JP6918511B2 - 塗布型酸化物半導体、薄膜トランジスタ、表示装置および塗布型酸化物半導体の製造方法 - Google Patents

塗布型酸化物半導体、薄膜トランジスタ、表示装置および塗布型酸化物半導体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、例えば有機EL(Electro-Luminescence)素子((OLED(Organic Light Emitting Diode))やLCD(Liquid Crystal Display)を駆動するために用いられる塗布型酸化
物半導体、その塗布型酸化物半導体を備えた薄膜トランジスタ(TFT:ThinFilm Transistor)、その薄膜トランジスタを備えた表示装置、および上記塗布型酸化物半導体の製造方法に関し、特に、移動度が大きく製造が容易な塗布型酸化物半導体をチャネルに用いるように構成した薄膜トランジスタに関する。
酸化物半導体は、ディスプレイデバイス向けの駆動用トランジスタとして適用され、スパッタリング等の真空製膜法によって製造されたものにおいて良好な半導体特性が得られることが知られている。
特に、In-Ga-Znを金属種とするIGZO系の酸化物半導体TFTにおいては、通常、5〜10cm2/Vs以上の移動度を示すことが知られている。
しかし、酸化物半導体TFTの製造に真空製膜法を用いた場合、大がかりな真空装置が必
要であるため、生産効率の低下、製造コストの上昇および環境負荷の増大といった問題が生じており、さらに100インチ以上の超大型ディスプレイの実現を考えると、真空チャン
バー内では製造サイズに限界があり、新しい成膜技術によって形成される酸化物半導体TFTの開発が急務である。
すなわち、真空を必要とせず大気圧下で簡便に製膜される酸化物半導体であることが必要とされる。
そのような酸化物半導体として、塗布プロセスにより製造される塗布型酸化物半導体が注目されており、その研究開発も盛んになされている。
塗布型酸化物半導体は、金属酸化物の前駆体溶液を塗布して酸化させることにより形成される。例えば、有機金属塩を用い熱酸化等により形成されたものが知られている(特許文献1を参照)。また、金属アルコキシド(M-OR)を前駆体として用い、例えば400度以上の高温処理によって酸化処理を行なうことで形成される酸化物半導体も知られている。
なお、酸化物半導体を形成する材料としては種々の報告がなされており、In-Ga-Znを金属種とするIGZO系、In-ZnをベースとするIZO系、およびIn-Sn-Gaを金属種とするITZO系等の報告が多くなされている。さらにインジウムやガリウム等の環境負荷が大きい材料を使用しないレアメタルフリーの酸化物半導体材料(Zn-O系やZn-Sn-O系)の研究も進められて
いる(非特許文献1を参照)。
特開2007-42689号公報
Jpn. J. Appl. Phys. 53, 02BA02 (2014) Review of solution-processed oxide thin-film transistors
しかしながら一般的に塗布プロセスにより作製された塗布型酸化物半導体材料は、真空下におけるスパッタリング等により製膜された酸化物半導体と比較し、前駆体溶液中にお
ける残留有機物等が残留する影響により、移動度を大きくすることができず、良好なスイッチング特性は得ることが困難であった。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、有機物等の残留量が高い塗布型酸化物半導体において、従来よりも大きい電子(ホール)移動度を得ることができるとともに、緻密な構造とすることができる塗布型酸化物半導体、薄膜トランジスタ、表示装置およびその塗布型酸化物半導体の製造方法を提供することを目的とする。
上記のような目的を達成するために、
本発明の塗布型酸化物半導体は、
所定の酸化物半導体溶液を塗布、乾燥してなる酸化物半導体層内に水素が導入され、水素が導入された該酸化物半導体層は、紫外線が照射された上で、酸化されてなることを特徴とするものである。
また、本発明の薄膜トランジスタは、
基板上に、少なくとも、ゲート電極、ゲート絶縁膜、塗布型の酸化物半導体層、およびソース・ドレイン電極がこの順に積層された構成とされ、
前記酸化物半導体層は、酸化物半導体の前駆体溶液が前記ゲート絶縁膜上に塗布、乾燥された状態で、該酸化物半導体層内に水素が導入され、水素が導入された該酸化物半導体層は、紫外線が照射された上で、酸化されてなることを特徴とするものである。
また、前記水素を導入する処理を、水素雰囲気中におけるプラズマ処理とすることができる。
また、前記水素を導入する処理を、水素雰囲気中におけるアニール処理とすることができる。
また、前記酸化する処理を、焼成処理、ならびにマイクロ波照射または紫外線照射による加熱処理のいずれかとすることができる。
また、前記紫外線照射による加熱処理は、波長300nm以下の紫外線を用いることが好ましい。
また、本発明の表示装置は、上記いずれかの薄膜トランジスタによって表示駆動部が構成されていることを特徴とするものである。
また、本発明の塗布型酸化物半導体の製造方法は、
酸化物半導体の前駆体溶液をベースとなる層上に塗布した後、少なくとも該酸化物半導体の層である酸化物半導体層内に水素を導入する水素導入工程、および水素が導入された該酸化物半導体層を酸化する酸化工程の2つの工程をこの順に行う塗布型酸化物半導体の製造方法において、
前記水素導入工程および前記酸化工程の間に、前記水素が導入された該酸化物半導体層に紫外線を照射する紫外線照射工程を行うことを特徴とするものである。
なお、本件の特許請求の範囲において、「ベース」という技術用語を用いているが、この「ベース」とは、いわゆる「基板」のみならず、フィルム状やその他の形状態様の、前駆体溶液を塗布し得る被塗布体全体を指称するものとする。
