JP2007070650A - ルテニウム酸化物の製法およびルテニウム粉末の製法 - Google Patents

ルテニウム酸化物の製法およびルテニウム粉末の製法 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明の目的は、主としてルテニウムを含む導電性物質からルテニウム酸化物を製造する方法を提供することにある。また本発明の他の目的は、前記製法で得られたルテニウム酸化物からルテニウム粉末を製造する方法を提供することにある。更に他の目的は、主としてルテニウムを含む導電性物質からルテニウム粉末を直接製造する方法を提供することにある。
【解決手段】 本発明に係るルテニウム酸化物の製法は、塩基性の電解液中で主としてルテニウムを含む導電性物質を陽極として電気分解する工程、陰極への析出物を回収する工程、その回収物を加熱処理する工程、を含むところに特徴がある。

Description

本発明は、ルテニウムを含む導電性物質(例えば、産業廃材として回収されるルテニウム廃棄物)からルテニウム酸化物またはルテニウム粉末を製造する方法に関するものである。
最近、例えばDRAM(Dynamic Randam AccessMemory)のキャパシタ電極やHDD(Hard Disk Drive)の記録層としてルテニウム(Ru)の薄膜が使用されている。このルテニウム薄膜は、例えばルテニウムターゲットを用いてスパッタリングすることにより形成される。ルテニウム薄膜を形成した後のルテニウムターゲットは、産業廃材として廃棄されるが、その廃棄率は非常に高く、通常30〜50%程度になる。即ち、ルテニウムターゲットの大部分は、産業廃材として廃棄されていることになる。また、ルテニウムは薄膜としての用途のほかに、触媒としても利用されている。
ところでルテニウムのクラーク数は、白金のクラーク数とほぼ等しく約5×10-7(第73位)であり、ルテニウムは白金と同様に貴重な金属である。そのため産業廃材として廃棄されるルテニウム廃棄物を回収し、再利用することが求められている。
ルテニウムを含む貴金属の回収方法としては、例えば特許文献1の技術が提案されている。この特許文献1には、貴金属を含む粒状体から貴金属成分を溶出した後に電解し、陰極に貴金属を析出させて回収する方法が記載されている。そしてこの文献には、貴金属としてルテニウムが例示されている。また、貴金属成分を溶出させるための電解液として酸を使用することが記載されている。しかし実施例にはルテニウムを含む粒状体からルテニウムを回収する例は開示されていない。また、非特許文献1に記載されているように、ルテニウムは酸に不溶のため、この文献に開示されている技術ではルテニウムを回収できない。
ところで上記ルテニウムターゲットなどのルテニウム製品は、鋳造法や粉末冶金法によって製造されるが、ルテニウムの融点は高く(約2450℃)、しかも硬くてもろいため、加工性が極めて悪い。そのためルテニウム製品に成形するには、鋳造法で得られた鋳塊を成形加工するよりも粉末冶金法で所望の形状に成形するのが一般的であり、ルテニウムは、粉末状の形態で提供することが望まれている。
ルテニウム粉末の製法としては、例えば特許文献2の技術が先に提案されている。この特許文献2には、原料となる粗金属ルテニウムを溶解精製した後、塩素含有ガスと接触させて塩化ルテニウム粉末とし、次いで水素還元して精製金属ルテニウム粉末を得る方法が開示されている。ところがこの文献に開示されている製法では、粗金属ルテニウムの溶解精製に電子ビーム溶解による真空溶解精製法や高真空電子ビーム帯溶融法を採用するため、多額の設備投資が必要となる。
上記ルテニウムは、ルテニウム金属としての形態の他に、ルテニウム酸化物としても利用される。即ち、ルテニウム酸化物は、例えば厚膜抵抗体用の抵抗ペーストの導電材や、感光性の黒色ペーストの原料等として用いられる。こうしたルテニウム酸化物の製法として、例えば特許文献3には、ルテニウム酸鉛微粉末と酸化硼素等を混合し、この混合物を溶融した後に、純水または酸に溶解して得た沈殿物を濾過・回収して二酸化ルテニウム微粉末を得ることが提案されている。しかしこの文献に開示されているルテニウム微粉末は、ルテニウム酸鉛微粉末に限定されており、例えば上記ルテニウムターゲットのようなルテニウムを多く含む導電性物質からルテニウム酸化物を製造する技術を開示するものではない。
