以下、本発明の窓用部材および車両を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
本発明の窓用部材は、熱可塑性樹脂を含む材料を用いて形成された基材と、この基材の少なくとも一方の面側に設けられたコート層とを有するものであり、JIS K 6735に規定された方法に準拠して測定された加熱収縮率が5%以下であることを特徴とする。
なお、この加熱収縮率は、本明細書中では、特に方向を規定しない場合、窓用部材の面方向に沿って測定される各加熱収縮率のうち、最大値のことを言う。
このように、窓用部材の加熱収縮率が前記上限値以下であれば、窓用部材を曲面形状に熱成形された成形部を備えるものとしても、成形部における、基材とコート層との間での剥離の発生を的確に抑制または防止することができる。その結果、窓用部材を優れた耐候性を備えるものとすることができる。また、窓用部材に印刷を施して印刷面を形成した場合、この印刷面のズレの発生を的確に抑制または防止することができる。
この窓用部材は、熱成形性に優れるものであり、例えば、車両に用いられる車両用窓用部材であり、車両とは、人、または物を乗せて移動や作業をする乗り物全般を指す。例えば、乗用車、トラック、バスのような4輪乗用車、船舶、鉄道車両、飛行機、オートバイ、自転車、3輪スクーター、フォークリフト、工事現場等で所定の作業をする作業車、ゴルフカート、玩具用車両、遊園地の各種乗物等を含むものである。
また、車両用窓用部材とは、車両に乗った人または物と、外部との間に配され、車両に乗った人または物と外部とを、少なくとも一方向において遮る板状の構造体を指し、本発明の窓用部材は、例えば、オートバイ、自転車、ゴルフカート、3輪スクーターおよびフォークリフト等が備える風防板(スクリーン)に適用でき、さらには、その他車両が備える窓部に適用することができる。
さらに、この窓用部材は、車両用窓用部材の他、例えば、ヘルメットおよびゴーグル等の頭部装着物に用いられる風防板(バイザー)等にも、適用することができる。
したがって、車両および頭部装着物を、かかる窓用部材を備えるものとすることで、優れた信頼性を有するものとすることができる。
以下、本発明の窓用部材をオートバイ等が備える風防板(車両用風防板)に適用した場合ついて詳述する。
<<第1実施形態>>
まず、本発明の窓用部材を風防板に適用した第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の窓用部材を風防板に適用した第1実施形態を示す図((a)平面図、(b)側面図、(c)図1(a)中のA−A線断面図)である。なお、以下では、説明の都合上、図1(a)の紙面手前側を「前」、紙面奥側を「後」、左側を「左」、右側を「右」、上側を「上」、下側を「下」と言い、図1(b)の紙面手前側を「右」、紙面奥側を「左」、左側を「前」、右側を「後」、上側を「上」、下側を「下」と言い、図1(c)の紙面手前側を「下」、紙面奥側を「上」、左側を「左」、右側を「右」、上側を「前」、下側を「後」と言う。
第1実施形態の風防板100は、図1に示すように、上下方向に長尺に形成された本体部(中央部)151と、本体部151の下側で、それぞれ、左右方向に突出する2つの側面部152と、側面部152を本体部151に連結する連結部153とを有しており、その全体形状が左右対称な形状をなしている。
本体部151は、風防板100のほぼ中央に位置し、上下方向(一方向に直交する方向)に長尺な形状をなしており、その下側でオートバイ等の本体に固定され、人(操縦者)は、この本体部151を介して、前方に位置するものを視認する。
この本体部151において、上面は、湾曲凸面で構成され、後面は、湾曲凹面で構成されており、これにより、本体部151は、前面側に突出して湾曲する湾曲形状(曲面形状)をなしている。また、本体部151において、この湾曲形状は、左右方向(一方向)に沿って形成されている。
2つの側面部152は、本体部151の下側で、それぞれ、左右方向に突出するように1つずつ形成され、オートバイ等の走行時に、側面側からの風の巻き込みを抑制するために設けられる。
この側面部152において、本体部151と同様に、上面は、湾曲凸面で構成され、後面は、湾曲凹面で構成されており、これにより、側面部152は、前面側に突出して湾曲する湾曲形状(曲面形状)をなしている。また、側面部152において、この湾曲形状は、左右方向に沿って形成されている。
2つの連結部153は、本体部151と、2つの側面部152との間に、それぞれ、介在してこれら同士を連結している。
この連結部153において、上面は、湾曲凹面で構成され、後面は、湾曲凸面で構成されており、これにより、連結部153は、後面側に突出して湾曲する湾曲形状(曲面形状)をなしている。また、連結部153において、この湾曲形状は、左右方向に沿って形成されている。
なお、風防板100は、後述する風防板の製造方法で詳述するように、1つの平板を成形することで形成される。そのため、風防板100を構成する各部151〜153は、一体的に形成されている。
かかる構成の風防板100は、図1(c)に示すように、熱可塑性樹脂を含む材料を用いて形成された基材1と、この基材1の前面側に設けられたコート層2とを有している。すなわち、コート層2は、基材1の前面(一方の面)側に選択的に設けられている。
このような本実施形態の風防板100では、風防板100が備える、本体部151、側面部152および連結部153が、曲面形状に成形された成形部を構成する。
このように、成形部を、本実施形態では、本体部151、側面部152および連結部153が構成するが、この風防板100は、JIS K 6735に規定された方法に準拠して測定された加熱収縮率が5%以下となっている。そのため、本体部151、側面部152および連結部153における、基材1とコート層2との間での剥離の発生を的確に抑制または防止することができる。その結果、風防板100を優れた耐候性を備えるものとすることができる。また、風防板100に印刷を施して印刷面を形成した場合においても、この印刷面のズレの発生を的確に抑制または防止することができる。
この加熱収縮率は、5%以下となっていれば良いが、3%以下であることが好ましく、1%以下0.01%以上であることがより好ましい。これにより、前記効果をより顕著に発揮させることができる。
また、本体部151、側面部152および連結部153において、前述の通り、曲率半径が最も小さくなっている湾曲形状は、左右方向に沿って形成されている。この場合、上下方向(一方向に直交する方向)における前記加熱収縮率が5%以下となっていることが好ましく、かつ、この際、左右方向(一方向)における加熱収縮率は、上下方向における前記加熱収縮率よりも小さい値で5%以下となっていることがより好ましい。湾曲形状が左右方向に形成されている本体部151、側面部152および連結部153に対して、5%以下となっている加熱収縮率の関係を、上記のように設定することにより、風防板100の形成の際に、基材1とコート層2との間において、剥離が発生するのをより的確に抑制または防止することができる。
かかる観点から、上下方向における加熱収縮率をC[%]とし、左右方向における加熱収縮率をD[%]としたとき、C>Dを満足して、C−Dは、0.1%以上4.9%以下であるのが好ましく、0.1%以上1.9%以下であるのがより好ましい。これにより、風防板100の形成の際に、基材1とコート層2との間において、剥離が発生するのをより的確に抑制または防止することができる。
また、風防板100は、前述の通り、基材1とコート層2とを有しており、これらの積層体で構成されるが、以下、基材1およびコート層2についてそれぞれ説明する。
<コート層>
コート層2(ハードコート層)は、本実施形態では、図1(c)に示すように、基材1の前面に形成され、樹脂組成物を用いて形成されたものであり、風防板100に優れた耐候性、耐久性、耐擦傷性、熱成形性を付与するために設けられたものである。
このように、風防板100において、基材1の前面(一方の面)にコート層2が形成される場合、この風防板100を車両用風防板に適用した際には、オートバイ等(車両)を利用する人に対して、基材1を人側、コート層2を車両の外側にして配置することが好ましい。より具体的には、風防板100を、コート層2は、前面に設けられることが好ましい。
このコート層2を形成するために用いられる樹脂組成物は、本実施形態では、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂を含む。このように樹脂組成物が、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂を含むことにより、コート層2の表面硬度が高くなり、優れた耐擦傷性、さらには、優れた耐候性を風防板100に付与することができる。
また、このシリコン変性(メタ)アクリル樹脂を含む樹脂組成物の種類を適宜選択することにより、後述するような、加熱収縮率が5%以下となっている基材1を用いた場合、この基材1を備える風防板100の加熱収縮率をより小さくできる。すなわち、コート層2は、このものを形成するために用いられる樹脂組成物の種類を適宜選択することにより、基材1が加熱収縮することに起因して生じる風防板100の加熱収縮率を低下させるための層としても機能するが、その詳細な説明については、後に行うこととする。
以下、このコート層2を形成するために用いられる樹脂組成物について詳述する。
(シリコン変性(メタ)アクリル樹脂)
シリコン変性(メタ)アクリル樹脂(シロキサン変性(メタ)アクリレート)は、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来する構成単位が繰り返された主鎖と、この主鎖に連結し、シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体(副鎖)とを有するポリマー(プレポリマー)である。
すなわち、主鎖としての(メタ)アクリル系化合物と、副鎖としてのシロキサン結合(−Si−O−Si−)を有する化合物とが連結したポリマー(プレポリマー)である。
シリコン変性(メタ)アクリル樹脂は、前記主鎖を有することにより、コート層2に優れた透明性を付与し、また、前記シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体を有することにより、コート層2に優れた耐擦傷性および耐候性を付与することができる。
シリコン変性(メタ)アクリル樹脂の主鎖としては、具体的には、下記式(1)および式(2)の少なくとも一方の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーに由来する構成単位の繰り返しで構成されているものが挙げられる。
(式(1)中、nは、1以上の整数を示し、R1は、独立して炭化水素基、有機基、または水素原子を示し、R0は、独立して炭化水素基または水素原子を示す。)
(式(2)中、mは、1以上の整数を示し、R2は、独立して炭化水素基、有機基、または水素原子を示し、R0は、独立して炭化水素基または水素原子を示す。)
(式(12)中、m、nは、1以上の整数を示し、R1、R2、R3は、それぞれ独立して炭化水素基、有機基、または水素原子を示し、R0は、独立して炭化水素基または水素原子を示す。)