ところで、本願発明は、上述したように、塗布型酸化物半導体層を形成する際に、半導体層内に水素を導入する処理を行うとともにこの半導体層を酸化する処理を続けて行うことにより、移動度が高く、良好な半導体特性が得られるとともに、緻密な構造とされた酸
化物半導体を得ることができる(本願明細書、段落0013、0014参照)。
従来の塗布型酸化物半導体においては、スパッタ等を用いて作製された酸化物半導体層に比べて、どうしても残留有機物やイオン性不純物が多いために、移動度が低くなって半導体特性が劣化したものとなっていた。
これでは、製造設備を簡便とし得る塗布型の酸化物半導体を利用することが難しい(本願明細書段落0003参照)。
このような、本願発明と従来技術の差は酸化物半導体層の結晶性の違い、および残留有機物やイオン性不純物の種類や量の違い等によるものであるが、酸化物半導体層の構成材料と残留有機物の微妙な組み合わせにより、その移動度も大幅に変化するものであるから、その違いに係る構造または特性を文言により一概に特定することは不可能である。
一方、本願発明と従来技術に係る結晶性の違いについては、X線回折(XRD)等を用いて測定することが原理的には可能であり、実際に、後述する表4において示すように、1、2点であればこれを測定することは可能であるが、本願発明と従来技術の塗布型酸化物半導体をそれぞれ統計上有意となる数だけ製造あるいは購入し、XRDスペクトラムの数値的特徴を測定し、その統計的処理をした上で、本願発明と従来技術を区別する有意な指標とその値を見いださなければならず、膨大な時間とコストがかかるものである。しかも、従来技術については膨大な可能性があるため、統計上有意となる数を一義的に決めることもできない。
上記のような指標とその値を見いだし、これによって本願発明の特徴を物の構造又は特性により直接特定することは、およそ実際的ではない。
そこで、本願出願人においては、請求項1、2に係る塗布型酸化物半導体、請求項3〜8に係る薄膜トランジスタ、および請求項9に係る表示装置について、やむを得ず、物の製造方法の発明に係る請求項の記載スタイルで表現するようにしている。
本発明の塗布型酸化物半導体、薄膜トランジスタ、表示装置および塗布型酸化物半導体の製造方法によれば、水素導入工程により塗布型酸化物半導体層に、水素導入することにより、どうしても割合が多くなる塗布型の酸化物半導体中の残留有機物等に対して加水分解等の分解反応を促進させることができ、塗布型酸化物半導体層の外部に、残留物(不純物)を放出することが容易となる。
これにより、塗布型の酸化物半導体層中の残留物割合を大幅に低下させることができ、酸化物半導体の半導体特性、特に電子(またはホール)移動度を大幅に改善した塗布型酸化物半導体、薄膜トランジスタおよび表示装置を得ることができ、また、上記のような塗布型酸化物半導体が得られる、塗布型酸化物半導体の製造方法を得ることができる。
なお、上記水素導入工程の前後で酸化処理を行う工程を適用することにより、M−O−M(Mは金属、Oは酸素を示す)の酸化反応を促進することができ、緻密な膜の形成を実現することができる。
また、酸化処理を行う工程を設けたことにより、薄膜トランジスタの焼成温度を400度
以下とした場合であっても、塗布型酸化物半導体の半導体特性を良好なものとすることができる。
このように、焼成温度を低下できるため、安価なフレキシブル基板等への薄膜トランジスタの適用が可能となる。
参考形態および実施形態に係る薄膜トランジスタの断面構造を示すものである。 参考形態に係る薄膜トランジスタのうち塗布型酸化物半導体の製造方法を示すフローチャートである。 参考例1と比較例1の各サンプルについて移動度の比較を説明するグラフである。 従来の塗布型酸化物半導体の熱分析結果を示すグラフである。 従来技術に係る薄膜トランジスタの断面構造を示すものである。
以下、本発明の実施形態に係る塗布型酸化物半導体、薄膜トランジスタ(TFT)、表示
装置および塗布型酸化物半導体の製造方法を図面を用いて説明する。
参考形態
図1は、参考形態に係るTFTの断面構造を示すものであり、基板1上に、ゲート電極2、ゲート絶縁膜3、塗布型酸化物半導体からなる半導体層4、ソース・ドレイン電極6を積層してなる。なお、図示されてはいないが、ソース・ドレイン電極6の上に保護層を設けてもよい。
上記基板1は、例えばガラスやプラスチックフィルムから構成されるが、フレキシブルなプラスチックフィルムで構成することにより、フレキシブルなディスプレイ(例えば有機ELディスプレイ)に適用することが可能である。なお、図示していないが、表面にバリア層や平坦化層(無機薄膜や有機薄膜)をスパッタリング等により製膜形成することができる。
また、上記ゲート電極2は、例えば、金、チタン、クロム、アルミニウム、モリブデンまたはそれらの合金や積層膜等により形成することができる。膜厚は、例えば10〜100nmとされる。なお、ゲート電極2は、フォトリソグラフィー法(紫外線露光による微細加工技術)等を用いて、必要な大きさ、形状に、パターニングされている。
また、上記ゲート絶縁膜3は、比誘電率の高い無機酸化物皮膜により構成される。このような無機酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコニウム酸チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム、チタン酸ビスマス、チタン酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、トリオキサイドイットリウム等が挙げられる。それらのうち、特に好ましいものとしては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、および酸化チタンが挙げられる。
さらに、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の無機窒化物も好適に用いることができる。
