JP6940089B2 - 貴金属の回収方法 - Google Patents

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Description

本発明は、貴金属の回収方法に関する。
廃材等からの貴金属回収では、通常、白金(Pt)等の貴金属を酸に溶解させた後、分離精製等の工程を経て、最終的に化成品やインゴット等を再製している。
宝飾品等、廃材中の貴金属濃度が充分高い場合は、貴金属を王水等の酸に直接溶解させた後に分離精製を行う(湿式法)。これに対して、自動車用排ガス浄化触媒等、廃材中の貴金属濃度が希薄な場合は、貴金属が銅や鉄等と合金を形成することを利用し、貴金属をこれらのコレクターメタルに吸収させる、いわゆる乾式製錬を用いて貴金属を濃縮する手法(乾式法)が用いられる。
乾式製錬により、廃材中の貴金属はコレクターメタルと合金を形成する。コレクターメタルは貴金属に対して過剰量投入されるため、硫酸浸出等を行って銅や鉄等の卑な金属を溶解除去する。貴金属は硫酸にはほとんど溶解しないため、残渣中には貴金属が濃縮されることとなる。回収した残渣は王水等を用いて溶解させた後、貴金属同士を分離精製する。
上述のように、貴金属の回収では、通常、王水等の酸による溶解工程が含まれる。その理由は、溶媒抽出法やイオン交換樹脂法といった分離精製工程においては、溶液中で貴金属イオン、さらにいえば貴金属−塩化物イオンといった錯イオンを生成させる必要があるからである。
分離精製工程を円滑に行うためには、あらかじめ貴金属は錯イオンへと変化させておくことが望ましい。しかし、自動車用排ガス浄化触媒やガラス溶解用ルツボ、宝飾品等、貴金属の用途の大半は金属状態での使用を前提としている。また、乾式製錬後の貴金属も金属状態を維持している。
そのため、酸溶解工程では貴金属の酸化(イオン化)反応と錯イオン形成反応による溶解、という2つの反応を進ませることが肝要である。しかし、貴金属は水素よりも貴であるため、水素イオンを含む酸というだけでは貴金属をイオン化させることはできず、水素イオンよりも強力な酸化剤が必要である。
貴金属はイオン化が困難な元素群であるが、王水等を用いることで程度差はあるものの溶解させることができる。この理由は、王水中で生成する酸化剤が貴金属を酸化させ、さらに王水中の塩化物イオン等が貴金属イオンと錯形成するためである。
以下に王水中の酸化剤生成反応について説明する。王水は濃塩酸と濃硝酸を体積比3:1で混合した混酸であり、下記の反応によって酸化剤である塩素(Cl)及び塩化ニトロシル(NOCl)が生成する。
3HCl + HNO → Cl + NOCl + 2HO ・・・(1)
上記反応式により生成した塩素及び塩化ニトロシルが貴金属を酸化させる役割を果たす。
しかし、塩素や塩化ニトロシルといった酸化剤は極めて毒性及び腐食性が高く、常温では気体となって系外へ散逸する。そのため厳重な除害処理が必要であり、設備の維持管理コストが高額になるという問題がある。
また、王水による溶解では、王水に含まれる硝酸が後段の分離精製工程を阻害する問題もある。分離精製工程の一つである溶媒抽出法では、抽出剤と硝酸が接触すると抽出剤が酸化され、貴金属の抽出効率が低下する。そのため、王水溶解では蒸発乾固と塩酸添加を繰り返す硝酸の除去工程(脱硝)が必要であり、この脱硝工程に手間がかかる問題がある。
貴金属を溶解する方法としては、王水を用いる以外にも、塩酸に塩素ガスを通気する方法(例えば、特許文献1)や、塩酸に過酸化水素水を添加する方法(例えば、特許文献2)、オゾンを含む溶液を用いる方法(例えば、特許文献3)などが挙げられる。しかし、いずれも有毒な酸化剤を発生ないし使用する問題があり、安全性に優れているとはいえない。
貴金属の酸への溶解を容易にするため、貴金属に前処理を施す手法も提案されている。例えば特許文献4では、貴金属をCaやMg等の異種金属と合金化させることにより、貴金属を酸に容易に溶解できることが記載されている。しかし、この方法では合金形成後も貴金属が金属状態であるために、溶解には王水等の酸化剤を含む酸が必要となる。
また、特許文献5では、貴金属を異種金属と合金化させた後、塩化処理及び/又は酸化処理する前処理方法が提案されている。この方法では塩化処理又は酸化処理を経ることで貴金属がイオン化するため、王水等を用いることなく貴金属を溶解できる。しかし、合金化処理及び塩化処理において金属蒸気や塩素ガスといった有毒ガスの発生、使用を伴うという問題がある。
以上のことから、発明者らは王水や金属蒸気等の有毒ガスを使用、発生させることなく貴金属を溶解させる手法について鋭意検討した。その結果、複合酸化物を経由することにより貴金属の単体を塩酸だけで溶解できることを見出した(特許文献6)。特許文献6では、Pt等の貴金属とリチウム塩を混合、加熱することにより、LiPtOのような複合酸化物を形成させる。得られた複合酸化物中で、貴金属は酸化状態となっているため、塩酸のような酸化剤を含まない酸だけで貴金属を容易に溶解させることができる。
