JP6911694B2 - 地盤改良剤組成物及びその利用 - Google Patents

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本明細書は、地盤改良剤組成物及びその利用に関する。
軟弱な地盤等に注入して当該地盤を改良する地盤改良用の薬剤としては、従来から水ガラス系の地盤改良剤がよく知られており、掘削作業時の一時的な補強から建築構造物の地盤改良といった恒久的な目的に至るまで幅広く使用されている。
しかし、水ガラス系の地盤改良剤から得られるゲル物は、耐久性の点で課題が指摘されている。また、薬液が硫酸又はリン酸成分を含むため、地盤中でコンクリート等の構造物の劣化を促進する懸念がある。
水ガラス系以外の地盤改良剤として、アクリル酸塩含有水溶液からなるアクリル系地盤改良剤が挙げられる。例えば、特許文献1には、(メタ)アクリル酸の一価又は二価の金属塩、三価金属塩、酸化剤、還元力の異なる2種以上の還元剤及び水を含有する注入材用組成物が記載されている。特許文献2には、(メタ)アクリル酸の一価又は二価の金属塩水溶液、アルミニウム水溶性塩の水溶液、及び重亜硫酸水溶液を含む(メタ)アクリル酸系薬液が開示されている。特許文献3には、(メタ)アクリル酸金属塩、前記(メタ)アクリル酸金属塩以外の多価金属塩化合物、酸化剤、特定の還元剤及び水を含有する地盤注入剤組成物が開示されている。
特開2001−241288号公報 特開2006−104795号公報 特開2016−130286号公報
本発明者らによれば、特許文献1〜3に開示される地盤改良剤では、地盤強度の改善及びその効果の耐久性という点では効果的であるが、使用する環境によっては、(メタ)アクリル酸などのラジカル重合が阻害されて硬化不良が生じる場合があった。また、使用条件によっては、鉄等の構造物の腐食が観察される場合があった。
本明細書は、使用環境によるゲル物の硬化不良を抑制又は回避してゲル物、ゲル物強度及び腐食抑制能に優れる地盤改良剤及びその利用を提供する。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ビニル系不飽和単量体の硬化を用いる地盤改良剤組成物において、重合開始剤として有機過酸化物を用いることで、地盤の種類や状況にかかわらず、安定して前記単量体を重合させ硬化させうるという知見を得た。また、かかる地盤改良剤組成物の使用によって、構造物の腐食も十分に抑制できるという知見を得た。こうした知見に基づき、本明細書は以下の手段を提供する。
[1]地盤改良剤組成物であって、
以下の(A)〜(C)成分:
(A)ビニル系不飽和単量体又はその塩
(B)有機過酸化物、及び
(C)水
を含む、組成物。
[2]前記(B)有機過酸化物が、ヒドロペルオキシド類である、[1]に記載の組成物。
[3]さらに、(D)成分:
(D)還元剤
を含む、[1]又は[2]に記載の組成物。
[4]前記(A)成分の総量が2.0質量%以上30質量%以下である、[1]〜[3]のいずれかに記載の組成物。
[5]さらに、(E)成分:
(E)多価金属塩化合物
を含む、[1]〜[4]のいずれかに記載の組成物。
[6]前記(A)成分及び(E)成分の総量が2.0質量%以上30質量%以下である、[5]に記載の組成物。
[7]地盤改良のためのキットであって、
以下の(A)及び(B)成分:
(A)ビニル系不飽和単量体又はその塩、及び
(B)有機過酸化物
を備える、キット。
[8]さらに、(D)成分:
(D)還元剤
を備える、[7]記載のキット。
[9]さらに、(E)成分:
(E)多価金属塩化合物を備える、[7]又は[8]に記載のキット。
[10]地盤改良方法であって、
[1]〜[6]のいずれかに記載の地盤改良剤組成物を地盤に導入する工程、
を備える、方法。
[11]前記地盤改良方法は、注入固化工法である、[10]に記載の方法。
[12]陽イオン交換容量が0.5meq/100g以上の土壌を改良する、[10]又は[11]に記載の方法。
本明細書は、地盤改良剤組成物、地盤改良のためのキット及び地盤改良方法等に関する。本明細書に開示される地盤改良剤組成物(以下、単に、本組成物ともいう。)によれば、重合開始剤として、有機過酸化物を用いることで、使用する環境、概して土壌・地盤の粘土性や陽イオン交換容量等の性質等に係わらず、ビニル系不飽和単量体の重合・硬化を安定して促進し、地盤中において得られるゲル化物(ゲル物)の硬化不良を抑制又は回避できる。このため、安定して十分な強度のゲル物を得ることができる。さらに、本組成物は、同時に、金属製構造物に対する良好な腐食抑制能を示すことができる。これらのことから、本組成物は、堀削作業時の一時的な地盤補強から、恒久的な地盤改良までの種々の用途にわたって広く適用することができる。
本明細書に開示される地盤改良のためのキット(以下、本キットともいう。)及び地盤改良方法(以下、本方法ともいう。)等も本組成物によるものと同様の作用を生じさせることができる。
本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味し、(メタ)アクリルアミドは、アクリルアミド及び/又はメタアクリルアミドを意味する。
本明細書において、「地盤改良剤」とは、種々の目的のための地盤改良に用いる剤を包含する。ここで「地盤改良」は、例えば、漏水防止、止水、液状化防止、地盤強化のほか、例えば、工法としては、山岳トンネル工法又はその補助工法(先受工法、各種補強工法)、地山固結工法、止水工法、注入固化処理工法(又は薬液注入工法)、ジェットグラウト工法等が挙げられる。
