本発明の一実施の形態について図1ないし図11を参照して説明する。
図中の1は農作業機で、この農作業機1は、例えば走行車であるトラクタ2の後部に連結され、そのトラクタ2の走行により圃場等を前方(進行方向)に移動しながら農作業、例えば草刈作業を行う草刈機(オフセット作業機)である。
農作業機1は、トラクタ2の後部の3点リンク(図示せず)に連結される機体3と、この機体3に前後方向の第1回動中心軸線(回動支点)L1を中心として上下方向に回動可能に設けられた1本のオフセットフレーム4と、このオフセットフレーム4に第1回動中心軸線L1とは異なる前後方向の第2回動中心軸線(回動支点)L2を中心として上下方向に回動可能に設けられた作業体である草刈作業体(オフセット作業部)5とを備えている。
また、農作業機1は、機体3とオフセットフレーム4との間に架設され、オフセットフレーム4を機体3に対して第1回動中心軸線L1を中心として回動させかつ所望位置に位置決めする第1回動駆動手段6と、オフセットフレーム4と草刈作業体5との間に架設され、草刈作業体5をオフセットフレーム4に対して第2回動中心軸線L2を中心として回動させかつ所望位置に位置決めする第2回動駆動手段7とを備えている。なお、これら第1回動駆動手段6及び第2回動駆動手段7は、背面視で互いに重なるように位置している。
さらに、農作業機1は、トラクタ2からの動力を入力し、この入力した動力を草刈作業体5に向けて伝達する伝動手段8を備えており、草刈作業体5の回転作業手段10がその伝動手段8から動力を受けて回転して草刈作業を行う。
そして、機体3に対するオフセットフレーム4の上下回動及びオフセットフレーム4に対する草刈作業体5の上下回動に基づき、草刈作業体5は、格納状態及びオフセット状態になるとともに、水平姿勢及び傾斜姿勢(左低右高の傾斜姿勢及び左高右低の傾斜姿勢の両方を含む)になる。
つまり、草刈作業体5は、トラクタ2の後方位置に位置する非オフセット状態である格納状態(草刈作業体の全体(略全体を含む)がトラクタの後方領域に格納される状態)と、トラクタ2の後方位置から側方にずれた位置であるオフセット位置に位置するオフセット状態(草刈作業体の全体(略全体を含む)がトラクタに対して側方に突出する状態)とになる。換言すると、草刈作業体5の機体3に対する左右位置が調整可能となっている。
このため、草刈作業体5をオフセット状態にすることで、次に述べるように、トラクタ2の走行面に対して傾斜した傾斜面(作業対象面)に対する草刈作業も可能となる。
また、草刈作業体5は、作業部である回転作業手段10の回転中心軸線L3が進行方向(前後方向)に対して直交する水平方向(左右方向)に沿った水平姿勢と、回転中心軸線L3がその水平方向に対して傾斜した傾斜姿勢とになる。換言すると、草刈作業体5の水平方向に対する傾斜角度が調整可能となっている。
このため、トラクタ2の走行面に対して傾斜した傾斜面(作業対象面)に応じて草刈作業体5を傾斜姿勢にすることによって、当該傾斜面に対する草刈作業も可能である。すなわち、草刈作業体5は、水平姿勢及び傾斜姿勢のいずれの姿勢でも、草刈作業可能なものである。
なお、草刈作業体5の傾斜角度(水平方向に対する角度)θは、所定範囲内(例えば−45°≦θ≦70°)において、任意の値に調整可能となっている(図8(b)を参照)。ただし、例えば傾斜角度θを70°以上に調整可能な構成や、傾斜角度θを−45°以下に調整可能な構成とすることも可能である。
機体3は、トラクタ2の後部の3点リンクに連結される前側フレーム11と、この前側フレームに左右方向の回動中心軸線(回動支点)Xを中心として上下方向に回動可能に取り付けられた後側フレーム12とを有している。
前側フレーム11は、トップピン14及びロワピン15等からなる3点連結部16を有し、この3点連結部16がトラクタ2の3点リンクに連結される。後側フレーム12は回動支持部17を有し、この回動支持部17によってオフセットフレーム4の一端側である基端側が回動可能に支持され、このオフセットフレーム4の他端側である先端側が草刈作業体5を回動可能に支持している。