特開平6−212473号公報(請求項1、段落0013、0017等) 特開平9−227966号公報(請求項2、段落0009等) 特開平7−25620号公報(請求項1、段落0002等) 「化学大辞典9」(共立出版株式会社発行、化学大辞典編集委員会編集、昭和46年2月5日縮刷版第11刷発行、846頁)
本発明は、この様な状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、ルテニウムを含む導電性物質からルテニウム酸化物を製造する方法を提供することにある。また本発明の他の目的は、前記製法で得られたルテニウム酸化物からルテニウム粉末を製造する方法を提供することにある。更に他の目的は、ルテニウムを含む導電性物質からルテニウム粉末を直接製造する方法を提供することにある。
ルテニウムを含む導電性物質からルテニウム酸化物を簡便に製造するには、塩基性の電解液中でルテニウムを含む導電性物質を陽極として用いて電気分解すればよく、陽極として用いたルテニウムを含む導電性物質が電気分解によって電解酸化され、イオンとして電解液中に溶出し、このイオンを陰極側で還元して析出物として回収し、これを加熱処理すればルテニウム酸化物を製造できること、またこうして得られたルテニウム酸化物を還元性雰囲気で還元するか、或いは前記析出物を還元性雰囲気で直接還元すればルテニウム粉末を簡便に製造できることを見出し、本発明を完成した。
即ち、上記課題を解決することができた本発明に係るルテニウム酸化物の製造方法は、塩基性の電解液中で主としてルテニウムを含む導電性物質を陽極として電気分解する工程、陰極への析出物を回収する工程、その回収物を加熱処理する工程、を含む点に要旨を有する。前記加熱処理する工程は、300℃以上で行うことが好ましい。前記ルテニウムを含む導電性物質としては、産業廃棄物を用いることができる。
上記製法で得られたルテニウム酸化物を還元性雰囲気で還元すれば、ルテニウム粉末を簡便に得ることができる。また、還元するに先立って、前記ルテニウム酸化物を粉砕すれば、還元後に粉砕するよりもルテニウム粉末を簡便に得ることができる。
なお、ルテニウム粉末は、塩基性の電解液中で主としてルテニウムを含む導電性物質を陽極として電気分解する工程、陰極への析出物を回収する工程、得られた析出物を還元性雰囲気で還元する工程、を含む点に要旨を有する製法によっても得ることができる。前記ルテニウムを含む導電性物質としては、産業廃棄物を用いることができる。また、還元するに先立って、前記析出物を粉砕すれば、還元後に粉砕するよりもルテニウム粉末を簡便に得ることができる。前記ルテニウム酸化物または前記析出物を還元する際には、700℃以上で行うことが好ましい。
本発明によれば、ルテニウムを含む導電性物質を塩基性の電解液中で電気分解して回収したものを加熱処理することによってルテニウム酸化物を製造できるため、電子ビーム装置のような高価な装置は不要である。また、こうして得られたルテニウム酸化物を還元すれば、ルテニウム粉末を製造できる。特に、上記ルテニウム酸化物はルテニウム金属に比べて格段に破砕し易いため、ルテニウム酸化物を粉砕した後に還元することによって、還元後に粉砕するよりもルテニウム粉末を簡便に得ることができる。更に、ルテニウムを含む導電性物質を塩基性の電解液中で電気分解して回収したものを、直接還元することによってもルテニウムを製造できる。
本発明に係るルテニウム酸化物の製法は、
(1)塩基性の電解液中で主としてルテニウムを含む導電性物質を陽極として電気分解する工程、
(2)陰極への析出物を回収する工程、
(3)その回収物を加熱処理する工程、
を含むところに特徴があり、こうした製法で得られたルテニウム酸化物を、還元性雰囲気で還元すれば[以下、この還元工程を(4)の工程ということがある]、ルテニウム粉末を得ることができる。
即ち、上記(1)の工程では、電解液として塩基性の液を用い、この液中でルテニウムを含む導電性物質を陽極として電気分解すると、陽極として用いたルテニウムを含む導電性物質は電解酸化されてルテニウムイオンとなり、電解液中に溶出する。このとき電解液に溶出したイオンは、種々の価数や形態をとるため特定できていないが、電解液の色の変化や電位−pH図等からルテニウムの酸化物イオン(RuO4 2-)が主であると考えられ、陽極表面では、下記(a)式に示す酸化反応が起こっていると考えられる。
