JP6922703B2 - 直動案内装置及びその組立方法 - Google Patents

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Description

本発明は直動案内装置及びその組立方法に関し、特に、工作機械、自動車製造設備、搬送装置などで使用される直動案内装置及びその組立方法に関する。
従来、工作機械等で用いられる直動案内装置は、一般に、レール側軌道面を左右の側面に有する案内レールと、この案内レールのレール側軌道面と各々対向するスライダ側軌道面を内側面に有するスライダと、案内レール及びスライダの両軌道面間に形成された直線状の転動体転動路を転動可能な多数の転動体と、を備える。そして、転動体転動路を転動体が転動することで、案内レールに対してスライダが軸方向に沿って相対移動する。転動体転動路を転動する転動体は、スライダの軸方向両端部に装着されたエンドキャップ内で方向転換した後、スライダ内に形成された転動体戻り通路を通って元の位置に戻る。
このような直動案内装置において、案内レールの側面とスライダの内側面との間隙から、塵埃等の異物が転動体転動路に進入すると、転動体の転がり運動が損なわれ、スライダの走行性能を大きく低下させる要因となる。これに対し、案内レールの側面とスライダの内側面との間隙から転動体転動路に塵埃等の異物が進入するのを防ぐシールが設けられた直動案内装置が提案されている(例えば、特許文献1〜6参照)。特許文献1に記載の直動案内装置では、シール部材は、案内レール側に突出するリップ部材と、このリップ部材を固定する押さえ部材とを有しており、押さえ部材に挿通されたねじによりスライダに取り付けられる。
また、特許文献2に記載の案内装置では、異物進入防止板は、異物進入防止板収納ケースの凹状溝に異物進入防止板本体の一側辺端部を挿入して接着剤で接着することで形成される。そして、異物進入防止板は、異物進入防止板収納ケースの長円状のビス孔にビスを挿入して、軌道レール側に押して、移動ブロック体に取り付けられる。
さらに、特許文献3に記載のボールスライドウェイでは、底面シールは鉄板に合成ゴムを貼り付けて構成されており、鉄板部分が下部ガイド部の段差が設けられた下端面に当接されて、ボルトにより締付固定される。
国際公開第2016−152123号公報(第9図) 特開2005−114034号公報(第9図、第10図) 特開昭63−77622号公報 特開2014−219025号公報 特開2005−291341号公報 実開平7−12626号公報
しかしながら、特許文献1に記載の直動案内装置では、リップ部材を押さえ部材に固定する具体的な記載がない。このため、例えば、ねじでリップ部材を挟んで押さえ部材に固定している場合には、拘束力が弱く、リップ部材の位置ずれが懸念される。
また、特許文献2に記載の案内装置では、異物進入防止板本体は、異物進入防止板収納ケースに接着剤で接合されているが、製造が煩雑となり、コストアップが懸念される。
さらに、特許文献3に記載のボールスライドウェイにおいても、鉄板部分に合成ゴムが貼り付けられているので、製造が煩雑で、また、鉄板部分が下部ガイド部の段差が設けられた下端面に当接されているので、シール性に課題がある。
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、低コストで、且つ、精度良く組み付けが可能なアンダーシールを備えた直動案内装置及びその組立方法を提供することにある。
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1)軸方向に延びる案内レール側軌道面を有する案内レールと、
該案内レールを跨ぐように取り付けられ、前記案内レール側軌道面に対向するスライダ側軌道面を有し、前記案内レールに対して軸方向に相対移動するように配置されたスライダと、
前記案内レール側軌道面及び前記スライダ側軌道面との間に形成される転動体転動路内に転動自在に配置される複数の転動体と、
前記案内レールの側面と前記スライダの内側面との間に生じた隙間を密封するように、前記スライダに取付けられるアンダーシールと、
を備える直動案内装置であって、
前記アンダーシールは、前記案内レールの側面に当接するリップ部を備え、嵌合穴が形成されるシール本体と、開口が形成される嵌合凸部を備え、前記シール本体を保持するシールカバーと、を有し、
前記嵌合穴に前記嵌合凸部が嵌合し、前記嵌合凸部が前記スライダの固定面に当接した状態で、前記開口を貫通する締結部材を前記スライダに締結することにより、前記アンダーシールが前記スライダに取り付けられることを特徴とする直動案内装置。