また、前記主鎖の末端または側鎖には、水酸基(−OH)を有することが好ましい。すなわち、前記式(1)、式(2)または式(12)の場合には、R1および/またはR2が水素であることが好ましい。これにより、後述する基材1としてポリカーボネート系樹脂を用いた場合には、コート層2とポリカーボネート系樹脂との密着性を向上させることができる。したがって、コート層2の基材1に対する密着性が高まることから、平板を湾曲させることにより熱成形して風防板100を構成する本体部(中央部)151、側面部152および連結部153を形成する際に、基材1からコート層2が不本意に剥離することを防ぐことができる。そのため、風防板100の耐擦傷性および耐候性のさらなる向上を図ることができる。また、樹脂組成物中に後述するイソシアネート(イソシアネート基を有する硬化剤)が含まれる場合には、前記水酸基は硬化剤が有するイソシアネート基と反応してウレタン結合による架橋構造を形成する。これより、樹脂組成物の硬化を促進させることができ、コート層2の形成に寄与することができる。
また、かかる構成の主鎖の少なくとも1つの末端または側鎖には、シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体(副鎖)が結合している。
シロキサン結合は、結合力が高いため、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂が、シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体を有することにより、耐熱性、耐候性がより良好なコート層2を得ることができる。また、シロキサン結合の結合力が高いことで、硬質なコート層2を得ることができるため、風防板100の砂ほこりや飛び石等の衝撃に対する耐擦傷性をさらに増大させることができる。
シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体としては、具体的には、下記式(3)および式(4)の少なくとも一方のシロキサン結合を有する構成単位の繰り返しで構成されているものが挙げられる。
(式(3)中、X
1は、炭化水素基または水酸基を示す。)
(式(4)中、X
2は、炭化水素基または水酸基を示し、X
3は、炭化水素基または水酸基から水素が離脱した2価の基を示す。)
前記シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体としては、具体的には、ポリオルガノシロキサンを有するものや、シルセスキオキサンを有するものが挙げられる。なお、シルセスキオキサンの構造としては、ランダム構造、籠型構造、ラダー構造(はしご型構造)等、いかなる構造であってもよい。
前記炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等のアルキル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基、2−メチルフェニル基等のアリール基、ベンジル基、ジフェニルメチル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基、フェニル基、ビフェニル基等が挙げられる。
また、シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体の末端または側鎖には、不飽和二重結合が導入されていることが好ましい。これにより、樹脂組成物中に後述するウレタン(メタ)アクリレートが含まれる場合、このウレタン(メタ)アクリレートが有する(メタ)アクリロイル基と結合して、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂とウレタン(メタ)アクリレートとのネットワークを形成することができる。そのため、コート層2において、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂とウレタン(メタ)アクリレートとがより均一に分散し、その結果、コート層2は、前述した特性をその全体にわたってより均一に発現することができる。
前記樹脂組成物中におけるシリコン変性(メタ)アクリル樹脂の含有量は、特に限定されないが、前記樹脂組成物100質量部中、5質量部以上45質量部以下であることが好ましく、11質量部以上28質量部以下であることがより好ましい。前記樹脂組成物中におけるシリコン変性(メタ)アクリル樹脂の含有量が前記下限値未満であると、前記樹脂組成物により得られたコート層2の硬さが低下する場合がある。また、前記樹脂組成物中におけるシリコン変性(メタ)アクリル樹脂の含有量が前記上限値を超えると、前記樹脂組成物中におけるシリコン変性(メタ)アクリル樹脂以外の材料の含有量が相対的に減ってしまい、前記樹脂組成物を用いて形成されたコート層2の撓み性が低下してしまう可能性がある。
以上のような構成を有するシリコン変性(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、下記式(5)、式(6)で表される化合物が挙げられる。
(式(5)中、Meは、メチル基を示し、m、n、pは、それぞれ1以上の整数を示す。)
(式(6)中、Meは、メチル基を示し、m、n、pは、それぞれ1以上の整数を示し、R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立して炭化水素基、有機基、または水素原子を示す。)
(ウレタン(メタ)アクリレート)
また、樹脂組成物は、さらに、ウレタン(メタ)アクリレートを含むものであることが好ましい。
シリコン変性(メタ)アクリル樹脂が備える、シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体の末端または側鎖に不飽和二重結合が導入されている場合、樹脂組成物中にウレタン(メタ)アクリレートが含まれることで、このウレタン(メタ)アクリレートが有する(メタ)アクリロイル基と不飽和二重結合とが結合して、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂とウレタン(メタ)アクリレートとのネットワークが形成される。その結果、樹脂組成物が硬化して硬化物が得られることにより、この硬化物で構成されるコート層2が形成される。なお、この(メタ)アクリロイル基と不飽和二重結合とが結合することによる樹脂組成物の硬化は、樹脂組成物を紫外線のようなエネルギー線を照射することにより硬化する光硬化により行われる。
以上のようにして形成されるコート層2において、ウレタン(メタ)アクリレートが含まれることにより、コート層2の柔軟性を向上させることができる。そのため、平板を湾曲させることにより熱成形して風防板100を構成する本体部(中央部)151、側面部152および連結部153を形成する際に、コート層2表面におけるクラックの発生を的確に抑制することができることから、風防板100に優れた熱成形性を付与することができる。
さらに、上述したシリコン変性(メタ)アクリル樹脂と、このウレタン(メタ)アクリレートとの組み合わせとすることにより、優れた耐擦傷性と熱成形性とを高度に両立した風防板100を得ることができる。
このウレタン(メタ)アクリレートは、ウレタン結合(−OCONH−)を有する主鎖と、この主鎖に連結した(メタ)アクリロイル基とを有する化合物のことを言う。また、ウレタン(メタ)アクリレートは、モノマーまたはオリゴマーである。
かかる構成のウレタン(メタ)アクリレートは、ウレタン結合を有するため、柔軟性に優れた化合物である。このため、コート層2がウレタン(メタ)アクリレートを含むことで、コート層2にさらなる撓み性(柔軟さ)を付与することができる。そのため、熱成形して風防板100を構成する本体部151、側面部152および連結部153を形成する際に生じる湾曲部におけるクラックの発生を的確に抑制することができる。
また、ウレタン(メタ)アクリレート1分子中の(メタ)アクリロイル基の数は、2個以上であることが好ましい。前記ウレタン(メタ)アクリレート1分子中の(メタ)アクリロイル基の数が2個以上であると、ウレタン(メタ)アクリレートがシリコン変性(メタ)アクリル樹脂と結合してネットワークを形成することができるため、コート層2の硬化を促進することができる。これにより、コート層2の架橋密度があがり、コート層2の硬さをある程度高めることができる。このため、コート層2の耐擦傷性や耐溶剤性、さらには耐候性等の特性を向上させることができる。
なお、このウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリオールとジイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート化合物と、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーとの反応生成物として得ることができる。
また、ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートジオールが挙げられる。
ポリエーテルポリオールは、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エチレンオキシド−プロピレンオキシドランダム共重合で、数平均分子量が1300未満のものが好ましい。数平均分子量が1300以上のポリエーテルポリオールを用いた場合には、ポリエーテルポリオールの種類等によっては、コート層2の柔軟さが高すぎて、砂ほこりや飛び石等の衝撃によってコート層2に擦り傷等が付きやすくなるおそれがある。
また、ポリエステルポリオールは、例えば、ジオールとジカルボン酸もしくはジカルボン酸クロライドとを重縮合反応させたり、ジオールまたはジカルボン酸をエステル化して、エステル交換反応させたりすることにより得ることができる。ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等が挙げられ、ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール等が挙げられる。
さらに、ポリカーボネートジオールとしては、1,4−ブタンジオール、1,6−へキサンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、ポリオキシエチレングリコール等が用いられ、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーの例として、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート等が挙げられる。
さらに、ウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、特に限定されないが、1.0×103以上2.0×103以下であることが好ましく、1.1×103以上1.5×103以下であることがより好ましい。ウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量が、前記範囲内であることにより、コート層2の撓み性と硬さとのバランスが良好なものとなり、熱成形により風防板100を構成する本体部(中央部)151、側面部152および連結部153を形成する際に生じる曲げ部におけるクラックの発生を抑制することができる。
