JP7054087B2 - 水硬性組成物用セルフレベリング剤 - Google Patents
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Description
しかしながらこのような斫り作業や研磨作業は、手間のかかる工程であるために大規模な建造物になるほど、工程の律速になり易い。
このような方法により、モルタル施工箇所の斫り作業や研磨作業を短縮することができるようになったが、部分的なコンクリート箇所に対しては未だ斫り作業や研磨作業が必要であり、工程全体の作業性の改善は満足できるレベルまでは到達していなかった。
そこで、粗骨材が混合されるコンクリートに対してもよりレベリング性を付与する方法が提案されている(特許文献2)。
そこで本発明は、セメント組成物に対して高いレベリング効果を持ち、分散性の発揮に優れ、施工性(ワーカビリティ)に優れる水硬性組成物用セルフレベリング剤を提供することを課題とする。
1.セメント分散剤、及び、水溶性増粘剤(B)が、それぞれ接触することなく可溶性袋状物に内包されていることを特徴とする水硬性組成物用セルフレベリング剤。
2.前記セメント分散剤が、下記一般式(1)で表される単量体に由来する構成単位及び下記一般式(2)で表される単量体に由来する構成単位を含むポリカルボン酸系共重合体またはその塩(A)であることを特徴とする1.に記載の水硬性組成物用セルフレベリング剤。
R1、R2、及びR3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基を表す。
pは、0~2の整数を表す。
qは、0又は1を表す。
A1Oは、同一若しくは異なって、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表す。
nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1~300の数を表す。
R4は、水素原子又は炭素原子数1~30の炭化水素基を表す。)
R5、R6、及びR7は、それぞれ独立に、水素原子、-CH3、又は-(CH2)rCOOM2を表し、-(CH2)rCOOM2は、-COOM1又は他の-(CH2)rCOOM2と無水物を形成していてもよく、その場合、それらの基のM1及びM2は存在しない。
M1及びM2は、同一若しくは異なって、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、又は置換アルキルアンモニウム基を表す。
rは0~2の整数を表す。)
3.前記ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(A)が、さらに下記一般式(3)で表される単量体に由来する構成単位を含む、1.または2.に記載の水硬性組成物用セルフレベリング剤。
R8、R9、及びR10は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基を表す。
R11は、炭素原子数1~4のヘテロ原子を含んでよい炭化水素基を表す。
sは、0~2の整数を表す。
ただし、一般式(3)で表される単量体には、一般式(1)で表される単量体は含まれない。)
4.前記水溶性増粘剤(B)が、セルロース系増粘剤であることを特徴とする1.~3.のいずれかに記載の水硬性組成物用セルフレベリング剤。
5.前記水溶性増粘剤(B)が、粘度5,000mPa・s(20℃/2重量%水溶液)以下の水溶性増粘剤(B-1)と、粘度10,000mPa・s(20℃/2重量%水溶液)以上の水溶性増粘剤(B-2)を含有することを特徴とする1.~4.のいずれかに記載の水硬性組成物用セルフレベリング剤。
6.前記水溶性増粘剤(B)が、水溶性増粘剤(B-1):水溶性増粘剤(B-2)=50~95重量%:5~50重量%(ただし、水溶性増粘剤(B-1)+水溶性増粘剤(B-2)=100重量%)の範囲で含むことを特徴とする1.~5.のいずれかに記載の水硬性組成物用セルフレベリング剤。
7.前記ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(A)が、平均粒子径10μm以上500μm以下の範囲にある粉末状であることを特徴とする2.~6.のいずれかに記載の水硬性組成物用セルフレベリング剤。
8.前記水溶性増粘剤(B)が、平均粒子径10μm以上600μm以下の範囲にある粉末状であることを特徴とする1.~7.のいずれかに記載の水硬性組成物用セルフレベリング剤。
さらに本発明は、セメント分散剤が、ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(A)であり、このポリカルボン酸系化合物またはその塩(A)と、水溶性増粘剤(B)が、それぞれ接触することなく、可溶性袋状物に内封されている水硬性組成物用セルフレベリング剤に関する。
本発明のセメント分散剤は特に制限されず、例えば、AE減水剤(例えば、リグニンスルホン酸系分散剤、オキシカルボン酸系分散剤)、ナフタレンスルホン酸系分散剤、アミノスルホン酸系分散剤、及びポリカルボン酸系分散剤等が挙げられるが、特に後述するポリカルボン酸系共重合体またはその塩(A)が好ましい。
