JP6911635B2 - 接着剤組成物および積層体 - Google Patents

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Description

本発明は接着剤組成物に関する。また、本発明は前記接着剤組成物を用いてなる積層体に関する。
包装用容器には、主として金属製の容器、主としてガラス製の容器の他、プラスチックフィルムに金属箔などのバリア層を積層した積層体製の容器など種々のものがある。容器の形態としてもボトル状や袋状等様々なものがある。
また、身近な内容物としては、食品の他に、頭髪用化粧料(シャンプー、トリートメント、コンディショナー、カラーリング液、パーマ液)、消毒用アルコール、漂白剤、酸性内容物、アルカリ性内容物等が挙げられ、さらに農薬なども挙げられる。
特許文献1には、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸で変性されたポリオレフィン樹脂(A1)10〜90重量%及び未変性ポリオレフィン樹脂(B1)90〜10重量%からなる樹脂混合物100重量部並びに酸中和剤又は酸吸収剤(C1)1〜200重量部を含有することからなるポリオレフィン系接着剤組成物が開示されている。
特許文献2には、フレキシブル印刷回路基板の製造用の接着剤として、(A)特定の性状を有する変性ポリプロピレンを有機溶剤に固体状態で分散してなる樹脂分散物、(B)エポキシ樹脂、(C)アミン変性ポリオール樹脂、および(D)硬化剤を含む接着剤組成物が開示されている。
特許文献3には、アルケニルシランとα−オレフィンの共重合体をシクロヘキシルアルコール及びその誘導体を除OH化合物、含C=O化合物、含C=C化合物から選ばれる化合物と接触処理してなるポリオレフィン樹脂組成物が開示されている。
特許文献4には、環状ポリオレフィン系樹脂で構成された層と、他の熱可塑性樹脂で構成された層とを接着するための接着性樹脂組成物であって、示差走査型熱量計(DSC)を用いて昇温速度20℃/分で測定したとき、吸熱曲線(セカンド・ヒーティング)における融解開始温度が−20℃〜+50℃の範囲に存在し、かつ前記吸熱曲線における融解終了温度が70〜100℃の範囲に存在する粘着成分(A)、及び前記吸熱曲線における融解ピークの半値幅が20℃以下であるポリオレフィン系樹脂(B)で構成されている接着性樹脂組成物が開示されている。
さらに、特許文献5には、蓄電デバイス用包装材形成用の接着剤として、カルボキシル基もしくは酸無水物基を有するポリオレフィン樹脂(A)と、2つ以上のエポキシ基を有する化合物であって、芳香族アミノ基もしくはヘテロ原子として窒素原子を有する複素環の少なくとも一方を有するエポキシ化合物(B)とを含有することを特徴とする接着剤組成物が開示されている。
特開2002−3805号公報 特開平10−60401号公報 特開平2−49048号公報 特開2008−1760号公報 特開2016−35035号公報
食品以外の様々な内容物(以下、化学薬品類という)を収容する容器を形成するための包装材用の積層体のうち、最もシンプルなものとしては、外層側から順に外層側樹脂フィルム層、外層側接着剤層、バリア層、内層側接着剤層およびヒートシール層からなる積層体が挙げられる。
内層側接着剤層には、主に以下の性能が要求される。
(1) バリア層とヒートシール層との接着強度が大きいこと。
(2) 上記の接着剤層が化学薬品類耐性を有していること。即ち、化学薬品類を包装用容器内に密封しても、バリア層とヒートシール層との接着強度が維持できること。
例えば、包装容器にアルカリ性パーマ液のような化学薬品類を入れると、アルカリ性パーマ液がヒートシール層を通り抜け、接着剤層に達するが、ヒートシール層とバリア箔である金属箔との接着強度は低下しないことが望まれる。
特許文献1は、不飽和カルボン酸で変性されたポリオレフィン樹脂(A)と、未変性ポリオレフィン(B)と、酸中和剤又は吸収剤(C)を含有することで、プロピレンカーボネートのような化学薬品を内容物とする場合でも、接着力を維持できる旨記載する。しかし、特許文献1記載の接着剤では、内容物が強酸性や強アルカリ性の場合や、内容物がアルコールを高濃度に含有する場合には、接着力を十分には維持できなかった。
特許文献2は、エポキシを含むフレキシブル印刷回路基盤用の接着剤を開示する。しかし、化学薬品用包装材を開示しないし、示唆もしない。
特許文献3は化学薬品用包装材を開示しないし、示唆もしない。そして、初期の接着強度は記載されているが、接着強度の耐久性への言及は一切ない。
特許文献4は、特定の粘着成分と特定のポリオレフィン系樹脂とを組み合わせることによって、透明性に優れ光拡散シートなどの材料として汎用されている環状オレフィン系樹脂で構成された層と、他の熱可塑性樹脂で構成された層との接着性を向上でき、反りや表面の荒れ抑制できることを開示する。しかし、引用文献4はそもそも包装容器を開示しないので、接着強度の耐化学薬品性も一切開示せず示唆もしない。
特許文献5は、前述の通り、蓄電デバイス用包装材形成用の接着剤を開示する。しかし、特許文献5記載の接着剤では、内容物が強酸性や強アルカリ性の場合や、内容物がアルコールを高濃度に含有する場合には、接着力を十分には維持できなかった。
本発明は、上記背景を鑑みてなされたものであり、初期の接着強度が高く、化学薬品に長期間晒されても、晒される前の初期の接着強度を高レベルで維持できる積層体を形成できる接着剤組成物を提供することを課題とする。また、本発明は、従来よりも、強酸性、強アルカリ性、高濃度のアルコールに長期間晒されても、晒される前の接着強度を高レベルで維持できる包装材を提供することを課題とする。
具体的には、初期の接着強度が15mm幅で少なくとも4N以上であって、pH3以下程度の強酸性の内容物、pH10以上程度の強アルカリ性の内容物、エタノールの濃度が50質量%以上の内容物に、60℃、4週間以上晒されても晒される前の接着強度を70%以上の高レベルで維持することを課題とする。
本発明は、酸変性ポリオレフィンと一級水酸基含有ポリオレフィン、そしてリン酸系化合物、シラン化合物を特定量用いることによって、上記課題を解決した。
