JP6931895B2 - 光学部材、光導光部材、及び、光学部材を生産する方法 - Google Patents

光学部材、光導光部材、及び、光学部材を生産する方法 Download PDF

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本発明は、光学部材、光導光部材、及び、光学部材を生産する方法に関し、特に、入射光を透過する導光部に隣接して用いられる、前記入射光を減光する光学部材等に関する。
一般に、物質、分子、原子の発光現象を利用した発光分析の感度は非常に高い。また、試料に光を照射し、当該試料から放出される光を用いた分析も行われている。このような光分析の例として、吸光度法やレーザ有機蛍光法(Laser Induced Fluorescence:LIF)がある。
近年、このような光測定器や光測定装置の携帯可能な程度までの小型化や測定の高性能化が要請されている。
ここで、光測定装置を小型化すると、装置内において、試料に光を照射するための光源と、試料からの観測光をモニタする検出器との距離が近くなる。光源からの照射光を試料に導く照射光学系を構成する導光路や、試料からの観測光を検出器に導光する観測光収集光学系を構成する導光路には、集光レンズや光学フィルタ等の光学素子が存在する。そのため、装置内の導光路を光が進行する際に発生する反射光や散乱光といった、測定においてノイズとなりうる迷光の影響は、装置が小型化するにつれて顕著になる。このような迷光は、装置筐体の内壁においても発生する。
発明者らは、迷光の影響をできるだけ抑制し、光学測定装置の小型化を実現するために、顔料を少なくとも一部に含む樹脂を用いて光学系およびモノリシックな筐体を構成した光誘起蛍光測定器(特許文献1)を提案した。これはLIF装置に関するものである。
具体的には、以下の構成の特徴を有する。(1)照射光学系を構成する導光路、観測光収集光学系を構成する導光路の一部に、照射光及び観測光に対して透明な樹脂が充填されている。(2)これらの導光路を構成する透明樹脂を包囲するようにさらに樹脂を設ける。この樹脂には顔料が含有されている。(3)顔料は、迷光を吸収する特性を有する。顔料の含有量は、少なくとも迷光を全て吸収する量に設定されている。(4)透明樹脂と顔料含有樹脂との樹脂の材質は同じである。
上記の構成により、例えば、以下の作用・効果を奏する。まず、透明樹脂と顔料含有樹脂との樹脂の材質を同じにすることにより、両樹脂が接触する界面において光の反射や散乱が抑制される。また、顔料含有樹脂に入射した迷光は、顔料により吸収される。そのため、導光路を構成する透明樹脂に戻ることはほとんどない。さらに、顔料含有樹脂から外部へ迷光が漏れることもない。そのため、迷光の複雑な多重反射がほとんど発生しない。結果として、観測光収集光学系は、複雑な多重反射に対応する必要がない。
特開2014−032064号公報
しかしながら、顔料は粒子であり、迷光の吸収特性を有しているとはいえ、顔料に入射した迷光の一部は散乱される。迷光の波長と顔料粒子との大きさの関係により、迷光の一部の散乱は、Mie散乱になったり、Rayleigh散乱になったり、幾何学的散乱になったりする。
特許文献1に記載の発明は、顔料の吸収特性について着目したものである。しかし、顔料粒子による迷光の散乱の影響までは十分に考慮されていない。
そこで、本発明は、入射光を透過する導光部に隣接して用いられても顔料による迷光の散乱を抑制することが可能となる光学部材等の提供を目的とする。
本発明の第1の観点は、入射光を透過する導光部に隣接して用いられる、前記入射光を減光する光学部材であって、カーボンブラックが分散したシリコーン樹脂からなり、前記シリコーン樹脂の特定の領域に分散している前記カーボンブラックの粒子は、短径が2μm以下の粒子のみである、光学部材である。
