JP6911451B2 - インク、インク収容容器、及び記録装置 - Google Patents

インク、インク収容容器、及び記録装置 Download PDF

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Description

本発明は、インク、インク収容容器、及び記録装置に関する。
インクジェットプリンタは、カラー化が容易であり、かつ小型で価格も安価であることから急速に普及してきている。このようなインクジェットプリンタに用いられるインクは多くの特性を要求される。例えば、長時間吐出しないノズルでは、インク中の水分が蒸発することにより増粘して吐出が乱れたり吐出しなくなったりすることがあるため、吐出安定性が高いことが要求される。また、オフィスで使用される文書においては文字品位が高いことが要求され、特に、文字にじみは文字品位を左右する重要な特性となっている。
吐出安定性、及び文字にじみを課題としたインクとしては、インクの水分蒸発量に対する粘度上昇及び粒径変化を制御するだけでなく、更にインクの蒸発速度も加味した比粘度変化率を制御したインクが提案されている(特許文献1参照)。
本発明は、吐出安定性に優れ、文字にじみを抑制するインクの提供を目的とする。
上記課題を解決する本発明のインクは、色材、有機溶剤、及び水を含み、前記有機溶剤は、後述する一般式(1)で表されるエーテル化合物を含み、前記エーテル化合物は、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、及びジプロピレングリコールモノノルマルブチルエーテルから選択される少なくとも1種であり、前記エーテル化合物の含有量は、前記インクの質量に対して5.0質量%以上9.0質量%以下であり、温度25℃における初期粘度は、7.5mPa・s以上8.5mPa・s以下であり、前記インクの蒸発率xが、30質量%、及び40質量%のいずれの値のときにおいても下記数式1を満たす。
<数式1>
{1.085+η(0)}−1≦η(x)≦{1.110+η(0)}−1
ただし、前記数式1中、η(0)は前記初期粘度(mPa・s)の値を表し、η(x)は前記インクの蒸発率がx質量%であるときの温度25℃における粘度(mPa・s)の値を表す。
本発明によると、吐出安定性に優れ、文字にじみを抑制するインクを提供することができる。
図1は、インクの蒸発率xと粘度との関係を示す一例としてのグラフである。 図2は、記録装置の一例を示す斜視図である。 図3は、メインタンクの一例を示す斜視図である。 図4は、実施例の文字にじみの評価において印字した文字である。 図5は、実施例の文字にじみの評価において印字した文字である。 図6は、実施例の文字にじみの評価において印字した文字である。
<インクの増粘制御>
本発明では、下記に示すように、インクの増粘特性を制御することで、吐出安定性に優れ、文字にじみを抑制するインクを提供することを可能にしている。
本発明のインクは、温度25℃における初期粘度が、7.5mPa・s以上8.5mPa・s以下であり、前記インクの蒸発率xが、30質量%、及び40質量%のいずれの値のときにおいても下記数式1を満たす。
<数式1>
{1.085+η(0)}−1≦η(x)≦{1.110+η(0)}−1
ただし、前記数式1中、η(0)は前記初期粘度(mPa・s)の値を表し、η(x)は前記インクの蒸発率がx質量%であるときの温度25℃における粘度(mPa・s)の値を表す。
インクを用いて画像が形成されるまでの工程は、インク吐出工程と、インク乾燥工程を有する。インク吐出工程は、インクジェットヘッドなどを用いて、インクを記録媒体上に吐出する工程である。インク乾燥工程は、吐出された後のインクを乾燥させる工程である。
インク吐出工程において吐出されるインクの粘度は、吐出安定性の観点から、インクの初期粘度に近い粘度であることが好ましい。つまり、インクの粘度は、インク中の水分等が蒸発するにつれて高くなるため、インク中の水分等が蒸発すると初期粘度に対してインクが高粘度化する。インクが高粘度化すると、吐出が乱れたり、吐出しなくなったりすることがあるため、インク吐出工程において吐出されるインクの粘度は、インクの初期粘度に近い粘度(低粘度)であることが好ましい。しかし、ノズルにおけるインクは、インクのメニスカス面が大気に接しているため、長時間インクを吐出しない場合、インク中の水分等が蒸発する。このため、従来のインクでは、長時間インクを吐出しない場合、ノズルにおけるインクが高粘度化するため、その後インクを吐出する際にインクの吐出が乱れたり、インクが吐出されなくなったりするという問題があった。このような理由から、本発明では、インク中の水分等が蒸発したとしても、初期粘度に対して粘度が大きく変化しない(高粘度化しない)インクを用いている。具体的には、インクの蒸発率が30質量%のときに、初期粘度に対して高粘度化しないインクを用いることで、インクの吐出を安定化させることができる。つまり、ノズルにおいてインクが蒸発する場合、ノズル内のインクの蒸発率は30質量%以下であるため、インクの蒸発率が30質量%のときに高粘度化しないインクを用いることで、インクの吐出を安定化させることができる。
一方で、インク乾燥工程におけるインクの粘度、つまり記録媒体に着弾した後のインクの粘度は、文字にじみ抑制の点から高粘度であることが好ましい。低粘度であるインクを用いた場合、普通紙などの浸透性の記録媒体では、紙の繊維に沿って毛細管現象によるにじみが発生するためである。これはフェザリングと呼ばれ異常画像となる。このような理由から、本発明では、インク乾燥工程におけるインクの粘度、つまり記録媒体に着弾した後のインクの粘度が高粘度となるインクを用いている。具体的には、インクの蒸発率が40質量%のときに高粘度化するインクを用いることで、文字にじみを抑制することができる。つまり、インクが吐出された後、記録媒体にインクが着弾すると、記録媒体上でインク中の水分等が蒸発する。このとき、インクの蒸発率は40質量%以上となる。よって、蒸発率が40質量%のときに高粘度化するインクを用いることで、文字にじみを抑制することができる。
上記数式1は、インクの蒸発率と粘度との関係を表す式である。インクの蒸発率xが30質量%、及び40質量%のいずれの値のときにおいても数式1を満たす場合は、インクの粘度の値が適切な範囲となるので、吐出安定性に優れ、文字にじみを抑制するインクを提供することができる。数式1の詳細を、図1を用いて説明する。なお、図1は、インクの蒸発率xと粘度との関係を示す一例としてのグラフである。
図1における、数式1の上限値と、数式1の下限値について説明する。数式1の上限値は、「{1.110x+η(0)}−1」で表される。数式1の下限値は、「{1.085x+η(0)}−1」で表される。すなわち、図1において、数式1の上限値と、数式1の下限値と、で挟まれた領域が数式1を満たしていることを示す。
