JP6929656B2 - マスクブランク、転写用マスク、転写用マスクの製造方法および半導体デバイスの製造方法 - Google Patents

マスクブランク、転写用マスク、転写用マスクの製造方法および半導体デバイスの製造方法 Download PDF

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本発明は、マスクブランク、そのマスクブランクを用いて製造された転写用マスクおよびその製造方法、並びに、上記の転写用マスクを用いた半導体デバイスの製造方法に関するものである。
一般に、半導体デバイスの製造工程では、フォトリソグラフィ法を用いて微細パターンの形成が行われている。また、この微細パターンの形成には、通常何枚もの転写用マスクが使用される。半導体デバイスのパターンを微細化するに当たっては、転写用マスクに形成されるマスクパターンの微細化に加え、フォトリソグラフィで使用される露光光源の波長の短波長化が必要となる。半導体デバイス製造の際に用いられる露光光源は、近年ではKrFエキシマレーザー(波長248nm)から、ArFエキシマレーザー(波長193nm)へと短波長化が進んでいる。
転写用マスクの一種に、ハーフトーン型位相シフトマスクがある。ハーフトーン型位相シフトマスクの位相シフト膜には、モリブデンシリサイド(MoSi)系の材料が広く用いられる。しかし、特許文献1に開示されている通り、MoSi系膜は、ArFエキシマレーザーの露光光に対する耐性(いわゆるArF耐光性)が低いということが近年判明している。特許文献1では、パターンが形成された後のMoSi系膜に対し、プラズマ処理、UV照射処理、または加熱処理を行い、MoSi系膜のパターンの表面に不動態膜を形成することで、ArF耐光性が高められている。
一方、特許文献2では、SiNからなる位相シフト膜を備える位相シフトマスクが開示されており、特許文献3では、SiNからなる位相シフト膜は高いArF耐光性を有することが確認されたことが記されている。
また、マスクブランクから転写用マスクを製造する際に行われるマスク欠陥検査で薄膜のパターンに黒欠陥が検出された場合、近年、その薄膜パターンをEB欠陥修正技術で修正することが増えてきている。EB欠陥修正では、二フッ化キセノン(XeF)ガス等の非励起状態のフッ素系ガスを黒欠陥部分の周囲に供給しつつ、黒欠陥部分に電子線を照射することで黒欠陥部分をエッチングして除去する。
特開2010−217514号公報 特開平7−159981号公報 特開2014−137388号公報
一般に、位相シフト膜は、露光光を所定の透過率で透過する機能と、その位相シフト膜を透過した露光光に対し、その位相シフト膜の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した露光光との間で所定の位相差を生じさせる機能とを兼ね備えることが求められる。また、その位相シフト膜に求められる所定の透過率と所定の位相差の条件は様々であり、その求められる条件を満たすように位相シフト膜の光学特性を調整する必要がある。SiN系材料は、窒素含有量が増加するにしたがって、屈折率nが大きくなり、消衰係数kが小さくなる傾向がある。このため、SiN系材料からなる単層膜で位相シフト膜を構成する場合、主に窒素含有量と膜厚を調節することで、その位相シフト膜の透過率と位相差を調整する。
一般に、位相シフト膜に限らず、マスクブランクの薄膜はスパッタリングを用いて形成される。透光性基板上に薄膜をスパッタリングで形成する場合、比較的安定して成膜できる条件を選定することが通常行われている。たとえば、SiN膜をスパッタリングで成膜する場合、成膜室内にSiターゲットを配置し、その成膜室内にAr等の貴ガスと窒素の混合ガスを絶えず循環させた状態でSiターゲットに電圧を印加して貴ガスをプラズマ化させ、それによりプラズマ化した貴ガスがSiターゲットに衝突することでSiターゲットからSi粒子が飛び出し、飛び出したSi粒子が途中窒素を取りこんで透光性基板にSiN膜が堆積するというプロセスが行われる(このようなスパッタリングを一般に「反応性スパッタリング」という。)。成膜されるSiN膜の窒素含有量は、主に上記混合ガス中の窒素の混合比率を増減させることで調節される。
特許文献3に開示されているように、SiN膜を成膜する際、混合ガス中の窒素の混合比率によっては、安定した成膜が可能な場合と安定した成膜が困難な場合がある。たとえば、SiN膜を反応性スパッタリングで成膜する場合、化学量論的に安定なSiやそれに近い窒素含有量の膜が形成されるような混合ガス中の窒素ガスの混合比率の場合(このような成膜条件の領域を、「ポイズンモード」あるいは「反応モード」という。)、比較的安定して成膜することができる。また、窒素含有量の少ない膜が形成されるような混合ガス中の窒素ガスの混合比率の場合(このような成膜条件の領域を、「メタルモード」という。)も、比較的安定して成膜することができる。一方、このポイズンモードとメタルモードとの間にある混合ガス中の窒素ガス混合比率の場合(このような成膜条件の領域を「遷移モード」という。)、成膜が不安定になりやすく、SiN膜の面内や膜厚方向での組成や光学特性の均一性が低かったり、形成された膜に欠陥が多発したりする。
従前、このような遷移モードで成膜されたSiN膜でなければ、単層膜で所定の透過率と位相差を兼ね備えることが困難な場合があり、問題となっていた。特許文献3では、メタルモードで成膜された窒素含有量が少ないSiN層とポイズンモードで成膜された窒素含有量が多いSiN層とを積層した多層構造の位相シフト膜とすることによって、透過率と位相差を調整している。
しかし、このような多層構造の位相シフト膜では、位相シフト膜のパターンをEB欠陥修正する際、各層の修正レートの差が比較的大きい。このため、位相シフト膜パターンに対してEB欠陥修正を行ったときに、修正した箇所のパターン側壁に段差が発生することが避け難いという問題があった。
一方、透光性基板上に転写パターンを有するSiN膜を備えた転写用マスクを露光装置にセットし、転写対象物に対してArFエキシマレーザーの露光光(以下、ArF露光光という。)による露光転写を繰り返し行ったときに、SiN膜のパターンの表面に異物(いわゆるヘイズ)が発生することは既に知られている。ポイズンモードで成膜した窒素含有量が比較的多いSiN膜の場合、メタルモードで成膜した窒素含有量が比較的少ないSiN膜に比べ、露光光の照射を受けたときに発生するヘイズの量が大幅に増加することが新たに判明し、問題となっていた。
そこで、本発明は、従来の課題を解決するためになされたものであり、透光性基板上に、転写パターンを形成するための薄膜を備えたマスクブランクにおいて、その薄膜がSiN系材料層を含んでいる場合でも、その薄膜のパターンに対してEB欠陥修正を行ったときに、パターン側壁での段差の発生を抑制できるとともに、ArF露光光による露光転写を繰り返し行った後でも、薄膜のパターン表面でのヘイズの発生が少ないマスクブランクを提供することを目的とする。また、本発明は、このマスクブランクを用いて製造される転写用マスクを提供することを目的とする。さらに、本発明は、このような転写用マスクを製造する方法を提供することを目的とする。加えて、本発明は、このような転写用マスクを用いた半導体デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
前記の課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
(構成1)
透光性基板上に、転写パターンを形成するための薄膜を備えたマスクブランクであって、
前記薄膜は、下層と上層がこの順に積層した構造を有し、
前記下層は、ケイ素と窒素とからなる材料、または半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素とからなる材料で形成され、
前記下層は、前記透光性基板側から前記上層側に向かって窒素含有量が増加する組成傾斜構造を有し、
前記上層は、ケイ素と酸素とからなる材料、または半金属元素、貴ガス、ハロゲン、炭素、リン、硫黄およびセレンから選ばれる1以上の元素とケイ素と酸素とからなる材料で形成されている
ことを特徴とするマスクブランク。
(構成2)
前記下層は、ケイ素と窒素とからなる材料で形成されていることを特徴とする構成1記載のマスクブランク。
(構成3)
前記上層は、ケイ素と酸素とからなる材料で形成されていることを特徴とする構成1または2に記載のマスクブランク。
(構成4)
前記上層は、酸素含有量が50原子%以上であることを特徴とする構成1から3のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成5)
前記下層における前記上層側の領域は、窒素含有量が50原子%以上であることを特徴とする構成1から4のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成6)
前記上層は、厚さが2nm以上であることを特徴とする構成1から5のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成7)
前記下層の厚さは、前記上層の厚さよりも厚いことを特徴とする構成1から6のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成8)
前記上層は、前記下層の表面に接して設けられていることを特徴とする構成1から7のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成9)
前記薄膜は、位相シフト膜であることを特徴とする構成1から8のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成10)
前記位相シフト膜は、ArFエキシマレーザーの露光光を1%以上の透過率で透過させる機能と、前記位相シフト膜を透過した前記露光光に対して150度以上200度以下の位相シフトを生じさせる機能とを有することを特徴とする構成9記載のマスクブランク。
(構成11)
前記位相シフト膜上に、遮光膜を備えることを特徴とする構成9または10に記載のマスクブランク。
(構成12)
透光性基板上に、転写パターンを有する薄膜を備えた転写用マスクであって、
前記薄膜は、下層と上層がこの順に積層した構造を有し、
前記下層は、ケイ素と窒素とからなる材料、または半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素とからなる材料で形成され、
