以下、本発明に係るベッド搬送装置の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において、同一または同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、本発明の実施形態に係るベッド搬送装置の斜視図である。ベッド搬送装置100は、病院や介護施設等でベッドを搬送する際に操作者が1人でベッドを搬送するための装置である。図1に示すように、ベッド搬送装置100は、本体部1と、車輪3と、連結部4と、を備えている。
本体部1は、前後方向(第1の方向)へ延びる部材である。本実施形態では、本体部1は、上部にて前後方向へ延びる上部部材1Aと、下部にて前後方向へ延びる下部部材1Bと、を備えている。上部部材1Aは、前後方向の両端側において、下部部材1Bよりも外側へ延びている。これによって、下部部材1Bの両端よりも外側には、車輪3を設けるためのスペースが確保される。なお、本体部1の内部には制御部50(図5参照)などの制御機器や、駆動機構等が収容されていてよい。なお、特に説明の無い限り、ベッド搬送装置100に対して用いられる「前後方向」という表現は、ベッド搬送装置100が平行移動する際の前後方向を示すものとする。ただし、ベッド搬送装置100は、本体部1の前後方向の両端部のうち、どちらを「前」にしてどちらを「後」にするかを切替可能である(詳細は後述)。
車輪3は、本体部1を移動させるためのものである。車輪3は、本体部1の前後方向における一方側及び他方側に少なくとも1つずつ設けられる。以降の説明においては、前後方向における一方側に設けられる車輪3を車輪(第1の駆動部)3Aと称する。前後方向における他方側に設けられる車輪3を車輪(第2の駆動部)3Bと称する。車輪3Aは、上部部材1Aの一方側の端部1aの下側に設けられる。車輪3Bは、上部部材1Aの他方側の端部1bの下側に設けられる。このような配置により、車輪3A及び車輪3Bは前後方向に対向して、互いに離間した位置に配置される。
一方側の車輪3A、及び他方側の車輪3Bは、それぞれ駆動輪である。すなわち、車輪3Aと車輪3Bとは、いずれも駆動機構を有している。また、一方側の車輪3A、及び他方側の車輪3Bは、それぞれ独立して旋回可能である。すなわち、車輪3Aと車輪3Bとは、いずれも旋回機構(操舵機構)を有している。
図2を参照して、車輪3の駆動機構及び旋回機構の一例について説明する。図2(a)は、車輪3を前後方向から見たときの図である。図2(b)は、車輪3を上方から見たときの図である。これらの駆動機構及び旋回機構は、車輪3A及び車輪3Bの両方に設けられている。なお、図2に示す構成は、あくまでも一例に過ぎず、詳細な構成は適宜変更可能である。図2に示すように、車輪3の回転軸17の一方の端部は支持部材11に支持されており、先端部には駆動モータ12が設けられている。なお、支持部材11は、車輪3の端面と対向して上下方向に延びる対向部11bと、車輪3の上側にて水平方向に延びる水平部11aと、を有している。回転軸17は、支持部材11の対向部11bに支持されている。支持部材11の水平部11aは、上方へ延びて固定部材13に支持された旋回軸19と接続されている。旋回軸19の上端にはプーリー14が設けられており、プーリー14は、ベルト18を介して操舵モータ16と接続されている。固定部材13は本体部1に固定されている一方、支持部材11は固定部材13からは離間している。従って、操舵モータ16の回転に従って、支持部材11、回転軸17、駆動モータ12、及び車輪3は、旋回軸19周りに360°回転する。
以上のように、車輪3A及び車輪3Bには、駆動機構及び旋回機構が設けられているため、互いに独立して駆動及び旋回可能である。従って、二つの車輪の回転と旋回を組み合わせることで、本体部1は、任意方向への平行移動、カーブ、その場旋回といった動作が可能となる。なお、車輪3の旋回角度は360°でなくともよく、少なくとも180°旋回できればよい。
