JP2018180098A - 積層体 - Google Patents

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和希 南
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和馬 榎本
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Abstract

【課題】透明な基材と、基材に積層されて電極形成する金属層とを有し、低抵抗な電極が形成可能で且つ高温環境下においても外部からの光の反射を低減する効果が良好に維持される積層体を提供する。【解決手段】(a)透明な基材12と、(b)基材12に積層されて電極形成する金属層14と、(c)金属層14の基材12とは反対側の面に設けられた第1の保護層15a、及び/又は、金属層14の基材12の側の面に設けられた第2の保護層15bと、(d)第1の保護層15aの金属層14とは反対側の面に設けられた第1の光反射低減層16a、及び/又は、基材12と第2の保護層15bとの間に設けられた第2の光反射低減層16bと、を備えて積層体10A,20Aを構成する。ここで保護層15a,15bはNiCuTi合金又はNiCuCr合金から成り、光反射低減層16a,16bはNiCu合金酸化物,NiCuTi合金酸化物又はNiCuCr合金酸化物から成っている。【選択図】 図1

Description

この発明は透明な基材と、これに積層されて電極形成する金属層とを有する積層体に関し、詳しくはタッチパネルにおけるタッチ操作検出用のセンサ(タッチパネルセンサ)に好適に使用可能な積層体に関する。
タッチパネルは、液晶パネルで代表される表示装置(ディスプレイ装置)の上面にタッチ操作検出用のセンサ(タッチパネルセンサ)を重ねて、表示と入力の2つの機能を融合した装置である。このタッチパネルでは、操作者が画面上の表示をタッチ操作すると、操作された位置の情報が外部に信号として出力され、そして外部装置が操作位置の位置情報に基づいて操作者が望む適切な動作を行う。
タッチパネルは、操作が直感的に理解し易くて扱い易く、またキーボードレスで入力装置と表示装置とを一体化でき、小型化できる等の利点から、銀行のATMや駅の切符販売機,図書館の情報端末,コピー機,カーナビ,携帯電話,携帯情報端末,携帯ゲーム機,ファックス等に広く用いられている。
タッチパネルにおけるタッチ操作の検出方式には抵抗膜方式,静電容量方式等があり、また静電容量方式にも表面型静電容量方式,投影型静電容量方式があるなど様々であるが、マルチタッチやジェスチャー操作が可能な投影型静電容量方式が携帯電話やタブレットPC等に広く用いられている。
この投影型静電容量式のタッチパネルセンサにあっては、使用者が画面タッチすると電極と電極との間の静電容量の変化を検知してタッチ位置を検出する。ここでタッチパネルセンサは、X軸方向の電極(以下X側電極とすることがある)とY軸方向の電極(以下Y側電極とすることがある)とを有しており、X側電極でX方向の位置を、Y側電極でこれと直交するY方向の位置を検出する。そしてそれらX側電極とY側電極とによって2次元のタッチ位置を特定する。
従来のタッチパネルセンサにおいては、電極として透明なITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)電極が用いられているが、この電極は抵抗値が高く、消費電力が大きいため大型パネルには不向きであるといった問題がある。またITO電極の場合、コストが高いといった問題点も有している。
そこで近年、極細の金属線を格子状に並べて成る金属電極が注目されている。この金属電極にあっては、抵抗値が小さく、高感度であることから大型パネルに適用でき、また消費電力も小さく電池の持ちも良くなる他、コスト的にも安価である等の様々な利点を有している。
しかしながら一方で、この金属線を用いた金属電極の場合、金属線が不透明で金属光沢を有することから、外部からの光がこの金属線に当って反射し、その反射光によって表示部に対する視認性が低下する問題を有している。
本発明者らは、下記特許文献1で示すように、金属電極となる金属層をCu合金で形成するとともに、金属層の表面に反射低減膜としての金属酸化膜を形成した積層体を提案した。このように構成された積層体にあっては、低抵抗の電極が形成され、また金属層からの光の反射を抑制し視認性を確保することが可能である。しかしながら、高温環境下において金属電極からのCu原子の拡散が生じ、かかるCuが積層体の表面で酸化物を生成する場合があり、反射低減膜として機能する金属酸化膜の膜厚変化による反射低減効果の低下が懸念されることから、更なる改善の余地があった。
尚、下記特許文献2には「Cu電極保護膜用NiCu合金ターゲット材」についての発明が示され、Cu電極の表面上にNiCu合金の保護膜を形成するようになした点が開示されている。しかしながら特許文献2に記載のものは、金属電極における光の反射を抑制するための具体的な手段を備えておらず、また特許文献2に記載のものは、保護膜(NiCu合金)にTi若しくはCrが含有されておらず本発明とはその組成が異なっている。
一方、下記特許文献3には「積層配線膜」についての発明が示され、そこにおいて、透明基材上にNi合金からなる反射低減膜(中間膜)を形成し、その直上に低抵抗の導電性金属膜を積層して成る構成とし、透明基板側から測定した可視光反射率を20%以下とした点が開示されている。しかしながら、特許文献3に記載のものは、導電性金属膜と反射低減膜との間に別組成の保護膜を備えておらず本発明とは異なっている。
特開2016−190405号公報 特開2011−52304号公報 特開2015−79941号公報
本発明は以上のような事情を背景とし、透明な基材と、基材に積層されて電極形成する金属層とを有し、低抵抗な電極が形成可能で且つ高温環境下においても外部からの光の反射を低減する効果が良好に維持される積層体を提供することを目的としてなされたものである。