上記で説明したように、ノズルにおいてインクが蒸発する場合、ノズル内のインクの蒸発率は30質量%以下である。このため、インクの蒸発率が30質量%のときに数式1を満たすインクは、ノズル内において水分等が蒸発したとしても、インクの初期粘度に対する増粘変化量が小さく高粘度化しないため、吐出安定性に優れる。
また、上記で説明したように、インクが吐出された後、記録媒体にインクが着弾すると、記録媒体上でインク中の水分等が蒸発する。このとき、インクの蒸発率は40質量%以上となる。よって、インクの蒸発率が40質量%のときに数式1を満たすインクであれば、インクが記録媒体に着弾した後、インクの粘度が上昇するので、文字にじみを抑制することができる。
次に、本発明にかかるインクについて、従来のインクと比較しながら更に詳細に説明する。図1に示す従来インク1は、インクの蒸発率が30質量%、及び40質量%のときにおける粘度が、数式1の上限値より大きいインクである。このような特性を示す従来インク1は、インクの蒸発率が40質量%のときに、数式1の上限値より高粘度なので文字にじみを抑制することができる。しかし、インクの蒸発率が30質量%のときに、数式1の上限値より高粘度なので吐出安定性に劣るという問題がある。
一方、図1に示す従来インク2は、インクの蒸発率が30質量%、及び40質量%のときにおける粘度が、数式1の下限値より小さいインクである。このような特性を示す従来インク2は、インクの蒸発率が、30質量%のときに、数式1の下限値より低粘度なので吐出安定性に優れる。しかし、インクの蒸発率が40質量%のときに、数式1の下限値より低粘度なので文字にじみが生じるという問題がある。
これに対して本発明にかかるインクでは、インクの蒸発率が30質量%、及び40質量%のいずれの値のときにおいても数式1を満たすので、粘度の値が図1の数式1の上限値と下限値の範囲内となる。よって、吐出安定性に優れ、且つ文字にじみを抑制可能なインクを提供することができる。
また、本発明のインクは、温度25℃における初期粘度が、7.5mPa・s以上8.5mPa・s以下であることが好ましい。初期粘度を7.5mPa・s未満にするには、顔料濃度をある程度抑える必要があるので、画像濃度の高い画像品質の確保が困難となる。また、インクによっては、初期粘度が7.5mPa・s未満になると、紙の繊維に沿ったにじみに伴う、文字にじみが発生しやすくなる。一方で、初期粘度が8.5mPa・sより大きいと吐出安定性が劣る。なお、初期粘度とは、下記のインクを濃縮させる前の粘度であればよく、作成直後のインクの粘度だけでなく、作成後にインクカートリッジなどのインク収容容器に一旦収容されたインクの粘度であってもよい。初期粘度の測定は、東機産業(株)社製の粘度計RL-500を用い、温度25℃において測定することができる。
また、インクの蒸発率xは、次式により算出する。
<数式2>
x={(インクの初期質量−インクの濃縮後質量)/インクの初期質量}×100
インクの濃縮は、50ccスクリューバイアルにインクを50cc入れ、60℃ホットプレートにて加温し、攪拌子を用い攪拌させながら行うことができる。なお、初期質量とは、インクを濃縮させる直前の質量であればよく、作成直後のインクの質量だけでなく、作成後にインクカートリッジなどのインク収容容器に一旦収容されたインクの質量であってもよい。
本発明のインクは、蒸発率xが30質量%、及び40質量%のいずれの値のときにおいても、数式1を満たす。xが30のときに、η(30)が「{1.11030+η(0)}−1」より大きいと吐出安定性が劣り、xが40のときに、η(40)が「{1.08540+η(0)}−1」未満だと、紙の繊維に沿ったにじみに伴う、文字にじみが発生しやすくなる。xが30のときの粘度η(30)及びxが40のときの粘度η(40)の測定は、東機産業(株)社製の粘度計RL-500を用い、温度25℃において測定することができる。
インクの初期粘度を満たし、かつ蒸発率xが30質量%、及び40質量%のいずれの値のときにおいてもインクが数式1を満たすためには、特に、インク中の有機溶剤等の種類や添加量が重要であり、以降で詳細に説明する。但し、本発明の実現手段としてはこれらに限定されるわけではない。
<インク>
以下、インクに用いる有機溶剤、水、色材、樹脂、添加剤等について説明する。
<有機溶剤>
本発明に使用する有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
水溶性有機溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、エチル−1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、3−メトキシ−N,N-ジメチルプロピオンアミド、3−ブトキシ−N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物も好適に使用される。炭素数8以上のポリオール化合物の具体例としては、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールなどが挙げられる。
グリコールエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類などが挙げられる。
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物は、記録媒体として紙を用いた場合に、インクの浸透性を向上させることができる。
有機溶剤のインク中における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
また、有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下記一般式(1)で表されるエーテル化合物を含むことがより好ましい。
Figure 0006911451
ただし、前記一般式(1)中、Rは、水素原子、又は炭素数1以上10以下のアルキル基を表し、Rは、炭素数1以上10以下のアルキル基を表し、nは1以上5以下の整数を表す。なお、R、及びRにおけるアルキル基は、直鎖のアルキル基であっても分岐しているアルキル基であってもよい。
前記一般式(1)中のRとしては、水素原子、炭素数1以上10以下のアルキル基であり、水素原子、メチル基が好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
前記一般式(1)中のRとしては、炭素数1以上10以下のアルキル基であり、炭素数1以上4以下のアルキル基が好ましく、炭素数3以上4以下のアルキル基であることが特に好ましい。