特開平9−324223号公報 特開平9−263847号公報 特開2014−173107号公報 特許第3741275号 特開2011−252217号公報 特開2013−249494号公報
王水に対する貴金属の溶解性は元素毎に異なっており、PtやPdは比較的溶解が容易な部類である。これに対して、IrやRh、Ruは、王水を用いてもなお溶解が困難である。複合酸化物を経由して貴金属を回収する手法では、毒性の高い王水や金属蒸気等を用いることなく、これらの難溶性貴金属を酸に溶解できる。しかし、IrやRh、Ruの溶解率は20〜40%程度と低い水準に留まっていた。
Ir等の難溶性貴金属は、単体としてよりは他の金属、例えばPt等と合金を形成させて用いられることが多い。合金形成により耐酸性等の化学的特性や、強度等の機械的特性を向上させることができるが、回収の観点からは合金化による耐酸性の向上は貴金属の溶解をさらに困難なものとする。本発明は、このような難溶性貴金属を含む合金を、酸溶液に容易に溶解させることが課題である。
発明者らは、貴金属単体よりも溶解が困難な貴金属含有合金について、特許文献6に基づき塩酸による浸出が可能か検討した。
特許文献6の実施例を参考に、貴金属合金の一種であるPt−Pd合金とLiCOを空気中で加熱(800℃、24時間)した後、塩酸による貴金属溶解(12M塩酸、80℃、9時間)を試みた。
その結果、加熱後に貴金属含有複合酸化物であるLiPtO及びLiPdOが得られたものの、塩酸に対する貴金属の溶解率はPt、Pdそれぞれ36.6重量%、57.3重量%に過ぎず、Pt−Pd合金を完全に溶解させることはできなかった。
上記に鑑みて、本発明の一形態においては、安全性に優れた高効率の、貴金属を含む合金から貴金属を回収する方法を提供することを課題とする。
上記点に鑑みた本発明の一形態は、貴金属の回収方法であって、貴金属を含む合金と炭酸リチウムとを混合し、加熱して、貴金属及びリチウムを含む複合酸化物を形成する複合酸化物形成工程と、前記複合酸化物と酸溶液とを、当該酸溶液の、大気圧下における沸点から400℃までの温度範囲で接触させ、前記酸溶液中に貴金属成分を浸出させる浸出工程とを有する。
本発明によれば、溶解が極めて困難な貴金属含有合金であっても、王水等を用いることなく貴金属を容易に溶解させることができる。そのため、王水に由来する塩素ガス、塩化ニトロシル等の有毒な酸化剤の発生や、処理困難な廃液の発生等を回避することができ、安全性に優れた貴金属含有合金の溶解方法とすることができる。
実施例1−1、実施例1−2及び実施例1−4で得たLi−Pt及びLi−Pd複合酸化物のXRDプロファイルである。実施例1−1の800℃6時間加熱試料が(a)、実施例1−2の800℃12時間加熱試料が(b)、実施例1−4の800℃24時間加熱試料が(c)である。 実施例1−7、実施例1−8で得たLi−Pt及びLi−Pd複合酸化物のXRDプロファイルである。実施例1−7の純酸素フロー・800℃12時間加熱試料が(a)、実施例1−8のエアフロー・800℃12時間加熱試料が(b)である。 実施例1−9で得たLi−Pt及びLi−Pd複合酸化物のXRDプロファイルである。 Li−Pt及びLi−Pd複合酸化物の溶解率を示すグラフである。 実施例2−1〜実施例2−5で得たLi−Pt及びLi−Ir複合酸化物のXRDプロファイルである。実施例2−1の800℃3時間加熱試料が(a)、実施例2−2の800℃6時間加熱試料が(b)、実施例2−3の800℃9時間加熱試料が(c)、実施例2−4の800℃12時間加熱試料が(d)、実施例2−5の800℃24時間加熱試料が(e)である。なお、図5(a)については、他の試料よりもピーク強度値が高かったため、得られた値に1/5を乗じてある。 Li−Pt及びLi−Ir複合酸化物の溶解率を示すグラフである。 実施例3−1〜実施例3−5で得たLi−Pt及びLi−Rh複合酸化物のXRDプロファイルである。実施例3−1の800℃3時間加熱試料が(a)、実施例3−2の800℃6時間加熱試料が(b)、実施例3−3の800℃9時間加熱試料が(c)、実施例3−4の800℃12時間加熱試料が(d)、実施例3−5の800℃24時間加熱試料が(e) Li−Pt及びLi−Rh複合酸化物の溶解率を示すグラフである。 実施例4で得たLi−Pt及びLi−Ru複合酸化物のXRDプロファイルである。
[複合酸化物形成工程]
本発明の一形態では、まず、貴金属を含む合金と炭酸リチウムとを混合し、加熱して、貴金属及びリチウムを含む複合酸化物を形成する複合酸化物形成工程を行う。