本発明の第2の観点は、第1の観点の光学部材であって、前記特定の領域は、当該光学部材を前記導光部に隣接して用いた際に、前記導光部と当該光学部材との境界から特定の光の吸収長の深さまでの領域に相当する領域である。
本発明の第3の観点は、第2の観点の光学部材であって、前記特定の光は、前記入射光とは異なるノイズ光である。
本発明の第4の観点は、入射光を導光する光導光部材であって、前記入射光を透過し、前記入射光に対して透明なシリコーン樹脂を少なくとも一部に有する導光部と、前記導光部に隣接し、前記透明なシリコーン樹脂と同じ材料のシリコーン樹脂にカーボンブラックを分散させたカーボンブラック分散シリコーン樹脂を有する迷光吸収部とを備え、前記カーボンブラック分散シリコーン樹脂におけるカーボンブラックの短径は、2μm以下である、光導光部材である。
本発明の第5の観点は、入射光を透過する導光部に隣接して用いられる、前記入射光を減光する光学部材を生産する方法であって、硬化前の未硬化未分散シリコーン樹脂にカーボンブラックを分散させて未硬化分散済シリコーン樹脂を形成する分散ステップと、前記未硬化分散済シリコーン樹脂を硬化させて硬化済分散済シリコーン樹脂を形成する硬化ステップとを含み、前記分散ステップにおいて、前記未硬化未分散シリコーン樹脂に分散させる前記カーボンブラックの濃度が、5wt%以上かつ20wt%以下である、光学部材を生産する方法である。
本発明の各観点によれば、入射光を透過する導光部に隣接して用いられても散乱が起こりにくい減光する光学部材等を提供可能となる。
以下、カーボンブラック等の顔料の粒径は、粒子の短径を指す。顔料の粒径は、透明樹脂へ含有させる含有量(重量%)により、凝集が進み、粒径が大きくなる。光の波長をλとすると、Rayleigh散乱による散乱の強度は(1/λ)に比例する。よって、入射光の波長が長いほど散乱強度は小さくなる。他方、Mie散乱の場合、散乱光強度は(1/λ)に比例し、Rayleigh散乱に比べて波長依存性が小さい。そのため、どの波長の光も比較的同等に散乱される。そのため、粒子径は、できるだけMie散乱の影響が小さくなるようにすることが好ましい。
発明者らの研究の結果、透明樹脂に含有させる含有量(重量%)に応じて凝集が進み、実質的に粒径が大きくなることが分かった。本発明は、本発明者らのこの知見に基づき、カーボンブラック顔料のシリコーン樹脂への含有量を適切に設定することにより、迷光が顔料に入射した際の散乱の影響を抑制可能としたものである。
また、本発明の第2の観点によれば、導光部から光学部材へ進入する光の散乱を特に抑えることが容易となる。
さらに、本発明の第3の観点によれば、具体的に光学部材を提供することがさらに容易となる。一般に、光測定で使用する波長はおよそ紫外光〜可視光の範囲(200〜780nm)である。光測定において特に散乱を抑制すべきノイズ光の波長に基づいて光学部材を調整することが容易となる。
顔料含有シリコーン樹脂の遮光性の評価(散乱特製の評価)を実施するために作製した試料を示す図である。 図1の円板状試料において、カーボンブラックの濃度を(a)1wt%、(b)5wt%、(c)10wt%、(d)20wt%としたときの透明半円部と顔料半円部との界面の様子の観測結果を示す図である。 今回の測定に用いた散乱光強度の角度特性測定システムである。 カーボンブラックの濃度が(a)1wt%、(b)5wt%、(c)10wt%、(d)20wt%の試料における散乱光強度の角度特性分布を示す図である。 導光部の光出射側の状態の違いにより、望ましい散乱条件が異なることを示す図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施例について述べる。なお、本発明の実施の形態は、以下の実施例に限定されるものではない。