また、上記半導体層(塗布型酸化物半導体層)4は、金属成分を含む酸化物前駆体溶液を塗布法によりゲート絶縁膜3上に塗布して薄膜化し、半導体化することにより形成する。
このとき前駆体溶液としては、金属原子含有化合物が挙げられ、金属原子含有化合物には、金属原子を含む、金属塩、ハロゲン化金属化合物、有機金属化合物等を挙げることができる。金属塩、ハロゲン金属化合物、有機金属化合物の金属元素としては、Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Ir、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Tl、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Pm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等を挙げることができる。
特に半導体化する場合における金属元素は亜鉛およびスズに限られず、また、半導体特性を示すインジウム酸化物(InO)、亜鉛酸化物(ZnO)、インジウム-亜鉛酸化物(IZO)、インジウム-ガリウム-亜鉛酸化物(IGZO)、亜鉛-スズ酸化物(ZnSnO)、チタン酸化物(TiO
)等の金属酸化物であればよい。
金属塩としては、硝酸塩、塩化物塩、硫酸塩、酢酸塩といった無機酸塩から形成されるものを用いることができる。具体的な亜鉛化合物としては、塩化亜鉛(Zinc chloride)、
酢酸亜鉛(Zinc acetate)、酢酸亜鉛水和物(Zinc acetate hydrate)、硝酸亜鉛(Zinc nitrate)が挙げられる。またスズ化合物としては、塩化スズ(Tin chloride)、酢酸スズ(Tin acetate)等が挙げられる。
これらの金属塩を溶媒に溶解させ、前駆体溶液を作製する。溶解させる溶媒としては、水や、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、2−メトキシエタノール、アセトニトリル等を用いることができる。また安定化剤として、モノエタノールアミンやアセチルアセトン等を混ぜてもよい。
また、PHを変更し、酸性を塩基性に、また塩基性を酸性に替えて、溶解性を改善するようにしてもよい。
前駆体溶液の調整は、金属塩濃度を溶液の濃度が0.1mol/Lから1mol/Lとなるように秤量して、溶液中にて撹拌して溶解することで得られる。
このようにして得られた前駆体溶液をゲート絶縁膜3の上面(図1の紙面上方向の表面)に塗布することにより前駆体溶液の薄膜を形成する。
また、半導体層4の厚みは、溶液濃度によって、また、溶液を塗布する回数によっても調整することができる。
なお、この厚みとしては1nmから100nmとすることが好ましい。
上記塗布する手法は、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法等の塗布による方法、印刷やインクジェット等のパターニングによる手法等を用いることができる。
また、塗布された薄膜を、乾燥・焼成することによって、半導体層4を得ることができる。すなわち、この塗布処理の後に、プリベーク処理を、100〜150℃で5〜10分程度行い
、塗布膜を乾燥させ、その後大気中にて金属塩の酸化を促進させるための焼成処理を行う。この焼成処理は150〜400℃で0.5〜6時間行い半導体層4を形成する。
また、この焼成処理は、上述したように大気中における熱による焼成処理に限られるものではなく、マイクロ波による加熱装置を用いた焼成処理や、水銀ランプからの紫外線による酸化処理(焼成処理)によっても行うことができる。
なお、それぞれの焼成処理の工程は大気中だけでなく、酸素または窒素、あるいはアルゴン等の不活性ガス中においても行うことができる。
その後、半導体層4に水素を導入する水素導入処理が施される。
上記水素導入処理は、例えば、水素ガス雰囲気下においてプラズマ照射を用いることにより行うことができる。このプラズマ照射は、例えば、真空雰囲気中において、200Wの出力によりスパッタリングを20秒間に亘って行うことによりなされる(図2のステップS3を参照)。
この水素導入処理を行なうことによって、半導体層4中に含まれていた残留有機物やイオン性不純物(半導体層4中の不要なコンタミネーション)を還元して除去することができる。また、この水素導入処理は、上述した焼成処理を行う前に行ってもよく、その場合には、上述した水素導入処理前の焼成処理を割愛し、水素導入処理後の酸化処理のみを1
回行うことにより製造工程を簡略化することができる。
例えば、半導体層4中に、残留有機物であるR(例えばCHCOO)が、O原子を間に挟ん
で金属元素(例えばZnやSn)と結合していたとすると、ここにプラズマ状のHが導入され
た場合、加水分解が生じ、R-OHが半導体4の外部に放出される。これにより、半導体層4中から、残留有機物(半導体層4中の不要なコンタミネーション)を除去することができ、塗布型酸化物半導体からなる半導体層4の特性を良好なものとすることができる。また半導体層4中で、イオン性不純物であるX(例えば、金属塩を形成するCl-やNO3 -)が、金
属元素と結合していたとすると、同様の効果によりH-Xが半導体4の外部に放出される。
これにより、半導体層4中から、イオン性不純物を除去することが可能である。
すなわち、本参考形態に係る塗布型酸化物半導体(TFT)は、前躯体溶液を塗布する手法をとっていることで半導体層4中に残留することになった残留有機物(不純物)を大幅に除去した状態とすることができる。
この状態の変化を化学式で記載すると、以下のようになる。
M-OR+HO ⇒M-OH+R-OH
(但し、Mは金属、Rは例えば酢酸イオン)
また、本参考形態に係る塗布型酸化物半導体(TFT)においては、水素ガスの雰囲気中においてプラズマ処理を行なって、上記水素導入処理を行なうようにしているが、水素ガス雰囲気中においてアニール処理(熱処理)を施したものとすることで上記水素導入処理を行なうこともできる。
