本発明の好ましい実施の形態におけるバスダクトについて、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る直線状の2つのバスダクト10A,10Bを、同一直線上に並ぶよう接続した状態を示す斜視図である。ここで、図1中の左側に示すXYZの3方向のうち、X方向はバスダクト10A,10Bの長手方向を示している。また、Y方向はバスダクト10A,10Bの厚さ方向を示しており、Z方向は幅方向を示している。
さらに、各バスダクト10A,10Bは、互いに共通化された構造を有している。このため、バスダクト10A,10Bの構造に関しては、以下では一方のバスダクト10Aについてのみ説明を行い、他方のバスダクト10Bについては、特に必要がある場合を除き省略する。
また、以下では、バスダクト10A,10B同士を同一直線上に並ぶよう接続する態様を「延伸」や「延伸接続」と称し、分岐器具(プラグイン器具)を、バスダクト10A,10Bの長手方向(X方向)に交わるように接続する態様を「分岐」や「分岐接続」と称する。さらに、延伸接続においてバスダクト10A,10B同士の接続が行われる部分を「延伸接続部」と称し、分岐接続においてバスダクト10A(又はバスダクト10B)と分岐器具(プラグイン器具)との接続が行われる部分を「分岐接続部」と称する。
バスダクト10Aは、図1に示すように、第1〜第3絶縁導体11−1〜第3絶縁導体11−3の3つの絶縁導体と、これらの絶縁導体11−1〜11−3の大部分を覆う筐体であるハウジング12とを有している。さらに、バスダクト10Aは、他のバスダクト10Bと長手方向(X方向)に延伸されるよう接続されており、両バスダクト10A,10Bの接続部は、接続カバー13により覆われている。
ここで、本実施形態では、両バスダクト10A,10Bの長さは何れも1m程度となっているが、これに限定されるものではなく、例えば、2m程度や3m程度のものなどを製作し使用することが可能である。
バスダクト10Aの前述した各構成のうち、ハウジング12は、一対のハウジング片14,15を対向させて組み合わせることにより形成されている。ハウジング片14,15は、何れも鉄鋼等の金属板を、所定の形状に折曲加工して形成されている。そして、ハウジング片14,15を、互いの凹部が向き合うよう組み合わせることにより、前述の絶縁導体11−1〜11−3が装填される、矩形筒状の収納部16が形成されている。
また、ハウジング片14,15における凹部の、幅方向(Z方向)の両端にはフランジ部17が形成されており、互いのフランジ部17を重ね合わせた状態でハウジング片14,15が結合されている。ここで、図示は省略するが、ハウジング片14,15の結合は、各フランジ部17の長手方向(X方向)に沿った複数箇所で、ボルトとナットを締付けることにより行われている。
続いて、前述の第1絶縁導体11−1〜第3絶縁導体11−3は、何れも、電気伝導に関して良導体であるアルミ帯18の周囲を、PVC(ポリ塩化ビニル)、PET(ポリエチレンテレフタレート)などの絶縁材料からなる被覆層19で覆って形成されている。本実施形態では、アルミ帯18の幅は60〜300mm程度であり、厚さは5〜10mm程度となっている。
第1絶縁導体11−1〜第3絶縁導体11−3の被覆層19は、押出し成形などの手法により、一定の厚みで連続して形成されている。本実施形態では、被覆層19の厚みは0.5〜2mm程度となっている。図1に示すように、第1絶縁導体11−1〜第3絶縁導体11−3の大部分は厚さ方向(Y方向)に重ねられており、3つの絶縁導体11−1〜11−3は、板面を接触させた状態で束ねられている。被覆層19の成形方法としては、上述の押出し成形に限らず、絶縁材料からなるフィルム(シート)をアルミ帯18(導体帯)の外周に巻きつける等、周知の方法を採用することができる。
各絶縁導体11−1〜11−3の長手方向の両端部においては、被覆層19が所定の長さに亘って除去されており、内部のアルミ帯18が露出している(図1〜図4参照)。ここで、図1では、第1絶縁導体11−1〜第3絶縁導体11−3の各々における長手方向の両端部のうち、一方の端部(後述する延伸用端部24)のみが表れている。また、図1においては、他方のバスダクト10Bの、ハウジング12から露出した絶縁導体11−1〜11−3の図示は省略されている。
図2は、図1の接続カバー13の大部分が取り外され、両バスダクト10A,10Bの接続部が見えている状態を示している。続く図3(a)は、接続カバー13の内部を、絶縁導体11−1〜11−3の幅方向(図1のZ方向)に視認した状態を示している。図3(b)は、図3(a)におけるA−Aに沿った断面を概略的に示している。