図1に示すように、連結部4は、本体部1の下部部材1Bに設けられている。連結部4は、ベッド20の側面20aにて当該ベッド20と連結する。具体的には、下部部材1Bの側面1Baから突出するように設けられている。これにより、ベッド搬送装置100は、連結部4をベッド20の下部水平フレーム23に潜り込ませて、連結部4で下部水平フレーム23を支持することで互いに連結する(図3参照)。このように、ベッド搬送装置の「前後方向」はベッドの長手方向となる。
次に、図3を参照して、ベッド搬送装置100がベッド20を搬送しているときの様子について説明する。図3に示すように、ベッド20は、上板22と、上板22の四隅から下方へ延びる柱部24と、柱部24の下端に設けられる車輪21と、柱部24の下端付近において当該柱部24付近を互いに連結する下部水平フレーム23と、を備えている。ベッド搬送時、ベッド搬送装置100は、ベッド20の側面20aと対向する位置にて、互いに隣り合うように配置される。このとき、ベッド搬送装置100の本体部1が延びる方向(所定の方向)とベッド20の上板22が延びる方向とは、略平行な状態となっている。当該状態で、連結部4を下部水平フレーム23に連結させる。これによって、ベッド搬送装置100とベッド20とは、互いに連結した状態となる。従って、ベッド搬送装置100の移動に伴って、ベッド20も同様に移動することができる。
図4に示すように、ベッド搬送装置100は、リモコン30で操作可能である。リモコン30は、無線通信にてベッド搬送装置100を操作することができる。ただし、リモコン30は、有線通信にてベッド搬送装置100を操作してもよい。図4に示すように、リモコン30は、ベッド搬送装置100の移動方向の操作を行うジョイスティック31と、走行モードを切り換える走行モード切替スイッチ32と、進行方向の切替を行う進行方向切替スイッチ33と、連結部4の昇降を行う昇降スイッチ34と、を備えている。走行モード切替スイッチ32は、「平行移動モード」、「カーブモード」、「横移動モード」及び「旋回モード」等の走行モードを切り換えることができるスイッチである。
進行方向切替スイッチ33は、ジョイスティック31で「前」「後」の操作をした時における、ベッド搬送装置100の進行方向を切り替えるためのスイッチである。これにより、操作者は、前後方向における一方側と他方側との間で、進行方向の前側と後側とを切り替えできる。例えば、操作者が本体部1の端部1a側に立って端部1b側に体を向けている時、操作者にとっては、本体部1の端部1b側が「前」であり、端部1a側が「後」である。従って、操作者が、進行方向切替スイッチ33にて、端部1b側を「前」に設定し、ジョイスティック31にて「前」を押せばベッド搬送装置100は、端部1b側へ走行する。一方、操作者が本体部1の端部1b側に立って端部1a側に体を向けている時、操作者にとっては、本体部1の端部1a側が「前」であり、端部1b側が「後」である。従って、操作者は進行方向切替スイッチ33を操作することで、進行方向を切り替える。これによって、ジョイスティック31にて「前」を押せばベッド搬送装置100は、端部1a側へ走行する。ただし、リモコン30を持つ向きを変えるなどにより、リモコン30自体の向きを変更して、本体部1の進行方向の変更に対応してもよい。なお、本体部1には、現在の設定ではどちらが「前」であるかを示すような、進行方向表示部などを設けてもよい。進行方向表示部は、例えば、色の点灯や点滅、液晶で矢印を表示するなどによって、進行方向の前後を示してよい。