またセメント分散剤は、1種類の分散剤のみでもよいし、異なる2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上のセメント分散剤を組み合わせる場合、混合して可溶性袋状物に内包することもできるし、それぞれ接触することなく可溶性袋状物に内包することができる。
本発明のポリカルボン酸系共重合体またはその塩(A)は、水溶性の粉末状固形物であり、セメント組成物に添加された際に適度な分散性を発揮できるものであれば特に制限されない。
そのようなポリカルボン酸系共重合体またはその塩(A)としては、下記一般式(1)で表される単量体に由来する構成単位及び下記一般式(2)で表される単量体に由来する構成単位を含むポリカルボン酸系共重合体またはその塩(以下、単に共重合体(A)とも記す)であることが好ましい。
まず、一般式(1)で表される単量体(単量体(I)ともいう。)について説明する。
一般式(1)中のpは0~2の整数を表し、好ましくは0又は1を表す。
一般式(1)中のqは0又は1を表す。好ましくは、pが0を表しかつqが1を表し、又は、pが1若しくは2を表しかつqが0を表す。
一般式(1)中のA1Oは、同一若しくは異なって、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表す。該オキシアルキレン基としては、例えば、オキシエチレン基(エチレングリコール単位)、オキシプロピレン基(プロピレングリコール単位)、オキシブチレン基(ブチレングリコール単位)が挙げられ、オキシエチレン基(エチレングリコール単位)、オキシプロピレン基(プロピレングリコール単位)が好ましい。
qが0である単量体(I)の製造方法としては、例えば、アリルアルコール、メタリルアルコール、3-メチル-3-ブテン-1-オール等の不飽和アルコールにアルキレンオキサイドを1~300モル付加する方法が挙げられる。
また、qが1である単量体(I)の製造方法としては、例えば、(メタ)アクリレート等の不飽和モノカルボン酸と、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール、(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール、メトキシ(ポリ)エチレングリコール、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール等の(ポリ)アルキレングリコールとをエステル化する方法が挙げられる。
上記製造方法の例示において、(ポリ)アルキレングリコールの平均付加モル数は1~300であることが好ましく、5~100であることがより好ましく、5~50であることがさらに好ましく、最も好ましくは7~45である。
次に、一般式(2)で表される単量体(以下、単量体(II)ともいう。)について説明する。
なお、ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(A)は、一般式(2)で表わされる単量体(II)に由来する構成単位を、1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
本発明の水硬性組成物用セルフレベリング剤に含まれるポリカルボン酸系共重合体またはその塩(A)は、さらに下記一般式(3)で表される単量体(以下、単量体(III)ともいう。)に由来する構成単位を含んでいてもよい。
R11が表す、炭素原子数1~4のヘテロ原子を含んでよい炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1~4のアルキル基及び炭素原子数1~4のモノヒドロキシアルキル基が挙げられ、より具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、グリセリル基、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、4-ヒドロキシブチル基が挙げられる。
R11が表す、炭素原子数1~4のヘテロ原子を含んでよい炭化水素基は、好ましくは、炭素原子数1~4のモノヒドロキシアルキル基であり、より好ましくは、ヒドロキシプロピル基であり、さらに好ましくは、2-ヒドロキシプロピル基である。
なお、ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(A)は、一般式(3)で表わされる単量体(III)に由来する構成単位を、1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(A)は、上記の単量体(I)~(III)以外の単量体(IV)に由来する構成単位を含んでいてもよい。ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(A)は、単量体(IV)に由来する構成単位として、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。単量体(IV)としては、例えば、下記の単量体(IV-1)~(IV-25)を挙げることができる。なお、下記例示のうち、単量体(I)~(III)に含まれる単量体は単量体(IV)から除かれる。
(IV-5):上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1~30のアミンとのハーフアミド、ジアミド類;