図4(a)は、バスダクト10Aの絶縁導体11−1〜11−3をハウジング12から取り出し、幅方向(図1のZ方向)に視認した状態を、途中の部分を省略して示している。図4(b)は、図4(a)の絶縁導体11−1〜11−3を厚さ方向(図1のY方向)に視認した状態を示している。
図4(a),(b)に示すように、絶縁導体11−1〜11−3の結束は、絶縁導体11−1〜11−3の長手方向における各端部寄りの部位において、首巻テープ23により行われている。図中において首巻テープ23は、二点鎖線により仮想的に示されている。首巻テープ23としては、ポリエステルフィルムなどを利用可能である。ここで、図4(a)では、絶縁導体11−1〜11−3の途中の部位に係る図示を省略している。
本実施形態においては、図4(a)の右側に示す端部は、バスダクトの延伸接続のみに用いられる延伸用端部24となっている。また、図4(a)の左側に示す端部は、バスダクトの延伸接続及び分岐接続の何れにも用いることが可能な共用端部25となっている。これらのうち、延伸用端部24においては、概ね、首巻テープ23よりも先端側の部分の長さD1が140mm程度となっており、共用端部25においては、概ね、首巻テープ23よりも先端側の部分の長さD2が250mm程度となっている。
図4(a)に示すように、延伸用端部24及び共用端部25の何れにおいても、首巻テープ23よりも先端側の部分に対して折曲加工が行われている。図中の下段に示す第1絶縁導体11−1、及び、図中の上段に示す第3絶縁導体11−3についての折曲加工は、首巻テープ23よりも先端側の、被覆層19により覆われた部分と、被覆層19から露出した部分の両方で行われている。第2絶縁導体11−2についての折曲加工は、被覆層19で覆われた部分では行われておらず、被覆層19から露出した部分でのみ行われている。
本実施形態において、図4(a)中の下段に示す第1絶縁導体11−1と、図中の上段に示す第3絶縁導体11−3の、被覆層19で覆われた部分についての折曲加工は、外側(図1のY方向)へ張り出す(膨らむ)よう行われている。この点は、延伸用端部24及び共用端部25の何れについても同様である。さらに、本実施形態において、第1絶縁導体11−1、及び、第3絶縁導体11−3の張り出し量は、各絶縁導体11−1〜11−3の厚みと同程度となっている。
図4(a)の右側に示す延伸用端部24において、第1絶縁導体11−1のアルミ帯18の、被覆層19から露出した部分(以下では「延伸用第1露出部」と称する)21−1は、更に外側へ張り出すよう折曲加工されている。また、第3絶縁導体11−3については、アルミ帯18の露出した部分(以下では「延伸用第3露出部」と称する)の折曲加工は、内側へ収まるよう行われている。
さらに、両絶縁導体11−1,11−3の間に挟まれた第2絶縁導体11−2の、被覆層19から露出したアルミ帯18の部分(以下では「延伸用第2露出部」と称する)21−2は、第1絶縁導体11−1から遠ざかり、第3絶縁導体11−3に近づくよう折曲加工されている。そして、延伸用端部24において、3つの露出部21−1〜21−3は、所定の間隙を介して互いに略平行に延びている。
図4(a)の左側に示す共用端部25において、第1絶縁導体11−1のアルミ帯18の、被覆層19から露出した部分(以下では「共用第1露出部」と称する)22−1は、内側に収まるように折曲加工されている。また、第3絶縁導体11−3については、アルミ帯18の露出した部分(以下では「共用第3露出部」と称する)22−3の折曲加工は外側へ張り出すよう行われている。
さらに、第2絶縁導体11−2の、被覆層19から露出したアルミ帯18の部分(以下では「共用第2露出部」と称する)22−2は、第1第絶縁導体11−1に近づき、第3絶縁導体11−3から遠ざかるよう折曲加工されている。そして、共用端部25において、3つの露出部22−1〜22−3は、所定の間隙を介して互いに略平行に延びている。
また、延伸用端部24と共用端部25とにおいて、各露出部21−1〜21−3,22−1〜22−3の長さは、共通ではなく異なっている。延伸用端部24においては、3つの露出部21−1〜21−3は略均等な長さEで露出している。これに対し、共用端部25においては、3つの露出部22−1〜22−3の長さはF1やF2となっているが、このF1,F2の何れも、延伸用端部24における露出部21−1〜21−3の長さEよりも大きくなっている。
すなわち、延伸用端部24では、第1絶縁導体11−1〜第3絶縁導体11−3の被覆層19は、互いに共通の位置で除去されており、被覆層19の先端部は略横並びの位置関係にある。また、各露出部21−1〜21−3の先端部についても、互いに略横並びの位置関係にある。このため、延伸用端部24においては、露出部21−1〜21−3の長さは互いに略共通なEとなっている。