(2)前記嵌合凸部は外側テーパ面を有し、前記嵌合穴は内側テーパ面を有し、前記外側テーパ面と前記内側テーパ面とが接触することにより、前記嵌合穴に前記嵌合凸部が嵌合することを特徴とする(1)に記載の直動案内装置。
(3)前記シールカバーは、シール本体の下面を支持する底壁部と、該底壁部から折り曲げられ、前記シール本体の外側面を覆う側壁部と、該底壁部から折り曲げられ、前記シール本体の両端面を覆う一対の端壁部と、を有することを特徴とする(1)又は(2)に記載の直動案内装置。
(4)前記スライダには、前記案内レール側軌道面と前記スライダ側軌道面間を転動する前記複数の転動体が戻される転動体戻り穴と、前記締結部材を螺合させるねじ穴とが形成されており、
前記案内レールの軸方向から見て、前記ねじ穴の中心は、前記転動体戻り穴の中心よりも前記案内レールに近い側に配置されており、更に前記ねじ穴の中心から前記アンダーシールにおける前記案内レールから離れた外側面までの距離をW3とし、前記ねじ穴の中心から前記転動体戻り穴の中心までの距離をW4としたときに、W3≧W4であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の直動案内装置。
(5)前記案内レールの軸方向から見て、前記スライダにおける前記固定面に交差した前記案内レール側の面から前記ねじ穴の中心までの距離をW1とし、前記転動体戻り穴における前記案内レール側の最近接部から前記ねじ穴の中心までの距離をW2としたときに、W1≧W2であることを特徴とする(4)に記載の直動案内装置。
(6)前記案内レールの軸方向から見て、前記スライダにおける前記固定面に交差した前記案内レール側の面から前記ねじ穴の中心までの距離をW1とし、前記スライダにおける前記案内レールを向いた内側面から前記ねじ穴の中心までの最小距離をT1としたときに、W1>T1であることを特徴とする(4)又は(5)に記載の直動案内装置。
(7)前記案内レールの軸方向から見て、前記転動体戻り穴における前記案内レール側の端から前記ねじ穴の中心までの距離をW2とし、前記スライダにおける前記案内レールを向いた内側面から前記ねじ穴の中心までの最小距離をT1としたときに、W2=T1であることを特徴とする(4)〜(6)のいずれかに記載の直動案内装置。
(8)(1)〜(7)のいずれかに記載の直動案内装置の組立方法において、
前記案内レールを組み付ける前に、凹溝を有する治具を前記スライダに配置して、前記治具の対向面に前記シールカバーを当接させた状態で、前記凹溝に前記シール本体の一部が収容されるようにして、前記アンダーシールを前記スライダに取り付ける調整ステップと、
前記治具を取り外して、前記案内レールを組み付ける組付ステップと、
を有することを特徴とする直動案内装置の組立方法。
(9)前記治具は、前記スライダに対して配置されるベースと、前記ベースに対して位置調整可能な調整部とを有し、前記調整ステップにおいて、前記調整部の対向面に前記シールカバーを当接させた状態で、前記アンダーシールを前記スライダに取り付けることを特徴とする(8)に記載の直動案内装置の組立方法。
(10)前記案内レールを組み付けた状態で、前記シールカバーが前記案内レールに対して非接触となることを特徴とする(8)又は(9)に記載の直動案内装置の組立方法。
(11)前記開口と前記締結部材との間には、少なくとも前記案内レールの軸線に直交する方向において隙間が形成されていることを特徴とする(8)〜(10)のいずれかに記載の直動案内装置の組立方法。
本発明の直動案内装置によれば、シール本体の嵌合穴にシールカバーの嵌合凸部が嵌合し、嵌合凸部がスライダの固定面に当接した状態で、開口を貫通する締結部材をスライダに締結することで、アンダーシールを適切に位置決めできる。これにより低コストで、且つ、精度良く組み付けが可能なアンダーシールを備えた直動案内装置及びその組立方法を提供することができる。