(対象とする合金の組成)
本発明で処理対象となる貴金属含有合金(貴金属を含む合金)は、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Rh(ロジウム)、Ir(イリジウム)、Ru(ルテニウム)のいずれか一種以上を含んでいればよく、Pt−Ir合金(ガソリンエンジン用スパークプラグ等に使用され得る)やPt−Rh合金(熱電対等に使用され得る)、Pt−Ru合金(燃料電池触媒等に使用され得る)、Pd−Au合金(歯科用クラウン等に使用され得る)等を例示できる。また、貴金属含有合金の組成は、上記貴金属と上記貴金属以外の元素とから構成されていてもよく、例えばPt−Fe合金(磁気記録材料等に使用され得る)やPt−Co−Cr合金、Co−Cr−Pt−Ru合金(ハードディスク用磁気ビット等に使用され得る)、Pd−Cu合金(水素分離膜等に使用され得る)等も処理対象に含めることができる。
(加熱前の成形、粉砕等加工)
処理対象となる貴金属含有合金が、ある程度の体積を有するものである場合、例えば、ルツボ等である場合は、必要に応じて切断や圧延等の成形処理を行ってもよい。これらの処理を施すことにより、貴金属合金の比表面積を増大でき、後段の複合酸化物形成をより容易に行うことができる。
また、ガイシ等の材料中に貴金属合金が埋包されている場合は、粉砕等を行うことにより貴金属合金をあらかじめ露出させておくことが好ましい。これにより、貴金属合金がアルカリ金属塩と接触できるので、加熱処理により容易に複合酸化物を形成することができ、塩酸等による溶解も容易となる。
(複合酸化物の形成)
貴金属含有合金と炭酸リチウムとを混合して接触させ、加熱(焼成)することにより、貴金属を含む複合酸化物が得られる。この複合酸化物形成工程においては、下記反応式のように酸素が消費されるため、酸素存在下で、例えば空気や純酸素等の雰囲気中で加熱処理を行うことが好ましい。
Pt + LiCO + O → LiPtO + CO ・・・(2)
なお、複合酸化物形成工程では、貴金属含有合金を、炭酸リチウムの固体と接触させてもよいし、炭酸リチウムの融液を接触させてもよい。
(加熱温度及び加熱時間)
上記の複合酸化物形成のための加熱温度及び加熱時間については、試料中の貴金属を複合酸化物へと変化できる条件であればよい。複合酸化物の生成挙動は貴金属の種類によって異なるので、反応が進む範囲で加熱温度を自由に設定できる。例えば400℃から1300℃の範囲、より好ましくは500℃から1000℃の範囲、さらに好ましくは600℃から800℃の範囲である。炭酸リチウムを用いた場合では、600℃から800℃程度で加熱処理を行うことにより貴金属含有複合酸化物が得られる。
加熱時間は、対象となる貴金属合金の形態や加熱条件、例えば加熱温度や酸素分圧等に依存するが、貴金属の反応率を考慮して、例えば30分から48時間の範囲、より好ましくは1時間から12時間の範囲等に設定できる。処理対象が触媒等の微粒子である場合は、数時間という比較的短時間の加熱処理によって貴金属合金を完全に複合酸化物へと変化できるが、板材等のかさ高い形態の場合は、複合酸化物形成が完了するまでに時間がかかるため、加熱時間を長く設定する必要がある。加熱後も未反応の貴金属合金が残存していると、酸による溶解が困難なものとなるため、加熱処理によって貴金属合金を完全に複合酸化物へと変化させることが好ましい。
(加熱時の酸素分圧)
式(2)に示したように、複合酸化物の生成反応においては空気中の酸素が消費される。そのため、反応時に酸素分圧を上げることにより、複合酸化物の形成速度を増大でき、短時間のうちに反応を終了させることができる。そのためには、例えば、初期雰囲気の酸素分圧を上げておくこともできるし、反応の開始から終了にかけて消費される酸素を常に補うようにしておくことができる。酸素分圧を上げるための具体的な手法は特に限定されないが、例えば、空気をフローしたり(通過させたり)、純酸素ガスをフローする等の手法を適宜選択することができる。このような空気又は純酸素ガスのフローは、空気フローであれば300mL/分から1000mL/分の範囲の流量で、純酸素ガスフローであれば150mL/分から500mL/分の範囲の流量で行うことが好ましい。空気中の酸素分圧(pO)の値は0.2であるが、pOが高いほど複合酸化物の形成が進むと考えられることから、pOが0.2から1.0である範囲で加熱処理を行うことが好ましい。
(加熱後の磨砕処理)
加熱処理後に得られる複合酸化物は、ミル等による磨砕処理を行ってもよい。磨砕処理によって複合酸化物の粒子径を小さくでき、これにより、後述の溶解処理(浸出工程)において複合酸化物と酸との接触面積を増大でき溶解速度を増大できる。磨砕方法としては、例えばボールミルやジェットミル等を使用することができる。
