以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は、以下に説明する形態に限定されるものではなく、以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
本願明細書において、「肌対向面」とは、吸収性物品の着用時において着用者の肌に対向する面を意味する。また、「肌非対向面」とは、吸収性物品の着用時において着用者の肌に対向しない面を意味している。
また、図に示した座標系において、「D」は吸収性物品の奥行き方向を示し、「W」は吸収性物品の幅方向を示し、「H」は吸収性物品の高さ方向を示している。
また、本願明細書において、「A〜B」とは、「A以上B以下」であることを意味する。
[1.第1の実施形態]
図1から図5を参照して、本発明に係る吸収性物品100の第1の実施形態について説明する。図1は、本発明に係る吸収性物品100の概要を示した斜視図である。図1に示されるように、本発明に係る吸収性物品100は、内部に空間4を有する筒状の立体的形状をなしている。本実施形態では、1つの平面的な矩形状の吸収性本体10の両端の裏面側を合掌合せにして、奥行き方向(D)に沿って延びる空間4を有する筒状に形成している。立体形状をなす吸収性本体10は、着用者の股下に当接する面を有する天面部1と、この天面部1の左右両側から肌非対向面側に向かって延在する左右の側面部2,3(左側面部2及び右側面部3)と、これら左右の側面部2,3の間に形成される空間4を有している。この空間4は、着用者の腹側の端部から背側の端部に至るまで、奥行き方向(D)に沿って貫通したものとなっている。さらに、吸収性本体10の左右の側面部2,3の下端部5には、液不透過性の防漏シート20が取り付けられている。この防漏シート20は、左右の側面部2,3に跨って接合されており、これら側面部2,3を連結する機能をも担っている。また、吸収性本体10の天面部1には、内部の空間4に繋がる貫通孔7が形成されている。
続いて、吸収性物品100を構成する各要素について具体的に説明する。図2は、吸収性物品100の分解斜視図を示し、図3は、吸収性物品の断面図を示している。図2及び図3に示されるように、吸収性物品100は、吸収性本体10と、その下部に取り付けられた防漏シート20とを備えている。
吸収性本体10は、着用者の股下から排泄された体液を吸収し保持するための要素である。吸収性本体10は、複数のシート部材の間に吸収体13が介在する構成を有している。具体的には、吸収性本体10は、吸収性物品100の外面(肌対向面)を構成する外面シート11と、吸収性物品100の内面(肌非対向面)を構成する内面シート12と、これらの両シート11,12の間に配設された吸収体13とを有する。本実施形態において、外面シート11、内面シート12、及び吸収体13は、矩形状に成型されている。ただし、外面シート11、内面シート12、及び吸収体13の形状は矩形状に限られず、円形、楕円形、その他多角形状であってもよい。また、外面シート11と内面シート12は、吸収体13よりも一回り大きい長さと幅を有しており、吸収体13の周囲を囲うようにして、公知の接着剤や熱融着、超音波融着によって接合されている。このため、吸収体13は、周囲を接合された外面シート11と内面シート12の内部に封入された状態となる。
外面シート11は、着用者の肌に直接接し、尿などの体液を吸収体13へ透過させるためのシート状の部材である。このため、外面シート11は,柔軟性が高い液透過性材料で構成される。外面シート11を構成する液透過性材料の例は、織布、不織布、又は多孔性フィルムである。また、外面シート11としては、例えばポリプロピレンやポリエチレン、ポリエステル、ナイロンのような熱可塑性樹脂の繊維を親水化処理してさらに不織布にしたものを用いることとしてもよい。不織布としては、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布などを挙げることができる。
内面シート12は、着用者の肌に直接接することはないものの、天面部1の貫通孔7を通じて空間4内に導入された体液を吸収体13へ透過させることのできる素材で形成されていることが好ましい。このため、内面シート12は、外面シート11と同様に、柔軟性が高い液透過性材料で構成されていることが好ましい。液透過性材料の例は前述したとおりである。ただし、内面シート12は、必ずしも液透過性材料で形成されている必要はなく、液不透過性材料で形成されていてもよい。液不透過性材料の例は、ポリエチレン樹脂からなるプラスティックフィルムである。特に、内面シート12を液不透過性のシート部材で形成する場合には、通気性を確保するために、0.1〜4μmの微細な孔が複数形成された微多孔性ポリエチレンフィルムを用いることが好ましい。
吸収体13は、尿などの体液を吸収し、吸収した体液を保持するための部材である。吸収体13は、外面シート11と内面シート12の間に配置される。また、後述するように、外面シート11と内面シート12に配置される吸収体13は、一層に限られず、二層以上であってもよい。また、吸収体13は、外面シート11と内面シート12の間において位置がずれないように、外面シート11と内面シート12の両方又はいずれか一方に対してホットメルト接着剤などによって接合されていてもよい。吸収体13は、基本的に、吸収性材料13aと、それを被覆するコアラップシート13bによって構成されている。吸収性材料13aとしては、例えば、針葉樹や広葉樹などの繊維材料を解砕してなるフラッフパルプや、高吸水性ポリマー(SAP)、親水性シートを用いることとしてもよい。また、吸収性材料13aとしては、フラッフパルプ、高吸水性ポリマー、又は親水性シートのうち1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組合せて併用することもできる。一般的に、吸収性材料13aは、フラッフパルプの中に高吸水性ポリマーを散布したものによって構成される。コアラップシート13bは、吸収性材料13aを覆うことによってその形状を保持するためのシート部材である。コアラップシート13bとしては、液透過性を有するシート部材が用いられる。コアラップシート13bの例は、ティッシュペーパのような薄葉紙や、公知の不織布を用いることができる。
防漏シート20は、吸収性本体10に吸収された体液が外部に漏出することを防ぐためのシート部材である。防漏シート20は、体液を吸収した吸収性物品100を着用者の股下から引き抜くときには、持ち手としても利用できる。このため、防漏シート20は、吸収性本体10の左右の側面部2,3の外面の少なくとも一部に取り付けられる。具体的には、防漏シート20は、吸収性本体10の左右の側面部2,3の下端部5の外面に取り付けられていることが好ましい。防漏シート20は、体液の漏出を防止するために液不透過性材料によって構成される。液不透過性材料の例は、前述したとおり、ポリエチレン樹脂からなるプラスティックフィルムである。特に、液不透過性を維持しつつ通気性を確保するために、0.1〜4μmの微細な孔が複数形成された微多孔性ポリエチレンフィルムを用いることが好ましい。
図2に示されたような展開状態から、外面シート11、内面シート12、及び吸収体13を貼り合わせて吸収性本体10を形成し、この吸収性本体10の幅方向(W)の左右両端を内面シート12側に向かって曲げて、その下端部を防漏シート20によって綴じる。これにより、吸収性本体10と防漏シート20を備える吸収性物品100は、図3に示されたような筒状の立体的形状となる。さらに、図3に示されるように、防漏シート20が、吸収性本体10の下端部5において、左側面部2と右側面部3とに跨って添設されている。このため、防漏シート20は、吸収性本体10の左側面部2と右側面部3とを連結する機能を担っているといえる。
図3に示された例においては、吸収性本体10は、着用者の股下に当接する面を有する天面部1と、この天面部1の左右両側から肌非対向面側に向かって延在する左右の側面部2,3とが一体的に繋がっている。そして、天面部1と左右の側面部2,3の境界線上には、山折り目8が形成されている。これにより、吸収性本体10の断面は、およそ逆三角形となる。また、左右の山折り目8の間には天面部1が位置することとなるが、この天面部1はほぼ平坦な面となっている。このように、天面部1に折り目を付けずに平坦な面とすることで、着用者の股下に天面部1が密着しやすくなる。なお、図3に示されるように、天面部1の幅方向(W)の長さBは、例えば20mm〜150mmであることが好ましく、30mm〜100mmであることが特に好ましい。
また、図3に示されるように、左右の側面部2,3は、それぞれ、防漏シート20が接合された領域である下端部5と、この下端部5から天面部1(山折り目8)までの領域である吸液部6とに区分される。吸液部6には、防漏シート20は接合されていない。このため、左右の側面部2,3は、吸液部6においては外面側から体液を吸収することができる。側臥位又は半側臥位の姿勢を取っている着用者の股下に吸収性物品100を挟み込み、天面部1を着用者の股下に当接させると、左右の側面部2,3が着用者の両脚の内太腿に当接する。このため、左右の側面部2,3に外面側から体液の吸収が可能な吸液部6を形成することで、着用者の内太腿を伝って流れる体液を効果的に吸収することが可能となる。なお、吸液部6の高さ方向(H)の長さTは、例えば20mm〜200mmであることが好ましく、50mm〜150mmであることがより好ましい。なお、左右の側面部2,3は、下端部(防漏シート20が配置されている側の端部)において、ホットメルト接着剤等によって互いに接着されていてもよい。
図1から図3に示されるように、吸収性本体10の天面部1には貫通孔7が形成されており、この貫通孔7を通じて空間4の内部へと体液が導入されるようになっている。このため、図2に示されるように、貫通孔7は、天面部1を構成する外面シート11、内面シート12、及び吸収体13の全てに形成されたものとなっている。貫通孔7は、吸収性本体10の奥行き方向(D)に沿って延びる細長い形状に形成されていることが好ましい。貫通孔7の形状は特に限定されないが、図2等に示されるような略六角形状や、四角形状、楕円形状とすることもできる。また、貫通孔7は、単純な切れ目であってもよい。また、貫通孔7は、一端が吸収性本体10の前端又は後端に達したスリット状のものであってもよいし、両端が吸収性本体10の前端及び後端に達した割れ目状のものであってもよい。このように、貫通孔7を形成しておくことで、排泄された体液を外面シート11側からだけでなく、内面シート12側からも吸収体13に透過させることができる。このため、一度に大量の体液が排泄された場合であっても尿漏れを効果的に防止できる。さらに、着用者が男性の場合には、陰茎を貫通孔7に挿し込むことで、尿の排泄方向をガイドしたり固定したりすることができる。
図4は、吸収性物品100を着用者の股下に挟み込んだ状態の例を示している。図4に示されるように、吸収性本体10のうち、平坦面をなす天面部1が着用者の股下に密着し、その左右両側に位置する側面部2,3が着用者の内太腿に密着する。さらに、左右の側面部2,3の間には空間4が保持されているため、吸収性本体10は全体としてクッション性が高いものとなり、股下及び内太腿への密着状態が維持される。これにより、吸収性本体10と着用者の肌との間に隙間が生じにくくなり、側臥位又は半側臥位の姿勢を取っている着用者に装着した場合であっても、天面部1側又は側面部2,3側からの尿漏れを効果的に防止できる。さらに、吸収性本体10の下端部5には防漏シート20が添設されているため、下着や、シーツ、あるいは重ねて装着している使い捨ておむつなどが汚れることを回避できる。また、吸収性物品100の交換時には防漏シート20を持ち手にして引き抜くことで、手を汚させずに簡単に交換作業を済ませることができる。
前述のように、本発明の吸収性物品100は着用者の股下に挟み込んで使用することを想定したものであるため、従来の尿取りパッドのように着用者の腹部を覆う前身頃やその背部を覆う後身頃は不要である。このため、図1に示されるように、本発明の吸収性物品100の奥行き方向(D)全体の長さLは、80mm〜250mm、又は100mm〜200mmであれば十分である。本発明によれば、このようなコンパクトな吸収性物品を実現できる。
図5(a)から図5(e)は、第1の実施形態に係る吸収性物品100の製造工程の例を示している。図5では、V−V線における断面図を各図とともに示している。吸収性物品100は、図5(a)から図5(e)に示した手順で製造可能である。すなわち、まず矩形状の外面シート11を用意する(図5(a))。なお、このとき外面シート11には貫通孔7は形成されていない。次に、外面シート11の肌非対向面側に、貫通孔7が形成された矩形状の吸収体13を載置するとともに、さらに吸収体13の肌非対向面側に内面シート12を載置する(図5(b))。このときに、吸収体13の周囲において、外面シート11と内面シート12とを接合する。なお、吸収体13を外面シート11と内面シート12の両方又はいずれか一方に接合してもよい。これにより吸収性本体10が得られる。なお、この段階で外面シート11に貫通孔7は形成されていない。次に、吸収性本体10を、吸収体13に形成された貫通孔7に沿って、内面シート12側に向かって二つ折りする(図5(c))。つまり、外面シート11が外側になり内面シート12が内側になるように二つ折りを行う。このとき、吸収体13の貫通孔7が二つ折りの頂点に位置するようになる。その後、吸収体13の貫通孔7が位置する頂点部分を切り落として、外面シート11と内面シート12にも、吸収体13とほぼ同形状の貫通孔7を形成する(図5(d))。このとき、外面シート11と内面シート12は吸収体13の貫通孔7に重なっているため、吸収体13の貫通孔7と同じ位置を切り落とすことで、外面シート11と内面シート12にも略同時に貫通孔7を形成することができる。その後、吸収性本体10の下端部に相当する位置に、防漏シート20を接合する(図5(e))。その他、吸収性物品100を構成する吸収性本体10の適切な位置に、山折り目8(または後述する谷折り目9)を形成する工程を加えてもよい。また、二つ折りの頂点とは反対側の端部(つまり、防漏シート20が配置される側の端部)を、ホットメルト接着剤等によって接着する工程を加えてもよい。