本発明の第1実施形態に係る直動案内装置を示す斜視図である。 アンダーシールが取り付けられたスライダの斜視図である。 スライダからアンダーシールが取り外された状態を示す斜視図である。 図1の直動案内装置の断面図である。 (a)はシール本体の正面図、(b)はシール本体の側面図、(c)は(a)のA−A断面図である。 (a)は押さえ部材の正面図、(b)は押さえ部材の側面図、(c)は(a)のB−B断面図である。 (a)は、シール本体を押さえ部材に組み付ける前の状態を示す断面図であり、(b)は、シール本体を押さえ部材に組み付けた後の状態を示す断面図である。 図4のVIII−VIII断面図である。 図4を矢印IX方向に見た図である。 直動案内装置の図4とは異なる軸線直交断面図である。 本実施形態の変形例に係るアンダーシールをスライダ側から見た図である。 第2実施形態に係るアンダーシールを示す図7と同様な断面図である。 (a)は、第3実施形態に係るシール本体の正面図、(b)はシール本体の側面図、(c)は(a)のC−C断面図である。 (a)は、第3実施形態に係る押さえ部材の正面図、(b)は押さえ部材の側面図、(c)は(a)のD−D断面図である。 (a)は、第3実施形態において、シール本体を押さえ部材に組み付ける前の状態を示す断面図であり、(b)は、シール本体を押さえ部材に組み付けた後の状態を示す断面図である。 (a)は、第4実施形態に係るアンダーシールをスライダに組み付ける際に用いる治具を、スライダと共に示す断面図であり、(b)は、その一部拡大図である。 (a)は、第4実施形態の変形例に係るアンダーシールをスライダに組み付ける際に用いる別な治具を、スライダと共に示す断面図であり、(b)は、その一部拡大図である。 第4実施形態の変形例に係るアンダーシールをスライダ側から見た図である。
以下、本発明の各実施形態に係る直動案内装置及びその組立方法を図面に基づいて詳細に説明する。
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係る直動案内装置について、図1〜図10を参照して説明する。図1に示すように、本実施形態の直動案内装置は、軸方向に延びる案内レール1と、案内レール1を跨いで軸方向に相対移動可能に組み付けられたスライダ2と、を備える。
案内レール1の左右両側面1a,1aには、案内レール1の軸方向に沿って上下2つの案内レール側軌道面10が形成されている。
スライダ2は、図1及び図2に示すように、スライダ本体2Aと、その軸方向両端部に着脱可能に取り付けられたエンドキャップ2B,2Bと、を備える。
スライダ本体2Aは、案内レール1の上面1bに沿う上部5と、上部5の左右両側からそれぞれ下方に延びる2つの脚部6とを備えて、略コ字状の断面形状に形成されている。エンドキャップ2B,2Bも、スライダ本体2Aと同様に、略コ字状の断面形状を有する。
図4に示すように、スライダ本体2Aの脚部6の内側面には、2つの案内レール側軌道面10にそれぞれ対向する2つのスライダ側軌道面11(図4は、一方のみ図示)が形成されている。
そして、案内レール1の案内レール側軌道面10とスライダ2のスライダ側軌道面11との間には、軸方向に延びる断面形状略矩形の転動体転動路13がそれぞれ形成されている。この転動体転動路13内には、転動体である複数の円筒ころ3が、保持器8に保持されつつ転動自在に装填されていて、円筒ころ3の転動を介してスライダ2が案内レール1に沿って軸方向に移動する。
また、複数の円筒ころ3間には、スペーサ(図示せず)が介装されており、円筒ころ3がスペーサに案内されて転動体転動路13を転動する。
さらに、スライダ本体2Aの左右両脚部6には、転動体転動路13と平行で、軸方向に貫通する転動体戻り穴16が形成されている。転動体戻り穴16には、円筒ころ3の形状に沿う断面形状の内面を有する管状部材18が挿入され、転動体転動路13を転動した複数の円筒ころ3が戻される転動体戻し通路14を構成する。なお、転動体がボールである場合には、転動体戻り穴16には、断面形状略円形を有する管状部材が挿入されればよい。
エンドキャップ2Bには、転動体転動路13と転動体戻し通路14とを接続する湾曲した方向転換路が形成されており、転動体転動路13と転動体戻し通路14と共に無限循環路を構成する。
これにより、案内レール1に組みつけられたスライダ2が案内レール1に沿って軸方向に移動すると、円筒ころ3は、転動体転動路13内を転動しつつ案内レール1に対してスライダ2と同方向に移動し、無限循環路内を循環する。
また、エンドキャップ2Bの軸方向外端面には、エンドキャップ2Bと同様の断面形状に形成されたサイドシール7,7が装着されている。サイドシール7,7は、案内レール1の上面1b及び左右両側面1a,1aに滑り接触しており、案内レール1とスライダ2との間の隙間の開口のうち、スライダ2の軸方向端面側での該隙間を密封している。
図4に示すように、保持器8の下端には、インナーシール20を取り付ける取付溝8aが形成されている。インナーシール20は、案内レール1の側面1aと保持器8の内側面との隙間を密封している。また、案内レール1の側面1aとスライダ2の内側面との隙間を脚部6の先端側で密封するために、アンダーシール30が設けられている。以下、アンダーシール30について説明する。
