JP7155789B2 - 樹脂基板の成形方法 - Google Patents

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Description

本発明は、基材と、その少なくとも一方の面側に設けられたコート層とを有する樹脂基板を、加熱下でプレス成形する樹脂基板の成形方法に関する。
オートバイ、自転車、ゴルフカート、3輪スクーターおよびフォークリフト等に用いられる風防板、4輪車等に用いられるフロントウインドウ、リアウインドウ、サンルーフ、さらには、ヘルメットおよびゴーグル等の頭部装着物に用いられるバイザー(風防板)のような窓用部材としては、その軽量性、透明性、加工性、割れにくさ、および割れた場合の安全性等の観点から、各種プラスチック材料が使用されている。
特に、近年では、プラスチック材料を用いた車両用窓用部材(風防板)の加熱下におけるプレス成形性を維持しつつ、透明性や耐擦傷性を向上させるために、車両用窓用部材として、窓用部材の表面にコート層を形成する塗工処理を施したもの、すなわち、基材と、その少なくとも一方の面側に設けられたコート層とを有する樹脂基板をプレス成形したものが提案されている。
例えば、特許文献1には、ヘルメットバイザーやゴーグル等の車両用窓用部材(風防板)の表面に、紫外線硬化型樹脂組成物を塗工して、かかる樹脂組成物の硬化物で構成されるコート層を形成することが開示されている。
また、特許文献2には、メラミン骨格を有する熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる塗膜としてのコート層を備えた車両用窓用部材が開示されている。
このような車両用窓用部材は、例えば、以下のようにして製造される。
すなわち、まず、基材と、その少なくとも一方の面側に設けられたコート層とを有する、平板状をなす樹脂基板を用意する。
次に、凹面を有する第1の型と、凸面を有する第2の型とを備える成形型を用意し、第1の型の凹面と第2の型の凸面とに、それぞれ、ネルを敷き、その後、第1の型と第2の型との間に、前記樹脂基板を配置する。
次に、加熱下において、第1の型と第2の型との離間距離を接近させることで、成形型で樹脂基板をプレスする。
次に、樹脂基板を、前記成形型でプレスした状態を維持しつつ、冷却することで、プレス成形された成形体として車両用窓用部材を得る。
以上のような工程を経ることで、車両用窓用部材が製造されるが、成形型で樹脂基板をプレスする際に、樹脂基板が備えるコート層と、成形型に敷かれたネルとの間の抵抗値(動的抵抗値)が高いことに起因して、コート層の表面にネル跡が付着し、成形体としての車両用窓用部材の外観不良が生じると言う問題があった。
特開2005-298619号公報 国際公開第2009/057799号明細書
本発明の目的は、基材と、その少なくとも一方の面側に設けられたコート層とを有する樹脂基板を、加熱下でプレス成形して、成形体を得る際に、コート層の表面に、ネル跡が付着するのを的確に抑制または防止することができる樹脂基板の成形方法を提供することにある。
このような目的は、下記(1)~()に記載の本発明により達成される。
(1) 熱可塑性樹脂を含む材料を用いて形成された基材と、前記基材の少なくとも一方の面側に設けられたコート層とを有する樹脂基板を、第1の型と第2の型とを備える成形型を用いて、加熱下でプレス成形する樹脂基板の成形方法であって、
前記第1の型が有する凹面と、前記第2の型が有する凸面とに、それぞれ、ネルを敷き、前記第1の型と前記第2の型との間に、前記樹脂基板を配置した状態で、加熱下において、前記第1の型と前記第2の型との離間距離を接近させることで、前記成形型で前記樹脂基板をプレスするプレス工程と、
前記樹脂基板を、前記成形型でプレスした状態を維持しつつ、冷却することで、プレス成形された成形体を得る冷却工程とを有し、
前記コート層に当接する側の前記ネルは、綿、ポリエステルおよびポリウレタンのうちの少なくとも1種を主材料として含有し、JIS Z8807に準拠して測定された、かさ密度が0.30g/cm 以上0.70g/cm 以下であり、かつ、JIS L 1093に準拠して測定されたTD方向における伸び率が10%以上150%以下であることを特徴とする樹脂基板の成形方法。
(2) 平面上に載置された前記ネル上に、前記コート層が前記ネル側となるように前記樹脂基板を配置し、さらに、該樹脂基板上に錘を載置して、3800N/mの押圧力を前記樹脂基板から前記ネルに付与した状態で、150℃において10mm/sの速度で前記樹脂基板を側面から引いた際の前記ネルと前記樹脂基板との間における動的抵抗値が5.0N以下となっている上記(1)に記載の樹脂基板の成形方法。
(3) 前記樹脂基板のビカット軟化温度をy[℃]とし、前記ネルの前記TD方向における伸び率をx[%]としたとき、下記関係式(1)を満足する上記(1)または(2)に記載の樹脂基板の成形方法。
y ≧ 150/x + 133 ・・・ 関係式(1)
) 前記樹脂基板は、そのビカット軟化温度が130℃以上155℃以下である上記(1)ないし()のいずれかに記載の樹脂基板の成形方法。
) 前記コート層は、その平均厚さが1μm以上50μm以下である上記(1)ないし()のいずれかに記載の樹脂基板の成形方法。
) 前記コート層は、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂を主材料として含有する上記(1)ないし()のいずれかに記載の樹脂基板の成形方法。
) 前記熱可塑性樹脂は、ポリカーボネート系樹脂である上記(1)ないし()のいずれかに記載の樹脂基板の成形方法。
本発明によれば、基材と、その少なくとも一方の面側に設けられたコート層とを有する樹脂基板を、加熱下で成形型を用いてプレス成形して、成形体を得る際に、成形型が有する凹面および凸面のうち、コート層に当接する側の面に、JIS L 1093に準拠して測定されたTD方向における伸び率が10%以上150%以下であるネルが敷かれている。そのため、得られた成形体が備えるコート層の表面に、ネルに起因するネル跡が、付着するのを的確に抑制または防止することができる。したがって、樹脂基板が成形されることで得られる成形体は、優れた外観を備えるものとなる。
本発明の樹脂基板の成形方法を用いて成形される成形体を、窓用部材としての風防板に適用した場合の第1実施形態を示す図である。 本発明の樹脂基板の成形方法を適用して、成形型を用いて図1に示す風防板を成形する成形工程を説明するための縦断面図である。 本発明の樹脂基板の成形方法を用いて成形される成形体を、窓用部材としての風防板に適用した場合の第2実施形態を示す図である。
以下、本発明の樹脂基板の成形方法を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
本発明の樹脂基板の成形方法は、熱可塑性樹脂を含む材料を用いて形成された基材と、前記基材の少なくとも一方の面側に設けられたコート層とを有する樹脂基板を、第1の型と第2の型とを備える成形型を用いて、加熱下でプレス成形する方法であり、前記第1の型が有する凹面と、前記第2の型が有する凸面とに、それぞれ、ネルを敷き、前記第1の型と前記第2の型との間に、前記樹脂基板を配置した状態で、加熱下において、前記第1の型と前記第2の型との離間距離を接近させることで、前記成形型で前記樹脂基板をプレスするプレス工程と、前記樹脂基板を、前記成形型でプレスした状態を維持しつつ、冷却することで、プレス成形された成形体を得る冷却工程とを有し、前記コート層に当接する側の前記ネルは、JIS L 1093に準拠して測定されたTD方向における伸び率が10%以上150%以下であることを特徴とする。
上記のように、本発明では、前記樹脂基板を、加熱下で成形型を用いてプレス成形して、成形体を得る際に、成形型が有する凹面および凸面のうち、コート層に当接する側の面に、JIS L 1093に準拠して測定されたTD方向における伸び率が10%以上150%以下であるネルが敷かれている。そのため、得られた成形体が備えるコート層の表面に、ネルに起因するネル跡が、付着するのを的確に抑制または防止することができる。したがって、樹脂基板が成形されることで得られる成形体は、優れた外観を備えるものとなる。
なお、ネルのMD方向(流れ方向)とTD方向(直角方向)との伸び率を比較した場合、通常、TD方向の伸び率の方が、MD方向の伸び率と比較して大きくなっている。そのため、本発明のようにTD方向の伸び率(%)を規定することで、ネル全体における伸び率のうち最大値の大きさを規定していると言うことができる。
本発明の樹脂基板の成形方法を適用して、基材と、その少なくとも一方の面側に設けられたコート層とを有する樹脂基板を成形して得られる成形体としては、具体的には、窓用部材が挙げられ、この窓用部材は、例えば、車両に用いられる車両用窓用部材に適用され、車両とは、人、または物を乗せて移動や作業をする乗り物全般を指す。なお、乗り物とは、例えば、乗用車、トラック、バスのような4輪乗用車、船舶、鉄道車両、飛行機、オートバイ、自転車、3輪スクーター、フォークリフト、工事現場等で所定の作業をする作業車、ゴルフカート、玩具用車両、遊園地の各種乗物等を含む。
また、車両用窓用部材とは、車両に乗った人または物と、外部との間に配され、車両に乗った人または物と外部とを、少なくとも一方向において遮る板状の構造体を指し、具体的には、車両用窓用部材としては、例えば、オートバイ、自転車、ゴルフカート、3輪スクーターおよびフォークリフト等が備える風防板(スクリーン)が挙げられ、さらには、その他車両が備える窓部が挙げられる。
さらに、この窓用部材としては、車両用窓用部材の他、例えば、ヘルメットおよびゴーグル等の頭部装着物に用いられる風防板(バイザー)等が挙げられる。
以下、本発明の樹脂基板の成形方法を説明するのに先立って、本発明の樹脂基板の成形方法を用いて成形される成形体として、上記の窓用部材(車両用窓用部材)の一例であるオートバイ等が備える風防板(車両用風防板)について説明する。
<風防板>
<<第1実施形態>>