前記下層は、前記透光性基板側から前記上層側に向かって窒素含有量が増加する組成傾斜構造を有し、
前記上層は、ケイ素と酸素とからなる材料、または半金属元素、貴ガス、ハロゲン、炭素、リン、硫黄およびセレンから選ばれる1以上の元素とケイ素と酸素とからなる材料で形成されている
ことを特徴とする転写用マスク。
(構成13)
前記下層は、ケイ素と窒素とからなる材料で形成されていることを特徴とする構成12記載の転写用マスク。
(構成14)
前記上層は、ケイ素と酸素とからなる材料で形成されていることを特徴とする構成12または13に記載の転写用マスク。
(構成15)
前記上層は、酸素含有量が50原子%以上であることを特徴とする構成12から14のいずれかに記載の転写用マスク。
(構成16)
前記下層における前記上層側の領域は、窒素含有量が50原子%以上であることを特徴とする構成12から15のいずれかに記載の転写用マスク。
(構成17)
前記上層は、厚さが2nm以上であることを特徴とする構成12から16のいずれかに記載の転写用マスク。
(構成18)
前記下層の厚さは、前記上層の厚さよりも厚いことを特徴とする構成12から17のいずれかに記載の転写用マスク。
(構成19)
前記上層は、前記下層の表面に接して設けられていることを特徴とする構成12から18のいずれかに記載の転写用マスク。
(構成20)
前記薄膜は、位相シフト膜であることを特徴とする構成12から19のいずれかに記載の転写用マスク。
(構成21)
前記位相シフト膜は、ArFエキシマレーザーの露光光を1%以上の透過率で透過させる機能と、前記位相シフト膜を透過した前記露光光に対して150度以上200度以下の位相シフトを生じさせる機能とを有することを特徴とする構成20記載の転写用マスク。
(構成22)
前記位相シフト膜上に、遮光帯パターンを含むパターンを有する遮光膜を備えることを特徴とする構成20または21に記載の転写用マスク。
(構成23)
構成1から11のいずれかに記載のマスクブランクを用いた転写用マスクの製造方法であって、ドライエッチングにより前記薄膜に転写パターンを形成する工程を備えることを特徴とする転写用マスクの製造方法。
(構成24)
構成12から22のいずれかに記載の転写用マスクを用い、半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写する工程を備えることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
(構成25)
構成23記載の転写用マスクの製造方法により製造された転写用マスクを用い、半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写する工程を備えることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
本発明のマスクブランクは、透光性基板上に、転写パターンを形成するための薄膜を備え、その薄膜は下層と上層がこの順に積層した構造を有し、下層が窒化ケイ素系材料で形成され、透光性基板側から上層側に向かって窒素含有量が増加する組成傾斜構造を有しており、上層が酸化ケイ素系材料で形成されることを特徴とする。このような薄膜の構成とすることにより、その薄膜のパターンに対してEB欠陥修正を行ったときに、パターン側壁での段差の発生を抑制することができる。それに加え、この薄膜のパターンを有するマスクブランクを用いて製造した転写用マスクは、ArF露光光による露光転写を繰り返し行った後でも、薄膜のパターン表面でのアンモニアを含んだヘイズの発生が少ない。
また、本発明の転写用マスクは、転写パターンを有する薄膜が上記の本発明のマスクブランクの薄膜と同様の構成としていることを特徴としている。このような転写用マスクとすることにより、この転写用マスクの製造途上で転写パターンを有する薄膜に対してEB欠陥修正を行ったときに、パターン側壁での段差の発生を抑制することができる。それに加え、この転写用マスクは、ArF露光光による露光転写を繰り返し行った後でも、薄膜のパターン表面でのアンモニアを含んだヘイズの発生が少ない。このため、本発明の転写用マスクは、転写精度の高い転写用マスクとなる。
本発明の実施形態におけるマスクブランクの構成を示す断面図である。 本発明の実施形態における転写用マスクの製造工程を示す断面図である。
先ず、本発明の完成に至った経緯を述べる。
最初に、本発明者らは、SiNからなる位相シフト膜を単層の組成傾斜構造とすることで、多層構造の位相シフト膜が有する技術的課題が解決できないかと考えた。
組成傾斜構造のSiN膜には、透光性基板側から反対の表面側(以下、単に表面側という。)に向かって窒素含有量が増加する構造(増加モードの反応性スパッタリングによって形成した膜構造)と、逆に透光性基板側から表面側に向かって窒素含有量が減少する構造(減少モードの反応性スパッタリングによって形成した膜構造)の2つが考えられる。
SiN膜パターンに対するEB欠陥修正では、SiN膜パターンの黒欠陥部分に対してXeFガス等の非励起状態のフッ素系ガスを供給し、黒欠陥部分の表面にそのフッ素系ガスを吸着させてから、黒欠陥部分に対して電子線を照射する。これにより、黒欠陥部分のケイ素原子は励起してフッ素との結合が促進され、ケイ素の高次フッ化物となって揮発する。黒欠陥部分の周囲のSiN膜パターンにフッ素系ガスを吸着しないようにすることは困難であるため、EB欠陥修正時に黒欠陥部分の周囲のSiN膜パターンも非励起状態のフッ素系ガスによりエッチングされる。このEB欠陥修正では、電子線の照射で励起されたSiN膜の部分(黒欠陥部分)のエッチングレート(修正レート)と励起していないSiN膜の部分のエッチングレート(非励起ガスエッチングレート)との差が十分に確保されることで、黒欠陥部分のみを除去することが可能となる。
SiN膜パターンは窒素含有量が少ないほど、EB欠陥修正の修正レートが速くなる傾向がある。また、SiN膜パターンは窒素含有量が少ないほど、非励起ガスエッチングレートも速くなる傾向がある。このため、窒素含有量が少ないSiN膜パターンに対してEB欠陥修正を行った場合、黒欠陥部分の周囲も、非励起状態のフッ素系ガスでエッチングされやすい。
SiN膜パターンの黒欠陥部分に対するEB欠陥修正では、薄膜の表面側から基板側に向かって黒欠陥部分のエッチングが進行する。また、EB欠陥修正では、黒欠陥部分に電子線を照射して黒欠陥部分を励起させるが、このとき、黒欠陥部分に接するSiN膜パターンの非欠陥部分は電子線照射の影響を多少受ける。このため、EB欠陥修正時、SiN膜パターンの非欠陥部分も黒欠陥部分の修正レートに比べて大幅に遅くはなるが、エッチングはされてしまう。また、EB欠陥修正時、SiN膜パターンの非欠陥部分における表面側の領域(以下、表面側領域という。)が基板側の領域(以下、基板側領域という。)よりも長い時間、エッチングされ続ける。SiNからなる位相シフト膜が、透光性基板側から表面側に向かって窒素含有量が減少する構造である場合、基板側領域よりも長い時間エッチングされる表面側領域の方が基板側領域よりも修正レートが速いことから、EB欠陥修正時にSiN膜パターンの表面側領域が側壁方向に過度にエッチングされやすくなる。このため、EB欠陥修正を行った後のSiN膜パターンの側壁がスロープ形状になりやすく、SiN膜パターンの側壁の垂直性が低くなりやすい。これに対し、SiNからなる位相シフト膜が、透光性基板側から表面側に向かって窒素含有量が増加する構造である場合、基板側領域よりも長い時間エッチングされる表面側領域の方が基板側領域よりも修正レートが遅いことから、EB欠陥修正時にSiN膜パターンの表面側領域が側壁方向に過度にエッチングされることが抑制される。また、基板側領域の修正レートが速いことから、表面側領域の黒欠陥部分を除去して表面側領域の非欠陥部分の側壁が露出してから、基板側領域の黒欠陥部分を除去し終えるまでの間、表面側領域の非欠陥部分の側壁がエッチングされるが、その時間は短くてすむ。これらのことから、EB欠陥修正を行った後のSiN膜パターンの側壁の垂直性を高くすることが比較的容易になる。
一方、組成傾斜構造のSiN膜を形成するときの反応性スパッタリングの安定性においても、増加モードで成膜する場合の方が減少モードで成膜する場合よりも安定しやすい。
このため、本発明者らは、SiN膜パターンに対するEB欠陥修正に係る上記の関係や組成傾斜構造のSiN膜を形成するときの反応性スパッタリングの安定性を考慮し、透光性基板側から表面側に向かって窒素含有量が増加する組成傾斜構造のSiNからなる位相シフト膜が好ましいという考えに至った。
しかし、透光性基板上に、透光性基板側から表面側に向かって窒素含有量が増加する組成傾斜構造のSiNからなる位相シフト膜(薄膜)を備えるマスクブランクから、位相シフトマスク(転写用マスク)を製造し、半導体デバイス上のレジスト膜にArFエキシマレーザーを露光光とする露光転写を繰り返し行ったところ、位相シフト膜のパターンの表面に異物(いわゆるヘイズ)が多発する現象が発生した。このヘイズはアンモニアを含むものであった。一方、透光性基板上に、透光性基板側から表面側に向かって窒素含有量が減少する組成傾斜構造のSiNからなる位相シフト膜を備えるマスクブランクから、同様に位相シフトマスク(転写用マスク)を製造し、半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写を繰り返し行った。その結果、透光性基板側から表面側に向かって窒素含有量が増加する組成傾斜構造のSiNからなる位相シフト膜の場合に比べて、ヘイズの発生数は大幅に少なかった。しかし、上述のとおり、透光性基板側から表面側に向かって窒素含有量が増加する組成傾斜構造のSiNからなる位相シフト膜の場合、EB欠陥修正を行った箇所の位相シフト膜パターンの側壁の垂直性が低いという問題がある。
そこで、さらに鋭意研究を行った結果、透光性基板側から表面側に向かって窒素含有量が増加する組成傾斜構造の窒化ケイ素系材料層の上に酸化ケイ素系材料層を積層し、その際、この積層膜を、露光光に対して所定の透過率と位相差になるように調整し、これを位相シフト膜とすればよいという結論に至り、以降に示す本発明を完成させた。
次に、本発明の各実施の形態について説明する。本発明のマスクブランクは、バイナリマスク、位相シフトマスク等の各種マスクを製造するためのマスクブランクに適用可能なものである。以降では、ハーフトーン型位相シフトマスクを製造するためのマスクブランクについて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るマスクブランク100の構成を示す断面図である。
