次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本開示のコイル搬送装置10を含むコイル巻線装置1を示す概略構成図である。同図に示すコイル巻線装置1は、矩形断面を有する平角線Wの曲げ加工動作と送り動作とを繰り返し実行して、図2に示すようなコイルC1(第1のコイル)を形成するものである。コイルC1は、図示するように、1本の平角線Wを2列かつ複数段(第1の段数、例えば10段)にエッジワイズ方向に曲げながら巻回して形成された集中巻式の矩形コイル(カセットコイル)である。図示するように、コイルC1の一端からは、短尺のリード線部(端子部)Lが延出されており、その他端からは、長尺のバスバー部(渡り線)Bが延出されている。
コイルC1は、例えば電気自動車やハイブリッド車両等に搭載される三相交流電動機を構成するものであり、当該電動機のステータコアScの複数のティースTに例えば樹脂製のインシュレータIと共に組み付けられる。更に、コイルC1のバスバー部Bは、対応する他のコイルC1のリード線部Lに電気的に接続(溶接)され、それによりU相、V相およびW相のステータコイルが構成される。本実施形態において、コイルC1は、短辺部(第1辺部)を正面視した際に略等脚台形状を呈し、かつ長辺部(第2辺部)を正面視した際に略矩形状を呈するように巻回されており、コイルC1の短辺部の長さは、ステータコアScの径方向における内周側から外周側に向かうにつれて(段数が増加するにつれて)長くなる。すなわち、コイルC1の一方の長辺部を形成する平角線Wは、同一の傾斜角度(絶対値)で中心線に関して対称(逆方向)に傾斜する一対の傾斜面の対応する一方に沿って重なり合い、コイルC1の他方の長辺部を形成する平角線Wは、当該一対の傾斜面の他方に沿って重なり合う。
コイル巻線装置1は、図1に示すように、ボビン2と、送り機構3と、保持機構4と、巻回機構5と、切断機構6と、コイル搬送装置10と、これらを制御する制御装置100とを含む。本実施形態のコイル巻線装置1は、上述のコイルC1と、当該コイルC1よりも少ない段数(第2の段数、例えば6段)を有する第2のコイルC2(図11参照)との双方を形成可能に構成されている。以下、適宜、コイルC1およびC2を総称して「コイルC」という。なお、本実施形態において、コイルC1およびC2の長辺部(両側のコーナー部を含む)の長さおよび短辺部(両側のコーナー部を含む)の最短長は、同一に定められている。
図示するように、ボビン2には、平角線Wがフラットワイズ方向に巻回される。送り機構3は、平角線Wをクランプ可能な送りクランプ3aや、送りクランプ3aを図1中x軸方向に移動させるためのモータやボールねじ等を含むクランプ移動機構3b等を含む。平角線Wをクランプした送りクランプ3aをクランプ移動機構3bにより移動させることでボビン2から平角線Wを引き出すと共に引き出された平角線Wを後段側に送り出すことができる。また、ボビン2と送り機構3との間には、ボビン2から引き出された平角線Wを真っ直ぐに矯正する複数の矯正ローラ3cが配設されている。保持機構4は、平角線Wをクランプ可能な保持クランプ4aを含み、送り機構3の送りクランプ3aにより平角線Wがクランプされていない際に、保持クランプ4aにより当該平角線Wを移動しないようにクランプする。
巻回機構5は、平角線Wにエッジワイズ曲げ加工を施すものであり、曲げ加工の支点となる曲げシャフトと、図示しない駆動装置により駆動されて当該曲げシャフトの中心軸(曲げ中心)を中心とする円周に沿って移動可能な曲げ冶具とを含む。曲げシャフトは、円柱状のシャフト部および当該シャフト部の上端部から径方向外側に突出して平角線Wの厚み方向(フラットワイズ方向)への移動を規制する環状のフランジ部を含み、図1におけるy軸方向(図1中上下方向)に延在するように配置される。かかる巻回機構5は、曲げシャフトのフランジ部により平角線Wの厚み方向への移動が規制された状態で曲げ冶具を曲げシャフトの中心軸の周りで移動させることにより、当該中心軸を曲げ中心として平角線Wをエッジワイズ方向に屈曲させる。そして、巻回機構5による平角線Wの曲げ加工動作と、送り機構3による平角線Wの送り動作とが繰り返し実行されることで、上述のようなコイルC1が形成される。また、平角線Wの曲げ加工動作および送り動作の回数を変化させることで、コイルC1と異なる段数をもったコイルC2を形成可能となる。
