JP6939477B2 - 積層体 - Google Patents

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Description

この発明は透明な基材と、これに積層されて電極を形成する金属層とを有する積層体に関し、詳しくはタッチパネルにおけるタッチ操作検出用のセンサ(タッチパネルセンサ)等に好適に使用可能な積層体に関する。
タッチパネルは、液晶パネルで代表される表示装置(ディスプレイ装置)の上面にタッチ操作検出用のセンサ(タッチパネルセンサ)を重ねて、表示と入力の2つの機能を融合した装置である。このタッチパネルでは、操作者が画面上の表示をタッチ操作すると、操作された位置の情報が外部に信号として出力され、そして外部装置が操作位置の位置情報に基づいて操作者が望む適切な動作を行う。
このようなタッチパネルセンサは、例えば使用者が画面タッチした際のタッチ位置を検出するため、X軸方向の電極(以下X側電極とすることがある)とY軸方向の電極(以下Y側電極とすることがある)とを有しており、それらX側電極とY側電極とによって2次元のタッチ位置を特定する。
従来のタッチパネルセンサにおいては、電極として透明なITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)電極が用いられているが、この電極は抵抗値が高く、大型パネルには不向きであるといった問題がある。またITO電極の場合、コストが高いといった問題点も有している。
そこで近年、極細の金属線を格子状に並べて成る金属電極が注目されている。この金属電極にあっては、抵抗値が小さく、高感度であることから大型パネルに適用でき、また消費電力も小さく電池の持ちも良くなる他、コスト的にも安価である等の様々な利点を有している。
しかしながら一方で、この金属線を用いた金属電極の場合、金属線が不透明で金属光沢を有することから、外部からの光がこの金属線に当って反射し、その反射光によって表示部に対する視認性が低下する問題を有している。
この対策として、下記特許文献1には、電極を形成する金属層(第1金属層)の上面または下面に、Cu合金の酸化物で構成された反射低減層(第2金属層)を形成することで、金属層からの反射を低く抑えるようになした積層体が開示されている。Cu合金の酸化物は、光透過性を有するため、外部より金属層に向かって入射する光は、反射低減層の表面で反射するほか、一部の入射光は反射低減層内を通過し、反射低減層と金属層との界面でも反射するため、これら光の干渉により反射光の低減を図ることが可能である。
特開2016−85598号公報
しかしながら、金属層の上面または下面に形成されたCu合金の酸化物からなる反射低減層は、絶縁体に近い電気抵抗を有するため、金属層と他の配線との電気的な接続が反射低減層により阻害されてしまう問題があった。
本発明は以上のような事情を背景とし、電極を形成する金属層からの反射を有効に低減し得て、且つ他の配線との電気的コンタクト性を維持することが可能な積層体を提供することを目的としてなされたものである。
而して請求項1のものは、(a)透明な基材と、(b)純Cu若しくはCu合金からなり、該基材に積層された金属層と、(c)該金属層の前記基材とは反対側の面または該金属層と該基材との間に積層された反射低減層と、を少なくとも有し、
前記反射低減層は、Znを0.1〜10.0at%、B,Mg,Al,Ca,Ti,Crの群から選ばれた少なくとも1種を合計が0.1〜6.0at%となるよう含有し、更にOを20.0〜40.0at%、Nを5.0〜20.0at%含有し、残部がCuおよび不可避的不純物の組成なるCu合金の酸窒化物で構成されていることを特徴とする。
請求項2のものは、請求項1において、前記金属層の前記基材とは反対側の面および該金属層と該基材との間の両方に、該基材を介することなく該金属層を挟むようにして前記反射低減層が積層されていることを特徴とする。
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記金属層は、Znを0.1〜10.0at%、B,Mg,Al,Ca,Ti,Crの群から選ばれた少なくとも1種を合計が0.1〜6.0at%となるように含有し、残部がCuおよび不可避的不純物の組成であることを特徴とする。
