の検出結果をフーリエ変換して得られる所定周波数帯域6000〜8500(Hz)の振幅スペクトルが示されている。
運転データCについて説明すると、制御部160は、モータ31の最低回転速度62(Hz)から最高回転速度75(Hz)までの回転速度範囲を6分割したそれぞれの回転速度範囲での運転データCを求めて、記憶部150に記憶する。
具体的には、モータ31の64〜66(Hz)の回転速度範囲と、66〜68(Hz)の回転速度範囲と、68〜70(Hz)の回転速度範囲と、70〜72(Hz)の回転速度範囲と、72〜74(Hz)の回転速度範囲と、74〜75(Hz)の回転速度範囲と、のそれぞれに対して所定周波数帯域である、2500〜3500(Hz)、3500〜6000(Hz)、6000〜8500(Hz)のそれぞれの運転データCを求めて記憶部150に記憶し、または更新する。
図8には、運転データCを算出する為に用いられた、例えば、モータ31の回転速度範囲64〜66(Hz)での初期以降の駆動時の検出器140の検出結果をフーリエ変換して得られる所定周波数帯域2500〜3500(Hz)の振幅スペクトルが示されている。図9には、運転データCを算出する為に用いられた、例えば、モータ31の回転速度範囲64〜66(Hz)での初期以降の駆動時の検出器140の検出結果をフーリエ変換して得られる所定周波数帯域3500〜6000(Hz)の振幅スペクトルが示されている。図10には、運転データCを算出する為に用いられた、例えば、モータ31の回転速度範囲64〜66(Hz)での初期以降の駆動時の検出器140の検出結果をフーリエ変換して得られる所定周波数帯域6000〜8500(Hz)の振幅スペクトルが示されている。
また、制御部160は、モータ31の最低回転速度64(Hz)から最高回転速度75(Hz)までの回転速度範囲を6分割した回転速度範囲のそれぞれでの初期以降の駆動時に、検出器140の検出値をフーリエ変換で得られる第2の所定周波数帯域の一例である2000〜8500(Hz)の振幅スペクトルを、記憶部150に記憶し、または更新する。
すなわち、制御部160は、運転データCを求める際には、まず、検出器140の検出値をフーリエ変換して、第2の所定周波数帯域の振動スペクトルを求める。第2の所定周波数帯域は、所定の周波数帯域と同じ周波数帯域である。本実施形態では、所定の周波数帯域として、複数の周波数帯域が設定されており、具体例として、2000〜35000(Hz)、3500〜6000(Hz)、及び6500〜8000(Hz)の周波数帯域が設定されている。
制御部160は、検出器140の検出値をフーリエ変換して得られる第2の所定周波数帯域の振幅スペクトルを求めて、これから、第2の所定周波数帯域に含まれる所定周波帯域の振幅スペクトルを求める。
また、制御部160は、所定の回転速度範囲の所定周波数帯域の初期データF及び運転データCを用いて、初期データFに対する運転データCの比率R(R=C/F)を算出する。そして、制御部160は、比率Rと閾値Tとを比較して、軸受37の異常を判断する。
具体的には、制御部160は、比率Rがプレアラーム用閾値T1未満であると、モータ31の軸受37は正常であると判断する。制御部160は、比率Rがプレアラーム用閾値T1以上であってアラーム用閾値T2未満であると、軸受37がプレアラーム状態にあると判断する。制御部160は、比率Rがアラーム用閾値T2以上であると、軸受37がアラーム状態にあると判断する。
なお、制御部160は、所定周波数帯域が複数ある場合では、これら複数の所定の周波数帯域の少なくとも1つの周波数帯域で比率Rがプレアラーム用閾値T1以上であってアラーム用閾値T2未満であると、軸受37がプレアラーム状態にあると判断する。また、制御部160は、所定の周波数帯域が複数ある場合では、これら複数の所定の周波数帯域の少なくとも1つの周波数帯域で比率Rがアラーム用閾値T2以上であると、軸受37がアラーム状態にあると判断する。
制御部160は、軸受37が正常であると判断すると、記憶部150に第1の情報乃至第5の情報を記憶し、第1乃至第5の情報を、通信部155を介して外部装置156に送信する。
第1の情報は、正常であると判断された軸受37を備えるポンプ装置30の号機ナンバーである。
第2の情報は、正常であると判断された回転速度範囲での各所定周波数帯域の運転データCである。ここで、運転データCとは、振幅スペクトルの強さ(dB)である。本実施形態では、2500〜3500(Hz)の運転データC、3500〜6000(Hz)の運転データC、及び6000〜8500(Hz)の運転データCである。
第3の情報は、正常であると判断された際の振幅スペクトルである。
第4の情報は、正常であると判断された所定の回転速度範囲での各所定周波数帯域の初期データFである。ここで、初期データFとは、強さ(dB)である。
また、制御部160は、軸受37の異常を判断すると、通信部155を介して、第5乃至第12の情報を外部装置156に送信する。