即ち、本発明は、カルボキシル基もしくは酸無水物基を有し、一級水酸基を有しないポリオレフィン樹脂(A)と、一級水酸基を有し、カルボキシル基もしくは酸無水物基を有しないポリオレフィン樹脂(B)との合計100質量%中、前記ポリオレフィン樹脂(A)50〜99質量%、前記ポリオレフィン樹脂(B)1〜50質量%を含み、
前記ポリオレフィン樹脂(A)と前記ポリオレフィン樹脂(B)との合計100質量部に対し、
シラン化合物(C)0.1〜5質量部、
リン酸系化合物(D)0.01〜1質量部、および
-SiHを有しないエポキシ化合物およびイソシアネート化合物からなる群より選ばれる硬化剤(E)1〜40質量部を、
含有することを特徴とする接着剤組成物に関する。
また、本発明は、前記シラン化合物(C)が、エポキシ基を有することを特徴とする接着剤組成物に関する。
また、本発明は、前記ポリオレフィン樹脂(A)が、1−ブテンと他のオレフィンとから得られる共重合体が酸変性されてなるものであることを特徴接着剤組成物に関する。
また、本発明は、前記前記ポリオレフィン樹脂(B)が、一級水酸基を有するポリブタジエンであることを特徴とする接着剤組成物に関する。
また、本発明は、前記の接着剤組成物から形成される接着剤層を介して、酸素透過度が100CC(m、24hr、1atm、25℃)以下のバリア層とヒートシール層とが積層されてなる積層体
また、本発明は、外層から順に、外層側樹脂フィルム層、外層側接着剤層、バリアフィルム層、内層側接着剤層、ヒートシール層を必須とする包装材において、
前記内層側接着剤層が前記の接着剤組成物から形成されることを特徴とする包装材に関する。
さらに本発明は、前記の包装用積層体から形成されてなる包装用容器であって、ヒートシール層が内面を構成している、包装用容器に関する。
本発明により、初期の接着強度が15mm幅で少なくとも2N以上であって、従来よりも、強酸性、強アルカリ性、高濃度のアルコールに対する耐性に優れる包装材を提供することができるようになった。
以下、本発明の実施の形態を、詳細に説明する。なお、本明細書において「任意の数A〜任意の数B」なる記載は、数Aおよび数Aより大きい範囲であって、数Bおよび数Bより小さい範囲を意味する。
以下、カルボキシル基もしくは酸無水物基を有するポリオレフィン樹脂(A)や一級水酸基を有するポリオレフィン樹脂(B)を単にポリオレフィン樹脂(A)やポリオレフィン樹脂(B)と略しことがある。
本発明の接着剤組成物を、金属箔層とヒートシール層との間に挟んだ状態で、
ポリオレフィン樹脂(A)中のカルボキシル基もしくは酸無水物基と、ポリオレフィン樹脂(B)の一級水酸基を反応させること、
ポリオレフィン樹脂(A)中のカルボキシル基もしくは酸無水物基と、シラン化合物(C)を反応させること、
ポリオレフィン樹脂(A)中のカルボキシル基もしくは酸無水物基を、硬化剤(E)中のエポキシ化合物やイソシアネート化合物と反応させること、
ポリオレフィン樹脂(B)中の一級水酸基を、硬化剤(E)中のエポキシ化合物やイソシアネート化合物と反応させること
により、強固な架橋構造を形成し、十分な接着強度を発現でき、強酸性の液や強アルカリ性の液や高濃度のアルコールを含む液に長期間浸漬されてもその接着強度を高レベルで維持できる。
<カルボキシル基もしくは酸無水物基を有するポリオレフィン樹脂(A)>
ポリオレフィン樹脂(A)は、接着剤組成物に使用する溶剤への溶解性や、その溶解した溶液が沈殿せず安定に保管できる(保存安定性を有する)ために、非結晶性を有することが好ましい。一方、積層体における接着剤層としての化学薬品耐性を向上するためには、結晶性部位も有すことが好ましく、そのバランスが重要となる。本発明で使用する前記ポリオレフィン樹脂(A)は、質量平均分子量が5万〜50万、融点が60〜110℃であり、融解エネルギー(ΔE)が15〜50(mJ/mg)であることが好ましい。
ポリオレフィン樹脂(A)は、質量平均分子量(Mw)が5万〜50万であることによって、接着剤組成物を構成するポリオレフィン樹脂(A)の溶液としての保存安定性と、化学薬品用包装材としての化学薬品耐性、ヒートシール性、塗工性を両立しやすくなる。より好ましくは、ポリオレフィン樹脂(A)のMwは10万〜40万である。
言い換えると、ポリオレフィン樹脂(A)のMwが5万未満であると、ポリオレフィン樹脂(A)のポリマー鎖の絡み合いが不足するため接着剤層の膜強度が低くなり化学薬品耐性が不足する恐れがある。また、Mwが50万より大きいとポリオレフィン樹脂(A)溶液としての25℃での保存安定性が低下したり、接着剤溶液の粘度が高すぎて塗工性が悪化したりする恐れがある。
ポリオレフィン樹脂(A)は、融点が60〜110℃、融解エネルギー(ΔE)が15〜50(mJ/mg)であることによって、化学薬品用包装材としての接着強度(初期、化学薬品浸漬後)やヒートシール性をバランスよく満足することができる。
言い換えると、ポリオレフィン樹脂(A)の融点が60℃未満であると、強酸性液や強アルカリ性の液、あるいは高濃度のアルコールを含む液に浸漬した後の接着強度やヒートシール性が低下する恐れがある。融点が110℃より大きくなると接着強度(初期、化学薬品浸漬後)が低下する恐れがある。より好ましくはポリオレフィン樹脂(A)の融点は60〜90℃である。
また、ポリオレフィン樹脂(A)の融解エネルギー(ΔE)が15(mJ/mg)未満であると化学薬品浸漬後の接着強度やヒートシール性が低下し、50(mJ/mg)より大きくなると結晶性が高く、ポリオレフィン樹脂(A)溶液としての保存安定性が低下する場合がある。より好ましくは、ポリオレフィン樹脂(A)の融解エネルギー(ΔE)は、20〜50(mJ/mg)であり、さらに好ましくは20〜40(mJ/mg)である。
なお、本発明において「保存安定性がある」とは、トルエン:90gに樹脂:10gを加え、樹脂を加熱溶解し、透明な溶液を得た後、25℃に冷却し、同温で一週間静置して沈殿を生じないものを言う。
本発明におけるポリオレフィン樹脂(A)は、カルボキシル基または酸無水物基を有していればよく、例えば、カルボキシル基または酸無水物基を有していないポリオレフィン樹脂(A1)にエチレン性不飽和カルボキシル基またはその酸無水物をグラフト重合させた変性ポリオレフィン樹脂や、オレフィンモノマーとエチレン性不飽和カルボン酸またはその酸無水物との共重合体等が挙げられる。また、酸無水物基を有するポリオレフィンの酸無水物基と、水やアルコールと反応させることによりカルボキシル基を有するポリオレフィンを得ることもできる。カルボキシル基または酸無水物基を有していないポリオレフィン(A1)にエチレン性不飽和カルボキシル基またはその酸無水物をグラフト重合させた変性ポリオレフィン樹脂が好ましい。ポリオレフィン樹脂(A)は単独で使用しても良いし、2種以上を任意に組み合わせて使用しても良い。