顔料含有シリコーン樹脂の遮光性の評価(散乱特製の評価)を実施するために、図1に示すような円板状試料1を作製した。円板状試料1は、円板状の透明なシリコーン樹脂であり、透明なシリコーン樹脂からなる透明半円部3と顔料が含有されたシリコーン樹脂からなる顔料半円部5とを有する。透明なシリコーン樹脂としては、PDMS樹脂(信越シリコーン(登録商標)製:シリコーン印象材SIM−360)を使用した。
また、顔料含有シリコーン樹脂は、上記PDMSに顔料を分散させて形成した。具体的には、まず上記SIM−360の主剤にカーボンブラック(信越シリコーン(登録商標)製:KE−COLOR−BL)を投入し、公転自動ミキサー(KURABO(登録商標)製:KK−505)にて撹拌した。撹拌作業は、公転数1440rpm、自転数1008rpm、撹拌時間200secの撹拌条件にて2回実施した。
円板状試料1として、PDMSに分散させるカーボンブラックの濃度を変えて、4種類作製した。具体的には、上記PDMSに分散させるカーボンブラックの濃度を1wt%、5wt%、10wt%、20wt%とした。また、PDMSの硬化時間は1時間とした。
なお、上記カーボンブラックの濃度を20wt%より大きくした場合、上記SIM−360の主剤に投入されたカーボンブラックは、上記SIM−360の主剤内にての凝集が顕著となり、上記主剤とカーボンブラックが複数箇所で分離するようになった。この分離した状態で公転自動ミキサーで撹拌しても、上記主剤とカーボンブラックとの分離は解消されず、上記主剤にカーボンブラックを分散させることは不可能であった。よって、主剤とカーボンブラックとの分離が起こらないようにするには、カーボンブラック濃度を20wt%以下とすればよいことが分かった。
図2に、上記円板状試料において、カーボンブラックの濃度を(a)1wt%、(b)5wt%、(c)10wt%、(d)20wt%としたときの透明半円部と顔料半円部との界面の様子の観測結果を示す。観測倍率は400倍である。この観測図は、上記界面及び界面近傍における波長532nmの光の透過光の強度をモニタしたものを示す。
観測の結果、カーボンブラックの粒径は、ほぼ約0.5〜2.0μmであった。ここで、カーボンブラック濃度1wt%、5wt%、10wt%の場合、カーボンブラックの粒径は、上記範囲内にほぼ全て収まり、粒径のバラつきは比較的小さいことが分かった。
他方、カーボンブラックの濃度が20wt%の場合、ほとんどのカーボンブラックの粒径は、カーボンブラック濃度1wt%、5wt%、10wt%のときと同様、ほぼ約0.5〜2.0μmの範囲に収まった。しかし、ところどころ、カーボンブラックの凝集が発生していた。他の実験にて確認したところ、このカーボンブラックの凝集は、カーボンブラックの濃度が10wt%を超えたところで発生することが分かった。
すなわち、カーボンブラック濃度が1wt%、5wt%、10wt%のときは凝集が発生せず、カーボンブラックを分散させたシリコーン樹脂(ゴム)としての特性が維持できた。
カーボンブラック濃度が10wt%を超えると、カーボンブラックの凝集が始まった。しかしながら、20wt%まではカーボンブラックの粒径は、2μm以下であった。
カーボンブラック濃度が0wt%を超えると、カーボンブラックの凝集に起因し、カーボンブラックの粒径で2μmを超えるものがでてきた。さらに、上記したように、濃度が20wt%を超えると、濃度によってはPDMSの主剤とカーボンブラックがところどころ分離するようになった。
なお、シリコーン樹脂であるPDMS樹脂の硬化時間が、現状のもの(ここでは1時間)よりも短縮可能となるPDMSが開発されれば、カーボンブラック濃度が20wt%を超えてもカーボンブラックの粒径が2μm以下で、上記主剤とカーボンブラックの分離が発生しないようにすることも可能となりうる。
しかしながら、現状のPDMS樹脂の性能では、実用的なカーボンブラック濃度は、20wt%以下となる。
また、透明半円部3と顔料半円部5との界面は、カーボンブラックの濃度が10wt%、20wt%のとき、ある程度明確に画定されるようになっている。すなわち、カーボンブラック粒子が界面に沿って密集していることが確認された。