まず、本発明の樹脂基板の成形方法を用いて成形された、窓用部材としての風防板の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の樹脂基板の成形方法を用いて成形される成形体を、窓用部材としての風防板に適用した場合の第1実施形態を示す図((a)平面図、(b)側面図、(c)図1(a)中のA-A線断面図、(d)図1(a)中のB-B線断面図)である。なお、以下では、説明の都合上、図1(a)の紙面手前側を「前」、紙面奥側を「後」、左側を「左」、右側を「右」、上側を「上」、下側を「下」と言い、図1(b)の紙面手前側を「右」、紙面奥側を「左」、左側を「前」、右側を「後」、上側を「上」、下側を「下」と言い、図1(c)、図1(d)の紙面手前側を「下」、紙面奥側を「上」、左側を「左」、右側を「右」、上側を「前」、下側を「後」と言う。
第1実施形態の風防板100は、図1に示すように、上下方向に長尺に形成された本体部(中央部)151と、本体部151の下側で、それぞれ、左右方向に突出する2つの側面部152と、側面部152を本体部151に連結する連結部153とを有しており、その全体形状が左右対称な形状をなしている。
本体部151は、風防板100のほぼ中央に位置し、上下方向(一方向に直交する方向)に長尺な形状をなしており、その下側でオートバイ等の本体に固定され、人(操縦者)は、この本体部151を介して、前方に位置するものを視認する。
この本体部151において、前面は、湾曲凸面で構成され、後面は、湾曲凹面で構成されており、これにより、本体部151は、前面側に突出して湾曲する湾曲形状(曲面形状)をなしている。また、本体部151において、この湾曲形状は、左右方向(一方向)に沿って形成されている。
2つの側面部152は、本体部151の下側で、それぞれ、左右方向に突出するように1つずつ形成され、オートバイ等の走行時に、側面側からの風の巻き込みを抑制するために設けられる。
この側面部152において、本体部151と同様に、前面は、湾曲凸面で構成され、後面は、湾曲凹面で構成されており、これにより、側面部152は、前面側に突出して湾曲する湾曲形状(曲面形状)をなしている。また、側面部152において、この湾曲形状は、左右方向に沿って形成されている。
2つの連結部153は、本体部151と、2つの側面部152との間に、それぞれ、介在してこれら同士を連結している。
この連結部153において、前面は、湾曲凹面で構成され、後面は、湾曲凸面で構成されており、これにより、連結部153は、後面側に突出して湾曲する湾曲形状(曲面形状)をなしている。また、連結部153において、この湾曲形状は、左右方向に沿って形成されている。
この風防板100は、後述する風防板の製造方法で詳述するように、1つの平板を用意し、その後、加熱下でプレス成形することで形成される。そのため、風防板100を構成する各部151~153は、一体的に形成されている。
このような本実施形態の風防板100では、風防板100が備える、本体部151、側面部152および連結部153が、曲面形状に成形された成形部を構成する。
かかる構成の風防板100は、図1(c)、図1(d)に示すように、熱可塑性樹脂を含む材料を用いて形成された基材1と、この基材1の前面側に設けられたコート層2とを有する積層体で構成されている。すなわち、風防板100は、本実施形態では、コート層2が、基材1の前面(一方の面)側に選択的に設けられた積層体で構成されている。
以下、風防板100(積層体)を構成する、基材1およびコート層2についてそれぞれ説明する。
<コート層>
コート層2(ハードコート層)は、本実施形態では、図1(c)、図1(d)に示すように、基材1の前面に形成され、後述する樹脂組成物を用いて形成されたものであり、風防板100に優れた耐候性、耐久性、耐擦傷性、熱成形性を付与するために設けられたものである。
このように、風防板100において、基材1の前面(一方の面)にコート層2が形成される場合、この風防板100を車両用風防板に適用した際には、オートバイ等(車両)を利用する人に対して、基材1を人側、コート層2を車両の外側にして配置することが好ましい。より具体的には、風防板100において、コート層2は、前面に設けられることが好ましい。
このコート層2を形成するために用いられる樹脂組成物は、本実施形態では、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂を主材料として含む。このように樹脂組成物が、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂を含むことにより、コート層2の表面硬度が高くなり、優れた耐擦傷性、さらには、優れた耐候性を風防板100に付与することができる。また、このようにシリコン変性(メタ)アクリル樹脂を主材料として含むコート層2に対して、後述する、本発明の樹脂基板の成形方法を適用することで、得られた風防板100が備えるコート層2の表面に、ネルに起因するネル跡が、付着するのをより的確に抑制または防止することができる。
以下、このコート層2を形成するために用いられる樹脂組成物について詳述する。
(シリコン変性(メタ)アクリル樹脂)
シリコン変性(メタ)アクリル樹脂(シロキサン変性(メタ)アクリレート)は、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来する構成単位が繰り返された主鎖と、この主鎖に連結し、シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体(副鎖)とを有するポリマー(プレポリマー)である。
すなわち、主鎖としての(メタ)アクリル系化合物と、副鎖としてのシロキサン結合(-Si-O-Si-)を有する化合物とが連結したポリマー(プレポリマー)である。
シリコン変性(メタ)アクリル樹脂は、前記主鎖を有することにより、コート層2に優れた透明性を付与し、また、前記シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体を有することにより、コート層2に優れた耐擦傷性および耐候性を付与することができる。
シリコン変性(メタ)アクリル樹脂の主鎖としては、具体的には、下記式(1)および式(2)の少なくとも一方の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーに由来する構成単位の繰り返しで構成されているものが挙げられる。
Figure 0007155789000001
(式(1)中、nは、1以上の整数を示し、R1は、独立して炭化水素基、有機基、または水素原子を示し、R0は、独立して炭化水素基または水素原子を示す。)
Figure 0007155789000002
(式(2)中、mは、1以上の整数を示し、R2は、独立して炭化水素基、有機基、または水素原子を示し、R0は、独立して炭化水素基または水素原子を示す。)
Figure 0007155789000003
(式(12)中、m、nは、1以上の整数を示し、R1、R2、R3は、それぞれ独立して炭化水素基、有機基、または水素原子を示し、R0は、独立して炭化水素基または水素原子を示す。)
また、前記主鎖の末端または側鎖には、水酸基(-OH)を有することが好ましい。すなわち、前記式(1)、式(2)または式(12)の場合には、R1および/またはR2が水素であることが好ましい。これにより、後述する基材1としてポリカーボネート系樹脂を用いた場合には、コート層2とポリカーボネート系樹脂との密着性を向上させることができる。したがって、コート層2の基材1に対する密着性が高まることから、平板を湾曲させることにより熱成形して風防板100を構成する本体部(中央部)151、側面部152および連結部153を形成する際に、基材1からコート層2が不本意に剥離することを防ぐことができる。そのため、風防板100の耐擦傷性および耐候性のさらなる向上を図ることができる。また、樹脂組成物中に後述するイソシアネート(イソシアネート基を有する硬化剤)が含まれる場合には、前記水酸基は硬化剤が有するイソシアネート基と反応してウレタン結合による架橋構造を形成する。これより、樹脂組成物の硬化を促進させることができ、コート層2の形成に寄与することができる。
また、かかる構成の主鎖の少なくとも1つの末端または側鎖には、シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体(副鎖)が結合している。
シロキサン結合は、結合力が高いため、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂が、シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体を有することにより、耐熱性、耐候性がより良好なコート層2を得ることができる。また、シロキサン結合の結合力が高いことで、硬質なコート層2を得ることができるため、風防板100の砂ほこりや飛び石等の衝撃に対する耐擦傷性をさらに増大させることができる。
シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体としては、具体的には、下記式(3)および式(4)の少なくとも一方のシロキサン結合を有する構成単位の繰り返しで構成されているものが挙げられる。
Figure 0007155789000004
(式(3)中、Xは、炭化水素基または水酸基を示す。)
Figure 0007155789000005
(式(4)中、Xは、炭化水素基または水酸基を示し、Xは、炭化水素基または水酸基から水素が離脱した2価の基を示す。)
前記シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体としては、具体的には、ポリオルガノシロキサンを有するものや、シルセスキオキサンを有するものが挙げられる。なお、シルセスキオキサンの構造としては、ランダム構造、籠型構造、ラダー構造(はしご型構造)等、いかなる構造であってもよい。
前記炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等のアルキル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ナフチル基、2-メチルフェニル基等のアリール基、ベンジル基、ジフェニルメチル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基、フェニル基、ビフェニル基等が挙げられる。