ポリオレフィン樹脂(A)中のカルボキシル基または酸無水物基の量については、後述する。
ポリオレフィンのグラフト重合方法は、特に限定されないが、例えば特開平11−293216に開示されている方法を用いることができる。
前記ポリオレフィン樹脂(A)としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、ブタジエン、イソプレン、1−ヘキセン、1−オクテン等のオレフィンモノマーの単独重合体、オレフィンモノマー同士の共重合体、もしくはその他のモノマーとの共重合体、および得られた重合体の水素化物やハロゲン化物など、炭化水素骨格を主体とする重合体を指す。オレフィンモノマー同士の共重合体が好ましい。
オレフィンモノマー同士の共重合体としては、1−ブテンと他のオレフィンモノマーとの共重合体が好ましい。他のオレフィンとしては、エチレン、プロピレンが好ましく、1−ブテンと他のオレフィンモノマーとの共重合体としては、エチレンと1−ブテンとの二元共重合体、プロピレンと1−ブテンとの二元共重合体、エチレンとプロピレンと1−ブテンとの三元共重合体が挙げられ、プロピレンと1−ブテンとの二元共重合体がより好ましい。共重合比は、プロピレン:1−ブテン=10:90〜80:20(モル比)であることが好ましく、40:60〜80:20(モル比)であることがより好ましい。プロピレンと1−ブテンの共重合体において、プロピレンが10モル%未満の場合は融点が60℃より低い場合があり、80モル%より多い場合は融点が110℃より高くなる場合がある。
オレフィンモノマーに共重合してもよいその他のモノマーとしては、特に限定されず、例えば、
スチレン、α−メチルスチレン、インデン等の芳香族ビニル化合物;
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート化合物;
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環構造を有する(メタ)アクリレート化合物;
ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香環を有する(メタ)アクリレート化合物;
2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート化合物;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基を有する(メタ)アクリレート化合物;
(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド類;
(メタ)アクリロニトリル、アクリロイルモルホリン等が挙げられる。
グラフト重合性の点およびポリオレフィンとの相溶性の点から、スチレン、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートが好ましい。
前記エチレン性不飽和カルボン酸としては、特に限定されるものではないが、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸等が挙げられる。これらエチレン性不飽和カルボン酸またはその酸無水物は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
オレフィンモノマーの重合方法は、特に限定されないが、例えば、特公平07−080948号に開示されている方法などチーグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒などの金属触媒や、必要に応じて(メチル)アルミノキサン等の助触媒を添加して、重合することができる。
なお、ポリオレフィン樹脂(A)のMwは、以下のようにして求める。
TSKgel superHZM−Nのカラムを2本接続した東ソー株式会社製HLC−8220GPCシステムにより、カラム温度40℃、溶離液にテトラヒドロフラン、流量毎分0.35mlの条件にて測定した。サンプルは、2mgのポリオレフィン樹脂(A)を、5mlのテトラヒドロフランに溶解して調整した。また、Mwは標準ポリスチレン換算で算出した。
ポリオレフィン樹脂(A)を2種以上併用した場合は、その混合物全体の質量平均分子量を意味する。
また融点、融解エネルギー(ΔE)は、JIS K7121に準じてDSC測定により求めることができる。具体的には以下のようにして求める。
約10mgのポリオレフィン樹脂(A)の直径または各辺が0.5mm以下の場合はそのまま使用し、0.5mmを超えるものは0.5mm以下に切断して容器に入れる。
毎分10℃で融点より約30℃高い温度まで加熱し、その後毎分10℃でTgより約50℃低い温度まで冷却する。明確なTgが観測されない場合は、融点より約50℃低い温度まで冷却する。その後、毎分10℃で融点より約30℃高い温度まで加熱した際に表れる融解に対応するピークのピークトップより求めた。また、ΔEは、融解に対応するピークが、ベースラインから離れてから再度ベースラインに戻るまでの部分の面積より求める。
ポリオレフィン樹脂(A)を2種以上併用する場合は、融点は高温側のピークのピークトップより求め、ΔEは融解により得られる全てのピーク面積の合計から算出する。
ポリオレフィン樹脂(A)としては、市販品を用いることもでき、例えば、スミフィットB1401、H1301、Z9901(商品名、住友化学株式会社製)、ユニストールP−401、P−802、P−902(商品名)ユーメックス1001、1010、2000(商品名、三洋化成株式会社製)、アウローレン350S、351S、359S、500S、S−5247S、S−5248S、S−5297S、S−5349S、S−5350Sなどが挙げられる。
本発明では、発明の効果を損なわない範囲で、カルボキシル基または酸無水物基を有するポリオレフィン樹脂(A)の他に、カルボキシル基または酸無水物基を有さないポリオレフィン樹脂を併用しても良い。
