JP5194741B2 - 記録用インク及びこれを用いたインクジェット記録装置 - Google Patents
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Description
また、特許文献2には、25℃、60RH%における質量減少率が30分間でインク総量の5質量%〜25質量%となるインクを使用することで24時間放置後の吐出性が良好となることが開示されている。しかし、実際のインクジェットプリンターを使用する条件には、低湿環境下で特定の色ばかり印字される場合があり、また印字中使用されていないノズルが乾きやすくなることがある。更に、数日間〜数ヶ月間放置されるようなこともあり、蒸発初期の蒸発速度を制御するだけでは高い信頼性は得られない。
また、本願出願人は、普通紙においても高品位の画像を形成でき、短期及び長期の信頼性を確保できるインクジェット用インクを提供するため、先に、水分蒸発量と粘度上昇率と平均粒径の変化率を制御したインクについて提案している(特許文献4参照)。
これらの提案では、インク乾燥による吐出不良を発生させずに高い信頼性を得るため、インク溶媒蒸発時の粘度上昇を極力抑えるように検討がなされているが、普通紙において滲みが少なく、高品位な画質が得られ、かつ放置後安定した吐出が可能となるインクについては、未だ十分満足できる性能を有するものは得られておらず、更なる改良、開発が望まれているのが現状である。
また、放置後安定したインク吐出性を得るため、揮発成分蒸発時の流動特性を最適化することにより、印字中使用されないノズル内のインクの乾燥、数日から数ヶ月間使用せず放置されたインクジェットプリンターの供給経路における揮発成分の蒸発による吐出不良を改善できることを知見した。
<1> 少なくとも水、湿潤剤、界面活性剤、及び着色剤を含有してなる記録用インクであって、
前記記録用インク全質量に対して水分蒸発量が35質量%以下では非ニュートン指数が0.9以上1.0未満であり、水分蒸発量が45質量%では非ニュートン指数が0.4以上0.95以下であり、かつ水分蒸発量が50質量%では非ニュートン指数が0.7以下であることを特徴とする記録用インクである。
<2> 水を45質量%〜65質量%含有し、湿潤剤を20質量%〜40質量%含有する前記<1>に記載の記録用インクである。
<3> 湿潤剤が、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ヘキサンジオール、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン及びN−ヒドロキシエチル−2−ピロリドンから選択される少なくとも1種である前記<1>から<2>のいずれかに記載の記録用インクである。
<4> 少なくとも2種類の湿潤剤を含有し、着色剤に対する相溶性が高い湿潤剤Aの含有量CAと、該湿潤剤A以外の湿潤剤Bの合計含有量CBが、次式、CA≧CBを満たす前記<1>から<3>のいずれかに記載の記録用インクである。
<5> 25℃における粘度が、6mPa・s〜15mPa・sである前記<1>から<4>のいずれかに記載の記録用インクである。
<6> 浸透剤を含有し、該浸透剤が炭素数7〜11のポリオール化合物を含有する前記<1>から<5>のいずれかに記載の記録用インクである。
<7> 水及び湿潤剤に不溶であり、かつ乾燥すると膜を形成可能な樹脂微粒子を含有する前記<1>から<6>のいずれかに記載の記録用インクである。
<8> 着色剤が、表面に親水基を有するカーボンブラックである前記<1>から<7>のいずれかに記載の記録用インクである。
<9> 着色剤が、ポリマー微粒子に水不溶性乃至水難溶性の色材を含有させてなるポリマーエマルジョンである前記<1>から<7>のいずれかに記載の記録用インクである。
<10> 前記<1>から<9>のいずれかに記載の記録用インクに刺激を付与し、該インクを記録ヘッドから液滴として飛翔させて記録媒体上に画像を記録するインク飛翔手段を有するインクジェット記録装置であって、
前記記録ヘッドのインク吐出用開口部が形成されている面に撥インク層を有することを特徴とする記録装置である。
<11> インク吐出面に付着した記録用インクを清掃するためのブレードを有する前記<10>に記載の記録装置である。
<12> ブレードに付着した記録用インクを掻き落とすための掻き落し部材を有する前記<11>に記載の記録装置である。
<13> 記録媒体を反転させて両面印刷可能とする反転手段を有する前記<10>から<12>のいずれかに記載の記録装置である。
<14> 無端状の搬送ベルトの表面を帯電させて記録媒体を搬送する搬送手段を有する前記<10>から<13>のいずれかに記載の記録装置である。
本発明の記録用インクは、少なくとも水、湿潤剤、界面活性剤、及び着色剤を含有してなり、樹脂微粒子、浸透剤、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
ここで、前記ニュートン流体とは、下記式(1)で示す関係を満たす流体を意味する。
s=ηD ・・・式(1)
ただし、前記式(1)中、sはずり応力、ηは粘性係数、Dはずり速度である。
s=μDn、1>n>0 ・・・ 式(2)
ただし、前記式(2)中、sはずり応力、Dはずり速度、nは非ニュートン指数、μは非ニュートン係数である。
また、前記非ニュートン指数が、1>n>0となる流体は疑塑性、n>1となる流体はダイラントと呼ばれ、これらはずり速度が大きくなるほど粘度が減少する。即ちずり速度に依存するので、非ニュートン流体の粘度は、それを測ったときのずり速度における値という意味で見かけ粘度という。該見かけ粘度がずり速度の増加に伴い減少するのは、ずり変形力の増大により構造破壊が進むからである。
このように、ずり速度1点での測定で得られた見かけの粘度だけではわからない、分散系の構造変化を捉えるために、非ニュートン指数を観察することが有効となる。
前記水分蒸発量が35質量%以下で非ニュートン指数が0.9未満となるインクは、低湿環境で印字を行ったり、数日間〜数ヶ月間まったく印字が行われなかった場合、次に印字する際に吐出不良が発生しやすくなることがある。
水分蒸発量が35質量%以下で非ニュートン指数が0.9未満となるインクは、ノズル面に付着したインクをクリーニング動作によって拭き取れず、逆にノズル面にインクを広げて汚してしまうことがある。また、ノズル面を清掃するためのワイパーブレードに付着したインクが流動せずそのまま乾燥が進み固着してしまうこともある。