以下、本組成物、本キット及び本方法等の実施態様について詳細に説明する。
<地盤改良剤組成物>
本組成物は、(A)成分:ビニル系不飽和単量体又はその塩、(B)成分:有機過酸化物、(C)成分:水、を含有することができる。
<(A)成分:ビニル系不飽和単量体又はその塩>
本組成物が含むビニル系不飽和単量体又はその塩におけるビニル系不飽和単量体は、イオン性単量体(アニオン性単量体又はカチオン性単量体)及び非イオン性単量体のいずれでもよく、これらを組み合わせて用いることもできる。
アニオン性単量体又はその塩としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、フマル酸モノアルキルエステル、シトラコン酸、シトラコン酸モノアルキルエステル、桂皮酸、無水イタコン酸及び無水マレイン酸等のカルボキシル基含有単量体又はその塩若しくは無水物;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリレート硫酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェート、フェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、2−アクリロイルオキシアルキルホスホン酸等が挙げられる。特に限定するものではないが、例えば、(メタ)アクリル酸を重合性、水への溶解性の観点から好ましく用いることができる。
また、アニオン性単量体の塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩及びカリウム塩等のアルカリ金属塩:カルシウム塩及びバリウム塩等のアルカリ金属土類塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、ジルコニウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。これらの単量体及びその塩は、単独で用いてよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。これらの金属塩のなかでも、カルシウム塩、マグネシウム塩等が、良好な強度と耐変形性を有するゲル物が得られる点から好ましい。
カチオン性単量体又はその塩としては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド及びこれらの塩等の三級アミノ基含有化合物;(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド等の四級アンモニウム塩基含有化合物等を用いることができる。これらの単量体は、単独で用いてよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
非イオン性単量体又はその塩としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、ビニルピロリドン、ビニルホルムアミド、ビニルアセトアミド、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、ポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレンアルキルアリルエーテル、グリセリンモノアリルエーテル等が挙げられる。これらの単量体は、単独で用いてよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。非イオン性単量体としては、特に限定するものではないが、例えば、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ヒドロドキシエチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド及びその誘導体を、重合性、水への溶解性の観点から好ましく用いることができる。中でも、(メタ)アクリルアミドがより好ましい。
本組成物中のビニル系不飽和単量体又はその塩の濃度としては、特に限定するものではないが、例えば0.5質量%以上が好ましく、また例えば1.0質量%以上、また例えば2.0質量%以上、また例えば4.0質量%以上である。ビニル系不飽和単量体又はその塩の濃度が、0.5質量%以上であれば、得られる硬化物の強度が十分なものとなる。また、ビニル系不飽和単量体又はその塩の濃度は、特に限定するものではないが、例えば、30質量%以下であり、また例えば、25質量%以下であり、また例えば、20質量%以下である。同濃度が30質量%以下であれば、硬化物の十分な強度を確保しつつ、地盤への浸透性が良好なものとなる。
特に限定するものではないが、本組成物が後述する多価金属塩化合物を併用する場合には、ビニル系不飽和単量体又はその塩の濃度としては、例えば、29.5質量%以下であり、また例えば、29.0質量%以下であり、また例えば、28.5質量%以下である。上記濃度は、また例えば、25質量%以下であり、また例えば、20質量%以下であり、また例えば、15質量%以下であり、また例えば、10質量%以下であり、また例えば5質量%以下である。
ビニル系不飽和単量体又はその塩の濃度の範囲は、これらの下限濃度及び上限濃度を組み合わせて設定することができるが、例えば、0.5質量%以上30質量%以下であり、また例えば、1.0質量%以上25質量%以下であり、2.0質量%以上15質量%以下とすることができる。なお、本組成物中におけるビニル系不飽和単量体又はその塩の濃度は、後述する多価金属塩化合物の濃度との総量によっても規定される。