而して請求項1のものは、(a)透明な基材と、(b)該基材に積層されて電極形成する金属層と、(c)前記金属層の前記基材とは反対側の面に設けられた第1の保護層、及び/又は、前記金属層の前記基材の側の面に設けられた第2の保護層と、(d)前記第1の保護層の前記金属層とは反対側の面に設けられた第1の光反射低減層、及び/又は、前記基材と前記第2の保護層との間に設けられた第2の光反射低減層と、を備え、
前記金属層は、Cu又はCu含有量が90at%以上であるCu合金から成り、
前記第1の保護層は、Nia1Cub1Tic1合金又はNia2Cub2Crc2合金から成り、
前記第2の保護層は、Nia3Cub3Tic3合金又はNia4Cub4Crc4合金から成り、
前記第1の光反射低減層は、Nid1Cue1合金酸化物,Nif1Cug1Tih1合金酸化物又はNii1Cuj1Crk1合金酸化物から成り、
前記第2の光反射低減層は、Nid2Cue2合金酸化物,Nif2Cug2Tih2合金酸化物又はNii2Cuj2Crk2合金酸化物から成り、
前記第1の光反射低減層の側から前記金属層に向かう入射光に対する第1の反射率、又は、前記第2の光反射低減層の側から前記金属層に向かう入射光に対する第2の反射率が20%以下であることを特徴とする積層体。
ここで、添字a1〜k2はそれぞれの元素の含有量(at%)を示し、
25≦a1≦69、30≦b1≦70、1≦c1≦5、
25≦a2≦69、30≦b2≦70、1≦c2≦5、
25≦a3≦69、30≦b3≦70、1≦c3≦5、
25≦a4≦69、30≦b4≦70、1≦c4≦5、
30≦d1≦70、30≦e1≦70、25≦f1≦69、30≦g1≦70、0<h1≦5、25≦i1≦69、30≦j1≦70、0<k1≦5、
30≦d2≦70、30≦e2≦70、25≦f2≦69、30≦g2≦70、0<h2≦5、25≦i2≦69、30≦j2≦70、0<k2≦5、である。
尚、第1の光反射低減層及び第2の光反射低減層を構成する元素に対応する添字d1〜k2は、酸素を除いた含有量を示している。
請求項2のものは、請求項1において、前記第1の保護層及び前記第2の保護層の厚みが、10〜200nmであることを特徴とする。
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記第1の光反射低減層がNif1Cug1Tih1合金酸化物から成り、前記第2の光反射低減層がNif2Cug2Tih2合金酸化物から成ることを特徴とする。
ここで、添字f1〜h2はそれぞれの元素の含有量(at%)を示し、
25≦f1≦69、30≦g1≦70、0<h1≦5、25≦f2≦69、30≦g2≦70、0<h2≦5、である。
請求項4のものは、請求項1〜3の何れかにおいて、前記金属層が、CulZnmn合金から成ることを特徴とする。
ここで、Xは、Mg,Cr,Ca,Ti,Al,Sn,Ni及びBの群から選択された1種又は2種以上の元素であり、添字l,m,nはそれぞれの元素の含有量(at%)を示し、90≦l≦99.8、0.1≦m≦10、0.1≦n≦6、である。
本発明は、透明な基材と、電極形成する金属層とを備えて積層体を構成するに際して、金属層の基材とは反対側(即ち、基材を下側とし金属層を上側としたときの金属層の上側)、及び/又は、金属層と基材との間に、NiCu合金酸化物,NiCuTi合金酸化物又はNiCuCr合金酸化物から成る光反射低減層を設け、金属層に向かう入射光に対する反射率を20%以下としたものである。
所定の組成範囲内にあるNiCu合金酸化物,NiCuTi合金酸化物又はNiCuCr合金酸化物から成る光反射低減層は、半透明の膜となるため、外部より金属層に向かって入射する光の一部は光反射低減層の表面で反射する一方、残りの光は光反射低減層内を通過し、後述する保護層の表面(詳しくは光反射低減層と保護層との界面)で反射する。このようにして本発明では外部からの入射光に対して2つの反射光を発生させる。この2つの反射光の間には、光反射低減層の厚みに基づく位相差が生じており、本発明では保護層の表面からの反射光と、光反射低減層の表面からの反射光とを干渉させることで、外部からの光の入射に対する反射を低く抑えることができる。
本発明に従って金属層の上面に光反射低減層(第1の光反射低減層)を積層形成した場合には、金属層の側から基材の側に向って入射する光の、金属層(詳しくは保護層)からの反射光を低く抑えることができる。従って積層体をタッチパネルセンサに適用した場合において、金属電極により表示部に対する視認性が悪化するのを実質的に防いで、良好な視認性を確保することが可能となる。
一方、金属層と基材との間に第2の光反射低減層を積層形成した場合にあっては、基材を上側とし、金属層を下側とする向きに積層体を配置した場合において、基材の側から金属層の側に向って外部からの光が入射した場合、金属層(詳しくは保護層)による光の反射を抑制して良好な視認性を確保することが可能となる。
積層体の積層構造をこのような構造としておくことで、かかる積層体を用いてタッチパネルセンサを構成する際、金属層が上側となり、基材が下側となる向きで積層体を配置した場合であっても、或いはその逆に基材の側が上側となり、金属層が下側となる向きで積層体を配置した場合であっても、上側から下側に向う外部からの光の入射に対する反射を低く抑えることができ、電極形成する金属層が表示部に対する視認性を害するのを実質的に防いで、視認性を高く確保することが可能である。
本発明では、金属層の基材とは反対側の面、及び/又は、金属層の基材の側の面に、NiCuTi合金又はNiCuCr合金から成る保護層を設けたことを1つの特徴としている。
所定の組成範囲内にあるNiCuTi合金又はNiCuCr合金から成る保護層は、金属層に密着して高温環境下における金属層からのCu原子の拡散を防止するバリア効果を有することから、高温環境下でCu酸化膜が生成されて光反射低減膜として機能する酸化膜の膜厚が変動(増加)してしまうのを防止して、反射低減の効果を維持することができる。
