上記特許文献1、2記載の吸収性物品では、吸収性物品を長手方向に折り畳む折り線より前側及び後側の領域にそれぞれ、吸収体を増厚した凸条が設けられているが、折り線を含む長手方向中央部には設けられていないため、この長手方向中央部で体液の吸収能力が低下するとともに、幅方向に体液が拡散して側部からの漏れが生じやすくなるという問題があった。すなわち、前側領域に設けられた吸収体の凸条と、後側領域に設けられた吸収体の凸条との間の折り線を含む長手方向中央部で、吸収体の凸条が存在しないため、この長手方向中央部を幅方向に体液が流れやすい構造になっていた。
そこで本発明の主たる課題は、長手方向に折り畳んだ際の厚みを低減するとともに、側部からの漏れを防止した吸収性物品を提供することにある。
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、表面シートと防漏シートとの間に吸収体が介在されるとともに、幅方向に延びる折り線にて長手方向に2つ折りに折り畳まれる吸収性物品において、
前記吸収体の肌側面には、長手方向に沿うとともに幅方向に交互に配置された第1の凸条と第2の凸条とがそれぞれ複数形成され、前記第1の凸条は、前記吸収体の長手方向の一方側端又は一方側端から長手方向の内側に離隔した位置から、前記折り線を跨いで長手方向の他方側の位置まで延びており、前記第2の凸条は、前記吸収体の長手方向の他方側端又は他方側端から長手方向の内側に離隔した位置から、前記折り線を跨いで長手方向の一方側の位置まで又は前記折り線に達しない前記第1の凸条が延びる先端部まで延びていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
上記請求項1記載の発明では、吸収体の肌側面に、長手方向に沿うとともに幅方向に交互に配置された第1の凸条と第2の凸条とがそれぞれ複数形成されている。前記第1の凸条は、吸収体の長手方向の一方側端又は一方側端から長手方向の内側に離隔した位置から、折り線を跨いで長手方向の他方側の位置まで延びている。一方、前記第2の凸条は、吸収体の長手方向の他方側端又は他方側端から長手方向の内側に離隔した位置から、折り線を跨いで長手方向の一方側の位置まで延びるか、前記折り線に達しない前記第1の凸条が延びる先端部まで延びている。このように、本発明に係る吸収性物品では、長手方向に沿う第1の凸条と第2の凸条とが幅方向に交互に配置され、前記第1の凸条及び第2の凸条がそれぞれ所定の長手区間に形成されているため、吸収性物品を前記折り線で長手方向に折り畳んだとき、第1の凸条と第2の凸条とが重なることなく、噛み合うようにしてお互いの隙間部分に入り込むため、折り畳み時の厚みが低減でき、嵩張らなくなる。更に、少なくとも前記第1の凸条が前記折り線を吸収性物品の長手方向の一方側と他方側とに跨がるように配置されているため、前記折り線部分において体液が幅方向に拡散するのが抑制され、少なくとも前記第1の凸条に吸収されるとともに、この第1の凸条に沿って長手方向に拡散しやすくなるため、側部からの漏れが防止できる。
請求項2に係る本発明として、前記第1の凸条及び第2の凸条は、前記折り線から前記折り線を跨いで長手方向の他方側又は一方側の位置まで延出する部分と、この延出部分に対して前記折り線を中心として線対称な部分とを合わせた折り畳み時重なり部が、他の部分より小さな厚みで形成されている請求項1記載の吸収性物品が提供される。
上記請求項2記載の発明では、少なくとも前記第1の凸条が前記折り線を長手方向の一方側から他方側に跨がるように配置されているため、吸収性物品を前記折り線にて折り畳んだとき、折り線から延出した部分とその線対称な部分とが重なることにより、この折り畳み時重なり部の厚みが厚くなる問題があるが、これを防止するため、折り畳み時重なり部の厚みを他の部分より小さな厚みで形成している。
請求項3に係る本発明として、前記折り畳み時重なり部における前記第1の凸条又は第2の凸条の厚みは、他の部分の前記第1の凸条又は第2の凸条の厚みの半分以下に形成されている請求項2記載の吸収性物品が提供される。
上記請求項3記載の発明では、前記折り畳み時重なり部の厚みを他の部分より小さな厚みで形成する際の具体的な形態例であり、この部分の厚みを他の部分の厚みの半分以下で形成している。これによって、吸収性物品を前記折り線にて長手方向に折り畳んだとき、前記折り畳み時重なり部を重ね合わせた厚みが他の部分と同等以下となるため、他の部分と同様に、この部分が嵩張るのが防止できる。