上記の製造工程に従うことで、貫通孔7の形成された吸収性物品100を効率的に製造することができる。また、図5(c)に示されるように、吸収体13に貫通孔7を形成した後に、この貫通孔7に沿って吸収性本体10全体を2つ折りにすることで、吸収性本体10の天面部1に付く折り目を最小限に留めることができる。すなわち、前述のとおり、天面部1は、平坦面となり折り目が残っていないことが好ましいが、製造時に仕方なく生じる折り目を貫通孔7に沿って形成することで、天面部1に付く折り目を最小限に留めることができる。これにより、その着用時には折り目が殆ど天面部1に残っていない状態とすることも可能である。
[2.第2の実施形態]
続いて、図6から図8を参照して、本発明に係る吸収性物品100の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態については、前述した実施形態と同じ構成について説明を省略し、前述した実施形態と異なる構成を中心に説明を行う。
図6は、第2の実施形態に係る吸収性物品100の分解斜視図を示し、図7は、第2の実施形態に係る吸収性物品100の断面図を示している。図6及び図7に示されるように、第2の実施形態に係る吸収性物品100は、第1の実施形態で説明した構成要素に加えて、副吸収体14をさらに有している。
図7に示されるように、本実施形態において、副吸収体14は、吸収性本体10の天面部1に配置されている。特に、副吸収体14は、吸収体13(主吸収体)の肌非対向面側、すなわち吸収体13と内面シート12の間に配置されている。なお、副吸収体14は、吸収体13と同様に吸収性材料とコアラップシートから構成すればよい。本実施形態のように、天面部1において吸収体13と副吸収体14とを重ね合わせることで、この天面部1における体液の吸収量が増加する。このため、本実施形態は、天面部1に直接接する体液の量が多い女性向けの形態であるといえる。なお、副吸収体14を天面部1に配設する場合、この副吸収体14にも貫通孔7が形成される。また、図示は省略するが、副吸収体14は、吸収体13(主吸収体)の肌対向面側、すなわち吸収体13と外面シート11の間に配置することも可能である。
図8(a)から図8(e)は、第2の実施形態に係る吸収性物品100の製造工程の例を示している。図8では、VIII−VIII線における断面図を各図とともに示している。まず矩形状の外面シート11を用意し、その肌非対向面側に貫通孔7が形成された吸収体13(主吸収体)を載置する(図8(a))。次に、吸収体13の肌非対向面側の天面部1に相当する位置に、貫通孔7が形成された副吸収体14をさらに重ねる(図8(b))。このとき、吸収体13と副吸収体14の貫通孔7の位置が揃うようにする。また、吸収体13及び副吸収体14の周囲において、外面シート11と内面シート12とを接合する。これにより吸収性本体10が得られる。次に、吸収性本体10を、吸収体13に形成された貫通孔7に沿って、内面シート12側に向かって二つ折りする(図8(c))。つまり、外面シート11が外側になり内面シート12が内側になるように二つ折りを行う。このとき、吸収体13の貫通孔7が二つ折りの頂点に位置するようになる。その後、吸収体13の貫通孔7が位置する頂点部分を切り落として、外面シート11と内面シート12にも、吸収体13及び副吸収体14とほぼ同形状の貫通孔7を形成する(図8(d))。その後、吸収性本体10の下端部に相当する位置に、防漏シート20を接合する(図8(e))。その他、吸収性物品100を構成する吸収性本体10の適切な位置に、山折り目8(または後述する谷折り目9)を形成する工程を加えてもよい。
[3.第3の実施形態]
続いて、図9から図11を参照して、本発明に係る吸収性物品100の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態については、前述した実施形態と同じ構成について説明を省略し、前述した実施形態と異なる構成を中心に説明を行う。
図9は、第3の実施形態に係る吸収性物品100の分解斜視図を示し、図10は、第3の実施形態に係る吸収性物品100の断面図を示している。図9及び図10に示されるように、第3の実施形態に係る吸収性物品100は、第1の実施形態で説明した構成要素に加えて、2つの副吸収体14をさらに有している。
図10に示されるように、本実施形態において、副吸収体14は、吸収性本体10の左右の側面部2,3に一つずつに配置されている。特に、2つの副吸収体14は、吸収体13(主吸収体)の肌非対向面側、すなわち吸収体13と内側シート12の間に配置されている。なお、各副吸収体14は、吸収体13と同様に吸収性材料とコアラップシートから構成すればよい。本実施形態のように、左右の側面部2,3において吸収体13と副吸収体14とを重ね合わせることで、この側面部2,3における体液の吸収量が増加する。特に、各側面部2,3に配置された副吸収体14によって、天面部1の貫通孔7を通じて空間4内に導入された体液を多量に吸収することができる。このため、本実施形態は、天面部1の貫通孔7に陰茎を差し込んで使用する男性向けの形態であるといえる。なお、図10に示されるように、副吸収体14は、少なくとも左右の側面部2,3の下端部5側において、吸収体13に重ねて配置されていることが好ましい。ただし、副吸収体14は、左右の側面部2,3の全体に亘って、吸収体13に重ねて配置されていてもよい。また、図示は省略するが、副吸収体14は、吸収体13(主吸収体)の肌対向面側、すなわち吸収体13と外面シート11の間に配置することも可能である。
図11(a)から図11(e)は、第3の実施形態に係る吸収性物品100の製造工程の例を示している。図11では、XI−XI線における断面図を各図とともに示している。まず矩形状の外面シート11を用意し、その肌非対向面側に貫通孔7が形成された吸収体13(主吸収体)を載置する(図11(a))。次に、吸収体13の肌非対向面側の側面部2,3に相当する位置に、さらに一つずつ副吸収体14を重ねる(図11(b))。また、吸収体13及び副吸収体14の周囲において、外面シート11と内面シート12とを接合する。これにより吸収性本体10が得られる。次に、吸収性本体10を、吸収体13に形成された貫通孔7に沿って、内面シート12側に向かって二つ折りする(図11(c))。つまり、外面シート11が外側になり内面シート12が内側になるように二つ折りを行う。このとき、吸収体13の貫通孔7が二つ折りの頂点に位置するようになる。その後、吸収体13の貫通孔7が位置する頂点部分を切り落として、外面シート11と内面シート12にも、吸収体13とほぼ同形状の貫通孔7を形成する(図11(d))。その後、吸収性本体10の下端部に相当する位置に、防漏シート20を接合する(図11(e))。その他、吸収性物品100を構成する吸収性本体10の適切な位置に、山折り目8(または後述する谷折り目9)を形成する工程を加えてもよい。
[4.吸収性物品の変形例]
続いて、図12から図14を参照して、吸収性物品の変形例について説明する。ここで説明する変形例は、前述した実施形態のいずれにも適用することができる。なお、図12以降の図では、吸収性本体10の断面形状を簡略化して示している。
図12(a)は、前述した実施形態と同じであり、吸収性本体10の断面形状が逆三角形となる例を示している。この例の場合、天面部1と左右の側面部2,3との境界線上に山折り目8が形成されている。このため、天面部1は平坦な面を形成している。防漏シート20は、左右の側面部2,3の下端部5において、各側面部2,3に跨って添設されている。
図12(b)は、吸収性本体10の断面形状が略T字形となる例を示している。この例の場合、天面部1と左右の側面部2,3の境界線上に山折り目8が形成されており、さらに、左右の側面部2,3の吸液部6に相当する位置に谷折り目9が形成されている。谷折り目9よりも下方の領域では、左右の側面部2,3が合掌合せ状に当接して真っ直ぐに延びている。なお、左右の側面部2,3が当接する領域においては、左右の側面部2,3の間の空間4を広く保つために、両者を接合しないことが好ましい。ただし、左右の側面部2,3が当接する部分をホットメルト接着剤などによって接合することも可能である。防漏シート20は、左右の側面部2,3の下端部5に添設されている。このような略T字形の吸収性本体10は、山折り目8及び谷折り目9に沿って折り畳むことで、平坦な天面部1に折り目を付けずにコンパクトに収納することができる。
図12(c)は、吸収性本体10の断面形状が略水滴形となる例を示している。この例の場合、吸収性本体10には折り目(山折り目及び谷折り目)が形成されておらず、吸収性本体10が有する可撓性を利用して湾曲し、左右の両端部が防漏シート20によって綴じられている。このため、吸収性本体10のうち、着用者の股下に接触する面を持つ天面部1は、着用者の肌側に向かって全体的に膨出しており、図12(a)や図12(b)に示した例のように平坦な面を有してはいない。なお、図12(c)に示した例のように、天面部1と左右の側面部2,3の境界線として折り目が形成されていない場合には、自然状態において、吸収性本体10の幅方向に最大幅となる部位までの領域を天面部1として区画すればよい。防漏シート20は、左右の側面部2,3の下端部5において、各側面部2,3に跨って添設されている。このような水滴形の吸収性本体10は、クッション性が高く凹凸が無いため、肌触りが良く、着用者の肌に機械的な刺激を与えにくいというメリットがある。
図12(d)は、吸収性本体10の断面形状が、上方において略円形状となり、下方において略矩形状となる例を示している。この例の場合、吸収性本体10における左右の側面部2,3の吸液部6に谷折り目9が形成されている。この谷折り目9よりも上方の領域においては、折り目は形成されておらず、吸収性本体10の可撓性を利用して湾曲しており、略断面円形状をなしている。このため、吸収性本体10の天面部1は、着用者の肌側に向かって全体的に膨出しており、平坦な面を有してはいない。他方で、谷折り目9よりも下方の領域では、左右の側面部2,3が合掌合せ状に当接して真っ直ぐに延びている。この左右の側面部2,3が当接する部分は、ホットメルト接着剤などによって接合することも可能である。また、左右の側面部2,3が当接する部分は、吸収性物品100を着用者の股下に抜き差しする際の持ち手として機能する。例えば図12(d)に示した例では、他の例と比較して、防漏シート20が上方に向かって長く延出しており、より掴みやすくなっている。この図12(d)に示した例は、着用者の股下の狭い部位に吸収性物品100を局所的に当てる必要がある場合に、使いやすいものであるといえる。
図13(a)は、吸収性本体10の断面形状が略円形となる例を示している。この例の場合、吸収性本体10を完全に筒状にする。また、吸収性本体10の外面の一部に防漏シート20を添設する。そして、この防漏シート20を添設した部位を左右の側面部2,3の下端部5とし、この下端部5とは反対側の部位を天面部1とし、下端部5と天面部1の間の領域を吸液部6とする。
図13(b)は、吸収性本体10の断面形状が略逆Ω状となる例を示している。この例では、吸収性本体10は、着用者の股下に当接する面を有する天面部1が、割れ目7´において左右に分割されている。天面部1の幅方向中央の割れ目7´に対応する位置においては、天面部1の肌非対向面側に向かって左右の側面部2,3が延在している。また、左右の側面部2,3の間には空間4が形成されている。天面部1の割れ目7´は、左右の側面部2,3の間の空間4に通じている。このため、この割れ目7´は、前述した貫通孔7と同様の機能を持つものであるといえる。また、天面部1と左右の側面部2,3の境界線上には、谷折り目9がそれぞれ形成されている。さらに、左右の側面部2,3は、それらの下端において一体的に繋がっており、左右の側面部2,3の境界線上には、山折り目8(折り返し線)が形成されている。このため、吸収性本体10は最下端部位が閉じた状態となっている。換言すると、吸収性本体10は、幅方向の中央で折り返されて山折り目8(折り返し線)が形成され、幅方向左右両側でさらに反対方向に折り曲げられて谷折り目9が形成された形状となっている。図13(b)に示した例において、左右の側面部2,3の互いに向かい合う面は、ホットメルト接着剤などによって部分的又は全体的に接合することとしてもよいし、全く接合しなくてもよい。特に、天面部1の割れ目7´を通じて体液を空間4内に導入したり、あるいは陰茎を空間4内に挿し込んで使用するためには、左右の側面部2,3の向かい合う面は接合しないこと、又は部分的な接合に留めることが好ましい。防漏シート20は、左右の側面部2,3の下端部5において、各側面部2,3に跨って添設されている。このとき、防漏シート20にも、左右の側面部2,3の境界線上の山折り目8(折り返し線)に対応する折り目を形成してもよい。図13(b)に示した例は、固形物であっても左右の側面部2,3の間の空間4内に収容することができる。このため、軟便などを溜めて処理するためのパッドとして好適に利用できる。