また、所定の組成範囲内にあるNiCuTi合金又はNiCuCr合金から成る保護層は、金属膜と良好に密着して金属層を構成するCu又はCu合金の酸化・変色等を防止することができる。
次に、本発明の積層体にて形成される各層における化学成分の限定理由を以下に説明する。尚、本発明における金属層、保護層及び光反射低減層には不可避的不純物が含まれ得る。
[金属層]
金属層は、Cu又はCu含有量が90at%以上であるCu合金から成る。Cu合金において、Cuの含有量を90at%以上とするのは、従来金属配線材料として用いられていたAlよりも電気抵抗を低くするためである。本発明の金属層は、Cu又はCu含有量が90at%以上のCu合金であれば特に限定されるものではないが、密着性を十分に高める上で、上記Cu合金は、Cuを90〜99.8at%、Znを0.1〜10at%で含有し、更にMg,Cr,Ca,Ti,Al,Sn,Ni及びBの群から選ばれた1種又は2種以上のX元素を合計で0.1〜6at%含有するように合金化することが望ましい。
[保護層]
金属層に接して形成される保護層は、NiCuTi合金又はNiCuCr合金から成る。
保護層をNiCuTi合金で形成した場合、Niを25〜69at%含有させる。Ni含有量をこのような範囲とすることで後述する所定の耐食性を得ることができる。また、Cuは30〜70at%含有させる。Cu含有量をこのような範囲とすることで高温環境下においてCu原子の拡散を防止する拡散バリア性を発揮させることができる。また、Tiは1〜5at%含有させる。Ti含有量をこのような範囲とすることで金属層との密着性を向上させることができる。
保護層をNiCuCr合金で形成した場合、Niを25〜69at%含有させる。Ni含有量をこのような範囲とすることで後述する所定の耐食性を得ることができる。また、Cuは30〜70at%含有させる。Cu含有量をこのような範囲とすることで高温環境下においてCu原子の拡散を防止する拡散バリア性を発揮させることができる。また、Crは1〜5at%含有させる。Cr含有量をこのような範囲とすることで金属層との密着性を向上させることができる。
尚、金属層の面を確実に被覆して十分な耐食性及び拡散バリア性を得るためには、保護層の厚みは10〜200nmとすることが好ましい。
[光反射低減層]
光反射低減層は、NiCu合金酸化物,NiCuTi合金酸化物又はNiCuCr合金酸化物から成る。
光反射低減層をNiCu合金酸化物で形成した場合、Niを30〜70at%含有させる。Ni含有量をこのような範囲とすることで優れた耐食性を得ることができる。本発明者らが耐食性について評価したところ、耐食性の効果はNiCu酸化物>Cu酸化物>Ni酸化物であった。その理由は明らかではないが所定量のNiと所定量のCuを含む合金(固溶体)の酸化物となることで優れた耐食性が得られるものを推測される。
Cuは30〜70at%含有させる。Cu含有量をこのような範囲とすることで上記耐食性の効果に加えて所定の反射率低減効果を得ることができる。尚、NiCu合金酸化物におけるNi及びCuの含有量は酸素を除いて示したものである。
光反射低減層をNiCuTi合金酸化物で形成した場合、Niを25〜69at%含有させ、Cuは30〜70at%含有させる。Ni及びCu含有量をこのような範囲とすることで上述のように優れた耐食性及び反射率低減効果を得ることができる。
また、Tiは0超〜5at%含有させる。Ti含有量をこのような範囲とすることで、特に保護層との密着性を向上させることができる。より好ましい下限は1.0at%である。尚、NiCuTi合金酸化物におけるNi、Cu、Tiの各含有量は酸素を除いて示したものである。
光反射低減層をNiCuCr合金酸化物で形成した場合、Niを25〜69at%含有させ、Cuは30〜70at%含有させる。Ni及びCu含有量をこのような範囲とすることで上述のように優れた耐食性及び反射率低減効果を得ることができる。
また、Crは0超〜5at%含有させる。Cr含有量をこのような範囲とすることで、特に保護層との密着性を向上させることができる。より好ましい下限は1.0at%である。尚、NiCuCr合金酸化物におけるNi、Cu、Crの各含有量は酸素を除いて示したものである。
以上のような本発明によれば、透明な基材と、基材に積層されて電極形成する金属層とを有し、低抵抗な電極が形成可能で且つ高温環境下においても外部からの光の反射を低減する効果が良好に維持される積層体を提供することができる。
本発明の実施形態の積層体を示した図である。 同積層体の他の形態例を示した図である。 図1(A)の積層体10の製造手順を示す説明図である。 図1(B),図2(C)の積層体20,22の製造手順を示す説明図である。 タッチパネルセンサの要部の積層構造例を示した図である。 図5とは異なる積層構造例を示した図である。
次に本発明の実施形態を以下に詳しく説明する。
図1(A)において、10Aは本発明の積層体の一例を示している。同図において12は透明な基材で、この基材12の一方の面(図中の上面)に、電極形成する金属層14が基材12全面に亘って膜状に積層されている。そしてこの金属層14の、基材12とは反対側の面即ち図中上面に、保護層15aが積層形成され、更に保護層15aの上面に金属層14における反射を抑制するための光反射低減層16aが積層形成されている。この光反射低減層16aもまた、保護層15aの全面に亘って膜状に積層形成されている。この例における保護層15a及び光反射低減層16aは、本発明における第1の保護層及び第1の光反射低減層に相当する。