第5の情報は、異常があると判断された軸受37を有するポンプ装置30の号機ナンバーである。
第6の情報は、異常を判断した時刻である。
第7の情報は、異常を判断した軸受37を有するモータ31の起動回数である。
第8の情報は、異常を検出した軸受37を有するモータ31の積算運転時間である。
第9の情報は、異常を判断した軸受37の音圧を検出した検出器140の検出値をフーリエ変換することで求めた第2の所定周波数帯域での振幅スペクトルである。
第10の情報は、他の正常な軸受37を有するモータ31の起動回数である。
第11の情報は、他の正常な軸受37を有するモータ31の積算運転時間である。
第12の情報は、他の正常な軸受37を有するモータ31についての振幅スペクトルである。
また、制御部160は、プレアラーム状態を判断すると、第5乃至第12の情報を、予め設定された所定の時刻に、通信部155を介して外部装置156に送信する。所定の時刻は、外部装置156が設置される会社等の就業時間内のいずれかの時刻である。
また、制御部160は、アラーム状態を判断すると、第5乃至第12の情報を、上述の所定の時刻外であっても、すぐに通信部155を介して外部装置156に送信する。
また、制御部160は、アラーム状態を判断すると、異常を判断した軸受37を有するモータ31を備えるポンプ装置30の駆動を停止してさらにモータ31に対して駆動の制限をかける。ここで、駆動の制限とは、駆動ができないようにすることである。制御部160は、具体的には、通信部155を介して、制御基板122に信号を送信する。この信号は、ポンプ制御装置120に、アラーム状態であると判断した軸受37を有するモータ31を停止させ、かつその後このモータ31が駆動をさせないようにする信号である。制御基板122は、この信号を受信すると、アラーム状態であると判断された軸受37を備えるモータ31の駆動を停止し、さらに、その後駆動しないようにする。
また、制御部160は、軸受37の異常を判断すると、他の正常な軸受37を有するモータ31の起動回数、他の正常な軸受37を有するモータ31の積算運転時間、及び、他の正常な軸受37を有するモータ31についての第2の所定周波数帯域での振幅スペクトルである。他の正常な軸受37を有するモータ31についての振幅スペクトルは、すなわち、第3の情報である。
また、制御部160は、リセット信号を受信すると、駆動の制限をかけたポンプ装置30のモータ31に対する当該制限を解除する。具体的には、制御部160は、リセット信号を受信すると、通信部155を介して、制御基板122に、制限を解除する信号を送信する。制御基板122は、制御部160から信号を受信すると、駆動が制限されたモータ31の当該制限を解除する。制限が解除されたモータ31は、駆動が可能となる。
リセット信号は、例えば、モータ31ごとに設定されている。すなわち、制御部160は、一号機のポンプ装置30に対するリセット信号を受信すると、一号機のポンプ装置30のモータ31の駆動の制限を解除する信号を送信する。制御部160は、二号機のポンプ装置30に対するリセット信号を受信すると、二号機のポンプ装置30のモータ31の駆動の制限を解除する信号を送信する。
また、制御部160は、初期データを削除する信号を受信すると、軸受37の初期データFを記憶部150から削除する。
なお、初期データFを削除する信号は、モータ31ごとに設定されている。すなわち、制御部160は、一号機のポンプ装置30の軸受37の初期データFを削除する信号を受信すると、一号機のポンプ装置30の軸受37の初期データFを記憶部150から削除する。制御部160は、二号機のポンプ装置30の軸受37の初期データFを削除する信号を受信すると、二号機のポンプ装置30の軸受37の初期データFを記憶部150から削除する。
制御部160にリセット信号及び初期データFの削除信号を送信する為の操作部180が、設けられてもよい。この操作部180は、例えばボックス121に設けられてもよい。この操作部180は、電気的に制御部160に接続されており、操作されると制御部160に、リセット信号、及び初期データFの削除信号を送信する。操作部180は、具体的には、リセット信号を送信する為操作部、及びポンプ装置30ごとに設けられる初期データFを削除する信号を送信する為の操作部を含む。
または、リモコン等の外部装置から送信されたリセット信号及び削除信号を受信するための受信部が設けられてもよい。この受信部は、例えばボックス121内に設けられてもよい。ここで言う受信部は、無線で送信された信号を受信する構成でもよいし、または、外部装置の信号線が接続される接続部であってもよい。制御部160は、操作部180またはリモコン等の外部装置から、リセット信号を受信すると、通信部155を介して制御基板122に解除信号を送信する。また、制御部160は、操作部180またはリモコン等の外部装置から、削除信号を受信すると、記憶部150に記憶された初期データFを削除する。
