JP6833773B2 - マスクブランク、転写用マスクおよび半導体デバイスの製造方法 - Google Patents

マスクブランク、転写用マスクおよび半導体デバイスの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、マスクブランク、そのマスクブランクを用いて製造された転写用マスクおよびその転写用マスクを用いた半導体デバイスの製造方法に関するものである。
一般に、半導体デバイスの製造工程では、フォトリソグラフィ法を用いて微細パターンの形成が行われている。また、この微細パターンの形成には、通常何枚もの転写用マスクが使用される。半導体デバイスのパターンを微細化するに当たっては、転写用マスクに形成されるマスクパターンの微細化に加え、フォトリソグラフィで使用される露光光源の波長の短波長化が必要となる。半導体デバイス製造の際に用いられる露光光源は、近年ではKrFエキシマレーザー(波長248nm)から、ArFエキシマレーザー(波長193nm)へと短波長化が進んでいる。
転写用マスクの一種に、ハーフトーン型位相シフトマスクがある。ハーフトーン型位相シフトマスクの位相シフト膜には、モリブデンシリサイド(MoSi)系の材料が広く用いられる。しかし、特許文献1に開示されている通り、MoSi系膜は、ArFエキシマレーザーの露光光(以下、ArF露光光という。)に対する耐性(いわゆるArF耐光性)が低いということが近年判明している。特許文献1では、パターンが形成された後のMoSi系膜に対し、プラズマ処理、UV照射処理、または加熱処理を行い、MoSi系膜のパターンの表面に不動態膜を形成することで、ArF耐光性が高められている。
一方、特許文献2では、SiNからなる位相シフト膜を備える位相シフトマスクが開示されており、特許文献3では、SiNからなる位相シフト膜は高いArF耐光性を有することが確認されたことが記されている。
特開2010−217514号公報 特開平7−159981号公報 特開2014−137388号公報
転写用マスクにおけるArF耐光性の問題は、位相シフトマスクに限らず、バイナリマスクでも生じている。近年、バイナリマスクの遮光パターンに対する微細化が進んできている。従来広く用いられてきたクロム系材料の遮光膜は、比較的異方性が低いエッチングガス(塩素系ガスと酸素ガスの混合ガス)によるドライエッチングでパターニングするため、微細化の要求にこたえることが難しくなってきている。そのため、近年では、バイナリマスクを製造するためのマスクブランクの遮光膜にモリブデンシリサイド系材料が用いられ始めている。しかし、上述の通り、遷移金属シリサイド系材料の薄膜はArF耐光性が低いという問題を有している。この問題を解決するには、位相シフト膜の場合と同様、窒化ケイ素系材料をバイナリマスクの遮光膜に適用することが最も単純なアプローチである。バイナリマスクの遮光膜は、ArF露光光に対する高い遮光性能(例えば、ArF露光光に対する光学濃度(OD)が3.0以上)が求められる。また、バイナリマスクの遮光膜は、位相シフト膜に比べてArF露光光に対する表面反射率(遮光膜の基板とは反対側の表面の反射率)および裏面反射率(遮光膜の基板側の表面の反射率)が高くなりやすい。従来のクロム系材料や遷移金属シリサイド系材料の遮光膜の場合、遮光膜を遮光層と反射防止層の積層構造とし、ArF露光光に対する表面反射率および裏面反射率を低減することが行われている。窒化ケイ素系材料は、クロム系材料や遷移金属シリサイド系材料に比べてArF露光光に対する遮光性能が低い。
近年のバイナリマスクでは、遮光膜のパターンの膜厚が厚いと、電磁界(EMF:Electromagnetic Field)効果に起因するバイアス(パターン線幅等の補正量。以下、これをEMFバイアスという。)が大きくなるという問題が生じている。遮光膜のパターンのEMFバイアスを低減するには、遮光膜の膜厚を薄くすることと、遮光膜の位相差(遮光膜を通過する露光光と遮光膜の厚さと同じ距離だけ空気中を透過した露光光との間の位相差。)を小さくすることが有効である。
遮光性能が比較的低い窒化ケイ素系材料で遮光膜を形成する場合、高い遮光性能を確保するために、遮光膜の膜厚を厚くする必要がある。このため、遮光膜のパターンのEMFバイアスを低減することは容易ではなく、問題となっていた。
EMFバイアスは、ウェハ上のレジストへの転写パターン線幅のCD精度に大きな影響を与える。このため、電磁界効果のシミュレーションを行い、EMFバイアスによる影響を抑制するための転写用マスクに作製する転写パターンの補正を行う必要がある。この転写パターンの補正計算は、EMFバイアスが大きいほど複雑化する。また、補正後の転写パターンもEMFバイアスが大きいほど複雑化していき、転写用マスクの作製に大きな負荷がかかる。
そこで、本発明は、従来の課題を解決するためになされたものであり、透光性基板上に、遮光膜を備えたマスクブランクにおいて、窒化ケイ素系材料から形成された単層膜で構成された遮光膜が、ArF露光光に対する高い遮光性能を有するとともに、遮光膜のパターンのEMFバイアスを低減することができるマスクブランクを提供することを目的とする。また、本発明は、このマスクブランクを用いて製造される転写用マスクを提供することを目的とする。さらに、本発明は、このような転写用マスクを用いた半導体デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
前記の課題を達成するため、本発明は以下の構成を有する。
(構成1)
透光性基板上に、遮光膜を備えたマスクブランクであって、
前記遮光膜は、ケイ素と窒素とからなる材料、または半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素とからなる材料で形成された単層膜であり、
前記遮光膜は、ArFエキシマレーザーの露光光に対する光学濃度が3.0以上であり、
前記遮光膜の前記露光光に対する屈折率nおよび消衰係数kは、以下の式(1)と式(2)に規定する関係を同時に満たす
ことを特徴とするマスクブランク。
n≦0.0733×k+0.4069×k+1.0083・・・式(1)
n≧29.316×k−92.292×k+72.671・・・式(2)
(構成2)
前記遮光膜は、前記消衰係数kが2.6以下であることを特徴とする構成1記載のマスクブランク。
(構成3)
前記遮光膜は、前記屈折率nが0.8以上であることを特徴とする構成1または2に記載のマスクブランク。
(構成4)
前記遮光膜の前記屈折率nおよび消衰係数kは、さらに以下の式(3)に規定する関係を満たすことを特徴とする構成1から3のいずれかに記載のマスクブランク。
n≧0.7929×k−2.1606×k+2.1448・・・式(3)
(構成5)
前記遮光膜は、前記透光性基板側の表層と前記透光性基板とは反対側の表層とを除いた領域における厚さ方向の窒素含有量のバラつきが5原子%以内であることを特徴とする構成1から4のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成6)
前記遮光膜上にクロムを含有する材料からなるハードマスク膜を備えることを特徴とする構成1から5のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成7)
透光性基板上に、転写パターンを有する遮光膜を備えた転写用マスクであって、
前記遮光膜は、ケイ素と窒素とからなる材料、または半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素とからなる材料で形成された単層膜であり、
前記遮光膜は、ArFエキシマレーザーの露光光に対する光学濃度が3.0以上であり、
前記遮光膜の前記露光光に対する屈折率nおよび消衰係数kは、以下の式(1)と式(2)に規定する関係を同時に満たす
ことを特徴とする転写用マスク。
n≦0.0733×k+0.4069×k+1.0083・・・式(1)
n≧29.316×k−92.292×k+72.671・・・式(2)
(構成8)
前記遮光膜は、前記消衰係数kが2.6以下であることを特徴とする構成7記載の転写用マスク。
(構成9)
前記遮光膜は、前記屈折率nが0.8以上であることを特徴とする構成7または8に記載の転写用マスク。
(構成10)
前記遮光膜の前記屈折率nおよび消衰係数kは、さらに以下の式(3)に規定する関係を満たすことを特徴とする構成7から9のいずれかに記載の転写用マスク。