次に、カーボンブラック濃度1wt%、5wt%、10wt%、20wt%の試料における散乱光強度の角度特性を測定した。
図3は、今回の測定に用いた散乱光強度の角度特性測定システム11である。図3に示すように、円板状試料1は、回転軸13を有する回転ステージ15に設置される。
回転軸13は、回転軸13から回転軸13の軸方向と直交する方向に延びる分岐部17を有する。分岐部17は、光源支持部19の支柱21に連結されている。光源支持部19は、支柱21と、支柱21から分岐された光源固定部23とからなる。光源固定部23には、波長532nmのレーザビームを放出するDPSSレーザ光源25が固定されている。
DPSSレーザ光源25から放出されるレーザビーム27は、図3に示すように、下方向に進行し、回転ステージ15の回転軸13に設けられた反射ミラー支持部29に支持された反射ミラー31により折り返され、円板状試料1に入射する。ここで、反射ミラー31は、円板状試料1の透明半円部3と顔料半円部5との境界面7に対してレーザビーム27が45度の入射角で入射するように調整されている。
円板状試料1は、上記したように、透明半円部3と顔料半円部5とからなる。ここで、両半円部を構成するシリコーン樹脂は同種の樹脂であるので、屈折率も同じである。よって、円板状試料1に入射したレーザビーム27の境界面7における界面反射は、基本的に生じない。
上記したように、レーザビーム27は境界面7にて界面反射されることなく顔料半円部5に入射する。カーボンブラックとシリコーン樹脂とは材質が異なり、屈折率が互いに異なる。そのため、このカーボンブラックに到達したレーザビーム27は、カーボンブラックにより吸収されたり、散乱されたりする。
カーボンブラックの吸収係数は、波長532nmのレーザビーム27に対して7.2×10/cmである。そのため、カーボンブラックに到達したレーザビーム27は、カーボンブラックに強く吸収される。カーボンブラックにて吸収されなかったレーザビーム27は、当該カーボンブラックにより様々な方向に散乱される。上記散乱光のうち、顔料半円部5から透明半円部3へ進行したものは、透明半円部3から外部へと放出される。
透明半円部3から外部へとレーザビーム27が放出される側には、図3に示すように、幅2mm×上下方向の長さ30mmの開口部分を有するスリット33と、スリット33を透過する光を集光する集光レンズ35と、集光レンズ35で集光されるレーザビーム27の強度を計測するためのフォトダイオードからなるディテクタ37とを有する散乱光測定部39が設けられる。散乱光測定部39は、ディテクタ37へ入射する光をスリット33により限定している。
他方、上記したように、円板状試料1とDPSSレーザ光源25と反射ミラー31は、回転軸13と分岐部17で連結されている光源支持部19及び反射ミラー支持部29により、一体となって保持されている。よって、回転軸13を回転させても、円板状試料1へ入射するDPSSレーザ光源25らの光の入射角は維持される。
この状態で回転ステージ15の回転軸13を回転させることにより、上記入射角を維持したまま、透明半円部3から外部へと放出されるレーザビーム27の散乱光の一部が散乱光測定部39のスリット33へ導光されるように調整することが可能となる。
上記したように、スリット33は、図3に示すように、入射光の入射角を固定している。そのため、回転ステージ15の回転軸13を回転させることにより、特定の角度方向に散乱された光の強度のみ散乱光測定部39で測定することができる。すなわち、円板状試料1から放出される散乱光強度の角度特性を測定することが可能となる。
図4は、カーボンブラックの濃度が(a)1wt%、(b)5wt%、(c)10wt%、(d)20wt%の試料における散乱光強度の角度特性分布を示す図である。