ビニル系不飽和単量体として、ビニル系不飽和基を2以上有する単量体(以下、単に、本多価ビニル系不飽和単量体ともいう。)を含むことができる。本多価ビニル系不飽和単量体は、既述した(A)成分の重合鎖を架橋することにより、水中で高分子化して安定したゲル物を形成し、その強度,寸法安定性及び耐久性を向上させることができる。本多価ビニル系不飽和単量体の濃度としては、多価でない、すなわち、ビニル系不飽和基を1個のみ有する非架橋性のビニル系不飽和単量体(以下、「非架橋性単量体」ともいう)に対して、例えば、1.0質量%以上であることが好ましく、また例えば、2.0質量%以上であり、また例えば3.0質量%以上である。非架橋性単量体に対する本多価ビニル系不飽和単量体の濃度が1.0質量%以上であれば、得られる硬化物の強度が十分なものとなる。また、非架橋性単量体に対する本多価ビニル系不飽和単量体の濃度は、特に限定するものではないが、例えば、2000質量%以下であることが好ましく、また例えば、1000質量%以下であり、また例えば500質量%以下であり、また例えば100質量%以下であり、また例えば50質量%以下であり、また例えば20質量%以下であり、また例えば10質量%以下である。
本多価ビニル系不飽和単量体としては、公知の2価以上のビニル系不飽和単量体を用いることができるが、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メチレンビスアクリルアミド及びヒドロキシエチレンビスアクリルアミド等の水溶性ジビニル単量体、並びにペンタエリスリトールトリアリルエーテル等の多官能アリルエーテル化合物が挙げられる。
<(B)成分:有機過酸化物>
有機過酸化物は、ビニル系不飽和単量体のラジカル重合の重合開始剤として機能することができる。有機過酸化物は、地盤や土壌の性質、例えば、地盤・土壌中に溶解またはコロイド状態で存在する酸化ケイ素、酸化アルミニウム、アルミノケイ酸塩、その他の粘土鉱物及び/又は陽イオン交換容量に影響されずに(A)成分であるビニル系不飽和単量体等の重合性単量体のラジカル重合・硬化を促進して、ゲル物の生成を促進することができる。
有機過酸化物は、特に限定するものではないが、本組成物の組成や使用環境を考慮すると、親水性が高いものであることが好ましい。当該観点からすると、例えば、全体として炭素数15以下である有機過酸化物を用いることができ、また例えば、炭素数10以下の有機過酸化物、また例えば、炭素数8以下の有機過酸化物を用いることができる。なお、有機過酸化物の炭素数は、また例えば2以上とすることができ、また例えば、3以上とすることができる。有機過酸化物の全体の炭素数の好適な範囲は、既述の上限及び下限を適宜組み合わせることで設定できるが、例えば、2以上10以下であり、また例えば、3以上8以下である。
また、有機過酸化物は、親水性であることが好ましいが、例えば、ケトンペルオキシド類、ヒドロペルオキシド類、過カルボン酸類、ジアシルペルオキシド類などは概して水溶解性が高い傾向がある。中でも、ヒドロペルオキシド類は、水溶解性が一層高い傾向がある。
有機過酸化物としては、例えば、ジアシルぺルオキシド、ぺルオキシジカーボネート、ぺルオキシエステル、テトラメチルブチルぺルオキシネオデカノエート、ビス(4−ブチルシクロヘキシル)ぺルオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)ぺルオキシカーボネート、ブチルぺルオキシネオデカノエート、ジプロピルぺルオキシジカーボネート、ジイソプロピルぺルオキシジカーボネート、ジエトキシエチルぺルオキシジカーボネート、ジエトキシヘキシルぺルオキシジカーボネート、ヘキシルぺルオキシジカーボネート、ジメトキシブチルぺルオキシジカーボネート、ビス(3−メトキシ−3−メトキシブチル)ぺルオキシジカーボネート、ジブチルぺルオキシジカーボネート、ジセチルぺルオキシジカーボネート、ジミリスチルぺルオキシジカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルぺルオキシピバレート、ヘキシルぺルオキシピバレート、ブチルぺルオキシピバレート、トリメチルヘキサノイルぺルオキシド、ジメチルヒドロキシブチルぺルオキシネオデカノエート、アミルぺルオキシネオデカノエート、ブチルぺルオキシネオデカノエート、t−ブチルぺルオキシネオヘプタノエート、アミルぺルオキシピバレート、t−ブチルぺルオキシピバレート、t−アミルぺルオキシ−2−エチルヘキサノエート、ラウリルぺルオキシド、ジラウロイルぺルオキシド、ジデカイルぺルオキシドの他、t−ブチルヒドロペルオキシド、p−クミルヒドロペルオキシド、t−アミルヒドロペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド類、過酢酸および過安息香酸などの過カルボン酸類、メチルエチルケトンペルオキシドまたは過酸化ベンゾイル(ベンゾイルぺルオキシド)などが挙げられ、これらの内の1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。水溶解性の観点からは、例えば、t−ブチルヒドロペルオキシド、p−クミルヒドロペルオキシド、t−アミルヒドロペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド類、メチルエチルケトンペルオキシドなどのケトンペルオキシド類、過酢酸および過安息香酸などの過カルボン酸類、過酸化ベンゾイルなどのジアシルペルオキシド類が挙げられる。