オフセットフレーム(上下回動フレーム)4は、例えば1本のく字状の中空状の部材からなり、伝動手段8の少なくとも一部を収納する伝動ケースを兼ねたものである。オフセットフレーム4は、前方突出状の機体取付部21を基端部に有し、この機体取付部21が機体3の後側フレーム12の回動支持部17の内周側に第1回動中心軸線L1を中心として回動可能に取り付けられている。
オフセットフレーム4は、前方突出状の前回動支持部22及び後方突出状の後回動支持部23を先端部に有し、これら両回動支持部22,23によって草刈作業体5が第1回動中心軸線L1と平行な第2回動中心軸線L2を中心として回動可能に支持されている。
草刈作業体5は、オフセットフレーム4の先端側に第2回動中心軸線L2を中心として上下方向に回動可能に取り付けられた作業機体31と、この作業機体31に回転可能に設けられ、作業対象面(地面)に接地する接地輪であるゲージローラ32と、作業機体31に回転可能に設けられ、伝動手段8からの動力によって回転中心軸線L3を中心として回転しながら草刈作業(農作業)をする回転作業手段10とを有している。
作業機体31は、回転作業手段10を覆うカバー板34と、このカバー板34の側端部に固着された左右の側板35,36とを有している。左側の側板35の中央部には、ギアケース37及び取付枠38が固設され、これら2つの部材であるギアケース37及び取付枠38によってフレーム取付部40が構成されている。
つまり、この作業機体31は、側方突出状のフレーム取付部40を左側の側端部に有し、このフレーム取付部40がオフセットフレーム4の先端部の回動支持部22,23に第2回動中心軸線L2を中心として回動可能に取り付けられている。
回転作業手段10は、第2回動中心軸線L2と直交する回転中心軸線L3上に位置する回転軸41を有し、この回転軸41の軸芯と回転中心軸線L3とが一致している。そして、回転軸41の各爪取付部42には、刈爪(フレール爪)43が取付手段44を介して脱着可能に取り付けられている。なお、取付手段44は、例えばボルト45、ナット46及びシャックル47等によって構成されている。
第1回動駆動手段6は、伸縮動作する1本の駆動部材である第1シリンダ51のみによって構成されている。第1シリンダ51は、例えば電動油圧シリンダからなるもので、シリンダ本体部52と、このシリンダ本体部52内に対して出入りするロッド部53とを有している。
シリンダ本体部52の基端部は、機体3の後側フレーム12のシリンダ取付部55に前後方向の軸56を中心として回動可能に取り付けられている。ロッド部53の先端部は、オフセットフレーム4のシリンダ取付部57に前後方向の軸58を中心として回動可能に取り付けられている。
そして、第1シリンダ51の伸縮動作によって、オフセットフレーム4が機体3に対して第1回動中心軸線L1を中心として上下方向に回動する。
第2回動駆動手段7は、伸縮動作する1本の駆動部材である第2シリンダ61と、この第2シリンダ61の伸縮動作に応じてオフセットフレーム4に対して前後方向の軸63を中心として回動する略三角板状の回動部材(傾斜姿勢支持部材)62とによって構成されている。なお、これら互いに回動可能に連結された第2シリンダ61及び回動部材62は、く字状をなすオフセットフレーム4の後方に配設されている。
第2シリンダ61は、第1シリンダ51と同様、例えば電動油圧シリンダからなるもので、シリンダ本体部66と、このシリンダ本体部66内に対して出入りするロッド部67とを有している。
シリンダ本体部66の基端部は、オフセットフレーム4のシリンダ取付部68に前後方向の軸69を中心として回動可能に取り付けられている。ロッド部67の先端部は、連動部材である回動部材62の一端部に前後方向の軸70を中心として回動可能に連結されている。