制御部160は、記憶部150に記憶された初期データFを削除した後、モータ31の最低回転速度から最高回転速度までを複数の回転速度範囲に分けたうちの所定の回転速度範囲において、モータ31の初期と同回数の駆動時に検出器140の検出値をフーリエ変換することで得られる所定周波数帯域の振幅スペクトルに基づいて初期データFを求めて、記憶部150に記憶する。
すなわち、制御部160は、初期データFを削除した後では、給水装置10が設置現場に設置された後、モータ31の初期に駆動されたときに初期データFを求めたのと同様に、初期データFを求めて記憶部150に記憶する。
また、制御部160は、複数のポンプ装置30のいずれかのモータ31の軸受37の異常を判断すると、他のポンプ装置30のモータ31の軸受37の音圧を検出する検出器140に基づく第5乃至第12の情報を、通信部155を介して外部装置156に送信する。
次に、異常検出装置130の動作の一例を、図7を用いて説明する。
なお、本実施形態では、給水装置10は、一例として、複数のポンプ装置30を、交互運転により駆動する。モータ31の駆動により軸受37が振動すると、軸受37の振動は、モータブラケット39に伝わる。モータブラケット39の振動は、検出器140のケース142の孔148d、及び基板143の孔143a内の空気を振動させる。孔148d,143a内の空気の振動は、マイクロフォン141の振動板141bに伝わる。マイクロフォン141は、振動板141bの振動を検出することで、空気の振動を検出する。検出器140は、検出値を、制御部160に送信する。
制御部160は、図7に示すように、制御基板122から駆動しているポンプ装置30に関する情報を取得する(ステップST1)。ポンプ装置30の情報は、ポンプ装置30の号機ナンバー、モータ31の回転速度、モータ31の起動回数、及び、モータ31の積算運転時間である。制御部160は、取得した情報を、記憶部150に記憶する。
次に、制御部160は、取得した情報に基づいて、運転しているモータ31の、当該モータ31の回転速度が含まれる所定回転速度範囲での初期データFが記憶部150に記憶されているか否かを判断する(ステップST2)。
モータ31の最低回転速度から最高回転速度までを複数に分けた回転速度範囲のそれぞれで最初に駆動する場合には記憶部150に初期データFが記憶されていない。制御部160は、記憶部150に初期データFが記憶されていないと判断すると(ステップST2のNO)、検出器140からの信号に基づいて初期データFを算出して(ステップST3)、運転しているポンプ装置30のデータテーブルに紐づけて記憶部150に記憶する(ステップST4)。制御部160は、初期データFを記憶部150に記憶すると、ステップST1に戻る。
制御部160は、記憶部150に初期データFが記憶されていると判断すると(ステップST2のYES)、検出器140からの信号に基づいて運転データCを算出して(ステップST5)、記憶部150に記憶する(ステップST6)。なお、制御部160は、運転データCがすでに記憶されている場合は、更新する。また、制御部160は、第1乃至第4の情報を、記憶部150に記憶する。
次に、制御部160は、初期データFに対する運転データCの比率R(R=C/F)を算出して、比率Rを閾値Tと比較する。具体的には、制御部160は、比率Rがプレアラーム用閾値T1未満であるか否かを判断する(ステップST7)。制御部160は、比率Rがプレアラーム用閾値T1未満であると判断すると(ステップST7のYES)、記憶部150に記憶された第1乃至第4の情報を、通信部155を介して外部装置156に送信する(ステップST8)。制御部160は、第1乃至第4の情報を送信すると、ステップST1に戻る。図11は、例えば、運転号機として一号機に設定されたポンプ装置30の第1乃至第4の情報を示している。
制御部160は、比率Rがプレアラーム用閾値T1以上であると判断すると(ステップST7のNO)、次に、比率Rがアラーム用閾値T2未満であるか否かを判断する(ステップST9)。制御部160は、比率Rがアラーム用閾値T2未満であると(ステップST9のYES)、モータ31がプレアラーム状態であると判断する(ステップST10)。制御部160は、プレアラーム状態であると判断すると、第4乃至第12の情報を、所定の時刻に、通信部155を介して外部装置156に送信する(ステップST11)。
制御部160は、比率Rがアラーム用閾値T2以上であると(ステップST9のNO)、モータ31がアラーム状態であると判断する(ステップST12)。制御部160は、モータ31がアラーム状態であると判断すると、次に、アラーム状態であると判断したモータ31を停止する信号を、通信部155を介して制御基板122に送信して、モータ31を停止する。また、制御部160は、アラーム状態であると判断したモータ31が当該判断以降駆動されないように、通信部155を介して制御基板122に信号を送信する(ステップST13)。