すなわち、プラズマ照射中に半導体層4にアニール処理を施すことにより、水素ガスによる還元反応を促進させることが可能となる。これにより、水素イオンの還元性を利用し、半導体層4中の残留有機物を還元することができる。
また図5に示すようなエッチングストップ層105を設けるTFTにおいては、シリコン
酸化膜SiOx等からなるエッチングストップ層105を化学気相成長Chemical Vapor Deposition(CVD)等により形成することができ、この場合にはシランガスから、水素がいわゆる副産物として生成されるが、このようにして生成される水素によっても半導体層4に水素を導入する水素導入処理を行うことが可能である。
本参考形態に係る塗布型酸化物半導体(TFT)においては、この水素導入処理の後、酸化処理を施されて、緻密な構造の半導体層4に形成される。
この酸化処理は、前述の焼成処理と同様に、大気中において半導体層4を焼成することで酸化反応を促進する。勿論、酸素雰囲気中において焼成すれば、より良好に酸化反応を促進することができる。
このように、焼成による酸化処理を施すことによって、例えばアルコールが除去され、半導体層4中で、金属アルコキシドおよびその低次縮合物の重縮合反応を進行させることによって、緻密な金属酸化物膜が形成され半導体層4を硬化させることができる。
また、上述した酸化処理は、大気中や酸素雰囲気中における熱による焼成ではなく、マイクロ波による加熱装置による酸化処理であってもよいし、また水銀ランプ等からの紫外線による酸化処理を施しても良く、いずれの処理によっても緻密な構造の半導体を形成することができる。
また、上述したソース・ドレイン電極6は、ITO、IZO等の透明材料の他、Al、Ag、Cr、Mo、Ti等の金属材料やこれらの合金を用いて形成することができる。二層以上を積層することによりコンタクト抵抗を低減させることができ、また密着性を向上させることができるので好ましい。
また、エッチング溶液としてはリン酸・酢酸・硝酸の混酸(PANエッチャント)やシュウ
酸等様々なエッチング液を用いることができる。
なお、ソース・ドレイン電極6をウエットエッチングでパターニングする際には、半導体層4へのダメージをより緩和するために、エッチングストップ層を導入して半導体特性の劣化を抑制することも可能である。
次に、参考形態に係る塗布型酸化物半導体の製造方法について、図2のフローチャートを用いて説明する。
まず、塗布型酸化物半導体をTFT素子のチャネル層として用いることを前提として説明する。すなわち、この場合には、塗布型酸化物半導体を製造する前に、基板1上にゲート電極2およびゲート絶縁膜3を図1に示すように積層形成しておく。
すなわち、ガラスや樹脂等からなる基板1を洗浄し、基板1の表面にバリア層や平坦化層(無機薄膜や有機薄膜)を形成し(図示せず)、その後、ゲート電極2を積層し、必要な形状にパターニングする。なお、微細形状をパターニングするには、フォトリソグラフィー(紫外線露光による微細加工技術)を用いる。次に、ゲート電極2上および基板1(ゲート電極2が形成されていない領域)上にゲート絶縁膜3を形成する。ゲート絶縁膜3としては、シリコン酸化膜(SiO2)を400nmの厚みに形成したものを用いる。成膜は化学気相成長法やスパッタリング法を用いる。勿論、有機材料を用いて成膜することもできる。
この後、ゲート絶縁膜3上に半導体層(塗布型酸化物半導体)4を形成する。すなわち、半導体層4は、金属成分を含む酸化物前駆体溶液を塗布法によりゲート絶縁膜3上に塗布して薄膜化し、乾燥することにより形成する。
図2に示すように、まず、半導体の前駆体溶液を調整する、塗布型半導体溶液調整工程(S1)を行う。
このとき前駆体溶液としては、金属原子含有化合物を用いる。半導体化する場合における金属元素は亜鉛およびスズの酸化物の他、前述したような半導体特性を示す種々の金属酸化物を用いる。
次に、この金属酸化物の金属塩を生成する。金属塩としては、前述したような硝酸塩、塩化物塩、硫酸塩、酢酸塩といった無機酸塩から形成されるものを用いることができる。
次に、これらの金属塩を溶媒に溶解させ、前駆体溶液を作製する。溶解させる溶媒としては、前述した、水や、エタノール、プロパノール、エチレングリコール等を用いることができる。
この後、金属塩濃度を溶液の濃度が0.1mol/Lから1mol/Lとなるように秤量し、溶液中にて撹拌し溶解することにより得られる。
次に、ステップ1(S1)で得られた前駆体溶液をゲート絶縁膜3上に塗布する(S2)。
半導体層4の塗布厚みは、溶液濃度および塗布する回数によって、例えば1nmから100nmの所定の厚さに調整する。
塗布する方法は、前述したように、スプレーコート法やスピンコート法等の塗布方法、さらには印刷やインクジェット等のパターニングによる塗布方法等を用いることができる。
このようにして塗布された液状の半導体層4を、乾燥・焼成する。すなわち、ホットプレートやオーブン等によって半導体層4を、例えば10分間乾燥させ、その後、オーブン中を300℃の大気雰囲気に維持した状態とし、1時間に亘って焼成処理を行う(S2)。
次に、水素プラズマ工程(S3)において、例えばスパッタリング処理(200W、20秒)により水素をプラズマ化して、ステップ2(S2)で得られた半導体層4中に水素を導入
する。
最後に、酸化工程(S4)においてアニーリングにより熱処理を行い半導体層4をより緻密な構造とする。
以下、参考形態に対応する参考例1に係る塗布型酸化物半導体(TFT)について、比較例1との比較を行うことにより説明する。
(概要)
厚みが200nmの熱酸化膜が付された低抵抗シリコンウエハを用い、参考例1のTFTと比較例1のTFTを作製した。
すなわち、参考例1においては、シリコンウエハ上に塗布型半導体層をスピンコート法により塗布形成し、この後、水素ガスをプラズマ化することにより水素導入処理を行い、その後、大気雰囲気中にて焼成することにより酸化処理を行った。