透明な基材12はソーダライムガラスなどのガラスであっても良く、またポリエチレンテレフタレート(PET),ポリプロピレン(PP),ポリスチレン(PS),ポリ塩化ビニル(PVC),ポリカーボネート(PC),ポリメチルメタクリレート(PMMA),ポリイミド(PI)などの樹脂材料であっても良い。樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。また、基材12の厚みは10μm〜10mmの範囲内とするのが望ましい。より好ましい範囲は100μm〜1mmである。
電極形成する金属層14は、スパッタリングによって基材12の上面に積層形成されている。金属層14は電気比抵抗が8.0μΩ・cm以下の導電性の高いものであるのが良く、本例ではそのような材料として、Cu又はCu含有量が90at%以上であるCu合金を用いる。特にCu合金としては、Znを含有し、更にMg,Cr,Ca,Ti,Al,Sn,Ni及びBの群から選択された1種又は2種以上の元素を含有し、残部Cu及び不可避的不純物の組成のものを好適に用いることができる。
Mg,Cr,Ca,Ti,Al,Sn,Ni及びBの群から選ばれた元素(以下X元素とすることがある)をZnとともに含有したCu合金では、所定温度(50〜320℃,好ましくは100〜200℃)で熱処理することでX元素が基材の界面近傍に濃化するとともに、それ単独では濃化し難いZnもまたその界面近傍に濃化し、そして酸素との親和力の高いZnが界面に濃化することによって、Cu合金と透明の基材12との密着性が高くなる。特に基材12としてポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を用いたときにその効果が高い。
密着性を十分に高める上で、上記Cu合金は、Znを0.1〜10at%で含有し、またMg,Cr,Ca,Ti,Al,Sn,Ni及びBの群から選ばれたX元素を合計で0.1〜6at%含有するように合金化することが望ましい。
尚、金属層14は10nm〜1μmの厚みで積層しておくことが望ましい。より好ましくは50nm〜500nmである。
保護層15aもまた、スパッタリングによって金属層14の図中上面に積層形成されている。ここで保護層15aは所定組成のNiCuTi合金若しくはNiCuCr合金から成るターゲット材料を用い、スパッタリングガスとしてターゲット材料とは非反応性のガスを用いた非反応性スパッタリングによって形成されている。尚、保護層15aは10nm〜200nmの厚みで積層しておくことが望ましい。
光反射低減層16aもまた、スパッタリングによって金属層14の図中上面に、詳しくは保護層15aの上面に積層形成されている。光反射低減層16aは、NiCu合金,NiCuTi合金又はNiCuCr合金から成るターゲット材料を用いた反応性スパッタリングによりNiCu合金酸化物,NiCuTi合金酸化物又はNiCuCr合金酸化物が形成されている。NiCu合金酸化物,NiCuTi合金酸化物又はNiCuCr合金酸化物からなる光反射低減層16aは半透明の膜であり、可視光領域の光が光反射低減層16aの内部を透過することができる。
このため外部から金属層14に向かって入射する光は、光反射低減層16aの表面でその一部が反射する一方、残りの光は光反射低減層16a内を通過し保護層15aの表面(光反射低減層16aと保護層15aとの界面)で反射する。
そして本実施形態では、外部からの光の入射に対して発生した2つの反射光、即ち保護層15aの表面からの反射光と光反射低減層16aの表面からの反射光とを相互に干渉させることで、外部からの光の入射に対する反射光の反射率を20%以下に抑えることができる。
ここで反射率20%以下としているのは、反射率20%を境として、それ以下であれば後述する金属の極細線による光反射をほとんど感じなくすることができ、タッチパネルの表示部に対する良好な視認性を確保できることによる。
尚、保護膜15aがNiCuTi合金で、光反射低減層16aがNiCuTi合金酸化物の場合には、共通のNiCuTi合金から成るターゲット材を用いて、スパッタリング装置のチャンバ内のガス交換を行なうだけで保護層15aに続いて光反射低減膜16aを形成することが可能である。
積層体10Aは、実際にはこれを加工してタッチパネルセンサの要素として用いる。
10は、その加工後の積層体を示している。加工後の積層体10においては、加工前の積層体10Aにおける膜状の金属層14の余分となる部分が除去されて多数の極細線S1のみが金属層14として残されており、それら残された極細線S1が互いに平行をなして縞状パターンの電極14Dを形成している。
保護層15a及び光反射低減層16aもまた余分の部分が除去されて、極細線S1の図中上面を覆う部分のみが極細線S2及びS3となって残され、それらが極細線S1の図中上面に入射する光による極細線S1からの光の反射を抑制する働きをなしている。そのため、表示装置の表示に対する視認性が多数の極細線S1からなる電極14Dからの光の反射によって実質的に損なわれることもなく、良好な視認性を確保することができる。尚、積層体10において、極細線S1の線幅は0.5μm〜20μmの範囲内としておくことが望ましい。より好ましくは1μm〜10μm、更に好ましくは1μm〜5μmである。
尚、この実施形態における図1(A)の積層体10A及び10は、何れも本発明の積層体の概念に含まれるものである。後に説明する図1(B)の積層体20A及び20,図2の積層体22A及び22,24A及び24についても同様である。
図3は、積層体10Aを経由して積層体10を製造する手順の工程例を示している。
同図に示しているように積層体10を製造するに当って、先ず図3(I),(II)に示すように透明の基材12の上面に非反応性スパッタリングによって金属層14及び保護層15aを基材12全面に亘って膜状に積層形成する。
次いで(III)に示すように、保護層15aの上面に光反射低減層16aを反応性スパッタリングによって保護層15a全面に亘り膜状に積層形成する。