なお、ウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、例えば、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により測定することができる。
また、樹脂組成物中におけるウレタン(メタ)アクリレートの含有量は、特に限定されないが、前記樹脂組成物100質量部中、10質量部以上75質量部以下であることが好ましく、17質量部以上50質量部以下であることがより好ましい。樹脂組成物中におけるウレタン(メタ)アクリレートの含有量が、前記下限値未満であると、ウレタン(メタ)アクリレートの種類によっては、コート層2の柔軟性が乏しくなるおそれがある。また、樹脂組成物中におけるウレタン(メタ)アクリレートの含有量が前記上限値を超えると、ウレタン(メタ)アクリレートの種類によっては、樹脂組成物中におけるウレタン(メタ)アクリレート以外の材料の含有量が相対的に減少し、風防板100の耐擦傷性が低下するおそれがある。
((メタ)アクリレートモノマー)
また、樹脂組成物は、さらに(メタ)アクリレートモノマーを含むものであることが好ましい。
シリコン変性(メタ)アクリル樹脂が備える、シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体の末端または側鎖に不飽和二重結合が導入されている場合、樹脂組成物中に(メタ)アクリレートモノマーが含まれることで、この(メタ)アクリレートモノマーが有する(メタ)アクリロイル基と不飽和二重結合とが結合して、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂と(メタ)アクリレートモノマーとのネットワークが形成され、その結果、樹脂組成物が硬化することでコート層2が形成される。
以上のようにして形成されるコート層2において、基材1とコート層2との密着性が向上する。そのため、熱成形により風防板100を構成する本体部(中央部)151、側面部152および連結部153を形成する際に、コート層2の基材1からの剥離が生じにくくなる。また、コート層2の表面硬度が高くなり、その結果、コート層2に優れた耐擦傷性を付与することができる。さらに、(メタ)アクリレートモノマーは、反応性希釈剤としての機能も果たすため、樹脂組成物の粘度を低下させ、樹脂組成物中に含まれる他の構成材料を(メタ)アクリレートモノマー中に均一に分散させる機能を発揮する。
(メタ)アクリレートモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化水添ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、イソボロニルアクリレート等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、風防板100の耐候性を向上させる観点から、芳香族を含まない樹脂であることが好ましい。
なお、これらのうち、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートモノマーを用いることにより、樹脂組成物から得られるコート層2において、多官能(メタ)アクリレートモノマー同士が架橋され、三次元架橋構造を形成することに起因して、コート層2の硬度がより高くなる。その結果、コート層2により優れた耐擦傷性を付与することができる。
また、2個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートモノマーは、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートモノマーと比較して低粘度であるため、樹脂組成物の希釈剤として寄与する。このため、2個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートモノマーを含むことにより、樹脂組成物のさらなる低粘度化を図ることができ、樹脂組成物の取扱性をより向上させることができる。
樹脂組成物中における(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、特に限定されないが、前記樹脂組成物100質量部中、15質量部以上55質量部以下であることが好ましく、27質量部以上55質量部以下であることがより好ましい。
樹脂組成物中における(メタ)アクリレートモノマーの含有量が前記下限値未満の場合、(メタ)アクリレートモノマーの種類によっては、基材1とコート層2の密着性が不足するおそれがある。そのため、熱成形により風防板100を構成する本体部(中央部)151、側面部152および連結部153を形成する際にコート層2が基材1から剥離しやすくなるおそれがある。さらには、コート層2の架橋密度が低下する場合があり、風防板100の耐擦傷性が低下するおそれがある。また、樹脂組成物中における(メタ)アクリレートモノマーの含有量が前記上限値超える場合、(メタ)アクリレートモノマーの種類によっては、熱成形する際にコート層2が伸びずに割れてしまう可能性がある。
(イソシアネート)
また、樹脂組成物は、さらにイソシアネートを含むものであることが好ましい。
これにより、樹脂組成物中において、イソシアネートは、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂を分子間で結合(架橋)させる架橋剤として機能する。すなわち、架橋剤としてのイソシアネートが含まれることで、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂が備える、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来する構成単位が繰り返された主鎖が備える水酸基と、イソシアネートが有するイソシアネート基とが反応してウレタン結合で構成された架橋構造が形成され、その結果、樹脂組成物の硬化物で構成されるコート層2が形成される。なお、この水酸基とイソシアネート基とが結合することによる樹脂組成物の硬化は、樹脂組成物を加熱することにより硬化する熱硬化により行われる。
以上のようにして形成されるコート層2において、水酸基とイソシアネート基とが結合することにより形成されるネットワークを構築することができるため、コート層2の耐擦傷性および耐候性をより向上させることができる。
このイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート等が挙げられ、特に、イソシアネート基を3個以上有する多官能イソシアネートも含むことがより好ましい。これにより、コート層2の耐擦傷性および耐候性をさらに向上させることができる。
樹脂組成物中におけるイソシアネートの含有量は、特に限定されないが、前記樹脂組成物100質量部中、3質量部以上40質量部以下であることが好ましく、10質量部以上25質量部以下であることがより好ましい。樹脂組成物中におけるイソシアネートの含有量が、前記下限値未満であると、イソシアネートの種類によっては、コート層2の耐擦傷性が低下するおそれがある。また、樹脂組成物中におけるイソシアネートの含有量が前記上限値を超えると、イソシアネートの種類によっては、イソシアネートの未反応物が不純物として塗膜に残るため、塗膜から得られるコート層2の耐擦傷性および耐久性(塗膜の密着性)が低下してしまうおそれがある。
(その他の材料)
さらに、樹脂組成物には、上述した各種材料以外に、その他の材料が含まれていてもよい。
その他の材料としては、特に限定されないが、例えば、前記シリコン変性(メタ)アクリル樹脂以外の樹脂材料、光重合開始剤、紫外線吸収剤、着色剤、増感剤、安定剤、界面活性剤、酸化防止剤、還元防止剤、帯電防止剤、表面調整剤、親水化添加剤、充填材および溶剤等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
((紫外線吸収剤))
なお、樹脂組成物は、さらに、紫外線吸収剤を含むことにより、樹脂組成物から得られるコート層2の耐候性をより優れたものとすることができる。
この紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、トリアジン系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系の紫外線吸収剤が挙げられ、これらのうち1種または2種を組み合わせて用いることができる。これらの中でも特に、トリアジン系の紫外線吸収剤が好ましく用いられ、トリアジン系の紫外線吸収剤の中でも、ヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤がより好ましい。ここで、ヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤は水酸基を備えるものである。そのため、樹脂組成物中に架橋剤として機能するイソシアネートを含む場合、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂が有する水酸基と、イソシアネートが有するイソシアネート基とが反応して形成されるウレタン結合で構成された架橋構造(ネットワーク構造)中に、ヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤も組み込まれることになる。すなわち、樹脂組成物から得られるコート層2中に強固に保持されることとなる。そのため、コート層2の紫外線による劣化に起因する紫外線吸収剤のコート層2からの漏出(ブリードアウト)をより確実に防止または抑制することができ、風防板100の耐候性をより増大させることができる。
また、樹脂組成物中における前記紫外線吸収剤の含有量は、樹脂組成物中に必須成分として含まれるシリコン変性(メタ)アクリル樹脂と、選択成分として含まれるウレタン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレートモノマーおよびイソシアネートとを合わせて主成分としたとき、特に限定されないが、前記樹脂組成物の前記主成分100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下であるのが好ましく、1質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。主成分に対する紫外線吸収剤の含有量が前記下限値未満であると、紫外線吸収剤の種類によっては、コート層2の耐候性が低下するおそれがある。また、主成分に対する紫外線吸収剤の含有量が前記上限値を超えても、それ以上の耐候性の向上は見られず、紫外線吸収剤の種類によっては、コート層2の透明性や、コート層2の基材1に対する密着性を損ねるおそれがある。
((光重合開始剤))
また、樹脂組成物は、さらに、光重合開始剤を含むことにより、樹脂組成物中にウレタン(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリレートモノマーのうちの少なくとも一方を含む場合、樹脂組成物を光重合により硬化させることで得られるコート層2の硬化度をより優れたものとすることができる。そのため、コート層2を、より優れた耐擦傷性を有するものとすることができる。