更に、ある程度水分が蒸発した時点でインクが凝集することで、紙の内部まで着色剤が移動することを防ぐことができる。これにより高い画像濃度かつ裏抜けの少ない画像を提供できる。そのため、水分蒸発量が45質量%では非ニュートン指数が0.4以上0.95以下であり、かつ水分蒸発量が50質量%では非ニュートン指数が0.7以下である。
前記記録用インクの非ニュートン指数を本発明の前記所定の範囲とするための、着色剤、及び溶剤種などのインク組成については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、着色剤及び樹脂の含有量は6質量%〜12質量%、湿潤剤の含有量は20質量%〜40質量%、水の含有量は45質量%〜65質量%であることが好ましい。
水が蒸発し、インク中の残存水分量中の湿潤剤比率が高くなった場合、着色剤との相溶性が悪い成分が多いほど増粘凝集が発生し、インクは流動性を失う傾向にある。湿潤剤と着色剤との相溶性については、着色剤の分散基の影響が考えられる。例えば表面酸化処理カーボンブラックの場合、水酸化ナトリウムによる中和度が影響し、中和度の低い顔料を用いた方が、インク中の水分を40質量%蒸発させたときに流動性を保てる傾向がある。
したがって、少なくとも2種類の湿潤剤を含有し、着色剤に対する相溶性が高い湿潤剤Aの含有量CAと、該湿潤剤A以外の湿潤剤Bの合計含有量CBが、次式、CA≧CBを満たすことが好ましい。
ここで、着色剤と湿潤剤との相溶性は、例えば着色剤(固形分8質量%)と、湿潤剤(CA+CB=30質量%)を混合して、密閉容器内で50℃環境下、1ヶ月保存したときの粘度変化をみることで確認できる。相溶性が良い場合には、保存前後で粘度変化がみられないが、相溶性が悪いと増粘傾向となることで判別できる。
前記湿潤剤Bとしては、例えばジエチレングリコール、2−ピロリドン、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,3−ブタンジオール、プロピレングリコール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、などが挙げられる。
前記界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤から選ばれる一種を単独、又は二種以上を混合して用いることができる。
前記アニオン界面活性剤としては、例えばアルキルアリル、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルエステル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルアリールエーテルリン酸塩、アルキルアリールエーテル硫酸塩、アルキルアリールエーテルエステル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンオレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、エーテルカルボキシレート、スルホコハク酸塩、α−スルホ脂肪酸エステル、脂肪酸塩、高級脂肪酸とアミノ酸の縮合物、ナフテン酸塩、などが挙げられる。
前記ノニオン系界面活性剤としては、例えばアセチレングリコール系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、などが挙げられる。
前記カチオン界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、脂肪族アミン塩、ベンザルコニウム塩、第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、などが挙げられる。
前記両性界面活性剤としては、例えばイミダゾリニウムベタイン等のイミダゾリン誘導体;ジメチルアルキルラウリルベタイン、アルキルグリシン、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、などが挙げられる。
前記フッ素系界面活性剤の具体的な市販品としては、入手が容易であることから、例えば、ソフタールEP7025(株式会社日本触媒製)、サーフロンS−111,S−112,S−113,S121,S131,S132,S−141,S−145(いずれも、旭硝子株式会社製);フルラードFC−93,FC−95,FC−98,FC−129,FC−135,FC−170C,FC−430,FC−431,FC−4430(いずれも、住友スリーエム株式会社製);メガファックF−470,F−1405,F474(いずれも、大日本インキ化学工業株式会社製);ゾニールFS−300,FSN,FSN−100,FSO(いずれも、デュポン社製)、エフトップEF−351,352,801,802(いずれも、ジェムコ株式会社製)、などが好適に挙げられる。これらの中でも,信頼性と発色向上に関して良好なゾニールFS−300、FSN、FSN−100、FSO(いずれも、デュポン社製)が、特に好適に使用できる。
なお、前記界面活性剤の添加量は、顔料を安定に分散させ、本発明の他の効果を損なわない範囲で適宣調整することができる。
前記着色剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、(1)表面に親水基を有するカーボンブラック、(2)ポリマー微粒子に非水溶性乃至水難溶性の色材を含有させてなるポリマーエマルジョンなどが好適である。
前記自己分散性カーボンブラックの体積平均粒径(D50)は、インク中において0.01μm〜0.16μmが好ましい。
前記アニオン性親水基としては、例えば、−COOM、−SO3M、−PO3HM、−PO3M2、−SO2NH2、−SO2NHCOR(ただし、Mは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表す。Rは、炭素原子数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基又は置換基を有してもよいナフチル基を表す)等が挙げられる。これらの中でも、−COOM、−SO3Mがカラー顔料表面に結合されたものを用いることが好ましい。