次に、図5を参照して、ベッド搬送装置100のシステム構成について説明する。ベッド搬送装置100は、車輪3A,3Bを制御する制御部50を備えている。この制御部50は、CPU[CentralProcessingUnit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]等を有する電子制御ユニットである。制御部50では、例えば、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより各種の機能を実現する。制御部50は、複数の電子ユニットから構成されていてもよい。制御部50は、リモコン30からの操作情報を受信する。制御部50は、駆動モータ12及び操舵モータ16へ制御信号を送信する。制御部50は、記憶部56とデータの送受信を行う。制御部50は、ベッド搬送装置100のモードを設定するモード設定部51と、車輪3A,3Bを制御する駆動制御部52と、リモコン30からの操作情報を受信する受信部53と、を備えている。
モード設定部51は、受信部53で受信されたリモコン30の走行モード切替スイッチ32の操作情報に基づいて、走行モードを切り替え、「平行移動モード」、「カーブモード」、「横移動モード」及び「旋回モード」等の走行モードを設定する。モード設定部51は、進行方向切替スイッチ33の切替操作に基づいて、ベッド搬送装置100の端部1a,1bのどちらを進行方向の「前」「後」にするかの設定を行ってよい。
駆動制御部52は、モード設定部51で設定された設定内容、及び受信部53で受信したリモコン30による操作情報を取得し、設定内容及び操作情報に基づいて、駆動モータ12及び操舵モータ16を制御する。例えば、モード設定部51にて「平行移動モード」が設定され、進行方向の前後の設定がなされた場合、駆動制御部52は、リモコンのジョイスティック31の前後方向の操作に応じて、ベッド搬送装置100が前後の平行移動をするように、駆動モータ12及び操舵モータ16を制御する。
また、モード設定部51にて「旋回モード」が設定され、進行方向の前後の設定がなされた場合、駆動制御部52は、リモコン30のジョイスティック31の前後方向の操作に応じて、ベッド搬送装置100が前後の何れかの方向へ向かって、旋回を行う。具体的には、ベッド搬送装置100は、図6に示すような動作を行う。「旋回モード」では、駆動制御部52は、車輪3A,3Bの操舵角θA,θBを所定の角度に調整することで、ベッド搬送装置100及びベッド20を旋回中心CP周りに旋回させる。
ここで、図7を参照して、操舵角θA,θBについて説明する。車輪3A,3Bの中心点TPを通過し、前後方向に延びる線を基準線CL1とする。直進時には車輪3A,3Bの進行方向を示す方向線DLは基準線CL1と一致する。車輪3A,3Bの操舵を行うと、車輪3A,3Bの進行方向を示し中心点TPを通過する方向線DLは、基準線CL1に対して傾斜する。このときの方向線DLの基準線CL1に対する傾斜角が操舵角θA,θBとなる。なお、方向線DLは、旋回時に車輪3A,3Bが描く旋回軌道TR1,TR2に対し、中心点TPで接する接線となる。なお、以降の説明において、中心点TPにおいて方向線DL(旋回軌道TR1,TR2に対する接線)と垂直をなす直線を、法線LR1,LR2とする。車輪3Aに対して設定される法線LR1と、車輪3Bに対して設定される法線LR2との交点が旋回中心CP(図6参照)となる。
図6に戻り、「旋回モード」の動作について詳細に説明を行う。なお、図6では、ベッド20の中心P1の前後方向における位置を示す線として中心線CL2が示されている。中心線CL2は、車輪3Aと車輪3Bとの間の前後方向における中心位置を示す線でもある。すなわち、本実施形態のベッド搬送装置100の制御内容は、ベッド搬送装置100の前後方向における基準位置がベッド20の中心P1と一致させた姿勢であることを前提に説明がなされる。なお、ベッド搬送装置100の前後方向における基準位置とは、ベッド搬送装置100が安定した状態でベッド20を支える際の基準になる位置であり、本実施形態では車輪3Aと車輪3Bの間の中心位置が該当する。また、ベッド搬送装置100にベッド20が連結されていない場合は、「ベッドの中心」とは、ベッド搬送装置100の基準位置とベッド20の中心を前後方向に一致させた状態でベッド20が連結されたと仮定した場合における、当該ベッド20の中心位置と定義される。