JP6930196B2 - リチウムイオン電池用正極材料およびその製造方法、リチウムイオン電池用正極、リチウムイオン電池 - Google Patents

リチウムイオン電池用正極材料およびその製造方法、リチウムイオン電池用正極、リチウムイオン電池 Download PDF

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Description

本発明は、リチウムイオン電池用正極材料およびその製造方法に関する。
リチウムイオン電池は、従来のニッケルカドミウム電池やニッケル水素電池に比べて、高電圧・高エネルギー密度が得られる電池として小型・軽量化が図れることから、携帯電話やラップトップパソコンなど情報関連のモバイル通信電子機器に広く用いられている。今後更に環境問題を解決する一つの手段として電気自動車・ハイブリッド電気自動車などに搭載する車載用途あるいは電動工具などの産業用途に利用拡大が進むと見られており、リチウムイオン電池の更なる高容量化と高出力化が切望されている。
リチウムイオン電池は少なくともリチウムイオンを可逆的に脱挿入可能な活物質を有する正極と負極、そして正極と負極を隔絶するセパレータを容器内に配置し、非水電解液を充填して構成されている。
正極はアルミニウム等の金属箔集電体にリチウムイオン電池用正極活物質(以下、正極活物質あるいは活物質という場合がある。)、導電助剤および結着剤を含有する電極剤を塗布し加圧成形したものである。現行の正極活物質としては、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、ニッケルをマンガン・コバルトで一部置換した三元系(LiNiMnCo1−x−y)、コバルト・アルミニウムで一部置換した三元系(LiNiCoAl1−x−y)、スピネル型マンガン酸リチウム(LiMn)などのリチウムと遷移金属の複合酸化物(以後、リチウム金属酸化物と称することがある。)の粉体が比較的良く用いられている。近年では安全性の高いオリビン系(リン酸系)が注目されており、特に資源的に豊富で安価な材料である鉄を含有したリン酸鉄リチウム(LiFePO)が実用化され始めていて、さらにエネルギー密度の高いリン酸マンガンリチウム(LiMnPO)が次世代活物質として注目されている。他には、V等の金属酸化物やTiS、MoS、NbSeなどの金属化合物等も利用されている。
また負極は銅などの金属箔集電体に、正極同様に活物質や導電助剤および結着剤を含有する電極剤を塗布し加圧成形したものであり、一般に負極の活物質としては、金属リチウムやLi−Al合金、Li−Sn等のリチウム合金、SiOやSiC、SiOC等を基本構成元素とするケイ素化合物、ポリアセチレンやポリピロール等のリチウムをドープした導電性高分子、リチウムイオンを結晶中に取り込んだ層間化合物や天然黒鉛、人造黒鉛、ハードカーボンなどの炭素材料等が用いられている。
現在実用化されている正極活物質においては、ニッケル酸リチウム(LiNiO)のNi原子の一部をCo原子とAl原子で置換したLiNi0.8Co0.15Al0.05や、Ni原子の一部をMn原子とCo原子で置換した三元系(LiMnNiCo1−x−y)が価格、特性、安全面でバランスが取れているため、これらの正極活物質が一般的に使用されている。
しかし、このような構造安定化への試みにも関わらず、繰り返し使用、あるいは高温での使用などの過酷な条件で使用した際に、容量劣化や内部抵抗の増加という電池劣化問題が依然として存在している。このような電池劣化は、正極活物質表面で電解液の分解反応が起こり、高抵抗な劣化層が生じることが原因と考えられている。例えば、活物質としてLiNi0.8Co0.15Al0.05を用いた場合において、サイクル試験や保存試験によって、特に表面において不活性な2価のNiが生成し、成長する結果、電子およびイオン伝導性が減少することが報告されている。
このような電池劣化を抑制するため、非特許文献1には、Al、AlPO、およびLiAlOなどの絶縁層を活物質粒子表面に被覆する手法が開示されている。また特許文献1および2ならびに非特許文献2には、酸化グラフェンと正極活物質を混合してから還元する手法が開示されている。
特開2013−93316号公報 国際公開第2014/115669号
J. Cho, Y. J. Kim, and B. Park, Chemistry of Materials, 12(12), 3788(2000). Qin Z., et al. Journal of Materials Chemistry, 2011, 22, 21144
非特許文献1に記載された絶縁層による被覆は、アルミ酸化物が電子伝導性およびイオン伝導性に乏しいため、電池劣化が抑制される代償として出力特性の低下が避けられない。
一方、特許文献1および非特許文献2では、酸化グラフェンと活物質を混合後、乾燥し、乾燥体を還元することで粒子を得ている。しかし、いずれの場合も500℃〜800℃の高温で還元性雰囲気又は不活性雰囲気で加熱することで酸化グラフェンを還元しているため、活物質は電子伝導性の高いグラフェンで覆われることになる。そうすると、電子伝導性が高くなる反面、イオン伝導性が乏しくなる傾向がある。
特許文献2では、導電性が低い活物質に導電性を付与することを目的に、酸化グラフェン粉末とオリビン系活物質粒子をボールミルで固相混合することにより前駆体粒子を作製し、空気中で150℃〜250℃の条件で還元している。この方法によると、オリビン系活物質粒子を用いた場合に電子伝導性とイオン導電性が両立するため出力特性は改善される。しかし混合にボールミルを用いているため、造粒体正極粒子を用いた場合に造粒体正極粒子が砕かれ比表面積が増加し、かつグラフェンの欠陥が増える傾向にあり、正極活物質表面で電解液の分解反応の抑制効果には課題が残る。
本発明の目的は、出力特性を損なうことなく、電池劣化が抑制された良好な高温貯蔵特性を有するリチウムイオン電池が得られるリチウムイオン電池用正極材料を提供することである。
上記課題を解決するための本発明は、正極活物質粒子が官能基化グラフェンで被覆されてなるリチウムイオン電池用正極材料であって、
前記官能基化グラフェンによる前記正極活物質粒子の平均被覆率が80%以上であり;
前記正極材料のX線光電子分光測定による測定値から下記式(1)により求められる官能基化率が0.3以上1.3以下であり;
前記正極材料のレーザーラマン分光法により測定されるDバンド(1360cm −1 付近)の強度(I(D))とGバンド(1590cm −1 付近)の強度(I(G))の比(I(D)/I(G))が0.7以上1.7以下であるリチウムイオン電池用正極材料である。
官能基化率=[(C−O一重結合に基づくピーク面積)+(C=O二重結合に基づくピーク面積)+(COO結合に基づくピーク面積)]/(C−C、C=C及びC−H結合に基づくピーク面積)・・・(1)
本発明のリチウムイオン電池用正極材料を用いてリチウムイオン電池を作製することにより、出力特性を損なうことなく、良好な高温貯蔵特性およびサイクル特性を有するリチウムイオン電池を得ることができる。
測定例2に従い、正極材料をX線光電子分光測定したときの、炭素に由来するピーク及びピークフィッティングの結果を示す図である。
<リチウムイオン電池用正極材料>