一方、共用端部25については、第2絶縁導体11−2の被覆層19が、他の絶縁導体11−1,11−3の被覆層19よりも長く残されている。そして、共用端部25でも、各露出部22−1〜22−3の先端部は、互いに略横並びの位置関係にある。このため、共用端部25においては、共用第1露出部22−1及び共用第3露出部22−3の長さF1は、両者の間に挟まれた共用第2露出部22−2の長さF2よりも大きくなっている。
なお、以下では説明が冗長になるのを避けるため、特に「延伸用第1露出部21−1」、「延伸用第2露出部21−2」、「延伸用第3露出部21−3」と区別する必要がある場合を除き、共用第1露出部22−1〜共用第3露出部22−3を、それぞれ「第1露出部22−1」、「第2露出部22−2」、「第3露出部22−3」と称する。
図4(a)に示すように、上述の第1露出部22−1〜第3露出部22−3には、延伸接続部26と分岐接続部27が設けられている。このうち、延伸接続部26は、第1露出部22−1〜第3露出部22−3の先端部を利用して形成されている。そして、延伸接続部26は、長手方向の反対側に形成された延伸用端部24の延伸用第1露出部21−1〜延伸用第3露出部21−3と同様に、他のバスダクトとの延伸接続に用いられる部分となっている。これに対して、分岐接続部27は、延伸接続部26よりも、被覆層19に近い側に位置しており、分岐器具(プラグイン器具)との分岐接続に用いられる部分となっている。
第1露出部22−1及び第3露出部22−3の分岐接続部27と、第2露出部22−2の分岐接続部27とは、絶縁導体11−1〜11−3の長手方向について、同一ではなく、互いにシフトした異なる位置に配置されている。そして、各分岐接続部27は、何れも基端側に位置する被覆層19に隣接して設けられているが、第2露出部22−2の分岐接続部27は、第1露出部22−1〜第3露出部22−3の分岐接続部27よりも先端側に偏倚している。
分岐接続部27には、図4(a),(b)に示すように、貫通孔28,29,30がそれぞれ4つずつ設けられている。ここで、合計で12個の貫通孔28,29,30のうち、一部のものは、他の部品に隠れて見えない位置にあるため図示を省略している。また、図4(b)において、第3露出部22−3の貫通孔30は、第1露出部22−1の貫通孔28の後方に位置しているため、括弧付の符号で示している。
第1露出部22−1の分岐接続部27における4つの貫通孔28は、被覆層19の側に偏倚した部位において、第1絶縁導体11−1の長手方向と幅方向(図4(b)における左右方向と上下方向)に関してそれぞれ対称的な位置関係となるよう配置されている。
第3露出部22−3の分岐接続部27における4つの貫通孔29も、第1露出部22−1の各貫通孔28と同様に、被覆層19の側に偏倚した部位において、第2絶縁導体11−2の長手方向と幅方向とに関してそれぞれ対称的な位置関係となるよう配置されている。
第2露出部22−2の分岐接続部27における4つの貫通孔30も、第1露出部22−1や第3露出部22−3と同様に、被覆層19の側に偏倚した部位に設けられ、板面の長手方向と幅方向とに関し対称的な位置関係となるよう配置されている。しかし、第2露出部22−2の長さF2は、第1露出部22−1や第3露出部22−3の長さF1よりも短いことから、第2露出部22−2の貫通孔29は、第1露出部22−1や第3露出部22−3の貫通孔28,30よりも、先端寄りの部位に位置している。
続いて、図2及び図3(a),(b)に示すように、第1露出部22−1〜第3露出部22−3の分岐接続部27には、銅プレート31がそれぞれ2つずつ装着されている。銅プレート31は、図5(a),(b)に示すように、所定の厚さの銅板を断面U字状に加工して形成されている。
銅プレート31は、開放した先端側を各分岐接続部27に向け、分岐接続部27に対して、幅方向の両端側(図3(b)の上下方向)から被せられている。さらに、銅プレート31は、第1露出部22−1〜第3露出部22−3に、電気的な導通が可能な状態で接触している。そして、銅プレート31の閉じた基端側には、分岐接続部27の縁部が到達している。
図5(a)に示すように、銅プレート31には、幅方向に並んだ2つの貫通孔32が設けられている。この貫通孔32は、銅プレート31の一方の片31aのみでなく、U字形に折曲されて対向する他方の片31bにも対称的に形成されている(図示略)。このため、1つの銅プレート31に形成された貫通孔32の数は4つとなっている。
銅プレート31の各片31a,31bに設けられた2つずつの貫通孔32は、第1露出部22−1〜第3露出部22−3に設けられた4つずつの貫通孔28,29,30のうち、各絶縁導体11−1〜11−3の長手方向に沿って並ぶ2つの貫通孔と同じ間隔で配置されている。そして、銅プレート31の固定は、第1露出部22−1〜第3露出部22−3の分岐接続部27おいて対応する貫通孔28,29,30の位置を、銅プレート31の2片31a,31bの対応する貫通孔32の位置と整合させた状態で、ボルトとナットの締結により行われている。