有機過酸化物の濃度又は使用量は、ビニル系不飽和単量体又はその塩の種類及び濃度、地盤・土壌の種類、pH、水温等の条件、硬化時間等の設定値を考慮し、本組成物の用途によって適宜選択すれば良い。また、還元剤を使用する場合には、還元剤の種類等も適宜選択することができる。
例えば、本組成物における有機過酸化物の濃度は、例えば、0.1mM以上100mM以下程度とすることができる。また例えば、1mM以上100mM以下とすることができ、また例えば、1mM以上20mM以下とすることができる。後述する還元剤を含む場合、還元剤の本組成物における濃度は、例えば、0.1mM以上100mM以下程度とすることができる。また例えば、1mM以上100mM以下とすることができ、また例えば、1mM以上40mM以下とすることができる。
<(C)成分:水>
本組成物は、水を含有することができる。本組成物は、水溶液又は懸濁液等の形態で地盤等に適用される。本組成物において水は、各種成分を溶解又は分散して、地盤へのこれらの成分の運搬媒体等として機能することができる。また、水は、硬化時間等の調整剤として機能することもできる。なお、本組成物は、水の他に、上記した各種成分を溶解し分散する有機溶媒を、本組成物の効果を損なわない範囲で含むことができる。
本組成物中における水は、概して、本組成物中における(A)成分及び(B)成分、さらに必要に応じて含まれる後述するその他の成分を除く残分に相当する。本組成物中における濃度は、例えば、50質量%以上であり、また例えば、60質量%であり、また例えば70質量%以上であり、また例えば80質量%以上などとすることができる。
<(D)成分:還元剤>
本組成物は、有機過酸化物に還元剤を併用することで、これらをレドックス系重合開始剤として使用することができる。還元剤として特段の制限はなく、公知の還元剤を使用することができる。具体的な化合物としては、チオ硫酸ナトリウム及びチオ硫酸カリウム等のチオ硫酸塩化合物、重亜硫酸ナトリウム及び重亜硫酸カリウム等の重亜硫酸塩化合物、次亜硫酸ナトリウム及び次亜硫酸カリウム等の次亜リン酸化合物、亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸カリウム等の亜硫酸化合物、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム(ロンガリット)などのヒドロキシメタンスルフィン酸塩、アスコルビン酸若しくはナトリウムなどのその塩、エリソルビン酸若しくはナトリウムなどのその塩、第一鉄塩、チオ尿素、硫酸銅、並びに、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、ジメチルアミノプロピオニトリル、ジメチルアミノプロパノール、ピペラジン及びモルホリン等のアミン類等が挙げられる。これらの還元剤は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
<(E)成分:多価金属塩化合物>
本組成物は、二価又は三価以上の多価金属塩化合物(以下、単に、本多価金属塩化合物ともいう。)を含むことができる。本多価金属塩化合物は、(A)成分の重合体を架橋して、水中で高分子化して安定したゲル物を形成し、その強度、寸法安定性及び耐久性を向上させることができる。
本多価金属塩化合物に関し、二価の金属としては、特に限定するものではないが、例えば、マグネシウム、カルシウム及びバリウム等が挙げられる。三価以上の金属としては、特に限定するものではないが、アルミニウム、ジルコニウム、チタン及びセリウム等が挙げられる。
本多価金属塩化合物としては、硬化物の強度を制御し易い点から三価の金属塩化合物が好ましい。具体的な化合物としては、例えば、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、ミョウバン、ナトリウムミョウバン、酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム(塩基性塩化アルミニウム)、ポリ硫酸塩化アルミニウム(塩基性硫酸塩化アルミニウム)、酢酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、乳酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム、オキシ酢酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、オキシ硫酸ジルコニウムなどのジルコニウム塩、塩化チタン及び硝酸セリウム等が挙げられ、これらの中でもアルミニウム塩及びジルコニウム塩がより好ましく、さらに好ましくはアルミニウム塩である。本多価金属塩化合物としては、こうした金属塩1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの(E)成分の本組成物中の濃度は特に限定するものではないが、例えば、0.5質量%以上であることが好ましく、また例えば、1.0質量%以上であり、また例えば1.5質量%以上である。本多価金属塩化合物の濃度が0.5質量%以上であれば、得られる硬化物の強度が十分なものとなる。また、本多価金属塩化合物の濃度は、特に限定するものではないが、例えば、10質量%以下であることが好ましく、また例えば、8.0質量%以下であり、また例えば6.0質量%以下であり、また例えば4.0質量%以下である。本多価金属塩化合物の濃度が10質量%以下であれば、析出物の生成を抑制して、地盤への浸透性を良好なものにしやすくなる。本多価金属塩化合物の濃度の範囲は、これらの下限濃度及び上限濃度を組み合わせて設定することができるが、例えば、0.5質量%以上10質量%以下であり、また例えば、1.0質量%以上8.0質量%以下であり1.0質量%以上4.0質量%以下とすることができる。