次に、制御部160は、第5乃至第12の情報を、通信部155を介して外部装置156に送信する(ステップST14)。制御部160は、第5乃至第12の情報を送信すると、ステップST1に戻る。
また、制御部160は、リセット信号を受信すると、モータ31に対する駆動の制限を解除する。制御部160は、具体的には、モータ31ごとに設定されたリセット信号を受信すると、受信した信号に対応するモータ31の制限を解除する信号を、通信部155を介して制御基板122に送信する。
また、制御部160は、初期データを削除する信号を受信すると、軸受37の初期データFを記憶部150から削除する。制御部160は、具体的には、モータ31ごとに設定された初期データを削除する信号を受信すると、受信した信号に対するモータ31の初期データを削除する。
このように構成される検出器140によれば、給水装置10が設置現場に設置された後、モータ31の最低回転速度から最高回転速度までを複数の回転速度範囲に分けた内の所定の回転速度範囲のそれぞれで初期に駆動されたときの検出器140の検出値をAD変換した後にフーリエ変換して得られる所定周波数帯域の振幅スペクトルの最大スペクトル値を初期データFとして記憶部150に記憶し、初期以降の駆動時の最大スペクトル値を運転データCとして記憶部150に記憶し、初期データFに対する運転データCの比率Rを算出する。そして、制御部160は、比率Rがプレアラーム用閾値T1以下であると、ポンプ装置30が正常であると判断する。そして、制御部160は、ポンプ装置30が正常であると判断すると、通信部155を介して、第1乃至第4の情報を、ポンプ制御装置120に送信する。
このように、給水装置10が設置現場に設置された状態での検出器140による検出値をフーリエ変換することで得られる所定周波数帯域の振幅スペクトルの最大スペクトル値に基づいて初期データF及び運転データCを求め、記憶することで、初期データFを記憶部150に記憶したときの給水装置10の設置条件、及び運転データCを記憶部150に記憶したときの給水装置10の設置条件が同じであるので、軸受37の異常の判断に対する、給水装置10の設置条件の影響が生じない。この為、軸受37の異常判断の精度を向上できる。
さらに、初期データF及び運転データCとして、軸受37に異常が生じたときに振幅に変化が生じる周波数を含む所定周波数帯域の振幅スペクトルの最大ピーク値を用いることで、軸受37の異常の検出の精度を向上できる。
さらに、制御部160が、ポンプ装置30が正常であると判断すると、正常であると判断したときの所定回転速度範囲での検出器140の検出値をフーリエ変換して得られる振幅スペクトルに基づく第1乃至第4の情報を、通信部155を介して外部装置156に送信する。
この為、定期的に、ポンプ装置30の軸受37の第1乃至第4の情報を得ることが可能となる。結果、作業員による軸受37の定期的な点検作業が不要となる。また、第1乃至第5の情報を、例えば、給水装置10に関する各種報告書に記載する情報として用いることもできる。
さらに、制御部160は、軸受37の異常を判断すると、第5乃至第12の情報を、通信部155を介して外部装置156に送信する。この為、給水装置10を管理する管理先は、軸受37の異常を把握することが可能となる。さらに、他の正常な軸受37の情報を得ることが可能となる。正常な軸受37の情報を同時に得られることで、例えば、正常であっても、近いうちにプレアラーム状態となりそうな軸受37を検出することが可能となる。近いうちにプレアラーム状態となりそうな軸受37がある場合は、異常と判断された軸受37を交換するタイミングで、合わせて、近いうちにプレアラーム状態となりそうな軸受37を交換することで、軸受37の交換作業の回数を低減することが可能となる。
さらに、制御部160は、ポンプ装置30の異常としてプレラーム状態を判断すると、第5乃至第12の情報を、通信部155を介して外部装置156に送信する。このように、プレアラーム状態で、第6乃至第10の情報を得ることができるので、作業員は、その後に発生されると想定されるアラーム状態に対する準備に対して十分な時間を確保することが可能となる。
さらに、制御部160は、異常を判断すると、第5乃至第12の情報を、通信部155を介して外部装置156に、外部装置156が設置される会社等の就業時間内に送信する。この為、外部装置156が設置される会社等の担当者が、就業時間内に、通信部155から送信された第5乃至第12の情報を確認することが可能となる。また、外部装置156が設置される会社等と、給水装置10を管理する会社等が異なる場合は、外部装置156が設置される会社等の担当者は、就業時間内に、給水装置10を管理する会社等に、軸受37に異常が生じていること報告することが可能となる。