本発明で使用されるカルボキシル基または酸無水物基を有さないポリオレフィン樹脂としては、例えば、住友化学株式会社製のタフセレンT3712、T3722、T3522(プロピレン系エラストマー)、住友ノーブレン(ポリプロピレン)、三井化学社製タフマーDF&A、タフマーH、タフマーXM、タフマーBL、タフマーM(α−オレフィン共重合体)、株式会社クラレ製のクラプレンLIR−30(イソプレン重合体)、LIR−200(水素化イソプレン重合体)、LBR−300(ブタジエン重合体)、株式会社クラレ製のセプトン2002、2004(以上、水素化スチレン−イソプレン−スチレン共重合体)、2104、4033、HG252(以上、水素化スチレン−イソプレン/ブタジエン−スチレン共重合体)、旭化成ケミカルズ株式会社製のアサプレンT−432、T−437、クレイトンポリマージャパン株式会社製のクレイトンD1155(以上、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)、旭化成ケミカルズ株式会社製のタフテックP1500、P2000、MP10(部分水素化スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)、H1052、H1043(以上、水素化スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)、日本製紙ケミカル株式会社製のスーパークロンC(プロピレン重合体の塩素化物)、日本ポリエチレン株式会社製のレクスパールEMA(エチレン−アクリル酸メチル共重合体)、レクスパールEEA(エチレン−アクリル酸エチル共重合体)、三井・デュポンポリケミカル株式会社製エバフレックス(エチレン−酢酸ビニル共重合体)、住友化学株式会社製ボンドファースト(エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体)等が挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を任意に組み合わせて使用しても良い。
<一級水酸基を有するポリオレフィン樹脂(B)>
本発明で使用されるポリオレフィン樹脂(B)は、接着剤組成物に使用する溶剤への溶解性や、ポリオレフィン樹脂(A)との相溶性を有することが望ましい。一方、積層体における接着剤層としての化学薬品耐性を向上するためには、両末端水酸基を有することで、その活性部位が様々な反応を引き起こし、接着剤樹脂組成物が高分子量化することが好ましい。
ポリオレフィン樹脂(B)の溶液としての保存安定性向上と、ポリオレフィン樹脂(A)との相溶性向上の点から、ポリオレフィン樹脂(B)の質量平均分子量(Mw)は0.1万〜5万であることが好ましく、0.2万〜1万であることがより好ましい。
つまり、ポリオレフィン樹脂(B)のMwが0.1万以上であることによって、ポリオレフィン樹脂(B)のポリマー鎖が効果的に絡み合うため接着剤層の膜強度が向上する。また、Mwが5万以下であることによりポリオレフィン樹脂(A)との相溶性が向上する。
ポリオレフィン(B)の重合方法や、Mwの求め方は、前述と同様である。
ポリオレフィン(B)としては、市販品を用いることもでき、例えば、日本曹達株式会社製のNISSO−PBのGシリーズ(水酸基ポリブタジエン)、GIシリーズ(水酸基水素化ポリブタジエン)、出光株式会社製Poly bdシリーズ(水酸基末端液状ポリブタジエン)、Poly ipシリーズ(水酸基末端液状ポリイソプレン)、EPOLシリーズ(水酸基末端液状ポリオレフィン)、三菱ケミカル製ポリーテルシリーズ(ポリヒドロキシポリオレフィンオリゴマー)等が挙げられる。
これらは単独で使用しても良いし、2種以上を任意に組み合わせて使用しても良い。
ポリオレフィン樹脂(B)は、必要に応じて、イソシアネートによるウレタン化を行い、両末端水酸基ポリオレフィンポリウレタン樹脂にしてもよい。その際に用いるイソシアネートの種類は、特に限定されない。
本発明では、塗工時の濡れ性の向上と積層体の耐内容物性の向上の点から、カルボキシル基もしくは酸無水物基を有するポリオレフィン樹脂(A)と一級水酸基を有するポリオレフィン樹脂(B)との合計100質量%中、前記ポリオレフィン樹脂(A)を50〜99質量%、前記ポリオレフィン樹脂(B)を1〜50質量%の割合で含有することが重要である。
<シラン化合物(C)>
本発明で使用されるシラン化合物(C)は、金属箔や金属板、または金属蒸着フィルム等に対する接着強度を向上させるものである。
例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基を有するトリアルコキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するトリアルコキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のグリシジル基を有するトリアルコキシシラン等が挙げられる。
ポリオレフィン樹脂(A)中のカルボキシル基もしくは酸無水物基や、ポリオレフィン樹脂(B)中の一級水酸基や、リン酸系化合物(D)と反応し得るので、エポキシ基を含有するシラン化合物が好ましい。
シランカップリング剤は、ポリオレフィン樹脂(A)とポリオレフィン樹脂(B)とのとの合計100質量部に対し、0.1〜5質量部であり、0.5〜3質量部であることが好ましい。
<リン酸系化合物(D)>
本発明で使用されるリン酸系化合物(D)も、金属箔や金属板、または金属蒸着フィルム等に対する接着強度をさらに向上させるものであり、特に長期保存における金属に対する接着強度を高レベルで維持するという点で効果的である。
リン酸系化合物(D)は、リンの酸素酸またはその誘導体の内、リンの酸素酸としては、遊離の酸素酸を少なくとも1個有しているものであればよく、例えば、次亜リン酸、亜リン酸、オルトリン酸、次リン酸等のリン酸類、メタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、ポリリン酸、ウルトラリン酸等の縮合リン酸類が挙げられる。また、リンの酸素酸の誘導体としては、上記のリンの酸素酸を遊離の酸素酸を少なくとも1個残した状態でアルコール類と部分的にエステル化されたもの等が挙げられる。これらのアルコールとしては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリン等の脂肪族アルコール、フェノール、キシレノール、ハイドロキノン、カテコール、フロログリシノール等の芳香族アルコール等が挙げられる。リンの酸素酸またはその誘導体は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