前記一般式(1)中のnとしては、1以上5以下の整数であり、2以上3以下の整数が好ましく、2であることが特に好ましい。
前記一般式(1)で表されるエーテル化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、及びジプロピレングリコールモノノルマルブチルエーテルから選択される少なくとも1種であることが好ましい。また、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、及びジプロピレングリコールモノノルマルブチルエーテルから選択される少なくとも1種であることが特に好ましい。
本発明では、インクの増粘制御を行うための一例として一般式(1)で表されるエーテル化合物を用いる。一般式(1)で表されるエーテル化合物以外の有機溶剤を用いた場合、インク中の水が先に蒸発して一般式(1)以外の有機溶剤の割合が大幅に増加するため、インクが過度に増粘する。一方で、一般式(1)で表されるエーテル化合物を用いた場合、インク中の水と一般式(1)で表されるエーテル化合物がともに蒸発することができ、インク中の有機溶剤の割合が大幅に増加せず、インクの過度な増粘を抑制することができる。
一般式(1)で表されるエーテル化合物のインク中における含有量は、5.0質量%以上9.0質量%以下であることが好ましい。一般式(1)で表されるエーテル化合物のインク中における含有量が5.0質量%以上9.0質量%以下であることにより、インクの蒸発率が30質量%のときまで、インク中の水と一般式(1)で表されるエーテル化合物がともに蒸発する状態にすることができ、インクの過度な増粘が抑制され、数式1を満たすことが容易となる。また、インクの蒸発率が40質量%に至るまでに一般式(1)で表されるエーテル化合物をほぼ蒸発させることができるので、インクの蒸発率が40質量%のときにはインク中の水が一般式(1)以外の有機溶剤に先行して蒸発する状態にすることができ、インクの増粘が促進され、数式1を満たすことが容易となる。
また、インク全量に対する一般式(1)で表されるエーテル化合物の含有量(質量%)とインク全量に対する一般式(1)で表されるエーテル化合物以外の有機溶剤の含有量(質量%)との質量比(一般式(1)で表されるエーテル化合物/一般式(1)で表されるエーテル化合物以外の有機溶剤)は、0.28以上0.44以下が好ましい。0.28以上0.44以下であることにより、インクの蒸発率が40質量%のときにおける粘度が高くなるように制御し、数式1を満たすことが容易となる。なお、一般式(1)で表されるエーテル化合物以外の有機溶剤としては、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、及びグリセリンが特に好ましい。
<水>
インクにおける水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%〜60質量%がより好ましい。
また、インク全量に対する一般式(1)で表されるエーテル化合物の含有量(質量%)と前記インク全量に対する水の含有量(質量%)との質量比(一般式(1)で表されるエーテル化合物/水)は、0.07以上0.15以下が好ましい。0.07以上0.15以下であることにより、インクの蒸発率が30質量%のときにおける粘度が低くなるように制御し、数式1を満たすことが容易となる。
<色材>
色材としては特に限定されず、顔料、染料を使用可能である。
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、混晶を使用しても良い。
顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
無機顔料として、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
また、有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性の良いものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料があげられる。
さらに、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、等がある。
染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35が挙げられる。
インク中の色材の含有量は、画像濃度の向上、良好な定着性や吐出安定性の点から、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
顔料を分散してインクを得るためには、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法、などが挙げられる。
顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法が挙げられる。
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能とする方法が挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、インクに配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。
分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。
竹本油脂社製RT−100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。
分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
<顔料分散体>
顔料に、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを得ることが可能である。また、顔料と、その他水や分散剤などを混合して顔料分散体としたものに、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを製造することも可能である。
前記顔料分散体は、水、顔料、顔料分散剤、必要に応じてその他の成分を混合、分散し、粒径を調整して得られる。分散は分散機を用いると良い。
顔料分散体における顔料の粒径については特に制限はないが、顔料の分散安定性が良好となり、吐出安定性、画像濃度などの画像品質も高くなる点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上500nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。顔料の粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave−UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