本発明におけるリチウムイオン電池用正極活物質粒子は、リチウム二次電池において正極として作用するものであれば特に制限は無く用いることができる。例えば、層状酸化物系活物質、リチウム過剰系活物質、マンガン酸リチウム(LiMn)などのスピネル型正極活物質、V等の金属酸化物活物質やTiS、MoS、NbSeなどの金属化合物系活物質、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガンリチウムなどのオリビン系活物質、などを用いることができるが、中でも正極活物質の表面劣化の影響が大きい層状酸化物系活物質に、本発明が好適に適用できる。
層状酸化物系活物質の種類は特に限定されないが、容量と出力、リチウムイオン電池用正極材料としての実績から、LiCoO、LiNiO、Li(NiCo)O(ただしx+y=1)、Li(NiCoAl)O(ただしx+y+z=1)、Li(NiMnCo)O(ただしx+y+z=1)、Li(NiMn)O(ただしx+y=1)、LiMnO−Li(NiMnCo)O(ただしx+y+z=1)、を好適に用いることができる。中でもNiを含む正極材料は、活物質自体の電子伝導性は高く、高容量である半面、安定性に乏しく、正極活物質の表面劣化の影響が大きいため、本発明の技術をより好適に適用できる。
また、本発明における活物質粒子は、ドーピング元素金属として、Na、Mg、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Cu、Zn、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、CsおよびBaからなる群より選択される一または二以上の金属元素を、活物質粒子に対して10重量%未満含んでいてもよい。
グラフェンとは、一般には1原子の厚さのsp結合炭素原子のシート(単層グラフェン)を指すが、本明細書においては、単層グラフェンが積層した薄片状の形態を持つ物質も含めてグラフェンと呼ぶ。また後述する官能基化グラフェン、および酸化グラフェンも同様に、積層した薄片状の形態を持つ物質も含めた呼称とする。
官能基化グラフェンとは、グラフェンのグラファイト構造のうちの一部が、水酸基、カルボキシル基、ケトン基、エポキシ基等の官能基によって修飾されているグラフェンを指す。本発明においては、官能基化グラフェンとして、官能基化率が0.3以上のグラフェンを用いることが好ましい。
官能基化率は、X線光電子分光測定により求められる。X線光電子分光測定では、炭素を含有する試料を測定すると284eV付近に炭素に由来するピークが検出されるが、炭素が酸素に結合している場合は高エネルギー側にシフトすることが知られている。具体的には炭素が酸素に結合していないC−C結合、C=C結合、C−H結合に基づくピークはシフトせずに284eV付近に検出され、C−O結合の場合286eV付近に、C=O結合の場合287.5eV付近に、COO結合の場合288.5eV付近にシフトする。そのため、炭素に由来する信号は、284eV付近、286eV付近、287.5eV付近、288.5eV付近のそれぞれのピークを重ね合わせた形で検出される。このピークをピークフィッティングにより各成分にピーク分離することにより、各々のピーク面積を算出することが可能であり、どの程度の割合で炭素が官能基化されているかがわかる。グラファイト成分に基づき286e付近と290.5eV付近にも信号が現われる。この信号はC−C、C=C及びC−H結合に基づく成分としてフィッティングする。
すなわち、官能基化率は、
官能基化率=[(C−O結合に基づくピーク面積)+(C=O結合に基づくピーク面積)+(COO結合に基づくピーク面積)]/(C−C、C=C及びC−H結合に基づくピーク面積)
で定義される数値である。
本発明の正極材料の官能基化グラフェンのグラフェン層に平行な方向の大きさは、小さすぎると官能基化グラフェン間の接触抵抗が増加するため電子伝導性が悪くなる。また、正極活物質粒子に官能基化グラフェンが被覆されにくくなる。そのため、本発明における官能基化グラフェンはある程度以上大きい必要がある。グラフェン層に平行な方向の大きさは、好ましくは1.0μm以上、より好ましくは5.0μm以上、さらに好ましくは10μm以上である。ここで、グラフェン層に平行な方向の大きさとは、グラフェンの面方向に垂直な方向から観察したときの最大径と最小径の平均を言い、ランダムに正極活物質粒子上のグラフェン10個について測定した場合の平均値を意味するものとする。
本発明の正極材料においては、正極活物質粒子を官能基化グラフェンにより被覆することで電解液の分解反応を抑制することができ、平均被覆率が高いほど反応を抑制できる。本発明において、被覆とは、後述する正極活物質粒子の粒子径(メジアン径)をL(μm)、後述する官能基化グラフェンの平均被覆厚みをT(μm)とした時にL>Tを満たす状態で正極活物質粒子の表面に官能基化グラフェンが存在していることを指す。本発明においては、正極活物質粒子が官能基化グラフェンによって平均被覆率80%以上で被覆されている必要があり、平均被覆率90%以上で被覆されていることがより好ましい。なお、本明細書における平均被覆率とは、走査電子顕微鏡(SEM)により正極材料、または正極材料を含む正極の表面を観察し、観察像を二次元平面画像とみなした上で正極材料表面におけるグラフェン被覆部分の占める割合を算出した値である。具体的には、SEMにより正極材料の1個を拡大して観察し、観察像を二次元平面画像とみなした上で正極活物質粒子の面積に占めるグラフェン被覆部分の面積を算出する。この操作をランダムに選択した正極活物質粒子50個について行い、その平均値を平均被覆率とする。
本発明の正極材料は、官能基化率が0.3以上1.3以下である。官能基化率が高すぎると、イオン伝導性が高くなる反面、グラファイト構造が崩れて電子伝導性が悪くなる。また、官能基と電解液との反応が起きやすくなり、高温貯蔵特性が悪化する。そのため電子伝導性を保つためには官能基化率が1.3以下である必要がある。また官能基化率が低すぎると、電子伝導性の高いグラフェンで覆われることで電子伝導性が高くなる反面、イオン伝導性が乏しくなる傾向がある。これらの観点から、官能基化率は0.5以上であることが好ましく、0.8より大きいことがより好ましい。また、官能基化率は、0.9以下であることが好ましい。
さらに平均被覆率が高く、かつ官能基化率が高い条件の組み合わせにより、出力特性と、高温貯蔵特性の両方を兼ね備えた正極材料を得ることが可能となる。平均被覆率が90%以上で、かつ官能基化率が0.8より大きく、1.3以下であることにより、特に高い高温貯蔵特性を達成することができる。
正極材料の官能基化率の測定方法は、前述の通りである。
図1は、測定例2に従い、正極材料をX線光電子分光測定したときの、炭素に由来するピーク及びピークフィッティングの結果を示す図である。実線で示した成分はそれぞれ、官能基化された炭素の成分であり、点線で示した成分はC−C、C=C及びC−H結合に基づく成分である。
本発明の正極材料は、レーザーラマン分光法により測定されるラマンスペクトルのDバンド(1360cm−1付近)の強度(I(D))とGバンド(1590cm−1付近)の強度(I(G))の比(I(D)/I(G))が0.7以上1.7以下であることが好ましい。I(D)/I(G)は、より好ましくは0.8以上1.1以下であり、さらに好ましくは0.8以上0.9以下である。