n≧0.7929×k−2.1606×k+2.1448・・・式(3)
(構成11)
前記遮光膜は、前記透光性基板側の表層と前記透光性基板とは反対側の表層とを除いた領域における厚さ方向の窒素含有量のバラつきが5原子%以内であることを特徴とする構成7から10のいずれかに記載の転写用マスク。
(構成12)
構成7から11のいずれかに記載の転写用マスクを用い、半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写する工程を備えることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
本発明のマスクブランクは、透光性基板上に、遮光膜を備え、その遮光膜が、窒化ケイ素系材料で形成された単層膜であり、ArF露光光に対する光学濃度が3.0以上であり、ArF露光光に対する遮光膜の屈折率nおよび消衰係数kが、以下の式(1)と式(2)に規定する関係を同時に満たすことを特徴とする。このような遮光膜の構成とすることにより、ArF露光光に対する遮光膜の光学濃度が3.0以上であり、かつ、ArF露光光に対する遮光膜の屈折率nおよび消衰係数kが以下の式(1)と式(2)に規定する関係を同時に満たすため、遮光膜が、ArF露光光に対する高い遮光性能を有するとともに、遮光膜のパターンのEMFバイアスを低減することができる。
n≦0.0733×k+0.4069×k+1.0083・・・式(1)
n≧29.316×k−92.292×k+72.671・・・式(2)
また、本発明の転写用マスクは、転写パターンを有する遮光膜が上記の本発明のマスクブランクの遮光膜と同様の構成としていることを特徴としている。このような転写用マスクとすることにより、遮光膜のパターンのEMFバイアスが低減されるため、大きな負荷をかけることなく、作製することができる。
シミュレーション結果から導き出された、屈折率nおよび消衰係数kと、膜厚d、位相差φおよび表面反射率Rfとの関係を示す図である。 シミュレーション結果から導き出された、屈折率nおよび消衰係数kと、表面反射率Rfおよび裏面反射率Rbとの関係を示す図である。 本発明の実施形態におけるマスクブランクの構成を示す断面図である。 本発明の実施形態における転写用マスクの製造工程を示す断面図である。
先ず、本発明の完成に至った経緯を述べる。
遮光性能が低下する要因となる酸素や窒素を含有しないケイ素系材料(例えば、ケイ素からなる材料)で遮光膜を形成した場合、所定の光学濃度(例えば、ArF露光光に対する光学濃度(OD)が3.0以上)を有する遮光膜をより薄い膜厚で形成することが可能である。しかし、他の元素と未結合のケイ素原子は、空気中の酸素と結合しやすい傾向がある。透光性基板上にケイ素からなる遮光膜を備えるマスクブランクを製造した場合、その製造後に大気中に放置すると酸化が進んでいき、遮光膜が形成した当初の光学特性(とくに遮光性能)から大きく変化してしまうという問題が生じる。
一方、近年のマスクブランクから転写用マスクを製造するプロセスにおいて、遮光膜のパターンに対してマスク検査を行った結果、黒欠陥が検出された場合、EB欠陥修正技術でその黒欠陥を修正することが広く行われている。このEB欠陥修正は、XeFガス等の非励起状態のフッ素系ガスを黒欠陥の周囲に供給しつつ、黒欠陥部分に電子線を照射することで黒欠陥を除去するものである。このEB欠陥修正は、電子線の照射で励起された遮光膜の部分(黒欠陥部分)の非励起状態のフッ素系ガスに対するエッチングレートと励起していない遮光膜の部分の非励起状態のフッ素系ガスに対するエッチングレートとのエッチングレート差が十分に確保されることで、黒欠陥部分のみを除去することが可能となる。酸素や窒素を含有しないケイ素系材料は、この非励起状態のフッ素系ガスに対する耐性が低く、電子線の照射を受けていない状態(励起していない状態)でもエッチング(これを自発性エッチングという。)が進行しやすい。このため、酸素や窒素を含有しないケイ素系材料からなる遮光膜は、EB欠陥修正を行った場合、黒欠陥以外の遮光膜のパターン側壁の自発性エッチングが進行しやすいという問題がある。
上記の2つの問題があるため、遮光膜を形成する材料には、ケイ素に窒素や酸素を含有させた材料を適用する必要がある。ケイ素に酸素を含有させた材料は、ケイ素に窒素を含有させた材料に比べて遮光性能の低下が著しい。これらのことを考慮すると、ケイ素系材料で遮光膜を形成する場合、ケイ素に窒素を含有させた材料(窒化ケイ素系材料)を適用することが好ましいといえる。窒化ケイ素系材料の遮光膜は、膜中の窒素含有量を増加させていくにつれて、その遮光膜のArF露光光に対する消衰係数k(以下、単に消衰係数kという。)が低下しつつ、ArF露光光に対する屈折率n(以下、単に屈折率nという。)が上昇するという特性がある。遮光膜の消衰係数kが低下するにつれ、遮光膜の光学濃度は低下するため、遮光膜に所定の光学濃度を確保させるためには、遮光膜の膜厚を厚くする必要が生じてしまう。また、遮光膜の屈折率nが上昇するにつれて、遮光膜の位相差が大きくなってしまう。遮光膜の屈折率nの上昇、消衰係数kの低下は、ともに遮光膜のEMFバイアスが大きくなることに繋がる。このため、窒化ケイ素系材料の遮光膜の屈折率nと消衰係数kを所定の範囲になるように制御する必要がある。
ここで、本発明者らは、バイナリマスクを製造するためのマスクブランクの遮光膜が、所定の光学濃度(OD=3.0以上)を有しつつ、EMFバイアスが十分に低減されるという2つの条件を同時に満たすことが可能な遮光膜の屈折率nと消衰係数kの関係について、鋭意研究を行った。その結果、以降に示す構成の遮光膜であれば、ArF露光光に対する所定の光学濃度を確保でき、さらに遮光膜のEMFバイアスを十分に低減できるという結論に至り、本発明を完成させた。
本発明を完成させるに当たり、先ず、遮光膜の光学シミュレーションを行った。光学シミュレーションでは、露光光をArFエキシマレーザーとし、遮光膜を光学的に均一な物質からなる単層構造の薄膜と仮定し、屈折率nが0.8〜2.6の範囲および消衰係数kが1.0〜2.6の範囲において、屈折率nおよび消衰係数kのそれぞれの値を変えながら、光学濃度(OD)が3.0になるときの膜厚dにおける位相差φおよび表面反射率Rfおよび裏面反射率Rbを求めた。
その後、このシミュレーション結果を元に、屈折率nおよび消衰係数kと位相差φとの関係、屈折率nおよび消衰係数kと膜厚dとの関係、屈折率nおよび消衰係数kと表面反射率Rfとの関係、および屈折率nおよび消衰係数kと裏面反射率Rbとの関係を整理した。そして、整理した関係を元に、位相差φが90度、80度、0度および−20度のそれぞれの場合における屈折率nおよび消衰係数kとの関係(図1)、膜厚dが80nm、70nmおよび60nmのそれぞれの場合における屈折率nおよび消衰係数kとの関係(図1)、表面反射率Rfが50%、45%および40%のそれぞれの場合における屈折率nおよび消衰係数kとの関係(図1、図2)、ならびに、裏面反射率Rbが50%、45%および40%のそれぞれの場合における屈折率nおよび消衰係数kとの関係(図2)を求めた。図1および図2は、このようにして求められた関係をプロットしたものである。
図1は、シミュレーション結果から導き出された、屈折率nおよび消衰係数kと、膜厚d、位相差φおよび表面反射率Rfとの関係を示す図である。図2は、シミュレーション結果から導き出された、屈折率nおよび消衰係数kと、表面反射率Rfおよび裏面反射率Rbとの関係を示す図である。図1および図2では、それぞれの関係から得られる近似曲線も示している。なお、以下の式(a)〜式(m)の近似曲線を得るために使用したデータは、図1および図2中にプロットされているデータである。また、以下の各近似曲線は、算出方式によって多少変動する。しかし、その近似式の変動で生じる屈折率nおよび消衰係数kの範囲の変動が、遮光膜の位相差、膜厚、表面反射率および裏面反射率に与える影響は小さく、許容される範囲である。
図1中に示される、位相差φが90度の場合の近似曲線は、以下の式(a)で表わされ、位相差φが80度の場合の近似曲線は、以下の式(b)で表わされ、位相差φが−20度の場合の近似曲線は、以下の式(c)で表わされ、位相差φが0度の場合の近似曲線は、以下の式(d)で表わされる。
n=0.0733×k+0.4069×k+1.0083・・・式(a)