図4〜図6(c)に示すように、各脚部6の下面(固定面)6cに対して、その全長にわたって取り付けられるアンダーシール30は、シール本体31と、シール本体31を脚部6に取り付ける為のシールカバー32とを備える。シールカバー32は、脚部6の下面6cから案内レール1側へ突出している。
図5において、ゴムや樹脂などの軟質材からなるシール本体31は、細長い矩形板状の基部31aと、基部31aの一縁に沿って形成されたブレード状のリップ部31bとを有している。基部31aには、所定間隔で複数(本実施形態では、3つ)の円形状の嵌合穴31cが形成されている。
なお、シール本体31を構成する材料は、密封性能及び寿命を向上すべく、比較的弾力性に富み、且つ耐摩耗性を有するものであることが好ましい。
図6において、硬質プラスチック、金属(スチール)等などからなるシールカバー32は、細長い矩形板状の底壁部32aと、底壁部32aの一縁に沿って該底壁部32aから屈曲して接続された側壁部32bと、底壁部32aの長手方向両端において底壁部32aから屈曲して接続された端壁部32cとを有している。底壁部32aには、側壁部32b及び端壁部32cから離間した位置に、嵌合穴31cと等ピッチで複数(本実施形態では、3つ)の嵌合凸部32dが形成されている。嵌合凸部32dの頂壁には、円形の開口32eが形成されている。底壁部32aは、嵌合凸部32d以外は段差のない平面となっている。
特に、本実施形態では、シールカバー32が一様な板厚の金属板材からなり、側壁部32b及び端壁部32cは、底壁部32aから折り曲げられることでそれぞれ形成される。このため、図6に示すように、側壁部32bの厚さt1は、端壁部32cの厚さt2と略等しい。
また、図8及び図10を参照して、側壁部32bの高さ方向の厚さA1は、端壁部32cの高さ方向の厚さA2と略等しく設計されている。
さらに、図7(a)に示すように、シール本体31の嵌合穴31cの内周面はテーパ形状(円錐台形状)の内側テーパ面31dとなっており、また、シールカバー32の嵌合凸部32dの外周面はテーパ形状(円錐台形状)の外側テーパ面32fとなっている。
従って、図7(b)に示すように、シール本体31をシールカバー32に組み付けたとき、内側テーパ面31dと外側テーパ面32fとが接触して、嵌合穴31cと嵌合凸部32dとは相互に嵌合し、相対的に位置決めされる。これにより、ボルト33(図4)を挿通する開口32eに対して、リップ部31bの位置が定まる。又、仮にシール本体31の上下を逆にして組付けようとしても、嵌合穴31cと嵌合凸部32dとは嵌合できなくなる。従って、嵌合穴31cと嵌合凸部32dとの適切な嵌合により、リップ部31bを規定の向きである下向きに設置でき、これにより誤組を防止できる。またシールカバー32に対するシール本体31のズレを抑制することで、シールの拘束力も高まる。
そして、シール本体31とシールカバー32とが一体となったアンダーシール30はボルト(締結部材)33を用いて脚部6の下面6cに取り付けられる。具体的には、脚部6の下面6cに対し、シール本体31をシールカバー32で挟持するような形でアンダーシール30を配置し、嵌合凸部32dの開口32e及び嵌合穴31cを通過するようにして、その後にボルト33を挿通し、脚部6の下面6cに形成されたねじ穴6bに螺合させる。これにより、シールカバー32を介してシール本体31は脚部6の下面6cに固定することができる。
このとき、上述のように開口32eに対してリップ部31bの位置が定まるため、適切な当たり代でリップ部31bを案内レール1の側面1aに当接させることができる。又、嵌合凸部32dの上端が下面6cに直接的に当接するので、確実な締結が可能になると共に、シール本体31の過度な圧縮を抑制することで、シール本体31の変形や破損を抑制できる。ボルト33の頭部は、嵌合凸部32d内の空間Sに収容されることで、シールカバー32のより下方に突出せず、他部品との干渉を抑制できる。
また、本実施形態によれば、シールカバー32の底壁部32aで、シール本体31を嵌合穴31cの周囲を含めて挟持しつつ固定することで、安定した取り付けを行うことが出来る。