(IV-6):上記アルコール又はアミンに、炭素原子数2~18のアルキレンオキシドを1~500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと、上記不飽和ジカルボン酸類とのハーフエステル、ジエステル類;
(IV-7):上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数2~18のグリコール又はこれらのグリコールの付加モル数2~500のポリアルキレングリコールとのハーフエステル、ジエステル類;
(IV-8):マレアミド酸と炭素原子数2~18のグリコール又はこれらのグリコールの付加モル数2~500のポリアルキレングリコールとのハーフアミド類;
(IV-9):炭素原子数1~30のアルコールに炭素原子数2~18のアルキレンオキシドを1~500モル付加させたアルコキシ(ポリ)アルキレングリコールと(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸類とのエステル類;(ポリ)エチレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)ブチレングリコールモノメタクリレート等の(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸類への炭素原子数2~18のアルキレンオキシドの1~500モル付加物類;
(IV-11):ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;
(IV-12):トリエチレングリコールジマレート、ポリエチレングリコールジマレート等の(ポリ)アルキレングリコールジマレート類;
(IV-13):ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、2-(メタ)アクリロキシエチルスルホネート、3-(メタ)アクリロキシプロピルスルホネート、3-(メタ)アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピルスルホネート、3-(メタ)アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピルスルホフェニルエーテル、3-(メタ)アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシスルホベンゾエート、4-(メタ)アクリロキシブチルスルホネート、(メタ)アクリルアミドメチルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドエチルスルホン酸、2-メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類、並びに、それらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩及び有機アミン塩;
(IV-15):スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、p-メチルスチレン等のビニル芳香族類;
(IV-16):1,4-ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,5-ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールモノ(メタ)アクリレート類;
(IV-17):ブタジエン、イソプレン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2-クロル-1,3-ブタジエン等のジエン類;
(IV-18):(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアルキルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;
(IV-19):(メタ)アクリロニトリル、α-クロロアクリロニトリル等の不飽和シアン類;
(IV-20):酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の不飽和エステル類;
(IV-21):(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジブチルアミノエチル、ビニルピリジン等の不飽和アミン類;
(IV-22):ジビニルベンゼン等のジビニル芳香族類;トリアリルシアヌレート等のシアヌレート類;
(IV-24):メトキシポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル等のビニルエーテルあるいはアリルエーテル類;及び、
(IV-25):ポリジメチルシロキサンプロピルアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサンアミノプロピレンアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサン-ビス-(プロピルアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン-ビス-(ジプロピレンアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン-(1-プロピル-3-アクリレート)、ポリジメチルシロキサン-(1-プロピル-3-メタクリレート)、ポリジメチルシロキサン-ビス-(1-プロピル-3-アクリレート)、ポリジメチルシロキサン-ビス-(1-プロピル-3-メタクリレート)等のシロキサン誘導体。