n=0.0966×k+0.3660×k+0.9956・・・式(b)
n=0.0637×k−0.1096×k+0.9585・・・式(c)
n=0.0636×k−0.0147×k+0.9613・・・式(d)
図1中に示される、膜厚dが80nmの場合の近似曲線は、以下の式(e)で表わされ、膜厚dが70nmの場合の近似曲線は、以下の式(f)で表わされ、膜厚dが60nmの場合の近似曲線は、以下の式(g)で表わされる。
n=29.316×k−92.292×k+72.671・・・式(e)
n=23.107×k−82.037×k+73.115・・・式(f)
n=12.717×k−54.382×k+58.228・・・式(g)
図1および図2中に示される、表面反射率Rfが50%の場合の近似曲線は、以下の式(h)で表わされ、表面反射率Rfが45%の場合の近似曲線は、以下の式(i)で表わされ、表面反射率Rfが40%の場合の近似曲線は、以下の式(j)で表わされる。なお、式(i)の近似曲線を得るに当たって、屈折率nが2.4付近から2.6付近にかけてプロットされている2点のデータは使用していない。また、式(j)の近似曲線を得るに当たって、屈折率nが2.4付近から2.6付近にかけてプロットされている1点のデータは使用していない。
n=0.7929×k−2.1606×k+2.1448・・・式(h)
n=1.7917×k−9.1446×k+16.519×k−9.5626・・・式(i)
n=15.539×k−103.99×k+260.83×k−289.22×k+120.12・・・式(j)
図2中に示される、裏面反射率Rbが50%の場合の近似曲線は、以下の式(k)で表わされ、裏面反射率Rbが45%の場合の近似曲線は、以下の式(l)で表わされ、裏面反射率Rbが40%の場合の近似曲線は、以下の式(m)で表わされる。
n=0.6198×k−2.1796×k+2.6451・・・式(k)
n=0.2357×k−0.2976×k+0.5410・・・式(l)
n=0.3457×k−0.5539×k+0.8005・・・式(m)
以下の式(1)は、ArF露光光における遮光膜(OD=3.0)の位相差φを90度以下にするために必要な条件を示す。以下の式(2)は、遮光膜(OD=3.0)の膜厚を80nm以下にするために必要な条件を示す。以下の式(3)は、ArF露光光に対する遮光膜(OD=3.0)の表面反射率を50%以下にするために必要な条件を示す。
n≦0.0733×k+0.4069×k+1.0083・・・式(1)
n≧29.316×k−92.292×k+72.671・・・式(2)
n≧0.7929×k−2.1606×k+2.1448・・・式(3)
式(1)と式(2)の関係を同時に満たすとき、ODが3.0である遮光膜の膜厚を80nm以下としつつ、その遮光膜の位相差φを90度以下にすることができるため、遮光膜のパターンのEMFバイアスが低減され、この遮光膜を有するマスクブランクから転写用マスクを製造するときの負荷も軽減される。さらに、式(3)の関係を満たすとき、ODが3.0である遮光膜の表面反射率を50%以下にすることができるため、転写露光の際の投影光学像の劣化を抑えやすい。なお、図2に示すように、表面反射率が50%以下のとき、裏面反射率も50%以下であるため、式(3)の関係を満たすとき、遮光膜の裏面反射に起因する転写露光の際の投影光学像の劣化を抑えやすい。
以下の式(4)は、ArF露光光における遮光膜(OD=3.0)の位相差φを80度以下にするために必要な条件を示す。以下の式(5)は、ArF露光光における遮光膜(OD=3.0)の位相差φを−20度以上にするために必要な条件を示し、以下の式(6)は、ArF露光光における遮光膜(OD=3.0)の位相差φを0度以上にするために必要な条件を示す。
n≦0.0966×k+0.3660×k+0.9956・・・式(4)
n≧0.0637×k−0.1096×k+0.9585・・・式(5)
n≧0.0636×k−0.0147×k+0.9613・・・式(6)
式(4)の関係を満たすとき、ODが3.0である遮光膜の位相差φを80度以下にすることができるため、遮光膜のパターンのEMFバイアスがより低減され、この遮光膜を有するマスクブランクから転写用マスクを製造するときの負荷もより軽減される。
式(5)の関係を満たすとき、ODが3.0である遮光膜の位相差φを−20度以上にすることができ、式(6)の関係を満たすとき、ODが3.0である遮光膜の位相差φを0度以上にすることができる。
以下の式(7)は、遮光膜(OD=3.0)の膜厚を70nm以下にするために必要な条件を示し、また、以下の式(8)は、遮光膜(OD=3.0)の膜厚を60nm以下にするために必要な条件を示す。
n≧23.107×k−82.037×k+73.115・・・式(7)
n≧12.717×k−54.382×k+58.228・・・式(8)
式(7)の関係を満たすとき、ODが3.0である遮光膜の膜厚を70nm以下にすることができるため、遮光膜のパターンのEMFバイアスがより低減され、また、式(8)の関係を満たすとき、ODが3.0である遮光膜の膜厚を60nm以下にすることができるため、遮光膜のパターンのEMFバイアスがさらに低減される。
以下の式(9)は、ArF露光光に対する遮光膜(OD=3.0)の表面反射率を45%以下にするために必要な条件を示し、以下の式(10)は、ArF露光光に対する遮光膜(OD=3.0)の表面反射率を40%以下にするために必要な条件を示す。
n≧1.7917×k−9.1446×k+16.519×k−9.5626・・・式(9)
n≧15.539×k−103.99×k+260.83×k−289.22×k+120.12・・・式(10)
式(9)の関係を満たすとき、ODが3.0である遮光膜の表面反射率を45%以下にすることができるため、転写露光の際の投影光学像の劣化をより抑えやすく、また、式(10)の関係を満たすとき、ODが3.0である遮光膜の表面反射率を40%以下にすることができるため、転写露光の際の投影光学像の劣化をさらに抑えやすい。なお、図2に示すように、表面反射率が45%以下のとき、裏面反射率も45%以下であるため、式(9)の関係を満たすとき、裏面反射に起因する転写露光の際の投影光学像の劣化をより抑えやすく、また、表面反射率が40%以下のとき、裏面反射率も40%以下であるため、式(10)の関係を満たすとき、裏面反射に起因する転写露光の際の投影光学像の劣化をさらに抑えやすい。
次に、本発明の各実施の形態について説明する。
図3は、本発明の実施形態に係るマスクブランク100の構成を示す断面図である。
図3に示すマスクブランク100は、透光性基板1上に、遮光膜2およびハードマスク膜3がこの順に積層された構造を有する。
[[透光性基板]]
透光性基板1は、ケイ素と酸素を含有する材料からなり、合成石英ガラス、石英ガラス、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、低熱膨張ガラス(SiO−TiOガラス等)などのガラス材料で形成することができる。これらの中でも、合成石英ガラスは、ArF露光光に対する透過率が高く、マスクブランクの透光性基板を形成する材料として特に好ましい。
[[遮光膜]]
遮光膜2は、窒化ケイ素系材料で形成された単層膜である。本発明における窒化ケイ素系材料は、ケイ素と窒素とからなる材料、または半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素とからなる材料である。また、単層膜とすることにより、製造工程数が少なくなって生産効率が高くなるとともに欠陥を含む製造品質管理が容易になる。また、遮光膜2は、窒化ケイ素系材料で形成されるため、ArF耐光性が高い。
遮光膜2は、ケイ素に加え、いずれの半金属元素を含有してもよい。この半金属元素の中でも、ホウ素、ゲルマニウム、アンチモンおよびテルルから選ばれる1以上の元素を含有させると、スパッタリングターゲットとして用いるケイ素の導電性を高めることが期待できるため、好ましい。