図13(c)は、図13(b)に示した例の更なる変形例である。図13(c)に示した例では、左側面部2と右側面部3が下端において分離されている。つまり、この例では、2つの吸収性本体10が利用しており、左側の天面部1と左側面部2とを第1の吸収性本体10で形成し、右側の天面部1と右側面部3とを第2の吸収性本体10で形成する。第1の吸収性本体10の左側面部2と第2の吸収性本体10の右側面部3とを下端部5において防漏シート20によって繋ぎ、これら2つの吸収性本体10を連結している。図13(c)に示した例は、吸収性本体10が左右で2つに分割されている以外は、基本的に図13(b)に示した例と同様である。
図14(a)は、天面部1において吸収性本体10が二層に重なるように一つの吸収性本体10を折り曲げた例を示している。すなわち、この例では、天面部1において吸収性本体10が二層に重なっており、上層の部位が左側面部2と一体的に繋がり、下層の部位が右側面部3と一体的に繋がっている。天面部1と左右の側面部2,3の境界線上には山折り目8が形成されていて、天面部1は略平坦な面を有している。また、左右の側面部2,3は下端において一体的に繋がっており、両者の境界線上には山折り目8が形成されている。このため、吸収性本体10は断面形状が略逆三角形となる。防漏シート20は、左右の側面部2,3の下端部5において、各側面部2,3に跨って添設されている。図14(a)に示した例は、天面部1において吸収性本体10が二層に重なるため、この天面部1における体液の吸収量を高めることができる。
図14(b)は、天面部1を構成する吸収性本体10と左右の側面部2,3を構成する吸収性本体10とが別々に設けられた例を示している。この例では、左右の側面部2,3を一つの吸収性本体10によって構成しており、この吸収性本体10を下端の山折り目8で折り曲げて略V字状とする。他方で、天面部1を構成する吸収性本体10の幅方向左右両側と内側に向かって折り曲げて、左右の側面部2,3の上端部の外面側に重ね、この重なった部分を接着剤などで接合する。天面部1は、折り目のない平坦状とすることができる。このようにして、天面部1と左右の側面部2,3とを別々の吸収性本体10によって構成することもできる。なお、防漏シート20は、左右の側面部2,3の下端部5において、各側面部2,3に跨って添設されている。
図14(c)は、下端部5において吸収性本体10が二層に重なるように一つの吸収性本体10を折り曲げた例を示している。すなわち、この例では、天面部1と左右の側面部2,3が山折り目8を介して一体的に繋がっている。他方で、左側面部2をなす部位は、下端において内側に向かって折り返され、さらに右側面部3をなす部位は、下端において内側に向かって折り返されて左側面部2の外面に一部が重なっている。このように、左右の側面部2,3の下端側を折り返して二層に重ねることもできる。この場合、吸収性本体10の下端部5における体液の吸収量を高めることができる。なお、防漏シート20は、左右の側面部2,3の下端部5において、各側面部2,3に跨って添設されている。
図14(d)は、一つの吸収性本体10を折り曲げて断面形状を略逆三角形状とし、その吸収性本体10の端部の継ぎ目を右側面部3(又は左側面部2)に位置させた例を示している。すなわち、この例において、天面部1と左右の側面部2,3が山折り目8を介して一体的に繋がっている。また、左右の側面部2,3も下端において一体的に繋がっており、その境界線上には山折り目8が形成されている。ただし、この例において、右側面部3には、吸収性本体10の端部の継ぎ目が位置している。そこで、この継ぎ目を覆うように、防漏シート20が添設されている。このため、この例では、防漏シート20は吸収性本体10の右側面部3に相当する部位のみ取り付けられていることとなる。このように、防漏シート20は、吸収性本体10の下端部に限られず、吸収性本体10の外面の少なくとも一部に取り付けられていればよい。
なお、図12から図14に示した例では、天面部1の貫通孔7の図示が省略されている。図12から図14に示した例においても、前述した第1から第3の実施形態と同様に、吸収性本体10の天面部1に内部の空間4へと繋がる貫通孔7を形成することが可能である。
[5.吸収性物品が収容された製品]
図15は、複数の吸収性物品100が包装体200の内部に収容された製品の例を模式的に示している。図15では、包装体200を概念的に直方体状又は立方体状の内部空間を有するものして描画している。包装体200としては、袋状や箱状などの公知のものを適宜採用することができる。また、包装体200としては、紙製、布製、ビニール製、プラスチック製などの公知のものを採用することができる。包装体200としては、少なくとも2以上の吸収性物品100を収容可能な内部空間を有するものであれば、特に制限なく適宜公知のものを採用できる。
図15(a)は、吸収性本体10の断面形状が略T字形となる吸収性物品100(図12(b)参照)を包装体200の内部に収容した製品の例である。図15(a)に示されるように、各吸収性物品100は、天面部1と左右の側面部2,3の間に設けられた左右の山折り目8において折り返され、かつ左側面部2に設けられた谷折り目9において折り返された状態で、包装体200内に並べられている。このように、各吸収性物品100の天面部1を横倒しにした状態で並べることで、包装体200内での収容時には、各天面部1に折り目を形成しなくて済む。これにより、天面部1の平坦な状態が維持されることとなるため、この天面部1を着用者の股下に当接させやすくなる。また、図15(a)に示されるように吸収性物品100を折り畳むことで、包装体200内に複数の吸収性物品100をコンパクトに収納できる。
図15(b)は、吸収性本体10の断面形状が略逆三角形状となる吸収性物品100(図12(a)など参照)を包装体200の内部に収容した製品の例である。図15(b)に示されるように、各吸収性物品100は、天面部1と左右の側面部2,3の間に設けられた左右の山折り目8において折り返されている。さらに、各吸収性物品100は、左右の側面部2,3のうち、左側面部2(又は右側面部3)にのみ谷折り目9が形成され、この谷折り目9においても折り返されている。このように、図15(b)に示した例においても、各吸収性物品100の天面部1を横倒しにした状態で並べることで、包装体200内での収容時には、各天面部1に折り目を形成しなくて済むようになる。
図16は、包装体200内での収容時における吸収性物品100の変形例を示している。図16に示された例において、防漏シート20は、吸収性本体10の下端部5に剥離不能に接合された固定部21と、この固定部21の左右いずれかの一端から延出した延出部22とを有している。天面部1を横倒しにするように吸収性本体10を折り畳んだ状態において、防漏シート20の延出部22は、この吸収性本体10の天面部1を覆うことのできる延出長さを有するものとなっている。延出部22は、天面部1を覆った状態で、この天面部1又は側面部2,3に対して部分的に剥離可能に仮接着されていてもよい。このように、包装体200内に収容した状態において、防漏シート20の一部(延出部22)によって吸収性本体10の天面部1を被覆することで、この天面部1の衛生状態を保つことができる。また、図16に示されるように、防漏シート20は、固定部21と延出部22の間にミシン目23が形成されており、このミシン目23に沿って固定部21と延出部22とを切り離すことができるようになっていてもよい。使用時には延出部22を固定部21から切り離して廃棄することで、延出部22が邪魔になることもない。
[6.吸収性物品の更なる変形例]
図17は、吸収性物品の更なる変形例を示した平面図である。また、図18は、図17に示されたXVIII−XVIIIにおける断面形状を模式的に示した断面図である。
図17は、(a)、(b)、(c)の順に吸収性本体10を折り畳んで、最終的には(c)に示した状態とする様子を示している。図17(a)に示された展開状態においては、吸収性本体10は、奥行き方向(D)の前側(着用者の腹側)に位置する前側部10aと、奥行き方向(D)の後側(着用者の背側)に位置する後側部10bと、それらの間に位置する中央部10cとに区分されている。図17に示した例では、吸収性本体10の奥行き方向(D)の全体長さを100%としたときに、中央部10cの長さが10%〜50%程度とされており、残りの長さ部分を前側部10aと後側部10bとで二分している。また、吸収性本体10の前側部10aと後側部10bは、中央部10cと比較して、幅方向(W)の長さが長くなっている。言い換えると、吸収性本体10は、前側部10aと後側部10bの両方に、中央部10cよりも幅方向(W)左右外側に向かって延出した左右のフラップ部10L,10Rを有している。このため、吸収性本体10は、平面視において略砂時計型のような形状となる。なお、図17に示した例では、右フラップRは、左フラップLよりも、中央部10cから幅方向(W)外側に向かって長く延出している。
また、図17(a)に示されるように、吸収性本体10の吸収体13には、圧搾線13cが斜方形格子状のパターンで形成されていてもよい。圧搾線13cとは、吸収体13を肌対向面側と肌非対向面側いずれか一方又は両方から押圧することにより形成されたものであり、圧搾線13cに沿って吸収体13には凹部が形成されることとなる。また、斜方形格子状のパターンとは、平面視において奥行き方向(D)及び幅方向(W)に対して傾斜した方向(斜め方向)に延びる複数の圧搾線13cが交差して、斜方形(菱形)の非圧搾領域が区画されるパターンをいう。このように、吸収体13に複数の圧搾線13cを形成することで、吸収体13の表面に接した体液の拡散性を高めることができるとともに、吸収性本体10全体の強度や保型性を高めることができる。なお、図示は省略するが、吸収体13には、圧搾線13cを方形格子状のパターンで形成することもできる。ここにいう方形格子状のパターンとは、奥行き方向と平行に延びる複数の圧搾線13cと幅方向と平行に延びる複数の圧搾線13cとが交差して、方形(四角形)の非圧搾領域が区画されるパターンをいう。
次に、図17(b)に示されるように、吸収性本体10のうち、前側部10aと後側部10bにおける左フラップ部10Lを含む部位を、幅方向(W)の内側に向かって肌対向面側に折り返す。その後、図17(c)に示されるように、吸収性本体10のうち、前側部10aと後側部10bにおける右フラップ部10Rを含む部位を、幅方向(W)の内側に向かって肌対向面側に折り返す。このとき、左フラップ部10Lと右フラップ部10Rとを上下に重ねて、互いに重なった部分をホットメルト接着剤等によって接合する。そうすると、図17(c)に示されるように、吸収性本体10の中央部10cにおいて、前側部10aのフラップ部10L,10Rと後側部10bのフラップ部10L,10Rの間に、貫通孔7が形成されることとなる。この貫通孔7は、前述した各実施形態における貫通孔7に相当する機能を持つ。
図18は、図17(c)に示した状態の断面形状を示している。図18に示されるように、図17(a)〜(c)に示した工程に従って吸収性本体10を折り曲げた場合にも、内部に空間を有する筒状の立体的形状をなす吸収性物品100を得ることができる。図18に示されるように、前側部10aと後側部10bの左右のフラップ部10L,10Rが、吸収性本体10の天面1を形成する。また、この天面部1には、内部空間に通じる貫通孔7が形成されている。また、左右のフラップ部10L,10Rの幅方向内側部分が、吸収性本体10の左右の側面部2,3を形成する。また、吸収性本体10の幅方向中央部には、その奥行き方向に沿って山折り目8が形成される。さらに、吸収性本体10の側面部2,3の下端部5には、左右の側面部2,3に跨って防漏シート20が添設されている。このように、図17に示した方法によっても、天面部1に貫通孔7を有する立体的形状の吸収性物品100を得ることができる。
[7.第4の実施形態]
続いて、図19から図24を参照して、本発明に係る吸収性物品100の第4の実施形態について説明する。第4の実施形態については、前述した実施形態と同じ構成について説明を省略し、前述した実施形態と異なる構成を中心に説明を行う。
図19は、本発明の第4の実施形態に係る吸収性物品100の概要を示した斜視図である。図19に示されるように、本発明に係る吸収性物品100は、内部に空間4を有する筒状の立体的形状をなしている。本実施形態では、1つの平面的な矩形状の吸収性本体10の両端の裏面側を合掌合せにして、奥行き方向(D)に沿って延びる空間4を有する筒状に形成している。立体形状をなす吸収性本体10は、着用者の股下に当接する面を有する天面部1と、この天面部1の左右両側から肌非対向面側に向かって延在する左右の側面部2,3(左側面部2及び右側面部3)と、これら左右の側面部2,3の間に形成される空間4を有している。この空間4は、着用者の腹側の端部から背側の端部に至るまで、奥行き方向(D)に沿って貫通したものとなっている。さらに、吸収性本体10の左右の側面部2,3の下端部5には、液不透過性の防漏シート20が取り付けられている。この防漏シート20は、左右の側面部2,3に跨って接合されており、これら側面部2,3を連結する機能をも担っている。また、吸収性本体10の天面部1には、内部の空間4に繋がる貫通孔7が形成されている。
図20は、吸収性物品100の分解斜視図を示し、図21は、吸収性物品の断面図を示している。図2及び図21に示されるように、吸収性物品100は、吸収性本体10と、その下部に取り付けられた防漏シート20とを備える。