ラマン分光法において、炭素材料は、グラファイト構造にもとづく1590cm−1付近のピーク(Gバンドピーク)を持つ。Gバンドピークのピーク位置はグラファイト構造の欠陥が増えるにつれ高エネルギー側にシフトする。本発明の正極材料は、官能基化グラフェンを用いるため、ピーク位置は比較的高エネルギー側にあることが好ましく、具体的にはピーク位置は1600cm−1以上であることが好ましい。本明細書においては1600cm−1以上にシフトした場合でもGバンドと呼ぶこととする。
I(D)/I(G)は、欠陥の度合いの評価指標である。同程度の官能基化率であれば、I(D)/I(G)が大きいほどグラフェンの欠陥が多いことを意味し、欠陥をリチウムイオンが通ることによりリチウムイオン伝導性が向上するが、大きすぎると欠陥部分で電解液の分解反応が起き易くなる。一方で、I(D)/I(G)が小さすぎると、電子伝導性が高くなる反面、イオン伝導性が乏しくなる傾向がある。
なお、本発明におけるラマン分光法測定はすべて、励起レーザーにアルゴンイオンレーザーを用い、励起波長514.5nmで行った結果である。
本発明の正極材料の官能基化グラフェンの平均被覆厚みは、厚すぎるとイオン導電性が低下し、出力特性を損なうことから、好ましくは100nm以下、さらに好ましくは50nm以下、特に好ましくは20nm以下である。本発明における被覆厚みは、正極材料をエポキシ樹脂と混練してPETフィルムに塗布した後、硬化させて樹脂包埋したものを、このフィルムごと、イオンミリング装置によりミリングして、樹脂及び正極材料粒子の断面を出したものをサンプルとして測定する。このサンプルを、透過型電子顕微鏡を用いて観察し、正極材料表面上に存在するグラフェンのうち最も厚い部分と最も薄い部分の厚みの平均値を被覆厚みとする。これを任意に10個の正極活物質粒子について測定した平均値を平均被覆厚みとする。
本発明における正極材料の粒子径は、小さすぎると電極ペースト作製時に凝集しやすくなるため、電極塗膜作製が困難になるなどの問題が生じることがある。そのため、正極材料の粒子径は0.5μm以上であることが好ましく、1.0μm以上であることがより好ましく、3.0μm以上であることがさらに好ましい。また、粒子径が大きすぎると電解液が内部にまで浸透するのに時間がかかり、イオン導電性が悪くなる傾向がある。このことから粒子径は20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましい。ここで、正極材料の粒子径は、レーザー回折・散乱装置によって測定されるメジアン径を指す。当該測定は、水分散系で、透過度75%〜95%に調整して測定される。
本発明の正極材料において、官能基化グラフェンのグラフェン層に平行な方向の大きさを正極活物質粒子の粒子径(メジアン径)で除した値は、0.05以上3.0以下であることが好ましく、0.3以上2.0以下であることがより好ましく、0.5以上1.5以下であることがさらに好ましい。0.05を下回る、あるいは3.0を超えると、活物質の露出が多くなるため、正極活物質表面で電解液の分解反応の抑制効果が弱くなる。
本発明における正極材料の、酸素原子の炭素原子に対する元素割合(酸化度)は、高すぎると、イオン伝導性が高くなる反面、グラファイト構造が崩れて電子伝導性が悪くなる。また、官能基と電解液との反応が起きやすくなり、高温貯蔵特性が悪化する。そのため電子伝導性を保つためには酸化度が0.6以下であることが好ましく、0.5以下であることがより好ましい。また酸化度が低すぎると、電子伝導性の高いグラフェンで覆われることで電子伝導性が高くなる反面、イオン伝導性が乏しくなる傾向がある。これらの観点から、酸化度は0.3以上であることが好ましく、0.4以上であることがより好ましい。なお、本発明において、酸化度は、正極材料をX線光電子分光法により測定して求めた値とする。
<リチウムイオン電池用正極>
本発明のリチウムイオン電池用正極(以下、単に「正極」という場合がある。)は、本発明のリチウムイオン電池用正極材料と、必要に応じ導電助剤、結着剤を含有する合剤層を有するものである。
合剤層は、電子伝導性が高い導電助剤を更に含むことが好ましい。導電助剤としては、低官能基化グラフェン、黒鉛、炭素繊維、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノファイバーなどの炭素材料、銅、ニッケル、アルミニウムもしくは銀などの金属材料またはこれらの混合物の粉末や繊維などが好ましく、ストラクチャと呼ばれる一次粒子のつながりが発達したカーボンブラックや繊維形状のカーボンナノファイバーが電極の厚み方向の導電性を向上させるためより好ましい。導電助剤は、少なすぎると電子伝導性が悪くなり、多すぎると合剤層当りの活物質の割合が少なくなるため、導電助剤の含有量は、本発明の正極材料中0.50〜5.0重量%であることが好ましく、0.75〜1.5重量%であることがより好ましい。
リチウムイオン電池用正極の合剤層には通常、結着剤が含まれている。合剤層に含まれる結着剤としては、澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ジアセチルセルロースなどの多糖類、ポリビニルクロリド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのフッ素系重合体、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴムなどのゴム弾性を有するポリマー、ポリイミド前駆体および/またはポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、もしくはポリエチレンオキシドなどのポリエーテルが挙げられる。結着剤は、少なすぎると結着強度が弱くなり、多すぎると抵抗が大きくなるため、結着剤の含有量は、本発明の正極材料中0.50〜5.0重量%であることが好ましく、0.75〜1.5重量%であることがより好ましい。
通常、リチウムイオン電池用正極は、上記のような合剤層が集電体上に形成されてなる。集電体としては、金属箔あるいは金属メッシュが好ましく用いられ、特にアルミニウム箔が好ましく用いられる。
なお、正極中に存在するリチウムイオン電池用正極材料の物性を分析する場合は以下のように行う。まず電池をArグローブボックス内で解体し、正極をジメチルカーボネートで洗浄し、Arグローブボックスのサイドボックス内で1時間真空乾燥を行う。次にスパチュラを用いて合剤層を剥離し、得られた粉体をN−メチルピロリドン(NMP)に溶解させ、ろ過を行うことでろ物(リチウムイオン電池用正極材料、導電助剤、NMP)とろ液(NMP、その他)に分離する。得られたろ物を真空乾燥させ、再びろ物重量に対して5倍量のNMPを添加し、フィルミックス(登録商標)30−30型(プライミクス社)あるいは湿式ジェットミル等の強いせん断力がかかる装置を用いてリチウムイオン電池用正極材料と導電助剤を分離させる。得られた処理物を、SEM観察により求めた導電助剤の大きさとリチウムイオン電池用正極材料の粒子径のいずれか小さい方のみを通過可能な孔径を有するふるいに数回かけることでリチウムイオン電池用正極材料と導電助剤を分離する。このようにして単離されたリチウムイオン電池用正極材料の物性を分析することができる。