請求項4に係る本発明として、前記折り畳み時重なり部は、前記第1の凸条又は第2の凸条の先端に向かうに従って徐々に厚みが小さくなる傾斜状に形成されている請求項2記載の吸収性物品が提供される。
上記請求項4記載の発明では、前記折り畳み時重なり部の厚みを他の部分より小さな厚みで形成する際の変形例であり、前記第1の凸条又は第2の凸条の先端に向かうに従って徐々に厚みが小さくなる傾斜状に形成することによって、吸収性物品を前記折り線にて長手方向に折り畳んだとき、傾斜状の高い部分と低い部分とが重ね合わさり、全体として他の部分の厚みとほぼ同等となるため、他の部分と同様に、この部分が嵩張るのが防止できる。
請求項5に係る本発明として、前記吸収体の両側部に脚周りカットラインが形成されるとともに、前記折り線が前記脚周りカットラインと交差する位置に設けられ、
両側の前記脚周りカットラインの間に配置される第1の凸条のうち両側の前記第1の凸条は、幅方向外側の側縁が、前記折り線と脚周りカットラインとの交差部を通る位置に配置されている請求項1~4いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
上記請求項5記載の発明では、前記折り線を吸収性物品の長手方向の一方側と他方側とに跨がるように配置される前記第1の凸条の配置位置として、両側の脚周りカットラインの間に配置される第1の凸条のうち両側の第1の凸条は、幅方向外側の側縁を、前記折り線と脚周りカットラインとの交差部を通る位置に配置しているため、この脚周りカットラインからの横漏れがより確実に防止できるようになる。
請求項6に係る本発明として、前記第1の凸条及び第2の凸条のうち、前記折り線から前記折り線を跨いで長手方向の他方側又は一方側の位置まで延出する部分と、この延出部分に対して前記折り線を中心として線対称な部分とを合わせた折り畳み時重なり部の長さが、前記吸収体の厚みの2倍~5倍に形成されている請求項1~5いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
上記請求項6記載の発明では、吸収性物品を前記折り線にて折り畳んだときに前記折り線を跨いで配置された凸条同士が重なる部分の長さとして、前記吸収体の厚みの2倍~5倍に形成しているため、より確実に体液の漏れが防止できるようになる。
請求項7に係る本発明として、前記第1の凸条及び第2の凸条のうち、前記折り線から前記折り線を跨いで長手方向の他方側又は一方側の位置まで延出する部分と、この延出部分に対して前記折り線を中心として線対称な部分とを合わせた折り畳み時重なり部には、幅方向に沿うとともに長手方向に間隔を空けて複数のエンボス部が設けられている請求項1~6いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
上記請求項7記載の発明では、前記折り畳み時重なり部に、幅方向に沿うとともに長手方向に間隔を空けて複数のエンボス部を設けているため、吸収性物品を前記折り線にて長手方向に折り畳む際、このエンボス部を可撓軸として凸条が折り曲げやすくなる。
請求項8に係る本発明として、前記第1の凸条に設けられた前記エンボス部と、前記第2の凸条に設けられた前記エンボス部とは、吸収性物品の幅方向に重ならない位置に形成されている請求項7記載の吸収性物品が提供される。
上記請求項8記載の発明では、前記第1の凸条及び第2の凸条がそれぞれ、前記折り線を跨いで吸収性物品の一方側と他方側とに配置される場合において、前記第1の凸条に設けられた前記エンボス部と、前記第2の凸条に設けられた前記エンボス部とが、吸収性物品の幅方向に重ならない位置に形成されているため、このエンボス部に沿って体液が側方に流れて横漏れが生じるのが防止できるようになる。
以上詳説のとおり本発明によれば、長手方向に折り畳んだ際の厚みが低減できるとともに、側部からの漏れが防止できるようになる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
〔失禁パッドの基本構造の一例〕