その後、感光性のあるレジスト18を光反射低減層16aの上面に全面に亘って膜状に施した後、図3(IV)に示すように露光を行って光反射低減層16a,保護層15a及び金属層14の非除去部分のみレジスト18を硬化により残存させて他を除去し、その後(V)に示すようにエッチングを行って金属層14,保護層15a及び光反射低減層16aのレジスト18にてマスクされていない部分を部分的に除去し、続いて(VI)に示すようにレジスト18を除去することによって、積層体10を得る。
但しこれはあくまで製造方法の一例である。上記の例ではいわゆるウェットエッチング手法を用いているが、これに代えてドライエッチング手法を用いることも可能である。
図1(B)において、20Aは本実施形態における積層体の他の形態例を示している。
積層体20Aでは、金属層14と透明の基材12との間に、保護層15b及び光反射低減層16bが積層形成されている。この例における保護層15b及び光反射低減層16bは、本発明における第2の保護層及び第2の光反射低減層に相当する。
この積層体20Aにおいても、金属層14,保護層15b及び光反射低減層16bは何れもスパッタリングによって膜状に積層形成されている。
20は、積層体20Aを実際のタッチパネルセンサの要素として用いるべく加工を加えた形態のもので、この積層体20においては、金属層14が所要部分を除いて部分的に除去されている。そして残った部分が多数の金属の極細線S1となって互いに平行に延び、縞状パターンの電極14Dを形成している。
同様に保護層15b及び光反射低減層16bもまた極細線S1に対応する部分を除いて他の余分の部分が除去され、そして残った部分の極細線S2,S3が、金属層14、詳しくは電極14Dの極細線S1の図中下面を覆っている。
図1(B)の積層体20にあっては、タッチパネルセンサに適用するに際して、これを図に示したのとは上下逆向きに配置して用いることができる。このようにすることで、視認側となる図中下側から上向きに光が入射する場合、電極14Dにて入射光が図中下向きに反射されるのを、光反射低減層16b、詳しくは細線S3にて、抑制することができる。これにより金属製の電極14Dによって表示部に対する視認性が損なわれるのを実質的に防ぐことができる。
積層体20はまた、タッチパネルセンサに適用するに際して、これを図1(B)に示した向きで配置し、用いることもできる。このように配置した場合には、図中下方に位置する表示装置の表示部からの上向きの出射光が下向きに反射され、その反射光が表示装置側に戻って表示部分に映り込むことにより視認性が損なわれるのを、光反射低減層16bにて実質的に防ぐことができる。
積層体20A及び20を製造するには、基本的に上記と同様の工程を経てその製造を行うことができる。図4(A)にその工程例が示してある。
図2(C)において、22Aは本実施形態の積層体の更に他の形態例を示している。
この積層体22Aは、図中下側から上に向って透明の基材12,光反射低減層16b,保護層15b,金属層14,保護層15a,光反射低減層16aが順に積層されている。
つまりこの例の積層体22Aにおいては、金属層14の基材12とは反対側の図中上面に保護層15aが積層形成されるとともに、金属層14の下側においても、同様の保護層15bが積層形成されている。尚、積層体22Aにおいて、金属層14は基材12全面に亘って膜状に積層形成されており、更に保護層15a,15bもまた、金属層14全面に亘って膜状に積層形成されている。
更に、保護層15aの金属層14とは反対側の面には光反射低減層16aが積層形成されるとともに、基材12と保護層15bとの間には光反射低減層16bが積層成形されている。これら光反射低減層16a,16bもまた、保護層15a,15bの全面に亘って膜状に積層形成されている。
一方積層体22においては、金属層14は所要の部分を残して他の余分の部分が除去されており、残った多数の極細線S1が互いに平行をなして縞状パターンの電極14Dを形成しており、同様にこれに対応して保護層15a,15b,光反射低減層16a,16bも他の余分の部分が除去され、極細線S2,S3が金属層14、詳しくは電極14Dの極細線S1の図中上面と下面とを被覆しており、電極14D(極細線S1)による図中上向き及び下向きの光の反射を抑制している。
この例の積層体22にあっては、タッチパネルセンサへの適用に際してこれを表示装置の上面側に図2に示す向きで配置したとき、図中上方の外部からの下向きの入射光、及び下方の表示装置から上向きに出射されて積層体22に入射する光の何れに対しても、図中上向き及び下向きの反射を抑制することができる。これにより金属線から成る電極14Dを用いた場合においても、表示部に対する良好な視認性を確保することができる。尚、図2(C)の積層体22A及び22を製造するに際しても、上記と同様の工程を経てこれらを製造することができる。図4(B)にその工程を具体的に示している。
図2(D)において、24Aは本実施形態の積層体の更に他の形態例を示している。
この例の積層体24Aは、透明の基材12の一面側と他面側との両方に、金属層14−1と14−2とをそれぞれ設けた例である。積層体24は積層体24Aを加工したもので、この積層体24においては、一方の電極14−1Dを構成する極細線S1に対して、他方の電極14−2Dを構成する極細線S1が直交する方向に延びており、それらが全体として平面視で格子状パターン模様を形成している。即ち、一方の電極14−1DはX軸方向に延びるX側電極として構成され、他方の電極14−2DがY軸方向に延びるY側電極として構成されている。従ってこの積層体24にあっては、単独で操作者による操作の2次元位置を感知し、特定することができる。
またこの積層体24にあっては、図中上から下向きの入射光に対しても、また図中下から上向きの入射光に対しても、入射光が多く反射して視認性を害するのを防ぐことができる。
図5はタッチパネルセンサの要部の積層構造例を示している。