回動部材62は、その長手方向中央部がオフセットフレーム4の回動部材取付部71に前後方向の軸63を中心として回動可能に取り付けられている。また、回動部材62の他端部には長孔状の係合孔部72が形成され、この係合孔部72内には、草刈作業体5の作業機体31の取付枠38の係合軸部73が係合孔部72に沿って摺動可能に挿通されている。このため、これら係合孔部72と係合軸部73との係合によって、草刈作業体5が所望姿勢に保持される。なお、取付枠38の係合軸部73の先端側には、円板状の抜止め部材74が取り付けられている。
そして、第2シリンダ61の伸縮動作に応じて回動部材62が連動して回動し、この回動部材62の回動によって、草刈作業体5がオフセットフレーム4に対して第2回動中心軸線L2を中心として上下方向に回動する。
ここで、図8から明らかなとおり、2つのアクチュエータであるシリンダ51,61は、草刈作業体5の格納状態時及びオフセット状態時のいずれにおいても、トラクタ2の後方に位置している。つまり、比較的重い2つのシリンダ51,61は、草刈作業体5の状態及び姿勢に拘わらず、常にトラクタ2の後方(真後ろ)に位置しており、トラクタ2に対するオフセット位置には移動しない。換言すると、両シリンダ51,61は、草刈作業体5の状態及び姿勢に関係なく、常にトラクタ2の後方において当該トラクタ2の幅内に位置している。なお、図8の如く、シリンダ51,61の全体がトラクタ2の幅内に位置する構成には限定されず、例えば図示しないが、シリンダ51,61の一部がトラクタ2の幅外に突出する構成でもよい。
特に、図8(a)に示すように、草刈作業体5の格納状態時には、第2シリンダ61は、少なくともシリンダ本体部66がトラクタ2の後方かつ草刈作業体5の上方に位置している。また、図8(b)に示すように、草刈作業体5のオフセット状態時には、第2シリンダ61は、少なくともロッド部67がトラクタ2の後方かつ草刈作業体5の左側方に位置している。そして、この図8から明らかなように、第2シリンダ61は、トラクタ2の後方領域内において、背面視でこの第2シリンダ61と重なって位置するオフセットフレーム4と一体となって、前後方向の第1回動中心軸線L1を中心として回動するようになっている。
伝動手段8は、図2、図6等に示すように、トラクタ2のPTO軸からの動力を入力する入力軸80と、第1回動中心軸線L1上(オフセットフレーム4の機体3に対する回動支点上)に位置する前後方向の伝動軸である第1伝動軸81と、これら入力軸80と第1伝動軸81とを連結する屈曲可能なジョイント82とを有している。
入力軸80は、機体3の前側フレーム11の軸受部83によって回転可能に支持されている。第1伝動軸81は、オフセットフレーム4の機体取付部21内に配設され、複数の軸受84によって回転可能に支持されており、この第1伝動軸81の軸芯と第1回動中心軸線L1とが一致している。そして、この第1伝動軸81は、草刈作業体5の格納状態時には、その格納状態の草刈作業体5の上方に位置する。
ジョイント82は、例えば2つの十字軸82aを有したダブルジョイントからなるもので、後側フレーム12に取着された断面が下向きコ字状のジョイントカバー86によってその全体が覆い隠されている。なお、入力軸80は、トラクタ2のPTO軸に対して、図示しないジョイントを介して接続される。
また、伝動手段8は、第2回動中心軸線L2上(草刈作業体5のオフセットフレーム4に対する回動支点上)に位置する前後方向の伝動軸である第2伝動軸87と、この第2伝動軸87の前端部に固設された伝動軸側ギア(ベベルギア)88と、草刈作業体5の回転軸41の左端部に固設され、伝動軸側ギア88と係合する回転軸側ギア(ベベルギア)89とを有している。これら第2伝動軸87、伝動軸側ギア88及び回転軸側ギア89は、草刈作業体5のフレーム取付部40のギアケース37内に配設されている。
第2伝動軸87は、複数の軸受85によって回転可能に支持されており、この第2伝動軸87の軸芯と第2回動中心軸線L2とが一致している。草刈作業体5の回転軸41は、その左端部の挿入部41aがギアケース37内に挿入されて複数の軸受90によって回転可能に支持されており、この回転軸41の軸芯と回転中心軸線L3とが一致している。そして、第2伝動軸87及び回転軸41は、各軸芯が互いに直交する状態で、同一平面上に位置している。