また、シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体の末端または側鎖には、不飽和二重結合が導入されていることが好ましい。これにより、樹脂組成物中に後述するウレタン(メタ)アクリレートが含まれる場合、このウレタン(メタ)アクリレートが有する(メタ)アクリロイル基と結合して、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂とウレタン(メタ)アクリレートとのネットワークを形成することができる。そのため、コート層2において、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂とウレタン(メタ)アクリレートとがより均一に分散し、その結果、コート層2は、前述した特性をその全体にわたってより均一に発現することができる。
前記樹脂組成物中におけるシリコン変性(メタ)アクリル樹脂の含有量は、特に限定されないが、前記樹脂組成物100質量部中、5質量部以上45質量部以下であることが好ましく、11質量部以上28質量部以下であることがより好ましい。前記樹脂組成物中におけるシリコン変性(メタ)アクリル樹脂の含有量が前記下限値未満であると、前記樹脂組成物により得られたコート層2の硬さが低下する場合がある。また、前記樹脂組成物中におけるシリコン変性(メタ)アクリル樹脂の含有量が前記上限値を超えると、前記樹脂組成物中におけるシリコン変性(メタ)アクリル樹脂以外の材料の含有量が相対的に減ってしまい、前記樹脂組成物を用いて形成されたコート層2の撓み性が低下してしまう可能性がある。
以上のような構成を有するシリコン変性(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、下記式(5)、式(6)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0007155789000006
(式(5)中、Meは、メチル基を示し、m、n、pは、それぞれ1以上の整数を示す。)
Figure 0007155789000007
(式(6)中、Meは、メチル基を示し、m、n、pは、それぞれ1以上の整数を示し、R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立して炭化水素基、有機基、または水素原子を示す。)
(ウレタン(メタ)アクリレート)
また、樹脂組成物は、さらに、ウレタン(メタ)アクリレートを含むものであることが好ましい。
シリコン変性(メタ)アクリル樹脂が備える、シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体の末端または側鎖に不飽和二重結合が導入されている場合、樹脂組成物中にウレタン(メタ)アクリレートが含まれることで、このウレタン(メタ)アクリレートが有する(メタ)アクリロイル基と不飽和二重結合とが結合して、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂とウレタン(メタ)アクリレートとのネットワークが形成される。その結果、樹脂組成物が硬化して硬化物が得られることにより、この硬化物で構成されるコート層2が形成される。なお、この(メタ)アクリロイル基と不飽和二重結合とが結合することによる樹脂組成物の硬化は、樹脂組成物を紫外線のようなエネルギー線を照射することにより硬化する光硬化により行われる。
以上のようにして形成されるコート層2において、ウレタン(メタ)アクリレートが含まれることにより、コート層2の柔軟性を向上させることができる。そのため、平板を湾曲させることにより熱成形して風防板100を構成する本体部(中央部)151、側面部152および連結部153を形成する際に、コート層2の表面におけるクラックの発生を的確に抑制することができることから、風防板100に優れた熱成形性を付与することができる。
さらに、上述したシリコン変性(メタ)アクリル樹脂と、このウレタン(メタ)アクリレートとの組み合わせとすることにより、優れた耐擦傷性と熱成形性とを高度に両立した風防板100を得ることができる。
このウレタン(メタ)アクリレートは、ウレタン結合(-OCONH-)を有する主鎖と、この主鎖に連結した(メタ)アクリロイル基とを有する化合物のことを言う。また、ウレタン(メタ)アクリレートは、モノマーまたはオリゴマーである。
かかる構成のウレタン(メタ)アクリレートは、ウレタン結合を有するため、柔軟性に優れた化合物である。このため、コート層2がウレタン(メタ)アクリレートを含むことで、コート層2にさらなる撓み性(柔軟さ)を付与することができる。そのため、熱成形して風防板100を構成する本体部151、側面部152および連結部153を形成する際に生じる湾曲部におけるクラックの発生を的確に抑制することができる。
また、ウレタン(メタ)アクリレート1分子中の(メタ)アクリロイル基の数は、2個以上であることが好ましい。前記ウレタン(メタ)アクリレート1分子中の(メタ)アクリロイル基の数が2個以上であると、ウレタン(メタ)アクリレートがシリコン変性(メタ)アクリル樹脂と結合してネットワークを形成することができるため、コート層2の硬化を促進することができる。これにより、コート層2の架橋密度があがり、コート層2の硬さをある程度高めることができる。このため、コート層2の耐擦傷性や耐溶剤性、さらには耐候性等の特性を向上させることができる。
なお、このウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリオールとジイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート化合物と、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーとの反応生成物として得ることができる。
また、ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートジオールが挙げられる。
ポリエーテルポリオールは、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エチレンオキシド-プロピレンオキシドランダム共重合で、数平均分子量が1300未満のものが好ましい。数平均分子量が1300以上のポリエーテルポリオールを用いた場合には、ポリエーテルポリオールの種類等によっては、コート層2の柔軟性が高すぎて、砂ほこりや飛び石等の衝撃によってコート層2に擦り傷等が付きやすくなるおそれがある。
また、ポリエステルポリオールは、例えば、ジオールとジカルボン酸もしくはジカルボン酸クロライドとを重縮合反応させたり、ジオールまたはジカルボン酸をエステル化して、エステル交換反応させたりすることにより得ることができる。ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等が挙げられ、ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール等が挙げられる。
さらに、ポリカーボネートジオールとしては、1,4-ブタンジオール、1,6-へキサンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、ポリオキシエチレングリコール等が用いられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーの例として、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、3-ヒドロキシブチルアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート等が挙げられる。
さらに、ウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、特に限定されないが、1.0×10以上2.0×10以下であることが好ましく、1.1×10以上1.5×10以下であることがより好ましい。ウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量が、前記範囲内であることにより、コート層2の撓み性と硬さとのバランスが良好なものとなり、熱成形により風防板100を構成する本体部(中央部)151、側面部152および連結部153を形成する際に生じる曲げ部におけるクラックの発生を抑制することができる。
なお、ウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、例えば、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により測定することができる。
また、樹脂組成物中におけるウレタン(メタ)アクリレートの含有量は、特に限定されないが、前記樹脂組成物100質量部中、10質量部以上75質量部以下であることが好ましく、17質量部以上50質量部以下であることがより好ましい。樹脂組成物中におけるウレタン(メタ)アクリレートの含有量が、前記下限値未満であると、ウレタン(メタ)アクリレートの種類によっては、コート層2の柔軟性が乏しくなるおそれがある。また、樹脂組成物中におけるウレタン(メタ)アクリレートの含有量が前記上限値を超えると、ウレタン(メタ)アクリレートの種類によっては、樹脂組成物中におけるウレタン(メタ)アクリレート以外の材料の含有量が相対的に減少し、風防板100の耐擦傷性が低下するおそれがある。
((メタ)アクリレートモノマー)
また、樹脂組成物は、さらに(メタ)アクリレートモノマーを含むものであることが好ましい。
シリコン変性(メタ)アクリル樹脂が備える、シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体の末端または側鎖に不飽和二重結合が導入されている場合、樹脂組成物中に(メタ)アクリレートモノマーが含まれることで、この(メタ)アクリレートモノマーが有する(メタ)アクリロイル基と不飽和二重結合とが結合して、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂と(メタ)アクリレートモノマーとのネットワークが形成され、その結果、樹脂組成物が硬化することでコート層2が形成される。