図1に示すマスクブランク100は、透光性基板1上に、位相シフト膜(転写パターンを形成するための薄膜)2、遮光膜3およびハードマスク膜4がこの順に積層された構造を有する。位相シフト膜2は、下層21と上層22がこの順に積層した構造を有し、下層21は、ケイ素と窒素とからなる材料、または半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素とからなる材料で形成され、下層21は、透光性基板1側から上層22側に向かって窒素含有量が増加する組成傾斜構造を有し、上層22は、ケイ素と酸素とからなる材料、または半金属元素、貴ガス、ハロゲン、炭素、リン、硫黄およびセレンから選ばれる1以上の元素とケイ素と酸素とからなる材料で形成されていることを特徴とする。
透光性基板1は、ケイ素と酸素を含有する材料からなり、合成石英ガラス、石英ガラス、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、低熱膨張ガラス(SiO−TiOガラス等)などのガラス材料で形成することができる。これらの中でも、合成石英ガラスは、ArF露光光に対する透過率が高く、マスクブランクの透光性基板を形成する材料として特に好ましい。
位相シフト膜2は、ArF露光光を所定の透過率で透過させる機能を有する。ArF露光光に対する透過率は1%以上であることが求められ、2%以上であると好ましく、10%以上であるとより好ましく、15%以上であるとさらに好ましい。透過率が1%未満であると、位相シフト効果を有効に機能させることができない。近年、半導体基板(ウェハ)上のレジスト膜に対する露光・現像プロセスとしてNTD(Negative Tone Development)が用いられるようになってきている。NTDプロセスでは、ブライトフィールドマスク(パターン開口率が高い転写用マスク)がよく用いられる。ブライトフィールドの位相シフトマスクでは、位相シフト膜の露光光に対する透過率を10%以上とすることにより、透光部を透過した光の0次光と1次光のバランスがよくなる。このバランスがよくなると、位相シフト膜を透過した露光光が0次光に干渉して光強度を減衰させる効果がより大きくなって、レジスト膜上でのパターン解像性が向上する。このため、位相シフト膜2のArF露光光に対する透過率が10%以上であると好ましい。ArF露光光に対する透過率が15%以上である場合は、位相シフト効果による転写像(投影光学像)のパターンエッジ強調効果がより高まる。一方、ArF露光光に対する透過率は30%以下であると好ましく、20%以下であるとより好ましい。
位相シフト膜2は、適切な位相シフト効果を得るために、透過したArF露光光に対して、この位相シフト膜2の厚さと同じ距離だけ空気中を通過したArF露光光との間で所定の位相差を生じさせる機能を有する。その位相差は、透過したArF露光光に対して、150度以上200度以下の範囲であると好ましい。位相差は、160度以上であるとより好ましく、170度以上であるとさらに好ましい。一方、位相差は、190度以下であるとより好ましく、180度以下であるとさらに好ましい。位相シフト膜2にパターンを形成するときのドライエッチング時に、透光性基板1が微小にエッチングされることによる位相差の増加の影響を小さくするためである。また、近年の露光装置による位相シフトマスクへのArF露光光の照射方式が、位相シフト膜2の膜面の垂直方向に対して所定角度で傾斜した方向からArF露光光を入射させるものが増えてきているためでもある。
位相シフト膜2は、下層21と上層22がこの順に積層した構造を有する。上層22は、下層21の表面に接して設けられていることが好ましい。位相シフト膜2は、窒化ケイ素系材料で形成される下層21上に酸化ケイ素系材料で形成される上層22が積層した構造であるため、ArF露光光による露光転写を繰り返し行った後でも、位相シフト膜2のパターン表面でのアンモニアを含んだヘイズの発生を抑制することができる。
下層21は、ケイ素と窒素とからなる材料、または半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素とからなる材料(以下、これらの材料を総称して窒化ケイ素系材料という場合がある。)で形成される。
下層21は、ケイ素に加え、いずれの半金属元素を含有してもよい。この半金属元素の中でも、ホウ素、ゲルマニウム、アンチモンおよびテルルから選ばれる1以上の元素を含有させると、スパッタリングターゲットとして用いるケイ素の導電性を高めることが期待できるため、好ましい。
また、下層21は、窒素に加え、いずれの非金属元素を含有してもよい。ここで、本発明における非金属元素は、狭義の非金属元素(窒素、炭素、酸素、リン、硫黄、セレン、水素)、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)および貴ガスを含むものをいう。この非金属元素の中でも、炭素、フッ素および水素から選ばれる1以上の元素を含有させると好ましい。下層21は、酸素の含有量を10原子%以下に抑えることが好ましく、5原子%以下とすることがより好ましく、積極的に酸素を含有させることをしない(X線光電子分光分析等による組成分析を行ったときに検出下限値以下。)ことがさらに好ましい。窒化ケイ素系材料に酸素を含有させると、消衰係数kが大きく低下する傾向があり、位相シフト膜2の全体の厚さが厚くなってしまう。また、透光性基板1は、合成石英ガラス等の酸化ケイ素を主成分とする材料で形成されていることが一般的である。下層21が透光性基板1の表面に接して配置される場合、その層が酸素を含有すると、酸素を含む窒化ケイ素系材料膜の組成と透光性基板の組成との差が小さくなり、位相シフト膜2にパターンを形成するときに行われるフッ素系ガスによるドライエッチングにおいて、透光性基板1に接する下層21と透光性基板1との間でエッチング選択性が得られにくくなるという問題が生じることがある。また、下層21の酸素含有量が多いと、EB欠陥修正をおこなったときの修正レートが大幅に遅くなる。
貴ガスは、反応性スパッタリングで位相シフト膜2を成膜する際に成膜室内に存在することによって成膜速度を大きくし、生産性を向上させることができる元素である。この貴ガスがプラズマ化し、ターゲットに衝突することでターゲットからターゲット構成元素が飛び出し、途中、反応性ガスを取りこみつつ、透光性基板1上に下層21が形成される。このターゲット構成元素がターゲットから飛び出し、透光性基板1に付着するまでの間に成膜室中の貴ガスがわずかに取り込まれる。この反応性スパッタリングで必要とされる貴ガスとして好ましいものとしては、アルゴン、クリプトン、キセノンが挙げられる。また、位相シフト膜2の応力を緩和するために、原子量の小さいヘリウム、ネオンを下層21に積極的に取りこませてもよい。
下層21は、ケイ素と窒素とからなる材料で形成されることが好ましい。なお、貴ガスは、薄膜に対してラザフォード後方散乱分析(RBS:Rutherford Back−Scattering Spectrometry)やX線光電子分光分析(XPS:X−ray Photoelectron Spectroscopy)のような組成分析を行っても検出することが容易ではない元素である。このため、前記のケイ素と窒素とからなる材料には、貴ガスを含有する材料も包含しているとみなすことができる。
下層21は、透光性基板1側から上層22側に向かって窒素含有量が増加する組成傾斜構造を有する。下層21がこのような組成傾斜構造であるため、位相シフトマスクの製造途上で転写パターンを有する位相シフト膜2に対してEB欠陥修正を行ったときに、黒欠陥を修正した箇所のパターン側壁の垂直性を高くすることができる。また、増加モードで成膜する場合の方が減少モードで成膜する場合よりも、反応性スパッタリングが安定するため、窒素含有量が増加する組成傾斜構造の下層21は形成しやすい。
下層21における上層22側の領域(すなわち、下層21の上側の領域)は、その領域内の平均の窒素含有量が50原子%以上であると好ましく、52原子%以上であるとより好ましい。窒素含有量が50原子%以上であると、位相シフト膜2に求められる透過率を確保しつつ、より薄い厚さで求められる位相差を確保することができる。一方、下層21における上層22側の領域は、その領域内の平均の窒素含有量が、Siの混合比に相当する57原子%以下であると好ましく、55原子%以下であるとより好ましい。窒素をSiの混合比よりも多く含有させようとすると、下層21をアモルファスや微結晶構造にすることが困難になる。また、下層21の表面粗さが大幅に悪化する。なお、窒化ケイ素系材料は、窒素含有量が増加するにしたがって、屈折率nが大きくなり、消衰係数kが小さくなる傾向がある。ここで、下層21における上層22側の領域とは、下層21の上層22側の表面から透光性基板1側に向かって10nmの厚さの位置までの領域のことをいう。
また、下層21における透光性基板1側の領域(すなわち、下層21の下側の領域)は、窒素含有量が20原子%以上であると好ましく、25原子%以上であるとより好ましい。窒素含有量が20原子%未満であると、電子線の照射の影響を受けていない状態での非励起状態のフッ素系ガスに対する下層21のエッチングレート(非励起ガスエッチングレート)が速くなりすぎる。この場合、EB欠陥修正を行ったときに、電子線の照射の影響を受けていない領域であっても非励起状態のフッ素系ガスが転写パターンの下層21の側壁に接触したときに下層21をエッチングしてしまい、位相シフト膜2のパターンの側壁に大きな段差が発生してしまう。一方、下層21における透光性基板1側の領域は、窒素含有量が、40原子%以下であると好ましく、35原子%以下であるとより好ましい。ここで、下層21における透光性基板1側の領域とは、下層21の透光性基板1側の表面から上層22側に向かって、10nmの厚さの位置までの領域のことをいう。
下層21の組成傾斜構造は、透光性基板1側から上層22側に向かって、窒素含有量が、連続的に徐々に増加する構造、階段状に段階的に増加する構造、連続的に徐々に増加する部分と階段状に段階的に増加する部分が組み合わさった構造などであれば、いずれの構造でもよい。なお、下層21の透光性基板1側の領域と上層22側の領域の間に挟まれる領域における平均の窒素含有量は、透光性基板1側の領域における平均の窒素含有量と上層22側の領域における平均の窒素含有量の間の数値であることが好ましい。
組成傾斜構造は、XPSなどを用いて確認することができる。