溶媒中での重合において使用される溶媒としては、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;シクロヘキサン、n-ヘキサン等の脂環式又は脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等が挙げられる。原料単量体及び得られる共重合体の溶解性の面から、水及び低級アルコールからなる群から選ばれる1種以上を用いることが好ましく、その中でも水を用いることがより好ましい。
溶媒中で共重合を行う場合は、各単量体と重合開始剤とを各々反応容器に連続滴下してもよいし、各単量体の混合物と重合開始剤とを各々反応容器に連続滴下してもよい。また、反応容器に溶媒を仕込み、単量体及び溶媒の混合物と、重合開始剤溶液とを各々反応容器に連続滴下してもよいし、単量体の一部又は全部を反応容器に仕込み、重合開始剤を連続滴下してもよい。
共重合に使用し得る重合開始剤として、特に限定はないが、水溶媒中で共重合を行う際には、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;t-ブチルハイドロパーオキサイド等の水溶性有機過酸化物が挙げられる。この際、亜硫酸水素ナトリウム、モール塩等の促進剤を併用してもよい。また、低級アルコール、芳香族炭化水素、脂環式又は脂肪族炭化水素、エステル類あるいはケトン類等の溶媒中で共重合を行う際には、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド等のパーオキサイド;クメンパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド;アゾビスイソブチロニトリル等の芳香族アゾ化合物等が重合開始剤として使用できる。この際、アミン化合物等の促進剤を併用してもよい。さらに、水-低級アルコール混合溶剤中で共重合を行う場合には、例えば、前述の重合開始剤又は重合開始剤と促進剤との組合せの中から適宜選択して使用することができる。重合温度は、用いる溶媒、重合開始剤の種類等重合条件によって適宜異なるが、通常50~120℃の範囲で行われる。
また、共重合においては、必要に応じて連鎖移動剤を用いて分子量を調整してもよい。使用される連鎖移動剤としては、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、及び、2-メルカプトエタンスルホン酸等の既知のチオール系化合物;亜リン酸、次亜リン酸、及びその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)、亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸、及びその塩(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム等)の低級酸化物及びその塩;等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。さらに、共重合体(A)の分子量調整のためには、共重合体(A)を得るための単量体として、上記単量体(I)~(IV)以外に、さらに連鎖移動性の高い単量体(V)を用いてもよい。連鎖移動性の高い単量体(V)としては、例えば(メタ)アリルスルホン酸(塩)系単量体が挙げられる。単量体(V)の配合率は、共重合体(A)において、通常は20重量%以下であり、10重量%以下であることが好ましい。なお、上記配合率は、単量体(I)の配合率+単量体(II)の配合率+単量体(III)の配合率+単量体(IV)の配合率=100重量%としたときの配合率である。
共重合体(A)を得る際に水溶媒中で共重合する場合、重合時のpHは通常不飽和結合を有する単量体の影響で強酸性となるが、これを適当なpHに調整してもよい。重合の際にpHの調整が必要な場合は、リン酸、硫酸、硝酸、アルキルリン酸、アルキル硫酸、アルキルスルホン酸、(アルキル)ベンゼンスルホン酸等の酸性物質を用いてpHの調整を行うことができる。これら酸性物質の中では、pH緩衝作用がある点等から、リン酸を用いることが好ましい。しかし、エステル系の単量体が有するエステル結合の不安定さを解消するためには、pH2~7で重合を行うことが好ましい。また、pHの調整に用い得るアルカリ性物質に特に限定はないが、NaOH、Ca(OH)2等のアルカリ性物質が一般的である。pH調整は、重合前の単量体を含む溶液に対して行ってもよいし、重合後の共重合体を含む溶液に対して行ってもよい。また、これらは重合前に一部のアルカリ性物質を添加して重合を行った後、さらに共重合体を含む溶液に対してpH調整を行ってもよい。
ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(A)の重量平均分子量は、5,000以上であることが好ましく、6,000以上であることがより好ましく、6,500以上であることがさらに好ましい。これにより、水硬性材料に対する分散性が十分発揮され、リグニンスルホン酸系又はオキシカルボン酸系等のAE減水剤を上回る減水率を得ることができ、流動性及び/又は作業性が改善され、セメント添加剤(セメント分散剤)としての目的の効果を十分に発現することができる。重量平均分子量の上限は、60,000以下であることが好ましく、50,000以下であることがより好ましく、30,000以下であることがさらに好ましい。これにより、セメント粒子の凝集作用が抑制され、作業性を良好にすることができる。重量平均分子量は、5,000~60,000であることが好ましい。