リンの酸素酸またはその誘導体の添加量は、接着剤の固形分を基準として0.01〜10質量%であり、0.05〜5質量%であることが好ましく、0.1〜1質量%であることがより好ましい。
<-SiHを有しないエポキシ化合物およびイソシアネート化合物からなる群より選ばれる硬化剤(E)>
本発明で使用される-SiHを有しないエポキシ化合物は、ポリオレフィン樹脂(A)中のカルボキシル基もしくは酸無水物基や、ポリオレフィン樹脂(B)中の一級水酸基や、リン酸系化合物(D)との反応により、接着性能や耐久性を発現させるものである。ポリイソシアネートと併用することもできる。
特に構造は限定されないが、2つ以上のエポキシ基を有する化合物であって、芳香族アミノ基もしくはヘテロ原子として窒素原子を有する複素環の少なくとも一方を有するものが好ましい。
前記芳香族アミノ基を有する化合物のうち、エポキシ基を2つ有する化合物としては、例えば、
N,N−ビス(2,3−エポキシプロピル)アニリン、
2−メチル−N,N−ビス(2,3−エポキシプロピル)アニリン、
N,N−ジグリシジルアニリン(「GAN」、日本化薬株式会社製)、
N,N−ジグリシジル−2−メチルベンゼンアミン(「GOT」、日本化薬株式会社製)などが挙げられる。
前記芳香族アミノ基を有する化合物のうち、エポキシ基を3つ以上有する化合物としては、例えば、
N,N,N’,N’−テトラキス(2,3−エポキシプロピル)−1,4−フェニレンジアミン、
N,N,N’,N’−テトラキス(オキシラン−2−イルメチル)−4,4’−メチレンビスアニリン(別名:テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、「jER−604」、三菱化学株式会社製)、
N,N−ジグリシジル−4−(グリシジルオキシ)アニリン(別名:N,N−ビス(2,3−エポキシプロピル)−4−(2,3−エポキシプロポキシ)アニリン、「jER−630」、三菱化学株式会社製)などが挙げられる。
その他、Araldite MY0600(商品名、Huntsman社製)、アデカレジンEP−3950S、 3950L、3980S(商品名、株式会社アデカ製)、YH−434、YH−434L(商品名、新日鐵化学株式会社製)なども2つ以上のエポキシ基と、芳香族アミノ基とを有する化合物として例示できる。
エポキシ化合物のうち、2つ以上のエポキシ基と、ヘテロ原子として窒素原子を有する複素環を有する化合物としては、例えば、TEPIC−G、TEPIC−S、TEPIC−SP、TEPIC−SS、TEPIC−HP、TEPIC−L、TEPIC−PAS、TEPIC−VL(商品名、日産化学株式会社製)、2,4,6−トリ(グリシジルオキシ)−1,3,5−トリアジンなどのトリアジン骨格を有するエポキシ化合物などが挙げられる。
これらを単独で使用しても良いし、2種以上を任意に組み合わせても使用しても良い。
また、上記エポキシ化合物の一部のエポキシ基を、エポキシ基と反応性を有する化合物で反応させて得られる化合物を、-SiHを有しないエポキシ化合物として使用してもよい。
エポキシ基と反応性を有する化合物としては、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ジブチルアミン、エチレンジアミン、ベンジルアミン、アニリン等のアミノ基を含有する化合物類;
メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、フェノール等の水酸基を含有する化合物類;
オクチルイソシアネート、ドデシルイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等のイソシアネート基を有する化合物類;
酢酸、ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸等のカルボン酸を含有する化合物等が挙げられる。
イソシアネート化合物は、ポリオレフィン樹脂(A)中のカルボキシル基もしくは酸無水物基や、ポリオレフィン樹脂(B)中の一級水酸基や、リン酸系化合物(D)との反応により、接着性能や耐久性を発現させるものである。-SiHを有しないエポキシ化合物と併用することもできる。
以下に限定されるものではないが、周知のジイソシアネートから誘導された化合物である。例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアネートシクロヘキシル)メタン、若しくは水添化ジフェニルメタンジイソシアネート等のジイソシアネート、又は、これらのヌレート体、トリメチロールプロパンアダクト体、ビウレット型、イソシアネート残基を有するプレポリマー(ジイソシアネートとポリオールから得られる低重合体)、イソシアネート残基を有するウレトジオン体、アロファネート体、若しくはこれらの複合体等が挙げられ、これらを単独で、あるいは2種以上で使用できる。
本発明の接着剤組成物は、前記硬化剤(E)をポリオレフィン樹脂(A)とポリオレフィン樹脂(B)との合計100質量部に対し、化学薬品類耐性の点で1質量部以上含み、接着強度確保の点で40質量部以下含む。10〜30質量部含むことが好ましい。
本発明の接着剤組成物は、金属箔との接着強度を高めるためにエポキシリン酸エステル樹脂をさらに含有させることができる。前記のエポキシリン酸エステル樹脂は、エポキシ樹脂のエポキシ基がリン酸と反応して、エポキシ基が開環し、リン酸エステル結合で、エポキシ樹脂部分とリン酸部分とが結合したものである。
リン酸と反応するエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ジアリールスルホン型エポキシ樹脂、ヒドロキノン型エポキシ樹脂およびそれらの変性物などが挙げられる。
エポキシリン酸エステル樹脂としては、市販品を用いることもでき、具体的には、URAD−DD79(DSMジャパン社製)が好ましい。更に、前記のURAD−DD79と同等の特性値を有するものも好適に使用することができる。