従来の表面が大気中に露出した窒化ケイ素系材料の位相シフト膜を用いた位相シフトマスクにおける、アンモニアを含んだヘイズが多く発生するという問題は、位相シフト膜中の窒素が要因になっていると思われる。すなわち、位相シフト膜がArFエキシマレーザーのような高エネルギー光の照射を受けたとき、位相シフト膜中の窒素がその表面に付着している水分やオゾンと化学反応を繰り返し、硝酸アンモニウム等のアンモニアを含む化合物が位相シフト膜の表面に析出する。さらに、位相シフト膜を構成する窒化ケイ素系材料は、ArFエキシマレーザーのような高エネルギー光の照射を受けると窒素が移動しやすくなり、位相シフト膜中の窒素が表面に供給される状態になる。これによって、位相シフト膜の表面にアンモニアを含む化合物(ヘイズ)の生成が促進される状態になっているものと推測される。
このようなメカニズムでヘイズが生成するため、位相シフト膜の表面に供給される窒素が多いほどヘイズの発生量が多くなると推測される。したがって、後述する実施例および比較例で行った位相シフト膜から溶出するイオン成分測定において、アンモニウムイオンが多く検出されるほど、位相シフト膜の表面に供給されていた窒素が多いといえるため、ヘイズ発生量が多くなると推測される。
窒化ケイ素系材料の位相シフト膜の表層を加熱処理等で酸化させて酸化被膜を形成することで、位相シフト膜内からの窒素の供給を抑制できるか検証したところ、酸化被膜を形成しない構成の位相シフト膜との間で差がほとんど見られなかった。この点を考慮し、位相シフト膜2は、窒化ケイ素系材料の下層21と酸化ケイ素系材料の上層22を異なる成膜条件によるスパッタリング法で成膜して積層した構造としている。すなわち、位相シフト膜2は、下層21と上層22の間に界面を有する構成となっている。このような位相シフト膜2は、下層21が上層22側に向かって窒素含有量が多くなる組成傾斜構造を有する窒化ケイ素系材料で形成されているにも関わらず、位相シフト膜2の表面にアンモニアを含むヘイズが生成されることを抑制できる。
上層22は、ケイ素と酸素とからなる材料、または半金属元素、貴ガス、ハロゲン、炭素、リン、硫黄およびセレンから選ばれる1以上の元素とケイ素と酸素とからなる材料(以下、これらの材料を総称して酸化ケイ素系材料という場合がある。)で形成される。
上層22は、ケイ素に加え、いずれの半金属元素を含有してもよい。この半金属元素の中でも、ホウ素、ゲルマニウム、アンチモンおよびテルルから選ばれる1以上の元素を含有させると、スパッタリングターゲットとして用いるケイ素の導電性を高めることが期待できるため、好ましい。
上層22は、酸素に加え、非金属元素として、貴ガス、ハロゲン、炭素、リン、硫黄およびセレンを含有してもよい。貴ガスは、スパッタリングで薄膜を成膜する際に成膜室内に存在することによって成膜速度を大きくし、生産性を向上させることができる元素である。このスパッタリングで必要とされる貴ガスとして好ましいものとしては、アルゴン、クリプトン、キセノンが挙げられる。また、位相シフト膜2の応力を緩和するために、原子量の小さいヘリウム、ネオンを上層22に積極的に取りこませることができる。
上層22は、ケイ素と酸素とからなる材料で形成することが好ましい。なお、貴ガスは、薄膜に対してRBSやXPSのような組成分析を行っても検出することが困難な元素である。このため、前記のケイ素と酸素とからなる材料には、貴ガスを含有する材料も包含しているとみなすことができる。
上層22は、酸素含有量が50原子%以上であると好ましく、52原子%以上であるとより好ましい。酸素含有量が50原子%以上であると、上層22中の酸素と未結合のケイ素の存在比率が大幅に低下し、上層22内の原子構造の空隙が小さくなる。そして、このような上層22の場合、下層21中の窒素が上層22内へ侵入しにくくなり、上層22の表面に窒素が移動してくることが困難になる。その結果、位相シフト膜2のパターン表面でのアンモニアを含んだヘイズの発生が抑制される。また、上層22の酸素含有量は、SiOの混合比に相当する67原子%以下であると好ましく、65原子%以下であるとより好ましい。なお、酸化ケイ素系材料は、酸素含有量が増加するに従って、窒素を含有する場合ほど顕著ではないが屈折率nが大きくなる傾向がある。また、酸化ケイ素系材料は、酸素含有量が増加するに従って、窒素を含有する場合よりも顕著に消衰係数kが小さくなる傾向がある。
上層22は、厚さが2nm以上であると好ましい。上層22の厚さが2nm以上であると、ArF露光光による露光転写を繰り返し行った後でも、位相シフト膜2のパターン表面でのアンモニアを含んだヘイズの発生を抑制しやすい。また、上層22は、厚さが3nm以上であるとより好ましい。一方、上層22は、厚さが20nm以下であると好ましく、15nm以下であるとより好ましく、10nm以下であるとさらに好ましい。上層22は、下層21に比べて屈折率nおよび消衰係数kがともに小さい。位相シフト膜は、所定の位相差と透過率の条件を同時に満たす必要があり、上層22が厚くなると、所定の位相差と透過率を満たそうとすると位相シフト膜2全体が厚くなってしまう。このような位相シフト膜2は、パターンの倒壊が発生しやすく、EMF(ElectroMagnetic Field)バイアスも大きくなる。
下層21の厚さは、上層22の厚さよりも厚いことが好ましい。下層21が厚くなると、位相シフト膜2全体が厚くなり、位相シフト膜2のパターンの倒壊が発生しやすく、EMF(ElectroMagnetic Field)バイアスも大きくなる。例えば、下層21は、厚さが50nm以上であると好ましく、60nm以上であるとより好ましい。下層21の厚さが50nm未満であると、所定の位相差を確保するために位相シフト膜2の厚さを大幅に厚くする必要が生じてしまう。下層21は、厚さが90nm以下であると好ましく、80nm以下であるとより好ましい。下層21の厚さが90nmを超えると、位相シフト膜2のパターンの倒壊が発生しやすく、EMF(ElectroMagnetic Field)バイアスも大きくなる。
下層21は、全体の平均値でのArF露光光に対する屈折率n(以下、単に屈折率nという。)が2.0以上であると好ましく、2.2以上であるとより好ましい。一方、下層21は、全体の平均値での屈折率nが3.0以下であると好ましく、2.8以下であるとより好ましい。また、下層21は、全体の平均値でのArF露光光に対する消衰係数k(以下、単に消衰係数kという。)が0.1よりも大きいと好ましく、0.2以上であるとより好ましい。一方、下層21は、全体の平均値での消衰係数kが1.2以下であると好ましく、1.0以下であるとより好ましい。
上層22は、屈折率nが2.0未満であると好ましく、1.9以下であるとより好ましく、1.8以下であるとさらに好ましい。一方、上層22は、屈折率nが1.4以上であると好ましく、1.5以上であるとより好ましい。また、上層22は、消衰係数kが0.1以下であると好ましい。一方、上層22は、消衰係数kが0以上であると好ましい。
下層21と上層22とがこの順に積層した構造で位相シフト膜2を構成した場合、位相シフト膜2として求められる光学特性であるArF露光光に対する所定の位相差と所定の透過率を満たすには、下層21および上層22が、それぞれ上記の屈折率nと消衰係数kの範囲でなければ実現が困難である。
薄膜の屈折率nおよび消衰係数kは、その薄膜の組成だけで決まるものではない。その薄膜の膜密度および結晶状態なども、屈折率nおよび消衰係数kを左右する要素である。このため、スパッタリングで薄膜を成膜するときの諸条件を調整して、その薄膜が所望の屈折率nおよび消衰係数kとなるように成膜する。下層21および上層22を、上記の屈折率nおよび消衰係数kの範囲にするには、スパッタリングで薄膜を成膜する際に、スパッタリングガスの組成を調整することだけに限られない。スパッタリングで薄膜を成膜する際における成膜室内の圧力、ターゲットに印加する電力、ターゲットと透光性基板との間の距離等の位置関係など多岐にわたる。また、これらの成膜条件は成膜装置に固有のものであり、形成される薄膜が所望の屈折率nおよび消衰係数kになるように適宜調整されるものである。
位相シフト膜2は、エッチングでパターンを形成したときのパターンエッジラフネスが良好になるなどの理由からアモルファス構造であることが最も好ましい。位相シフト膜2をアモルファス構造にすることが難しい組成である場合は、アモルファス構造と微結晶構造が混在した状態であることが好ましい。
下層21および上層22は、スパッタリングによって形成される。DCスパッタリング、RFスパッタリングおよびイオンビームスパッタリングなどのいずれのスパッタリングも適用可能である。導電性が低いターゲット(ケイ素ターゲット、半金属元素を含有しないあるいは含有量の少ないケイ素化合物ターゲットなど)を用いる場合においては、RFスパッタリングやイオンビームスパッタリングを適用することが好ましいが、成膜レートを考慮すると、RFスパッタリングを適用することがより好ましい。
下層21は、ケイ素ターゲットまたはケイ素に半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素を含有する材料からなるターゲットを用い、窒素系ガスと貴ガスを含むスパッタリングガス中での反応性スパッタリングによって形成される。反応性スパッタリングによって下層21を形成する際、下層21が、透光性基板1側から上層22側に向かって、窒素含有量が連続的に徐々に増加する組成傾斜構造の場合には、窒素が徐々に増えるように貴ガスの流量に対する窒素系ガスの流量の比を調整する。下層21が、窒素含有量が階段状に段階的に増加する組成傾斜構造の場合には、窒素が段階的に増えるように貴ガスの流量に対する窒素系ガスの流量の比を調整する。
上層22は、二酸化ケイ素(SiO)ターゲット、または二酸化ケイ素(SiO)に半金属元素、ハロゲン、炭素、リン、硫黄およびセレンから選ばれる1以上の元素を含有する材料からなるターゲットを用い、貴ガスを含むスパッタリングガス中でのスパッタリングによって形成される。また、上層22は、ケイ素ターゲット、またはケイ素に半金属元素、ハロゲン、炭素、リン、硫黄およびセレンから選ばれる1以上の元素を含有する材料からなるターゲットを用い、酸素ガスと貴ガスを含むスパッタリングガス中での反応性スパッタリングによっても形成することもできる。
下層21を形成する際にスパッタリングガスとして用いる窒素系ガスは、窒素を含有するガスであればいずれのガスも適用可能である。上記の通り、下層21は、酸素含有量を低く抑えることが好ましいため、酸素を含有しない窒素系ガスを適用することが好ましく、窒素ガス(Nガス)を適用することがより好ましい。