さらに、制御部160は、軸受37の異常としてアラーム状態を判断すると、アラーム状態と判断された軸受37を有するポンプ装置30の駆動に制限をかける。この為、給水装置10の故障が進むことを防止できる。
さらに、制御部160は、リセット信号を受信することで、モータ31に対する駆動の制限を解除する。この為、アラーム状態であると判断されたポンプ装置30に対して、振動や音圧を再度確認した場合には、リセット信号を送信することで、当該確認を行うことが可能となる。
さらに、制御部160は、初期データの削除信号を受信すると、記憶部150に記憶された初期データFを削除する。この為、例えば、給水装置10のモータ31や軸受37を交換した場合であっても、この交換した後のポンプ装置30の軸受37に応じた初期データF及び運転データCを改めて記憶部150に記憶することが可能となる。
さらに、制御部160は、軸受37の異常としてアラーム状態を判断すると、すぐに、第1の乃至第4の情報を、通信部155を介して外部装置156に送信する。
この為、外部装置156が設置される会社等の担当者は、ポンプ装置30の駆動の停止を要する異常を、当該異常の発生直後に把握することが可能となる。
さらに、制御部160は、複数のポンプ装置30のうちのいずれかのポンプ装置30の軸受37の異常を判断すると、当該異常を判断された以外のポンプ装置30が備える軸受37の、記憶部150に記憶された第10乃至第12の情報を、通信部155を介して外部装置156に送信する。この為、給水装置10の管理先は、正常である軸受37を備えるポンプ装置30についても、第10乃至第12の情報から、軸受37の状態を把握できる。この為、例えば、まだ正常である軸受37であっても、プレアラーム状態やアラーム状態に近いうちになると判断できる場合は、併せて補修作業を行うことも可能となり、給水装置10の補修作業の回数を減らすことが可能となる。
さらに、モータ31の回転速度範囲、及び所定の周波数帯域に応じた閾値Tが用いられる。具体的には、モータ31の回転速度範囲が64〜72(Hz)では、閾値Tは、1.4であり、モータ31の回転速度範囲72〜75では、閾値Tは2である。このようにモータ31の回転速度範囲に応じた閾値Tが用いられることで、軸受37の異常判断の精度を向上できる。
さらに、制御部160が、給水装置10が備える複数のポンプ装置30のうち一台のモータ31のみが駆動しているときに、当該駆動しているモータ31の軸受37の振動を検出する検出器140の検出値から軸受37の異常を判断する構成であることで、複数の検出器140ごとに制御部160を設ける必要がないので、異常検出装置130の製造コストを低減できる。なお、一台のモータ31のみが駆動しているとは、モータが単独運転しているということである。
さらに、制御部160は、モータ31の最低回転速度から最高回転速度までの範囲を複数の回転速度範囲に分けたうちの所定の回転速度範囲として、複数の回転速度範囲のそれぞれでの検出器140の検出結果に基づいて、初期データF及び運転データCを求めた。すなわち、制御部160は、流量検出器100が停止流量を検出する回転速度である、最低回転速度付近の回転速度での検出器140の検出結果に基づいても異常を判断した。換言すると、制御部160は、流量が停止流量となると、検出器140により音圧を検出する。流量検出器100が停止流量を検出する回転速度である、最低回転速度付近の回転速度では、モータ31の運転音が比較的静かな状態となるので、軸受37の異常を判断しやすくなる。
この為、停止流量を検出したときの検出器140の検出結果に基づいて軸受37の異常を判断することで、軸受37の異常の判断の精度を向上できる。
上述したように、本発明の一実施形態に係る給水装置10によれば、軸受の異常の判断に用いられる情報を提供できる異常検出装置を提供できる。
なお、上述の例では、異常検出装置130は、検出器140によって軸受37の音圧を検出する構成が一例として説明されたが、これに限定されない。他の例では、軸受37の振動を検出する構成であってもよい。この場合、異常検出装置130は、検出器140に代えて、軸受37の振動を検出する検出器が用いられる。
また、上述の例では、給水装置10が複数台の一例として3台のポンプ装置30を備え、ポンプ制御装置120が複数台のポンプ装置30を交互運転制御により運転する構成が一例として説明されたが、これに限定されない。他の例では、ポンプ制御装置120は、2台以上のポンプ装置30が同時に駆動する状態を有する並列運転制御により、複数のポンプ装置30を制御してもよい。異常検出装置130は、一台のポンプ装置30のみが駆動している状態で、軸受37の異常を判断することで、他のモータ31の振動・騒音の影響を受けないため、精度よく、軸受の異常を検出でき、さらに、制御部160を、検出器140ごとに設ける必要がないので、異常検出装置130の製造コストを低減できる。