陽極(アノード):Ru+4OH-→RuO4 2-+2H++4e- …(a)
陽極から溶出したルテニウム酸化物イオン等は、陰極側で還元されて陰極表面に析出し、これを回収する[(2)の工程]。陽極から溶出したものがルテニウム酸化物イオンであれば、陰極表面では下記(b)式に示す還元反応が起こっていると考えられ、陰極への析出物は、主として4価のルテニウム酸化物の2水和物であると考えられる。但し、この析出物をXRDで分析したところブロードな回折結果しか得られなかった。
陰極(カソード):RuO4 2-+4H++2e→RuO2・2H2O …(b)
そして上記(3)の工程では、陰極への析出物を回収し、これを加熱処理することにより水和物として存在する水分を除去し、ルテニウム酸化物(RuO2)を得る。加熱処理によって得られたものは、XRDで分析したところルテニウム酸化物(RuO2)であることが確認できた。
このようにして得られたルテニウム酸化物(RuO2)は、還元性雰囲気で還元すれば、ルテニウム粉末を簡単に得ることができる[(4)の工程]。以下、本発明の製法について詳細に説明する。
まず、ルテニウムを含む導電性物質からルテニウム酸化物を製造する方法について説明する。
(1)塩基性の電解液中で主としてルテニウムを含む導電性物質を陽極として電気分解する工程
電解液としては塩基性の水性液を用いるが、この液のpHは10以上とするのがよい。水性液のpHが10未満では、陽極からの溶出に時間がかかりすぎる。
上記電解液を塩基性に調整するには、水(例えば、純水やイオン交換水等)にアルカリ金属の水酸化物の水酸化物を添加すればよい。アルカリ金属の水酸化物としては、例えばNaOHやKOH等を用いることができる。
水にアルカリ金属の水酸化物を添加して電解液を塩基性に調整するには、NaOHの場合は、NaOH濃度が例えば0.001質量%以上(好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上)となるようにNaOHを添加すればよい。しかしNaOH濃度が15質量%を超えると、陽極から溶出したルテニウム酸化物イオン等が電解液中に懸濁し、陰極には析出し難くなる。従ってNaOH濃度は15質量%以下にするのがよい。KOHの場合は、KOH濃度を例えば0.0002質量%程度以上、25質量%程度以下とするのがよい。
なお、上記アルカリ金属の水酸化物の代わりに、アルカリ土類金属の水酸化物を用いて上記電解液を塩基性に調整してもよい。アルカリ土類金属の水酸化物としては、Mg(OH)2やCa(OH)2、Ba(OH)2等を用いることができる。但し、アルカリ土類金属の水酸化物を用いて塩基性に調整した電解液を用いて電気分解すると、陰極への析出物にアルカリ土類金属が混入する恐れがあるため、析出物からアルカリ土類金属を除去する必要が生じる。従って電解液の調製には、アルカリ土類金属の水酸化物よりもアルカリ金属の水酸化物を用いることが好ましい。
上記電解液には、塩基の他に、電解質を添加してもよい。電解質としては、例えばNaClやNH4Clなどを使用できる。
本発明では、陽極として、主としてルテニウムを含む導電性物質を用いる。「主として」とは、ルテニウムの含有量が90質量%以上であることを意味し、ルテニウムの含有量は多い方がよい。好ましくは95質量%以上であり、より好ましくは99質量%以上である。ルテニウムを含む導電性物質のルテニウム含有量は、例えばグロー放電質量分析(GD−MS)して測定できる。
「導電性」とは、通電して電気分解できる程度であればよい。なお、ルテニウム廃棄物の種類によっては表面がBNやMo、Feなどを含む皮膜で被覆されていることがある。こうした場合は、酸(例えば、王水等)を用いてルテニウム廃棄物を洗浄し、表層を除去すればよい。また必要に応じて、酸洗浄の前に機械研磨などで表層を除去してもよい。
ルテニウムを含む導電性物質としては、産業廃材として回収されるルテニウム廃棄物を用いることができ、例えばスパッタリングに使用した後のルテニウムターゲット材の端材などである。