以上のように本発明は、透明な基材と、電極形成する金属層とを備えて積層体を構成するに際して、金属層の基材とは反対側の面に(すなわち基材を下側とし金属層を上側としたときに、その金属層の上面に)または金属層と基材との間に、Cu合金の酸窒化物からなる反射低減層を積層形成したものである。
所定の組成範囲内にあるCu合金の酸窒化物は、酸化による光透過性と窒化による電気伝導性との両立を図ることが可能であるため、かかるCu合金の酸窒化物で反射低減層を構成すれば、電極を形成する金属層からの反射を有効に低減し得て、且つ他の配線との電気的コンタクト性を維持することが可能となる。
本発明に従って金属層の上面にCu合金の酸窒化物からなる反射低減層を積層形成した場合には、金属層の側から基材の側に向って入射する光に対する金属層での反射を低く抑えることができる。従って積層体を、タッチパネルセンサに適用した場合において、金属電極により表示部に対する視認性が悪化するのを実質的に防いで、良好な視認性を確保することが可能となる。
一方、金属層と基材との間に反射低減層を積層形成した場合にあっては、基材を上側とし、金属層を下側とする向きに積層体を配置した場合において、基材の側から金属層の側に向って入射する光に対する金属層での反射を低く抑えて良好な視認性を確保することが可能となる。
また、本発明の反射低減層は、金属層よりは電気抵抗が高いものの、他の配線との電気的コンタクト性が維持できる導電性を有しており、本発明によれば、電極形成される金属層と他の配線とを反射低減層を介して電気的に接続することが可能である。
本発明の反射低減層は、Znを0.1〜10.0at%、B,Mg,Al,Ca,Ti,Crの群から選ばれた少なくとも1種を合計が0.1〜6.0at%となるよう含有し、更にOを20.0〜40.0at%、Nを5.0〜20.0at%含有し、残部がCu及び不可避的不純物の組成なるCu合金の酸窒化物で構成されている。
本発明のように反射低減層を、ZnおよびB,Mg,Al,Ca,Ti,Crの群から選ばれた少なくとも1種を含有するCu合金の酸窒化物で構成することで良好な耐食性を確保することができ、Cu系電極に対する信頼性を高めることができる。
さらに良好な耐食性を得るためには、Znを2.0〜6.0at%、B,Mg,Al,Ca,Ti,Crの合計を1.0〜6.0at%となるようそれぞれ含有させることが好ましい。
一方、反射低減の効果は、基本的には反射低減層におけるOの含有量に依存する。Oが少なくなり過ぎると反射低減層における光透過性が失われ、十分な反射低減効果が得られない。また、Oが少ない場合には耐食性も低くなる。一方、Oが多くなり過ぎると、反射低減層の抵抗が高くなり電気的コンタクト性が維持できなくなってしまう。このため本発明では、Oの含有量を20.0〜40.0at%とする。より好ましい範囲は20.0〜30.0at%である。
また、Oの含有量が一定である場合、Nの含有量を増加させることで反射低減層の電気抵抗を低下させ、コンタクト性を向上させることができる。本発明においてNの主な効果は反射低減層の電気抵抗を低下させることであるが、Nを増加させることで反射低減の効果も高めることができる。ただし所定量以上にNを含有させようとするとスパッタリング工程での製造性が悪化するため、Nの含有量は5.0〜20.0at%とする。より好ましい範囲は5.0〜10.0at%である。
本発明では、金属層の基材とは反対側の面および金属層と基材との間の両方に、基材を介することなく金属層を挟むようにして反射低減層を積層形成しておくことができる。
積層体をこのような積層構造としておくことで、金属層が上側となり、基材が下側となる向きで積層体を配置した場合であっても、或いはその逆に基材の側が上側となり、金属層が下側となる向きで積層体を配置した場合であっても、上側から下側に向う外部からの光の入射に対する金属層での反射を低く抑えることができ、金属層が表示部に対する視認性を害するのを実質的に防いで、視認性を高く確保することが可能である。
本発明では、金属層に、導電性の高い純Cu若しくはCu合金が用いられる。ここでCu合金としては、Znを0.1〜10.0at%で含有し、B,Mg,Al,Ca,Ti,Crの群から選ばれた少なくとも1種を合計が0.1〜6.0at%となるように含有し、残部Cuおよび不可避的不純物の組成のものを好適に用いることができる。このような組成のCu合金は、透明の基材との密着性を高くすることができるからである。
以上のような本発明によれば、電極を形成する金属層からの反射を有効に低減することができ、且つ他の配線との電気的コンタクト性を維持することが可能な積層体を提供することができる。