同図(A)の例は、図中下側から上向きに透明の基材12,光反射低減層16b,保護層15b,金属層から成るY側電極14−2D,保護層15a,光反射低減層16a,光反射低減層16a,保護層15a,金属層から成るX側電極14−1D,保護層15b,光反射低減層16b,透明の基材12を積層した構造をしている。
この例の積層体26は、図2に示す積層体22を、電極14−1D,14−2Dが直角をなす状態で互いに向き合うように配置して重ね合せ、それらを光学的接着剤(OCA)27で接着することによって構成することができる。
この積層体26にあっては、電極14−1Dに向って図中上側から下向きに入射する光に対しては、電極14−1Dの図中上面の光反射低減層16bにより、電極14−1Dでの反射を抑えることができる。
また、電極14−1Dに向けて図中下側から上向きに入射する光に対しては、電極14−1Dの図中下面の光反射低減層16aにより、電極14−1Dでの反射を抑えることができる。
一方、電極14−2Dに向けて図中上側から下向きに入射する光に対しては、電極14−2Dの上面の光反射低減層16aにより、電極14−2Dでの上向きの反射を抑えることができる。また、電極14−2Dに向けて図中下側から上向きに入射する光に対しては、電極14−2Dの下面の光反射低減層16bにより、電極14−2Dでの下向きの反射を抑えることができる。
即ち、図中下側の表示装置の上側に積層体26を配置する場合において、その積層体26の上下向きの如何に拘らず、図中上方から下向きに入射する外部の光、及び図中下側から上向きに入射する表示装置からの光の何れに対しても、金属製の電極による反射を効果的に抑制することができ、電極による光の反射により表示部の表示に対する視認性を高く確保することができる。
一方、図5(B)の積層体28は、図中下側から上向きに、光反射低減層16a,保護層15a,金属層から成るY側電極14−2D,保護層15b,光反射低減層16b,透明の基材12,透明の基材12,光反射低減層16b,保護層15b,X側電極14−1D,保護層15a,光反射低減層16aを順に積層した構造のもので、この図5(B)に示す積層体28にあっても、これを図2の積層体22を貼り合せることで構成することができる。
具体的には、積層体22を、それぞれの基材12において互いに背中合せに、つまり互いの電極14−1D,14−2Dが逆向きとなるように配置して、それらを光学的接着剤27で接着することで積層体28を構成することができる。
この積層体28においても、積層体26と同様、積層体28を上下何れの向きで配置した場合においても、外部からの光或いは表示装置からの光の何れに対しても、その反射を抑えることができ、表示装置の表示部に対する視認性を高く確保することができる。
次に(C)の積層体30は、図中下から上向きに基材12,光反射低減層16b,保護層15b,Y側電極14−2D,保護層15a,光反射低減層16a,基材12,光反射低減層16b,保護層15b,X側電極14−1D,保護層15a,光反射低減層16aの順に積層した構造をなしている。
図5(C)に示す積層体30もまた、図2の積層体22を用いて簡単に構成することができる。具体的には、積層体22をそれぞれ同じ向きに、詳しくはそれぞれの電極14−2D,14−1Dが図中上向きとなる状態に同方向に配置して重ね合せ、それらを光学的接着剤27で互いに貼り合せることで、積層体30を構成することができる。
この積層体30においても、光の反射に対して基本的に積層体26,28と同様の効果を奏し得る。
上記図5(A)〜(C)で示した例は、いずれもX側電極14−1D及びY側電極14−2Dのそれぞれ図中上面と下面とに対応する光反射低減層16(16a及び16b)を設けたものであるが、図6(A),(B),(C)で示す積層体32,34,36ようにX側電極14−1DとY側電極14−2Dのそれぞれ上面にのみ光反射低減層16(16a若しくは16b)を設けておくことも可能である。
この場合において積層体32,34は、図1の積層体10と積層体20とを貼り合せて構成することができ、積層体36は、積層体10同士を貼り合せて構成することができる。
以上タッチパネルセンサにおける積層構造の例を幾つか示したが、タッチパネルセンサの積層構造には他にも様々なものがあり、そのような積層構造に対して、本実施形態の積層体はその組合せを変えることで良好に各種の積層構造に対して対応することが可能である。
次に本発明の実施例を以下に詳しく説明する。
(実施例1〜実施例18)
各種積層構造の積層体を以下のようにして製造し、反射率,視認性,密着性,電気比抵抗及び耐食性を以下の方法で測定し、評価を行った。
(各種積層体の製造)
表1は、実施例及び比較例における金属層(ここでは金属膜)、保護層(ここでは保護膜)及び光反射低減層(ここでは光反射低減膜)の化学組成を示している。
金属膜、保護膜及び光反射低減膜を積層形成すべき透明の基材としては50mm×50mm×2mmのシート状のPETを用い(ソーダライムガラスその他を用いても良い)、スパッタリングを行って基材上に各種の金属膜、保護膜及び光反射低減膜を積層形成した。
Figure 2018180098
金属膜は、表1に示す組成に対応するCu合金のスパッタリングターゲットを用い、真空度を5×10-4Paとし、チャンバ内にArガス(不活性ガス)を導入して行った。スパッタ圧は0.1〜1.0Pa,電力は100〜500Wとして行った。
保護膜は、表1に示す各種組成に対応するNiCuTi合金若しくはNiCuCr合金のスパッタリングターゲットを用い、真空度を5×10-4Paとし、チャンバ内にArガス(不活性ガス)を導入して行った。スパッタ圧は0.1〜1.0Pa,電力は100〜500Wとして行った。
光反射低減膜は、NiCu合金,NiCuTi合金又はNiCuCr合金のスパッタリングターゲットを用い、真空度を5×10-4Paとし、チャンバ内にO2ガスを導入して行った。スパッタ圧は0.1〜1.0Pa,電力は100〜500Wとして行った。また、この光反射低減膜は酸化物ターゲットを用いた非反応性スパッタで成膜することも可能である。