さらに、伝動手段8は、オフセットフレーム4の基端部内の第1伝動軸81に固設された第1スプロケット91と、オフセットフレーム4の先端部内の第2伝動軸87に固設された第2スプロケット92と、これら両スプロケット91,92に掛け渡された無端状の伝動部材であるチェーン93とを有している。
また、図7に示すように、チェーン93は、ガイドスプロケット94及びテンションスプロケット95にも掛け渡され、かつ、チェーン93に所望の張力を付与するための付勢手段である板バネ96によって付勢されている。
そして、オフセットフレーム4は、伝動手段8を収納する伝動ケースの機能を兼ね備えており、このオフセットフレーム4内に、伝動軸81,87、スプロケット91,92,94,95及び板バネ96が収納されている。なお、第1伝動軸81の前端側はオフセットフレーム4内から突出しており、この突出部分にジョイント82が連結されている。同様に、第2伝動軸87の前端側もオフセットフレーム4内から突出しており、この突出部分に伝動軸側ギア88が固着されている。
また、図9ないし図11に示すように、ダブルフレーム構造の機体3における後側フレーム12は、損傷防止を図るために、草刈作業体5に対する過負荷を逃がす過負荷逃がし手段である伸縮アーム体101を有している。
つまり、機体3の後側フレーム12は、通常時には一定長さに保持されかつ草刈作業体5に対する過負荷時にはその過負荷を逃がす伸縮可能な伸縮アーム体101を右側に有し、かつ、前側フレーム11に対して上下方向の回動中心軸線Yを中心として前後方向に回動可能な非伸縮アーム体102を左側に有しており、これら左右の両アーム体101,102は、平面視で逆ハ字状に配置されている。
そして、左右の両アーム体101,102の後端部同士が、オフセットフレーム4を回動支持部17で上下方向に支持した連結支持体103によって、互いに連結されている。
伸縮アーム体101は、第1筒状部材106と、この第1筒状部材106の外周側にスライド可能に嵌合された第2筒状部材107とを有している。
第1筒状部材106は、四角筒状の筒状部108を有し、この筒状部108の前端側の側面には取付部109が設けられ、この取付部109の軸部分109aが前側フレーム11の右取付板111の軸支持部112に左右方向の回動中心軸線Xを中心として回動可能に取り付けられている。
第2筒状部材107は、四角筒状の筒状部113を有し、この筒状部113の後端部には取付部114が設けられ、この取付部114が連結支持体103の右端部に上下方向の軸であるボルト115を介して回動可能に取り付けられている。つまり、伸縮アーム体101の後端部が、連結支持体103の右端部に、上下方向のボルト(回動支点)115を中心として回動可能に取り付けられている。
なお、第2筒状部材107の筒状部113には、筒状部108の外周面と筒状部113の内周面との間の隙間にグリースを注入するためのグリースニップル116が取り付けられている。
また、伸縮アーム体101は、第1筒状部材106の筒状部108内に挿入されたロッド部材であるネジロッド117を有し、このネジロッド117の一端部にはナット118及び座金119が装着されている。このネジロッド117の他端部には抜止め用の突片120が固着され、この突片120は第2筒状部材107の筒状部113の端板部分113aに当接している。
そして、ネジロッド117の外周側には、通常時において伸縮アーム体101を一定長さに保持するための弾性部材であるコイルバネ121が第1筒状部材106の筒状部108内において配設されている。このコイルバネ121は、一端部が座金119に当接し、他端部が第1筒状部材106の筒状部108の端板部分108aに当接している。
さらに、伸縮アーム体101は、この伸縮アーム体101の伸縮量(第2筒状部材107の第1筒状部材106に対する移動量)を示す目印122を有している。この目印122は、トラクタ2に乗った作業者が目視可能なものであって、例えば目盛りの付いたステッカーからなり、第1筒状部材106の筒状部108の上面における所定位置に貼り付けられている(図9参照)。