この場合、全ての色材がポリマー微粒子中に封入及び/又は吸着している必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲で該色材がエマルジョン中に分散にしていてもよい。
前記「水不溶性又は水難溶性」とは、20℃で水100質量部に対し色材が10質量部以上溶解しないことを意味する。また、前記「溶解する」とは、目視で水溶液表層又は下層に色材の分離や沈降が認められないことを意味する。
前記ポリマーエマルジョンを形成するポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビニル系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー、特開2000−53897号公報、特開2001−139849号公報に開示されているポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、ビニル系ポリマー、ポリエステル系ポリマーが特に好ましい。
前記色材を含有させたポリマー微粒子(着色微粒子)の体積平均粒径は、前記インク中において0.01〜0.16μmが好ましい。
前記顔料はブラック顔料としてカーボンブラックが挙げられる。
カラー顔料としては、アントラキノン、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジアゾ、モノアゾ、ピラントロン、ペリレン、複素環式イエロー、キナクリドン、(チオ)インジゴイドを含む。フタロシアニンブルーの代表的な例は銅フタロシアニンブルー又はその誘導体(ピグメントブルー15)を含む。キナクリドンの代表的な例はC.I.ピグメントオレンジ48、C.I.ピグメントオレンジ49、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド192、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド206、C.I.ピグメントレッド207、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントバイオレット42を含む。アントラキノンの代表的な例はC.I.ピグメントレッド43、C.I.ピグメントレッド194(ペリノンレッド)、C.I.ピグメントレッド216(臭素化ピラントロンレッド)、C.I.ピグメントレッド226(ピラントロンレッド)を含む。ピレリンの代表的な例はC.I.ピグメントレッド123(ベルミリオン)、C.I.ピグメントレッド149(スカーレット)、C.I.ピグメントレッド179(マルーン)、C.I.ピグメントレッド190(レッド)、C.I.ピグメントバイオレット、C.I.ピグメントレッド189(イエローシェードレッド)、C.I.ピグメントレッド224を含む。チオインジゴイドの代表的な例はC.I.ピグメントレッド86、C.I.ピグメントレッド87、C.I.ピグメントレッド88、C.I.ピグメントレッド181、C.I.ピグメントレッド198、C.I.ピグメントバイオレット36、C.I.ピグメントバイオレット38を含む。複素環式イエローの代表的な例はC.I.ピグメントイエロー117、C.I.ピグメントイエロー138を含む。その他の適切な着色顔料の例は、The Colour Index、第三版(The Society of Dyers and Colourists,1982)に記載されている。
前記水溶性染料としては、カラーインデックスにおいて酸性染料、直接性染料、塩基性染料、反応性染料、食用染料に分類される染料であり、好ましくは耐水、耐光性が優れたものが用いられる。
前記酸性染料及び食用染料としては、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142;C.I.アシッドレッド 1,8,13,14,18,26,27,35,37,42,52,82,87,89,92,97,106,111,114,115,134,186,249,254,289;C.I.アシッドブルー 9,29,45,92,249;C.I.アシッドブラック 1,2,7,24,26,94;C.I.フードイエロー 3,4;C.I.フードレッド 7,9,14;C.I.フードブラック 1,2などが挙げられる。
前記直接性染料としては、例えば、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,26,33,44,50,86,120,132,142,144;C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,13,17,20,28,31,39,80,81,83,89,225,227;C.I.ダイレクトオレンジ 26,29,62,102;C.I.ダイレクトブルー 1,2,6,15,22,25,71,76,79,86,87,90,98,163,165,199,202;C.I.ダイレクトブラック 19,22,32,38,51,56,71,74,75,77,154,168,171などが挙げられる。
前記塩基性染料としては、例えば、C.I.べーシックイエロー 1,2,11,13,14,15,19,21,23,24,25,28,29,32,36,40,41,45,49,51,53,63,64,65,67,70,73,77,87,91;C.I.ベーシックレッド 2,12,13,14,15,18,22,23,24,27,29,35,36,38,39,46,49,51,52,54,59,68,69,70,73,78,82,102,104,109,112;C.I.べーシックブルー 1,3,5,7,9,21,22,26,35,41,45,47,54,62,65,66,67,69,75,77,78,89,92,93,105,117,120,122,124,129,137,141,147,155;C.I.ベーシックブラック 2,8などが挙げられる。
前記反応性染料としては、例えば、C.I.リアクティブブラック 3,4,7,11,12,17;C.I.リアクティブイエロー 1,5,11,13,14,20,21,22,25,40,47,51,55,65,67;C.I.リアクティブレッド 1,14,17,25,26,32,37,44,46,55,60,66,74,79,96,97;C.I.リアクティブブルー 1,2,7,14,15,23,32,35,38,41,63,80,95などが挙げられる。