本発明の実施形態の積層体を示した図である。 同積層体の他の形態例を示した図である。 図1(A)の積層体10の製造手順を示す説明図である。 図1(B),図2(C)の積層体20,22の製造手順を示す説明図である。 タッチパネルセンサの要部の積層構造例を示した図である。 (A)は図5の積層体をこれに接続されたフレキシブル配線板とともに示した図である。(B)は積層体とフレキシブル配線板との接合部を模式的に示した図である。 本発明の他の実施形態の積層体を示した図である。
次に本発明の実施形態を以下に詳しく説明する。
図1(A)において、10Aはタッチパネルセンサとして使用する積層体の一例を示している。同図において12は透明な基材で、この基材12の一方の面(図中の上面)に、電極形成する金属層14が基材12全面に亘って膜状に積層されている。そしてこの金属層14の、基材12とは反対側の面、すなわち図中上面に、反射低減層16が積層形成されている。この反射低減層16もまた、金属層14の全面に亘って膜状に積層形成されている。
透明な基材12はソーダライムガラスなどのガラスであっても良く、またポリエチレンテレフタレート(PET),ポリプロピレン(PP),ポリスチレン(PS),ポリ塩化ビニル(PVC),ポリカーボネート(PC),ポリメチルメタクリレート(PMMA),ポリイミド(PI)などの樹脂材料であっても良い。樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。
また基材12の厚みは10μm〜10mmの範囲内とするのが望ましい。より好ましい範囲は100μm〜1mmである。
金属層14は電気比抵抗が8.0μΩ・cm以下の導電性の高いものであるのが良く、そのような材料として純CuまたはCu合金を用いることができる。またCu合金としてはB,Mg,Al,Ca,Ti,Crの群から選ばれた少なくとも1種とZnとを含有したものを好適に用いることができる。
B,Mg,Al,Ca,Ti,Crの群から選ばれた元素(以下M元素とすることがある)をZnとともに含有したCu合金では、所定温度(50〜320℃,好ましくは100〜200℃)で熱処理することでM元素が基材の界面近傍に濃化するとともに、それ単独では濃化し難いZnもまたその界面近傍に濃化し、そして酸素との親和力の高いZnが界面に濃化することによって、Cu合金と透明の基材12との密着性が高くなる。特に基材12としてポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を用いたときにその効果が高い。
そのために基材12と金属層14との間に、別途密着層を介在させるのを省くことが可能となる。なお、密着性を十分に高める上で、上記Cu合金は、Znを0.1〜10.0at%で含有し、またM元素すなわちB,Mg,Al,Ca,Ti,Crの群から選ばれた少なくとも1種を合計で0.1〜6.0at%含有するように合金化することが望ましい。
なお、基材12との間および反射低減層16との間で密着層を省く上で、金属層14は基材12及び反射低減層16に対する密着性が、JIS K5600−5−6で規定される分類0〜3であることが望ましい。なお、厚みに関しては、金属層14は10nm〜1μmの厚みで積層しておくことが望ましい。より好ましくは50nm〜500nmである。
反射低減層16は、Cu合金の酸窒化物で構成され、金属層14の図中上面に積層形成されている。本例では反射低減層16により、金属層14の表面での光の反射率を20%以下に抑えることができる。ここで、反射率20%以下としているのは、反射率20%を境として、それ以下であれば後述する金属の極細線による光反射をほとんど感じなくすることができる。例えば、タッチパネルの表示部に用いられた場合でも良好な視認性を確保できることによる。
反射低減層16は、B,Mg,Al,Ca,Ti,Crの群から選ばれた少なくとも1種とZnとを含有し、残部Cu及び不可避的不純物の組成のCu合金のターゲット材を用い、Ar等の不活性ガスと反応性ガス(酸素および窒素)の混合ガス雰囲気下で反応性スパッタリングにより形成することができる。なお、酸素の導入量はガス全体の10〜40%、窒素の導入量はガス全体の10〜40%の範囲内である。
このようにして得られる本例の反射低減層16は、Cu合金の酸窒化物であり、Znを0.1〜10.0at%、B,Mg,Al,Ca,Ti,Crの群から選ばれた少なくとも1種を合計が0.1〜6.0at%となるよう含有し、更にOを20.0〜40.0at%、Nを5.0〜20.0at%含有する。