非伸縮アーム体102は、四角筒状の筒状部125を有し、この筒状部125の後端部が連結支持体103の所定部位に固着されている。この筒状部125の前端部には取付板部126が設けられ、この取付板部126の側面から軸状部127が内側方(伸縮アーム体101側)に向かって突出している。
そして、この軸状部127は、前側フレーム11の左取付板128の軸支持部129に球面軸受130を介して回動可能に取り付けられている。それゆえ、非伸縮アーム体102は、前側フレーム11の左取付板128に対して、少なくとも左右方向の回動中心軸線X及びこれと直交する上下方向の回動中心軸線Yを中心として回動可能となっている。
なお、例えば球面軸受130を用いずに、非伸縮アーム体102が前側フレーム11に対して左右及び上下に回動可能な構成としてもよい。
次に、農作業機1の作用等を説明する。
まず、作業者は、図8(b)の如く、トラクタ(例えば小型トラクタ)2の3点リンク(農作業機昇降支持装置)に連結した農作業機1の草刈作業体5をその左右位置を調整して所望のオフセット状態(草刈作業体5がトラクタ2のタイヤ2aよりも外側方に位置した状態)に設定する。
また、作業者は、草の生えた作業対象面に応じて、オフセット状態の草刈作業体5の姿勢を所望姿勢に設定する。すなわち例えば第2回動駆動手段7の第2シリンダ61の作動によって、草刈作業体5を第2回動中心軸線L2を中心として回動させることで、オフセット状態の草刈作業体5の傾斜角度θを調整する。
このような調整後、トラクタ2の走行によって農作業機1を前方に移動させると、草刈作業体5の回転作業手段10が、伝動手段8からの動力によって所定方向へ回転しながら草刈作業をする。
ここで、このような草刈作業時において、例えば草の中に見えない障害物が存在したために、草刈作業体5の回転作業手段10が障害物に衝突して、当該草刈作業体5に前方側から過負荷がかかった場合には、図11に示すように、機体3の後側フレーム12の伸縮アーム体101が伸びて、その過負荷を逃がす。
すなわち、草刈作業体5に対して前方側から過負荷が作用した際には、草刈作業体5を支持したオフセットフレーム4が、非伸縮アーム体102及び連結支持体103と一体となって、前側フレーム11に対して上下方向の回動中心軸線Yを中心として後方へ回動する。
すると、当該回動に応じて、伸縮アーム体101の第2筒状部材107が、コイルバネ121の弾性復元力(付勢力)に抗してこのコイルバネ121を縮めながら、第1筒状部材106に対してその外周面に沿ってスライドし、その結果、伸縮アーム体101が伸びて、草刈作業体5に対する過負荷を逃がす。
この際、トラクタ2に乗った作業者は、伸縮アーム体101の目印122を目視することで、伸縮アーム体101がどれだけ伸びているかを確認することが可能である。
なお、障害物が草刈作業体5の回転作業手段10から離れて過負荷が解除されると、伸縮アーム体101は、コイルバネ121の弾性復元力によって縮んで、元の状態(通常時の一定長さ)に復帰する。
また、草刈作業体5による草刈作業が終了して、農作業機1をトラクタ2で所望位置まで運搬する場合には、第1回動駆動手段6の第1シリンダ51の作動でオフセットフレーム4を第1回動中心軸線L1を中心として回動させるとともに、第2回動駆動手段7の第2シリンダ61の作動で草刈作業体5を第2回動中心軸線L2を中心として回動させることによって、草刈作業体5をもとの格納状態に戻す。
なお、図8(a)の如く、水平姿勢の草刈作業体5を格納状態に設定した場合であっても、この格納状態の草刈作業体5で草刈作業をすることは可能である。
そして、農作業機1によれば、ダブルフレーム構造の機体3の後側フレーム12は、草刈作業体5に対する過負荷(過負荷の少なくとも一部)を逃がす過負荷逃がし手段である伸縮アーム体101を有するため、草刈作業体5、オフセットフレーム4或いは機枠3等に過大な外力が作用するのを防止でき、損傷防止を図ることができる。