これらの共重合体は質量平均分子量が3,000〜50,000であるのが好ましく、5,000〜30,000がより好ましく、7,000〜15,000が更に好ましい。
前記分散剤の添加量は、顔料を安定に分散させ、本発明の他の効果を失わせない範囲で適宣添加されてよい。質量比(顔料:分散剤)が1:0.06〜1:3の範囲が好ましく、1:0.125〜1:3の範囲がより好ましい。
本発明では、浸透剤として炭素数7〜11のジオール化合物を用いることができる。炭素数が7未満であると、十分な浸透性が得られず、両面印刷時に記録媒体を汚したり、記録媒体上でのインクの広がりが不十分で画素の埋まりが悪くなるため、文字品位や画像濃度の低下が生じることがあり、11を超えると保存安定性が低下することがある。
前記ジオール化合物の添加量は0.1質量%〜20質量%が好ましく、0.5質量%〜10質量%がより好ましい。前記添加量が少なすぎると、インクの記録媒体への浸透性が劣り、搬送時にコロで擦られて汚れが発生したり、両面印字のため記録媒体の記録面を反転させる際に搬送ベルトにインクを付着させて汚れが発生したり、高速印字や両面印字に対応できないことがある。一方、添加量が多すぎると、印字ドット径が大きくなり、文字の線幅が広くなったり、画像鮮明度が低下することがある。
本発明の記録用インクにおいて、樹脂微粒子を添加することができる。樹脂微粒子とは、水に不溶性の樹脂が水に分散した状態で存在したもので、溶媒が蒸発すると樹脂微粒子同士が融着して膜を形成し、着色剤をメディア上に固着させる効果を持つ。また、溶媒が蒸発すると増粘・凝集する性質を持ち、着色成分の浸透を抑制し高い画像濃度が得られ、また裏抜けを防止する効果も得られる。
インク中に安定して存在しかつ水分蒸発時に著しい分散構造変化を引き起こさないために、インクに添加する湿潤剤に樹脂微粒子が不溶であることが有効である。湿潤剤への安定性は、湿潤剤と樹脂微粒子分散体を質量比が1:1の割合で混合し、60℃で5日間保存しても粘度変化や粒径変化がないことで確認できる。
その他の成分としては、特に制限はなく、必要に応じて適宜選択することができ、例えば、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤、光安定化剤、などが挙げられる。
該pH調製剤としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属元素の水酸化物;水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物、第4級ホスホニウム水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、等が挙げられる。
前記アミン系酸化防止剤としては、例えば、フェニル−β−ナフチルアミン、α−ナフチルアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチル−フェノール、ブチルヒドロキシアニソール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、テトラキス[メチレン−3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ジヒドロキフェニル)プロピオネート]メタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、等が挙げられる。
前記硫黄系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリルβ,β’−チオジプロピオネート、2−メルカプトベンゾイミダゾール、ジラウリルサルファイド等が挙げられる。
前記リン系酸化防止剤としては、トリフェニルフォスファイト、オクタデシルフォスファイト、トリイソデシルフォスファイト、トリラウリルトリチオフォスファイト、トリノニルフェニルフォスファイト、等が挙げられる。
前記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、等が挙げられる。
前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2'−ヒドロキシ−5'−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−4'−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−tert−ブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、等が挙げられる。
前記サリチレート系紫外線吸収剤としては、例えば、フェニルサリチレート、p−tert−ブチルフェニルサリチレート、p−オクチルフェニルサリチレート、等が挙げられる。
前記シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、例えば、エチル−2−シアノ−3,3'−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート、ブチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート、等が挙げられる。
前記ニッケル錯塩系紫外線吸収剤としては、例えば、ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド、2,2’−チオビス(4−tert−オクチルフェレート)−n−ブチルアミンニッケル(II)、2,2’−チオビス(4−tert−オクチルフェレート)−2−エチルヘキシルアミンニッケル(II)、2,2’−チオビス(4−tert−オクチルフェレート)トリエタノールアミンニッケル(II)、等が挙げられる。
ここで、本発明におけるインク中の固形分量とは、主として水不溶の着色剤と樹脂微粒子を意味する。
前記粘度は、25℃で、6mPa・s〜15mPa・sが好ましく、6.5mPa・s〜12mPa・sがより好ましい。前記粘度が15mPa・sを超えると、吐出安定性の確保が困難になることがある。