本実施形態では、銅プレート31の固定には、ボルト頭部の高さが通常のものよりも低い頭低ボルト(低頭ボルトともいう)が用いられている。また、銅プレート31は、第1露出部22−1〜第3露出部22−3の各々に2つずつ装着されているので、用いられている銅プレート31の総数は6つとなっている。
このような共用端部25は、各種の絶縁部材を所定の位置に配置し、他方のバスダクト10Bの、延伸用端部24と接続される。そして、両バスダクト10A,10Bの接続は、同相の絶縁導体同士が導通可能に接触し、異相の絶縁導体が、後述する絶縁スペーサ36を介して電気的に絶縁されるよう行われる。
図6(a)〜(e)は、各種の絶縁材料のうちの絶縁スペーサ36を示している。この絶縁スペーサ36は、FRP(繊維強化プラスチック)等の材質からなるものであり、4隅が所定の半径のR部となるよう成形された矩形板状の本体部37を有している。ここで、絶縁スペーサ36の成形方法としては、一般的な種々のものを採用できる。また、絶縁スペーサ36の各部の厚みは、何れも2〜2.5mm程度となっている。
絶縁スペーサ36の本体部37には、長手方向における各縁部の中央に、U字状に切り欠かれてボルトとの干渉を防ぐボルト逃げ部38が形成されている。さらに、本体部37の一方の板面39には、各露出部21−1等の位置決めに用いられる位置決め部35が一体に形成されている。この位置決め部35は、板面39から突出した1つの係止部40と、2つの案内部41とにより構成されている。
これらのうち、係止部40は、本体部37の長手方向(図1のZ方向)に沿って延びており、その内側には、本体部37の中央側を向いた鉛直面42を有している。また、係止部40は、その外側に、本体部37の縁部側から中央側へ高くなるように傾斜した傾斜面43を有している。そして、係止部40は、本体部37の板面に沿って進入してきた露出部(ここではバスダクト10Aにおける共用第1露出部の符号「22−1」を用いる)の先端面を、鉛直面42に突き当てることで、露出部22−1が、それ以上進入するのを阻止きるようになっている。ここで、図6(a)では、露出部22−1の先端部を二点鎖線によって仮想的に示している。
前述の2つの案内部41は、その長手方向の一端部を係止部40の各端部に対向させて、本体部37の短手方向(図1のX方向)に沿って互いに平行に延びている。各案内部41は、本体部37の、反対側の縁部の手前に達しており、その先端には外側に拡がる拡大部44が形成されている。さらに、案内部41は、係止部40の側の端部に傾斜面45を有している。そして、係止部40は、本体部37に到達した露出部22−1を拡大部44の間に受け入れ、係止部40に向かって進むよう案内する。
本実施形態では、上述のような絶縁スペーサ36が、図3(a),(b)に示すように、6つ用いられている。さらに、1つの露出部22−1等に対して1つの絶縁スペーサ36が割当てられており、6つのうち4つの絶縁スペーサ36は、互いに位置決め部35を反対側に向け、2枚を1組として重ねられている。ここで、図3(a)では、図面が煩雑になるのを防ぐため、ボルト逃げ部38の図示を省略している。また、最も外側に位置する残りの2つの絶縁スペーサ36は、位置決め部35を、露出部22−1等が位置する内側に向けるとともに、外側に配置された絶縁材料51と重ねられている。
これらの絶縁材料51は、各種の絶縁部材として前述したもののうちの1つであり、本実施御形態では、この絶縁材料51として、電気的に絶縁性を有する素材を4.5mm程度の厚さの矩形状に成形したものが用いられている。そして、利用されている絶縁材料51の数は2つとなっている。
同じく図3(a),(b)に示すように、絶縁材料51の外側には絶縁プレート52が配置されている。この絶縁プレート52は、2つの接続されたバスダクト10A,10Bにおける、重なり合った各露出部21−1〜21−3,22−1〜22−3を、側面から覆うのに十分な大きさを有している。本実施形態では、この絶縁プレート52として、電気的に絶縁性を有する素材を2mm程度の厚さの矩形状に成形したものが用いられている。そして、利用されている絶縁材料51の数は2つとなっている。
続いて、前述の接続カバー13(図1参照)について説明する。接続カバー13は、2つの接続ケース61、同じく2つのカバー体62、1つの蓋体63を備えている。これらは何れも鉄鋼等の金属板を所定の形状に折曲加工して形成されており、表面の塗装による電気的な絶縁が施されている。そして、これらの部品は箱状に組立てられており、接続カバー13は、一方のバスダクト10Aの共用端部25、他方のバスダクト10Bの延伸用端部24、絶縁スペーサ36等の絶縁部材を、外部から見えないよう隠している。