GPCの測定条件として特に限定はないが、例として以下の条件を挙げることができる。後段の実施例における重量平均分子量は、この条件で測定した値である。
測定装置 :東ソー製
使用カラム:Shodex Column OH-pak SB-806HQ、
SB-804HQ、SB-802.5HQ
溶離液 :0.05mM硝酸ナトリウム/アセトニトリル 8/2(v/v)
標準物質 :ポリエチレングリコール(東ソー製、GLサイエンス製)
検出器 :示差屈折計(東ソー製)
検量線 :ポリエチレングリコール基準
本発明に係る水溶性増粘剤(B)は、水溶性を示す粉末状固形物であって、溶解後の水溶液の粘度を溶解前よりも上昇させることができるものであれば特に限定されないが、通常、水溶性増粘剤は、高分子化合物である。水溶性と粘度を上昇させる度合の調整をし易いので、水溶性増粘剤は、好ましくは、多糖誘導体であり、より好ましくは、セルロース系増粘剤であり、さらに好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
本発明の水溶性増粘剤(B)としては、種類や粘性等で定まる1種のものを用いてもよいし、異なる2種以上のものを用いてもよい。2種以上の水溶性増粘剤(B)を組み合わせる場合、混合して可溶性袋状物に内包することもできるし、それぞれ接触することなく可溶性袋状物に内包することができる。
水溶性増粘剤(B)としては、前述される水溶性増粘剤(B-1)及び水溶性増粘剤(B-2)以外の、異なる増粘剤を含むことに制限されない。
本発明の水硬性組成物用セルフレベリング剤は、その他添加成分(C)として、セメント組成物に用いられる添加剤を含むことができる。そのような添加剤としては、例えば、水溶性高分子、高分子エマルジョン、空気連行剤、セメント湿潤剤、膨張剤、防水剤、遅延剤、増粘剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、効果促進剤、消泡剤、その他の界面活性剤等の公知のコンクリート用添加剤、及び/または水硬性組成物で後述されるセメント材料(各種水硬性セメント、シリカヒュームやフライアッシュ、CfFA(日本製紙製)等の鉱物質微粉末、骨材)等を挙げることができる。また、その他添加成分として、上記添加剤を2種以上組み合わせて使用することもできる。その他添加成分(C)は、可溶性袋状物に、他の内包物と混合して内包することもできるし、それぞれ接触することなく内包することもできる。
本発明の水硬性組成物用セルフレベリング剤は、前述されるセメント分散剤(特にポリカルボン酸系共重合体またはその塩(A))と水溶性増粘剤(B)が、それぞれ接触することなく可溶性袋状物に内包されている形状である。
可溶性袋状物は、水分散性紙から形成する。ここで、本発明において、水分散性紙とは、フロック状水分散時間が30秒以内であり、かつ繊維状水分散時間が60秒以内である紙を意味する。フロック状水分散時間とは、脱イオン水300mlを300mlビーカーに入れ、スターラーで650rpmに撹拌しながら、3cm角の試験片を投入し、試験片が2つ以上に千切れる時間である。また、繊維状水分散時間とは、試験片が完全に繊維一本一本にほぐれる時間である。
下記で詳述するように、本発明の可溶性袋状物は、骨材等の粉粒体を含有するコンクリートスラリーやセメントスラリー中に可溶性袋状物ごと添加することができる。この際、可溶性袋状物は、骨材等の粉粒体の物理的抵抗を受けて分散が抑制される。また、骨材等の粉粒体が含有するカルシウムイオンやマグネシウムイオンにより、水溶性高分子が溶け難くなり、水分散性が低下する場合がある。
紙面pHを調整する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、中性領域の材料を主成分として水分散性紙を抄紙する。あるいは、アルカリ性、酸性の水分散性紙を、酸性物質、アルカリ性物質で中和して製造することができる。
本発明の水分散性紙は、平滑性を向上させて印刷用途等に供するため、マシンカレンダー、スーパーカレンダー、ソフトニップカレンダー等の一般的な製紙用カレンダーを用いてカレンダー加工を施すことができる。
本発明の水硬性組成物用セルフレベリング剤は、そのような可溶性袋状物にセメント分散剤、及び、水溶性増粘剤(B)を、それぞれ接触することなく充填し内包する。また、必要に応じてその他添加成分(C)を充填し内包する。
そのような場合、必要に応じて他の成分を、セメント分散剤、水溶性増粘剤(B)が内包されたどちらか/両方の内室に混合し充填したり、またはセメント分散剤、水溶性増粘(B)のどちらも内包されていない別の内室に充填することができる。
さらに、別個の包装材料からなる袋状物にセメント分散剤、セメント添加剤のいずれか、または両方の2種以上を内包し、また必要に応じてその他添加成分(C)をどちらか又は別の可溶性袋状物に内包した可溶性袋状物とする実施態様でもよい。