この光重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインまたはベンゾインアルキルエーテル類、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸等の芳香族ケトン類、ベンジル等のアルファ−ジカルボニル類、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール等のベンジルケタール類、アセトフェノン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパノン−1等のアセトフェノン類、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン等のアントラキノン類、2,4−ジメチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のフォスフィンオキサイド類、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等のアルファ−アシルオキシム類、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等のアミン類等が挙げられ、これらの中でも特に、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパノン−1等のアセトフェノン類であることが好ましい。これにより、樹脂組成物の硬化を、光重合により、より迅速に進行させることができる。
また、樹脂組成物中における光重合開始剤の含有量は、特に限定されないが、前記樹脂組成物の前記主成分100質量部に対して、0.5質量部以上15質量部以下であるのが好ましく、1質量部以上10質量部以下であるのがより好ましい。主成分に対する光重合開始剤の含有量が前記下限値未満であると、光重合開始剤の種類によっては、樹脂組成物を十分に硬化させることが難しい場合があり、また、主成分に対する光重合開始剤の含有量が前記上限値を超えても、それ以上の向上は見られない。
((表面調整剤))
さらに、表面調整剤は、塗膜の基材への濡れ性や均一性、表面の平滑性および硬化した塗膜の表面スリップ性の向上を目的として添加されるものであり、例えばフッ素系、変性シリコーン系、アクリル系の調整剤を使用することができる。中でも、フッ素系および変性シリコーン系のうちの少なくとも一方を含むものが好ましい。これらは、ポリエーテル変性体、アルキル変性体、ポリエステル変性体から構成されているものが好ましく、特にポリエーテル変性体から構成されているものがより好ましい。
また、溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール、メチルエチルケトン、2−ぺンタノン、イソホロン、ジイソブチルケトンなどのケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸メトキシプロピルなどのエステル、エチルセロソルブなどのセロソルブ系溶剤、メトキシプロパノール、エトキシプロパノール、メトキシブタノールなどのグリコール系溶剤などが挙げられる。これらは単独または混合して使用することができる。これらの中でも、アルコール系、セロソルブ系、グリコール系は前記樹脂組成物中のイソシアネートと反応してしまう可能性があるため、単独で使用しないことが望ましい。溶剤の主成分として炭化水素系、ケトン系、エステル系を使用することがより好ましい。
以上のような樹脂組成物の硬化物で構成されるコート層2の平均厚さは、特に限定されないが、1μm以上50μm以下であることが好ましく、2μm以上30μm以下であることがより好ましく、5μm以上20μm以下であることがさらに好ましい。コート層2の厚さが前記下限値未満であると、風防板100の耐候性が低下する場合がある。一方、コート層2の厚さが前記上限値を超えると、熱成形して風防板100を構成する本体部151、側面部152および連結部153を形成する際に生じる湾曲部においてクラックが発生する場合がある。
<基材>
基材1は、熱可塑性樹脂を含む材料を用いて形成されたものであり、風防板100に軽量性、透明性、加工性および割れにくさ(耐衝撃性)と割れた場合の安全性を付与するものである。
熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアセタール樹脂等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、特にポリカーボネート系樹脂であるのが好ましい。ポリカーボネート系樹脂の硬化物は、透明性(透光性)や剛性等の機械的強度に富むため、基材1にポリカーボネート系樹脂を用いることで、風防板100の透明性や耐衝撃性を向上させることができる。また、ポリカーボネート系樹脂は、その比重が1.2程度であり、樹脂材料のなかでも軽いものに分類されることから、基材1を、ポリカーボネート系樹脂を主材料として構成されるものとすることで、基材1ひいては風防板100の軽量化が図られる。さらに、コート層2に含まれるシリコン変性(メタ)アクリル樹脂が水酸基を有する場合、ポリカーボネート系樹脂を含む基材1とコート層2との間の密着性を向上させることができるため、基材1からコート層2が不本意に剥離することを防ぐことができる。その結果、風防板100の耐擦傷性および耐候性のさらなる向上が図られる。また、基材1にポリカーボネートが含まれることで、後述する方法を適用して基材1を製造することで、基材1ひいては風防板100の前記加熱収縮率を比較的容易に5%以下に設定することができる。
このポリカーボネート系樹脂としては、特に限定されず、各種のものを用いることができるが、中でも、芳香族系ポリカーボネート系樹脂であることが好ましい。芳香族系ポリカーボネート系樹脂は、その主鎖に芳香族環を備えており、これにより、基材1の強度をより優れたものとすることができる。
この芳香族系ポリカーボネート系樹脂は、例えば、ビスフェノールとホスゲンとの界面重縮合反応、ビスフェノールとジフェニルカーボネートとのエステル交換反応等により合成される。
ビスフェノールとしては、例えば、ビスフェノールAや、下記式(1A)に示すポリカーボネートの繰り返し単位の起源となるビスフェノール(変性ビスフェノール)等が挙げられる。
(式(1A)中、Xは、炭素数1〜18のアルキル基、芳香族基または環状脂肪族基であり、RaおよびRbは、それぞれ独立して、炭素数1〜12のアルキル基であり、mおよびnは、それぞれ0〜4の整数であり、pは、繰り返し単位の数である。)
なお、前記式(1A)に示すポリカーボネートの繰り返し単位の起源となるビスフェノールとしては、具体的には、例えば4,4’−(ペンタン−2,2−ジイル)ジフェノール、4,4’−(ペンタン−3,3−ジイル)ジフェノール、4,4’−(ブタン−2,2−ジイル)ジフェノール、1,1’−(シクロヘキサンジイル)ジフェノール、2−シクロヘキシル−1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、2,3−ビスシクロヘキシル−1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
特に、ポリカーボネート系樹脂としては、ビスフェノールに由来する骨格を有するビスフェノール型ポリカーボネート系樹脂を主成分とするのが好ましい。かかるビスフェノール型ポリカーボネート系樹脂を用いることにより、基材1は、さらに優れた強度を発揮するものとなる。
また、基材1中のポリカーボネート系樹脂の含有量は、特に限定されないが、前記基材100質量部中、75質量部以上であるのが好ましく、85質量部以上であるのがより好ましい。ポリカーボネート系樹脂の含有量を上記範囲内とすることにより、基材1を、優れた強度を発揮するものとすることができる。
また、基材1は、必要に応じて、上述した、熱可塑性樹脂の他に、例えば、酸化防止剤、着色剤、フィラー、可塑剤、紫外線吸収剤、熱線吸収剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
また、基材1には、コート層2との密着性を向上させる目的で、サンドブラスト法や溶剤処理法等による表面の凹凸化処理、あるいは、コロナ放電処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理、電子線照射処理等の表面の酸化処理が施されていてもよい。
この基材1は、風防板100において、後述するような風防板100の製造方法を適用することにより、本実施形態では、JIS K 6735に規定された方法に準拠して測定された加熱収縮率が5%以下のものが用いられている。これにより、風防板100の加熱収縮率を確実に5%以下に設定することができる。そのため、風防板100において、基材1とコート層2との間で剥離が発生するのを的確に抑制または防止することができる。
また、基材1として加熱収縮率が5%以下のものを用いた場合、コート層2は、このものを形成するために用いられる樹脂組成物の種類を適宜選択することにより、風防板100の加熱収縮率を、基材1の加熱収縮率よりも小さくして、風防板100の加熱収縮率を確実に5%以下に設定することができる。すなわち、コート層2として、比較的弾性率の高いものを用いることにより、たとえ、基材1が収縮し得るものであったとしても、風防板100が収縮するのを抑制して、風防板100の加熱収縮率を確実に5%以下に設定することができる。
かかる観点から、基材1における加熱収縮率をE[%]とし、風防板100における加熱収縮率をF[%]としたとき、E>Fを満足して、E−Fは、0.1%以上4.9%以下であるのが好ましく、0.2%以上1.0%以下であるのがより好ましい。これにより、風防板100の形成の際に、基材1内における内部応力が大きくなるのを抑制することができるため、基材1とコート層2との間において、剥離が発生するのをより的確に抑制または防止することができる。
基材1の厚さは、0.4mm以上15mm以下であることが好ましく、1mm以上10mm以下であることがより好ましく、3mm以上4mm以下であることがさらに好ましい。基材1の厚さが前記下限値未満であると、熱可塑性樹脂の種類によっては、風防板100の機械的強度が低下する場合があり、また、基材1の厚さが前記上限値を超えると、熱可塑性樹脂の種類によっては、風防板100を曲面形状に成形することが困難になるおそれがある。
さらに、基材1の厚さをA[mm]とし、コート層2の厚さをB[mm]としたとき、A/Bは、300以上15000以下なる関係を満足することが好ましく、1500以上10000以下なる関係を満足することがより好ましい。これにより、風防板100の前記加熱収縮率をより確実に5%以下に設定することができる。そのため、風防板100において、基材1とコート層2との間で剥離が発生するのをより的確に抑制または防止することができる。
また、基材1としては、熱可塑性樹脂を含む材料により得られた単層構造のものや、熱可塑性樹脂を含む材料により得られた単層フィルムを2層以上積層した多層構造のものを用いることができる。
ここで、多層構造である場合には、熱可塑性樹脂を含むものであれば、同一の材料で構成されていてもよいし、異なる材料で構成されていてもよい。