<リチウムイオン電池用正極材料の製造方法>
本発明のリチウムイオン電池用正極材料の製造方法は、酸化グラフェン分散液と正極活物質粒子とを液相混合した後に乾燥させる操作により、リチウムイオン電池用正極活物質粒子が酸化グラフェンで被覆されてなる前駆体粒子を準備する工程と、前駆体粒子を、X線光電子分光測定による測定値から下記式(1)により求められる官能基化率が0.3以上1.3以下となるように還元する工程とを含む。
官能基化率=[(C−O一重結合に基づくピーク面積)+(C=O二重結合に基づくピーク面積)+(COO結合に基づくピーク面積)]/(C−C、C=C及びC−H結合に基づくピーク面積) ・・・(1)
酸化グラフェンは公知の方法で作製することができる。また市販の酸化グラフェンを購入してもよい。黒鉛(グラファイト)を酸化したものは酸化グラファイトとも呼ばれるが、本明細書においては酸化グラフェンに含めるものとする。黒鉛は、酸化されるとグラファイト層間距離が長くなり、X線回折測定で9.0°〜13.0°にピークをもつようになる。
酸化グラフェンの原料となる黒鉛は、人造黒鉛・天然黒鉛のどちらでも良いが、天然黒鉛が好ましく用いられる。原料黒鉛のメッシュ数は20000以下が好ましく、5000以下がさらに好ましい。
酸化グラフェンの作製法は改良ハマーズ法が好ましい。その例を下記する。黒鉛(例えば石墨粉など)を原料にして、濃硫酸、硝酸ナトリウムと過マンガン酸カリウムを入れて、25〜50℃で、0.2〜5時間攪拌しながら反応させる。その後脱イオン水を加えて希釈し、懸濁液を得て、これを引き続き80〜100℃で5〜50分間反応させる。最後に過酸化水素と脱イオン水を加え、1〜30分間反応させて、酸化グラフェン分散液を得る。得られた酸化グラフェン分散液を濾過、洗浄し、酸化グラフェン分散液を得る。
各反応物の比の例としては、石墨粉、濃硫酸、硝酸ナトリウム、過マンガン酸カリウムと過酸化水素の比が10g:150〜300ml:2〜8g:10〜40g:40〜80gである。濃硫酸、硝酸ナトリウムと過マンガン酸カリウムを加える時は氷浴を利用して温度を制御する。過酸化水素と脱イオン水を加える時、脱イオン水の質量は過酸化水素の質量の10〜20倍である。
酸化グラフェンの欠陥はリチウムイオン電池用正極材料のリチウムイオン伝導性に影響するため、欠陥が多いものを用いることが好ましい。具体的にはレーザーラマン分光法により測定されるDバンド(1360cm−1)の強度(I(D))とGバンド(1590cm−1)の強度(I(G))の比(I(D)/I(G))が0.6以上1.0以下であることが好ましい。
酸化グラフェンの官能基化率は、還元処理をした後の官能基化グラフェンの官能基化率、および正極活物質の被覆状態に影響するため、適度な官能基化率であることが好ましい。具体的には、酸化グラフェンの官能基化率は0.3以上1.3以下であることが好ましい。
また、酸化グラフェンの酸素原子の炭素原子に対する元素割合(酸化度)は、高い方が、極性溶媒中で官能基同士の反発により、極性溶媒への分散性も向上し、凝集が少なくなり、薄く被覆される傾向がある。一方で層状酸化物正極活物質を酸化グラフェンで被覆した後に、低温加熱にて酸化グラフェンのみを還元できるように、酸化度は0.8以下であることが好ましい。なお、酸化度は、正極材料をX線光電子分光法により測定して求めた値とする。
酸化グラフェンの官能基化率と酸化度は、黒鉛の酸化反応に用いる酸化剤の量を変化させることで調整することができる。具体的には、酸化反応の際に用いる、黒鉛に対する硝酸ナトリウム及び過マンガン酸カリウムの量が多いほど高い酸化度になり、少ないほど低い酸化度になる。黒鉛に対する硝酸ナトリウムの重量比は特に限定されるものではないが、0.2以上0.8以下であることが好ましい。黒鉛に対する過マンガン酸カリウムの比は特に限定されるものではないが、1以上4以下であることが好ましい。
前駆体粒子は、酸化グラフェン分散液を正極活物質粒子と液相で混合した後、乾燥させる操作を、必要に応じ複数回繰り返すことにより準備することが好ましい。
この操作においては、まず酸化グラフェン粉末とNMPなどの極性溶媒を、フィルミックス(登録商標)30−30型(プライミクス社)等のミキサーを用いて混合して、酸化グラフェン分散液を得る。酸化グラフェン分散液の濃度としては、異なる酸化グラフェン同士の凝集する力よりも酸化グラフェン同士の官能基による静電反発力が起きやすくなるような条件が必要であるため、固形分濃度1.0%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましく、0.2%以下がさらに好ましい。
そして、得られた酸化グラフェン分散液と正極活物質粒子を混合する。混合するための機器としては、せん断力を加えることのできる装置が好ましく、例えばプラネタリーミキサー、フィルミックス(登録商標)(プライミクス社)、自公転ミキサー、遊星ボールミルなどが挙げられる。
さらに、酸化グラフェン分散液と正極活物質粒子を混合した後、ろ過やふるいなどを用いて活物質粒子を回収し、乾燥させる。乾燥の方法は特に限定されないが、溶媒を除去可能な温度以上に昇温可能な乾燥機を用いれば良く、例えばイナートオーブンを80℃以上に昇温した後、試料を投入し、40分間程度加熱する方法が挙げられる。より均一に、かつ多量に処理を行いたい場合は、例えばバッチ式ロータリーキルンなどを用いても良い。
回収した活物質粒子のSEM観察を行い、平均被覆率が50%に満たない場合は、複数回繰り返し酸化グラフェン分散液との混合および乾燥を行うことにより、高い被覆率の前駆体粒子を得るための製造条件を設定することができる。
酸化グラフェン分散液を正極活物質粒子と混合する前か、あるいは混合する際に、前記正極活物質粒子をシランカップリング剤と接触させることも、前駆体粒子の作製方法として好ましい。この方法を用いると、薄く、効率良く酸化グラフェンを活物質粒子に被覆することが可能となる。
ここでシランカップリング剤とは、一つの分子中に、有機物との反応や相互作用が期待できる、加水分解によりヒドロキシ基となって無機材料と化学結合しやすい反応基(加水分解性基)と、有機材料と化学結合しやすい反応基(反応性官能基)の両方を併せ持つ有機ケイ素化合物である。シランカップリング剤は、加水分解性基としてアルコキシシリル基を、反応性官能基としてビニル基、エポキシ基またはアミノ基を有するものが好ましく用いられる。
この方法で用いられるシランカップリング剤としては、活物質粒子と酸化グラフェンをより密着させやすい点で、加水分解性基と反応性官能基との最短距離が10原子以内のものが好ましい。例えば、好ましいシランカップリング剤として後述する3−アミノプロピルトリメトキシシラン(HNCSi(OCH)の場合は、加水分解性基であるメトキシシランのSi原子と反応性官能基であるアミノ基のN原子との間を最短距離で結ぶと炭素原子3原子分の距離で配置されていると考える。
この方法において好ましく用いられる最短距離が10原子以内のシランカップリング剤としては、以下のものが挙げられる。
ビニル基とアルコキシシリル基を有するシランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランが挙げられる。