以上のようにして形成されるコート層2において、基材1とコート層2との密着性が向上する。そのため、熱成形により風防板100を構成する本体部(中央部)151、側面部152および連結部153を形成する際に、コート層2の基材1からの剥離が生じにくくなる。また、コート層2の表面硬度が高くなり、その結果、コート層2に優れた耐擦傷性を付与することができる。さらに、(メタ)アクリレートモノマーは、反応性希釈剤としての機能も果たすため、樹脂組成物の粘度を低下させ、樹脂組成物中に含まれる他の構成材料を(メタ)アクリレートモノマー中に均一に分散させる機能を発揮する。
(メタ)アクリレートモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化水添ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、3-ヒドロキシブチルアクリレート、イソボロニルアクリレート等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、風防板100の耐候性を向上させる観点から、芳香族を含まない樹脂であることが好ましい。
なお、これらのうち、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートモノマーを用いることにより、樹脂組成物から得られるコート層2において、多官能(メタ)アクリレートモノマー同士が架橋され、三次元架橋構造を形成することに起因して、コート層2の硬度がより高くなる。その結果、コート層2により優れた耐擦傷性を付与することができる。
また、2個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートモノマーは、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートモノマーと比較して低粘度であるため、樹脂組成物の希釈剤として寄与する。このため、2個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートモノマーを含むことにより、樹脂組成物のさらなる低粘度化を図ることができ、樹脂組成物の取扱性をより向上させることができる。
樹脂組成物中における(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、特に限定されないが、前記樹脂組成物100質量部中、15質量部以上55質量部以下であることが好ましく、27質量部以上55質量部以下であることがより好ましい。
樹脂組成物中における(メタ)アクリレートモノマーの含有量が前記下限値未満の場合、(メタ)アクリレートモノマーの種類によっては、基材1とコート層2の密着性が不足するおそれがある。そのため、熱成形により風防板100を構成する本体部(中央部)151、側面部152および連結部153を形成する際にコート層2が基材1から剥離しやすくなるおそれがある。さらには、コート層2の架橋密度が低下する場合があり、風防板100の耐擦傷性が低下するおそれがある。また、樹脂組成物中における(メタ)アクリレートモノマーの含有量が前記上限値超える場合、(メタ)アクリレートモノマーの種類によっては、熱成形する際にコート層2が伸びずに割れてしまう可能性がある。
(イソシアネート)
また、樹脂組成物は、さらにイソシアネートを含むものであることが好ましい。
これにより、樹脂組成物中において、イソシアネートは、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂を分子間で結合(架橋)させる架橋剤として機能する。すなわち、架橋剤としてのイソシアネートが含まれることで、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂が備える、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来する構成単位が繰り返された主鎖が備える水酸基と、イソシアネートが有するイソシアネート基とが反応してウレタン結合で構成された架橋構造が形成され、その結果、樹脂組成物の硬化物で構成されるコート層2が形成される。なお、この水酸基とイソシアネート基とが結合することによる樹脂組成物の硬化は、樹脂組成物を加熱することにより硬化する熱硬化により行われる。
以上のようにして形成されるコート層2においては、水酸基とイソシアネート基とが結合することにより形成されるネットワークを構築することができるため、コート層2の耐擦傷性および耐候性をより向上させることができる。
このイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート等が挙げられ、特に、イソシアネート基を3個以上有する多官能イソシアネートも含むことがより好ましい。これにより、コート層2の耐擦傷性および耐候性をさらに向上させることができる。
樹脂組成物中におけるイソシアネートの含有量は、特に限定されないが、前記樹脂組成物100質量部中、3質量部以上40質量部以下であることが好ましく、10質量部以上25質量部以下であることがより好ましい。樹脂組成物中におけるイソシアネートの含有量が、前記下限値未満であると、イソシアネートの種類によっては、コート層2の耐擦傷性が低下するおそれがある。また、樹脂組成物中におけるイソシアネートの含有量が前記上限値を超えると、イソシアネートの種類によっては、イソシアネートの未反応物が不純物として塗膜に残るため、塗膜から得られるコート層2の耐擦傷性および耐久性(塗膜の密着性)が低下してしまうおそれがある。
(その他の材料)
さらに、樹脂組成物には、上述した各種材料以外に、その他の材料が含まれていてもよい。
その他の材料としては、特に限定されないが、例えば、前記シリコン変性(メタ)アクリル樹脂以外の樹脂材料、光重合開始剤、紫外線吸収剤、着色剤、増感剤、安定剤、界面活性剤、酸化防止剤、還元防止剤、帯電防止剤、表面調整剤、親水化添加剤、充填材および溶剤等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
((紫外線吸収剤))
なお、樹脂組成物は、さらに、紫外線吸収剤を含むことにより、樹脂組成物から得られるコート層2の耐候性をより優れたものとすることができる。
この紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、トリアジン系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系の紫外線吸収剤が挙げられ、これらのうち1種または2種を組み合わせて用いることができる。これらの中でも特に、トリアジン系の紫外線吸収剤が好ましく用いられ、トリアジン系の紫外線吸収剤の中でも、ヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤がより好ましい。ここで、ヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤は水酸基を備えるものである。そのため、樹脂組成物中に架橋剤として機能するイソシアネートを含む場合、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂が有する水酸基と、イソシアネートが有するイソシアネート基とが反応して形成されるウレタン結合で構成された架橋構造(ネットワーク構造)中に、ヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤も組み込まれることになる。すなわち、樹脂組成物から得られるコート層2中に強固に保持されることとなる。そのため、コート層2の紫外線による劣化に起因する紫外線吸収剤のコート層2からの漏出(ブリードアウト)をより確実に防止または抑制することができ、風防板100の耐候性をより増大させることができる。
また、樹脂組成物中における前記紫外線吸収剤の含有量は、樹脂組成物中に必須成分として含まれるシリコン変性(メタ)アクリル樹脂と、選択成分として含まれるウレタン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレートモノマーおよびイソシアネートとを合わせて主成分としたとき、特に限定されないが、前記樹脂組成物の前記主成分100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下であるのが好ましく、1質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。主成分に対する紫外線吸収剤の含有量が前記下限値未満であると、紫外線吸収剤の種類によっては、コート層2の耐候性が低下するおそれがある。また、主成分に対する紫外線吸収剤の含有量が前記上限値を超えても、それ以上の耐候性の向上は見られず、紫外線吸収剤の種類によっては、コート層2の透明性や、コート層2の基材1に対する密着性を損ねるおそれがある。
((光重合開始剤))
また、樹脂組成物は、さらに、光重合開始剤を含むことにより、樹脂組成物中にウレタン(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリレートモノマーのうちの少なくとも一方を含む場合、樹脂組成物を光重合により硬化させることで得られるコート層2の硬化度をより優れたものとすることができる。そのため、コート層2を、より優れた耐擦傷性を有するものとすることができる。
この光重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインまたはベンゾインアルキルエーテル類、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸等の芳香族ケトン類、ベンジル等のアルファ-ジカルボニル類、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール等のベンジルケタール類、アセトフェノン、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルホリノプロパノン-1等のアセトフェノン類、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン等のアントラキノン類、2,4-ジメチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のフォスフィンオキサイド類、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム等のアルファ-アシルオキシム類、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等のアミン類等が挙げられ、これらの中でも特に、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルホリノプロパノン-1等のアセトフェノン類であることが好ましい。これにより、樹脂組成物の硬化を、光重合により、より迅速に進行させることができる。