接続ケース61は、両バスダクト10A,10Bの厚さ方向(Y方向に)の両側に配置されている。ここで、図1においては、2つの接続ケース61のうち、手前側の接続ケース61のみを示している。そして、両バスダクト10A,10Bの接続部を挟んで、両バスダクト10A,10Bの奥側に配置された他方の接続ケース61については、隠れているため図示を省略している。
前述のカバー体62は、接続ケース61を挟むよう、両バスダクト10A,10Bの幅方向(Z方向に)の両側に配置されている。カバー体62の長手方向(X方向)の寸法は、接続ケース61の長手方向の寸法よりも長くなっており、カバー体62は、接続ケース61から長手方向に張り出している。さらに、カバー体62は、一方のバスダクト10Aの側に張り出した張出部64に2つの矩形な係止孔65を有している。そして、この係止孔65には、分岐器具であるプラグイン器具71(図8(b)参照)の係止機構部(図示略)が係止されるようになっている。
カバー体62には、プラグイン器具71の電気的な接続を行うための矩形なプラグインホール66が設けられている。このプラグインホール66は、矩形な前述の蓋体63によって閉じられている。蓋体63は、各隅部に差し込まれた固定具67によって、カバー体62に着脱可能に取り付けられている。そして、蓋体63は、プラグイン器具71の接続(分岐接続)の際に、カバー体62から取り外される。ここで、蓋体63を装着するための固定具67としては、六角ボルトや化粧ねじなど各種のものを採用することが可能である。
蓋体63が取り外されると、プラグインホール66が露出する。プラグインホール66は、バスダクト10Aの共用端部25の、各分岐接続部27を露出させる位置に開口している。プラグイン器具71には、接触子として、図7(a),(b)に1つのみ示すようなプラグインクリップ72が、分岐接続部27の数及び配置に対応して3つ設けられている。ここで、図示は省略するが、各プラグインクリップ72は、複数の小型のクリップを一列に並べて構成されたものであってもよい。
プラグイン器具71の接続の際には、プラグイン器具71が接続カバー13のカバー体62に係止され、図7(a)に示すように、プラグインクリップ72が、分岐接続部27に近付けられる。そして、図7(b)に示すように、プラグインクリップ72が、分岐接続部27を挟み、プラグインクリップ72と銅プレート31とが、電気的な導通が可能な状態で接触する。ここで、分岐接続されたプラグイン器具71は、図示を省略するロック機構によりロックされる。なお、図7中では、分岐接続部27における銅プレート31の図示は省略している。
図8(a),(b)は、本実施形態のバスダクトを鉛直方向に接続(垂直布設)する場合の作業状況を概略的に示している。ここでは、既に説明したものと同様のものについては同一番号を付し、詳細な説明は省略する。図8(a)において、作業者76の立っているフロア77には、既に1階分下のフロア(下フロア)78から鉛直方向に延伸され、フロアを跨ったバスダクト10Aの共用端部25が到達している。そしてバスダクト10Aの共用端部25の高さは、作業者76の腰と同等程度となっている。
作業者76が立っているフロア77の1階分上のフロア(上フロア)79からは、2つのバスダクト10B,10Cが降ろされている。この2つのバスダクト10B,10Cは、既に直線状に接続されており、両バスダクト10B,10Cの接続部は接続カバー13で囲われている。バスダクト10Cは、他のバスダクト10A,10Bと共通な構造を有している。
ここで、図示は省略するが、接続された2つのバスダクト10B,10Cを下す作業は、チェーンブロックにより吊下げて行われている。チェーンブロックとしては、内蔵したギアを、チェーンを引きながら回転させる一般的なものが用いられている。そして、バスダクト10B,10Cは、バスダクト10Bを下にして、長手方向を鉛直方向に向けながら、既に布設されているバスダクト10Aに向けて徐々に降ろされている。
図8(a)中に符号Hで示すのは、作業者76が立つフロアの高さであり、フロアの高さHは各階で共通となっている。そして、1フロアの高さHは、通常4m程度となっている。また、同図中に符号Lで示すのは、バスダクト10Aの長さであり、バスダクトの長さLは各バスダクトで共通となっている。そして、図1〜図4等で説明したバスダクト10A、10Bの長さは1m程度としていたが、図8(a),(b)の例では、各バスダクトの長さLは2mとなっている。また、本実施形態における各バスダクトの重量は、1mあたり15kg程度となっている。
図8(a)に示す例では、前述したように接続済みのバスダクト10B,10Cが吊り下げられ、下側のバスダクト10Bの延伸用端部24が、下フロア78から導出されているバスダクト10Aの、共用端部25と同程度の位置に降ろされる。さらに、前述した絶縁スペーサ36(図2参照)等の絶縁部材が、互いの絶縁導体11−1〜11−3の間に挟まれる。