切断機構6は、平角線Wの送り方向(図1中x軸方向)における巻回機構5の下流側に配置され、当該切断機構6の更に下流側には、巻回機構5により巻回されたコイルCの載置台7が設置されている。載置台7は、図3に示すように、平坦なコイル載置面7sと一対の側面とを有し、コイルCの底面すなわち当該コイルCの最下段に位置する平角線Wの表面を支持する。巻回機構5により巻回されたコイルCは、平角線Wの送り動作により短辺部が載置台7の幅方向に延在するようにコイル載置面7s上に移動させられる。更に、巻回されたコイルCは、保持機構4や図示しないクランプにより平角線Wがクランプされた状態でバスバー部Bとして成形される部分B′の長さが確保されるように切断機構6により平角線Wから切り離される。
平角線Wから切り離されたコイルCは、コイル搬送装置10により例えば図3中x軸方向に沿ってバスバー部Bを成形するバスバー成形装置の載置台8(第2の載置台、図3参照)へと搬送される。本実施形態において、バスバー成形装置の載置台8は、コイル巻線装置1の載置台7と同一の幅を有する。また、載置台8は、コイルCの底面を支持する平坦なコイル載置面8sと、一対の側面と、コイルCを位置決めするための図示しない位置決め部とを含む。
コイル搬送装置10は、図1および図3に示すように、図示しない連結部材を介して互いに対向するように連結される第1および第2支持部材111,112を含むコイル保持部材11と、当該コイル保持部材11を移動させる移動機構12とを有する。コイル保持部材11の第1支持部材111は、図4および図5に示すように、比較的肉厚の板材により略四角柱状に形成されており、当該第1支持部材111の長手方向に延在する略矩形状の第1傾斜面111aと、当該第1傾斜面111aの長手方向における一端(図4における手前側の端部)に隣り合うように形成された突出面(第1突出面)111bと、第1傾斜面111aの長手方向における他端(図4における奥側の端部)に隣り合うように形成された突出面(第2突出面)111cとを含む。
第1傾斜面111aは、下縁部111eから上縁部111fに向かうにつれて、第1支持部材111の平坦な底面に直交する背面に近接するように傾斜した平坦な傾斜面である。第1傾斜面111aの上記背面に対する傾斜角度は、コイルC1の一方の長辺部を形成する平角線Wに沿って延びる平面の当該コイルC1の厚み方向に対する傾斜角度と略同一に定められている。また、第1傾斜面111aの長手方向長さは、コイルC1の長辺部の両側のコーナー部を除く部分の長さと略同一に定められている。
突出面111bは、第1傾斜面111aの長手方向における一端に隣り合って第1支持部材111の底面から高さ方向における中央部付近まで延在する。突出面111bは、第1傾斜面111aの下縁部111eを通って第1支持部材111の背面と平行に延在する平面を越えることなく、当該第1傾斜面111aよりも当該背面から離間するように突出する凹曲面であり、コイルC1のリード線部Lに近接したコーナー部を形成する平角線Wの外側面と当接可能に形成されている。また、本実施形態において、突出面111bの近傍には、コイルC1のリード線部Lとの干渉を抑制するための逃げ面111dが当該突出面111bに連なって第1支持部材111の端部まで達するように形成されている。
突出面111cは、第1傾斜面111aの長手方向における他端に隣り合って第1支持部材111の底面から上面まで延在する。突出面111cは、第1傾斜面111aの下縁部111eを通って第1支持部材111の背面と平行に延在する平面を越えることなく、当該第1傾斜面111aよりも当該背面から離間するように突出する凹曲面であり、コイルC1のリード線部Lと反対側に位置するコーナー部を形成する平角線Wの外側面と当接可能に形成されている。なお、第1支持部材111は、コイルC1の厚みよりも大きい高さを有してもよく、コイルC1の厚みよりも小さい高さを有してもよい。