また、樹脂組成物中における光重合開始剤の含有量は、特に限定されないが、前記樹脂組成物の前記主成分100質量部に対して、0.5質量部以上15質量部以下であるのが好ましく、1質量部以上10質量部以下であるのがより好ましい。主成分に対する光重合開始剤の含有量が前記下限値未満であると、光重合開始剤の種類によっては、樹脂組成物を十分に硬化させることが難しい場合があり、また、主成分に対する光重合開始剤の含有量が前記上限値を超えても、それ以上の向上は見られない。
((表面調整剤))
さらに、表面調整剤は、塗膜の基材への濡れ性や均一性、表面の平滑性および硬化した塗膜の表面スリップ性の向上を目的として添加されるものであり、例えばフッ素系、変性シリコーン系、アクリル系の調整剤を使用することができる。中でも、フッ素系および変性シリコーン系のうちの少なくとも一方を含むものが好ましい。これらは、ポリエーテル変性体、アルキル変性体、ポリエステル変性体から構成されているものが好ましく、特にポリエーテル変性体から構成されているものがより好ましい。
また、溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール、メチルエチルケトン、2-ぺンタノン、イソホロン、ジイソブチルケトンなどのケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸メトキシプロピルなどのエステル、エチルセロソルブなどのセロソルブ系溶剤、メトキシプロパノール、エトキシプロパノール、メトキシブタノールなどのグリコール系溶剤などが挙げられる。これらは単独または混合して使用することができる。これらの中でも、アルコール系、セロソルブ系、グリコール系は前記樹脂組成物中のイソシアネートと反応してしまう可能性があるため、単独で使用しないことが望ましい。溶剤の主成分として炭化水素系、ケトン系、エステル系を使用することがより好ましい。
以上のような樹脂組成物の硬化物で構成されるコート層2の平均厚さは、特に限定されないが、1μm以上50μm以下であることが好ましく、2μm以上30μm以下であることがより好ましく、5μm以上20μm以下であることがさらに好ましい。コート層2の厚さが前記下限値未満であると、風防板100の耐候性が低下する場合がある。一方、コート層2の厚さが前記上限値を超えると、熱成形して風防板100を構成する本体部151、側面部152および連結部153を形成する際に生じる湾曲部においてクラックが発生する場合がある。
<基材>
基材1は、熱可塑性樹脂を含む材料を用いて形成されたものであり、風防板100に軽量性、透明性、加工性および割れにくさ(耐衝撃性)と割れた場合の安全性を付与するものである。
熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアセタール樹脂等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、特にポリカーボネート系樹脂であるのが好ましい。ポリカーボネート系樹脂の硬化物は、透明性(透光性)や剛性等の機械的強度に富むため、基材1にポリカーボネート系樹脂を用いることで、風防板100の透明性や耐衝撃性を向上させることができる。また、ポリカーボネート系樹脂は、その比重が1.2程度であり、樹脂材料のなかでも軽いものに分類されることから、基材1を、ポリカーボネート系樹脂を主材料として構成されたものとすることで、基材1ひいては風防板100の軽量化が図られる。さらに、コート層2に含まれるシリコン変性(メタ)アクリル樹脂が水酸基を有する場合、ポリカーボネート系樹脂を含む基材1とコート層2との間の密着性を向上させることができるため、基材1からコート層2が不本意に剥離することを防ぐことができる。その結果、風防板100の耐擦傷性および耐候性のさらなる向上が図られる。
このポリカーボネート系樹脂としては、特に限定されず、各種のものを用いることができるが、中でも、芳香族系ポリカーボネート系樹脂であることが好ましい。芳香族系ポリカーボネート系樹脂は、その主鎖に芳香族環を備えており、これにより、基材1の強度をより優れたものとすることができる。
この芳香族系ポリカーボネート系樹脂は、例えば、ビスフェノールとホスゲンとの界面重縮合反応、ビスフェノールとジフェニルカーボネートとのエステル交換反応等により合成される。
ビスフェノールとしては、例えば、ビスフェノールAや、下記式(1A)に示すポリカーボネートの繰り返し単位の起源となるビスフェノール(変性ビスフェノール)等が挙げられる。
Figure 0007155789000008
(式(1A)中、Xは、炭素数1~18のアルキル基、芳香族基または環状脂肪族基であり、RaおよびRbは、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基であり、mおよびnは、それぞれ0~4の整数であり、pは、繰り返し単位の数である。)
なお、前記式(1A)に示すポリカーボネートの繰り返し単位の起源となるビスフェノールとしては、具体的には、例えば4,4’-(ペンタン-2,2-ジイル)ジフェノール、4,4’-(ペンタン-3,3-ジイル)ジフェノール、4,4’-(ブタン-2,2-ジイル)ジフェノール、1,1’-(シクロヘキサンジイル)ジフェノール、2-シクロヘキシル-1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、2,3-ビスシクロヘキシル-1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1’-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、2,2’-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
特に、ポリカーボネート系樹脂としては、ビスフェノールに由来する骨格を有するビスフェノール型ポリカーボネート系樹脂を主成分とするのが好ましい。かかるビスフェノール型ポリカーボネート系樹脂を用いることにより、基材1は、さらに優れた強度を発揮するものとなる。
また、基材1中のポリカーボネート系樹脂の含有量は、特に限定されないが、前記基材100質量部中、75質量部以上であるのが好ましく、85質量部以上であるのがより好ましい。ポリカーボネート系樹脂の含有量を上記範囲内とすることにより、基材1を、優れた強度を発揮するものとすることができる。
また、基材1は、必要に応じて、上述した、熱可塑性樹脂の他に、例えば、酸化防止剤、着色剤、フィラー、可塑剤、紫外線吸収剤、熱線吸収剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
また、基材1には、コート層2との密着性を向上させる目的で、サンドブラスト法や溶剤処理法等による表面の凹凸化処理、あるいは、コロナ放電処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理、電子線照射処理等の表面の酸化処理が施されていてもよい。
基材1の厚さは、0.4mm以上15mm以下であることが好ましく、1mm以上10mm以下であることがより好ましく、3mm以上4mm以下であることがさらに好ましい。基材1の厚さが前記下限値未満であると、熱可塑性樹脂の種類によっては、風防板100の機械的強度が低下する場合があり、また、基材1の厚さが前記上限値を超えると、熱可塑性樹脂の種類によっては、風防板100を曲面形状に成形することが困難になるおそれがある。
また、基材1としては、熱可塑性樹脂を含む材料により得られた単層構造のものや、熱可塑性樹脂を含む材料により得られた単層フィルムを2層以上積層した多層構造のものを用いることができる。
ここで、多層構造である場合には、熱可塑性樹脂を含むものであれば、同一の材料で構成されていてもよいし、異なる材料で構成されていてもよい。
例えば、多層構造である基材1としては、耐候性に優れた第1の耐侯層と、耐熱性に優れた耐熱層と、耐候性に優れた第2の耐侯層とがこの順で積層されたものが挙げられる。すなわち、1つの耐熱層を2つの耐候層で挟持した構成のものが挙げられる。これにより、基材1の耐候性および耐熱性のさらなる向上が図られる。
第1の耐候層および第2の耐侯層は、それぞれ、例えば、ポリカーボネート系樹脂と、紫外線吸収剤と、可塑剤とを含む材料で構成されたものが挙げられる。また、耐熱層は、例えば、ポリカーボネート系樹脂と、熱線吸収剤と、可塑剤とを含む材料で構成されたものが挙げられる。なお、耐候性を重視する場合、第1および第2の耐候層への紫外線吸収剤および/または可塑剤の添加を省略することができるし、さらに、耐熱性を重視する場合、耐熱層への熱線吸収剤および/または可塑剤の添加を省略することができる。
紫外線吸収剤としては、コート層2に含まれる紫外線吸収剤として説明したのと同様のものが挙げられる。
また、熱線吸収剤としては、例えば、カーボンブラック、炭素粉末、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、ITO、ATO等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
さらに、可塑剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリアミドオリゴマー、エチレンビスステアロアマイド、フタル酸エステル、ポリスチレンオリゴマー、ポリエチレンワックス、シリコーンオイル等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