そして、接続カバー13の接続ケース61やカバー体62が組み付けられ、これらの部材が、図示を省略したボルトとナットにより締め付けられて、図8(b)に示すように、一体に結合される。さらに、図8(b)に示す例では、更にプラグイン器具71が、図8(a),(b)等で示す手法によって分岐接続されている。
前述のように、1フロアの高さHは4m程度であり、バスダクトの長さLは2m程度である。このため、下フロア78から突出したバスダクト10Aに、降ろされた2本のバスダクト10B,10Cを接続する作業は、2m以下の高さで行われることになる。
以上説明したように本実施形態のバスダクト10Aにおいては、延伸接続と分岐接続に共用が可能な共用端部25が設けられている。この共用端部25には、延伸接続部26と分岐接続部27とが、バスダクト10Aの長手方向(図1のX方向)に隣接して集約されている。したがって、プラグイン器具71の分岐接続部27への接続を、バスダクト10Aの共用端部25において、延伸接続部26の近傍で行うことができる。
また、接続カバー13に予めプラグインホール66を設けておくことで、その後の追加工を発生させることなく、プラグイン器具71を接続できる。さらに、接続カバー13のプラグインホール66を利用してプラグイン器具71を接続できることから、バスダクト10Aのハウジング12に、カスタマイズ設計によりプラグインホール66を追加工する必要がない。さらに、絶縁導体11−1〜11−3の被覆層19について、ハウジング12内に位置する部位の除去を行う必要がない。したがって、ハウジング12や、ハウジング12の内部についての追加工を行うことなく、低コストでプラグイン器具71の接続を行うことが可能である。
さらに、バスダクト10Aに分岐接続部27を形成するための加工は、ハウジング12の外の被覆層19を除去し、アルミ帯18に貫通孔28〜30を形成し、銅プレート31を装着するのみで行うことができる。そして、これらの加工は、バスダクト10Aの共用端部25のみに対して行えば済む作業である。また、絶縁導体11−1〜11−3の第1露出部22−1〜第3露出部22−3を、更に外側に曲げるような作業も不要である。したがって、分岐接続のための加工を簡易なものとすることができ、加工コストを低く抑えることができる。そして、製造工場内での部品の流れや作業内容を過度に複雑化する必要がなく、このことによっても製造コストを低く抑えることが可能である。
また、本実施形態のバスダクト10Aによれば、共用端部25に、延伸接続部26に並ぶよう分岐接続部27を追加しているので、バスダクト同士の端部を直接重ね合わせて結合させた接続部分(直接結合部分)の構成を大きく変更することなくプラグイン器具71を装着できる。このため、従来の直接結合式の構造を基本として、過大な変更を加えることなく、直接結合式の接続部に分岐接続を行うことが可能となる。したがって、バスダクト10Aの端部の変更を最小限に抑えることができ、このことによってコストを抑制することが可能である。
ここで、一般にビルや工場等の建物内における電気幹線の構築は、構造が共通化された多数のバスダクトを用いて行われる。このため、電気幹線の構築コストを低く抑えるには、標準品として製作された同一構造のバスダクトを、可能な限り追加工せずにそのまま利用することが有効である。したがって、上述したように分岐接続部27を延伸接続部26に近付けて配置し、ハウジング12や、ハウジング12の内部に対する追加工を行わず、端部(共用端部25)のみへの簡単な作業によりプラグイン器具71の接続を行えるようにすることは、電気幹線に係る構築コストの抑制に関して有効である。
さらに、ハウジング12に対する穴加工、曲げ加工、及び、塗装などの各種の作業を不要としたため、電気幹線の構築を容易かつ短時間に行うことができ、作業性に優れる。
さらに、本実施形態のバスダクト10Aや、バスダクトの接続構造によれば、プラグイン器具71のプラグインクリップ72が分岐接続部27を挟むよう、プラグイン器具71を分岐接続部27に近付けるのみで、分岐接続を行うことができる。そして、工具などを第1露出部22−1〜第3露出部22−3に触れる必要がないことから、絶縁導体11−1〜11−3に通電した状態のまま、プラグイン器具71の接続を行うことが可能である。
さらに、第1露出部22−1及び第3露出部22−3の分岐接続部27と、第2露出部22−2の分岐接続部27とが、絶縁導体11−1〜11−3の長手方向の異なる位置にシフトして配置されている。そして、プラグイン器具71の3つのプラグインクリップ72は、分岐接続部27の配置に対応するよう設けられている。したがって、隣り合ったプラグインクリップ72の干渉を考慮して、予め分岐接続部27の間隔を、絶縁導体11−1〜11−3の厚さ方向(図1のY方向)に過大に拡げておくといったことが不要である。このため、ハウジング12や接続カバー13を大型化する必要がない。