[浸出工程]
上述のように複合酸化物を得た後、複合酸化物と酸溶液とを、酸溶液の、大気圧下における沸点以上400℃以下の温度範囲で接触させ、前記酸溶液中に貴金属成分を浸出させる浸出工程を行う。この工程において、複合酸化物中に含まれる少なくとも1種の貴金属を酸溶液に浸出させることができる。
(貴金属成分の浸出に用いる酸の種類)
貴金属成分の浸出は、複合酸化物を酸溶液中に溶解させることによって行うことができる。ここで、溶解に用いる酸としては、貴金属を溶解できるものであればよく、塩酸や硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸、ギ酸、及び酢酸等を用いることができる。また、必要に応じてこれらの酸を混合してもよい。複合酸化物を溶解させるための酸は、溶液の形態、具体的には水溶液の形態で使用することが好ましい。
(溶解処理に用いる酸の量及び濃度)
溶解処理に用いる酸溶液中の酸の濃度及び酸溶液の量としては、材料中の貴金属を溶解するのに充分な濃度及び量であればよい。例えば、12M塩酸(濃塩酸)や15M硝酸(濃硝酸)等を用いることができる。
溶解に用いる酸溶液の酸濃度の範囲は特に制限はなく、現実的な速度で貴金属溶解が進めばよい。例えば塩酸を用いる場合は、0.1Mから12Mの範囲、より好ましくは3Mから10Mの範囲である。濃硝酸を用いる場合は、0.1Mから15Mの範囲、より好ましくは1Mから12Mの範囲である。
(溶解温度)
酸溶液の、大気圧下での沸点以上の温度とすることで、貴金属の溶解速度を増大できる。例えば塩酸(塩酸水溶液)の沸点は濃度依存性を示すことが知られており、濃度6Mのとき沸点が極大(110℃)となる。したがって、6Mの塩酸を用いる場合は110℃以上の溶解温度とすればよい。別の濃度の塩酸を用いる場合には、110℃より低い温度以上の温度であっても、貴金属の溶解速度を良好に増大させることができる。
溶解温度をさらに高温、例えば180℃や200℃とすることで貴金属の溶解処理をさらに迅速に行うことができる。塩酸を用いて溶解処理を行う場合、溶解温度が高すぎると貴金属が還元、析出するため、溶解温度は、好ましくは400℃以下、より好ましくは300℃以下、さらに好ましくは250℃以下とすることができる。また、好ましくは110℃から400℃の範囲、より好ましくは160℃から300℃の範囲、さらに好ましくは180℃から250℃の範囲とすることができる。
塩酸以外にも濃硝酸(沸点83℃)やフッ酸(沸点96℃)、リン酸(沸点158℃)等を適宜使用することができる。また、濃硫酸(沸点337℃)は他の酸類よりも著しく沸点が高いため、溶解温度を高く設定できる。濃硫酸を用いた場合、溶解温度は、好ましくは350℃から400℃の範囲である。
(溶解時間)
溶解時間は複合酸化物中の貴金属合金が充分に溶解できれば特に制限はない。溶解させる貴金属の量や酸溶液の量、溶解温度等にもよるが、溶解時間は30分から24時間の範囲、より好ましくは1時間から12時間の範囲、さらに好ましくは2時間から6時間の範囲である。
(容器の構造)
浸出工程に用いる容器は、用いる酸溶液を沸点以上で保持できれば材質や容量、構造等に特に制限はない。大気圧下で酸溶液を、その酸溶液の沸点以上の温度に保持することができない場合には、耐圧容器を用いることが好ましい。また、溶解処理中に発生する圧力は、用いる酸溶液の種類や保持温度、容器体積に対する酸溶液の充填率等に依存して変化し得るが、ボンベ等を用いて外部からの加圧を行ってもよい。
(溶解助剤の添加)
溶解工程において、酸溶液の他に溶解助剤として金属塩等を添加してもよい。複合酸化物中で酸化状態となっている貴金属は、酸溶液中の塩化物イオン等と錯形成して溶解する。そのため、塩化物イオン源等を酸溶液に添加することにより、貴金属の溶解を促進できる。溶解助剤は貴金属イオンと錯形成できればよく、例えば塩化物や硝酸塩、硫化物、硫酸塩、フッ化物、リン酸塩等を任意に添加できる。また、必要に応じてこれらのうち複数を添加してもよい。
(貴金属の分離精製及び回収)
浸出工程後の貴金属回収の手法については特に制限はなく、既存の分離精製方法等を適用することができる。本発明によれば貴金属錯イオンが溶解生成物となるため、溶媒抽出法、イオン交換樹脂法、沈殿析出法といった手法により貴金属を分離、抽出できる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本実施例においては、複合酸化物を経由してもなお溶解が困難な貴金属合金を、沸点を以上の温度で塩酸に浸漬させることにより容易に溶解できることが明らかとなっているが、本発明は、提示された例に限定されるものではない。
[Pt−Pd合金]
(実施例1−1〜実施例1−4)