<風防板の製造方法>
以上のような構成をなす風防板100は、例えば、以下のような製造方法により製造することができる。
図2は、本発明の樹脂基板の成形方法を適用して、成形型を用いて図1に示す風防板を成形する成形工程を説明するための縦断面図である。なお、以下の説明では、説明の都合上、図2中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
風防板100の製造方法は、基材を形成する基材形成工程と、基材の前面(一方の面)に樹脂組成物を塗布して塗布層を形成する塗布層形成工程と、塗布層を乾燥してコート層を形成することで樹脂基板(平板)を得る樹脂基板形成工程と、樹脂基板を曲面形状に成形して風防板を得る成形工程とを有する。
以下、各工程について説明する。
(基材形成工程)
まず、平板状をなす基材1を用意する。
この基材1は、例えば、押出法を用いて、基材1を構成する熱可塑性樹脂を含む材料を、溶融状態または軟化状態のシート状をなす溶融シートとした後、この溶融シートを、その両面を平坦化しつつ、厚さを所定の厚さに設定した状態で、冷却することで得ることができる。
(塗布層形成工程)
次に、基材1の前面に樹脂組成物を塗布することで塗布層を形成する。
樹脂組成物を塗布する方法としては、特に制限されないが、例えば、ロールコート法、フローコート法、スプレーコート法、カーテンコート法、ディップコート法、ダイコート法、バーコート法等の公知の方法が挙げられ、これらを単独または組み合わせて用いることにより、基材1の前面に樹脂組成物を塗布することができる。
(樹脂基板形成工程)
次に、塗布された塗布層を構成する樹脂組成物を乾燥させて硬化させることにより、コート層2を形成する。これにより、基材1の前面にコート層2が選択的に積層された積層体で構成される、平板状をなす樹脂基板50を得ることができる。
例えば、樹脂組成物が、溶剤(希釈溶剤)を含む場合には、基材1および雰囲気の温度を上げて加熱することで、十分に溶剤を乾燥して乾燥塗膜を形成することでコート層2が得られる。
なお、樹脂組成物中にイソシアネートが含まれる場合、この加熱により、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂とイソシアネートとの間で化学結合が形成されることによる架橋構造(ネットワーク構造)が構築され、これにより、乾燥塗膜が熱硬化することでコート層2が形成される。
塗布層を加熱する方法としては、特に限定されないが、例えば、オーブン等を用いて加熱する方法等が挙げられる。
さらに、樹脂組成物中に、ウレタン(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリレートモノマーのうちの少なくとも1種が含まれる場合、乾燥塗膜の形成の後に、紫外線等の電子線を照射することが好ましい。これにより、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂とウレタン(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリレートモノマーのうちの少なくとも1種との間で化学結合が形成されることによる架橋構造(ネットワーク構造)が構築され、これにより、乾燥塗膜が光硬化することでコート層2が形成される。
紫外線を照射する方法としては、例えば、一般の有電極型や無電極型の高圧水銀灯やメタルハライドランプなどを使用する方法等が挙げられる。また、100KeV程度の低電圧の電子線照射装置も使用可能である。なお、電子線により硬化する場合は、前述した光重合開始剤の樹脂組成物中への添加は不要である。
さらに必要に応じて、電子線を照射し終えた乾燥塗膜をさらに加熱するようにしてもよい。これにより、コート層2の熱硬化をより確実に進行させることができる。
なお、本実施形態では、基材1の前面に塗布法を用いて塗布層を形成した後、この塗布層を乾燥・硬化させることにより、基材1の前面にコート層2を形成する場合について説明したが、コート層2の形成方法は、かかる方法に限定されず、例えば、以下のような方法であってもよい。すなわち、予めシート状をなすコート層2を別途用意しておき、このコート層2を、基材1の前面に貼付することで、基材1の前面にコート層2を形成するようにしてもよい。なお、予め用意されたコート層2を貼付する構成とする場合、このコート層2上に粘着層が積層されているものを用いることもできる。
また、風防板100に印刷面を形成する場合には、次工程である成形工程に先立って、得られた平板のコート層2上に印刷を施して印刷面を形成しておく。
(成形工程)
次に、得られた樹脂基板50を、加熱下におけるプレス成形により曲面形状に成形して、本体部151、側面部152および連結部153を形成することで、風防板100を得る。
このように、プレス成形により樹脂基板を曲面形状に成形する成形工程に、本発明の樹脂基板の成形方法が適用される。以下、本発明の樹脂基板の成形方法が適用された成形工程について、詳述する。
[1]まず、第1の型210と、第2の型220とを備える成形型200を用意する。
この成形型200において、第1の型210は、凹面215を有し、第2の型220は、第1の型210の凹面215の形状に対応した凸面225を有し、第1の型210と第2の型220とは、凹面215と凸面225とが対向するように、第1の型210を上側、第2の型220を下側にして配置されている(図2(a)参照)。
[2]次に、第1の型210の凹面215と、第2の型220の凸面225とに、それぞれ、ネル300を敷き、その後、図2(a)に示すように、第1の型210と第2の型220との間に、樹脂基板形成工程を経ることで得られた樹脂基板50を配置する。
ここで、本発明では、凹面215および凸面225に敷かれるネル300のうち、コート層2に当接する側、すなわち、凹面215に敷かれるネル300として、JIS L 1093に準拠して測定されたTD方向における伸び率が10%以上150%以下であるものが用いられる。
そのため、次工程[3]で、加熱下において、成形型200を用いて樹脂基板50をプレスする際に、ネル300とコート層2との間における抵抗を低くして、ネル300に対してコート層2を円滑に滑らすことができ、さらに、次工程[4]における、樹脂基板50の冷却時に、樹脂基板50が収縮する際にも、コート層2の表面に生じる負荷を的確に抑制することができる。したがって、樹脂基板50を成形することで得られる成形体としての風防板100が備えるコート層2の表面に、ネル300に起因するネル跡が、付着するのを的確に抑制または防止することができる。したがって、樹脂基板が成形されることで得られる成形体は、優れた外観を備えるものとなる。
凹面215に敷かれるネル300としては、TD方向における伸び率が10%以上150%以下であるものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、ベロア、ストレッチベロア、コール天、ベルベット、スエード、シール、モケット、ビロード、プラッシュ等が挙げられるが、中でも、ストレッチベロアまたはベロアであることが好ましい。
また、このネル300を構成する繊維材料としては、例えば、綿、麻のような天然セルロース系繊維、絹、羊毛のような天然タンパク系繊維、レーヨン、キュプラ、アセテート、トリアセテート、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル、ビニロン、ポリオレフィン、塩化ビニリデンが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、中でも、綿、ポリエステルおよびポリウレタンであることが好ましい。
このネル300の起毛の種類および繊維材料の種類を、上記のような組み合わせとすることで、ネル300のTD方向における伸び率を確実に10%以上150%以下の範囲内に設定することができるが、この組み合わせとなっているネル300としては、具体的には、ポリエステルを主材料として構成されたベロア、ポリエステルおよびポリウレタンを主材料として構成されたストレッチベロア等が挙げられる。
なお、凹面215に敷かれるネル300のTD方向における伸び率は、10%以上150%以下であればよいが、10%以上100%以下であることが好ましく、30%以上100%以下であることがより好ましい。これにより、前記効果をより顕著に発揮させることができる。
また、凸面225に敷かれるネル300としては、凹面215に敷かれるネル300と同一のものであっても異なるものであってもよい。また、凹面215に敷かれるネル300と異なるものとする場合、このネル300は、そのTD方向における伸び率が10%以上150%以下を満足するものであっても満足しないものであってもよいが、満足するものであることが好ましい。これにより、基材1の表面に、ネル300に起因するネル跡が、付着することも的確に抑制または防止することができる。
[3]次に、加熱下において、第1の型210と第2の型220との離間距離を接近させる。
これにより、溶融状態または軟化状態とされた樹脂基板50が、成形型200でプレスされ、樹脂基板50のコート層2側の表面が第1の型210の凹面215の形状に追従し、樹脂基板50の基材1側の表面が第2の型220の凸面225の形状に追従した状態で変形する(図2(b)参照)。その結果、曲面形状とされた樹脂基板50、すなわち、本体部151、側面部152および連結部153に対応した形状とされた樹脂基板50が、溶融または軟化させた状態で、得られることとなる。
なお、樹脂基板50を加熱する方法としては、例えば、赤外線乾燥炉やガス式熱風乾燥炉、熱風循環式乾燥炉等の公知の方法が挙げられる。
ここで、前述の通り、本発明では、前記工程[2]において、凹面215および凸面225に敷かれるネル300のうち、凹面215に敷かれるネル300として、JIS L 1093に準拠して測定されたTD方向における伸び率が10%以上150%以下であるものが用いられている。
そのため、本工程[3]で、加熱下において、成形型200を用いて樹脂基板50をプレスする際に、凹面215に敷設されたネル300とコート層2との間における抵抗を低く設定することができる。そのため、ネル300に対してコート層2を円滑に滑らすことができる。