なお、実際のベッド搬送装置100の使用時においては、ベッド20の前後方向における中心P1と車輪3Aと車輪3Bとの間の中心位置は多少ずれることは許容される。また、図6(及び後述の図8,図9)では、前後方向にY軸を設定し、前後方向と直交する方向にX軸を設定している。前側がY軸方向の正側に設定され、ベッド搬送装置100から見てベッド20側がX軸方向の正側に設定されている。このXY座標系は、ベッド搬送装置100の移動と共に変化する相対座標系である。以降の説明では、必要に応じてXY軸を用いて説明を行う場合もある。
図6に示すように、「旋回モード」では、駆動制御部52は、中心線CL2上に旋回中心CPを位置させるように、車輪3A及び車輪3Bを制御する。なお、旋回中心CPのX軸方向における位置は特に限定されないが、ここでは、ベッド20の中央位置に設定されている。このモードでは、駆動制御部52は、前側の車輪3Bの操舵角θBを、基準線CL1に対してX軸方向の正側に傾くように設定する。駆動制御部52は、後側の車輪3Aの操舵角θAを、基準線CL1に対してX軸方向の負側に傾くように設定する。また、駆動制御部52は、車輪3Aの操舵角θAと車輪3Bの操舵角θBの絶対値を等しくしている。これにより、車輪3Aに対する法線LR1と車輪3Bに対する法線LR2は、中心線CL2上で交差し、当該位置に旋回中心CPが設定される。また、この時、車輪3Aの旋回軌道TR1と車輪3Bの旋回軌道TR2は、一致する。なお、図6では、ベッド搬送装置100のX軸方向の正側に旋回中心CPが位置する動作を説明したが、X軸方向の負側に旋回中心CPが位置する動作を行ってもよい。このとき、駆動制御部52は、前側の車輪3Bの操舵角θBを基準線CL1に対してX軸方向の負側に傾斜し、後側の車輪3Aの操舵角θAを基準線CL1に対してX軸方向の正側に傾斜するように設定する。また、旋回方向も図6では前側へ旋回しているが、後側へ向かって旋回してもよい。
ここで、本実施形態に係るベッド搬送装置100では、制御部50は、連結部4とベッド20が連結した状態でのベッド搬送装置100の旋回動作時に、旋回中心をベッド20の中心P1から、ベッド20の前後方向のいずれか一方側に位置させるように車輪3A及び車輪3Bを制御する。すなわち、制御部50は、ベッド搬送装置100の旋回動作時に、前後方向において、車輪3Aと車輪3Bと間の中心位置に対し、旋回中心CPを車輪3A及び車輪3Bの何れか一方側に位置させるように、車輪3A及び車輪3Bを制御する。制御部50は、ベッド20の中心P1及び車輪3Aと車輪3Bの間の中心位置を示す中心線CL2に対し、ベッド20の後側である車輪3A側に位置する旋回中心CP周りに旋回する旋回モード(第1の旋回モード)と、中心位置(中心線CL2)に対し、ベッド20の前側である車輪3B側に位置する旋回中心CP周りに旋回する旋回モード(第2の旋回モード)と、を有する。制御部50は、このような旋回中心CPの位置をずらして行う旋回動作時には、車輪3A,3Bのうち、旋回中心CPが位置する方の車輪3の操舵角を他方の車輪3に比して小さくする。すなわち、制御部50は、旋回中心CPを車輪3B側に位置させる場合は、車輪3Bの操舵角θBを車輪3Aの操舵角θAに比して小さくする。制御部50は、旋回中心CPを車輪3A側に位置させる場合は、車輪3Aの操舵角θAを車輪3Bの操舵角θBに比して小さくする。
車輪3Bが進行方向の前側で車輪3Aが後側の場合、旋回中心CPがベッド20の後側である車輪3A側に位置する旋回モードでは、進行方向の前側の部分が大きく旋回する。逆に、車輪3Aが前側で車輪3Bが後側の場合、旋回中心CPが車輪3B側に位置する旋回モードでは、進行方向の前側の部分が大きく旋回する。このような旋回モードを「首ふりモード」と称して、以降の説明を行う。車輪3Bが進行方向の前側で車輪3Aが後側の場合、旋回中心CPが車輪3B側に位置する旋回モードでは、進行方向の後側の部分が大きく旋回する。逆に、車輪3Aが前側で車輪3Bが後側の場合、旋回中心CPが車輪3A側に位置する旋回モードでは、進行方向の後側の部分が大きく旋回する。このような旋回モードを「尻ふりモード」と称して、以降の説明を行う。制御部50は、「首ふりモード」及び「尻ふりモード」の両方を実行可能であってもよく、何れか一方のモードのみを実行可能でもよい。