また、遮光膜2は、窒素に加え、いずれの非金属元素を含有してもよい。本発明における非金属元素は、狭義の非金属元素(窒素、炭素、酸素、リン、硫黄、セレン、水素)、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)および貴ガスを含むものをいう。この非金属元素の中でも、炭素、フッ素および水素から選ばれる1以上の元素を含有させると好ましい。遮光膜2は、後述する透光性基板1側の表層および透光性基板1とは反対側の表層を除き、酸素の含有量を5原子%以下に抑えることが好ましく、3原子%以下とすることがより好ましく、積極的に酸素を含有させることをしない(X線光電子分光分析等による組成分析を行ったときに検出下限値以下。)ことがさらに好ましい。窒化ケイ素系材料に酸素を含有させると、消衰係数kが低下し、十分な遮光性能が得られにくくなる。また、透光性基板1は、合成石英ガラス等の酸化ケイ素を主成分とする材料で形成されていることが一般的である。遮光膜2が透光性基板1の表面に接して配置される場合、遮光膜2が酸素を含有すると、酸素を含む窒化ケイ素系材料膜の組成と透光性基板の組成との差が小さくなり、遮光膜2にパターンを形成するときに行われるフッ素系ガスによるドライエッチングにおいて、透光性基板1に接する遮光膜2と透光性基板1との間でエッチング選択性が得られにくくなることがある。また、遮光膜2の酸素含有量が多いと、EB欠陥修正をおこなったときの修正レートが大幅に遅くなる。
貴ガスは、反応性スパッタリングで遮光膜2を成膜する際に成膜室内に存在することによって成膜速度を大きくし、生産性を向上させることができる元素である。この貴ガスがプラズマ化し、ターゲットに衝突することでターゲットからターゲット構成元素が飛び出し、途中、反応性ガスを取りこみつつ、透光性基板1上に遮光膜2が形成される。このターゲット構成元素がターゲットから飛び出し、透光性基板1に付着するまでの間に成膜室中の貴ガスがわずかに取り込まれる。この反応性スパッタリングで必要とされる貴ガスとして好ましいものとしては、アルゴン、クリプトン、キセノンが挙げられる。また、遮光膜2の応力を緩和するために、原子量の小さいヘリウム、ネオンを遮光膜2に積極的に取りこませてもよい。
遮光膜2は、ケイ素と窒素とからなる材料で形成されることが好ましい。貴ガスは、上記のように、反応性スパッタリングで遮光膜2を成膜する際にわずかに取り込まれる。しかしながら、貴ガスは、薄膜に対してラザフォード後方散乱分析(RBS:Rutherford Back−Scattering Spectrometry)やX線光電子分光分析(XPS:X−ray Photoelectron Spectroscopy)のような組成分析を行っても検出することが容易ではない元素である。このため、上記のケイ素と窒素とからなる材料には、貴ガスを含有する材料も包含しているとみなすことができる。
遮光膜2は、透光性基板1側の表層と透光性基板1とは反対側の表層とを除いた領域(以下、バルク領域という。)における厚さ方向の窒素含有量のバラつきが5原子%以内であると好ましく、3原子%以内であるとより好ましい。バラつきが5原子%以内であれば、組成が均一であると言える。一方、上記のRBSやXPSによる組成分析を遮光膜2に対して行った場合、透光性基板1側の表層の分析結果は、透光性基板1からの影響を受けるため、バルク領域と同一組成にはなりにくい。また、透光性基板1とは反対側の表層は、自然酸化が起こるため、バルク領域と同一組成になりにくい。また、透光性基板1とは反対側の表層は、積極的に酸素を含有させると、マスク洗浄や大気中での保管によるArF露光光に対する表面反射率の変化などの遮光膜2の特性変化を抑制することができる。透光性基板1とは反対側の表層に積極的に酸素を含有させる方法として、遮光膜2をスパッタリングにより成膜した後で、大気中などの酸素を含有する気体中における加熱処理、大気中などの酸素を含有する気体中でのフラッシュランプ等の光照射処理、オゾンや酸素プラズマを遮光膜の表面に接触させる処理などの後処理を追加する方法が挙げられる。なお、遮光膜2の透光性基板1側の表層とは、遮光膜2の透光性基板1との界面から反対側の表層側に向かって5nmの深さまでの範囲にわたる領域のことをいう。また、遮光膜2の透光性基板1とは反対側の表層とは、遮光膜2の透光性基板1とは反対側の表面から透光性基板1側に向かって5nmの深さまでの範囲にわたる領域のことをいう。
遮光膜2の窒素含有量は、50原子%以下であると好ましく、45原子%以下であるとより好ましい。窒素含有量が50原子%を超えるとArF露光光に対する消衰係数kが小さくなり、十分な遮光性能が得られにくくなる。また、遮光膜2の窒素含有量は、25原子%以上であると好ましく、30原子%以上であるとより好ましい。窒素含有量が25原子%未満であると洗浄耐性が不足しやすく、また酸化が起こりやすく、膜の経時安定性が損なわれやすくなる。さらに、遮光膜2に対してEB欠陥修正を行う場合、自発性エッチングが発生しやすくなる。
遮光膜2のケイ素含有量は、50原子%以上であると好ましく、55原子%以上であるとより好ましい。ケイ素含有量が50原子%未満であるとArF露光光に対する消衰係数kが小さくなり、十分な遮光性能が得られにくくなる。また、遮光膜2のケイ素含有量は、75原子%以下であると好ましく、70原子%以下であるとより好ましい。ケイ素含有量が75原子%を超えると洗浄耐性が不足しやすく、また酸化が起こりやすく、膜の経時安定性が損なわれやすくなる。

遮光膜2の厚さは、80nm以下であり、70nm以下であると好ましく、60nm以下であるとより好ましい。厚さが80nm以下であると微細な遮光膜のパターンを形成しやすくなり、また、遮光膜のパターンのEMFバイアスが低減され、この遮光膜を有するマスクブランクから転写用マスクを製造するときの負荷も軽減される。また、遮光膜2の厚さは、40nm以上であると好ましく、45nm以上であるとより好ましい。厚さが40nm未満であると、ArF露光光に対する十分な遮光性能が得られにくくなる。
ArF露光光に対する遮光膜2の光学濃度は、3.0以上であると好ましい。光学濃度が3.0以上であると十分な遮光性能が得られる。このため、このマスクブランクを用いて製造された転写用マスクを用いて露光を行ったとき、その投影光学像(転写像)の十分なコントラストが得られやすくなる。また、ArF露光光に対する遮光膜2の光学濃度は、4.0以下であると好ましく、3.5以下であるとより好ましい。光学濃度が4.0を超えると、遮光膜2の膜厚が厚くなり、微細な遮光膜のパターンを形成しにくくなる。
ArF露光光に対する遮光膜2の表面反射率(透光性基板1とは反対側の面の反射率)は、50%以下であると好ましく、45%以下であるとより好ましく、40%以下であるとさらに好ましい。表面反射率が50%を超えるとArF露光光の反射が大きくなりすぎて転写露光の際の投影光学像が劣化しやすくなる。また、ArF露光光に対する遮光膜2の表面反射率は、20%以上であると好ましい。表面反射率が20%未満であると、波長193nmまたはその近傍の波長の光を用いてマスクパターン検査を行うときのパターン検査感度が低下する。
ArF露光光に対する遮光膜2の裏面反射率(透光性基板1側の面の反射率)は、50%以下であると好ましく、45%以下であるとより好ましく、40%以下であるとさらに好ましい。裏面反射率が50%を超えると露光光の反射が大きくなりすぎて転写露光の際の投影光学像が劣化しやすくなる。
ArF露光光に対する遮光膜2の位相差は、90度以下であり、80度以下であると好ましい。位相差が90度以下であると、遮光膜2のパターンのEMFバイアスが低減され、この遮光膜を有するマスクブランクから転写用マスクを製造するときの負荷も軽減される。また、ArF露光光に対する遮光膜2の位相差は、−20度以上であると好ましく、0度以上であるとより好ましい。
ArF露光光に対する遮光膜2の屈折率nおよび消衰係数kは、以下の式(1)および式(2)に規定する関係を満たす。式(1)の関係を満たすと、ArF露光光に対する遮光膜2の位相差を90度以下にすることができ、式(2)の関係を満たすと、遮光膜の厚さを80nm以下にすることができる。このため、式(1)および式(2)の関係を満たすと、遮光膜2のパターンのEMFバイアスが低減され、この遮光膜を有するマスクブランクから転写用マスクを製造するときの負荷も軽減される。また、ArF露光光に対する屈折率nおよび消衰係数kは、以下の式(3)に規定する関係を満たすことが好ましい。式(3)の関係を満たすと、遮光膜2の表面反射率を50%以下にすることができ、また、上記したように、遮光膜2の裏面反射率も50%以下にすることができる。このため、式(3)の関係を満たすと、転写露光の際の投影光学像の劣化を抑えやすくなる。