特に、本実施形態によれば、シール本体31の厚みに相当する高さの側壁部32b及び端壁部32cをシールカバー32に設けているので、シール本体31の側面及び端面を覆うことで、これらを保護することができる。また、組み付けたとき、案内レール1の側面1aに当接するリップ部31bは、シールカバー32の底壁部32aにより保護される。従って、不用意な取扱い等により他部品とアンダーシール30とが接触したような場合にも、シール本体31を保護することができる。同時に、側壁部32b及び端壁部32cを設けることで、シールカバー32の剛性が高まるため、軽量な部品を用いながらも確実にアンダーシール30を脚部6に取り付けることができる。
金属板材を折り曲げてシールカバー32の側壁部32b及び端壁部32cを形成すると、軽量化のため薄肉の板材を用いても全体変形に対する力が大きくなり、ボルト33の締結によりシール本体31に均等且つ大きめの力を与えられる。又、シール本体31はスライダ2の全長にわたって連続し、また嵌合穴31c周囲も連続しているため、ボルト33の締結により脚部6の下面6cと緊密に密着することが可能となる。よって、シール本体31とスライダ2間の密封性が良くなり、そこから液体または細かい粉塵などの異物の進入を防ぐことができる。尚、シールカバー32のリップ部31b側の側面は、リップ部31bとの干渉を回避すべく折り曲げていないが、側面1aとシールカバー32との隙間が微小であるので、リップ部31bは損傷し難い。
また、金属板材をシール長手方向端側に折り曲げることで端壁部32cを形成することにより、シール本体31の進行方向の保護も出来、大きい異物または固い異物に接触しても変形しにくく、シール本体31が傷つけられ密封性が悪くなる可能性を軽減できる。
更に、シールカバー32がシール本体31の側面と端面とを覆っているため、シール本体31が空気または異物環境に暴露されなく、経時劣化も抑えられる利点がある。それにより、シール本体31が大きい異物または固い異物に接触しても変形しにくく、傷つけられ密封性が悪くなる可能性を軽減できる。
本実施形態に係るアンダーシールを備えた直動案内装置によれば、粉塵、液体などの異物環境でも長寿命駆動が可能のため、大型機械や自動車等の用途において、直動案内装置の多環境長寿命化を実現できる。
又、側壁部32bの高さ方向の厚さA1は、端壁部32cの高さ方向の厚さA2と略等しい。したがって、側壁部32bと端壁部32cについて、一様な厚さのシール本体31を等しく覆うことができて、高い防塵性能を確保できる。
さらに、図6に示すように、側壁部32bの厚さt1は、端壁部32cの厚さt2と略等しい。したがって、一定厚さの板材から、端壁部32cと側壁部32bを折り曲げてシールカバー32を形成できるので、製造性が良好である。
また、図6に示すアンダーシール30では、シールカバー32の端壁部32cの端面エッジと側壁部32bの端面エッジとを互いに接触させ、端壁部32cの端面と側壁部32bの端面との間に空間Cが形成されている。このため、端壁部32cと側壁部32bとを独立して折り曲げることができ、折り曲げ時の製造難易度が低下しコスト低減につながる。
なお、本実施形態の変形例として、図11に示すアンダーシール130のように、シールカバー132は、端壁部32cの端面を側壁部32bの側面に当接させるようにしてもよい。
次に、図4を参照して、脚部6の形状について説明する。上述したように、スライダ2の脚部6には、案内レール側軌道面10とスライダ側軌道面11との間を転動する転動体3が戻される転動体戻り穴16と、ボルト33を螺合させるねじ穴6bとが形成されている。
ここで、図4において、ねじ穴6bの中心は、スライダ2の幅方向において、転動体戻り穴16とスライダ側軌道面11との間に配置されている。ねじ穴6bの中心からアンダーシール30における案内レール1から離れた外側面までの距離をW3とし、ねじ穴6bの中心から転動体戻り穴16の中心までの距離をW4としたときに、W3≧W4となっている。
アンダーシール30を固定する脚部6の下面(固定面)6cが段差のない同一平面で構成されており、かつW3≧W4となっているので、十分な左右方向幅の下面6cを設けられる。よって、アンダーシール30を脚部6の下面6cに対して確実に密着固定でき、確実な防塵性を保てる。
更に、図4において、スライダ2における脚部6の下面6cに連続し、且つ下面6cに交差した案内レール1側の面6dから、ねじ穴6bの中心までの距離をW1とし、転動体戻り穴16における案内レール1側の最近接部からねじ穴6bの中心までの距離をW2としたときに、W1≧W2となっている。