一方、比較例1は、水素導入工程以外は参考例1と同様の手法で作製した。
参考例1における水素導入処理による効果の検証を正確なものとすべく、参考例1に係るTFTと比較例1に係るTFTの焼成時間をそろえるように、比較例1に対してのみ焼成処理を2回行った。
参考例1の具体的な説明>
酢酸亜鉛 二水和物(Zn(CH3COO)2・2H2O Aldrich) 、塩化スズ・二水和物(SnCl2・2H2O Aldrich)を秤量し、それぞれ2−メトキシエタノール(Aldrich脱水溶媒)中に溶解させ、下記表1に示す塗布型半導体前駆体溶液を作製した。このときサンプルの濃度は0.3mol/Lとした。
Figure 0006918511
その後、温度を60℃に維持した状態で3時間撹拌することで完全に溶解した状態の前駆
体溶液を作製した。
続いて、得られた前駆体溶液をスピンコート法によりシリコンウエハ上に塗布し、この塗布されたシリコンウエハを、150℃に設定したホットプレート上に載置して10分間乾燥
させた。その後、オーブン中を300℃の大気雰囲気に維持した状態とし、1時間に亘って
焼成処理を行うことにより半導体層4を形作った。このときの膜厚は20nmであった。
この後、半導体層4をフォトリソグラフィー法を用いてアイランド状にパターニングした後、焼成処理を行なった。
この後、パターニングした半導体層4に対し、神鋼精機社製表面改質装置を用いて水素導入処理を行った。処理条件としては、下記表2に示された条件(2つの参考例1サンプルA、Bは同一の条件)にて処理時間を10〜60secの範囲内で調整することにより水素導入処理を行った。その後、オーブン中を300℃の大気雰囲気に維持した状態とし、1時間に亘って焼成処理を行うことにより半導体層4を形成した。
Figure 0006918511
続いて、メタルマスクによりマスキングを行った状態で、モリブデンを用いてDCスパッタリングを行うことによりソース・ドレイン電極6を形成し、評価用参考例1のTFT(サンプルA、B)を作製した。
<比較例1>
参考例1と同様にして作製した塗布型半導体用の前駆体溶液を、参考例1と同様にスピンコート法によりシリコンウエハ上に塗布し、この塗布されたシリコンウエハを、参考例1と同様に、150℃に設定したホットプレート上に載置して10分間乾燥させた。
この後、オーブン中を、下記表3の温度条件にて大気雰囲気に維持した状態とし、1時間に亘って焼成処理を行った。このときの焼成処理を焼成処理1とした(3つの比較例1
サンプルは、互いに異なる条件)。このときの膜厚は20nmであった。
この後半導体層(4)をフォトリソグラフィー法を用いてアイランド状にパターニングした。
この後、オーブン中を、下記表3の温度条件にて大気雰囲気に維持した状態とし、1時間に亘って焼成処理を行った。このときの焼成処理を焼成処理2とした。この焼成処理2は、上記参考例1の焼成処理とこの比較例1の焼成処理の焼成時間を合わせるためのものであり、上記焼成処理1と同じ条件に設定されている。
続いて、メタルマスクによりマスキングを行った状態で、モリブデンを用いてDCスパッタリングを行うことによりソース・ドレイン電極(6)を形成し、比較例1のTFT(サンプルC、D、E)を作製した。
Figure 0006918511
参考例1の評価>
上述したようにして得られた参考例1および比較例1のサンプルを比較して、参考例1のTFTの評価を行う。
まず、水素導入処理と酸化処理の両方の処理を行った参考例1のTFTのサンプルにおいては、300℃の低温焼成下においても、図3のグラフに示すごとく、300℃で焼成した比較例1のTFTのサンプル C 、や350℃で焼成した比較例1のTFTのサンプル D はもとより、400℃で焼成した比較例1のTFTのサンプル Eよりも良好な特性が得られた。
続いて、比較例1について、塗布型前駆体溶液に対する熱分析(TG-DTA(熱重量分析(Thermo-Gravimetry Differential Thermo-Gravimetric Analysis)))による微分熱重量測定(Derivative thermo grabimetry)を行った。その結果を図4に示す。図4からも明らかなように、430℃付近に大きな分解ピークがあり、温度が、この分解ピークに至っていない400℃付近では、有機残留物やイオン性不純物がまだ存在していることを示唆している。
したがって、比較例1においては400℃においても、酸化が十分に進んだ膜とはなっていないため、400℃以下における焼成処理(酸化処理)を行っても良好な半導体特性を得ることはできないと考えられる。
これに対して、参考例1のサンプルのように、水素導入処理および酸化処理の両方の処理を行なった場合には、焼成処理の温度が400℃以下であっても、残留有機物やイオン性不純物が少なく、特性が良好な半導体層を形成することができ、また、安価なフレキシブル基板への適用が可能となる。
続いて、高分解能X線反射率測定装置(XRR:X-ray Reflectometer)を用いて、参考例1に係るサンプルAおよび比較例1に係るサンプルCについて各々膜密度測定を行った。その結果を下記表4に示す。
XRRは、X線の入射角度を連続的に変化させながら試料表面に極めて浅い角度で入射させ、反射率プロファイルを測定する手法である。
X線が極低角で入射する場合、屈折率は1よりも僅かに小さく、 臨界角以下では屈折の効果が大きくなり全反射が生じる。全反射条件近傍で、X線反射率(入射X線強度に対する鏡面反射X線強度)を測定し、薄膜モデル(周知の理論式を用いて得る)から計算されたX線プロファイルとフィッティングさせることで、薄膜の密度を評価することができる。
なお、下記表4からも明らかなように、参考例1に係るサンプルAのように300度以下の焼成処理(酸化処理)を施したものであっても、比較例1に係るサンプルCと比べて、より緻密な膜を形成することができる。
Figure 0006918511
実施形態