また、トラクタ2に乗った作業者は、伸縮アーム体101の目印122を目視することにより、伸縮アーム体101の伸縮量を確認でき、よって、草刈作業体5に対する過負荷の程度を容易に把握できる。
さらに、第2回動駆動手段7は、草刈作業体5の格納状態時及びオフセット状態時のいずれにおいても、トラクタ2の後方に位置する第2シリンダ61を有するため、草刈作業体5のオフセット状態時でも第2シリンダ61及び回動部材62がトラクタ2の後方位置に残ることにより、左右の重量バランスが良好であり、よって、重量バランスの向上を図ることができる。
また、第2回動駆動手段7の第2シリンダ61は、草刈作業体5の格納状態時にはトラクタ2の後方かつ草刈作業体5の上方に位置し、かつ、草刈作業体5のオフセット状態時にはトラクタ2の後方かつ草刈作業体5の側方に位置するため、重量バランスの向上を効果的に図ることができる。
さらに、オフセットフレーム4が機体3に第1回動中心軸線L1を中心として上下方向に回動可能に設けられ、かつ、草刈作業体5がオフセットフレーム4に第2回動中心軸線L2を中心として上下方向に回動可能に設けられた構成であるから、前後方向長さが短く、前後の重量バランスが良好であり、よって、重量バランスの向上をより一層効果的に図ることができる。
また、トラクタ2側からの動力を伝達する伝動手段8は、第1回動中心軸線L1上に位置する第1伝動軸81及び第2回動中心軸線L2上に位置する第2伝動軸87を有するため、構成の簡素化を図ることができるとともに、軽量化及びコンパクト化も図ることができ、小型トラクタでも安定的に使用できる。特に、草刈作業体5は、従来の刈取り作業部に比べて部品点数が少なく、構成が簡単であり、比較的軽量である。
なお、農作業機1は、上述した構成には限定されず、例えば図12及び図13に示すように、草刈作業体5に対する過負荷時において伸縮アーム体101が所定状態(例えば所定量だけ伸びた状態)になったことを検知する検知手段であるリミットスイッチ131と、その伸縮アーム体101の状態をトラクタ2に乗った作業者に報知する報知手段132と、リミットスイッチ131の検知(スイッチオン)に基づいて報知手段132を作動させる制御手段133とを備えた構成でもよい。なお、この制御手段133には、リミットスイッチ131及び報知手段132のほか、第1シリンダ51及び第2シリンダ61が電気的に接続されている。
リミットスイッチ131は、スイッチ本体部134と、このスイッチ本体部134に水平方向に回動可能に設けられたスイッチアーム部135とを有している。スイッチ本体部134は、第2筒状部材107の筒状部113に突設された取付板部136に取り付けられている。第1筒状部材106の筒状部108の下面には、スイッチアーム部135に対して接離するピン137が突設されている。
報知手段132は、例えば音を発することで伸縮アーム体101が所定状態になったことをトラクタ2に乗った作業者に報知するブザーや、例えば光を発することで伸縮アーム体101が所定状態になったことをトラクタ2に乗った作業者に報知するランプである。この報知手段132は、トラクタ2の運転席付近に設けられている。なお、報知手段132は、ブザーやランプのほか、例えば伸縮アーム体101の状態を表示して作業者に知らせるモニター等でもよい。
そして、図13(a)に示すように、通常時には、伸縮アーム体101は、コイルバネ121によって一定長さに保持されており、ピン137はスイッチアーム部135から離れていて、リミットスイッチ131はオフ状態となっている。
図13(b)に示すように、草刈作業体5に過負荷がかかった場合には、第2筒状部材107がコイルバネ121の弾性復元力に抗して第1筒状部材106に沿ってスライドすることで、伸縮アーム体101が伸び、その結果、スイッチアーム部135がピン137に押されて回動して、リミットスイッチ131がオン状態となる。
ここで、制御手段133による制御内容について、図14及び図15を参照して具体的に説明する。
図14に示すように、まず、制御手段133は、リミットスイッチ131のオンオフに基づいて、草刈作業体5に過負荷が作用しているか否か(例えば石等の障害物Sが草刈作業体5に当接しているか否か)を判断する(ステップ1)。