即ち、脚部6の下方端を、案内レール1から左右方向に最も離間した脚部6の内側面6eに対して案内レール1側に突出する固定面拡大部6fを設けることで下面6cを延長し、面6dまでの距離W1を大きくとれるようにしている。これによりアンダーシール30を確実に下面6cに取り付けることができる。又、このような構成により、ねじ穴6bから面6dまでの肉厚を十分に確保できる。よって、熱処理の際の変形や過熱などを防止できて、製造性が良好である。
また、スライダ2における案内レール1から左右方向に最も離間した内側面6eからねじ穴6bの中心までの最小距離をT1としたときに、W1>T1となっている。
このように、W1>T1となるように、脚部6の下方端に固定面拡大部6fを設けることによって、下面6cをいっそう広くすることができる。これにより、アンダーシール30を下面6cに対して確実に密着固定できる。
熱処理の際の変形や過熱などを防止する観点からは、T1≧1mmとすることが好適である。また、T1とW2は、略等しいことが好ましく、W2=T1とすることがより好ましい。これによりねじ穴6bから幅方向への脚部6の肉厚を略均等にでき、熱処理の際の変形や過熱の抑制を行える。
なお、上記寸法W1,W2,W3,W4,T1は、いずれもスライダ2の幅方向における距離である。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るアンダーシール230について、図12(a)及び図12(b)を参照して説明する。図12(a)に示すように、本実施形態のシールカバー232は、第1実施形態のシールカバー32に対して、側壁部32b及び端壁部32cを除いたものである。これによりシールカバー232の製造コストを抑えることができる。シール本体31は、上述した実施形態のものと同様である。
本実施形態においても、シール本体31をシールカバー232に組み付けたとき、内側テーパ面31dと外側テーパ面32fとが接触することにより、嵌合穴31cと嵌合凸部32dとは相互に嵌合して、相対的に位置決めされる。
それ他の構成及び作用については、上述した実施形態と同様である。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係るアンダーシール330について、図13(a)〜図15(c)を参照して説明する。本実施形態のアンダーシール330は、シール本体331と、シール本体331を脚部6に取り付ける為のシールカバー332とからなる。
図13(a)〜図13(c)に示すように、シール本体331は、所定間隔で複数(本実施形態では、3つ)の矩形状の嵌合穴31cを有する。図15(a)に示すように、嵌合穴31cの一側面は内側テーパ面31d1となっている。一方、図14(a)〜図14(c)に示すように、シールカバー332は、底壁部32aには嵌合穴31cと等ピッチで矩形断面の複数(本実施形態では、3つ)の嵌合凸部32dを有している。嵌合凸部32dの頂壁には、円形の開口32eが形成されている。図15(a)に示すように、嵌合凸部32dの一側面は外側テーパ面32f1となっている。即ち、本実施形態の嵌合凸部32dは、板材の一部を矩形状に切り起こすことで形成され、この形状に合わせて、嵌合穴31cが形成されている。
従って、図15(b)に示すように、シール本体331をシールカバー332に組み付けたとき、内側テーパ面31d1と外側テーパ面32f1とが接触して、嵌合穴31cと嵌合凸部32dとは相互に嵌合し、相対的に位置決めされる。これにより、ボルト33(図4)を挿通する開口32eに対して、リップ部31bの位置が定まることとなる。
それ他の構成及び作用については、上述した実施形態と同様である。
(第4実施形態)
第4実施形態では、第1実施形態のアンダーシール30を用いて、直動案内装置の組み付け方法について説明する。図16は、本実施形態に係るアンダーシール30をスライダ2に組み付ける際に用いる治具40を、スライダ2と共に示す断面図である。治具40は、その断面形状が案内レール1と類似しているが、脚部6に対向する側面(対向面)41に凹溝42を軸方向に沿って設けており、更に側面41は案内レール1の側面1aより脚部6側に突出している点が異なる。
以下、治具40を用いて、アンダーシール30をスライダ2に組み付ける組み付け方法について説明する。まず、図16に示すように、治具40をスライダ2内に配置する。次いで、治具40の側面41に、アンダーシール30のシールカバー32の内側縁を当接させた状態で、凹溝42内にシール本体31のリップ部31bが収容されるようにして、ボルト33を用いてアンダーシール30を脚部6に取り付ける(調整ステップ)。側面41にシールカバー32の内側縁が当接するようにアンダーシール30を脚部6に固定することで、シール本体31のリップ部31bの当たり代が適正になる。