(Pt−Pd合金とLi塩との加熱(複合酸化物の形成))
貴金属合金としてPt−Pd合金(Pt:85重量%、Pd:15重量%)250mgと、LiCO 379mgとを混合した。ここでは貴金属とLiとが完全に反応できるよう、貴金属合金に対して過剰量のLi塩を用いた。貴金属に対するLi塩の混合比、すなわち、Li/(Pt+Pd)は、原子比で7.2であった。次に、混合後の試料を、アルミナ製ボートに乗せて電気管状炉の炉芯管(いすゞ製作所製、EPKRO−13K、炉口径 50mm、長さ 1000mm)に挿入し、空気中、800℃で所定時間加熱した。加熱時間は、実施例1−1は6時間、実施例1−2は12時間、実施例1−3は18時間、実施例1−4は24時間であった。
(空気中で加熱処理を行って得た試料のXRDプロファイル)
加熱処理(焼成)によって複合酸化物が形成できたことを確認するため、粉末エックス線回折(XRD)測定を行った。図1(a)〜(c)は800℃でそれぞれ6時間、12時間、24時間加熱した試料(実施例1−1、実施例1−2、及び実施例1−4)のXRDプロファイルであり、いずれも貴金属とリチウムとの複合酸化物であるLiPtO及びLiPdOに由来する回折ピークが確認できた。
(Li−Pt、Li−Pd複合酸化物の塩酸溶解(貴金属成分の浸出))
実施例1−1〜実施例1−4で得た試料の全量(貴金属として250mg含有)と、12M塩酸10mLとをPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製の内筒(容量25mL)に投入し、ステンレス製の耐圧外筒容器(三愛科学株式会社製、HU―25)にマウントして密閉した後、180℃で2時間保持した。保持終了後、固液分離のためPTFEフィルタを用いて減圧濾過を行った。
24時間加熱試料(実施例1−4)では固液分離後も残渣が確認されなかったことから、Pt、Pdとも完全に溶解できたことがわかった。これに対して、6時間加熱試料、12時間加熱試料、及び18時間加熱試料(実施例1−1〜実施例1−3)では残渣が確認されたことから、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−AES)により溶液試料中の貴金属濃度を分析し、溶解率を算出した。その結果、表1に示すように、6時間加熱試料(実施例1−1)ではPt溶解率が29.9重量%、Pd溶解率が27.5重量%であった。また、12時間加熱試料(実施例1−2)ではPt溶解率が71.1重量%、Pd溶解率が68.8重量%であり、18時間加熱試料(実施例1−3)ではPt溶解率が72.8重量%、Pd溶解率が78.3重量%であった。
(実施例1−5〜実施例1−8)
加熱処理に対する酸素分圧の影響を調べるため、純酸素フロー及びエアフロー(毎分300mL)を行った以外は、実施例1−1と同様の方法で複合酸化物を得た。但し、焼成温度の時間は、表1に示す通りとした。
(純酸素フローを行って得た試料のXRDプロファイル)
図2(a)に純酸素フロー下、800℃で12時間加熱した試料(実施例1−7)のXRDプロファイルを示す。また、図2(b)にエアフロー下、800℃で12時間加熱(焼成)した試料(実施例1−8)のXRDプロファイルを示す。実施例1−1〜実施例1−4と同様、LiPtO及びLiPdOが得られたことが分かった。
(塩酸溶解の結果)
表1に示すように、純酸素フロー、空気フローを併用することにより、いずれの実施例も、同じ焼成時間のフローなしの実施例で得られた、PtとPdの溶解率が共に増加した。純酸素フローを行って800℃で12時間の加熱により得た試料(実施例1−7)について、実施例1−1と同様の方法で溶解処理とICP分析を行った結果、Pt溶解率は97.3重量%、Pd溶解率は98.8重量%であった。また、エアフロー(空気フロー)を行って得た試料(実施例1−8)についても同様に溶解処理とICP分析を行った結果、Pt溶解率は94.3重量%、Pd溶解率は88.9重量%であり、試料中の貴金属の大半を溶解させることができた。実施例1−7及び実施例1−8(純酸素フローを行った試料及びエアフローを行った試料)では加熱時間を12時間としており、フローを行わなかったこと以外は同じ条件で複合酸化物の形成を行った実施例1−2と比較して、溶解率が向上していることが分かった。また、実施例1−7及び実施例1−8はともに、フローを行わず加熱時間を24時間とした場合(実施例1−4)と比較して加熱時間を約半分に短縮したものであるが、実施例1−4に近い高い溶解率で貴金属を塩酸へ溶解できるとわかった。