実施形態に係る塗布型酸化物半導体(および薄膜トランジスタ(以下、単にTFTと称する))は、図1に示す上記参考形態に係るTFTと同様の層構成をなしており、共通する部分についての説明は、重複記載により煩雑となることを避けるために、参考形態における説明によって代替し、以下において、参考形態とは異なる点を中心として説明する。
また、実施形態に係る塗布型酸化物半導体は、実施形態に係るTFT内の塗布型酸化物半導体として用いることを前提としており、水素導入処理に加えて紫外線照射処理を行うことにより、水素による還元反応および紫外線照射による分解反応を生ぜしめ、両反応が相俟って、一層効果的に残留成分を除去することを可能としたものである。
また、上記分解後に酸化処理を行うことにより、酸化物半導体において必要なM-O-Mの酸化反応を促進することができ、緻密な膜形成を実現することができる。
この手法を用いることにより、300℃以下の焼成温度においても、塗布型酸化物半導体に対する高性能化が実現可能である。
なお、塗布型酸化物半導体を安価なフレキシブル基板等に適用することも可能となる。
また、実施形態に係るTFTは、基板1上に、ゲート電極2、ゲート絶縁膜3、塗布型酸化物半導体からなる半導体層4、ソース・ドレイン電極6を積層してなる。ただし、この実施形態に係る半導体層4は、この半導体層4の前駆体溶液がゲート絶縁膜3上に塗布された後、半導体層4内に水素が導入され、この半導体層4に紫外線が照射され、さらに、この半導体層4が酸化されてなる。
ここで、上記基板1、ゲート電極2、ゲート絶縁膜3、ソース・ドレイン電極6の具体的な構成は上記参考形態のものと同様であるので、詳しい説明は省略する。
上記実施形態に係るTFTは、半導体層4が、この水素導入処理の後、酸化処理を施す前に、紫外線を照射する処理が行われることにより形成される。
この紫外線処理を施すことで、水素導入処理と相俟って、より効果的に半導体層4中の残留成分を分解することができる。
すなわち、実施形態のTFTにおいては、酸化物半導体前駆体溶液をゲート絶縁膜3上に塗布することにより半導体層4を設定し、この半導体層4において、水素を膜中に導入する処理、紫外線を照射する処理および熱プロセスによる酸化する処理をこの順に適用して、所望とする半導体層4を作製する。
次に、実施形態に係る塗布型酸化物半導体(およびTFT)の製造方法について説明する。ここで、上述した塗布型酸化物半導体層を形成する際の、前駆体溶液の構成および塗布手法としては上記参考形態のものと同様である。
また、塗布された酸化物半導体層を、乾燥・焼成することによって、半導体層4を形作る点、およびその手法としても上記参考形態のものと同様である。
この後、水素を半導体層4へ導入する処理を行う。
水素導入処理としては、たとえば水素ガス雰囲気下におけるプラズマ照射を用いることができる。そのほか水素雰囲気中におけるアニール処理を用いることができる。プラズマ照射中にアニールを加えることにより、水素ガスによる還元反応を促進させることが可能となる。これにより、水素イオンによる還元性を利用し、残留有機物を還元することができる。また図1に示すようにエッチングストップ層を積層するTFTにおいては、シリコン酸化膜SiOx等エッチングストップ層を化学気相成長Chemical Vapor Deposition(CVD)等により形成する際に、シランガスより発生する水素によっても半導体層に水素を導入することが可能である。このように、水素を半導体層4へ導入する処理については参考形態のものと同様である。
続いて波長300nm以下の紫外線を半導体層4に照射する処理を行う。水素処理に続けて行うことにより、水素処理の還元反応により生じた原子欠損により、より効果的に残留成分を分解することが可能となる。紫外線照射を行うときに、酸素ガスをフローさせ、オゾン化させて分解処理を行うことにより、さらに分解処理性能を高めることができる。さらに、紫外線照射時の温度を100℃以上400℃以下と加熱しながら照射をすることも分解処理性能を高める効果があり、好ましい条件として考えられる。より好ましくは、酸素ガスフロー下において、基板温度を300℃以上に設定し、15分以上30分以下の処理を行うことである。紫外線照射に使うランプとしては、主に185nmおよび254nmの波長を有する水銀ランプや、波長172nmよりもさらに低波長側の波長を有するエキシマランプやメタルハライドランプ等を用いることができる。本実施形態のものにおいては、上記紫外線による照射処理を行なう点において参考形態のものと異なり、この点により、より優れた効果を奏することができる。
続いて、紫外線による照射処理が行なわれた半導体層4に酸化処理を行う。
ここでの酸化処理プロセスは前述の焼成処理と同様に、大気中において焼成することで酸化反応を促進することができる。また酸素雰囲気下においても行うことができる。酸化処理を行うことで、理想的な緻密な膜を形成することが可能となる。
また焼成処理においては、大気中における熱による焼成ではなく、マイクロ波による加熱装置による反応であっても、また水銀ランプといった紫外線による酸化処理を用いることもできる。
以下、水素処理工程と酸化工程の間に、紫外線照射工程を行うことの意義を説明する。
水素処理は、水素による還元反応を用いた分解反応であるため、下記のような反応プロセスを経由して残留物が除去されると考えられる。
M-OR+H⇒ M+R-OH
(但し、Mは金属、Rは例えば酢酸イオン)
水素処理においては、水素が、残留物と反応するのと同時に半導体層4中の酸化物とも反応して、これを還元するため、金属成分の結合は酸素欠損状態になり、また残存した酸素に関しても、水素による還元反応によりHで終端されると考えられる。
この後行われる紫外線照射工程においては、紫外線照射により、残留有機物の結合を切断する大きさのエネルギーを有することになるため、水素による還元反応による分解反応で除去できなかった成分が分解されると考えられる。