または、ポンプ制御装置120が並列運転制御により複数台のポンプ装置30を制御する構成の場合では、異常検出装置130は、同時に運転している複数台のポンプ装置30のうち、最高周波数で運転しているポンプ装置30に設けられる検出器140の検出結果に基づいて、当該軸受37の異常を判断する構成であってもよい。
ここで言う並列運転は、複数台のポンプ装置30のうち少なくとも一台のポンプ装置30が最高周波数で定速運転を行い、他の一台が変速運転を行う運転である。また、ここで言う最高周波数の運転とは、モータ31に供給される交流電圧の周波数が最高周波数であることである。
また、上述の例では、モータ31の最低回転速度から最高回転速度までの範囲を複数の回転速度範囲に分けたうちの所定の回転速度範囲として、複数の回転速度範囲のそれぞれでの検出器140の検出結果に基づいて、初期データF及び運転データCを求める構成が一例として説明されたがこれに限定されない。他の例では、所定の回転速度範囲として、軸受37の異常を判断しやすい回転速度範囲が用いられてもよい。この所定の回転速度範囲の一例は、停止流量となる、最低回転速度付近の回転速度を含む回転速度範囲である。
また、上述の例では、ポンプ装置30の駆動毎に一回、予め設定された時間例えば3秒間、検出器140により検出し、検出結果をフーリエ変換して、初期データFまたは運転データCを求めたが、これに限定されない。他の例では、例えば、ポンプ装置30の駆動毎に複数回、検出器140により検出し、それぞれの検出結果により得られた最大ピーク値を用いて初期データF及び運転データCを求めてもよい。
すなわち、制御部160は、初期として設定される所定回数の駆動時毎に、複数の最大ピーク値を検出し、所定回数の駆動で得られた全ての最大ピーク値を比較して、最も大きい最大ピーク値を初期データFとして記憶する。
同様に、初期以降の駆動時毎に複数の最大ピーク値を検出し、これら最大ピークのうち最も大きな最大ピーク値を運転データCとして記憶してもよい。
この構成の場合、記憶部150は、検出器140による検出のタイミングと、検出器140により軸受37の情報を検出する時間と、一度の駆動時に検出する回数と、を記憶する。検出器140による検出のタイミングは、例えば10秒毎である。検出器140により軸受37の情報を検出する時間は、例えば3秒である。すなわち、検出器140は、10秒おきに、3秒間、軸受37の振動を検出し、合計で、予め設定された複数回検出する。
例えば、駆動毎の検出回数として複数回の一例として2回が設定され、初期の駆動として2回の設定されている場合では、モータ31の初期の駆動としての1回目の所定の回転速度範囲での駆動時に、まず検出器140により3秒間検出し、この検出結果をフーリエ変換して所定周波数帯域の最大ピーク値を求め、前回の検出後のさらに10秒後に検出器140により2回目の検出を行い、この検出結果をフーリエ変換して所定周波数帯域の最大ピーク値を求める。そして、所定周波数帯域での1回目の検出により求めた最大ピーク値及び2回目の検出により求めた2つの最大ピーク値を比較して、より大きな最大ピーク値を、モータ31の1回目初期の駆動時の最大ピーク値とする。
同様に、モータ31の初期の駆動としての2回目の所定速度範囲での駆動時に、最大ピーク値を2つ検出し、これら2つの最大ピーク値を比較して、より大きな最大ピーク値を、モータ31の2回目初期の駆動時の最大ピーク値とする。
そして、1回目初期の最大ピーク値及び2回目初期の最大ピーク値を比較して、より大きな最大ピーク値を、初期データFとして記憶する。
また、制御部160は、複数のポンプ装置30の全ての運転が停止している状態で、複数の検出器140のうちの1つの検出器140で音圧を検出して、所定周波数帯域の振幅スペクトルを求めて、この振幅スペクトルに基づく暗騒音データを求める。
ここで所定周波数帯域は、初期データF及び運転データCを検出するに用いられた所定周波数帯域である。暗騒音データは、例えば、所定周波数帯域の最大ピーク値である。すなわち、暗騒音データは、運転データCと同様に検出される値である。また、暗騒音データを求める1つの検出器140は、例えば予め決定されている。なお、暗騒音データを求める1つの検出器140は、適宜に決定されてもよい。
制御部160は、暗騒音データを、初期データFと比較する。ここで、暗騒音データと比較される初期データFを有するポンプ装置30は、例えば、暗騒音データを検出した検出器140を有するポンプ装置30である。また、暗騒音データと比較される初期データFは、暗騒音データを検出した検出器140を備えるポンプ装置30のモータ31の所定の回転速度範囲のそれぞれの初期データFのうち、最小の初期データFである。ここで、所定の回転速度範囲は、初期データF及び運転データCを検出する際に用いられる所定の回転速度範囲である。本実施形態では、モータ31の最低回転速度から最高回転速度までを複数の回転速度範囲のうちの全ての回転速度範囲である。