上記ルテニウムを含む導電性物質の形態は特に限定されず、塊状や細片状など何れであってもよい。ルテニウムを含む導電性物質が塊状の場合は、該ルテニウムを含む導電性物質をそのまま陽極として用い、この陽極と陰極とを電気的に接続して電気分解してもよい。また、ルテニウムを含む導電性物質が塊状や細片状の場合は、例えば電解液が浸透するTi製やNi製、ステンレス製のメッシュ状の容器に装入し、この容器と陰極とを電気的に接続することでルテニウムを含む導電性物質に間接的に通電し、電気分解してもよい。特に、ルテニウムを含む導電性物質が細片状の場合は、該ルテニウムを含む導電性物質を例えばTi製やNi製、ステンレス製の皿に載せ、この皿と陰極とを電気的に接続することでルテニウムを含む導電性物質に間接的に通電し、電気分解してもよい。
陰極の種類は特に限定されず、例えばTi製やステンレス製、Pt製の陰極などを用いることができる。もちろんルテニウム製の陰極を用いてもよい。
電気分解の条件は特に限定されず、電圧は例えば1〜5V程度(好ましくは2〜3V程度)、電解液の温度は室温程度(例えば、20〜30℃程度)とすればよい。なお、電解液は蒸発しない程度に加熱してもよく、加熱することで電気分解が進み易くなり電解時間を短縮できる。また、必要に応じて電解液を撹拌してもよい。
電極間距離も特に限定されないが、電極間距離が小さすぎると、陰極への析出物が陽極まで到達して短絡を起こす場合がある。従って電極間距離は、5cm程度以上とするのが好ましい。
(2)陰極への析出物を回収する工程
陰極への析出物は、ヘラ等で剥がし落として回収すればよい。即ち、陰極への析出物は綿状(ポーラス状)となるため、陰極に密着していないので、容易に剥がし落とすことができる。ポーラス状になる原因は不明であるが、塩基性の電解液中で電気分解すると、陰極に析出する析出物がポーラス状となる。このように析出物がポーラス状になることで、陰極表面と析出物の接点が少なくなり、析出物を容易に剥がし落とすことができる。
(3)回収物を加熱処理する工程
回収物は、洗浄した後、加熱処理する。洗浄には水を用いればよいが、水の代わりに例えば希酸を用いてもよい。希酸を用いて洗浄すれば、電気分解時に析出物に付着する不純物(例えば、FeやNa,Cu,Moなど)も併せて除去でき、高純度化できる。希酸としては、1mol/L程度の希塩酸を用いればよい。
加熱処理は、300℃以上で行えばよい。加熱処理温度が300℃未満では、析出物に付着している水や析出物に含まれる結合水を充分に除去できないため、ハンドリング性が悪くなるため後工程で均一に粉砕できなくなる。好ましい加熱温度は400℃以上であり、より好ましくは500℃以上である。加熱温度を高くするほど短時間で処理できるが、加熱処理時間が1000℃を超えると回収物が雰囲気中の酸素と反応し、RuO4を生成する。RuO4は、融点が25.4℃と低く、しかも毒性や腐食性があり、取り扱いが困難である。従って加熱処理温度は1000℃以下にするのが好ましく、より好ましくは900℃以下、更に好ましくは800℃以下である。
なお、加熱処理時間は特に限定されず、上記加熱処理温度を考慮して析出物に含まれる水和物を除去できる範囲で設定すればよい。
加熱処理時の雰囲気も特に限定されず、大気下で行えばよい。また、例えば不活性ガス雰囲気下(例えばN2ガス、Heガス、Arガスなど)で行ってもよい。特に加熱処理温度を高くする場合は、過度の酸化を防止するために不活性ガス雰囲気下で処理を行うことが推奨される。
次に、ルテニウム酸化物からルテニウム粉末を製造する方法について説明する。
(4)ルテニウム酸化物を、還元性雰囲気で還元する工程
上記ルテニウム酸化物を還元性雰囲気で還元すると、ルテニウム粉末が得られる。還元性雰囲気とは、還元性ガスを含む雰囲気であり、この還元性ガスとしては、例えば水素や一酸化炭素などのガスを用いることができる。雰囲気全体に占める還元性ガスの割合は、例えば3体積%以上とすればよく、残部ガスとしては、不活性ガスを用いればよい。雰囲気全体に占める還元性ガスの割合は、100質量%であってもよい。不活性ガスとしては、例えば窒素やアルゴン、ヘリウムなどのガスを用いることができる。
上記還元は、700℃以上で行えばよい。還元温度が700℃未満では、還元反応が充分進行しないからである。好ましい還元温度は800℃以上であり、より好ましくは900℃以上である。しかし還元温度をより高くしても実質的に還元速度はそれ程変わらず、エネルギーの無駄となるため、還元温度は1000℃以下とするのがよい。