また、本実施形態のバスダクト10Aによれば、前述の先行文献1に記載されていたような分岐用導電性部材(21−1〜21−3)を介さず、第1絶縁導体11−1〜第3絶縁導体11−3にプラグイン器具71を直接接続している。このため、接続部の厚み(図1のY方向の寸法)を増したり、各絶縁導体11−1〜11−3を外側に折り曲げたりする必要がない。そして、これらのことから、大型化することなく低コストで分岐接続を行うことが可能である。
なお、本実施形態のバスダクト10Aにおいても、分岐接続のために銅プレート31を用いており、銅プレート31の分のコストは必要となる。しかし、銅プレート31は、絶縁導体11−1〜11−3の分岐接続部27に被せられており、例えば銅プレート31の周縁部でプラグイン器具71の一部の重量を支える、といったようなことは行われていない。そして、プラグインクリップ72は、銅プレート31を介して第1露出部22−1〜第3露出部22−3を挟み付けることになるため、銅プレート31を用いることで、プラグイン器具71との接続部における剛性が弱まることはない。
また、銅プレート31を設けず、直接に、絶縁導体11−1〜11−3にプラグインクリップ72を接続することもできる。そして、この場合は、アルミ帯18に対する貫通孔28〜30の加工が不要となることも含めて、更なるコストの削減を図ることが可能である。しかし、銅プレート31を設けることにより、導電率の向上や、接触抵抗の低減を図ることができ、部分的な電気的な特性(電気特性)は高まる。
また、銅プレート31は、プラグインクリップ72との接触部分に設けられていれば十分である。そして、本実施形態では、銅プレート31の大きさや厚みは最小限に抑えられており、銅プレート31の配置は分岐接続部27のみに部分的に行われている。したがって、銅プレート31を追加することによるコスト増は小幅なものとなっている。
さらに、絶縁導体11−1〜11−3を銅製の帯板(銅帯)に変更することもできるが、本実施形態のようにアルミ帯18を用いることにより軽量化が可能である。一般に、バスダクトの布設作業の際には、人手によるバスダクトの運搬を伴うのが通常である。したがって、バスダクトを軽量化することは運搬性や作業性等といった施工性の向上に繋がる。そして、図8(a),(b)に示すように、バスダクト10B,10Cを一旦作業者の頭上に運搬してから下方に供給するような場合には、バスダクトの軽量化による施工性の向上効果は一層顕著となる。
さらに、バスダクトの延伸接続や分岐接続にあたり、ユニット化された標準部品である接続用器具(所謂ジョイナ)を用いる場合もある。このような接続器具は、アダプタのような用途で使用され、「バスダクト接続部」や「接続ユニット」などと呼ばれることがあるが、以下では「ジョイナ」と称する。
そして、本実施形態のバスダクト10Aによれば、ジョイナを用いない直接結合式の接続構造が採用されている。このため、バスダクトの布設作業にあたり、ジョイナに係る運搬や取扱いが不要であり、施工性に優れている。また、ジョイナの購買が不要であり、このことによってもバスダクトの布設コストを低減できる。
さらに、ジョイナの重量は数kgであるのが通常であるため、ジョイナを建物の高所に運搬する際、もし仮にジョイナが落下した場合には、階下の機器等に損害が生じることも考えられる。そして、ジョイナの部品として導電性の高い銅板が用いられているような場合は、重量が大となりやすく、ジョイナの運搬や取扱いに一層の注意が必要となる。
また、ジョイナにおいては、例えば上下左右といった各辺での接続が可能であるが、通電時には、直線状のバスダクトよりも小さな部品であるジョイナで集中的に発熱することになる。
さらに、ジョイナを使用した場合には、バスダクト同士を直接結合せず、ジョイナを介在させることになるため、接続箇所が多く、機械強度が低くなり易い。そして、1つのジョイナに対して、バスダクトの延伸接続とプラグイン器具の分岐接続を行う場合には、接続部(ジョイナを配置した部分)の機械強度が一層低くなり、その結果、耐震性が低下すると考えられる。また、機械強度が低くなり易いことから、バスダクトを鉛直方向に多数積み上げる垂直布設を行うことが難しい。
これに対し本実施形態においては、バスダクト10A,10Bの同相の絶縁導体11−1〜11−3同士が重ね合わされるため、接触面積を大きく確保し易く、接触抵抗が小さくなる。そして、発生した熱が、各絶縁導体のアルミ帯18に直接的に伝導されることとなるため、熱を拡散させ易く、温度上昇を生じ難い。