第2支持部材112は、図4および図5に示すように、比較的肉厚の板材により第1支持部材111と同一の高さを有する略四角柱状に形成されており、当該第2支持部材112の長手方向に延在する略矩形状の第2傾斜面112aと、第2傾斜面112aの長手方向における他端(図5における奥側の端部)に隣り合うように形成された突出面(第2突出面)112cとを含む。第2傾斜面112aは、下縁部112eから上縁部112fに向かうにつれて、第2支持部材112の平坦な底面に直交する背面に近接するように傾斜した平坦な傾斜面である。第2傾斜面112aの上記背面に対する傾斜角度は、コイルC1の他方の長辺部を形成する平角線Wに沿って延びる平面の当該コイルC1の厚み方向に対する傾斜角度と略同一に定められている。また、本実施形態において、第2傾斜面112aの一端(図5における手前側の端部)は、第2支持部材112の一端まで達している。なお、第2支持部材112には、第2傾斜面112aの長手方向における一端(図5における手前側の端部)に隣り合うように突出面(第1突出面)が形成されてもよい。この場合、第1支持部材111の突出面111bが省略されてもよい。
突出面112cは、第2傾斜面112aの長手方向における他端に隣り合って第2支持部材112の底面から上面まで延在する。突出面112cは、第2傾斜面112aの下縁部112eを通って第2支持部材112の背面と平行に延在する平面を越えることなく、当該第2傾斜面112aよりも当該背面から離間するように突出する凹曲面であり、コイルC1のバスバー部Bと反対側に位置するコーナー部を形成する平角線Wの外側面と当接可能に形成されている。
上述のようなコイル保持部材11を移動させる移動機構12は、コイル保持部材11を図1および図3におけるz軸に沿って昇降させる昇降機構(第1移動機構)14と、当該昇降機構14を図1および図3におけるx軸に沿って移動させる水平移動機構(第2移動機構)15とを含む。移動機構12、すなわち昇降機構14および水平移動機構15は、何れも制御装置100により制御される。
昇降機構14は、2本のボールねじ14Bや、2本のボールねじ14Bを互いに同方向かつ正逆方向に回転させる図示しないモータ等を有する駆動ユニット14Dを含む。昇降機構14の各ボールねじ14Bは、対応する第1または第2支持部材111,112に形成されたねじ孔に螺合される。これにより、コイル保持部材11は、駆動ユニット14Dにより支持され、各ボールねじ14Bを回転させることで、コイル保持部材11を駆動ユニット14Dに対して昇降させることが可能となる。なお、駆動ユニット14Dは、1本のボールねじ14Bによりコイル保持部材11を昇降させるように構成されてもよい。
コイル保持部材11が駆動ユニット14Dにより支持された際、図6に示すように、第1支持部材111の第1傾斜面111aの下縁部111eと、第2支持部材112の第2傾斜面112aの下縁部112eとは、載置台7,8の幅dtよりも長く、かつコイルC1の短辺部の最短長ds(コイルC1の最下段に位置する一方の長辺部を形成する平角線Wの外側面から他方の長辺部を形成する平角線Wの外側面までの長さ)よりも短い間隔をおいて対向する。また、第1傾斜面111aと第2傾斜面112aとは、コイル保持部材11の幅方向の中心線に関して対称に下縁部111e,112e側から上縁部111f,112f側に向かうにつれて互い離間するように対向する。更に、第1支持部材111の突出面111bは、下縁部111eを越えないように第2支持部材112の第2傾斜面112a側に突出し、第1支持部材111の突出面111cと第2支持部材112の突出面112cとは、それぞれ対応する下縁部111e,112eを越えないように第1または第2傾斜面111a,112a側に突出して互いに対向する。
水平移動機構15は、図1および図3におけるx軸に沿って延在するように配置される1本のボールねじ15Bや、当該ボールねじ15Bを正逆方向に回転させる図示しないモータ等を有する駆動ユニット15D、ボールねじ15Bが螺合されると共に昇降機構14の駆動ユニット14Dに固定されるナットブラケット15N等を含む。水平移動機構15の駆動ユニット15Dは、コイル巻線装置1の載置台7の上方とバスバー成形装置の載置台8の上方との間で昇降機構14の駆動ユニット14Dを往復移動させるように制御装置100により制御される。