本発明の水硬性組成物用セルフレベリング剤は、セメント材料と、セルフレベリング剤の質量比(セメント材料/セルフレベリング剤)が、99.5~99.999/0.5~0.001の範囲内で、水と混練することにより水硬性組成物となる。セメント材料と、水硬性組成物用セルフレベリング剤の質量比(セメント材料/水硬性組成物用セルフレベリング剤)は、99.6~99.91/0.4~0.09であることが好ましく、99.9~99.984/0.1~0.016であることがより好ましい。
他の混和剤として、例えば空気連行剤(空気連行成分)、消泡剤(消泡成分、制泡成分)、減水剤(標準形、遅延形、促進形)、高性能AE減水剤(標準形、遅延形)、高性能減水剤、硬化促進剤、流動化剤(標準形、遅延形)、(高性能)AE減水剤収縮低減タイプ、高性能減水剤収縮低減タイプ、凝結遅延剤、促進剤、急結剤、起泡剤、防錆剤、耐寒促進剤、付着モルタル安定剤、黒ずみ抑制剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、セルフレベリング剤、防黴剤等が挙げられる。上記他の混和剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
水硬性組成物の製造方法、運搬方法、打設方法、養生方法、管理方法等について特に制限はなく、通常の方法を採用することができる。
実施例及び比較例において、ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(A)として、下記共重合体A1~A2を用いた。
温度計、撹拌装置、還流装置、窒素導入管及び滴下装置を備えたガラス反応容器に水501部、3-メチル-3-ブテン-1-オールのエチレンオキサイド付加物(エチレンオキサイドの平均付加モル数25個)400部を仕込み、撹拌下で反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃に昇温した。その後、アクリル酸80部及び水532部を混合したモノマー水溶液と、過硫酸アンモニウム10部及び水190部の混合液とを、各々1時間で、80℃に保持した反応容器に連続滴下した。さらに、温度を100℃に保持した状態で1時間反応させることにより共重合体の水溶液を得た。液中の共重合体は共重合体A1(重量平均分子量22,000、Mw/Mn1.7)であった。
得られた共重合体A1を回転する冷却盤にゆっくりと薄く広げ、1mm以下の厚さで固体になったものを箆でこそぎ落とし、1mmの網ふるいを通過させ最大粒子径1mm以下に調整し、A1成分を準備した。A1成分の平均粒子径は250μmであった。
温度計、撹拌装置、還流装置、窒素導入管及び滴下装置を備えたガラス反応容器に水148部、及び、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノアリルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数37個、プロピレンオキサイドの平均付加モル数3個、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのランダム付加)94部を仕込み、撹拌下で反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃に昇温した。その後、メタクリル酸35部、アクリル酸5部、メトキシポリエチレングリコールメタアクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数25個)63部、2-ヒドロキシプロピルアクリレート60部、3-メルカプトプロピオン酸8部、水165部を混合したモノマー水溶液と、過硫酸アンモニウム3部及び水47部の混合液とを、各々2時間で、80℃に保持した反応容器に連続滴下した。さらに、温度を100℃に保持した状態で1時間反応させることにより共重合体の水溶液を得た。液中の共重合体は共重合体A2(重量平均分子量11,100、Mw/Mn1.5)であった。
得られた共重合体A2を回転する冷却盤にゆっくりと薄く広げ、1mm以下の厚さで固体になったものを箆でこそぎ落とし、1mmの網ふるいを通過させ最大粒子径1mm以下に調整し、A2成分を準備した。A2成分の平均粒子径は200μmであった。
実施例及び比較例において、水溶性増粘剤Bとして、下記の水溶性増粘剤B1~B2を使用した。
水溶性増粘剤B1:ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業製、メトローズ60SH4000)
水溶性増粘剤B2:ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業製、メトローズ65SH15000)
上記水溶性増粘剤B1、B2は、乾燥器で80℃5時間処理し含水量を4%以下に調整した。その後、ハンマーミル(ホソカワミクロン製、AP-S型)を用いて機械的に粉砕し、目開き600μmの網ふるいを通過させ、最大粒子径600μm以下となるように調整し使用した。平均粒子径は、B1が250μm、B2が200μmであった。
実施例及び比較例において、その他成分Cとして、下記のC1、C2を使用した。
添加剤C1:セメント用消泡剤
添加剤C2:空気連行剤(フローリック製、フローリックAE-4)
上記添加剤C1、C2は、それぞれ水溶液状態とした後、回転する冷却盤にゆっくりと薄く広げ、5mm以下の厚さで固体になったものを箆でこそぎ落とし、10mmの網ふるいを通過させ各辺を10mm以下に調整し、(C)成分を準備した。なお、これ以上のサイズに成形されたものは除外した。