本発明に係る失禁パッド1は、図1~図3に示されるように、ポリエチレンシートなどからなる防漏シート2と、肌当接面をなし、尿などを速やかに透過させる表面シート3と、これら両シート2、3間に介装された吸収体4と、失禁パッド1の最外面(非肌当接面)を覆う外装シート5と、前記吸収体4の略側縁部を起立基端とし、かつ少なくとも着用者の排尿口部を含む前後方向の所定の区間内において肌側に突出して設けられた左右一対の立体ギャザーBS、BSを形成するサイド不織布6、6とから主に構成され、かつ吸収体4の周囲においては、その上下端縁部では防漏シート2、表面シート3及び外装シート5の外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4よりも側方に延出している防漏シート2、表面シート3、外装シート5及びサイド不織布6がホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合されている。
前記防漏シート2は、ポリエチレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、近年ではムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。前記防漏シート2としては、プラスチックフィルムと不織布とを積層させたポリラミ不織布を用いてもよい。
次いで、前記表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高で圧縮復元性が高い点で優れている。前記表面シート3に多数の透孔を形成した場合には、体液が速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。不織布の繊維は、長繊維または短繊維のいずれでもよいが、好ましくはタオル地の風合いを出すため短繊維を使用するのがよい。また、エンボス処理を容易とするために、比較的低融点のポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系繊維のものを用いるのがよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド-バイ-サイド型繊維、分割型繊維の複合繊維を好適に用いることもできる。
外装シート5は、防漏シート2を覆って失禁パッド1の外面を布のような外観、肌触りとするものである。外装シート5としては、不織布で形成するのが好ましい。素材繊維は、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができ、加工法は、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、エアスルー法、ニードルパンチ法等を用いて製作することができる。但し、肌触り及び強度を両立できる点でスパンボンド不織布やSMS不織布、SMMS不織布等の長繊維不織布が好ましい。
不織布は一枚で使用する他、複数枚を重ねて使用することもでき、複数枚を重ねて使用する場合は、不織布相互をホットメルト等の接着剤を介して固定するのが好ましい。また、不織布を用いる場合は、その繊維目付けは10~50g/m2、特に15~30g/m2が好ましい。
前記外装シート5の非使用面側(外面)には1または複数条の仮止め層(図示せず)が形成され、身体への装着時に失禁パッド1を下着や紙おむつ等に固定するようにしてもよい。前記仮止め層としては、機械接合式のフック材を用いてもよいし、粘着剤を用いてもよい。前記仮止め層は必要に応じて設けられ、特段設けなくてもよい。
図示例では、外装シート5は吸収体4の幅よりも若干幅が広い程度とされ、両側部が防漏シート2及び表面シート3の側縁を巻き込むようにして表面シート3の肌側にまで延在され、表面シート3の幅方向外側は、この肌側に延在する外装シート5の外面側に表面シート3の両側部表面から延在するサイド不織布6、具体的には尿等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの目的に応じて、適宜の撥水処理または親水処理を施した不織布素材を用いて構成されたサイド不織布6が配設されている。かかるサイド不織布6としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができるが、好ましくはゴワ付き感を無くすとともに、ムレを防止するために、坪量を抑えて通気性を持たせた不織布を用いるのがよい。具体的には、坪量を8~23g/m2として作製された不織布を用いるのが望ましく、かつ体液の透過を確実に防止するためにシリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布が好適に使用される。