本発明の接着剤は、金属箔との接着強度を高めるため、カテコールまたはその誘導体を含有することができる。具体的には、カテコール、t−ブチルカテコール、アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン、ノルジヒドログアヤレチック酸などが挙げられる。
本発明の接着剤組成物は有機溶剤を含むことができる。単独もしくは混合溶剤として本接着剤組成物で使用する材料を溶解でき、ポリオレフィン樹脂(A)、ポリオレフィン樹脂(B)、シラン化合物(C)、リン酸系化合物(D)、硬化剤(E)との反応性が不活性であり、接着剤塗工時の乾燥工程における過熱により揮発させて除去できるものであれば特に限定されない。これらの溶剤の具体例としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系有機溶剤;
n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族系有機溶剤;
シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族系有機溶剤;
メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤;
酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;
エタノール、メタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、ヘキサノール等のアルコール系溶剤;
ジイソプロピルエーテル、ブチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ブチルカルビトール等のエーテル系溶剤;
ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングルコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤;
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロプレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールエステル系溶剤等が挙げられ、これらは単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
これらの中でも、ポリオレフィン樹脂(A)および(B)の溶液の保存安定性の点から、芳香族系有機溶剤とケトン系溶剤の併用、芳香族系有機溶剤とアルコール系溶剤の併用、脂環族系有機溶剤とケトン系溶剤の併用、脂環俗系有機溶剤とアルコール系溶剤の併用が好ましい。
本発明の接着剤組成物において、発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、粘着付与剤、可塑剤等の公知の添加剤を配合しても良い。
本発明で使用できる粘着付与剤としては、ポリテルペン樹脂、ロジン系樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、スチレン樹脂および水添石油樹脂等が挙げられ、接着強度を向上させる目的で用いられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を任意に組み合わせて使用しても良い。
また、本発明で使用される可塑剤としては、ポリイソプレン、ポリブテン等の液状ゴムやプロセルオイル等が挙げられる。
その他、接着剤用として公知の添加剤を、主剤に配合することができ、たとえば、反応促進剤を使用することができる。たとえば、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジブチルチンジマレート等金属系触媒;1 ,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の3級アミン;トリエタノールアミンのような反応性3級アミン等が挙げられ、これらの群から選ばれた1種または2種以上の反応促進剤を使用できる。
接着剤膜の平滑性等を向上させる目的で、公知のレベリング剤または消泡剤を、主剤に配合することもできる。
レベリング剤としては、たとえば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、アクリル系共重合物、メタクリル系共重合物、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン、アクリル酸アルキルエステル共重合物、メタクリル酸アルキルエステル共重合物、レシチン、又はそれらの混合物等公知のものが挙げられる。
消泡剤としては、シリコーン樹脂、シリコーン溶液、アルキルビニルエーテルとアクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルとの共重合物、又はそれらの混合物等の公知のものが挙げられる。
本発明の接着剤組成物は、酸素透過度が100CC(m、24hr、1atm、25℃)以下のバリア層とヒートシール層との積層に好適に使用される。
酸素透過度が100CC(m、24hr、1atm、25℃)以下のバリア層としては、種々のプラスチックフィルムにアルミウムやSiOxやAl等を蒸着したフィルム、金属箔が挙げられ、金属箔が好ましい。
金属箔の金属としては、アルミニウム、銅、ニッケル等が挙げられる。これらの金属箔は、各種表面処理を施したものであっても良い。表面処理の例としては、例えば、サンドブラスト処理、研磨処理などの物理的処理や蒸着による脱脂処理、エッチング処理、カップリング剤やコーティング剤を塗布するプライマー処理などの表面処理がある。
表面処理層を形成するための処理剤は、エポキシ基と反応する官能基を含むことが好ましく、より好ましくはカルボン酸、水酸基およびアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基の含むことが好ましい。ここでいうアミノ基とは1級アミンと2級アミン、およびイミノ基のいずれかの意である。このような官能基を含む表面処理層を金属箔層表面に設けることにより、接着剤組成物を熱硬化する際、接着剤層中のエポキシ基と、表面処理層中の前記官能基とが反応することにより、接着強度が高い積層体を得ることができる。