制御部160は、暗騒音データを、暗騒音データを検出した検出器140を有するポンプ装置30のモータ31の所定の回転速度範囲のそれぞれの初期データFのうち最も小さい値と比較して、暗騒音データが初期データFよりも所定の一定値以上下回るか否かを判断する。すなわち、制御部160は、初期データFから暗騒音データをひいた差の値が、所定の一定値以上であるか否かを判断する。
制御部160は、初期データFから暗騒音データをひいた差の値が、所定の一定値以上であると、以降の音圧の検出を行う。すなわち、音圧の検出を中止しない。ここで、所定の一定値は、暗騒音が、複数のポンプ装置30の異常の判断に影響を与えないと判断できる値であり、予め決定される。例えば、所定の一定値を、ポンプ装置30以外の回転機械の駆動の有無を判断できる閾値として設定してもよい。この場合、制御部160は、初期データFから暗騒音データを引いた差の値が所定の一定値以上であると、ポンプ装置30以外の回転機械が駆動していないと判断できる。また、以降の音圧の検出を行わないとは、複数のポンプ装置30のいずれかが駆動している状態で、検出器140による当該駆動しているポンプ装置30の音圧の検出を行わないということである。
また、制御部160は、初期データFから暗騒音データをひいた差の値が、所定の一定値以上であり、以降のポンプ装置30の音圧の検出を行うと判断してから、次に複数のポンプ装置30の全ての運転が停止している状態となると、改めて暗騒音データを検出する。そして、この暗騒音データを、所定の回転速度範囲のそれぞれの初期データFのうち最も小さい値と比較する。そして、制御部160は、初期データFから暗騒音データをひいた差の値が、所定の一定値未満であると、それ以降の音圧の検出を再開しない。制御部160は、初期データFから暗騒音データを引いた差の値が、所定の一定値以上であると、それ以降の音圧の検出を行う。
すなわち、複数のポンプ装置30が設置されている機械室に、他の回転機械、例えば、コンプレッサーなどが稼動している状態で検出器140による音圧検出を行うと、他の回転機械の運転音が外部雑音となる。この為、全てのポンプ装置30の停止中に、いずれかの検出器140により外部の騒音を測定して暗騒音データを検出し、この暗騒音データが、所定の回転速度範囲のそれぞれの初期データFより所定の一定値、例えば10dB以上、下回らなかった場合、以降の音圧検出を行わないことを決定し、運転号機と回転速度値の送信を行わないようにしている。
すなわち、制御部160は、初期データFから暗騒音データを引いた差の値が、所定の一定値以上であることで、外部騒音により、モータ31の異常の判断に影響が生じないと判断して、以降の音圧の検出を行う。
これにより、外部音の影響を受けることなく、軸受の異常検出が可能となる。例えば、所定の一定値を、ポンプ装置30以外の回転機械の駆動の有無を判断できる値に設定すると、他の回転機械が稼動していない時間帯に、検出器140により音圧検出を実施することとなり、外部音の影響を受けることなく、軸受の異常検出が可能となる。
なお、上記の所定の一定値の一例である10dBは、JIS Z 8731「環境騒音の表示・測定方法」の「暗騒音の影響の補正」より、暗騒音の最大ピーク値が、初期データのピーク値より10dB以上低い場合は、運転データが暗騒音の影響を受けないと判断していることに基づいている。なお、所定の一定値は、10dBに限定されるものではない。所定一定値は、複数のポンプ装置30が設置される設置現場の環境に応じて、適宜設定することが可能である。
また、上述の例では、回転機械の最小回転速度から最大回転速度までを複数の回転速度範囲に分けた内の所定の回転速度範囲の一例として、複数の回転速度範囲の全てが設定された。具体的には、所定の回転速度範囲として、回転速度範囲64〜66(Hz)と、回転速度範囲66〜68(Hz)と、回転速度範囲68〜70(Hz)と、回転速度範囲70〜72(Hz)と、回転速度範囲72〜74(Hz)と、回転速度範囲74〜75(Hz)と、が設定された。
しかしながら、これに限定されない。複数の回転速度範囲の一部が所定の回転速度範囲として設定されてもよい。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明と同等の記載を付記する。
[1]
回転軸及び前記回転軸を支持する軸受を具備する回転機械の前記軸受の振動または音圧を検出する検出器と、
異常を判断する為の閾値を記憶する記憶部と、
外部装置と通信する通信部と、