前記サイド不織布6の内方側部分はほぼ二重に折り返されるとともに、この二重シート内部に、その高さ方向中間部に1又は複数本の、図示例では3本の糸状弾性伸縮部材7、7…が両端または長手方向の適宜の位置が固定された状態で配設されている。この二重シート部分は前後端部では図3に示されるように、外側に1回折り返して積層された状態で吸収体4側に接着されることによって、少なくとも着用者の排尿口部を含む前後方向の所定の区間内において図2に示されるように、肌側に起立する立体ギャザーBS、BSが左右対で形成されている。
前記失禁パッド1は、製品の個装状態で、幅方向に延びる折り線L(図1参照。)にて、透液性表面シート3側の面を内側にして長手方向に2つ折りに折り畳まれる。前記折り線Lは、失禁パッド1の装着時に着用者の股下部に相当する部位に設けられ、具体的には、吸収体4の両側部に脚周りカットライン8、8が形成される場合には、両側の脚周りカットライン8、8による括れが最も大きくなる位置に設けられるのが好ましく、図1に示される例では、失禁パッド1の長手方向中央部に設けられている。
〔吸収体〕
前記吸収体4は、たとえば綿状パルプと高吸水性ポリマーとにより構成されている。前記高吸水性ポリマーは吸収体4を構成するパルプ中に、例えば粒状粉として混入されている。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。
また、前記吸収体4には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド-バイ-サイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
前記高吸水性ポリマーは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸水性ポリマーは、この種の吸収性物品に使用される粒径のものをそのまま使用でき、平均粒径が1000μm以下、好ましくは未吸収時の粒径が106μm以上のものが全体の99重量%以上、特に150~850μmのものが全体の99重量%以上であるのが望ましい。未吸収時の平均粒径は250~500μm程度であるのが好ましい。また、高吸水性ポリマーは吸収後の平均粒径が未吸収時の平均粒径の3倍以上、具体的には500μm以上であることが望ましい。なお、未吸収時の高吸水性ポリマーの平均粒径は、重量基準粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。この場合における重量基準粒度分布は、JISZ8815-1994に準拠して測定される。すなわち、内径150mm、深さ45mmの710μm、500μm、300μm、150μm及び106μmの目開きのふるいを、目開きの狭いふるいを下にして重ね、一番上の最も目開きの広い710μmのふるいの上に、測定試料50gを入れ、ふるい振動機にて10分間ふるい、各ふるいの上に残った測定試料の重量を測定し、最初の測定試料の重量に基づく各ふるいの上に残った測定試料の重量%を求めることによって測定される。
高吸水性ポリマーの目付け量は、当該吸収体4の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概にはいえないが、50~350g/m2とすることができる。ポリマーの目付け量が50g/m2未満では、吸収量を確保し難くなる。350g/m2を超えると、効果が飽和するばかりでなく、高吸水性ポリマーの過剰によりジャリジャリした違和感を与えるようになる。
前記吸収体4は、パルプおよび高吸水性ポリマーの合計重量に対する高吸水性ポリマーの比率が5~90重量%、特に30~70重量%であるのが好ましい。高吸水性ポリマーの比率が5重量%より小さいと、吸水能力が不足するおそれがある。一方、90重量%より大きいと、高吸水性ポリマーのジャリ感(粒子感)が強く感じられ、使用感が低下する。
前記吸収体4は、形状保持および拡散性向上のために、前記吸収体4の少なくとも肌側面及び非肌側面を、クレープ紙又は不織布などからなる被包シート9で覆うのが好ましい。吸収体4を覆う被包シート9を設ける場合には、結果的に表面シート3と吸収体4との間に被包シート9が介在することになり、前記被包シート9がクレープ紙からなる場合には、吸収性に優れる前記被包シート9によって体液を速やかに拡散させるとともに、吸収体4に吸収した体液の逆戻りを防止するようになる。