なお、透明な基材12又は/及び金属層14との密着性は、JIS K5600−5−6で規定される分類0〜3であることが望ましい。
積層体10Aは、実際にはこれを加工してタッチパネルセンサの要素として用いる。10は、その加工後の積層体を示している。
加工後の積層体10においては、加工前の積層体10Aにおける膜状の金属層14の余分となる部分が除去されて多数の極細線S1のみが金属層14として残されており、それら残された極細線S1が互いに平行をなして縞状パターンの電極14Dを形成している。
反射低減層16もまた余分の部分が除去されて、極細線S1の図中上面を覆う部分のみが極細線S2となって残され、それらが極細線S1の図中上面に入射する光に対する反射を低減する働きをなしている。
なお、この実施形態における図1(A)の積層体10A及び10は、何れも本発明の積層体の概念に含まれるものである。後に説明する図1(B)の積層体20A及び20,図2の積層体22A及び22,24A及び24についても同様である。
反射低減層16(詳しくは極細線S2)は光透過性を有しており、反射低減層16から基材12の側に向けて外部から入射する光は、反射低減層16の表面で反射するほか、一部の入射光は反射低減層16内を通過し、反射低減層16と金属層14(詳しくは極細線S1)との界面でも反射するため、これら光の干渉により、金属層14即ち電極14Dの極細線S1での反射が低減される。
そのため、表示装置の表示に対する視認性が多数の極細線S1からなる電極14Dからの光の反射によって実質的に損なわれることもなく、良好な視認性を確保することができる。なお、積層体10において、極細線S1の線幅は0.5μm〜20μmの範囲内としておくことが望ましい。より好ましくは1μm〜10μm、更に好ましくは1μm〜5μmである。
図3は、積層体10Aを経由して積層体10を製造する手順の工程例を示している。
同図に示しているように積層体10を製造するに当って、先ず図3(I),(II)に示すように透明の基材12の上面に、スパッタリングガスとしてターゲット材とは反応しないガスを用いた非反応性スパッタリングによって金属層14を基材12全面に亘って膜状に積層形成する。
次いで(III)に示すように、金属層14の上面に反射低減層16を、Ar等の不活性ガスと反応性ガス(酸素および窒素)の混合ガス雰囲気下で、反応性スパッタリングによって金属層14全面に亘り膜状に積層形成する。
その後、感光性のあるレジスト18を反射低減層16の上面に全面に亘って膜状に施した後、図3(IV)に示すように露光を行って反射低減層16及び金属層14の非除去部分のみレジスト18を硬化により残存させて他を除去し、その後(V)に示すようにエッチングを行って、金属層14及び反射低減層16のレジスト18にてマスクされていない部分を部分的に除去し、続いて(VI)に示すようにレジスト18を除去することによって、積層体10を得る。
但しこれはあくまで製造方法の一例である。上記の例ではいわゆるウェットエッチング手法を用いているが、これに代えてドライエッチング手法を用いることも可能である。
図1(B)において、20Aは本実施形態における積層体の他の形態例を示している。
積層体20Aでは、金属層14と透明の基材12との間に反射低減層16が積層形成されている。この積層体20Aにおいても、金属層14,反射低減層16は何れもスパッタリングによって膜状に積層形成されている。このうち反射低減層16は、上記と同様に反応性スパッタリングによって形成されている。
20は、積層体20Aを実際のタッチパネルセンサの要素として用いるべく加工を加えた形態のもので、この積層体20においては、金属層14が所要部分を除いて部分的に除去されている。
そして残った部分が多数の金属の極細線S1となって互いに平行に延び、縞状パターンの電極14Dを形成している。同様に、反射低減層16もまた極細線S1の部分を除いて他の余分の部分が除去され、そして残った部分の極細線S2が、金属層14、詳しくは電極14Dの極細線S1の図中下面を覆っている。
図1の積層体20にあっては、タッチパネルセンサに適用するに際して、これを図に示したのとは上下逆向きに配置して用いることができる。このようにすることで、視認側となる図中下側から上向きに入射する光が、電極14Dにて図中下向きに反射されるのを、反射低減層16により抑制することができる。これにより金属製の電極14Dによって表示部に対する視認性が損なわれるのを実質的に防ぐことができる。