前記顔料分散体における顔料の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な吐出安定性が得られ、また、画像濃度を高める点から、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がより好ましい。
前記顔料分散体は、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、脱気することが好ましい。
<樹脂>
インク中に含有する樹脂の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、スチレンアクリル系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂、ポリロタキサン系樹脂などが挙げられる。
これらの樹脂からなる樹脂粒子を用いても良い。樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、色材や有機溶剤などの材料と混合してインクを得ることが可能である。前記樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。均一な画像形成膜を得られやすいことから、スチレンアクリル系樹脂単独、ウレタン樹脂単独、又はウレタン樹脂とポリロタキサン系樹脂の組み合わせが好ましい。
−ウレタン樹脂粒子−
ウレタン樹脂はポリウレタンからなり、ポリウレタンはイソシアネート基を複数有するイソシアネート化合物と、水酸基を複数有したポリオール化合物をウレタン結合させたものである。それぞれイソシアネート化合物やポリオール化合物はそれ自身が高分子化合物でもよい。
−−イソシアネート化合物−−
ポリウレタンに用いられるイソシアネート基を複数有するイソシアネート化合物は、2官能の例として、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート、1,4−ブタンジイソシアネート、1,4−ベンゼンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどがある。3官能の例として1,3,5−シクロヘキサントリイソシアネート、1,4,8−オクタントリイソシアネート、1,3,5−ベンゼントリイロシアネートなどがある。4官能の例としては1,2,5,6−シクロヘキサンテトライソシアネートなどがある。これらを用いてウレタンを合成すると得られる機械強度や耐候性などに差異があるが、量産のハンドリング、環境保全、物性操作の点から、シクロヘキサンジイソシアネートを用いて合成されたシクロヘキサン骨格を有するウレタン樹脂、又はイソホロンジイソシアネートを用いて合成されたイソホロン骨格を有するウレタン樹脂が好ましい。
−−ポリオール化合物−−
前記ポリオール化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等);アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等);脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等)付加物;4,4’−ジヒドロキシビフェニル類(3,3’−ジフルオロ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル等);ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン類(ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1−フェニル−1,1−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(別名:テトラフルオロビスフェノールA)、2,2−ビス(3−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン);ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル類(ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル等);前記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等)付加物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、前記ポリオール化合物としては、例えば、カーボネート系ポリオール、エステル系ポリオール、エーテル系ポリオールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらは、それぞれポリオール化合物中に2つ以上の水酸基を有している。
前記ポリオール化合物としては、化合物両末端に水酸基を有していることが合成上好ましい。
前記カーボネート系ポリオールとしては、下記一般式(A)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 0006911451
前記エステル系ポリオールとしては、下記一般式(B)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 0006911451
前記エーテル系ポリオールとしては、下記一般式(C)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 0006911451
ただし、前記一般式(A)〜(C)中、Rは、それぞれ独立に、ヘキサメチレン基、シクロヘキサン基、フェニレン基、テトラメチレン基、シクロヘキサンジメチレン基、シクロヘキサンモノメチレン基などさまざまな骨格が含まれ、例に挙げたものに限らない。また、nは、1〜20である。
なお、ウレタン樹脂のガラス転移点は−50℃以上15℃以下であることが好ましい。常温で画像形成したときに、水分が減り樹脂粒子が樹脂エマルジョンとして存在できなくなって互いに合一し、溶け合うことで均一な画像を得ることができる。
−ポリロタキサン系樹脂粒子−
ポリロタキサン系樹脂とは、スライドリングマテリアルとも呼ばれ、両末端に封鎖基を有する直鎖状分子と、複数の環状分子とを有し、直鎖状分子が複数の環状分子を貫いている化合物である。従来の高分子に比べ、環状分子が直鎖分子を自由にスライドできるため、従来の高分子に比べて延展性があり、破断しにくいという性質がある。市販品としては、例えば、スーパーポリマーシリーズ(アドバンスト・ソフトマテリアル社製)が挙げられる。