ヒートシール層は特に限定されるものではないが、ポリオレフィン系フィルムであることが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系共重合体、これらの酸変成物およびアイオノマーからなる群より選ばれた少なくとも1種類の熱可塑性樹脂からなる未延伸フィルムであることが好ましい。ヒートシール層の厚さは特に限定されるものではないが、20〜150μmであることが好ましい。
本発明の接着剤組成物を用いてなる積層体は、例えば、以下のようにして得ることができる。
金属箔層(又はヒートシール層)の一方の面に、本発明の接着剤組成物を塗工し、溶剤を揮散させ(乾燥させ)、未硬化の接着剤層を形成し、60〜150℃、加圧下に前記未硬化の接着剤層の表面に、ヒートシール層(又は金属箔)を重ねた後、40〜80℃で3〜10日程度静置し、接着剤層を十分硬化させ(エージング、養生、熟成とも称する)、金属箔とヒートシール層とを貼り合わせることで、積層体を得ることができる。
接着剤組成物の塗工には、グラビアコーターやコンマコーター等の一般的な塗工機を用いることができる。また、乾燥硬化時の硬化接着剤層の厚み(量)は、0.5〜10g/m程度であることが好ましい。
本発明の包装材は、金属箔層の他方の面(本発明の接着剤組成物から形成される内層側接着剤層が接していない面)に、外層側接着剤層を介して外層側樹脂フィルム層を具備することができる。
外層側樹脂フィルム層は、予め接着剤組成物(本発明の接着剤組成物と同じであってもよいし、異なっていてもよい)を用いて、金属箔層に積層されていてもよいし、本発明の接着剤組成物を用いて金属箔層とヒートシール層との積層体を得た後、金属箔層に外層側接着剤層を介して外層側樹脂フィルム層を積層することもできる。
用いられる外層側樹脂フィルム層としては、ポリエステル樹脂やポリアミド樹脂(ナイロン)等の延伸フィルム等が挙げられる。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例中における各評価は下記の方法に従った。なお、実施例中、%は質量%を、部は質量部を示す。
<数平均分子量>
TSKgel superHZM−Nのカラムを2本接続した東ソー株式会社製HLC−8220GPCシステムにより、溶離液にテトラヒドロフラン、カラム温度を40℃とし、流量毎分0.35mlの条件にて測定した。サンプルは、2mgのポリオレフィン樹脂(A)を、5mlのテトラヒドロフランに溶解して調整した。また、質量平均分子量は標準ポリスチレン換算で算出した。
<融点、融解温度エネルギー(ΔE)>
融点、ΔEは、JIS K7121に準じてDSC測定により求めることができる。具体的には以下のようにして求める。
約10mgのポリオレフィン樹脂(A)の直径または各辺が0.5mm以下の場合はそのまま使用し、0.5mmを超えるものは0.5mm以下に切断して容器に入れる。
毎分10℃で融点より約30℃高い温度まで加熱し、その後毎分10℃でTgより約50℃低い温度まで冷却する。明確なTgが観測されない場合は、融点より約50℃低い温度まで冷却する。その後、毎分10℃で融点より約30℃高い温度まで加熱した際に表れる融解に対応するピークのピークトップより求めた。また、ΔEは、融解に対応するピークが、ベースラインから離れてから再度ベースラインに戻るまでの部分の面積より求めた
<共重合組成比>
ポリオレフィンの共重合組成比は、日本電子株式会社製NMR(JNM−LA400)を用いて、13Cの測定により求めた。
サンプル20mgを1mlの重クロロホルムに溶解して測定した。エチレン由来のメチレン基は40−50ppmに、プロピレン由来のメチン基は25−30ppmに、1−ブテン由来のメチン基は30−35ppmに含まれる。各ピークの積分比から共重合組成比を求めた。
<合成例1>
窒素置換した内容積500mLのガラス製オートクレーブに精製トルエン250mL、メチルアルミノキサンをAl原子換算で0.5mg、ジメチルシリル−ビス−(4,5,6,7,8−ペンタヒドロアズレン−2−イル)ジルコニウムジクロライドをZr原子換算で1.25μg原子を投入し、40℃に昇温した。続いてエチレンとプロピレンを、それぞれ50L/hr、40L/hrの一定速度で供給しながら、40℃で1.32MPaの一定圧力を維持するように1−ブテンモノマーを連続供給し、重合を開始した。40℃、8時間、重合を行った後、イソプロパノールを添加して重合を停止した。得られたポリマー溶液を、多量のメタノールに添加し、ポリマーを析出させた。析出したポリマーをろ過、乾燥することにより、エチレン/プロピレン/1−ブテン=46/33/15(モル比)で共重合されたポリオレフィンを得た。
得られたポリオレフィン20gと、セロソルブアセテート20gとを仕込み、窒素気流下、加熱溶解させ、溶液温度の110℃にした。無水マレイン酸4g、ラウリルメタクリレート2gおよび過酸化ベンゾイル0.6gをセロソルブアセテート239.4gに溶解したものを2時間かけて滴下した。滴下終了後さらに1時間その温度で反応を続けた。得られたポリマー溶液を、多量のメタノールに添加し、ポリマーを析出させた。析出したポリマーをろ過、乾燥することにより、酸無水物基を有するポリオレフィン樹脂(A1)を得た。
ポリオレフィン樹脂(A1)のMw、融点、ΔEは、それぞれ4700、103℃、45mJ/mgであった。
<実施例1>
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、ポリオレフィン樹脂(A1)90部、一級水酸基を有するポリオレフィン樹脂(B)として日本曹達株式会社製G-3000(B−1)10部をトルエン/MEK=2/1(重量比)600部に加熱溶解した。
室温まで冷却後、シラン化合物剤(C)としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)1部、リン酸0.05部(D)、硬化剤(E)としてとして-SiHを有しないエポキシ化合物である三菱ケミカル製JER630のトルエン/MEK=2/1希釈液(不揮発分25重量%)40部を配合して攪拌することで、固形分15%の接着剤溶液を得た。得られた接着剤溶液を用いて、後述する方法に従い、初期接着強度、耐農薬、アルコール、酸、アルカリ性を評価した。結果を表1に示す。