図20に示されたような展開状態から、外面シート11、内面シート12、及び吸収体13を貼り合わせて吸収性本体10を形成し、この吸収性本体10の幅方向(W)の左右両端を内面シート12側に向かって曲げて、その下端部を防漏シート20によって綴じる。これにより、吸収性本体10と防漏シート20を備える吸収性物品100は、図19及び図21に示されたような筒状の立体的形状となる。さらに、図21に示されるように、防漏シート20が、吸収性本体10の下端部5において、左側面部2と右側面部3とに跨って添設されている。このため、防漏シート20は、吸収性本体10の左側面部2と右側面部3とを連結する機能を担っているといえる。
図22は、吸収性物品100を着用者の股下に挟み込んだ状態の例を示している。図22に示されるように、吸収性本体10のうち、平坦面をなす天面部1が着用者の股下に密着し、その左右両側に位置する側面部2,3が着用者の内太腿に密着する。さらに、左右の側面部2,3の間には空間4が保持されているため、吸収性本体10は全体としてクッション性が高いものとなり、股下及び内太腿への密着状態が維持される。これにより、吸収性本体10と着用者の肌との間に隙間が生じにくくなり、側臥位又は半側臥位の姿勢を取っている着用者に装着した場合であっても、天面部1側又は側面部2,3側からの尿漏れを効果的に防止できる。さらに、吸収性本体10の下端部5には防漏シート20が添設されているため、下着や、シーツ、あるいは重ねて装着している使い捨ておむつなどが汚れることを回避できる。また、吸収性物品100の交換時には防漏シート20を持ち手にして引き抜くことで、手を汚させずに簡単に交換作業を済ませることができる。
図19から図23に示されるように、本発明の吸収性物品100は、吸収体13に複数の圧搾線31,32,33が形成されている。各圧搾線は、吸収体13を部分的に厚み方向に窪ませることにより形成されている。特に、各圧搾線は、肌対向面側と肌非対向面側の両側又はいずれか一方側から吸収体13を部分的に押圧して圧縮することによって形成することが可能である。このため、圧搾線が形成された部位においては、吸収体13を構成する吸収性材料13aの密度が高まることとなる。このように、吸収体13に圧搾線を形成することで、吸収体13は、圧搾線に沿って折れ曲がりやすくなる。また、圧搾線が形成された部位において吸収性材料13aの密度が高まるため、吸収体13は、圧搾線の延在方向と平行な方向に加わる外力に対する応力が向上する。また、圧搾線が形成された部位において吸収体13は部分的に窪んでいるため、この圧搾線に沿って体液が流れることとなり、圧搾線の延在方向に体液が拡散しやすくなる。なお、圧搾線は、吸収体13の肌対向面側に形成されていてもよいし、肌非対向面側に形成されていてもよいし、これらの両側に形成されていてもよい。以下では、吸収体13に形成された圧搾線のパターンについてより詳しく説明する。
図23は、吸収体13に形成されている圧搾線のパターンを説明するための図であり、吸収体13の展開状態を示している。図23に示されるように、吸収体13には、吸収性本体10の天面部1に相当する部位に、幅方向に沿って延びる第1の圧搾線31が形成されている。第1の圧搾線31は、奥行き方向に所定の間隔をおいて複数形成されており、第1の圧搾線31のそれぞれは幅方向と平行な直線状となっている。複数の第1の圧搾線31の間隔は特に限定されないが、例えば第1の圧搾線31同士の間隔は3mm〜30mm又は5mm〜20mmであることが好ましい。基本的に、第1の圧搾線31は、天面部1の幅方向全域に亘って延在している。すなわち、第1の圧搾線31は、天面部1と左側面部2の境界及び天面部1と右側面部3の境界にまで達していることが好ましい。また、前述したとおり、天面部1には貫通孔7が形成されている。この場合には、第1の圧搾線31は、貫通孔7の周縁にまで達していることが好ましい。
このように、天面部1に幅方向に沿った複数の第1の圧搾線31を形成することで、幅方向から加わる外力に対する天面部1の応力を高めることができる。天面部1の応力を向上させることで、天面部1やその下方に位置する空間4が潰れにくくなるため、吸収性本体10が着用者の股下及び内太腿により密着しやすくなり、空間4の形状も保持することができる。また、吸収体13の天面部1に幅方向に延びる第1の圧搾線31を形成することで、天面部1に触れた体液が幅方向に拡散しやすくなる。これにより、天面部1から側面部2,3に亘って広い範囲で迅速に体液を吸収することができるため、尿漏れ防止効果を高めることができる。
また、図23に示されるように、吸収体13には、吸収性本体10の天面部1と左右の側面部2,3の境界(即ち山折り目8)に相当する位置に、奥行き方向に延びる第2の圧搾線32が形成されている。このため、吸収性本体10は、吸収体13に形成された第2の圧搾線32に沿って折れ曲がることとなる。つまり、吸収性本体10の山折り目8は、吸収体13の第2の圧搾線32に対応した形状となる。図23に示されるように、第2の圧搾線32は、吸収体13の奥行き方向の略全域に亘って延在している。例えば、吸収体13の奥行き方向の長さを100%とした場合に、第2の圧搾線32は、奥行き方向の80〜100%又は90〜100%の長さ範囲に亘って延在していることが好ましい。
また、左右一対の第2の圧搾線32は、それぞれ、幅方向の外側に向かって張り出す円弧状に形成されている。つまり、左右一対の第2の圧搾線32同士の間の間隔は、奥行き方向の前端部分及び後端部分において最も狭くなり、奥行き方向の中央部分において最も広くなる。このように、左右の第2の圧搾線32をそれぞれ円弧状とすることで、この第2の圧搾線32同士の間の領域である天面部1は、平面視において略楕円形状となる。そして、円弧状の第2の圧搾線32によって天面部1を画定すると、この第2の圧搾線32に沿って吸収性本体10を折り曲げたときに、天面部1は、図19に示されるように、奥行き方向の前端部分と後端部分が立ち上がる形状となる。つまり、図19に示されるように吸収性本体10が筒状の立体的形状をなしている状態において、天面部1の奥行き方向の前端両端部分は、奥行き方向の中央部分と比べて上方に位置する。第2の圧搾線32を円弧状とすることで、このような天面部1の状態を自然に保持できる。天面部1の奥行き方向の前端部分は、中央部分と比べて細くなっており、しかも上方に立ち上がっているため、着用者の下腹部に適切にフィットする。また、天面部1の奥行き方向の後端部分も、中央部分と比べて細くなっており、しかも上方に立ち上がっているため、着用者の臀部に適切にフィットする。これにより、尿や便が漏洩することをより効果的に防止できる。
また、図19や図23に示されるように、第1の圧搾線31は、左側の第2の圧搾線32から右側の第2の圧搾線32に至るまで形成されているか、若しくは中央の貫通穴7から左右の第2の圧搾線32に至るまで形成されている。このように、天面部1の幅方向の略全域に亘って第1の圧搾線31を形成しておくことで、第2の圧搾線32が画定する天面部1の形状を保持することができる。つまり、第1の圧搾線31が形成された部位では吸収性材料の密度が高くなっているため、吸収体13は幅方向からの外圧に対する応力が強い。従って、第2の圧搾線32によって画定された天面部1は、着用者の両脚の間に挟み込まれている状態であっても、第1の圧搾線31の作用により潰れにくく平面的な状態を維持できる。
さらに、図23に示されるように、吸収体13には、左側面部2及び右側面部3のそれぞれに、奥行き方向に延びる複数の第3の圧搾線33が形成されている。複数の第3の圧搾線33には、展開状態において第2の圧搾線32と同じ方向に向かって張り出した円弧状の圧搾線33aと、奥行き方向と平行に延びる直線状の圧搾線33bが含まれる。円弧状の圧搾線33aは、吸収性本体10が筒状の立体的形状をなしている状態(図19参照)には、下方に向かって張り出した円弧状であるといえる。このように、左右の側面部2,3に円弧状の圧搾線33aを形成しておくことで、天面部1が奥行方向に反って曲がり、立体的になるために必要な変形を側面部2,3に与えることができ、天面部1と着用者の下腹部または臀部との間に隙間をつくらないので漏れを防止することができる。さらに、この円弧状の圧搾線33aから第2の圧搾線32までの間の領域において、左右の側面部2,3が外側に膨らんだ状態を保持しやすくなり、その結果、吸収性本体10の内部の空間4が広く確保されるため、多量の尿や便を捕集することが可能となる。また、左右の側面部2,3に直線状の圧搾線33bを形成しておくことで、奥行き方向からの外圧に対する応力を向上させることができる。第3の圧搾線33に含まれる円弧状の圧搾線33aや直線状の圧搾線33bは、第2の圧搾線32と同様に、吸収体13の奥行き方向の長さを100%とした場合に、奥行き方向の80〜100%又は90〜100%の長さ範囲に亘って延在していることが好ましい。
図24(a)から図24(e)は、第4の実施形態に係る吸収性物品100の製造工程の例を示している。図24では、XXIV−XXIV線における断面図を各図とともに示している。吸収性物品100は、図24(a)から図24(e)に示した手順で製造可能である。すなわち、まず矩形状の外面シート11を用意する(図24(a))。なお、このとき外面シート11には貫通孔7は形成されていない。次に、外面シート11の肌非対向面側に、貫通孔7が形成された矩形状の吸収体13を載置するとともに、さらに吸収体13の肌非対向面側に内面シート12を載置する(図24(b))。この段階で、吸収体13には前述したパターンで複数の圧搾線31,32,33を形成しておく。また、吸収体13の周囲において、外面シート11と内面シート12とを接合する。なお、吸収体13を外面シート11と内面シート12の両方又はいずれか一方に接合してもよい。これにより吸収性本体10が得られる。なお、この段階で外面シート11に貫通孔7は形成されていない。次に、吸収性本体10を、吸収体13に形成された貫通孔7に沿って、内面シート12側に向かって二つ折りする(図24(c))。つまり、外面シート11が外側になり内面シート12が内側になるように二つ折りを行う。このとき、吸収体13の貫通孔7が二つ折りの頂点に位置するようになる。その後、吸収体13の貫通孔7が位置する頂点部分を切り落として、外面シート11と内面シート12にも、吸収体13とほぼ同形状の貫通孔7を形成する(図24(d))。このとき、外面シート11と内面シート12は吸収体13の貫通孔7に重なっているため、吸収体13の貫通孔7と同じ位置を切り落とすことで、外面シート11と内面シート12にも略同時に貫通孔7を形成することができる。その後、吸収性本体10の下端部に相当する位置に、防漏シート20を接合する(図24(e))。その他、吸収体13に円弧状の第2の圧搾線32が形成されている位置に、山折り目8を形成する工程を加えてもよい。また、二つ折りの頂点とは反対側の端部(つまり、防漏シート20が配置される側の端部)を、ホットメルト接着剤等によって接着する工程を加えてもよい。
上記の製造工程に従うことで、貫通孔7の形成された吸収性物品100を効率的に製造することができる。また、図24(c)に示されるように、吸収体13に貫通孔7を形成した後に、この貫通孔7に沿って吸収性本体10全体を2つ折りにすることで、吸収性本体10の天面部1に付く折り目を最小限に留めることができる。すなわち、前述のとおり、天面部1は、平坦面となり折り目が残っていないことが好ましいが、製造時に仕方なく生じる折り目を貫通孔7に沿って形成することで、天面部1に付く折り目を最小限に留めることができる。これにより、その着用時には折り目が殆ど天面部1に残っていない状態とすることも可能である。
[8.第5の実施形態]
続いて、図25及び図26を参照して、本発明に係る吸収性物品100の第5の実施形態について説明する。第5の実施形態については、前述した実施形態と同じ構成について説明を省略し、前述した実施形態と異なる構成を中心に説明を行う。
図25は、第5の実施形態に係る吸収性物品100の分解斜視図を示し、図26は、第5の実施形態に係る吸収性物品100の断面図を示している。図25及び図26に示されるように、第5の実施形態に係る吸収性物品100においては、吸収体13が、主吸収体13と副吸収体14とを積層した構造となっている。
図26に示されるように、本実施形態において、主吸収体13は、吸収性本体10の天面部1及び左右の側面部2,3に位置している。つまり、第5の実施形態における主吸収体13は、前述した第4の実施形態における吸収体13と略同様の構成を持つ。他方で、副吸収体14は、吸収性本体10の天面部1にのみ配置されている。特に、副吸収体14は、主吸収体13の肌非対向面側、すなわち主吸収体13と内面シート12の間に配置されている。なお、副吸収体14は、主吸収体13と同様に吸収性材料とコアラップシートから構成すればよい。本実施形態のように、天面部1において主吸収体13と副吸収体14とを重ね合わせることで、この天面部1における体液の吸収量が増加する。このため、本実施形態は、天面部1に直接接する体液の量が多い女性向けの形態であるといえる。なお、本実施形態においては、主吸収体13と副吸収体14の両方に貫通孔7が形成されており、両方の貫通孔7が空間4に繋がっている。なお、図示は省略するが、副吸収体14は、主吸収体13の肌対向面側、すなわち主吸収体13と外面シート11の間に配置することも可能である。