前記表面張力としては、20℃で、25〜40mN/mが好ましい。前記表面張力が、25mN/m未満であると、記録媒体上での滲みが顕著になり、安定した噴射が得られないことがあり、40mN/mを超えると、記録媒体へのインク浸透が十分に起らず、乾燥時間の長時間化を招くことがある。
前記pHとしては、例えば、7〜10が好ましい。
本発明で用いられるインクカートリッジは、本発明の前記記録用インクを容器中に収容してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の部材等を有してなる。
前記容器としては、特に制限はなく、目的に応じてその形状、構造、大きさ、材質等を適宜選択することができ、例えば、アルミニウムラミネートフィルム、樹脂フィルム等で
形成されたインク袋などを少なくとも有するもの、などが好適に挙げられる。
前記インクカートリッジにおけるインクの収容量は15g以上が好ましい。前記収容量が15g未満であると、本発明のインクジェット記録装置のように印写枚数の多い場合は、カートリッジ交換頻度が高くなり、本発明の目的及び作用効果を奏し得ないことがある。また、本発明のインクジェット記録装置によれば、このような大容量のインクタンクを用いた場合でも、保存により接液不良となりエアリークが起きて泡発生に至らないように改良が施されている。
インクカートリッジ10は、図1に示すように、インク注入口42からインク袋41内に充填され、排気した後、該インク注入口42は融着により閉じられる。使用時には、ゴム部材からなるインク排出口43に装置本体の針を刺して装置に供給される。
インク袋41は、透気性のないアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。このインク袋41は、図2に示すように、通常、プラスチックス製のカートリッジケース44内に収容され、各種インクジェット記録装置に着脱可能に装着して用いられるようになっている。
本発明のインクジェット記録装置は、インク飛翔手段を少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、刺激発生手段、制御手段等を有してなる。
本発明で用いられるインクジェット記録方法は、インク飛翔工程を少なくとも含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば、刺激発生工程、制御工程等を含んでなる。
本発明で用いられるインクジェット記録方法は、本発明のインクジェット記録装置により好適に実施することができ、前記インク飛翔工程は前記インク飛翔手段により好適に行うことができる。また、前記その他の工程は、前記その他の手段により好適に行うことができる。
前記インク飛翔工程は、本発明の前記記録用インクに刺激を付与し、該インクを記録ヘッドから液滴として飛翔させて記録媒体上に画像を記録する工程である。
前記インク飛翔手段は、本発明の前記記録用インクに刺激を付与し、該インクを記録ヘッドから液滴として飛翔させて記録媒体上に画像を記録する手段である。該インク飛翔手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、各種のヘッド(インク吐出ヘッド)が挙げられ、特に複数のノズル列を有するヘッドと、液体保管用タンクから供給される液体を収容して前記ヘッドに液体を供給するサブタンクとを有するものが好ましい。
前記サブタンクは、該サブタンク内に負圧を発生するための負圧発生手段と、該サブタンク内を大気開放するための大気開放手段と、電気抵抗の差によりインクの有無を検知する検知手段とを有するものが好ましい。
前記撥インク層としては、PTFE−Ni共析メッキ、フッ素樹脂の電着塗装、蒸発性のあるフッ素樹脂(例えばフッ化ピッチ等)を蒸着したもの、シリコーン系樹脂及びフッ素系樹脂の溶剤塗布後の焼付け、などが挙げられる。
また、インク吐出面に付着した記録用インクを清掃するためのブレードを有することが好ましい。更にブレードに付着した記録用インクを掻き落とすための掻き落し部材を有することが好ましい。
また、前記インクジェット記録装置においては、記録媒体を反転させて両面印刷可能とする反転手段を有することが好ましい。
また、前記インクジェット記録装置においては、無端状の搬送ベルトの表面を帯電させて記録媒体を搬送する搬送手段を有することが好ましい。
記録ヘッド14を構成するインクジェット記録用ヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを記録用インクを吐出するためのエネルギー発生手段として備えたものなどを使用できる。
また、キャリッジ13には、記録ヘッド14に各色のインクを供給するための各色のサブタンク15を搭載している。サブタンク15には、図示しない記録用インク供給チューブを介して、インクカートリッジ装填部6に装填された本発明のインクカートリッジ10から本発明の前記記録用インクが供給されて補充される。
そして、サブタンク15内の記録用インクの残量が少なくなってきたことが検知されると、インクカートリッジ10から所要量の記録用インクがサブタンク15に補給される。
なお、この場合は一つの記録ヘッドに2個の別のサブタンクより2色を供給し4個のサブタンク2ヘッドでYMC及び黒の4色印写する場合(株式会社リコー製、イプシオG505)の図であるが、2列のノズル列を有するヘッドを4個設けそれぞれに1個ずつの別色のサブタンクを用意し2列のノズル列を有する4個のヘッド、4個のサブタンクでYMC及び黒の4色を印写するようにしてもよい(株式会社リコー製、イプシオG707)。
このインク供給装置は、前述したようにキャリッジ13に搭載されて各記録ヘッド14(14a、14b)にインクを供給する液体容器であるサブタンク15と、このサブタンク15に供給チューブ16を介してインクを供給補充するためのメインタンク(インクカートリッジ)10とによって構成される。
1つのサブタンク15は、インクを収容するインク収容部100を形成する容器本体(ケース本体)101に、インク収容部100の開口(サブタンク15の一面)を封止する可撓性を有するフィルム状部材(可撓性フィルム状部材)102を接着又は溶着などで貼り付け、更にインク収容部100内部にはケース本体101とフィルム状部材102との間にフィルム状部材102を外方に付勢するための弾性部材であるバネ(スプリング)103を設けている。