「首ふりモード」の具体例について、図8を参照して説明する。「首ふりモード」では、また、制御部50は、ベッド搬送装置100及びベッド20の前側の部分を大きく旋回させるために、ベッド20の後側である車輪3A側に旋回中心CPを位置させる。このとき、駆動制御部52は、車輪3A,3Bの操舵角θA,θBを基準線CL1に対してX軸方向の正側に傾斜させる。また、駆動制御部52は、後側の車輪3Aの操舵角θAを前側の車輪3Bの操舵角θBに比して小さくする。図8に示す例では、前側の車輪3Bに対する法線LR2と後側の車輪3Aに対する法線LR1とは、ベッド20の後端付近にて交差し、当該部分に旋回中心CPが設定される。車輪3Bと車輪3Aは、互いに独立した旋回軌道TR1,TR2を描く。後側の車輪3Aの旋回軌道TR1の旋回半径は前側の車輪3Bの旋回軌道TR2の旋回半径よりも小さくなる。従って、後側の車輪3Aの旋回軌道TR1の旋回量(単位時間当たりの移動量)は、前側の車輪3Bの旋回軌道TR2の旋回量よりも小さくなる。駆動制御部52は、両方の車輪3A,3Bがそれぞれの旋回軌道TR1,TR2を走行できるように、適切な回転速度を設定する。なお、本実施形態では、「首ふりモード」での旋回中心CPの前後方向の位置はベッド20の後端付近に設定されており、X軸方向の位置はベッド20の中央付近に設定されているが、旋回中心CPの設定位置は特に限定されるものではない。
「尻ふりモード」の具体例について、図9を参照して説明する。「尻ふりモード」では、また、制御部50は、ベッド搬送装置100及びベッド20の後側の部分を大きく旋回させるために、ベッド20の前側である車輪3B側に旋回中心CPを位置させる。このとき、駆動制御部52は、車輪3A,3Bの操舵角θA,θBを基準線CL1に対してX軸方向の負側に傾斜させる。また、駆動制御部52は、前側の車輪3Bの操舵角θBを後側の車輪3Aの操舵角θAに比して小さくする。図9に示す例では、前後の車輪3Bに対する法線LR2と後側の車輪3Aに対する法線LR1とは、ベッド20の前端付近にて交差し、当該部分に旋回中心CPが設定される。車輪3Bと車輪3Aは、互いに独立した旋回軌道TR1,TR2を描く。前側の車輪3Bの旋回軌道TR2の旋回半径は後側の車輪3Aの旋回軌道TR1の旋回半径よりも小さくなる。従って、前側の車輪3Bの旋回軌道TR2の旋回量(単位時間当たりの移動量)は、後側の車輪3Aの旋回軌道TR1の旋回量よりも小さくなる。駆動制御部52は、両方の車輪3A,3Bがそれぞれの旋回軌道TR1,TR2を走行できるように、適切な回転速度を設定する。なお、本実施形態では、「尻ふりモード」での旋回中心CPの前後方向の位置はベッド20の前端付近に設定されており、X軸方向の位置はベッド20の中央付近に設定されているが、旋回中心CPの設定位置は特に限定されるものではない。
次に、「首ふりモード」及び「尻ふりモード」時において、制御部50が、中心線CL2に対して旋回中心CPの前後方向における位置をどのように調整するかについて説明する。なお、以降の説明においては、中心線CL2に対する旋回中心CP前後方向における離間距離を「ずれ量」と称する場合がある。