また、図25及び図26に示されるように、本実施形態において、天面部1に位置する副吸収体14には、幅方向に沿って延びる第1の圧搾線31が形成されている。第1の圧搾線31は、奥行き方向に所定の間隔をおいて複数形成されており、第1の圧搾線31のそれぞれは幅方向と平行な直線状となっている。天面部1に形成された第1の圧搾線31の作用については、前述のとおりである。つまり、天面部1に位置する副吸収体14に複数の第1の圧搾線31を形成することで、幅方向からの外力に対する応力が高まると共に、この第1の圧搾線31によって体液を広く迅速に拡散することができる。
また、本実施形態において、主吸収体13には、左側面部2及び右側面部3のそれぞれに、奥行き方向に延びる複数の第3の圧搾線33が形成されている。主吸収体13に形成された第3の圧搾線33は、奥行き方向と平行に延びる直線状に形成されている。左右の側面部2,3に直線状の第3の圧搾線33を形成しておくことで、奥行き方向からの外圧に対する応力を向上させることができる。
上記のとおり、本実施形態では、副吸収体14に幅方向に延びる第1の圧搾線31が形成され、主吸収体13に奥行き方向に延びる第3の圧搾線33が形成されている。ただし、例えば、主吸収体13に幅方向に延びる第1の圧搾線31と行き方向に延びる第3の圧搾線33の両方を形成することも可能である。
[9.第6の実施形態]
続いて、図27及び図28を参照して、本発明に係る吸収性物品100の第6の実施形態について説明する。図27は、第6の実施形態に係る吸収性物品100の分解斜視図を示し、図28は、第6の実施形態に係る吸収性物品100の展開図及び側面図を示している。第6の実施形態は、前述した第4の実施形態の変形例に相当するものであり、基本的な構成要素は同じである。ただし、第6の実施形態は、吸収性物品100の展開状態における外形が円形となっている点において、第4の実施形態と異なる。
図27に示されるように、第6の実施形態においては、外面シート11、内面シート12、及び吸収体13が平面視において円形(又は楕円形)に成型されている。このため、図28(a)の平面図に示されるように、外面シート11と内面シート12の間に吸収体13を積層した吸収性本体10も、展開状態においては平面視においてその外形が円形(又は楕円形)となる。また、図28(b)の側面図に示されるように、吸収性本体10の左右の側面部2,3の下端部5には、防漏シート20が左右の側面部2,3に跨って取り付けられる。このように、吸収性本体10を円形に成型することで、吸収性本体10を矩形に成型した場合と比較して、奥行き方向の前端部分下方と後端部分下方の角をなくすことができる。このため、吸収性本体10を円形に成型することで、吸収性物品100全体のサイズをコンパクトにすることができる。また、吸収性本体10を矩形に成型した実施形態では、奥行き方向の前端部分下方と後端部分下方には角が残ることになり、この角が下着等に引っかかって吸収性物品100を股下に挟みにくくなる場合がある。これに対して、本実施形態のように、吸収性本体10を円形に成型することで、奥行き方向の前端部分下方と後端部分下方の縁が円弧状となるため、着用時に衣服に引っ掛かりにくくなり、スムーズに脱着することができる。なお、吸収性本体10の外形を矩形(第4の実施形態)とするか円形(第6の実施形態)とするかは、吸収性物品100の用途に合せて適宜変更すればよい。
[10.第7の実施形態]
続いて、図29から図33を参照して、本発明に係る吸収性物品100の第7の実施形態について説明する。第7の実施形態については、前述した実施形態と同じ構成について説明を省略し、前述した実施形態と異なる構成を中心に説明を行う。
図29は、本発明に係る吸収性物品100の概要を示した斜視図である。図29に示されるように、本発明に係る吸収性物品100は、内部に空間4を有する筒状の立体的形状をなしている。本実施形態では、1つの平面的な矩形状の吸収性本体10の両端の裏面側を合掌合せにして、奥行き方向(D)に沿って延びる空間4を有する筒状に形成している。立体形状をなす吸収性本体10は、着用者の股下に当接する面を有する天面部1と、この天面部1の左右両側から肌非対向面側に向かって延在する左右の側面部2,3(左側面部2及び右側面部3)と、これら左右の側面部2,3の間に形成される空間4を有している。この空間4は、着用者の腹側の端部から背側の端部に至るまで、奥行き方向(D)に沿って貫通したものとなっている。さらに、吸収性本体10の左右の側面部2,3の下端部5には、液不透過性の防漏シート20が取り付けられている。この防漏シート20は、左右の側面部2,3に跨って接合されており、これら側面部2,3を連結する機能をも担っている。また、吸収性本体10の天面部1には、内部の空間4に繋がる貫通孔7が形成されている。
図30は、吸収性物品100の分解斜視図を示し、図31は、吸収性物品の断面図を示している。図29から図31に示されるように、吸収性物品100は、吸収性本体10と、その下部に取り付けられた防漏シート20とを備えている。
図30に示されるように、吸収体13は、少なくとも天面部1に、格子状の圧搾線41が形成されている。圧搾線41は、吸収体13を部分的に圧縮することにより形成された線状の凹部である。また、格子状とは、ある方向に延びる複数に圧搾線の群と、これとは異なる方向に延びる複数の圧搾線の群とが交差している状態を意味する。圧搾線41は、図30等に示したように斜方形格子状のパターンで形成されていてもよいし、その他、正方形格子状のパターンで形成されていてもよい。つまり、格子状の圧搾線41には、少なくとも、吸収性物品の幅方向(W)に沿って延びるか、又は幅方向(W)に対して1〜45度の範囲で傾斜した方向に沿って延びるものが含まれる。例えば、圧搾線41が吸収性物品の幅方向に対して傾斜する角度(θ)は、0〜45度の範囲とすることができ、特に30度〜45度、又は35度〜45度であることが好ましい。
また、圧搾線41は、基本的に、吸収体13を肌対向面側から圧縮することにより形成することができる。ただし、圧搾線41は、吸収体13を肌非対向面側から圧縮することにより形成されたものであってもよいし、吸収体13を肌対向面と肌非対向面の両側から圧縮することにより形成されたものであってもよい。このように、圧搾線41は、吸収体13を圧縮することにより形成されたものであるため、吸収体13は、その圧搾線41が形成された部位(天面部1)において強度が向上する。特に、前述のとおり、格子状の吸収体13は、吸収性物品の幅方向(W)に沿って延びるか、又は幅方向(W)に対して所定の範囲で傾斜した方向に沿って延びるものが含まれる。このため、吸収体13は、その圧搾線41が形成された天面部1の部位において、幅方向からの外力に対する応力が向上するといえる。
図29及び図30に示されるように、吸収性物品100の天面部1に相当する部位において、吸収体13に格子状の圧搾線41を形成することで、天面部1の応力が強くなる。このため、吸収生物品100を着用者の両脚の間に挟み込んだ状態であっても、天面部1の形状を維持することができ、かつ、左右の側面2,3の間の空間4を保持することができる。これにより、吸収性物品100が着用者の股下及び内太腿により密着しやすくなる。また、吸収体13の天面部1に格子状の圧搾線41を形成することで、天面部1に触れた体液が圧搾線41に沿って拡散しやすくなる。これにより、天面部1から側面部2,3に亘って広い範囲で迅速に体液を吸収することができるため、尿漏れ防止効果を高めることができる。
なお、図29及び図30に示した例において、圧搾線41は、吸収体13の天面部1内にのみ形成されている。ただし、本発明において、圧搾線41は、少なくとも天面部1に形成されていてればよく、左右の側面部2,3に形成されていてもよいし、吸収体13全体に形成されていてもよい。
図30に示されたような展開状態から、外面シート11、内面シート12、及び吸収体13を貼り合わせて吸収性本体10を形成し、この吸収性本体10の幅方向(W)の左右両端を内面シート12側に向かって曲げて、その下端部を防漏シート20によって綴じる。これにより、吸収性本体10と防漏シート20を備える吸収性物品100は、図31に示されたような筒状の立体的形状となる。さらに、図31に示されるように、防漏シート20が、吸収性本体10の下端部5において、左側面部2と右側面部3とに跨って添設されている。このため、防漏シート20は、吸収性本体10の左側面部2と右側面部3とを連結する機能を担っているといえる。
また、図29及び図30に示されるように、貫通孔7は、天面部1のうち、格子状の圧搾線41が形成された領域内に形成されていることが好ましい。つまり、貫通孔7の周囲は、圧搾線41によって囲われた状態にあり、貫通孔7の周縁に圧搾線41が達していることが好ましい。つまり、図30の一部拡大図に示されるように、圧搾線41が貫通孔7の縁に到達することで、この貫通孔7の縁にも凹部が形成されている。また、前述のとおり、吸収体13は圧搾線41が形成されている領域において強度が向上するため、この格子状の圧搾線41の領域の中に貫通孔7を設けることで、貫通孔7の形状を保持することができる。本発明では、前述のとおり、天面部1に格子状の圧搾線41を設けることで、天面部1の幅方向に剛性を高めて型崩れを防ぐこととしている。このため、天面部1に貫通孔7を設けた場合でも、圧搾線41の作用により、貫通孔7が閉塞しにくく、孔としての機能を発揮することができる。
前記の通り、貫通孔7は、天面部1を構成する外面シート11、内面シート12、及び吸収体13の全てに形成されている。このため、貫通孔7の縁から吸収体13の中身が飛び出さないよう、図31に示されるように、外面シート11と内面シート12とを貫通孔7内で貫通孔7の輪郭に沿って接合することが好ましい。これにより、吸収体13の露出を防止することができる。
図32は、吸収性物品100を着用者の股下に挟み込んだ状態の例を示している。図32に示されるように、吸収性本体10のうち、平坦面をなす天面部1が着用者の股下に密着し、その左右両側に位置する側面部2,3が着用者の内太腿に密着する。さらに、左右の側面部2,3の間には空間4が保持されているため、吸収性本体10は全体としてクッション性が高いものとなり、股下及び内太腿への密着状態が維持される。これにより、吸収性本体10と着用者の肌との間に隙間が生じにくくなり、側臥位又は半側臥位の姿勢を取っている着用者に装着した場合であっても、天面部1側又は側面部2,3側からの尿漏れを効果的に防止できる。さらに、吸収性本体10の下端部5には防漏シート20が添設されているため、下着や、シーツ、あるいは重ねて装着している使い捨ておむつなどが汚れることを回避できる。また、吸収性物品100の交換時には防漏シート20を持ち手にして引き抜くことで、手を汚させずに簡単に交換作業を済ませることができる。
図33(a)から図33(e)は、第7の実施形態に係る吸収性物品100の製造工程の例を示している。図33では、XXXIII−XXXIII線における断面図を各図とともに示している。吸収性物品100は、図33(a)から図33(e)に示した手順で製造可能である。すなわち、まず矩形状の外面シート11を用意し、外面シート11の肌非対向面側に、貫通孔7及び格子状の圧搾線41が形成された矩形状の吸収体13を載置する(図33(a))。なお、このとき外面シート11には貫通孔7は形成されていない。次に、吸収体13の肌非対向面側に内面シート12を載置する(図33(b))。このときに、吸収体13の周囲において、外面シート11と内面シート12とを接合する。なお、吸収体13を外面シート11と内面シート12の両方又はいずれか一方に接合してもよい。これにより吸収性本体10が得られる。なお、この段階で外面シート11に貫通孔7は形成されていない。次に、吸収性本体10を、吸収体13に形成された貫通孔7に沿って、内面シート12側に向かって二つ折りする(図33(c))。つまり、外面シート11が外側になり内面シート12が内側になるように二つ折りを行う。このとき、吸収体13の貫通孔7が二つ折りの頂点に位置するようになる。その後、吸収体13の貫通孔7が位置する頂点部分を切り落として、外面シート11と内面シート12にも、吸収体13とほぼ同形状の貫通孔7を形成する(図33(d))。このとき、外面シート11と内面シート12は吸収体13の貫通孔7に重なっているため、吸収体13の貫通孔7と同じ位置を切り落とすことで、外面シート11と内面シート12にも略同時に貫通孔7を形成することができる。その後、吸収性本体10の下端部に相当する位置に、防漏シート20を接合する(図33(e))。その他、吸収性物品100を構成する吸収性本体10の適切な位置に、山折り目8を形成する工程を加えてもよい。また、二つ折りの頂点とは反対側の端部(つまり、防漏シート20が配置される側の端部)を、ホットメルト接着剤等によって接着する工程を加えてもよい。
上記の製造工程に従うことで、貫通孔7の形成された吸収性物品100を効率的に製造することができる。また、図33(c)に示されるように、吸収体13に貫通孔7を形成した後に、この貫通孔7に沿って吸収性本体10全体を2つ折りにすることで、吸収性本体10の天面部1に付く折り目を最小限に留めることができる。すなわち、前述のとおり、天面部1は、平坦面となり折り目が残っていないことが好ましいが、製造時に仕方なく生じる折り目を貫通孔7に沿って形成することで、天面部1に付く折り目を最小限に留めることができる。これにより、その着用時には折り目が殆ど天面部1に残っていない状態とすることも可能である。
[11.第8の実施形態]
続いて、図34から図36を参照して、本発明に係る吸収性物品100の第8の実施形態について説明する。第8の実施形態については、前述した実施形態と同じ構成について説明を省略し、前述した実施形態と異なる構成を中心に説明を行う。