ネル300とコート層2との間における抵抗の大きさは、可能な限り、低く設定されていることが好ましいが、具体的には、平面上に載置されたネル300上に、コート層2がネル300側となるように樹脂基板50を配置し、さらに、樹脂基板50上に錘を載置して、3800N/mの押圧力を樹脂基板50からネル300に付与した状態で、150℃において10mm/sの速度で樹脂基板50を側面から引いた際のネル300と樹脂基板50との間における動的抵抗値は、5.0N以下となっていることが好ましく、0.1N以上2.0N以下となっていることがより好ましい。前記動的抵抗値の大きさが、かかる範囲内に設定されることで、ネル300とコート層2との間における抵抗の大きさが低く設定されていると言うことができ、これにより、ネル300に対してコート層2を円滑に滑らすことができる。そのため、風防板100が備えるコート層2の表面に、ネル300に起因するネル跡が、付着するのを的確に抑制または防止することができる。
また、ネル300に対してコート層2(樹脂基板50)を円滑に滑らせて、コート層2の表面におけるネル跡の付着を的確に抑制または防止するには、樹脂基板50のビカット軟化温度をy[℃]とし、ネル300のTD方向における前記伸び率をx[%]としたとき、下記関係式(1)を満足することが好ましい。
y ≧ 150/x + 133 ・・・ 関係式(1)
かかる関係式(1)を満足することにより、樹脂基板50をプレスする際に、凹面215に敷設されたネル300とコート層2との間における抵抗をより確実に低く設定することができるため、ネル300に対してコート層2をより円滑に滑らすことができる。
ここで、樹脂基板50のコート層2の変形しにくさを(Y)とし、ネル300の変形しにくさを(X)としたとき、(Y)<(X)の関係が成り立ち、コート層2が変形したときに、ネル跡が付着するものと考えられる。
そのため、風防板100の成形時の温度をT(℃)、樹脂基板50を構成する基材1およびコート層2の厚さや構成材料の配合等の構成条件をA、ネル300の構成材料や織り方等の構成条件をBとしたとき、(Y)<(X)の関係式はY(T,A)<X(T,B)で表すことができる。
また、樹脂基板50のコート層2の変形しにくさY(T,A)と、ネル300の変形しにくさX(T,B)とのうち、Y(T,A)は、成形温度T(℃)の時、樹脂基板50のビカット軟化温度yが低いものの方が、コート層2が変形し易くなるため、Y(y)で表すことができる。さらに、X(T,B)は、ネル300の伸び率x(25℃)が成形温度T(℃)に対して線形的に変化すると仮定した場合、ネルの伸び率x(25℃)が低いものの方が、ネル300が変形し難くなるため、1/X(x)で表すことができる。
そのため、Y(T,A)<X(T,B)を変形させて、Y(y)<1/X(x)の関係を満足するときに、ネル跡が付着することとなり、Y(y) ≧1/X(x)の関係を満足するときに、ネル跡の付着を、的確に抑制または防止することができる。
したがって、CおよびDを定数としたとき、y ≧C/x + Dの関係を満足するときに、ネル跡の付着を、的確に抑制または防止することができ、後述する実施例のデーターに基づいて、C=150、D=133であること、すなわち、前記関係式(1)を導出することができ、前記関係式(1)を満足するときに、ネル跡の付着を、的確に抑制または防止し得ると言うことができる。
また、ネル300は、JIS Z8807に準拠して測定された、かさ密度が0.30g/cm以上0.70g/cm以下であることが好ましく、0.50g/cm以上0.60g/cm以下であることがより好ましい。
さらに、樹脂基板50のビカット軟化温度は、130℃以上155℃以下であることが好ましく、145℃以上150℃以下であることがより好ましい。
ネル300のかさ密度および樹脂基板50のビカット軟化温度を、それぞれ、前記範囲内に設定することにより、ネル300に対してコート層2をより円滑に滑らせることができるため、コート層2の表面におけるネル跡の付着をより的確に抑制または防止することができる。
なお、これら工程[1]~工程[3]により、本発明の樹脂基板の成形方法におけるプレス工程が構成される。
[4]次に、溶融状態または軟化状態とされた樹脂基板50を、成形型200でプレスした状態を維持しつつ冷却する(冷却工程)。
これにより、溶融状態または軟化状態とされた樹脂基板50が、曲面形状を維持した状態で固化し、その結果、プレス成形された成形体として、本体部151、側面部152および連結部153を有する風防板100が成形される(図2(c)参照)。
ここで、前述の通り、本発明では、前記工程[2]において、凹面215および凸面225に敷かれるネル300のうち、凹面215に敷かれるネル300として、JIS L 1093に準拠して測定されたTD方向における伸び率が10%以上150%以下であるものが用いられている。
そのため、本工程[4]における、樹脂基板50の冷却時に、樹脂基板50が収縮する際に、コート層2の表面に生じる負荷を的確に抑制することができる。したがって、コート層2の表面に、ネル300に起因するネル跡が、付着するのが的確に抑制または防止された状態で、成形体としての風防板100を得ることができる。
以上のような工程を経ることで、平板状をなす樹脂基板50に凹凸が設けられ、その結果、本体部151、側面部152および連結部153を備える、図1に示す、風防板100が得られることとなる。
<第2実施形態>
次に、本発明の樹脂基板の成形方法を用いて成形された、窓用部材としての風防板の第2実施形態について説明する。
図3は、本発明の樹脂基板の成形方法を用いて成形される成形体を、窓用部材としての風防板に適用した場合の第2実施形態を示す図((a)平面図、(b)側面図、(c)図3(a)中のA-A線断面図、(d)図3(a)中のB-B線断面図)である。なお、以下では、説明の都合上、図3(a)の紙面手前側を「前」、紙面奥側を「後」、左側を「左」、右側を「右」、上側を「上」、下側を「下」と言い、図3(b)の紙面手前側を「右」、紙面奥側を「左」、左側を「前」、右側を「後」、上側を「上」、下側を「下」と言い、図3(c)、図3(d)の紙面手前側を「下」、紙面奥側を「上」、左側を「左」、右側を「右」、上側を「前」、下側を「後」と言う。
以下、第2実施形態の風防板100について、前記第1実施形態の風防板100との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態の風防板100は、図3に示すように、前記第1実施形態の風防板100と同様に、本体部151、側面部152および連結部153を備えており、全体形状が同様であるものの、基材1の前面側および後面側の双方の面側に設けられたコート層2を有する点において、第1実施形態の風防板100と異なっている。
すなわち、第2実施形態の風防板100において、コート層2は、基材1の前面側および後面側の双方に積層して設けられ、これにより、風防板100は、基材1と、この基材1を挾持する2つのコート層2とを有する積層体で構成されている。
風防板100がこのような積層体で構成される場合、基材1の両面にコート層2が形成されていることから、オートバイ等に適用された風防板100において、前面および後面の双方を、耐候性、耐久性および耐擦傷性に優れたものとし得る。
かかる構成の風防板100において、基材1は、前記第1実施形態の風防板100が備える基材1と同様の構成のものとすることができ、2つのコート層2は、前記第1実施形態の風防板100が備えるコート層2と同様の構成のものとすることができる。
なお、2つのコート層2は、同一の構成材料で構成されるものであってもよいし、異なる構成材料で構成されるものであってもよい。
このように、本実施形態の風防板100では、基材1の前面側および後面側の双方にコート層2が積層されているため、本発明の樹脂基板の成形方法を適用して、風防板100を成形する際に、凹面215および凸面225に敷かれるネル300のうち双方が、コート層2に当接することとなるため、凹面215および凸面225に敷かれる双方のネル300が、JIS L 1093に準拠して測定されたTD方向における伸び率が10%以上150%以下を満足するものが用いられる。そのため、樹脂基板50を成形することで得られる成形体としての風防板100が備える2つのコート層2の表面に、ネル300に起因するネル跡が、付着するのを的確に抑制または防止することができる。
そのため、第2実施形態の風防板100においても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
以上本発明の樹脂基板の成形方法について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
例えば、本発明の樹脂基板の成形方法には、任意の目的の工程が1または2以上追加されてもよい。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
1.風防板の形成
(実施例1)
<1>まず、塗布層を形成するにあたり、樹脂組成物を調製した。
具体的には、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂とアクリレートモノマーとの混合物(商品名「MFGコートSD-101」、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂:16質量部、アクリレートモノマー:5.5質量部、DIC株式会社製):21.5質量部とウレタン(メタ)アクリレートとして2官能ウレタンアクリレート(重量平均分子量1.3×10、粘度17000mPa・s[60℃]、商品名「EBECRYL8804」、ダイセルオルネクス株式会社製):26質量部、4官能アクリレートモノマー(商品名「NKエステルA-TMMT」、新中村化学工業株式会社製):14.7質量部、2官能アクリレートモノマー(商品名「NKエステルA-BPE-4」、新中村化学工業株式会社製):21.8質量部、イソシアネートとして3官能ポリイソシアネート(商品名「バーノックDN-992S」、DIC株式会社製):16質量部を調製して、混合体(主成分)を得た。
さらに、得られた混合体100質量部に対して、添加物として、紫外線吸収剤(ヒドロキシフェニルトリアジン誘導体、商品名「Tinuvin400」、BASF製):6.5質量部と、表面調整剤(商品名「グラノール450」、共栄社化学株式会社製):0.04質量部を添加し、不揮発分が30%になるように溶剤としての酢酸ブチルを加えて撹拌し、全ての成分を溶解させ、樹脂組成物を得た。