コイル巻線装置1の載置台7の上方で停止した昇降機構14の駆動ユニット14Dは、第1および第2傾斜面111a,112a並びに突出面111b,111c,112cがコイル載置面7sから上方に離間した第1上側停止位置(図7参照)と、第1および第2傾斜面111a,112a並びに突出面111b,111c,112cがコイル載置面7sよりも下方に位置する第1下側停止位置(図3参照)との間でコイル保持部材11を昇降させるように制御装置100により制御される。第1上側停止位置において、コイル保持部材11は、z軸方向からみて第1支持部材111の第1傾斜面111aと第2支持部材112の第2傾斜面112aとの間にコイル巻線装置1の載置台7が位置する状態で当該載置台7と正対する。また、第1傾斜面111aの下縁部111eと第2傾斜面112aの下縁部112eとの間隔は、上述のように、載置台7の幅dtよりも長く定められている。従って、載置台7上にコイルCが存在していないときに昇降機構14によりコイル保持部材11を第1上側停止位置から下降させれば、載置台7が第1および第2傾斜面111a,112a等の間を通り抜けるようにしながらコイル保持部材11を第1下側停止位置まで下降させることができる。
また、バスバー成形装置の載置台8の上方で停止した昇降機構14の駆動ユニット14Dは、第1および第2傾斜面111a,112a並びに突出面111b,111c,112cがコイル載置面8sから上方に離間した第2上側停止位置(図9参照)と、第1および第2傾斜面111a,112a並びに突出面111b,111c,112cがコイル載置面8sよりも下方に位置する第2下側停止位置(図10参照)との間でコイル保持部材11を昇降させるように制御装置100により制御される。第2上側停止位置において、コイル保持部材11は、z軸方向からみて第1支持部材111の第1傾斜面111aと第2支持部材112の第2傾斜面112aとの間にバスバー成形装置の載置台8が位置する状態で当該載置台8と正対する。また、第1傾斜面111aの下縁部111eと第2傾斜面112aの下縁部112eとの間隔は、上述のように、載置台8の幅dtよりも長く定められている。従って、昇降機構14によりコイル保持部材11を第2上側停止位置から下降させれば、載置台8が第1および第2傾斜面111a,112a等の間を通り抜けるようにしながらコイル保持部材11を第2下側停止位置まで下降させることができる。
次に、コイル搬送装置10の動作について説明する。ここでは、コイル巻線装置1により上記コイルC1が形成された場合を例にとってコイル搬送装置10の動作を説明する。
コイル巻線装置1の巻回機構5により平角線Wが曲げ加工されている際、コイル保持部材11は、第1および第2傾斜面111a,112a、突出面111b,111c,112cがコイル載置面7sよりも下方に位置する第1下側停止位置(図3参照)で待機している。巻回機構5によるコイルC1の形成が完了すると、制御装置100は、平角線Wを予め定められた量だけ送るように送り機構3を制御する。これにより、巻回機構5により巻回されたコイルC1は、送り機構3によって平角線Wが送られることで、載置台7のコイル載置面7s上に移動させられる。コイルC1が載置台7上で停止すると、制御装置100は、図3に示すように、保持機構4や図示しない他のクランプに平角線Wをクランプさせた状態で、巻回されたコイルC1を平角線Wから切り離すように切断機構6を作動させる。
平角線WからコイルC1が切り離されると、制御装置100は、図7に示すように、コイル保持部材11を第1下側停止位置から第1上側停止位置まで上昇させるように昇降機構14の駆動ユニット14Dを制御する。載置台7にコイルC1が載置された状態で、コイル保持部材11が第1下側停止位置から上昇していくと、図8に示すように、載置台7が第1支持部材111の第1傾斜面111a等と第2支持部材112の第2傾斜面112a等との間を通り抜けていく。このようなコイル保持部材11と載置台7との相対移動に伴って、第1および第2傾斜面111a,112aは、載置台7上のコイルC1の互いに対向する一対の長辺部の対応する一方に沿って延在し、コイルC1の長辺部の一方を形成する平角線Wが第1傾斜面111aにより支持されると共に、コイルC1の長辺部の他方を形成する平角線Wが第2傾斜面112aにより支持される。更に、各突出面111b,111c,112cによりコイルC1のコーナー部を形成する平角線Wが支持される。