図34は、第8の実施形態に係る吸収性物品100の分解斜視図を示し、図35は、第2の実施形態に係る吸収性物品100の断面図を示している。図34及び図35に示されるように、第8の実施形態に係る吸収性物品100は、第7の実施形態で説明した構成要素に加えて、副吸収体14をさらに有している。
図35に示されるように、本実施形態において、副吸収体14は、吸収性本体10の天面部1に配置されている。特に、副吸収体14は、吸収体13(以下「主吸収体」ともいう)の肌非対向面側、すなわち主吸収体13と内面シート12の間に配置されている。なお、副吸収体14は、主吸収体13と同様に、吸収性材料14aとコアラップシート14bから構成すればよい。本実施形態のように、天面部1において主吸収体13と副吸収体14とを重ね合わせることで、この天面部1における体液の吸収量が増加する。このため、本実施形態は、天面部1に直接接する体液の量が多い女性向けの形態であるといえる。なお、副吸収体14を天面部1に配設する場合、この副吸収体14にも貫通孔7が形成される。天面部1に主吸収体13と副吸収体14を備えて二層構造とすることで、さらに幅方向に剛性が高まり、貫通孔7の閉塞を防ぐことができる。また、図示は省略するが、副吸収体14は、主吸収体13の肌対向面側、すなわち吸収体13と外面シート11の間に配置することも可能である。本実施形態において、副吸収体14は、少なくとも天面部1に配置されていればよく、その他に左右の側面部2,3に配置されていてもよい。ただし、図35に示した実施形態のように、副吸収体14は、天面部1にのみ配置することが好ましい。
図36(a)及び(b)は、主吸収体13と副吸収体14とを分離して示しており、図36(c)及び(d)は、XXXVI−XXXVIにおける断面形状を示している。また、図37は、主吸収体13と副吸収体14とを重ねた状態において、主吸収体13に形成された圧搾線41のパターンと、副吸収体14に形成された圧搾線51のパターンを拡大して示したものである。なお、図36及び図37では、概念的に、主吸収体13と副吸収体14のみを抽出して示している。
図36及び図37に示されるように、第8の実施形態においては、主吸収体13と副吸収体14のそれぞれに、各吸収体13,14を厚み方向に窪ませた圧搾線41,51が複数形成されている。つまり、圧搾線41,51は、主吸収体13と副吸収体14のそれぞれに複数形成されている。圧搾線41,51は、肌対向面側と肌非対向面側の両側又はいずれか一方側から各圧搾線41,51を部分的に押圧して圧縮することによって形成されたものである。このため、圧搾線41,51が形成された部位においては、各吸収体13,14における吸収性材料13a,14aの密度が高まることとなる。そして、主吸収体13に形成された圧搾線31と副吸収体14に形成された圧搾線51は、平面方向からみたときに少なくとも部分的に互いに交差するパターンをなしている。以下では、主吸収体13に形成された圧搾線41のパターンと、副吸収体14に形成された圧搾線51のパターンについて詳しく説明する。
図36に示されるように、主吸収体13には、圧搾線41が斜方形格子状のパターンで形成されている。ここにいう「斜方形格子状のパターン」とは、長手方向及び幅方向に対して傾斜した方向に延びる複数の圧搾線が交差して、斜方形(菱形)の非圧搾領域が区画されるパターンをいう。例えば、図36に示したように、圧搾線が吸収性物品の幅方向に対して傾斜する角度(θ)は、1〜45度の範囲とすることができ、さらに30度〜45度、又は35度〜45度であることが好ましい。特に、本実施形態において、主吸収体13における圧搾線41のパターンは、圧搾線41によって四方を囲われた非圧搾領域42がすべて正斜方形(正菱形)となる規則的なパターン(正斜方形格子状のパターン)となっている。このように、主吸収体13には、複数の圧搾線41と、圧搾線41によって周囲を囲われた非圧搾領域42と、圧搾線41が交差した交点部43が形成されているものと観念することができる。以下では便宜的に、主吸収体13における圧搾線41を「上側圧搾線41」、非圧搾領域42を「上側非圧搾領域42」、交点部43を「上側交点部43」と称する。
一方で、副吸収体14には、圧搾線51が方形格子状のパターンで形成されている。ここにいう「方形格子状のパターン」とは、長手方向と平行に延びる複数の圧搾線と幅方向と平行に延びる複数の圧搾線とが交差して、四角形状の非圧搾領域が区画されるパターンをいう。特に、本実施形態において、副吸収体14における圧搾線51のパターンは、圧搾線51によって四方を囲われた非圧搾領域52がすべて正方形状となる規則的なパターン(正方形格子状のパターン)となっている。このように、副吸収体14においても、複数の圧搾線51と、圧搾線51によって周囲を囲われた非圧搾領域52と、圧搾線51が交差した交点部53が形成されているものと観念することができる。以下では便宜的に、副吸収体14における圧搾線51を「下側圧搾線51」、非圧搾領域52を「下側非圧搾領域52」、交点部53を「下側交点部53」と称する。
また、本実施形態において、上側圧搾線41は、主吸収体13を肌対向面側から圧縮して窪ませることにより形成されたものである。同様に、下側圧搾線51は、副吸収体14を肌対向面側から圧縮して窪ませることにより形成されたものである。このため、副吸収体14に下側圧搾線51が形成された部位には、主吸収体13と副吸収体14を重ねた状態において両者の間に隙間が形成されることとなる。
図37に示されるように、本実施形態では、各吸収体13,14を重ねた状態において、主吸収体13の上側交点部43と副吸収体14の下側交点部53とが重なっている。さらに、主吸収体13における複数の上側交点部43の中には、副吸収体14の下側非圧搾領域52の中心(対角線の交点)と重なるものが存在する。特に、主吸収体13の上側圧搾線41のパターンと副吸収体14の下側圧搾線51のパターンとが重なる範囲においては、全ての下側非圧搾領域52の範囲内に、上側交点部43が存在していることとなる。このため、本実施形態では、正方形状をなす下側非圧搾領域52の対角線に相当する位置に、上側圧搾線41が重なっていることがわかる。さらに、本実施形態では、上側非圧搾領域42の範囲内に下側圧搾線51が重なっていることがわかる。
また、図36に示したように、上側非圧搾領域42(正斜方形)の長手方向に沿った対角線の長さD1は、下側非圧搾領域52(正方形)の長手方向の長さLとほぼ等しい(D1=L)。また、上側非圧搾領域42(正斜方形)の幅方向に沿った対角線の長さD2は、下側非圧搾領域52(正方形)の幅方向の長さBとほぼ等しい(D2=B)。なお、本願明細書における「ほぼ」とは、±5%の誤差を許容することを意味する。これらの条件を満たすことで、正方形状をなす下側非圧搾領域52の対角線に相当する位置に、上側圧搾線41が重なることとなる。
このように、本実施形態では、上側非圧搾領域42の範囲内に下側圧搾線51が重なり、下側非圧搾領域52の範囲内に上側圧搾線41及び上側交点部43が重なり、且つ、上側交点部43と下側交点部53とが重なっている。従って、主吸収体13の上側圧搾線41に沿って拡散した体液は、副吸収体14に落ちて下側非圧搾領域52に吸収される。また、主吸収体13の上側交点部43に滞留した体液は、副吸収体14に落ち、下側交点部53を通じて下側圧搾線51に沿って拡散する。さらに、副吸収体14の下側圧搾線51に沿って拡散した体液は、主吸収体13の上側非圧搾領域42に吸収される。また、下側圧搾線51は、上側圧搾線41の格子状パターンの対角線方向に体液を拡散することもできる。これにより、このようなパターンを形成することで、従来では吸収時間が遅いとされていた非圧搾領域42,52にも迅速に体液を導くことが可能となる。
ここで、吸収性物品の構成要素に関する具体的な数値について説明する。例えば、各吸収体13,14の厚み、すなわち非圧搾領域42,52の厚みは、5mm〜20mmであることが好ましく、特に8mm〜15mmであることが好ましい。また、圧搾線41,51が形成された部位における各吸収体13,14の厚みは、1mm〜10mmであることが好ましく、特に2mm〜5mmであることが好ましい。ただし、当然のことながら、圧搾線41,51が形成された部位の厚みは、非圧搾領域42,52の厚みよりも小さくなる。例えば、圧搾線41,51が形成された部位の厚みは、非圧搾領域42,52の厚みに対して、3%〜50%であり、特に5%〜20%であることが好ましい。
また、各圧搾線41,51の幅は、1mm〜5mmであることが好ましく、特に2mm〜4mmであることが好ましい。また、図36に示した上側非圧搾領域42の長手方向における対角線の長さD1は、10mm〜50mmであることが好ましく、特に20mm〜40mm、あるいは30mmであることが好ましい。上側非圧搾領域42の幅方向における対角線の長さD2の好ましい数値範囲は、前述した長さD1と同様である。長さD1と長さD2は、ほぼ等しいことが好ましいが、異なっていてもよい。つまり、上側非圧搾領域42の形状は、正斜方形(正菱形)に限られず、その他の斜方形とすることも可能である。また、また、図36に示した下側非圧搾領域52の長さLは、10mm〜50mmであることが好ましく、特に20mm〜40mm、あるいは30mmであることが好ましい。下側非圧搾領域52の幅Bの好ましい数値範囲は、前述した長さLと同様である。長さLと幅Bは、ほぼ等しいことが好ましいが、異なっていてもよい。つまり、下側非圧搾領域52の形状は、正方形に限られず、その他の四角形とすることも可能である。前述のように、長さD1と長さLとがほぼ等しく、長さD2と幅Bとがほぼ等しくなることが好ましい実施形態であるが、本発明はこれに限定されない。
また、各吸収体13,14に形成された圧搾線41,51は、股下部近傍に排出された体液を前身頃及び後身頃まで広く拡散することができるように、長手方向に亘って広い範囲に形成されていることが好ましい。具体的には、圧搾線41,51が形成された領域の長手方向の長さは、各吸収体13,14の長手方向の長さに対して60%以上であることが好ましく、60%〜100%、70%〜100%、又は80%〜100%であることが特に好ましい。また、各吸収体13,14に形成された圧搾線41,51は、幅方向の中心近傍に排出された体液を幅方向外側に広く拡散することができるように、幅方向に亘って広い範囲に形成されていることが好ましい。具体的には、上側圧搾線41が形成された領域の幅方向の最大幅は、主吸収体13の天面部1の幅方向の幅に対して60%以上であることが好ましく、60%〜100%、70%〜100%、又は80%〜100%であることが特に好ましい。また、下側圧搾線51が形成された領域の幅方向の最大幅は、副吸収体14の幅方向の幅に対して60%以上であることが好ましく、60%〜100%、70%〜100%、又は80%〜100%であることが特に好ましい。
また、図では、圧搾線41,51が、各吸収体13,14を構成する吸収性材料13a,14a及びコアラップシート13b,14bの両方を窪ませることにより形成された例を示している。ただし、圧搾線41,51は、少なくとも吸収性材料13a,14aを圧縮して窪ませることにより形成されたものであればよい。つまり、吸収性材料13a,14aを圧縮して圧搾線41,51を形成した後に、その吸収性材料34、44を被覆するようにコアラップシート13b,14bを接合することとしてもよい。この意味において、圧搾線41,51は、各吸収体13,14を構成する吸収性材料13a,14aに形成されていれば足りる。
[12.第9の実施形態]
続いて、図38及び図39を参照して、本発明の第9の実施形態に係る吸収性物品について説明する。第9の実施形態については、前述した実施形態と同じ構成について説明を省略し、前述した実施形態と異なる構成を中心に説明を行う。
図38(a)及び(b)は、主吸収体13と副吸収体14とを分離して示しており、図38(c)及び(d)は、XXXVIII−XXXVIIIにおける断面形状を示している。また、図39は、主吸収体13と副吸収体14とを重ねた状態において、主吸収体13に形成された圧搾線41のパターンと、副吸収体14に形成された圧搾線51のパターンを拡大して示したものである。なお、図38及び図39は、概念的に、主吸収体13と副吸収体14のみを抽出して示している。
第9の実施形態は、各吸収体13,14に形成された圧搾線41,51のパターンが、第8の実施形態とは異なっている。図38及び図39に示されるように、主吸収体13には、上側圧搾線41が正方形格子状のパターンで形成されており、副吸収体14には、下側圧搾線51が正斜方形格子状のパターンで形成されている。ここにいう正斜方形格子状のパターンと正方形格子状のパターンは、第8の実施形態で説明したものと基本的に同じである。ただし、第9の実施形態では、主吸収体13と副吸収体14とを重ねた状態において、主吸収体13に形成された正方形格子状のパターンと副吸収体14に形成された正斜方形格子状のパターンの相対的な位置関係が、第8の実施形態とは異なっている。
各図からわかるように、第9の実施形態において、上側非圧搾領域42の面積は、下側非圧搾領域52の面積よりも大きくなっている。このため、主吸収体13と副吸収体14を重ねたときに、上側非圧搾領域42(正方形)の範囲の中に、下側非圧搾領域52(正斜方形)が収まることとなる。