また、これらの(E)成分の含有量としては、用いる(A)成分の種類及び(E)成分の種類にもよるが、その効果の観点から、(メタ)アクリル酸金属塩に対して、例えば、60質量%以下とすることができ、また例えば、50質量%以下とすることができ、また例えば、40質量%以下とすることができ、また例えば、30質量%以下とすることができ、また例えば20質量%以下とすることができる。
<(A)成分及び(E)成分の総濃度>
本組成物における(A)成分であるビニル系不飽和単量体又はその塩と、(E)成分である多価金属塩化合物との総濃度は、特に限定するものではないが、得られる硬化物の強度や重合・硬化反応の速度を考慮すると、例えば、2質量%以上であることが好ましい。さらに好適な硬化物の強度及び硬化速度の観点からは、同総濃度は、また例えば、3質量%以上であり、また例えば、4質量%以上であり、また例えば、5質量%以上である。析出物の生成の抑制や地盤への浸透性を考慮すると、同総濃度は、特に限定するものではないが、20質量%以下であることが好ましい。より良好な地盤への浸透性の観点からは、同総濃度は、また例えば、18質量%以下であり、また例えば、16質量%以下であり、また例えば、14質量%以下であり、また例えば、12質量%以下である。同総濃度の範囲は、これらの下限及び上限をそれぞれ組み合わせて得られる各種濃度範囲とすることができるが、例えば、2.0質量%以上20質量%以下であり、また例えば、3.0質量%以上18質量%以下であり、また例えば、4.0質量%以上18質量%以下である。
<その他の成分>
本組成物はゲル物の増量又は補強のために、必要に応じて骨材を配合することもできる。骨材としては、セメント、フライアッシュ、珪藻土、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、ベントナイト、パーライト、蛭石、高炉スラグ、石膏、珪砂、パルプ及び炭素粉等の粉体や各種繊維等を用いることができる。骨材は、使用量が多過ぎると、組成物の流動性やゲル物の曲げ強度を低減させる場合があるので、(メタ)アクリル酸金属塩の質量の10倍以下とするのが好ましい。組成物中に骨材が沈降する場合は、沈降防止剤等を併用することが好ましい。
本組成物は、本組成物の効果を損なわない範囲で種々の成分を含むことができる。例えば、公知の水ガラス等の他の地盤改良剤を含むこともできる。また、4級アンモニウム塩、有機酸アミン塩、芳香族化合物、亜硝酸塩、アルコール、ヘキサメチレンテトラミンなどの公知の防錆剤、シリコーン系、鉱物油系、植物油系、高級アルコール系などの公知の消泡剤、公知の乳化剤及び公知の金属封止剤等から選択される1種又は2種以上を適宜含むことができる。
<本組成物の使用>
本組成物は、重合開始剤により重合反応が進行し、ゲル物を生じるものである。したがって、本重合開始剤として有機過酸化物を含む本組成物を、そのまま地盤に注入して地盤内でゲル化させるために使用することができる。本組成物によれば、地盤・土壌の性質にかかわらず、安定して不飽和ビニル系単量体の重合を促進できるため、強固なゲル物を地盤中に形成することができる。また、本組成物は、鉄系構造体の腐食の抑制に優れている。したがって、本組成物は、種々の地盤の改良に好適に使用できるものとなっている。
<地盤改良のためのキット>
本キットは、既述した(A)及び(B)成分を備えることができる。本キットによれば、これらの成分を、それぞれ水溶液等の水性組成物として備えて、用時混合して本組成物を調製することもできるし、本組成物の(C)成分である水を用いて(A)及び(B)成分を混合及び/又は溶解して本組成物を調製することもできる。本組成物を調製後は、本組成物による種々の特性を発揮することができる。なお、本キットは、(C)成分である水を備えることもできる。
また、本キットは、用時調製のために(A)及び(B)成分を備えるため、本組成物を簡易に十分な可使時間を確保して利用することができるようになる。すなわち、本キットは、本組成物が重合開始剤として作用する(B)成分を含んでいるために、調製と同時に重合が開始されてしまうことに起因する問題を克服することができる。本キットによれば、製造、流通、保管等に関する問題、地盤改良工事等における可使時間の短さなどを解決できる。
本キットは、(A)成分に対して(B)成分が作用しない態様で分離して備えるキット態様を採ることができる。すなわち、(A)成分と(B)成分とを反応させないための各種成分の分離態様のほか、こうした分離を実現するための形態も特に限定されない。例えば、分離のための形態としては、2以上の包装体に各種成分を分離してもよいし、あるいは2以上の区画や収納領域を有する一つの包装体等に各種成分を分離してもよい。
また、地盤注入時前に、本キットから本組成物を調製して、注入管を介して地盤に注入するようにしてもよいし、本キットの1又は2以上の成分を別個に注入管に注入して、注入管内で混合して本組成物を調製するようにしてもよい。
以下の表に本キットにおける各成分の組合せの態様について、2剤からなる本キットの例をいくつか例示する。以下の表において、「○」は、含有することを示し「×」は、含有しないことを示し、「○/×」は、含有していてもしていなくてもいずれでもよいことを示す。
Figure 0006911694