n≦0.0733×k+0.4069×k+1.0083・・・式(1)
n≧29.316×k−92.292×k+72.671・・・式(2)
n≧0.7929×k−2.1606×k+2.1448・・・式(3)
ArF露光光に対する遮光膜2の屈折率nおよび消衰係数kは、以下の式(4)の関係を満たすことが好ましい。式(4)の関係を満たすと、ArF露光光に対する遮光膜2の位相差を80度以下にすることができ、遮光膜2のパターンのEMFバイアスがより低減され、この遮光膜を有するマスクブランクから転写用マスクを製造するときの負荷もより軽減される。また、ArF露光光に対する屈折率nおよび消衰係数kは、以下の式(5)の関係を満たすことが好ましく、以下の式(6)の関係を満たすことがより好ましい。式(5)の関係を満たすと、ArF露光光に対する遮光膜2の位相差を−20度以上にすることができ、式(6)の関係を満たすと、ArF露光光に対する遮光膜2の位相差を0度以上にすることができる。
n≦0.0966×k+0.3660×k+0.9956・・・式(4)
n≧0.0637×k−0.1096×k+0.9585・・・式(5)
n≧0.0636×k−0.0147×k+0.9613・・・式(6)
ArF露光光に対する遮光膜2の屈折率nおよび消衰係数kは、以下の式(7)の関係を満たすことが好ましく、以下の式(8)の関係を満たすことがより好ましい。式(7)の関係を満たすと、遮光膜の厚さを70nm以下にすることができ、遮光膜2のパターンのEMFバイアスがより低減され、この遮光膜を有するマスクブランクから転写用マスクを製造するときの負荷もより軽減される。また、以下の式(8)の関係を満たすと、遮光膜の厚さを60nm以下にすることができ、遮光膜2のパターンのEMFバイアスがさらに低減され、この遮光膜を有するマスクブランクから転写用マスクを製造するときの負荷もさらに軽減される。
n≧23.107×k−82.037×k+73.115・・・式(7)
n≧12.717×k−54.382×k+58.228・・・式(8)
ArF露光光に対する遮光膜2の屈折率nおよび消衰係数kは、以下の式(9)の関係を満たすことが好ましく、以下の式(10)の関係を満たすことがより好ましい。式(9)の関係を満たすと、遮光膜2の表面反射率を45%以下にすることができ、また、上記したように、遮光膜2の裏面反射率も45%以下にすることができ、転写露光の際の投影光学像の劣化をより抑えやすくなる。また、式(10)の関係を満たすと、遮光膜2の表面反射率を40%以下にすることができ、また、上記したように、遮光膜2の裏面反射率も40%以下にすることができ、転写露光の際の投影光学像の劣化をさらに抑えやすくなる。
n≧1.7917×k−9.1446×k+16.519×k−9.5626・・・式(9)
n≧15.539×k−103.99×k+260.83×k−289.22×k+120.12・・・式(10)
ArF露光光に対する遮光膜2の屈折率nは、0.8以上であると好ましく、0.9以上であるとより好ましく、1.0以上であるとさらに好ましい。屈折率nを0.8未満にするためには、遮光膜2の窒素含有量を大幅に少なくする必要がある。このため、屈折率が0.8未満であると、EB欠陥修正を行うときに自発性エッチングが発生しやすくなる。
ArF露光光に対する遮光膜2の消衰係数kは、2.6以下であると好ましく、2.5以下であるとより好ましく、2.4以下であるとさらに好ましい。消衰係数kが2.6を超えるようにするためには、遮光膜2の窒素含有量を大幅に少なくする必要がある。このため、消衰係数kが2.6を超えると、EB欠陥修正を行うときに自発性エッチングが発生しやすくなる。
なお、遮光膜2は、透光性基板1とは反対側の表層の酸化が進行している。このため、この遮光膜2の表層は、それ以外の遮光膜2の領域とは組成が異なっており、光学特性も異なっている。しかし、本明細書では、遮光膜2は膜厚方向の光学特性が均一な単層膜として扱うこととする。よって、本明細書では、遮光膜2の屈折率nおよび消衰係数kは、遮光膜2の表層を含んだ全体での屈折率nおよび消衰係数kのことをいう。
薄膜の屈折率nおよび消衰係数kは、その薄膜の組成だけで決まるものではない。その薄膜の膜密度および結晶状態なども、屈折率nおよび消衰係数kを左右する要素である。このため、反応性スパッタリングで遮光膜2を成膜するときの諸条件を調整して、遮光膜2が所望の屈折率nおよび消衰係数kとなって、ArF露光光に対する光学濃度、表面反射率、裏面反射率および位相差が規定の値に収まるように成膜する。遮光膜2を、上記の屈折率nおよび消衰係数kの範囲にするには、反応性スパッタリングで成膜する際に、貴ガスと反応性ガスの混合ガスの比率を調整することだけに限られない。反応性スパッタリングで成膜する際における成膜室内の圧力、ターゲットに印加する電力、ターゲットと透光性基板との間の距離等の位置関係など多岐にわたる。また、これらの成膜条件は成膜装置に固有のものであり、形成される遮光膜2が所望の屈折率nおよび消衰係数kになるように適宜調整されるものである。
遮光膜2は、スパッタリングによって形成される。DCスパッタリング、RFスパッタリングおよびイオンビームスパッタリングなどのいずれのスパッタリングも適用可能である。導電性が低いターゲット(ケイ素ターゲット、半金属元素を含有しないあるいは含有量の少ないケイ素化合物ターゲットなど)を用いる場合においては、RFスパッタリングやイオンビームスパッタリングを適用することが好ましいが、成膜レートを考慮すると、RFスパッタリングを適用することがより好ましい。
遮光膜2は、ケイ素ターゲットまたはケイ素に半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素を含有する材料からなるターゲットを用い、窒素系ガスと貴ガスを含むスパッタリングガス中での反応性スパッタリングによって、形成される。
遮光膜2を形成する際にスパッタリングガスとして用いる窒素系ガスは、窒素を含有するガスであればいずれのガスも適用可能である。上記の通り、遮光膜2は、その表層を除いて酸素含有量を低く抑えることが好ましいため、酸素を含有しない窒素系ガスを適用することが好ましく、窒素ガス(Nガス)を適用することがより好ましい。また、遮光膜2を形成する際にスパッタリングガスとして用いる貴ガスの種類に制限はないが、アルゴン、クリプトン、キセノンを用いることが好ましい。また、遮光膜2の応力を緩和するために、原子量の小さいヘリウム、ネオンを遮光膜2に積極的に取りこませることができる。
[[ハードマスク膜]]
遮光膜2を備えるマスクブランク100において、遮光膜2の上に遮光膜2をエッチングするときに用いられるエッチングガスに対してエッチング選択性を有する材料で形成されたハードマスク膜3をさらに積層させた構成とすることが好ましい。遮光膜2は、所定の光学濃度を確保する必要があるため、その厚さを低減するには限界がある。ハードマスク膜3は、その直下の遮光膜2にパターンを形成するドライエッチングが終わるまでの間、エッチングマスクとして機能することができるだけの膜の厚さがあれば十分であり、基本的に光学特性の制限を受けない。このため、ハードマスク膜3の厚さは遮光膜2の厚さに比べて大幅に薄くすることができる。そして、有機系材料のレジスト膜は、このハードマスク膜3にパターンを形成するドライエッチングが終わるまでの間、エッチングマスクとして機能するだけの膜の厚さがあれば十分であるので、従来よりも大幅にレジスト膜の厚さを薄くすることができる。このため、レジストパターン倒れなどの問題を抑制することができる。
ハードマスク膜3は、クロム(Cr)を含有する材料で形成されていることが好ましい。クロムを含有する材料は、SFなどのフッ素系ガスを用いたドライエッチングに対して特に高いドライエッチング耐性を有している。クロムを含有する材料からなる薄膜は、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスによるドライエッチングでパターニングされるのが一般的である。しかし、このドライエッチングは異方性があまり高くないため、クロムを含有する材料からなる薄膜をパターニングするときのドライエッチング時、パターンの側壁方向へのエッチング(サイドエッチング)が進行しやすい。
クロムを含有する材料を遮光膜に用いた場合は、遮光膜2の膜厚が相対的に厚いので、遮光膜2のドライエッチングの際にサイドエッチングの問題が生じるが、ハードマスク膜3としてクロムを含有する材料を用いた場合は、ハードマスク膜3の膜厚が相対的に薄いので、サイドエッチングに起因する問題は生じにくい。