また水素導入処理によって、半導体層4における上部(バックチャネル部)は残留物の脱離後の再付着等によって汚染されると考えられる。この再付着がなされる部分は、半導体においてソース・ドレイン電極6の部位とのコンタクトを考慮するときわめて重要な部分であり、この部分の洗浄を併せて行うことで、特性改善を行うことができる。特にトップゲート構造を採用するTFTにおいては、顕著な効果が期待できるプロセスと考えられる。
また上記紫外線照射工程では、酸素中で紫外線照射を行うことにより、オゾンまたは活性酸素が発生し、より強く残留物の分解反応を行うことができる。
さらに、半導体層4内に存在するHで終端された部位を反応性の高いオゾンまたは活性酸素で処理した場合には、Hが容易に脱離することが考えられ、酸化処理後の半導体層4中における水素の残留量を抑えることができ、より理想的な塗布型酸化物半導体を形成することができると考えられる。
なお、参考形態に係る塗布型酸化物半導体の製造方法については、図2に示すフローチャートを用いて表されているが、実施形態に係る塗布型酸化物半導体の製造方法については、図2に示すフローチャートにおいて、ステップS3とステップS4との間に紫外線照射工程(例えば、ステップS3.5)を挿入することにより表される。
以下、本発明の実施形態に対応する実施例に係るTFTについて、参考形態に対応する参考例2、比較例2、および比較例3に係る塗布型酸化物半導体(TFT)の場合と比較することにより説明する。
(概要)
厚みが200nmの熱酸化膜が付された低抵抗シリコンウエハを用い、実施例のTFT、参考例2のTFT、比較例2のTFTおよび比較例3のTFTを各々作製した。
すなわち、実施例においては、シリコンウエハ上に塗布型半導体層をスピンコート法により塗布形成し、この後、水素ガスをプラズマ化することにより水素導入処理を行い、その後、紫外線の照射処理を行ない、さらに大気雰囲気中にて焼成することにより酸化処理を行った。
これに対し、参考例2においては、紫外線の照射処理を行なわないこと以外は、実施例と同様の処理とした。比較例2においては、酸化処理を行なわないこと以外は実施例と同様の処理とした。比較例3においては、水素導入処理をおよび紫外線の照射処理を行なわないこと以外は、実施例と同様の処理とした。
実施例における水素導入処理による効果の検証を正確なものとすべく、実施例に係るTFTと比較例2に係るTFTの焼成時間をそろえるように、比較例2に対してのみ焼成処理を2回行った。
実施例の具体的な説明>
硝酸インジウム水和物(In(NO3)3・xH2O Aldrich製)、硝酸ガリウム水和物(Ga(NO3)3・xH2O Aldrich製)、硝酸亜鉛水和物(Zn(NO3)2・xH2O Aldrich製)を秤量し、それぞれ純水中に溶解させ、下記表5に示す塗布型半導体前駆体溶液を作製した。このときサンプルの濃度は0.3 mol/Lとした。
Figure 0006918511
その後、温度を60℃に維持した状態で3時間撹拌することで完全に溶解した状態の前駆
体溶液を作製した。
続いて、得られた前駆体溶液をスピンコート法によりシリコンウエハ上に塗布し、この塗布されたシリコンウエハを、150℃に設定したホットプレート上に載置して10分間乾燥
させた。その後、オーブン中を300℃の大気雰囲気に維持した状態とし、1時間に亘って
焼成処理を行うことにより半導体層4を形作った。このときの膜厚は20nmであった。
この後、半導体層4をフォトリソグラフィー法を用いてアイランド状にパターニングした後、焼成処理を行なった。
この後、パターニングした半導体層4に対し、神鋼精機社製表面改質装置を用いて水素導入処理を行った。
その後、300nm以下の紫外線を照射可能な低圧水銀ランプを有するUVオゾンクリーナー(filgen社製)を用いて30minにおいて紫外線照射を行った。
その後、オーブン中を300℃の大気雰囲気に維持した状態とし、1時間に亘って焼成処理を行うことにより半導体層4を形成した。
続いて、メタルマスクによりマスキングを行った状態で、モリブデンを用いてDCスパッタリングを行うことによりソース・ドレイン電極6を形成し、実施例評価用のTFTを作製した。
参考例2
実施例と同様にして作製した塗布型半導体用の前駆体溶液を、実施例と同様にスピンコート法によりシリコンウエハ上に塗布し、この塗布されたシリコンウエハを、実施例と同様に、150℃に設定したホットプレート上に載置して10分間乾燥させた。
この後、オーブン中を、300℃の大気雰囲気に維持した状態とし、1時間に亘って焼成処理を行った。このときの膜厚は20nmであった。
続いて半導体層4をフォトリソグラフィー法を用いてアイランド状にパターニングした。
この後、パターニングした半導体層(4)に対し、表面改質装置(神鋼精機社製)を用いて水素導入処理を行った。その後、300℃の大気雰囲気オーブンにて1時間酸化処理を行うことにより半導体層(4)を形成した。続いてメタルマスクを用いてモリブデンをDCスパッタリング法によりソース・ドレイン電極(6)を形成し、参考例2評価用のTFTを作製した。
<比較例2>
実施例と同様にして作製した塗布型半導体用の前駆体溶液を、実施例と同様にスピンコート法によりシリコンウエハ上に塗布し、この塗布されたシリコンウエハを、実施例と同様に、150℃に設定したホットプレート上に載置して10分間乾燥させた。
この後、オーブン中を、300℃の大気雰囲気に維持した状態とし、1時間に亘って焼成
処理を行った。このときの膜厚は20nmであった。
続いて半導体層(4)をフォトリソグラフィー法を用いてアイランド状にパターニングした。
この後、パターニングした半導体層(4)に対し、表面改質装置(神鋼精機社製)を用いて水素導入処理を行った。
続いて、300nm以下の紫外線を照射可能な低圧水銀ランプを有するUVオゾンクリーナー(filgen社製)を用いて30minにおいて紫外線照射を行うことにより半導体層(4)を形成した。続いてメタルマスクを用いてモリブデンをDCスパッタリング法によりソース・ドレイン電極(6)を形成し、比較例2評価用のTFTを作製した。