また、フィルム状部材102の厚さは、10μm〜100μmが好ましい。前記厚さが、10μm未満であると、経時的劣化による破損などが生じ易くなることがあり、100μmを超えると、可撓性が低下して負圧の効率的な発生が困難になることがある。
更に、フィルム状部材102にはバネ103に対応して凸部形状となる膨らみ部102aを形成してその外面に補強部材104を貼り付けている。このように、可撓性フィルム状部材102に凸部を設けることで弾性部材(ここではバネ)103を安定して保持することができる。この場合、可撓性フィルム状部材102は、シート状のフィルム部材を凸形状に成形して作製することで、容易に凸部を形成することができる。
図11及び図12に示すように、まず、モータ231が正転すると、モータギヤ232、ポンプギヤ234、中間ギヤ235、中間ギヤ236、中間ギヤ237までが回転し、チューブポンプ220が作動してポンプとチューブ219で連結された一番右(記録領域側)のキャップ内を吸引する。その他のギヤは、一方向クラッチ237が不連結となり作動しない。
モータ231が逆転すると、一方向クラッチ237が連結されモータ〜カム軸までが回転する。チューブポンプ220は逆転するが、ポンプとしては作動しない構造となっている。
カム軸221にはキャリッジロックカム227とキャップカム222B及び222Aとワイパカム224及びワイパークリーナカム228及びホームポジションセンサ用カム241が一体的に回転するように取付けられている。
キャリッジロック215は圧縮ばね(不図示)により上方(ロック方向)に付勢されている。キャリッジロックカム227のカム面と接触したキャリッジロックアーム217によりキャリッジロック215は上下させられる。
キャップ72A及び72B、キャップホルダ212Aは、キャップカム222A及び222Bにより上下させられる。
ワイパー73は、ワイパカム228により上下させられる。
ワイパークリーナ218は、バネによりワイパー73から離れる方向に付勢されていて、ワイパークリーナカム218によりワイパー方向に動作する。ワイパー73はワイパークリーナ218と空吐出受けに挟まれながら下降することにより、ワイパー73のインクが空吐出内へ掻き落とされる。
維持ユニット本体にはセンサ(ホトインタラプタ/不図示)が固定されており、ホームポジションカムにてキャップが最下端にきた時にHPレバー(不図示)を動作させセンサが開状態になってモーター(ポンプ以外の)ホームポジションを検知する(それ以外は、HPレバーは動作せずにセンサは常時閉)構成となっている。
電源ON時には、キャップ72A及び72B、キャップホルダ212A及び212Bの位置に関係なく上下し(移動開始までは位置検出を行わない)、キャップのホーム位置(上昇途中)を検知した後に、定められた量を移動して最下端へ移動する。その後、キャリッジが左右に移動して位置検知後キャップ位置に戻り、キャッピングされる。
前記インク記録物は、記録媒体上に本発明の前記記録用インクを用いて形成された画像を有してなる。
前記記録媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、普通紙、光沢紙、特殊紙、布、フィルム、OHPシート、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記インク記録物は、高画質で滲みがなく、経時安定性に優れ、各種の印字乃至画像の記録された資料等として各種用途に好適に使用することができる。
−表面処理したカーボンブラック顔料分散液の作製−
CTAB比表面積が150m2/g、DBP吸油量100mL/100gのカーボンブラック90gを、2.5規定の硫酸ナトリウム溶液3,000mLに添加し、温度60℃、速度300rpmで攪拌し、10時間反応させて酸化処理を行った。この反応液を濾過し、濾別したカーボンブラックを水酸化ナトリウム溶液で中和し、限外濾過を行った。得られたカーボンブラックを水洗いし乾燥させ、20質量%となるよう純水中に分散させ、pH6.5となるよう調整し、孔径0.8μmのメンブランフィルターで濾過して粗大粒子を取り除いた。
得られた分散体の電導度は1.25mS/cm、体積平均粒径は105nmであった。
−表面処理したカーボンブラック顔料分散体の作製−
一次粒径が16nm、比表面積が260m2/g、DBP吸油量が69mL/100gのカーボン90gを、2.5規定の硫酸ナトリウム溶液3,000mLに添加し、温度60℃、速度300rpmで攪拌し、10時間反応させて酸化処理を行った。この反応液を濾過し、濾別したカーボンブラックを水酸化ナトリウム溶液で中和し、限外濾過を行った。得られたカーボンブラックを水洗いし、乾燥させて、20質量%となるよう純水中に分散させ、pH6.5となるよう調整し、孔径0.8μmのメンブランフィルターで濾過して粗大粒子を取り除いた。
得られた分散液の電導度は1.3mS/cm、体積平均粒径は128nmであった。
−表面処理したカーボンブラック分散体の作製−
一次粒径が16nm、比表面積が260m2/g、DBP吸油量が69mL/100gのカーボン90gを、2.5規定の硫酸ナトリウム溶液3000mLに添加し、温度60℃、速度300rpmで攪拌し、10時間反応させて酸化処理を行った。この反応液を濾過し、濾別したカーボンブラックを水酸化ナトリウム溶液で中和し、限外濾過を行った。得られたカーボンブラックを水洗いし、乾燥させ、20質量%となるよう純水中に分散させて、pH5.8となるよう調整し、孔径0.8μmのメンブランフィルターで濾過して粗大粒子を取り除いた。
得られた分散液の電導度は1.2mS/cm、体積平均粒径は128nmであった。
−ポリマー分散液の調製−