クロムを含有する材料としては、クロム金属のほか、クロムに酸素、窒素、炭素、ホウ素およびフッ素から選ばれる1以上の元素を含有する材料、たとえばCrN、CrC、CrON、CrCO、CrCONなどが挙げられる。クロム金属にこれらの元素が添加されるとその膜はアモルファス構造の膜になりやすく、その膜の表面ラフネスおよび遮光膜2をドライエッチングしたときのラインエッジラフネスが抑えられるので好ましい。
また、ハードマスク膜3のドライエッチングの観点からも、ハードマスク膜3を形成する材料としては、クロムに酸素、窒素、炭素、ホウ素およびフッ素から選ばれる1以上の元素を含有する材料を用いることが好ましい。
クロム系材料は、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスでエッチングされるが、クロム金属はこのエッチングガスに対するエッチングレートがあまり高くない。クロムに酸素、窒素、炭素、ホウ素およびフッ素から選ばれる1以上の元素を含有させることによって、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスのエッチングガスに対するエッチングレートを高めることが可能になる。
なお、CrCOからなるハードマスク膜3は、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスによるドライエッチングに対し、サイドエッチングが大きくなりやすい窒素を含有せず、サイドエッチングを抑制する炭素を含有し、さらにエッチングレートが向上する酸素を含有しているため、特に好ましい。また、ハードマスク膜3を形成するクロムを含有する材料に、インジウム、モリブデンおよびスズのうち1以上の元素を含有させてもよい。インジウム、モリブデンおよびスズのうち1以上の元素を含有させることで、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスに対するエッチングレートをより高くすることができる。
クロムを含有する材料以外の、ハードマスク膜3を形成する材料としては、タンタル(Ta)やタングステン(W)などの金属のほか、タンタルなどの金属を含有する材料も適用可能である。たとえば、この場合におけるタンタルを含有する材料としては、タンタル金属のほか、タンタルに窒素、ホウ素および炭素から選ばれる1以上の元素を含有させた材料などが挙げられる。その具体例としては、Ta、TaN、TaO、TaON、TaBN、TaBO、TaBON、TaCN、TaCO、TaCON、TaBCN、TaBOCNなどが挙げられる。
マスクブランク100において、ハードマスク膜3の表面に接して、有機系材料のレジスト膜が100nm以下の膜厚で形成されていることが好ましい。DRAM hp32nm世代に対応する微細パターンの場合、ハードマスク膜3に形成すべき転写パターンに、線幅が40nmのSRAF(Sub−Resolution Assist Feature)が設けられることがある。しかし、この場合でも、レジストパターンの断面アスペクト比が1:2.5と低くすることができるので、レジスト膜の現像時、リンス時等にレジストパターンが倒壊することや脱離することを抑制することができる。なお、レジスト膜は、膜厚が80nm以下であるとより好ましい。
マスクブランク100においてハードマスク膜3を設けず遮光膜2に接してレジスト膜を直接形成することも可能である。この場合は、構造が簡単で、転写用マスクを製造するときもハードマスク膜3のドライエッチングが不要になるため、製造工程数を削減することが可能になる。なお、この場合、遮光膜2に対してHMDS(hexamethyldisilazane)等の表面処理を行ってからレジスト膜を形成することが好ましい。
また、本発明のマスクブランクは、下記に記載するように、バイナリマスク用途に適するマスクブランクであるが、バイナリマスク用に限るものではなく、レベンソン型位相シフトマスク用のマスクブランク、あるいはCPL(Chromeless Phase Lithography)マスク用のマスクブランクとしても使用できる。
[転写用マスク]
図4に、本発明の実施形態であるマスクブランク100から転写用マスク(バイナリマスク)200を製造する工程の断面模式図を示す。
図4に示す転写用マスク200の製造方法は、上記のマスクブランク100を用いるものであって、ドライエッチングによりハードマスク膜3に転写パターンを形成する工程と、転写パターンを有するハードマスク膜3(ハードマスクパターン3a)をマスクとするドライエッチングにより遮光膜2に転写パターンを形成する工程と、ハードマスクパターン3aを除去する工程とを備えることを特徴とするものである。
以下、図4に示す製造工程にしたがって、転写用マスク200の製造方法の一例を説明する。なお、この例では、遮光膜2にはケイ素と窒素を含有する材料を適用し、ハードマスク膜3にはクロムを含有する材料を適用している。
まず、マスクブランク100(図4(a)参照)を準備し、ハードマスク膜3に接して、レジスト膜をスピン塗布法によって形成する。次に、レジスト膜に対して、遮光膜2に形成すべき転写パターンを露光描画し、さらに現像処理等の所定の処理を行い、レジストパターン4aを形成する(図4(b)参照)。
続いて、レジストパターン4aをマスクとし、塩素と酸素との混合ガスなどの塩素系ガスを用いたドライエッチングを行い、ハードマスク膜3にパターン(ハードマスクパターン3a)を形成する(図4(c)参照)。塩素系ガスとしては、Clが含まれていれば特に制限はなく、たとえば、Cl、SiCl、CHCl、CHCl、BCl等を挙げることができる。塩素と酸素との混合ガスを用いる場合は、たとえば、そのガス流量比をCl:O=4:1にするとよい。
次に、アッシングやレジスト剥離液を用いてレジストパターン4aを除去する(図4(d)参照)。
続いて、ハードマスクパターン3aをマスクとし、フッ素系ガスを用いたドライエッチングを行い、遮光膜2にパターン(遮光膜パターン2a)を形成する(図4(e)参照)。フッ素系ガスとしては、Fを含むものであれば用いることができるが、SFが好適である。SF以外に、たとえば、CHF、CF、C、C等を挙げることができるが、Cを含むフッ素系ガスは、ガラス材料の透光性基板1に対するエッチングレートが比較的高い。SFは透光性基板1へのダメージが小さいので好ましい。なお、SFにHeなどを加えるとさらによい。
その後、クロムエッチング液を用いてハードマスクパターン3aを除去し、洗浄等の所定の処理を経て、転写用マスク200を得る(図4(f)参照)。なお、このハードマスクパターン3aの除去工程は、塩素と酸素との混合ガスを用いたドライエッチングで行ってもよい。ここで、クロムエッチング液としては、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸を含む混合物を挙げることができる。
図4に示す製造方法によって製造された転写用マスク200は、透光性基板1上に、転写パターンを有する遮光膜2(遮光膜パターン2a)を備えたバイナリマスクである。遮光膜2は、ケイ素と窒素を含有する材料で形成された単層膜であり、ArF露光光に対する光学濃度が3.0以上であり、ArF露光光に対する遮光膜2の屈折率nおよび消衰係数kが、以下の式(1)と式(2)に規定する関係を同時に満たすことを特徴とする。
n≦0.0733×k+0.4069×k+1.0083・・・式(1)
n≧29.316×k−92.292×k+72.671・・・式(2)
転写用マスク200における透光性基板1、遮光膜2に関する事項については、マスクブランク100の透光性基板1、遮光膜2に関する事項と同様の技術的特徴を有している。
転写用マスク200は、遮光膜パターン2aの光学濃度が3.0以上であり、ArF露光光に対する遮光膜パターン2aの屈折率nおよび消衰係数kが、式(1)と式(2)に規定する関係を同時に満たす。このため、遮光膜パターン2aが、ArF露光光に対する高い遮光性能を有する。また、遮光膜2のパターンのEMFバイアスを低減することができるため、大きな負荷をかけることなく、転写用マスク200を作製することができる。