下層21および上層22を形成する際にスパッタリングガスとして用いる貴ガスの種類に制限はないが、アルゴン、クリプトン、キセノンを用いることが好ましい。また、位相シフト膜2の応力を緩和するために、原子量の小さいヘリウム、ネオンを下層21および上層22に積極的に取りこませることができる。
マスクブランク100において、位相シフト膜2上に遮光膜3を備えることが好ましい。一般に、位相シフトマスク200(図2(f)参照)では、転写パターンが形成される領域(転写パターン形成領域)の外周領域は、露光装置を用いて半導体ウェハ上のレジスト膜に露光転写した際に外周領域を透過した露光光による影響をレジスト膜が受けないように、所定値以上の光学濃度(OD)を確保することが求められている。位相シフトマスク200の外周領域では、光学濃度が2.0よりも大きいことが少なくとも求められている。上記の通り、位相シフト膜2は所定の透過率で露光光を透過する機能を有しており、位相シフト膜2だけでは上記の光学濃度を確保することは困難である。このため、マスクブランク100を製造する段階で位相シフト膜2の上に、不足する光学濃度を確保するために遮光膜3を積層しておくことが望まれる。このようなマスクブランク100の構成とすることで、位相シフト膜2を製造する途上で、位相シフト効果を使用する領域(基本的に転写パターン形成領域)の遮光膜3を除去すれば、外周領域に上記の光学濃度が確保された位相シフトマスク200を製造することができる。なお、マスクブランク100は、位相シフト膜2と遮光膜3の積層構造における光学濃度が2.5以上であると好ましく、2.8以上であるとより好ましい。また、遮光膜3の薄膜化のため、位相シフト膜2と遮光膜3の積層構造における光学濃度は4.0以下であると好ましい。
遮光膜3は、単層構造および2層以上の積層構造のいずれも適用可能である。また、単層構造の遮光膜3および2層以上の積層構造の遮光膜3の各層は、膜または層の厚さ方向でほぼ同じ組成である構成であってもよく、層の厚さ方向で組成傾斜した構成であってもよい。
遮光膜3は、位相シフト膜2との間に別の膜を介さない場合においては、位相シフト膜2にパターンを形成する際に用いられるエッチングガスに対して十分なエッチング選択性を有する材料を適用する必要がある。この場合、遮光膜3は、クロムを含有する材料で形成することが好ましい。この遮光膜3を形成するクロムを含有する材料としては、クロム金属のほか、クロムに酸素、窒素、炭素、ホウ素およびフッ素から選ばれる1以上の元素を含有する材料が挙げられる。
一般に、クロム系材料は、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスでエッチングされるが、クロム金属はこのエッチングガスに対するエッチングレートがあまり高くない。塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスのエッチングガスに対するエッチングレートを高める点を考慮すると、遮光膜3を形成する材料としては、クロムに酸素、窒素、炭素、ホウ素およびフッ素から選ばれる1以上の元素を含有する材料を用いることが好ましい。また、遮光膜3を形成するクロムを含有する材料に、インジウム、モリブデンおよびスズのうち1以上の元素を含有させてもよい。インジウム、モリブデンおよびスズのうち1以上の元素を含有させることで、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスに対するエッチングレートをより高くすることができる。
一方、マスクブランク100において、遮光膜3と位相シフト膜2との間に別の膜を介する構成とする場合においては、前記のクロムを含有する材料でその別の膜(エッチングストッパ兼エッチングマスク膜)を形成し、ケイ素を含有する材料で遮光膜3を形成する構成とすることが好ましい。クロムを含有する材料は、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスによってエッチングされるが、有機系材料で形成されるレジスト膜は、この混合ガスでエッチングされやすい。ケイ素を含有する材料は、一般にフッ素系ガスや塩素系ガスでエッチングされる。これらのエッチングガスは基本的に酸素を含有しないため、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスによってエッチングする場合よりも、有機系材料で形成されるレジスト膜の減膜量が低減できる。このため、レジスト膜の膜厚を低減することができる。
遮光膜3を形成するケイ素を含有する材料には、遷移金属を含有させてもよく、遷移金属以外の金属元素を含有させてもよい。これは、このマスクブランク100から位相シフトマスク200を作製した場合、遮光膜3で形成されるパターンは、基本的に外周領域の遮光帯パターンであり、転写パターン形成領域に比べてArF露光光が照射される積算量が少ないことや、この遮光膜3が微細パターンで残っていることは稀であり、ArF耐光性が低くても実質的な問題は生じにくいためである。また、遮光膜3に遷移金属を含有させると、含有させない場合に比べて遮光性能が大きく向上し、遮光膜の厚さを薄くすることが可能となるためである。遮光膜3に含有させる遷移金属としては、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ハフニウム(Hf)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、ニオブ(Nb)、パラジウム(Pd)等のいずれか1つの金属またはこれらの金属の合金が挙げられる。
一方、遮光膜3を形成するケイ素を含有する材料として、ケイ素と窒素とからなる材料、またはケイ素と窒素とからなる材料に半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素を含有する材料を適用してもよい。
上記の位相シフト膜2に積層して遮光膜3を備えるマスクブランク100において、遮光膜3の上に、遮光膜3をエッチングするときに用いられるエッチングガスに対してエッチング選択性を有する材料で形成されたハードマスク膜4をさらに積層した構成とするとより好ましい。遮光膜3は、所定の光学濃度を確保する機能が必須であるため、その厚さを低減するには限界がある。ハードマスク膜4は、その直下の遮光膜3にパターンを形成するドライエッチングが終わるまでの間、エッチングマスクとして機能することができるだけの膜の厚さがあれば十分であり、基本的に光学上の制限を受けない。このため、ハードマスク膜4の厚さは遮光膜3の厚さに比べて大幅に薄くすることができる。そして、有機系材料のレジスト膜は、このハードマスク膜4にパターンを形成するドライエッチングが終わるまでの間、エッチングマスクとして機能するだけの膜の厚さがあれば十分であるので、従来よりも大幅にレジスト膜の厚さを薄くすることができる。
このハードマスク膜4は、遮光膜3がクロムを含有する材料で形成されている場合は、前記のケイ素を含有する材料で形成されることが好ましい。なお、この場合のハードマスク膜4は、有機系材料のレジスト膜との密着性が低い傾向があるため、ハードマスク膜4の表面をHMDS(Hexamethyldisilazane)処理を施し、表面の密着性を向上させることが好ましい。なお、この場合のハードマスク膜4は、SiO、SiN、SiON等で形成されることがより好ましい。また、遮光膜3がクロムを含有する材料で形成されている場合におけるハードマスク膜4の材料として、前記のほか、タンタルを含有する材料も適用可能である。この場合におけるタンタルを含有する材料としては、タンタル金属のほか、タンタルに窒素、酸素、ホウ素および炭素から選ばれる1以上の元素を含有させた材料などが挙げられる。その材料として、たとえば、Ta、TaN、TaON、TaBN、TaBON、TaCN、TaCON、TaBCN、TaBOCNなどが挙げられる。一方、このハードマスク膜4は、遮光膜3がケイ素を含有する材料で形成されている場合は、上記のクロムを含有する材料で形成されることが好ましい。
マスクブランク100において、上記ハードマスク膜4の表面に接して、有機系材料のレジスト膜が100nm以下の膜厚で形成されていることが好ましい。DRAM hp32nm世代に対応する微細パターンの場合、ハードマスク膜4に形成すべき転写パターン(位相シフトパターン)に、線幅が40nmのSRAF(Sub−Resolution Assist Feature)が設けられることがある。しかし、この場合でも、レジストパターンの断面アスペクト比が1:2.5と低くすることができるので、レジスト膜の現像時、リンス時等にレジストパターンが倒壊や脱離することを抑制することができる。なお、レジスト膜は、膜厚が80nm以下であることがより好ましい。
図2に、本発明の実施形態であるマスクブランク100から位相シフトマスク200を製造する工程の断面模式図を示す。
図2に示す位相シフトマスク200の製造方法は、上記のマスクブランク100を用いるものであって、ドライエッチングにより遮光膜3に転写パターンを形成する工程と、転写パターンを有する遮光膜3(遮光パターン3a)をマスクとするドライエッチングにより位相シフト膜2に転写パターンを形成する工程と、遮光帯を含むパターンを有するレジスト膜(レジストパターン6b)をマスクとするドライエッチングにより遮光膜3(遮光パターン3a)に遮光帯を含むパターン(遮光パターン3b)を形成する工程とを備えることを特徴とするものである。
以下、図2に示す製造工程にしたがって、位相シフトマスク200の製造方法の一例を説明する。なお、この例では、遮光膜3にはクロムを含有する材料を適用し、ハードマスク膜4にはケイ素を含有する材料を適用している。
まず、マスクブランク100におけるハードマスク膜4に接して、レジスト膜をスピン塗布法によって形成する。次に、レジスト膜に対して、位相シフト膜2に形成すべき転写パターン(位相シフトパターン)である第1のパターンを露光描画し、さらに現像処理等の所定の処理を行い、位相シフトパターンを有する第1のレジストパターン5aを形成する(図2(a)参照)。続いて、第1のレジストパターン5aをマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングを行い、ハードマスク膜4に第1のパターン(ハードマスクパターン4a)を形成する(図2(b)参照)。