横21cm×縦21cmの水分散性紙(日本製紙パピリア製、A3015)を用い、短辺の端部それぞれが中央部に接するように折り返し、端部と中央部の接触面でヒートシールを行い接着した。
その後、得られた2つの筒状体の下部をヒートシールで接着し、1箇所のみ開口する内室I及び内室IIを得た。
得られた内室I及び内室IIに対し、下表の配合で薬剤をそれぞれ内包した後、開口部をヒートシールで接着させ、密封した可溶性袋状物を得て、実施例及び比較例の水硬性組成物用セルフレベリング剤とした。
コンクリートの配合処方を表2に示す。
C:普通ポルトランドセメント(密度=3.16g/cm3)
S:細骨材(掛川産山砂(表乾密度=2.58g/cm3、吸水率=1.90%,F.M.=2.78))
W:上水道水
G:粗骨材(砕石2005 東京都青梅産(表乾密度=2.65g/cm3、実積率59.3%))
a:粗骨材+細骨材
なお初期セメント混和剤は、AE減水剤標準形I種である「フローリックSV10」を使用した。
<材料分離抵抗性>
◎:骨材とモルタルペーストが一体化しており、コンクリートの性状も非常に良好な状態
○:骨材とモルタルペーストは一体化しており、コンクリートの性状が良好な状態
×:骨材とモルタルペーストが一体化しておらず、モルタルペーストが分離している状態
<施工性>
◎:流動性があり、ポンプ圧送性が良好で、こてによる施工性が非常に良好な状態
○:流動性があり、ポンプ圧送性が良好で、こてによる施工性が良好な状態
△:流動性があり、辛うじて圧送は可能だが、施工性が悪い状態
×:流動性がなく、ポンプ圧送が不可能かつ施工性が非常に悪い状態
なおセメント混和剤は、AE減水剤標準形I種である「フローリックSV10」を使用した。
その後排出し、ベースとなるモルタルのフレッシュ試験(ミニスランプ測定および単位容積質量試験による空気量の算出)を実施した。その結果を表5に示す。
Claims (8)
- セメント分散剤、及び、水溶性増粘剤(B)が、それぞれ接触することなく可溶性袋状物に内包されており、
前記可溶性袋状物が、水分散性紙に水溶性樹脂フィルムをラミネート加工されてなるシート状物から形成されていることを特徴とする水硬性組成物用セルフレベリング剤。 - 前記セメント分散剤が、下記一般式(1)で表される単量体に由来する構成単位及び下記一般式(2)で表される単量体に由来する構成単位を含むポリカルボン酸系共重合体またはその塩(A)であることを特徴とする請求項1に記載の水硬性組成物用セルフレベリング剤。
R1、R2、及びR3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基を表す。
pは、0~2の整数を表す。
qは、0又は1を表す。
A1Oは、同一若しくは異なって、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表す。
nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1~300の数を表す。
R4は、水素原子又は炭素原子数1~30の炭化水素基を表す。)
R5、R6、及びR7は、それぞれ独立に、水素原子、-CH3、又は-(CH2)rCOOM2を表し、-(CH2)rCOOM2は、-COOM1又は他の-(CH2)rCOOM2と無水物を形成していてもよく、その場合、それらの基のM1及びM2は存在しない。
M1及びM2は、同一若しくは異なって、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、又は置換アルキルアンモニウム基を表す。
rは0~2の整数を表す。) - 前記ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(A)が、平均粒子径10μm以上500μm以下の範囲にある粉末状であることを特徴とする請求項2または3に記載の水硬性組成物用セルフレベリング剤。
- 前記水溶性増粘剤(B)が、セルロース系増粘剤であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の水硬性組成物用セルフレベリング剤。
- 前記水溶性増粘剤(B)が、粘度5,000mPa・s(20℃/2重量%水溶液)以下の水溶性増粘剤(B-1)と、粘度10,000mPa・s(20℃/2重量%水溶液)以上の水溶性増粘剤(B-2)を含有することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の水硬性組成物用セルフレベリング剤。
- 前記水溶性増粘剤(B)が、水溶性増粘剤(B-1):水溶性増粘剤(B-2)=50~95重量%:5~50重量%(ただし、水溶性増粘剤(B-1)+水溶性増粘剤(B-2)=100重量%)の範囲で含むことを特徴とする請求項6に記載の水硬性組成物用セルフレベリング剤。
- 前記水溶性増粘剤(B)が、平均粒子径10μm以上600μm以下の範囲にある粉末状であることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の水硬性組成物用セルフレベリング剤。
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