−−直鎖状分子−−
ポリロタキサン系樹脂を構成する直鎖状分子は、両末端に封鎖基を有する。直鎖状分子のうち、封鎖基を除く部分は、環状分子を貫くことができれば特に限定されず、公知のポリマーを用いることができる。かかるポリマーとしては、環状分子を貫くという観点からはグラフトポリマーのように嵩高い構造を有しているようなものは好ましくなく、直鎖のランダムコポリマーや、直鎖のホモポリマーであることが好ましい。具体的には、ポリエチレングリコール、ポリアルカン、ポリエステル、直鎖シリコーン、スチレン−アクリル酸共重合体、ブチルメタクリレート−アクリル酸共重合体等が挙げられ、これらの中でも、ポリエチレングリコールであることが好ましい。
また、封鎖基は特に限定されないが、直鎖状分子の封鎖基を除く部分が環状分子を貫いている状態を維持できるような基であることが好ましい。具体的には、嵩高い官能基を封鎖基として用いることが好ましい。嵩高い基を封鎖基として用いることで、直鎖状分子と環状分子とが脱離することを抑制できる。ポリロタキサン中の封鎖基を得るための原料として用いることのできる好ましい化合物としては、アダマンタン類及びその誘導体が挙げられる。
−−環状分子−−
ポリロタキサンを構成する環状分子は、直鎖状分子に貫かれることのできるものであれば特に限定されない。具体的には、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン等のシクロデキストリン類、クラウンエーテル、シクロシロキサンなどが挙げられ、これらの中でもシクロデキストリン類であることが好ましい。また、樹脂同士の分子間力や耐久性の観点から、直鎖状分子がポリエチレングリコールであって、環状分子がシクロデキストリン類であるポリロタキサンが好ましい。
ポリロタキサン系樹脂は、上記の通り、環状分子が直鎖分子を自由にスライドできるが、上記有機溶剤として一般式(1)で表されるエーテル化合物を同時に用いると分子内スライドを潤滑にすることができるため併用することが好ましい。従来の有機溶剤では紙への浸透が優先されて潤滑作用を発揮するのが困難だが、一般式(1)で表されるエーテル化合物は、ポリロタキサン系樹脂に対して親和性が高く、樹脂近傍に残りやすいためである。また、一般式(1)で表されるエーテル化合物とポリロタキサン系樹脂は、親和性が高いので、インクの蒸発率が30質量%以下のときは、一般式(1)で表されるエーテル化合物をインク中に留めやすく、低粘度化に寄与する。また、インクの蒸発率が40質量%のときは、ポリロタキサン系樹脂同士の分子間力により凝集を発生させ、高粘度化に寄与する。ポリロタキサン系樹脂と親和性が高い一般式(1)で表されるエーテル化合物としては、特に、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、及びジプロピレングリコールモノノルマルブチルエーテルから選択される少なくとも1種が挙げられる。エーテル鎖が短すぎると親水性が高くなってポリロタキサン系樹脂に対する親和性が落ち、エーテル鎖が長すぎると紙との親和性が高くなってポリロタキサン系樹脂の近傍に残れないためである。なお、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、及びジプロピレングリコールモノノルマルブチルエーテルから選択される少なくとも1種と親和性の高いポリロタキサン系樹脂としては、直鎖状分子がポリエチレングリコールであって、環状分子がシクロデキストリン類であるポリロタキサンが挙げられる。このようなポリロタキサン系樹脂としては、例えば、SH1310P(アドバンスト・ソフトマテリアル株式会社製)などが挙げられる。
−スチレンアクリル系樹脂粒子−
スチレンアクリル樹脂粒子は、乳化重合、分散重合、懸濁重合、粉砕又は溶液/バルク重合、その後の後乳化により製造することができる。
スチレンアクリル樹脂粒子は、市販されているものを用いてもよく、市販の樹脂粒子としては、例えば、J−450,J−734,J−7600,J−352,J−390,J−7100,J−741,J−74J,J−511,J−840,J−775,HRC‐1645,HPD−71,PDX−6102B,JDX−5050(スチレンアクリル系樹脂エマルジョン、BASF社製)、UC−3900(スチレンアクリル系樹脂エマルジョン、東亜合成社製)などが挙げられる。
樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。
前記体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave−UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、定着性、インクの保存安定性の点から、インク全量に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、3質量%以上10質量%以下がより好ましい。
<添加剤>
インクには、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤等を加えても良い。
<界面活性剤>
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましく、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、前記シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH、NHCHCHOH、NH(CHCHOH)、NH(CHCHOH)等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから入手できる。
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般式(S-1)式で表わされる、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
Figure 0006911451
一般式(S−1)
(但し、一般式(S-1)式中、m、n、a、及びbは、それぞれ独立に、整数を表わし、Rは、アルキレン基を表し、R’は、アルキル基を表す。)
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KF−618、KF−642、KF−643(信越化学工業株式会社)、EMALEX−SS−5602、SS−1906EX(日本エマルジョン株式会社)、FZ−2105、FZ−2118、FZ−2154、FZ−2161、FZ−2162、FZ−2163、FZ−2164(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社)、BYK−33、BYK−387(ビックケミー株式会社)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(東芝シリコン株式会社)などが挙げられる。