例えば、多層構造である基材1としては、耐候性に優れた第1の耐侯層と、耐熱性に優れた耐熱層と、耐候性に優れた第2の耐侯層とがこの順で積層されたものが挙げられる。すなわち、1つの耐熱層を2つの耐候層で挟持した構成のものが挙げられる。これにより、基材1の耐候性および耐熱性のさらなる向上が図られる。
第1の耐候層および第2の耐侯層は、それぞれ、例えば、ポリカーボネート系樹脂と、紫外線吸収剤と、可塑剤とを含む材料で構成されたものが挙げられる。また、耐熱層は、例えば、ポリカーボネート系樹脂と、熱線吸収剤と、可塑剤とを含む材料で構成されたものが挙げられる。なお、耐候性を重視する場合、第1および第2の耐候層への紫外線吸収剤および/または可塑剤の添加を省略することができるし、さらに、耐熱性を重視する場合、耐熱層への熱線吸収剤および/または可塑剤の添加を省略することができる。
紫外線吸収剤としては、コート層2に含まれる紫外線吸収剤として説明したのと同様のものが挙げられる。
また、熱線吸収剤としては、例えば、カーボンブラック、炭素粉末、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、ITO、ATO等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
さらに、可塑剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリアミドオリゴマー、エチレンビスステアロアマイド、フタル酸エステル、ポリスチレンオリゴマー、ポリエチレンワックス、シリコーンオイル等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
風防板100を、上記のような構成をなすものとすることで、JIS K 6735に規定された方法に準拠して測定された加熱収縮率の大きさを比較的容易に5%以下に設定することができる。
ここで、前記加熱収縮率を満足することで、風防板100は優れた耐候性を備えるものとなるが、具体的には、以下のような指標を満足することが好ましい。
すなわち、風防板100は、コート層に、サンシャインウエザオメーターを用いて紫外線を3000時間照射した後における、JIS K 7105に準拠して測定された、基材1の黄変度が6.0[ΔYI]以下であるのが好ましく、3.0[ΔYI]以下であるのがより好ましく、2.0[ΔYI]以下であるのがさらに好ましい。これにより、風防板100をより優れた耐候性を備えるものであると言うことができ、その結果、風防板100を、外観劣化がより的確に抑制または防止されたものとすることができる。
また、コート層2は、サンシャインウエザオメーターを用いて紫外線を3000時間照射した後において、ASTM D673で規定された落砂摩耗試験に準拠して規定砂800[g]をコート層2に向かって落下させ、落砂摩耗試験前のヘイズと落砂摩耗試験後のヘイズとの大きさの差をヘイズ増加量(800[g])としたとき、このヘイズ増加量(800[g])ΔHz1が、10以下であることが好ましく、7以下であることがより好ましく、0.1以上5以下であることがさらに好ましい。さらに、コート層2は、サンシャインウエザオメーターを用いて紫外線を3000時間照射した後において、JIS K 5600−5−6で規定されたクロスカット法により、格子状に切断されたコート層の基材に対する付着性が90%以上であることが好ましく、100%であることがより好ましい。これにより、風防板100の使用によっても、風防板100の透明性が砂ほこりや飛び石等の衝撃に対して低下することが的確に抑制または防止されていると言うことができる。
また、風防板100は、JIS K 7361−1に準じて、ヘイズメーター(NDH2000、日本電飾工業社製)により、測定される全光線透過率は、70%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。これにより、風防板100を優れた透明性を備えるものであると言うことができ、使用者は、この風防板100を介して、その外側に位置するものを、鮮明に認識することが可能となる。
<風防板の製造方法>
以上のような構成をなす風防板100は、例えば、以下のような製造方法により製造することができる。
風防板100の製造方法は、基材を形成する基材形成工程と、基材の前面に樹脂組成物を塗布して塗布層を形成する塗布層形成工程と、塗布層を乾燥して平板を形成する平板形成工程と、平板を曲面形状に成形して風防板を得る成形工程とを有する。
以下、各工程について説明する。
(基材形成工程)
まず、基材1を形成する。
この基材1の形成方法を説明するのに先立って、まず、基材1の形成に用いる基材製造装置について説明する。
図2は、図1に示す風防板が備える基材を製造する際に用いられる基材製造装置を説明するための側面図である。なお、以下の説明では、説明の都合上、図2中の上側を「前」、下側を「後」と言う。
図2に示す基材製造装置500は、シート供給部700と、シート成形部800と、シート冷却部900と、シート送り部1000とを有している。
シート供給部700は、本実施形態では、押出機210と、Tダイ600とを有している。また、シート供給部700では、押出機210の溶融樹脂吐出部211に接続された配管212がTダイ600に連結されている。
かかる構成のシート供給部700では、基材1を構成する熱可塑性樹脂を含む材料が押出機210に収納されている。そして、溶融状態または軟化状態の基材1を構成する材料が、押出機210から押し出され、溶融状態または軟化状態の溶融シート(シート)150として、配管212およびTダイ600を介して、シート成形部800に供給される。
Tダイ600は、押出法で溶融状態または軟化状態の溶融シート150を帯状のシートとした状態で押し出す押出成形部(送出成形部)である。Tダイ600は、基材1を構成する熱可塑性樹脂を含む材料を溶融状態または軟化状態とした溶融樹脂をTダイ600が有する開口部から押し出すことで、帯状をなすシートとされた溶融状態または軟化状態の溶融シート150を連続的に送り出すものである。このように押出法により溶融シート150を得る構成とすることで、形成された基材1のシートの厚みを安定化させることができる。
シート成形部800は、タッチロール110と、冷却ロール120と、後段冷却ロール130とを有している。これらのロールは、それぞれ図示しないモータ(駆動手段)により、それぞれ単独回転するように構成されており、これらのロールの回転により、溶融シート150が冷却されつつ、溶融シート150が連続的にシート冷却部900に送り出されるようになっている。このシート成形部800に、溶融または軟化された溶融シート150を連続的に送り込むことにより、溶融シート150の前面15および後面13が平坦化されるとともに、溶融シート150が所望の厚さに設定される。
また、冷却ロール120と、タッチロール110との間を通過した溶融シート150を、さらに、冷却ロール120と後段冷却ロール130との間に供給することにより、溶融シート150がより冷却される。
なお、基材製造装置500は、前述の通り、シート成形部800の他に、シート冷却部900を備え、溶融シート150は、シート成形部800に供給された後に、シート冷却部900に供給され冷却がなされるが、本実施形態では、溶融または軟化の状態が維持されるまでシート成形部800において溶融シート150が冷却され、次いで、固化の状態となり基材1が形成されるまでシート冷却部900において溶融シート150が冷却される。
冷却ロール120は、外周面が平滑性を有するロールであり、Tダイ600から供給された溶融状態とされた溶融シート150を冷却する冷却手段を備える。このような冷却ロール120に対して、溶融シート150を押し当てることにより、その前面15が平坦化されるとともに、溶融シート150が冷却される。
タッチロール110は、外周面が平滑性を有するロールであり、冷却ロール120に対向配置されている。このようなタッチロール110と冷却ロール120との間に、溶融シート150を供給することにより、溶融シート150の後面13が平坦化される。
後段冷却ロール130は、外周面が平滑性を有するロールであり、溶融シート150を冷却する冷却手段を備え、タッチロール110および冷却ロール120の後段に配置されている。このような後段冷却ロール130に、溶融シート150を供給することにより、溶融シート150のさらなる冷却が実施される。
なお、本実施形態では、タッチロール110、冷却ロール120および後段冷却ロール130は、これらのロールの中心が一直線上に乗るように下側から上側に向かって配置されている。このような配置により、冷却ロール120には溶融シート150の前面15が冷却ロール120を180°回転させるまで当接し、後段冷却ロール130には溶融シート150の後面13が後段冷却ロール130を180°回転させるまで当接する。よって、各冷却ロール120、130に、溶融シート150の前面15および後面13が交互に当接した状態で、溶融シート150が冷却されることとなるため、前面15または後面13側に反りが生じた状態で溶融シート150が冷却されてしまうのを確実に防止することができる。
また、本実施形態では、冷却ロール120が冷却手段を有し、タッチロール110が冷却手段を有しない場合について説明したが、かかる場合に限定されず、冷却ロール120およびタッチロール110のうちの少なくとも一方が冷却手段を有していればよく、タッチロール110が冷却手段を有し、冷却ロール120が冷却手段を有していなくてもよいし、冷却ロール120とタッチロール110との双方が冷却手段を有していてもよい。
さらに、溶融シート150の冷却をシート冷却部900において単独で実施する場合には、冷却ロール120および後段冷却ロール130を、冷却手段を有していないものとしてもよい。
なお、かかる構成のシート成形部800は、溶融シート150を搬送方向に送り出して、シート冷却部900に供給する前段送り部としての機能も備え、タッチロール110、冷却ロール120および後段冷却ロール130の回転速度を適宜設定することにより、溶融シート150の搬送速度を、所望の速度に設定することができる。
シート冷却部900は、複数(本実施形態では7つ)の冷却ロール310〜370を有している。これらの冷却ロール310〜370は、それぞれ、外周面が平滑性を有するロールであり、モータ(駆動手段)を備えておらず、それぞれ自由回転するように構成されている。また、冷却ロール310〜370は、シート成形部800から供給された溶融または軟化の状態の溶融シート150を冷却する冷却手段を備える。
このようなシート冷却部900に対して、シート成形部800から溶融シート150が供給されると、溶融シート150が冷却ロール310から冷却ロール370に向かって搬送される際に、冷却ロール310〜370が搬送方向に沿って回転しつつ、溶融シート150に順次当接する。これにより、溶融シート150が冷却され、その結果、溶融シート150が固化することで、基材1が形成される。