なお、ここでは転写用マスク200がバイナリマスクの場合を説明したが、本発明の転写用マスクはバイナリマスクに限らず、レベンソン型位相シフトマスクおよびCPLマスクに対しても適用することができる。すなわち、レベンソン型位相シフトマスクの場合は、その遮光膜に本発明の遮光膜を用いることができる。また、CPLマスクの場合は、主に外周の遮光帯を含む領域に本発明の遮光膜を用いることができる。
さらに、本発明の半導体デバイスの製造方法は、前記の転写用マスク200または前記のマスクブランク100を用いて製造された転写用マスク200を用い、半導体基板上のレジスト膜にパターンを露光転写することを特徴としている。
本発明の転写用マスク200やマスクブランク100は、上記の通りの効果を有するため、ArFエキシマレーザーを露光光とする露光装置のマスクステージに転写用マスク200をセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に転写パターンを露光転写する際、半導体デバイス上のレジスト膜に、高いCD精度で転写パターンを転写することができる。このため、このレジスト膜のパターンをマスクとして、下層膜をドライエッチングして回路パターンを形成した場合、精度不足に起因する配線短絡や断線のない高精度の回路パターンを形成することができる。
以下、実施例により、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
[マスクブランクの製造]
主表面の寸法が約152mm×約152mmで、厚さが約6.25mmの合成石英ガラスからなる透光性基板1を準備した。この透光性基板1は、端面および主表面が所定の表面粗さに研磨され、その後、所定の洗浄処理および乾燥処理を施されたものであった。
次に、枚葉式RFスパッタ装置内に透光性基板1を設置し、ケイ素(Si)ターゲットを用い、クリプトン(Kr)、ヘリウム(He)および窒素(N)の混合ガスをスパッタリングガスとし、RF電源の電力を所定の値にし、反応性スパッタリング(RFスパッタリング)により、透光性基板1上に、ケイ素と窒素とからなる遮光膜2を58.8nmの厚さで形成した。
次に、膜の応力調整を目的に、この遮光膜2が形成された透光性基板1に対し、大気中において加熱温度500℃、処理時間1時間の条件で加熱処理を行った。
分光光度計(アジレントテクノロジー社製 Cary4000)を用いて、波長193nmにおける加熱処理後の遮光膜2の光学濃度(OD)を測定したところ、その値は3.00であった。この結果から、実施例1のマスクブランクは、高い遮光性能を有している。
位相シフト量測定装置(レーザーテック社製 MPM−193)を用いて波長193nmにおける加熱処理後の遮光膜2の位相差を測定したところ、その値は75.2度であった。
分光光度計(日立製、U−4100)を用いて、波長193nmにおける加熱処理後の遮光膜2の表面反射率および裏面反射率を測定したところ、その値は各々37.1%、30.0%であった。この結果から、実施例1のマスクブランクを用いて製造された転写用マスクは、転写露光の際の投影光学像の劣化を抑えることができる。
分光エリプソメーター(J.A.Woollam社製 M−2000D)を用いて、波長193nmにおける加熱処理後の遮光膜2の屈折率nと消衰係数kを測定した。波長193nmにおける屈折率nは1.83、消衰係数kは1.79であった。この屈折率nと消衰係数kの値から、遮光膜2の屈折率nおよび消衰係数kは、上記の式(4)、式(6)、式(8)および式(10)の条件を満たし、上記の膜厚、光学濃度、位相差、表面反射率および裏面反射率のそれぞれの値と整合する。なお、遮光膜2の屈折率nおよび消衰係数kは、上記の式(4)、式(8)および式(10)の条件を満たすことから、上記の式(1)、式(2)および式(3)の条件も満たす。
次に、この実施例1の遮光膜2について、EMFバイアスを算出する光学シミュレーションを行った。この光学シミュレーションにおいては、上記の測定で得られた遮光膜2の屈折率n、消衰係数k、及び膜厚dを入力値として使用した。また、光学シミュレーションに適用する設計パターンとしては、DRAMハーフピッチ(hp)40nmのラインアンドスペースパターンを適用した。光学シミュレーションに適用する露光光の照明条件としては、2極照明 (Dipole Illumination)を設定した。EMFバイアスは、TMAによる光学シミュレーションで算出されたバイアス(補正量)と、EMF効果を考慮したシミュレーションで算出されたバイアス(補正量)との差をとることによって算出した。その結果、EMFバイアスは、0.5nmであった。この結果から、実施例1のマスクブランクは、EMFバイアスが十分に低減されているといえる。さらに、この実施例1のマスクブランクから転写用マスクを製造するときの設計パターンの補正計算に係る負荷が軽減され、実際に遮光膜2に形成するパターンの複雑化も抑制できるといえる。
次に、枚葉式DCスパッタ装置内に加熱処理後の遮光膜2が形成された透光性基板1を設置し、クロム(Cr)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)と窒素(N)との混合ガス雰囲気で反応性スパッタリング(DCスパッタリング)を行い、膜厚5nmのCrN膜からなるハードマスク膜3を成膜した。XPSで測定したこの膜の膜組成比は、Crが75原子%、Nが25原子%であった。そして、遮光膜2で行った加熱処理より低い温度(280℃)で熱処理を行い、ハードマスク膜3の応力調整を行った。
以上の手順により、透光性基板1上に、遮光膜2およびハードマスク膜3が積層した構造を備えるマスクブランク100を製造した。
[転写用マスクの製造]
次に、この実施例1のマスクブランク100を用い、以下の手順で実施例1の転写用マスク(バイナリマスク)200を製造した。
まず、実施例1のマスクブランク100(図4(a)参照)を準備し、ハードマスク膜3の表面に接して、電子線描画用化学増幅型レジストからなるレジスト膜を膜厚80nmで形成した。次に、このレジスト膜に対して、遮光膜2に形成すべき転写パターンを電子線描画し、所定の現像処理および洗浄処理を行い、レジストパターン4aを形成した(図4(b)参照)。
次に、レジストパターン4aをマスクとし、塩素と酸素との混合ガス(ガス流量比 Cl:O=4:1)を用いたドライエッチングを行い、ハードマスク膜3にパターン(ハードマスクパターン3a)を形成した(図4(c)参照)。
次に、レジストパターン4aを除去した(図4(d)参照)。続いて、ハードマスクパターン3aをマスクとし、フッ素系ガス(SFとHeの混合ガス)を用いたドライエッチングを行い、遮光膜2にパターン(遮光膜パターン2a)を形成した(図4(e)参照)。
その後、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸を含むクロムエッチング液を用いてハードマスクパターン3aを除去し、洗浄等の所定の処理を経て、転写用マスク200を得た(図4(f)参照)。
実施例1の転写用マスク200を露光装置のマスクステージにセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写を行った結果、半導体デバイス上のレジスト膜に、高いCD精度で転写パターンを転写することができた。
(実施例2)
[マスクブランクの製造]
実施例2のマスクブランクは、遮光膜を下記のようにした以外は、実施例1のマスクブランク100と同様の手順で製造された。
実施例2の遮光膜の形成方法は以下の通りである。
枚葉式DCスパッタ装置内に透光性基板1を設置し、ケイ素(Si)ターゲットを用い、クリプトン(Kr)、ヘリウム(He)および窒素(N)の混合ガスをスパッタリングガスとし、DC電源の電力を所定の値にし、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、透光性基板1上に、ケイ素と窒素とからなる遮光膜2を45.7nmの厚さで形成した。
次に、膜の応力調整を目的に、この遮光膜2が形成された透光性基板1に対し、大気中において加熱温度500℃、処理時間1時間の条件で加熱処理を行った。