前記フッ素系界面活性剤としては、フッ素置換した炭素数が2〜16の化合物が好ましく、フッ素置換した炭素数が4〜16である化合物がより好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。 これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少ないため好ましく、特に一般式(F-1)及び一般式(F-2)で表わされるフッ素系界面活性剤が好ましい。
Figure 0006911451
一般式(F−1)
上記一般式(F−1)で表される化合物において、水溶性を付与するためにmは0〜10の整数が好ましく、nは0〜40の整数が好ましい。
一般式(F-2)
2n+1−CH2CH(OH)CH2−O−(CH2CH2O)−Y
上記一般式(F-2)で表される化合物において、YはH、又はCmF2m+1でmは1〜6の整数、又はCHCH(OH)CH−CmF2m+1でmは4〜6の整数、又はC2p+1でpは1〜19の整数である。nは1〜6の整数である。aは4〜14の整数である。
上記のフッ素系界面活性剤としては市販品を使用してもよい。 この市販品としては、例えば、サーフロンS−111、S−112、S−113、S−121、S−131、S−132、S−141、S−145(いずれも、旭硝子株式会社製);フルラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129、FC−135、FC−170C、FC−430、FC−431(いずれも、住友スリーエム株式会社製);メガファックF−470、F−1405、F−474(いずれも、大日本インキ化学工業株式会社製);ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN−100、FSN、FSO−100、FSO、FS−300、UR、キャプストーンFS−30、FS−31、FS−3100、FS−34、FS−35(いずれも、Chemours社製);FT−110、FT−250、FT−251、FT−400S、FT−150、FT−400SW(いずれも、株式会社ネオス社製)、ポリフォックスPF−136A,PF−156A、PF−151N、PF−154、PF−159(オムノバ社製)、ユニダインDSN-403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられ、これらの中でも、良好な印字品質、特に発色性、紙に対する浸透性、濡れ性、均染性が著しく向上する点から、Chemours社製のFS−3100、FS−34、FS−300、株式会社ネオス製のFT−110、FT−250、FT−251、FT−400S、FT−150、FT−400SW、オムノバ社製のポリフォックスPF−151N及びダイキン工業株式会社製のユニダインDSN-403Nが特に好ましい。
インク中における界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、濡れ性、吐出安定性に優れ、画像品質が向上する点から、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
<消泡剤>
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
<防腐防黴剤>
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンなどが挙げられる。
<防錆剤>
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
<pH調整剤>
pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
インクの25℃での粘度は、印字濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。ここで、粘度は、例えば回転式粘度計(東機産業社製RE−80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
インクの表面張力としては、記録媒体上で好適にインクがレベリングされ、インクの乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
インクのpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7〜12が好ましく、8〜11がより好ましい。
<記録媒体>
記録に用いる記録媒体としては、特に限定されないが、普通紙、光沢紙、特殊紙、布、フィルム、OHPシート、汎用印刷紙等が挙げられる。
<記録物>
本発明のインク記録物は、記録媒体上に、本発明のインクを用いて形成された画像を有してなる。
インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法により記録して記録物とすることができる。
<記録装置、記録方法>
本発明のインクは、インクジェット記録方式による各種記録装置、例えば、プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機、立体造形装置などに好適に使用することができる。
本発明において、記録装置、記録方法とは、記録媒体に対してインクや各種処理液等を吐出することが可能な装置、当該装置を用いて記録を行う方法である。記録媒体とは、インクや各種処理液が一時的にでも付着可能なものを意味する。
この記録装置には、インクを吐出するヘッド部分だけでなく、記録媒体の給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
記録装置、記録方法は、加熱工程に用いる加熱手段、乾燥工程に用いる乾燥手段を有しても良い。加熱手段、乾燥手段には、例えば、記録媒体の印字面や裏面を加熱、乾燥する手段が含まれる。加熱手段、乾燥手段としては、特に限定されないが、例えば、温風ヒーター、赤外線ヒーターを用いることができる。加熱、乾燥は、印字前、印字中、印字後などに行うことができる。
また、記録装置、記録方法は、インクによって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、幾何学模様などのパターン等を形成するもの、3次元像を造形するものも含まれる。