なお、本実施形態では、冷却ロール310〜370が備える冷却手段は、それぞれに対して独立して設けられている。これにより、冷却ロール310〜370の温度を、それぞれ独立して、所望の温度に設定することができ、具体的には、冷却ロール310から冷却ロール370に向かって、順次、設定温度が低くなるように設定することができる。このような設定により、シート冷却部900において、冷却ロール310から冷却ロール370に向かって搬送される溶融シート150は、段階的に温度が低下する冷却ロール310〜370に順次接触する。そのため、溶融シート150を緩徐に冷却することができることから、形成される基材1を、反りの発生が低減され、かつ、均一な膜厚を有するものとして形成し得る。
シート送り部1000は、テンションロール410と、テンションロール420とを有している。これらのロールは、それぞれ図示しないモータ(駆動手段)により、それぞれ単独回転するように構成されており、これらのロールの回転により、シート冷却部900で冷却することにより形成された基材1が、搬送方向に沿って送り出される。
テンションロール410、420は、ともに、外周面が平滑性を有するロールであり、これら同士の間に、基材1が供給されることで、基材1を搬送方向に沿って送り出す。また、これらテンションロール410、420の回転速度は、モータの駆動により所望の速度に設定することができる。そのため、テンションロール410、420の回転速度を適宜設定することで、基材1の搬送速度が、所望の速度に設定される。
かかる構成のシート送り部1000は、シート成形部800が溶融シート150をシート冷却部900に供給する前段送り部としての機能を備えるのに対して、シート冷却部900から基材1を搬送方向に送り出す後段送り部としての機能を発揮する。
以上のような基材製造装置500を用いて基材1が形成される。
この基材製造装置500を用いた基材1の形成方法は、基材1を構成する熱可塑性樹脂を含む材料を溶融または軟化した状態とする[A]溶融工程と、帯状をなすシートとされた溶融状態または軟化状態の溶融シート150を押し出す[B]押出工程と、溶融シート150の前面15および後面13を平坦化する[C]成形工程と、成形された溶融状態または軟化状態の溶融シート150を冷却して基材1を得る[D]冷却工程とを有している。
([A]溶融工程)
まず、基材1を構成する熱可塑性樹脂を含む材料を用意し、この材料を押出機210内に収納した後、加熱することで、溶融または軟化した状態とする。
([B]押出工程)
次に、溶融または軟化した状態の基材1を構成する熱可塑性樹脂を含む材料を、配管212を介して、押出機210からTダイ600に供給し、その後、Tダイ600より帯状に押し出して溶融シート150を得る。
かかる構成の押出工程において、溶融または軟化した状態の基材1を構成する熱可塑性樹脂を含む材料は、配管212を介してTダイ600に供給される。
そして、溶融または軟化した状態の基材1を構成する熱可塑性樹脂を含む材料は、Tダイ600が有する開口部から溶融または軟化した状態の溶融シート150として連続的に押し出される。
この際、押出機210内を高圧条件下とすることにより、Tダイ600内で溶融シート150に圧力が印加され、開口部から押し出される。
また、押出機210内の圧力は、10MPa以上30MPa以下であるのが好ましく、15MPa以上25MPa以下であるのがより好ましい。これにより、Tダイ600内から溶融シート150を確実に押し出すことができる。
さらに、押出機210内の温度は、250℃以上300℃以下であるのが好ましく、260℃以上280℃以下であるのがより好ましい。これにより、基材1を構成する熱可塑性樹脂を確実に溶融または軟化した状態として、Tダイ600内から溶融シート150を確実に押し出すことができる。
なお、基材1を多層構造のものとする場合には、シート供給部700を、複数層分配型の分配機を備えるものとして、Tダイ600から複数の層が積層された溶融シート150を共押出しにより押し出すようにしてもよい。
([C]成形工程)
次に、Tダイ600から押出された溶融シート150における前面15および後面13を平坦化する。
この成形工程では、図2に示すように、溶融シート150をタッチロール110と冷却ロール120との間、さらには、冷却ロール120と後段冷却ロール130との間に、供給することで、溶融シート150を所定の厚さに設定する。
この際、タッチロール110の外周面、冷却ロール120の外周面および後段冷却ロール130の外周面は、それぞれ、平滑性を有するロール状をなしている。そのため、溶融シート150の前面15および後面13は、それぞれ、平滑性を有する外周面に押し当てられることにより、平坦化される。
また、冷却ロール120の外周面とタッチロール110の外周面との離間距離、さらには、冷却ロール120の外周面と後段冷却ロール130の外周面との離間距離は、それぞれ、形成すべき基材1の厚さに設定され、これら離間距離を所定の大きさに適宜設定することで、所望の厚さの溶融シート150を得ることができる。
このように、成形工程において、タッチロール110、冷却ロール120および後段冷却ロール130はそれぞれ、前面15および後面13を平坦化するため、ならびに、溶融シート150の厚さを設定するために用いられる。
([D]冷却工程)
次に、前面15および後面13が平坦化された溶融シート150を冷却することで、溶融シート150を固化させることにより、基材1を得る。
この冷却工程は、本実施形態では、シート成形部800において、溶融シート150が、タッチロール110と冷却ロール120との間に供給された後に、冷却ロール120と後段冷却ロール130との間に供給されることにより行われるとともに、シート冷却部900において、冷却ロール310〜370の前側に供給することにより行われる。
これにより、溶融シート150は、シート成形部800において、冷却ロール120に、冷却ロール120が180°回転するまで溶融シート150の前面15が当接し、後段冷却ロール130に、後段冷却ロール130が180°回転するまで溶融シート150の後面13が当接する。さらに、溶融シート150は、シート冷却部900において、冷却ロール310〜370に、この順で、順次、溶融シート150の後面13が当接する。その結果、シート成形部800において、溶融または軟化の状態が維持されるまで溶融シート150が冷却され、さらに、シート冷却部900において、固化の状態となり基材1が形成されるまで溶融シート150が冷却される。
なお、本実施形態では、各冷却ロール120、130に、溶融シート150の前面15および後面13が交互に当接した状態で、溶融シート150が冷却される。そのため、前面15または後面13側に反りが生じた状態で溶融シート150が冷却されてしまうのを確実に防止することができる。
なお、溶融シート150(基材1)の冷却温度は、シート成形部800を通過した時点において、150℃以上200℃以下であるのが好ましく、160℃以上190℃以下であるのがより好ましい。また、シート冷却部900を通過した時点において、30℃以上70℃以下であるのが好ましく、30℃以上50℃以下であるのがより好ましい。これにより、過不足なく溶融シート150を冷却することができ、得られる基材1に反りや剥離が生じるのを防止することができる。冷却温度が高すぎると、溶融シート150の冷却が不十分となり、生産性が低下する傾向を示す。一方、冷却温度が低すぎると、基材1に反りや剥離が生じるおそれがある。
また、溶融シート150は、シート冷却部900において、好ましくは150℃以上200℃以下程度から、好ましくは30℃以上70℃以下程度にまで冷却されるが、かかる温度条件で冷却させるために、シート冷却部900が備える冷却ロール310〜370は、冷却ロール310において好ましくは160℃以上200℃以下程度に設定され、その後、冷却ロール320〜360において段階的に温度が低く設定され、最終的に、冷却ロール370において好ましくは30℃以上70℃以下程度に設定される。これにより、得られる基材1に反りや剥離が生じるのをより確実に防止することができる。
また、本工程における溶融シート150の搬送速度は、前段送り部としてのシート成形部800による送り速度と、後段送り部としてのシート送り部1000による送り速度を適宜設定することにより、所望の速度とし得る。具体的には、溶融シート150の搬送速度は、0.1m/min以上10.0m/min以下であるのが好ましく、0.5m/min以上5.0m/min以下であるのがより好ましい。これにより、溶融シート150を過不足なく冷却することができる。搬送速度が大きすぎると、冷却が不十分となり、生産性が低下する傾向を示す。一方、搬送速度が小さすぎると、基材1に反りが生じる可能性が有る。
さらに、かかる搬送速度でシート冷却部900において溶融シート150を搬送する際、シート成形部800による送り速度は、シート送り部1000による送り速度よりも遅く設定され、これにより、シート冷却部900において、溶融シート150にテンションを付与した状態で溶融シート150が冷却されるため、シワ等が生じることなく均一な膜厚の基材1を得ることができる。特に、本発明では、シート成形部800による送り速度を100としたとき、シート送り部1000による送り速度は、102以上105以下に設定される。これにより、溶融シート150における内部応力を小さくした状態で、溶融シート150を冷却して基材1を得ることができる。そのため、搬送方向(流れ方向;MD方向)における加熱収縮率をも小さくして基材1が得られることから、搬送方向(流れ方向;MD方向)および垂直方向(TD方向)の双方における、JIS K 6735に規定された方法に準拠して測定された加熱収縮率を5%以下として、基材1を得ることができる。
なお、かかる方法では、搬送方向および垂直方向の双方における前記加熱収縮率が5%以下となっているものの、搬送方向には少なからずテンションが付与された状態で、基材1が形成されるため、搬送方向における前記加熱収縮率は、垂直方向における前記加熱収縮率よりも大きくなっている。
以上のような各工程を経ることで、押出成形材で構成された基材1を得ることができ、この基材1における、前記加熱収縮率を5%以下に設定することができる。
(塗布層形成工程)
次に、基材1の前面に樹脂組成物を塗布することで塗布層を形成する。
樹脂組成物を塗布する方法としては、特に制限されないが、例えば、ロールコート法、フローコート法、スプレーコート法、カーテンコート法、ディップコート法、ダイコート法、バーコート法等の公知の方法が挙げられ、これらを単独または組み合わせて用いることにより、基材1の前面に樹脂組成物を塗布することができる。また、これらのコート法を用いることにより、鉛直方向に対して直交する方向に配置された基材1に対して樹脂組成物が塗布されるため、形成される塗布層、ひいては、次工程において、この塗布層を乾燥させることにより得られるコート層2の膜厚をより均一なものとして形成することができる。
(平板形成工程)
次に、塗布された塗布層を構成する樹脂組成物を乾燥させて硬化させることにより、コート層2を形成する。これにより、基材1の前面にコート層2が積層された平板を得る。
例えば、樹脂組成物が、溶剤(希釈溶剤)を含む場合には、基材1および雰囲気の温度を上げて加熱することで、十分に溶剤を乾燥して乾燥塗膜を形成することでコート層2が得られる。
なお、樹脂組成物中にイソシアネートが含まれる場合、この加熱により、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂とイソシアネートとの間で化学結合が形成されることによる架橋構造(ネットワーク構造)が構築され、これにより、乾燥塗膜が熱硬化することでコート層2が形成される。