<2>次に、熱可塑性樹脂としてポリカーボネート(商品名「ユーピロンE-2000-N」、三菱瓦斯化学工業株式会社製)を用意し、これを用いて押出法により、厚さ4.0mmの基材1を得た。
<3>次に、前記工程<2>で得られた基材1に、前記工程<1>で得られた樹脂組成物を、バーコーターにて乾燥後の厚さ(コート層の厚さ)が11μmになるように塗布して塗布層を得た。
そして、塗布層が塗布された基材を65℃の熱風オーブンにて10分間乾燥させた後、FUSIONシステムズ製無電極UVランプを用い、照射距離90mm、コンベア速度2.6mm/min、照射強度200mW/cm、積算光量700mJ/cmという条件下で紫外線を照射することで塗布層を光硬化させた。この照射後、さらに、60℃の熱風オーブンにて48時間加熱することで塗布層を熱硬化させることで、基材1上にコート層2が形成された、平板状をなす樹脂基板50を得た。
なお、得られた樹脂基板50のビカット軟化温度は、148℃であった。
<4>次に、図2に示す成形型200が備える、第1の型210の凹面215と、第2の型220の凸面225とに、それぞれ、ネル300を敷き、その後、第1の型210と第2の型220との間に、前記工程<3>で得られた樹脂基板50を配置した状態で、加熱下において、第1の型210と第2の型220との離間距離を接近させることで、軟化した状態で曲面形状とされた樹脂基板50を得た。
なお、凹面215と凸面225とに敷設したネル300は、ともに、ポリエステルおよびポリウレタンを主材料として構成されたストレッチベロアであり、JIS L 1093に準拠して測定されたTD方向における伸び率、および、JIS Z8807に準拠して測定されたかさ密度は、それぞれ、100%および0.56g/cmであった。
また、樹脂基板50の加熱の条件は180℃×10分であり、第1の型210と第2の型220との離間距離を接近させた際の押圧力は3800N/mであった。
<5>次に、軟化状態とされた樹脂基板50を、成形型200でプレスした状態を維持しつつ冷却することで、曲面形状とされた実施例1の風防板100を得た。
(実施例2)
前記工程<1>において、樹脂組成物を調製する際に用いた混合体として、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂とアクリレートモノマーとの混合物(商品名「MFGコートSD-101」、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂:3質量部、アクリレートモノマー:1.0質量部、DIC株式会社製):4質量部とウレタン(メタ)アクリレートとして2官能ウレタンアクリレート(重量平均分子量1.3×10、粘度17000mPa・s[60℃]、商品名「EBECRYL8804」、ダイセルオルネクス株式会社製):40質量部、4官能アクリレートモノマー(商品名「NKエステルA-TMMT」、新中村化学工業株式会社製):20質量部、2官能アクリレートモノマー(商品名「NKエステルA-BPE-4」、新中村化学工業株式会社製):33質量部、イソシアネートとして3官能ポリイソシアネート(商品名「バーノックDN-992S」、DIC株式会社製):3質量部を含有するものを用いたこと以外は、前記実施例1と同様にして、曲面形状とされた実施例2の風防板100を作製した。
(実施例3)
前記工程<1>において、樹脂組成物を調製する際に用いた混合体として、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂とアクリレートモノマーとの混合物(商品名「MFGコートSD-101」、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂:30質量部、アクリレートモノマー:10.3質量部、DIC株式会社製):40.3質量部とウレタン(メタ)アクリレートとして2官能ウレタンアクリレート(重量平均分子量1.3×10、粘度17000mPa・s[60℃]、商品名「EBECRYL8804」、ダイセルオルネクス株式会社製):16質量部、4官能アクリレートモノマー(商品名「NKエステルA-TMMT」、新中村化学工業株式会社製):4.7質量部、2官能アクリレートモノマー(商品名「NKエステルA-BPE-4」、新中村化学工業株式会社製):9質量部、イソシアネートとして3官能ポリイソシアネート(商品名「バーノックDN-992S」、DIC株式会社製):30質量部を含有するものを用いたこと以外は、前記実施例1と同様にして、曲面形状とされた実施例3の風防板100を作製した。
(実施例4)
前記工程<4>において、凹面215と凸面225とに敷設するネル300として、ウレタン成分を10%含むポリエステルを主材料として構成されたベロアを用いたこと以外は、前記実施例1と同様にして、曲面形状とされた実施例4の風防板100を作製した。
(実施例5)
前記工程<4>において、凹面215と凸面225とに敷設するネル300として、ウレタン成分を5%含むポリエステルを主材料として構成されたベロアを用いたこと以外は、前記実施例1と同様にして、曲面形状とされた実施例5の風防板100を作製した。
(比較例1)
前記工程<4>において、凹面215と凸面225とに敷設するネル300として、綿を主材料として構成されたフランネルを用いたこと以外は、前記実施例1と同様にして、曲面形状とされた比較例1の風防板100を作製した。
2.評価
各実施例および比較例の風防板を、以下の方法で評価した。
<1>ネル跡の付着性評価
各実施例および比較例の風防板100について、それぞれ、コート層2の表面におけるネル跡の付着の有無を、目視にて観察し、次のように評価した。
◎:コート層2の表面におけるネル跡の付着が認められない。
〇:コート層2の表面におけるネル跡の付着が若干ではあるものの認められる。
△:コート層2の表面において、
外観を損ねない程度のネル跡の付着が認められる。
×:コート層2の表面において、
外観を損ねるネル跡の付着が明らかに認められる。
<2>関係式(1)の算出
各実施例および比較例の風防板100のうち上述したネル跡の付着性評価において、◎または〇と評価された実施例1~5について、測定された樹脂基板50におけるビカット軟化温度y[℃]、および、ネル300のTD方向における伸び率x[%]に基づいて、最小二乗法を用いて、y ≧C/x + Dの関係式に近似させたところ、C=150、D=133に近似し得ること、すなわち、◎または〇と評価された実施例1~5では、下記関係式(1)を満足することが分かった。さらに、×と評価された比較例1では、下記関係式(1)を満足しない結果が得られた。
y ≧ 150/x + 133 ・・・ 関係式(1)
以上のようにして得られた各実施例および比較例の風防板における評価結果を、それぞれ、下記の表1に示す。
Figure 0007155789000009
表1に示したように、各実施例では、コート層2に当接する側のネル300のTD方向における伸び率が10%以上150%以下を満足しており、これにより、コート層2の表面におけるネル跡の付着が抑制されている結果が得られた。
これに対して、比較例1では、コート層2に当接する側のネル300のTD方向における伸び率が10%未満であり、そのため、コート層2の表面にネル跡が付着してしまう結果を示した。
1 基材
2 コート層
50 樹脂基板
100 風防板
151 本体部
152 側面部
153 連結部
200 成形型
210 第1の型
215 凹面
220 第2の型
225 凸面
300 ネル

Claims (7)

  1. 熱可塑性樹脂を含む材料を用いて形成された基材と、前記基材の少なくとも一方の面側に設けられたコート層とを有する樹脂基板を、第1の型と第2の型とを備える成形型を用いて、加熱下でプレス成形する樹脂基板の成形方法であって、
    前記第1の型が有する凹面と、前記第2の型が有する凸面とに、それぞれ、ネルを敷き、前記第1の型と前記第2の型との間に、前記樹脂基板を配置した状態で、加熱下において、前記第1の型と前記第2の型との離間距離を接近させることで、前記成形型で前記樹脂基板をプレスするプレス工程と、
    前記樹脂基板を、前記成形型でプレスした状態を維持しつつ、冷却することで、プレス成形された成形体を得る冷却工程とを有し、
    前記コート層に当接する側の前記ネルは、綿、ポリエステルおよびポリウレタンのうちの少なくとも1種を主材料として含有し、JIS Z8807に準拠して測定された、かさ密度が0.30g/cm 以上0.70g/cm 以下であり、かつ、JIS L 1093に準拠して測定されたTD方向における伸び率が10%以上150%以下であることを特徴とする樹脂基板の成形方法。
  2. 平面上に載置された前記ネル上に、前記コート層が前記ネル側となるように前記樹脂基板を配置し、さらに、該樹脂基板上に錘を載置して、3800N/mの押圧力を前記樹脂基板から前記ネルに付与した状態で、150℃において10mm/sの速度で前記樹脂基板を側面から引いた際の前記ネルと前記樹脂基板との間における動的抵抗値が5.0N以下となっている請求項1に記載の樹脂基板の成形方法。
  3. 前記樹脂基板のビカット軟化温度をy[℃]とし、前記ネルの前記TD方向における伸び率をx[%]としたとき、下記関係式(1)を満足する請求項1または2に記載の樹脂基板の成形方法。
    y ≧ 150/x + 133 ・・・ 関係式(1)
  4. 前記樹脂基板は、そのビカット軟化温度が130℃以上155℃以下である請求項1ないしのいずれか1項に記載の樹脂基板の成形方法。
  5. 前記コート層は、その平均厚さが1μm以上50μm以下である請求項1ないしのいずれか1項に記載の樹脂基板の成形方法。
  6. 前記コート層は、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂を主材料として含有する請求項1ないしのいずれか1項に記載の樹脂基板の成形方法。
  7. 前記熱可塑性樹脂は、ポリカーボネート系樹脂である請求項1ないしのいずれか1項に記載の樹脂基板の成形方法。
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