また、記録装置には、特に限定しない限り、吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、吐出ヘッドを移動させないライン型装置のいずれも含まれる。
更に、この記録装置には、卓上型だけでなく、A0サイズの記録媒体への印刷も可能とする広幅の記録装置や、例えばロール状に巻き取られた連続用紙を記録媒体として用いることが可能な連帳プリンタも含まれる。
記録装置の一例について図2乃至図3を参照して説明する。図2は同装置の斜視図である。図3はメインタンクの斜視図である。記録装置の一例としての画像形成装置400は、シリアル型画像形成装置である。画像形成装置400の外装401内に機構部420が設けられている。ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色用のメインタンク410(410k、410c、410m、410y)の各インク収容部411は、例えばアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。インク収容部411は、例えば、プラスチックス製の収容容器ケース414内に収容される。これによりメインタンク410は、各色のインクカートリッジとして用いられる。
一方、装置本体のカバー401cを開いたときの開口の奥側にはカートリッジホルダ404が設けられている。カートリッジホルダ404には、メインタンク410が着脱自在に装着される。これにより、各色用の供給チューブ436を介して、メインタンク410の各インク排出口413と各色用の吐出ヘッド434とが連通し、吐出ヘッド434から記録媒体へインクを吐出可能となる。
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。なお、例中の「%」及び「部」はいずれも質量基準である
(スチレンアクリル樹脂粒子分散液の調製例1)
<スチレンアクリル樹脂粒子分散液1の調製>
冷却管、撹拌機、窒素導入管、及び滴下ロートを備えた反応容器内を充分に窒素ガス置換した後、水を135部、過酸化ベンゾイルを0.5部投入した。その後60℃まで昇温した。次いで、反応容器内を撹拌しながら、スチレンを12部、アクリル酸を3部含む混合液を1時間かけて滴下ロートから滴下し、更に2時間反応させた。その後、80℃に昇温させて30分間反応させた後、常温に放冷し、固形分濃度が10質量%であってスチレンアクリル樹脂粒子1の分散液であるスチレンアクリル樹脂粒子分散液1を得た。
得られたスチレンアクリル樹脂粒子1のガラス転移温度(Tg)を、以下のように測定したところ30℃だった。
−ガラス転移温度の測定方法−
樹脂粒子分散液を一部分取し、十分に蒸発乾固させた。乾固物5mgをTAインスツルメンツ社製のT−Zero簡易密閉パンに封入し、示差走査熱量計(DSC)(TAインスツルメンツ社製、Q2000)を用いて、測定をおこなった。測定は、窒素気流下、1stヒーティングとして40℃から150℃まで10℃/分で昇温し、5分温度維持した後、−70℃まで急冷し、5分キープした後、次いで2ndヒーティングとして昇温速度5℃/分で昇温し、熱変化を測定して「吸発熱量」と「温度」とのグラフを描き、このとき観測される特徴的な変曲をTgとした。なお、Tgは、2ndヒーティングのDSC曲線からミッドポイント法によって得た値を使用した。
(ポリウレタン樹脂粒子分散液の調製例1)
<ポリウレタン樹脂粒子分散液1の調製>
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、及び1,6−ヘキサン二酸を、OH/COOH=1.5となるように、且つアルコール成分の量が1,6−ヘキサンジオールを10mol%、シクロヘキサンジメタノールを90mol%となるように、チタンテトライソプロポキシド(1,000ppm(1質量%)対樹脂成分)とともに投入した。その後、4時間程度で200℃まで昇温した。次いで、2時間かけて230℃に昇温し、流出水がなくなるまで反応を行った。その後、さらに、1,334Pa〜2,000Pa(10mmHg〜15mmHg)の減圧下で5時間反応させ、中間体ポリエステルを得た。
次に、冷却管、撹拌機、及び窒素導入管の付いた反応容器中に、前記中間体ポリエステルとイソホロンジイソシアネートをモル比2.0で投入し、酢酸エチルにて48質量%となるように希釈後、100℃で5時間反応させた。その後、大量の水を加え、脱溶を行い、固形分濃度が10質量%であってポリウレタン樹脂粒子1の分散液であるポリウレタン樹脂粒子分散液1を得た。
得られたポリウレタン樹脂粒子1のガラス転移温度(Tg)を、上記スチレンアクリル樹脂粒子1における測定と同様に測定したところ−16℃だった。
(ポリウレタン樹脂粒子分散液の調製例2)
<ポリウレタン樹脂粒子分散液2の調製>
ポリウレタン樹脂粒子分散液の調製例1において、アルコール成分の量が1,6−ヘキサンジオールを50mol%、シクロヘキサンジメタノールを50mol%となるように変更した以外は、ポリウレタン樹脂粒子分散液の調製例1と同様にして、固形分濃度が10質量%であってポリウレタン樹脂粒子2の分散液であるポリウレタン樹脂粒子分散液2を得た。
得られたポリウレタン樹脂粒子2のガラス転移温度(Tg)を、上記スチレンアクリル樹脂粒子1における測定と同様に測定したところ−49℃だった。
(ポリウレタン樹脂粒子分散液の調製例3)
<ポリウレタン樹脂粒子分散液3の調製>
ポリウレタン樹脂粒子分散液の調製例1において、アルコール成分の量が1,6−ヘキサンジオールを30mol%、シクロヘキサンジメタノールを70mol%となるように変更した以外は、ポリウレタン樹脂粒子分散液の調製例1と同様にして、固形分濃度が10質量%であってポリウレタン樹脂粒子3の分散液であるポリウレタン樹脂粒子分散液3を得た。
得られたポリウレタン樹脂粒子2のガラス転移温度(Tg)を、上記スチレンアクリル樹脂粒子1における測定と同様に測定したところ−32℃だった。
(実施例1)
<インクの調製>
カーボンブラック(NIPEX160−IQ、degussa社製)を5.0質量%、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテルを7.0質量%、プロピレングリコールを17.0質量%、グリセリンを0.5質量%、スチレンアクリル樹脂粒子1を5.0質量%、ラウリルジメチルベタイン(パイオニンC157K、竹本油脂社製)を0.5質量%、及び合計が100質量%となるように超純水を65質量%添加し、撹拌及び混合して実施例1のインクを得た。なお、スチレンアクリル樹脂粒子1の添加量は固形分量である。
得られたインクの初期粘度を、以下のように測定したところ7.5mPa・sだった。
−初期粘度の測定方法−
東機産業(株)社製の粘度計RL-500を用い、温度25℃において測定した。