上記表の(a)に示すように、(A)成分と(B)成分とを重合が開始されないように分離し、同(b)及び(c)に示すように、(B)成分と(D)成分とを、重合開始剤が消費されないように分離していれば、(C)成分:水、(E)成分:本多価金属塩化合物については、種々の態様でキット化することが明らかである。また、上記表では、2剤からなるからなるキットとしたが、重合開始が抑制又は回避される組合せである限り、3剤以上に分割することもできる。さらに、(C)成分としての水は、これらのいずれかの剤に含ませることも可能であるし、別途の剤として準備するようにすることも可能である。
本キットにおける、(A)成分〜(E)成分の各成分の含有量は特に限定するものでない。調製時に、各成分の所要量を計量するようにしてもよいし、予め本組成物として好適な濃度やpHとなるように計量されていてもよい。また、所要量を簡易に計量できるように、一定量ずつに小分けされていてもよい。
本キットにおいては、例えば、調製しようとする本組成物において意図する各成分の濃度となるように、各成分が予め計量等されていることが好ましい。
また、(A)成分、(B)成分、(D)成分及び(E)成分は、適宜(C)成分である水等で溶液としてもよいしそれ自体(粉末や液体等)であってもよい。各成分の取扱性、安定性、物性に応じて適宜選択される。
本組成物及び本キットは、土壌の性質を問わずに適用でき、土壌の性質にかかわらず、優れた特性のゲル物を生成させることができる。なかでも、本組成物及び本キットは、適用される土壌の陽イオン交換容量が、0.3meq/100g以上の土壌に有効である。かかる、陽イオン交換容量であっても、有機過酸化物以外の重合開始剤を使用すると、土壌中の陽イオンの影響を大きく受けて、単量体の重合・硬化が阻害されてしまうからである。概して、粘土性の土壌においては、陽イオン交換容量が高い傾向がある。粘土性土壌の陽イオン交換容量は、例えば、3.0meq/100g以上であり、また例えば、4.0meq/100g以上であり、また例えば、5.0meq/100g以上であり、また例えば、6.0meq/100g以上であり、また例えば、7.0meq/100g以上であり、また例えば、8.0meq/100g以上である。
本組成物及び本キットは、例えば、陽イオン交換容量が、0.4meq/100g以上の土壌にも適用することができ、また例えば、同0.5meq/100g以上の土壌にも適用することができ、また例えば、同1.0meq/100g以上の土壌にも適用することができ、また例えば、同2.0meq/100g以上の土壌にも適用することができ、また例えば、同3.0meq/100g以上の土壌にも適用することができ、また例えば、同4.0meq/100g以上の土壌にも適用することができ、また例えば、同6.0meq/100g以上の土壌にも適用することができ、また例えば、同8.0meq/100g以上の土壌にも適用することができる。なお、土壌の陽イオン交換容量の上限は特に限定するものではないが、例えば、20meq/100g以下であり、また例えば、15meq/100g以下である。
なお、土壌の陽イオン交換容量は、乾燥させた土壌試料につき、Shollen-berger氏法に従って測定することができる。具体的には、後述する実施例に開示する方法で試料液を調製し、インドフェノール青吸光光度法(JIS K 0102)にてアンモニウムイオン濃度の測定することにより実施できる。インドフェノール法についても、実施例に開示する方法を採用することができる。
<地盤改良方法>
本明細書に開示される地盤改良方法は、本組成物を地盤に導入する導入工程、を備えることができる。本方法によれば、適用される土壌の性質等にかかわらず、安定して、(A)成分を重合・硬化させることができて、優れた特性のゲル物を得ることができる。
本方法は、既述の各種の地盤改良に適用が可能である。具体的な工法としては、既に説明した各種工法が挙げられる。本方法における、本組成物の導入工程は、適用する用途や工法に応じた公知の態様で本組成物を地盤に注入することによって実施することができる。一般的には、ポンプ等によって、注入すべき1種又は2種以上の液体を、地盤内に配置した注入管を介して、別個にあるいは注入管内等で混合しつつ圧送することによって、地盤に導入する。
本方法は、注入固化工法(薬液注入工法)に好適である。注入固化工法(薬液注入工法)は、本組成物を砂地盤に浸透注入し、砂地盤の間隙に存在する水を注入剤に置換した後、注入剤がゲル化することにより砂地をバインディングすると共に漏水防止、止水、液状化防止及び地盤強化等の機能を奏する地盤改良工法である。比較的小規模な装置を用いて注入管から必要な箇所に薬液を注入し、固化させる工法であり、例えば、タンクや橋脚等の移動困難な既設構造物の直下の地盤の液状化対策に有効な地盤改良工法である。本組成物は、地盤への浸透性に優れ、優れた硬化速度及びゲル物強度を有することから、注入固化工法(薬液注入工法)に適用した場合に優れた性能を発揮することができる。
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。尚、本発明は、これらの実施例に
より限定されるものではない。尚、以下において「部」及び「%」は、特に断らない限り
質量部及び質量%を意味する。
以下に、地盤改良剤組成物の評価方法について記載し、その後、各実施例等について説明する。
[1]硬化時間(ゲルタイム)
室温(25℃)の条件下で各組成物を調製後、速やかに9ccガラスビンに満液にし、蓋をして静置した。その後、硬化が始まると水不溶性のゲルが析出し始めるため、目視でゲルの析出状態(白濁)を観察した。本組成物をガラスビンに加えてから白濁が開始するまでの時間を硬化時間とした。