1)光反射低減膜/保護膜/金属膜/基材の積層体の作製
スパッタリングにより透明な基材上に、厚さ300nmで、表1で示す組成のCu合金膜を金属膜として作製した後、金属膜上に同じく表1で示す組成の保護膜を作製した。更に保護膜上に同じく表1で示す組成の光反射低減膜を作製した。
これにより、透明基材上に金属膜、保護膜、光反射低減膜がその順に積層された構造の、光反射低減膜/保護膜/金属膜/基材の積層体を得た。
2)光反射低減膜/保護膜/金属膜/保護膜/光反射低減膜/基材の積層体の作製
スパッタリングにより透明な基材上に、光反射低減膜を作製し、その上に保護膜を作製し、更にその上に厚さ300nmで金属膜を作製する。更にその上に保護膜を作製し、その上に光反射低減膜を作製した。
これにより、PETシートから成る透明の基材上に光反射低減膜、保護膜、金属膜、保護膜、光反射低減膜がその順に積層された構造の、光反射低減膜/保護膜/金属膜/保護膜/光反射低減膜/基材の積層体を得た。
尚、上記実施例における光反射低減膜の厚さは、その化学組成に応じて最も反射率を低減させるのに有効と思われる厚さとした。具体的には、光反射低減膜がNiCu合金酸化物で形成された実施例1〜6及び10〜12が20〜50nm、光反射低減膜がNiCuTi合金酸化物で形成された実施例7〜9及び13〜15が40〜90nm、光反射低減膜がNiCuCr合金酸化物で形成された実施例16〜18が40〜90nm、である。
また、保護膜の厚さは、実施例の全て(実施例1〜18)が30〜150nmである。
(比較例1〜比較例6)
比較例1は、光反射低減膜を備えていない積層体である。透明の基材上にCu合金のターゲットを用いて金属膜を積層形成した後、金属膜上にNiCuTi合金から成る保護膜を積層形成し積層体を得た。
また比較例2〜4では、表1で示す組成のCu合金のターゲットを用いて金属膜を積層形成した後、表1で示す組成のNiCu合金酸化物若しくはNiCuTi合金酸化物から成る光反射低減膜を反応性スパッタリングにより積層形成して積層体を作製した。これら比較例2〜4については保護膜が形成されていない。
また比較例5,6は、実施例と同様に透明の基材上に金属膜、保護膜、光反射低減膜を積層形成して積層体を作製した。ただしこれら比較例5,6では光反射低減膜(NiCu合金酸化物)におけるCu含有量が本発明の下限値を下回っている。
尚、比較例2〜6において形成された光反射低減膜の厚さは、20〜90nmである。
また、比較例1,5,6において形成された保護膜の厚さは、30〜150nmである。
(反射率の測定及び視認性の評価)
JIS K 7105に準拠して紫外可視分光光度計を用い、熱処理前及び熱処理後での反射率の測定を行った。熱処理条件は、大気中、250℃の環境下で1時間保持とした。紫外可視分光光度計の測定条件は可視光の波長範囲(360〜830nm)で行い、波長1nm毎の反射率を測定して、その平均値を反射率として算出した。
また、反射率の測定は、基材の側から金属膜を見たときの反射率、即ち基材側から金属膜に向って光が入射したときの反射光の測定と、金属膜の側から基材を見たときの反射光の測定、即ち金属膜の基材とは反対側から金属膜に向って光が入射したときの反射光の測定との両方の測定を行った。視認性は、反射率(測定値の平均値)が20%以下であることを目標として定め、熱処理の前後における金属膜側と基材側について下記評価基準にて評価した。
A:反射率が20%以下
B:反射率が20%超
(電気比抵抗の測定)
4探針法により金属膜の5箇所で測定し、その平均値より電気比抵抗(μΩ・cm)を算出した。8.0μΩ・cm以下であることを目標として定め、下記評価基準にて評価した。
A:8.0μΩ・cm以下
B:8.0μΩ・cm超
(密着性試験)
各積層体について、JIS K5600−5−6に準拠した密着性試験を、熱処理の前後で行なった。熱処理条件は、大気中、250℃の環境下で1時間保持とした。JIS K5600−5−6で定めるところの分類0〜3であることを目標として定め、下記評価基準にて評価した。
S:熱処理前及び熱処理後の密着性がともに分類0〜1
A:熱処理前及び熱処理後の密着性がともに分類0〜3であり、熱処理前及び/又は
熱処理後の密着性が分類3
B:熱処理前及び/又は熱処理後の密着性が分類4以上
(耐食性の測定)
各積層体を85℃×85%RH(相対湿度)の大気雰囲気環境下にて500時間保持し、保持後の積層体の変色の有無等について、JIS C 60068に準拠して評価した。
試料は成膜まま材を使用して試験した。試験前後で変色がないことを目標として定め、下記評価基準にて評価した。
A:上記環境条件での保持前後において、変色及び膜はがれがない
B:上記環境条件での保持前後において、変色及び/又は膜はがれが認められる
以上の項目について各積層体を評価した結果が表2に示してある。
Figure 2018180098
[反射率及び視認性について]
表2の結果において、比較例1は光反射低減膜を有しておらず、熱処理の前後に関係なく金属膜側、基材側の何れにおいても視認性が悪く(反射率の値が20%を超えており)、結果「B」である。
また比較例2,3は、金属膜上に保護膜を形成することなく直接、光反射低減膜が形成された積層体であり、光反射低減膜が形成されている金属膜側の視認性は、熱処理前にあっては良好(結果「A」)であったが、熱処理後に悪化(結果「B」)している。これは熱処理により金属膜からCuの拡散が生じ、かかるCuの酸化物が積層体の表面に生成して光反射低減膜の膜厚が変化したことによるものと推測される。
比較例4は、比較例2,3と同様に保護膜が形成されていない積層体であるが、熱処理後も視認性は良好であった。これは金属膜中のCu含有量が少ないためにCuの拡散が生じ難かったことによるものと推測される。
比較例5,6は、保護膜及び光反射低減膜をともに備えた積層体であるが、光反射低減膜のCu量が本発明の下限値30at%を下回っているため十分な光反射低減効果が得られず、熱処理の前後に関係なく視認性が悪く結果「B」であった。