その後、治具40を取り外して、案内レール1を組み付ける(組付ステップ)。上述したように、シール本体31はシールカバー32に対して精度良く位置決めされているので、側面41にシールカバー32を当接させることで、案内レール1を組み付けた際に、リップ部31bの当たり代が精度良く確保される。案内レール1を組み付けた状態で、シールカバー32は案内レール1の側面1aに対して非接触となるので(図4参照)、案内レール1を傷つけることはない。
図17は、本実施形態の変形例に係るアンダーシール30をスライダ2に組み付ける際に用いる別な治具40Aを、スライダ2と共に示す断面図である。治具40Aは、スライダ2に対して配置されるベース43と、ベース43に対して位置調整可能なブロック状の調整部44とを有している。ベース43は案内レール1に類似した形状を有し、また、調整部33の上面と共に凹溝42を構成している。調整部44は、ボルト45によりベース43に対して位置調整可能に締結できる。
以下、治具40Aを用いて、アンダーシール30をスライダ2に組み付ける組み付け方法について説明する。前工程として、調整部44の側面46が、アンダーシール30のシールカバー32の内側縁と適切な位置で当接するように予め位置調整し、このような状態を維持しつつ、ボルト45によりベース43に対して調整部44を締結する。
次いで、図17に示すように、治具40Aをスライダ2内に配置し、調整部44の側面46に、アンダーシール30のシールカバー32の内側縁を当接させた状態で、ベース43の凹溝42内にシール本体31のリップ部31bが収容されるようにして、ボルト33を用いてアンダーシール30を脚部6に取り付ける。
その後、治具40を取り外して、案内レール1を組み付ける。本実施形態の変形例によれば、シールカバー32の内側縁が当接する調整部44の側面46の位置を微調整できるので、リップ部31bの当たり代を細かく調整できる。
その他の構成及び作用については、上述した実施形態と同様である。
尚、治具40又は40Aを用いて、アンダーシール30をスライダ2に組み付ける際に、シールカバー32は、側面41又は側面46に適切に当接できるように位置調整可能となっていることが望ましい。そこで、本実施形態においては図18(a)に示すシールカバー432のように、ボルト33の外径に対して開口32eの内径φ2を大きくしてもよい。
或いは、変形例として示す図18(b)に示すシールカバー532のように、開口32eを案内レール1の軸線に直交する方向を長手方向とする長孔としても良い。これにより、開口32eとボルト33との間には、少なくとも案内レール1の軸線に直交する方向において隙間が形成され、シールカバー432,532を側面41又は側面46に対して適切に当接させることができる。
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が可能である。
例えば、アンダーシールにおいてリップ部材と押さえ部材とを別個で形成して組み付けているが、インサート成形などから一体で成形しても良い。又、位置決め基準を押さえ部材の側壁部の外側面とすることもできる。
1 案内レール
1a 側面
1b 上面
2 スライダ
2A スライダ本体
2B エンドキャップ
3 転動体
6b ねじ孔
6c 下面
6d 面
6e 内側面
8 保持器
8a 取付溝
10 案内レール側軌道面
11 スライダ側軌道面
13 転動体転動路
16 転動体戻り穴
18 管状部材
30、130、230,330 アンダーシール
31、331 シール本体
31a 基部
31b リップ部
31c 嵌合穴
31d、31d1 内側テーパ面
32、132、232,332,432,532 シールカバー
32a 底壁部
32b 側壁部
32c 端壁部
32d 嵌合凸部
32e 開口
32f、32f1 外側テーパ面
33 ボルト
40、40A 治具
41 側面
42 凹溝
43 ベース
44 調整部
45 ボルト
46 側面

Claims (11)

  1. 軸方向に延びる案内レール側軌道面を有する案内レールと、
    該案内レールを跨ぐように取り付けられ、前記案内レール側軌道面に対向するスライダ側軌道面を有し、前記案内レールに対して軸方向に相対移動するように配置されたスライダと、
    前記案内レール側軌道面及び前記スライダ側軌道面との間に形成される転動体転動路内に転動自在に配置される複数の転動体と、
    前記案内レールの側面と前記スライダの内側面との間に生じた隙間を密封するように、前記スライダに取付けられるアンダーシールと、