そして、過負荷が作用していると判断した場合には、制御手段133は、報知手段132を作動させ(ステップ2)、かつ、第2シリンダ61を作動、すなわち伸び動作させる(ステップ3)。
すると、その第2シリンダ61の伸び動作に応じて、草刈作業体5は、オフセットフレーム4に対して第2回動中心軸線L2を中心として上方へ回動する(図15を参照)。なお、報知手段132の作動に基づき、トラクタ2に乗った作業者は、草刈作業体5に過負荷が作用していることを知り、トラクタ2の走行を停止させる。
次いで、制御手段133は、同様に草刈作業体5に過負荷が作用しているか否かを判断し(ステップ4)、過負荷が作用していないと判断すると、報知手段132を停止させ(ステップ5)、かつ、第2シリンダ61を停止させる(ステップ6)。
そして、作業者は、トラクタ2から降りて障害物Sを取り除いた後(或いは、トラクタ2を前進走行させて、障害物Sのない場所まで移動した後)、草刈作業体5を元の作業状態に戻してから、草刈作業を再開する。
したがって、このような農作業機1によれば、損傷防止をより一層効果的に図ることができる。
なお、伸縮アーム体(過負荷逃がし手段)101の伸縮状態を検知する検知手段は、リミットスイッチ131には限定されず、例えば検知光を利用する光センサや、非伸縮アーム体102の回動角度を検知する角度センサ等でもよい。
また、制御手段133が第2シリンダ61のみを作動させて草刈作業体5を上方回動させる構成には限定されず、草刈作業体5を上方回動させるために、制御手段133が第1シリンダ51及び第2シリンダ61の両方、或いは第1シリンダ51のみを作動させる構成としてもよい。
なお、上記いずれの実施の形態においても、伸縮アーム体(過負荷逃がし手段)101は、草刈作業体5に対する前方側からの過負荷時にのみ、伸びて過負荷(前過負荷)を逃がすものには限定されず、例えば図16に示すように、草刈作業体5に対する前方側からの過負荷時には伸びて過負荷(前過負荷)を逃がし、かつ、草刈作業体5に対する後方側からの過負荷時には縮んで過負荷(後過負荷)を逃がすものでもよい。
この図16に示す伸縮アーム体101は、図10に示すものとは異なり、通常時において伸縮アーム体101を一定長さに保持するための弾性部材として、2つのコイルバネ、すなわち第1コイルバネ141及び第2コイルバネ142を有している。
第1コイルバネ141は、一端部が座金119に当接し、他端部が第1筒状部材106の筒状部108の中間板部分108bに当接している。第2コイルバネ142は、一端部が第1筒状部材106の筒状部108の中間板部分108bに当接し、他端部が第2筒状部材107の筒状部113の端板部分113aに当接している。
そして、伸縮アーム体101が伸びた場合には第1コイルバネ141が縮み、伸縮アーム体101が縮んだ場合には第2コイルバネ142が縮むが、いずれの場合も過負荷が解除されると、伸縮アーム体101は、コイルバネ141,142の弾性復元力によって縮んで、元の状態(通常時の一定長さ)に復帰する。
したがって、このような図16に示す構成とすることで、草刈作業体5に対する後方側からの過負荷にも対応でき、損傷防止をより一層効果的に図ることができる。
さらに、上記いずれの実施の形態でも、農作業機1は、草刈機には限定されず、例えば畦塗り機、溝掘機、耕耘機、収穫機等でもよい。
また、農作業機1は、作業部が走行車に対して右側方へ突出する右オフセット状態になる構成には限定されず、例えば作業部が走行車に対して左側方へ突出する左オフセット状態になる構成等でもよい。
さらに、回動駆動手段の駆動部材(駆動源)は、電動油圧シリンダには限定されず、例えば油圧シリンダ、電動シリンダ、油圧モータ或いは電動モータ等でもよく、また、回動駆動手段は、駆動部材のみからなるものでもよく、その駆動部材に連動部材を連結したもの等でもよい。
また、伝動ケースを兼ねたオフセットフレーム4内に収納される伝動部材は、チェーンやベルト等の無端状部材には限定されず、伝動シャフト等でもよい。