上記ルテニウム酸化物は、還元するに先立って、粉砕することが好ましい。ルテニウムは非常に硬いため粉砕し難いが、ルテニウム酸化物はルテニウムに比べると格段に破砕し易いため、破砕したルテニウム酸化物を還元することにより、還元後に粉砕するよりもルテニウム粉末を簡便に得ることができる。なお、本発明のように電気分解を経て得られるルテニウム粉末はポーラス状になるため、ルテニウムの塊を粉砕するよりも格段に粉砕し易い。
ルテニウム酸化物を粉砕するには、例えば乳鉢や粉砕機などを用いればよい。粉砕機としては、例えば回転ミルを用いればよい。但し、高純度のルテニウム粉末を製造するには、ルテニウム酸化物を粉砕する際に不純物が混入しないようにするのが好ましく、ボールやロッド等の表面を例えばテフロン(登録商標)コーティングした回転ミルを用いて粉砕するのがよい。
ルテニウム酸化物を粉砕するときの粒径はルテニウム粉末の用途に応じて定めればよいが、粉末冶金に用いる場合には、平均粒子径が5〜30μm程度になるようにルテニウム酸化物を粉砕すればよい。また必要に応じてルテニウム酸化物粉末を公知の手段で分級してもよい。
上記では、ルテニウムを含む導電性物質から、ルテニウム酸化物を製造し、このルテニウム酸化物を還元することでルテニウム粉末を製造する方法について説明したが、ルテニウムを含む導電性物質からルテニウム粉末を直接製造することもできる。
即ち、ルテニウムを含む導電性物質からルテニウム粉末を製造するには、塩基性の電解液中で主としてルテニウムを含む導電性物質を陽極として電気分解する工程、陰極への析出物を回収する工程、得られた析出物を還元性雰囲気で還元する工程、を含むように操業すればよい。
電解条件や還元条件は、上記と同じにすればよい。また、上述したように、上記ルテニウムを含む導電性物質としては、産業廃棄物を用いることができる。
還元するに先立って、前記析出物を粉砕することも好ましい。上記析出物は、ルテニウムに比べると格段に破砕し易いため、破砕した析出物を還元することにより、還元後に粉砕するよりもルテニウム粉末を簡便に得ることができるからである。
以下、本発明を実験例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
実験例1
塩基性の電解液中でルテニウムターゲット材の端材(ルテニウム廃棄物)を陽極として用いて電気分解し、陰極への析出物を回収し、加熱処理してルテニウム酸化物を得た。
電解液としては、イオン交換水にNaOHを5質量%添加して塩基性に調製したものを用いた(電解液のpHは10以上)。陽極としては、電解液が浸透するTi製のメッシュ状の容器に、塊状のルテニウム廃棄物を100g投入したものを用いた。ルテニウム廃棄物の含有量は約99質量%であった。陰極としては、Ti製の板を用いた。電気分解の条件は、電圧を3Vとし、電解液の液温は25℃、陽極と陰極の電極間距離は5cmとした。
電気分解では、印加後ただちに陽極の周辺から橙色の液が溶出した。電気分解を開始して15分経過後には、陰極の表面に黒色の析出物が認められた。電気分解を開始してから250時間経過後には、陽極として用いたカゴの中に投入したルテニウム廃棄物の質量は3gに減少していた。
上記析出物と、該析出物が陰極から脱落して陰極の下方に堆積した堆積物を回収し、水洗した。水洗後の回収物を大気圧下で、300℃、2時間加熱処理した。その結果、加熱処理して得られた処理物は、黒色で126gであった。この加熱処理物をX線回折(XRD)で測定したところ、ルテニウム酸化物(RuO2)であることが同定された。従って該ルテニウム酸化物に含まれるルテニウムは96gであるから、ルテニウムの回収率は96%であった。
次に、上記ルテニウム酸化物を3g採取し、これを還元性雰囲気(水素ガスを4体積%含むアルゴンガス)で、1000℃で1時間還元した。その結果、還元して得られた粉末は、灰色であった。還元して得られた粉末を、X線回折(XRD)測定したところ、ルテニウム金属(Ru)であった。得られたルテニウム粉末の含有量をGD−MS分析で測定したところ99.9質量%であった。また得られたルテニウム粉末の平均粒子径は20μmであった。