塗布層を加熱する方法としては、特に限定されないが、例えば、オーブン等を用いて加熱する方法等が挙げられる。
さらに、樹脂組成物中に、ウレタン(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリレートモノマーのうちの少なくとも1種が含まれる場合、乾燥塗膜の形成の後に、紫外線等の電子線を照射することが好ましい。これにより、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂とウレタン(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリレートモノマーのうちの少なくとも1種との間で化学結合が形成されることによる架橋構造(ネットワーク構造)が構築され、これにより、乾燥塗膜が光硬化することでコート層2が形成される。
紫外線を照射する方法としては、例えば、一般の有電極型や無電極型の高圧水銀灯やメタルハライドランプなどを使用する方法等が挙げられる。また、100KeV程度の低電圧の電子線照射装置も使用可能である。なお、電子線により硬化する場合は、前述した光重合開始剤の樹脂組成物中への添加は不要である。
さらに必要に応じて、電子線を照射し終えた乾燥塗膜をさらに加熱するようにしてもよい。これにより、コート層2の熱硬化をより確実に進行させることができる。
なお、本実施形態では、基材1の前面に塗布法を用いて塗布層を形成した後、この塗布層を乾燥・硬化させることにより、基材1の前面にコート層2を形成する場合について説明したが、コート層2の形成方法は、かかる方法に限定されず、例えば、以下のような方法であってもよい。すなわち、予めシート状をなすコート層2を別途用意しておき、このコート層2を、基材1の前面に貼付することで、基材1の前面にコート層2を形成するようにしてもよいし、予め用意されたコート層2を、前記冷却工程[D]において、シート冷却部900に供給される前の溶融シート150上に貼付することで、基材1の前面にコート層2を形成するようにしてもよい。なお、予め用意されたコート層2を貼付する構成とする場合、このコート層2上に粘着層が積層されているものを用いることもできる。
また、風防板100に印刷面を形成する場合には、次工程である成形工程に先立って、得られた平板のコート層2上に印刷を施して印刷面を形成しておく。
(成形工程)
次に、得られた平板を、曲面形状に成形して、本体部151、側面部152および連結部153を形成することにより、風防板100を得る。
平板を曲面形状に成形して、本体部151、側面部152および連結部153を形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、平板を加熱し、樹脂が軟化した直後に型に押し当てる方法が挙げられる。これにより、平板に、凹凸が形成されることで、本体部151、側面部152および連結部153が設けられ、その輪郭に沿って残存している平板を取り除くことにより、図1に示す、風防板100が得られることとなる。
この際、本発明では、得られる風防板100の前記加熱収縮率が5%以下となっている。そのため、本実施形態における、成形部としての本体部151、側面部152および連結部153を形成するときに、平板(特に、基材1)の熱収縮が抑制され、これにより、基材1とコート層2との間での密着性が向上するため、基材1とコート層2との間で剥離が発生するのを的確に抑制または防止することができる。その結果、得られた風防板100を優れた耐候性を備えるものとすることができる。また、平板の熱収縮が抑制されているため、風防板100におけるシワの発生を的確に抑制または防止することができるとともに、風防板100に印刷を施して印刷面を形成した場合には、この印刷面のズレの発生を的確に抑制または防止することができる。
また、この際、平板が備える基材1の搬送方向と、垂直方向とが、それぞれ、形成すべき風防板100の上下方向(長手方向)と、左右方向とに沿うようにして、本体部151、側面部152および連結部153を形成する。これにより、平板に曲面形状に成形する際に、湾曲形状(曲面形状)を形成する方向を、搬送方向および垂直方向のうち、前記加熱収縮率が小さい垂直方向に沿わせることができる。その結果、湾曲形状を形成する方向(一方向)における前記加熱収縮率を確実に5%以下とすることができ、かつ、基材1中において前記加熱収縮率が小さい方向を、湾曲形状を形成する方向に一致させることができる。そのため、本体部151、側面部152および連結部153を形成する際に、基材1とコート層2との間での剥離の発生をより的確に抑制または防止することができる。
また、樹脂を加熱する方法としては、例えば、赤外線乾燥炉やガス式熱風乾燥炉、熱風循環式乾燥炉等の公知の方法が挙げられる。また、熱成形をする方法としては、例えば、真空成形、圧空成形、プレス成形、フリーブロー成形等の方法が挙げられる。
なお、前記曲面形状とは、湾曲面を有する形状であり、例えば、成形体の断面形状が円弧状である形状等が含まれる。
このような平板に本体部151、側面部152および連結部153を形成する本実施形態の工程により、平板の一部または全部に曲面形状を成形する成形工程が構成される。
以上のようにして、本体部151、側面部152および連結部153を備える風防板100が形成される。
<第2実施形態>
次に、本発明の窓用部材を風防板に適用した第2実施形態について説明する。
図3は、本発明の窓用部材を風防板に適用した第2実施形態を示す図((a)平面図、(b)側面図、(c)図3(a)中のA−A線断面図)である。なお、以下では、説明の都合上、図3(a)の紙面手前側を「前」、紙面奥側を「後」、左側を「左」、右側を「右」、上側を「上」、下側を「下」と言い、図3(b)の紙面手前側を「右」、紙面奥側を「左」、左側を「前」、右側を「後」、上側を「上」、下側を「下」と言い、図3(c)の紙面手前側を「下」、紙面奥側を「上」、左側を「左」、右側を「右」、上側を「前」、下側を「後」と言う。
以下、第2実施形態の風防板100について、前記第1実施形態の風防板100との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態の風防板100は、図3に示すように、前記第1実施形態の風防板100と同様に、本体部151、側面部152および連結部153を備えており、全体形状が同様であるものの、基材1の前面側および後面側の双方の面側に設けられたコート層2を有する点において、第1実施形態の風防板100と異なっている。
すなわち、第2実施形態の風防板100において、コート層2は、基材1の前面側および後面側の双方に積層して設けられ、これにより、風防板100は、基材1と、この基材1を挾持する2つのコート層2とを有する積層体で構成されている。
風防板100がこのような積層体で構成される場合、基材1の両面にコート層2が形成されていることから、オートバイ等に適用された風防板100において、前面および後面の双方を、耐候性、耐久性および耐擦傷性に優れたものとし得る。
かかる構成の風防板100において、基材1は、前記第1実施形態の風防板100が備える基材1と同様の構成のものとすることができ、2つのコート層2は、前記第1実施形態の風防板100が備えるコート層2と同様の構成のものとすることができる。
なお、2つのコート層2は、同一の構成材料で構成されるものであってもよいし、異なる構成材料で構成されるものであってもよい。
このような第2実施形態の風防板100によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
以上本発明の窓用部材および車両について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、風防板を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
また、風防板は、基材とコート層との間に接合層(接着剤層)等の中間層が少なくとも1つ介在するものであってもよい。
さらに、前記実施形態では、風防板の全部(本体部、側面部および連結部)が成形部で構成される場合について説明したが、この場合に限定されず、その一部、例えば、本体部、側面部および連結部のうちの一部が、曲面形状に形成された成形部で構成されていてもよい。また、曲面形状を形成する方向は、成形部(本体部、側面部および連結部)の左右方向に限らず、その方向は、特に限定されず、例えば、上下方向であってもよいし、左右方向および上下方向の双方であってもよい。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
1.風防板の形成
(実施例1)
[1]まず、塗布層を形成するにあたり、樹脂組成物を調製した。
具体的には、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂とアクリレートモノマーとの混合物(商品名「MFGコートSD−101」、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂:16質量部、アクリレートモノマー:5.5質量部、DIC株式会社製):21.5質量部とウレタン(メタ)アクリレートとして2官能ウレタンアクリレート(重量平均分子量1.3×103、粘度17000mPa・s[60℃]、商品名「EBECRYL8804」、ダイセルオルネクス製):26質量部、4官能アクリレートモノマー(商品名「NKエステルA−TMMT」、新中村化学工業株式会社製):14.7質量部、2官能アクリレートモノマー(商品名「NKエステルA−BPE−4」、新中村化学工業株式会社製):21.8質量部、イソシアネートとして3官能ポリイソシアネート(商品名「バーノックDN−992S」、DIC株式会社製):16質量部を調製して、混合体(主成分)を得た。
さらに、得られた混合体100質量部に対して、添加物として、紫外線吸収剤(ヒドロキシフェニルトリアジン誘導体、商品名「Tinuvin400」、BASF製):6.5質量部と、表面調整剤(商品名「グラノール450」、共栄社化学社製):0.04質量部を添加し、不揮発分が30%になるように溶剤としての酢酸ブチルを加えて撹拌し、全ての成分を溶解させ、樹脂組成物を得た。
[2]次に、熱可塑性樹脂としてポリカーボネート(商品名「ユーピロンE−2000−N」、三菱瓦斯化学工業社製)を用意し、これを、図2に示す基材製造装置500が備える押出機210に収納した後、基材製造装置500を作動させることにより、厚さ4.0mmの基材を得た。
なお、この際の基材製造装置500が備える各部における条件は、以下のように設定した。すなわち、シート成形部800による溶融シート150の送り速度を100としたとき、シート送り部1000による溶融シート150の送り速度を105に設定した。また、シート冷却部900が備える冷却ロール310および370における冷却温度を、それぞれ、160℃、40℃とし、これらの間に位置する冷却ロール320〜360では、20℃間隔で140℃〜60℃まで段階的に低下するように設定した。
なお、得られた基材の搬送方向(流れ方向;MD方向)および垂直方向(TD方向)の双方における加熱収縮率を、JIS K 6735に規定された方法に準拠して次のように評価した。