一方、本発明の組成の範囲内にある保護膜及び光反射低減膜が金属膜側に設けられた実施例1〜9、16〜18については、金属膜側の反射率が熱処理の前後を通じて20%以下で、視認性は良好(結果「A」)であり、所定の保護膜及び光反射低減膜を設けたことによる効果が得られている。また保護膜及び光反射低減膜を、金属膜の上面(基材とは反対側の面)及び金属膜と基材との間の両方とに積層形成した実施例10〜15にあっては、基材側と金属膜側の何れの視認性も良好な結果が得られている。
[密着性について]
密着性については、比較例及び実施例の何れの積層体においても目標を満足するものであった。その中で特に密着性に優れていた(結果「S」であった)比較例3、実施例7〜9、実施例13〜18は何れも光反射低減膜がNiCuTi合金酸化物若しくはNiCuCr合金酸化物で形成されたものであり、光反射低減膜に所定量のTi若しくはCrを含有させたことによる効果が得られている。
[電気比抵抗について]
金属膜のCu量が本発明の下限値90at%を下回る比較例4については、電気比抵抗の値が目標である8.0μΩ・cm以下を満たすことができず結果「B」であった。金属膜のCu量が本発明の下限値90at%を超えている他の比較例及び実施例1〜18については何れにおいても電気比抵抗が8.0μΩ・cm以下となっており、電極として十分な性能を備えている。
[耐食性について]
比較例5は、純Niを酸化膜材料として使用したものであり、光反射低減膜がCuを含有しておらず、耐食性が低く結果「B」であった。また、比較例6は、光反射低減膜がCuを含有するも、その含有量は酸素を除いた含有量が10at%で、本発明の下限値30at%を下回っており、耐食性が低く結果「B」であった。おそらくCu量が少ないと、Cuとの固溶体が十分に形成されていないため耐食性が低くなるものと推察される。
これに対して、光反射低減膜が本発明で規定するNi量及びCu量を含有する比較例1〜4及び実施例1〜18は、高温高湿環境下で保持した後も変色及び膜はがれはなく耐食性は良好(結果「A」)であった。
以上本発明の実施形態及び実施例について詳しく説明したが、これはあくまで一例示である。本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた態様で実施可能である。
10,10A,20,20A,22,22A,24,24A,26,28,30,32,34,36 積層体
12 基材
14,14−1,14−2 金属層
14D,14−1D,14−2D 電極
15a 第1の保護層
15b 第2の保護層
16a 第1の光反射低減層
16b 第2の光反射低減層

Claims (4)

  1. (a)透明な基材と、
    (b)該基材に積層されて電極形成する金属層と、
    (c)前記金属層の前記基材とは反対側の面に設けられた第1の保護層、及び/又は、前記金属層の前記基材の側の面に設けられた第2の保護層と、
    (d)前記第1の保護層の前記金属層とは反対側の面に設けられた第1の光反射低減層、及び/又は、前記基材と前記第2の保護層との間に設けられた第2の光反射低減層と、を備え、
    前記金属層は、Cu又はCu含有量が90at%以上であるCu合金から成り、
    前記第1の保護層は、Nia1Cub1Tic1合金又はNia2Cub2Crc2合金から成り、
    前記第2の保護層は、Nia3Cub3Tic3合金又はNia4Cub4Crc4合金から成り、
    前記第1の光反射低減層は、Nid1Cue1合金酸化物,Nif1Cug1Tih1合金酸化物又はNii1Cuj1Crk1合金酸化物から成り、
    前記第2の光反射低減層は、Nid2Cue2合金酸化物,Nif2Cug2Tih2合金酸化物又はNii2Cuj2Crk2合金酸化物から成り、
    前記第1の光反射低減層の側から前記金属層に向かう入射光に対する第1の反射率、又は、前記第2の光反射低減層の側から前記金属層に向かう入射光に対する第2の反射率が20%以下であることを特徴とする積層体。
    ここで、添字a1〜k2はそれぞれの元素の含有量(at%)を示し、
    25≦a1≦69、30≦b1≦70、1≦c1≦5、
    25≦a2≦69、30≦b2≦70、1≦c2≦5、
    25≦a3≦69、30≦b3≦70、1≦c3≦5、
    25≦a4≦69、30≦b4≦70、1≦c4≦5、
    30≦d1≦70、30≦e1≦70、25≦f1≦69、30≦g1≦70、0<h1≦5、25≦i1≦69、30≦j1≦70、0<k1≦5、
    30≦d2≦70、30≦e2≦70、25≦f2≦69、30≦g2≦70、0<h2≦5、25≦i2≦69、30≦j2≦70、0<k2≦5、である。
  2. 請求項1において、前記第1の保護層及び前記第2の保護層の厚みが、10〜200nmであることを特徴とする積層体。
  3. 請求項1,2の何れかにおいて、前記第1の光反射低減層がNif1Cug1Tih1合金酸化物から成り、前記第2の光反射低減層がNif2Cug2Tih2合金酸化物から成ることを特徴とする積層体。
    ここで、添字f1〜h2はそれぞれの元素の含有量(at%)を示し、
    25≦f1≦69、30≦g1≦70、0<h1≦5、
    25≦f2≦69、30≦g2≦70、0<h2≦5、である。
  4. 請求項1〜3の何れかにおいて、前記金属層が、CulZnmn合金から成ることを特徴とする積層体。
    ここで、Xは、Mg,Cr,Ca,Ti,Al,Sn,Ni及びBの群から選択された1種又は2種以上の元素であり、添字l,m,nはそれぞれの元素の含有量(at%)を示し、90≦l≦99.8、0.1≦m≦10、0.1≦n≦6、である。
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