実験例2
上記実験例1において、陽極として電解液が浸透するTi製のメッシュ状の容器に塊状のルテニウム廃棄物を100g投入したものを用いる代わりに、電解液が浸透するNi製のメッシュ状の容器に塊状のルテニウム廃棄物を100g投入したものを用いた。また、還元するに先立って、上記ルテニウム酸化物をボールミルで粉砕し、粉砕したものを3g採取し、これを還元性雰囲気(水素ガスを4体積%含むアルゴンガス)で、1000℃で1時間還元した。ボールミルは、テフロン(登録商標)コーティングされたものを用いた。その結果、還元して得られた粉末は、灰色であった。還元して得られた粉末を、X線回折(XRD)測定したところ、ルテニウム金属(Ru)であった。得られたルテニウム粉末の含有量をGD−MS分析で測定したところ99.9質量%であった。
実験例3
上記実験例1において、陰極への析出物を、加熱処理せずに、還元性雰囲気で還元した点以外は、上記実験例1と同じ条件でルテニウム粉末を得た。得られたルテニウム粉末の含有量をGD−MS分析で測定したところ99.9質量%であった。
実験例4
上記実験例3において、陰極への析出物を、還元性雰囲気で還元するに先立って、ボールミルで粉砕し、粉砕したものを3g採取し、これを還元性雰囲気(水素ガスを4体積%含むアルゴンガス)で、1000℃で1時間還元した。ボールミルは、テフロン(登録商標)コーティングされたものを用いた。その結果、還元して得られた粉末は、灰色であった。還元して得られた粉末を、X線回折(XRD)測定したところ、ルテニウム金属(Ru)であった。得られたルテニウム粉末の含有量をGD−MS分析で測定したところ99.9質量%であった。
実験例5
上記実験例1において、電解液として1mol/Lの希塩酸を用いる点以外は、上記実験例1と同じ条件で電気分解した。
電気分解した結果、24時間経過しても陽極として用いたルテニウム廃棄物に変化は認められず、Ti製の容器に投入した塊状ルテニウムの質量にも変化はなかった。
そこで24時間経過した時点で、電気分解時の電圧を4Vに上げて更に24時間電気分解した。その結果、水の分解や塩素ガスの発生は認められたが、陽極として用いたルテニウム廃棄物に変化は認められなかった。電気分解を開始してから48時間経過後に、電解液中のルテニウム濃度をICP法で測定したところ、わずかに2mg/Lであった。

Claims (7)

  1. 塩基性の電解液中で主としてルテニウムを含む導電性物質を陽極として電気分解する工程、
    陰極への析出物を回収する工程、
    その回収物を加熱処理する工程、
    を含むことを特徴とするルテニウム酸化物の製法。
  2. 前記加熱処理する工程を300℃以上で行う請求項1に記載の製法。
  3. 請求項1または2に記載の製法で得られたルテニウム酸化物を、還元性雰囲気で還元することを特徴とするルテニウム粉末の製法。
  4. 塩基性の電解液中で主としてルテニウムを含む導電性物質を陽極として電気分解する工程、
    陰極への析出物を回収する工程、
    得られた析出物を還元性雰囲気で還元する工程、
    を含むことを特徴とするルテニウム粉末の製法。
  5. 還元するに先立って、前記ルテニウム酸化物または前記析出物を粉砕する請求項3または4に記載の製法。
  6. 還元を700℃以上で行う請求項3〜5のいずれかに記載の製法。
  7. 前記ルテニウムを含む導電性物質として産業廃棄物を用いる請求項1〜6のいずれかに記載の製法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2014518939A (ja) * 2011-05-04 2014-08-07 ヒ スング メタル リミテッド ルテニウム(Ru)ターゲット製造のためのルテニウム粉末製造方法

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JP2014518939A (ja) * 2011-05-04 2014-08-07 ヒ スング メタル リミテッド ルテニウム(Ru)ターゲット製造のためのルテニウム粉末製造方法

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