前記吸収体4の両側部には幅方向内側に膨出する曲線形状からなる脚周りカットライン8、8を形成するのが好ましい。前記脚周りカットライン8、8を設けることにより、装着時における脚周りへのフィット性が良好となり、体液の漏れが防止できるとともに、ゴワ付き感が軽減して装着感が向上する。前記脚周りカットライン8、8の長手方向の位置は任意であるが、図1に示されるように、長手方向の中央部に設けるのが好ましい。また、曲線の形状も任意であり、図示例では、円弧形状に形成されている。前記失禁パッド1の個装時に、長手方向に折り畳む折り線Lは、両側の脚周りカットライン8、8による括れが最も大きくなる位置に設けるのが好ましい。この位置では、吸収体4の幅が最も狭く、折り曲げ時の抵抗が最も小さくなる。図示例では、前記折り線Lは、失禁パッド1の長手方向中央部に設けられている。
図4に示されるように、前記吸収体4の肌側面には、長手方向に沿うとともに幅方向に交互に配置された第1の凸条10…と第2の凸条11…とがそれぞれ複数形成されている。すなわち、前記吸収体4は、吸収体4のほぼ全面に配置された平板状の下層吸収体4Aと、この下層吸収体4Aの肌側面に配置された前記第1の凸条10…及び第2の凸条11…を形成する上層吸収体4Bとから構成されている。前記第1の凸条10及び第2の凸条11はそれぞれ、下層吸収体4Aの肌側面に肌面に向けて膨出するとともに、失禁パッド1の長手方向に沿って細長く延びた全長に亘ってほぼ等幅に形成された突出部である。前記第1の凸条10及び第2の凸条11は、全てほぼ同じ幅、同じ厚みで形成さするのが好ましい。前記第1の凸条10及び第2の凸条11は、下層吸収体4Aと一体的に積繊して形成したものでもよいし、別途製造した上層吸収体4Bを下層吸収体4Aの肌側面に積層したものでもよい。
前記第1の凸条10及び第2の凸条11を形成する上層吸収体4Bは、下層吸収体4Aより高吸水性ポリマーの含有比率が高いほうがよい。そのときの各ポリマー比率は、上層吸収体4Bが50~90%、下層吸収体4Aが5~50%、上層吸収体4Bと下層吸収体4Aの差が10~85%であるのがよい。
前記第1の凸条10及び第2の凸条11はそれぞれ、2条以上、好ましくは2条~10条、より好ましくは2条~5条程度設けられている。
前記第1の凸条10は、吸収体4の長手方向の背側から前記折り線Lを跨いで長手方向の腹側の中間位置まで延びている。一方、前記第2の凸条11は、図4に示される実施形態例では、吸収体4の長手方向の腹側から前記折り線Lを跨いで長手方向の背側の中間位置まで延びている。より具体的には、前記第1の凸条10は、下層吸収体4Aの長手方向の背側端から、前記折り線Lを跨いで長手方向の腹側に若干越えた、両側に脚周りカットライン8、8が形成された長手区間内に延びている。また、前記第2の凸条11も同様に、下層吸収体4Aの長手方向の腹側端から、前記折り線Lを跨いで長手方向の背側に若干越えた、両側に脚周りカットライン8、8が形成された長手区間内に延びている。一方、前記第1の凸条10の腹側端から該第1の凸条10に沿って下層吸収体4Aの長手方向の腹側端に向けて延長した区域には、下層吸収体4Aの肌側面に凸条が設けられておらず、同様に、前記第2の凸条11の背側端から該第2の凸条11に沿って下層吸収体4Aの長手方向の背側端に向けて延長した区域には、下層吸収体4Aの肌側面に凸条が設けられていない。
本実施形態例に係る失禁パッド1では、着用者の股下部に対応する折り線前後の長手方向の所定区間に、前記第1の凸条10と第2の凸条11とが幅方向に重なるオーバーラップ部12が形成されている。
このように、本失禁パッド1では、長手方向に沿う第1の凸条10と第2の凸条11とが幅方向に交互に配置され、前記第1の凸条10及び第2の凸条11がそれぞれ所定の長手区間に設けられているため、失禁パッド1を折り線Lで長手方向に折り畳んだとき、図6に示されるように、第1の凸条10と第2の凸条11とが重なることなく、噛み合うようにしてお互いの離隔部間に入り込むため、折り畳み時の厚みが低減でき、嵩張らなくなる。
更に、本実施形態例では、前記第1の凸条10及び第2の凸条11がそれぞれ、前記折り線Lを失禁パッド1の長手方向の背側と腹側とに跨がるように配置されているため、前記折り線L部分において体液が幅方向に拡散するのが抑制され、前記第1の凸条10及び第2の凸条11に吸収されるとともに、この第1の凸条10及び第2の凸条11に沿って長手方向に拡散しやすくなるため、側部からの漏れが防止できるようになる。