エポキシ基とアルコキシシリル基を有するシランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、イソシアネート基とアルコキシシランを具有した3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
アミノ基とアルコキシシリル基を有するシランカップリング剤としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランが挙げられる。アミノ基とアルコキシシリル基を有するシランカップリング剤は、活物質表面のヒドロキシ基およびグラフェン表面の酸素原子を含む官能基の両方と容易に強固な結合を形成することが可能であるため、特に好ましく用いられる。
シランカップリング剤を接触するタイミングには特に制限はなく、正極活物質粒子と酸化グラフェンを混合するのと同時にシランカップリング剤を混合してもよいし、予め正極活物質粒子にシランカップリング剤を接触させるシランカップリング剤処理を行った上で、酸化グラフェン分散液と混合しても良い。
正極活物質粒子のシランカップリング剤処理においては、正極活物質とシランカップリング剤との間にシロキサン結合を含む化学結合が形成させる。すなわち、シランカップリング剤の加水分解性基が加水分解されてシラノール基が生じ、活物質表面のヒドロキシ基との間に水素結合などの比較的弱い結合を作った後、脱水縮合反応が起き、強固なシロキサン結合が形成される。
正極活物質粒子のシランカップリング剤処理においては、リチウムイオン電池用正極活物質とシランカップリング剤とを接触させ、熱処理を行うことが好ましい。熱処理の方法は特に限定されないが、80℃以上に昇温可能な乾燥機を用いれば良く、例えばイナートオーブンを80℃以上150℃未満に昇温した後、試料を投入し、40分間程度加熱する方法が挙げられる。より均一に、かつ多量に処理を行いたい場合は、例えばバッチ式ロータリーキルンなどを用いても良い。
正極活物質粒子とシランカップリング剤を接触させる方法としては、両者を混合することが好ましい。混合の方法は特に限定されないが、シランカップリング剤を直接、あるいはアルコールなどの溶媒に予め溶解させてから活物質粒子と混合する方法が挙げられる。混合するための機器としては、せん断力を加えることのできる装置が好ましく、例えばプラネタリーミキサー、フィルミックス(登録商標)(プライミクス社)、自公転ミキサー、遊星ボールミルなどがあげられる。また、シランカップリング剤を溶解させた溶液を活物質に噴霧することで活物質粒子とシランカップリング剤を接触させる方法を用いることもできる。
このようにして得た前駆体粒子は、必要に応じて洗浄することが好ましい。洗浄操作としては、例えば、前駆体粒子にNMPを加え、超音波処理を行った後、前駆体粒子の粒子径以下の孔を有するろ過やふるいなどを用いて粒子を回収し、乾燥させる操作を挙げることができる。洗浄操作により凝集した酸化グラフェンを取り除くことが可能となり、より粒子径が揃い、かつ薄い被覆状態の前駆体粒子を得ることができる。
本発明の正極材料は、上記の酸化グラフェンと正極活物質粒子を複合化して得た前駆体粒子をX線光電子分光測定による測定値から前記式(1)により求められる官能基化率が0.3以上1.3以下となるように還元することにより製造することができる。
酸化グラフェンの一般的な熱還元法では、不活性ガス雰囲気や還元性ガス雰囲気中で、500℃以上の高温で還元する。しかしこのような条件で還元を行うと酸化グラフェンが還元されすぎてしまい、活物質表面が電子伝導性の高いグラフェンで覆われるため、電子伝導性が高くなる反面、イオン伝導性が乏しくなる傾向がある。そのため、熱還元法を用いる場合、空気中において、150℃以上300℃以下の温度環境下で還元処理することが好ましい。特に、層状酸化物正極活物質は耐熱性が低く、かつ正極活物質自体の表面の電子伝導性が高いため、180℃以上250℃以下の温度環境下で還元処理するのが好ましい。
酸化グラフェンのもう一つの還元手法として、還元剤を使用する手法が挙げられる。ここでいう還元剤とは、常温で液体または固体の状態で存在する物質に限られ、還元性ガスは含まれない。還元剤を使用する還元法では、雰囲気制御した熱還元ほどには還元が進まないので、グラフェン中の官能基化率を保つのに好適である。
還元剤としては、有機還元剤もしくは無機還元剤があげられる。有機還元剤としてはアルデヒド系還元剤、ヒドラジン誘導体還元剤、アルコール系還元剤が挙げられる。
有機還元剤の中でもアルコール系還元剤は比較的穏やかに還元することができるため好適である。好適なアルコール系還元剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ベンジルアルコール、フェノール、カテコール、エタノールアミン、ドーパミン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、などが挙げられ、特にベンジルアルコール、カテコール、ドーパミンが好適である。
無機還元剤としては亜ジチオン酸ナトリウム、亜ジチオン酸カリウム、亜リン酸、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジンなどがあげられ、無機還元剤の中でも亜ジチオン酸ナトリウム、亜ジチオン酸カリウムは、官能基を比較的保持しながら還元できるので、好適に用いられる。
活物質として層状酸化物系活物質を使用する場合、層状酸化物系活物質は還元剤で変性されやすいため、空気中で80℃〜150℃で酸化グラフェンを還元する手法が好適である。一方、オリビン系活物質は安定で還元剤により変性されにくいため、還元剤を使用して還元する手法が好適である。
酸化グラフェンの還元においては上記の空気中で150℃〜300℃で熱還元する手法と、還元剤で還元する手法を組み合わせても良く、組み合わせることによりグラフェンの官能基比率をさらにコントロールしやすくなる。
(測定例1:平均被覆率、官能基化グラフェンの大きさ、平均被覆厚み)
正極材料を、走査電子顕微鏡(日立製作所、S−5500)により3千倍〜40万倍にて観察し、観察像を二次元平面画像とみなした上で正極活物質粒子の面積に占めるグラフェン被覆部分の面積から平均被覆率を算出した。この操作をランダムに選択した正極活物質粒子50個について行い、その平均値を平均被覆率とした。
また、ランダムに選択した複数の正極活物質粒子上のグラフェン10個に対して、グラフェン層に平行な方向の最大径と最小径を測定し、平均値を官能基化グラフェンの大きさとした。
また、正極材料をエポキシ樹脂と混練し、PETフィルムに塗布した後、硬化させて樹脂包埋した。このフィルムごと、イオンミリング装置(日立製作所、IM4000)によりミリングして、樹脂及び正極材料粒子の断面を出して測定サンプルを作製した。このサンプルを、透過型電子顕微鏡を用いて観察し、正極材料表面上に存在するグラフェンのうち最も厚い部分と最も薄い部分の厚みの平均値を被覆厚みとし、これを任意に10個の正極活物質粒子について測定した平均値を平均被覆厚みとした。
(測定例2:官能基化率、酸化度)