積層体20はまた、タッチパネルセンサに適用するに際して、これを図1に示した向きで配置し用いることもできる。このように配置した場合には、図中下方に位置する表示装置の表示部からの上向きの出射光が、電極14Dにて下向きに反射して、その反射光が表示装置側に戻って表示部分に映り込むことにより視認性が損なわれるのを実質的に防ぐことができる。
積層体20A及び20を製造するには、基本的に上記と同様の工程を経てその製造を行うことができる。図4(A)にその工程例が示してある。
図2において、22Aは本実施形態の積層体の更に他の形態例を示している。
この積層体22Aは、図中下側から上に向って透明の基材12,反射低減層16,金属層14,反射低減層16が順に積層されている。
つまりこの例の積層体22Aにおいては、金属層14の基材12とは反対側の図中上面に反射低減層16が積層形成されるとともに、金属層14の下側、つまり金属層14と基材12との間においても、同様の反射低減層16が積層形成されている。
なお、積層体22Aにおいて、金属層14は基材12全面に亘って膜状に積層形成されており、更に反射低減層16もまた、金属層14全面に亘って膜状に積層形成されている。
一方、積層体22においては、金属層14は所要の部分を残して他の余分の部分が除去されており、残った多数の極細線S1が互いに平行をなして縞状パターンの電極14Dを形成しており、同様にこれに対応して反射低減層16もまた、極細線S2が金属層14、詳しくは電極14Dの極細線S1の図中上面と下面とを被覆しており、電極14D(極細線S1)による図中上向き及び下向きの光の反射を低減している。
この例の積層体22にあっては、タッチパネルセンサへの適用に際してこれを表示装置の上面側に図2に示す向きで配置したとき、図中上方の外部からの下向きの入射光、及び下方の表示装置から上向きに出射されて積層体22に入射する光の何れに対しても、電極14Dでの反射を低減させることができる。これにより金属線から成る電極14Dを用いた場合においても、表示部に対する良好な視認性を確保することができる。
尚、図2の積層体22A及び22を製造するに際しても、上記と同様の工程を経てこれらを製造することができる。図4(B)にその工程を具体的に示している。
図2において、24Aは本実施形態の積層体の更に他の形態例を示している。
この例の積層体24Aは、透明の基材12の一面側と他面側との両方に、金属層14−1と14−2とをそれぞれ設けた例である。
積層体24は積層体24Aを加工したもので、この積層体24においては、一方の電極14−1Dを構成する極細線S1に対して、他方の電極14−2Dを構成する極細線S1が直交する方向に延びており、それらが全体として平面視で格子状パターン模様を形成している。即ち、一方の電極14−1DはX軸方向に延びるX側電極として構成され、他方の電極14−2DがY軸方向に延びるY側電極として構成されている。従ってこの積層体24にあっては、単独で操作者による操作の2次元位置を感知し、特定することができる。
また、この積層体24にあっては、図中上から下向きの入射光に対する反射も、また図中下から上向きの入射光に対する反射も良好に低減でき、入射光が多く反射して視認性を害するのを防ぐことができる。
図5はタッチパネルセンサの要部の積層構造例を示している。
積層体28は、図中下側から上向きに、反射低減層16,金属層から成るY側電極14−2D,反射低減層16,透明の基材12,透明の基材12,反射低減層16,X側電極14−1D,反射低減層16を順に積層した構造をしている。この積層体28は、図2の積層体22を、それぞれの基材12において互いに背中合せに、つまり互いの電極14−1D,14−2Dが逆向きとなるように配置して、それらを光学的接着層27で接着することで作製することができる。
この積層体28は、積層体28を上下何れの向きで配置した場合においても、外部からの光或いは表示装置からの光の何れに対しても、その反射を低減させることができ、表示装置の表示部に対する視認性を高く確保することができる。