図4に示す角度特性分布において、各角度方向の線分の長さは、散乱光強度を示す。よって、各線分の先端を結ぶ曲線がなす面積は、試料に入射したレーザビームの積分反射強度(散乱強度)を示す。
図4(a)〜(d)から明らかなように、カーボンブラックの濃度が1wt%のときは、積分反射強度(散乱強度)が大きい。よって、透明なシリコーン樹脂からなる導光路における迷光を吸収するために、顔料(カーボンブラック)を分散させたシリコーン樹脂にてこの導光路を包囲して、導光路からの迷光を当該顔料分散シリコーン樹脂で吸収させる場合、カーボンブラックの濃度が1wt%のときは、顔料分散シリコーン樹脂からの散乱光の影響を無視できなくなるときがあると考えられる。
他方、カーボンブラックの濃度が5wt%、10wt%、20wt%の場合、積分反射強度(散乱強度)が小さい。そのため、上記迷光吸収用の顔料分散シリコーン樹脂は、十分な機能を果たせると考えられる。
カーボンブラックの濃度が1wt%のときの積分反射強度(散乱強度)が大きい理由は必ずしも明らかではないが、以下のように考えられる。カーボンブラックの濃度が1wt%の場合、各カーボンブラック粒子間の距離が大きく、多重散乱の影響が大きいものと考えられる。すなわち、1個のカーボンブラックからの散乱光が他のカーボンブラックに衝突しさらに散乱する場合、各カーボンブラック粒子間の距離が大きいので、各カーボンブラック間の空間を通過して、透明半円部3へ進行する確率が高いものと考えられる。
ここで、透明なシリコーン樹脂からなる導光路と、上記透明なシリコーン樹脂と同じ材質からなり、上記導光路からの迷光に対して吸収特性を有する顔料(カーボンブラック)が分散されたシリコーン樹脂である顔料分散シリコーン樹脂とを準備し、上記導光路を上記顔料分散シリコーン樹脂により包囲した2層構造のシリコーン樹脂からなる光学系を考える。
上記構造の光学系において、導光路を構成する透明なシリコーン樹脂と顔料分散シリコーン樹脂とが同質の材料であるので、両樹脂間の界面における光の界面反射は発生しない。よって、導光路から顔料分散シリコーン樹脂に入射する迷光は、そのまま上記顔料分散シリコーン樹脂に入射し、その大部分はカーボンブラックにより吸収される。
なお、カーボンブラックに到達したが吸収されなかった迷光は、カーボンブラック表面において散乱することとなる。その散乱光(反射光)の一部は、場合によっては、導光路に再び入射することもある。
よって、導光路からの迷光の影響を小さくするための上記2層構造のシリコーン樹脂からなる光学系は、(1)できるだけカーボンブラックにおける積分反射強度(散乱強度)が小さく、(2)できるだけカーボンブラックにおける後方散乱強度が小さい方が望ましい。
発明者らが計算したところ、カーボンブラックの粒径が2.0μmより大きくなると散乱が大きくなり、例えば2層構造のシリコーン樹脂からなる光学系における散乱条件(1)及び(2)についても実用的でなくなることが分かった。
そのため、顔料分散シリコーン樹脂におけるカーボンブラックの粒径を0.5〜2.0μmとすることが好ましい。また、カーボンブラックの濃度を5〜20wt%とすることが好ましい。
また、上記(1)及び(2)は、導光路を構成する透明なシリコーン樹脂と顔料分散シリコーン樹脂との界面形状により、その重要性に順列がつく。
図5は、導光部の光出射側の状態の違いにより、望ましい散乱条件が異なることを示す図である。図5(a)に示すように、信号である光51が通過する導光部53の出射端55が顔料分散シリコーン樹脂57で閉じておらず開放されているとする。また、出射端55が光信号を受信するセンサ59(例えば、光強度を測定する光センサ)である場合を考える。この場合、迷光60が顔料分散シリコーン樹脂57に入射したときの顔料分散シリコーン樹脂57からの散乱光61(ノイズ光)は、できるだけ小さく、特にセンサ59に届かないことが望まれる。すなわち、(1)積分反射強度(散乱強度)が小さい方がより重要となる。