機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管、及び滴下ロートを備えた1Lフラスコ内を十分に窒素ガスで置換した後、スチレン11.2g、アクリル酸2.8g、ラウリルメタクリレート12.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート4.0g、スチレンマクロマー(東亜合成株式会社製、商品名:AS−6)4.0g、及びメルカプトエタノール0.4gを仕込み、65℃に昇温した。次に、スチレン100.8g、アクリル酸25.2g、ラウリルメタクリレート108.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート36.0g、ヒドロキシエチルメタクリレート60.0g、スチレンマクロマー(東亜合成株式会社製、商品名:AS−6)36.0g、メルカプトエタノール3.6g、アゾビスジメチルバレロニトリル2.4g及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を2.5時間かけてフラスコ内に滴下した。滴下終了後、アゾビスジメチルバレロニトリル0.8g及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を0.5時間かけてフラスコ内に滴下した。65℃で1時間熟成した後、アゾビスジメチルバレロニトリル0.8gを添加し、更に1時間熟成した。反応終了後、フラスコ内に、メチルエチルケトン364gを添加し、濃度が50%のポリマー溶液800gを得た。
−フタロシアニン顔料含有ポリマー微粒子分散体の調製−
合成例1で合成したポリマー溶液28g、フタロシアニン顔料26g、1mol/Lの水酸化カリウム溶液13.6g、メチルエチルケトン20g、及びイオン交換水30gを十分に攪拌した後、三本ロールミルを用いて混練した。得られたペーストをイオン交換水200gに投入し、十分に攪拌した後、エバポレーターを用いてメチルエチルケトン及び水を留去し、シアン色のポリマー微粒子分散体を調製した。
−ジメチルキナクリドン顔料含有ポリマー微粒子分散体の調製−
調製例4のフタロシアニン顔料を、C.I.ピグメントレッド122に変更した以外は、調製例4と同様にして、マゼンタ色のポリマー微粒子分散体を調製した。
−モノアゾ黄色顔料含有ポリマー微粒子分散体の調製−
調製例4のフタロシアニン顔料を、C.I.ピグメントイエロー74に変更した以外は、調製例4と同様にして、黄色のポリマー微粒子分散体を調製した。
−カーボンブラック顔料含有ポリマー微粒子分散体の調製−
調製例4のフタロシアニン顔料をカーボンブラック(一次粒子径19nm、DBP吸油量115mL/100g)に変更した以外は、調製例4と同様にして、黒色のポリマー微粒子分散体を調製した。
−記録用インクの作製−
下記表1〜表3に記載の処方の記録用インクを常法により作製し、pHが9になるように10質量%の水酸化カリウム水溶液にて調整した。その後、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターで濾過を行い、実施例1〜6及び8〜11、参考例7並びに比較例1〜6の各記録用インクを作製した。
*アクリル樹脂微粒子(アクアブリッド4720、ダイセル化学工業株式会社製)
*ポリエステル樹脂微粒子(ペスレジンA620、高松油脂株式会社製)
*ノニオン系界面活性剤(ソフタノールEP7025、株式会社日本触媒製)
*フッ素系界面活性剤(I)
*フッ素系界面活性剤(II)
*フッ素系界面活性剤(III)
水分蒸発時の各記録用インクの非ニュートン指数は、まず、インクをサンプル瓶に5g程度量り取り、50℃の恒温槽で所望の水分蒸発量となるまで水分を蒸発させた。水分蒸発及び吸湿を防ぐため蓋をして1日放置した後、よく掻き混ぜてから回転粘度計(RE550L、東機産業株式会社製)でずり速度を変えて測定を行った。縦軸にずり応力s、横軸にずり速度Dをとり、下記式(2)より非ニュートン指数nを求めた。水分蒸発量と粘度との関係を図13〜図15に示した。水分蒸発量と非ニュートン指数との関係を図16〜図18に示した。
s=μDn、1>n>0 ・・・ 式(2)
ただし、前記式(2)中、sはずり応力、Dはずり速度、nは非ニュートン指数、μは非ニュートン係数である。
図16〜図18の結果から、実施例1〜6及び8〜11、並びに参考例7は、「水分蒸発量が35質量%以下では非ニュートン指数が0.9以上1.0未満であり、水分蒸発量が45質量%では非ニュートン指数が0.4以上0.95以下であり、かつ水分蒸発量が50質量%では非ニュートン指数が0.7以下である」を満たしていることが分かった。
各記録用インクを純水で希釈し、粒度分布測定装置(マイクロトラックUPA、日機装株式会社製)を用いて体積平均粒子径(D50%)を測定した。
R型粘度計(東機産業株式会社製)を用いて、25℃で測定した。
静的表面張力計(BVP−Z、協和界面科学株式会社製)を用いて、23±3℃で測定した。
図3〜5に示すインクジェットプリンター(記録ヘッドのインク吐出用開口部が形成されている面にシリコーン樹脂からなる撥インク層を有する)に、実施例1〜6及び8〜11、参考例7並びに比較例1〜6の各記録用インクを充填してType6200紙(株式会社NBSリコー製)に解像度600dpiで印字を行った。印字乾燥後、文字滲み、及び画像滲み(フェザリング)を目視観察し、下記基準により評価した。また、反射型カラー分光測色濃度計(XRite社製)を用いて画像濃度を測定した。このときの付着量は9.5g/m2であった。
〔評価基準〕
○:滲みの発生がなく鮮明な画像である。
△:一部にひげ状の滲みが発生している。
×:文字の輪郭がはっきりしないほど滲みが発生している。
図3〜5に示すインクジェットプリンター(記録ヘッドのインク吐出用開口部が形成されている面にシリコーン樹脂からなる撥インク層を有する)に、実施例1〜6及び8〜11、参考例7並びに比較例1〜6の各記録用インクを充填してType6200紙(株式会社NBSリコー製)に600dpiの解像度で印字を行った。印字乾燥後、綿布で印字部を10回擦り、綿布への顔料の転写具合を目視観察し、下記基準により評価した。
〔評価基準〕
〇:綿布への顔料転写は殆どみられない。
△:若干の顔料転写が見られる。
×:明らかに顔料が転写している。
図3〜5に示すインクジェットプリンター(記録ヘッドのインク吐出用開口部が形成されている面にシリコーン樹脂からなる撥インク層を有する)に、実施例1〜6及び8〜11、参考例7並びに比較例1〜6の各記録用インクを充填してType6200紙(株式会社NBSリコー製)に600dpiの解像度で連続200枚印字を行い、吐出乱れや不吐出具合を下記基準により評価した。
〔評価基準〕
〇:吐出乱れや不吐出はみられない。
△:3ノズル以下の不吐出、吐出乱れがある。
×:4ノズル以上の不吐出、吐出乱れがある。