実施例1と同様に、加熱処理後の遮光膜2の光学濃度(OD)を測定したところ、その値は3.06であった。この結果から、実施例2のマスクブランクは、高い遮光性能を有している。また、実施例1と同様に、加熱処理後の遮光膜2の位相差を測定したが、その値は測定できなかった。そこで、加熱処理後の遮光膜2の屈折率nおよび消衰係数kに基づいて光学シミュレーションを行い、位相差を求めたところ、その値は−11.7度であった。また、実施例1と同様に、加熱処理後の遮光膜2の表面反射率および裏面反射率を測定したところ、その値は各々54.3%、52.1%であった。また、実施例1と同様に、加熱処理後の遮光膜2の屈折率nと消衰係数kを測定したところ、屈折率nは1.16、消衰係数kは2.40であった。この屈折率nと消衰係数kの値から、加熱処理後の遮光膜2の屈折率nおよび消衰係数kは、式(4)、式(5)および式(8)の条件を満たし、上記の膜厚、光学濃度、位相差、表面反射率および裏面反射率のそれぞれの値と整合する。なお、遮光膜2の屈折率nおよび消衰係数kは、上記の式(4)および式(8)の条件を満たすことから、上記の式(1)および式(2)の条件も満たす。
実施例1と同様に、遮光膜2のEMFバイアスを求めたところ、3.6nmであった。この結果から、実施例2のマスクブランクは、EMFバイアスを十分に低減できると言える。さらに、この実施例2のマスクブランクから転写用マスクを製造するときの設計パターンの補正計算に係る負荷が軽減され、実際に遮光膜2に形成するパターンの複雑化も抑制できるといえる。
[転写用マスクの製造]
次に、この実施例2のマスクブランクを用い、実施例1と同様の手順で、実施例2の転写用マスク(バイナリマスク)を製造した。実施例2の転写用マスク200を露光装置のマスクステージにセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写を行った結果、半導体デバイス上のレジスト膜に、高いCD精度で転写パターンを転写することができた。
(比較例1)
[マスクブランクの製造]
比較例1のマスクブランクは、遮光膜を下記のようにした以外は、実施例1のマスクブランク100と同様の手順で製造された。
比較例1の遮光膜の形成方法は以下の通りである。
枚葉式RFスパッタ装置内に透光性基板1を設置し、ケイ素(Si)ターゲットを用い、クリプトン(Kr)、ヘリウム(He)および窒素(N)の混合ガスをスパッタリングガスとし、RF電源の電力を所定の値にし、反応性スパッタリング(RFスパッタリング)により、透光性基板1上に、ケイ素および窒素からなる遮光膜を69.5nmの厚さで形成した。
次に、膜の応力調整を目的に、この遮光膜が形成された透光性基板1に対し、大気中において加熱温度500℃、処理時間1時間の条件で加熱処理を行った。
実施例1と同様に、加熱処理後の遮光膜の光学濃度(OD)を測定したところ、その値は3.01であった。この結果から、比較例1のマスクブランクは、十分な遮光性能を有している。また、実施例1と同様に、加熱処理後の遮光膜の位相差を測定したが、その値は測定できなかった。そこで、加熱処理後の遮光膜の屈折率nおよび消衰係数kに基づいてシミュレーションにより位相差を求めたところ、その値は129.9度であった。また、実施例1と同様に、加熱処理後の遮光膜の表面反射率および裏面反射率を測定したところ、その値は各々29.4%、19.6%であった。また、実施例1と同様に、加熱処理後の遮光膜2の屈折率nと消衰係数kを測定したところ、屈折率nは2.10、消衰係数kは1.51であった。この屈折率nと消衰係数kの値から、加熱処理後の遮光膜の屈折率nおよび消衰係数kは、式(7)および式(10)を満たすが、式(1)の条件を満たさず、上記の膜厚、光学濃度、位相差、表面反射率および裏面反射率のそれぞれの値と整合する。なお、遮光膜の屈折率nおよび消衰係数kは、式(7)および式(10)を満たすことから、上記の式(2)および式(3)を満たすが、式(1)は満たさない。
実施例1と同様に、遮光膜のEMFバイアスを求めたところ、8.2nmであった。この結果から、比較例1のマスクブランクは、EMFバイアスを十分に低減することができないと言える。さらに、この比較例1のマスクブランクから転写用マスクを製造するときの設計パターンの補正計算に係る負荷が過大となり、実際に遮光膜2に形成するパターンも複雑化するといえる。
[転写用マスクの製造]
次に、この比較例1のマスクブランクを用い、実施例1と同様の手順で、比較例1の転写用マスク(バイナリマスク)を製造した。比較例1の転写用マスクを露光装置のマスクステージにセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写を行った結果、半導体デバイス上のレジスト膜に形成された転写パターンのCDばらつきが大きかった。
1 透光性基板
2 遮光膜
2a 遮光膜パターン
3 ハードマスク膜
3a ハードマスクパターン
4a レジストパターン
100 マスクブランク
200 転写用マスク(バイナリマスク)

Claims (10)

  1. 透光性基板上に、遮光膜を備えたマスクブランクであって、
    前記遮光膜は、ケイ素と窒素とからなる材料、または半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素とからなる材料で形成された単層膜であり、
    前記遮光膜は、ArFエキシマレーザーの露光光に対する光学濃度が3.0以上であり、
    前記遮光膜の前記露光光に対する屈折率nおよび消衰係数kは、以下の式(1)、式(2)および式(3)に規定する関係を同時に満たす
    ことを特徴とするマスクブランク。
    n≦0.0733×k+0.4069×k+1.0083・・・式(1)
    n≧0.0637×k−0.1096×k+0.9585・・・式(2)
    n≧0.7929×k−2.1606×k+2.1448・・・式(3)
  2. 前記遮光膜は、前記消衰係数kが2.6以下であることを特徴とする請求項1記載のマスクブランク。
  3. 前記遮光膜は、前記屈折率nが0.8以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のマスクブランク。
  4. 前記遮光膜は、前記透光性基板側の表層と前記透光性基板とは反対側の表層とを除いた領域における厚さ方向の窒素含有量のバラつきが5原子%以内であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のマスクブランク。
  5. 前記遮光膜上にクロムを含有する材料からなるハードマスク膜を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のマスクブランク。
  6. 透光性基板上に、転写パターンを有する遮光膜を備えた転写用マスクであって、
    前記遮光膜は、ケイ素と窒素とからなる材料、または半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素とからなる材料で形成された単層膜であり、
    前記遮光膜は、ArFエキシマレーザーの露光光に対する光学濃度が3.0以上であり、
    前記遮光膜の前記露光光に対する屈折率nおよび消衰係数kは、以下の式(1)、式(2)および式(3)に規定する関係を同時に満たす
    ことを特徴とする転写用マスク。
    n≦0.0733×k+0.4069×k+1.0083・・・式(1)
    n≧0.0637×k−0.1096×k+0.9585・・・式(2)
    n≧0.7929×k−2.1606×k+2.1448・・・式(3)
  7. 前記遮光膜は、前記消衰係数kが2.6以下であることを特徴とする請求項6記載の転写用マスク。
  8. 前記遮光膜は、前記屈折率nが0.8以上であることを特徴とする請求項6または7に記載の転写用マスク。
  9. 前記遮光膜は、前記透光性基板側の表層と前記透光性基板とは反対側の表層とを除いた領域における厚さ方向の窒素含有量のバラつきが5原子%以内であることを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載の転写用マスク。
  10. 請求項6から9のいずれかに記載の転写用マスクを用い、半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写する工程を備えることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
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