X線光電子測定装置として、Quantera SXM (PHI 社製))を使用した。励起X線は、monochromatic Al Kα1,2 線(1486.6 eV)とし、X線径は200μm、光電子脱出角度は45°とした。
官能基化率は、ナロースキャンの炭素原子に基づくピークのピークシフトから求めた。具体的には、炭素原子に基づくピークを、C=C結合、C−H結合に基づく284eV付近のピーク、C−O結合の場合に基づく286eV付近のピーク、C=O結合に基づく287.5eV付近のピーク、COO結合に基づく288.5eV付近のピーク、の4つの成分にピーク分離し、各ピークの面積比から下記式(1)により求めた。
官能基化率=[(C−O一重結合に基づくピーク面積)+(C=O二重結合に基づくピーク面積)+(COO結合に基づくピーク面積)]/(C−C、C=C及びC−H結合に基づくピーク面積) ・・・(1)
官能基化グラフェンの、酸素原子の炭素原子に対する割合(酸化度)は、ワイドスキャンの酸素原子のピーク面積と、炭素原子のピーク面積から求めた。
(測定例3:I(D)/I(G))
ラマン測定はRamanor T−64000(Jobin Yvon/愛宕物産)を用いて測定した。ビーム径は100μm、光源はアルゴンイオンレーザー(波長:514.5nm)を用い、得られたラマンスペクトルのDバンド(1360cm−1付近)の強度(I(D))とGバンド(1590cm−1付近)の強度(I(G))の比(I(D)/I(G))を求めた。
(測定例4:放電容量および負荷特性)
電極を以下のように作製した。各実施例、比較例で作製した正極材料を100重量部、導電助剤としてアセチレンブラック(電気化学工業株式会社製デンカブラック(登録商標))を5重量部、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン#7200(クレハ社製)5重量部、溶剤としてN−メチルピロリドンを50重量部加えたものをプラネタリーミキサー(プライミクス社製)で混合して電極ペーストを得た。電極ペーストをアルミニウム箔(厚さ15μm)にドクターブレードを用いて片面塗布し、80℃、30分間乾燥して電極板を得た。乾燥後の電極合剤層(アルミニウム箔除く)は40μmとした。
作製した電極板を直径15.9mmに切り出して正極とし、直径16.1mm厚さ0.2mmに切り出したリチウム箔を負極とし、直径17mmに切り出したセルガード#2400(セルガード社製)セパレータとして、LiPFを1M含有するエチレンカーボネート:ジエチルカーボネート=7:3の溶媒を電解液として、2032型コイン電池を作製し、充放電試験機(東洋システム社製 TOSCAT−3100)にセットし、電気化学評価を行った。
充放電測定において、
活物質がLiMnPOの場合、上限電圧4.4V、下限電圧2.7V、
活物質がLiFePOの場合、上限電圧4.0V、下限電圧2.5V、
活物質がLiMnの場合、上限電圧4.3V、下限電圧2.7V、
活物質がLiNi1/3Mn1/3Co1/3の場合、上限電圧4.2V、下限電圧3.0V
とし、活物質がLi過剰系活物質以外の場合、充電レートはすべて1Cで固定し、放電レートは1Cで3回行った後、続けて3Cで3回行い、各レートの3回目の放電時の容量を放電容量とした。測定により得られた1C放電容量に対する3C放電容量の比(3C放電容量/1C放電容量)を負荷特性とした。
活物質がLi過剰系活物質の場合、電流レート0.1Cで上限電圧4.5Vまで定電流充電した後、2.0Vまで放電する充放電を2回繰り返す、続けて上限電圧4.8V下限電圧2.0Vで3回充放電し、3回目の放電時の容量を放電容量とした。測定により得られた上限電圧4.5Vの放電容量に対する上限電圧4.8Vの放電容量の比を負荷特性とした。
(測定例5:高温貯蔵特性)
測定例4の試験を行った後、上限電圧まで1Cで定電流充電を行い、その後上限電圧で定電圧充電を行った。定電圧充電の終了電流は0.01Cであった。その後、電池を試験機から取り外し(充電状態)、イナートオーブン(ヤマト化学社製、DN411I)を用いて、60℃で1週間保存した。1週間後、電池を取り出し、Arグローブボックス(美和製作所社製)内に搬送し、解体し、正極のみを取り出した。取り出した正極を用いて、直径17mmに切り出したセルガード#2400(セルガード社製)セパレータとして、対極として金属リチウムを用い、電解液としてLiPF/EC+DMC(富山薬品(株)製 LI−PASTE1)を200μL用いて、コインセルを再び作製し、測定例4と同様の条件により放電容量を測定した。ここでも各レートの3回目の放電時の容量を放電容量とした。測定例4で測定した1C放電容量(貯蔵前)に対する本測定例で測定した1C放電容量(貯蔵後)の割合(%)を高温貯蔵特性とした。
活物質がLi過剰系活物質の場合、同様にコインセルを再び作成し、測定例4と同様の条件により放電容量を測定し、貯蔵後の放電容量とした。測定例4で測定した上限電圧4.5Vの放電容量(貯蔵前)に対する本測定例で測定した上限電圧4.5Vの放電容量(貯蔵後)の割合(%)を高温貯蔵特性とした。
(合成例1−1:酸化グラフェン粉末の合成)
2000メッシュの天然黒鉛粉末(上海一帆石墨有限会社 メジアン径20μm)を原料として用いた。氷浴中の10gの天然黒鉛粉末に、220mlの98%濃硫酸、5gの硝酸ナトリウム、30gの過マンガン酸カリウムを入れ、1時間機械攪拌し、混合液の温度は20℃以下で保持した。上述混合液を氷浴から取り出し、35℃水浴中で4時間攪拌反応し、その後イオン交換水500mlを入れて得られた懸濁液を90℃で更に15分反応を行った。最後に600mlのイオン交換水と50mlの過酸化水素を入れ、5分間の反応を行い、酸化グラフェン分散液を得た。これを濾過し、希塩酸溶液で金属イオンを洗浄し、イオン交換水で酸を洗浄し、pHが7になるまで洗浄を繰り返し、酸化グラフェンゲルを作製した。酸化グラフェンゲルを凍結乾燥することにより、酸化グラフェン粉末を得た。
得られた酸化グラフェンの官能基化率は1.3、I(D)/I(G)は0.990、酸化度は0.69であった。
(合成例1−2:酸化グラフェン粉末の合成)
硝酸ナトリウムと過マンガン酸カリウムの量の黒鉛に対する比を合成例1の70%とした以外は、合成例1−1と同様に、酸化グラフェンゲルを作製した。酸化グラフェンゲルを凍結乾燥することにより、酸化グラフェン粉末を得た。
得られた酸化グラフェンの官能基化率は0.6、I(D)/I(G)は0.6、酸化度は0.30であった。
(合成例1−3:官能基化グラフェン粉末の合成)
2000メッシュの天然黒鉛粉末(上海一帆石墨有限会社 メジアン径20μm)1gと塩化ナトリウム20gを乳鉢で10分〜15分混合したあと、水洗し乾燥した。乾燥した黒鉛粉末と、23mlの濃硫酸をフラスコ中で24時間、室温で混合した。その後、攪拌しながら40℃に加熱して100mgの硝酸ナトリウムを加えた。次に、攪拌を続け、過マンガン酸カリウム500mgを熱暴走しないように温度を45℃以下に保ちながら少量ずつ添加し、30分間保持した。3mlの水を加えて5分間待ったあと、さらに3mlの水を加え5分間待ち、40mlの水を加えて15分間待った。最後に140mlのイオン交換水と10mlの過酸化水素を入れ、5分間の反応を行い、酸化グラフェン分散液を得た。これを濾過し、希塩酸溶液で金属イオンを洗浄し、イオン交換水で酸を洗浄し、pHが7になるまで洗浄を繰り返し、酸化グラフェンゲルを作製した。この酸化グラフェンゲルを凍結乾燥することにより、酸化グラフェン粉末を得た。