次に、第1のレジストパターン5aを除去してから、ハードマスクパターン4aをマスクとして、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングを行い、遮光膜3に第1のパターン(遮光パターン3a)を形成する(図2(c)参照)。続いて、遮光パターン3aをマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングを行い、位相シフト膜2に第1のパターン(位相シフトパターン2a)を形成し、かつ同時にハードマスクパターン4aも除去する(図2(d)参照)。
次に、マスクブランク100上にレジスト膜をスピン塗布法によって形成する。次に、レジスト膜に対して、遮光膜3に形成すべき遮光帯パターンを含むパターン(遮光パターン)である第2のパターンを露光描画し、さらに現像処理等の所定の処理を行い、遮光パターンを有する第2のレジストパターン6bを形成する。続いて、第2のレジストパターン6bをマスクとして、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングを行い、遮光膜3に第2のパターン(遮光パターン3b)を形成する(図2(e)参照)。さらに、第2のレジストパターン6bを除去し、洗浄等の所定の処理を経て、位相シフトマスク200を得る(図2(f)参照)。
得られた位相シフトマスク200の位相シフトパターン2aに黒欠陥部分がある場合、その黒欠陥部分のEB欠陥修正を行う。位相シフト膜2は、下層21が透光性基板1側から上層22側に向かって窒素含有量が増加する組成傾斜構造を有するため、EB欠陥修正を行ったときに、パターン側壁での段差の発生を抑制することができる。EB欠陥修正後の位相シフトパターン2aのパターン側壁はがたつきが少ない良好なものである。
上記のドライエッチングで使用される塩素系ガスとしては、Clが含まれていれば特に制限はない。たとえば、塩素系ガスとして、Cl、SiCl、CHCl、CHCl、CCl、BCl等が挙げられる。また、上記のドライエッチングで使用されるフッ素系ガスとしては、Fが含まれていれば特に制限はない。たとえば、フッ素系ガスとして、CHF、CF、C、C、SF等が挙げられる。特に、Cを含まないフッ素系ガスは、ガラス材料の透光性基板1に対するエッチングレートが比較的低いため、透光性基板1へのダメージをより小さくすることができる。
図2に示す製造方法によって製造された位相シフトマスク200は、透光性基板1上に、転写パターンを有する位相シフト膜2(位相シフトパターン2a)および遮光パターン3bがこの順に積層された構造を有する。位相シフト膜2は、下層21と上層22がこの順に積層した構造を有し、下層21は、ケイ素と窒素とからなる材料、または半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素とからなる材料で形成され、下層21は、透光性基板1側から上層22側に向かって窒素含有量が増加する組成傾斜構造を有し、上層22は、ケイ素と酸素とからなる材料、または半金属元素、貴ガス、ハロゲン、炭素、リン、硫黄およびセレンから選ばれる1以上の元素とケイ素と酸素とからなる材料で形成されていることを特徴とする。
位相シフトパターン2aおよび遮光パターン3bに関する事項については、マスクブランク100の位相シフト膜2および遮光膜3に関する事項と同様の技術的特徴を有している。
位相シフトマスク200では、位相シフト膜2が窒化ケイ素系材料で形成される下層21上に酸化ケイ素系材料で形成される上層22が積層した構造であるため、ArF露光光による露光転写を繰り返し行った後でも、位相シフト膜2のパターン表面でのアンモニアを含んだヘイズの発生を抑制することができる。また、位相シフトマスク200では、下層21が透光性基板1側から上層22側に向かって窒素含有量が増加する組成傾斜構造を有するため、位相シフトマスクの製造途上で転写パターンを有する位相シフト膜2に対してEB欠陥修正を行ったときに、パターン側壁での段差の発生を抑制することができる。このため、位相シフトマスク200は高い転写精度を有する。
また、ArFエキシマレーザーを露光光とする露光装置のマスクステージに、EB欠陥修正が行われた後の位相シフトマスク200をセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に位相シフトパターン2aを露光転写する際も、半導体デバイス上のレジスト膜に設計仕様を十分に満たす精度でパターンを転写することができる。
本発明の半導体デバイスの製造方法は、前記のマスクブランク100を用いて製造された位相シフトマスク200を用い、半導体基板上のレジスト膜にパターンを露光転写することを特徴としている。
本発明のマスクブランク100およびそのマスクブランク100を用いて製造された位相シフトマスク200は、上記の通りの効果を有するため、ArFエキシマレーザーを露光光とする露光装置のマスクステージに、EB欠陥修正が行われた後の位相シフトマスク200をセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に位相シフトパターン2aを露光転写する際も、半導体デバイス上のレジスト膜に設計仕様を十分に満たす精度でパターンを転写することができる。このため、このレジスト膜のパターンをマスクとして、下層膜をドライエッチングして回路パターンを形成した場合、精度不足に起因する配線短絡や断線のない高精度の回路パターンを形成することができる。
以下、実施例により、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
[マスクブランクの製造]
主表面の寸法が約152mm×約152mmで、厚さが約6.25mmの合成石英ガラスからなる透光性基板1を準備した。この透光性基板1は、端面および主表面が所定の表面粗さに研磨され、その後、所定の洗浄処理および乾燥処理を施されたものであった。
次に、枚葉式RFスパッタ装置内に透光性基板1を設置し、ケイ素(Si)ターゲットを用い、クリプトン(Kr)、ヘリウム(He)および窒素(N)の混合ガスをスパッタリングガスとし、RF電源の電力を所定の値にし、反応性スパッタリング(RFスパッタリング)により、透光性基板1上に、ケイ素と窒素とからなる下層21を61nmの厚さで形成した。下層21を形成する際、クリプトン(Kr)の流量に対する窒素(N)の流量の比を徐々に増やしていった。下層21の深さ方向の組成をXPSにより測定したところ、下層21における透光性基板1側の領域は、組成がSi:N=30原子%:70原子%(すなわち、窒素含有量が30原子%)であり、透光性基板1と反対側(すなわち、上層22側)の領域は、組成がSi:N=55原子%:45原子%(すなわち、窒素含有量が55原子%)であった。また、下層21は、透光性基板1側から上層22側に向かって窒素含有量が連続的に徐々に増加する組成傾斜構造であることを確認した。以下に示す、その他の膜の組成もXPSによる測定で得られた結果である。
別の透光性基板の主表面に対して、同条件で下層21のみを形成し、分光エリプソメーター(J.A.Woollam社製 M−2000D)を用いてこの下層21の光学特性を測定したところ、波長193nmにおける屈折率nが2.56、消衰係数kが0.44であった。測定された屈折率nおよび消衰係数kは、下層21全体の平均値である。
次に、枚葉式RFスパッタ装置内に、下層21が積層された透光性基板1を設置し、二酸化ケイ素(SiO)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)ガスをスパッタリングガスとし、RF電源の電力を1.5kWとし、スパッタリング(RFスパッタリング)により下層21上に、ケイ素と酸素とからなる上層22(Si:O=34原子%:66原子%)を2nmの厚さで形成した。
別の透光性基板の主表面に対して、同条件で上層22のみを形成し、分光エリプソメーター(J.A.Woollam社製 M−2000D)を用いてこの上層22の光学特性を測定したところ、波長193nmにおける屈折率nが1.55、消衰係数kが0であった。
以上の手順により、透光性基板1上に、下層21と上層22がこの順に積層された構造の位相シフト膜2を、合計膜厚63nmで形成した。
次に、この位相シフト膜2が形成された透光性基板1に対し、大気中において加熱温度550℃、処理時間1時間の条件で加熱処理を行った。加熱処理後の位相シフト膜2に対し、位相シフト量測定装置(レーザーテック社製 MPM−193)でArFエキシマレーザーの光の波長(約193nm)における透過率および位相差を測定したところ、透過率は16.1%、位相差は177.8度であった。
別の透光性基板の主表面に対して、同条件で下層21および上層22を形成し、同条件で加熱処理した後、位相シフト膜2が形成された透光性基板1を洗浄した。洗浄後、位相シフト膜2が形成された透光性基板1を樹脂袋に入れた。その後、その樹脂袋に脱イオン水を1リットル加えて樹脂袋を密閉した。密閉した樹脂袋を80℃のウォーターバスに2時間入れた後、樹脂袋から脱イオン水を取り出し、イオンクロマトグラフ−質量分析計(IC−MS)で脱イオン水中に含まれるイオン成分を測定したところ、アンモニウムイオンは0.3ppb検出され、硫酸イオンは検出されなかった。検出されたアンモニウムイオンは位相シフト膜2から溶出したものであると考えられる。
次に、枚葉式DCスパッタ装置内に加熱処理後の位相シフト膜2が形成された透光性基板1を設置し、クロム(Cr)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)、二酸化炭素(CO)、窒素(N)およびヘリウム(He)の混合ガス(流量比 Ar:CO:N:He=22:39:6:33,圧力=0.2Pa)をスパッタリングガスとし、DC電源の電力を1.9kWとし、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、位相シフト膜2の表面に接して、CrOCNからなる遮光膜3の最下層を30nmの厚さで形成した。
次に、同じクロム(Cr)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)および窒素(N)の混合ガス(流量比 Ar:N=83:17,圧力=0.1Pa)をスパッタリングガスとし、DC電源の電力を1.4kWとし、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、遮光膜3の最下層上に、CrNからなる遮光膜3の下層を6nmの厚さで形成した。