さらに、本実施形態に係るバスダクト10A,10Bの接続部においては、絶縁導体同士を面接触させ、絶縁スペーサ36党の絶縁材料を所定の位置に配置して締め付け、直接的な結合を行うことから、ジョイナを用いた場合に比べて、結合強度を高め易く、耐震性にも優れる。そして、これらのことから、熱や結合強度に関する信頼性に優れたバスダクトを提供することが可能である。
本実施形態のバスダクト10Aは、例えば、直接結合式のバスダクトに対し分岐接続部を標準装備したものであるということもできる。さらに、バスダクト10Aは、分岐接続のための部分の大きさを、プラグイン器具71のプラグインクリップ72の大きさ程度に抑えたものであるといえる。また、バスダクト10Aは、従来の直接結合式のバスダクトの利点を継承したうえでメリットを解消し、分岐接続のためのコストの削減や、信頼性の向上を図ったものであるともいえる。さらに、本実施形態のバスダクトの接続構造は、ジョイナを一体化したものであるということができる。
また、本実施形態によれば、バスダクト10Aの一方の端部のみを、分岐接続部27を有する共用端部25としているため、分岐接続部27の配置を最適化することができる。すなわち、オフィスビル等の各階の高さは、図8(a),(b)に例示したように4m程度であるのが一般的であり、バスダクトの長さとの組み合わせにより、図8(b)に示すように、天井近くにバスダクト同士の接続部が位置する場合も生じ得る。
しかし、天井付近でバスダクトやプラグイン器具71の接続を行う場合は、床に立った作業者76の手が届かないため、十分な高さの作業台の設置や撤去を行いながら、接続作業することが必要になる。そして、2mを超える高さでの作業は、種々の危険性を伴うため法制上の高所作業として定められている。
バスダクトの布設作業が、このような高所作業となることを避けるためには、図8(a),(b)に示したように、予め複数のバスダクト10B,10Cの接続を行って延伸しておき、天井付近での作業を行わずに済むようにすることが有効である。さらに、プラグイン器具71の分岐接続についても、作業者76の手が届くバスダクト10A,10Bの接続部に対して行い、天井付近に在るバスダクト10B,10Cの接続部については行わないようにすることが有効である。
そして、このように接続作業が高所作業とならないようにするために、例えば、延伸用端部24及び共用端部25のうちの何れか一方を電源側に向けることをルール化し、バスダクトの向きを一律に定めることが可能である。そして、このようなルールを前提にすれば、バスダクト10Aの一方の端部にのみ分岐接続部27を設けることで安全な作業を確実なものとすることができる。したがって、本実施形態のバスダクト10Aは、効率的に安全な垂直布設を行うために、分岐接続部27の位置や数が最適化されているものであるということができる。
以上本発明の好適な実施の形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
例えば、図4(a),(b)に示す実施形態では、共用端部25における第1露出部22−1、第3露出部22−3について、被覆層19を全長に亘り除去している。しかし、これに限定されず、例えば図2や図3(a)に二点鎖線により仮想的に示すように、第1露出部22−1及び第3露出部22−3の、延伸接続部26と分岐接続部27の間の部分に、被覆層19を残すことも可能である。このようにすることで、第1露出部22−1及び第3露出部22−3の、延伸接続部26と分岐接続部27の間の部位について、例えば通電中の作業に関する安全性を向上することが可能となる。
さらに、接続カバー13の材質に、放熱性の高いもの(例えばアルミ)を採用することも可能である。このようにすることで、接続部の温度上昇を抑制できる。さらに、接続部の軽量化が可能になる。本実施形態のバスダクト10Aでは、分岐接続部27を延伸接続部26に隣接するように設けていることから、発熱箇所も隣接することとなる。しかし、接続部の放熱性を高めることにより、発熱の影響を抑制できる。
また、分岐接続部27と延伸接続部26との間隔(距離)を拡大することでも、温度上昇を抑制することができる。そして、分岐接続部27と延伸接続部26との間隔の調整により、温度上昇を十分に抑制できれば、接続カバー13のアルミ化を行わないことも可能である。さらに、接続部の小型化の要請が強い場合には、分岐接続部27と延伸接続部26とを可能な限り接近させ、そのうえで温度上昇が問題になるようであれば、更に接続カバー13をアルミ化する、といった対応も可能である。
また、絶縁導体11−1〜11−3の大部分を覆うハウジング12に関し、ハウジング片14,15の結合は、前述したボルトとナット以外の結合手段を用いて行うことも可能である。例えば、適度な強度を有する鋼製バンド、リベット留め、クランプ留め等を結合手段として用い、ハウジング片14,15を結合することができる。