第1および第2傾斜面111a,112a等の間を載置台7が完全に通り抜けた際、第1および第2傾斜面111a,112aの下縁部111e,112e同士がコイルC1の短辺部の最短長dsよりも短い短い間隔をおいて対向することから、コイルC1が第1および第2傾斜面111a,112aの間から抜け落ちることはなく、当該コイルC1は、下縁部111e,112eから下方に突出することなくコイル保持部材11により保持される。更に、各突出面111b,111c,112cによりコイル保持部材11に対する長辺部の延在方向におけるコイルC1の移動が規制される。これにより、専用の位置決め機構を用いることなくコイル保持部材11に対してコイルC1を容易に位置決めすることが可能となる。
昇降機構14によりコイル保持部材11が第1上側停止位置まで上昇させられると、制御装置100は、図9に示すように、コイル保持部材11を第1上側停止位置から第2上側停止位置まで移動させるように水平移動機構15の駆動ユニット15Dを制御する。この間、コイル保持部材11に対するコイルC1の位置を一定に保ちながら当該コイルC1を第1上側停止位置から第2上側停止位置まで搬送することが可能となる。コイル保持部材11が第2上側停止位置で停止すると、制御装置100は、図10に示すように、コイル保持部材11を第2上側停止位置から第2下側停止位置まで下降させるように昇降機構14の駆動ユニット14Dを制御する。
コイルC1を保持したコイル保持部材11が第2上側停止位置から下降していくと、図8からわかるように、バスバー成形装置の載置台8のコイル載置面8sがコイルC1の底面すなわち当該コイルC1の最下段に位置する平角線Wの表面に当接し、コイルC1および載置台8が第1支持部材111の第1傾斜面111a等と第2支持部材112の第2傾斜面112a等との間を通り抜けていく。このようなコイル保持部材11と載置台8との相対移動に伴って、第1および第2傾斜面111a,112aは、コイルC1の長辺部の形成する平角線Wから徐々に離間していき、各突出面111b,111c,112cもコイルC1のコーナー部から徐々に離間していく。
第1および第2傾斜面111a,112a等の間を載置台7が完全に通り抜けると、コイルC1は、コイル保持部材11から載置台8へと受け渡される。すなわち、コイル搬送装置10では、第1および第2傾斜面111a,112a等の間を載置台8が通り抜けるようにコイルC1を保持したコイル保持部材11をコイル載置面8sの上側から下側に移動させることで、載置台8に対してコイルC1を図示しない位置決め部により位置決めされるように円滑に受け渡すことが可能となる。コイルC1の載置台8(バスバー成形装置)への受け渡しが完了すると、制御装置100は、図10において破線で示すように、コイル保持部材11を第2下側停止位置から第1下側停止位置まで移動させるように水平移動機構15の駆動ユニット15Dを制御する。
以上説明したように、コイル搬送装置10は、互いに対向する一対の短辺部の長さが段数の増加に伴って長くなるように平角線Wを四角形状かつ複数段に巻回して形成されたコイルC1をコイル巻線装置1の載置台7から搬送先であるバスバー成形装置の載置台8へと搬送するものであり、コイル保持部材11と、当該コイル保持部材11を載置台7、8間で移動させる移動機構12(昇降機構14および水平移動機構15)とを含む。そして、コイル保持部材11は、下縁部111e,112e同士が載置台7の幅よりも長く、かつ短辺部の最短長dsよりも短い間隔をおいて対向すると共に下縁部111e,112e側から上縁部111f,112f側に向かうにつれて互い離間するように傾斜した第1および第2傾斜面111a,112aと、第1傾斜面111aの一端に隣り合うと共に下縁部111eを越えることなく第2傾斜面112a側に突出する突出面(第1突出面)111bと、第2傾斜面112aの他端に隣り合うと共に下縁部112eを越えることなく第1傾斜面111a側に突出する突出面(第2突出面)111cとを含む。また、移動機構12(昇降機構14)は、第1および第2傾斜面111a,112a等の間を載置台7が通り抜けるようにコイル保持部材11をコイル載置面7sの下側から上側に移動させる。