図4及び図5に示されるように、前記オーバーラップ部12において、隣り合う第1の凸条10と第2の凸条11とは、吸収体4の幅方向に若干の隙間を空けて配置するのが好ましい。隣り合う第1の凸条10と第2の凸条11との間に若干の隙間を設けることにより、図6に示されるように、失禁パッド1を折り線Lで長手方向に折り畳んだとき、これらの凸条10、11がお互いの離隔部間に入り込みやすくなり、折り畳み時の厚みがより確実に低減できるようになる。オーバーラップ部12における隣り合う第1の凸条10と第2の凸条11との隙間は、1~10mm、好ましくは1~5mmとするのがよい。
図4に示される実施形態例では、前記第1の凸条10及び第2の凸条11がそれぞれ、折り線Lを腹側と背側とに跨がるように配置されているため、失禁パッド1を折り線Lで長手方向に折り畳んだとき、前記第1の凸条10及び第2の凸条11はそれぞれ、折り線Lからこの折り線Lを跨いで長手方向の腹側又は背側の中間位置まで延出する部分と、この延出部分に対して前記折り線Lを中心として線対称な部分とが相互に重なるようになる(以下、この折り畳み状態で凸条同士が重なる部分を「折り畳み時重なり部13」という)。すなわち、前記折り畳み時重なり部13の長手方向中央に幅方向に沿って折り線Lが設けられるようになる。前記折り畳み時重なり部13の長さは、折り線Lを跨いで長手方向の腹側又は背側に延出させた部分の長さによって変化するものである。第1の凸条10及び第2の凸条11にそれぞれ折り畳み時重なり部13が形成される場合、第1の凸条10と第2の凸条11とで折り畳み時重なり部13の長さが異なるようにしてもよいが、図示例のように、ほぼ同じ長さで形成するのが好ましい。第1の凸条10と第2の凸条11とで折り畳み時重なり部13の長さを同等とした場合、股下部における第1の凸条10と第2の凸条11とのオーバーラップ部12の全部が折り畳み時重なり部13となる。
前記折り畳み時重なり部13は、前記第1の凸条10及び第2の凸条11のうち、折り線Lを跨ぐ側の先端に所定の長さで形成されている。図7に示されるように、前記折り畳み時重なり部13の凸条10、11に沿った長さAとしては、吸収体4の厚みBの2倍~5倍(A=2B~5B)、より好ましくは3倍程度とするのがよい。これにより、折り線Lを中心としてその前後に所定の長さで折り畳み時重なり部13が形成されるため、体液の幅方向への拡散がより確実に抑えられ、側方からの体液の漏れ防止効果を高めることができるようになる。
前記折り畳み時重なり部13は、失禁パッド1を折り畳んだときの厚みを低減する観点から、図4、図7及び図8に示されるように、他の部分、すなわち前記第1の凸条10では折り畳み時重なり部13より背側に延びる部分、前記第2の凸条11では折り畳み時重なり部13より腹側に延びる部分より、小さな厚みで形成するのが好ましい。
図4及び図7に示される実施形態例では、前記折り畳み時重なり部13における前記第1の凸条10及び第2の凸条11の厚みCは、折り畳み時重なり部13の全長に亘ってほぼ均一に形成されており、他の部分の前記第1の凸条10又は第2の凸条11の厚みDの約半分以下に形成するのが好ましい(C<D/2)。これによって、失禁パッド1を折り線Lで折り畳んだとき、前記折り畳み時重なり部13を半分に折り畳んで重ね合わせた厚みが、他の部分と同等以下となるため、他の部分と同様に、折り畳み時重なり部13が嵩張るのが防止できる。前記折り畳み時重なり部13が全長に亘って他の部分より小さな厚みで形成されることにより、折り畳み時重なり部13と他の部分との間に段差部が形成されるようになる。
前記折り畳み時重なり部13の変形例として、図8に示されるように、前記折り畳み時重なり部13が前記第1の凸条10及び第2の凸条11の先端に向かうに従って徐々に厚みが小さくなる傾斜状に形成してもよい。これによって、折り畳み時重なり部13の長手方向中央に位置する折り線Lで折り畳んだとき、傾斜状の高い部分と低い部分とが重ね合わさり、全体として他の部分の厚みとほぼ同等のフラットな厚みとなるため、他の部分と同様に、折り畳み時重なり部13が嵩張るのが防止できる。また、本形態例では、折り畳み時重なり部13と他の部分との間に段差部が形成されないため、装着感が向上できる。