次に、同じクロム(Cr)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)、二酸化炭素(CO)、窒素(N)およびヘリウム(He)の混合ガス(流量比 Ar:CO:N:He=21:37:11:31,圧力=0.2Pa)をスパッタリングガスとし、DC電源の電力を1.9kWとし、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、遮光膜3の下層上に、CrOCNからなる遮光膜3の上層を14nmの厚さで形成した。以上の手順により、位相シフト膜2側からCrOCNからなる最下層、CrNからなる下層、CrOCNからなる上層の3層構造からなるクロム系材料の遮光膜3を合計膜厚50nmで形成した。
この位相シフト膜2および遮光膜3が積層された透光性基板1に対し、分光光度計(アジレントテクノロジー社製 Cary4000)を用い、位相シフト膜2と遮光膜3の積層構造のArFエキシマレーザーの光の波長(約193nm)における光学濃度を測定したところ、3.0以上であった。
さらに、枚葉式RFスパッタ装置内に、位相シフト膜2および遮光膜3が積層された透光性基板1を設置し、二酸化ケイ素(SiO)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)ガス(圧力=0.03Pa)をスパッタリングガスとし、RF電源の電力を1.5kWとし、スパッタリング(RFスパッタリング)により遮光膜3上に、ケイ素と酸素からなるハードマスク膜4を5nmの厚さで形成した。
以上の手順により、透光性基板1上に、位相シフト膜2、遮光膜3およびハードマスク膜4が積層した構造を備えるマスクブランク100を製造した。
[位相シフトマスクの製造]
次に、この実施例1のマスクブランク100を用い、以下の手順で実施例1の位相シフトマスク200を製造した。
最初に、ハードマスク膜4の表面にHMDS処理を施した。続いて、スピン塗布法によって、ハードマスク膜4の表面に接して、電子線描画用化学増幅型レジストからなるレジスト膜を膜厚80nmで形成した。次に、このレジスト膜に対して、位相シフト膜2に形成すべき位相シフトパターンである第1のパターンを電子線描画し、所定の現像処理および洗浄処理を行い、第1のパターンを有する第1のレジストパターン5aを形成した(図2(a)参照)。なお、このとき、電子線描画した第1のパターンには、位相シフト膜2に黒欠陥が形成されるように、本来形成されるべき位相シフトパターンのほかにプログラム欠陥を加えておいた。
次に、第1のレジストパターン5aをマスクとし、CFガスを用いたドライエッチングを行い、ハードマスク膜4に第1のパターン(ハードマスクパターン4a)を形成した(図2(b)参照)。
次に、第1のレジストパターン5aを除去した。続いて、ハードマスクパターン4aをマスクとし、塩素と酸素との混合ガス(ガス流量比 Cl:O=4:1)を用いたドライエッチングを行い、遮光膜3に第1のパターン(遮光パターン3a)を形成した(図2(c)参照)。
次に、遮光パターン3aをマスクとし、フッ素系ガス(SFとHeの混合ガス)を用いたドライエッチングを行い、位相シフト膜2に第1のパターン(位相シフトパターン2a)を形成し、かつ同時にハードマスクパターン4aを除去した(図2(d)参照)。
次に、遮光パターン3a上に、スピン塗布法によって、電子線描画用化学増幅型レジストからなるレジスト膜を膜厚150nmで形成した。次に、レジスト膜に対して、遮光膜3に形成すべき遮光帯パターンを含むパターン(遮光パターン)である第2のパターンを露光描画し、さらに現像処理等の所定の処理を行い、遮光パターンを有する第2のレジストパターン6bを形成した。続いて、第2のレジストパターン6bをマスクとして、塩素と酸素との混合ガス(ガス流量比 Cl:O=4:1)を用いたドライエッチングを行い、遮光膜3に第2のパターン(遮光パターン3b)を形成した(図2(e)参照)。さらに、第2のレジストパターン6bを除去し、洗浄等の所定の処理を経て、位相シフトマスク200を得た(図2(f)参照)。
製造した実施例1のハーフトーン型の位相シフトマスク200に対してマスク検査装置によってマスクパターンの検査を行ったところ、プログラム欠陥を配置していた箇所の位相シフトパターン2aに黒欠陥の存在が確認された。このため、EB欠陥修正によりその黒欠陥部分を除去した。位相シフトパターン2aは、下層21が、透光性基板1側から上層22側に向かって窒素含有量が連続的に徐々に増加する組成傾斜構造であるため、位相シフトパターン2aの側壁での段差の発生が抑制されており、側壁の垂直性も良好であった。また、下層21における透光性基板1側の領域の窒素含有量は30原子%であるため、位相シフトパターン2aの透光性基板1側での修正レートが速く、位相シフトパターン2aの透光性基板1側のEB欠陥修正が早期に終わる。このため、EB欠陥修正時に透光性基板1の表面へのエッチングを最小限にとどめることができた。
次に、このEB欠陥修正後の実施例1の位相シフトマスク200に対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したときにおける転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、設計仕様を十分に満たしていた。また、EB欠陥修正を行った部分の転写像は、それ以外の領域の転写像に比べてそん色のないものであった。この結果から、EB欠陥修正を行った後の実施例1の位相シフトマスク200を露光装置のマスクステージにセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写した場合、最終的に半導体デバイス上に形成される回路パターンは高精度で形成できるといえる。
さらに、上述したIC−MSでの測定において、アンモニウムイオンが0.3ppbとわずかに検出されただけであるため、実施例1の位相シフトマスク200は、ArF露光光による露光転写を繰り返し行った後でも、位相シフト膜2のパターン表面でのアンモニアを含んだヘイズの発生を抑えることができるといえる。このため、EB欠陥修正を行った後の実施例1の位相シフトマスク200を露光装置のマスクステージにセットし、半導体デバイス上のレジスト膜への露光転写を繰り返し行った後でも、最終的に半導体デバイス上に形成される回路パターンは高精度で形成できるといえる。
(比較例1)
[マスクブランクの製造]
比較例1のマスクブランクでは、位相シフト膜が、組成傾斜している窒化ケイ素系材料からなる層(実施例1の下層)のみからなる。比較例1のマスクブランクは、位相シフト膜を形成する工程以外は、実施例1のマスクブランク100と同様の手順で製造した。
具体的には、比較例1の位相シフト膜は、以下の方法により形成した。
枚葉式RFスパッタ装置内に透光性基板を設置し、ケイ素(Si)ターゲットを用い、クリプトン(Kr)、ヘリウム(He)および窒素(N)の混合ガスをスパッタリングガスとし、反応性スパッタリング(RFスパッタリング)により、透光性基板1上に、ケイ素と窒素とからなる位相シフト膜を61nmの厚さで形成した。位相シフト膜を形成する際、クリプトン(Kr)の流量に対する窒素(N)の流量の比を徐々に増やしていった。実施例1と同様に、位相シフト膜の組成を測定したところ、位相シフト膜における透光性基板側の領域は、組成がSi:N=30原子%:70原子%(すなわち、窒素含有量が30原子%)であり、透光性基板と反対側の領域は、組成がSi:N=55原子%:45原子%(すなわち、窒素含有量が55原子%)であった。また、位相シフト膜は、透光性基板側から透光性基板と反対側に向かって窒素含有量が連続的に徐々に増加する組成傾斜構造であることを確認した。また、実施例1と同様に光学特性を測定したところ、屈折率nが2.56、消衰係数kが0.44であった。
その後、位相シフト膜が形成された透光性基板に対し、大気中において加熱温度550℃、処理時間1時間の条件で加熱処理を行った。加熱処理後の位相シフト膜に対し、実施例1と同様に透過率および位相差を測定したところ、透過率は15.6%、位相差は175度であった。また、加熱処理後の位相シフト膜に対し、実施例1と同様にIC−MSでの測定を行ったところ、アンモニウムイオンは30ppb検出され、硫酸イオンは検出されなかった。
次に、実施例1の場合と同様に、透光性基板の位相シフト膜上に、遮光膜およびハードマスク膜を形成した。以上の手順により、透光性基板上に、位相シフト膜、遮光膜およびハードマスク膜が積層した構造を備える比較例1のマスクブランクを製造した。
[位相シフトマスクの製造]
次に、この比較例1のマスクブランクを用い、実施例1と同様の手順で、比較例1の位相シフトマスクを製造した。
製造した比較例1のハーフトーン型の位相シフトマスクに対してマスク検査装置によってマスクパターンの検査を行ったところ、プログラム欠陥を配置していた箇所の位相シフトパターンに黒欠陥の存在が確認された。このため、EB欠陥修正によりその黒欠陥部分を除去した。位相シフトパターンは、位相シフト膜が、透光性基板側から透光性基板と反対側に向かって窒素含有量が連続的に徐々に増加する組成傾斜構造であるため、位相シフトパターンの側壁での段差の発生が抑制されており、側壁の垂直性も良好であった。また、位相シフト膜における透光性基板側の領域の窒素含有量は30原子%であるため、位相シフトパターンの透光性基板側での修正レートが速く、位相シフトパターンの透光性基板側のEB欠陥修正が早期に終わる。このため、EB欠陥修正時に透光性基板の表面へのエッチングを最小限にとどめることができた。
次に、このEB欠陥修正後の比較例1の位相シフトマスクに対し、実施例1と同様に転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、設計仕様を十分に満たしていた。また、EB欠陥修正を行った部分の転写像は、それ以外の領域の転写像に比べてそん色のないものであった。この結果から、EB欠陥修正を行った後の比較例1の位相シフトマスクを露光装置のマスクステージをセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写した場合でも、当初は、最終的に半導体デバイス上に形成される回路パターンは高精度で形成できるといえる。
しかし、上述したIC−MSでの測定において、アンモニウムイオンが30ppb検出されたことから、比較例1の位相シフトマスクは、ArF露光光による露光転写を繰り返し行った後、位相シフト膜のパターン表面に、アンモニアを含んだヘイズが、露光転写に影響を及ぼすほど十分に発生してしまうと予想される。このため、EB欠陥修正を行った後の比較例1の位相シフトマスクを露光装置のマスクステージにセットし、半導体デバイス上のレジスト膜への露光転写を繰り返し行った後では、最終的に半導体デバイス上に形成される回路パターンに、回路パターンの断線や短絡が発生することが予想される。