[2]土壌の陽イオン交換容量
対象土壌(市販の砂(3種類)及び実際の地盤から採取した土)を乾燥させたのち、Shollen-berger氏法に従って陽イオン交換容量を測定した。すなわち、通風乾燥機で105℃、24時間乾燥した土を2.0gに1mol/L酢酸アンモニウム水溶液30gを加えて15分間振とうし、遠心分離(2000rpmで10分間)にて上澄み液を除去する操作を合計3回(なお、2回目以降の振とう時間は30秒とする。)繰返した後、さらに、80%エタノール25gを用いて同様の操作を3回実施した(振とう時間は30秒)。次いで、10%塩化カリウム水溶液30gを加えて15分間振とうし、同様の条件で遠心分離した後、上澄みを回収し、さらに振とう時間を30秒として同様の操作をさらに2回実施して、各操作における上澄み液を回収した。10%塩化カリウム水溶液によって回収した全上澄み液をろ過し、ろ液にイオン交換水を加えて100mlに調整した後、インドフェノール青吸光光度法(JIS K 0102)にてアンモニウムイオン濃度の測定を実施した。なお、インドフェノール青吸光光度法は以下の通りに行った。
<ナトリウムフェノキシド溶液の調製>
水酸化ナトリウム20gを純水に溶かし100mLとし、この水溶液55mLを氷冷しながらフェノール25gを少量ずつ溶かし、さらに、アセトン6mLを加え、純水で200mLとした。
<次亜塩素酸ナトリウム溶液の調製>
次亜塩素酸ナトリウムを、有効塩素濃度が10g/Lになるように純水で希釈した。なお有効塩素濃度は下記方法で求めた。次亜塩素酸ナトリウム溶液10mLに純水を加え200mLとする。この溶液10mLに純水を加え100mLとする。ヨウ化カリウム1.5gに50vol%酢酸水溶液6mLを加えて密栓し、振り混ぜて暗所に5分静置する。でんぷんを指示薬として、50mMチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定する。
<インドフェノール青吸光光度測定>
50mLメスフラスコに上記試料Xgを入れ、純水を加えて25mLとした。なお、Xは想定される土の陽イオン交換容量(CEC)に応じて変更した。目安は、試料のCECが20〜150meq/100gと想定される場合には、0.1g、同2〜20meq/100gの場合には1g、同2meq/100g以下の場合には、15gである。
次に、この試料液にナトリウムフェノキシド溶液10mLを加えて振り混ぜ、次亜塩素酸ナトリウム溶液5mLを加え、更に純水で50mLにメスアップした後、栓をして振り混ぜた。液温を20〜25℃に保って約30分放置し、この溶液の一部を吸収セル(光路長10mm)に移し、波長630nm付近の吸光度を測定した。なお、これに先立って純水で吸光度を補正した。また、既知濃度のアンモニア水溶液にて検量線を作成し、当該検量線を用いて、試料中のアンモニウムイオン濃度を算出した。
以下の評価方法において用いた対象土壌の陽イオン交換容量(CEC:meq/100g)を以下の表に示す。
Figure 0006911694
[3]モノマー反応率
後述する[4]において25℃で3日以上養生したサンドゲルをそのまま細かく砕いた後、水で未反応のモノマーを抽出してガスクロマトグラフィーにて定量し、モノマー反応率に換算した。なお、アクリル酸塩を使用した系についてはイオン交換樹脂でアクリル酸を酸型に戻した上で測定した。
[4]一軸圧縮強度
プラスチック製のモールドに各組成物92gを入れ、対象土壌298gを少しずつ加えて砂+組成物混合物を作製した。その後、25℃で3日以上静置して完全に硬化させ取り出して直径50mm×H85〜90mmの試験体(サンドゲル)を作製した。この試験体を、圧縮試験機(インストロン社製5566型)にて1mm/minで圧縮し、荷重を計測した。荷重の最大値を試験体の断面積で除した値を圧縮強度(単位はkN/m2)とした。
[5]鉄腐食速度
対象土壌を用いて、鉄材を埋設したサンドゲルを調製し、60℃で保管し、腐食による鉄材の重量減少率により腐食性の強さ(速度)を比較した。具体的には、10ccガラスビン内に、15×50×2mmの鋼材(SS400)を埋設したサンドゲルを作製した。サンドゲルにおいて鋼材を埋設する位置は全てのサンプルで一定(鋼材下端がビンの底から25mmの位置)とした。すなわち、アセトンで脱脂した鉄板をタコ糸で110ccガラスビン中に吊り下げ、下端がガラスビンの底から2.5cmの高さとなるように位置を調整後、このビンに組成物51.5gを添加し、さらに対象土壌64gを少しずつ加え、鉄板が埋まった時点でタコ糸を取り除き、残りの土を加え、ガラスビンに蓋をした。
60℃で保管したサンドゲルを、一定期間毎に取り出して、埋設した鉄材に付着した砂及び錆びをスチールブラシで除去、乾燥して、重量を測定し、以下の式に従い、1ヶ月当たりの重量減少率を算出した。
重量減少率%=(試験前の鋼材重量−試験後の鋼材重量)÷(試験前の鋼材重量)×100
<実施例1>
水51.6gに濃度40%のアクリルアミド水溶液36.8g、架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(n=9)(PEGDA)1.84gを溶解した。この溶液に、有機過酸化物として濃度39%のメチルエチルケトンペルオキサイド(MEKP)0.5gを加えて溶解し、次いで、還元剤として、チオ硫酸ナトリウム0.29gと水1.0gとの混合液を加え、実施例1の地盤改良剤組成物を調製した。
<実施例2〜8、比較例1〜3>