<実施例2、3>
ポリオレフィン樹脂(B−1)の代わりに、曹達株式会社製G-1000(B−2)、曹達株式会社製G-2000(B−3)を用いた以外が、実施例1と同様にして接着剤を得、同様に評価し、結果を表1に示す。
<実施例4、10、比較例6>
硬化剤(E)として-SiHを有しないエポキシ化合物の代わりに、イソシアネート化合物である 旭化成ケミカルズ株式会社製デュラネートD101を20部(実施例4)、40部(実施例10)、60部(比較例6)を用いた以外は実施例1と同様にして接着剤を得、同様に評価し、結果を表1、2に示す。
<実施例5〜6>
ポリオレフィン樹脂(A1)とポリオレフィン樹脂(B−1)との割合を代えた以外は実施例1と同様にして接着剤を得、同様に評価し、結果を表1に示す。
<実施例7〜8>
シラン化合物剤(C)の量を代えた以外は実施例1と同様にして接着剤を得、同様に評価し、結果を表1に示す。
<実施例9>
-SiHを有しないエポキシ化合物の量を20部とした以外は実施例1と同様にして接着剤を得、同様に評価し、結果を表1に示す。
<実施例11>
ポリオレフィン樹脂(A1)の代わりに、日本製紙ケミカル株式会社製ポリオレフィン樹脂アウローレン500S(A2)、を用いた以外が、実施例1と同様にして接着剤を得、同様に評価し、結果を表1に示す。
<比較例1〜比較例5、7、8>
表2に示す組成にて実施例1と同様にして接着剤を得、同様に評価し、結果を表2に示す。
(3層複合積層体の作成)
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ12μm)/アルミニウム(AL)箔(厚さ9μm)/未延伸ポリエチレン(LLDPE)フィルム(厚さ100μm、表面コロナ放電処理)の3層複合積層体を接着剤の固形分塗布量を3.5g/m2として、以下に記載の方法で作成した。
すなわち、接着剤溶液を常温にてラミネーターにより、まずポリエチレンテレフタレートフィルムの印刷面に塗布し、溶剤を揮散させた後、塗布面をアルミニウム箔表面と貼り合せた。さらに、その積層体のアルミニウム箔面に同様に接着剤溶液を塗布し、溶剤を揮散させた後、塗布面を未延伸ポリエチレンフィルムと貼り合せ、60℃で6日間保温し、3層複合積層体を作成した。
3層複合積層体の外観を、PET側、LLDPE側の両側ぞれぞれから接着状態観察したところ、全ての実施例、比較例で浮きや剥がれ、ハジキは観察されなかった。
(初期接着強度試験)
上記のようにして作成した3層複合積層体からそれぞれ300mm×15mmの大きさの試験片を作り、引張り試験機を用い、温度20℃、相対湿度65%の条件下、T型剥離により、剥離速度30cm/分で、AL箔/LLDPEフィルム間のラミネート強度(N/15mm)を測定した。表1、2の数値は、5個の試験片の平均値である。
(耐農薬性試験)
各々の3層複合積層体を使用して、未延伸ポリエチレンフィルムが内側となるように9cm×13cmの大きさのパウチを作成し、内容物としてPH=4.0、有機リン系の農薬を充填した。60℃、2週間または4週間保存後、AL箔/CPPフィルム間の剥離状態を観察した。
◎:剥離なし、且つラミネート強度が初期値の90%以上。
○:剥離なし、且つラミネート強度が初期値の90%未満、70%以上。
△:剥離なし、且つラミネート強度が初期値の70%未満、初期値の40%以上。
×:剥離あり、またはラミネート強度が初期値40%未満。
(耐アルコール性試験)
上記の方法でパウチを作成し、内容物として、50%、75、98%濃度のエタノール水溶液を充填した。60℃、2週間または4週間保存後、AL箔/CPPフィルム間の剥離状態を観察し、耐農薬性試験の場合と同様に基準で評価した。
(耐酸性試験)
上記の方法でパウチを作成し、内容物として、PH=2,9パーマ液を充填した。60℃、2週間または4週間保存後、AL箔/CPPフィルム間の剥離状態を観察し、耐農薬性試験の場合と同様に基準で評価した。
(耐アルカリ性試験)
上記の方法でパウチを作成し、内容物として、PH=10,2パーマ液を充填した。60℃、2週間または4週間保存後、AL箔/CPPフィルム間の剥離状態を観察し、耐農薬性試験の場合と同様に基準で評価した。
Figure 0006911635
Figure 0006911635
本発明に係る接着剤組成物は、酸・アルカリ・農薬・溶剤等の化学薬品に長期間浸漬されても接着強度を高レベルで維持できる積層体を形成するための包材用(積層体)に好適に使用できる。
その他、本発明に係る接着剤組成物は、化学薬品耐性に優れる包装材を形成するための包材の他、建築、医療、自動車などのように高接着強度、耐薬品性が求められる各種産業分野における積層体の形成に好適に使用される。

Claims (4)

  1. カルボキシル基もしくは酸無水物基を有し、一級水酸基を有しないポリオレフィン樹脂(A)と、一級水酸基を有し、カルボキシル基もしくは酸無水物基を有しないポリオレフィン樹脂(B)との合計100質量%中、前記ポリオレフィン樹脂(A)50〜99質量%、前記ポリオレフィン(B)1〜50質量%を含み、
    前記ポリオレフィン樹脂(A)と前記ポリオレフィン(B)との合計100質量部に対し、
    シラン化合物(C)0.1〜5質量部、
    リン酸系化合物(D)0.01 〜1質量部、および
    -SiH を有しないエポキシ化合物およびイソシアネート化合物からなる群より選ばれる硬化剤(E)1〜40質量部を、
    含有することを特徴とする接着剤組成物であって、
    前記ポリオレフィン(B)が、一級水酸基を有するポリブタジエンであることを特徴とする接着剤組成物
  2. シラン化合物(C)が、エポキシ基を有することを特徴とする請求項1記載の接着剤組成物。
  3. ポリオレフィン樹脂(A)が、1−ブテンと他のオレフィンとから得られる共重合体が酸変性されてなるものであることを特徴とする請求項1または2記載の接着剤組成物。
  4. 請求項1〜いずれか記載の接着剤組成物から形成される接着剤層を介して、酸素透過度が100CC(m、24hr、1atm、25℃ )以下のバリア層とヒートシール層とが積層されてなる積層体。
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