このように構成された積層体28は、図6(A)に示すように、周縁部においてフレキシブル配線板30と接続され、積層体28の各電極からの信号がフレキシブル配線板30を介して外部に取り出されている。ここで、例えば反射低減層16が、Cu合金の酸化物で構成されている場合には、反射低減層16により、電極を形成する金属層14とフレキシブル配線板30側の配線との電気的な接続が阻害されてしまうため、接合部において反射低減層16を部分的に除去しなければならなかったが、本例によれば、反射低減層16が導電性を有するため、図6(B)に示すように、フレキシブル配線板30側の接続用パッド32と金属層14とを、反射低減層16を介して電気的に接続することが可能である。
次に本発明の他の実施形態について説明する。
図7において、50は、薄膜トランジスタ(以下、「TFT」と称する)として使用する積層体を示している。積層体50は、基材58上に形成されたゲート電極層60と、ゲート電極層60を覆うゲート絶縁層62と、ゲート絶縁層62を介してゲート電極層60と重なるように配置された半導体層64と、半導体層64と接合するソース電極層66およびドレイン電極層68と、を備えている。
基材58は、ソーダライムガラス、無アルカリガラス等のガラス基板のほか、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂基板を使用することができる。基材58の厚みは300μm〜1mmとするのが加工性の点から好ましい。
ゲート電極層60は、純CuまたはCu合金などの低抵抗の金属材料で形成することが望ましい。
ゲート絶縁層62は、単層であっても2層以上であってもよく、従来一般に用いられるもの、例えばシリコン酸化膜(SiOx膜)、シリコン窒化膜(SiNx膜)等を用いることができる。
半導体層64は、In−Ga−Zn系酸化物(IGZOとも表記する)などの酸化物半導体で構成することができる。In−Ga−Zn系酸化物とは、InとGaとZnを主成分として有する酸化物という意味であり、InとGaとZnの比率は問わない。また、InとGaとZn以外の金属元素が入っていてもよい。
なお、半導体層64は、酸化物半導体に限定されるものではなく、例えばアモルファスシリコンを用いることも可能である。
ソース電極層66およびドレイン電極層68は、それぞれ半導体層64に接合されている。詳しくは、ソース電極層66とドレイン電極層68の間には凹部69が設けられ、この凹部69によってソース電極層66とドレイン電極層68とは分離された状態で、それぞれ半導体層64に接合されている。ソース電極層66およびドレイン電極層68は、以下において金属電極層70と総称する場合がある。
ソース電極層66およびドレイン電極層68、すなわち金属電極層70は、純CuまたはCu合金で構成される金属層72と、金属層72の上下の面にそれぞれ設けられた反射低減層74,74と、を含む積層構造をなしている。
各反射低減層74は、金属層72表面での光の反射率を20%以下に抑える目的でCu合金の酸窒化物で形成されており、Znを0.1〜10.0at%、B,Mg,Al,Ca,Ti,Crの群から選ばれた少なくとも1種を合計が0.1〜6.0at%となるよう含有し、更にOを20.0〜40.0at%、Nを5.0〜20.0at%含有する。
反射低減層74は、B,Mg,Al,Ca,Ti,Crの群から選ばれた少なくとも1種とZnとを含有し、残部Cu及び不可避的不純物の組成のCu合金のターゲット材を用い、Ar等の不活性ガスと反応性ガス(酸素および窒素)の混合ガス雰囲気下で反応性スパッタリングにより形成することができる。
層間絶縁層54は、ソース電極層66およびドレイン電極層68を覆うように配置され、ソース電極層66とドレイン電極層68との間の凹部69において、半導体層24のチャネル領域と接するように配置されている。層間絶縁層54は、ゲート絶縁層62と同様に、シリコン酸化膜(SiOx膜)、シリコン窒化膜(SiNx膜)等を用いることができる。
酸化物導電層56は、ITO、ZnO、SnO2、IZOなどで構成され、層間絶縁層54上に配置される。本例において積層体50が液晶表示装置の一部として機能するものであれば、酸化物導電層56は図示を省略した液晶表示部における画素電極を構成する。酸化物導電層56は、層間絶縁層54に形成された接続孔76を介してドレイン電極層68と電気的に接続されており、TFTがON・OFFすることで、酸化物導電層56への電圧印加の開始・終了が行われる。
このように構成された積層体50においては、ソース電極層66およびドレイン電極層68が金属層72と、これを挟むようにして積層形成された反射低減層74,74とで構成されているため、積層体50を上下何れの向きで配置した場合においても、外部からの光に対する金属層72での反射を抑えることができる。