前記吸収体4の変形例として、図9に示されるように、前記第2の凸条11は、吸収体4の長手方向の腹側において、前記第1の凸条10と幅方向に重ならない長さで形成してもよい。すなわち、前記第1の凸条10を背側から前記折り線Lを跨いで腹側の中間位置まで延びるように形成した上で、第2の凸条11を長手方向の腹側端から前記折り線Lに達しない前記第1の凸条10が延びる先端部又はその近傍まで形成している。このため、前記折り線Lの背側と腹側とを跨いで設けられるのは第1の凸条10のみで、第2の凸条は、折り線Lに達しない腹側の領域のみに設けられている。この場合、前記第2の凸条11は折り線Lを跨いでいないため、第2の凸条11には折り畳み時重なり部13が形成されず、第1の凸条10のみに形成されるようになる。また、第2の凸条11が第1の凸条10と幅方向に重ならない範囲に形成されているため、第1の凸条10と第2の凸条11とのオーバーラップ部12は形成されない。
図9に示される実施形態例では、股下部に第2の凸条11が介在しないため、若干体液の吸収能力が劣るものの、第1の凸条10によって幅方向外側への体液の拡散が抑制され、第1の凸条10に沿って長手方向に体液が拡散しやすくなるため、側方からの漏れが確実に防止できるようになる。
図9に示される実施形態例において、両側の脚周りカットライン8、8間に配置される第1の凸条10…のうち、両側部に配置された第1の凸条10、10はそれぞれ、幅方向外側の側縁が、前記折り線Lと脚周りカットライン8との交差部を通る位置に配置されるようにするのが好ましい。これによって、幅方向外側に流れる体液が前記第1の凸条10によって塞き止められるため、脚周りカットライン8からの漏れがより確実に防止できるようになる。これに対して、図10に示されるように、両側の脚周りカットライン8、8間に配置される第1の凸条10…のうち、両側部に配置された第1の凸条10、10の幅方向外側の側縁が、折り線Lと脚周りカットライン8との交差部から離隔した内側に配置される場合、股下部において両側の第1の凸条10より外側に拡散した体液がそのまま側方から漏れるおそれがあるため、側方からの漏れを必ずしも充分に抑えることができない場合が生じる。前記折り線Lと脚周りカットライン8との交差部と、第1の凸条10の幅方向外側の側縁との間の離隔距離は、0~10mm、好ましくは0~5mm、より好ましくは0mmとするのが望ましい。
また、前記吸収体4の変形例として、図11に示されるように、前記折り畳み時重なり部13に、幅方向に沿うとともに長手方向に間隔を空けて複数のエンボス部14、14…を形成することができる。前記エンボス部14は、第1の凸条10の折り畳み時重なり部13に形成されるとともに、第2の凸条11が折り線Lを腹側から背側に跨いで形成される場合には、この第2の凸条11の折り畳み時重なり部13にも形成されている。前記エンボス部14、14…を設けることにより、失禁パッド1を折り線Lにて長手方向に折り畳む際、このエンボス部14を可撓軸として、第1の凸条10及び第2の凸条11がそれぞれ折り曲げやすくなる。
前記エンボス部14は、第1の凸条10及び第2の凸条11のそれぞれの全幅に亘って連続的又は間欠的に形成されている。前記エンボス部14は、前記第1の凸条10及び第2の凸条11の肌当接面側からの圧搾によって肌当接面側に形成された窪み部からなるものでもよいし、前記第1の凸条10及び第2の凸条11の非肌当接面側からの圧搾によって非肌当接面側に形成された窪み部からなるものでもよい。前記エンボス部14、14のピッチは、第1の凸条10又は第2の凸条11の幅より小さくするのが好ましく、折り畳み時重なり部13のほぼ全長に亘ってほぼ等間隔で3~8箇所程度設けられるようにするのが好ましい。
前記第1の凸条10及び第2の凸条11にそれぞれ折り畳み時重なり部13が形成される場合、前記第1の凸条10に設けられるエンボス部14と、前記第2の凸条11に設けられるエンボス部14とは、失禁パッド1の幅方向に重ならない位置に形成するのが好ましい。つまり、一方の凸条に設けられたエンボス部14の延長線上に他方の凸条に設けられたエンボス部14が位置しないように互い違いに配置するのがよい。これによって、前記エンボス部14に沿って体液が側方に流れやすくなることによって横漏れが生じるのが防止できる。
〔他の形態例〕
上記形態例では、前記第1の凸条10及び第2の凸条11は、下層吸収体4Aの長手方向の背側端又は腹側端とほぼ一致する位置から延びるように形成されていたが、下層吸収体4Aの長手方向の背側端又は腹側端から長手方向の内側に離隔した位置から延びるように形成してもよい。