他方、図5(b)に示すように、信号である光63が通過する導光部65の出射端67が顔料分散シリコーン樹脂69により閉塞されていて、信号である光63を顔料分散シリコーン樹脂69に全て吸収させたい場合を考える。この場合、顔料分散シリコーン樹脂69からの散乱光71(ノイズ光)は、できるだけ小さく、後方に進行しないことが望まれる。すなわち、(2)後方散乱強度が小さい方がより重要となる。
なお、発明者らが先に提案した顔料を少なくとも一部に含む樹脂を用いて光学系およびモノリシックな筐体を構成した光誘起蛍光測定器(特許文献1)のように、透明なシリコーン樹脂からなる光導光部は、必ずしも透明なシリコーン樹脂で全て充填されている状態である必要はなく、空間を有していてもよい。
ここで、顔料分散シリコーン樹脂について、光学濃度(OD値)が6となるときのシリコーン樹脂の厚みを調査した。ここで光の波長は532nmとした。
カーボンブラック濃度が1wt%のとき、OD=0.3(透過率50%)となるときのシリコーン樹脂の厚みは約0.1mmであった。すなわち、透明なシリコーン樹脂からなる導光路を顔料分散シリコーン樹脂で包囲した構造の光学系を有するマイクロチップを構成する場合、カーボンブラック濃度が1wt%のときにOD=6を実現するためには、顔料分散シリコーン樹脂の厚みが1.9mm(約2mm)となる。さらに、透明シリコーン樹脂からなる導光路も導光路として機能するためにある程度の厚みが必要となる。
よって、上記マイクロチップを作製する場合、マイクロチップの上下方向の厚みを考えるとカーボンブラック濃度が1wt%のときには、透明導光路の厚み+透明導光路の上部を包囲する顔料分散シリコーン樹脂の厚み約2mm+透明導光路の下部を包囲する顔料分散シリコーン樹脂の厚み約2mmとなる。すなわち上記マイクロチップの厚みは、少なくとも透明導光路の厚み+約4mmとなり、マイクロチップとしては厚膜化してしまう。そのため、顔料分散シリコーン樹脂を作製する際、カーボンブラック濃度を1wt%以下とするのは好ましくない。
他方、カーボンブラック濃度が5wt%のとき、OD=6を実現するための顔料分散シリコーン樹脂の厚みは0.4mmとなる。よって、上記マイクロチップの上下方向の厚みは、透明導光路の厚み+0.8mmとなり、マイクロチップのサイズを実用的な大きさとすることが可能となる。よって、顔料分散シリコーン樹脂を作製する際、カーボンブラック濃度は、少なくとも5wt%以上とすることが好ましい。
以上をまとめると、シリコーン樹脂にカーボンブラックを分散させて遮光機能を有する光学部材を製造する場合、カーボンブラック濃度をCcbとすると、製造された光学部材は、Ccbに応じて以下のような特性となった。
(1)Ccb≦5wt%・・・積分反射強度(散乱強度)が大きくなり、遮光機能が乏しい。また、上記2層構造のマイクロチップを製造する場合、OD=6を実現するためには、マイクロチップの厚みが厚くなりすぎる。
(2)5wt%≦Ccb≦10wt%・・・カーボンブラックの凝集が発生せず、シリコーン樹脂(ゴム)としての特性の維持が可能。また、カーボンブラックの粒径は、0.5〜2.0μmとなる。
(3)10wt%≦Ccb≦20wt%・・・カーボンブラックの凝集が発生する場合がある。また、凝集が起きてない領域のカーボンブラックの粒径は、0.5〜2.0μmとなる。
(4)20wt%<Ccb・・・カーボンブラックの凝集に起因し、カーボンブラックの粒径で2μmを超えるものが出てくる。また、ある程度カーボンブラックの濃度が大きくなると、濃度によってはPDMSの主剤SIM−360とカーボンブラックが完全に分離するようになり、シリコーン樹脂にカーボンブラックを分散させることが不可能となる。