図3〜5に示すインクジェットプリンター(記録ヘッドのインク吐出用開口部が形成されている面にシリコーン樹脂からなる撥インク層を有する)に、実施例1〜6及び8〜11、参考例7並びに比較例1〜6の各記録用インクをそれぞれ充填して、32℃、30%RHの環境で、Type6200紙(株式会社NBSリコー製)に600dpiの解像度で10枚連続印字を1時間毎に実施し、これを8時間行った後クリーニングは行わず、そのまま32℃、30%RHの環境で1週間放置した。放置後ノズルチェック印字を行い、吐出乱れや吐出不具合を下記基準により評価した。
〔評価基準〕
○:吐出乱れや不吐出はみられない。
△:10ズル以下の不吐出、吐出乱れがある。
×:11ノズル以上の不吐出、吐出乱れがある。
図3〜5に示すインクジェットプリンター(記録ヘッドのインク吐出用開口部が形成されている面にシリコーン樹脂からなる撥インク層を有する)に、実施例1〜6及び8〜11、参考例7並びに比較例1〜6の各記録用インクをそれぞれ充填して、全色クリーニングを行った後、32℃、30%RHの環境下で2ヶ月放置した。放置後ノズルチェック印字を行い、吐出乱れや吐出不具合を下記基準により評価した。
〔評価基準〕
○:吐出乱れや不吐出はみられない。
△:10ノズル以下の不吐出、吐出乱れがある。
×:11ノズル以上の不吐出、吐出乱れがある。
図3〜5に示すインクジェットプリンター(記録ヘッドのインク吐出用開口部が形成されている面にシリコーン樹脂からなる撥インク層を有する)に、実施例1〜6及び8〜11、参考例7並びに比較例1〜6の各記録用インクをそれぞれ充填して、32℃、30%RHの環境下で、Type6200紙(株式会社NBSリコー製)に600dpiの解像度で200印字毎に1回全色クリーニングを行い、これを1日10回ずつ10日間繰り返した。
図6に示すヘッド撥水面に付着しているインクの状態をマイクロスコープで観察した。
〔評価基準〕
○:インクの付着は殆どみられない。
△:ややインクの付着がみられるが、インクの吐出を阻害するほどではない。
×:著しくインクが付着しており、ノズル口付近にまでインク汚れが広がっている。
本発明のインクジェット記録装置は、インクジェット記録方式による各種記録に適用することができ、例えば、インクジェット記録用プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機、などに特に好適に適用することができる。
2 給紙トレイ
3 排紙トレイ
6 インクカートリッジ装填部
7 操作部
8 前カバー
10 インクカートリッジ
11 ガイドロッド
12 ステー
13 キャリッジ
14 記録ヘッド
15 サブタンク
16 供給チューブ
22 用紙
23 給紙コロ
24 分離パッド
25 ガイド
31 搬送ベルト
32 カウンタローラ
33 搬送ガイド
34 押さえ部材
36 帯電ローラ
37 搬送ローラ
38 テンションローラ
41 インク袋
42 インク注入口
43 インク排出口
44 カートリッジ外装
71 維持回復機構(サブシステム)
100 インク収容部
101 ケース本体
102 フィルム状部材
103 バネ(スプリング)
113 連結部材
121 空気流路
126 蓄積部
131 大気開放穴
132 大気開放弁機構
133 ホルダ
134 弁座
135 ボール
136 スプリング
Claims (13)
- 少なくとも水、湿潤剤、界面活性剤、及び着色剤を含有してなる記録用インクであって、
前記記録用インク全質量に対して水分蒸発量が35質量%以下では非ニュートン指数が0.9以上1.0未満であり、水分蒸発量が45質量%では非ニュートン指数が0.4以上0.95以下であり、かつ水分蒸発量が50質量%では非ニュートン指数が0.7以下であり、前記界面活性剤が下記の一般式(1)から一般式(3)で表されるフッ素系界面活性剤の少なくともいずれかであることを特徴とする記録用インク。
- 湿潤剤が、グリセリン、ジエチレングリコール、2−ピロリドン、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,3−ブタンジオール、プロピレングリコール、3−メチル−1,3−ブタンジオール及び2−メチル−2,4−ペンタンジオールから選択される少なくとも1種である請求項1に記載の記録用インク。
- 少なくとも2種類の湿潤剤を含有し、着色剤に対する相溶性が高い湿潤剤Aの含有量C A と、該湿潤剤A以外の湿潤剤Bの合計含有量C B が、次式、C A ≧C B を満たす請求項1から2のいずれかに記載の記録用インク。
- 25℃における粘度が、6mPa・s〜15mPa・sである請求項1から3のいずれかに記載の記録用インク。
- 浸透剤を含有し、該浸透剤が炭素数7〜11のポリオール化合物を含有する請求項1から4のいずれかに記載の記録用インク。
- 水及び湿潤剤に不溶であり、かつ乾燥すると膜を形成可能な樹脂微粒子を含有する請求項1から5のいずれかに記載の記録用インク。
- 着色剤が、表面に親水基を有するカーボンブラックである請求項1から6のいずれかに記載の記録用インク。
- 着色剤が、ポリマー微粒子に水不溶性乃至水難溶性の色材を含有させてなるポリマーエマルジョンである請求項1から6のいずれかに記載の記録用インク。
- 請求項1から8のいずれかに記載の記録用インクに刺激を付与し、該インクを記録ヘッドから液滴として飛翔させて記録媒体上に画像を記録するインク飛翔手段を有するインクジェット記録装置であって、
前記記録ヘッドのインク吐出用開口部が形成されている面に撥インク層を有することを特徴とするインクジェット記録装置。 - インク吐出面に付着した記録用インクを清掃するためのブレードを有する請求項9に記載のインクジェット記録装置。
- ブレードに付着した記録用インクを掻き落とすための掻き落し部材を有する請求項10に記載のインクジェット記録装置。
- 記録媒体を反転させて両面印刷可能とする反転手段を有する請求項9から11のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
- 無端状の搬送ベルトの表面を帯電させて記録媒体を搬送する搬送手段を有する請求項9から12のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
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