またこのように構成された積層体50では、ソース電極層66およびドレイン電極層68と半導体層64との接合部80,81、ドレイン電極層68と酸化物導電層56との接合部82、において、電気的コンタクト性が維持されることが必要となる。ここで、反射低減層74がCu合金の酸化物であった場合には、ソース電極層66およびドレイン電極層68を構成する金属層72と、半導体層64もしくは酸化物導電層56との電気的な接続は阻害されてしまうが、本例によれば反射低減層74が導電性を有するため、反射低減層74を介して、他の配線(ここでは半導体層64もしくは酸化物導電層56)を金属層72に電気的に接続することが可能である。
次に本発明の実施例を以下に詳しく説明する。
表1に示す各種組成、各種積層構造の積層体を以下のようにして製造し、反射率,視認性,耐食性およびコンタクト性を以下の方法で測定し、評価を行った。
Figure 0006939477
(各種積層体の製造)
φ150mm×45mmのサイズの、各種組成の金属のインゴットから切り出して、φ100mm×5mmのサイズのスパッタリングターゲットを作製した。
金属層(ここでは金属膜)を積層形成すべき透明の基材としては50mm×50mm×2mmのシート状のPETを用い(ソーダライムガラスその他を用いても良い)、スパッタリングを行って基材上に各種の金属層を積層形成した。
金属膜(金属層)を形成するための非反応性スパッタリングは真空度を5×10-4Paとし、チャンバ内にArガス(不活性ガス)を導入して行った。スパッタ圧は0.1〜1.0Pa,電力は100〜500Wとして行った。
反射低減膜(反射低減層)を形成するための反応性スパッタリングは真空度を5×10-4Paとし、チャンバ内に必要に応じて酸素ガス及び/又は窒素ガスを適宜導入して行った。スパッタ圧は0.1〜1.0Pa,電力は100〜500Wとして行った。
1)反射低減膜/金属膜/基材の積層体の作製
スパッタリングにより透明な基材上に、厚さ300nmでCu合金から成る金属膜(金属層)を作製した後、金属膜上に厚さ30nmで種々の反射低減膜(反射低減層)を作製した。これにより、透明基材上に金属膜と、反射低減膜とがその順に積層した構造の、反射低減膜/金属膜/基材の積層体を得た。
2)反射低減膜/金属膜/反射低減膜/基材の積層体の作製
スパッタリングにより透明な基材上に、厚さ30nmで反射低減膜を作製した後、更にその上に厚さ300nmで金属膜を作製し、更にその上に厚さ30nmで反射低減膜を作製した。これにより、PETシートから成る透明の基材と、その上に積層形成された反射低減膜と、更にその上に積層形成された金属膜と、更にその上に積層形成された反射低減膜とを有する、反射低減膜/金属膜/反射低減膜/基材の積層構造の積層体を得た。
(反射率の測定および視認性の評価)
反射率の測定はJIS K 7105に準拠して行った。詳しくは紫外可視分光光度計を用いて可視光の波長範囲(400〜800nm)で行い、波長1nm毎の反射率を測定して(反射率の合計)/(可視光の波長範囲)×100の値を反射率とした。反射率の測定は、基材側から金属膜の側を見たときの反射率、即ち基材側から金属膜に向って光が入射したときの反射光の測定と、金属膜の側から基材側を見たときの反射光の測定、即ち金属膜の側から基材側に光が入射したときの反射光の測定との両方の測定を行った。
視認性については、反射率が20%以下であった場合を○、反射率が20%超であった場合を×、として評価した。その結果を表1に示す。
(耐食性評価)
作製した各積層体を85℃×85%RH(相対湿度)の大気雰囲気環境下にて500時間保持し、保持後の積層体での変色の有無等について、JIS C 60068に準拠して下記評価基準にて評価した。その結果を表1に示す。
○:上記環境条件で保持後、試料に変色及び膜はがれが無い
×:上記環境条件で保持後、試料に変色または膜はがれが認められる
(コンタクト性評価)
コンタクト性の評価においては、基材上に表1に示す組成の反射低減膜のみを成膜した積層体を作製し、反射低減膜の電気抵抗を4探針法により膜の5箇所で測定し、その平均値より電気比抵抗(μΩ・cm)を算出し、下記評価基準にて評価した。その結果を表1に示す。
○:電気比抵抗値が2.0×104μΩ・cm以下
×:電気比抵抗値が2.0×104μΩ・cm超