得られた酸化グラフェンの官能基化率は0.4、I(D)/I(G)は0.410、酸化度は0.3であった。
(合成例1−4:酸化グラフェン粉末の合成)
硝酸ナトリウムと過マンガン酸カリウムの量の黒鉛に対する比を合成例1の400%とした以外は、合成例1−1と同様に、酸化グラフェンゲルを作製した。酸化グラフェンゲルを凍結乾燥することにより、酸化グラフェン粉末を得た。
得られた酸化グラフェンの官能基化率は1.5、I(D)/I(G)は1.1、酸化度は0.85であった。
(合成例1−5:酸化グラフェン粉末の合成)
天然黒鉛粉末(メジアン径10.0μm)を用いたこと以外は合成例1−1と同様に、酸化グラフェンゲルを作製した。酸化グラフェンゲルを凍結乾燥することにより、酸化グラフェン粉末を得た。
得られた酸化グラフェンの官能基化率は1.3、I(D)/I(G)は0.92、酸化度は0.71であった。
(合成例1−6:酸化グラフェン粉末の合成)
天然黒鉛粉末(メジアン径5.0μm)を用いたこと以外は合成例1−1と同様に、酸化グラフェンゲルを作製した。酸化グラフェンゲルを凍結乾燥することにより、酸化グラフェン粉末を得た。
得られた酸化グラフェンの官能基化率は1.4、I(D)/I(G)は0.90、酸化度は0.75であった。
(合成例1−7:酸化グラフェン粉末の合成)
天然黒鉛粉末(メジアン径3.0μm)を用いたこと以外は合成例1−1と同様に、酸化グラフェンゲルを作製した。酸化グラフェンゲルを凍結乾燥することにより、酸化グラフェン粉末を得た。
得られた酸化グラフェンの官能基化率は1.3、I(D)/I(G)は0.91、酸化度は0.76であった。
(合成例1−8:酸化グラフェン粉末の合成)
天然黒鉛粉末(メジアン径1.0μm)を用いたこと以外は合成例1−1と同様に、酸化グラフェンゲルを作製した。酸化グラフェンゲルを凍結乾燥することにより、酸化グラフェン粉末を得た。
得られた酸化グラフェンの官能基化率は1.3、I(D)/I(G)は0.92、酸化度は0.91であった。
(合成例2−1:リチウムイオン電池用正極活物質粒子の合成)
Ni、Co、Alの硝酸塩を、化学量論比(Ni:Co:Al=0.8:0.15:0.05)に合わせて均一溶液を作り、アンモニア水でpH=9に合わせて共沈させた後、洗浄して150℃で6時間乾燥させた。その後、LiCOをモル比に合わせて混合して粉砕した後、750℃で12時間焼成して、LiNi0.8Co0.15Al0.05粒子を合成した。得られた活物質粒子のメジアン径は10.0μmであった。
(合成例2−2:Li過剰系活物質粒子の合成)
Ni,Mn,Co,Liの酢酸塩を組成比でのモル比で秤量し、酢酸塩と等モルのクエン酸と共に純水に溶解させてクエン酸錯体溶液を調整し、スプレードライにて前駆体を得た。次いで得られた前駆体を400℃の仮焼成後粉砕し、ペレット成型して大気中900℃にて本焼成することで、0.5LiMnO−0.5Li(Ni1/3Co1/3Mn1/3)Oの組成比のLi過剰系活物質を得た。得られた活物質粒子のメジアン径は10.0μmであった。
(実施例1)
合成例1−1に従って合成した酸化グラフェン0.15gにNMPを29.85g加え、フィルミックス(登録商標)30−30型(プライミクス社)を用いて混合して、酸化グラフェン分散液を得た。その後、分散液にLiNi0.5Mn0.3Co0.2(ユミコア社製NCM523、メジアン径10μmの造粒体である層状酸化物活物質粒子)の活物質粒子3gを加え、30−30型(プライミクス社)で回転速度40m/s(せん断速度:毎秒40000)で60秒処理した。処理後、孔径5μmのふるいにより沈降した粒子と上澄み液とを分けた後、粒子のみイナートオーブン(ヤマト化学社製、DN411I)を用いて80℃で1時間乾燥した。乾燥後の粒子を再び上澄み液に加え、混合、乾燥する工程を合計5回繰り返すことにより前駆体粒子を得た。
前駆体粒子を、オーブンを用いて150℃の空気中で6時間加熱することにより、酸化グラフェンを還元し、正極材料を得た。
(実施例2)
実施例1において、前駆体粒子を作製する際に混合・乾燥を合計4回にした点と、オーブンを用いて200℃空気中で加熱した点以外は同様に、正極材料を作製した。
(実施例3)
実施例1において、酸化グラフェン分散液を得た後に、0.05gのアミノプロピルトリエトキシシラン(APTS)を加えた点と、前駆体粒子を作製する際に混合・乾燥を合計3回にした点と、オーブンを用いて200℃空気中で加熱した点以外は同様にして正極材料を作製した。
(実施例4)
実施例1において、酸化グラフェン分散液を得た後に、0.05gのアミノプロピルトリエトキシシランを加えた点と、前駆体粒子を作製する際に混合・乾燥を合計2回にした点と、オーブンを用いて190℃空気中で加熱した点以外は同様にして正極材料を作製した。
(実施例5)
合成例1−3に従って合成した酸化グラフェンを用いて酸化グラフェン分散液を得たこと、還元条件を300℃空気中で6時間の加熱としたこと以外は実施例1と同様にして正極材料を作製した。
(実施例6)
前駆体粒子を作製する際に混合・乾燥を合計7回にした点と、還元条件を、150℃空気中で6時間の加熱とした点以外は実施例1と同様にして、正極材料を作製した。
(実施例7)
NMPの添加量を14.85gとしたと、前駆体粒子を作製する際に混合・乾燥を合計8回にした点と、還元条件を200℃空気中で6時間の加熱とした点以外は実施例1と同様の方法で正極材料を作製した。
(実施例8)
還元条件を120℃窒素雰囲気とした点以外は実施例1と同様にして正極材料を作製した。
(実施例9)
合成例1−2に従って合成した酸化グラフェンを用いた点と、酸化グラフェン分散液を得た後に、0.05gのアミノプロピルトリエトキシシランを加えた点と、還元条件を180℃空気中での加熱した点以外は実施例1と同様に正極材料を作製した。
(実施例10)
活物質粒子を合成例2−1で得られたNCA活物質粒子に変えた点と、還元条件を250℃空気中で6時間の加熱とした点以外は実施例1と同様の方法で正極材料を作製した。
(実施例11)
活物質粒子を合成例2−2で得られたLi過剰系活物質粒子に変えた点と、還元条件を、250℃空気中で6時間の加熱とした点以外は実施例1と同様の方法で、正極材料を作製した。
(実施例12)
活物質粒子をLCO活物質(LiCoO2、宝泉株式会社製)に変えた点と、還元条件を、250℃空気中で6時間の加熱とした点以外は実施例1と同様の方法で正極材料を作製した。
(実施例13)
LiNi0.5Mn0.3Co0.2(ユミコア社製NCM523、メジアン径20μmの造粒体である層状酸化物活物質粒子)の活物質粒子としたこと以外は実施例1と同様にして正極材料を作製した。
(実施例14)
LiNi0.5Mn0.3Co0.2(ユミコア社製NCM523、メジアン径5.0μmの造粒体である層状酸化物活物質粒子)の活物質粒子としたこと以外は実施例1と同様にして正極材料を作製した。
(実施例15)
合成例1−5に従って合成した酸化グラフェンを用いて酸化グラフェン分散液を得たこと、LiNi0.5Mn0.3Co0.2(ユミコア社製NCM523、メジアン径1.0μmの造粒体である層状酸化物活物質粒子)の活物質粒子としたこと以外は実施例1と同様にして正極材料を作製した。