また、第9の実施形態では、ある上側非圧搾領域42(正方形)を画定する4辺の上側圧搾線41に、それぞれ、ある下側非圧搾領域52(正斜方形)を画定する4つの下側交点部53が重なっている。このため、図39に示されるように、上側非圧搾領域42(正方形)の範囲に下側非圧搾領域52(正斜方形)がピッタリと収まっていることがわかる。すなわち、上側非圧搾領域42(正方形)の中心(対角線の交点)と、下側非圧搾領域52(正斜方形)の中心(対角線の交点)が一致している。さらに、図38に示したように、上側非圧搾領域42(正方形)の長手方向の長さLは、下側非圧搾領域52(正斜方形)の長手方向に沿った対角線の長さD1とほぼ等しい(L=D1)。また、上側非圧搾領域42(正方形)の幅方向の長さBは、下側非圧搾領域52の幅方向に沿った対角線の長さD2とほぼ等しい(B=D2)。これらの条件を満たすことで、上側非圧搾領域42(正方形)を画定する4辺の上側圧搾線41に、それぞれ、ある下側非圧搾領域52(正斜方形)を画定する4つの下側交点部53が重なることとなる。
また、図39に示されるように、上側交点部43は、それぞれ、下側非圧搾領域52(正斜方形)の中心(対角線の交点)に重なっている。別の見方をすれば、複数の下側非圧搾領域52(正斜方形)には、上側交点部43が重なるものと、上側交点部43が重ならないものとが存在する。図39に示した例では、下側非圧搾領域52の複数の列のうち、1列おきに、上側交点部43が重なるものの列と、上側交点部43が重ならないものの列が交互に並んでいることがわかる。同様に、下側非圧搾領域52の複数の行のうち、1行おきに、上側交点部43が重なるものの行と、上側交点部43が重ならないものの行が交互に並んでいることがわかる。
上記のように、上側圧搾線41のパターン(正方形格子状)と下側圧搾線51のパターン(正斜方形格子状)を形成することで、1つの吸収体に圧搾線を密に形成しなくても、非圧搾領域に効果的に体液を拡散させ、2層の吸収体全体の広い範囲で体液を吸収できる。つまり、主吸収体13の上側圧搾線41に沿って拡散した体液が、副吸収体14の下側非圧搾領域52に吸収されることになる。このため、主吸収体13の上側圧搾線41に沿って拡散した体液が端部に到達しにくくなり、外部へと漏れ出す事態を効果的に防止できる。また、2層の吸収体13,14の広い範囲で体液を吸収できるようになるため、体液の吸収量が向上するとともに、長時間の着用であっても着用者に対して不快感を与えにくい。各吸収体13,14に形成された交点部43、53では、圧搾線41,51が交差しているため、体液が滞留しやすくなっている。そこで、主吸収体13の上側交点部43を副吸収体14の下側非圧搾領域52に重ねることで、上側交点部43に滞留した体液を下側非圧搾領域52に効果的に浸透させることが可能となる。
また、第9の実施形態のように、上側交点部43が重なる下側非圧搾領域52の列及び行を1列置き及び1行置きとすることで、主吸収体13に浸透した体液を、より遠くの領域まで拡散させることができる。このため、主吸収体13に浸透した体液を、副吸収体14の広い範囲に拡散及び浸透させることが可能となる。
また、圧搾線は、溝として液体を流す機能と、圧搾部周辺の非圧搾領域に毛細管現象を利用して液体を圧搾部に沿って拡散させる機能がある。溝として機能しない形態で使われた場合においても、一方の吸収体の圧搾線から他方の吸収体の圧搾線又は非圧搾領域へと液体の受け渡しが起こる。その理由は次の通りである。すなわち、圧搾線は、吸収体を構成する吸収性材料を圧力で潰したものである。このため、圧搾線が形成された部位において吸収体が液体を吸収すると厚さが変化する。すなわち、圧搾線にあるパルプやSAPが吸液すると、時間をかけてパルプ間の間隔が緩み、またSAPは膨潤するため、圧搾線が徐々に浅くなり、最後には膨潤後の非圧搾領域と厚みがほぼ同じになる。このように、圧搾線は吸収前には深さがあっても吸液が進行するとともに徐々に深さが浅くなる。このため、一方の吸収体の圧搾線からそれに重なる他方の吸収体に設けられた圧搾線又は非圧搾領域に液体を受け渡しやすくなる。つまり、最初の状態で圧搾線は溝となっているため、液体がこの圧搾線に優先して流れ込む。そして、圧搾線が形成された部位は吸液が進むと圧搾線が膨潤するため、前述のとおり、膨潤した圧搾線に重なる他方の吸収体に設けられた圧搾線又は非圧搾領域へと液体が移動する。
このように、第9の実施形態のパターンは、第8の実施形態のパターンと比較して、体液の拡散範囲が広いものであるといえる。これに対して、第8の実施形態のパターンは、第9の実施形態のパターンと比較して、体液の吸収速度が早いものであるといえる。このため、二層の吸収体のそれぞれに圧搾線を形成する場合に、第8の実施形態のパターンと第9の実施形態のパターンのいずれを採用するかは、吸収性物品に求められる性能を考慮して適宜決定すればよい。
なお、各圧搾線41,51の幅、上側非圧搾領域42の長手方向における対角線の長さD1や幅方向における対角線の長さD2、あるいは下側非圧搾領域52の長手方向の長さLや幅Bの値については、前述した第8の実施形態と同様の範囲とすることが好ましい。
[13.第10の実施形態]
続いて、図40から図44を参照して、本発明に係る吸収性物品100の第10の実施形態について説明する。第10の実施形態については、前述した実施形態と同じ構成について説明を省略し、前述した実施形態と異なる構成を中心に説明を行う。
図40は、本発明に係る吸収性物品100の概要を示した斜視図である。図40に示されるように、本発明に係る吸収性物品100は、内部に空間4を有する筒状の立体的形状をなしている。本実施形態では、1つの平面的な矩形状の吸収性本体10の両端の裏面側を合掌合せにして、奥行き方向(D)に沿って延びる空間4を有する筒状に形成している。立体形状をなす吸収性本体10は、着用者の股下に当接する面を有する天面部1と、この天面部1の左右両側から肌非対向面側に向かって延在する左右の側面部2,3(左側面部2及び右側面部3)と、これら左右の側面部2,3の間に形成される空間4を有している。この空間4は、着用者の腹側の端部から背側の端部に至るまで、奥行き方向(D)に沿って貫通したものとなっている。さらに、吸収性本体10の左右の側面部2,3の下端部5には、液不透過性の防漏シート20が取り付けられている。この防漏シート20は、左右の側面部2,3に跨って接合されており、これら側面部2,3を連結する機能をも担っている。また、吸収性本体10の天面部1には、内部の空間4に繋がる貫通孔7が形成されている。
図41は、吸収性物品100の分解斜視図を示し、図42は、吸収性物品の断面図を示している。図40から図42に示されるように、吸収性物品100は、吸収性本体10と、その下部に取り付けられた防漏シート20とを備えている。
図40及び図41に示されるように、吸収体13は、少なくとも左右の側面部2,3に、複数の圧搾線41が形成されている。圧搾線41は、吸収体13を部分的に圧縮することにより形成された線状の凹部である。複数の圧搾線は、複数の平行な圧搾線であるか、又は閉じた領域を画定する複数の圧搾線であることが好ましい。また、複数の圧搾線は、閉じた領域を画定する複数の平行な圧搾線であることが特に好ましい。図40及び図41等に示した実施形態において、圧搾線は格子状に形成されている。また、格子状とは、ある方向に延びる複数に圧搾線の群と、これとは異なる方向に延びる複数の圧搾線の群とが交差している状態を意味する。圧搾線41は、図41等に示したように斜方形格子状のパターンで形成されていてもよいし、その他、正方形格子状のパターンで形成されていてもよい。つまり、格子状の圧搾線41には、図41に示されるように吸収体13を平面状に広げたときに、吸収性物品の幅方向(W)に沿って延びるか、又は幅方向(W)に対して1〜45度の範囲で傾斜した方向に沿って延びるものが含まれる。例えば、圧搾線41が吸収性物品の幅方向に対して傾斜する角度(θ)は、0〜45度の範囲とすることができ、特に30度〜45度、又は35度〜45度であることが好ましい。
また、圧搾線41は、基本的に、吸収体13を肌対向面側から圧縮することによって形成することができる。ただし、圧搾線41は、吸収体13を肌非対向面側から圧縮することにより形成されたものであってもよいし、吸収体13を肌対向面と肌非対向面の両側から圧縮することにより形成されたものであってもよい。このように、圧搾線41は、吸収体13を圧縮した部位であるため、吸収体13は、その圧搾線41が形成された部位(左右の側面部2,3)において強度が向上する。
図40及び図41に示されるように、吸収体13の左右の側面部2,3に格子状の圧搾線41を形成することで、左右の側面部2,3に接触又は浸透した体液がこの圧搾線41に沿って拡散する。これにより、側面部2,3の広い範囲に亘って迅速に体液を吸収することができるため、尿漏れ防止効果を高めることができる。また、吸収性物品100の左右の側面部2,3に相当する部位において、吸収体13に格子状の圧搾線41を形成することで、この左右の側面部2,3の応力が強くなる。このため、吸収生物品100を着用者の両脚の間に挟み込んだ状態であっても、天面部1の形状を維持することができ、左右の側面2,3の間の空間4を保持することができる。これにより、吸収性物品100が着用者の股下及び内太腿により密着しやすくなる。
なお、図40及び図41に示した例において、圧搾線41は、吸収体13の左右の側面部2,3内にのみ形成されている。ただし、本発明において、圧搾線41は、左右の側面部2,3にだけでなく、さらに天面部1に形成されていてもよいし、吸収体13全体に形成されていてもよい。
図41に示されたような展開状態から、外面シート11、内面シート12、及び吸収体13を貼り合わせて吸収性本体10を形成し、この吸収性本体10の幅方向(W)の左右両端を内面シート12側に向かって曲げて、その下端部を防漏シート20によって綴じる。これにより、吸収性本体10と防漏シート20を備える吸収性物品100は、図42に示されたような筒状の立体的形状となる。さらに、図42に示されるように、防漏シート20が、吸収性本体10の下端部5において、左側面部2と右側面部3とに跨って添設されている。このため、防漏シート20は、吸収性本体10の左側面部2と右側面部3とを連結する機能を担っているといえる。
また、図40から図42に示されるように、格子状の圧搾線41は、左右の側面部2,3のうち、少なくとも防漏シート20が取り付けられていない吸液部6に形成されていることが好ましい。吸液部6に格子状の圧搾線41を設けることで、この圧搾線41が防漏シート20の裏側に隠れてしまうことを回避できる。これにより、吸液部6に付着又は浸透した体液が圧搾線41に沿って範囲に拡散する。また、圧搾線41は、吸液部6だけでなく、この吸液部6から防漏シート20が取り付けられた下端部5に亘って連続的に形成されていることが好ましい。すなわち、格子状の圧搾線41は、防漏シート20の縁を超えて、吸液部6から下端部5にまで連続的に延在していることが好ましい。このように、吸液部6から下端部5へと繋がるように圧搾線41が設けられていることで、吸液部6で吸収した体液を、圧搾線41を通じて、防漏シート20の裏に隠れている下端部5へと迅速に導くことができる。下端部5は防漏シート20の裏に隠れているため、この下端部5に体液は浸透しにくいが、圧搾線41がこの下端部5へと体液を運ぶ流路として機能する。これにより、さらに広い範囲に体液を拡散させることができる。
また、図40に示されるように、本実施形態において、左右の側面部2,3は、格子状の圧搾線41が形成された領域である圧搾線形成領域6aと、圧搾線41が形成されていない領域である圧搾線非形成領域6bとに分かれている。本実施形態では、圧搾線形成領域6aが、左右の側面部2,3の下端側に設けられ、圧搾線非形成領域6bが、天面部1(山折り目8)と圧搾線形成領域6aの間に設けられている。圧搾線形成領域6aは、吸収体13が部分的に圧縮されているため肌触りが多少硬くなる。これに対して、圧搾線非形成領域6bは、圧搾線41が存在せず肌触りが比較的柔らかい。そこで、天面部1と圧搾線形成領域6aの間に圧搾線41の設けることで、着用者の股関節付近に接触する吸収性物品100の肌触りを良化することができる。これにより、吸収性物品100の着用感が向上する。また、圧搾線41を形成する領域を左右の側面部2,3の下端側に限定したとしても、吸収体41に浸透した体液は重力に従って下方に流れるため、最終的には圧搾線形成領域6aに到達する。そして、圧搾線形成領域6aに到達した体液は、圧搾線41に沿って広く拡散する。このように、本発明においては、左右の側面部2,3の上側に圧搾線非形成領域6bが設けられ、その下側に圧搾線形成領域6aが設けられている。これにより、体液の拡散性を維持しつつ、例えば左右の側面部2,3全体に圧搾線を形成した場合と比較して着用者に肌に対する刺激が少なくなり、肌触りを良化することができる。
また、圧搾線非形成領域6bの高さ方向(H)における長さは、左右の側面2,3の高さ方向(H)における全体の長さに対して、20%以上であることが好ましい。具体的に、圧搾線非形成領域6bの高さ方向(H)における長さは、20〜70%であることが好ましく、30〜50%であることがより好ましい。このように、圧搾線非形成領域6bの範囲を一定以上確保することで、着用者の股関節付近に接触する部位の肌触りを柔らかくすることができる。