制御部50は、「首ふりモード」及び「尻ふりモード」の際は、リモコン30の操作量に関わらず、予め定めた位置に旋回中心CPを設定してもよい。例えば、制御部50は、「首ふりモード」に設定されており、ベッド搬送装置100に対してベッド20側に旋回中心CPを設定する際は、図8に示すように、ベッド20の後端付近に対応する位置に、一義的に旋回中心CPを設定してよい。例えば、制御部50は、「尻ふりモード」に設定されており、ベッド搬送装置100に対してベッド20側に旋回中心CPを設定する際は、図9に示すように、ベッド20の前端付近に対応する位置に、一義的に旋回中心CPを設定してよい。この場合、駆動制御部52は、予め設定された制御パラメータに基づいて車輪3A,3Bを制御する。制御パラメータは、旋回中心CPを所望の位置に位置させるための車輪3A,3Bの操舵角θA,θBと、旋回中心CP周りに旋回を行うための車輪3A,3Bの回転速度と、を含んでいる。これらの制御パラメータは、記憶部56に記憶されていてよい。
あるいは、制御部50は、「首ふりモード」及び「尻ふりモード」の際は、リモコン30の操作量に応じて、旋回中心CPのずれ量を設定してもよい。例えば、制御部50は、リモコン30のジョイスティック31を傾ける量が多いほど、ずれ量を大きくしてよい。または、制御部50は、ジョイスティック31のレバーを傾ける向きが横方向に延びる横基準線(図8及び図9においてSLで示す)から大きければ大きいほど、ずれ量を大きくしてよい。このとき、制御部50は、リモコン30からの操作情報を受信部53で受信する。また、駆動制御部52は、操作情報に基づいて旋回中心CPのずれ量を演算し、当該ずれ量を実現するための操舵角θA,θB及び回転速度を設定する。なお、制御部50は、リモコン30の操作量に応じて連続的にずれ量を変化させてもよいが、操作量に応じて段階的にずれ量を変化させてよい。例えば、ずれ量を数段階に予め設定しておき、制御部50は、操作量に応じて、予め設定されたずれ量の何れかを採用してよい。
次に、「首ふりモード」及び「尻ふりモード」のモード設定について説明する。例えば、制御部50は、リモコン30の走行モード切替スイッチ32の切替操作に基づいて、「平行移動モード」、「カーブモード」、「横移動モード」及び「旋回モード」等のモードに加えて、「首ふりモード」及び「尻ふりモード」を直接設定してもよい。この場合、操作者は、状況に応じて走行モード切替スイッチ32を切り替えることで、「首ふりモード」又は「尻ふりモード」を設定することができる。
または、走行モード切替スイッチ32で切替可能なモードの中の何れかのモードの中の一態様として「首ふりモード」及び「尻ふりモード」の動作が実行されてよい。この場合、走行モード切替スイッチ32で所定のモードに設定した後、リモコン30のジョイスティック31の傾きの向きに基づいて、当該モードの中の一つのモードとして「首ふりモード」及び「尻ふりモード」が実行されてよい。この場合、制御部50は、ジョイスティック(操作レバー)31の傾きの向きに基づいて、中心線CL2に対する旋回中心CPを車輪3A側及び車輪3B側の何れに位置させるかを切り替える。
具体的には、走行モード切替スイッチ32で「横移動モード」に設定されているときに、ジョイスティック31の傾きの向きに応じて、「首ふりモード」及び「尻ふりモード」が設定されてよい。例えば、モード設定部51にて「横移動モード」に設定されているときに、受信部53によってジョイスティック31を横方向(横基準線SLと一致する向き)へ傾ける操作が受信されたとき、制御部50は、ベッド搬送装置100を真横へ移動させる横移動を実行する。駆動制御部52は、車輪3A,3BをX軸方向に向けて(操舵角θA,θBが90°となる)、ベッド搬送装置100及びベッド20を真横へ移動させる。一方、モード設定部51にて「横移動モード」に設定されているときに、受信部53によってジョイスティック31を横基準線SLよりもY軸方向における正側の向き(図8のD1に示す向き)へ向けて傾ける操作が受信されたとき、制御部50は、「首ふりモード」を設定し、当該首ふりモードの動作を実行する。このとき、モード設定部51は「首ふりモード」を設定し、駆動制御部52は、車輪3A,3Bの操舵角θA,θBを調整して、ベッド搬送装置100及びベッド20の首ふり動作を実行する。