前記回転機械が設置現場に設置された後、前記回転機械の最小回転速度から最大回転速度までを複数の回転速度範囲に分けたうちの所定の回転速度範囲での初期の駆動時での前記検出器の検出値をフーリエ変換して所定周波数帯域の振幅スペクトルを求めて、この振幅スペクトルに基づく初期データを前記記憶部に記憶し、前記所定の回転速度範囲での前記回転機械の初期以降の駆動時の前記検出器の検出値をフーリエ変換して前記所定周波数帯域の振幅スペクトルを求めてこの振幅スペクトルに基づく運転データを前記記憶部に記憶し、前記初期データに対する前記運転データの比率を演算し、前記比率及び前記閾値に基づいて前記軸受が正常と判断すると、前記通信部を介して前記外部装置に、前記所定の回転速度範囲での前記検出器の検出値をフーリエ変換して得られる振幅スペクトルの情報を送信する制御部と、
を具備する異常検出装置。
[2]
前記制御部は、前記初期として設定された所定回数の駆動時毎に複数回の前記振幅スペクトルを求め、前記所定回数で求めた複数の振幅スペクトルの最大ピーク値を比較して最も大きな値を前記初期データとして前記記憶部に記憶し、前記初期以降の駆動毎に前記振幅スペクトルを求めるとともに求めた振幅スペクトル値の最大ピーク値を前記運転データとして前記記憶部に記憶する、[1]に記載の異常検出装置。
[3]
前記制御部は、前記比率及び前記閾値に基づいて前記軸受に異常が生じたと判断すると、異常を判断した時刻、前記回転機械の起動回数、前記回転機械の積算運転時間、及び異常を判断した前記所定の回転速度範囲での前記検出器の検出値をフーリエ変換して求めた前記振幅スペクトルの情報を、前記通信部により前記外部装置に送信する、[1]に記載の異常検出装置。
[4]
前記制御部は、前記通信部により、前記外部装置に、異常を判断した時刻、前記回転機械の起動回数、前記回転機械の積算運転時間、及び異常を判断した前記所定の回転速度範囲での前記検出器の検出値をフーリエ変換して求めた前記振幅スペクトルの情報を、予め設定された所定の時刻に送信する、[3]に記載の異常検出装置。
[5]
前記異常は、前記回転機械の停止を要する異常であり、
前記制御部は、異常を判断すると、前記回転機械の駆動に制限をかける、
[3]に記載の異常検出装置。
[6]
前記異常は、前記回転機械の運転を継続可能な第1の異常、及び前記回転機械の停止を要する第2の異常を含み、
前記閾値は、第1の異常を判断する為の第1の閾値、及び前記第2の異常を判断する為の第2の閾値を含み、
前記制御部は、前記初期データに対する前記運転データの比率が前記第1の閾値未満であると正常と判断し、前記初期データに対する前記運転データの比率が前記第1の閾値以上でありかつ前記第2の閾値未満であると前記第1の異常と判断し、前記初期データに対する前記運転データの比率が前記第2の閾値以上であると前記第2の異常と判断して前記回転機械を駆動に制限をかけ、リセット信号を受信すると、前記回転機械の前記制限を解除し、前記初期データの削除の要求信号を受信すると、前記記憶部に記憶された前記初期データを削除する、[1]に記載の異常検出装置。
[7]
前記回転機械は、複数設けられ、
前記検出器は、複数設けられて、複数の前記回転機械のそれぞれの前記軸受の振動または音圧を検出し、
前記制御部は、前記複数の検出器の検出結果に基づいて前記複数の軸受のいずれかの軸受の異常を判断すると、前記記憶部に記憶された、他の前記回転機械の起動回数、他の前記回転機械の積算運転時間、及び他の前記回転機械の前記所定の回転速度範囲での前記検出器の検出値をフーリエ変換して求められる前記振幅スペクトルを、前記通信部によって、前記外部装置に送信する、
[1]に記載の異常検出装置。
[8]
前記検出器は、複数設けられて、複数の前記回転機械のそれぞれの前記軸受の振動または音圧を検出し、
前記制御部は、前記複数の回転機械のうち単独運転をしている回転機械の前記軸受の振動または音圧の検出を行う、
[1]に記載の異常検出装置。
[9]
前記回転機械は、ポンプを駆動するモータであり、
前記検出器は、複数設けられて、複数の前記モータのそれぞれの前記軸受の振動または音圧を検出し、
前記制御部は、前記検出器により、並列運転を行っている前記ポンプのうち最高周波数で定速運転しているポンプを駆動する前記モータの前記軸受の振動または音圧を検出する、
[1]に記載の異常検出装置。
[10]
前記回転機械は、ポンプを駆動するモータであり、
前記制御部は、前記ポンプの吐出流量が停止流量となると、前記検出器により、前記ポンプを駆動する前記モータの前記軸受の振動または音圧を検出する、
[1]に記載の異常検出装置。
[11]
前記回転機械は、複数設けられ、
前記検出器は、複数設けられて複数の前記回転機械のそれぞれの軸受の音圧を検出し、
前記制御部は、前記複数の回転機械の全ての運転が停止している状態で、複数の前記検出器の1つで音圧を検出して前記所定周波数帯域の振幅スペクトル求めてこの振幅スペクトルに基づく運転データを求め、前記運転データ及び前記初期データを比較して前記初期データ及び前記運転データの差が所定の一定値以上でないと、音圧の検出を中止する、
[1]に記載の異常検出装置。