すなわち、マイクロチップに使用するために、シリコーン樹脂にカーボンブラックを分散させて遮光機能を有する光学部材(本願請求項における「光学部材」及び「迷光吸収部」の一例)を製造する場合には、5wt%≦Ccb≦20wt%が好ましく、5wt%≦Ccb≦10wt%がさらに好ましい。このような光学部材を入射光を透過(導光)する導光部(本願請求項における「導光部」の一例)に隣接して用いることにより、迷光やノイズ光がセンサに入ることを抑制することが可能な光導光
部材(本願請求項における「光導光部材」の一例)を製造可能となる。
他方、上記製造方法に基づき製造される光学部材に分散されるカーボンブラックの大きさDcbは、Dcb≦2.0μmのとき、積分反射強度(散乱強度)が小さくなり、良好な遮光性能を有することが分かった。また、Dcb>2.0μmのとき、積分反射強度が大きくなり、良好な遮光性能を実現することが難しくなることが分かった。
上記光学部材を製造するためには、硬化前のシリコーン印象材SIM−360の主剤(本願請求項における「未硬化未分散シリコーン樹脂」の一例)に所望の濃度のカーボンブラックを投入して撹拌により分散させる(本願請求項における「分散ステップ」の一例)。続いて、分散後のシリコーン樹脂(本願請求項における「未硬化分散済シリコーン樹脂」の一例)を1時間かけて硬化させて顔料分散シリコーン樹脂(本願請求項における「硬化済分散済シリコーン樹脂」の一例)を得る(本願請求項における「硬化ステップ」の一例)。
なお、ノイズ光(本願請求項における「ノイズ光」の一例)が届かない領域においては、カーボンブラックの大きさに起因して積分反射強度が大きくなっても問題ない。そのため、ノイズ光の吸収長の深さまでの領域(本願請求項における「特定の領域」及び「特定の光の吸収長の深さまでの領域」の一例)でDcb≦2.0μmであれば、好ましいマイクロチップを製造可能であるといえる。
1・・・円板状試料、3・・・透明半円部、5・・・顔料半円部、7・・・境界面、11・・・角度特性測定システム、13・・・回転軸、15・・・回転ステージ、17・・・分岐部、19・・・光源支持部、21・・・支柱、23・・・光源固定部、25・・・DPSSレーザ光源、27・・・レーザビーム、29・・・反射ミラー支持部、31・・・反射ミラー、33・・・スリット、35・・・集光レンズ、37・・・ディテクタ、39・・・散乱光測定部、51・・・光、53・・・導光部、55・・・出射端、57・・・顔料分散シリコーン樹脂、59・・・センサ、60・・・迷光、61・・・散乱光、63・・・光、65・・・導光部、67・・・出射端、69・・・顔料分散シリコーン樹脂、71・・・散乱光

Claims (5)

  1. 入射光を導光する導光部から出射端へ導光し、前記出射端に光強度を測定する光センサが設けられる光導光部材であって、
    前記導光部は前記入射光が透過する透明なシリコーン樹脂からなり、
    前記透明なシリコーン樹脂はPDMS樹脂であり、
    前記導光部を包囲した迷光吸収部を備え、
    前記迷光吸収部は、前記PDMS樹脂と同種の樹脂にカーボンブラックを分散させた顔料含有PDMS樹脂を有し、
    前記迷光吸収部におけるカーボンブラックの短径は、2μm以下である、光導光部材。
  2. 前記顔料含有PDMS樹脂に分散されたカーボンブラックの濃度は、カーボンブラックの短径が2μmよりも大きな凝が発生しない濃度である、請求項1記載の光導光部材。
  3. 前記顔料含有PDMS樹脂に分散されたカーボンブラックの濃度は、5wt%以上かつ20wt%以下である、請求項1又は2記載の光導光部材。
  4. 前記顔料含有PDMS樹脂に分散されたカーボンブラックの濃度は、5wt%以上かつ10wt%以下である、請求項1又は2記載の光導光部材。
  5. 前記顔料含有PDMS樹脂に分散されたカーボンブラックの濃度は、10wt%以上かつ20wt%以下である、請求項1又は2記載の光導光部材。
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