一方、モード設定部51にて「横移動モード」に設定されているときに、受信部53によってジョイスティック31を横基準線SLよりもY軸方向における負側の向き(図8のD2に示す向き)へ向けて傾ける操作が受信されたとき、制御部50は、「尻ふりモード」を設定し、当該尻ふりモードの動作を実行する。このとき、モード設定部51は「尻ふりモード」を設定し、駆動制御部52は、車輪3A,3Bの操舵角θA,θBを調整して、ベッド搬送装置100及びベッド20の尻ふり動作を実行する。あるいは、「旋回モード」に設定されているときに、ジョイスティック31の傾きの向きに応じて、「首ふりモード」及び「尻ふりモード」が設定されてよい。例えば、モード設定部51にて「旋回モード」に設定されているときに、受信部53によってジョイスティック31を横方向(横基準線SLと一致する向き)へ傾ける操作が受信されたとき、制御部50は、ベッド搬送装置100を図6に示すような旋回を実行する。「首ふりモード」及び「尻ふりモード」については、上述の「横移動モード」の時の説明と同様である。
次に、本実施形態に係るベッド搬送装置100の作用・効果について説明する。
本実施形態に係るベッド搬送装置100は、ベッド20の側面20aにて当該ベッド20と連結する連結部4を備える。また、前後方向に車輪3A,3Bが対向して配置されている。従って、ベッド搬送装置100は、ベッド20の側面20aにてベッド20と連結され、車輪3A,3Bにてベッド20と共に移動可能である。このように、ベッド搬送装置100がベッド20と側面20aにて連結した状態で当該ベッド20を搬送できる。従って、搬送時におけるベッド20の前後方向のスペースを確保できる。また、制御部50は、連結部4とベッド20が連結した状態でのベッド搬送装置100の旋回動作時に、旋回中心をベッド20の中心P1から、ベッド20の前後方向のいずれか一方側に位置させるように車輪3A及び車輪3Bを制御する。ますなわち、制御部50は、ベッド搬送装置100の旋回動作時に、前後方向において、車輪3Aと車輪3Bと間の中心位置に対し、旋回中心CPを車輪3Aと車輪3Bの何れか一方側に位置させるように、車輪3Aと車輪3Bを制御する。例えば、図10及び図11に示すように、壁70,71で区切られた病室と廊下のような狭い場所をベッド搬送装置100及びベッド20が通過する場合について説明する。このような場所にて、図11に示すように、ベッド搬送装置100が、ベッド20の前後方向の中心P1及び車輪3A,3Bの中央位置を旋回中心CPとした旋回を行う場合(図6に示す動作である)、ベッド20の端部が壁70などと干渉する場合がある。一方、図10(a)に示すように、前側の車輪3Bの方が広い旋回スペースを確保し易い場合、制御部50は、後側の車輪3A側に旋回中心CPを位置させる「首ふりモード」にて(図8に示す動作である)、車輪3A,3Bを制御する。この場合、ベッド搬送装置100及びベッド20は、旋回スペースを確保し難い後側の車輪3A側では小さく旋回し、旋回スペースを確保し易い前側の車輪3B側では大きく旋回することができる。更に、図10(b)に示すように、後側の車輪3Aの方が広い旋回スペースを確保し易くなった場合、制御部50は、前側の車輪3B側に旋回中心CPを位置させる「尻ふりモード」にて(図9に示す動作である)、車輪3A,3Bを制御する。この場合、ベッド搬送装置100及びベッド20は、旋回スペースを確保し難い前側の車輪3B側では小さく旋回し、旋回スペースを確保し易い後側の車輪3A側では大きく旋回することができる。このように、通過する場所の状況に合わせて、ベッド搬送装置100及びベッド20が適切に旋回することができる。以上により、ベッド20の搬送時に狭い場所を通過することができる。
また、本実施形態に係るベッド搬送装置100において、制御部50は、車輪3A側に位置する旋回中心CP周りに旋回する旋回モード(第1の旋回モード)と、中心位置(中心線CL2)に対し、車輪3B側に位置する旋回中心CP周りに旋回する旋回モード(第2の旋回モード)と、を有してよい。これにより、通過する場所の状況に応じて、旋回モードを使い分けることが可能となる。