表1の結果において、比較例1は、金属膜の上面、つまり基材とは反対側の面に、Cu合金の酸窒化物からなる反射低減膜が積層形成された例であるが、Oの含有量が本発明の下限値20.0at%を下回っている。この比較例1では、金属膜側での反射率が20%を超えて高くなっており、金属膜側での視認性の評価が×であった。Cu合金の酸窒化物からなる反射低減膜を設けた場合であっても、Oの含有量が少ない場合には光透過性が低下し、十分な反射率低減効果が得られないことが分かる。また比較例1では、耐食性も目標を満足していなかった。
比較例2は、金属膜の上面に積層形成された反射低減膜をCu合金の酸化物とした例である。また、反射低減膜におけるOの含有量は、本発明の上限値40.0at%を上回っている。この比較例2では、視認性(反射率)は目標を満たすも、反射低減膜における電気比抵抗値が高く、コンタクト性の評価は×であった。反射低減膜におけるOの含有量を高めることは、反射率の低減および耐食性の向上に有効であるが、Oの含有量が多くなると反射低減膜自体は絶縁体に近くなりコンタクト性の悪化に繋がることが分かる。
比較例3は、比較例2と同様に、反射低減膜をCu合金の酸化物で形成した例であり、Nは含まれていない。この比較例3は、Oの含有量が20at%と低くなっているため、比較例2とは逆に、コンタクト性の評価は○であったが、視認性の評価が×であった、Cu合金の酸化物で反射低減膜を構成した場合、視認性(反射率)とコンタクト性との両立を図ることが困難であることが分かる。
比較例4は、反射低減膜をCu合金の窒化物で形成して例であり、Oは含まれていない。このような窒化物を用いた場合、コンタクト性は良好であったが、酸化物の場合のような光透過性は得られず視認性は×であった。
比較例5および比較例6は、反射低減膜がZnおよびB,Mg,Al,Ca,Ti,Cr等のM元素を含有していない例である。視認性およびコンタクト性の結果は共に○であったが、耐食性の結果が×であった。このことから単なるCuの炭窒化物からなる反射低減膜では、Cuを主元素とする金属膜(金属層)の腐食を十分に防止することができないことが分かる。
これに対し、本発明の組成からなる反射低減膜を備えた実施例1〜14については、視認性、耐食性およびコンタクト性、いずれも良好な結果が得られている。
実施例3,6,9,12〜14で示すように、反射低減膜を酸窒化物で構成した場合には、(酸化物で構成された比較例3の場合と異なり)Oの含有量が20at%であっても良好な視認性を得ることができる。
また、反射低減膜を、金属膜の上面(基材とは反対側の面)及び金属膜と基材との間の両方とに積層形成した実施例13,14にあっては、基材側での反射率と、金属膜側での反射率が何れも20%以下で、両方向において良好な視認性が得られている。
以上本発明の実施形態及び実施例について詳しく説明したが、これはあくまで一例示であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた態様で実施可能である。
10,10A,20,20A,22,22A,24,24A,28,50 積層体
12,58 基材
14,14−1,14−2,72 金属層
14D,14−1D,14−2D 電極
16,74 反射低減層

Claims (3)

  1. (a)透明な基材と、
    (b)純Cu若しくはCu合金からなり、該基材に積層されて電極を形成する金属層と、
    (c)該金属層の前記基材とは反対側の面、または該金属層と該基材との間に積層された反射低減層と、を少なくとも有し、
    該反射低減層は、Znを0.1〜10.0at%、B,Mg,Al,Ca,Ti,Crの群から選ばれた少なくとも1種を合計が0.1〜6.0at%となるよう含有し、更にOを20.0〜40.0at%、Nを5.0〜20.0at%含有し、残部がCuおよび不可避的不純物の組成なるCu合金の酸窒化物で構成されていることを特徴とする積層体。
  2. 請求項1において、前記金属層の前記基材とは反対側の面および該金属層と該基材との間の両方に、該基材を介することなく該金属層を挟むようにして前記反射低減層が積層されていることを特徴とする積層体。
  3. 請求項1,2の何れかにおいて、前記金属層は、Znを0.1〜10.0at%で含有し、B,Mg,Al,Ca,Ti,Crの群から選ばれた少なくとも1種を合計が0.1〜6.0at%となるように含有し、残部がCuおよび不可避的不純物の組成であることを特徴とする積層体。
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