(実施例16)
合成例1−6に従って合成した酸化グラフェンを用いて酸化グラフェン分散液を得たこと、以外は実施例1と同様にして正極材料を作製した。
(実施例17)
合成例1−7に従って合成した酸化グラフェンを用いて酸化グラフェン分散液を得たこと、以外は実施例1と同様にして正極材料を作製した。
(実施例18)
合成例1−8に従って合成した酸化グラフェンを用いて酸化グラフェン分散液を得たこと、以外は実施例1と同様にして正極材料を作製した。
(実施例19)
LiNi0.5Mn0.3Co0.2(ユミコア社製NCM523、メジアン径0.5μmの造粒体である層状酸化物活物質粒子)の活物質粒子としたこと以外は実施例1と同様にして正極材料を作製した。
(比較例1)
合成例1−1に従って合成した酸化グラフェン粉末0.24gにLiNi0.5Mn0.3Co0.2(ユミコア社製NCM523)の活物質粒子3gとNMP3gを加え、得られたペーストを30−30型(プライミクス社)で回転速度40m/s(せん断速度:毎秒40000)で60秒処理した。処理後、イナートオーブン(ヤマト化学社製、DN411I)を用いて80℃で1時間乾燥した。その後圧力0.01MPaの真空雰囲気中で、で、温度100℃で乾燥させて乾燥体を作製した。次に、この乾燥体を粉砕して粉体混合物を作製し、粉体混合物を圧力0.01MPa以下の真空雰囲気中で、温度300℃で6時間加熱することにより、酸化グラフェンを還元し、正極材料を作製した。
(比較例2)
前駆体粒子を、600℃空気中で6時間加熱することにより、酸化グラフェンを還元した点以外は実施例1と同様の方法で正極材料を作製した。
(比較例3)
実施例1において、前駆体粒子を作製する際に混合・乾燥を1回のみとした点以外は実施例1と同様の方法で正極材料を作製した。
(比較例4)
実施例1において、合成例1−2に従って合成した酸化グラフェンを用いた点と前駆体粒子を作製する際に混合・乾燥を合計3回にした点と複合体粒子前駆体を、500℃空気中で6時間加熱することにより、酸化グラフェンを還元した点以外は実施例1と同様の方法で正極材料を作製した。
(比較例5)
実施例1において、合成例1−4に従って合成した酸化グラフェンを用いた点と前駆体粒子を作製する際に混合・乾燥を合計2回にした点と複合体粒子前駆体を、300℃空気中で6時間加熱することにより、酸化グラフェンを還元した点以外は実施例1と同様にして正極材料を作製した。
(比較例6)
実施例1において、合成例1−1に従って合成した酸化グラフェンを用いた点と前駆体粒子を作製する際に混合・乾燥を合計2回にした点と、還元条件を80℃空気中で6時間の加熱とした点以外は実施例1と同様の方法で正極材料を作製した。
(比較例7)
(合成例1)で作製した酸化グラフェン粉末0.06gとLiNi0.5Mn0.3Co0.2(ユミコア社製NCM523)の活物質粒子3gと、水0.1gと、ジルコニアボール(直径1cm)7個をジルコニア容器(12ml)内に入れて、遊星型ボールミル(フリッチュ社製、型式P−5)で300rpm、6時間混合し、前駆体粒子を得た。前駆体粒子を、イナートオーブン(ヤマト化学社製、DN411I)を用いて150℃空気中で6時間加熱することにより、酸化グラフェンを還元し、NMC活物質粒子−高官能基化グラフェン複合電極材料を得た。
各実施例、比較例で作製した正極材料について、測定例1〜5に従って各種物性および電池性能評価の測定を行った結果を表1に示す。
Figure 0006930196

Claims (14)

  1. 正極活物質粒子が官能基化グラフェンで被覆されてなるリチウムイオン電池用正極材料であって、
    前記官能基化グラフェンによる前記正極活物質粒子の平均被覆率が80%以上であり;
    前記正極材料のX線光電子分光測定による測定値から下記式(1)により求められる官能基化率が0.3以上1.3以下であり;
    前記正極材料のレーザーラマン分光法により測定されるDバンド(1360cm −1 付近)の強度(I(D))とGバンド(1590cm −1 付近)の強度(I(G))の比(I(D)/I(G))が0.7以上1.7以下であるリチウムイオン電池用正極材料。
    官能基化率=[(C−O一重結合に基づくピーク面積)+(C=O二重結合に基づくピーク面積)+(COO結合に基づくピーク面積)]/(C−C、C=C及びC−H結合に基づくピーク面積)・・・(1)
  2. 前記I(D)/I(G)が0.8以上1.1以下である、請求項1に記載のリチウムイオン電池用正極材料。
  3. 前記官能基化グラフェンは、グラフェン層に平行な方向の大きさが1μm以上である、請求項1または2に記載のリチウムイオン電池用正極材料。
  4. 前記官能基化グラフェンによる前記正極活物質粒子の平均被覆率が90%以上である、請求項1〜3のいずれかに記載のリチウムイオン電池用正極材料。
  5. 前記正極材料の官能基化率が0.8以上1.3以下である、請求項1〜4のいずれかに記載のリチウムイオン電池用正極材料。
  6. 前記官能基化グラフェンによる被覆厚みが100nm以下である、請求項1〜5のいずれかに記載のリチウムイオン電池用正極材料。
  7. 前記正極活物質粒子が層状酸化物活物質粒子である、請求項1〜6のいずれかに記載のリチウムイオン電池用正極材料。
  8. 前記正極活物質粒子がNiを含む層状酸化物活物質粒子である、請求項7に記載のリチウムイオン電池用正極材料。
  9. 前記官能基化グラフェンのグラフェン層に平行な方向の大きさを前記正極活物質粒子の粒子径で除した値が0.05以上3.0以下である、請求項1〜8のいずれかに記載のリチウムイオン電池用正極材料。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載のリチウムイオン電池用正極材料を含むリチウムイオン電池用正極。
  11. 請求項10に記載のリチウムイオン電池用正極を用いてなるリチウムイオン電池。
  12. 酸化グラフェン分散液と正極活物質粒子とを液相混合した後に乾燥させる操作を複数回繰り返すことにより、リチウムイオン電池用正極活物質粒子が酸化グラフェンで被覆されてなる前駆体粒子を準備する工程;
    該前駆体粒子を、X線光電子分光測定による測定値から下記式(1)により求められる官能基化率が0.3以上1.3以下となるように還元する工程;
    を有するリチウムイオン電池用正極材料の製造方法。
    官能基化率=[(C−O一重結合に基づくピーク面積)+(C=O二重結合に基づくピーク面積)+(COO結合に基づくピーク面積)]/(C−C、C=C及びC−H結合に基づくピーク面積)・・・(1)
  13. 前記前駆体粒子を還元する工程を150℃以上300℃以下の温度環境下で行う、請求項12に記載のリチウムイオン電池用正極材料の製造方法。
  14. 酸化グラフェン分散液を正極活物質粒子と混合する前か、あるいは混合する際に、前記正極活物質粒子をシランカップリング剤と接触させる、請求項12または13に記載のリチウムイオン電池用正極材料の製造方法。
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