(実施例2〜21、及び比較例1〜6)
<インクの調製>
実施例1のインクの調製において、下記表1〜4に示す組成に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜21、及び比較例1〜6のインクを得た。なお、各樹脂粒子の添加量は固形分量である。また、実施例1と同様にしてインクの初期粘度を測定した。
Figure 0006911451
Figure 0006911451
Figure 0006911451
Figure 0006911451
なお、表1〜4において、成分の商品名、及び製造会社名については下記の通りである。
・ポリロタキサン系樹脂粒子:SH1310P、アドバンスト・ソフトマテリアル株式会社製
(インクの蒸発率が30質量%及び40質量%のときの粘度)
実施例1〜21、及び比較例1〜6のインクをそれぞれ50ccスクリューバイアルに50cc入れ、60℃ホットプレートにて加温し、攪拌子を用い攪拌させながらインクの濃縮を行った。インクの蒸発率xを、下記の数式2により算出し、xが30及び40のときの粘度を測定した。結果を表5に示す。なお、実施例1〜25は、数式1の条件を満たし、比較例1〜7は数式1の条件を満たさない。
<数式2>
x={(インクの初期質量−インクの濃縮後質量)/インクの初期質量}×100
粘度の測定は、東機産業(株)社製の粘度計RL-500を用い、温度25℃において測定した。
(吐出安定性の評価)
実施例1〜21、及び比較例1〜6のインクを充填したインクジェットプリンタ(株式会社リコー製、IPSioG707)を用い、マイペーパー(株式会社リコー製)上に印字を行なった。印刷パターンは画像領域に対して、印字面積が紙面全面積中、各色印字面積が5%であるチャートにおいて、本発明のインクを100%dutyで印字した。印字条件は、記録密度360dpiで、ワンパス印字とした。
間欠印写としては、上記チャートを20枚連続で印写後、20分間吐出を実施しない給紙状態にし、これを50回繰り返して、累計1,000枚印写後、もう一度同チャートを印写したときの5%チャートベタ部の筋、白抜け、噴射乱れの有無を目視で観察し、下記評価基準で評価した。なお、許容範囲は、A、B、及びCである。結果を表5に示す。
[評価基準]
A:ベタ部に筋・白抜け・噴射乱れがない。
B:若干、ベタ部に白抜け・噴射乱れが認められる。
C:若干、ベタ部に筋・白抜け・噴射乱れが認められる。
D:1スキャン目に筋・白抜け・噴射乱れが認められる。
E:ベタ部全域にわたって、筋・白抜け・噴射乱れが認められる。
(文字にじみの評価)
実施例1〜21、及び比較例1〜6のインクを充填したインクジェットプリンタ(株式会社リコー製、IPSioG707)を用い、マイペーパー(株式会社リコー製)上に印字を行なった。印刷パターンは12pt、MS明朝体の図4、図5、図6で表される文字において、本発明のインクを100%dutyで印字した。印字条件は、記録密度360dpiで、ワンパス印字とした。
文字部分を観察し、ランク見本と比較することで画質評価を行なった。なお、許容範囲は、A、B、及びCである。結果を表5に示す。
[評価基準]
A:滲み出しが全くない
B:滲み出しがわずかにある
C:滲み出しがあるが、実用上問題なし
D:滲み出しがやや多い
E:滲み出しが多い
Figure 0006911451
特開2007−119574号公報
400 画像形成装置
401 画像形成装置の外装
401c 装置本体のカバー
404 カートリッジホルダ
410 メインタンク
410k、410c、410m、410y ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色用のメインタンク
411 インク収容部
413 インク排出口
414 収容容器ケース
420 機構部
434 吐出ヘッド
436 供給チューブ

Claims (11)

  1. 色材、有機溶剤、及び水を含むインクであって、
    前記有機溶剤は、下記一般式(1)で表されるエーテル化合物を含み、
    前記エーテル化合物は、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、及びジプロピレングリコールモノノルマルブチルエーテルから選択される少なくとも1種であり、
    前記エーテル化合物の含有量は、前記インクの質量に対して5.0質量%以上9.0質量%以下であり、
    温度25℃における初期粘度は、7.5mPa・s以上8.5mPa・s以下であり、
    前記インクの蒸発率xが、30質量%、及び40質量%のいずれの値のときにおいても下記数式1を満たすインク。
    <数式1>
    {1.085+η(0)}−1≦η(x)≦{1.110+η(0)}−1
    ただし、前記数式1中、η(0)は前記初期粘度(mPa・s)の値を表し、η(x)は前記インクの蒸発率がx質量%であるときの温度25℃における粘度(mPa・s)の値を表す。
    Figure 0006911451
    ただし、前記一般式(1)中、R は、水素原子、又は炭素数1以上10以下のアルキル基を表し、R は、炭素数1以上10以下のアルキル基を表し、nは1以上5以下の整数を表す。
  2. 前記エーテル化合物の含有量と前記水の含有量との質量比(エーテル化合物/水)が、0.07以上0.15以下である請求項1に記載のインク。
  3. 前記エーテル化合物の含有量と前記エーテル化合物以外の有機溶剤の含有量との質量比(エーテル化合物/エーテル化合物以外の有機溶剤)が、0.28以上0.44以下である請求項1又は2に記載のインク。
  4. 前記エーテル化合物が、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、及びジプロピレングリコールモノノルマルブチルエーテルから選択される少なくとも1種である請求項1乃至3のいずれかに記載のインク。
  5. 更に、樹脂粒子を含む請求項1乃至4のいずれかに記載のインク。
  6. 前記樹脂粒子として、ガラス転移温度が−50℃以上15℃以下であるウレタン樹脂粒子を含む請求項5に記載のインク。
  7. 前記樹脂粒子として、シクロヘキサン骨格を有するウレタン樹脂粒子を含む請求項5又は6に記載のインク。
  8. 前記樹脂粒子として、イソホロン骨格を有するウレタン樹脂粒子を含む請求項5乃至7のいずれかに記載のインク。
  9. 前記樹脂粒子として、ポリロタキサン系樹脂粒子を含む請求項5に記載のインク。
  10. 請求項1乃至9のいずれかに記載のインクが収容されているインク収容容器。
  11. 請求項10に記載のインク収容容器を有する記録装置。
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