また、純酸素フローを行い加熱時間を12時間よりも短くした場合(実施例1−5及び実施例1−6)であっても、Pt、Pdについて共に50%を超える十分な溶解率を得ることができた。加熱時間を9時間とした場合(実施例1−6)では、Pt溶解率は94.8重量%、Pd溶解率は91.4重量%であった。加熱時間を6時間とした場合(実施例1−5)では、Pt溶解率は60.5重量%、Pd溶解率は59.3重量%であった。
(実施例1−9)
貴金属合金の組成を変えても複合酸化物の形成及び溶解が可能か検討した。Pt−Pd合金(Pt:80重量%、Pd:20重量%、250mg)とLiCO(220.9mg)を実施例1−4と同様にして800℃、24時間加熱した。ここでLi/(Pt+Pd)比は4.0となる。
(Pt−Pd合金組成を変えて得た試料のXRDプロファイル)
図3に、Pt−Pd合金組成を変えて得た試料(実施例1−9)のXRDプロファイルを示す。実施例1−1〜実施例1−8と同様、LiPtO及びLiPdOが得られたことが分かった。
(塩酸溶解の結果)
実施例1−1と同様の方法で溶解処理とICP分析を行った結果、実施例1−9においては、Pt溶解率は99.4重量%、Pd溶解率は96.7重量%であり、試料中の貴金属の大半を溶解させることができた。
実施例1−1〜実施例1−9では、耐圧容器を用いて酸溶液の沸点以上で複合酸化物中の貴金属を浸出していた。これに対して、大気圧下、酸溶液の沸点を下回る低温で浸出を行った場合には、貴金属含有合金を完全に溶解させることは困難である。下記では比較のため、貴金属合金を複合酸化物へと変化させた後、大気圧下で浸出試験を行った結果について述べる。
(比較例1)
(Li−Pt、Li−Pd複合酸化物の塩酸溶解)
実施例1−4で得たものと同様の、800℃24時間加熱試料(LiPtO及びLiPdOを含む)の全量(貴金属として250mg含有)に12M塩酸20mLを加え、撹拌子による撹拌を行いながら80℃で9時間保持した後、固液分離を行い溶液試料と残渣を得た。
溶解試験後、残渣が確認されたことからICP測定により溶液試料中の貴金属濃度を決定し、溶解率を算出した。その結果、Pt溶解率は36.6重量%、Pd溶解率は57.3重量%であった。
(比較例2)
実施例1−7で得たものと同様の、純酸素フロー、800℃12時間加熱試料の全量(貴金属として250mg含有)を、比較例1と同様に塩酸へ溶解させた。溶解試験後、残渣が確認されたことからICP測定により溶液試料中の貴金属濃度を決定し、溶解率を算出した。その結果、Pt溶解率は33.1重量%、Pd溶解率は56.3重量%であった。
上記結果から、酸溶液の沸点を下回る低温という溶解条件の下では、酸溶液の沸点以上の高温で浸出を行った場合よりも溶解率が低く、貴金属含有合金を完全に溶解させることが困難であることが実証された。
図4に、上記実施例1−1〜実施例1−9のうち代表的な実施例、及び比較例1、2について、Ptの溶解率及びPdの溶解率をグラフで表した。同じ温度、同じ時間の焼成時間で比較すると、酸溶液の沸点以上である180℃で複合酸化物の浸出を行った例では、酸溶液の沸点を下回る80℃で浸出を行った比較例よりも、Pt溶解率及びPd溶解率が向上している点が、明らかとなっている。
以上のPt−Pd合金についての結果を、表1にまとめる。
Figure 0006940089
[Pt−Ir合金]
(実施例2−1〜実施例2−5)
Pt−Ir合金(Pt:80重量%、Ir:20重量%)250mgと、LiCO 190mgとを混合した。Li/(Pt+Ir)は、原子比で4.0であった。得られた混合物を実施例1−1〜実施例1−4と同様にして空気中で、800℃で所定時間加熱した。加熱時間は、実施例2−1は3時間、実施例2−2は6時間、実施例2−3は9時間、実施例2−4は12時間、実施例2−5は24時間であった。
(空気中で加熱処理を行って得た試料のXRDプロファイル)
加熱処理によって複合酸化物が形成できたことを確認するため、XRD測定を行った。図5(a)〜(e)は、800℃でそれぞれ3、6、9、12、24時間加熱した試料(実施例2−1〜実施例2−5)のXRDプロファイルであり、いずれも貴金属とリチウムの複合酸化物であるLiPtO又はLiIrOに由来する回折ピークが確認できた。LiPtOとLiIrOは結晶学的に同形であり、XRDプロファイルはほぼ同じ形状を示す。そのため、生成物はLiPtOとLiIrOとの混合物、又はLi(Pt,Ir)Oのような固溶体であったと考えられる。
(Li−Pt、Li−Ir複合酸化物の塩酸溶解)
実施例2−1〜実施例2−5で得られた試料の全量を用いて実施例1−1〜実施例1−4と同様に溶解試験を行った。その結果、24時間加熱試料(実施例2−5)では残渣が確認されなかったことから、Pt、Irとも完全に溶解できたことがわかった。