<比較例3>
実施例と同様にして作製した塗布型半導体用の前駆体溶液を、実施例と同様にスピンコート法によりシリコンウエハ上に塗布し、この塗布されたシリコンウエハを、実施例と同様に、150℃に設定したホットプレート上に載置して10分間乾燥させた。
この後、オーブン中を、300℃の大気雰囲気に維持した状態とし、1時間に亘って焼成
処理を行った。このときの膜厚は20nmであった。
続いて半導体層(4)をフォトリソグラフィー法を用いてアイランド状にパターニングした。
この後、パターニングした半導体層(4)に対し、300℃の大気雰囲気オーブンにて1時間酸化処理を行うことにより半導体層(4)を形成した。
この後、メタルマスクを用いてモリブデンをDCスパッタリング法によりソース・ドレイン電極(6)を形成し、比較例3評価用のTFTを作製した。
Figure 0006918511
実施例の評価>
上述したようにして得られた実施例参考例2、比較例2および比較例3のサンプルを比較して、実施例のTFTの評価を行う。
まず、上記各サンプルについて、電界効果移動度(移動度)およびヒステリシスを測定し、その測定結果を表6に示した。
表6では、その測定結果の良否を、移動度、ヒステリシスともに、極めて好ましい場合は◎、好ましい場合は○、普通の場合は△、好ましくない場合は×の記号で表すようにした。この表6の結果から明らかなように、移動度、ヒステリシスともに好ましいとされたものは実施例のものだけであった。また、参考形態の範囲となる参考例2は、移動度において実施例のものよりも劣るが、総合的に見れば許容範囲であるといえる結果となった。
このように、実施例のTFTによれば、参考形態に係る参考例2よりも更に優れた半導体特性のものとすることができる。
一方、比較例2と比較例3は、移動度とヒステリシスのいずれかが、好ましくないと判定されており、総合的に見て許容範囲であるとはいえない。
本発明の塗布型酸化物半導体、薄膜トランジスタ、表示装置および塗布型酸化物半導体の製造方法としては、上記実施形態に記載したものに限られるものではなく、その他の種々の態様の変更が可能である。
例えば、上記塗布型酸化物半導体層としては、金属酸化物を構成するための金属元素としては、ZnおよびSnの一方もしくは両方からなるものばかりではなく、これらZnやSnに替え、あるいはこれらZnやSnとともに、他の金属元素を構成要素とする金属酸化物を含むようにしてもよい。
また、半導体層内に水素を導入する手法としても上記実施形態のプラズマ処理やアニール処理に限られるものではなく、半導体層中に水素を導入して、還元反応により半導体層中の残留有機物を半導体層外に排出し得る水素導入手法であればよい。
また、半導体層に紫外線を照射する手法としては上述した実施形態のものに限られるものではなく、前述した水銀ランプ、エキシマランプ、メタルハライドランプの他、超高圧UVランプ等の種々のタイプの紫外線照射光源を用いることができる。
また、塗布型酸化物半導体は、薄膜トランジスタのチャンネル層として用いられるものに限られず、液晶、プラズマ、EL等の表示素子、太陽電池、さらにはタッチパネル等にも好適に用いることができる。
なお、本発明の実施形態においては、半導体層は塗布型とされており、それ以外の各層は必ずしも塗布型とはされていないが、全ての層を塗布型とするようにしてもよく、この場合には、真空中で処理を行うためのシステムを全て不要とすることができる。
また、上述した薄膜トランジスタを用いて表示駆動部を形成し、例えば、有機ELディスプレイ(OLED)やLCD等の種々の表示装置を形成することができる。
1、101 基板
2、102 ゲート電極
3、103 ゲート絶縁膜
4、104 半導体層(塗布型酸化物半導体層)
5 エッチングストップ層
6、106 ソース・ドレイン電極

Claims (8)

  1. 所定の酸化物半導体溶液を塗布、乾燥してなる酸化物半導体層内に水素が導入され、水素が導入された該酸化物半導体層は、紫外線が照射された上で、酸化されてなることを特徴とする塗布型酸化物半導体。
  2. 基板上に、少なくとも、ゲート電極、ゲート絶縁膜、塗布型の酸化物半導体層、およびソース・ドレイン電極がこの順に積層された構成とされ、
    前記酸化物半導体層は、酸化物半導体の前駆体溶液が前記ゲート絶縁膜上に塗布、乾燥された状態で、該酸化物半導体層内に水素が導入され、水素が導入された該酸化物半導体層は、紫外線が照射された上で、酸化されてなることを特徴とする薄膜トランジスタ。
  3. 前記水素を導入する処理が、水素雰囲気中におけるプラズマ処理であることを特徴とする請求項記載の薄膜トランジスタ。
  4. 前記水素を導入する処理が、水素雰囲気中におけるアニール処理であることを特徴とする請求項記載の薄膜トランジスタ。
  5. 前記酸化する処理が、焼成処理、ならびにマイクロ波照射または紫外線照射による加熱処理のいずれかであることを特徴とする請求項2〜4のうちいずれか1項記載の薄膜トランジスタ。
  6. 前記紫外線照射による加熱処理は、波長300nm以下の紫外線を用いることを特徴とする請求項記載の薄膜トランジスタ。
  7. 請求項2〜6のうちいずれか1項記載の薄膜トランジスタによって表示駆動部が構成されていることを特徴とする表示装置。
  8. 酸化物半導体の前駆体溶液をベースとなる層上に塗布した後、少なくとも該酸化物半導体の層である酸化物半導体層内に水素を導入する水素導入工程、および水素が導入された該酸化物半導体層を酸化する酸化工程の2つの工程をこの順に行う塗布型酸化物半導体の製造方法において、
    前記水素導入工程および前記酸化工程の間に、前記水素が導入された該酸化物半導体層に紫外線を照射する紫外線照射工程を行うことを特徴とする塗布型酸化物半導体の製造方法。
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