また、本実施形態に係るベッド搬送装置100において、制御部50は、旋回動作時には、予め設定された制御パラメータに基づいて車輪3A,3Bを制御してよい。これにより、操作者が細かい操作を行わずとも、予め設定された旋回動作にて旋回を行うことができる。従って、操作者は、操作を容易に行う事ができる。
また、本実施形態に係るベッド搬送装置100は、ベッド搬送装置100の動作を操作するリモコン30を更に備え、制御部50は、リモコン30の操作量に応じて、ベッド20の中心P1に対する旋回中心CPの位置を調整可能であってよい。これにより、操作者は、通過する場所の状況に合わせて、ベッド搬送装置100の旋回動作の旋回態様を細かく調整することができる。
また、本実施形態に係るベッド搬送装置100は、ベッド搬送装置100の動作を操作するリモコン30を更に備え、リモコン30はジョイスティック(操作レバー)31を有し、制御部50は、ジョイスティック31の傾きの向きに基づいて、中心位置に対して旋回中心CPを車輪3A、3B側の何れに位置させるかを切り替えてよい。これにより、操作者は、ジョイスティック31を操作することで、車輪3A,3B側のどちらを大きく旋回させるかを、容易に切り替えることができる。
また、本実施形態に係るベッド搬送装置100において、制御部50は、前後方向を基準とした車輪3Aの操舵角θA、及び車輪3Bの操舵角θBを制御し、旋回動作時には、車輪3A,3Bのうち、旋回中心CPが位置する方の車輪3の操舵角を他方の車輪の操舵角に比して小さくする。これにより、制御部50は、車輪3A,3Bの操舵角θA,θBの大小関係を調整することで、上述のような旋回動作を行うことができる。
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
例えば、リモコンの構成は上述のものに限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更してもよい。また、リモコンに代えて、本体部に操作部を設けてもよい。
また、上述の実施形態では、本体部の一方側には1つの車輪が設けられ、他方側には1つの車輪が設けられていた。これに替えて、本体部の一方側に複数(例えば2つ)の車輪が設けられ、他方側に複数(例えば2つ)の車輪が設けられてもよい。このような構成の場合、左右の車輪の回転速度に差を設けることによって本体部1が旋回等してよい。また、連結部4に車輪が設けられてもよい。すなわち、ベッド搬送装置100に設けられる車輪の数も位置も特に限定されない。また、ベッド搬送装置100には、回転機能及び操舵機能を備えた駆動部としての車輪のみならず、駆動部としての機能を有さない車輪が設けられてよい。あるいは、操舵機能のみを有する車輪が設けられてもよい。例えば、連結部4に駆動部としての車輪が設けられてもよい。
また、上述の実施形態では、車輪としてタイヤが例示されていたが、ベッド搬送装置100の移動、及び制御が可能なものであれば、あらゆるタイプの車輪を採用してよい。例えば、車輪として、オムニホイール、球体駆動機構など、全方向の移動機構を採用してよい。なお、全方向の移動機構を採用する場合、基準線に対して車輪の進行方向がなす角度が、前述の「操舵角」に該当する。すなわち、図2に示すような操舵機構を有さない車輪であっても、制御的に進行方向を設定可能なものは、「操舵角」を規定することができる。
また、上述の実施形態では、制御部50は、旋回中心CPのずれ量を、操舵角θA,θBとの関係を調整することで、設定していた。ただし、制御部50は、旋回中心CPのずれ量を、操舵角θA,θBとの関係のみによって調整しなくともよい。例えば、制御部50は、車輪3A,3Bの一方の回転を停止し(または低速にし)、他方のみを回転することで、旋回中心CPを中心線CL2に対してずらしてもよい。