これにより、専用の位置決め機構を用いることなくコイル保持部材11に対してコイルC1を容易に位置決めし、当該コイル保持部材11に対するコイルC1の位置を一定に保ちながら当該コイルC1を移動させることができる。この結果、コイル製造設備の大型化やコストアップを抑制すると共に、巻回されたコイルC1の姿勢を一定に保ちながら当該コイルC1をバスバー成形装置に搬送することが可能となる。更に、コイル搬送装置10の移動機構12(昇降機構14)は、第1および第2傾斜面111a,112a等の間を載置台8が通り抜けるようにコイルC1を保持したコイル保持部材11をコイル載置面8sの上側から下側に移動させる。これにより、バスバー成形装置の載置台8に対してコイルC1を円滑に受け渡すことが可能となる。
また、コイル搬送装置10のコイル保持部材11は、図11に示すように、コイルC1よりも厚み(段数)が小さい(少ない)コイルC2をも保持することができる。これにより、専用の位置決め機構を用いることなくコイル保持部材11に対してコイルC2を容易に位置決めすると共に、コイル保持部材11に対するコイルC2の位置を一定に保ちながら当該コイルC2を第1上側停止位置から第2上側停止位置まで搬送し、バスバー成形装置の載置台8に円滑に受け渡すことが可能となる。
更に、第1および第2傾斜面111a,112aの下縁部111e,112e同士をコイルC1の短辺部の最短長dsよりも短い間隔をおいて対向させることで、コイル保持部材11により保持されたコイルC1が第1および第2傾斜面111a,112aの下縁部111e,112eから下方に突出しないようにすることができる。これにより、コイル保持部材11の第1および第2上側停止位置を低く抑えてコイル製造設備の大型化を抑制することが可能となる。ただし、第1および第2傾斜面111a,112aの下縁部111e,112e同士がコイルC1の短辺部の最大長dl(コイルC1の最上段に位置する一方の長辺部を形成する平角線Wの外側面から他方の長辺部を形成する平角線Wの外側面までの長さ、図8参照)よりも短い間隔をおいて対向していれば、コイル保持部材11の上昇に伴ってコイルC1が第1および第2傾斜面111a,112aの間から抜け落ちることはない。従って、第1および第2傾斜面111a,112aの下縁部111e,112e同士の間隔は、コイルC1の短辺部の最大長dlよりも短い範囲内でコイルC1等の厚み等に応じて任意に定めることができる。
また、上記コイル搬送装置10の移動機構12は、第1下側停止位置と第1上側停止位置との間並びに第2上側停止位置と第2下側停止位置との間でコイル保持部材11を昇降させる昇降機構14と、第1上側停止位置から第2上側停止位置までコイル保持部材11を移動させると共に第2下側停止位置から第1下側停止位置までコイル保持部材11を移動させる水平移動機構15とを含むものであるが、コイル保持部材11を移動させる移動機構の構成は、これに限られるものではない。すなわち、コイル搬送装置10の移動機構12は、図12に示すような移動機構12Bで置き換えられてもよい。移動機構12Bは、図示するように、楕円状(あるいは真円状)に延びる軌道に沿ってコイル保持部材11を移動させるものである。かかる移動機構12Bによっても、コイル保持部材11載置台7,8間で移動させると共に、コイル保持部材11をコイル載置面7sの下側から上側、およびコイル載置面8sの上側から下側に移動させることが可能となる。
更に、上記実施形態において、第1および第2支持部材111,112は、載置台7,8と干渉しないように図示しない連結部材を介して互いに連結されるが、これに限られるものではない、すなわち、第1および第2支持部材111,112は、載置台7,8と干渉しないように互いに一体に形成されてもよい。また、コイルC1は、平角線Wを矩形状に巻回して形成されるものに限られず、平角線Wを正方形状に巻回して形成されるものであってもよい。更に、コイルC1,C2を形成する線材は、平角線W以外の線材、すなわち正方形状あるいは円形状等の断面を有する線材であってもよい。
そして、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記実施形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。