(比較例2)
[マスクブランクの製造]
比較例2のマスクブランクでは、位相シフト膜が、組成傾斜していない窒化ケイ素系材料からなる層のみからなる。比較例2のマスクブランクは、位相シフト膜を形成する工程以外は、実施例1のマスクブランク100と同様の手順で製造した。
具体的には、比較例2の位相シフト膜は、以下の方法により形成した。
枚葉式RFスパッタ装置内に透光性基板を設置し、ケイ素(Si)ターゲットを用い、クリプトン(Kr)、ヘリウム(He)および窒素(N)の混合ガスをスパッタリングガスとし、反応性スパッタリング(RFスパッタリング)により、透光性基板1上に、ケイ素と窒素とからなる位相シフト膜を62nmの厚さで形成した。実施例1と同様に、位相シフト膜の組成を測定したところ、位相シフト膜の組成はSi:N=55原子%:45原子%(すなわち、窒素含有量が55原子%)であった。また、実施例1と同様に光学特性を測定したところ、屈折率nが2.56、消衰係数kが0.35であった。
その後、位相シフト膜が形成された透光性基板に対し、大気中において加熱温度550℃、処理時間1時間の条件で加熱処理を行った。加熱処理後の位相シフト膜に対し、実施例1と同様に透過率および位相差を測定したところ、透過率は18.8%、位相差は177.7度度であった。また、加熱処理後の位相シフト膜に対し、実施例1と同様にIC−MSでの測定を行ったところ、アンモニウムイオンは33.8ppb検出され、硫酸イオンは検出されなかった。
次に、実施例1の場合と同様に、透光性基板の位相シフト膜上に、遮光膜およびハードマスク膜を形成した。以上の手順により、透光性基板上に、位相シフト膜、遮光膜およびハードマスク膜が積層した構造を備える比較例2のマスクブランクを製造した。
[位相シフトマスクの製造]
次に、この比較例2のマスクブランクを用い、実施例1と同様の手順で、比較例2の位相シフトマスクを製造した。
製造した比較例2のハーフトーン型の位相シフトマスクに対してマスク検査装置によってマスクパターンの検査を行ったところ、プログラム欠陥を配置していた箇所の位相シフトパターンに黒欠陥の存在が確認された。このため、EB欠陥修正によりその黒欠陥部分を除去した。位相シフト膜の窒素含有量は55原子%であるため、位相シフトパターンの修正レートが遅く、EB欠陥修正時に透光性基板の表面へのエッチングが進んでいた。
EB欠陥修正を行った後の比較例2の位相シフトマスクに対し、実施例1と同様に転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、EB欠陥修正を行った部分以外では、概ね設計仕様を十分に満たしていた。しかし、EB欠陥修正を行った部分の転写像は、透光性基板へのエッチングの影響等に起因して転写不良が発生するレベルのものであった。このため、EB欠陥修正を行った後の比較例2の位相シフトマスクを露光装置のマスクステージにセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写した場合、最終的に半導体デバイス上に形成される回路パターンには、回路パターンの断線や短絡が発生することが予想される。
また、上述したIC−MSでの測定において、アンモニウムイオンが33.8ppb検出されたことから、比較例2の位相シフトマスクは、ArF露光光による露光転写を繰り返し行った後、位相シフト膜のパターン表面に、アンモニアを含んだヘイズが、露光転写に影響を及ぼすほど十分に発生してしまうと予想される。このため、EB欠陥修正を行った後の比較例2の位相シフトマスクを露光装置のマスクステージにセットし、半導体デバイス上のレジスト膜への露光転写を繰り返し行った後では、最終的に半導体デバイス上に形成される回路パターンに、回路パターンの断線や短絡がより発生しやすいと予想される。
1 透光性基板
2 位相シフト膜
21 下層
22 上層
2a 位相シフトパターン
3 遮光膜
3a,3b 遮光パターン
4 ハードマスク膜
4a ハードマスクパターン
5a 第1のレジストパターン
6b 第2のレジストパターン
100 マスクブランク
200 位相シフトマスク

Claims (23)

  1. 透光性基板上に、転写パターンを形成するための薄膜を備えたマスクブランクであって、
    前記薄膜は、下層と上層がこの順に積層した構造を有し、
    前記下層は、ケイ素と窒素とからなる材料、または半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素とからなる材料で形成され、
    前記下層は、前記透光性基板側から前記上層側に向かって窒素含有量が増加する組成傾斜構造を有し、
    前記下層における前記透光性基板側の領域は、窒素含有量が20原子%以上35原子%以下であり、前記下層における前記上層側の領域は、窒素含有量が50原子%以上であり、
    前記上層は、ケイ素と酸素とからなる材料、または半金属元素、貴ガス、ハロゲン、炭素、リン、硫黄およびセレンから選ばれる1以上の元素とケイ素と酸素とからなる材料で形成されている
    ことを特徴とするマスクブランク。
  2. 前記下層は、ケイ素と窒素とからなる材料で形成されていることを特徴とする請求項1記載のマスクブランク。
  3. 前記上層は、ケイ素と酸素とからなる材料で形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のマスクブランク。
  4. 前記上層は、酸素含有量が50原子%以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のマスクブランク。
  5. 前記上層は、厚さが2nm以上であることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のマスクブランク。
  6. 前記下層の厚さは、前記上層の厚さよりも厚いことを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のマスクブランク。
  7. 前記上層は、前記下層の表面に接して設けられていることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のマスクブランク。
  8. 前記薄膜は、位相シフト膜であることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のマスクブランク。
  9. 前記位相シフト膜は、ArFエキシマレーザーの露光光を1%以上の透過率で透過させる機能と、前記位相シフト膜を透過した前記露光光に対して150度以上200度以下の位相シフトを生じさせる機能とを有することを特徴とする請求項記載のマスクブランク。
  10. 前記位相シフト膜上に、遮光膜を備えることを特徴とする請求項またはに記載のマスクブランク。
  11. 透光性基板上に、転写パターンを有する薄膜を備えた転写用マスクであって、
    前記薄膜は、下層と上層がこの順に積層した構造を有し、
    前記下層は、ケイ素と窒素とからなる材料、または半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素とからなる材料で形成され、
    前記下層は、前記透光性基板側から前記上層側に向かって窒素含有量が増加する組成傾斜構造を有し、
    前記下層における前記透光性基板側の領域は、窒素含有量が20原子%以上35原子%以下であり、前記下層における前記上層側の領域は、窒素含有量が50原子%以上であり、
    前記上層は、ケイ素と酸素とからなる材料、または半金属元素、貴ガス、ハロゲン、炭素、リン、硫黄およびセレンから選ばれる1以上の元素とケイ素と酸素とからなる材料で形成されている
    ことを特徴とする転写用マスク。
  12. 前記下層は、ケイ素と窒素とからなる材料で形成されていることを特徴とする請求項11記載の転写用マスク。
  13. 前記上層は、ケイ素と酸素とからなる材料で形成されていることを特徴とする請求項11または12に記載の転写用マスク。
  14. 前記上層は、酸素含有量が50原子%以上であることを特徴とする請求項11から13のいずれかに記載の転写用マスク。
  15. 前記上層は、厚さが2nm以上であることを特徴とする請求項11から14のいずれかに記載の転写用マスク。
  16. 前記下層の厚さは、前記上層の厚さよりも厚いことを特徴とする請求項11から15のいずれかに記載の転写用マスク。
  17. 前記上層は、前記下層の表面に接して設けられていることを特徴とする請求項11から16のいずれかに記載の転写用マスク。
  18. 前記薄膜は、位相シフト膜であることを特徴とする請求項11から17のいずれかに記載の転写用マスク。
  19. 前記位相シフト膜は、ArFエキシマレーザーの露光光を1%以上の透過率で透過させる機能と、前記位相シフト膜を透過した前記露光光に対して150度以上200度以下の位相シフトを生じさせる機能とを有することを特徴とする請求項18記載の転写用マスク。
  20. 前記位相シフト膜上に、遮光帯パターンを含むパターンを有する遮光膜を備えることを特徴とする請求項18または19に記載の転写用マスク。
  21. 請求項1から10のいずれかに記載のマスクブランクを用いた転写用マスクの製造方法であって、ドライエッチングにより前記薄膜に転写パターンを形成する工程を備えることを特徴とする転写用マスクの製造方法。
  22. 請求項11から20のいずれかに記載の転写用マスクを用い、半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写する工程を備えることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
  23. 請求項21記載の転写用マスクの製造方法により製造された転写用マスクを用い、半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写する工程を備えることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
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