実施例2〜8及び比較例1〜3は、表3に示すとおりとなるように各成分を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行い、それぞれ地盤改良剤組成物を調製した。実施例2では、t−ブチルヒドロペルオキサイド(PBH)、実施例3〜4、6〜8では、t−アミルヒドロペルオキサイド(TAH)、実施例5では1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキサイド(TMBH)を、それぞれ有機過酸化物として用いた。比較例1〜2では、無機過硫酸塩化合物である過硫酸アンモニウム(APS)比較例3では、過酸化水素(H22)を用いた。
Figure 0006911694
以下、表中の記載について補足する。
PEGDA:ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート
MEKP:メチルエチルケトンペルオキサイド
PBH:tert−ブチルヒドロペルオキシド
TAH:tert−アミルヒドロペルオキシド
TMBH;1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキサイド
APS:過硫酸アンモニウム(ペルオキソ二硫酸アンモニウム)
PBH:tert−ブチルヒドロペルオキシド
実施例1〜8及び比較例1〜3の各組成物における組成及び評価結果を併せて表4に示す。
Figure 0006911694
表4に示すように、有機過酸化物を重合開始剤として用いる組成物を適用した実施例1〜8は、適用する土壌のCECに係わらず、良好な硬化時間及び良好なモノマー反応率を示し、組成物中のビニル系不飽和単量体の重合阻害が生じていないことがわかった。また、得られるゲル物の強度も優れているとともに、鉄腐食が効果的に抑制されていることがわかった。
これに対して、重合開始剤として無機過硫酸塩化合物を用いた組成物を適用した比較例1は、CECが小さい土A(CEC:0.3meq/100g)には、良好な硬化時間及びモノマー反応率を示したものの、ゲル物の強度は不十分であり鉄腐食が十分に抑制されていなかった。また、同様に無機過硫酸塩化合物を用いた組成物を適用した比較例2は、粘土性の土F(CEC:3.6meq/100g)には、硬化時間、モノマー反応率、鉄腐食抑制も不十分であり、ゲル物脱型時に破壊が生じ、その強度は測定不能なほどに低かった。さらに、同様に重合開始剤として過酸化水素を用いた組成物を適用した比較例3も、粘土性の土F(CEC:3.6meq/100g)には、硬化時間、モノマー反応率、ゲル物強度、鉄腐食抑制は著しい不良を呈した。
以上のことから、本明細書に開示される地盤改良剤組成物によれば、土壌の粘土性及び/又は陽イオン交換容量にかかわらず安定して、重合性単量体の重合・硬化を促進できて、強度や腐食を抑制できる優れたゲル物を得られることがわかった。特に、陽イオン交換容量が、0.3meq/100g以上9.0meq/100g以下の広い範囲で優れたゲル物が得られることがわかった。
本組成物は、陽イオン交換容量などの土壌の性質にかかわらず、重合性単量体の重合・硬化を促進して、特性の優れたゲル物を得ることができる。このため、掘削作業時の一時的な補強、建築構造物の地盤改良、地下鉄、道路又は鉄道トンネルなどの地下構造物の漏水防止(止水)、並びに液状化防止などの幅広い用途に向けた地盤改良剤として有用である。

Claims (12)

  1. 地盤改良剤組成物であって、
    以下の(A)〜(C)成分:
    (A)ビニル系不飽和単量体(ただし、(メタ)アクリロイル基を有するウレタンプレポリマーを除く。)又はその塩
    (B)有機過酸化物、及び
    (C)水
    を含む、組成物。
  2. 前記(B)有機過酸化物が、ヒドロペルオキシド類である、請求項1に記載の組成物。
  3. さらに、(D)成分:
    (D)還元剤
    を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
  4. 前記(A)成分の総量が2.0質量%以上30質量%以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
  5. さらに、(E)成分:
    (E)多価金属塩化合物
    を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
  6. 前記(A)成分及び(E)成分の総量が2.0質量%以上30質量%以下である、請求項5に記載の組成物。
  7. 地盤改良のためのキットであって、
    以下の(A)及び(B)成分:
    (A)ビニル系不飽和単量体(ただし、(メタ)アクリロイル基を有するウレタンプレポリマーを除く。)又はその塩、及び
    (B)有機過酸化物
    を備える、キット。
  8. さらに、(D)成分:
    (D)還元剤
    を備える、請求項7に記載のキット。
  9. さらに、(E)成分:
    (E)多価金属塩化合物
    を備える、請求項7又は8に記載のキット。
  10. 地盤改良方法であって、
    請求項1〜請求項6のいずれかに記載の地盤改良剤組成物を地盤に導入する工程、
    を備える、方法。
  11. 前記地盤改良方法は、注入固化工法である、請求項10に記載の方法。
  12. 陽イオン交換容量が0.5meq/100g以上の土壌を改良する、請求項10又は11に記載の方法。
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