また、実施例2−5以外の試料では残渣が確認されたことから、ICP分析により貴金属溶解率を算出した。その結果、3時間加熱試料(実施例2−1)ではPt溶解率が21.0重量%、Ir溶解率が20.6重量%であった。6時間加熱試料(実施例2−2)ではPt溶解率が54.9重量%、Ir溶解率が53.7重量%であった。また、9時間加熱試料(実施例2−3)ではPt溶解率が79.6重量%、Ir溶解率が79.1重量%であった。12時間加熱試料(実施例2−4)ではPt溶解率が99.2重量%、Pd溶解率が98.4重量%であった。
(実施例2−6)
次に、低濃度の塩酸を用いて複合酸化物中に存在する貴金属を溶出できるかについて試験した。実施例2−5における焼成によって得られた試料と同じ試料を、3M塩酸を用いた以外は実施例1−1と同様の手法にて溶解試験を行った。溶解試験後、残渣が確認されたことからICP測定により溶液試料中の貴金属濃度を決定し、溶解率を算出した。その結果、Pt溶解率は71.9重量%、Ir溶解率は76.1重量%であった。
一般に、Pt−Ir合金は王水に対しても溶解が極めて困難であり、合金中のIr濃度が高いほど酸への溶解速度が低下する。しかも、本実施例で用いたPt80重量%、Ir20重量%という合金組成は、実用されるPt−Ir合金の中でもIr濃度が最も高いものである。本発明によれば、このような難溶性貴金属を多量に含む合金でさえ、王水を用いることなく、且つ比較的低濃度の酸に容易に溶解させることができる。
(比較例3)
(Li−Pt、Li−Ir複合酸化物の塩酸溶解)
実施例2−5における空気中での焼成によって得られた800℃24時間加熱試料(LiPtO及びLiIrOを含む)の全量を、比較例1と同様に塩酸へ溶解させた。つまり、耐圧容器を用いず、12M塩酸に80℃で9時間の条件で浸出を行った。溶解試験後、残渣が確認されたことからICP測定により溶液試料中の貴金属濃度を決定し、溶解率を算出した。その結果、Pt溶解率は8.4重量%、Ir溶解率は10.7重量%であった。
比較例3から、難溶性貴金属であるIrが含まれる場合、酸溶液の沸点を下回る低温の溶解条件のもとでは、貴金属の完全溶解は困難であるとわかった。
図6に、上記実施例2−1〜実施例2−6及び比較例3について、Ptの溶解率及びIrの溶解率をグラフで表した。酸溶液の沸点以上である180℃で複合酸化物の浸出を行った実施例2−1〜実施例2−6では、酸溶液の沸点を下回る80℃で9時間の浸出を行った比較例3よりも、Pt溶解率及びIr溶解率が向上している点が、明らかとなっている。
以上のPt−Ir合金についての結果を、表2にまとめる。
Figure 0006940089
[Pt−Rh合金]
(実施例3−1〜実施例3−5)
Pt−Rh合金(Pt:90重量%、Rh:10重量%)250mgと、LiCO 206mgとを混合した。Li/(Pt+Rh)は、原子比で4.0であった。得られた混合物を実施例1−1と同様にして空気中で800℃で所定時間加熱した。加熱時間は、実施例3−1は3時間、実施例3−2は6時間、実施例3−3は9時間、実施例3−4は12時間、実施例3−5は24時間であった。
(空気中で加熱処理を行って得た試料のXRDプロファイル)
加熱処理によって複合酸化物が形成できたことを確認するため、XRD測定を行った。図7(a)〜(e)は、800℃でそれぞれ3、6、9、12、24時間加熱した試料(実施例3−1〜実施例3−5)のXRDプロファイルであり、いずれも貴金属とリチウムの複合酸化物であるLiPtO又はLiRhOに由来する回折ピークが確認できた。LiPtOとLiRhOは結晶学的に同形であり、XRDプロファイルはほぼ同じ形状を示す。そのため、生成物はLiPtOとLiRhOとの混合物、又はLi(Pt,Rh)Oのような固溶体であったと考えられる。
(Li−Pt、Li−Rh複合酸化物の塩酸溶解)
実施例3−1〜実施例3−5で得られた試料の全量を用いて、実施例1−1と同様に溶解試験を行った。その結果、いずれも残渣が確認されたことから、ICP分析により貴金属溶解率を算出した。その結果、3時間加熱試料(実施例3−1)ではPt溶解率が37.2重量%、Rh溶解率が37.7重量%であった。また、6時間加熱試料(実施例3−2)ではPt溶解率が65.9重量%、Rh溶解率が67.9重量%であった。9時間加熱試料(実施例3−3)ではPt溶解率が88.6重量%、Rh溶解率が90.6重量%であった。12時間加熱試料(実施例3−4)ではPt溶解率91.3重量%、Rh溶解率が93.6重量%であった。24時間加熱試料(実施例3−5)ではPt溶解率76.5重量%、Rh溶解率が74.7重量%であった。
以上の結果から、酸溶液の沸点以上の高温で溶解処理(浸出処理)を行うことにより、王水を用いることなく、Pt−Ru合金からPt及びRuを十分に浸出させることができることが分かった。なお、Pt−Ru合金では、180℃、2時間という溶解条件の下では、12時間加熱試料が最も高い溶解率を示すことが分かった。