得られた基材について、試料(幅150mm、長さ150mm、厚さ4mm)にコンパスで直径100mmの円を描き、90℃設定の熱風循環型オーブンで24時間加熱し乾燥させ、23℃までデシケーター中で冷却した後、乾燥後の搬送方向(流れ方向;MD方向)および垂直方向(TD方向)の双方における直径L0を測定した。その後、190℃設定の熱風循環型オーブンで60分加熱し、23℃までデシケーター中で冷却し、先に測定した円の直径個所の加熱後の直径L1を測定した。下記式(A)により、加熱収縮率S(%)を算出した。2回の平均値を求めたところ、搬送方向における加熱収縮率S(%)が5.0%であり、垂直方向における加熱収縮率S(%)が0.2%であった。
S(%)=(L0−L1)/L0×100 ・・・・・(A)
[3]次に、前記工程[2]で得られた基材に、前記工程[1]で得られた樹脂組成物を、バーコーターにて乾燥後の厚さ(コート層の厚さ)が11μmになるように塗布して塗布層を得た。
そして、塗布層が塗布された基材を65℃の熱風オーブンにて10分間乾燥させた後、FUSIONシステムズ製無電極UVランプを用い、照射距離90mm、コンベア速度2.6mm/min、照射強度200mW/cm2、積算光量700mJ/cm2という条件下で紫外線を照射することで塗布層を光硬化させた。この照射後、さらに、60℃の熱風オーブンにて48時間加熱することで塗布層を熱硬化させた。
これにより、基材上にコート層が形成された平板からなる実施例1の風防板を得た。
なお、得られた風防板の搬送方向(流れ方向;MD方向)および垂直方向(TD方向)の双方における加熱収縮率を、JIS K 6735に規定された方法に準拠して次のように評価した。
得られた風防板について、試料(幅150mm、長さ150mm、厚さ4mm)にコンパスで直径100mmの円を描き、90℃設定の熱風循環型オーブンで24時間加熱し乾燥させ、23℃までデシケーター中で冷却した後、乾燥後の搬送方向(流れ方向;MD方向)および垂直方向(TD方向)の双方における直径L0を測定した。その後、190℃設定の熱風循環型オーブンで60分加熱し、23℃までデシケーター中で冷却し、先に測定した円の直径個所の加熱後の直径L1を測定した。下記式(A)により、加熱収縮率S(%)を算出した。2回の平均値を求めたところ、搬送方向における加熱収縮率S(%)が4.0%であり、垂直方向における加熱収縮率S(%)が0.1%であった。
S(%)=(L0−L1)/L0×100 ・・・・・(A)
(実施例2、3)
前記工程[2]において、シート成形部800による溶融シート150の送り速度を100としたとき、シート送り部1000による溶融シート150の送り速度を表1に示すように変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして平板からなる風防板を作製した。
(実施例4〜9)
前記工程[1]において、樹脂組成物の配合量を表1に示すように変更し、前記工程[2]において、シート成形部800による溶融シート150の送り速度を100としたとき、シート送り部1000による溶融シート150の送り速度を表1に示すように変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして平板からなる風防板を作製した。
(比較例1)
前記工程[2]において、シート成形部800による溶融シート150の送り速度を100としたとき、シート送り部1000による溶融シート150の送り速度を101に設定したところ、蛇行によりシーティングできず、基材が得られなかった。
(比較例2)
前記工程[2]において、シート成形部800による溶融シート150の送り速度を100としたとき、シート送り部1000による溶融シート150の送り速度を表1に示すように変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして平板からなる風防板を作製した。
2.評価
各実施例および比較例の風防板を、以下の方法で評価した。
<1>熱成形性評価
各実施例および比較例の風防板について、それぞれ、試料(幅60mm、長さ120mm、厚さ4mm)を170℃設定の熱風循環型オーブンで10分間加熱し軟化させ、取り出した直後に塗膜面を外側にして各半径の木製円柱にネル布を介して添わせ、試料が室温付近に冷却されるまでそのままに保つことで単曲面成形を行い、その後、外観を観察し、次のように評価した。
A:半径25mmの木型で熱成形し、クラックや塗膜剥離の発生および外観の変化がない。
B:半径30mmの木型で熱成形し、クラックや塗膜剥離の発生および外観の変化がない。
C:半径40mmの木型で熱成形し、クラックや塗膜剥離の発生および外観の変化がない。
D:半径50mmの木型で熱成形し、クラックや塗膜剥離の発生および白濁や表面の肌荒れなどの外観変化が発生する。
<2>耐候性評価
各実施例および比較例の風防板について、それぞれ、試料(幅60mm、長さ120mm、厚さ4mm)を170℃設定の熱風循環型オーブンで10分間加熱し軟化させ、取り出した直後に塗膜面を外側にして半径30mmの木製円柱にネル布を介して添わせ、試料が室温付近に冷却されるまでそのままに保つことで単曲面成形を行い、成形体を得た。
次いで、各実施例および比較例の風防板から得られた成形体について、それぞれ、カーボンアーク式サンシャインウエザオメーターにて促進試験を行い、JIS K 5600に準じて、紫外線照射3000時間後の外観、黄変度(ΔYI)を次のように評価した。
A:ΔYIが2.0以下で外観の変化なし。
B:ΔYIが2.0超3.0以下で外観変化が若干見られる。
C:ΔYIが3.0超6.0以下で外観変化が少し見られる。
D:ΔYIが6.0超で外観変化が著しく見られる。
<3>透明性評価
<3−1>初期ヘイズHz0の算出
各実施例および比較例の風防板について、それぞれ、試料(幅60mm、長さ120mm、厚さ4mm)を170℃設定の熱風循環型オーブンで10分間加熱し軟化させ、取り出した直後に塗膜面を外側にして半径30mmの木製円柱にネル布を介して添わせ、試料が室温付近に冷却されるまでそのままに保つことで単曲面成形を行い、成形体を得た。
次いで、各実施例および比較例の風防板から得られた成形体について、それぞれ、切り出したサンプル(60mm×60mm)を用いて、まず、カーボンアーク式サンシャインウエザオメーターにて紫外線照射を3000時間実施する促進試験を行い、その後、ヘイズメーター(商品名:NDH2000、日本電飾工業社製)により、拡散透過率Tdと、全光線透過率Ttとを求め、下記式(B)によりヘイズT(%)を算出した。なお、ヘイズとは、透明性に関する指標であり、濁度(曇度)を表すものである。
T(%)=Td/Tt×100 ・・・・・(B)
<3−2>規定砂800[g]における落砂摩耗試験によるヘイズ増加量(800[g])ΔHz1の評価
各実施例および比較例の風防板から得られた成形体について、それぞれ、切り出したサンプル(60mm×60mm)を用いて、まず、カーボンアーク式サンシャインウエザオメーターにて紫外線照射を3000時間実施する促進試験を行った。その後、ASTM D673に準じて、落砂摩耗試験を行い、落砂摩耗試験後のヘイズを前記<3−1>と同様の方法にて算出し、落砂量800gにおける落砂摩耗試験後のサンプルのヘイズHz1を求めた。
なお、各落砂摩耗試験は、上島製作所社製の落砂摩耗試験機を用い、前記試験機のサンプルホルダーにサンプルを45°傾け、回転可能に固定し、回転しているサンプルに、炭化ケイ素(カーボンランダム#80)を自由落下させ、サンプルに傷をつけるようにする方法により行った。また、落砂量800gにおける落砂摩耗試験の測定条件としては、衝突速度を13km/hrとし、サンプル表面に対して衝突物を落下させる高さを60cmとした。
次に、求めたヘイズHz1と、前記<3−1>で求めた初期ヘイズHz0との差(Hz1−Hz0)を算出することにより、ヘイズ増加量(800[g])ΔHz1を求めた。そして、得られたヘイズ増加量(800[g])ΔHz1に基づいて、次のように評価した。
A:ヘイズ増加量(800[g])ΔHz1が5%以下である。
B:ヘイズ増加量(800[g])ΔHz1が5%超10%以下である。
C:ヘイズ増加量(800[g])ΔHz1が10%超20%以下である。
D:ヘイズ増加量(800[g])ΔHz1が20%超である。
<4>付着性評価
各実施例および比較例の風防板について、それぞれ、試料(幅60mm、長さ120mm、厚さ4mm)を170℃設定の熱風循環型オーブンで10分間加熱し軟化させ、取り出した直後に塗膜面を外側にして半径30mmの木製円柱にネル布を介して添わせ、試料が室温付近に冷却されるまでそのままに保つことで単曲面成形を行い、成形体を得た。
次いで、各実施例および比較例の風防板から得られた成形体について、それぞれ、切り出したサンプル(60mm×60mm)を用いて、まず、カーボンアーク式サンシャインウエザオメーターにて紫外線照射を3000時間実施する促進試験を行い、その後、JIS K 5600−5−6で規定されたクロスカット法に準拠して、成形体のコート層に、単一刃を用いて2mmの間隔で直角の格子状(25マス)の切り込み(カット)を行った。続いて、25マスの格子(コート層2)に、25mmの幅当たり10±1Nの付着強さを備えるテープを貼り、付着して5分以内に60°に近い角度で、0.5〜1.0秒でテープを引き離した。コート層がカットの縁に沿って、および/または交差点において剥がれている格子の個数を測定し、基材1に付着している格子(コート層2)の割合を算出した。そして、得られた付着している格子の割合に基づいて、次のように評価した。
A:付着している格子の割合が100%である。
B:付着している格子の割合が90%以上100%未満である。
C:付着している格子の割合が50%以上90%未満である。
D:付着している格子の割合が50%未満である。
<5>耐久性評価
各実施例および比較例の風防板について、それぞれ、試料(幅60mm、長さ120mm、厚さ4mm)を170℃設定の熱風循環型オーブンで10分間加熱し軟化させ、取り出した直後に塗膜面を外側にして半径30mmの木製円柱にネル布を介して添わせ、試料が室温付近に冷却されるまでそのままに保つことで単曲面成形を行い、成形体を得た。
各実施例および比較例の風防板から得られた成形体について、それぞれ、試料(サイズ:100mm角)を温度60℃、湿度95%以上の恒温恒湿度槽内に静置し、その後、外観を観察し、次のように評価した。
A:静置時間が500時間で塗膜の剥離や割れ、黄変などの外観変化が見られない。
B:静置時間が250時間で塗膜の剥離や割れ、黄変などの外観変化が見られない。
C:静置時間が125時間で塗膜の剥離や割れ、黄変などの外観変化が見られない。
D:静置時間が73時間で塗膜の剥離や割れ、黄変などの外観変化が見られる。
以上のようにして得られた各実施例および比較例の風防板における評価結果を、それぞれ、下記の表1に示す。
表1に示したように、各実施例における風防板では、JIS K 6735に規定された方法に準拠して測定された加熱収縮率が5%以下に設定され、これにより、風防板が備える基材とコート層との間での剥離の発生が抑制されて、比較例と比較して優れた熱成形性を示した。そのため、耐候性、透明性、付着性および耐久性についても比較例と比較して優れた結果が得られているものと推察された。