図43は、吸収性物品100を着用者の股下に挟み込んだ状態の例を示している。図43に示されるように、吸収性本体10のうち、平坦面をなす天面部1が着用者の股下に密着し、その左右両側に位置する側面部2,3が着用者の内太腿に密着する。さらに、左右の側面部2,3の間には空間4が保持されているため、吸収性本体10は全体としてクッション性が高いものとなり、股下及び内太腿への密着状態が維持される。これにより、吸収性本体10と着用者の肌との間に隙間が生じにくくなり、側臥位又は半側臥位の姿勢を取っている着用者に装着した場合であっても、天面部1側又は側面部2,3側からの尿漏れを効果的に防止できる。さらに、吸収性本体10の下端部5には防漏シート20が添設されているため、下着や、シーツ、あるいは重ねて装着している使い捨ておむつなどが汚れることを回避できる。また、吸収性物品100の交換時には防漏シート20を持ち手にして引き抜くことで、手を汚させずに簡単に交換作業を済ませることができる。
図44(a)から図44(e)は、第10の実施形態に係る吸収性物品100の製造工程の例を示している。図44では、XLIV−XLIV線における断面図を各図とともに示している。吸収性物品100は、図44(a)から図44(e)に示した手順で製造可能である。すなわち、まず矩形状の外面シート11を用意し、外面シート11の肌非対向面側に、貫通孔7及び格子状の圧搾線41が形成された矩形状の吸収体13を載置する(図44(a))。なお、このとき外面シート11には貫通孔7は形成されていない。次に、吸収体13の肌非対向面側に内面シート12を載置する(図44(b))。このときに、吸収体13の周囲において、外面シート11と内面シート12とを接合する。なお、吸収体13を外面シート11と内面シート12の両方又はいずれか一方に接合してもよい。これにより吸収性本体10が得られる。なお、この段階で外面シート11に貫通孔7は形成されていない。次に、吸収性本体10を、吸収体13に形成された貫通孔7に沿って、内面シート12側に向かって二つ折りする(図44(c))。つまり、外面シート11が外側になり内面シート12が内側になるように二つ折りを行う。このとき、吸収体13の貫通孔7が二つ折りの頂点に位置するようになる。その後、吸収体13の貫通孔7が位置する頂点部分を切り落として、外面シート11と内面シート12にも、吸収体13とほぼ同形状の貫通孔7を形成する(図44(d))。このとき、外面シート11と内面シート12は吸収体13の貫通孔7に重なっているため、吸収体13の貫通孔7と同じ位置を切り落とすことで、外面シート11と内面シート12にも略同時に貫通孔7を形成することができる。その後、吸収性本体10の下端部に相当する位置に、防漏シート20を接合する(図44(e))。このとき、防漏シート20によって、圧搾線41が形成された領域(圧搾線形成領域6a)を部分的に覆うようにする。その他、吸収性物品100を構成する吸収性本体10の適切な位置に、山折り目8を形成する工程を加えてもよい。また、二つ折りの頂点とは反対側の端部(つまり、防漏シート20が配置される側の端部)を、ホットメルト接着剤等によって接着する工程を加えてもよい。
上記の製造工程に従うことで、貫通孔7の形成された吸収性物品100を効率的に製造することができる。また、図44(c)に示されるように、吸収体13に貫通孔7を形成した後に、この貫通孔7に沿って吸収性本体10全体を2つ折りにすることで、吸収性本体10の天面部1に付く折り目を最小限に留めることができる。すなわち、前述のとおり、天面部1は、平坦面となり折り目が残っていないことが好ましいが、製造時に仕方なく生じる折り目を貫通孔7に沿って形成することで、天面部1に付く折り目を最小限に留めることができる。これにより、その着用時には折り目が殆ど天面部1に残っていない状態とすることも可能である。
[14.第11の実施形態]
続いて、図45から図48を参照して、本発明に係る吸収性物品100の第11の実施形態について説明する。第11の実施形態については、前述した第10の実施形態と同じ構成について説明を省略し、第10の実施形態と異なる構成を中心に説明を行う。
図45は、第2の実施形態に係る吸収性物品100の分解斜視図を示し、図46は、第2の実施形態に係る吸収性物品100の断面図を示している。図45及び図46に示されるように、第2の実施形態に係る吸収性物品100は、第10の実施形態で説明した構成要素に加えて、2つの副吸収体14をさらに有している。
図46に示されるように、本実施形態において、副吸収体14は、吸収性本体10の左右の側面部2,3に一つずつに配置されている。特に、2つの副吸収体14は、天面部1及び左右の側面部2,3を構成する主吸収体13の肌非対向面側、すなわち主吸収体13と内側シート12の間に配置されている。なお、各副吸収体14は、主吸収体13と同様に吸収性材料14aとコアラップシート14bから構成すればよい。本実施形態のように、左右の側面部2,3において主吸収体13と副吸収体14とを重ね合わせることで、この側面部2,3における体液の吸収量が増加する。特に、各側面部2,3に配置された副吸収体14によって、天面部1の貫通孔7を通じて空間4内に導入された体液を多量に吸収することができる。このため、本実施形態は、天面部1の貫通孔7に陰茎を差し込んで使用する男性向けの形態であるといえる。なお、図46に示されるように、副吸収体14は、少なくとも左右の側面部2,3の下端部5側において、主吸収体13に重ねて配置されていることが好ましい。ただし、副吸収体14は、左右の側面部2,3の全体に亘って、主吸収体13に重ねて配置されていてもよい。また、図示は省略するが、副吸収体14は、主吸収体13の肌対向面側、すなわち主吸収体13と外面シート11の間に配置することも可能である。
図45及び図46に示されるように、第11の実施形態においては、主吸収体13と副吸収体14のそれぞれに、各吸収体13,14を厚み方向に窪ませた圧搾線41,51が複数形成されている。つまり、圧搾線41,51は、主吸収体13と副吸収体14のそれぞれに複数形成されている。圧搾線41,51は、肌対向面側と肌非対向面側の両側又はいずれか一方側から各圧搾線41,51を部分的に押圧して圧縮することによって形成されたものである。このため、圧搾線41,51が形成された部位においては、各吸収体13,14における吸収性材料13a,14aの密度が高まることとなる。そして、主吸収体13に形成された圧搾線41と副吸収体14に形成された圧搾線51は、平面方向からみたときに少なくとも部分的に互いに交差するパターンをなしている。以下では、主吸収体13に形成された圧搾線41のパターンと、副吸収体14に形成された圧搾線51のパターンについて詳しく説明する。
図47は、主吸収体13と副吸収体14に形成された圧搾線41,51のパターンを重ねた状態を示している。図45や図47に示されるように、主吸収体13には、圧搾線41が斜方形格子状のパターンで形成されている。ここにいう「斜方形格子状のパターン」とは、長手方向及び幅方向に対して傾斜した方向に延びる複数の圧搾線が交差して、斜方形(菱形)の非圧搾領域が区画されるパターンをいう。例えば、図47に示したように、圧搾線が吸収性物品の幅方向に対して傾斜する角度(θ)は、1〜45度の範囲とすることができ、さらに30度〜45度、又は35度〜45度であることが好ましい。特に、本実施形態において、主吸収体13における圧搾線41のパターンは、圧搾線41によって四方を囲われた非圧搾領域42がすべて正斜方形(正菱形)となる規則的なパターン(正斜方形格子状のパターン)となっている。このように、主吸収体13には、複数の圧搾線41と、圧搾線41によって周囲を囲われた非圧搾領域42と、圧搾線41が交差した交点部43が形成されているものと観念することができる。以下では便宜的に、主吸収体13における圧搾線41を「上側圧搾線41」、非圧搾領域42を「上側非圧搾領域42」、交点部43を「上側交点部43」と称する。
一方で、副吸収体14には、圧搾線51が方形格子状のパターンで形成されている。ここにいう「方形格子状のパターン」とは、長手方向と平行に延びる複数の圧搾線と幅方向と平行に延びる複数の圧搾線とが交差して、四角形状の非圧搾領域が区画されるパターンをいう。特に、本実施形態において、副吸収体14における圧搾線51のパターンは、圧搾線51によって四方を囲われた非圧搾領域52がすべて正方形状となる規則的なパターン(正方形格子状のパターン)となっている。このように、副吸収体14においても、複数の圧搾線51と、圧搾線51によって周囲を囲われた非圧搾領域52と、圧搾線51が交差した交点部53が形成されているものと観念することができる。以下では便宜的に、副吸収体14における圧搾線51を「下側圧搾線51」、非圧搾領域52を「下側非圧搾領域52」、交点部53を「下側交点部53」と称する。
また、本実施形態において、上側圧搾線41は、主吸収体13を肌対向面側から圧縮して窪ませることにより形成されたものである。同様に、下側圧搾線51は、副吸収体14を肌対向面側から圧縮して窪ませることにより形成されたものである。このため、副吸収体14に下側圧搾線51が形成された部位には、主吸収体13と副吸収体14を重ねた状態において両者の間に隙間が形成されることとなる。
図47からわかるように、本実施形態において、下側非圧搾領域52の面積は、上側非圧搾領域42の面積よりも大きくなっている。このため、主吸収体13と副吸収体14を重ねたときに、下側非圧搾領域52(正方形)の範囲の中に、上側非圧搾領域42(正斜方形)が収まることとなる。
また、本実施形態では、ある下側非圧搾領域52(正方形)を画定する4辺の下側圧搾線51に、それぞれ、ある上側非圧搾領域42(正斜方形)を画定する4つの上側交点部43が重なっている。このため、図47に示されるように、下側非圧搾領域52(正方形)の範囲に上側非圧搾領域42(正斜方形)がピッタリと収まっていることがわかる。すなわち、下側非圧搾領域52(正方形)の中心(対角線の交点)と、上側非圧搾領域42(正斜方形)の中心(対角線の交点)が一致している。さらに、図47に示したように、下側非圧搾領域52(正方形)の長手方向の長さLは、上側非圧搾領域42(正斜方形)の長手方向に沿った対角線の長さD1とほぼ等しい(L=D1)。また、下側非圧搾領域52(正方形)の幅方向の長さBは、上側非圧搾領域42の幅方向に沿った対角線の長さD2とほぼ等しい(B=D2)。これらの条件を満たすことで、下側非圧搾領域52(正方形)を画定する4辺の下側圧搾線51に、それぞれ、ある上側非圧搾領域42(正斜方形)を画定する4つの上側交点部43が重なることとなる。なお、本願明細書における「ほぼ」とは、±5%の誤差を許容することを意味する。
上記のように、上側圧搾線41のパターン(正斜方形格子状)と下側圧搾線51のパターン(正方形格子状)を形成することで、1つの吸収体に圧搾線を密に形成しなくても、非圧搾領域に効果的に体液を拡散させ、2層の吸収体全体の広い範囲で体液を吸収できる。つまり、主吸収体13の上側圧搾線41に沿って拡散した体液が、副吸収体14の下側非圧搾領域52に吸収されることになる。このため、主吸収体13の上側圧搾線41に沿って拡散した体液が端部に到達しにくくなり、外部へと漏れ出す事態を効果的に防止できる。また、2層の吸収体13,14の広い範囲で体液を吸収できるようになるため、体液の吸収量が向上するとともに、長時間の着用であっても着用者に対して不快感を与えにくい。各吸収体13,14に形成された交点部43,53では、圧搾線41,51が交差しているため、体液が滞留しやすくなっている。そこで、主吸収体13の上側交点部43を副吸収体14の下側圧搾線51に重ねることで、上側交点部43に滞留した体液を下側圧搾線51に導入して、副吸収体14へと効果的に浸透させることが可能となる。
図48は、主吸収体13に形成された圧搾線41のパターンと、副吸収体14に形成された圧搾線51のパターンの変形例を示している。図48に示された変形例では、各吸収体13,14を重ねた状態において、主吸収体13の上側交点部43と副吸収体14の下側交点部53とが重なっている。さらに、主吸収体13における複数の上側交点部43の中には、副吸収体14の下側非圧搾領域52の中心(対角線の交点)と重なるものが存在する。特に、主吸収体13の上側圧搾線41のパターンと副吸収体14の下側圧搾線51のパターンとが重なる範囲においては、全ての下側非圧搾領域52の範囲内に、上側交点部43が存在していることとなる。また、本実施形態では、上側非圧搾領域42の範囲内に下側圧搾線51が重なっていることがわかる。
このように、図48に示した変形例では、上側非圧搾領域42の範囲内に下側圧搾線51が重なり、下側非圧搾領域52の範囲内に上側圧搾線41及び上側交点部43が重なり、且つ、上側交点部43と下側交点部53とが重なっている。従って、主吸収体13の上側圧搾線41に沿って拡散した体液は、副吸収体14に落ちて下側非圧搾領域52に吸収される。また、主吸収体13の上側交点部43に滞留した体液は、副吸収体14に落ち、下側交点部53を通じて下側圧搾線51に沿って拡散する。さらに、副吸収体14の下側圧搾線51に沿って拡散した体液は、主吸収体13の上側非圧搾領域42に吸収される。また、下側圧搾線51は、上側圧搾線41の格子状パターンの対角線方向に体液を拡散することもできる。これにより、このようなパターンを形成することで、従来では吸収時間が遅いとされていた非圧搾領域42,52にも迅速に体液を導くことが可能となる。
このように、図48に示したパターンは、図47のパターンと比較して、体液の吸収速度が早いものであるといえる。これに対して、図47のパターンは、図48のパターンと比較して、体液の拡散範囲が広いものであるといえる。このため、二層の吸収体のそれぞれに圧搾線を形成する場合に、図47と図48のどちらのパターンを採用するかは、吸収性物品に求められる性能を考慮して適宜決定すればよい。
以上、本願明細書では、本発明の内容を表現するために、図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。