(実施例3−6)
実施例3−5における24時間の焼成により得られた試料と同じ試料を用いて、溶解温度を180℃から200℃に変えて実施例1−1と同様に塩酸による溶解試験を行った。その結果、残渣が確認されなかったことから、溶解条件を変更することで、試料中のPt及びRhを完全に溶解できることが分かった。
(実施例3−7)
次に、比較的低濃度の塩酸を用いて複合酸化物中に存在する貴金属を溶出できるか試験した。実施例3−5で得られた試料の全量を、3M塩酸を用いた以外は、実施例1−1と同様の手法にて溶解試験を行った。溶解試験後、残渣が確認されたことからICP測定により溶液試料中の貴金属濃度を決定し、溶解率を算出した。その結果、Pt溶解率は1.8重量%、Rh溶解率は1.1重量%であった。
(比較例4)
(Li−Pt、Li−Rh複合酸化物の塩酸溶解)
実施例3−5で得た800℃24時間加熱試料(LiPtO及びLiRhOを含む)の全量を比較例1と同様に塩酸へ溶解させた。つまり、耐圧容器を用いず、12M塩酸に80℃、9時間の条件で貴金属成分の浸出を行った。溶解試験後、残渣が確認されたことからICP測定により溶液試料中の貴金属濃度を決定し、溶解率を算出した。その結果、Pt溶解率は0.6重量%、Rh溶解率は0.5重量%であった。
比較例4の結果から、難溶性貴金属であるRhが含まれる場合、酸溶液の沸点以上での溶解処理が必要であり、常温での貴金属の完全溶解は困難であるとわかった。この比較例4の結果は、3M塩酸を用いた上記実施例3−7と比較した場合、Pt、Rh溶解率共に下回っている。この比較より、実施例3−7のような、酸溶液の沸点以上である温度で貴金属成分の浸出を行う方法では、希塩酸を用いた場合であっても、12M塩酸を用いるが酸溶液の沸点を下回る温度で浸出を行った場合(比較例4)と比較して、より高い貴金属溶解率を達成できることがわかった。
以上のPt−Rh合金についての結果を、表3にまとめる。
Figure 0006940089
[Pt−Ru合金]
(実施例4)
カーボン粉末に担持したPt−Ru合金(Pt含有率:32.4重量%、Ru含有率16.8重量%)250mgと、LiCO 246mgとを混合した。Li/(Pt+Ru)は原子比で4.0であった。得られた混合物を実施例1−1と同様にして、800℃で加熱したが、焼成時間は1時間とした。
(空気中で加熱処理を行って得た試料のXRDプロファイル)
加熱処理によって複合酸化物が形成できたことを確認するため、XRD測定を行った。図9は、800℃で1時間加熱した試料(実施例4)のXRDプロファイルであり、貴金属とリチウムの複合酸化物であるLiPtO、及びLiRuOに由来する回折ピークが確認できた。
(Li−Pt、Li−Ru複合酸化物の塩酸溶解)
実施例4で得られた試料の全量を用いて、実施例1−1と同様に溶解試験を行った。その結果、残渣が確認されなかったことから、Pt、Ruとも完全に溶解できたことがわかった。
以上のPt−Ru合金についての結果を、表4にまとめる。
Figure 0006940089
本発明は廃材等に含まれる貴金属合金から貴金属成分を回収するリサイクル分野への利用が見込まれる。

Claims (5)

  1. 貴金属を含む合金と炭酸リチウムとを混合し、加熱して、貴金属及びリチウムを含む複合酸化物を形成する複合酸化物形成工程と、
    前記複合酸化物と酸溶液とを、当該酸溶液の、大気圧下における沸点から400℃までの温度範囲で接触させ、前記酸溶液中に貴金属成分を浸出させる浸出工程と
    を有することを特徴とする貴金属の回収方法。
  2. 前記貴金属が、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウムのうちいずれか1種以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の貴金属の回収方法。
  3. 前記浸出工程において、耐圧容器を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の貴金属の回収方法。
  4. 前記複合酸化物形成工程が、炭酸リチウムの固体、又は炭酸リチウムの融液と、前記貴金属を含む合金とを接触させることを含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の貴金属の回収方法。
  5. 前記酸溶液が、塩酸硫酸、フッ酸、リン酸、ギ酸、酢酸から選ばれた少なくとも1種の酸の溶液であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の貴金属の回収方法。
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