    を備える直動案内装置であって、
    前記アンダーシールは、前記案内レールの側面に当接するリップ部を備え、嵌合穴が形成されるシール本体と、開口が形成される嵌合凸部を備え、前記シール本体を保持するシールカバーと、を有し、
    前記嵌合穴に前記嵌合凸部が嵌合し、前記嵌合凸部が前記スライダの固定面に当接した状態で、前記開口を貫通する締結部材を前記スライダに締結することにより、前記アンダーシールが前記スライダに取り付けられることを特徴とする直動案内装置。
  2. 前記嵌合凸部は外側テーパ面を有し、前記嵌合穴は内側テーパ面を有し、前記外側テーパ面と前記内側テーパ面とが接触することにより、前記嵌合穴に前記嵌合凸部が嵌合することを特徴とする請求項1に記載の直動案内装置。
  3. 前記シールカバーは、シール本体の下面を支持する底壁部と、該底壁部から折り曲げられ、前記シール本体の外側面を覆う側壁部と、該底壁部から折り曲げられ、前記シール本体の両端面を覆う一対の端壁部と、を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の直動案内装置。
  4. 前記スライダには、前記案内レール側軌道面と前記スライダ側軌道面間を転動する前記複数の転動体が戻される転動体戻り穴と、前記締結部材を螺合させるねじ穴とが形成されており、
    前記案内レールの軸方向から見て、前記ねじ穴の中心は、前記転動体戻り穴の中心よりも前記案内レールに近い側に配置されており、更に前記ねじ穴の中心から前記アンダーシールにおける前記案内レールから離れた外側面までの距離をW3とし、前記ねじ穴の中心から前記転動体戻り穴の中心までの距離をW4としたときに、W3≧W4であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の直動案内装置。
  5. 前記案内レールの軸方向から見て、前記スライダにおける前記固定面に交差した前記案内レール側の面から前記ねじ穴の中心までの距離をW1とし、前記転動体戻り穴における前記案内レール側の最近接部から前記ねじ穴の中心までの距離をW2としたときに、W1≧W2であることを特徴とする請求項4に記載の直動案内装置。
  6. 前記案内レールの軸方向から見て、前記スライダにおける前記固定面に交差した前記案内レール側の面から前記ねじ穴の中心までの距離をW1とし、前記スライダにおける前記案内レールから最も離間した内側面から前記ねじ穴の中心までの最小距離をT1としたときに、W1>T1であることを特徴とする請求項4又は5に記載の直動案内装置。
  7. 前記案内レールの軸方向から見て、前記転動体戻り穴における前記案内レール側の端から前記ねじ穴の中心までの距離をW2とし、前記スライダにおける前記案内レールを向いた内側面から前記ねじ穴の中心までの最小距離をT1としたときに、W2=T1であることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の直動案内装置。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の直動案内装置の組立方法において、
    前記案内レールを組み付ける前に、凹溝を有する治具を前記スライダに配置して、前記治具の対向面に前記シールカバーを当接させた状態で、前記凹溝に前記シール本体の一部が収容されるようにして、前記アンダーシールを前記スライダに取り付ける調整ステップと、
    前記治具を取り外して、前記案内レールを組み付ける組付ステップと、
    を有することを特徴とする直動案内装置の組立方法。
  9. 前記治具は、前記スライダに対して配置されるベースと、前記ベースに対して位置調整可能な調整部とを有し、前記調整ステップにおいて、前記調整部の対向面に前記シールカバーを当接させた状態で、前記アンダーシールを前記スライダに取り付けることを特徴とする請求項8に記載の直動案内装置の組立方法。
  10. 前記案内レールを組み付けた状態で、前記シールカバーが前記案内レールに対して非接触となることを特徴とする請求項8又は9に記載の直動案内装置の組立方法。
  11. 前記開口と前記締結部材との間には、少なくとも前記案内レールの軸線に直交する方向において隙間が形成されていることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の直動案内装置の組立方法。
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